本発明は、可逆画像表示三次元造形物及びその製造方法並びに画像形成方法に関する。
近年、三次元画像認識技術の進歩により、三次元物体の形状及び表面の彩色を高精度に制御することができるようになってきた。また、任意の三次元形状を造形する技術としては、三次元光造形装置に代表されるような三次元形状を高い精度で造形できる技術が確立されている。これに伴って、三次元光造形物表面の彩色を高精細及び高精度に制御する彩色技術の要求も高まってきている。さらに、三次元造形物表面の画像を任意に書き換えることに対する要求も高まってきている。
これらの要求に対して、既存の三次元造形物の表面に画像を形成する手段としては、カラーインク噴射手段を用いて三次元造形物の表面を着色する方法(特許文献1参照)、伸縮性のあるフィルムに画像を形成し、そのフィルムを三次元造形物の凹凸に合わせて貼り付けることにより、三次元造形物の表面に画像を形成する方法(特許文献2参照)、三次元造形物を銀塩材料の液中に浸漬して、三次元造形物の表面に銀塩材料を付着させ、銀塩材料に対して露光及び定着を行うことにより、3次元造形物表面にフルカラー画像を形成する方法(特許文献3参照)及びフォトクロミック化合物を含む接着液で粉末材料を結合することにより三次元造形物を造形する方法(特許文献4参照)等が提案されている。
しかしながら、カラーインク噴射手段を用いて三次元造形物の表面を着色する方法においては、三次元造形物に凹凸が存在するため、造形物からある程度離れた距離から造形物の表面にインクを吹き付けることが必要であり、画像の精細度が低下するという欠点がある。
また、伸縮性のあるフィルムに画像を形成し、そのフィルムを三次元造形物の凹凸に合わせて貼り付けることにより、三次元造形物の表面に画像を形成する方法においては、フィルムの伸縮により画像が伸縮するため、三次元画像の再現性が低下するという欠点がある。
さらに、三次元造形物を銀塩材料の液中に浸漬して、三次元造形物の表面に銀塩材料を付着させ、銀塩材料に対して露光及び定着を行うことにより、3次元造形物表面にフルカラー画像を形成する方法においては、光照射によって画像を形成するため、カラーインクを噴射する方法に比べて精細度の高い画像を形成できるというメリットがあるが、画像形成後に画像を定着するためのプロセスが必要であるため、画像形成の工程が煩雑になるという欠点がある。
また、フォトクロミック化合物を含む接着液で粉末材料を結合することにより三次元造形物を造形する方法においては、三次元造形物を造形する際に、接着液に発色状態でイエロー、マゼンタ及びシアンの色相を示す三種類のフォトクロミック性フルギド化合物を混入し、三次元造形物の造形後に紫外線を照射してカラー画像を形成すると、煩雑な画像形成工程を必要とせず、精細度の高い画像を形成できる。しかしながら、この方法では、ある特定の表面領域の色相に合わせて、任意の比率で配合された三種類のフォトクロミック化合物を接着液と混合しているため、一度形成した画像を別の画像に変更したい場合には、三次元造形物の表面に可視光を照射することによってフォトクロミック化合物を消色させた後に、人手により別の方法で彩色する必要がある。このため、三次元造形物に形成された画像を任意に書き換えることができないという欠点がある。
一方、平面のシート上にフルカラーの画像を任意に書き換えることができる方法として、発色状態でイエロー、マゼンタ及びシアンを示す三種類のフォトクロミック化合物を用い、一種類の紫外光で全色発色させた後に可視光で部分的に消色することでカラー画像を形成する方法(特許文献5参照)が知られている。また、フォトクロミック化合物を用いて高精細な画像を形成する方法としては、フォトクロミック化合物を選択的に消色させる光源としてレーザースキャン光学系を用いる方法(特許文献6参照)が知られている。さらに、3種類の表示層の間に、それぞれ異なる吸収端波長を有する紫外線吸収化合物を含む2種類の紫外線吸収層を設け、特定波長の紫外線照射による特定の表示層の部分的な発色、特定波長の可視光照射による特定の表示層の全面にわたる消色を繰り返すことにより、支持基板に近い表示層から順次画像を形成する方法(特許文献7参照)及び3種類のフォトクロミック表示層の間に異なる吸収端波長の紫外線吸収化合物を含む2種類の紫外線吸収層を設けるとともに、表示層に含まれる、異なる発色閾値波長を有するフォトクロミック化合物を利用し、特定波長の紫外線照射により特定の表示層を選択的に発色させる方法(特許文献8参照)が知られている。しかしながら、これらの画像形成方法は、平面への画像形成のみを対象としている。
特許第3402694号公報
特開2000−218060号公報
特開2001−343711号公報
特開2002−1828号公報
特開平7−199401号公報
特開2003−233153号公報
特開2003−315956号公報
特開2004−020596号公報
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、高い精細度及び高い精度の画像をより容易に形成し、画像の書き換えが可能である可逆画像表示三次元造形物及びその製造方法並びに画像形成方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、可逆画像表示三次元造形物において、画像が形成される表面領域の全体に、フォトクロミック化合物を含む感光層を有することを特徴とする。本願の請求の範囲及び明細書においては、三次元造形物とは、画像が形成されたものと形成されていないものとの両方を含み、可逆画像とは、感光層を再形成することなく、書き換えることが可能な画像を意味する。
請求項1に記載の発明によれば、画像が形成される表面領域の全体に、フォトクロミック化合物を含む感光層を有するので、高い精細度及び高い精度の画像をより容易に形成し、画像の書き換えが可能である可逆画像表示三次元造形物及びその製造方法並びに画像形成方法を提供することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の可逆画像表示三次元造形物において、前記表面領域と前記感光層との間に白色反射層を有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、前記表面領域と前記感光層との間に白色反射層を有するので、反射率が高く明るい画像を三次元造形物に形成することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の可逆画像表示三次元造形物において、前記フォトクロミック化合物は、紫外線を吸収して消色状態から発色状態へ遷移することを特徴とする。本願の請求の範囲及び明細書においては、消色状態とは、発色状態と異なる安定な状態を意味し、可視光領域において全く光を吸収しない状態も、可視光領域において消色状態における波長と異なる波長を吸収する状態も含む。
請求項3に記載の発明によれば、前記フォトクロミック化合物は、紫外線を吸収して消色状態から発色状態へ遷移するので、簡単な紫外線ランプ光源を用いてフォトクロミック化合物を着色することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の可逆画像表示三次元造形物において、前記感光層は、発色状態における色相が互いに異なる複数の種類のフォトクロミック化合物を含むことを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、前記感光層は、発色状態における色相が互いに異なる複数の種類のフォトクロミック化合物を含むので、三次元造形物に色相範囲がより広い画像を形成することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の可逆画像表示三次元造形物において、前記複数の種類のフォトクロミック化合物の少なくとも二つは、混合されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、前記複数の種類のフォトクロミック化合物の少なくとも二つは、混合されているので、簡単な構成の感光層を形成でき、感光層を形成する工程及びコストを低減することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の可逆画像表示三次元造形物において、前記感光層は、前記複数の種類のフォトクロミック化合物の少なくとも一つを含む複数の層を有することを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、前記感光層は、前記複数の種類のフォトクロミック化合物の少なくとも一つを含む複数の層を有するので、複数の種類のフォトクロミック化合物が、互いに接触することによって化学反応が起こるような物質であっても、これら複数の種類のフォトクロミック化合物を感光層の材料として用いることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の可逆画像表示三次元造形物において、前記複数の層の間に設けられた紫外線吸収層を有することを特徴とする。本願の請求の範囲及び明細書においては、複数の層の間に設けられたとは、複数の層のうち、最も表面側の層と最も三次元造形物の表面側の層との間であることを意味する。
請求項7に記載の発明によれば、前記複数の層の間に設けられた紫外線吸収層を有するので、複数の層における特定の層を選択的に発色させることができる。
請求項8に記載の発明は、請求項4乃至7のいずれか一項に記載の可逆画像表示三次元造形物において、前記感光層は、第一、第二及び第三のフォトクロミック化合物を含み、前記第一、第二及び第三のフォトクロミック化合物の発色状態における可視光領域の吸収ピーク波長は、それぞれ、400nm以上500nm未満、500nm以上600nm未満及び600nm以上700nm未満にあることを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、前記感光層は、第一、第二及び第三のフォトクロミック化合物を含み、前記第一、第二及び第三のフォトクロミック化合物の発色状態における可視光領域の吸収ピーク波長は、それぞれ、400nm以上500nm未満、500nm以上600nm未満及び600nm以上700nm未満にあるので、フルカラーの画像を形成することができる。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の可逆画像表示三次元造形物において、前記第一、第二及び第三のフォトクロミック化合物は、それぞれ、400nm以上500nm未満、500nm以上600nm未満及び600nm以上700nm未満の波長の光を吸収することにより発色状態から消色状態へ遷移することを特徴とする。
請求項9に記載の発明によれば、前記第一、第二及び第三のフォトクロミック化合物は、それぞれ、400nm以上500nm未満、500nm以上600nm未満及び600nm以上700nm未満の波長の光を吸収することにより発色状態から消色状態へ遷移するので、可視光の吸収によりフルカラーの画像を形成することができる。
請求項10に記載の発明は、可逆画像表示三次元造形物の製造方法において、フォトクロミック化合物を含む材料で三次元造形物の画像が形成される表面領域の全体を被覆し、前記フォトクロミック化合物を含む感光層を形成することを特徴とする。
請求項10に記載の発明によれば、フォトクロミック化合物を含む材料で三次元造形物の画像が形成される表面領域の全体を被覆し、前記フォトクロミック化合物を含む感光層を形成するので、高い精細度及び高い精度の画像をより容易に形成し、画像の書き換えが可能である可逆画像表示三次元造形物の製造方法を提供することができる。
請求項11に記載の発明は、画像形成方法において、三次元造形物の画像が形成される表面領域の全体にわたって設けられたフォトクロミック化合物を含む感光層に光を照射して、前記表面領域に画像を形成することを特徴とする。
請求項11に記載の発明によれば、三次元造形物の画像が形成される表面領域の全体にわたって設けられたフォトクロミック化合物を含む感光層に光を照射して、前記表面領域に画像を形成するので、高い精細度及び高い精度の画像をより容易に形成し、画像の書き換えが可能である画像形成方法を提供することができる。
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の画像形成方法において、前記画像が形成される表面領域の三次元座標情報に基づいて、前記感光層に光を照射することにより、前記表面領域に画像を形成することを特徴とする。
請求項12に記載の発明によれば、前記画像が形成される表面領域の三次元座標情報に基づいて、前記感光層に光を照射することにより、前記表面領域に画像を形成するので、光を照射する位置をより的確に決定することが可能となり、より高精度な画像を三次元造形物の画像が形成される表面領域に形成することができる。
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の画像形成方法において、前記感光層の表面の微小領域に対する接平面の法線方向に基づいて前記微小領域を分類し、前記分類された微小領域毎に前記光を照射することを特徴とする。なお、特許請求の範囲及び明細書において、感光層の表面の微小領域とは、接平面を適切に規定することができる程度に微小な領域であることを意味する。
請求項13に記載の発明によれば、前記感光層の表面の微小領域に対する接平面の法線方向に基づいて前記微小領域を分類し、前記分類された微小領域毎に前記光を照射するので、より適切な照射角度で分類された微小領域に光を照射することが可能となり、歪みが減少し、より精度の高い画像をより容易に形成することができる。
請求項14に記載の発明は、請求項12又は13に記載の画像形成方法において、前記分類された微小領域を前記接平面の法線方向に沿ってさらに区分し、前記分類された微小領域の区分毎に前記光を照射することを特徴とする。
請求項14に記載の発明によれば、前記分類された微小領域を前記接平面の法線方向に沿ってさらに区分し、前記分類された微小領域の区分毎に前記光を照射するので、画像のボケを減少させ、画像の精細度をさらに高めることができる。
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の画像形成方法において、前記接平面の法線方向に沿った前記微小領域の区分の長さは、前記光を放出する光学系の焦点深度以下であることを特徴とする。
請求項15に記載の発明によれば、前記接平面の法線方向に沿った前記微小領域の区分の長さは、前記光を放出する光学系の焦点深度以下であるので、画像のボケが少なく、より精細度の高い画像を形成することができる。
請求項16に記載の発明は、請求項11乃至15のいずれか一項に記載の画像形成方法において、前記光を放出する光学系は、レーザー光学系であることを特徴とする。
請求項16に記載の発明によれば、前記光を放出する光学系は、レーザー光学系であるので、光の照射領域を微小化して、より精細度の高い画像を形成することができる。
請求項17に記載の発明は、請求項16に記載の画像形成方法において、前記レーザー光学系の光源は、波長の異なる三種類のレーザー光を放出することを特徴とする。
請求項17に記載の発明によれば、前記レーザー光学系の光源は、波長の異なる三種類のレーザー光を放出するので、精細度の高いフルカラー画像を形成することができる。
請求項18に記載の発明は、請求項11乃至17のいずれか一項に記載の画像形成方法において、前記光を放出する光学系は、二次元画像投影光学系であることを特徴とする。
請求項18に記載の発明によれば、前記光を放出する光学系は、二次元画像投影光学系であるので、焦点深度の深い光学系を用いて、より容易に画像を形成することができる。
本発明によれば、高い精細度及び高い精度の画像をより容易に形成し、画像の書き換えが可能である可逆画像表示三次元造形物及びその製造方法並びに画像形成方法を提供することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
本発明は、可逆画像表示三次元造形物において、画像が形成される表面領域の全体に、フォトクロミック化合物を含む感光層を有する。
本発明における可逆画像表示三次元造形物は、三次元造形物の表面に画像を繰り返し形成及び消去することが可能な三次元の物体である。また、可逆画像表示三次元造形物における画像が形成される表面領域は、画像が形成される部分を含む、三次元造形物の表面における任意の領域であり、三次元造形物の表面の一部又は全部である。図1に示すように、本発明による可逆画像表示三次元造形物の表面のうち画像が形成される表面領域には、感光層が設けられており、感光層は、少なくとも一種類のフォトクロミック化合物を含む。
フォトクロミック化合物は、発色状態が熱に安定であり光のみによって色変化を起こすP型化合物と、発色状態が熱に不安定であり光だけでなく熱によっても色変化を起こすT型化合物とを含む。本発明では、光を照射することで、フォトクロミック化合物の発色状態を制御するため、P型化合物を用いることが特に望ましい。代表的なP型化合物としては、フルギド系化合物及びジアリールエテン系化合物などが挙げられる。
感光層内のフォトクロミック化合物は、アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂又はウレタン樹脂等の樹脂に分散されていてもよいし、又マイクロカプセル中に封入されていてもよい。
また、感光層の表面には、感光層の劣化を防止する保護膜としてポリビニルアルコールの薄膜などを形成してもよい。
本発明において、感光層に含まれるフォトクロミック化合物を全面的に消色又は発色させるための光源としては、安価で高輝度の蛍光管又は高輝度LEDが望ましいが、これらに限定されない。特に、フォトクロミック化合物が、紫外線を吸収して消色状態から発色状態へ遷移する場合には、フォトクロミック化合物を発色させるために、ブラックライトなどの簡単な紫外線ランプを用いることができる。また、本発明において、感光層に含まれるフォトクロミック化合物を部分的に消色又は発色させるための光源としては、高精細の画像を形成するために、半導体レーザーが望ましいが、これに限定されない。
さらに、反射率が高く明るい画像を得るためには、造形物の表面が白色であることが好ましい。また、三次元造形物の材料が、光硬化樹脂など透明な材料である場合には、可逆画像表示三次元造形物の表面領域と前記感光層との間に白色反射層を有することが望ましい。例えば、図1は、本発明による可逆画像表示三次元造形物の構造を示す図であり、図1に示すように、本発明による可逆画像表示三次元造形物は、三次元造形物11の表面に白色反射層12を形成し、その白色反射層12上に感光層13を形成してもよい。なお、反射層は、用途に応じて、着色してあってもよい。
色相範囲の広い画像を形成する場合は、発色状態の異なる複数のフォトクロミック化合物を用いることが好ましく、フルカラー画像を形成するためには、三原色であるイエロー、マゼンタ及びシアンを発色する化合物を用いることが好ましい。
イエローを発色する化合物としては、例えば、「2−[1−(3,5−ジメチル−4−イソオキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[1−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[1−(2−フェニル−5−メチル−4−オキサゾリル)ステアリリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」などが挙げられる。これらの化合物の発色状態での極大吸収波長は、おおよそ430nm〜460nmの範囲にある。
また、マゼンタを発色する化合物としては、例えば、「2−[1−(2,5−ジメチル−1−フェニルピラゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[1−(3−メトキシ−5−メチル−1−フェニル−4−ピラゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[1−(2−メチル−5−スチリル−3−チエニル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」などが挙げられる。これらの化合物の発色状態での極大吸収波長は、おおよそ530nm〜560nmの範囲にある。
また、シアンを発色する化合物としては、例えば、「2−[1−(1,2,5−トリメチル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」、「2−[2,6−ジメチル−3,5−ビス(p−ジメチルアミノスチリル)ベンジリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物」などが挙げられる。これらの化合物の発色状態での極大吸収波長は、おおよそ600nm〜680nmの範囲にある。
上記の三原色を発色する化合物のうち、少なくとも二つは、感光層中で混合されていることが好ましい。上記の三原色を発色するフォトクロミック化合物の少なくとも二つ、好ましくは、全てが混合されている場合には、感光層を構成する層の数を減少させることができ、感光層を形成することが容易となる。
また、フォトクロミック化合物を含む感光層が、上記の三原色を発色するフォトクロミック化合物の少なくとも一つを含む複数の層を有することが好ましい。すなわち、感光層は、イエローを発色するフォトクロミック化合物を含む層、マゼンタを発色するフォトクロミック化合物を含む層、及びシアンを発色するフォトクロミック化合物を含む層を有してもよい。この場合には、原色を発色するフォトクロミック化合物のうち二つが化学反応を引き起こす可能性があったとしても、これら二つのフォトクロミック化合物は、異なる層に分布するため、互いに化学反応を引き起こすことなく、感光層に用いることができる。
また、感光層を構成する複数の層の間に、紫外線を吸収する紫外線吸収層が設けられていることが好ましい。ここで、複数の層の間とは、感光層を構成する複数の層のうち、最も表面側の層と最も三次元造形物側の層との間にあることを意味する。例えば、感光層には、最も表面側の層と最も三次元造形物側の層との間に、第三の層の層を挟む複数の紫外線吸収層が設けられていてもよい。図2は、感光層の構造の一例を示す図である。図2に示すように、感光層は、例えば、三次元造形物上に白色反射層21、白色反射層21上に第一のフォトクロミック化合物を含む感光層22、第一のフォトクロミック化合物を含む感光層22上に第一の紫外線吸収層23、第一の紫外線吸収層23上に第二のフォトクロミック化合物を含む感光層24、第二のフォトクロミック化合物を含む感光層24上に第二の紫外線吸収層25、第二の紫外線吸収層25上に第三のフォトクロミック化合物を含む感光層26を有する。
より具体的には、例えばイエローを発色する層を形成した後、部分的な紫外線照射によりイエローを発色させてイエローの画像を形成した後、イエローを発色する層の上に紫外線吸収層を形成し、次にマゼンタを発色する層を形成した後、部分的な紫外線照射によりマゼンタを発色させてマゼンタの画像を形成した後、マゼンタを発色する層の上に紫外線吸収層を形成し、最後にシアンを発色する層を形成した後、部分的な紫外線照射によりシアンを発色させてシアンの画像を形成することができる。ただし、単にフォトクロミック化合物を含む複数の層の間に紫外線を吸収する紫外線吸収層を設け、三色に対応する層毎に紫外線を部分照射するだけでは、一度画像を形成した後に別のフルカラー画像を形成することはできない。そこで、三種類のフォトクロミック化合物を含む層の間に異なる吸収端波長の紫外線吸収化合物を含む二種類の紫外線吸収層を設け、特定波長の紫外線照射による特定の層の部分的な発色、特定波長の可視光照射による特定の層の全面消色を繰り返すことにより、三次元造形物側の層から順次画像を形成すると共にフルカラー画像を繰り返し書き換えることができる。また、三種類のフォトクロミック感光層の間に異なる吸収端波長の紫外線吸収化合物を含む二種類の紫外線吸収層を設けるとともに、感光層に含まれるフォトクロミック化合物の発色閾値波長が異なることを利用して、特定波長の紫外線を照射することにより特定の層を選択的に発色させ、フルカラー画像を繰り返し書き換えることができる。
また、上述したP型のフォトクロミック化合物は、数万mJ/cm2の大きな光エネルギーで発色状態から消色状態へ変化する化合物を含み、T型のフォトクロミック化合物は可視光の照射では発色状態から消色状態へ変化を起こさないが100℃〜300℃の熱により発色状態から消色状態へ変化する化合物を含む。数万mJ/cm2の大きな光エネルギーで発色状態から消色状態へ変化するフォトクロミック化合物では、イエロー、マゼンタ、シアンを示す三種類のフォトクロミック化合物を紫外光で全色発色させた後に可視光で部分的に消色するカラー画像形成方法では大きな光エネルギーが必要になる。また、可視光の照射では発色状態から消色状態へ変化を起こさないが100℃〜300℃の熱により発色状態から消色状態へ変化する化合物では、イエロー、マゼンタ、シアンを示す三種類のフォトクロミック化合物を紫外光で全色発色させた後に可視光で部分的に消色するカラー画像形成方法は使えない。ここで、複数の感光層の間に、紫外線を吸収する紫外線吸収層が設けると、可視光を部分的に照射するのではなく、紫外線を部分的に照射することにより、フォトクロミック化合物を含む各層を独立に発色状態から消色状態へ遷移させることが可能となるため、数万mJ/cm2の大きな光エネルギーで発色状態から消色状態へ変化する化合物や、可視光の照射では発色状態から消色状態へ変化を起こさないが100℃〜300℃の熱により発色状態から消色状態へ変化する化合物を用いても三次元造形物上にフルカラー画像を形成し消去することが可能になる。また、これらの化合物は数十〜数千mJ/cm2の光エネルギーで発色状態から消色状態へ変化するP型フォトクロミック化合物に比べて、可視光の照明の下で消色する頻度が小さいため、可視光の照明の下で長時間、形成された画像を保持できるという特長がある。
複数の感光層の間に紫外線を吸収する紫外線吸収層が設けられていることのもう一つの特長は、イエロー、シアン及びマゼンタの発色濃度が、それぞれの色を発色させるための紫外線の照射量で一義的に決定されることである。この理由は、フォトクロミック化合物の発色濃度がフォトクロミック分子の量子収率と吸光係数で決まることによる。
三次元造形物に感光層を形成する方法としてディッピング法、スプレー法などがあるが、表面に複雑な凹凸が存在する場合、感光層の膜厚を均一に形成することは難しく、感光層の膜厚が不均一になる。このような場合においても複数の感光層の間に、紫外線吸収層を設ければ、感光層の膜厚に依存せずに、紫外線の照射量に比例した発色濃度を得ることができる。このことは、インクジェット法や銀塩写真法を用いた画像形成と大きく異なり、フォトクロミック化合物を用いて凹凸のある三次元造形物の表面に画像を形成する際の特徴的な効果となる。
なお、本発明中で用いる消色状態という言葉は、可視光領域において全く光を吸収しない状態を意味するのではない。紫外線の照射により発色した発色状態に対比するもう一つの安定な状態を消色状態と定義する。
また、本発明は、可逆画像表示三次元造形物の製造方法において、三次元造形物の画像が形成される表面領域の全体にわたって、フォトクロミック化合物を含む材料で被覆し、フォトクロミック化合物を含む感光層を形成する。感光層を形成する方法としては、フォトクロミック化合物を溶剤等で分散した後に、ディッピング法、スプレー法等の手段を用いることが挙げられる。
さらに、本発明は、画像形成方法において、三次元造形物の画像が形成される表面領域の全体にわたって設けられたフォトクロミック化合物を含む感光層に光を照射して、表面領域に画像を形成する。
フォトクロミック化合物を含む感光層が形成された三次元造形物に、三次元造形物の表面に関する三次元座標の情報に基づいて、感光層に光を照射することにより画像を形成することができる。これは、フォトクロミック化合物を用いた画像形成が光の照射によって行えることに基づく。光はレンズを用いて集光することにより、光源から一定の距離を有する物体の表面の微小領域に光照射を行うことが可能であり、インクジェット法を用いた画像形成よりも格段に精度の高い画像を凹凸のある三次元造形物上に形成することができる。また、三次元造形物の表面にフォトクロミック化合物を用いた感光層を設けることにより、画像の書き換えが可能である点が、三次元造形物を銀塩材料の液中に浸漬し、表面に銀塩材料を付与させ、露光、定着を行うことによりフルカラー画像を三次元造形物表面に形成する方法では実現できないことを可能にしたのである。
ここで、感光層の表面の微小領域に対する接平面の法線方向に基づいて微小領域を分類し、より具体的には、微小領域の代表点における接平面の法線方向が概ね一致する微小領域の群に分類し、分類された微小領域の群毎に、概ね微小領域の接平面の法線方向に沿って、光を照射することが好ましい。このことにより、三次元造形物の表面の三次元座標情報に基づいて、光照射の光軸方向と照射される分類された微小領域の接平面の法線方向とのなす角度を小さくすることができるため、歪みが少なく精度の高い画像を形成することができる。また、光照射の回数を減少させることができ、画像形成に要する時間を短縮することができる。なお、ここで、微小領域とは、光を照射するのに適した、接平面を適切に規定することができる程度に微小な一定の領域であり、代表点とは、微小領域内の任意の点であるが、微小領域における三次元座標の値の平均的な値を持つ点であることが好ましい。ここで、概ね微小領域の接平面の法線方向に沿ってとは、光の照射方向と微小領域における代表点の接平面の法線方向と一致する場合も光の照射方向と微小領域における代表点の接平面の法線方向とが実質的に一致するとみなせる場合も含む。
図3は、三次元造形物表面の微小領域における接平面に関する三次元座標を説明する図である。図3においては、三次元表面の微小領域における接平面34に対する任意の法線の内、基準となる三次元座標の原点を通る法線35に対して基準となる三次元座標の原点を通る軸31周りの回転角(θ)32及び前記法線35がこの軸となす角(α)33の一定範囲毎に区分された感光層の微小領域に、概ねその区分された領域の接平面34の法線35方向に沿って、光を照射する。
θ及びαの一定範囲をそれぞれ△θ及び△αとすると、θ及びαの一定範囲毎に区分された感光層の微小領域とは、可逆画像表示三次元造形物の画像が形成される表面領域の全体における感光層を△θ及び△α毎に区分した表面領域のことを言う。なお、△θ及び△αが微小な場合は、△θ及び△αで区分された一つの領域が略平面となり、この略平面の領域自体を接平面と近似することができる。この場合には、略平面の法線方向から光を照射することができる。
また、三次元造形物の表面における接平面の法線方向に沿ってさらに区分された微小領域毎に光を照射することが好ましい。このことにより、接平面からの距離を算出し、光源から各区分までの距離の最適化を行うことが可能となり、画像のボケが少なく、精細度の高い画像を形成することができる。
なお、三次元造形物自体の厚みが薄く、画像形成する領域全体が光照射の焦点深度の範囲内に存在する場合には、上記の区分を省いて画像形成を行うことができる。
接平面の法線方向に沿った領域の区分の長さは光照射光学系の焦点深度以下であることが好ましい。このことにより、画像のボケが少なく、精細度の高い画像を形成することができる。
また、本発明で用いる光照射手段としては、レーザー光学系や二次元画像投影光学系が望ましいがそれに限定されない。レーザー光学系を用いた場合には、レーザーのスポット径に従って光を高い分解能で照射することができるので、三次元造形物に高精度の画像を形成することができる。また、画像形成法としては、走査光学系を用いる方法と光学系を固定し、三次元造形物を動かす方法のいずれでもよい。走査光学系を用いた場合には、光学系の光軸方向と三次元造形物の微小領域における接平面の法線方向とが一致する表面を選択して一度に光照射を行うことができるため、画像形成をより容易に実現することができる。
三次元造形物表面の感光層の領域を区分する際の、三次元表面の微小領域における接平面34に対する任意の法線の内、基準となる三次元座標の原点を通る法線35に対して基準となる三次元座標の軸周りの回転角(θ)の値の一定範囲は、好ましくは60度以内、より好ましくは30度以内であることが望ましい。また、前記法線35が軸となす角(α)の一定範囲は、好ましくは30度以内、より好ましくは15度以内であることが望ましい。
なお、三次元造形物全体の凹凸が少なく、光学系の光軸方向と被照射領域面の法線方向とのなす角度が三次元造形物の画像形成領域全体にわたって小さい場合には、接平面から三次元造形物表面までの距離を算出し、算出した距離の一定範囲毎に三次元造形物表面の領域を区分し、区分した領域の組み合わせ毎に、光を照射するのみで、画像形成を行うことができる。
光を照射する光学系としては、二次元画像投影光学系を用いることが好ましい。ここで、二次元画像投影光学系としては、二次元の表面に画像を投影する公知のプロジェクター等が挙げられる。光照射の手段として、像側に長い焦点深度を有する二次元画像投影光学系を用いることにより、接平面の法線方向に沿った領域の区分の長さを大きくすることができ、粗い領域の区分で光照射を行うことができる。その結果、光照射の回数を減少させることができ、画像形成に要する時間を短縮することができる。
NTTデータシーメット社製の光造形機SOUP 600GAを用いて三次元造形物を作成した。光造形機に用いた紫外線硬化樹脂としては旭電化工業(株)製アデカラキュアHS−673Sを用いた。作成した三次元造形物にニッペホームプロダクツ株式会社製白色アクリル樹脂塗料をスプレー法により吹き付け乾燥させ、三次元造形物の表面を白色に着色した。
イエロー発色を示すフォトクロミック化合物として2−[1−(5−メチル−2−p−ピリジル−4−オキサゾリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物 (以下PC−Yと略す)を用いた。PC−Yは発色状態において450nmに極大吸収波長を持ち、消色状態において紫外線領域に極大吸収波長を持つ。
マゼンタ発色を示すフォトクロミック化合物として2−[1−(2,5−ジメチル−3−チエニル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物(以下PC−Mと略す)を用いた。PC−Mは発色状態において530nmに極大吸収波長を持ち、消色状態において紫外線領域に極大吸収波長を持つ。
シアン発色を示すフォトクロミック化合物として2−[1−(1−フェニル−2,5−ジメチル−3−ピロリル)エチリデン]−3−イソプロピリデンコハク酸無水物(以下PC−Cと略す)を用いた。PC−Cは発色状態において630nmに極大吸収波長を持ち、消色状態において紫外線領域に極大吸収波長を持つ。
PC−Y、PC−M、PC−Cとポリカーボネイトを1:2:1:4の重量比で混合しトルエンに溶解した後、スプレー法により三次元造形物上に吹きつけ、2μmの厚みに表示層を形成した。その上にポリビニルアルコール水溶液をスプレー法により三次元造形物上に吹きつけ、2μmの厚みに保護層を形成した。
上記の方法によって作成した三次元造形物にブラックライトを照射して媒体を黒色に発色させた後、410nmの波長のレーザー光を部分的に照射し、PC−Yのみを選択的に部分消色した。次に532nmの波長のレーザー光を部分的に照射し、PC−Mのみを選択的に部分消色した。最後に656nmの波長のレーザー光を部分的に照射し、PC−Cのみを選択的に部分消色した。以上の工程を行うことにより、三次元造形物上に精細度の高いフルカラー画像が形成できることを確認した。
実施例1で作製した三次元造形物にブラックライトを照射して媒体を再度黒色に発色させた後、410nmの波長のレーザー光を実施例1とは異なる部分に照射し、PC−Yのみを選択的に部分消色した。次に532nmの波長のレーザー光を実施例1とは異なる部分に照射し、PC−Mのみを選択的に部分消色した。最後に656nmの波長のレーザー光を実施例1とは異なる部分に照射し、PC−Cのみを選択的に部分消色した。以上の工程を行うことにより、三次元造形物上に実施例1とは異なる精細度の高いフルカラー画像が形成できることを確認した。
実施例1と同様に、三次元造形物を作成し、イエロー、マゼンタ及びシアン発色を示すフォトクロミック化合物として、それぞれPC−Y、PC−M及びPC−Cを用いた。
紫外線吸収剤の一つとして、ベンゾトリアゾール系化合物である2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール[以下UV4と略す]を用いた。UV4は、360nm付近に吸収帯をもち,吸収端波長は381nmであった。
もう一つの紫外線吸収剤として、トリアジン系化合物である2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン[以下UV5と略す]を用いた。UV5は330nm付近に吸収帯を持ち、吸収端波長は38nmであった。
実施例1と同様に白色に着色した三次元造形物上にPC−Yとポリカーボネイトを1:4の重量比で混合しトルエンに溶解した後、スプレー法により三次元造形物上に吹きつけ、2μmの厚みにイエロー表示層を形成した。次に、UV4の30mgをスチレン70mgとともにトルエン中に溶解させ,重合開始剤アゾビスイソブチロニトリルを少量加えた後に加熱し,共重合体を作製した。この共重合体をトルエン中に溶解させた溶液を作成し、スプレー法により三次元造形物上に吹きつけ、2μmの厚みに第一の紫外線吸収層を形成した。次にPC−Mとポリカーボネイトを1:4の重量比で混合しトルエンに溶解した後、スプレー法により三次元造形物上に吹きつけ、2μmの厚みにマゼンタ表示層を形成した。次にUV5の10mgをポリスチレン90mgとともにトルエン中に溶解させた溶液を作成し、スプレー法により2μmの厚みに第二の紫外線吸収層を形成した。次にPC−Cとポリカーボネイトを1:4の重量比で混合しトルエンに溶解した後、スプレー法により三次元造形物上に吹きつけ、2μmの厚みにシアン表示層を形成した。その上にポリビニルアルコール水溶液をスプレー法により三次元造形物上に吹きつけ、2μmの厚みに保護層を形成した。
上記の方法によって作成した三次元造形物に385nmの波長の紫外線を集光し、イエロー表示層を最終的に発色させたい部分に光を照射した。この後、555nmの中心波長を持つ蛍光灯及び660nmの中心波長を持つ蛍光灯を三次元造形物の全面に照射し、マゼンタ表示層及びシアン表示層の発色した部分を消色して、イエロー表示層のみを部分発色させた。
次に、三次元造形物に365nmの波長の紫外線を集光し、マゼンタ表示層を最終的に発色させたい部分に光を照射した。この後、660nmの中心波長を持つ蛍光灯を全面に照射し、シアン表示層の発色した部分を消色して、マゼンタ表示層のみを部分発色させた。365nmの波長の紫外線は第一の紫外線吸収層に吸収されてしまうため、イエロー表示層は365nmの波長の紫外線照射に影響を受けない。最後に三次元造形物に331nmの波長の紫外線を集光し、シアン表示層を最終的に発色させたい部分に光を照射した。331nmの波長の紫外線は第二の紫外線吸収層に吸収されてしまうため、イエロー表示層及びマゼンタ表示層は331nmの波長の紫外線照射に影響を受けない。
以上の工程を行うことにより、三次元造形物上に精細度の高いフルカラー画像が形成できることを確認した。
実施例3で作製した三次元造形物に白色光を照射して媒体を再度白色に消色させた後、実施例3とは異なる三次元造形部の表面部分に実施例3で行った385nm、365nm、331nmの紫外線照射を行った。以上の工程を行うことにより、三次元造形物上に実施例3とは異なる精細度の高いフルカラー画像が形成できることを確認した。
NTTデータシーメット社製の光造形機SOUP 600GAを用いて表面に微細な凹凸を持つ三次元造形物を作成した。光造形機に用いた紫外線硬化樹脂としては旭電化工業(株)製アデカラキュアHS−673Sを用いた。作成した三次元造形物にニッペホームプロダクツ株式会社製白色アクリル樹脂塗料をスプレー法により吹き付け乾燥させ、三次元造形物の表面を白色に着色した。
実施例1と同様に、三次元造形物を作成し、イエロー、マゼンタ及びシアン発色を示すフォトクロミック化合物として、それぞれPC−Y、PC−M及びPC−Cを用いた。また、実施例3と同様に、紫外線吸収剤として、UV4及びUV5を用いた。
実施例1と同様に白色に着色した三次元造形物上にPC−Yとポリカーボネイトを1:4の重量比で混合しトルエンに溶解した後、作成した液中に三次元造形物を浸漬し感光層を形成した。感光層の厚みは薄い部分で2μm、厚い部分で5μmとなった。次に、UV4の30mgをスチレン70mgとともにトルエン中に溶解させ、重合開始剤アゾビスイソブチロニトリルを少量加えた後に加熱し、共重合体を作製した。この共重合体をトルエン中に溶解させた溶液を作成し、スプレー法により三次元造形物上に吹きつけ、2μmの厚みに第一の紫外線吸収層を形成した。次にPC−Mとポリカーボネイトを1:4の重量比で混合しトルエンに溶解した後、作成した液中に三次元を浸漬し感光層を形成した。感光層の厚みは薄い部分で2μm、厚い部分で4.5μmとなった。次にUV5の10mgをポリスチレン90mgとともにトルエン中に溶解させた溶液を作成し、スプレー法により2μmの厚みに第二の紫外線吸収層を形成した。次にPC−Cとポリカーボネイトを1:4の重量比で混合しトルエンに溶解した後、作成した液中に三次元を浸漬し感光層を形成した。感光層の厚みは薄い部分で2μm、厚い部分で4μmとなった。その上にポリビニルアルコール水溶液をスプレー法により三次元造形物上に吹きつけ、2μmの厚みに保護層を形成した。
上記の方法によって作成した三次元造形物に385nmの波長の紫外線を集光し、イエロー表示層を最終的に発色させたい部分に光を照射した。この後、555nmの中心波長を持つ蛍光灯及び660nmの中心波長を持つ蛍光灯を三次元造形物の全面に照射し、マゼンタ表示層及びシアン表示層の発色した部分を消色して、イエロー表示層のみを部分発色させた。
次に、三次元造形物に365nmの波長の紫外線を集光し、マゼンタ表示層を最終的に発色させたい部分に光を照射した。この後、660nmの中心波長を持つ蛍光灯を全面に照射し、シアン表示層の発色した部分を消色して、マゼンタ表示層のみを部分発色させた。最後に三次元造形物に331nmの波長の紫外線を集光し、シアン表示層を最終的に発色させたい部分に光を照射した。
以上の工程を行うことにより、三次元造形物上に精細度の高いフルカラー画像が形成できることを確認するとともに、感光層の厚みが4μm以上の厚い領域においても感光層の厚みが2μmの薄い領域においても感光層の厚みによらず、紫外線の照射光量に比例して所望の画像色濃度が得られることを確認した。
三次元造形物の表面を白色に着色する工程を除き、実施例1と同じ工程を実施した。紫外線硬化樹脂製の三次元造形物に表示層を形成する前にあらかじめ白色に着色しなかったため、形成した画像は高い反射率や明るいカラー表示が必要な領域において実施例1に比較して白色反射率の低い画像になった。
三次元造形物の表面を白色に着色する工程を除き、実施例3と同じ工程を実施した。しかしながら、紫外線硬化樹脂製の三次元造形物に表示層を形成する前にあらかじめ白色に着色しなかったため、形成した画像は高い反射率や明るいカラー表示が必要な領域において実施例3に比較して白色反射率の低い画像になった。
NTTデータシーメット社製の光造形機SOUP 600GAを用いて最高点の高さ20mm三次元地形図を作成した。三次元地形図の光造形に用いた紫外線硬化樹脂としては旭電化工業(株)製アデカラキュアHS−673Sを用いた。作成した三次元地形図にニッペホームプロダクツ株式会社製白色アクリル樹脂塗料をスプレー法により吹き付け乾燥させ、三次元地形図の表面を白色に着色した。
実施例1と同様に、三次元造形物を作成し、イエロー、マゼンタ及びシアン発色を示すフォトクロミック化合物として、それぞれPC−Y、PC−M及びPC−Cを用いた。
PC−Y、PC−M、PC−Cとポリカーボネイトを1:2:1:4の重量比で混合しトルエンに溶解した後、スプレー法により三次元造形物上に吹きつけ、2μmの厚みに表示層を形成した。その上にポリビニルアルコール水溶液をスプレー法により三次元造形物上に吹きつけ、2μmの厚みに保護層を形成した。
上記の方法によって作成した三次元地形図にブラックライトを照射して媒体を黒色に発色させた後、三次元地形図の三次元座標情報を元に、三次元地形図表面の微小領域の接平面を規定し、三次元表面の微小領域における接平面に対する任意の法線の内、基準となる三次元座標の原点を通る法線に対して基準となる三次元座標の軸周りの回転角(θ)の値を60°毎に0°〜360°まで6分割し、次に以上の観点で分割した三次元地形図表面を、前記法線がこの軸となす角(α)の値を30°毎に、0°〜90°まで3分割した。
三次元地形図表面の三次元座標情報を元に、前記の観点で分割した18の組み合わせの三次元地形図の区分された領域におけるθ及びα各々の値の平均的な値を持つ接平面から三次元地形図表面までの距離を算出し、4mm毎に、三次元地形図表面領域をさらに分割した。上記の方法で分割した三次元地形図表面を焦点深度±2mmのレーザー走査光学系を用いて画像を形成した。レーザー走査光学系のレーザーとしては、410nmの波長の青色レーザー、532nmの波長の緑色レーザー、656nmの波長の赤色レーザー光を用いた。以上の工程を行うことにより、三次元地形図表面に精細度の高いフルカラー画像が形成できることを確認した。
実施例8で作製した三次元地形図にブラックライトを照射して媒体を再度黒色に発色させた後、実施例8で述べた方法で18の領域に三次元地形図表面を分割し、分割した18の組み合わせの三次元地形図の領域に対して、基準となる三次元座標の軸周りの回転角(θ)の値が30°、90°、150°、210°、270°、330°、三次元造形物表面の点と原点を結ぶ直線がこの軸となす角(α)の値が、15°、45°、75°の18の組み合わせの接平面から三次元地形図表面までの距離を算出し、80mm毎に、三次元地形図表面領域をさらに分割した。上記の方法で分割した三次元地形図表面を焦点深度±40mmの2次元画像投影光学系を用いて画像を形成した。以上の工程を行うことにより、三次元地形図表面に精細度の高いフルカラー画像が形成できることを確認した。
実施例8で作製した三次元地形図にブラックライトを照射して媒体を再度黒色に発色させた後、三次元地形図表面を分割せずに、焦点深度±2mmのレーザー走査光学系を用いて画像を形成した。レーザー走査光学系のレーザーとしては、410nmの波長の青色レーザー、532nmの波長の緑色レーザー、656nmの波長の赤色レーザー光を用いた。焦点深度範囲外の領域、及び光照射光軸方向と照射領域面の法線方向とのなす角度が大きい領域の画像が忠実に再現することができず、実施例8に比べて精細度が低くなってしまった。
実施例8で作製した三次元地形図にブラックライトを照射して媒体を再度黒色に発色させた後、三次元地形図表面を分割せずに、焦点深度±40mmの2次元画像投影光学系を用いて画像を形成した。光照射光軸方向と照射領域面の法線方向とのなす角度が大きい領域の画像が忠実に再現することができず、実施例8に比べて精細度が低くなってしまった。
可逆画像三次元造形物の構造を示す図である。
感光層の構造を示す図である。
三次元座標を説明する図である。
符号の説明
11 三次元造形物
12、21 白色反射層
13 感光層
22 第一のフォトクロミック化合物を含む感光層
23 第一の紫外線吸収層
24 第二のフォトクロミック化合物を含む感光層
25 第二の紫外線吸収層
26 第三のフォトクロミック化合物を含む感光層
31 基準座標の軸
32 基準座標の軸周りの回転角(θ)
33 三次元表面の微小領域における接平面に対する任意の法線の内、基準となる三次元座標の原点を通る法線に対して基準となる三次元座標の軸となす角(α)
34 接平面
35 接平面に対する法線