JP2005215603A - 光導波路モジュール及び光ファイバ - Google Patents

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Abstract

【課題】 光導波路に光ファイバを接続してケースに納めた光導波路モジュールにおいて、その封止性能を向上させる。
【解決手段】 ファイバ心線24を接続されたベアモジュールを密閉構造のケース22に収容し、ケース22を貫通させてケース22からファイバ心線24を引き出す。ファイバ心線24がケース22を貫通する箇所において、ファイバ心線24とケース22との間の隙間にエポキシ樹脂51を充填して当該隙間を封止すると共にファイバ心線24をケース22に固定する。しかも、ファイバ心線24の被覆にエポキシ樹脂51を含浸させることにより、ファイバ心線24のケース22を貫通する部分の被覆の密度を高め、ファイバ心線24の被覆内に侵入した水蒸気やガス等が被覆を通ってケース22内に侵入できないよう被覆内部を封止する。
【選択図】 図9

Description

本発明は、光導波路モジュール及び光ファイバに関する。特に、光導波路モジュールの封止構造に関するものである。
光通信に用いられる光導波路モジュールにおいて、光導波路モジュールを構成している光導波路等が水蒸気や活性気体等に接触すると、時間の経過とともに徐々に性能が劣化することがある。そのため、光通信用モジュールでは、その信頼性と安定性を保つために封止構造が要求される。
光導波路モジュールの封止構造としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。図1は当該封止構造の要部を示す断面図である。図1において符号11で示すものは筺体であり、この内部には単芯又は8芯のファイバ心線12を接続された光導波路(図示せず)が収容されている。そして、筐体11と光導波路の間の空間にはシリコンゲル13が充填されており、ファイバ心線12は筐体11から外部へ引き出されている。図1に示す引き出し部分においては、筐体11に筒状のファイバ貫通部14を設け、保護チューブ15を被せたファイバ心線12をファイバ貫通部14に挿通させ、保護チューブ15とファイバ貫通部14との間に気密性の高いエポキシ樹脂16を充填している。さらに、ファイバ貫通部14の両端部と保護チューブ15の両端部には可撓性エポキシ樹脂17を塗布して封止し、ファイバ貫通部14及び保護チューブ15をゴム製スリーブ18で覆っている。
しかしながら、このような封止構造は、その構造が複雑であるばかりでなく、ファイバ心線12が貫通する部分に気密性の高いエポキシ樹脂16を充填して封止しているだけであるので、ファイバ心線12の被覆の封止性能は不十分であった。すなわち、ファイバ心線12の被覆は水蒸気やガスを透過するので、外部から被覆内に侵入した水蒸気やガスの分子が被覆に沿って移動することにより封止部分を通過し、筐体11の内部に水蒸気やガスが侵入する恐れがあった。また、ファイバ心線を構成する被覆とファイバ素線との密着性は小さく設定されているため被覆とファイバ素線との間には微細な隙間が生じており、被覆を透過して被覆とファイバ素線との間に水蒸気やガスが侵入すると、被覆とファイバ素線との間が侵入パスとなり、封止性能が損なわれる恐れがあった。
別な封止構造としては、特許文献2に開示されたものがある。この封止構造では、ファイバ心線の被覆を剥がして裸光ファイバを露出させ、その裸光ファイバを光導波路等に接続し、この光導波路等をアルミ箔とポリエチレンを積層した2枚の水蒸気バリアフィルム間に収容してヒートシールし、さらにシール部分の周囲に封止剤を塗布して硬化させている。
この別な封止構造では、封止部分において被覆を剥がしているので、被覆を透過して内部に侵入した水蒸気やガスによる封止性能の劣化は避けることができるが、封止部分におけるファイバ心線の被覆を剥がして封止しなければならないので、封止作業の工数が多くなるという問題がある。また、裸光ファイバが外部に露出するので、裸光ファイバに傷がつく心配があった。
特開平7−230010号公報 特開2001−116950号公報
本発明は上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光導波路に光ファイバを接続してケースに収容した光導波路モジュールにおいて、ファイバ心線の被覆を剥がすことなく簡単な構造で封止構造を実現することにある。
本発明にかかる光導波路モジュールは、光導波路と、前記光導波路のコアと光学的に結合するように接続された光ファイバとを有する光導波路モジュールにおいて、前記光ファイバの被覆に樹脂を含浸させたものである。
前記樹脂としては、何らかの方法(例えば、加熱条件下)で光ファイバの被覆内に浸透させることができるものであればよい。例えば、前記樹脂は、加熱により硬化前に非常に浸透性のよくなる樹脂であることが望ましい。また、この樹脂は、硬化後には被覆内を水蒸気やガスが通過しないよう遮断できるだけの耐透湿性又は気密性を有するものであればよく、エポキシ系樹脂やカチオン系樹脂が好ましい。また、光ファイバの被覆の種類は問わず、裸光ファイバを覆う1次被覆であってもいいし、ファイバ素線を覆う2次被覆であってもよい。
本発明の光導波路モジュールにあっては、光ファイバの被覆に樹脂を含浸させているので、含浸された樹脂によって被覆の密度を高めることができ、水蒸気や活性気体などが光ファイバの被覆内を移動して侵入したり、被覆とファイバ素線などとの間の隙間を通って侵入したりするのを抑制することができる。よって、光導波路モジュールの封止性能を高め、その信頼性と安定性を向上させることができる。また、水蒸気やガスが浸入するのを防止するために光ファイバの被覆を剥がす必要がないので、光ファイバの加工の手間を省くことができ、また、裸光ファイバを露出させる必要が無いので、裸光ファイバに傷がつく心配がない。
本発明の一実施態様においては、前記光導波路が封止用のケースに収容されていて前記光ファイバが前記ケースから外部に引き出されており、前記樹脂は、前記光ファイバが前記ケースを貫通する箇所において前記光ファイバの被覆に含浸されて被覆の密度を高めている。かかる実施態様によれば、光ファイバの被覆を伝ってケースの外部からケースの内部へ水蒸気やガスが侵入するのを防ぐことができ、光導波路モジュールの封止性能を高めることができる。
さらに、この実施態様における前記樹脂は、前記光ファイバが前記ケースを貫通する箇所において前記光ファイバと前記ケースとの間の隙間を封止する封止剤を兼ねていてもよい。この場合には、光ファイバの被覆に含浸させる樹脂が、光ファイバの貫通部分で光ファイバとケースとの間の隙間を封止する封止剤を兼ねるので、コストを安価にすると共に光導波路モジュールの生産性も向上する。
本発明の別な実施態様においては、前記ケース内に吸湿機能のある材料が収容されている。ケース内に吸湿機能のある材料を収容しておくことにより、光導波路モジュールの耐湿性能をさらに向上させることができる。
また、本発明のさらに別な実施態様においては、前記樹脂は、前記光ファイバの先端部を保持するファイバ保持部から前記光ファイバが露出した部分において前記光ファイバの被覆に含浸されて被覆の密度を高めている。かかる実施態様によれば、光ファイバの被覆を伝ってファイバ保持部に水蒸気やガスが侵入し、光導波路に達するのを防ぐことができ、光導波路モジュールの封止性能を高めることができる。
さらに、この実施態様において、前記ファイバ保持部は、前記光ファイバを挟み込むための基板とファイバ押えとを有し、前記樹脂は、前記光ファイバを保持した前記基板と前記ファイバ押えとを接着する接着剤を兼ねていてもよい。この場合には、光ファイバの被覆に含浸させる樹脂が、基板とファイバ押えとを接着するための接着剤を兼ねるので、コストを安価にすると共に光導波路モジュールの生産性も向上する。
本発明にかかる光ファイバは、被覆に樹脂を含浸させて被覆の密度を高めたものであり、この光ファイバを用いることによって光導波路モジュールの封止性能を高めることができる。
なお、この発明の以上説明した構成要素は、可能な限り任意に組み合わせることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に従って詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
図2は本発明の一実施形態による光導波路モジュール21の外観斜視図であり、図3は図2のA−A線断面図である。図4はケースカバー31を外した状態の光導波路モジュール21を示す斜視図である。この光導波路モジュール21にあっては、封止用のケース22内にベアモジュール23が収容されており、ベアモジュール23から延長されたファイバ心線24とファイバ素線25とがケース22から外部に引き出されている。本明細書においては、コアの外周にクラッドを形成したものを裸光ファイバといい、裸光ファイバをUV被覆のような1次被覆で覆ったものをファイバ素線といい、ファイバ素線を2次被覆で覆ったものをファイバ心線(単芯のものと、複数芯のものとがある。)という。ここで説明する実施形態においては、ファイバ心線24は例えば4本の裸光ファイバを束ねた4芯のテープ心線であり、ファイバ素線25は単芯のファイバ素線である。
ケース22は、溝形にプレス加工されたアルミニウム等の金属製の保持部材26と、保持部材26内の両端部に固定されたファイバ支持部27、28と、ファイバ支持部27、28の上面に接着される押え部材29、30と、逆溝形にプレス加工されたアルミニウム等の金属製のケースカバー31とから構成されている。ファイバ支持部27、28及び押え部材29、30は、アルミナ等の緻密なセラミックでできており、保持部材26の両端部を塞いでいる。ケースカバー31は保持部材26の上面開口を塞ぐことができるように形成されている。押え部材29の下面にはファイバ心線24を通過させるための溝32が凹設されている。また、押え部材30の下面にはファイバ素線25を通過させるための溝33が凹設されており、押え部材30にはケース22の内部と外部を通気させるための通気孔34が形成されている。
図5はベアモジュール23の斜視図であり、図6はその分解斜視図である。ベアモジュール23は、光導波路35とその両側に接合されたファイバ保持部36、37とからなる。光導波路35は、透明樹脂によって形成された下クラッド38の上面に溝を形成し、この溝に下クラッド38よりも屈折率の大きな透明樹脂を埋め込んでコア39を形成し、下クラッド38の上面にコア39よりも屈折率の小さな透明樹脂からなる上クラッド40を接合させたものである。光導波路35のコア39の端面は、光導波路35の両端面において露出している。
ファイバ保持部36は、上面に複数本のV溝45を形成した基板41とファイバ押え43とからなる。図7(a)に示すように、ファイバ心線24は先端部で2次被覆48及び1次被覆56を剥いで各裸光ファイバ55を露出させてあり、この裸光ファイバ55を基板41のV溝45内に位置決め保持させ、その上にUV硬化型接着剤を塗布してファイバ押え43を重ね、ファイバ押え43で裸光ファイバ55を押さえるようにして基板41とファイバ押え43を接着一体化している。同様に、ファイバ保持部37は、上面に1本のV溝46を形成した基板42とファイバ押え44とからなる。図7(b)に示すように、ファイバ素線25は先端部で1次被覆58を剥いで裸光ファイバ49を露出させてあり、この裸光ファイバ49を基板42のV溝46内に位置決め保持させ、その上にUV硬化型接着剤を塗布してファイバ押え44を重ね、ファイバ押え44で裸光ファイバ49を押さえるようにして基板42とファイバ押え44を接着一体化している。なお、ファイバ保持部36、37としては、市販のフェルールやファイバアレイ、コネクタなどを用いてもよい。
図8(a)、図8(b)、図8(c)、図9(a)及び図9(b)は、上記光導波路モジュール21の組立工程の手順を示す断面図である。なお、図8(a)の向かって右の図は同左図の右側面を表し、図8(b)〜図9(b)における左の図はケース22を長手方向に沿って切断した光導波路モジュール21の断面図を表し、図8(b)〜図9(b)の右の図は同左図のファイバ支持部28及び押え部材30の位置における断面図を表している。以下、これらの図を参照して光導波路モジュール21の組立手順を説明すると共に光導波路モジュール21の封止構造を説明する。
まず、図8(a)に示すように、ファイバ心線24の先端部を保持したファイバ保持部36とファイバ素線25の先端部を保持したファイバ保持部37を光導波路35の両端に接着して一体化し、ベアモジュール23を作製する。ついで、硬化後も弾性を有する接着剤(例えば、セメダイン・スーパーX)によりベアモジュール23の底面にスポンジ等の軟質シート状をした緩衝材47を貼り付ける。そして、保持部材26の内底面と両端部内面にエポキシ樹脂50を塗布し、図8(b)に示すように、保持部材26の両端部にファイバ支持部27、28を嵌め込んで保持部材26に接着させると共に、ベアモジュール23を保持部材26の底部に収容して緩衝材47を保持部材26の内底面に接着する。
ついで、図8(c)に示すように、ファイバ支持部27、28の上面と保持部材26の両端部の内面上部に硬化前のエポキシ樹脂51を塗布してファイバ支持部27、28の上にそれぞれ押え部材29、30を重ねて接着する。こうして、ファイバ心線24を押え部材29の溝32とファイバ支持部27の間を通過させて外部へ引き出し、また、ファイバ素線25を押え部材30の溝33とファイバ支持部28の間を通過させて外部へ引き出す。このとき、ファイバ心線24やファイバ素線25の周囲にはエポキシ樹脂51が充填されるようにしておく。
この後、硬化前のエポキシ樹脂50、51でベアモジュール23やファイバ支持部27、28、押え部材29、30を仮止めした保持部材26を加熱炉に入れて予備加熱する。この予備加熱の工程において加熱条件を最適化することにより、ファイバ心線24やファイバ素線25の周囲のエポキシ樹脂51は非常に浸透性のよい状態となり、ファイバ心線24の2次被覆48及び1次被覆56やファイバ素線25の1次被覆58に浸透する。最適な加熱条件としては、エポキシ樹脂を硬化させるための本加熱の工程における加熱温度よりも低い温度で数分〜十数分予備加熱するとよい。続けて、加熱温度を上げてエポキシ樹脂50、51を本加熱して硬化させ、ベアモジュール23やファイバ支持部27、28、押え部材29、30を保持部材26に固定する。
ついで、この光導波路モジュール21を加熱炉から取り出した後、図9(a)に示すように、押え部材29、30の上面にエポキシ樹脂52を塗布すると共に保持部材26の外側面に全体にエポキシ樹脂53を塗布し、保持部材26の上にケースカバー31を被せて保持部材26の上面開口を覆う。
この後、この光導波路モジュール21を再び加熱炉に入れ、エポキシ樹脂52、53を加熱硬化させてケースカバー31を保持部材26及び押え部材29、30に接合一体化させる。このとき、ケース22内の湿気は、加熱によって膨張した空気と共に押え部材30の通気孔34から外部へ排出される。ついで、図9(b)に示すように、直ちに常温で硬化する気密性の接着剤54により通気孔34を封止する。なお、上記エポキシ樹脂50〜53としては、同じものを用いればよい。
この結果、ベアモジュール23は封止用のケース22内に封止され、ケース22を構成する保持部材26、ファイバ支持部27、28、押え部材29、30、ケースカバー31間の隙間もエポキシ樹脂50〜53により塞がれる。
図10は図9(b)のファイバ心線24がケース22を貫通している部分である。エポキシ樹脂51がファイバ心線24の1次被覆56や2次被覆48に浸透していなければ、図10に矢印で示すように、2次被覆48から侵入した水蒸気や活性気体等が2次被覆48や1次被覆56の内部、あるいは1次被覆56と2次被覆48の間の隙間57を通ってケース22の内部に侵入する恐れがある。しかし、図10に示すように、エポキシ樹脂51が図8(c)の工程の後の予備加熱で1次被覆56や2次被覆48に浸透して含浸されていると、ケース22を貫通している部分で1次被覆56や2次被覆48が緻密になっている。よって、ケース22の外部で2次被覆48や1次被覆56内に水蒸気や活性気体が侵入しても、この水蒸気等はエポキシ樹脂51が含浸されている領域を通過することができないので、ケース22の内部に侵入しにくくなり、光導波路モジュール21の封止性能が向上する。
図11はエポキシ樹脂51の浸透の程度を示す断面図である。図11に示すファイバ心線24では、複数本の裸光ファイバ55を1次被覆56で覆って保護し、1次被覆56の上から2次被覆48で覆って複数本の裸光ファイバ55を一体化するとともに裸光ファイバ55をさらに保護しているが、1次被覆56と2次被覆48の間には隙間(剥離部分)57が生じている。エポキシ樹脂51は、2次被覆48及び1次被覆56に含浸されており、両被覆48、56間の隙間57にもエポキシ樹脂51が充填されている。
同じように、図9(b)のファイバ素線25がケース22を貫通している部分を、図12に示す。図12においては、エポキシ樹脂51が1次被覆58に浸透して含浸されているので、ケース22を貫通している部分で1次被覆58が緻密になっている。よって、ファイバ素線25がケース22を貫通している部分でも、ケース22の外部で1次被覆58内に水蒸気や活性気体が侵入しても、この水蒸気等はエポキシ樹脂51が含浸されている領域を通過することができないので、ケース22の内部に侵入しにくくなり、光導波路モジュール21の封止性能が向上する。
さらに、本発明の光導波路モジュール21では、エポキシ樹脂がファイバ心線24やファイバ素線25をケース22に固定する機能、ケース22の各パーツを接合させる機能、ファイバ心線24やファイバ素線25とケース22との間の隙間を封止する機能、ファイバ心線24やファイバ素線25に浸透してその封止性能を向上させる機能を兼ね備えており、これらの機能を一工程で達成できるので、生産性も非常に高くなる。
上記実施形態では、ファイバ心線24及びファイバ素線25に含浸させる樹脂としてエポキシ樹脂を用いたが、この用途に用いることのできる樹脂としては、硬化直前に非常に浸透性のよい状態になって光ファイバの被覆に浸透し、硬化後には光ファイバの被覆に含浸されて水蒸気や活性ガス等を遮断することのできるものであればよい。例えば、エポキシ系樹脂以外にもカチオン系樹脂も用いることができる。また、被覆に含浸させる樹脂としては、フィラーは少ない方がよく、また、本加熱の条件は、ベアモジュール23を損なわない範囲内で高いことが望ましい。
図13は、エポキシ系樹脂、カチオン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂に関して、(1)硬化する前に粘性が低くなり、被覆に浸透するか、(2)硬化後に耐湿性(気密性)を得ることができるかという点を検討し、その総合評価を与えたものである。ポリオレフィン系樹脂は、浸透性について問題があり、総合評価では不良となった。また、シリコン系樹脂とウレタン系樹脂については、液体の水は止めることができるが、水蒸気やガスを遮断することができず、やはり総合評価では不良となった。これに対し、エポキシ系樹脂とカチオン系樹脂では、浸透性も耐湿性も問題なく、本発明の用途に使用することができた。浸透性については、エポキシ系樹脂よりもカチオン系樹脂の方が優れているが、総合的な評価では、エポキシ樹脂の方が本発明の用途に適していた。
図14は被覆(2次被覆及び1次被覆)を剥がしたファイバ心線(テープファイバ)と、被覆にエポキシ樹脂を含浸させたファイバ心線と、被覆にポリオレフィン系樹脂を含浸させたファイバ心線を用いて、各ファイバ心線を透過する水蒸気量の相対値(相対透湿量;水分重量比)を計測した結果を示している。なお、被覆無しの場合の値の違いは測定誤差によるものである。図14によれば、ポリオレフィン系樹脂を用いた場合には、被覆に当該樹脂を含浸させても被覆の無い場合と比較して透湿量は2倍以上になり、効果が見られない。これに対し、エポキシ系樹脂を用いた場合には、被覆に当該樹脂を含浸させることにより、被覆が存在していても、被覆が無い場合と透湿量はほとんど変化がなく、効果が確認された。
図9に示す構造においてスポンジ等の軟質シート状をした緩衝材47には、吸湿剤や乾燥剤などの吸湿機能のある材料(例:商品名 ゼオシート)を使用してもよい。この場合は、吸湿効果を発揮させるために、ケース22内の封止された空間を中空にするほうが望ましい。封止された空間に吸湿剤や乾燥剤等が存在することにより、光導波路モジュール21の組み立てに使うエポキシ樹脂50、51、52にわずかに残る透湿性のためにケース22内に浸入した水蒸気を吸着させることができる。したがって、ベアモジュール23は浸入した水蒸気によって劣化することがない。このようにエポキシ樹脂による封止方法と吸湿剤や乾燥剤等とを組み合わせることにより、モジュールの耐湿性能を更に向上させることができる。
図15は本発明の別な実施形態の一部を拡大して示す断面図である。図15はベアモジュール23の一部を表しており、ファイバ保持部36と光導波路35の一部を示している。この実施形態では、ファイバ保持部36は第1の実施形態と同じ方法で作製されている。その際、エポキシ樹脂59によって基板41とファイバ押え43の間に裸光ファイバ55を挟み込んで接着すると共に、ファイバ心線24がファイバ保持部36から露出した部分にもエポキシ樹脂59を滴下している。
同様に、図16に示すように、エポキシ樹脂59によって基板42とファイバ押え44の間に裸光ファイバ49を挟み込んで接着すると共に、ファイバ素線25がファイバ保持部37から露出した部分にもエポキシ樹脂59を滴下している。
この後、先の実施形態の場合と同様に、このベアモジュール23を加熱炉に入れて予備加熱することによりエポキシ樹脂59をファイバ心線24の1次被覆56や2次被覆48、ファイバ素線25の1次被覆58に浸透させ、ついで本加熱を行ってエポキシ樹脂59を硬化させる。
このように、ファイバ保持部36のファイバ心線露出部やファイバ保持部37のファイバ素線露出部にエポキシ樹脂59を滴下して硬化させることにより、先の実施形態と同様にベアモジュール23の封止性能を高めることができる。すなわち、ファイバ心線24やファイバ素線25の被覆を伝って水蒸気や活性ガスなどが移動してきても、ファイバ心線24やファイバ素線25の露出部ではエポキシ樹脂59が含浸されていて水蒸気や活性気体などが通過できないので、水蒸気や活性気体などが裸光ファイバ49の先端部まで侵入せず、ベアモジュール23の特に接着構造部に侵入しにくくなる。よって、ベアモジュール23、ひいては光導波路モジュール21の封止性能を高めることができる。また、ファイバ心線24側のエポキシ樹脂59は、ファイバ心線24の被覆への含浸による封止性能の向上と共に、基板41とファイバ押え43の接合、ファイバ心線24の固定の能も兼ねており、生産性が向上する。この点は、ファイバ素線25側のエポキシ樹脂59も同様である。
なお、この実施形態でも、エポキシ系樹脂に限らず、カチオン系樹脂を用いてもよい。
また、UV硬化接着剤で組み立てられた既製品ないし市販品のファイバーアレーを用いて、そのファイバ素線または心線の露出部分にエポキシ樹脂59を滴下して硬化させる追加工の処理を施したものを用いてもよい。
従来例による封止構造の要部を示す断面図である。 本発明の一実施形態による光導波路モジュールの外観斜視図である。 図2に示した光導波路モジュールのA−A線断面図である。 図2に示した光導波路モジュールの、ケースカバーを外した状態での斜視図である。 本発明にかかるベアモジュールの斜視図である。 図5に示したベアモジュールの分解斜視図である。 (a)はファイバ心線の先端部分を示す、被覆を破断した状態での側面図である。(b)はファイバ素線の先端部を示す、被覆を破断した状態での側面図である。 (a)、(b)及び(c)は本発明にかかる光導波路モジュールの組立工程の手順を示す図であって、いずれも縦断面図と横断面図を表している。 (a)及び(b)は図8に続いて実施される組立工程の手順を説明する図である。 図2に示した光導波路モジュールの作用説明図である。 テープ心線の2次被覆に対するエポキシ樹脂の浸透の程度を示す断面図である。 図2に示した光導波路モジュールの作用説明図である。 エポキシ系樹脂、カチオン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、Si樹脂及びウレタン樹脂の特性を比較したものである。 2次被覆を剥がしたテープファイバと、2次被覆にエポキシ樹脂を含浸させたテープファイバと、2次被覆にポリオレフィン系樹脂を含浸させたテープファイバを用いて、各テープファイバを透過する相対透湿量を計測した結果を示すものである。 本発明の別な実施形態の一部を拡大して示す断面図である。 同上の実施形態の異なる箇所の一部を拡大して示す断面図である。
符号の説明
21 光導波路モジュール
22 ケース
23 ベアモジュール
24 ファイバ心線
25 ファイバ素線
26 保持部材
27、28 ファイバ支持部
29、30 押え部材
31 ケースカバー
35 光導波路
36、37 ファイバ保持部
39 コア
41、42 基板
43、44 ファイバ押え
48 2次被覆
49 裸光ファイバ
50、51、52、53 エポキシ樹脂
55 裸光ファイバ
56 1次被覆
58 1次被覆
59 エポキシ樹脂

Claims (9)

  1. 光導波路と、前記光導波路のコアと光学的に結合するように接続された光ファイバとを有する光導波路モジュールにおいて、
    前記光ファイバの被覆に樹脂を含浸させたことを特徴とする光導波路モジュール。
  2. 前記光導波路が封止用のケースに収容されていて前記光ファイバが前記ケースから外部に引き出されており、前記樹脂は、前記光ファイバが前記ケースを貫通する箇所において前記光ファイバの被覆に含浸されて被覆の密度を高めていることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路モジュール。
  3. 前記樹脂は、前記光ファイバが前記ケースを貫通する箇所において前記光ファイバと前記ケースとの間の隙間を封止する封止剤を兼ねていることを特徴とする、請求項2に記載の光導波路モジュール。
  4. 前記ケース内には、吸湿機能のある材料が収容されていることを特徴とする、請求項2に記載の光導波路モジュール。
  5. 前記樹脂は、前記光ファイバの先端部を保持するファイバ保持部から前記光ファイバが露出した部分において前記光ファイバの被覆に含浸されて被覆の密度を高めていることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路モジュール。
  6. 前記ファイバ保持部は、前記光ファイバを挟み込むための基板とファイバ押えとを有し、前記樹脂は、前記光ファイバを保持した前記基板と前記ファイバ押えとを接着する接着剤を兼ねていることを特徴とする、請求項5に記載の光導波路モジュール。
  7. 前記樹脂がエポキシ系の樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路モジュール。
  8. 前記樹脂がカチオン系の樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路モジュール。
  9. 被覆に樹脂を含浸させて被覆の密度を高めたことを特徴とする光ファイバ。
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