JP2005266296A - 光学用複合板及びそれを用いたカラー液晶プロジェクタ並びにその放熱方法 - Google Patents

光学用複合板及びそれを用いたカラー液晶プロジェクタ並びにその放熱方法 Download PDF

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Abstract

【課題】偏光フィルム及び位相差フィルムに優れた放熱性を付与し、かかる光学用フィルムを用いた偏光板及び/又は位相差板を配した、明るさと耐久性が良く高コントラストで均一性に優れた画像を長時間安定的に表示できるカラー液晶プロジェクタを提供すること。
【解決手段】光学用フィルムaの少なくとも片面に、可視光線透過率が該光学用フィルムより大きく(90%以上)、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が該光学用フィルムより小さく(日射熱吸収率が0.01〜11%、放射熱吸収率が0.01〜20%)、熱容量が該光学用フィルムより小さい(該光学用フィルムに対して10%以下の)被膜bを形成し、該被膜表面に空気等の冷却流体cを接触させて高温となった光学用フィルムを放熱させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、新規な光学用複合板に関する。詳しくは、本発明は、カラー液晶プロジェクタ用偏光板又は位相差板として用いられるものであって、放熱性を格段に向上させた高放熱性の光学用複合板、及びそれらを配したカラー液晶プロジェクタ、並びに前記光学用複合板の放熱方法に関する。
カラー液晶投射型ディスプレイ、即ち一般にカラー液晶プロジェクタと呼ばれるものの液晶画像形成部には、偏光板及び位相差板が使用されている。
偏光板としては、従来から偏光性能の良好なニュートラルグレーの沃素系偏光板が使用されていた。しかし、沃素系偏光板は沃素が偏光子であるが故に耐光性、耐湿熱性が十分でないという問題がある。この問題を解決するため、染料系の二色性色素を偏光子とした偏光板が使用されるようになってきた。
しかしながら、カラー液晶プロジェクタは、その液晶画像形成部に光を投射して画像を作るため、長時間使用すると、前記偏光板及び位相差板は、光や熱を大幅に吸収して高温となり、均一な画像が得られなくなる場合がある。
特に、カラー液晶プロジェクタの場合、光源からの輝度が強いため、上記偏光板又は位相差板に熱が蓄積しやすく、該光学部品が容易に高温となる傾向が強い。
この問題を解決するため光源の輝度を低くすると、該光学用フィルムに光が大幅に吸収されるなどして画像が暗くなりやすい。また、そもそも1〜6インチの小面積の画像を数10〜数100インチ程度まで拡大するため、画像における明るさの低減はさけられない。
そのため、光源の輝度を低くすることは困難であり、逆に、近年さらに画像自体のより一層の明るさや鮮明さを求める要望も強まっていることから、光源としてより高い輝度のものを使うことが求められる。さらに、最近のカラー液晶プロジェクタの小型化、軽量化の要請により、使用する光源強度は益々強くなる傾向にある。
このように、上述したカラー液晶プロジェクタに用いられる偏光板及び/又は位相差板は、使用する光源強度が益々強くなっていることから、いっそう優れた耐久性および放熱性と映像の均一性を兼ね備えたものが望まれ、またそのような偏光板及び/又は位相差板を配したカラー液晶プロジェクタへの要望が強くなっている。
ところで一般に、物質の放熱性を高める方法としては、金属などの場合は、その放熱面積を大きくさせる方法としてアルマイト加工やブラスト加工及びフィンの数量を多くする方法(特開平11−238837)、そして、その放熱フィンの包絡面を湾曲させ放熱フィンを通り抜ける冷却風の速度と量を増加させる方法(特開平10−242357)、放熱フィンの熱容量を小さくさせる方法(特開平10−116942)、及び表面に水膜を形成させ蒸発熱を利用して冷却を促進する方法(特公平6−3335)などが行われている。
さらに、金属の放熱性を高めてヒートシンクの放熱を向上させるために、ファンとフィンを組み合わせた空冷方式と水を用いた水冷方式及び放熱フィン側にペルチェ素子を用いた冷却方法(特開平10−318624)などがある。
また、本発明者は先に、ガラス板の少なくとも片面に特定条件を満たす被膜を形成した光学用放熱ガラスを提案した(特願2003−282251)。
しかし、偏光板に用いられる偏光フィルムや位相差板に用いられる位相差フィルムなどの光学用フィルムの場合は、ブラスト加工やフィルムにフィンを設けて放熱性を向上させることは技術的に可能であるが、これらの方法を用いて放熱を行うと光学用として用いるフィルム本来の機能まで失ってしまう。また、フィルム自体の熱容量を小さくするためにフィルムの厚さを薄くすればよいが、機械的な強度が低下し、破損しやすくなる問題がある。
特開平11−238837 特開平10−242357 特開平10−116942 特公平06−003335 特開平10−318624 特願2003−282251
本発明は、カラー液晶プロジェクタに用いられる偏光板又は位相差板であって、最近のカラー液晶プロジェクタの小型化・軽量化、及び光源の強度化の要請にも応えうる、優れた耐久性および放熱性と映像の均一性とを兼ね備えたものを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため種々検討した結果、かかる偏光板及び/又は位相差板として用いられる偏光フィルム及び位相差フィルムからなる群から選択される光学用フィルムの少なくとも片面に、可視光線透過率が前記光学用フィルムのそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに前記光学用フィルムのそれより小さい被膜を、その熱容量が前記光学用フィルムのそれより小さくなるように形成して光学用複合板(偏光板及び位相差板)とし、その被膜面に冷却流体を接触させてその温度を低下させることで、1)偏光板及び位相差板の放熱性が格段に向上し、その温度が低下すること、2)偏光板及び位相差板の温度を低下させることにより、その寿命を伸ばすことができること、及び3)偏光板及び位相差板の面内の温度を均一にさせることができ、これによりカラー液晶プロジェクタに配し、スクリーンに投射したときの映像の均一性を向上させることができること、といった格別の効果が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(6)に示す光学用複合板、(7)〜(9)に示すカラー液晶プロジェクタ、及び(10)〜(13)に示す放熱方法に関する。
(1) カラー液晶プロジェクタ用偏光フィルム及び位相差フィルムからなる群から選択される光学用フィルムと、該光学用フィルムの少なくとも片面に形成された被膜とからなる光学用複合板であって、前記被膜の可視光線透過率が前記光学用フィルムのそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに前記光学用フィルムのそれより小さく、且つ熱容量が前記光学用フィルムのそれより小さいことを特徴とする、光学用複合板。
(2) 前記被膜の可視光線透過率が90%以上、日射熱吸収率が0.01%〜11%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01%〜20%で、かつ、該被膜の熱容量が前記光学用フィルムの熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、(1)記載の光学用複合板。
(3) 前記被膜の可視光線透過率が94.2%以上、日射熱吸収率が0.02%〜16.9%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.47%〜16.9%であって、かつ、該被膜の熱容量が前記光学用フィルムの熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、(1)記載の光学用複合板。
(4) 前記被膜の厚みが0.01〜70μmであることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の光学用複合板。
(5) 光学用フィルムとしてカラー液晶プロジェクタ用偏光フィルムを用いたカラー液晶プロジェクタ用偏光板であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の光学用複合板。
(6) 光学用フィルムとしてカラー液晶プロジェクタ用位相差フィルムを用いたカラー液晶プロジェクタ用位相差板であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の光学用複合板。
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載の光学用複合板を、液晶表示パネルの入射側及び/又は出射側に配したカラー液晶プロジェクタ。
(8) 前記光学用複合板がカラー液晶プロジェクタ用偏光板である、(7)記載のカラー液晶プロジェクタ。
(9) 前記光学用複合板がカラー液晶プロジェクタ用位相差板である、(7)記載のカラー液晶プロジェクタ。
(10) カラー液晶プロジェクタ用偏光フィルム及び位相差フィルムからなる群から選択される光学用フィルムと、該光学用フィルムの少なくとも片面に形成された被膜であって前記被膜の可視光線透過率が前記光学用フィルムのそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに前記光学用フィルムのそれより小さく、且つ熱容量が前記光学用フィルムのそれより小さい被膜とからなる光学用複合板の放熱方法において、該被膜表面に冷却流体を接触させることを特徴とする、光学用複合板の放熱方法。
(11) 前記被膜の可視光線透過率が90%以上、日射熱吸収率が0.01%〜11%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01%〜20%で、かつ、該被膜の熱容量が前記光学用フィルムの熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、(10)記載の放熱方法。
(12) 前記被膜の可視光線透過率が94.2%以上、日射熱吸収率が0.02%〜16.9%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.47%〜16.9%であって、かつ、該被膜の熱容量が前記光学用フィルムの熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、(10)記載の放熱方法。
(13) 冷却流体が冷却空気又は冷却水であることを特徴とする、(10)〜(12)のいずれかに記載の放熱方法。
本発明によれば、光源からの光線の照射を受けて高温となった偏光フィルムや位相差フィルム等の光学用フィルムからの放熱を促進させるために、該光学用フィルムの片面又は両面に、可視光線透過率が該フィルムのそれより大きく日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに該フィルムのそれより小さい被膜を、その熱容量がフィルムのそれより小さくなるように形成した光学用複合板を用い、被膜面に冷却流体を接触させながら、対流熱伝達による放熱を促進させることによって、光学用フィルムの温度上昇を抑制することができる。すなわち、本発明の光学用複合板は、偏光板及び位相差板本来の機能を損なわずに該光学用フィルムからの放熱を有効に促進できる高放熱性光学用複合板である。
各種の光源から投射される波長の範囲は、照明機器の種類により異なるが、通常、紫外線領域、可視光線領域、近赤外線領域、遠赤外線領域の波長が総合的あるいは選択的に照射される。通常、フィルムは、可視光線、近赤外線、遠赤外線を透過する。しかし、着色された光学用フィルムは、色の種類によっても異なるが、紫外線領域、可視光線領域、近赤外線領域、遠赤外線領域の波長を吸収して発熱する。
すなわち、このように光源から光学用フィルムに照射される放射熱は、光学用フィルムの種類により異なるが、一部は透過し、一部は反射して、残りは光学用フィルムに吸収されて該フィルムの温度を上昇させる。そして、光源の輝度が高いほど吸収は大きくなり、温度上昇は大きくなって高温となる。
光学用フィルムに吸収された熱は、フィルム表面から対流、放射により外気へ放熱される。すなわち、高温となった光学用フィルムから空気中に伝達される熱は、フィルム中を伝導で伝達し、フィルム表面から対流、放射により空気中へ伝達される。したがって、フィルムからの放熱性を向上させるには、対流熱伝達あるいは放射熱伝達を大きくすれば良い。
放射熱伝達を大きくするには放射率を大きくすれば良い。すなわち、放射熱吸収率を大きくすれば良い。通常、偏光フィルムや位相差フィルム等の光学用フィルムは着色されているので、ほとんどの波長を吸収し放射率は大きい。
しかし、光学用フィルムは、常に光源から投射されている光線を吸収するので、放射により放熱される熱より吸収される熱が多く、光学用フィルムの温度は上昇しつづける。よって、光学用フィルムの放射率を大きくして放熱性を向上させることは難しい。
次に、熱容量を考えると、同じ箱の中に配置された同じ材質かつ形状の物体は、その大きさ、すなわち熱容量が小さければ温度が早く下がり、また早く上がる。
また、冷却流体を用いて物体を冷却すると、物体に接する冷却流体の量すなわち冷却流体の熱容量は、小さな物体に対しては大きくなり、大きな物体に対しては相対的に小さくなる。つまり、物体の温度の上昇や下降は、物体の大きさや物体に接する流体の量にも関係するといえる。
したがって、フィルム本来の機能を損なわずに放熱性を向上させるには、つまり、放射率を大きくさせずに放熱性を向上させるには、物体の熱容量を冷却流体に対し相対的に小さくさせることで冷却効果を上げられると考えられる。つまり、可視光線帯域と赤外線帯域の吸収、反射が小さい物質、すなわち、可視光線帯域と赤外線帯域の透過が大きい物質を用いて光学用フィルムの片面あるいは両面に、該フィルムに対して熱容量が小さくなるように被膜を形成すれば、光学用フィルム本来の機能を低下させずに放熱性を向上させることができると考えられる。
本発明は、このような知見に基づき、実験により被膜の可視光線透過率、日射熱吸収率、常温熱放射における波長域の吸収率および該被膜の光学用フィルムに対する熱容量の割合などの関連を見出した結果、完成するにいたったものである。
本発明によれば、カラー液晶プロジェクタ用偏光板及び位相差板の放熱性が格段に向上し、その温度を容易に低下させることができるため、その寿命をいっそう伸ばすことが可能となり、また偏光板及び位相差板の面内の温度を均一にさせることができるため、これによりカラー液晶プロジェクタに配し、スクリーンに投射したときの映像の均一性を向上させることができる。
1.光学用複合板
本発明の光学用複合板は、カラー液晶プロジェクタ用偏光フィルム及び位相差フィルムからなる群から選択される光学用フィルムと、該光学用フィルムの表面の少なくとも一部に形成された被膜とからなるものである。
(1)光学用フィルム
(a)光学用フィルムの材質
本発明で用いられる光学用フィルムのうち、偏光フィルムは、沃素系でも染料系でもよいが、より高い耐久性を考慮すると染料系が好ましい。このような偏光フィルムは、沃素や二色性染料で高分子フィルムを染色し、ついでその高分子フィルムを一軸延伸することにより、また必要に応じこの延伸フィルムを二枚の支持フィルムで狭持することにより、製造することができる。高分子フィルムを一軸延伸した後、沃素や二色性染料で染色することによっても、染色と一軸延伸を同時に行っても良い。高分子フィルムの一軸延伸としては、例えば湿式法、乾式法などがあげられる。延伸は4〜5倍程度が普通である。
延伸したフィルムの光学特性は、染色する沃素や二色性染料によって違いがあるが、分光光度計で偏光光源にて測定した場合、下記透過率特性の偏光板が用いられる。広帯域用偏光板の場合、420nm〜680nmにおける平行透過率が50〜100%、好ましくは80〜100%程度が好ましく、直交透過率が0〜80%、好ましくは0〜5%程度が好ましい。赤用偏光板の場合、580〜680nmにおける平行透過率が50〜100%、好ましくは80〜100%程度が好ましく、直交透過率が0〜80%、好ましくは0〜5%程度が好ましい。緑用偏光板の場合、500〜580nmにおける平行透過率が50〜100%、好ましくは80〜100%程度が好ましく、直交透過率が0〜80%、好ましくは0〜5%程度が好ましい。青用偏光板の場合、420〜500nmにおける平行透過率が50〜100%、好ましくは80〜100%程度が好ましく、直交透過率が0〜80%、好ましくは0〜5%程度が好ましい。
高分子フィルムとしては、例えばPVA(ポリビニルアルコール)系膜、このPVA系膜をエチレン、プロピレンのようなオレフィンや、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸などで変性したもの、EVA(エチレン/ビニルアルコール共重合体)樹脂、ケン化EVA樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂等の偏光膜基材が挙げられるが、PVA系膜が、染料の吸着性や配向性の点から、好ましい。PVA系膜としては、例えばPVA膜、ポリビニルブチラール膜等があげられるが、PVA膜が好ましい。偏光膜の膜厚は10〜50μ、好ましくは25〜35μ程度が好ましい。
偏光膜のみでも偏光機能は有するが、強烈な光線照射、高温または高温高湿の過酷な環境条件に対して十分高い耐久性を付与する為に、好ましくは紫外線吸収剤を含有するトリアセチルセルロース等の支持フィルムを両面より積層接着して偏光フィルムとするのが好ましい。支持フィルムとしては、例えばTAC(トリアセチルセルロース)等のセルロースアセテート系フィルムやアクリル系フィルム、四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン系共重合体のようなフッ素系フィルム、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂もしくはポリアミド系樹脂からなるフィルム処理したものがあげられるが、TACフィルムが好ましい。この支持フィルムの膜厚は、30〜250μm、好ましくは50〜190μm程度がよい。
本発明で用いられる位相差フィルムには、1/2波長板、1/4波長板、1/4波長板より更に低い位相差を有する低位相差フィルム等があげられる。1/2波長板、1/4波長板にはポラテクノ社製の商品名「NR」(ポリビニルアルコール系)や商品名「HPC」(ポリカーボネート系)や商品名「WBR」(広帯域用)などがある。低位相差フィルムにはトリアセチルセルロース系、ジアセチルセルロース系、ポリカーボネート系、ポリオレフィン系等の、位相差値が2〜100nm程度の位相差フィルムがある。また、液晶フィルムには富士写真フィルム社製の商品名「WVA」や日石化学社製の商品名「NH」などがある。このような位相差フィルムの膜厚は50〜300μm程度が好ましい。
(b)光学用フィルムの構造
本発明の偏光フィルムおよび位相差フィルムの大きさは、各々用途や目的に応じた所望の大きさで良く、例えば一辺または径が5〜300mm、好ましくは20〜200mm程度である。その形状は長方形、正方形、円形等、特に制限はないが、通常は長方形が好ましい。
また、本発明で使用する偏光フィルムおよび位相差フィルムからなる群から選択される光学用フィルムの表面には、透明な保護膜を設けても良い。保護膜としては、例えばアクリル系やポリシロキサン系のハードコート膜やウレタン系の膜等があげられる。また、この保護膜の上にAR(反射防止)層を設けても良い。AR層としては、例えば二酸化珪素、酸化チタン等の物質を蒸着またはスパッタリング処理によって形成することができ、また、フッ素系物質を薄く塗布することにより形成することができる。
本発明で使用する光学用フィルムの厚みは特に限定されないが、前記偏光フィルムや位相差フィルムに、必要に応じて支持フィルム、保護膜、AR層等を設けた場合の全体の厚みは、好ましくは0.1〜1mm、より好ましくは0.1〜0.3mm程度である。
また、本発明で用いられる偏光フィルムおよび位相差フィルムからなる群から選択される光学用フィルムは、ガラス等の基板からなる支持体の上に貼付されたものであってもよい。このように支持体に貼付することにより、透過する偏光の偏光状態を維持することができ、映像コントラストをよりはっきりさせることができる。
かかる支持体としては、通常、青板ガラス、白板ガラス、ホウケイ酸ガラス、BK−7等の非晶質ガラスおよびサファイア基板および水晶基板およびYAG基板および石英基板等のガラス基板が使用される。
このようなガラス基板の形状は特に制限はないが、長方形、正方形、円形等の板状又は直方体もしくは立方体であり、通常は長方形等の板状又は直方体が好ましい。また、その大きさは用途又は目的に応じた所望の大きさで良く、特に限定されるものではないが、例えば板状の場合は、一辺または径が5〜300mm、好ましくは10〜200mm程度がよく、またその厚さは0.1〜5mm、好ましくは0.3〜2mm程度がよい。
この板状基板は偏光板、位相差板の支持のための透明基板の他に、フラット状の偏光ビームスプリッタの機能を有する基板であってもよい。
また直方体の硝材の場合には、一辺が5〜300mm好ましくは10〜200mmの直方体または立方体形状で、キュービック状の色合成用ダイクロイックミラー付きクロスプリズムまたはキュービック状の偏光ビームスプリッタであってもよい。
また、本発明の偏光板又は位相差板が偏光フィルム又は位相差フィルムを上記基板からなる支持体に貼付したものである場合、単板光透過率をより向上させるために、該基板面または光学用フィルム面の一方もしくは双方の面にAR層を設けることが好ましい。
また、本発明においては、上記のカラー液晶プロジェクタ用偏光フィルムに位相差フィルムを付加させたものであっても良い。偏光フィルムに位相差フィルムを付加させることで、映像の明るさがより向上し、色相がより鮮明となり、コントラストも向上する。また、カラー液晶プロジェクタの3原色光集光部における集光漏れによる3原色のクロストークを防止することができる。
(2)被膜
本発明で光学用フィルムの片面又は両面に形成される被膜は、その可視光線透過率が該光学用フィルムのそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに該光学用フィルムのそれより小さく、且つ熱容量が該光学用フィルムのそれより小さいものである。
(a)可視光線透過率、日射熱吸収率及び放射熱吸収率、熱容量
上述したように、本発明は、次のような知見に基づくものである。すなわち、光学用フィルム本来の可視光線帯域の透明度を損なわずに該光学用フィルムの放熱性を向上させるには、放射熱伝達を大きくさせる方法、例えば該光学用フィルム表面に放射率の大きい被膜を形成させる方法や、可視光線の透明度や透過性を損なうブラスト加工やフィンの増設などで表面積を大きくさせる方法は、むしろ実用的ではなく、逆に、放射率(放射熱吸収率)を大きくさせずに、該光学用フィルムの熱容量を冷却流体に対し相対的に小さくさせ、対流熱伝達を大きくさせることで、冷却効果を格段に高めることができる、というものである。以下に、本発明に基づく放熱処理の原理について説明する。
<放射熱伝達>
以下に放熱の原理について述べる。
通常、金属のような物体は、放射熱の一部を吸収して、他をすべて反射するので吸収率α、反射率ρの間に次の関係式「α+ρ=1」が成り立ち、可視光線、赤外線帯域において透過しないことが分かる。しかし、ガラスやプラスチックスなどの物体は、放射熱を一部吸収し、一部反射し、一部透過する灰色体である。このような灰色体の場合は、吸収率α、反射率ρ及び透過率τの間に次の関係式「α+ρ+τ=1」が成り立ち、可視光線、赤外線帯域において透過することが分かる。
また、放射熱伝達における放射熱Qは、次の式で表わされ、これは真空中においても伝達可能である。
(数1)
Q=σ・ε・(T/100)4
ただし、σはステファン・ボルツマン定数、εは物体の放射率、Tは物体の絶対温度である。この式から明らかなように、放射率を大きくすればその物体から放射される熱量は多くなる。
また、放射による熱伝達Q2は、物体表面から低温帯域の物体及び流体に伝達される。これを式で表わすと次のようになる。
(数2)
2=σ×f(ε)×[(Tr/100)4−(T0/100)4
ただし、σはステファン・ボルツマン定数、f(ε)は物体間の放射伝熱の放射係数、Trは物体の表面温度(K)、T0は低温帯域の物体の表面温度(K)である。この式から明らかなように、物体表面間の放射伝熱の放射係数を大きくすればその物体間の放射熱伝達量は増大する。
通常、偏光フィルムや位相差フィルムに用いられるプラスチックスは可視光線、近赤外線、遠赤外線を透過、反射、吸収する。すなわち、プラスチックスからの放射熱伝達を大きくするには、可視光線や近赤外線、遠赤外線を吸収させて放射率を大きくさせなければならない。
また、プラスチックスの温度を上昇させないためには、反射をさせればよいが、一般的には、近赤外線帯域で反射率の大きい金属やセラミックスなどの物質は、可視光線などの各波長域でも同じように反射する。
つまり、反射率の大きい金属を用いて反射率を大きくさせると可視光線帯域まで反射し、偏光板や位相差板としての機能まで損なってしまう。また、その反射した光が隔壁や光源などにも反射して乱反射が起こるという欠点がある。
そして、赤外線帯域を吸収させる赤外線吸収剤なども同様であり、赤外線帯域における放射熱吸収率を大きくさせようとすると、可視光帯域における吸収率まで大きくなり可視光帯域の透明度まで低くなってしまう。
したがって、可視光線帯域から2.5μmまでの近赤外線だけを選択的に吸収させたり反射させたりすれば可視光線の透明度や透過性を損なうことはないが、現在の技術においては非常に難しい。
また、密閉された領域と外気の隔壁としてプラスチックスを用いる場合、プラスチックスの放射熱吸収率すなわち放射率が大きいと、放射熱を多く吸収して内部や外部の温度より高くなる。そして、プラスチックス表面から密閉された内部と外部へ対流熱伝達と放射熱伝達により熱は、伝達される。そして、密閉された内部の温度は上昇する。
密閉された内部における熱伝達は、対流熱伝達より放射熱伝達が大きいため、放射率の小さい被膜をプラスチックスの中側に形成すると、高温となったプラスチックスから内部への放射による熱伝達が軽減され、内部温度の上昇を抑えられる。
そして、外気側には放射熱伝達率が大きい被膜を形成させれば外気への放射による放熱は増大するが、可視光線の透明度や透過性まで失い、透明プラスチックス本来の機能まで損なってしまう。
したがって、プラスチックスからの放熱を向上させるには、プラスチックス表面に放射率の大きい被膜を形成させたり、可視光線の透明度や透過性を損なうブラスト加工やフィンなどで表面積を大きくさせたりする方法を用いて放熱性を向上させることは実用的ではないため、対流熱伝達を大きくさせる方法が必要である。
<対流熱伝達>
次に、対流熱伝達について述べる。
物体に冷却流体を接触させて冷却を行う場合は、通常、冷却効果を大きくさせるために、冷却流体の流速を上げている。すなわち、流体の熱輸送能力を大きくさせて冷却効果を大きくさせている。
流体の熱輸送能力は、A(断面積:cm2)×u(速度:cm/s)×D(密度:g/cm3)×C(比熱:cal/g・℃)で与えられる流体の体積、密度、比熱の関数である。すなわち、熱輸送能力とは、時間当たりの熱容量(cal/℃)と同じであるといえる。
通常、空気の冷却効果は水に対し小さい。これは、空気の熱容量が水の熱容量に対し小さいためである。
空気による冷却効果を高めるためにファンを用いてプラスチックスに送風することは、プラスチックス周辺の高温となった空気を除去し、低温の空気を接触させて放熱させることであるが、これは、プラスチックスに接する空気の風量を増加させることでもある。つまり、ファンを用いて送風することは、空気の熱容量を大きくさせることと同じといえる。
冷却効果を高めるためにプラスチックスの熱容量を小さくさせる方法があるが、これは空気と接するプラスチックスの熱容量を小さくさせることにより、空気の量が同じでも空気の熱容量がプラスチックスの熱容量に対し相対的に大きくなり、放熱効果を向上させる技術である。
また、熱は温度が高い物体から対流、放射により低温の外気へ伝達される。そして、同一面積の場合、放射により伝達される熱は、その物体の放射率により決まるが、対流による熱伝達は、その物体に接する流体の状態に大きく影響される。
高温の物体から低温の流体への熱伝達は、次式で表される。
(数3)
q=λ/L(T1−T2)
=α(T2−T0)
ただし、q=熱流(kcal/h・m2)、λ=物体の熱伝導率(kcal/℃・h・m)、L=物体の厚さ(m)、T1=物体の温度(℃)、T2=低温側の物体の表面温度(℃)、T0=流体の温度(℃)、α=流体の熱伝達率(kcal/℃・h・m2)。
上式から明らかなように、同じ条件の流体中に置かれた物体の熱伝達は、熱伝導率が大きく、厚さが薄いほど外気中に放熱される量が多くなる。
また、熱容量を含む系の熱平衡は、次式で表される。
(数4)
q=C・ΔT/Δh+W(T1−T0)/Δh
ここで、q=供給熱量(kcal/h)、T1=内部温度(℃)、T0=外気温度(℃)、h=時間(h)、W=比例定数(kcal/℃)、C=熱容量(kcal/℃)。
熱容量は、C(熱容量:kcal/℃)=Q(熱量:kcal)/ΔT(温度差:℃)と定義される。そして、ΔT=q/Cの関係式で表される。
上式から、供給熱量が一定であると、熱容量が小さいほど外気への放熱は増加することが分かる。したがって、熱容量の小さいプラスチックスを使用すると、内部の蓄熱が小さくなり、外気への放熱量が増加できる。
また、熱容量の異なる物体が接触したときの平衡温度は、下記の式で表される。
(数5)
Te(平衡温度)=(C1・T1+C2・T2)/C1+C2
この式を検討すると、平衡温度Teは、高温側の温度T1と低温側の温度T2が一定とすると、熱容量の大きい物体の温度に近くなることが分かる。つまり、低温流体の熱容量が大きいと、プラスチックスと空気の平衡温度は、空気の温度に近い温度で平衡になることが分かる。
そして、熱容量は、C(熱容量:cal/℃)=V(体積:cm3)×D(密度:g/cm3)×C(比熱:cal/g・℃)の式で表される。すなわち、同量の水と空気を冷媒として用いた場合、水の比熱、密度が空気に対し大きいため熱容量が大きくなり、水−プラスチックス間の熱コンダクタンスが空気−プラスチックス間の熱コンダクタンスに対し大きくなる。
したがって、冷却効果を向上させるには、冷却流体として熱容量の大きい物質を用いればよい。また、冷却流体が熱容量の小さい物質でもその冷却流体の量を多くすれば熱容量を大きくさせることができ、冷却効果を高めることができる。
つまり、ファンを用いて送風しプラスチックスに接する空気の量を多くしてプラスチックスに対して空気の熱容量を大きくすることができる。
ファンを用いて強制冷却することは、プラスチックスの付近に滞留している高温の空気を除去して、低温の空気をプラスチックスに接触させることによりプラスチックスの熱を奪うことであるが、空気の熱輸送能力を熱容量と同じと考えると、強制冷却することは、プラスチックスに対し空気の熱容量を大きくさせてプラスチックスからの熱を多く奪うことと同じといえる。
<熱容量>
次に、空気に対しプラスチックスの熱容量を小さくさせる方法を考える。つまり、プラスチックスの表面に薄膜を形成させたときの熱の流れについて考える。
第一に、冷却流体としての空気と薄膜についてマクロ的に考えると、薄膜の熱容量は空気の熱容量に対して圧倒的に小さいため薄膜の温度は空気の温度に近い温度で熱力学的に平衡になる。
第二に、薄膜とプラスチックスについて考えると、薄膜の熱容量はプラスチックスの熱容量に対して圧倒的に小さいため、薄膜の温度はプラスチックスの温度に近い温度で平衡になる。
前記で示したように、熱容量を含む系の熱平衡は、「q=C・ΔT/Δh+W(T1−T0)/Δh」の式で表され、そのときの平衡温度は、熱容量の大きい物質の温度に近くなる。
第三に、空気と薄膜とプラスチックスについて考えると、薄膜は空気とプラスチックスの間に位置して平衡になるので、空気の熱輸送能力すなわち空気が奪う熱量は同じであるから、薄膜の分だけ熱抵抗が大きくなり放熱効果が減少すると考えられる。
しかし、プラスチックスにファンを用いて、直接送風したときの空気の熱輸送能力すなわち空気の熱容量は、プラスチックスの熱容量に対し圧倒的に大きくなると考えられる。すなわち、これは空気の熱輸送能力が大きくてもプラスチックスから空気中への熱伝達が小さいことが原因と考えられる。
次に、ミクロ的に考えると、通常、空気中における物体には、空気中の成分が物体表面にファンデル・ファールス力などの物理的な力で付着している。そして、伝熱工学においては、伝熱面のごく近傍では温度境界層が存在し、熱伝導による熱移動が境界面に対し垂直に行われることが確認されている。
つまり、この伝熱面のごく近傍に付着している空気層は、非常に少なく、その熱容量も非常に小さい数値を示す。この空気層とプラスチックスの熱容量を比較すると、空気層の熱容量はプラスチックスの熱容量に対し非常に小さくなり、その平衡温度はプラスチックスの温度に近い温度になると考えられる。すなわち、プラスチックスに付着している薄い空気層の温度は高くなる。つまり、熱流の式における空気のλ(熱伝導率)/L(厚み)だけ放熱性が低減すると考えられる。
次に、薄膜を形成したときの薄膜に付着している空気層と薄膜の熱容量を比較すると、プラスチックスに付着している空気層の熱容量よりも薄膜に付着している空気層の熱容量のほうが相対的に大きくなり、薄膜に付着している空気層の平衡温度は流動している空気層の温度に近い温度になると考えられ、プラスチックスに直接付着していたときの空気層の温度よりは低くなると考えられる。
次に、固体中を移動する熱伝導は、次式で表される。
(数6)
q=λ/L(T1−T2)
そして、複層体の熱伝導は、q=(λ/L+λ‘/L’)(T1−T2)で表される。薄膜の厚さを物体の厚さに対して無視できる程度の厚さにすると、固体中の温度勾配は、薄膜を形成しても同じになる。
また、固体の熱伝導率が大きくても、固体に熱伝導率の非常に小さい空気層が付着していると、この固体中央部から空気中への熱伝達は大きく阻害される。一般的に、流動している空気の熱輸送能力に対して固体中を移動する熱量、すなわち対流による熱伝達より伝導による熱伝達の方が大きいが、固体に付着している熱伝導率の小さい空気層により、固体中を移動する熱量の方が小さくなると考えた。したがって、空気の熱輸送能力が大きいとすると、固体表面(正確には、固体に付着している空気層表面)から空気中へ移動する熱量は同じである。
次に、薄膜に付着している空気層の温度が低下すると薄膜の温度も低下する。そして、固体中央部と薄膜に付着している空気層の温度差が大きくなり、固体中央部から表面への熱流は増加して固体中央部の温度も低下する。
次に、固体中央部の温度が低下すると、熱源と固体中央部の温度差も大きくなり、放熱効果を向上できると考えた。
また、固体に付着している空気層を無視して考えると、結果として、対流熱伝達の式「q=α(T2−T0)で表される対流熱伝達率αが大きくなったと同じことになる。
これらの考えから、プラスチックスの表面に熱容量が小さくなるように被膜を形成し、その被膜を空気に接触させることにより相対的に空気の熱容量を大きくさせ、放熱効果の向上が図れると考え実験により見出した。
したがって、本発明の光学用複合板における被膜は、その熱容量がプラスチックスからなる光学用フィルムの熱容量より小さいものであることが必要であり、好ましくは該被膜の熱容量は、光学用フィルムのそれに対し10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。熱容量がこの範囲を超えると、放熱性の向上効果があまり得られない場合がある。
<日射熱吸収率、放射熱吸収率>
また、光学用フィルムの表面に、放射熱吸収率が小さい物質で被膜を形成させると、放射率は非常に小さくなり放射による放熱は低減するので、放熱性の向上には放射熱吸収率の大きい物質が一見望ましいように思われる。しかし、ファンを用いて送風させながら冷却を行うと、放射による冷却効果は、対流熱伝達による冷却効果に比較してほとんど無視できるほど小さいものとなる。
したがって、ファンを用いて送風させながら冷却を行う場合、たとえ放射率の大きい被膜例えば真っ黒な被膜を形成させても、放熱性の向上にはほとんど貢献しない。逆に、放射率の大きい物質すなわち可視光線帯域と赤外線帯域の吸収、反射が大きい物質は、可視光線帯域と赤外線帯域の透過が小さい物質であるから、そのような物質で光学用フィルムの表面に被膜を形成すると、光学用フィルム本来の透明度や透過性が劣るものとなる。
したがって、光学用フィルム本来の可視光線帯域の透明度や透過性を損なわずに光学用フィルムからの放熱性を向上させるには、むしろ放射熱吸収率の小さい被膜を光学用フィルムの表面に形成させることが望ましい。
すなわち、本発明においては、偏光フィルム及び位相差フィルムからなる光学用フィルムの片面あるいは両面に形成させる被膜として、放射率の小さいものが選択される。具体的には、その日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が、光学用フィルムの日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率より小さい被膜を形成させるのがよい。
より好ましくは、前記被膜の日射熱吸収率は0.01〜11%であり、さらに好ましくは0.02〜11%、特に好ましくは0.02〜16.9%、常温熱放射の波長域における放射熱吸収率は0.01〜20%、さらに好ましくは0.02〜17%、特に好ましくは0.47〜16.9%である。日射熱吸収率及び放射熱吸収率が大きすぎると、光学用フィルム本来の透明度や透過性が損なわれる可能性があり、一方小さすぎると、放熱性の向上効果があまり得られない場合がある。
なお、このときの常温熱放射の波長域は5〜50μmの範囲である。そして、そのような波長域において放射熱吸収率の小さい物質を選択して形成した被膜表面に冷却流体を接触させながら高温となった光学用フィルムから放熱させる場合、その放熱性は格段に向上する。
<可視光線透過率>
本発明の光学用複合フィルムは、光学用フィルム本来の可視光線帯域の透明度や透過性を損なわずにフィルムからの放熱性を向上させたものである。したがって、フィルム基体の片面あるいは両面に形成させる被膜の可視光線透過率は、フィルム基体の可視光線透過率より大きいものである。具体的には、前記被膜の可視光線透過率の値が90%以上、より好ましくは92%以上、特に好ましくは94.2%以上が望ましい。可視光線透過率が低すぎると光学用フィルム本来の透明度や透過性を損なわずに該フィルムからの放熱性の向上効果を高めるという本発明の目的を十分達成できない場合がある。
以上述べたように、光学用フィルム基体の片面あるいは両面に可視光線透過率が90%以上で日射熱吸収率が0.01〜11%及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%の範囲で、かつ、被膜の熱容量が光学用フィルムに対して10%以下になるように被膜を形成させて、形成した被膜表面に冷却流体を接触させながら高温となった光学用フィルムからの放熱を促進することが必要である。
<測定方法>
次に、ここでいう被膜の可視光線透過率、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率の測定方法を示す。
常温熱放射の波長域における吸収率の測定方法は、JIS−R−3106の板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率における測定に準拠して、まず一般の化学分析用の赤外分光光度計を用い、アルミニウム板の上に被膜を形成してJIS−R−3106の標準反射率の値を用いて反射率を測定し、次いで灰色体の吸収率αと反射率ρと透過率τの間に成り立つ関係式「α+ρ+τ=1」に基づき、吸収率αを、「吸収率α=1−(反射率ρ+透過率τ)」により求めた。
また、アルミニウム板の上に形成されたときの被膜の放射熱吸収は、放射熱の入射したときと反射して出るときの2回生じるので、吸収率αは、測定値の1/2とした。この数値を理論値として用い、光学用フィルム表面に形成した被膜の常温熱放射の波長域における吸収率とした。また、被膜の表面に生じる反射は0として計算した数値を用いた。
可視光線透過率及び日射熱吸収率は、JIS−R−3106により光学用フィルムと光学用フィルムに被膜を形成した状態で測定し、その差を被膜の可視光線透過率及び日射熱吸収率とした。
次に、熱容量は、C(熱容量:cal/℃)=V(体積:cm3)×D(密度:g/cm3)×C(比熱:cal/g・℃)の式で表される。そして、V(体積:cm3)×D(密度:g/cm3)=W(全重量:g)であるから、被膜の全重量と比熱とから熱容量を求めた。ここで、被膜の全重量は、溶剤を用いて規定の濃度に薄めた液剤の重量を測定した後、偏光フィルム又は位相差フィルムに流し塗りの方法で塗布し、流れ落ちた塗布液の重量を測定して偏光フィルム又は位相差フィルムに付着した重量を求めた。また、比熱:(cal/g・℃)は、各材料に固有のもので、その数値は、温度により変化するが、本発明においては、常温で通常の比熱測定装置を用いて得た測定値を使用した。
(b)被膜の材質
本発明の光学用複合板における被膜の材質は、上述した可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域である5〜50μmの範囲における放射熱吸収率が本発明の条件を満たすものであれば特に制限はないが、一般的に、プラスチックスは、可視光帯域や常温熱放射における波長域の透過率が大きく、吸収率の小さい物質であるから、被膜を形成させる物質としてプラスチックスが好適と考えられる。
したがって、被膜の材料としては、可視光線透過率が大きく、日射熱吸収率および常温熱放射の波長域である5〜50μmの範囲で小さい吸収を示すプラスチックス、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、ポリメタクリル酸ブチル、シリコーン樹脂、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ジアリルフタレート樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルブチラール、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・α‐オレフィン共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体、アクリル酸・塩化ビニル共重合体、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、ポリメタクリル酸ブチル、ナイロン66、エポキシ樹脂、ブタジエン・スチレン樹脂、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、MBS樹脂、ポリブタジエン、ポリエーテルスルホンなどの各種物質やこれらの混合物を用いるのが好ましい。
また、被膜の厚さを薄くするとランバート・ベールの法則により可視光線透過率、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率が小さくなるので、被膜の厚さを薄くすると各波長域において透明になる各種酸化物、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、チタン酸バリウム、ムライト、スピネル、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化ホウ素、ホウ化ランタンなどのセラミックスも、被膜の形成材料として用いることができる。
さらに、金属なども薄くコーティングすると可視光線透過率、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率が小さくなり、各波長域において透明になるので被膜の形成材料として用いることができる。そのような金属としては、例えば、金、銀、銅、スズ、鉄、亜鉛、プラチナ、ニッケル、マンガン、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム、マグネシウム、インジウム及びそれらの合金などが挙げられる。
これらのうち、より好ましいものとしては、スチレン樹脂(ポリスチレン)、アクリル樹脂(ポリアクリル酸)、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・アクリル酸エチル・スチレン共重合体、メタクリル酸メチル・スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチルブチルなどのアクリル系樹脂又はスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール、シリコーン樹脂(ケイ素樹脂)、等を挙げることができる。より好ましいものとしては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、メタクリル酸メチル・アクリル酸エチル・スチレン共重合体等のアクリル・スチレン系樹脂等を挙げることができる。特に好ましいものとしては、アクリル・スチレン系樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、又はシリコーン樹脂を挙げることができる。
このような被膜材料を用いて所定の可視光線透過率、日射熱吸収率及び放射熱吸収率、熱容量を有する被膜を形成する方法は特に限定されないが、あらかじめフィルム状又はシート状に形成した各層の材料を熱融着や接着、粘着などにより貼着する方法や、プラスチック被膜材料を適当な溶剤に溶かして慣用されている方法により光学用フィルム表面に塗布し、乾燥・固化させる方法など、他の材料に積層するのに慣用されている種々の方法の中から任意に選択して被覆することができる。また、所定の材料を分散、溶解などのこれまで慣用されている方法により処理して上記と同様の方法を用いて被覆することもできる。
ここで用いられる好ましい溶剤としては、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン、シンナー等が挙げられる。これらの溶剤を用いて所定の被膜を得るためには、濃度0.01〜10%程度とするのが好ましい。
セラミックスや金属などを光学用フィルム表面に薄く形成させる場合には、スパッタリング、真空蒸着、メッキ、PVD、CVDなどの方法を用いることもできる。また、従来からある偏光板又は位相差板に後から被覆することもできる。
このようにして、放射熱を吸収して温度が高くなった偏光板又は位相差板の温度を低下させて液晶の寿命を伸ばしたり、カラー液晶プロジェクタに配し、面内の温度を均一にさせてスクリーンに投射した映像の均一性を向上させたりすることができる。
なお、所望の可視光線透過率、日射熱吸収率及び放射熱吸収率を有する被膜を形成するための方法としては、上記被膜材料に着色剤、赤外線吸収剤などを適宜添加して可視光線透過率、日射熱吸収率及び放射熱吸収率を調整した後、光学用フィルムに塗布する方法を挙げることができる。添加量は特に限定されるものではなく、公知の技術にしたがって、添加剤の種類や性質に応じて所望の被膜が得られる量を経験的に求めるのがよい。
(c)被膜の厚さ
ランバート・ベールの法則によると、放射する(すなわち光を吸収する)材料の厚さを大きくすると、吸収量が増加するし、小さくすると吸収量は減少する。したがって、その厚さを薄くすれば薄くするほど吸収率は小さくなり透過率は大きくなる。つまり、物質を薄く形成して近赤外線帯域や常温熱放射における波長域の透過率を大きくして吸収率が小さくなるように被覆すると被膜の可視光線の透過率も大きくなる。
したがって、本発明による被膜は、可視光線透過率を大きく、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率を小さくさせるために、その厚さを薄くすることが好ましい。それにより、吸収を減らし、可視光線透過率を大きくし、日射熱吸収率、常温熱放射の波長域における吸収率を小さくし、且つ被膜の熱容量も小さくすることができる。
光学用フィルム表面に被膜を形成しても、厚さが薄ければ、該光学用フィルムの可視光線帯域における透過率の低減はほとんどなく、光学用フィルム本来の透明度や透過性を損なうことはない。そして、その薄い被膜面に冷却流体を接触させ、光学用フィルムからの放熱を促進させることによって、光学用フィルム本来の機能を保持しつつ放熱性を格段に向上させた光学用複合板を得ることができる。
よって、本発明の被膜の厚さは、特に制限はないものの、好ましくは0.01〜70μm、より好ましくは0.01〜50μmとするのがよい。被膜の厚さが厚すぎると放射熱吸収率が大きくなり可視光線の透過率が低下し、あるいは熱容量が大きくなる傾向にあり、薄すぎると被膜自体の強度が低下しすぎる場合がある。
(3)光学用複合板
本発明の光学用複合板は、上記光学用フィルムの少なくとも片面に前記被膜を形成させてなるものである。
(a)光学用複合板の構造
本発明の光学用複合板の構造を、添付図面に従って詳細に説明する。
図1は、本発明の光学用複合板の一例である偏光板の構造を示す断面図であって、偏光フィルムaの片面に、可視光線透過率が該光学用フィルムのそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに該光学用フィルムのそれより小さく、且つ熱容量が該光学用フィルムのそれより小さい被膜bが形成されている。そして、その被膜表面に冷却流体cを接触させながら、光源からの放射熱を吸収して高温となった光学用フィルムからの放熱を促進させ、熱負荷を減らして耐久性を向上させるとともに、スクリーンに投射した映像の均一性を向上させることができる。
なお、図1は光学用フィルムの片面のみに被膜を形成した例であるが、本発明においては、被膜は光学用フィルムの少なくとも片面に形成されておればよく、よって光学用フィルムの両面に形成させることもできる。
また、光学用フィルムの片面に被膜を形成する場合は、被膜表面を光線の入射側、出射側のどちらに配置しても良いが、プロジェクタ、液晶ディスプレイなどで液晶を貼り付ける場合には、液晶と反対側に被膜を形成させる必要がある。
また、被膜の温度を低下させて光学用フィルムの温度を下げるので、冷却流体を被膜に接触させる必要があるが、冷却流体を送風させる位置は、冷却流体を被膜に接触させれば良いので、被膜側、光学用フィルムの下あるいは上から等、どの位置からでも良い。また、光学用フィルムに形成させた被膜の配置は、光源側あるいは光源と反対側のどちらでも良い。
本発明における光学用複合板の形状は、基体となる光学用フィルム同様、特に制限はなく長方形、正方形、円形状等の板状、直方体又は立方体状、筒状、半球状、球状など任意の形状に形成できる。通常は長方形又は直方体が好ましく、特に好ましくは長方形である。
この偏光板および位相差板の大きさは用途及び目的に応じた所望の大きさで良く、例えば一辺または径が5〜300mm、好ましくは10〜200mm、特に好ましくは20〜200mm程度であり、その厚さは0.1〜1mm、好ましくは0.1〜0.3mm程度がよい。
(b)光学用複合板の多層構造
上記図1には、光学用フィルムが単層の場合の例を示したが、上述したように、本発明においては、光学用フィルムの上に必要に応じて設けられる支持フィルム、保護膜、AR層などの他の任意の層が積層された多層構造のものを基体としてもよい。
この場合においては、空気層に接している層の可視光線透過率が光学用フィルムのそれより大きく(好ましくは90%以上)、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が共に光学用フィルムのそれより小さく(好ましくは日射熱吸収率が0.01〜11%、常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%)、且つ熱容量が光学用フィルムのそれより小さく(好ましくはガラス板の10%以下)なるように、被膜を形成するのが望ましい。
このように、本発明のカラー液晶プロジェクタ用偏光板及び位相差板からなる光学用複合板は、必要に応じて支持フィルム、保護膜、AR層等を積層した上記偏光フィルム及び/又は位相差フィルムの片面又は両面に、本発明の被膜を形成したものである。このようにすることにより、透過する偏光の偏光状態を維持することができ、映像コントラストをよりはっきりさせることができる。また、単板光透過率をより向上させるために、基板面または偏光板面および位相差板面の一方もしくは双方の面にAR層を設けることが好ましい。
(c)支持基板
また、本発明の光学用複合板は、上述したように、偏光フィルム及び位相差フィルムからなる光学用フィルムを青板ガラス、白板ガラス、ホウケイ酸ガラス、BK−7等の非晶質ガラスおよびサファイア基板および水晶基板およびYAG基板および石英基板等のガラス基板からなる支持体の上に貼付したものであってもよい。このように支持体に貼付することにより、透過する偏光の偏光状態を維持することができ、映像コントラストをよりはっきりさせることができる。
このようなガラス基板の形状は特に制限はないが、通常は長方形、正方形、円形等の板状又は直方体であり、通常は長方形が好ましい。
また、その大きさは用途又は目的に応じた所望の大きさで良く、特に限定されるものではないが、例えば板状の場合は、一辺または径が5〜300mm、好ましくは10〜200mm程度がよく、またその厚さは0.1〜5mm、好ましくは0.3〜2mm程度がよい。この板状基板は偏光板、位相差板の支持のための透明基板の他に、フラット状の偏光ビームスプリッタの機能を有する基板であってもよい。
また直方体の硝材の場合には、一辺が5〜300mm好ましくは10〜200mmの直方体または立方体形状で、キュービック状の色合成用ダイクロイックミラー付きクロスプリズムまたはキュービック状の偏光ビームスプリッタであってもよい。
本発明において、このような支持基板に貼付した光学用フィルムを用いる場合、本発明の可視光線透過率が該光学用フィルムのそれより大きく(好ましくは90%以上)、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに該光学用フィルムのそれより小さく(好ましくは日射熱吸収率が0.01〜11%、常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%)、且つ熱容量が該光学用フィルムのそれより小さい(好ましくは該光学用フィルムに対して10%以下)被膜は、光学用フィルムの支持基板側とは反対の側に形成するのが好ましい。
また、用いる支持基板にあらかじめ本発明の被膜と同様の、可視光線透過率が該硝材のそれより大きく(好ましくは90%以上)、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに該硝材のそれより小さく(好ましくは日射熱吸収率が0.01〜11%、常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%)、且つ熱容量が該硝材のそれより小さい(好ましくは該硝材に対して10%以下)被膜を形成させて、支持基板自体の放熱性を高めておくこともできる。その場合は、支持基板が板状の場合はその片面又は両面に、直方体の場合は表面全体又は一部に該被膜を形成させることができる。
(d)光学用複合板の製造
本発明の光学用複合板のうち、カラー液晶プロジェクタ用偏光板を製造するには、例えばまず、偏光フィルムの片面又は両面に本発明の被膜を塗布等により形成させ、放熱処理を施す。次いで、放熱処理した偏光フィルムの偏光透過軸、1/2波長板および1/4波長板の遅相軸または進相軸、液晶フィルムの配向方向を正確に測定し、1つの辺を基準として所望の軸角度と大きさで短形に切る。
一方で、支持基板に透明な接着(粘着)剤を塗布し、この塗布面に放熱処理した偏光フィルム(片面のみに被膜を形成した場合は、被膜形成面とは反対側の面)を貼付し、外側に被膜面がくるように光学用複合板を形成すれば良い。
また、偏光フィルム(片面のみに被膜を形成した場合は、被膜形成面とは反対側の面)に透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に放熱処理を施した基板を貼付しても良い。
ここで使用する接着(粘着)剤は、例えばアクリル酸エステル系のものが好ましい。
なお、支持基板として放熱処理を施したものを用いる場合は、あらかじめ本発明の被膜を形成させた放熱支持基板に上記偏光フィルムを貼付すればよい。
また、偏光板に位相差板を付加させる場合は、例えば偏光フィルムと位相差フィルムを、両者の軸が所望の角度となるように貼付した後、位相差フィルム面に接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に基板を貼付しても良い。また、位相差フィルム側をガラス成形品(支持基板)に貼付する方が通常であるが、偏光フィルム側を支持基板に貼付しても良い。
この場合、本発明の被膜は、少なくとも外側の空気に接する面に形成されていればよいから、位相差フィルム側を支持基板に貼付する場合は、少なくとも偏光フィルムの外側にあらかじめ本発明の被膜を形成し、放熱処理を施しておくのがよい。偏光フィルム側を支持基板に貼付する場合は、少なくとも位相差フィルムの外側にあらかじめ本発明の被膜を形成し、放熱処理を施しておくのがよい。
本発明のカラー液晶プロジェクタ用位相差板を製造するには、例えばまず、位相差フィルムの片面又は両面に本発明の被膜を塗布等により形成させ、放熱処理を施す。次いで、放熱処理した位相差フィルムについて、1/2波長板および1/4波長板の遅相軸または進相軸、液晶フィルムの配向方向を正確に測定し、1つの辺を基準として所望の軸角度と大きさで、該位相差フィルムを短形に切る。
一方で、支持基板に透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に位相差フィルム(片面のみに被膜を形成した場合は、被膜形成面とは反対側の面)を貼付し、外側に被膜面がくるように光学用複合板を形成すれば良い。
また、位相差フィルム(片面のみに被膜を形成した場合は、被膜形成面とは反対側の面)に透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に支持基板を貼付しても良い。支持基板として放熱処理を施したものを用いる場合は、あらかじめ本発明の被膜を形成させた放熱支持基板に上記偏光フィルムを貼付すればよい。
ここで使用する接着(粘着)剤は、例えばアクリル酸エステル系のものが好ましい。尚、液晶フィルムを使用する場合は、使用する液晶表示パネルの液晶の配向方向に応じて、配向方向を合わせることが必要である。
2.カラー液晶プロジェクタ
本発明のカラー液晶プロジェクタは、上記放熱処理を施した本発明の偏光板及び/又は位相差板を配したことを特徴とするものである。通常は、液晶表示パネルの出射側または入射側または両側に、上記偏光板又は位相差板が配置される。ガラス基板からなる支持体に貼付した偏光板又は位相差板を用いる場合は、偏光板面又は位相差板面を液晶表示パネル側にして、配置される。
液晶表示パネルの液晶セルは、例えば液晶の配向方向によって、入射偏光軸角度が0度または90度のものと45度または135度のものが一般に使用されている。この軸角度に応じて、使用する液晶フィルムの配向方向を合わせ、入射側及び出射側偏光板の内側に配し、使用される。また、液晶セルとしては、例えば電極及びTFTが形成された透明基板と対向電極が形成された透明基板との間にTN液晶を封入して製造されるツイストネマチック(TN)型のアクティブマトリクス駆動方式のものがあげられる。
本発明の好ましいカラー液晶プロジェクタは、光源の直後に紫外線カットフィルタ、マルチレンズの順に設け、その後に偏光ビームスプリッタを配置させたものである。偏光ビームスプリッタは、自然光を互いに直交する偏光に分離する機能を有する光学部品である。その後、R(赤),G(緑),B(青)の光を分ける為に、各ダイクロイックミラーを配置し、入射側偏光板、液晶表示パネル、出射側偏光板、クロスプリズムを配したものである。
この入射側偏光板または出射側偏光板または両側に、本発明の放熱性偏光板を用いることで、光源からの強度の光に曝されて高温となった偏光板の温度を低下させることができ、さらに、冷却ファンを用いて冷却効果を向上させることができる。そして、偏光板の表面温度を低下させ、寿命を伸ばすことができる。
また、放熱偏光板を用いて放熱効果を向上させることで偏光板の面内温度を均一にさせるので、スクリーンに投射した映像の均一性を向上させることができる。また、入射側偏光板と光源の間または出射側偏光板とクロスプリズムの間に、本発明の放熱位相差板を配しても良い。
なお、フラット状の偏光ビームスプリッタを製造するには、例えば、まず透明な青板ガラス、白板ガラス、ホウケイ酸ガラス、BK−7等の非晶質ガラスを板状にしたものを、厚みが均一になるように、正確に表面研磨する。この板状硝材の片面に、蒸着マルチコート加工により偏光分離膜を形成させて、所望の枚数を重ね合わせて、接着し、正確に45度方向に切り出し、硝材表面に透明な接着剤を塗布する。次いで、遅相軸または進相軸を正確に測定し、1つの辺を基準として所望の軸角度と大きさで、短形に切り出した1/2波長板を貼付すればよい。また1/2波長板に透明な接着剤を塗布し、これに硝材を貼付してもよい。
キュービック状の偏光ビームスプリッタを製造するには、例えば、透明な青板ガラス、白板ガラス、ホウケイ酸ガラス、BK−7等の非晶質ガラスを所望の大きさに直角三角柱状にしたものから、大きさおよび形状が均一になるように、正確に表面研磨した2つの直角三角柱状硝材を準備する。このうち1つのみについて、斜辺の側面に蒸着マルチコート加工により偏光分離膜を形成させ、もう1つの斜辺の側面に接着剤を塗布し、斜辺の側面同士を正確に接着させればよい。
クロスプリズムを製造するには、例えば、透明な青板ガラス、白板ガラス、ホウケイ酸ガラス、BK−7等の非晶質ガラスを所望の大きさに直角二等辺三角柱状にしたものから、大きさおよび形状が均一になるように、正確に表面研磨した4個の直角三角柱状硝材を準備する。この4個の直角二等辺三角柱を直角陵が接するように、正確にキュービック状になるように接着すれば良い。その接着面には、所望のダイクロイックミラー膜が蒸着マルチコートにより形成されており、R(赤),G(緑),B(青)の3原色を合成できるようなキュービック構造をなしている。
光入射側偏光板は強度の光にさらされる。このため、その温度が高くなる。通常の液晶表示素子のように、液晶セルと光入射側偏光板が密着していると、光入射側偏光板の熱が液晶セルに伝達し、液晶セル内の液晶がNI点を越えて、表示ができなくなってしまう。これを避けるため、液晶セルと光入射側偏光板とを離間して配置し、冷却ファン等により空気やガスを循環させて、液晶セルの過熱を防止するのがよい。
本発明のカラー液晶プロジェクタの一例をあげると、メタルハライドランプ等の光源から放射された光は、紫外線カットフィルタや偏光ビームスプリッタを通過し、ついで2つのダイクロイックミラーでR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3原色の光に分けられ、それぞれ上記偏光板を通過して液晶表示パネルに照射される。液晶表示パネルを通過した3原色の光は、出射側の偏光板を通過しダイクロイックプリズムにより集光された後、投射レンズにより拡大されてスクリーンに投影される。
3.光学用複合板の放熱方法
本発明の光学用複合板の放熱方法は、光学用フィルムの少なくとも片面に、上述したように、可視光線透過率が該光学用フィルムのそれより大きく(好ましくは90%以上)、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに該光学用フィルムのそれより小さく(好ましくは日射熱吸収率が0.01〜11%、常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01〜20%)、且つ熱容量が該光学用フィルムのそれより小さい(好ましくは該光学用フィルムに対して10%以下)被膜を形成し、該被膜表面に冷却流体を接触させることを特徴とする。
用いる冷却流体は特に制限されないが、好ましくは空気又は水、より好ましくは空気である。冷却手段としては、従来公知の各種手段から適宜選択することができ、例えばファンを用いて空気を光学用複合板の表面に送風する方法、コンプレッサーを用いて空気を送風する方法等が挙げられる。その場合、少なくとも前記被膜表面に冷却流体を接触させるようにすることで、本発明の効果を有効に発揮させることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(参考例1)
メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル−スチレン共重合体を酢酸エチルにより希釈して同じ濃度の溶液(被膜形成用溶液)を調製した。これに、着色剤(日本化薬社製、商品名「KAYASET BLACK A−N」)と赤外線吸収剤(日本化薬社製、商品名「IRG・820B」)を適量混合して、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率の異なる溶液を調整した。
この被膜形成用溶液を、流し塗りの方法を用いて、縦33mm×横30mm×厚さ0.2mmの同一の染料系偏光フィルム(ポラテクノ社製、商品名「SHC」;厚み200μm)の片面上に塗布して日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率の異なる被膜を形成し、試料1〜5を作製した。
このときの常温熱放射の波長域における吸収率の値は、前記に示した理論値を用いた。また、このときの被膜の熱容量の染料系偏光フィルムの熱容量に対する割合{X2(被膜の熱容量)/X1(染料系偏光フィルムの熱容量)×100(%)}は、試料1では0.01%であり、この被膜の厚みは0.13μmであった。試料2〜5では、被膜の熱容量の染料系偏光フィルムの熱容量に対する割合はいずれも0.70%であり、これらの被膜の厚みはいずれも5.1μmであった。
このようにして得られた片面に被膜を形成した染料系偏光フィルム(試料1〜5)と、被膜を形成していない染料系偏光フィルムを用意し、該被膜面とは反対側の面に粘着剤を塗布して水晶ガラス板に密着させた。次いで、厚さ5mmの発泡スチロール板に縦30mm、横27mmの穴を2ヶ所開け、その開口部に、水晶ガラス板に密着させた上記染料系偏光フィルムを、被膜面が光源側になるように配置して取り付けた。
被膜を形成した染料系偏光フィルム及び被膜を形成していない染料系偏光フィルムを取り付けた発泡スチロール製の板を垂直に立てて、20℃に設定された室内に置き、100W−赤外線ランプを発泡スチロール製の板から50cm離れた位置に、該偏光フィルムの水晶ガラス板と同じ高さにして平行に配置した。そして、前記染料系偏光フィルムに均等に光線が照射されるように位置を調整した。次に、ファンを用いて被膜表面に冷却流体(空気)が接するように送風させながら、100W−赤外線ランプを照射して水晶ガラス面(以下、単に「ガラス」という場合がある。)の温度が平衡になるまで加熱して、そのときの水晶ガラス面の表面温度を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2005266296
赤外線ランプにより加熱したときの水晶ガラスの平衡温度は、日射熱吸収率が0.09〜10.1%で常温熱放射の波長域における吸収率が0.47〜16.9%のときにガラスより0.7〜2.6℃低くなり、赤外線ランプにより加熱されて高温となった偏光フィルム表面からの放熱が促進されたことが分かる。そして、被膜を形成した染料系偏光フィルムの可視光線透過率が67.3%以上あり、染料系偏光フィルム本来の透明度をほとんど低減させないことが分かる。
(参考例2)
参考例1の試料1および2で用いた溶液を参考例1と同じ流し塗りの方法を用いて縦33mm、横30mm、厚さ0.2mmの同一の染料系偏光フィルムの上に厚みを変えて、被膜の熱容量が異なるように塗布した。
染料系偏光フィルムに対する被膜の熱容量の割合を、{X2(被膜の熱容量)/X1(染料系偏光フィルムの熱容量)×100(%)}として求めた。各試料の被膜の厚みと熱容量は、以下の通りである。
試料1:被膜の厚み0.02μm/熱容量の割合0.01%
試料2:被膜の厚み0.13μm/熱容量の割合0.65%
試料3:被膜の厚み1.98μm/熱容量の割合0.99%
試料4:被膜の厚み5.87μm/熱容量の割合2.93%
試料5:被膜の厚み13.7μm/熱容量の割合6.85%
試料6:被膜の厚み19.3μm/熱容量の割合9.65%
試料7:被膜の厚み20.9μm/熱容量の割合10.45%
参考例1で用いた厚さ5mmの発泡スチロール板に、参考例1と同様の方法で染料系偏光フィルムを取り付け、ファンで送風しながら、100W−赤外線ランプを照射して水晶ガラスの温度が平衡になったときの温度を測定した。被膜の可視光線透過率、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における吸収率は、参考例1と同じく理論値を用い、熱容量は前記の方法で測定した。この結果を表2に示す。
Figure 2005266296
赤外線ランプにより加熱したときの染料系偏光フィルムを貼付した水晶ガラスの平衡温度は、染料系偏光フィルムに形成した被膜の熱容量が、該染料系偏光フィルムに対して10%以下のときに、染料系偏光フィルムだけ(被膜なし)のときより0.2〜2.6℃低くなり、被膜の熱容量が小さいほど放熱効果が大きいことが分かる。
片面に粘着剤層を有する染料系偏光フィルム(ポラテクノ社製、商品名「SHC」;厚み200μm)の、他面にAR加工処理を施し、更に該AR加工処理面に、参考例1で調製した被膜形成用溶液を用いて参考例1と同様の方法で被膜(厚み;0.02μm)を形成させて得られる染料系放熱偏光フィルムを、偏光透過軸の角度が90度となるように、その原反から水晶基板と同じ大きさに正確に切り出したものを用意した。この放熱偏光フィルムの偏光透過軸を偏光顕微鏡で確認したところ、0.5度以内の誤差で縦方向であった。
次に、種結晶を成長させた水晶から結晶軸が水平方向または垂直方向に平行となるように正確に切り出した長方形状の水晶性の支持基板(水晶基板;縦30mm、横36mm、厚さ0.7mm)を用意した。
前記染料系放熱偏光フィルムの粘着剤面に、上で作成した水晶基板を、該水晶基板の短辺と染料系放熱偏光フィルムの短辺を正確にあわせて、かつ、その染料系放熱偏光フィルムの粘着剤塗布面を内側にして、貼付した。
なお、本実施例においてフィルムカット時の角度表示は、フィルムに存在する粘着剤層を裏側にして長辺を手前にセットして、反時計回りに測定した角度である。
片面に粘着剤層を有するポリカーボネート系1/2波長板(ポラテクノ社製、青用;HPC−225、緑用;HPC−275、赤用;HPC−305)を、その原反から、縦30mm、横36mmの大きさで、遅相軸角度が45度となるように長方形状に正確に切り出した。この1/2波長板の遅相軸を偏光顕微鏡で確認したところ、0.5度以内の誤差で45度の方向であった。
次に、この1/2波長板の上に、実施例3で作製した染料系放熱偏光フィルムの偏光透過軸の角度が0°となるようにカットしたフィルムを、各辺が一致するように粘着剤面に正確に貼付した。この1/2波長板付き放熱偏光フィルムの各辺と、実施例3で作成した水晶基板の各辺とを正確にあわせ、該染料系放熱偏光フィルムの被膜形成面を外側にして、貼付し、青用、緑用、赤用という3枚の本発明のカラー液晶プロジェクタ用放熱偏光板を得た。
実施例3および実施例4の方法で得られた放熱偏光板を用いた液晶プロジェクタの例を図2に示す。この例では、実施例4の水晶基板に1/2波長板付き放熱偏光板を貼付したものを入射側偏光板として、放熱偏光板面を液晶側に配置し、実施例3の水晶基板に放熱偏光板を貼付したものを出射側偏光板として、放熱偏光板面を液晶側に配置した。
光源(メタルハライドランプ)1から出射された可視光線は紫外線カットフィルタ(赤外線カット機能も有している)2を通過し、偏光ビームスプリッタ4により偏光された後、第一の分解用ダイクロイックミラー5で赤(R)が分離され、ついで第二の分解用ダイクロイックミラー5で緑(G)と青(B)に分解されて3原色を得る。
R、G、Bそれぞれの光線は、水晶基板に1/2波長板付き偏光板を貼合した本発明の放熱偏光板を配置した入射側偏光板7R、7G、7Bに入射され、一定方向の偏光の光線のみが液晶セル8に入射する。液晶セル8を通過した偏光は、水晶基板に本発明の放熱偏光板を貼合したものを配置した出射側偏光板9B、9R、9Gに入射する。
出射側偏光板9B、9Rを通過したB、Rそれぞれの光線は、直接合成用ダイクロイックミラー付きクロスプリズム11へ入射し、また9Gを通過したGの光線は、1/2波長板10を通過して合成用ダイクロイックミラー付きクロスプリズム11へ入射する。その後、クロスプリズム11を通過して合成された偏光は、投射レンズ12を介してスクリーン13に投影される。
(実験例1)
実施例3および実施例4の方法で得られた水晶基板付き放熱偏光板を入・出射側偏光板ともに配置した実施例5記載の液晶プロジェクタと、通常の偏光板を水晶基板に貼付したものを入・出射側偏光板ともに配置した液晶プロジェクタを用意した。この2台のプロジェクタについて同時に運転を行い、入射側偏光板7B、7Gと出射側偏光板9B、9Gの中央部分の表面温度を測定した結果を表3に示す。
なお、これら液晶プロジェクタの光源としては250WのUHPランプを配し、25℃の常温環境下で、通常のファン電圧で運転を行った。
Figure 2005266296
上記の通り、本発明の放熱偏光板を水晶基板に貼付したものは、通常の偏光板を水晶基板に貼付したものに対し、温度低下が大きいことが分かる。そして、偏光板の中央部分の表面温度を低下させることができ、耐久性が良好で、高コントラストで均一性の優れた画像を長時間安定的に表示できる液晶プロジェクタが得られた。
(実験例2)
参考例1の試料1の溶液を水晶基板の片面に塗布して被膜を形成し放熱処理した放熱支持基板(被膜の厚み;0.02μm)の塗布面とは反対側の面に通常の偏光板を貼付したものを入・出射側偏光板ともに配置した液晶プロジェクタと、同様の放熱支持基板(被膜の厚み;0.02μm)の塗布面と反対側に実験例1で用いた放熱偏光板を貼付したものを入・出射側偏光板ともに配置した液晶プロジェクタを用意した。この2台のプロジェクタについて、実験例1と同様の条件で同時に運転を行い、入射側偏光板7B、7Gと出射側偏光板9B、9Gの中央部分の表面温度を測定した結果を表4に示す。
Figure 2005266296
上記の通り、水晶製の支持基板として放熱処理を施したものを同様に用いた場合であっても、本発明の放熱偏光板を該放熱支持基板に貼付したものは、通常の偏光板を該放熱支持基板に貼付したものに対し、温度低下が大きいことが分かる。そして、偏光板の中央部分の表面温度を低下させることができ、耐久性が良好で、高コントラストで均一性の優れた画像を長時間安定的に表示できる液晶プロジェクタが得られた。
本発明によれば、カラー液晶プロジェクタに用いられる偏光フィルム及び位相差フィルムからなる光学用フィルムの片面又は両面に、可視光線透過率が該光学用フィルムのそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が該光学用フィルムのそれより小さい被膜を、その被膜の熱容量が該光学用フィルムの熱容量に対して小さくなるように形成させることによって、高放熱性の光学用複合板(偏光板又は位相差板)を得ることができる。そして、その光学用複合板の被膜表面に冷却流体を接触させることにより、高温となった光学用フィルムから効率よく放熱を促進させることができる。
このような被膜を形成して放熱処理を施した本発明の高放熱性の偏光板及び/又は位相差板をカラー液晶プロジェクタに用いると、通常の放熱処理をしていない偏光板及び/又は位相差板を用いた場合に比べて、明るさと耐久性のいずれも良好で、高コントラストで均一性に優れた画像を長時間安定的に表示できるカラー液晶プロジェクタが得られる。
本発明の光学用複合板の一例の構造を示す断面図である。 本発明の実施例5にかかる液晶プロジェクタの構造を示す図である。
符号の説明
a:光学用フィルム
b:被膜
c:冷却流体
1:光源(メタルハライドランプ)
2:UV/IRカットフィルタ
3:インテグレーターレンズ
4:偏光ビームスプリッタ
5:色分解用ダイクロイックミラー
6:ミラー
7R:赤用入射側偏光板
7G:緑用入射側偏光板
7B:青用入射側偏光板
8:TFT液晶セル
9R:赤用出射側偏光板
9G:緑用出射側偏光板
9B:青用出射側偏光板
10:1/2波長板
11:色合成用ダイクロイックミラー付きクロスプリズム
12:投射レンズ
13:スクリーン

Claims (13)

  1. カラー液晶プロジェクタ用偏光フィルム及び位相差フィルムからなる群から選択される光学用フィルムと、該光学用フィルムの少なくとも片面に形成された被膜とからなる光学用複合板であって、前記被膜の可視光線透過率が前記光学用フィルムのそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに前記光学用フィルムのそれより小さく、且つ熱容量が前記光学用フィルムのそれより小さいことを特徴とする、光学用複合板。
  2. 前記被膜の可視光線透過率が90%以上、日射熱吸収率が0.01%〜11%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01%〜20%で、かつ、該被膜の熱容量が前記光学用フィルムの熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、請求項1記載の光学用複合板。
  3. 前記被膜の可視光線透過率が94.2%以上、日射熱吸収率が0.02%〜16.9%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.47%〜16.9%であって、かつ、該被膜の熱容量が前記光学用フィルムの熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、請求項1記載の光学用複合板。
  4. 前記被膜の厚みが0.01〜70μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の光学用複合板。
  5. 光学用フィルムとしてカラー液晶プロジェクタ用偏光フィルムを用いたカラー液晶プロジェクタ用偏光板であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の光学用複合板。
  6. 光学用フィルムとしてカラー液晶プロジェクタ用位相差フィルムを用いたカラー液晶プロジェクタ用位相差板であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の光学用複合板。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の光学用複合板を、液晶表示パネルの入射側及び/又は出射側に配したカラー液晶プロジェクタ。
  8. 前記光学用複合板がカラー液晶プロジェクタ用偏光板である、請求項7記載のカラー液晶プロジェクタ。
  9. 前記光学用複合板がカラー液晶プロジェクタ用位相差板である、請求項7記載のカラー液晶プロジェクタ。
  10. カラー液晶プロジェクタ用偏光フィルム及び位相差フィルムからなる群から選択される光学用フィルムと、該光学用フィルムの少なくとも片面に形成された被膜であって前記被膜の可視光線透過率が前記光学用フィルムのそれより大きく、日射熱吸収率及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率がともに前記光学用フィルムのそれより小さく、且つ熱容量が前記光学用フィルムのそれより小さい被膜とからなる光学用複合板の放熱方法において、該被膜表面に冷却流体を接触させることを特徴とする、光学用複合板の放熱方法。
  11. 前記被膜の可視光線透過率が90%以上、日射熱吸収率が0.01%〜11%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.01%〜20%で、かつ、該被膜の熱容量が前記光学用フィルムの熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、請求項10記載の放熱方法。
  12. 前記被膜の可視光線透過率が94.2%以上、日射熱吸収率が0.02%〜16.9%、及び常温熱放射の波長域における放射熱吸収率が0.47%〜16.9%であって、かつ、該被膜の熱容量が前記光学用フィルムの熱容量に対して10%以下であることを特徴とする、請求項10記載の放熱方法。
  13. 冷却流体が冷却空気又は冷却水であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載の放熱方法。

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