JP2005187330A - 歯牙貼布用製品及びゲル組成物の選定方法 - Google Patents

歯牙貼布用製品及びゲル組成物の選定方法 Download PDF

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康 福田
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隆行 鬼木
Toshiyuki Kashiwai
利之 柏井
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Abstract

【解決手段】 ゲル化剤、水又は溶剤、ステイン予防・除去剤等の有効成分を含むゲル組成物、歯牙に貼り付けるための適用用具を備え、上記ゲル組成物の円錐−円盤型もしくは平行板型の回転粘度計を用いて得られる物性が(A)かつ(B)の条件を満足する歯牙貼付用製品。
(A)周波数(ω)0.1及び100rad/secにおける貯蔵弾性率(G’)が5〜30,000Pa、損失弾性率(G”)が30〜20,000Pa
(B)下記式にて算出されるビスコエラスチック・ウインドウの対数面積値が0.1〜4
対数面積値={logG’(ω=100rad/sec)−logG’(ω=0.1rad/sec)}{logG”(ω=100rad/sec)−logG”(ω=0.1rad/sec)}
【効果】 本発明によれば、組成物のレオロジー特性を制御することで歯面への密着性を向上させ薬物の漏出・唾液の侵入を顕著に防止し得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、歯面への密着性を向上させ、更に薬物の漏出・唾液の侵入を顕著に防止することにより、歯牙の審美性を向上させる効果、或いは歯牙疾患の予防及び治療効果を向上させた歯牙貼付用製品及びゲル組成物の選定方法に関するものである。
従来から、歯に対して有効成分を作用させる手段として、歯磨剤、含漱剤、クリーム、錠剤、ガムといった手段がとられてきた。しかしながら、歯磨剤や含漱剤の場合には吐き出した後では口腔内の有効成分の量が不充分であり、クリームは使用性が悪く、固形インサートの場合には苦痛を伴ったりするといった問題点があった。また、いずれの場合にも、唾液の混入によって有効成分の濃度低下や成分の漏出・溶出がおこり、効果が低下するだけでなく、不快な味がする場合があるという問題点があった。
一方、歯牙用貼付剤に関する技術が提案されている。例えば、永久変形せずに歯牙にフィットする可撓性支持体に歯牙粘着性美白組成物を施した技術(特許文献1:特表2002−503990号公報)、過酸化物を含むプルランフィルムと保護層としてのプルランフィルム又は合成樹脂フィルムからなる1乃至3層の歯の漂白用貼布剤(特許文献2:特開2003−137756号公報)、水不溶性粘着層と不織布等の支持体からなる口腔用貼付剤(特許文献3:特開2000−256186号公報)、支持体とコウジ酸を含む膏体からなる口腔貼布剤(特許文献4:特開平10−17448号公報)、ドライフィルム、ポリカルボン酸と酢酸ビニルからなる粘着層、支持体としてポリエチレンからなる歯牙用貼付剤(特許文献5:特開昭63−54318号公報)などがあるが、いずれの公知技術も歯面への密着性、口腔内への薬物漏出、唾液の侵入などが考慮されておらず、効果、安全性と使用性において課題がある。更に、漂白等の化学反応を伴わずエナメル質部分の光学特性変化を応用した歯の白色化方法、歯牙白色化用組成物及び歯牙美白用セット(特許文献6:WO−03030851)は、ゲル状、ペースト状、液状、泡状の組成物を歯牙に適用し、高い白色化効果を得ているが、組成物の物性の規定がないため、液状の組成物をスポンジ製のマウストレーなどで歯牙に適用する際、組成物の口腔内への漏出が一部認められた。
これらの問題点を解決し、有効成分が漏出もしくは希釈されることなく高濃度を維持したまま歯面に作用させるために、(1)充分に密着し、(2)粘着性がよく、(3)一定時間以上適用でき、(4)使用性の良い製剤が求められる。
特表2002−503990号公報 特開2003−137756号公報 特開2000−256186号公報 特開平10−17448号公報 特開昭63−54318号公報 WO−03030851
本発明は、上記要望に応えたもので、歯面への密着性に優れ、しかも有効成分の漏出・唾液の侵入が防止された歯牙貼布用製品及びゲル組成物の選定方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ある特定のレオロジー特性を有する有効成分含有ゲル組成物を調製し、適切な適用用具を用いれば、有効成分を歯面にすきまなく接触可能であり、また歯面に対する粘着性も有しており、しかもずり落ちがないため、充分な効果を発揮できる時間にわたり大量に滞留させることができ、取り扱いも簡便であることを見出した。
即ち、従来より工業的な粘着剤の物性を規定する方法として、Dahlquist(C.A.Dahlquist,Adhesion Fundamental & Practice,Mclaren & Sons,Ltd.,London,p143(1969))やChang(E.P.Chang,J.Adhesion,34,189(1991))の経験則が提案されている。本発明者らは、このうちChangの提唱したVisco−Elastic Windowsの概念を応用し、特定の大きさと位置のWindowsを有する組成物を歯面に貼付することで、良好な使用性を示すことを見出した。
Changは、粘着剤の貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)の周波数(ω)依存性を測定したときに、ωが0.1及び100rad/secにおけるG’及びG”を求めると、G’及びG”どちらもが103〜106の範囲に納まるとしている。得られた範囲を四つの領域に分割し、それぞれの領域に入る粘着剤に対して適切な使用方法を割り当てることができるとしている。しかし、その応用分野はいわゆる工業的な用途に限られているため、G’及びG”の値は103よりも大きな場合についてのみ言及しており、人体への作用についてはまったく触れられていない。
一般的に、ωが0.1rad/secにおけるG’、G”は、それぞれタック性と濡れ性に関与し、また100rad/secにおけるG’、G”は、それぞれ被着面に対する保持性と追従性に関与するものである。
これらG’、G”は、歯牙貼付用ゲル組成物の場合には、種々の場面での使用性に大きく影響する。しかし、ある特定の周波数におけるG’とG”のみの規定では、貼付時に徐々に歯に押しつけた際の密着性・タック性、歯間への進入性、唇が触れた場合など外部からゆっくりとした力が加わった場合のズレの抑制、更には素早くゲルを剥がす時の剥がし易さのすべての使用性を満足させることは困難である。
また、Viscoelastic Windowの大きさは、一般的に粘着剤の流動性に関与する値であり、小さすぎると流動性が低く粘着面がもろくなってしまう。歯牙貼付用ゲル組成物においてViscoelastic Windowの大きさは、歯面からのズレ落ち、膏体残りに関係する。
そこで、本発明者らは鋭意検討の結果、より小さなG’及びG”をもつ組成物を調製し、大小の周波数においてG’とG”を規定して、かつ下記式(1)にて算出されるViscoelastic Windowの対数面積値を規定することにより、ゲル組成物の歯面への密着性・タック性、外力に対する歯面からのズレ落ち防止及び剥離時の歯面からの剥し易さのすべての使用性を満足させることができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
従って、本発明は、(a)重量平均分子量が10,000〜2,000,000のゲル化剤、(b)ゲル化剤を溶解させる水又は溶剤、(c)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、知覚過敏予防・抑制剤、う蝕予防・修復剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分を含むゲル組成物と、歯牙に貼り付けるための適用用具とを備えた歯牙貼付用製品であって、上記ゲル組成物の25℃において円錐−円盤型もしくは平行板型の回転粘度計を用いて得られる物性が下記(A)かつ(B)の条件を満足することを特徴とする歯牙貼付用製品を提供する。
また、本発明は、(a)重量平均分子量が10,000〜2,000,000のゲル化剤、(b)ゲル化剤を溶解させる水又は溶剤、(c)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、知覚過敏予防・抑制剤、う蝕予防・修復剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分を含むゲル組成物と、歯牙に貼り付けるための適用用具とを備えた歯牙貼付用製品のゲル組成物を選定する方法であって、上記ゲル組成物の25℃において円錐−円盤型もしくは平行板型の回転粘度計を用いて得られる物性が下記(A)かつ(B)の条件を満足するものを、歯牙に対して密着し、有効成分の漏出又は唾液の侵入のないゲル組成物として評価、選定することを特徴とするゲル組成物の選定方法を提供する。
(A)周波数(ω)0.1rad/secにおける貯蔵弾性率(G’)が5Pa以上30,000Pa以下、損失弾性率(G”)が30Pa以上20,000Pa以下であり、周波数(ω)100rad/secにおけるG’が5Pa以上30,000Pa以下、G”が30Pa以上20,000Pa以下の範囲である。
(B)下記式(1)にて算出されるビスコエラスチック・ウインドウ(Viscoelastic Window)の対数面積値が0.1以上4以下である。
対数面積値={logG’(ω=100rad/sec)−logG’(ω=0.1rad/sec)}{logG”(ω=100rad/sec)−logG”(ω=0.1rad/sec)} …(1)
本発明によれば、組成物のレオロジー特性を制御することで歯面への密着性を飛躍的に向上させ、更に薬物の漏出・唾液の侵入を顕著に防止することにより、歯牙の審美効果や歯牙疾患の予防及び改善効果、更には使用性を向上させた歯牙貼布用製品及びゲル組成物の選定方法を提供することができる。
本発明の歯牙貼付用製品は、ゲル組成物と、このゲル組成物を歯牙に貼り付けるための適用用具とを備える。
この場合、ゲル組成物は、(a)重量平均分子量が10,000〜2,000,000のゲル化剤、(b)ゲル化剤を溶解させる水又は溶剤、(c)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、知覚過敏予防・抑制剤、う蝕予防・修復剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分を含む。
更に、詳述すると、ゲル化剤は重量平均分子量が10,000〜2,000,000、好ましくは50,000〜1,500,000、更に好ましくは100,000〜1,200,000のものがよい。前記分子量を満たせば特に種類は制限されないが、組成物の安定性の点から、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース又はそのアルカリ金属塩、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩が好ましい。
ゲル化剤の平均分子量は、ヒドロキシプロピルセルロースの場合、日本曹達(株)のホームページ(http://www.mmjp.or.jp/nisso−iyaku/5.html)によると、希薄水溶液を調製し、ウベローデ型粘度計を用いて極限粘度ηを求め、下記に示す高分子の粘度、分子量に関する一般式(Staudingerの粘度式)から、重合度を求める(式(*))。
極限粘度η=K×(DP)α [式(*)]
(K、αは定数、DPは重合度)
式(*)において、ヒドロキシプロピルセルロースのK、αは、Food Technology Vol.25,54から、それぞれ0.0117、0.9である。平均分子量は求められた重合度と368との積により求められる。368は、ヒドロキシプロピルセルロース1セルの分子量を示す。
ヒドロキシプロピルセルロース以外のゲル化剤の場合、平均分子量は、既知分子量のポリエチレンオキサイドを標準物質とし、LiBrを添加したジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒とした、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)により求められる。
上記ゲル化剤の配合量は、特に併用する用具がテープ、シート、フィルムや歯列カバーの場合には、歯牙貼付用ゲル組成物の固定力だけで歯牙に付着、固定する必要があるため、組成物全体の0.1〜50%(質量百分率、以下同じ)が好適であり、特に0.5〜40%が望ましい。少なすぎると、粘着力が発揮されなかったり、唾液の混入による効果の低減、ゲルの溶け出しによる口中の粘つき等の違和感につながる場合がある。多すぎると、ゲル化剤が充分に溶けきらず、製剤が不均一になるだけでなく、有効成分の効果発現を阻害する場合がある。
ゲル化剤を溶解させる溶媒としては、水、更にポリエチレングリコール(#200〜800)、エタノール、グリセリン、イソプロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールで代表されるアルコール類など、溶解能があれば特に制限なく使用できるが、安定性の点でポリエチレングリコール(#200〜800)、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、水が好ましい。配合量は1〜95%が好適であり、特に10〜95%が望ましい。粘度はゲル化剤と溶媒の配合比をかえることで、適宜調整できる。なお、下記の如く溶媒はゲル化剤の溶解に限らず、下記白色化剤、ステイン除去剤として配合される場合もある。
本発明の歯牙貼布用ゲル組成物は、ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分を含む。
ステイン予防剤・除去剤、歯石予防・除去剤は、効果を持つ既知の薬剤が使用でき、ステイン又は歯石予防・除去剤としては、ピロリン酸ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、フィチン酸などの縮合リン酸又はその塩、リン酸一水素ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどのリン酸又はその塩、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸又はその塩、オリゴ糖、bis−O−カルボキシフェニルコハク酸、アミノグアニジン、塩基性ペプチド、ポリオキシエチレン(2モル)アルキル(C=12〜14)スルホコハク酸二ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ゼオライトが好ましく用いられるが、安定性の面から、特にピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムが好適である。ステイン又は歯石除去剤に関しては、上記ステイン又は歯石予防剤に加え、ポリエチレングリコール(#200〜20,000)を好適に用いることができる。これらの薬剤は、健全な歯牙にはステイン又は歯石の予防剤、ステインの付着した歯牙にはステイン又は歯石除去剤として用いることができる。これらのステイン又は歯石予防・除去剤の配合量は、好ましくは0.005〜20%の範囲で、特に好ましくは0.05〜10%の範囲となる。少なすぎる場合は効果が発現されず、また多すぎる場合にはゲル物性に支障が生じることがある。但し、ステイン又は歯石除去剤として、ポリエチレングリコール(#200〜800)を用いる場合には、ゲルを溶解させるための溶媒と歯牙白色化剤とを兼ねる場合があるため、その場合には溶媒、ステイン又は歯石除去剤、歯牙白色化剤の合計で組成物全体の50〜85%、特に80〜85%が好ましい。
歯牙白色化剤としては、ポリエチレングリコール(#200〜800)、エタノール、グリセリン、イソプロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールで代表されるアルコール類、過酸化尿素、過酸化水素等の過酸化物が挙げられるが、安定性の点から、ポリエチレングリコール(#200〜800)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。本発明の歯牙貼布用ゲル組成物は、上記歯牙白色化剤を含むものであるが、この場合、歯牙白色化剤の配合量は、ゲル組成物から歯牙白色化成分が溶出すれば特に制限されないが、上記アルコール系白色化剤の場合、ゲル化剤を溶解する溶媒と兼ねる場合があるため、その場合には白色化剤と溶媒合計で組成物全体の50〜95%、特に80〜95%である。過酸化物の場合、0.1〜30%が好ましく、少なすぎる場合には効果が発現されない場合があり、多すぎる場合には、歯牙に損傷を来たす場合がある。
う蝕予防・修復剤としては、効果を持つ既知の薬剤が使用でき、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化錫、フッ化銀などのフッ化物イオン供給化合物、更には塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウムなどの無機性カルシウム化合物や、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、マロン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセリン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、フィチン酸カルシウムなどの有機性カルシウム化合物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチームなどの酵素剤、クロルヘキシジン、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウムなどの既知の抗菌・殺菌剤を1種或いは2種以上を組み合わせて使用することができるが、安定性の点からフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、デキストラナーゼが好ましい。これらの薬剤は、健全な歯牙に用いる場合には脱灰抑制によるう蝕予防効果、脱灰を受け既に初期う蝕を有する歯牙に用いる場合には、再石灰化によるう蝕修復効果を発揮する。配合量は、好ましくは0.005〜20%の範囲で、特に好ましくは0.05〜10%の範囲となる。少なすぎる場合は効果が発現されず、また多すぎる場合にはゲル物性に支障が生じることがある。
知覚過敏予防・抑制剤としては、効果を持つ既知の成分が使用でき、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、塩化亜鉛、ホルムアルデヒド、ピロクトンオラミンなどの薬剤を配合できるが、安定性の点で乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、ピロクトンオラミンが好ましい。他の薬剤と同様に健全な歯牙に用いる場合には知覚過敏予防効果、象牙細管が露出・開口した歯牙に用いる場合には、知覚過敏抑制効果を発揮する。配合量は、好ましくは0.005〜20%の範囲で、特に好ましくは0.05〜10%の範囲となる。少なすぎる場合は効果が発現されず、また多すぎる場合にはゲル物性や味に支障が生じることがある。
本発明の歯牙貼付用ゲル組成物には、更に必要に応じて適宜、他の成分を配合することができる。
例えば、乳化、分散などの目的で、界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤や両性イオン界面活性剤の1種又は2種以上を併用することができる。
この場合、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウムなどのN−アシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウムなどのN−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルPOE硫酸ナトリウム、ラウリルPOE酢酸ナトリウム、ラウリルPOEリン酸ナトリウム、ステアリルPOEリン酸ナトリウム等が用いられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリル、ラウリン酸デカグリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミドなどの脂肪酸エタノ−ルアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が用いられる。
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が用いられる。
本発明の歯牙貼付用ゲル組成物には、更に、アネトール、カルボン、ペパーミント油、スペアミント油などの香料、安息香酸及びそのナトリウム塩、パラベン類などの防腐剤、赤色3号、赤色104号、黄色4号、青色1号、緑色3号、雲母チタン、弁柄などの色素又は着色剤、サッカリン及びそのナトリウム塩、ステビオサイド、グリチルリチン、アスパルテームなどの甘味剤等を配合できる。
歯牙貼付用ゲル組成物のpHは、口腔内及び人体に安全性上問題ない範囲であれば、特に限定されるものではないが、望ましくはpH4〜10であり、更に望ましくは5.5〜9である。pH4未満の場合には適用時間によっては脱灰の懸念があり、pH10超の場合には、皮膚に触れた場合、炎症を起こす等の懸念がある。pH調整剤として、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等を適量配合し得る。
歯牙貼付用ゲル組成物の製造方法は、特に制限はないが、予め別の釜でゲル化剤以外のその他固形成分を水又はその他の溶媒で溶解しておき、乳化釜中でゲル化剤にその溶液を加えていき、溶解・膨潤させることが好適である。
歯牙に貼付するための適用用具は、上記歯牙貼付用ゲル組成物の歯牙への確実な適用、固定を補助するとともに、使用中のゲル組成物の歯肉、舌及び口腔粘膜への溶出を抑え、不快な使用感や唾液の誘発を防ぎ、更に唾液の侵入や咬合、咀嚼、その他物理的な刺激によるゲル組成物の希釈や歯牙からの離脱を防ぐ目的で使用される。用具の素材及び形状については、上記目的を達成できるものであれば特に限定されるものではないが、水不溶性の素材で作られたテープ、シート、フィルム、マウストレー、マウスピース、スポンジ、印象材、パック材、歯列に成型した歯のカバーが好適に用いられる。
上記適用用具の厚みは、口腔着用時に違和感のない0.01〜5mmが好ましく、特にテープ、シート、フィルムについては、0.01〜2mmが望ましい。
上記用具の素材については、口腔適用時のフィット感に優れ、唾液の発生を抑えることで製剤の長時間適用を可能にするポリエチレン、発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン、パルプ、綿、絹、紙、金属箔等の1種又は2種以上を用いるのが好ましく、特にポリエチレン、発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨンが良い。更に、口腔粘膜及び舌と接する側の材質を親水性、吸水性の高い素材、例えばレーヨン、パルプ、綿、絹、紙等を使った織布又は不織布で構成することにより、口中で発生した唾液を吸収し保持し得るため、使用感に優れており好ましい。この場合、歯牙貼付用ゲル組成物を保持する側には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン等の水不透過性フィルムを組み合わせることで、歯牙貼付用ゲル組成物の適用用具への吸着、浸透を防ぐこともできる。
一方、シリコーンゴム、天然ゴム等の可塑性樹脂及び酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂からなるトレー、マウスピースは、変形の自由度が高く、使用者の歯列、歯型にフィットさせ易いため、密着性、固定性に優れており、より長時間の歯牙貼付用ゲル組成物の歯牙への適用を目的とする場合に適している。
なお、適用回数、時間等は適宜選定されるが、通常、1日1〜6回、特に1〜3回で、1回1〜120分、特に1〜60分であるが、就寝中に適用することも可能である。
本発明においては、このように上記ゲル組成物を上記用具を用いて歯牙に貼付、適用するものであるが、この場合、本発明は上記ゲル組成物の25℃において円錐−円盤型もしくは平行板型の回転粘度計を用いて得られる物性が下記(A)かつ(B)の条件を満足することを特徴とする。
(A)周波数(ω)0.1rad/secにおける貯蔵弾性率(G’)が5Pa以上30,000Pa以下、損失弾性率(G”)が30Pa以上20,000Pa以下であり、周波数(ω)100rad/secにおけるG’が5Pa以上30,000Pa以下、G”が30Pa以上20,000Pa以下の範囲である。
(B)下記式(1)にて算出されるViscoelastic Windowの対数面積値が0.1以上4以下である。
対数面積値={logG’(ω=100rad/sec)−logG’(ω=0.1rad/sec)}{logG”(ω=100rad/sec)−logG”(ω=0.1rad/sec)} …(1)
更に詳述すると、ゲル組成物に対し、25℃で円錐−円盤型もしくは平行板型の回転粘度計を用い、粘弾性挙動が線形領域を取り得る歪み、もしくは応力を印加して、ωが0.1及び100rad/secにおけるG’及びG”を求めた場合、図1のようなG’−G”平面上に4点プロットして得られる長方形(Viscoelastic Window)が、G’(ω=0.1rad/sec)が5Pa以上30,000Pa以下、G”(ω=0.1rad/sec)が30Pa以上20,000Pa以下であり、G’(ω=100rad/sec)が5Pa以上30,000Pa以下、G”(ω=100rad/sec)が30Pa以上20,000Pa以下の範囲であること、好ましくはG’(ω=0.1rad/sec)が5Pa以上10,000Pa以下、G”(ω=0.1rad/sec)が30Pa以上5,000Pa以下であり、G’(ω=100rad/sec)が500Pa以上29,000Pa以下、G”(ω=100rad/sec)が200Pa以上15,000Pa以下の範囲であること、更に好ましくはG’(ω=0.1rad/sec)が5Pa以上5,000Pa以下、G”(ω=0.1rad/sec)が35Pa以上2,000Pa以下であり、G’(ω=100rad/sec)が1,500Pa以上27,000Pa以下、G”(ω=100rad/sec)が400Pa以上10,000Pa以下の範囲内に入り、かつ、式(1)にて算出されるViscoelastic Windowの対数面積値が0.1以上4以下の物性を有する組成物が、歯面への密着性・タック性、歯間への進入性を顕著に向上させ、また唾液への成分漏出、歯面からのゲルのズレ落ちを劇的に低減させ、更に剥離時の歯牙への膏体残存をほぼ抑え、歯牙用貼付剤としての使用性が極めて優れているものである。
ゲル物性が図1の如くG’−G”平面上において、本発明の範囲よりも下側、つまり、G’(ω=100rad/sec)が5Pa未満の場合には、進入性には問題はないが、凝集力が弱いためゲルの安定性が悪い。本発明の範囲より左上、つまり、G’(ω=0.1rad/sec)が30,000Paを超えかつG”(ω=100rad/sec)が30Pa未満の場合には、凝集力はあるが密着性に劣る。また、本発明の範囲より右上、つまり、G’(ω=0.1rad/sec)が30,000Paを超えかつG”(ω=100rad/sec)が20,000Paを超える場合には、進入性に問題があり、歯面や歯間に密着させることが困難である。更に、平面上の存在位置が適正な範囲内であっても、式(1)で算出されるViscoelastic Windowの対数面積値が小さすぎる場合には流動性が劣っており、本発明の目的を達成し得ない。例えば、本実施例と関連して既知の歯牙貼付剤であるP&G社製Crest White Strips(Lot.(L)3049BT2B)のゲル組成物の粘弾性を25℃において応力制御コーンプレート型レオメーター(Rheo−Stress RS−100,Haake社)で測定したところ、G’(ω=0.1rad/sec)は1,180Pa、G”(ω=0.1rad/sec)は152Pa、G’(ω=100rad/sec)は1,750Pa、G”(ω=100rad/sec)が156Paであるが、対数面積値は規定値より小さかった。実際に歯牙への貼付け具合を試験すると、このゲル組成物は、歯牙や歯間への密着性はあるものの、装着中に歯面からのズレ落ちが激しく、剥離時の歯面上の膏体残りも認められ、使用性が悪かった。つまり、G’(ω=0.1rad/sec)、G”(ω=0.1rad/sec)、G’(ω=100rad/sec)及びG”(ω=100rad/sec)で想定された組成物であっても、対数面積値が本発明の範囲を外れるとゲル組成物の使用性は悪くなる。従って、歯面への密着性・タック性、歯間への進入性の向上、唾液への成分漏出の防止、歯面からのズレ落ち防止、剥離時の歯面からの剥し易さのすべての使用性を実現させるには、条件(A)、(B)を同時に満たすことが前提となる。また、上記のごとく対数面積値の大きさは0.1以上4以下が好適であり、0.1未満の場合にはゲル組成物の流動性が低く、ズレ落ちが起きることがあり、逆に4を超える場合には流動性が高すぎて唾液への成分の漏出や剥離時に膏体残りが起きることがある。対数面積値の大きさは、好ましくは0.1以上2.5以下、更に好ましくは0.1以上1.5以下であることが望まれる。
ここで、一般にG’(ω=0.1rad/sec)が5Pa以上30,000Pa以下、G”(ω=0.1rad/sec)が30Pa以上20,000Pa以下であり、G’(ω=100rad/sec)が5Pa以上30,000Pa以下、G”(ω=100rad/sec)が30Pa以上20,000Pa以下の範囲内に制御する手段は、ゲル化剤と溶媒の配合比を適宜変化させることによる。即ち主にゲル組成物のG’及びG”を大きくするには、ゲル化剤の量を増加させる、或いはゲル化剤を溶解するための溶媒の量を減少させれば良い。逆に、G’及びG”を小さくするには、ゲル化剤の量を減少させる、或いはゲル化剤を溶解するための溶媒の量を増加させれば良い。
一方、式(1)にて算出されるViscoelastic windowの対数面積値を0.1以上4以下とする手段としては、ゲル化剤或いは溶媒の種類を適宜変化させることが挙げられる。具体的には、Viscoelastic windowの対数面積値を小さくするには、ゲル化剤をポリビニルピロリドンからヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロースに変更する、或いは、溶媒をプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、水からポリエチレングリコール#300,400,600、グリセリンに変更することが挙げられる。Viscoelastic windowの対数面積値を大きくするには、ゲル化剤をヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロースからポリビニルピロリドンに変更する、或いは、溶媒をポリエチレングリコール#300,400,600、グリセリンからプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、水に変更することが挙げられる。
例えば、ゲル化剤としてポリビニルピロリドン(重量平均分子量1,200,000)を用いる場合、配合量は組成物全体の10〜45%、ゲル化剤を溶解する溶媒としてポリエチレングリコール#200,300、1,3−ブチレングリコールのアルコール系溶媒を各々又はこれらの組み合わせとして55〜80%、水を0〜10%、ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.005〜30%とすると、G’(ω=0.1rad/sec)が5〜5,000Pa、G’(ω=100rad/sec)が1,000〜28,000Pa、G”(ω=0.1rad/sec)が30〜3,000Pa、G”(ω=100rad/sec)が500〜15,000Paとなり、対数面積値は0.5〜4.0となる。但し、ステイン又は歯石除去剤としてポリエチレングリコール(#200〜800)を用いる場合には、ゲルを溶解させるための溶媒と歯牙白色化剤とを兼ねる場合があるため、その場合には溶媒、ステイン又は歯石除去剤、歯牙白色化剤の合計で組成物全体の50〜85%、特に60〜85%が好ましい。また、上記アルコール系白色化剤を用いる場合、ゲル化剤を溶解する溶媒と兼ねる場合があるため、その場合には白色化剤と溶媒合計で組成物全体の50〜80%、特に60〜80%である。
同様に、ゲル化剤としてポリビニルピロリドンとカルボキシメチルセルロースナトリウム(重量平均分子量670,000)を併用する場合、ポリビニルピロリドンを組成物全体の1〜30%、カルボキシメチルセルロースナトリウムを1〜10%、溶媒としてポリエチレングリコール#200,300、1,3−ブチレングリコール、グリセリンのアルコール系溶媒を各々又はこれらの組み合わせとして10〜90%、水を0〜70%、ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.005〜30%とすると、G’(ω=0.1rad/sec)が5〜5,000Pa、G’(ω=100rad/sec)が1,000〜28,000Pa、G”(ω=0.1rad/sec)が30〜3,000Pa、G”(ω=100rad/sec)が500〜15,000Paとなり、対数面積値は0.5〜4.0となる。但し、ステイン又は歯石除去剤としてポリエチレングリコール(#200〜800)を用いる場合には、ゲルを溶解させるための溶媒と歯牙白色化剤とを兼ねる場合があるため、その場合には溶媒、ステイン又は歯石除去剤、歯牙白色化剤の合計で組成物全体の50〜90%、特に60〜90%が好ましい。また、上記アルコール系白色化剤を用いる場合、ゲル化剤を溶解する溶媒と兼ねる場合があるため、その場合には白色化剤と溶媒合計で組成物全体の50〜85%、特に60〜85%である。
また、ゲル化剤としてヒドロキシプロピルセルロース−H(重量平均分子量300,000)を用いる場合、配合量は組成物全体の1〜15%、溶媒としてポリエチレングリコール#300,600、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコールのアルコール系溶媒を各々又はこれらの組み合わせとして55〜90%、水を0〜5%、ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.005〜30%とすると、G’(ω=0.1rad/sec)が50〜3,000Pa、G’(ω=100rad/sec)が500〜10,000Pa、G”(ω=0.1rad/sec)が40〜1,500Pa、G”(ω=100rad/sec)が150〜3,000Paとなり、対数面積値は0.1〜1.0となる。但し、ステイン又は歯石除去剤としてポリエチレングリコール(#200〜800)を用いる場合には、ゲルを溶解させるための溶媒と歯牙白色化剤とを兼ねる場合があるため、その場合には溶媒、ステイン又は歯石除去剤、歯牙白色化剤の合計で組成物全体の50〜95%、特に60〜95%が好ましい。また、上記アルコール系白色化剤を用いる場合、ゲル化剤を溶解する溶媒と兼ねる場合があるため、その場合には白色化剤と溶媒合計で組成物全体の50〜95%、特に75〜95%である。
同様に、ゲル化剤としてヒドロキシプロピルセルロース−Hとカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸とを併用する場合、ヒドロキシプロピルセルロース−Hを0.1〜15%、カルボキシメチルセルロースナトリウムを0.1〜5%、ポリアクリル酸を0.5〜15%、溶媒としてポリエチレングリコール#200,300,600、グリセリンのアルコール系溶媒を各々又はこれらの組み合わせとして10〜90%、水を0〜5%、ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤から選ばれる1種又は2種以上を合計で0.005〜30%とすると、G’(ω=0.1rad/sec)が20〜2,500Pa、G’(ω=100rad/sec)が500〜28,000Pa、G”(ω=0.1rad/sec)が30〜2,500Pa、G”(ω=100rad/sec)が200〜15,000Paとなり、対数面積値は0.1〜2.0となる。但し、ステイン又は歯石除去剤としてポリエチレングリコール(#200〜800)を用いる場合には、ゲルを溶解させるための溶媒と歯牙白色化剤とを兼ねる場合があるため、その場合には溶媒、ステイン又は歯石除去剤、歯牙白色化剤の合計で組成物全体の50〜90%、特に75〜90%が好ましい。また、上記アルコール系白色化剤を用いる場合、ゲル化剤を溶解する溶媒と兼ねる場合があるため、その場合には白色化剤と溶媒合計で組成物全体の50〜90%、特に75〜90%である。
更に、ゲル化剤としてヒドロキシプロピルセルロース−M(重量平均分子量150,000)を用いる場合もヒドロキシプロピルセルロース−Hとおおよそ同様の条件で、おおよそ同等の物性値が得られる。
なお、従来技術において、通常のゲル組成物の(I)G’(ω=0.1rad/sec)及びG’(ω=100rad/sec)、(II)G”(ω=0.1rad/sec)及びG”(ω=100rad/sec)、更に(III)式(1)にて算出される対数面積値において3者が同時に満足されるものはない。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、各例中の%はいずれも質量百分率である。また、下記例で、PEはポリエチレン、PPはポリプロピレンであることを示し、平均分子量は重量平均分子量である。
〔実施例1〕
予め下記ゲル組成物1をチューブから約2.0g取り出し、前歯左3番から右3番の唇面を覆える発泡ポリエチレン製シート(積水化学工業(株)製ボラーラXL−IF08008、15mm×60mm×厚さ800μm)に塗布し、歯牙の唇面に貼付した。
ゲル組成物1(う蝕予防・修復剤、歯牙白色化剤)
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.5%
塩化カルシウム 6.0
ポリエチレングリコール#200 3.7
(マクロゴール200,ライオン(株))
ポリエチレングリコール#300 55.0
(マクロゴール300,ライオン(株))
プロピレングリコール 4.0
(プロピレングリコール,昭和電工(株))
リノール酸 1.0
ポリビニルピロリドン(平均分子量1,200,000) 20.0
(ルビスコールK−90,BASFジャパン(株))
サッカリンナトリウム 0.2
メチルパラベン 0.1
香料 1.0
水 残
計 100.0%
〔実施例2〕
予め下記ゲル組成物2をチューブから約2.0g取り出し、前歯左3番から右3番の唇面を覆えるポリウレタンフィルム(シーダム(株)製DUS2124−CDB、15mm×60mm×厚さ50μm)に塗布し、歯牙の唇面に貼付した。
ゲル組成物2(歯牙白色化剤)
ポリエチレングリコール#300 5.7%
(マクロゴール300,ライオン(株))
ジプロピレングリコール 87.0
(ジプロピレングリコール,昭和電工(株))
シェラック(乾燥透明白ラック,日本シェラック工業(株)) 1.0
ヒドロキシプロピルセルロース−H(平均分子量300,000) 3.0
(HPC−H,日本曹達(株))
ポリオキシエチレン(n=7)アルキルエーテル(C=12) 2.0
ブチルパラベン 0.1
安息香酸ナトリウム 0.2
香料 1.0
計 100.0%
〔実施例3〕
PEフィルム/レーヨン+PP2層不織布シート(30mm×60mm、PEフィルム部分厚さ10μm、レーヨン+PP部分の目付40g/m2)のレーヨン+PP面に、展延機(ロールサンドコーター、花栄機械工業製)で下記ゲル組成物3を1.5g塗膏したシート型貼付剤であり、前歯左3番から右3番にゲルが貼付されるように適用した。シートは歯の裏面へ折り返して使用した。
ゲル組成物3(う蝕修復・予防剤)
フッ化ナトリウム 0.2%
デキストラナーゼ 0.3
ポリエチレングリコール#300 10.0
(マクロゴール300,ライオン(株))
ポリエチレングリコール#400 9.99
(マクロゴール400,ライオン(株))
1,3−ブチレングリコール 40.0
(1,3−ブチレングリコール,ダイセル化学(株))
リノレン酸 5.0
ポリビニルピロリドン(平均分子量1,200,000) 25.0
(ルビスコールK−90,BASFジャパン(株))
2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン 0.01
香料 0.5
水 残
計 100.0%
〔実施例4〕
下記ゲル組成物4を約0.5gチューブからスポンジ(10mm×30mm×厚さ1mm)に押し出し、含浸させたものを歯牙に貼付して適用した。
ゲル組成物4(知覚過敏予防・抑制剤)
ポリエチレングリコール#300 10.0%
(マクロゴール300,ライオン(株))
ポリエチレングリコール#400 64.0
(マクロゴール400,ライオン(株))
エタノール 1.0
グリセリン 4.7
(グリセリン,ライオン(株))
ヒドロキシプロピルセルロース−M(平均分子量150,000) 7.0
(HPC−M,日本曹達(株))
カルボキシメチルセルロースナトリウム(平均分子量670,000) 0.5
(CMCダイセル−1150、ダイセル化学工業(株))
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 1.0
乳酸アルミニウム 2.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
水 残
計 100.0%
〔実施例5〕
PEフィルム/レーヨン+PP2層不織布シート(30mm×60mm、PEフィルム部分厚さ10μm、レーヨン+PP部分の目付40g/m2)のレーヨン+PP面に、展延機(ロールサンドコーター、花栄機械工業製)で下記ゲル組成物5を2.0g塗膏したシート型貼付剤であり、前歯左3番から右3番にゲルが貼付されるように適用した。シートは歯の裏面へ折り返して使用した。
ゲル組成物5(歯牙白色化剤)
ポリエチレングリコール#300 79.0%
(マクロゴール300,ライオン(株))
ポリエチレングリコール#600 5.0
(マクロゴール600,ライオン(株))
シェラック(乾燥透明白ラック,日本シェラック工業(株)) 1.0
1,3−ブチレングリコール 7.1
(1,3−ブチレングリコール,ダイセル化学(株))
ヒドロキシプロピルセルロース−H(平均分子量300,000) 7.0
(HPC−H,日本曹達(株))
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.3
香料 0.5
計 100.0%
〔実施例6〕
使用時に下記ゲル組成物6を筆を使って歯牙に塗布し、その上から水不溶性アクリル製パック材を上塗りし、皮膜を作って適用した。
ゲル組成物6(歯石予防剤、歯牙白色化剤)
フィチン酸 0.8%
プロテアーゼ 0.2
ポリエチレングリコール#300 10.0
(マクロゴール300,ライオン(株))
プロピレングリコール 59.9
(プロピレングリコール,昭和電工(株))
ヒドロキシプロピルセルロース−M(平均分子量150,000) 18.0
(HPC−M,日本曹達(株))
サッカリン 0.1
水 残
計 100.0%
〔実施例7〕
使用時に下記ゲル組成物7を約0.7gチューブからシリコーンゴム製マウストレーに盛り、噛んで使用した。
ゲル組成物7(知覚過敏予防・抑制剤、う蝕予防・修復剤)
硝酸カリウム 5.0%
フッ化ナトリウム 0.2
ポリエチレングリコール#300 2.0
(マクロゴール300,ライオン(株))
グリセリン 20.0
(グリセリン,ライオン(株))
カルボキシメチルセルロースナトリウム(平均分子量670,000) 1.5
(CMCダイセル−1150、ダイセル化学工業(株))
ポリビニルピロリドン(平均分子量1,200,000) 2.0
(ルビスコールK−90,BASFジャパン(株))
ポリアクリル酸 2.0
(ジュンロンPW−110,日本純薬(株))
ステビオサイド 0.1
メチルパラベン 0.05
水 残
計 100.0%
〔実施例8〕
エチレンビニルアセテート樹脂製のマウスピースをお湯で温めて軟化させ、噛んで各自の歯形にフィットしたマウスピースを作製した。下記ゲル組成物8をチューブからマウスピースに約1.5g充填し、装着した。
ゲル組成物8(歯牙白色化剤)
ポリエチレングリコール#300 29.00%
(マクロゴール300,ライオン(株))
ポリエチレングリコール#600 60.0
(マクロゴール600,ライオン(株))
ヒドロキシプロピルセルロース−H(平均分子量300,000) 0.5
(HPC−H,日本曹達(株))
ポリアクリル酸 10.0
(ジュンロンPW−110,日本純薬(株))
香料 0.5
計 100.0%
〔実施例9〕
エチレンビニルアセテート樹脂製のマウスピースをお湯で温めて軟化させ、噛んで各自の歯形にフィットしたマウスピースを作製した。下記ゲル組成物9をチューブからマウスピースに約1.0g充填し、装着した。
ゲル組成物9(ステイン予防・除去剤、歯牙白色化剤)
ポリエチレングリコール#200 85.0%
(マクロゴール200,ライオン(株))
ヒドロキシプロピルセルロース−H(平均分子量300,000) 10.0
(HPC−H,日本曹達(株))
カルボキシメチルセルロースナトリウム(平均分子量670,000) 0.3
(CMCダイセル−1150、ダイセル化学工業(株))
N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム 0.5
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
ムタナーゼ 0.5
ピロリン酸ナトリウム 0.8
香料 0.5
精製水 残
計 100.0%
〔比較例1〕
PEフィルム/レーヨン+PP2層不織布シート(30mm×60mm、PEフィルム部分厚さ10μm、レーヨン+PP部分の目付40g/m2)のレーヨン+PP面に下記ゲル組成物比較例1を展延機(ロールサンドコーター、花栄機械工業製)で1.5g塗膏したシート型貼付剤であり、前歯左3番から右3番にゲルが貼付されるように適用した。シートは歯の裏面へ折り返して使用した。
ゲル組成物比較例1
ポリエチレングリコール#300 78.0%
(マクロゴール300,ライオン(株))
ヒドロキシプロピルセルロース−H(平均分子量300,000) 20.0
(HPC−H,日本曹達(株))
シェラック 1.0
(乾燥透明白ラック,日本シェラック工業(株))
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.3
サッカリンナトリウム 0.1
香料 0.5
計 100.0%
〔比較例2〕
PEフィルム/レーヨン+PP2層不織布シート(30mm×60mm、PEフィルム部分厚さ10μm、レーヨン+PP部分の目付40g/m2)のレーヨン+PP面に下記ゲル組成物比較例2を展延機(ロールサンドコーター、花栄機械工業製)で1.5g塗膏したシート型貼付剤であり、前歯左3番から右3番にゲルが貼付されるように適用した。シートは歯の裏面へ折り返して使用した。
ゲル組成物比較例2
ポリエチレングリコール#300 90.00%
(マクロゴール300,ライオン(株))
ジプロピレングリコール 3.0
(ジプロピレングリコール,昭和電工(株))
ポリビニルピロリドン(平均分子量1,200,000) 5.0
(ルビスコールK−90,BASFジャパン(株))
ステビオサイド 0.1
メチルパラベン 0.05
水 残
計 100.0%
〔比較例3〕
PEフィルム/レーヨン+PP2層不織布シート(30mm×60mm、PEフィルム部分厚さ10μm、レーヨン+PP部分の目付40g/m2)のレーヨン+PP面に下記ゲル組成物比較例3を展延機(ロールサンドコーター、花栄機械工業製)で1.5g塗膏したシート型貼付剤であり、前歯左3番から右3番にゲルが貼付されるように適用した。シートは歯の裏面へ折り返して使用した。
ゲル組成物比較例3
ポリエチレングリコール#300 48.94%
(マクロゴール300,ライオン(株))
ポリビニルピロリドン(平均分子量1,200,000) 50.0
(ルビスコールK−90,BASFジャパン(株))
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
色素 0.01
香料 0.3
メチルパラベン 0.05
サッカリンナトリウム 0.1
ステビオサイド 0.1
計 100.0%
〔比較例4〕
Crest White Strips(P&G社製、Lot.(L)3049BT2B)の上顎用シートのフィルムを剥離し、直接歯牙に適用した。
(実験1)実施例及び比較例の粘弾性測定及び対数面積値の計算
〔実施例1〜9、比較例1〜4〕
実施例1〜9及び比較例1〜4のゲル組成物の周波数(ω)0.1rad/secにおける貯蔵弾性率(G’(0.1))、損失弾性率(G”(0.1))、周波数(ω)100rad/secにおける貯蔵弾性率(G’(100))、損出弾性率(G”(100))を25℃において応力制御コーンプレート型レオメーター(Rheo−Stress RS−100,Haake社)で測定した。また、下記式(1)によりViscoelastic Windowの対数面積値を算出した。結果を表1及び図1に示す。表中G’、G”の単位はPa、対数面積値は単位なしである。また、図1において、丸印の中に記載した数字は実施例番号を示し、その前に「比」が付されたものは比較例番号を示す。
対数面積値={logG’(ω=100rad/sec)−logG’(ω=0.1rad/sec)}{logG”(ω=100rad/sec)−logG”(ω=0.1rad/sec)} …(1)
Figure 2005187330
(実験2)歯面への貼付性能評価
〔実施例1〜9、比較例1〜4〕
実施例1〜9及び比較例1〜4のゲル組成物を1時間口腔内に貼付し、<1>貼付時の歯面及び歯間部への密着性、<2>唾液への成分の漏出程度、<3>剥離時の歯面上膏体残存程度に関して官能評価を行った。
評価基準
<1>2点:歯面及び歯間部に密着、1点:歯面のみに密着、0点:密着せず
<2>2点:成分漏出せず、1点:やや漏出あり、0点:漏出あり
<3>2点:膏体残存無し、1点:やや残存あり、0点:残存あり
更に3名平均で
○:1.5点≦平均値
△:0.5点≦平均値<1.5点
×:平均値<0.5点
とした。
結果を表2に示す。
Figure 2005187330
実施例については、表1のようにG’(0.1)、G”(0.1)、G’(100)、G”(100)及び対数面積値が、本発明で規定した条件(A)かつ(B)の範囲を満たしており、表2のように貼付時の歯面及び歯間部への密着性、唾液への成分の漏出程度及び剥離時の歯面上膏体残存程度についても良好な状態であった。また、比較例1は、G’、G”が条件(A)を満たしているものの、条件(B)の対数面積値が小さいため、ゲルの流動性が低く、歯面及び歯間部への密着性が劣り、歯面からのズレ落ちも認められた。比較例2はG’(0.1)、G”(0.1)が条件(A)を満たしておらず、柔らかいゲル物性となり安定性が悪く、唾液への成分の漏出が認められ、更に条件(B)の対数面積値が大きすぎ、ゲルの流動性が高く、剥離時に歯面上に多量の膏体残存が認められた。また、比較例3は、G’(100)、G”(100)が大きすぎて条件(A)を満たしておらず、ゲルの進入性が悪く、歯面及び歯間部への密着性が悪かった。更に比較例4は公知のものであるが、対数面積値が小さすぎて条件(B)を満たしておらず、ゲルの流動性が低く、ズレ落ちや膏体残存が認められ、歯牙への貼付剤としては、実施例よりも大きく性能が劣った。
上記結果から、実施例のゲル組成物が条件(A)かつ(B)を満たすことで、通常の貼付剤及び公知の貼付剤よりも大きく性能が上回っていることが実証された。
(実験3)歯牙白色化能の評価
〔実施例1,2,5,6,8,9、比較例1〜4〕
予め色差Labを測定した各群2本ずつの抜去歯(上顎前歯1,2番)に、ポリウレタンフィルム(厚さ50μm)上に塗布した各歯牙白色化用ゲル組成物を貼付し、人工唾液に投入した。1時間後ポリウレタンフィルムを剥がし、剥離直後に色差Labを測定して下記式(2)より△Eを求めた。但し、式(2)におけるLabの初期値をそれぞれL0,a0,b0、貼付1時間後のLabをそれぞれL1,a1,b1とした。
△E=((L1−L0)2+(a1−a0)2+(b1−b0)21/2 …(2)
剥離直後の△E値を最大白色化度とし、下記基準で評価を行った。
評価基準
○:△E≧5.5
△:4.5≦△E<5.5
×:△E<4.5
結果を表3に示す(2本平均)。
Figure 2005187330
表3の結果から、実施例は実験1及び実験2の結果と同様に、比較例よりも白色化効果が大幅に上回っており、条件(A)かつ(B)を満たすことで、白色化効果もより向上することが実証された。
(実験4)象牙質知覚過敏抑制作用の評価
〔実施例4,7〕
歯のエナメル質やセメント質が急速に損耗してその内部に存在する象牙質が露出した場合に、象牙質の知覚過敏が起こると言われている。象牙質には象牙細管とよばれる無数の細い管があり、象牙質が露出するとその象牙細管を通して物理化学的刺激が歯髄に直達し易くなり、一過性の疼痛様症状を生じると言われている。従って、露出した象牙細管を閉塞することが、知覚過敏を予防及び治療するために重要なことである。そこで、Pashleyらの方法(J.Dent.Res.57,187−193,1987)を用いて、各ゲル組成物による象牙細管の狭窄及び閉塞の程度を評価した。
方法は、牛の歯根からブロックを切り出し、研磨を行って薄切切片を作製し、試料とした。ポリウレタンフィルム(厚さ50μm)上に塗布した実施例4、7のゲル組成物を各2個の象牙質試料に貼付し、人工唾液に投入した。10分後試料からゲルを剥離し、ゲル貼付前後で生理食塩水を試料に流し、試料を通過する単位時間当たりの生理食塩水量を測定した。但し、ゲルのpHは、すべて6.5であった。各ゲル組成物の知覚過敏抑制効果は、下記式(3)により算出した。結果を表4に示す。
Figure 2005187330
Figure 2005187330
(実験5)初期う蝕修復作用の評価
〔実施例1,3,7〕
この初期う蝕評価法とは、牛歯のエナメル質に酸(う蝕)と薬剤(ゲル組成物)の処理を行い、処理により生じる歯牙のミネラル量の増減(増加を再石灰化、減少を脱灰と呼ぶ)を測定することにより、評価する方法である。
方法は、牛歯のエナメル質部分をブロック状に切り出し、表面を研磨した。更に表面にネールバーニッシュにより8mm×8mmのウィンドウを施し、0.1M乳酸(pH4.5)に2日間浸漬し、人工初期う蝕を作製した。脱灰したブロックを2分し、半分を脱灰初期値もう半分を処理用とし、処理用のブロック(2個/群)にはポリウレタンフィルム(厚さ50μm)上に塗布した実施例1,3,7のゲル組成物を3分間人工唾液中で貼付し、剥離後リン酸加水分解酵素を含む人工唾液に投入した。これを1日2回繰り返し、計7日間実施した。
7日後、歯牙ブロックを厚さ110μmの薄切切片にし、軟X線撮影したフィルムを画像処理することで、下記式(4)により再石灰化率を算出した。結果を表5に示す(J.M.Ten Cate,J.Dent.Res.:69,614−619,1991)。
Figure 2005187330
Figure 2005187330
上記の実験から、Viscoelastic Windowで最適範囲とされる実施例1〜9に関し比較例1〜4と比較して、<1>貼付時の歯面及び歯間部への密着性、<2>唾液への成分の漏出程度、<3>剥離時の歯面上膏体残存程度ともに、より良好な状態であることが分かった。更に実施例の白色化効果は、上記<1>、<2>、<3>と同様に、比較例よりも大きく上回っていることが実証され、知覚過敏抑制効果、初期う蝕修復作用も良好に機能していることが認められた。
従って、本発明は歯牙の美白にとどまらず、う蝕予防・修復、知覚過敏予防・抑制、ステイン予防・除去及び歯石の予防・除去効果を大きく向上させることが期待される。
各実施例、比較例のViscoelastic Window分布を示す図である。

Claims (2)

  1. (a)重量平均分子量が10,000〜2,000,000のゲル化剤、(b)ゲル化剤を溶解させる水又は溶剤、(c)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、知覚過敏予防・抑制剤、う蝕予防・修復剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分を含むゲル組成物と、歯牙に貼り付けるための適用用具とを備えた歯牙貼付用製品であって、上記ゲル組成物の25℃において円錐−円盤型もしくは平行板型の回転粘度計を用いて得られる物性が下記(A)かつ(B)の条件を満足することを特徴とする歯牙貼付用製品。
    (A)周波数(ω)0.1rad/secにおける貯蔵弾性率(G’)が5Pa以上30,000Pa以下、損失弾性率(G”)が30Pa以上20,000Pa以下であり、周波数(ω)100rad/secにおけるG’が5Pa以上30,000Pa以下、G”が30Pa以上20,000Pa以下の範囲である。
    (B)下記式(1)にて算出されるビスコエラスチック・ウインドウ(Viscoelastic Window)の対数面積値が0.1以上4以下である。
    対数面積値={logG’(ω=100rad/sec)−logG’(ω=0.1rad/sec)}{logG”(ω=100rad/sec)−logG”(ω=0.1rad/sec)} …(1)
  2. (a)重量平均分子量が10,000〜2,000,000のゲル化剤、(b)ゲル化剤を溶解させる水又は溶剤、(c)ステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯牙白色化剤、知覚過敏予防・抑制剤、う蝕予防・修復剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分を含むゲル組成物と、歯牙に貼り付けるための適用用具とを備えた歯牙貼付用製品のゲル組成物を選定する方法であって、上記ゲル組成物の25℃において円錐−円盤型もしくは平行板型の回転粘度計を用いて得られる物性が下記(A)かつ(B)の条件を満足するものを、歯牙に対して密着し、有効成分の漏出又は唾液の侵入のないゲル組成物として評価、選定することを特徴とするゲル組成物の選定方法。
    (A)周波数(ω)0.1rad/secにおける貯蔵弾性率(G’)が5Pa以上30,000Pa以下、損失弾性率(G”)が30Pa以上20,000Pa以下であり、周波数(ω)100rad/secにおけるG’が5Pa以上30,000Pa以下、G”が30Pa以上20,000Pa以下の範囲である。
    (B)下記式(1)にて算出されるビスコエラスチック・ウインドウ(Viscoelastic Window)の対数面積値が0.1以上4以下である。
    対数面積値={logG’(ω=100rad/sec)−logG’(ω=0.1rad/sec)}{logG”(ω=100rad/sec)−logG”(ω=0.1rad/sec)} …(1)
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