JP2005172957A - 可逆画像表示媒体及び該画像表示媒体を用いた画像形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 カラー表示ができ、かつ極めて少ない光照射エネルギーにより画像表示ができ、しかも画像表示と消去を繰り返し使用可能な可逆画像表示媒体、及び光照射エネルギーの極めて少ない照射方法を施した画像形成方法を提供する。
【解決手段】 支持基板上に少なくとも発色の色相が異なる3種類のフォトクロミック化合物を個別に含んだ感光層を積層し多色表示を行う可逆画像表示媒体において、該3種類の消色状態のフォトクロミック化合物は発色状態に遷移する閾値波長がそれぞれ異なり、かつ積層された最下部の感光層とその上に位置する感光層との間、及び最上部の感光層とその下に位置する感光層との間にフォトクロミック化合物を発色させるための光を反射する反射層が設けられていることを特徴とする可逆画像表示媒体。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光照射によりカラー画像情報の書き込みと消去の繰り返しが可能な可逆画像表示媒体及び該画像表示媒体を用いた画像形成方法に関するものである。
オフィスにおける紙の消費の増大にともない、紙に替わるメディアとして、画像の記録・消去が繰り返しできる可逆画像表示媒体に関する研究が注目されている。この中で、多色画像の書き換えが可能なカラー可逆画像表示媒体についても幾つかの提案がなされている。
例えば、特開平11−24027号公報(特許文献1)はコレステリック液晶化合物を用いるカラー画像形成方法に関するもので、該コレステリック液晶化合物は、螺旋状分子配列に起因した選択反射色を示すため、加熱温度に応じて様々な色を表示させることによる画像形成方法を提案している。
また、特開平5−271649号公報(特許文献2)は、光照射により可逆的な色変化を起こすフォトクロミック化合物を用いたカラー可逆画像表示媒体に関するもので、黄橙色、赤色、青紫色を発色する3種類のフォトクロミック性ジアリールエテン化合物を混合して、紫外光を照射することでカラー画像表示をする方法を提案している。
さらに、特開平7−199401号公報(特許文献3)においては、イエロー、マゼンタ、シアンを発色する3種類のフォトクロミック性フルギド化合物を用いたカラー可逆画像表示媒体を提案している。
特開平11−24027号公報 特開平5−271649号公報 特開平7−199401号公報
ところで、特開平5−271649号公報や特開平7−199401号公報で提案されている光の吸収によって色を表示するフォトクロミック化合物を用いる方式は、特開平11−24027号公報で提案されている光の選択反射によって色を表示するコレステリック液晶化合物を用いる方式に比べて白反射率が高く又、表示色の濃度が高いなど画像表示特性としては優れた特徴を持っている。
しかしながら、フォトクロミック化合物の消色状態から発色状態へ変化させる波長領域中で最も波長の長い光、言いかえるとフォトクロミック化合物の消色状態における光吸収が生じる閾値波長はフォトクロミック化合物によって異なり、しかも閾値波長よりも短い波長の光に対してはどの波長の光に対しても光照射によって発色する場合がほとんどである。したがって3種類のフォトクロミック化合物を特定の紫外線波長領域の紫外光だけで独立に発色することを利用する特開平5−271649号公報で提示された画像表示方式は十分といえるものではない。
一方、1種類の紫外線で全色発色させた後に可視光線で選択的に消色する特開平7−199401号公報で提案されている画像表示方式は、例えば紙の代替として使用する場合、オフィスで作成される文書の多くは白地に黒文字で書かれており、平均的な原稿率(紙面全体に占める文字面積の割合)は10%以下であるため、全面発色させた媒体のほとんどの領域に可視光線を照射して消色させることになる。そのため画像を表示させるための光照射エネルギーの無駄が多い。
上記のエネルギーの無駄を回避する方法としては、紫外線による全面発色ではなく画像を表示する画素だけを紫外線で選択的に発色させ、その後、画素の色濃度に応じて画素毎に消色させるための可視光線をフォトクロミック化合物毎の感度波長領域の光で順次照射する方法が考えられる。
しかしこの方法においても画像の背景を特定の色にして、その上に文字を表示させるような場合、画像表示媒体を全面発色させた後に、ほとんどの領域に背景色以外の可視光線を照射して消色させる必要があるため光照射エネルギーの無駄が多いと言う欠点がある。
さらに、本出願人は先に、本発明の可逆画像表示媒体の構成において反射層の代りに遮光層(吸収層)を設けた可逆画像表示媒体、及び該可逆画像表示媒体を用いた画像形成方法を提案した(特願2002−171415)。この可逆画像表示媒体を用いた場合、画像表示させるための光照射エネルギーを少なくすることができるが、さらなる光照射エネルギーの省力化について検討を行なった。
そこで本発明は上記の課題を解決するために、さらには本出願人の上記先願の発明を改良するためになされたもので、カラー画像表示ができ、かつ画像表示させるための光照射エネルギーの極めて少ないカラー可逆画像表示媒体、及び新たな光照射方法を用いた可逆画像形成方法を提供することを目的とする。
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、支持基板上に発色の色相が異なる3種類のフォトクロミック化合物を個別に含んだ感光層を積層し多色表示を行う可逆画像表示媒体において、該3種類の消色状態のフォトクロミック化合物は発色状態に遷移する閾値波長がそれぞれ異なり、かつ積層された最下部の感光層とその上に位置する感光層との間、及び最上部の感光層とその下に位置する感光層との間にフォトクロミック化合物を発色させるための光を反射する反射層が設けられていることを最も主要な特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、消色状態において光吸収により発色状態に遷移する光の閾値波長が最も長いフォトクロミック化合物の閾値波長をλ1、次に消色状態において光吸収により発色状態に遷移する光の閾値波長が長いフォトクロミック化合物の閾値波長をλ2、消色状態において光吸収により発色状態に遷移する光の閾値波長が最も短いフォトクロミック化合物の閾値波長をλ3としたとき、前記可逆画像表示媒体の最下部の感光層はλ1の閾値波長を持つフォトクロミック化合物Aであり、その上に位置する感光層はλ2の閾値波長を持つフォトクロミック化合物Bであり、最上部の感光層はλ3の閾値波長を持つフォトクロミック化合物Cであることを主要な特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、前記最下部の感光層とその上に位置する感光層との間に設けられた反射層はλ1よりも短くλ2よりも長い波長領域内の少なくとも一部の波長の光を透過しλ2よりも短くλ3よりも長い波長領域内の少なくとも一部の波長の光を反射する特性を有し、最上部の感光層とその下に位置する感光層との間に設けられた反射層はλ1よりも短くλ3よりも長い波長領域内の少なくとも一部の波長の光を透過しλ3よりも短い波長領域の少なくとも一部の波長の光を反射する特性を有することを主要な特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、前記発色の色相が異なる3種類のフォトクロミック化合物は、発色状態における極大吸収波長が600nm以上700nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物A、発色状態における極大吸収波長が500nm以上600nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物B、発色状態における極大吸収波長が400nm以上500nm未満にあるフォトクロミック化合物Сであることを主要な特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、消色状態の可逆画像表示媒体において、λ1の閾値を持つフォトクロミック化合物を所望の発色後の濃度に応じた光量でλ1よりも短くλ2よりも長い波長の光線を可逆画像表示媒体の画素毎に照射する工程I、λ2の閾値を持つフォトクロミック化合物を所望の発色後の濃度に応じた光量でλ2よりも短くλ3よりも長い波長の光線を可逆画像表示媒体の画素毎に照射する工程II、λ3の閾値を持つフォトクロミック化合物を所望の発色後の濃度に応じた光量でλ3よりも短い波長の光線を可逆画像表示媒体の画素毎に照射する工程IIIを施す画像形成方法を主要な特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画素毎に照射する3つの工程I、II、IIIを施す工程に代えて、画素毎に照射する工程として、請求項1〜3のいずれかに記載の可逆画像表示媒体の2つの反射層を透過するλ3よりも短い波長の光を可逆画像表示媒体の画素毎に照射する1つの工程により前記3つの感光層を同時に発色させる工程を施すことを主要な特徴とするものである。
請求項7、8、9、10に記載の発明は、フォトクロミック化合物を含む感光層に光を照射する光源として蛍光管、蛍光管と光学フィルターの構成、レーザー、発光ダイオードなどを用いることを主要な特徴とするものである。
請求項11に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の可逆画像表示媒体の画素毎に照射する工程Iを施す前工程として白色光を可逆画像表示媒体全面に照射することにより全てのフォトクロミック化合物を含む感光層を消色状態にする工程を施すことを主要な特徴とするものである。
請求項1によれば、支持基板上に発色の色相が異なる3種類フォトクロミック化合物を個別に含んだ感光層を積層し多色表示を行う可逆画像表示媒体において、3種類の消色状態のフォトクロミック化合物は発色状態に遷移する閾値波長がそれぞれ異なり、かつ積層された最下部の感光層とその上に位置する感光層との間及び最上部の感光層とその下に位置する感光層との間にフォトクロミック化合物を発色させるための光を反射する反射層が設けることにより、3種類のフォトクロミック化合物を選択的に発色させて画像形成に必要な光照射エネルギーを少なくすることが可能となった。
請求項2によれば、消色状態において光吸収により発色状態に遷移する光の閾値波長が最も長いフォトクロミック化合物の閾値波長をλ1、次に消色状態において光吸収により発色状態に遷移する光の閾値波長が長いフォトクロミック化合物の閾値波長をλ2、消色状態において光吸収により発色状態に遷移する光の閾値波長が最も短いフォトクロミック化合物の閾値波長をλ3としたとき、最下部の感光層はλ1の閾値波長を持つフォトクロミック化合物、その上に位置する感光層はλ2の閾値波長を持つフォトクロミック化合物とすることで、反射層としては特定の波長以下の光を全て反射する材料を用いることが可能となった。
請求項3によれば、最下部の感光層とその上に位置する感光層との間に設けられた反射層はλ1よりも短くλ2よりも長い波長領域内の少なくとも一部の波長の光を透過しλ2よりも短くλ3よりも長い波長領域内の少なくとも一部の波長の光を反射する特性を有し、最上部の感光層とその下に位置する感光層との間に設けられた反射層はλ1よりも短くλ3よりも長い波長領域内の少なくとも一部の波長の光を透過しλ3よりも短い波長領域の少なくとも一部の波長の光を反射する特性を有する層構成としたことで、3種類のフォトクロミック化合物を選択的に発色させることが可能となった。
請求項4によれば、3種類のフォトクロミック化合物は、発色状態における極大吸収波長が600nm以上700nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物、発色状態における極大吸収波長が500nm以上600nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物、発色状態における極大吸収波長が400nm以上500nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物を選択とすることで、フルカラーの可逆画像表示媒体が可能となった。
請求項5によれば、λ1の閾値を持つフォトクロミック化合物を所望の発色後の濃度に応じた光量でλ1よりも短くλ2よりも長い波長の光を可逆画像表示媒体の画素毎に照射する工程I、λ2の閾値を持つフォトクロミック化合物を所望の発色後の濃度に応じた光量でλ2よりも短くλ3よりも長い波長の光を可逆画像表示媒体の画素毎に照射する工程II、λ3の閾値を持つフォトクロミック化合物を所望の発色後の濃度に応じた光量でλ3よりも短い波長の光を可逆画像表示媒体の画素毎に照射する工程IIIを施すことで、3種類のフォトクロミック化合物を選択的に発色させカラー画像形成に必要な光照射エネルギーを少なくすることが可能となった。
請求項6によれば、請求項5に記載の照射工程のIからIIIを施す照射方法に代えて、2つの反射層を透過し、λ3よりも短い波長の光を可逆画像表示媒体の画素毎に照射することにより3つの感光層を同時に発色させる工程を行うことにより、白黒文字のみの文書または白黒文字の多い文書の場合には工程の数を少なく出来、また3色の色ずれも小さくすることが可能となった。
請求項7によれば、光の照度または照射時間を変えることにより色濃度を変化させることが出来るので、容易に中間階調の制御をすることが可能となった。
請求項8によれば、光源に蛍光管と光学フィルターを構成することで、光学フィルターの形成条件、または光学フィルターの交換設置等により、容易に照射波長の調整が可能となった。
請求項9、10によれば、光源にレーザー又は発光ダイオードを施すことでフィルター等の光吸収部材が不必要になり、光の利用効率が高くなることにより書き込みエネルギーの低減、書き込み時間の短縮が可能となると同時に小型で高出力の光源を用いた可逆画像表示方法により、高解像度、高速書き込み並びに画像形成装置の小型化などが可能となった。
請求項11によれば、フォトクロミック化合物を選択的に発色させる光源とは別に、光源に白色光を設けて可逆画像表示媒体全面に白色光を照射する工程を施すことにより、短時間で表示された画像を全部消去することが可能となった。
以下、図に基づき本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明に係る可逆画像表示媒体を構成する層の断面図を示し、支持基板1に感光層を保持するフォトクロミック化合物Aを含んだ感光層2が形成され、その上部に後述する照射する工程IIの波長の光を反射する反射層3が形成される。さらにその上部にはフォトクロミック化合物Bを含んだ感光層4が形成され、その上に後述する照射する工程IIIの波長の光を反射する反射層5が形成される。さらにその上部にはフォトクロミック化合物Cを含んだ感光層6が形成される。
上記構成の可逆画像表示媒体に対して選択発色させ画像を形成するプロセスを、図2で説明する。最初にフォトクロミック化合物Aの最終的な発色後の濃度に応じた光量でλ1よりも短くλ2よりも長い波長の光線を可逆画像表示媒体の画素毎に照射する工程Iを最初に行う。該工程Iによりフォトクロミック化合物Aに対して所望の発色濃度を与える。該工程Iで用いた波長の光に対してはフォトクロミック化合物B及びCは発色感度を持たないため発色しない。
次にフォトクロミック化合物Bの最終的な発色後の濃度に応じた光量でλ2よりも短くλ3よりも長く、且つ反射層3で反射される波長の光線を画像表示媒体の画素毎に照射する工程IIを行う。該工程IIによりフォトクロミック化合物Bに対して所望の発色濃度を与える。該工程IIで用いた波長の光に対してはフォトクロミック化合物Cは発色感度を持たないため発色しない。またフォトクロミック化合物Aは工程IIの光が反射層3によって反射されるため発色しない。
最後にフォトクロミック化合物Cの最終的な発色後の濃度に応じた光量でλ3よりも短く、且つ反射層5で反射される波長の光線を画像表示媒体の画素毎に照射する工程IIIを行う。該工程IIIによりフォトクロミック化合物Cに対して所望の発色濃度を与える。フォトクロミック化合物A及びBは工程IIIの光が反射層5によって反射されるため発色しない。
上記の特徴を持つフォトクロミック化合物の構成、並びフォトクロミック化合物を発色させるための光を照射する3つの工程により、3種類の異なる色相を有するフォトクロミック化合物を選択的に発色させることができ、更に画像形成を行う際の消色過程の必要が無いことにより、光照射エネルギーの無駄がない画像形成が実現できる。
例えば薄い青を背景とした黒色文字文書の画像を形成する場合、本発明においては照射する3つの工程I、II、IIIにおいて文字を形成する画素にのみ強い紫外線を照射する。薄い青を背景とする部分には照射する工程Iにおいて背景となる領域に弱い光を照射しフォトクロミック化合物Aを薄いシアン濃度で発色させ、照射する工程IIにおいて背景となる領域に弱い光を照射しフォトクロミック化合物Bを薄いマゼンタ濃度で発色させ、これにより薄い青の背景画像を形成する。
一方、特開平7−199401号公報で提案されている方法を用いた場合においては、まず可逆画像表示媒体全面を黒色に発色させる。その後に青の背景部分の画像を作るために400nm以上500nm未満の波長範囲の光を照射することによりフォトクロミック化合物Cを消色する。但しこのままでは背景色が濃い青になっているため、背景色を薄い青にするために500nm以上600nm未満の波長範囲の光及び600nm以上700nm未満の波長範囲の光を適切な光強度で照射しフォトクロミック化合物A及びフォトクロミック化合物Bの発色濃度を低減させる。仮に黒文字の原稿率が10%、消色感度と発色感度が等しいと仮定した場合は、画像形成に必要なエネルギーは本発明の光照射方法に比べ20倍以上になる。
また上記の光照射エネルギーの無駄を回避する方法として、紫外線による全面発色ではなく画像を表示する画素だけを紫外線で選択的に発色させ、その後画素の色濃度に応じて画素毎に消色させるための可視光をフォトクロミック化合物毎の感度波長領域の光で順次照射する方法においても、薄い青の背景を得るためにはフォトクロミック化合物A、B、Cを共に弱く発色させることで背景を薄いグレーに発色させた後に400nm以上500nm未満の波長範囲の光を照射することによりフォトクロミック化合物Cを消色する。したがって、本発明に比べて画像形成に必要な光照射エネルギーは多くなる。
上記の説明においては光を照射する工程Iから光を照射する工程IIIまでを順次行った場合の例を挙げているが、光を照射する工程IからIIIは光を照射する工程の順番を入れ替えても良い。尚、オフィスで使われる文書には白黒文字のみの文書または白黒文字の多い文書が多い。このような文書の場合、前記の光を照射する工程IからIIIの3つの工程を順次重ね合わせて黒発色を行うよりも一回の光を照射する工程で3つの感光層を同時に発色させたほうが、光を照射する工程の数も少なく、また3色の色ずれの心配もない。従って、光を照射する工程IからIIIとは別の光を照射する工程として2つの反射層を透過し、λ3よりも短い波長の光線を可逆画像表示媒体に画素毎に光を照射することにより3つの感光層を同時に発色させる工程を施しても良い。
更には、フォトクロミック化合物A、B、Cの発色状態の光吸収を起こす波長スペクトルが大きく重なっていても従来技術の様に選択的な消色を行う必要が無いためフォトクロミック化合物の発色状態のスペクトル幅が広く選択的に消色できない場合においても所望の色相が得られる。
以下に本発明を更に詳細に説明する。反射率の高い白色表示のために、支持基板は表面が白色であることが望ましいが、用途に応じて着色していても良い。また、支持基板は紙やフィルムなどの比較的薄い媒体が好ましいがこれに限定されるものではない
支持基板上の感光層には、紫外線照射により発色状態となり、可視光照射により消色状態になるフォトクロミック化合物が含まれる。該フォトクロミック化合物は、発色状態が熱に安定であり、光のみによって色変化を起こすP型化合物と、発色状態が熱に不安定であり光だけでなく熱によっても色変化を起こすT型化合物とがあるが、本発明ではP型化合物を用いることが特に望ましい。
P型化合物の代表的なものとしては、フルギド系化合物、ジアリールエテン系化合物などがあり、フルカラー画像を記録再現したい場合には、3原色であるイエロー、マゼンタ、シアンを発色するフォトクロミック化合物が必要である。イエロー発色化合物としては、例えば、「2−[1−(3,5−ジメチル−4−イソオキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[1−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[1−(2−フェニル−5−メチル−4−オキサゾリル)ステアリリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」などを挙げることができる。当該化合物は発色状態での極大吸収波長は430nmから460nm程度である。
マゼンタ発色化合物としては、例えば、「2−[1−(2,5−ジメチル−1−フェニルピラゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[1−(3−メトキシ−5−メチル−1−フェニル−4−ピラゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[1−(2−メチル−5−スチリル−3−チエニル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」などを挙げることができる。当該化合物の発色状態での極大吸収波長は550nmから560nm程度である。
シアン発色化合物としては、例えば、「2−[1−(1,2,5−トリメチル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[2,6−ジメチル−3,5−ビス(p−ジメチルアミノスチリル)ベンジリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」などを挙げることができる。当該化合物の発色状態での極大吸収波長は640nm程度である。
感光層に含まれるフォトクロミック化合物はアクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂あるいはウレタン樹脂に分散してもよいし、マイクロカプセル中に封入されていても良い。
感光層間に設けられる反射層は、特定の波長以下の光を反射する短波長カットフィルターを用いることが望ましい。更に必要に応じて、感光層の劣化を防止する保護膜としてポリビニルアルコール等の薄膜層を最上部の感光層上に設けた画像表示媒体としても良い。
次に、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
フォトクロミック化合物Aとして1,2−ビス(6−(4−N,N−ジエチルアミノフェニルアゾ)−2−メチルベンゾ〔B〕チオフェン−3−イル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン[以下PC1と略す]、フォトクロミック化合物Bとして1,2−ジシアノ−1,2−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)エテン[以下PC2と略す]、フォトクロミック化合物Cとして1,2−ビス(5−エトキシ−2−メチルチアゾール)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン[以下PC3と略す]を用いた。
PC1〜PC3の発色状態における極大吸収波長はそれぞれ610nm、540nm、475nmであった。上記のフォトクロミック化合物の消色状態においてピーク波長450nm半値幅20nmの光を照射するとPC3は発色反応を示したが、PC1、PC2はほとんど発色反応を示さなかった。また上記のフォトクロミック化合物の消色状態においてピーク波長400nm半値幅20nmの光を照射するとPC1、PC2は発色反応を示したが、PC3はほとんど発色反応を示さなかった。また水銀灯の365nmの輝線を照射すると全てのフォトクロミック化合物が発色反応を示した。
反射層3として420nm以下の光を反射し、420nm以上の光を透過する朝日分光株式会社製LU0422を用いた。また反射層5として390nm以下の光を反射し、390nm以上の光を透過する朝日分光株式会社製LU0385を用いた。PC1、PC2、PC3の3種類のフォトクロミック化合物は、それぞれポリスチレン中に10wt%分散し感光液とした。該感光液は白色ポリスチレンテレフタレートの支持基板(厚さ0.5mm)上にPC1をスピンコートし、続いて反射層3を設け、次にPC2をスピンコートし、続いて反射層5を設け、更にPC3をスピンコートし、積層型の感光層を形成した。さらに最上部の感光層の表面に保護膜としてポリビニルアルコールの薄膜(2μm)を塗布して、可逆画像表示媒体を作成した。
(実施例2)
実施例1で作成した可逆画像表示媒体の消色状態に対して、キセノンランプと干渉フィルターから抽出したピーク波長450nm半値幅20nmの光(1mW/cm)を100秒間照射したところ濃いシアン色に発色した。これはPC1が選択的に発色したものと推定される。
(実施例3)
実施例1で作成した可逆画像表示媒体の消色状態に対して、キセノンランプと干渉フィルターから抽出したピーク波長400nm半値幅20nmの光(1mW/cm)を60秒間照射したところ濃いマゼンタ色に発色した。これはPC2が選択的に発色したものと推定される。
(実施例4)
実施例1で作製した可逆画像表示媒体の消色状態に対して、水銀灯の365nmの輝線(10mW/cm)を6秒間照射したところ濃いイエロー色に発色した。これはPC3が選択的に発色したものと推定される。
(実施例5)
実施例1で作製した可逆画像表示媒体の消色状態に対して、キセノンランプと干渉フィルターから抽出したピーク波長450nm半値幅20nmの光(1mW/cm)を100秒間照射し、その後キセノンランプと干渉フィルターから抽出したピーク波長400nm半値幅20nmの光(1mW/cm)を60秒間照射し、最後に水銀灯の365nmの輝線(10mW/cm)を6秒間照射したところ黒色に発色した。これは3種類全てのフォトクロミック化合物が発色したものと推定される。
(実施例6)
実施例2から5で発色した3種類のフォトクロミック化合物を含む可逆画像表示媒体に対してキセノンランプの480nm以上の波長の光(100,000ルクス)を100秒間照射したところ、実施例2から5の全ての実施例でフォトクロミック化合物が消色状態となった可逆画像表示媒体が得られた。
(比較例)
フォトクロミック化合物A、B、Cは実施例1と同じ材料を用いた。実施例1の反射層3の代わりに遮光層Dを設けた。遮光層Dに含まれる遮光物質としてオリエント化学工業製BONASORB UA−3901[以下S1と略す]を用いた。また反射層5の代わりにも遮光層Eを設けた。遮光層Eに含まれる遮光物質として2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール[以下S2と略す]を用いた。PC1、PC2、PC3の3種類のフォトクロミック化合物は、それぞれポリスチレン中に10wt%分散し感光液とした。該感光液は白色ポリエチレンテレフタレートの支持基板(厚さ0.5mm)上にPC1、続いて遮光層D、続いてPC2、続いて遮光層E、更にPC3をそれぞれ含有する液を順次スピンコート法により積層型の感光層を形成した。さらに最上部の感光層の表面に保護膜としてポリビニルアルコールの薄膜(2μm)を塗布して、可逆画像表示媒体を作成した。
比較例で作成した可逆画像表示媒体の消色状態に対して、キセノンランプと干渉フィルターから抽出したピーク波長450nm半値幅20nmの光(1mW/cm)を照射したところ濃いシアン色に発色した。実施例2と同じ濃度になるために必要な時間は100秒であった。
比較例で作成した可逆画像表示媒体の消色状態に対して、キセノンランプと干渉フィルターから抽出したピーク波長400nm半値幅20nmの光(1mW/cm)を照射したところ濃いマゼンタ色に発色した。実施例3と同じ濃度になるために必要な時間は100秒であった。
比較例で作製した可逆画像表示媒体の消色状態に対して、水銀灯の365nmの輝線(10mW/cm)を照射したところ濃いイエロー色に発色した。実施例4と同じ濃度になるために必要な時間は10秒であった。
実施例2〜4と比較例を対比すると、実施例の方が、イエロー及びマゼンタは少ない光照射量で同じ発色濃度が得られる事が確認できた。これは比較例では、フォトクロミック化合物の発色は、メディア上方から光照射によってのみ起こるのに対し、本発明ではフォトクロミック化合物Bを含んだ感光層4及びフォトクロミック化合物Cを含んだ感光層6は反射層から反射される光によっても発色が起こるためである。尚、比較例は本出願人の前記先願に係る発明のものに相当する。
本発明の1実施の形態における可逆画像表示媒体の層構成を示す断面図である。 本発明の1実施の形態における可逆画像表示媒体を構成する3種類フォトクロミック化合物を画像形成のため3回の光照射工程により消色状態から発色状態に遷移した状況を示す吸収スペクトルである。
符号の説明
1 支持基板
2 フォトクロミック化合物Aを含んだ感光層
3 反射層
4 フォトクロミック化合物Bを含んだ感光層
5 反射層
6 フォトクロミック化合物Cを含んだ感光層
7 第一の光照射工程I
8 第二の光照射工程II
9 第三の光照射工程III
10 λ1の閾値波長を持つフォトクロミック化合物A
11 λ2の閾値波長を持つフォトクロミック化合物B
12 λ3の閾値波長を持つフォトクロミック化合物C

Claims (11)

  1. 支持基板上に少なくとも発色の色相が異なる3種類のフォトクロミック化合物を個別に含んだ感光層を積層し多色表示を行う可逆画像表示媒体において、該3種類の消色状態のフォトクロミック化合物は発色状態に遷移する閾値波長がそれぞれ異なり、かつ積層された最下部の感光層とその上に位置する感光層との間、及び最上部の感光層とその下に位置する感光層との間にフォトクロミック化合物を発色させるための光を反射する反射層が設けられていることを特徴とする可逆画像表示媒体。
  2. 前記フォトクロミック化合物を含んだ感光層の消色状態において光吸収により発色状態に遷移する光の閾値波長が最も長いフォトクロミック化合物の閾値波長をλ1、次に消色状態において光吸収により発色状態に遷移する光の閾値波長が長いフォトクロミック化合物の閾値波長をλ2、消色状態において光吸収により発色状態に遷移する光の閾値波長が最も短いフォトクロミック化合物の閾値波長をλ3としたとき、最下部の感光層はλ1の閾値波長を持つフォトクロミック化合物を含んだ感光層であり、その上に位置する感光層はλ2の閾値波長を持つフォトクロミック化合物を含んだ感光層であり、最上部の感光層はλ3の閾値波長を持つフォトクロミック化合物を含んだ感光層であることを特徴とする請求項1に記載の可逆画像表示媒体。
  3. 前記の最下部の感光層とその上に位置する感光層との間に設けられた反射層はλ1よりも短くλ2よりも長い波長領域内の少なくとも一部の波長の光を透過しλ2よりも短くλ3よりも長い波長領域内の少なくとも一部の波長の光を反射する特性を有し、最上部の感光層とその下に位置する感光層との間に設けられた反射層はλ1よりも短くλ3よりも長い波長領域内の少なくとも一部の波長の光を透過しλ3よりも短い波長領域の少なくとも一部の波長の光を反射する特性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の可逆画像表示媒体。
  4. 前記発色相が異なる3種類のフォトクロミック化合物は、それぞれの発色状態における極大吸収波長が600nm以上700nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物A、発色状態における極大吸収波長が500nm以上600nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物B、発色状態における極大吸収波長が400nm以上500nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物Cであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の可逆画像表示媒体。
  5. 消色状態の可逆画像表示媒体において、λ1の閾値を持つフォトクロミック化合物を所望の発色後の濃度に応じた光量でλ1よりも短くλ2よりも長い波長の光線を可逆画像表示媒体の画素毎に照射する工程I、λ2の閾値を持つフォトクロミック化合物を所望の発色後の濃度に応じた光量でλ2よりも短くλ3よりも長い波長の光線を可逆画像表示媒体の画素毎に照射する工程II、λ3の閾値を持つフォトクロミック化合物を所望の発色後の濃度に応じた光量でλ3よりも短い波長の光線を可逆画像表示媒体の画素毎に照射する工程IIIを施すことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の可逆画像表示媒体を用いた画像形成方法。
  6. 請求項5に記載の画素毎に照射する3つの工程I、II、IIIを施す工程に代えて、画素毎に照射する工程として、請求項1〜3のいずれかに記載の可逆画像表示媒体の2つの反射層を透過するλ3よりも短い波長の光を可逆画像表示媒体の画素毎に照射する1つの工程により前記3つの感光層を同時に発色させる工程を施すことを特徴とする画像形成方法。
  7. フォトクロミック化合物を含む感光層に光を照射する光源に蛍光管が含まれることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成方法。
  8. フォトクロミック化合物を含む感光層に光を照射する光源に蛍光管と光学フィルターから構成される光学要素が含まれていることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成方法。
  9. フォトクロミック化合物を含む感光層に光を照射する光源にレーザーが含まれることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成方法。
  10. フォトクロミック化合物を含む感光層に光を照射する光源に発光ダイオードが含まれることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成方法。
  11. 可逆画像表示媒体の画素毎に照射する工程Iを施す前工程として白色光を可逆画像表示媒体全面に照射することによりフォトクロミック化合物を含む感光層全てを消色状態にする工程を施すことを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成方法。
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