JP2005268582A - 重合体コンポジット - Google Patents
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Abstract
【課題】高移動度かつ高オンオフ比を有する有機半導体素材を開発する。
【解決手段】不純物量が1000ppm以下の共役系重合体と、カーボンナノチューブとからなる重合体コンポジット。
【選択図】 なし
【解決手段】不純物量が1000ppm以下の共役系重合体と、カーボンナノチューブとからなる重合体コンポジット。
【選択図】 なし
Description
本発明は、共役系重合体中にカーボンナノチューブを分散した重合体コンポジット、および該重合体コンポジットを半導体層素材として用いたトランジスタ素子に関する。
従来、電界効果型トランジスタ(以下、FET素子と言う)は、シリコンやゲルマニウム等の無機半導体を用いており、回路パターンを形成するのに、フォトリソグラフィーや真空蒸着等の製造コストのかかるプロセスが何段階もわたって必要だった。このような製造方法を採用してきた半導体産業では製造コスト削減や、表示装置における大面積化の要請が高まっている。しかし、製造装置の制約から無機半導体でのさらなる低コスト化や大面積化が困難と考えられる。
このため、成形性に優れた有機高分子半導体を半導体層として用いたFET素子が提案されている。有機高分子半導体をインクとして利用することで、インクジェット技術やスクリーニング技術等により、基板上に直接回路パターンを形成することが可能になりつつある。
有機高分子半導体を半導体層としたFET素子の技術としては、ポリアセチレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフラニレンビニレンおよびそれらの置換誘導体から選択されるFET素子(例えば特許文献1参照)や半導体層が第一のπ共役系高分子からなり、ソース電極が第二のπ共役系高分子から、ドレイン電極が第三のπ共役系高分子から、ゲート電極が第四のπ共役系高分子からなるFET素子(例えば特許文献2参照)が開示されている。
FET素子の性能を示す指標として移動度とオンオフ比が挙げられる。移動度の向上は、すなわち、オン電流を増加させることを意味する。一方、オンオフ比の向上は、オン電流を増加させるとともにオフ電流を減少させることを意味する。これらはどちらもFET素子のスイッチング特性が向上することであり、例えば液晶表示装置においては高コントラスト、高解像度を実現させることにつながる。液晶表示装置の場合、これらの値はソース−ドレイン間の電圧数V、ゲート電圧範囲±50V程度の条件で少なくとも移動度1×10-3 cm2/V・sec以上、オンオフ比1×105以上が求められる。
従来の技術では、有機高分子半導体を半導体層に用いるFET素子はこの移動度とオンオフ比の点で工業的要求に答えられる性能を達成することが困難であった。例えば上記の有機高分子半導体を用いたFET素子よりも性能の高いものとして、ポリチオフェンおよびその置換誘導体から選択されるFET素子が開示されている(特許文献3、非特許文献1参照)。その移動度が2.1×10-2cm2/V・secと実用性能に匹敵するものであるが、オンオフ比はNH3を暴露することで最大9×103にまで向上させているものの要求レベルに対しては不十分であった。
さらに、ポリ−3−ヘキシルチオフェンの半導体層上面を酸化シリコン膜とポリフェニレンビニレン誘導体膜を覆った構成のFET素子においてキャリア移動度約0.05cm2/V・sec、オンオフ比106以上の報告がなされている(非特許文献2参照)が、特殊な構成でのみ可能であり、しかも素子作製過程を窒素雰囲気下で行わなくてはいけない等の制約により作製について様々な点で問題があった。
半導体層にポリ−3−ヘキシルチオフェンを用いた電界効果型トランジスタのオンオフ比を向上させる発明として、ポリ−3−ヘキシルチオフェン中に含まれる不純物を超臨界状態のCO2を用いて抽出除去する方法(特許文献4)や、ポリ−3−ヘキシルチオフェン中に含まれる低分子量成分を濾過によって除去する方法(特許文献5参照)が示されている。この方法によってオンオフ比を1.2×103まで向上することが示されているが、工業的要求レベルには不十分であった。
半導体層に共役系重合体を用い、その中にカーボンナノチューブを分散させることによって移動度を向上させる方法(特許文献6参照)が開示されており、移動度を3×10-4にまで向上させている。
また、共役系重合体中に含まれる不純物量を減らして移動度を向上させる方法も知られている(非特許文献3参照)が、わずかに5倍程度であり、抜本的な改善には至っていない。
特開昭64−36076号公報(特許請求の範囲)
特開平1−259563号公報(特許請求の範囲)
特開平10−190001号公報(特許請求の範囲)
特開2003−347624号公報(特許請求の範囲)
特開2003−347552号公報(特許請求の範囲)
特開2003−96313号公報(特許請求の範囲)
「Applied Physics Letters」誌,vol.69,1996(1996年12月23日発行),p4108
「Science」誌,vol.280,1998(1998年6月12日発行),p1741
Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.42.P.6627-6628(2003年10月発行)
上述のように従来の有機高分子半導体を半導体層として用いた電界効果トランジスタはいずれも性能、作製方法、構成等の点で問題点があった。本発明の目的は、有機半導体層そのものの特性、すなわち移動度とオンオフ比の両方を向上させる素材の開発を目的とする。
本発明は上記本発明の目的を達成するために、以下の構成からなる。
(1)不純物量が1000ppm以下の共役系重合体と、カーボンナノチューブとからなる重合体コンポジット。
(2)共役系重合体中に含まれる不純物が、Zn、Niの少なくとも1種類であり、これら不純物の合計量が1000ppm以下である上記(1)記載の重合体コンポジット。
(3)共役系重合体がポリチオフェン系重合体を有する上記(1)記載の重合体コンポジット。
(4)不純物量が1000ppm以下の共役系重合体が、酸性液体を含む溶媒中に共役系重合体溶液を滴下して再沈殿することによって得られた共役系重合体である上記(1)記載の重合体コンポジット。
(5)不純物量が1000ppm以下の共役系重合体が、共役系重合体溶液をキレート樹脂に接触させることによって得られた共役系重合体である上記(1)記載の重合体コンポジット。
(6)カーボンナノチューブの含有率が0.1〜3重量%である上記(1)〜(5)のいずれか記載の重合体コンポジット。
(7)半導体層を有する電界効果型トランジスタであって、上記(1)〜(6)のいずれか記載の重合体コンポジットを用いる電界効果型トランジスタ。
(1)不純物量が1000ppm以下の共役系重合体と、カーボンナノチューブとからなる重合体コンポジット。
(2)共役系重合体中に含まれる不純物が、Zn、Niの少なくとも1種類であり、これら不純物の合計量が1000ppm以下である上記(1)記載の重合体コンポジット。
(3)共役系重合体がポリチオフェン系重合体を有する上記(1)記載の重合体コンポジット。
(4)不純物量が1000ppm以下の共役系重合体が、酸性液体を含む溶媒中に共役系重合体溶液を滴下して再沈殿することによって得られた共役系重合体である上記(1)記載の重合体コンポジット。
(5)不純物量が1000ppm以下の共役系重合体が、共役系重合体溶液をキレート樹脂に接触させることによって得られた共役系重合体である上記(1)記載の重合体コンポジット。
(6)カーボンナノチューブの含有率が0.1〜3重量%である上記(1)〜(5)のいずれか記載の重合体コンポジット。
(7)半導体層を有する電界効果型トランジスタであって、上記(1)〜(6)のいずれか記載の重合体コンポジットを用いる電界効果型トランジスタ。
本発明によれば、高性能な有機高分子半導体素材を提供することができ、本素材を半導体層として用いることで1×10-3cm2/V・sec以上の高移動度、かつ1×105以上の高オンオフ比を有する電界効果型トランジスタを提供することができる。
本発明は、不純物量が1000ppm以下の共役系重合体と、カーボンナノチューブ(以下、CNTと言う)とからなる重合体コンポジットであり、高性能な半導体特性を有している。特に該重合体コンポジットを電界効果型トランジスタ(以下、FETと略す)の半導体素材として用いた場合には、1×10-3cm2/V・sec以上の高移動度、かつ1×105以上の高オンオフ比を得ることができる。以下に重合体コンポジットと、FETの具体的な構成を述べる。
本発明においては、共役系重合体中に含まれる不純物量を制御することが重要である。ここで言う不純物とは主に共役系重合体を合成するときに用いた原料や副生成物であり、これらが多く残存していると共役系重合体本来の性能を発揮することができなくなる。例えば不純物が多く残存している場合には、FET素子においてオフ電流の制御が困難となりオンオフ比は著しく低下してしまう。したがって、共役系重合体中に含まれる不純物量をある濃度以下に低減させることが必要となる。
他方、共役系重合体中にCNTを分散することで半導体特性を向上でき、例えばポリ−3−ヘキシルチオフェンにCNTを分散することによって移動度を2桁向上できる。
さらに本発明では共役系重合体中に含まれる不純物量を1000ppm以下に制御し、さらに共役系重合体中にCNTを分散させることで、1×10-3cm2/V・sec以上の高移動度と1×105以上の高オンオフ比を達成できるものである。
これまでの発明においては、オンオフ比のみを、あるいは移動度のみを向上させることは示されてきたが、オンオフ比と移動度をともに向上させる例は示されていなかった。なぜならば、一般にはオンオフ比と移動度はトレードオフの関係にあり、例えばオンオフ比を上げると移動度が低下する傾向にあるためである。すなわち、オンオフ比Rは下式で表される(「Synthetic Metals」誌、vol.68、(1994年12月発行)、p65)。
R〜1+CiVd(μ/2σt) (1)
ここで、Ciはゲート絶縁層の容量、Vsdはソースドレイン間の電圧、μは移動度、σは電導度、tは活性層の厚みである。一般に有機半導体ではμはσのγ乗に比例し、かつγは1以下で0.76程度である。この関係と(1)式から、移動度を増加させると、オンオフ比Rが低下することがわかる。共役系重合体中に含まれる不純物量を低減させることによって、オンオフ比を4.5×100から4.0×104まで向上できるが、逆に移動度が8.9×10-3から7.4×10-4にまで低下することが示される。したがって本発明は、これまでに知られてきたオンオフ比と移動度がトレードオフになるという関係に当てはまらないものである。
ここで、Ciはゲート絶縁層の容量、Vsdはソースドレイン間の電圧、μは移動度、σは電導度、tは活性層の厚みである。一般に有機半導体ではμはσのγ乗に比例し、かつγは1以下で0.76程度である。この関係と(1)式から、移動度を増加させると、オンオフ比Rが低下することがわかる。共役系重合体中に含まれる不純物量を低減させることによって、オンオフ比を4.5×100から4.0×104まで向上できるが、逆に移動度が8.9×10-3から7.4×10-4にまで低下することが示される。したがって本発明は、これまでに知られてきたオンオフ比と移動度がトレードオフになるという関係に当てはまらないものである。
本発明において共役系重合体中に含まれる不純物量を1000ppm以下にすることが必要である。この場合には、キャリアが不純物によってトラップされる確率が減少するために高移動度と高オンオフ比の両立が達成できるものと考えられる。一方、不純物量が1000ppmよりも多い場合には、オンオフ比が1×105未満の特性しか得ることができない。
また、本発明の重合体コンポジットを用いたFET素子は高移動度と高オンオフ比を達成しただけでなく、試料作製バッチ毎の性能の再現性が得られる。一方不純物含有量が1000ppmよりも多い場合は、バッチ毎の再現性が得られない。これは共役系重合体中に含まれる不純物の量が局所的に異なっていることによると考えられる。
本発明に用いられる共役系重合体の種類は特に限定されないが、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリ−p−フェニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリピレン、ポリカルバゾール、ポリフラン、ポリインドール系のポリマーおよびオリゴマーが挙げられる。中でも膜形成の容易さから溶媒に可溶なものが好ましく、これらのポリマーまたはオリゴマーにアルキル鎖等の側鎖を有するものも好ましく用いられる。中でも半導体特性の優れたものとしてポリチオフェン系重合体を用いることが好ましい。ポリチオフェン系重合体とはポリチオフェン構造の骨格を持つ重合体に側鎖が付いた構造を有するものである。具体例としては、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリ−3−ブチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3−オクチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルチオフェン等のポリ−3−アルキルチオフェン(アルキル基の炭素数は特に制限はないが好ましくは1〜12)、ポリ−3−メトキシチオフェン、ポリ−3−エトキシチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシチオフェン等のポリ−3−アルコキシチオフェン(アルコキシ基の炭素数はとくに制限はないが好ましくは1〜12)、ポリ−3−メトキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシ−4−メチルチオフェン等のポリ−3−アルコキシ−4−アルキルチオフェン(アルコキシ基およびアルキル基の炭素数は特に制限はないが好ましくは1〜12)、ポリ−3−チオヘキシルチオフェンやポリ−3−チオドデシルチオフェン等のポリ−3−チオアルキルチオフェン(アルキル基の炭素数は特に制限はないが好ましくは1〜12)、ポリ−3、4−エチレンジオキシチオフェンが挙げられ、1種もしくは2種以上を用いることができる。中でも、ポリ−3−アルキルチオフェン、ポリ−3−アルコキシチオフェンが好ましく、前者としては特にポリ−3−ヘキシルチオフェンが好ましい。好ましい分子量は重量平均分子量で800〜100000である。共役系重合体の分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定することができ、ポリスチレンの標準試料に換算して重量平均分子量を求めることができる。また、上記重合体は必ずしも高分子量である必要はなく、オリゴマーであってもよい。さらにはチオフェンユニットが並んだ間にフルオレンユニットやカルバゾールユニットや、フタロシアニンユニットをはさんだポリマーやオリゴマーでもよく、共役系の連続するものであれば好ましく用いることができる。
本発明において用いられる上記のポリチオフェン系重合体の側鎖の結合様式はレジオレギュラーな構造を有するものが好ましく、少なくとも80%以上のレジオレギュラリティーを有するものが好ましく用いられる。レジオレギュラリティーとは、複数並んだモノマーユニットにおいて、側鎖の方向がどれだけ一方向に規則正しく並んで連結しているかを表す指標である。レジオレギュラリティーは核磁気共鳴分光装置(NMR)によって定量することが可能であり、レジオレギュラーの割合が高いほど良好な半導体特性を得ることができる。以上のように共役系重合体の主鎖の立体構造や側鎖置換基の配列を制御することは重要である。
本発明の共役系重合体の不純物を除去する方法は特に限定されないが、基本的には合成過程で使用した原料や副生成物を除去する精製工程であり、再沈殿法、ソクスレー抽出法、濾過法、イオン交換法、キレート法等を用いることができる。中でも低分子量成分を除去する場合には再沈殿法やソクスレー抽出法が好ましく用いられ、金属成分の除去には再沈殿法やキレート法、イオン交換法が好ましく用いられる。これらの方法のうちを1種を単独で用いるか、あるいは複数を組み合わせても良く、特に限定はされない。
ここで再沈殿法とは、共役系重合体を良溶媒に溶解し、該溶液を貧溶媒の中に滴下して、再び固体の共役系重合体を得る方法である。このとき不純物が貧溶媒中へ溶解拡散することで、精製が行われるので、貧溶媒の選定は重要である。一般的に用いられる再沈殿の溶媒は、良溶媒としてはテトラヒドロフランやトルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどが用いられ、貧溶媒としてメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールや、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、あるいは水等が用いられる。
本発明に用いる共役系重合体の合成には金属成分が用いられることがある。たとえばLi、Na、Ca、Fe、Ni、Znなどの金属成分が用いられた場合には、上記に示した貧溶媒では金属成分が除去できないことがある。そこで貧溶媒中に酸性の溶媒を混合することで効率良く金属成分を除去することができる。酸性の溶媒としては希塩酸、希硝酸、希硫酸、酢酸水溶液、シュウ酸水溶液などを用いることができ、中でも再沈殿後の酸性成分の除去を考慮すると希塩酸、希硝酸が好ましく用いられる。再沈殿を行う際、共役系重合体溶液の濃度や、共役系重合体溶液の量に対する貧溶媒の量の比率を任意に設定することができるが、好ましくは共役系重合体溶液濃度が100g/L以下、共役系重合体溶液量に対する貧溶媒の量の比率は5倍以上であることが好ましい。この条件で再沈殿を行うことによって、効率よく不純物の除去ができる。上述の条件で再沈殿すると、貧溶媒中で固体に戻った共役系重合体の粒子径は1mm以下になり、比表面積が増大するため不純物除去の効率が向上する。
ソクスレー抽出法は、加熱環流している貧溶媒中に共役系重合体を浸して不純物を抽出除去する方法である。貧溶媒にはメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールや、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、あるいは水等を用いることができる。共役系重合体は予め乳鉢等を用いて粉砕しておくか、再沈殿法によって比表面積を大きくしておくと効率よく不純物が除去できる。
濾過法は、重合体中に不純物濃度が10000ppm以上含まれるときに有効な方法で、共役系重合体溶液を孔径1μm以下、好ましくは0.2μm以下のフィルターを用いて濾過を行うことによって不純物の除去ができる。
キレート法はキレート樹脂を用いて共役系重合体中の不純物除去を行う方法である。キレート樹脂とは架橋ポリマーの側鎖に、遷移金属やアルカリ土類金属などの金属イオンやある種の陰イオンと配位結合して錯体を形成できる官能基を化学修飾したものであり、形態としては樹脂ビーズやゲル状にしたものがある。本発明では何れの形態のキレート樹脂を用いることができ、特に樹脂ビーズを好ましく用いることができる。共役系重合体溶液はキレート樹脂と接触することで共役系重合体中の不純物が除去されるが、その手法としては、ガラス管に充填したキレート樹脂中に共役系重合体溶液を通過させる方法や、ビーカーやサンプル管の中にキレート樹脂と共役系重合体溶液と入れ、撹拌した後に濾紙等でキレート樹脂を取り除く方法とがあり、何れの方法も好ましく用いることができる。一般にキレート樹脂は水系で用いられることが多く、共役系重合体を水溶液にしてキレート法を行うことができる。共役系重合体が水に不溶な場合には、キレート樹脂を共役系重合体の可溶な溶媒に置換して用いることができる。置換する溶媒としては水と相溶性のある溶媒を選択することが好ましく、例えばテトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ピリジン、アセトン、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、エチルセルソルブ、ブチルセロソルブ、等を用いることができる。さらに水と相溶性の無い溶媒、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン、クロロホルム、トリクロロエタン、トリクロルエチレン、ジクロロメタン、クロルベンゼンなどを用いる場合には、一度上述の水と相溶性のある溶媒で置換した後に、さらに溶媒置換をすると用いることができる。キレート法に用いる共役系重合体溶液の濃度や、共役系重合体の重量に対するキレート樹脂の重量比率は任意に設定できるが、好ましくは共役系重合体溶液の濃度は100g/L以下、共役系重合体の重量に対するキレート樹脂の重量比率は100以上にすることによって、効率よく不純物を除去することができる。キレート樹脂と接触させた共役系重合体溶液から共役系重合体のみを回収するには、溶媒の留去をする以外に、再沈殿によって回収する方法を行っても構わない。
イオン交換法はイオン交換体を用いて共役系重合体中の不純物除去を行う方法である。イオン交換体としてはイオン交換樹脂や無機イオン交換体があり、何れも好ましく用いることができる。無機イオン交換体は粒子状に、イオン交換樹脂は樹脂ビーズあるいはゲル状になっており、いずれにおいても共役系重合体溶液をイオン交換体と接触させ、不純物をイオン交換体に吸着除去させるものである。イオン交換樹脂には陽イオン交換タイプと陰イオン交換タイプのものとがあり、本発明には何れのタイプも用いられ、不純物の成分に応じて使い分けることができる。例えば金属成分を除去する場合には陽イオン交換樹脂を好ましく用いることができる。イオン交換法の手順はキレート法と同様であり、ガラス管に充填したイオン交換体に共役系重合体溶液を通過させる方法や、ビーカーやサンプル管の中にイオン交換体と共役系重合体溶液と入れ、撹拌した後に濾紙等でイオン交換体を取り除く方法とがあり、何れの方法も好ましく用いることができる。用いる溶媒についてもキレート法と同様である。
本発明の重合体コンポジットは共役系重合体をマトリックスとし、その中にCNTが分散されて成る。CNTを分散する方法は特に限定されないが、(I)溶融した共役系重合体中にCNTを添加して混合させる方法、(II)共役系重合体を溶媒中に溶解させこの中にCNTを添加して混合させる方法、(III)CNTを溶媒中で予め超音波等で予備分散しておいた所に共役系重合体を添加し混合させる方法、(IV)溶媒中に共役系重合体とCNTを入れ、この混合系に超音波を照射して混合させる方法等が挙げられる。本発明では、何れの方法を単独で用いるか、あるいは何れの方法を組み合わせても良く、特に限定されない。
本発明の重合体コンポジットにはCNTが含まれる。CNTには1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNTと、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNTと、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTとがあり、本発明においてはどれか1種を単独で、もしくは単層、2層、多層のうちの2種類または3種類を同時に用いることができる。CNTはその製造方法として、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法等、数種類あり製法によって直径や長さや直線性などの形態が少しずつ異なっている。本発明に用いられるCNTはいずれの方法によって得られたものであってもよい。
本発明の重合体コンポジットに含まれるCNTの重量分率は特に限定されないが、半導体特性を得るためには0.1〜3重量%であることが好ましい。0.1重量%よりも小さい場合には添加の効果が小さく、3%より高い重量分率ではコンポジットの導電率が過剰に増加するため半導体層として用いるには不適当となる。より好ましくは1重量%以下である。1重量%以下にすることで高移動度と高オンオフ比の両立が得やすくなる。このように最適なCNTの重量分率範囲内の重合体コンポジットを用いることによって半導体特性の向上を図ることができる。
上述のように本発明の重合体コンポジット中のCNT含有量は0.1〜3重量%であることが好ましく、一方で共役系重合体中に含まれる不純物の量は1000ppm以下、すなわち0.1重量%以下にすることが好ましい。この関係から明らかなように、本発明の重合体コンポジットの形態としては、重合体コンポジット中に含有するCNT量よりも、共役系重合体中に含まれる不純物の量を少なくすることが好ましい。こうすることで重合体コンポジット中へのCNT分散効果が発揮される。
重合体コンポジットを半導体層として用いる場合、塗膜の形態で用いられる場合が多く、スピンコート塗布、ブレードコート塗布、スリットダイコート塗布、スクリーン印刷塗布、バーコーター塗布、鋳型塗布、印刷転写法、浸漬引き上げ法など何れの方法を用いることができ、塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択すればよい。例えばスピンコート塗布を行う場合には重合体コンポジット溶液の濃度は1〜20g/Lにすると良く、この範囲にすることで厚み5〜200nmの塗膜を得ることができる。このとき、重合体コンポジットを溶解させる溶媒としてはテトラヒドロフランやトルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどが好ましく用いられる。
上述の方法によって得られた重合体コンポジットを半導体に用いる例の1つとして、FETについて説明する。図1は、本発明のFET素子の一例を示す模式断面図である。絶縁層3で覆われたゲート電極2を有する基板1上に、(A)では通常のフォトリソグラフィ技術および真空蒸着法やスパッタリング法を用いて金等のソース電極5およびドレイン電極6が形成された後、スピンコート法によってCNTが分散している有機高分子半導体の半導体層4が形成されている。また(B)では前記基板上にスピンコート法によってCNTが分散している有機高分子半導体の半導体層4が形成された後、マスク蒸着法等によって金等のソース電極5およびドレイン電極6が形成されている。
基板1としては、例えば、シリコンウエハー、ガラス、アルミナ焼結体等の無機材料、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン等の有機材料が使用可能である。ここで基板洗浄以外の基板表面を改善する処理は特に行なわなくとも本発明のFET素子は従来のFET素子よりも高性能となるが、例えばシリコンウエハー、ガラス基板等の酸化シリコン系基板の場合、シランカップリング剤に代表されるような表面改質剤で処理することによってFET素子の性能を上げる効果があることが知られており、本発明においてももちろんそのような表面処理を行うことも可能である。
ゲート電極2、ソース電極5およびドレイン電極6としては、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、低抵抗ポリシリコン、低抵抗アモルファスシリコン等の金属や錫酸化物、酸化インジウム、インジウム錫酸化物(ITO)、白金シリサイド、インジウムシリサイド等の無機化合物、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)等の有機化合物が使用できる。これらの材料を2種以上併用しても差し支えない。
上記ゲート電極2、ソース電極5およびドレイン電極6は蒸着、スパッタリング、めっき、各種CVD成長、スピンコート法とフォトリソグラフィ技術やエッチング等のいわゆる半導体プロセス技術、クラスタイオンビーム蒸着等により形成することができる。
前記の絶縁層3(ゲート絶縁膜)に用いる材料として、具体的には酸化シリコン、アルミナ等の無機材料、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン等の有機高分子材料、あるいは無機材料粉末と有機高分子材料の混合物を用いることができる。上記絶縁層は、スパッタリング、蒸着、スピンコート法等により形成することができる。
本発明において用いられるCNTは、長さが少なくともソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)よりも短いことが必要である。これよりも長い場合、電極間を短絡させる原因となり、FET素子作製には不適当である。他方、一般に市販されているCNTは長さに分布があり、チャネル長よりも長いCNTが含まれることがある。そこでCNTをチャネル長よりも短くする工程を加えたほうがよく、電極間の短絡を確実に防ぐことができる。
本発明では、CNTを溶媒中に均一分散させ、CNT分散液をフィルターを用いて濾過する工程を設けることが好ましい。フィルター孔径よりも小さいCNTを濾液から得ることで、ソース電極とドレイン電極間の距離よりも小さくしたカーボンナノチューブを効率よく得られることができる。
CNTを溶液中に均一分散させるには、溶媒中にCNTと共にドデシルスルホン酸ナトリウムなどの界面活性剤、またはコイル状構造を有する高分子、または共役系重合体を加え、超音波照射または加熱環流する方法が好ましく用いられる。FET素子の特性を向上させることを考慮すれば、より半導体特性の優れた物質を用いることが好ましく、共役系重合体を用いることが特に好ましい。中でも直鎖状の共役系重合体が好ましく用いられ、ポリ−3−アルキルチオフェンなどを用いることができる。
濾過に用いるフィルターは、チャネル長よりも小さい孔径を有するフィルターであれば、メンブレンフィルター、セルロース濾紙、ガラス繊維濾紙など何れの種類のフィルターも用いることができる。中でもメンブレンフィルターは、濾紙内部で吸着されるCNTの量を減らすことができるので、濾液から収率よくCNTを回収できるので好ましく用いることができる。
濾過に用いるフィルターの孔径は、チャネル長よりも小さければ良く、例えばチャネル長が20μmの場合は、孔径10μmのフィルターを用いることで電極間の短絡を確実に防ぐことができる。実際には孔径0.5〜10μmのフィルターを好ましく用いることができ、チャネル長に応じて使い分けることができる。
他にCNTを短小化する方法として、酸処理によってCNTそのものを短くする方法が知られており、本発明に用いることができる。この場合、CNTを硫酸と硝酸との混酸の中に加え、超音波照射するか、100℃以上の熱処理をすることで短小化されたCNTを得ることができる。また、過酸化水素水中で加熱する方法も用いることができる。これらの方法を行った場合は、後処理として孔径0.1〜1μmのフィルターを用いて処理されたCNTを濾別し、水洗することで、ソース電極とドレイン電極間の距離よりも小さくしたカーボンナノチューブを得ることができる。
半導体層の膜厚は特に限定されないが、中でも好ましくは10nm以上100nm以下がよい。この範囲以内であれば105以上のオンオフ比を実現することが可能になる。
この範囲以上に膜厚が大きいとゲート電圧によって制御できないソース・ドレイン間電流が増加してしまい、FET素子のオンオフ比を低下させる。またこの範囲以下ではキャリア移動度が減少してしまう問題がある。
この範囲以上に膜厚が大きいとゲート電圧によって制御できないソース・ドレイン間電流が増加してしまい、FET素子のオンオフ比を低下させる。またこの範囲以下ではキャリア移動度が減少してしまう問題がある。
このようにして形成されたFET素子は、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流をゲート電圧を変化させることによって制御することができ、その特性から下記の(1)式を用いて移動度を算出することができる。
μ=(δId/δVg)L・D/(W・εr・ε・Vsd) (1)
ただしIdはソース・ドレイン間の電流、Vsdはソース・ドレイン間の電圧、Vgはゲート電圧、Dは絶縁層の厚み、Lはチャネル長、Wはチャネル幅、εrは絶縁層の比誘電率(ここではSiO2の3.9を使用)、εは真空の誘電率(8.85×10-12F/m)である。
ただしIdはソース・ドレイン間の電流、Vsdはソース・ドレイン間の電圧、Vgはゲート電圧、Dは絶縁層の厚み、Lはチャネル長、Wはチャネル幅、εrは絶縁層の比誘電率(ここではSiO2の3.9を使用)、εは真空の誘電率(8.85×10-12F/m)である。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
ポリ−3−ヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製、レジオレギュラー、以下P3HTと略す)100mgをクロロホルム5mLの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製US−2、出力120W)中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得た。次いでこの溶液をスポイトにとり、メタノール20mLと0.1規定塩酸10mLの混合溶液の中に0.5mLづつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを0.1μm孔径のPTFE(4フッ化エチレン)製メンブレンフィルターによって濾別捕集し、メタノールで良くすすいだ後、真空乾燥により溶媒を除去した。さらにもう一度溶解と再沈殿を行い、90mgの再沈殿P3HTを得た。
ポリ−3−ヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製、レジオレギュラー、以下P3HTと略す)100mgをクロロホルム5mLの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製US−2、出力120W)中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得た。次いでこの溶液をスポイトにとり、メタノール20mLと0.1規定塩酸10mLの混合溶液の中に0.5mLづつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを0.1μm孔径のPTFE(4フッ化エチレン)製メンブレンフィルターによって濾別捕集し、メタノールで良くすすいだ後、真空乾燥により溶媒を除去した。さらにもう一度溶解と再沈殿を行い、90mgの再沈殿P3HTを得た。
再沈殿P3HT50mgを蒸発皿に取って500℃まで加熱し、焼成残さを希硝酸に溶解してICP(誘導結合プラズマ)により定量分析したところ、Znが110ppm、Niが18ppmであった。再沈殿を行う前のP3HTを同様にICPで定量分析したところZnが11000ppm、Niが360ppmであったことから、酸中へ再沈殿する処方によって、Znが元の1%、Niが元の5%にまで削減できており、P3HTの精製ができていることが確認された。
次に、再沈殿P3HT中に重量比で0.4%のCNTを分散させて、重合体コンポジットのクロロホルム溶液を調製した。まずCNT(CNI社製、単層CNT、純度95%、以下単層CNTという)0.6mgと、再沈殿P3HT0.6mgを30mLのクロロホルム中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(SONICS社製VCX−500)を用いて出力250Wで30分間超音波攪拌することで単層CNT分散液を得た。ついで該分散液を孔径10μmのPTFE製メンブレンフィルターを用いてろ過を行い、長さ10μm以上の単層CNTを除去した。得られた濾液1mL中に再沈殿P3HTを3mg加え、液温が45℃にして超音波洗浄機で30分間超音波攪拌し、重合体コンポジットのクロロホルム溶液を得た。
次いで、上述の重合体コンポジットのクロロホルム溶液をスピンコート塗布(1000rpm×10秒)して、図1に示すFET素子を作製した。基板1は熱酸化膜(膜厚300nm)付きのアンチモンドープシリコンウエハー(抵抗率0.02Ωcm以下)であり、基板であると同時に、ゲート電極2であり、熱酸化膜は絶縁層3となる。次にフォトリソグラフィー技術および真空蒸着法を用いて金のソース電極5およびドレイン電極6を形成した。これら両電極の幅(チャネル幅)は50cm、両電極の間隔(チャネル長)は20μm、電極高さは40nmとした。該電極形成基板上に上述の重合体コンポジットのクロロホルム溶液を0.1mL滴下し、スピンコート塗布(1000rpm×0.3sec)によって厚み25nmの半導体層を形成した。電極にリード線を取り付けた後、得られた素子を真空オーブン中で110℃、2時間の熱処理を行い、50℃以下になるまで徐冷してから大気解放し、FET素子を測定ボックスに移動させ、再び真空にして18h静置した。
次に、上記FET素子のゲート電圧(Vg)を変えたときのソース・ドレイン間電流(Id)−ソース・ドレイン間電圧(Vsd)特性を測定した。測定にはヒューレット・パッカード社製ピコアンメータ/ボルテージソース4140Bを用い、減圧下(1torr以下)で測定した。Vg=0〜−50Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から線形領域の移動度を求めたところ、6.12×10-3cm2/V・secであった。また、Vg=−50VのときのVsd=−5VにおけるIdの値と、Vg=+50VのときのVsd=−5VにおけるIdの値の比からオンオフ比を求めたところ2.64×105であった。
実施例2
実施例1で用いた単層CNTの酸処理による短小化処理を行った。単層CNT10mgを濃硫酸(和光純薬工業(株)製、純度95%以上)と60%硝酸(和光純薬工業(株)製、密度1.38)の体積比率が3:1の混酸20mLに入れ、超音波洗浄機を用いて20時間超音波攪拌処理を行い、単層CNTのカットを行った。次いで酸処理を終えた単層CNTを0.1μm孔径のポリ4フッ化エチレン(PTFE)メンブレンフィルター(ミリポアコーポレーション(株)製、フィルタータイプ:JH)で濾別し、水、エタノールの順で洗浄し、乾燥させることによりカット単層CNTを得た。次に、フィルター上のカット単層CNT0.6mgを再沈殿P3HT0.6mgの溶解したクロロホルム30mLの中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザーを用いて出力250Wで30分間超音波攪拌してカット単層CNT分散液を得た。得られたカット単層CNT分散液を1mL分取し、再沈殿P3HTを5mgを加え、超音波洗浄機を用いて30分間超音波攪拌することにより重合体コンポジットのクロロホルム溶液を調製した。得られた複合体溶液に含まれる単層CNTはP3HT量に対し0.4重量%であった。
実施例1で用いた単層CNTの酸処理による短小化処理を行った。単層CNT10mgを濃硫酸(和光純薬工業(株)製、純度95%以上)と60%硝酸(和光純薬工業(株)製、密度1.38)の体積比率が3:1の混酸20mLに入れ、超音波洗浄機を用いて20時間超音波攪拌処理を行い、単層CNTのカットを行った。次いで酸処理を終えた単層CNTを0.1μm孔径のポリ4フッ化エチレン(PTFE)メンブレンフィルター(ミリポアコーポレーション(株)製、フィルタータイプ:JH)で濾別し、水、エタノールの順で洗浄し、乾燥させることによりカット単層CNTを得た。次に、フィルター上のカット単層CNT0.6mgを再沈殿P3HT0.6mgの溶解したクロロホルム30mLの中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザーを用いて出力250Wで30分間超音波攪拌してカット単層CNT分散液を得た。得られたカット単層CNT分散液を1mL分取し、再沈殿P3HTを5mgを加え、超音波洗浄機を用いて30分間超音波攪拌することにより重合体コンポジットのクロロホルム溶液を調製した。得られた複合体溶液に含まれる単層CNTはP3HT量に対し0.4重量%であった。
該溶液を用い、実施例1に記載の方法に準じてFET素子を形成し、特性を測定したところ、移動度が2.02×10-3cm2/V・sec、オンオフ比が8.65×106であった。
実施例3
実施例1で得られた再沈殿P3HT100mgを5mLのテトラヒドロフラン(以下、THFと略す)中に加え、超音波洗浄機中を用いてP3HTのTHF溶液を得た。該溶液を、予めTHFに溶媒置換しておいたキレート樹脂(三菱化学(株)製ダイヤイオンCR−20)10mL中に入れ15分間撹拌した。撹拌終了後、キレート樹脂ビーズをセルロース濾紙を用いて除去し、濾液をエバポレートして固体のP3HTを回収した。さらにもう一度溶解とキレート樹脂中での撹拌操作を繰り返して、キレート樹脂撹拌P3HTを得た。得られたキレート樹脂撹拌P3HT中のZnとNiの含有量をICPを用いて定量したところ、Znが4.3ppm、Niが1.5ppmであり、再沈殿P3HTよりもさらにZnとNiが除去できていることが確認できた。
実施例1で得られた再沈殿P3HT100mgを5mLのテトラヒドロフラン(以下、THFと略す)中に加え、超音波洗浄機中を用いてP3HTのTHF溶液を得た。該溶液を、予めTHFに溶媒置換しておいたキレート樹脂(三菱化学(株)製ダイヤイオンCR−20)10mL中に入れ15分間撹拌した。撹拌終了後、キレート樹脂ビーズをセルロース濾紙を用いて除去し、濾液をエバポレートして固体のP3HTを回収した。さらにもう一度溶解とキレート樹脂中での撹拌操作を繰り返して、キレート樹脂撹拌P3HTを得た。得られたキレート樹脂撹拌P3HT中のZnとNiの含有量をICPを用いて定量したところ、Znが4.3ppm、Niが1.5ppmであり、再沈殿P3HTよりもさらにZnとNiが除去できていることが確認できた。
次いで、キレート樹脂撹拌P3HT中に、実施例2で得られたカット単層CNTを0.4重量%の割合になるよう分散して重合体コンポジットのクロロホルム溶液を調製した。該溶液を用い、実施例1に記載の方法に準じてFET素子を形成し、特性を測定したところ、移動度が3.78×10-3cm2/V・sec、オンオフ比が3.16×107であった。
実施例4
実施例1で用いたP3HTを100mgをトルエン5mLの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得、この溶液をスポイトにとり、アセトン20mLと0.1規定塩酸10mLの混合溶液の中に0.5mLづつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを0.1μm孔径のPTFE(4フッ化エチレン)製メンブレンフィルターによって濾別捕集し、メタノールで良くすすいだ後、真空乾燥により溶媒を除去した。さらにもう一度溶解と再沈殿を行い、90mgの再沈殿P3HTを得た。得られたキレート樹脂撹拌P3HT中のZnとNiの含有量をICPを用いて定量したところ、Znが850ppm、Niが80ppmであり、元ののP3HTよりもZnとNiが除去できていることが確認できた。
実施例1で用いたP3HTを100mgをトルエン5mLの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得、この溶液をスポイトにとり、アセトン20mLと0.1規定塩酸10mLの混合溶液の中に0.5mLづつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを0.1μm孔径のPTFE(4フッ化エチレン)製メンブレンフィルターによって濾別捕集し、メタノールで良くすすいだ後、真空乾燥により溶媒を除去した。さらにもう一度溶解と再沈殿を行い、90mgの再沈殿P3HTを得た。得られたキレート樹脂撹拌P3HT中のZnとNiの含有量をICPを用いて定量したところ、Znが850ppm、Niが80ppmであり、元ののP3HTよりもZnとNiが除去できていることが確認できた。
次いで、該再沈殿P3HT中に、実施例2で得られたカット単層CNTを0.4重量%の割合になるよう分散して重合体コンポジットのクロロホルム溶液を調製した。該溶液を用い、実施例1に記載の方法に準じてFET素子を形成し、特性を測定したところ、移動度が1.20×10-3cm2/V・sec、オンオフ比が1.02×105であった。
比較例1
P3HT100mgをクロロホルム5mLの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得た。次いでこの溶液をスポイトにとり、メタノール30mLの中に0.5mLづつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを円筒濾紙に移し、メタノールで24hソクスレー抽出を行った。得られたP3HTを真空乾燥により溶媒を除去し、95mgのソクスレー抽出P3HTを得た。ソクスレー抽出P3HTのZnとNiの含有量をICPを用いて定量をしたところ、Znが3100ppm、Niが290ppmであり、再沈殿P3HTよりもZnとNiが多く含まれていた。
P3HT100mgをクロロホルム5mLの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得た。次いでこの溶液をスポイトにとり、メタノール30mLの中に0.5mLづつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを円筒濾紙に移し、メタノールで24hソクスレー抽出を行った。得られたP3HTを真空乾燥により溶媒を除去し、95mgのソクスレー抽出P3HTを得た。ソクスレー抽出P3HTのZnとNiの含有量をICPを用いて定量をしたところ、Znが3100ppm、Niが290ppmであり、再沈殿P3HTよりもZnとNiが多く含まれていた。
次に、ソクスレー抽出P3HT中に重量比で0.4%のカットCNTを分散させて、重合体コンポジットのクロロホルム溶液を調製した。次いで、ソクスレー抽出P3HT中に、実施例2で得られたカット単層CNTを0.4重量%の割合になるよう分散して重合体コンポジットのクロロホルム溶液を調製した。該溶液を用い、実施例1に記載の方法に準じてFET素子を形成し、特性を測定したところ、移動度が2.13×10-3cm2/V・sec、オンオフ比が1.32×103であった。
比較例2
実施例1で用いたP3HTを精製せずにそのまま用い、該P3HT中に重量比で0.4%のカットCNTを分散して重合体コンポジットのクロロホルム溶液を調製した。実施例2で得られたカット単層CNTを0.4重量%の割合になるよう分散して重合体コンポジットのクロロホルム溶液を調製した。該溶液を用い、実施例1に記載の方法に準じてFET素子を形成し、特性を測定したところ、移動度が3.26×10-5cm2/V・sec、オンオフ比が7.66×100であった。
実施例1で用いたP3HTを精製せずにそのまま用い、該P3HT中に重量比で0.4%のカットCNTを分散して重合体コンポジットのクロロホルム溶液を調製した。実施例2で得られたカット単層CNTを0.4重量%の割合になるよう分散して重合体コンポジットのクロロホルム溶液を調製した。該溶液を用い、実施例1に記載の方法に準じてFET素子を形成し、特性を測定したところ、移動度が3.26×10-5cm2/V・sec、オンオフ比が7.66×100であった。
比較例3
実施例1で精製した再沈殿P3HT5mgをクロロホルム1mLに溶解させ、重合体のクロロホルム溶液を調製した。該溶液を用い、実施例1に記載の方法に準じてFET素子を形成し、特性を測定したところ、移動度が7.93×10-5cm2/V・sec、オンオフ比が1.94×104であった。
実施例1で精製した再沈殿P3HT5mgをクロロホルム1mLに溶解させ、重合体のクロロホルム溶液を調製した。該溶液を用い、実施例1に記載の方法に準じてFET素子を形成し、特性を測定したところ、移動度が7.93×10-5cm2/V・sec、オンオフ比が1.94×104であった。
比較例4
実施例1で用いたP3HTを精製せずにそのまま用い、クロロホルム1mLに溶解させ、重合体のクロロホルム溶液を調製した。該溶液を用い、実施例1に記載の方法に準じてFET素子を形成し、特性を測定したところ、移動度が8.90×10-3cm2/V・sec、オンオフ比が4.50×100であった。
実施例1で用いたP3HTを精製せずにそのまま用い、クロロホルム1mLに溶解させ、重合体のクロロホルム溶液を調製した。該溶液を用い、実施例1に記載の方法に準じてFET素子を形成し、特性を測定したところ、移動度が8.90×10-3cm2/V・sec、オンオフ比が4.50×100であった。
有機半導体を含有する電界効果型トランジスタや、その他有機トランジスタに好ましく用いられる。
1 基板
2 ゲート電極
3 絶縁層
4 半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
2 ゲート電極
3 絶縁層
4 半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
Claims (7)
- 不純物量が1000ppm以下の共役系重合体と、カーボンナノチューブとからなる重合体コンポジット。
- 共役系重合体中に含まれる不純物が、Zn、Niの少なくとも1種類であり、これら不純物の合計量が1000ppm以下である請求項1の重合体コンポジット。
- 共役系重合体がポリチオフェン系重合体を有する請求項1記載の重合体コンポジット。
- 不純物量が1000ppm以下の共役系重合体が、酸性液体を含む溶媒中に共役系重合体溶液を滴下して再沈殿することによって得られた共役系重合体である請求項1記載の重合体コンポジット。
- 不純物量が1000ppm以下の共役系重合体が、共役系重合体溶液をキレート樹脂に接触させることによって得られた共役系重合体である請求項1記載の重合体コンポジット。
- カーボンナノチューブの含有率が0.1〜3重量%である請求項1〜5のいずれか記載の重合体コンポジット。
- 半導体層を有する電界効果化型トランジスタであって請求項1〜6のいずれか記載の重合体コンポジットを用いる電界効果型トランジスタ。
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