JP3893277B2 - 可逆画像表示媒体、画像表示方法及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、可逆画像表示媒体に関し、詳しくは、光照射により可逆的な多色画像形成が可能な画像表示媒体、画像表示方法及び画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
オフィスの紙の消費増大にともない、紙に替わるメディアとして、画像の記録・消去が繰り返しできる可逆画像表示媒体及び画像表示方法に関する研究がさかんにおこなわれている。
例えば、高分子化合物とオレイン酸などの高級脂肪酸の混合物から構成され、特定の温度に加熱すると透明状態になり、また、別の温度に加熱すると白濁状態になる感熱型可逆画像表示媒体が実用化されている。
また、ロイコ染料と顕色剤を含む組成物から構成され、溶融温度以上に一時的に加熱しロイコ染料と顕色剤を反応させると、ロイコ染料の構造により種々の色が発現し、溶融温度より低い温度への再加熱によってロイコ染料と顕色剤を分離することで消色する感熱型可逆画像表示媒体が実用化されている。
しかしながら、上記の可逆画像表示媒体はいずれもモノクロ表示であり、カラー表示のできる可逆画像表示媒体はいまだに実用化例がない。
【0003】
カラー表示のできる可逆画像表示媒体としては、例えば、特開平7−81235号公報では、加熱によって透明状態と不透明状態とを可逆的に変化可能な遮蔽層を用い、3原色(赤、緑、青、または、イエロー、マゼンタ、シアン)で塗り分けられた支持基板の上に、高分子化合物と有機低分子物質とを混合した遮蔽層を形成し、画像部分を熱により透明状態にすることで支持基板の色を表示する、書き換え可能な簡易型カラー画像表示媒体を開示している。
【0004】
また、特開平8−58245号公報では、3原色で塗り分けられた支持基板の上に、加熱によって透明状態と光散乱状態とを可逆的に制御可能な可変透過層を形成し、画像部分を熱により透過状態にすることで支持基板の色を表示する、書き換え可能な情報記録シート及び記録システムを開示している。
【0005】
また、特開平8−80682号公報では、3原色で塗り分けられた支持基板の上に、透明状態と光散乱状態とを加熱によって可逆的に制御可能な可変透過層を形成し、画像部分に特定の波長の光を露光することにより加熱し、支持基板の色を表示するカラーリライタブル記録媒体及び記録方法を開示している。
【0006】
上記の特開平7−81235号公報、特開平8−58245号公報、特開平8−80682号公報等ではいずれも、あらかじめ3原色に塗り分けた支持基板上に、加熱により透明状態と白濁状態とに制御可能な感熱層を形成した可逆画像表示媒体について開示している。
しかしながら、感熱層の透明状態は完全に透明ではないため、表示される支持基板の色は発色濃度が低く、画像のコントラストが鮮明ではない。また、白濁状態も完全に光散乱しているわけではなく、反射率が低いため、紙の白さには及ばない。
【0007】
そこで、特開平9−160511号公報では、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンを配置したパターン形成層の上に、加熱と磁気印加により配向状態が変化する磁性粒子層を形成し、画像部分を加熱と磁気印加により透過状態にすることでパターン形成層の色を表示する磁気記録体及びその記録方法を開示している。
【0008】
また、特許2976111号では、ガラス転移温度及び等方相転移温度が異なり、それぞれ3原色に着色された高分子液晶を、支持基板上にパターン配列し、等方相転移温度以上から急冷した場合には高分子液晶は光透過状態が固定され、徐冷した場合には光散乱状態が固定されるカラー画像形成媒体、カラー画像形成方法、及びカラー画像形成装置を開示している。
【0009】
上記特開平9−160511号公報では感熱層の代わりに磁性粒子層を用いており、また、特許2976111号技術では3原色に着色された高分子液晶を用いているが、やはり透明状態と光散乱状態でのコントラストは悪く、高画質の形成は難しい。
【0010】
また、特許3080122号では、赤、緑、青をそれぞれ選択反射する高分子コレステリック液晶を積層し、電界印加及び加熱により高分子コレステリック液晶の配向状態を変化させることで画像を形成する表示記録媒体、表示記録方法、及び表示記録装置を開示している。
【0011】
同様に、特開平11−149088号公報では、可視光中の異なる色を選択反射するコレステリック液晶を複数積層し、外部から電界を印加することによって画像を書き込み、コレステリック液晶のメモリ効果により、カラー表示画面を無電界で保持することができる表示記憶媒体、画像書き込み方法及び画像書き込み装置を開示している。
【0012】
同様に、特開平11−24027号公報では、分子量が2000以下で、ガラス転移温度が35度以上のコレステリック液晶化合物またはその混合物からなる記録材料を積層し、コレステリック液晶状態より急冷することにより、その反射色を常温で長期間保存とし、さらに、液晶状態に戻せば繰り返し記録することが可能な、書き換え型カラー画像記録媒体及びそれを用いた画像形成方法について開示している。
【0013】
上記に示す特許3080122号、特開平11−149088、特開平11−24027等ではコレステリック液晶の選択反射特性を利用した技術を開示している。
しかし、コレステリック液晶の選択反射色を使用する場合、液晶層の下に黒色の光吸収層を設けなければならないため、下地色を白色にすることが難しい。従って、高画質化は可能であるが、紙の代替として利用するのに適した媒体ではない。
【0014】
また、特開2000−35598では、マイクロカプセル内に3原色のそれぞれに着色された分散媒と白色の電気泳動素子あるいは磁気泳動素子を封入し、電界または磁界を印加することで素子を泳動させ、カラー画像を表示する可逆画像表示媒体を開示している。
上記技術では、電気泳動素子あるいは磁気泳動素子を表面に移動させて着色分散媒を隠蔽することで白色を表示するのであるが、泳動素子の隙間に着色分散媒が残存するなどの不具合が起こり、可逆画像表示媒体全面を完全に白色にすることは難しく、紙の代替として利用するのには適さない。
【0015】
以上のように、従来提案されているカラー表示可能な可逆画像表示媒体は、下地色として紙と同等な反射特性をもつ白色を示すことができない。日常、紙の白色に慣れている人が代替品として紙より反射率の低い画像表示媒体を使って作業をすると目が疲労し作業効率が落ちるといわれているように、下地色の白さは重要である。
【0016】
下地色として白色を示すには、紙または紙と同等な反射特性をもつ白色基板上に、完全な透明状態と着色状態との間を可逆的に変化する可逆層を形成すればよい。
完全な透明状態と着色状態とを可逆的に変化する材料としては、光照射により可逆的な色変化を起こすフォトクロミック化合物が挙げられる。フォトクロミック化合物を用いたカラー表示媒体に関する研究は以前からいくつかなされているのではあるが、フルカラー画像を表示するための実用的な技術を提案した例はいまだにない。
【0017】
フォトクロミック化合物を用いてカラー画像を形成し表示する技術としては、例えば特開平5−271649号公報では、254nmの紫外光で黄橙色、313nmの紫外光で赤色、365nmの紫外光で青紫色に発色するフォトクロミック性ジアリールエテン化合物を3種類混合して、それぞれに対応する紫外光を照射する技術が開示されている。
【0018】
フルカラー画像を形成するためには、3原色(赤、緑、青、または、イエロー、マゼンタ、シアン)を発色する少なくとも3種類のフォトクロミック化合物を光で制御しなければならないが、上記技術では2つの問題点がある。
1つはフォトクロミック化合物の材料特性であり、異なる3種類の紫外線を吸収してさらに3原色を発色する化合物を集めなければならない。上記技術においても青色や黄色などは発色されていないため、フルカラー画像を表示することはできない。また、実用化するためには発色特性だけではなく、繰り返し耐久性、熱・湿安定性なども考慮しなければならず、これらの全てを満たす材料を開発するのは大変困難である。
2つめは照射光源に関することである。上記技術の実施例では照射光源として高圧水銀灯を用いているが、画像パターンを形成するためには半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)など小型で指向性の高い光源で書き込むことが必要である。この場合、紫外域で3種類、特に350nm以下の短波長LD、LEDを開発するのは非常に難しく、3種類の紫外光源を使用することを前提とした表示技術は実用的ではない。
【0019】
特開平7−199401号公報では、発色状態でイエロー、マゼンタ、シアンを示す3種類のフォトクロミック性フルギド化合物の混合体に対して、366nmの紫外ランプで全種類のフォトクロミック化合物を発色させた後に、発色した各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射して選択的に消色する技術が開示されている。
上記技術では、紫外光が1種類のみであるという利点があるものの、特定の種類のフォトクロミック化合物を選択的に消去する過程に大きな課題がある。すなわち、有機化合物の吸収スペクトルはブロードであるため、例えばイエローを発色するフォトクロミック化合物の吸収スペクトルとマゼンタを発色するフォトクロミック化合物の吸収スペクトルはある程度の重なりが存在し、前者を消色しようとすると後者も少なからず消色しまう。従って、色調を制御することは容易ではない。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の従来技術の状況及び問題を鑑みてなされたものであり、その課題は、下地色が白色で紙の代替品となりうる、書き換え可能なフルカラー画像の可逆画像表示媒体、及び、該可逆画像表示媒体に対して実用性が高い光源を用いて画像形成する画像表示方法及び画像表示装置を提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、発色状態における吸収波長帯が異なる2種類以上のフォトクロミック化合物群を支持基板上に規則的な配列パターンで形成し、前記支持基板が白色であることを特徴とする可逆画像表示媒体とする。請求項2に記載の本発明は、支持基板が白色であることを特徴とする請求項1に記載の可逆画像表示媒体とする。請求項2に記載の本発明は、発色状態における極大吸収波長が450nm以上550nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物群と、発色状態における極大吸収波長が550nm以上650nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物群と、発色状態における吸収波長帯を2つ以上有し、そのうちの2つの吸収波長帯の極大吸収波長が400nm以上500nm未満及び600nm以上700nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物群と、のすべてを含有することを特徴とする請求項1に記載の可逆画像表示媒体とする。請求項3に記載の本発明は、発色状態における吸収波長帯が可視域全体にあるフォトクロミック化合物群を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の可逆画像表示媒体とする。
【0022】
請求項4に記載の本発明は、支持基板上に形成されるフォトクロミック化合物群の規則的な配列パターンがストライプ状であり、光照射時における光源素子と可逆画像表示媒体との相対的移動方向が、ストライプの方向と同一であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の可逆画像表示媒体とする。請求項5に記載の本発明は、可逆画像表示媒体の表面に保護層を形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の可逆画像表示媒体とする。
【0023】
請求項6に記載の本発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の可逆画像表示媒体に対して、紫外光を照射することにより、予め定めた領域のフォトクロミック化合物群を発色させ、画像を形成することを特徴とする画像表示方法とする。請求項7に記載の本発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の可逆画像表示媒体に対して、少なくとも、全面に紫外光を照射することにより含有される全種類のフォトクロミック化合物群を発色させる工程と、可視光を照射することにより予め定めたフォトクロミック化合物群を消色する工程と、を施すことにより画像形成を形成することを特徴とする画像表示方法とする。
【0024】
請求項8に記載の本発明は、光の照射強度または光の照射時間を制御することを特徴とする請求項6または7に記載の画像表示方法とする。請求項9に記載の本発明は、白色光を可逆画像表示媒体全面に照射する工程を含むことを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の画像表示方法とする。請求項10に記載の本発明は、可逆画像表示媒体上に不可視パターンを有し、不可視パターンの位置を検出した後に画像形成することを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の画像表示方法とする。請求項11に記載の本発明は、可逆画像表示媒体の一部に紫外光照射し、受光部の色変化を検出した後に画像形成することを特徴とする請求項6ないし10のいずれかに記載の画像表示方法とする。
【0025】
請求項12に記載の本発明は、ライン状の光源を備え、可逆画像表示媒体と光源とを相対的に移動させながら、請求項7ないし10のいずれかの画像表示方法を用いて画像形成することを特徴とする画像形成装置とする。請求項13に記載の本発明は、レーザー光源ならびに回転ミラーを備え、請求項7ないし10のいずれかの画像表示方法を用いて画像形成することを特徴とする画像形成装置とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下より、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の可逆画像表示媒体は、発色状態における吸収波長帯が異なる2種類以上のフォトクロミック化合物群を支持基板上に規則的な配列パターンで形成することを特徴とする。ここでフォトクロミック化合物群とは、1種類のフォトクロミック化合物でも構わないし、複数種類のフォトクロミック化合物を混合したものでもよい。また、フォトクロミック化合物が、アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂あるいはウレタン樹脂等の樹脂に分散されていてもよい。また、フォトクロミック化合物をマイクロカプセル中に封入してもよい。さらに、各フォトクロミック化合物群は、その群を構成する全種類のフォトクロミック化合物の混合物を含む単層構造でもよいし、また、各フォトクロミック化合物を単独で含む層を重ねた積層構造でもよい。
【0027】
フォトクロミック化合物の代表的なものとしては、スピロピラン、スピロオキサジンなどの熱可逆型化合物やフルギド、ジアリールエテンなどの熱不可逆型化合物が挙げられるが、どのような種類の化合物を用いても構わないし、複数の種類が混在していてもよい。ただし、記録画像の保持性から熱不可逆型化合物のほうがより好ましい。フォトクロミック化合物群の消色状態における吸収波長帯は410nm以下に存在することが好ましい。また、各フォトクロミック化合物の消色状態における極大吸収波長が350nm以上410nm以下に存在することが好ましい。
【0028】
フォトクロミック化合物群を規則的な配列パターンで形成する方法としては、1種類ずつフォトリソグラフィーにより形成していく方法、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、パッド印刷、フレキソ印刷などの一般的な印刷手段で塗布する方法、インクジェット法、蒸着法などが挙げられるが、いずれの方法でも構わない。
例えばフォトリソグラフィー法では、1種類のフォトクロミック化合物群を含有したフォトレジストを塗布、乾燥、露光、現像の一連のフォトリソプロセスにより、所定のパターンに配置固定する。続いて、同様に異なる種類のフォトクロミック化合物群を含有したフォトレジストを用いて、フォトクロミック化合物群を所定のパターンに配置固定することを繰り返し、パターニングされた可逆画像表示媒体が形成できる。これらに用いるフォトレジストとしては、例えば、アクリレート樹脂にベンゾフェノン類、アントラキノン類などの光重合開始剤を含有したネガ型レジスト、ノボラック型フェノール樹脂にo−キノンジアジドのエステル化物を含有したポジ型フォトレジストなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0029】
本発明の可逆画像表示媒体のもう1つ特徴は、支持基板の表面が白色であることである。
本発明に用いるフォトクロミック化合物群は消色状態でほぼ透明であるため、支持基板表面が下地色となる。従って、支持基板に紙、または紙と同等の反射特性をもつ白色基板を用いることで、下地色が白い可逆画像表示媒体となる。紙以外の基板材料としては、ポリマーなどの樹脂に白色顔料を分散させたものなどを用いてもよい。
【0030】
カラー画像を表示するためには、支持基板上に、レッド、グリーン、ブルー、の3原色に対応した3種類のフォトクロミック化合物群を周期的に微細配列すればよい。
3原色の各色を表示するときは、その色に対応するフォトクロミック化合物群のみを発色させればよいし、例えば黄色を表示する場合はレッドとグリーンに対応するフォトクロミック化合物群を発色させればよい。3色とも発色させれば灰色を表示することができる。
【0031】
レッドを発色するためには、発色状態における極大吸収波長が450nm以上550nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物群を使用すればよい。同様に、ブルーを発色するためには、発色状態における極大吸収波長が550nm以上650nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物群、グリーンを発色するためには、発色状態において2つ以上の吸収帯を有し、そのうち2つの吸収帯の極大吸収波長が400nm以上500nm未満及び600nm以上700nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物群を使用すればよい。
【0032】
発色状態における極大吸収波長が450nm以上550nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物としては、例えば、「2−[1−(2,5−ジメチル−3−フリル)エチリデン]−3−(3−ペンタニリデン)コハク酸無水物」、「2−[1−(2,5−ジメチル−3−フリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸N−ベンジルイミド」、「2−[1−(5−メチル−2−p−ジメチルアミノフェニル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」などが挙げられる。
【0033】
発色状態における極大吸収波長が550nm以上650nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物としては、例えば、「2−[1−(2−メチル−5−ジエチルアミノスチリル−3−チエニル)メチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[2,6−ジメチル−3−(p−ジメチルアミノスチリル)−5−スチリルベンジリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[1−(2,5−ジメチル−1−フェニル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」などが挙げられる。
【0034】
発色状態における極大吸収波長が400nm以上500nm未満及び600nm以上700nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物としては、例えば、「2−[1−(1,2−ジメチル−3−(5−ジメチルアミノインドリル))エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「1,2−ビス−[5−(1,3−ベンゾジチオール−2−イリデニルメチル)−2−メチルチエン−3−イル]−ペルフルオロシクロペンテン」などが挙げられる。
【0035】
また、上述したように、レッド、グリーン、ブルーの3原色を発色できるフォトクロミック化合物群を微細配列すればカラー画像を表示することはできるが、全てのフォトクロミック化合物群を発色させた状態は灰色であり、色濃度の高いブラックを表示することは困難である。
そこで、ブラックを発色するフォトクロミック化合物群を配列パターンに加えることが有効である。ブラック表示をする場合は、ブラック発色するフォトクロミック化合物群を発色させればよい。単独でブラック発色するフォトクロミック化合物は存在しないため、ブラック表示部は、吸収波長帯が異なる複数のフォトクロミック化合物を混合することで可視域全体に吸収波長帯をもつようにすればよい。
図1に本発明の可逆画像表示媒体の構成例を示す。本例のようにレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)ブラック(K)を微細に並べることでカラー表示をすることができる。
【0036】
本発明の可逆画像表示媒体におけるフォトクロミック化合物類の配列は、どのようなパターンでも構わないが、ストライプ状であると好ましい。
図2にレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、ブラック(K)に対応した4種類のフォトクロミック化合物群をストライプ状に微細配列した場合の例を示す。本例では、D1の領域が1ピクセルを表す。1ピクセル中には、レッド、グリーン、ブルー、ブラックが均等に存在しており、各色の部分を適宜発色させることによってカラー表示ができる。
ストライプ状の配列は、各フォトクロミック化合物群をライン状に形成していけばよいので、フォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法などのいずれの方法でおこなう場合においても微細パターン形成が容易にできる。
また、光照射時に、光源素子と可逆画像表示媒体との相対的移動方向を前記ストライプ方向と同一にすることにより、光源素子と可逆画像表示媒体との相対的移動速度のバラツキあるいは光源素子における照射のタイミングずれなどによって照射位置にズレが生じても、それが色ズレにつながる可能性は小さくなる。
【0037】
本発明の可逆画像表示媒体の表面には保護層を形成することができる。フォトクロミック化合物の光劣化の原因としては光化学反応中の酸素の結合などが挙げられており、保護層により大気を遮断すれば耐久性が向上する。また、外部からの機械的な衝撃が保護層により軽減されるのは言うまでもない。
保護層の材質としては、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、アクリル系樹脂などの透明樹脂が望ましい。また、成膜方法としては真空蒸着法、塗布法、スピンコーティング法、ディッピング法あるいはキャスト法などが挙げられる。
【0038】
本発明の可逆画像表示媒体を用いて多色画像パターンを表示する画像表示方法としては、LD、LEDなどの高出力で指向性の高い光源を、所望の画像パターンに応じて順次照射していく方法が最もよい。可逆画像表示媒体は、あらかじめフォトクロミック化合物群がパターニングされているので、特定の位置(座標)に光照射すれば所望の色を得ることができる。
具体的な書き込み方法としては主として次の2つの方法が挙げられる。
【0039】
1つめの書き込み方法は、紫外LD、紫外LEDなどを用いて、特定の領域のフォトクロミック化合物群を発色させる方法である。
書き込み方法の例を図3に示す。なお、本発明における紫外光とは、近紫外域を含めており410nm以下に極大発光波長のある光を指す。
全面消色状態にある可逆画像表示媒体に対して、例えば、レッド(R)の領域の一部に紫外光照射した場合は、その部分のみが発色し、赤色が表示される。同様に、グリーン(G)の領域の一部に紫外光照射した場合は、その部分のみが発色し、緑色が表示される。
従って、所望の画像パターンに応じて特定の領域に紫外光照射することにより多色画像を形成することができる。既存のフォトクロミック化合物の多くは消色状態において350nm以上410nm以下に吸収帯があるため、紫外光源は1種類でよく、一部実用化されている紫外LD、紫外LEDで対応できる。
【0040】
2つめの方法は、画像表示部全面に紫外光ランプを照射することで含有される全種類のフォトクロミック化合物群を発色させた後、可視域のLD、LEDなどを用いて特定の領域のフォトクロミック化合物群を選択的に消色させる方法である。
書き込み方法の例を図4に示す。
全面消色状態にある可逆画像表示媒体に対して、全面に紫外光ランプを照射することで、全面を発色させる。その後、例えば、ブルー(B)の領域の一部に可視光を照射するとその部分のみが消色される。同様に、ブラック(K)の領域の一部に可視光を照射するとその部分のみが消色され画像が形成される。本発明では、各フォトクロミック化合物群はあらかじめパターニングされているので、例えばブルー(B)を消色するときにブラック(K)の一部が同時に消色されてしまうということはない。各色を独立に消色できるため、色調制御を容易におこなうことができる。
消色に用いる可視域LD、LEDは、各フォトクロミック化合物群の吸収波長帯に対応したものを個別に複数種類用いてもよいが、白色LEDなどを利用すれば共通の消色光として有用である。
【0041】
また、フルカラー画像を表示するためには、中間調を発色させなければならない。フォトクロミック化合物の色濃度は光反応した分子の数で決まり、これは照射光のフォトン数に対応する。従って、照射光の強度、または照射時間を変えることで照射量を調整し、色濃度を容易に調整可能となり、フルカラー画像を表示することができる。
【0042】
また、紫外光照射により発色したフォトクロミック化合物は、白色光を照射することにより消色状態に戻る。従って、白色光を可逆画像表示媒体の表示部全面に照射すれば、形成された画像は消去される。さらに、再び紫外光を照射すると発色するため、画像表示を繰り返しおこなうことができる。
【0043】
本発明の画像表示方法は、可逆画像表示媒体内の発色させたい領域に対して正確に光照射しなければ色ズレを起こしてしまう。特にフォトクロミック化合物群が微細に配列形成されている場合、光照射される領域がほんの僅かずれただけで全く違う色を発色してしまう可能性がある。さらに、可逆画像表示媒体の支持基板が紙や薄いフィルムなどの場合は、フィルムの伸縮などにより、各フォトクロミック化合物の配列形成パターンも伸縮してしまい、光照射が正確におこなえなくなる可能性がある。
そこで、上記の色ズレの発生を少なくするために、光照射直前にフォトクロミック化合物群の配列パターンの伸縮の程度を検出しておき、その情報を基に光照射をすることが有効な手段である。座標の検出手段としては以下に示す2つの方法が挙げられる。
【0044】
1つめは、可逆画像表示媒体の一部にあらかじめ位置情報を光学的に検出できる不可視パターンを媒体上に形成しておき、そのパターンの位置を読み取ることで前記伸縮の程度を検出する方法である。
不可視パターンは、赤外光のみを吸収する材料からなることが望ましく、可逆画像表示媒体全面または一部に吸収帯に対応した光を照射し、その反射光を検出すれば位置を特定することができる。不可視パターンは画像表示には特に影響がないため、パターンの形、大きさ、数、配置位置は適宜選択すればよい。
【0045】
2つめは、可逆画像表示媒体の一部に紫外線照射し、その部分の色変化を検出する方法である。検出には強度の弱い可視光を用い、反射光を検出すればよい。得られた情報と書き込み装置にあらかじめ記憶させてあるフォトクロミック化合物群の配列パターンとを対比させることによって、照射位置を補正することができる。色変化した部分は、画像表示に支障がない適度の大きさであれば、そのまま残しておいてもよいし、可視光を用いて消去してもよい。色変化させる部分の大きさ、数、配置位置は、適宜選択すればよい。
【0046】
本発明の画像表示方法を用いて画像表示装置を作製する場合は、光源の種類や数などにより様々な構成を考えることができ、用途に応じて適宜選択すればよい。ただし、高解像度・高速書き込み・小型化・低コストなどを考慮すると、光源をライン状に設置し、可逆画像表示媒体と光源とを相対的に移動させながら書き込む方法、または、LDからのパルス光と回転ミラーを同期させ、1画素ごとに書き込む方法がより好ましいと考えられる。
図5から図9にそれぞれの書き込み装置の構成例を示す。
【0047】
図5は、画像表示装置の一例を示す平面図であり、図6は図5の側面図である。
図5及び図6の画像表示装置では、可逆画像表示媒体(1)がローラー(2)により搬送される。白色光(3)で可逆画像表示媒体(1)の表示面を白紙状態にした後、紫外LEDアレイ(4)より、目的とする画像パターンに応じて光照射する。可逆画像表示媒体(1)上には、レッド、グリーン、ブルー、ブラックを発色するフォトクロミック化合物群がストライプ状に配列されている。
【0048】
図7の画像表示装置は、可逆画像表示媒体(1)がローラー(2)により搬送される。まず、紫外ランプ(5)により全種類のフォトクロミック化合物群を発色させる。発色した可逆画像表示媒体(1)は、白色LEDアレイ(6)により選択的に消色され、目的とする画像パターンが表示される。可逆画像表示媒体(1)は、レッド、グリーン、ブルー、ブラックを発色するフォトクロミック化合物群がストライプ状に配列されている。
【0049】
図8の画像表示装置は、可逆画像表示媒体(1)に赤外吸収化合物で作製された複数の不可視マーク(7)が付与されている。まず、ローラー(2)により可逆画像表示媒体(1)を搬送しながら赤外レーザー(8)ならびに赤外線検出器(9)によって不可視マーク(7)間の距離を検出し、可逆画像表示媒体(1)の伸縮量を算出する。次に、ローラー(2)を逆回転することにより可逆画像表示媒体(1)を初期位置に戻し、白色光(3)で白紙状態に戻した後、前記伸縮量の補正をしながら紫外LEDアレイ(4)より目的とする画像パターンに応じて光照射する。
または、図9に示すように、画像領域の一部(D2)に照射した紫外光の反射光を利用して座標を検出し、色ズレを防止しても良い。
【0050】
図10は、高解像度・高速書き込み・小型化・低コストなどを考慮して、紫外LD(10)からのパルス光と回転ミラー(11)とを同期させ、1画素ごとに書き込む方法の画像表示装置を示す図である。
図10では、可逆画像表示媒体(1)がローラー(2)により搬送される。白色光(3)で白紙状態にした可逆画像表示媒体(1)に対して、紫外LD(10)のパルス光を回転ミラー(11)で走査してミラー(12)を介して照射し、目的とする画像パターンを表示する。
【0051】
(実施例1)
フォトクロミック化合物としては、フルギド系フォトクロミック化合物である、2−[1−(2,5−ジメチル−3−フリル)エチリデン]−3−(3−ペンタニリデン)コハク酸無水物[以下PC1と略す]と、2−[1−(2−メチル−5−ジエチルアミノスチリル−3−チエニル)メチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物[以下PC2と略す]とを用いた。
これらのフォトクロミック化合物の吸収スペクトルを測定したところ、光照射前の吸収波長帯はPC1、PC2とも300nm以上380nm以下であり、どちらも無色であった。PC1、PC2に高圧水銀灯の366nmの輝線を照射したところ、PC1の極大吸収波長は500nmとなり赤色を示した。また、PC2の極大吸収波長は595nmとなり青色を示した。
PC1、PC2をそれぞれレジスト溶液中に10wt%分散し、フォトリソグラフィー法にて白色ポリエチレンテレフタレート基板(縦5cm、横2cm、厚さ100μm)の右半分(縦5cm、横1cm)にPC1、左半分にPC2のパターンをそれぞれ形成し、可逆画像表示媒体を作製した。
【0052】
(実施例2)
実施例1の可逆画像表示媒体を用い、PC1の一部に波長380nmの紫外LEDを照射したところ、照射部が白色から赤色になった。同様に、PC2の一部に紫外LEDを照射したところ、照射部が白色から青色になった。
【0053】
(実施例3)
実施例1の可逆画像表示媒体を用い、高圧水銀灯の366nmの輝線を媒体全面に照射したところ、PC1部は赤色を、PC2部は青色を呈した。PC1部に白色LEDを照射したところ、照射部が赤色から再び白色になった。同様に、PC2部に白色LEDを照射したところ、照射部が青色から白色に戻った。
【0054】
(実施例4)
フォトクロミック化合物として、フルギド系フォトクロミック化合物である2−[1−(1,2−ジメチル−3−(5−ジメチルアミノインドリル))エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物[以下PC3と略す]を用いた。PC3の吸収スペクトルを測定したところ、光照射前の吸収波長帯は300nm以上410nm以下であった。PC3に高圧水銀灯の366nmの輝線を照射したところ、673nm及び450nmに極大吸収波長を示し緑色になった。また、それぞれ発色状態でイエロー、マゼンタ、シアンを示すフルギド系フォトクロミック化合物である2−[1−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(2−シアノ−1,5−ジメチル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物、2−[1−(1,2,5−トリメチル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物を混合したフォトクロミック化合物群[以下PC4と略す]を用いた。PC4の吸収スペクトルを測定したところ、光照射前の吸収波長帯は300nm以上410nm以下であった。PC4に高圧水銀灯の366nmの輝線を照射したところ、黒色を示した。
【0055】
実施例1に示したPC1、PC2及びPC3、PC4をそれぞれレジスト溶液中に10wt%分散し、フォトリソグラフィー法にて白色ポリエチレンテレフタレート基板(縦2cm、横2cm、厚さ100μm)にPC1、PC2、PC3、PC4の順でストライプ状のパターンを形成した。ピッチ幅は約220μm(線幅200μm、スペース20μm)であった。その後、可逆画像表示媒体の表面に保護膜としてポリビニルアルコールの薄膜(2μm)を塗布した。
【0056】
(実施例5)
実施例4の可逆画像表示媒体を用い、レンズで集光した紫外LEDを、PC1の一部に照射したところ、照射部が白色から赤色になった。同様に、PC2の一部に紫外LEDを照射したところ、照射部が白色から青色になった。同様に、PC3の一部に紫外LEDを照射したところ、照射部が白色から緑色になった。同様に、PC4の一部に紫外LEDを照射したところ、照射部が白色から黒色になった。
【0057】
(実施例6)
実施例4の可逆画像表示媒体を用い、隣接するPC1とPC2の両方に跨る部分に対して紫外LEDを照射したところ、照射部に赤紫色が観察された。この赤紫部を顕微鏡観察したところ、赤色と青色が混在していた。
【0058】
(実施例7)
実施例4の可逆画像表示媒体を用い、隣接するPC2とPC3の両方に跨る部分に対して紫外LEDを照射したところ、照射部に藍色が観察された。この藍色部を顕微鏡観察したところ、青色と緑色が混在していた。
【0059】
(実施例8)
実施例4の可逆画像表示媒体を用い、レンズで集光した紫外LEDを、PC3の一部分及び、その照射部に近接したPC1の一部分にを照射したところ、照射部に黄色部が観察された。この黄色部を顕微鏡観察したところ、緑色と赤色が混在していた。
【0060】
(実施例9)
実施例4の可逆画像表示媒体を用い、隣接するPC1、PC2、PC3に跨る部分に対して紫外LEDを照射したところ、照射部に灰色が観察された。この灰色部を顕微鏡観察したところ、赤色と青色と緑色が混在していた。
【0061】
(実施例10)
実施例4の可逆画像表示媒体を用い、高圧水銀灯の366nmの輝線を媒体全面に照射したところ、PC1、PC2、PC3、PC4とも発色し、可逆画像表示媒体は黒色を呈した。その後、PC1及びPC4の全領域に対して白色LEDを照射したところ、媒体全面は藍色になった。この状態を顕微鏡観察したところ、青色と緑色が混在していた。
【0062】
(実施例11)
実施例4の可逆画像表示媒体を用い、高圧水銀灯の366nmの輝線を媒体全面に照射したところ、PC1、PC2、PC3、PC4とも発色し、可逆画像表示媒体は黒色を呈した。その後、PC2及びPC4の全領域に対して白色LEDを照射したところ、媒体全面は黄色になった。この状態を顕微鏡観察したところ、赤色と緑色が混在していた。
【0063】
(実施例12)
実施例4の可逆画像表示媒体を用い、高圧水銀灯の366nmの輝線を媒体全面に照射したところ、PC1、PC2、PC3、PC4とも発色し、可逆画像表示媒体は黒色を呈した。その後、PC3及びPC4の全領域に対して白色LEDを照射したところ、媒体全面は赤紫色になった。この状態を顕微鏡観察したところ、赤色と青色が混在していた。
【0064】
(実施例13)
実施例4の可逆画像表示媒体を用い、レンズで集光した紫外LEDを、実施例5の半分の強度でPC1の一部に照射したところ、実施例5と比較して発色が少なく、薄赤色になった。同様に、実施例5の半分の強度でPC2の一部に紫外LEDを照射したところ、照射部が白色から薄青色になった。同様に、実施例5の半分の強度でPC3の一部に紫外LEDを照射したところ、照射部が白色から薄緑色になった。同様に、実施例5の半分の強度でPC4の一部に紫外LEDを照射したところ、照射部が白色から灰色になった。
【0065】
(実施例14)
実施例4の可逆画像表示媒体を用い、レンズで集光した紫外LEDを、実施例5の半分の時間でPC1の一部に照射したところ、実施例5と比較して発色が少なく、薄赤色になった。同様に、実施例5の半分の時間でPC2の一部に紫外LEDを照射したところ、照射部が白色から薄青色になった。同様に、実施例5の半分の時間でPC3の一部に紫外LEDを照射したところ、照射部が白色から薄緑色になった。同様に、実施例5の半分の時間でPC4の一部に紫外LEDを照射したところ、照射部が白色から灰色になった。
【0066】
(実施例15)
実施例5〜14で形成した画像パターンに対して、ハロゲンランプの白色光を可逆画像表示媒体全面に照射したところ、全ての画像パターンは消去され白色に戻った。再び実施例5〜14と同じ条件で光照射をおこなったところ、実施例5〜14と同じ色を呈した。常温常湿下において300回繰り返しても発色の色調に変化はなかった。
【0067】
(実施例16)
実施例4と同じ方法でストライプ状のパターンを形成した後、表面に保護膜を形成しない可逆画像表示媒体を作製した。
(実施例17)
実施例16の可逆画像表示媒体を用い、実施例15と同じ条件で光照射をおこなったところ、100回程度繰り返すと、発色時の色調が薄くなることが観察された。
【0068】
(実施例18)
実施例4と同様の方法で可逆画像表示媒体を作製した。その後、可逆画像表示媒体のPC1部の上に酸化イッテリビウム結晶から成る赤外吸収体の不可視マークを積層した。
(実施例19)
実施例18の可逆画像表示媒体に対して、レンズで集光した波長830nmの赤外LDの光を媒体の垂直方向85°の角度から照射し、反射光をフォトダイオードで検出した。可逆画像表示媒体に対して赤外LDならびにフォトダイオードを相対的に移動していくと、一定周期ごとに反射光が減衰し、PC1部の座標位置を確認することができた。
【0069】
(実施例20)
実施例4の可逆画像表示媒体に対して、図9のD2の領域のみに紫外LEDを照射し、発色させた。次に青色LED、緑色LED、赤色LEDの光を85°の角度からそれぞれ照射し、反射光をフォトダイオードで検出した。可逆画像表示媒体に対して各LEDならびにフォトダイオードを相対的に移動していくと、一定周期ごとに反射光が減衰し、PC1、PC2、PC3、PC4の座標位置を確認することができた。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明によれば、発色状態における吸収波長帯が異なる2種類以上のフォトクロミック化合物群を、白色の支持基板上に規則的な配列パターンで形成することで、紙の代替品として高画質かつ書き換え可能な可逆画像表示媒体を提供することができる。また、請求項2に記載の本発明によれば、カラー表示の3原色(赤、緑、青)が得られ、さらに、請求項3に記載の本発明によれば、色濃度の高いブラックが得られるため、画像信号に忠実なカラー表示が可能な可逆画像表示媒体を提供することができる。
【0071】
さらに、請求項4に記載の本発明によれば、フォトクロミック化合物群の配列パターンをストライプ状とし、光照射時における光源素子と可逆画像表示媒体との相対的移動方向をストライプの方向と同一とすることで、パターン形成を容易に行うことができ、ライン方向の色ズレの低減が可能な、安価で信頼性の高い可逆画像表示媒体を提供することができる。さらに、請求項5に記載の本発明によれば、可逆画像表示媒体の劣化を防ぐため、耐久性が向上し、信頼性が高い可逆画像表示媒体を提供することができる。
【0072】
さらに、請求項6または7に記載の本発明によれば、発色状態における吸収波長帯が異なる2種類以上のフォトクロミック化合物群を、白色の支持基板上に規則的な配列パターンで形成した可逆画像表示媒体を用いることで、簡単な構成で容易に多色表示の制御が可能な画像表示方法を提供することができる。さらに、請求項8に記載の本発明によれば、光の照射量を制御することで、各色について発色濃度の調整が可能となり、階調表示が可能な画像表示方法を提供することができる。さらに、請求項9に記載の本発明によれば、可逆画像表示媒体の表示部全面に白色光を照射する工程を加えることにより、画像の書き換えを効率的に行うことが可能な多色画像表示方法を提供することができる。
【0073】
さらに、請求項10または11に記載の本発明によれば、書き込み前に可逆画像表示媒体の位置情報及び伸縮の程度を検出しておくことで、色ズレのない多色画像表示方法を提供することができる。
【0074】
さらに、請求項12または13に記載の本発明によれば、短時間に高解像度の画像の書き込みを行うことが可能な画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可逆画像表示媒体を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係るフォトクロミック化合物群の配列の一例を示す平面図である。
【図3】本発明に係る画像書き込み方法の一例を示す図である。
【図4】本発明に係る画像書き込み方法の一例を示す図である。
【図5】フォトクロミック化合物群を選択的に発色させる方法の画像表示装置の一例を示す平面図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】フォトクロミック化合物群を発色させた後に選択的に消色する方法の画像表示装置の一例を示す平面図である。
【図8】可逆画像表示媒体に不可視マークを付与した構成の画像表示装置の一例を示す平面図である。
【図9】紫外光の反射光を利用して座標検出する場合の一例を示す図である。
【図10】1画素ごとに書き込む方法の書き込み装置を示す平面図である。
【符号の説明】
1 可逆画像表示媒体
2 ローラー
3 白色光
4 紫外LEDアレイ
5 紫外ランプ
6 白色LEDアレイ
7 不可視マーク
8 赤外レーザー
9 赤外線検出器
10 紫外LD
11回転ミラー
12 ミラー
R レッド
G グリーン
B ブルー
K ブラック
D1 1ピクセル領域
D2 座標検出領域
Claims (13)
- 発色状態における吸収波長帯が異なる2種類以上のフォトクロミック化合物群を支持基板上に規則的な配列パターンで形成し、前記支持基板が白色であることを特徴とする可逆画像表示媒体。
- 発色状態における極大吸収波長が450nm以上550nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物群と、
発色状態における極大吸収波長が550nm以上650nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物群と、
発色状態における吸収波長帯を2つ以上有し、そのうちの2つの吸収波長帯の極大吸収波長が400nm以上500nm未満及び600nm以上700nm未満の範囲にあるフォトクロミック化合物群と、
のすべてを含有することを特徴とする請求項1に記載の可逆画像表示媒体。 - 発色状態における吸収波長帯が可視域全体にあるフォトクロミック化合物群を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の可逆画像表示媒体。
- 支持基板上に形成されるフォトクロミック化合物群の規則的な配列パターンがストライプ状であり、
光照射時における光源素子と前記可逆画像表示媒体との相対的移動方向が、前記ストライプの方向と同一であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の可逆画像表示媒体。 - 可逆画像表示媒体の表面に保護層を形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の可逆画像表示媒体。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の可逆画像表示媒体に対して、紫外光を照射することにより、予め定めた領域のフォトクロミック化合物群を発色させ、画像を形成することを特徴とする画像表示方法。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の可逆画像表示媒体に対して、少なくとも、全面に紫外光を照射することにより含有される全種類のフォトクロミック化合物群を発色させる工程と、可視光を照射することにより予め定めたフォトクロミック化合物群を消色する工程と、を施すことにより画像形成を形成することを特徴とする画像表示方法。
- 光の照射強度または光の照射時間を制御することを特徴とする請求項6または7に記載の画像表示方法。
- 白色光を可逆画像表示媒体全面に照射する工程を含むことを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の画像表示方法。
- 可逆画像表示媒体上に不可視パターンを有し、不可視パターンの位置を検出した後に画像形成することを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の画像表示方法。
- 可逆画像表示媒体の一部に紫外光照射し、受光部の色変化を検出した後に画像形成することを特徴とする請求項6ないし10のいずれかに記載の画像表示方法。
- ライン状の光源を備え、可逆画像表示媒体と光源とを相対的に移動させながら、請求項7ないし10のいずれかの画像表示方法を用いて画像形成することを特徴とする画像形成装置。
- レーザー光源ならびに回転ミラーを備え、請求項7ないし10のいずれかの画像表示方法を用いて画像形成することを特徴とする画像形成装置。
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