JP2005238262A - 薄板鋼板の栓溶接方法 - Google Patents

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Hiroshi Iwasaki
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Abstract

【課題】 上側鋼板と下側鋼板とを所望の溶接強度で簡単かつ効率よく栓溶接できる薄板鋼板の栓溶接方法を提供する。
【解決手段】 上下に重ね合わせた比較的厚板の下側鋼板1と比較的薄板の上側鋼板2とを、上側鋼板2に形成された栓溶接用穴2aを埋めるように消耗電極式アーク溶接トーチ3を用いてアーク溶接する薄板鋼板の栓溶接方法において、下側鋼板1の板厚に応じた厚板溶接条件で栓溶接用穴2aの中央部でアーク溶接して、下側鋼板1に溶け込んで盛り上がった厚板溶接条件ビード3を形成する第1溶接ビード形成工程と、上側鋼板2の板厚に応じた薄板溶接条件で、消耗電極式アーク溶接トーチ3を栓溶接用穴2aの周方向に沿って移動させて、上側鋼板2および厚板溶接条件ビード4に溶け込んだ薄板溶接条件ビード5を形成する第2溶接ビード形成工程とを有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、上下に重ね合わせた比較的厚板の下側鋼板と比較的薄板の上側鋼板とを、該上側鋼板に形成された栓溶接用穴を埋めるように消耗電極式アーク溶接トーチを用いてアーク溶接する薄板鋼板の栓溶接方法に関する。
例えば、自動車のエンジンルームと車室内とを仕切るトーボード部の製造においては、厚さが例えば1.2mm〜2.3mmの下側鋼板上に、厚さが例えば0.7mmの上側鋼板を重ね合わせて、上側鋼板に形成された栓溶接用穴を消耗電極式アーク溶接トーチにて穴埋めするようにアーク溶接する栓溶接方法が採用されている。
このトーボード部における従来の栓溶接方法としては、消耗電極式アーク溶接トーチを栓溶接用穴の周方向に沿って移動させながら、溶接ビードが下側鋼板に溶け込む溶接条件でアーク溶接する方法や、消耗電極式アーク溶接トーチを栓溶接用穴の中心部に固定した状態で、溶接ビードが下側鋼板に溶け込む溶接条件でアーク溶接する方法が知られている。
ところが、前者の栓溶接方法にあっては、溶接ビードが下側鋼板に溶け込む溶接条件でアーク溶接するため、上側鋼板に溶け落ちが発生する場合がある。また、後者の栓溶接方法にあっては、溶接ビードが下側鋼板に溶け込む溶接条件でアーク溶接しても、上側鋼板の栓溶接用穴の周辺に、部分的あるいは全周に亘って溶け落ちが発生する場合がある。さらに、いずれの溶接方法においても、下側鋼板と上側鋼板との間に隙間があると、上側鋼板の溶け落ちがより発生し易くなる。
このように、上側鋼板に溶け落ちが生じると、所望の溶接強度が得られないばかりでなく、トーボード部から車室内に漏水が発生するおそれがある。
しかしながら、上記の従来の栓溶接方法では、溶け落ちが発生しないように溶接条件を設定するのは極めて困難で、熟練を要することから、溶接効率が低下することが懸念されている。
一方、消耗電極式アーク溶接トーチを用いて、アルミまたはアルミ合金からなるアルミ系ワークを栓溶接する方法として、アーク溶接トーチを上側ワークに形成された下穴の周方向に移動させて下層ビードを形成する接合工程と、アーク溶接トーチを下穴の周方向に移動させて上層ビードを形成する穴埋め工程と、アーク溶接トーチを下穴の中心部に固定して上層ビードの中央の窪みを埋める仕上げ工程とを順次に実行すると共に、接合工程から穴埋め工程にかけてアーク溶接トーチに対する極性比率を正極性の比率が徐々に増加するように変化させてアーク溶接する方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に開示の栓溶接方法によると、アーク溶接トーチに対する正極性の比率を徐々に増加させることで、接合工程では、下側ワークの溶け落ちを防止して、下層ビードを下穴のルート部(上側ワークの下穴内周面と下側ワークの上面とで成す穴底コーナー部)に充分溶け込ませることができ、穴埋め工程では、上層ビードの盛り上がり性を良好にして下穴を効率よく埋めることができる。
特開平11−314154号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示の栓溶接方法では、下側ワークと上側ワークとがほぼ同じ厚さを有する場合には、接合工程において、上側ワークの下穴周辺に溶け落ちを生じることなく下層ビードを形成することができるが、上側ワークの厚さが下側ワークの厚さよりも薄いと、この接合工程において上側ワークの下穴周辺に溶け落ちが生じることになる。しかも、後工程の穴埋め工程では、単に下穴を埋めるように上層ビードを形成するだけであるため、接合工程で生じた上記の上側ワークの溶け落ち部分は、穴埋められることなく、そのまま残存することになる。
このため、上記特許文献1に開示の栓溶接方法を、単に、比較的厚板の下側鋼板と比較的薄板の上側鋼板との栓溶接に適用しても、上述した従来の薄板鋼板の栓溶接方法と同様に、上側鋼板の溶け落ちによって所望の溶接強度が得られないことになり、さらに車両のトーボード部の栓溶接においては、車室内への漏水が発生するおそれがある。
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、上側鋼板に溶け落ち部分が残存することなく、上側鋼板と下側鋼板とを所望の溶接強度で簡単かつ効率よく栓溶接できる薄板鋼板の栓溶接方法を提供することにある。
上記目的を達成する請求項1に記載の薄板鋼板の栓溶接方法の発明は、上下に重ね合わせた比較的厚板の下側鋼板と比較的薄板の上側鋼板とを、該上側鋼板に形成された栓溶接用穴を埋めるように消耗電極式アーク溶接トーチを用いてアーク溶接する薄板鋼板の栓溶接方法において、上記下側鋼板の板厚に応じた厚板溶接条件で、上記栓溶接用穴の中央部でアーク溶接して、上記下側鋼板に溶け込んで盛り上がった厚板溶接条件ビードを形成する第1溶接ビード形成工程と、上記上側鋼板の板厚に応じた薄板溶接条件で、上記消耗電極式アーク溶接トーチを上記栓溶接用穴の周方向に沿って移動させて、上記上側鋼板および上記厚板溶接条件ビードに溶け込んだ薄板溶接条件ビードを形成する第2溶接ビード形成工程と、を有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の薄板鋼板の栓溶接方法において、上記第2溶接ビード形成工程後に、上記薄板溶接条件よりも電圧 が高い溶接条件で、上記栓溶接用穴の中央部をアーク溶接して、上記厚板溶接条件ビードおよび上記薄板溶接条件ビードの上部を平坦にするビード平滑用ビードを形成する第3溶接ビード形成工程を行うことを特徴とする。
請求項1の発明によると、厚板溶接条件ビードを形成する際に、上側鋼板の栓溶接用穴の周辺部に溶け落ちが発生しても、この溶け落ち部分は、その後に形成される薄板溶接条件ビードが溶け込むことによって穴埋めされることになる。したがって、上側鋼板に溶け落ち部分が残存することがないので、上側鋼板と下側鋼板とを所望の溶接強度で簡単かつ効率よく栓溶接することができる。
請求項2の発明によると、ビード平滑用ビードによって、薄板溶接条件ビードと厚板溶接条件ビードとの凹凸が平滑されるので、後工程での加工が容易になる。
以下、本発明による薄板鋼板の栓溶接方法の一実施の形態について、図1を参照して説明する。
図1(a)乃至(e)は本実施の形態による栓溶接方法の順次の工程を示すものである。本実施の形態では、車両のトーボード部に用いられる厚さが例えば1.2mm〜2.3mmの下側鋼板(母材)1上に、厚さが例えば0.7mmの上側鋼板2を重ね合わせて、上側鋼板2に形成された例えば直径7mmの栓溶接用穴2aを消耗電極式アーク溶接トーチ3にて穴埋めするようにアーク溶接するものである。
先ず、下側鋼板1上に上側鋼板2を重ね合わせた状態で、図1(a)に示すように、消耗電極式アーク溶接トーチ3を栓溶接用穴2aの中心部に臨ませて固定し、その状態で下側鋼板1の板厚に応じた厚板溶接条件で、栓溶接用穴2aをアーク溶接して、図1(b)に示すように、下側鋼板1に溶け込んで上側鋼板2よりも盛り上がった厚板溶接条件ビード4を形成する(第1溶接ビード形成工程)。
この第1溶接ビード形成工程では、下側鋼板1の板厚に応じた厚板溶接条件で厚板溶接条件ビード4を形成するため、上側鋼板2の栓溶接用穴2aの周辺部には、部分的にまたは全周に亘って溶け落ちが発生する場合がある。
次に、図1(c)および(d)に示すように、上側鋼板2の板厚に応じた薄板溶接条件で、消耗電極式アーク溶接トーチ3を栓溶接用穴2aの周方向に沿って移動させて、上側鋼板2および厚板溶接条件ビード4に溶け込んだ薄板溶接条件ビード5を形成する(第2溶接ビード形成工程)。
これにより、第1溶接ビード形成工程において上側鋼板2の栓溶接用穴2aの周辺部に発生した溶け落ち部分を薄板溶接条件ビード5によって埋めると共に、第1溶接ビード形成工程において栓溶接用穴2aの周辺部と厚板溶接条件ビード4の周辺部との間に隙間が残存する場合には、この隙間を埋める。
その後、図1(e)に示すように、消耗電極式アーク溶接トーチ3を栓溶接用穴2aの中央部に移動させて、第2溶接ビード形成工程における薄板溶接条件よりも電圧が高い溶接条件でアーク溶接して、厚板溶接条件ビード4と薄板溶接条件ビード5との上部の凹凸を滑らかにするビード平滑用ビード6を形成する(第3溶接ビード形成工程)。
このように、ビード平滑用ビード6を形成して、厚板溶接条件ビード4および薄板溶接条件ビード5の上部を平坦にすることで、後工程でのトーボードの加工を容易にできる。
以上のように、本実施の形態によれば、厚板溶接条件ビード4を形成する際に、上側鋼板2の栓溶接用穴2aの周辺部に溶け落ちが発生しても、この溶け落ち部分は、その後に形成される薄板溶接条件ビード5が溶け込むことによって穴埋めされるので、上側鋼板2に溶け落ち部分が残存することがない。したがって、上側鋼板2を母材である下側鋼板1に所望の溶接強度で簡単かつ効率よく栓溶接することができ、車室内への漏水の発生を確実に防止することができる。
なお、溶接強度については、例えば、下側鋼板1の厚さが1.2mm、上側鋼板2の厚さが0.7mm、栓溶接用穴2aの直径が7mmの場合には、引張りせん断強度を5.8〜7.2(kN)とすることができ、下側鋼板1の厚さが2.3mm、上側鋼板2の厚さが0.7mm、栓溶接用穴2aの直径が7mmの場合には、引張りせん断強度を5.2〜8.1(kN)とすることができる。
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本発明は車両のトーボード部の栓溶接に限らず、上下に重ね合わせた比較的厚板の下側鋼板と比較的薄板の上側鋼板との栓溶接に広く採用することができる。また、上記実施の形態では、第1溶接ビード形成工程において、消耗電極式アーク溶接トーチ3を栓溶接用穴2aの中心部に臨ませて固定し、その状態でアーク溶接して厚板溶接条件ビード4を形成するようにしたが、栓溶接用穴2aの大きさに応じて、その中央部において消耗電極式アーク溶接トーチ3を、栓溶接用穴2aに対して1/3程度の直径の円周に沿って移動させて厚板溶接条件ビード4を形成するようにしてもよい。さらに、第3溶接ビード形成工程は、省略することもできる。
本発明の実施の形態における順次の工程を示す図である。
符号の説明
1 下側鋼板
2 上側鋼板
2a 栓溶接用穴
3 消耗電極式アーク溶接トーチ
4 厚板溶接条件ビード
5 薄板溶接条件ビード
6 ビード平滑用ビード

Claims (2)

  1. 上下に重ね合わせた比較的厚板の下側鋼板と比較的薄板の上側鋼板とを、消耗電極式アーク溶接トーチを用いて上記鋼板に形成された栓溶接用穴を埋めてアーク溶接する薄板鋼板の栓溶接方法において、
    上記下側鋼板の板厚に応じた厚板溶接条件で、上記栓溶接用穴の中央部でアーク溶接して、上記下側鋼板に溶け込んで盛り上がった厚板溶接条件ビードを形成する第1溶接ビード形成工程と、
    上記上側鋼板の板厚に応じた薄板溶接条件で、上記消耗電極式アーク溶接トーチを上記栓溶接用穴の周方向に沿って移動させて、上記上側鋼板および上記厚板溶接条件ビードに溶け込んだ薄板溶接条件ビードを形成する第2溶接ビード形成工程と、
    を有することを特徴とする薄板鋼板の栓溶接方法。
  2. 上記第2溶接ビード形成工程後に、上記薄板溶接条件よりも電圧が高い溶接条件で、上記栓溶接用穴の中央部をアーク溶接して、上記厚板溶接条件ビードおよび上記薄板溶接条件ビードの上部を平坦にするビード平滑用ビードを形成する第3溶接ビード形成工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の薄板鋼板の栓溶接方法。
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