一般に、硬化反応によりゴム状あるいはゲル状に変換し得るポリオルガノシロキサンには、機械的強度の向上のために、充填剤としてシリカ粉末を配合することが知られている。しかし、シリカ粉末が遊離水酸基を有するため、シリカ充填剤をそのままの状態でポリオルガノシロキサンに配合すると、貯蔵中の未硬化のポリオルガノシロキサン組成物に、経時的な増粘現象やストラクチャーの形成、クリープ硬化現象などを引き起こすことがある。
従来からこれらの技術的問題を解決するために、充填剤としてのシリカ粉末の表面処理の研究が数多くなされている。表面処理のために初期に試みられた方法の1つは、シリカ粉末を非常に高い温度、すなわち200℃以上の温度に加熱することによって、すべての水酸基を除去するというものであった。
しかし、シリカ粉末は集塊を形成する傾向を示し、そのため自由流動性粉末の状態ではなくなることが判明した。また、このようなシリカ粉末を室温に冷却した場合に、高い吸湿性を示し大気中から湿気を吸収しやすいことも判った。したがって、シリカ粉末をそのように加工することは非常に難しかった。
また、シリカ粉末を環状シロキサンにより処理する方法が提案された。(例えば、特許文献1参照)この方法においては、処理工程で環状シロキサンが分裂して遊離水酸基と結合することにより、シリカの遊離水酸基の反応性を失わせることになるので、構造化(ストラクチャーの形成)を起こしにくい組成物が得られる。また、こうして処理されたシリカ粉末により、物理的特性の高いシリコーンゴムが得られる。
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、結合乃至排除される遊離水酸基は一部にすぎないため、組成物の作業性が経時的に劣化するという問題があった。
また、シリカ粉末を溶剤中でフェニルジメチルエトキシシランのようなモノアルコキシシランおよび一級有機アミン化合物で同時に処理する方法(例えば、特許文献2参照)や、アンモニア誘導体で前処理し、その後各種のシリコーン化合物で処理する方法(例えば、特許文献3参照)が提案されており、これらの方法によれば、シリカ粉末の遊離水酸基を良好に処理することができるという利点があった。
しかし、特許文献2または特許文献3に記載された方法では、所望の物理的特性を有するシリコーンゴム組成物を得ることができなかった。
さらに、シリカ粉末をヒドロキシルアミン、環状シロキサン、シリル窒素化合物の3種の処理剤で同時に処理する方法が開発されている。(例えば、特許文献4参照)この方法によれば、ある種の用途においては組成物の貯蔵安定性が改善され、かつ所望の物理的特性が得られる。
しかし、特許文献4に記載された方法では、シリル窒素化合物およびその分解物の除去が困難であるため、得られる組成物の貯蔵安定性が不十分であり、経時的な粘度の上昇が生じるばかりでなく、硬化後の物理的特性が不十分であるという問題があった。
また、オルガノシラザン類で処理した微粉末シリカを、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとともに配合して、加熱加硫時などの変色を防止する技術が提案されている。(例えば、特許文献5参照)
しかし、特許文献5に記載された方法では、組成物の貯蔵安定性の点で十分に満足し得るものを得ることができなかった。
さらに、シリカ粉末をポリオルガノシロキサンとともにモノシラノールやシラザン化合物でインプロセス処理することにより、貯蔵安定性に優れた組成物を得る方法が提案されている。(例えば、特許文献6参照)
特許文献6に記載された方法では、ポリオルガノシロキサンの反応性基がシラノール基の場合には適用することができず、また残存する過剰の処理剤およびシラザン化合物の分解により生成するアンモニアまたはアンモニア誘導体の除去に、多くの時間と工程を要するばかりでなく、アンモニア臭を完全に除去することができなかった。さらに、アンモニアまたはアンモニア誘導体が残存した場合、銅系金属をはじめとする電気電子部品材料への腐食の原因となるため、それらの材料等には使用が困難であるなどの問題があった。
またさらに、シリカ粉末を、ポリオルガノシロキサンとともにアミノ基含有ケイ素化合物でインプロセス処理する方法が提案されている。(例えば、特許文献7参照)この方法により、処理剤が残存しても特性上の不利を生じることがなく、かつ貯蔵安定性に優れた室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を得ることができることが記載されている。
しかしながら、特許文献7に記載された方法においても、最近の電子電気部品の微細化や電極部材の変化等に対応し、十分に満足できる優れた特性を有する室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を得ることが難しかった。
すなわち、近年、有機錫化合物は環境ホルモン等としての懸念があり、多くの面で使用が制限されているため、特許文献7に記載された方法においても、硬化触媒として有機錫化合物に代わって、アルコキシチタン系化合物を使用することが考えられる。しかし、シリカ粉末をアミノ基含有ケイ素化合物によりインプロセス処理する方法において、アルコキシチタン系化合物を硬化触媒として配合した場合、アミノ基含有ケイ素化合物のアミノ基がアルコキシチタン系化合物に配位して触媒作用を阻害(被毒)し、硬化触媒としての活性を著しく低下させるなど、組成物の硬化性に大きな悪影響を与えるという問題があった。また、アルコキシチタン系化合物の触媒活性が有機錫化合物のそれと比較して低いため、配合量の増加を余儀なくされ、またアルコキシチタン系化合物の配位子にカルボキシ基を含む場合に、前記したアミノ基により着色および変色のおそれがあるなどの問題があった。
また従来から、付加反応型のポリオルガノシロキサン組成物は、硬化時に反応副成物を生じることなく内部まで均一に硬化するなどの特徴を有し、かつ耐熱性および電気絶縁性等に優れているため、電気・電子部品のポッティングやコーティング材としてなど、幅広く使用されている。そして、このようなポリオルガノシロキサン組成物には、補強性を向上させるためにシリカ粉末が配合されており、均一でかつ透明性に優れた高強度のシリコーンゴム硬化物を得るために、シリカ粉末の表面を低分子シロキサン、ヘキサメチルジシラザンのようなシラザン類、ジアルキルジクロロシラン、トリアルキルクロロシランのようなクロロシラン類で処理することが行われている。特に、高強度のものを得るために、シラザン類で処理したものが用いられている。
しかしながら、このように表面処理されたシリカ粉末は高価であるばかりでなく、ポリオルガノシロキサンとの混練時に均一に混合しにくいなどの問題もあった。そのため、インプロセス処理することが実施されているが、シラザン類から発生するアンモニアが、触媒である白金系、パラジウム系またはロジウム系化合物を被毒することによる硬化阻害、増粘などの貯蔵安定性の低下などを引き起こすという問題があった。したがって、このアンモニアの除去に多大な労力・コストを要していた。また、予めシラザン類で処理したものにも微量のアンモニアが含まれているため、同様の問題が生じるおそれがあった。
さらに、大気中の湿気と反応してゴム状に硬化するポリマーとして、ポリエーテル系重合体やイソブチレン系重合体が挙げられる。このような重合体においても、補強のためにシリカ粉末が配合されている。
そして、シリカ粉末の配合においては、その表面状態により組成物の貯蔵安定性を低下させる傾向があるため、インプロセス処理によりシリカ粉末の表面をクロロシランやシラザン類により処理することが行われる。
しかし、処理剤から発生する塩素、アンモニア等の副成物の除去に多大な工程等を必要とした。そのため、シリカ粉末の配合は大きな効果は期待できるものの、経済的な見地からあまり普及していないのが現状であった。
米国特許第2938009号公報
米国特許第3024126号公報
米国特許第3635743号公報
特開昭49−98861号公報
特開昭53−141362号公報
特公平4−22179号公報
特開平8−104816号公報
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態の硬化性ポリマー組成物は、常温で液状の硬化性ポリマーに、アルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物により表面処理された無機充填剤が配合されている。
ベース成分として使用される硬化性のポリマーは、常温で液状を呈し加熱によりあるいは常温で硬化するものであれば、種類や硬化のタイプなどは特に限定されない。例えば、シリコーンゴム、ブチルゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエン三元共重合体ゴム(EPDR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(NR)などの有機ゴムや、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、ポリエステル系などの樹脂が挙げられる。
特に、ビスフェノール型あるいはノボラック型のエポキシ樹脂に、アルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物により表面処理された無機充填剤(例えばシリカ粉末)を配合した場合には、シラザン類で処理されたものを配合した場合と比べて、組成物の増粘がほとんど見られず、貯蔵安定性の向上効果が大きい。
硬化性のポリマーに配合される無機充填剤は、後述するように表面処理されたシリカ粉末であることが望ましいが、煙霧質酸化チタン(TiO2)をアルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物により同様に表面処理したものを配合することもできる。
本発明においては、室温硬化性のポリオルガノシロキサンをベース成分とし、以下に示す実施形態を採ることができる。
すなわち、本発明の好ましい第1の実施形態は、(A)(A1)分子中にケイ素官能基として平均2個を超える数の加水分解性基を有するケイ素官能性ポリジオルガノシロキサン、および/または(A2)分子中に2個以上のケイ素官能基を有するケイ素官能性ポリジオルガノシロキサンと架橋剤とから成るポリオルガノシロキサンを含む室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物であって、(A)ポリオルガノシロキサン100重量部に対して、(B)比表面積20〜800m2/gのシリカ粉末1.0〜200重量部と、(C)硬化触媒であるチタンキレート化合物0.5〜15重量部を含み、かつ(D)シリカ粉末の表面処理剤であるアルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物を、シリカ粉末に対して0.005〜10.0重量%好ましくは0.005〜5.0重量%の割合で含有する。
この実施形態において、ベースポリマーとして用いられる(A)ポリオルガノシロキサンは、ケイ素官能基を有する(A1)成分および/または(A2)成分と架橋剤とを組合わせたものからなり、(A1)成分は、それ自体が後述する(C)成分の触媒作用により架橋反応を起こし硬化する。また、(A2)成分と架橋剤とを組合わせたものは、(C)成分の触媒作用により(A2)成分と架橋剤とが架橋反応を起こして硬化する。いずれの場合も、反応は加水分解反応とそれに続く縮合反応であり、空気中の水分の存在で反応が進行する。実施形態では、(D)成分であるアルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物によりシリカ粉末が表面処理され、初期の擬似架橋により著しい増粘が生じるため、ベースポリマーとして(A1)成分の使用がより好ましい。
本発明の実施形態に用いられる(A1)成分および(A2)成分は、代表的には、下記一般式:
で示される実質的に直鎖状のポリオルガノシロキサンである。
式中、R3は互いに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し、R4は―ZSiR5 3−pXpを表す。ここで、Zは酸素および/または2価の炭化水素基を表し、R5は互いに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し、Xは加水分解性基であるアルコキシ基を表し、pは1〜3の整数である。また、mは当該(A)成分である(A1)成分または(A2)成分の23℃における粘度を20〜1,000,000mPa・sにする数である。
このように、末端基R4は、ケイ素官能基である加水分解性基Xを少なくとも1個有するケイ素官能性シロキシ単位であり、(A1)成分および(A2)成分は、分子の両末端にそれぞれ加水分解性基Xを少なくとも1個有する。
R3は、互いに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基である。R3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基のようなアルキル基;ビニル基、アリル基のようなアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基;2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基のようなアラルキル基が例示され、さらにこれらの炭化水素基の水素原子の一部が他の原子または基で置換されたもの、すなわちクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基のようなハロゲン化アルキル基;3−シアノプロピル基のようなシアノアルキル基などの置換炭化水素基が例示される。合成が容易であり、かつ(A)成分が分子量の割に低い粘度を有し、硬化前の組成物に良好な押し出し性を与えること、および硬化後の組成物に良好な物理的性質を与えることから、全有機基の85%以上がメチル基であることが好ましく、実質的にすべての有機基がメチル基であることがより好ましい。
一方、特に耐熱性、耐放射線性、耐寒性または透明性を組成物に付与する場合には、R3の一部として必要量のフェニル基を、耐油性、耐溶剤性を付与する場合には、R3の一部として3,3,3−トリフルオロプロピル基や3−シアノプロピル基を、また塗装適性を有する表面を付与する場合には、R3の一部として長鎖アルキル基やアラルキル基を、それぞれメチル基と併用するなど、目的に応じて任意に選択することができる。
末端基R4においてケイ素原子に結合するR5は、互いに同一でも異なっていてもよく、またR3と同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基であり、R3と同様なものが例示される。合成が容易で、加水分解性基Xの反応性が優れていることから、メチル基またはビニル基が好ましい。また、Zは、互いに同一でも異なっていてもよく、酸素原子ならびにメチレン基、エチレン基、トリメチレン基のようなアルキレン基;フェニレン基等の2価の炭化水素基が例示される。合成が容易なことから、酸素原子およびエチレン基が好ましく、酸素原子が特に好ましい。
Xは、末端基R4に少なくとも1個存在するケイ素官能基、すなわち加水分解性基であるアルコキシ基である。このようなXとしては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のようなアルコキシ基;2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基のような置換アルコキシ基;イソプロペノキシ基のようなエノキシ基などが例示され、互いに同一でも異なっていてもよい。合成の容易さ、硬化前の組成物の物性、保存中の安定性、硬化性、経済性、および広範囲の用途に用いられ、とりわけ電気電子部品の用途における耐腐食性を鑑みた場合、アルコシキ基が好ましい。さらに、末端基R4におけるケイ素官能基Xの数pは、1〜3個であることが好ましい。
また、硬化前の組成物に適度の押し出し性を付与するとともに、硬化後のゴム状弾性体に優れた機械的特性を与えるために、(A)成分(すなわち(A1)成分あるいは(A2)成分)を表す一般式におけるmは、当該(A)成分の23℃における粘度が20〜1,000,000mPa・sになるように選択される。(A)成分の粘度が20mPa・s未満では、硬化後のゴム状弾性体の伸びが十分でなく、一方1,000,000mPa・sを超えると、均一な組成物が得にくく、押し出し作業性も低下する。硬化前および硬化後の組成物に要求される性質がバランスよく調和されることから、特に好ましい粘度は500〜200,000mPa・sの範囲である。
架橋剤を用いなくとも硬化するタイプの室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物においては、(A)成分すなわち(A1)成分中のXが架橋手段となり、架橋剤がなくても架橋反応が進行し、硬化してゴム状弾性体を生じる。好ましいXとしては、メトキシ基のようなアルコキシ基;アセトキシ基のようなアシロキシ基;メチルエチルケトキシマト基が挙げられる。耐腐食性の観点からアルコキシ基が好ましい。このような(A1)成分をベースポリマーとして使用することにより、硬化前の組成物が安定化されるとともに、優れた硬化性が得られる。
また、架橋剤を用いて硬化させるタイプの室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物において、架橋剤としては、水および硬化触媒の存在下に(A)成分(すなわち(A2)成分)中のケイ素官能性基Xと反応し、組成物を硬化させるためのケイ素官能性基を有するケイ素化合物および/またはその部分加水分解縮合物が用いられる。
この架橋剤は、一般式:R6 4−qSiYq
(式中、R6は互いに同一でも異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基を表し、Yは加水分解性基を表す。またqは、平均2を超え4以下の数である。)で示される。
R6としては、(A)成分のケイ素原子に直接結合した有機基R3と同様な基を例示することができ、入手のしやすさと優れた架橋反応速度が得られることから、メチル基またはビニル基が好ましい。また、加水分解反応性基Yとしては、(A)成分の末端基R4に存在するXとして挙げられたものと同様のものが例示される。
このような架橋剤の例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシランおよびそれらの部分加水分解縮合物のようなアルコキシ基含有化合物;テトラキス(2−エトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニル(2−エトキシエトキシ)シラン、フェニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランおよびそれらの部分加水分解縮合物のような置換アルコキシ基含有化合物;メチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン、ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルビニルジイソプロペノキシシランおよびそれらの部分加水分解縮合物のようなエノキシ基含有化合物などが例示される。
合成が容易で、組成物の保存安定性を損なうことがなく、しかも大きな架橋反応速度すなわち大きな硬化速度が得られることから、これらの架橋剤のうちで、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(イソプロペノキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペノキシ)シランおよびそれらの部分加水分解縮合物を用いることが好ましい。
このような架橋剤の配合量は、(A2)成分100重量部に対して0.5〜25重量部であり、より好ましくは2〜10重量部である。0.5重量部未満では架橋が十分に行われず、硬度の低いものしか得られないばかりでなく、架橋剤を配合した組成物の保存安定性が悪い。一方、25重量部を超えて配合すると、保存中に架橋剤の一部が系より分離するばかりでなく、硬化の際に著しい収縮が生じ、得られるゴム状弾性体の物性が低下する。
なお、(A)成分として、前記した(A1)成分であるXが加水分解性基でpが平均1を超えるものを用いる場合は、前述のように、架橋剤がなくても硬化が可能であるが、このような場合においても、組成物の硬化性と硬化して得られるゴム状弾性体の機械的性質とをバランスよく具現するために、前記架橋剤を併用することが好ましく、Xと同じ加水分解性基Yを有する架橋剤を用いることがより好ましい。この場合の架橋剤の配合量は、(A)成分100重量部に対して0.1〜15重量部であり、より好ましくは0.3〜10重量部である。15重量部を超えて配合すると、経済的に無意味であるばかりでなく、組成物の硬化性の低下および硬化後の機械的特性とのバランスの著しい低下が生じるため、好ましくない。
本発明の実施形態においては、先に具体例を列挙したような、R6として1価の炭化水素基を有するケイ素官能性化合物の他、置換された1価の炭化水素基を有する炭素官能性の同様な化合物を、架橋剤の一部または全部として用いてもよい。このようなR6としては、置換のアミノ基、エポキシ基、イソシアナト基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基またはハロゲン原子で置換されたアルキル基やフェニル基が例示される。置換アルキル基としては、置換メチル基、3−置換プロピル基、4−置換ブチル基が例示されるが、合成が容易なことから、3−置換プロピル基が好ましい。
このようなR6を有する化合物としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリアセトアミドシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、 N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランのような置換または非置換のアミノ基含有シラン;3−グリシドキシトリメトキシシラン、3−グリシドキシメチルジメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シラン;3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシランのようなイソシアナト基含有シラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランのような(メタ)アクリロキシ基含有シラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シラン;および3−クロロプロピルトリメトキシシランのようなハロゲン原子含有シランが例示される。
このような置換炭化水素基含有シランや前記したビニル基含有シランは、炭素官能性シランであって、これらを配合することにより、組成物が硬化する際の各種基材への接着性を向上させることができる。このような炭素官能性シランは、組成物の硬化性、貯蔵安定性並びに物理的特性を損なわない限り配合が可能であるが、多量のアミノアルキル基含有シランおよびメルカプト基含有シランの配合は、後述する(C)硬化触媒であるチタンキレート化合物を被毒し、その触媒機能を著しく低下させるため、貯蔵安定性の面から好ましくない。
炭素官能性シランの配合量は、(A)成分100重量部に対して0.005〜15重量部とすることが好ましく、0.1〜10重量部とすることがさらに好ましい。0.005重量部未満では接着性を向上させる効果が少なく、またその発現が遅い。また、15重量部を超えて配合すると、保存中の炭素官能性シランの分離、硬化物の硬化途上における著しい収縮が生じるばかりでなく、保存安定性と作業性が悪くなり、また黄変現象が生じる。
本発明の実施形態において(B)成分のシリカ粉末は、ポリオルガノシロキサン組成物をゴム状態あるいはゲル状態に硬化させる場合の補強材であり、20〜800m2/gの比表面積を有するものが使用される。シリカ粉末の比表面積が20m2/g未満である場合には、補強性が不十分であり、反対に800m2/gを超えると、粉末同士の凝集性が大きくなりすぎるため、本発明の組成物に適さない。これらのシリカ粉末の中でも、機械的強度の点から50m2/g以上の比表面積を有するものが好ましく、さらに製造上および入手の容易さから、500m2/g以下の比表面積を有するシリカ粉末の使用が好ましい。このようなシリカ粉末としては、煙霧質シリカ、湿式シリカ、溶融シリカ等が例示され、その1種または2種以上を併用してもよい。
(B)成分であるシリカ粉末の配合量は、(A)成分100重量部に対して1.0〜200重量部であり、より好ましくは3.0〜50重量部である。シリカ粉末の配合量が1.0重量部未満では、得られる硬化物の機械的強度が不十分となり、反対に200重量部を超えると、系に混合することが困難であり、均一な組成物が得られない。また、このようなシリカ粉末は、処理済み、未処理を問わない。表面処理剤としては、ポリオルガノシロキサン、環状ポリオルガノシロキサン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン等のクロロシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが例示される。しかし、トリメチルシリル基で処理したもののうちで、処理度が高いものは効果が低い場合がある。
本発明の実施形態において(C)成分のチタンキレート化合物は、(A)成分自体の架橋手段として含有されるX同士、および/または(A)成分のXと架橋剤Yとを、水分の存在下に反応させて架橋構造を形成させ、ゴム状弾性体を得るための硬化触媒である。
このような(C)成分としては、ジイソプロポキシチタンビス(メチルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(ブチルアセチルアセテート)、ジブトキシチタンビス(メチルアセチルアセテート)、ジブトキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(ブチルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(2−エチルヘキシルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(2−エチルヘキシルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(2−エチルヘキシルアセチルアセテート)、ジブトキシチタンビス(2−エチルヘキシルアセチルアセテート)、ジブトキシチタンビス(2−エチルヘキシルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(2−エチルヘキシルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセテート)、ジブトキシチタンビス(アセチルアセテート)、ジブトキシチタンビス(アセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセテート)等が例示される。
耐腐食性、硬化促進性および入手のし易さから、ジイソプロポキシチタンビス(メチルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(ブチルアセチルアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(2−エチルヘキシルアセチルアセテート)等が好ましい。
(C)成分の配合量は、(A)成分100重量部あたり0.05〜15重量部、より好ましくは0.5〜10重量部である。0.05重量部未満では、硬化触媒として十分に作用せず、硬化に長い時間がかかるばかりでなく、特に空気との接触面から遠いゴム層の深部における硬化が不十分となり、反対に15重量部を超える場合には、その配合量に見合う効果がなく無意味であるばかりでなく、経済的にも不利益となり好ましくない。
本発明の(D)成分であるアルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物は、シリカ粉末の表面処理剤としての作用、並びに(A)成分とシリカ粉末との混合を容易にする促進作用を有する。(D)成分中の反応性基であるアルキルシリル基および/またはアルコキシシロキシ基により、シリカ粉末表面のシラノール基が表面処理されるばかりでなく、(D)成分の触媒作用により(A)成分中の反応性基とシリカ粉末表面のシラノール基との反応が適度に促進されることにより、(A)成分によってもシリカ粉末表面のシラノール基が処理される。こうして、組成物に流動性が付与され、押し出し力の低減される。また、シリカ粉末表面のシラノール基を処理することにより、経時的に硬化性の低下や増粘を引き起こすことがなくなり、貯蔵安定性に優れた組成物を得ることが可能となる。
このようなチタン化合物として、プロポキシトリスビス(トリエチルシリル)チタン、ジプロポキシビス(トリエチルシリル)チタン、トリプロポキシ(トリエチルシリル)チタン、プロポキシトリスビス(トリプロピルシリル)チタン、ジプロポキシビス(トリプロピルシリル)チタン、トリプロポキシ(トリプロピルシリル)チタン、プロポキシトリスビス(トリブチルシリル)チタン、ジプロポキシビス(トリブチルシリル)チタン、トリプロポキシ(トリブチルシリル)チタン、プロポキシトリスビス(トリオクチルシリル)チタン、ジプロポキシビス(トリオクチルシリル)チタン、トリイソプロポキシ(トリオクチルシリル)チタン、イソプロポキシトリスビス(トリエチルシリル)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエチルシリル)チタン、トリイソプロポキシ(トリエチルシリル)チタン、イソプロポキシトリスビス(トリプロピルシリル)チタン、ジイソプロポキシビス(トリプロピルシリル)チタン、トリイソプロポキシ(トリプロピルシリル)チタン、イソプロポキシトリスビス(トリブチルシリル)チタン、ジイソプロポキシビス(トリブチルシリル)チタン、トリイソプロポキシ(トリブチルシリル)チタン、イソプロポキシトリスビス(トリオクチルシリル)チタン、ジイソプロポキシビス(トリオクチルシリル)チタン、トリイソプロポキシ(トリオクチルシリル)チタン、ブトキシトリスビス(トリエチルシリル)チタン、ジブトキシシビス(トリエチルシリル)チタン、トリイソブトキシ(トリエチルシリル)チタン、ブトキシトリスビス(トリプロピルシリル)チタン、ジブトキシビス(トリプロピルシリル)チタン、トリブトキシ(トリプロピルシリル)チタン、ブトキシトリスビス(トリブチルシリル)チタン、ジブトキシビス(トリブチルシリル)チタン、トリブトキシ(トリブチルシリル)チタン、ブトキシトリスビス(トリオクチルシリル)チタン、ジブトキシビス(トリオクチルシリル)チタン、トリブトキシ(トリオクチルシリル)チタン、(メトキシエトキシ)トリスビス(トリエチルシリル)チタン、ジ(メトキシエトキシ)ビス(トリエチルシリル)チタン、トリ(メトキシエトキシ)(トリエチルシリル)チタン、(メトキシエトキシ)トリスビス(トリプロピルシリル)チタン、ジ(メトキシエトキシ)ビス(トリプロピルシリル)チタン、トリ(メトキシエトキシ)(トリプロピルシリル)チタン、(メトキシエトキシ)トリスビス(トリブチルシリル)チタン、ジ(メトキシエトキシ)ビス(トリブチルシリル)チタン、トリ(メトキシエトキシ)(トリブチルシリル)チタン、(メトキシエトキシ)トリスビス(トリオクチルシリル)チタン、ジ(メトキシエトキシ)ビス(トリオクチルシリル)チタン、トリ(メトキシエトキシ)(トリオクチルシリル)チタン、プロパンジオキシビス(トリエチルシリル)チタン、プロパンジオキシビス(トリプロピルシリル)チタン、プロパンジオキシビス(トリブチルシリル)チタン、プロパンジオキシビス(トリオクチルシリル)チタンのようなアルキルシリルチタン化合物、およびイソプロポキシトリスビス(トリエトキシシロキシ)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエトキシシロキシ)チタン、トリイソプロポキシ(トリエトキシシロキシ)チタン、イソプロポキシトリスビス(トリプロポキシシロキシ)チタン、ジイソプロポキシビス(トリプロポキシシロキシ)チタン、トリイソプロポキシ(トリプロポキシシロキシ)チタン、イソプロポキシトリスビス(トリブトキシシロキシ)チタン、ジイソプロポキシビス(トリブトキシシロキシ)チタン、トリイソプロポキシ(トリブトキシシロキシ)チタン、イソプロポキシトリスビス(トリオクタノキシシロキシ)チタン、ジイソプロポキシビス(トリオクタノキシシロキシ)チタン、トリイソプロポキシ(トリオクタノキシシロキシ)チタン、ブトキシトリスビス(トリエチルシリル)チタン、ジブトキシシビス(トリエトキシシロキシ)チタン、トリイソブトキシ(トリエトキシシロキシ)チタン、ブトキシトリスビス(トリプロポキシシロキシ)チタン、ジブトキシビス(トリプロポキシシロキシ)チタン、トリブトキシ(トリプロポキシシロキシ)チタン、ブトキシトリスビス(トリブトキシシロキシ)チタン、ジブトキシビス(トリブトキシシロキシ)チタン、トリブトキシ(トリブトキシシロキシ)チタン、ブトキシトリスビス(トリオクタノキシシロキシ)チタン、ジブトキシビス(トリオクタノキシシロキシ)チタン、トリブトキシ(トリオクタノキシシロキシ)チタン、(メトキシエトキシ)トリスビス(トリエチルシリル)チタン、ジ(メトキシエトキシ)ビス(トリエチルシリル)チタン、トリ(メトキシエトキシ)(トリエチルシリル)チタン、(メトキシエトキシ)トリスビス(トリプロポキシシロキシ)チタン、ジ(メトキシエトキシ)ビス(トリプロポキシシロキシ)チタン、トリ(メトキシエトキシ)(トリプロポキシシロキシ)チタン、(メトキシエトキシ)トリスビス(トリブトキシシロキシ)チタン、ジ(メトキシエトキシ)ビス(トリブトキシシロキシ)チタン、トリ(メトキシエトキシ)(トリブトキシシロキシ)チタン、(メトキシエトキシ)トリスビス(トリオクタノキシシロキシ)チタン、ジ(メトキシエトキシ)ビス(トリオクタノキシシロキシ)チタン、トリ(メトキシエトキシ)(トリオクタノキシシロキシ)チタン、プロパンジオキシビス(トリエトキシシロキシ)チタン、プロパンジオキシビス(トリプロポキシシロキシ)チタン、プロパンジオキシビス(トリブトキシシロキシ)チタン、プロパンジオキシビス(トリオクタノキシシロキシ)チタンのようなアルコキシシロキシチタン化合物が例示される。
表面処理の効果、取り扱いの容易さ、入手のし易さなどの点から、アルコキシシロキシチタン化合物の使用が好ましい。さらに、ケイ素に結合しているアルコキシ基における炭素数は、表面処理の効果および得られる組成物の相溶性の点から10以下が好ましく、透明性(低白濁)の点からさらに8以下であることが好ましい。
このような(D)アルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物の配合量は、(B)シリカ粉末に対して0.005〜10.0重量%好ましくは0.005〜5.0重量%とする。表面処理の効率の点から0.1重量%以上が好ましく、得られるベース成分の貯蔵安定性の点から2.0重量%以下がさらに好ましい。
さらに、本発明の実施形態においては、接着性の向上のために、(E)一般式:R2 3−aSi(OR1)aQで表されるオルガノシランまたはその部分加水分解物を、(A)成分100重量部に対して0.01〜20重量部の割合で配合することができる。
このようなオルガノシランとしては、前記した炭素官能性シランと同じものが例示されるが、一般式におけるQが、グリシドキシアルキル基および/またはアミノアルキル基であるものを選択することが望ましい。さらに、貯蔵安定性および接着性の点から、Qが、グリシドキシアルキル基であるオルガノシランと、Qがアミノアルキル基であるオルガノシランとを反応させたものを配合することがより好ましい。
さらに実施形態においては、第2の接着性向上剤として、(F)一般式:
で表されるシラン変性イソシアヌレート化合物および/またはシロキサン変性イソシアヌレート化合物を、(A)成分100重量部に対して0.01〜20重量部の割合で配合することができる。
式中、R7,R8,R9は、水素原子、置換または非置換の1価の炭化水素基、もしくは―(CH2)b―SiR10R11R12を表す。水素原子以外の基であることが好ましい。ただし、bは2〜6の整数であり、R10,R11,R12は、アルキル基またはアルコキシ基を示す。なお、R6、R7、R8の少なくとも1つは前記した一般式:R6 4−qSiYqで示される基である。
このようなイソシアヌレート化合物としては、以下の化学式に示す化合物およびその部分加水分解物が例示される。
組成物への相溶性の点から、これらイソシアヌレート化合物の配合量は10重量部以下がさらに好ましい。
以上の(A)〜(D)の各成分を必須成分とする室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を調製するには、混合・混練前の(A)成分に(D)成分を添加し、これに(B)成分を加え次いで(C)成分を添加するか、あるいは(A)成分と(B)成分の混合・混練時に(D)成分を添加した後(C)成分を加える方法を採ることが望ましい。
本発明の実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物には、硬化前の組成物に適度の流動性を与え、硬化して得られるゴム状弾性体に、例えばシーリング材、接着剤、現場成形ガスケットなどとして用いる場合に要求される高い機械的強度を付与するために、前記した(B)シリカ粉末以外に、公知の充填剤を配合することができる。
このような充填剤としては、煙霧質シリカ、焼成シリカ、沈殿シリカ、煙霧質酸化チタン等の無機質充填剤、およびこれらの表面をオルガノクロロシラン類、ポリオルガノシロキサン類、ヘキサメチルジシラザンで疎水化したものなどの補強性充填剤、けいそう土、粉砕シリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、有機酸表面処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄のような非補強性充填剤が例示され、硬化後のゴム状弾性体に要求される物性に応じて選択される。
例えば、透明性が要求される場合には煙霧質シリカを用いることが好ましく、建築用シーリング材として、とりわけ低モジュラスを有することが要求される場合には、非補強性の充填剤を用いることが好ましい。上記の充填剤のうちで、補強性充填剤の量が少なすぎると、機械的特性の向上の効果がほとんど現れず、逆に多すぎる場合には、モジュラスが大きくなり破断時の伸びが小さくなる。前記した(B)成分であるシリカ粉末以外の充填剤の添加量は、(A)成分100重量部に対して1〜200重量部の範囲が好ましく、5〜100重量部がより好ましい。
さらに、実施形態の組成物には、目的に応じて、顔料、チクソトロピー性付与剤、押し出し作業性を改良するための粘度調整剤、紫外線吸収剤、防かび剤、耐熱性向上剤、難燃化剤など、各種の添加剤を加えても良い。
本発明の第1の実施形態の組成物は、以上の全ての成分および必要に応じて各種添加剤を、湿気を遮断した状態で混合することにより得られる。得られた組成物は、密閉容器中でそのまま保存し、使用時に空気中の水分に曝すことによってはじめて硬化する、いわゆる1包装型室温硬化性組成物として使用することができる。また、実施形態の組成物を、例えば架橋剤と硬化触媒を分けた組成物として調製し、適宜2〜3個の別々の容器に分けて保存し、使用時にこれらを混合する、いわゆる多包装型室温硬化性組成物として使用することもできる。
本発明の第1の実施形態の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、湿気の存在しない密封条件下では安定であり、空気中の水分と接触することにより、室温で硬化してゴム状弾性体を生じる。そして、従来品より優れた硬化性を有し、貯蔵安定性に優れている。したがって、実施形態の組成物より得られるゴム状弾性体は、例えばシーリング材、とりわけガラス周りなどの透明性の要求される部位や着色を嫌う部位に使用されるシーリング材として、あるいは接着剤やコーティング剤などとして有用である。
また、本発明においては、加熱硬化性のポリオルガノシロキサンをベース成分とし、以下に示す実施形態を採ることができる。
すなわち、本発明の第2の実施形態は、(G)ケイ素原子に結合する1価の脂肪族不飽和炭化水素基を少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン100重量部と、(H)ケイ素原子に結合する水素原子を少なくとも3個有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンを、そのケイ素原子に結合する水素原子の量が(G)成分の不飽和炭化水素基の量に対して当量で0.5〜4.0倍となる量と、(I)比表面積20〜800m2/gのシリカ粉末1.0〜200重量部と、(J)触媒量の白金系触媒をそれぞれ含み、かつ(K)シリカ粉末の表面処理剤であるアルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物を、シリカ粉末に対して0.005〜10.0重量%好ましくは0.005〜5.0重量%の割合で含有する。
この実施形態において、(G)成分のポリオルガノシロキサンの有する1価の脂肪族不飽和炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、5−ヘキセニル基のようなアルケニル基が例示される。合成が容易で、硬化前の組成物の流動性や硬化物の耐熱性が優れていることから、ビニル基が最も好ましい。
ケイ素原子に結合する前記脂肪族不飽和炭化水素基以外の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基のようなアルキル基;フェニル基、トリル基のようなアリール基;ベンジル基、β−フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基のようなアラルキル基;およびこれらの基の水素原子の一部または全部がフッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子やシアノ基で置換されているもの、例えばクロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、2−シアノエチル基などの置換炭化水素基を挙げることができる。合成が容易であり、かつ硬化物が良好な機械的特性を有し、かつ硬化前の組成物が低い粘度を保持するという点から、メチル基が最も好ましい。
(G)成分のポリオルガノシロキサンにおいて、シロキサン骨格は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、1価の脂肪族不飽和炭化水素基は、分子鎖の末端と中間のいずれに存在してもよく、両方に存在してもよいが、硬化物に優れた機械的特性を与えるために、直鎖状の場合、少なくともその両末端に脂肪族不飽和炭化水素基が存在していることが好ましい。
さらに、組成物がポッティング用、被覆用、含浸用などとして好適する特性、特に硬化前における適度な流れ性を有し、かつ硬化物が優れた機械的特性を有するために、(G)成分のポリオルガノシロキサンは、25℃で20〜100,000mPa・s、より好ましくは100〜10,000mPa・sの粘度を有する。粘度が20mPa・s未満の場合には、十分な機械的強度(強度・伸び・硬さ)を有する硬化物が得られない。また、粘度が100,000mPa・sを超えると、注型やポッティングその他における作業性が著しく低下する。ただし、室温で硬化させる接着剤として用いる場合には、粘度が100,000mPa・sを超えるものであっても何ら問題はない。
(H)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合する水素原子を少なくとも3個有し、シロキサン骨格は直鎖状、分岐状もしくは環状のいずれであってもよく、またそれらの混合物であってもよい。(H)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンのケイ素原子に結合する水素原子が、(G)成分の脂肪族不飽和炭化水素基と付加反応(ヒドロシリル化)することにより架橋させる。水素原子は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、中間のケイ素原子のいずれかに結合していてもよく、さらには両方に結合していてもよい。
このような(H)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンとしては、以下に示す構造のものを使用することが好ましい。
(1)M´単位とQ単位(SiO2)から成り、ケイ素原子に結合した水素原子の含有量が0.3〜1.2重量%である分岐状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン
(2)M単位とD´単位およびD単位から成り、ケイ素原子に結合した水素原子の含有量が0.5〜1.6重量%である直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン
ここで、M´単位、M単位、D´単位、D単位およびQ単位は、いずれもシロキサン構成単位を表す。M´単位は、一般式:RaHbSiO0.5(式中、Rは置換または非置換の1価の炭化水素基を表し、aは0,1または2を表し、bは1または2を表す。但し、a+bは3である。)で示される構成単位を、D´単位は、一般式:RcHdSiO(式中、Rは置換または非置換の1価の炭化水素基を表し、cは0または1を表し、dは1または2を表す。但し、c+dは2である。)で示される構成単位をそれぞれ表す。また、M単位は、一般式:R3SiO0.5(式中、Rは置換または非置換の1価の炭化水素基を表す。)で示される構成単位を、D単位は、一般式:R2SiO(式中、Rは置換または非置換の1価の炭化水素基を表す。)で示される構成単位を、Q単位はSiO2で示される構成単位をそれぞれ表す。M´単位、M単位、D´単位およびD単位を示す式中のRは、いずれもメチル基であることが好ましい。
(H)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの配合量は、ケイ素原子に結合する水素原子(Si−H基)の含有量が、ベースポリマーである前記(G)ポリオルガノシロキサンに含まれる不飽和炭化水素基に対して、当量で0.5〜4.0倍、より好ましくは1.0〜3.0倍となる量とする。(H)成分の配合量が前記割合より少ない場合には、組成物の硬化が十分に進行せず、硬化後の組成物に十分な接着性を付与することができない。
第2の実施形態において、(I)成分であるシリカ粉末、および(K)成分であるアルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物としては、前記した第1の実施形態における(B)比表面積20〜800m2/gのシリカ粉末、および(D)アルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物と同様なものを使用することができる。
(J)成分の白金系触媒は、前記(G)成分と(H)成分との付加反応を開始するための触媒であり、例えば、白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金とオレフィンとの錯体、白金とケトン類との錯体、白金とビニルシロキサンとの錯体、アルミナまたはシリカなどの担体に白金を保持させたもの、白金黒などの白金系化合物;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウム黒とトリフェニルホスフィンとの混合物などのパラジウム系化合物;およびロジウム系化合物などを挙げることができる。これらのうち、塩化白金酸または白金とオレフィン類との錯体をアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤などに溶解したものを使用することが好ましい。また、固体状のものは分散をよくするために細かく粉砕する必要があり、使用する担体も粒径が小さく比表面積の大きいものが好ましい。
この(J)成分の配合量は触媒としての必要量とする。その量は、(G)成分に対して、白金、パラジウム、ロジウムの各元素量に換算して0.1〜1000ppmとなる範囲であり、より好ましくは0.5〜200ppmに相当する量とする。0.1ppm未満では、触媒濃度が低いため硬化が不十分となる。他方(J)成分は貴金属を含み一般に高価であるため、多量の添加は経済性が悪化するばかりでなく、1000ppmより多くしても意味がなく、また耐熱性が低下して好ましくない。
本発明の第2の実施形態のポリオルガノシロキサン組成物を保存する場合には、(G)成分の一部と(J)白金系触媒、(G)成分の残部、(H)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと(I)シリカ粉末というように3つに分け、それぞれを別々の容器に保存することが好ましい。(K)成分であるアルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物は(I)シリカ粉末と同じ容器内に収容されるが、(H)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと別の容器で保存する方が良い。
本発明の第2の実施形態のポリオルガノシロキサン組成物は、比較的低温かつ短時間の加熱で硬化し、接着性を発現する。また、加熱により得られた硬化物は、基材に対して優れた接着力を示し、高温多湿下または熱水中に長時間放置した場合にも、基材から剥離することがない。したがって、特に、高い温度を加えることができないプラスチック用の接着剤として有用である。
本発明の第3の実施形態は、(L)反応性ケイ素基を含有する有機ポリマー100重量部と、(M)比表面積20〜800m2/gのシリカ粉末0.1〜200重量部と、(N)硬化触媒0.5〜15重量部を含み、かつ(O)前記シリカ粉末の表面処理剤であるアルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物を、前記シリカ粉末に対して0.005〜10.0重量%好ましくは0.005〜5.0重量%の割合で含有することを特徴とする硬化性ポリマー組成物である。
この実施形態において、(L)成分の反応性ケイ素基を含有する有機ポリマーは特に限定されるものではない。特開昭50−156599号公報、同54−6096号公報、同57−126823号公報、同59−78223号公報、同55−137129号公報、同62−230822号公報、同63−83131号公報、特開平3−47825号公報、同3−72527号公報、同3−122152号公報、同5−70531号公報、米国特許第3632577号、同4345053号、同4366307号、同4960844号、特開平7−316224号公報、同8−53514号公報、同8−253531号公報、同8−165389号公報、同8−337615号公報にそれぞれ開示されているものが例示される。
(L)成分としては、例えば、一般式:
表わされるポリマーを挙げることができる。
式中、R13およびR14は、いずれも炭素数1〜20のアラルキル基またはトリオルガノシロキシ基を示し、R13またはR14が2個以上存在するとき、それらは同一であっても異なっていてもよい。トリオルガノシロキシ基が特に好ましい。ここで、トリオルガノシロキシ基におけるケイ素原子に結合した有機基は、互いに同一でも異なっていてもよい、炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。また、X0は水酸基または加水分解性基を示し、X0が2個以上存在するとき、それらは同一であっても異なっていてもよい。cは0、1、2または3を、dは0、1または2をそれぞれ示し、c+Σd≧1を満足するものとする。さらに、各シロキシ単位におけるdは異なっていてもよい。nは0〜19の整数を示す。
X0で示される加水分解性基は、特に限定されない。例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。これらのうちで、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましいが、加水分解性が穏やかで取り扱いやすいという点から、メトキシ基のようなアルコキシ基が特に好ましい。
このような加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1〜3個結合することができ、(c+Σd)の値は1〜5であることが好ましい。反応性ケイ素基中に加水分解性基や水酸基が2個以上存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。また、反応性ケイ素基中にケイ素原子は1個あっても2個以上あってもよい。シロキサン結合などによりケイ素原子の連結された反応性ケイ素基の場合には、20個程度あってもよい。
上記に例示した反応性ケイ素基含有の有機ポリマーの中でも、主鎖が炭素数1〜4のポリオキシアルキレンであり、加水分解性ケイ素官能基であるジメトキシメチルシリル基を有するポリマーが特に好ましい。このような有機ポリマーにおいて、反応性ケイ素基はオキシプロピレン重合体1分子中に少なくとも1個、好ましくは1.1〜5個存在することが望ましい。ポリマー1分子中に含まれる反応性ケイ素基の数が1個未満になると、硬化性が不十分になり、良好なゴム弾性体が得られない。
反応性ケイ素基は、オキシプロピレン重合体の分子鎖の末端に存在してもよく、内部に存在してもよい。反応性ケイ素基が分子鎖の末端に存在すると、最終的に形成される硬化物に含まれるオキシプロピレン重合体成分の有効網目鎖量が多くなるため、高強度、高伸張で、低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなる。
実施形態の(L)有機ポリマーにおける主鎖を構成するオキシプロピレン重合体は、一般式:−CH(CH3)−CH2−O−で示される繰り返し単位を含有するものである。このオキシプロピレン重合体は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、これらの混合物であってもよい。また、他の単量体単位が含まれていてもよいが、前記一般式で表わされる単位が重合体中に50%以上、好ましくは80%以上存在することが好ましい。
なお、反応性ケイ素基を導入すると、導入前の重合体に比較して分子量分布が広がる傾向にあるので、導入前の重合体の分子量分布はできるだけ狭いことが好ましい。
反応性ケイ素基の導入は、以下に示す公知の方法で行うことができる。
(1)末端に水酸基等の官能基を有するオキシプロピレン重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基と不飽和基をそれぞれ有する有機化合物を反応させ、次いで得られた反応生成物に、加水分解性基を有するハイドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
(2)末端に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基(以下、Y官能基と示す。)を有するオキシプロピレン重合体に、Y官能基に対して反応性を示す官能基(以下、Y0官能基と示す。)および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
Y0官能基を有するケイ素化合物としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランのようなアミノ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのようなメルカプト基含有シラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)のようなメルカプト基含有シラン;ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランのようなビニル型不飽和基含有シラン;γ−クロロプロピルトリメトキシシランのようなハロゲン原子含有シラン;γ−イソシネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシランのようなイソシアネート基含有シラン等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
これらの方法の中で、(1)に示す方法、または(2)の方法のうちで、末端に水酸基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法が好ましい。
第3の実施形態における(N)成分の硬化触媒は、前記した(L)有機ポリマーの反応性ケイ素基を水分の存在下に反応させて架橋構造を形成し、ゴム状弾性体を得るための硬化触媒である。
このような(N)成分としては、鉄オクトエート、マンガンオクトエート、亜鉛オクトエート、スズナフテート、スズカプリレート、スズオレートのようなカルボン酸金属塩;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレート、ジフェニルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、ジブチルスズジメトキサイド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジオクチルスズジラウレート、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジブチルスズアセチルアセトナートのような有機スズ化合物;テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、1,3−プロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)のようなアルコキシチタン類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシがアルミニウムエチルアセトアセテート、トリエトキシアルミニウムなどの有機アルミニウム;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、テトライソプロポキシジルコニウムテトラブトキシジルコニウム、トリブトキシジルコニウムアセチルアセトネート、トリブトキシジルコニウムステアレートなどの有機ジルコニウム化合物;ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)などのアミン系化合物、あるいはこれらアミン系化合物のカルボン酸塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量アミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;などのシラノール縮合触媒、さらには他の酸性触媒、塩基性触媒などの公知のシラノール触媒などが例示される。
これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。微量の存在で大きな触媒能を持つことより、有機スズ化合物およびアルコキシチタン類の使用が好ましい。
(N)硬化触媒の配合量は、(L)成分100重量部あたり0.05〜25重量部、好ましくは0.1〜10重量部とする。0.05重量部未満では、硬化触媒として十分に作用せず、硬化に長い時間がかかるばかりでなく、特に空気との接触面から遠いゴム層の深部における硬化が不十分となり、逆に25重量部を超える場合には、硬化時に局部的に発熱や発泡が生じ、良好な硬化物が得られにくくなるばかりでなく、その配合量に見合う効果がなく、無意味であるばかりか経済的にも不利益である。
(M)成分であるシリカ粉末、および(O)成分であるアルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物としては、前記した第1の実施形態における(B)比表面積20〜800m2/gのシリカ粉末、および(D)アルキルシリルチタン化合物および/またはアルコキシシロキシチタン化合物と同様なものを使用することができる。
第3の実施形態においては、硬化前の組成物に適度の流動性を与え、硬化して得られるゴム状弾性体に高い機械的強度を付与するために、前記した(M)シリカ粉末以外に、公知の充填剤を配合することができる。このような充填剤としては、煙霧質シリカ、焼成シリカ、沈殿シリカ、煙霧質酸化チタン等の無機質充填剤、およびこれらの表面をオルガノクロロシラン類、ポリオルガノシロキサン類、ヘキサメチルジシラザンで疎水化したものなどの補強性充填剤、けいそう土、粉砕シリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、有機酸表面処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄のような非補強性充填剤が例示され、硬化後のゴム状弾性体に要求される物性に応じて選択される。
例えば、透明性が要求される場合には、煙霧質シリカを用いることが好ましく、建築用シーリング材として特に低いモジュラスを有することが要求される場合には、炭酸カルシウムを用いることが好ましい。上記の補強性充填剤の量が少なすぎると、機械的特性の向上の効果がほとんど現れず、逆に多すぎる場合には、モジュラスが大きくなり、破断時の伸びが小さくなる。従って、これらの充填剤の添加量は、(L)成分100重量部に対して1〜200重量部の範囲が好ましく、5〜100重量部がより好ましい。
また、とりわけ吐出性などの作業性を改善するために、実施形態の組成物に可塑材を配合してもよい。可塑材として、ジオクチルフタレートなどのフタレート類のようなエステル類;ポリエステル、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ−α−メチルスチレン、塩素化パラフィン、ポリクロロプレン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体のような高分子系化合物が例示される。(L)成分である反応性ケイ素基含有有機重合体は、温度により粘性が大きく変化するなどの問題があるため、前記化合物を可塑材として用いることにより、吐出性を改善することができ、特に冬期の低温時での作業が著しく改善される。
さらに、第3の実施形態の組成物には、目的に応じて、顔料、チクソトロピー性付与剤、押し出し作業性を改良するための粘度調整剤、紫外線吸収剤、防かび剤、耐熱向上剤、難燃化剤など、各種の添加剤を加えても良い。
第3の実施形態の組成物は、以上の全ての成分および必要に応じて各種添加剤を、湿気を遮断した状態で混合することにより得られる。得られた組成物は、密閉容器中でそのまま保存し、使用時に空気中の水分に曝すことによってはじめて硬化する、いわゆる1包装型室温硬化性組成物として使用することができる。また、実施形態の組成物を、例えば架橋剤と硬化触媒を分けた組成物として調製し、適宜2〜3個の別々の容器に分けて保存し、使用時にこれらを混合する、いわゆる多包装型室温硬化性組成物として使用することもできる。
この組成物は、湿気の存在しない密封条件下では安定であり、空気中の水分と接触することにより、室温で硬化してゴム状弾性体を生じる。特に、従来から難接着性といわれる基材に対し優れた接着性を有し、かつ貯蔵安定性に優れた室温硬化性組成物が得られる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部とあるのはいずれも重量部を表し、粘度などの物性値は、全て23℃、相対湿度50%での値を示す。
実施例1
粘度1,000mPa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部に、ジイソプロポキシビス(トリ−n−プロピルシリル)チタン0.20部を加え、常温で15分間均一に混合した後、比表面積が150m2/gの煙霧質シリカ14部を配合し、万能混合機により常温で1時間均一に混練した。
次いで、80〜100℃で30分間加熱減圧下で混練を行い、その後40℃以下に冷却した後、粘度100mPa・sのポリジメチルシロキサン25部を加え、常温で30分間均一に混合し、ベースコンパンド(B−1)を得た。
こうして得られたベースコンパンド(B−1)139部に、メチルトリメトキシシラン3.0部、トリス(N−トリメトキシプロピル)イソシアヌレート0.5部および硬化触媒であるジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.5部をそれぞれ加え、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
実施例2
粘度1,000mPa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部に、ジイソプロポキシビス(トリ−n−プロポキシシロキシ)チタン0.22部を加え、常温で15分間均一に混合した後、比表面積が150m2/gの煙霧質シリカ14部を配合し、万能混合機により常温で1時間均一に混練した。
次いで、80〜100℃で30分間加熱減圧下で混練を行い、その後40℃以下に冷却した後、粘度100mPa・sのポリジメチルシロキサン25部を加え、常温で30分間均一に混合し、ベースコンパンド(B−2)を得た。
こうして得られたベースコンパンド(B−2)139部に、メチルトリメトキシシラン3.0部、トリス(N−トリメトキシプロピル)イソシアヌレート0.5部およびジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.5部をそれぞれ加え、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
実施例3
粘度1,000mPa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部に、ジイソプロポキシビス(トリエトキシシロキシ)チタン0.22部を加え、常温で15分間間均一に混合した後、比表面積が150m2/gの煙霧質シリカ14部を配合し、万能混合機により常温で1時間均一に混練した。
次いで、80〜100℃で30分間加熱減圧下で混練を行い、その後40℃以下に冷却した後、粘度100mPa・sのポリジメチルシロキサン25部を加え、常温で30分間均一に混合し、ベースコンパンド(B−3)を得た。
こうして得られたベースコンパンド(B−3)139部に、メチルトリメトキシシラン3.0部、トリス(N−トリメトキシプロピル)イソシアヌレート0.5部およびジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.5部をそれぞれ加え、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
比較例1
粘度1,000mPa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部に、比表面積が150m2/gの煙霧質シリカ14部を加えて万能混合機に仕込み、常温で15分間均一に混合した後、さらに常温で1時間均一に混練した。
次いで、80〜100℃で30分間加熱減圧下で混練を行い、その後40℃以下に冷却した後、粘度100mPa・sのポリジメチルシロキサン25部を加え、常温で30分間均一に混合し、ベースコンパンド(C−1)を得た。
こうして得られたベースコンパンド(C−1)139部に、メチルトリメトキシシラン3.0部、トリス(N−トリメトキシプロピル)イソシアヌレート0.5部およびジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.5部をそれぞれ加え、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
比較例2
粘度1,000mPa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部に、テトラブトキシチタン0.14部を加え、常温で15分間均一に混合した後、比表面積が150m2/gの煙霧質シリカ14部を配合し、万能混合機により常温で1時間均一に混練した。
次いで、80〜100℃で30分間加熱減圧下で混練を行い、その後40℃以下に冷却した後、粘度100mPa・sのポリジメチルシロキサン25部を加え、常温で30分間均一に混合し、ベースコンパンド(C−2)を得た。
こうして得られたベースコンパンド(C−2)139部に、メチルトリメトキシシラン3.0部、トリス(N−トリメトキシプロピル)イソシアヌレート0.5部およびジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.5部をそれぞれ加え、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
比較例3
表面処理剤であるテトラブトキシチタンの代わりに、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)0.14部を用いて比較例3と同様な操作を行い、ベースコンパンド(C−3)を得た。次いで、得られたベースコンパンド(C−3)139部に、メチルトリメトキシシラン3.0部、トリス(N−トリメトキシプロピル)イソシアヌレート0.5部およびジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.5部をそれぞれ加え、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
比較例4
表面処理剤であるテトラブトキシチタンの代わりに、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート0.15部を用いて比較例3と同様な操作を行い、ベースコンパンド(C−4)を得た。次いで、得られたベースコンパンド(C−4)139部に、メチルトリメトキシシラン3.0部、トリス(N−トリメトキシプロピル)イソシアヌレート0.5部およびジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.5部をそれぞれ加え、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
比較例5
粘度1,000mPa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部に、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.2部を加え、常温で15分間均一に混合した後、比表面積が150m2/gの煙霧質シリカ14部とともに万能混合機に仕込み、常温で1時間均一に混練した。
次いで、80〜100℃で30分間加熱減圧下で混練を行い、その後40℃以下に冷却した後、粘度100mPa・sのポリジメチルシロキサン25部を加え、常温で30分間均一に混合し、ベースコンパンド(C−5)を得た。
こうして得られたベースコンパンド(C−5)139部に、メチルトリメトキシシラン3.0部、トリス(N−トリメトキシプロピル)イソシアヌレート0.5部およびジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.5部をそれぞれ加え、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
実施例4
粘度20,000mPa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部に、ジイソプロポキシビス(トリ−n−プロピルシリル)チタン0.20部を加え、常温で15分間均一に混合した後、比表面積が200m2/gの煙霧質シリカ15部を配合し、万能混合機により常温で1時間均一に混練した。
次いで、80〜100℃で30分間加熱減圧下で混練を行い、その後40℃以下に冷却した後、粘度100mPa・sのポリジメチルシロキサン20部を加え、常温で30分間均一に混合し、均一なベースコンパンド(B−4)を得た。
こうして得られたベースコンパンド(B−4)135部に、メチルトリメトキシシラン2.0部、トリス(N−トリメトキシプロピル)イソシアヌレート0.5部およびジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.0部をそれぞれ加え、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
実施例5
粘度20,000mPa・sのα,ω−ビス(メチルジメトキシシロキシ)ポリジメチルシロキサン100部に、ジイソプロポキシビス(トリエトキシシロキシ)チタン0.22部を加え、常温で15分間均一に混合した後、オクタメチルシクロテトラシロキサンで処理された比表面積が200m2/gの煙霧質シリカ15部を配合し、万能混合機により常温で1時間均一に混練した。
次いで、80〜100℃で45分間加熱減圧下で混練を行い、その後40℃以下に冷却した後、粘度100mPa・sのポリジメチルシロキサン25部を加え、常温で30分間均一に混合し、ベースコンパンド(B−5)を得た。
こうして得られたベースコンパンド(B−5)135部に、メチルトリメトキシシラン2.0部、トリス(N−トリメトキシプロピル)イソシアヌレート0.5部およびジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.0部をそれぞれ加え、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
実施例6
表面処理剤として、ジイソプロポキシビス(トリ−n−プロピルシリル)チタン0.20部の代わりにジイソプロポキシビス(トリメトキシシロキシ)チタン0.18部を用いて、実施例4と同様な操作を行い、ベースコンパンド(B−6)を得た。次いで、得られたベースコンパンド(B−6)135部に、メチルトリメトキシシラン2.0部、トリス(N−トリメトキシプロピル)イソシアヌレート0.5部およびジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.0部をそれぞれ加え、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
比較例6
表面処理剤を一切用いずに実施例4と同様な操作を行い、ベースコンパンド(C−5)を得た。次いで、得られたベースコンパンド(C−5)135部に、メチルトリメトキシシラン2.0部、トリス(N−トリメトキシプロピル)イソシアヌレート0.5部およびジイソプロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)2.0部をそれぞれ加え、湿気遮断下で均一に混合し、ポリオルガノシロキサン組成物を得た。
次に、実施例1〜6および比較例1〜6で調製し密封して保存したポリオルガノシロキサン組成物について、以下に示すようにして、指触乾燥時間、物理的特性、保存安定性、接着性および押し出し力をそれぞれ測定し評価した。
また、実施例1〜3および比較例1〜5で得られたポリオルガノシロキサン組成物については、初期および加熱促進後の粘度も測定した。さらに、実施例1〜3および比較例1〜5で得られたベースコンパンドについて、外観、収量、粘度および経時後の粘度を調べるとともに、経時後のベースコンパンドを用いて得られた組成物に関して、外観、粘度と指触乾燥時間および物理的特性を測定した。
なお、指触乾燥時間、物理的特性、保存安定性、接着性および押し出し力の測定は、それぞれ以下に示すようにして行った。
(a)指触乾燥時間:組成物を23℃、50%RHの雰囲気中に押し出した後、指で表面に接触して、乾燥状態にあることを確認するに至る時間を測定した。
(b)物理的特性:組成物を厚さ2mmのシ−ト状に押し出し、23℃、50%RHで168時間放置し、空気中の湿気により硬化させて、その物理的性質をJIS K 6301に拠り測定した。
(c)保存安定性:湿気を遮断した容器に組成物を入れ、70℃で5日間加熱した後、指触乾燥時間および粘度を、23℃,50%RHの雰囲気下で測定した。また、厚さ2mmのシ−ト状に押し出し、23℃,50%RHで168時間放置し、空気中の湿気により硬化させた後、その物理的性質をJIS K 6301により測定した。
(d)接着性:JIS K 6301の方法により、アルミニウム、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂をそれぞれ被着体として、接着状態(凝集破壊率など)を測定した。
(e)押し出し力:実際に市販されている333MLのカートリッジを用い、ノズルの先端を内径6.2mmに調整したものを装着し、カートリッジの底部のプランジャーを押し出す力をオートグラフにより測定した。
これらの測定結果を表1および表2に示す。
表1および表2からわかるように、実施例1〜6で調製されたポリオルガノシロキサン組成物は、比較例1〜6で得られた組成物に比べて保存安定性に優れ、湿気の存在しない密封条件下で安定であるうえに、空気中の水分と接触することによりはじめて室温で硬化した。また、貯蔵により硬化性が低下することがなく、接着性が良好で物理的特性に優れたゴム状弾性体が得られた。
実施例7
全末端の95%にメチルジメトキシシリル基を有する平均分子量16,000の線状ポリオキシプロピレン100重量部に、比表面積200m2/gの煙霧質シリカ3部と、ジイソプロポキシビス(トリエトキシシロキシ)チタン0.22部を添加し、均一に混合した。
次いで、60〜80℃で1時間加熱混練した後、減圧下で加熱混練を行い、40℃以下になるまで冷却混練を行った。次に、メチルトリメトキシシラン2.0部およびジブチルスズビス(アセチルアセテート)1.5部を加え、湿気遮断下で均一に混合し硬化性組成物を得た。
比較例7,8
実施例7と同様にして、全末端の95%にメチルジメトキシシリル基を有する平均分子量16,000の線状ポリオキシプロピレン100重量部に、メチルトリメトキシシラン2.0部およびジブチルスズビス(アセチルアセテート)1.5部を加え、湿気遮断下で均一に混合し組成物を得た。(比較例7)
また、シリカ粉末の表面処理剤として、ヘキサメチルジシラザン0.22部を使用した以外は実施例7と同様にして、組成物を得た。(比較例8)
実施例8
全末端の98%にメチルジメトキシシリル基を有する平均分子量7,000の線状ポリオキシプロピレン100重量部に、比表面積200m2/gの煙霧質シリカ3部と、ジイソプロポキシビス(トリイソプロピルシシロキシ)チタン0.23部をそれぞれ添加し、均一に混合した。
次いで、60〜80℃で1時間加熱混練した後、減圧下で加熱混練を行い、40℃以下になるまで冷却混練を行った。次に、メチルトリメトキシシラン2.0部およびジブチルスズビス(アセチルアセテート)1.5部を加え、湿気遮断下で均一に混合し、硬化性組成物を得た。
実施例9
全末端の96%にメチルジメトキシシリル基を有する平均分子量8,000の線状ポリイソブチレン100重量部に、比表面積130m2/gの煙霧質シリカ2部と、ジイソプロポキシビス(トリエトキシシロキシ)チタン0.2部をそれぞれ添加し、均一に混合した。
次いで、炭化水素系のプロセスオイルPS−32(出光興産社製)35重量部を添加し均一に混合した。次いで、60〜80℃で1時間加熱混練した後、減圧下で加熱混練を行い、40℃以下になるまで冷却混練を行った。次に、メチルトリメトキシシラン2.0部およびジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ1.5部を加え、湿気遮断下で均一に混合し硬化性組成物を得た。なお、2mm厚のシート状に硬化させるために、この組成物100重量部に0.05部の水を配合して硬化を促進させ、得られたシートの値を測定した。
比較例9,10
実施例9と同様にして、全末端の95%にメチルジメトキシシリル基を有する平均分子量8,000の線状ポリオキシプロピレン100重量部に、比表面積130m2/gの煙霧質シリカ2部添加し、均一に混合した。次に、炭化水素系のプロセスオイルPS−32の35重量部を添加し均一に混合した。次いで、60〜80℃で1時間加熱混練した後、減圧下で加熱混練を行い、40℃以下になるまで冷却混練を行った。
次いで、メチルトリメトキシシラン2.0部およびジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ1.5部を加え、湿気遮断下で均一に混合し組成物を得た。(比較例9)
また、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン0.2部を用いた以外は実施例9と同様にして、組成物を得た。(比較例10)
次に、実施例7〜9および比較例7〜10で調製し密封して保存した組成物について、実施例1〜6と同様にして、指触乾燥時間、物理的特性、保存安定性をそれぞれ測定し評価した。また、以下に示すようにして、接着性および耐腐食性を評価した。
(f)接着性:アルミニウム、銅、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂鋼板、ガラスをそれぞれ被着体として、各被着体上に組成物を塗布し、23℃,50%RHで168時間放置し、空気中の湿気により硬化させた後、硬化物と被着体とを剥離(180°の方向)させることにより、その凝集破壊を観察した。そして、接着性を定性的に評価した。なお、良好を○、良好だが不十分を△、接着しないを×でそれぞれ示した。
(g)銅板腐食試験:1000mlのガラス瓶に、硬化触媒を添加する前のベースコンパンド15gを試験試料として入れ、ガラス瓶の上部(蓋の下)に、1000メッシュで研磨した後にアセトンで十分洗浄した厚さ1mmの銅板を吊るし、内蓋をバルカーテープで外蓋をビニールテープで密閉状態にした。この試験体を、40℃、85%RHの雰囲気下に168時間放置した後、銅板表面の状態を観察した。ベースコンパンドを含まない試験体をブランクとして準備し、比較を行った。なお、表面状態がブランクと差がないものを○、表面に赤褐色の付着物が多いものを×でそれぞれ示した。
実施例10
エピコ−ト828(ビスフェノール型エポキシ樹脂の商品名、油化シェル社製)20部に、比表面積150m2/gの煙霧質シリカ5部とジイソプロポキシビス(トリエトキシシロキシ)チタン0.3部をそれぞれ加え、均一に混合した。
次に、60〜80℃で1時間加熱混練した後、減圧下で加熱混練を行い、40℃以下になるまで冷却混練を行った。次いで、エピコート828の50部を徐々に加え、均一になるように混合し、組成物を得た。
こうして得られた組成物の粘度を測定したところ、312mPa・sであった。また、湿気を遮断した容器にこの組成物を入れ、70℃で5日間加熱した後、同様に粘度測定を行った。加熱促進後の粘度は322mPa・sであり、粘度の増加は極めて小さかった。
比較例11〜13
表面処理剤を用いず、実施例10と同様の操作を行い、比較例11の組成物を得た。この組成物の粘度を測定したところ、405mPa・sであった。湿気を遮断した容器にこの組成物を入れ、70℃で5日間加熱した後、同様に粘度測定を行ったところ、粘度は572mPa・sであり、粘度の増加が大きかった。
また、表面処理剤として、ヘキサメチルジシラザン0.3部を用いた以外は実施例10と同様にして、比較例12の組成物を得た。この組成物は混練中に著しい増粘を生じたため、調製を中止した。
さらに、比較例13として、予めヘキサメチルジシラザンで表面処理を行ったシリカ粉末を用い、実施例10と同様にして組成物を調製した。この組成物の粘度を実施例10と同様にして測定したところ、初期の粘度が341mPa・s、加熱促進後の粘度が452mPa・sであり、粘度の増加が大きかった。
実施例11
エピコ−ト152(ノボラック型エポキシ樹脂の商品名、油化シェル社製)を使用し、シリカ表面処理剤としてジイソプロポキシビス(トリイソプロポキシシロキシ)チタン0.3部を用いた以外は実施例10と同様にして、組成物を調製した。
こうして得られた組成物の粘度を測定したところ、61mPa・sであった。また、湿気を遮断した容器にこの組成物を入れ、実施例10と同様にして加熱促進後の粘度を測定したところ、66mPa・sであり、粘度の増加は極めて小さかった。
比較例14,15
表面処理剤を用いず、実施例11と同様の操作を行い、比較例14の組成物を得た。この組成物の粘度を測定したところ、72mPa・sであった。湿気を遮断した容器にこの組成物を入れ、実施例11と同様にして加熱促進後の粘度を測定したところ、102mPa・sであり、粘度の増加が大きかった。
また、比較例15として、予めヘキサメチルジシラザンで表面処理を行ったシリカ粉末を用い、実施例11と同様にして組成物を調製した。この組成物の粘度を実施例11と同様にして測定したところ、初期の粘度が77mPa・s、加熱促進後の粘度が241mPa・sであり、粘度の増加が極めて大きかった。
実施例12
(ベース組成物の調製)
分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された粘度40,000mPa・sのポリジメチルシロキサン50部と、比表面積が300m2/gの煙霧質シリカ40部と、水3部とを均一に混合し、これにジイソプロポキシビス(トリ−n−プロピルシリル)チタン2部を加えて1時間混練した後、150℃で2時間加熱混練し、次いで2時間加熱減圧混練を行った。その後、分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された粘度40,000mPa・sのポリジメチルシロキサン50部と、側鎖および両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された粘度5,000mPa・sのポリジメチルシロキサン10部を加えて均一に混合した後、1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン−白金酸錯体溶液を白金換算で0.05部均一に混合し、ベース組成物を得た。
(硬化剤組成物の調製)
分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された粘度40,000mPa・sのポリジメチルシロキサン50部と、比表面積が300m2/gの煙霧質シリカ40部と、水3部とを均一に混合し、これにジイソプロポキシビス(トリ−n−プロピルシリル)チタン2部を加えて1時間混練した後、150℃で2時間加熱混練し、次いで2時間加熱減圧混練を行った。その後、分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された粘度40,000mPa・sのポリジメチルシロキサン50部を加えて均一に混合した後、両末端がジメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(粘度25mPa・s)5部と、メチルハイドロジェンシロキシ単位を30%含み両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン5部(粘度60mPa・s)、および反応調整剤として粘度100mPa・sのアルキニロキシポリシロキサン0.3部を加えて均一に混合し、硬化剤組成物を得た。
(硬化性組成物の調製)
ベース組成物100部に対して硬化剤組成物100部を配合して十分に混合し、硬化性組成物を得た。こうして得られた組成物の粘度は3,750,000mPa・sであった。
次いで、この硬化性組成物を2mm厚のシート状に成形し、130℃で30分間加熱処理することによりシリコーンゴムシートを得た。
得られたシートの物性は以下のとおりであった。
・硬さ:38
・引張り強さ:6.0MPa
・伸び:740%
また、ベース組成物と硬化剤組成物を10gずつ、蒸留水20gとともに1000mlのガラス瓶に加え、ガラス瓶の上部(蓋の下)に、1000メッシュで研磨した後にアセトンで十分洗浄した厚さ1mmの銅板を吊るし、内蓋をバルカーテープで外蓋をビニールテープで密閉状態にして試験体を作成した。この試験体を、40℃、85%RHの雰囲気下に168時間放置した後、銅板表面の状態を観察した。ベース組成物を含まない試験体をブランクとして準備し比較を行ったところ、銅板表面の状態はブランクと差異がなかった。
比較例16
シリカ粉末の表面処理剤であるジイソプロポキシビス(トリ−n−プロピルシリル)チタンを配合しない以外は実施例12と同様にして、ベース組成物および硬化剤組成物を調製し、これらを混合して硬化性組成物を得た。こうして得られた組成物の粘度は4,250,000mPa・sであった。
また、この組成物から得られたシートの物性を測定したところ、以下のとおりであり、実施例12により得られたシートに比べて大幅に劣るものであった。
・硬さ:33
・引張り強さ:4.2MPa
・伸び:550%
また、硬化性組成物について、実施例12と同様に腐食性試験を行ったところ、銅板表面の状態はブランクと差異がなかった。
比較例17
シリカ粉末の表面処理剤としてヘキサメチルジシラザンを使用した以外は実施例12と同様にして、ベース組成物および硬化剤組成物を調製し、これらを混合して硬化性組成物を得た。こうして得られた組成物の粘度は3,810,000mPa・sであった。
次いで、この組成物から得られたシートの物性を測定したところ、以下のとおりであり、硬化が十分に行われていないことがわかった。
・硬さ:19
・引張り強さ:2.5MPa
・伸び:1210%
また、硬化性組成物について、実施例12と同様に腐食性試験を行ったところ、銅板表面に黒褐色の付着物があり、表面が黒く錆びた状態になった。
比較例18
比較例17と同様に、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザンを配合するとともに、表面処理剤を配合後混練を1時間行い、さらに150℃で加熱混練を2時間行った後、2時間加熱減圧混練を行った。得られた硬化性組成物の粘度は3,810,000mPa・sであった。
次いで、この硬化性組成物について腐食性試験を行ったところ、銅板表面の状態はブランクと差異がなかったが、調製工程上の経済的な不利益は大きかった。
また、得られたシートの物性は以下のとおりであった。
・硬さ:37
・引張り強さ:5.5MPa
・伸び:810%