電子写真式プリンタは、複写機、ファクシミリ、PC用プリンタ等に広く用いられている。この電子写真式プリンタには、1個又はそれ以上のカートリッジが使用されており、通常カートリッジ内に感光体及び必要な駆動手段等を一体化した感光体カートリッジ、現像カートリッジ、トナーカートリッジ、その他の交換可能なカートリッジがプリンタ内に挿入/取出し可能に設置されている。
これらのカートリッジには、コピー枚数に応じた課金システムのためや一定の品質保証のため、コピー枚数の累積計数手段が設けられているものがあり、通常、この累積計数手段の計数値が一定限度に達したら強制的にコピーを停止し、限度を超えた使用による画像欠陥の発生やカートリッジ部品の故障、さらにはそれによって引き起こされるプリンタの故障を防止するようになされている。
このような技術の一例として、下記特許文献1に開示されている交換可能なカートリッジを用いた静電写真式複製装置の監視保証方法の具体例を図4〜図6を用いて説明する。図4は、前記静電写真式複製装置のプリンタの制御装置の細部とゼログラフィーカートリッジ、現像カートリッジ及びトナーカートリッジのEEPROM(電気的消去・書込可能な不揮発性メモリ。フラッシュメモリともいう。)との接続を示す回路図であり、図5は、プリンタを使用可能にする前に、カートリッジの識別とイメージカウントを検査するためのプリンタ初期化サイクルを説明するフローチャートであり、また、図6は、イメージカウントサイクルとカートリッジカウント更新サイクルを説明するフローチャートである。
図4において、プリンタ100は、交換可能なゼログラフィーカートリッジ112と、現像カートリッジ114と、トナーカートリッジ116を使用するレーザープリンタであり、各カートリッジは所定数のプリントすなわちコピー形式のイメージを作成できるように設計されている。
各カートリッジ112、114、116にはEEPROM110形式の認識/メモリチップが一体構造に設けられており、各カートリッジがプリンタ100に挿入されるとプリンタ100の制御装置101と電気的に接続されるようになされている。この制御装置101は、少なくともマイクロプロセッサ102と、オペレーティングシステムのソフトウェア、プログラミングデータ等を保存するのに適したROM103及びRAM104とを備えている。各カートリッジ112、114、116のEEPROM110は、各カートリッジの残りのイメージ数のカウント値を記憶するアドレス可能メモリを備えている。前記カウント値は、各印刷の実行の終りに、制御装置101によってそれぞれのEEPROMに記憶される。
各カートリッジで作成可能な最大イメージ数を表す最大カウント値Yが事前にプログラムされている。カウント方式は、イメージが作成されると、EEPROM110内のカウント値Yを減分して、現在のイメージカウント値を得る減分方式である。現在イメージカウント値Yが終了カウント値(この例では「0」)に達すると、カートリッジは使用不能にされる。また、カートリッジの寿命が終りに近づいたときオペレータに警告するため、カートリッジの残りのイメージが所定数であることを表す警告イメージカウントXがEEPROM110に与えられている。一般に、警告イメージカウント値Xに達してから数百から数千のイメージを作成することができるので、プリンタの動作を継続するためには、その間にカートリッジを交換しなくてはならない。
最大イメージカウント値Y及び警告イメージカウント値Xは、一般に、工場でEEPROM110に事前にプログラムされる。さらに、許可されたEEPROM110のみが確実に使用されるように、識別番号が各カートリッジ112、114、116のEEPROMに事前にプログラムされ、記憶される。
この図4の制御装置101の動作を図5及び図6のフローチャートを参照して説明する。プリンタ100を電源に接続すると、初期化ルーチンが始まり、カートリッジ112、114、116の識別番号が読み取られ、ROM103に記憶された対応する識別番号と比較される。正しいカートリッジが挿入された場合、まず図5のフローチャートにしたがってカートリッジがその寿命の終りに達したかどうかの検査が行われる。このため、各EEPROM110に記憶された現在のイメージカウント値が読み出され、終了カウント値と比較される。EEPROMの現在のイメージカウント値が「0」に等しいか、又はそれ以下であれば、カートリッジは使い果たされており、寿命終了と判断され、そのカートリッジが交換されるまで、プリンタ100の動作は抑止される。EEPROMの現在のイメージカウント値が「0」よりも大きい場合は、各カートリッジは寿命の終りに達していないとして、プリンタはプリント可能状態となって、待機状態にはいる。
印刷要求があると、プリンタ100は動作し、図6に示すように、制御装置101はプリントが正常になされるごとにシートセンサ105からの信号によりカウントし、印刷が終了したら、プリンタ100は停止し、印刷実行中に作成されたイメージの総数すなわちイメージ実行カウント値がRAM104に一時的に記憶される。制御装置101は、各カートリッジ112、114、116のEEPROM110から現在のイメージカウント値を取出し、RAM104からのイメージ実行カウント値を使用して、各EEPROM110について、カートリッジの残りのイメージ値を表す新しいイメージカウント値を計算し、次に、各EEPROM110に新しい現在のイメージカウント値を書き込む。
新しい現在のイメージカウント値をEEPROM110へ戻す前に、制御装置101は各新しい現在イメージカウント値と各カートリッジ112、114、116のEEPROM110に記憶されている警告イメージカウント値Xとを比較する。新しい現在イメージカウント値が警告イメージカウント値Xに等しいか、それより小さければ、該当するカートリッジについて表示パネル(図示せず)にその旨が警告される。
各カートリッジについての新しい現在イメージカウント値は、さらに、終了カウント値「0」とも比較され、あるカートリッジについての新しい現在イメージカウント値が「0」に等しいかそれよりも小さければ、そのカートリッジは使用不能にされ、表示パネルに「寿命終了」のメッセージが表示される。制御装置101は、使用済みカートリッジが新品のカートリッジと交換されるまで、プリンタ100のそれ以降の動作を抑制する。
図4を参照すると、現在イメージカウント値が「0」に等しいか、それよりも小さくなると、該当するEEPROM110の中に、永久的内部接地回路111ができる、この回路111は事実上、EEPROM110がメモリとして機能できないようにする。
このように、下記特許文献1に開示されている交換可能なカートリッジを用いた静電写真式複製装置の監視保証方法は、累積計数手段の計数値が予め設定された最大一定限度Yに達したら強制的にコピーを停止してそれ以上コピーを継続できないようにして、限度を超えた使用による画像不良の発生やカートリッジ部品の故障、さらにはそれによって引き起こされるプリンタの故障を防止することができるようになされているものである。
しかし、EEPROMの書き換えが自由には行えないような内部回路を用いて、リセットを制限した特殊な素子も用いられることがある。下記特許文献2に開示されている方法はその一例であり、メモリの一部は一方向の変化だけが許されるようになっているため、その部分に記録された印字量の累積データはもとに戻すことができない。
この特許文献2に開示されている監視システムは、図4に記載されている回路において、カートリッジのEEPROM110を計数値メモリ122及びフラグメモリ124の少なくとも2種類の独立したメモリを含む(図7参照)ものとなした点に特徴があり、他の構成は実質的に図4に記載のものと同じであるので、その部分についての詳細な説明は省略する。
図7を参照すると、前記フラグメモリ124は一連の電子的「フラグ」を含み、これはビットの組126で例示してあり、また、前記計数値メモリ122は何枚の印刷又はコピーを作成したかの動作計数値(前述のように最大計数値Yで始まる)を保持するのに適したものであり、特定のカートリッジに永久的に装着してあるメモリ(EEPROM)110の一部である。通常、計数値メモリ122は最初に、メーカーがそのカートリッジで出力させるように意図したコピー又は印刷の枚数に等しい数で、一般に20,000程度の数の最大計数値Yを読み込む。計数値メモリ122内の積算計数値は新しいカートリッジにおいては意図したコピー枚数で始まり、前述したような方法で最大計数値Yから0に向かって1ずつ減算される。
このシステムにおいては、計数値メモリ122内に1枚ずつの計数値を保存するのと同時にフラグメモリ124の動作も制御される。フラグ126はEEPROM内の識別可能なビットの態様をなし、状態1から状態0へ変更することができるが状態0から状態1への変更はできないようになされている。フラグメモリ124の機能は計数値メモリ122内の1枚ずつの計数と一般に一致すべき第2のメモリとして動作する。つまりフラグメモリ124内のフラグ126を用いてEEPROMの付随しているカートリッジの残りの寿命の大まかな指標を提供する。このフラグメモリ124は計数値メモリ122の改変防止として機能する。フラグメモリ124内のフラグ126は計数値メモリ122でできるように上向きに作為的に変更することができないため、フラグメモリ124は計数値メモリ122を改変することによりカートリッジ寿命を作為的に延長する何らかの試みを防止することができ又は計数値メモリ122を上書きするように動作する。
この例では、フラグメモリ124は1つのフラグ126が計数値メモリ122からの一定間隔の計数値で状態1から状態0に変化するようになされている。この一定の間隔値は、単純な2の倍数例えば128、256、512、1024などの間隔であり、この間隔値はメモリ110内のPROMなどの「一回だけ書き込みできる」メモリ128に保存して、カートリッジの最大予定寿命に合わせて製造時に調節可能とされる。この間隔は改変防止の範囲を決定するので、できる限り小さくとられる。
カートリッジを使用すると計数値メモリ122が印刷ごとに1つずつ減少するので、累積印刷枚数が1,024に達すると、この時点でシステムはフラグメモリ124内の第1の利用可能な状態1のフラグ126を状態0に変更する。このとき、残存寿命は1,024×19すなわち19,456となる。
この時点より後で、誰かが計数値メモリ122内の残存寿命をもっと高い値に設定することにより装置を改変しようと試みた場合、システムは計数値メモリ122内の残存計数値をフラグメモリ124内の状態1のフラグの数に等しい値の1,024倍に変更する。例えば、計数値メモリ122内の残存寿命が3,000枚になるまで使用した場合、フラグメモリ124内のフラグ126の暫増的変更のため状態1のままで残っているフラグ数は3である。計数値メモリ122内の残存計数値を20,000に変更して作為的にカートリッジ寿命を増加させようと試みた場合、システムはこの計数値が最大利用可能な寿命を超過していると判断し計数値メモリ122内の計数値を3,072(1,024×3)に復帰させる。
すなわち、このシステムにおいては、カートリッジに付随する残存コピー枚数の記号的(symbolic)な値はフラグメモリ124内の残存フラグ数で維持される。フラグメモリ124は改変できないようになっているため、フラグメモリ124は必要であれば計数値メモリ122内の一枚ずつの逆算計数値を上書きするように機能する。
このように、下記特許文献2に開示されたシステムにおいては、二重のメモリシステムを使用することにより、電子写真式プリンタに使用する交換可能なカートリッジの計数値メモリ122を改変してカートリッジ寿命を作為的に延長することができないようになされている。
特開平 2−296259号公報(図4〜6)
特開平 6−289763号公報(図1〜図5)
しかしながら、近年、エネルギー消費量削減、環境保全、廃棄物量削減等の観点から、一度使用したものを再生して再使用するようになすことが広い分野で行われるようになってきており、電子写真式プリンタの技術分野においても同様である。電子写真式プリンタにおいては、感光ドラムを交換したり、感光ドラムの駆動手段を交換したり、トナーを補充したりすることにより、各種交換可能なカートリッジを再生することが可能である。
この各種カートリッジの再生を該カートリッジの製造業者ないしは正当な再生業者が適正に行った際、このカートリッジを再度正常に使用できるようになすためには、カートリッジに付属する記憶素子のデータを新品のものと同様の値にリセットする必要がある。しかしプリンタによっては、リセットを防止するような素子が使われるため、その素子と同じ働きをする互換性を有する記憶素子を作成して用いることが行われるが、複数の互換性を有する記憶素子に同じデータを用いると、プリンタが動作しないことがある。これは、あるカートリッジがトナー終了となると、プリンタはそのカートリッジのIDを寿命が終了したものとして記憶し、その後同じIDをもつカートリッジが投入されると動作を拒否するためである。このような目的で用いられるIDとして、記憶素子に予め書き込まれているものだけでなく、カートリッジが初めてプリンタに装填されたときにプリンタが書き込んで、この書き込まれたIDを用いるものもある。
この従来のカートリッジに使用されている互換性を有する記憶素子の動作の一例を図8に示したフローチャートを用いて説明する。まず、メインスイッチの投入ないしはカバーの開閉後にプリンタの電源が投入されると、装填されているカートリッジに付属している記憶素子の情報を調べ、ステップS51で記憶素子の型が一致しているかどうかを判定し、一致している場合はステップS52でカートリッジの機種が適合しているかどうかを判定し、一致している場合はステップS53で累積印字量が限界に達していないかどうかを調べ、限界に達していない場合には更にステップS54で既に寿命終了したカートリッジのIDと一定していないかなどを判定する。寿命終了IDと異なっている場合は、ステップS55において、「印字可能」と表示した後、通常の複写モードに入り、カートリッジの回転ないしは印字に伴う累積印字量のデータ更新を行う。
ステップS51〜54において、記憶素子の型が一致していなかったり、機種が適合していなかったり、累積印字量が限界に達していたり、更には寿命終了カートリッジのIDと一致していると判定された場合には、いずれもステップS58において「印字不可」と表示してプリンタの動作を停止する。この判定の際に、記憶素子が正しいかどうかを判定するため、書き換えが防止されていることになっているアドレスに書き込みを行った後、同じアドレスのデータを読み出して、書き込みが行われていないことを確認する過程が含まれる場合もある。
一般には、データ記憶素子として汎用の記憶素子、例えばI2Cシリアル通信方式、あるいはSPI(Serial Peripheral Interface)方式と呼ばれる通信方式に基づいたEEPROMが用いられ、この記憶素子に記憶されるデータとしては、カートリッジごとの印字量(トナー消費量、印字ページ数、感光体の回転数など)、適合するプリンタの種類、カートリッジの製造データやIDなどがある。この記憶素子へのデータの読み出し/書き込み処理の一例を図9のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS61において読み出しないしは書き込みアドレスを受信すると、ステップS62において読み出し処理であるかどうかを判定し、読み出し処理であると判定された場合は、ステップS63において受信したアドレスのデータを読み出した後、ステップS64で読み出したデータをプリンタに送信する。また、ステップS62において書き込み処理であると判定された場合は、ステップS65において書き込むデータを受信した後、ステップS66において受信したアドレスに同じく受信したデータを書き込むようになっている。
一方、特定のアドレスが書き込み防止されているか否かを検知して適正なカートリッジであるか否かを検知するような場合もあり、この場合は特定のアドレスに対して書き込み処理を行わせた後に書き込んだ値を読み出して、この読み出されたデータが変化していなければ適正なカートリッジであると判断するようにしている。
これらの素子は、通常の素子とは異なる機能であるため、そのような素子を代替する別の素子を作成してカートリッジの再生に用いることが行われる。一般的には、最初からカートリッジに付属しているROMに代わる素子としてマイクロコントローラや、CPLDあるいはFPGAとよばれるプログラム可能なデバイスからなる制御ICを不揮発性のメモリであるEEPROMと組み合わせた互換性を有する記憶素子を用いることで行われている。また、自身がEEPROMを内蔵しているようなタイプのプログラム可能なデバイスも当然使用可能である。
例えば、従来の互換性を有する記憶素子を備えたカートリッジとプリンタとの間の信号処理経路の概略を表した図10に示した例では、互換性を有する記憶素子10のEEPROM12は、前記図4に示したものと同様に、I2Cと呼ばれるシリアル通信方式を用いたものであって、SCLはクロックを、SDAはデータを通信するラインとなっている。そして、互換性を有する記憶素子10の制御IC14は上記のプログラム可能なデバイスであって、プリンタ16の制御回路18が送信するアドレスを監視しており、書き込み防止がなされるべきアドレスが指定されたときにはEEPROM12の書き込み禁止端子(WP)をONにすることによって、書き込み防止するようにしてある。
しかしながら、このような従来型の互換性を有する記憶素子10においては、その記憶素子10のIDデータはEEPROM12に蓄えられた一定のデータが用いられるため、ユーザが、同じIDデータを持つ別々のカートリッジを連続して、或いは近接して用いる場合、プリンタ16に記憶された寿命終了のIDとの合致が生じ、実際には異なるカートリッジであってもプリンタによって動作が拒否されるという問題が生じることがあった。
本発明者等は、このような互換性を有する記憶素子において上述のような問題点を回避すべく種々検討を重ねた結果、従来はカートリッジの再生時に一度のみIDデータを変化させているために、ユーザのIDデータの決定方法が偏っていることや再生したカートリッジの使用方法によってプリンタに記憶された寿命終了のIDとの合致が生じる機会が多くなることによるものであることを見出した。
本発明はこのような互換性を有する記憶素子において上述のような問題の発生を防止するべく完成されたものであって、本発明の目的は、1個又はそれ以上の交換可能なカートリッジを使用する電子写真式プリンタ用のカートリッジに用いことができる記憶素子を提供することにある。
前記目的を達成するために、本願の請求項1に係る発明は、電子写真式プリンタの交換可能なカートリッジ用の記憶素子であって、該記憶素子は制御ICとEEPROMから、あるいはEEPROMを内蔵する制御ICからなり、前記制御ICは一定の機会ごとに任意のIDデータを生成し、プリンタからIDデータに対してアクセスがあった際には前記生成したIDデータを送信するようになしたことを特徴とする。
また、本願の請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の電子写真式プリンタの交換可能なカートリッジ用の記憶素子において、前記一定の機会は、前記記憶素子に電源電圧が供給されたとき、プリンタからIDデータのアドレスへアクセスされたとき、一定量の印字が行われたとき、又は、各印字ジョブの終了後のいずれかであることを特徴とする。なお、印字ジョブの終了後にIDデータを変化させる場合は、そのタイミングとしてイメージカウントを保持するアドレスへのプリンタによる書き込みが終了後、一定時間経過後に行うことが適当である。
また、本願の請求子3に記載の発明は、前記請求項1又は2に記載の電子写真式プリンタの交換可能なカートリッジ用の記憶素子において、前記生成されたIDデータは、EEPROMのIDデータ用アドレスに書き込みされることを特徴とする。
また、本願の請求項4に記載の発明は、前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真式プリンタの交換可能なカートリッジ用の記憶素子において、前記任意のIDデータは、前記制御ICに組み込まれた乱数発生プログラムによる乱数或いは予め定めた所定の演算によるものであることを特徴とする。乱数を用いる場合は、IDデータをEEPROMに書き込んで保護する必要はなく、IDデータが必要となるたびに生成して用いることとしてもよい。
本発明は上記の構成を備えることにより、以下に述べるような優れた効果を奏する。すなわち、本願の請求項1に記載の発明によれば、プリンタが記憶素子のID領域のデータを読み出そうとした際、記憶素子は、EEPROMに記憶されていたデータではなく、一定の機会ごとに任意に生成されたIDデータを転送することができるようになるので、プリンタが保持している寿命終了カートリッジのIDデータとの偶然一致することが少なくなり、各種カートリッジの再生を該カートリッジの製造業者ないしは正当な再生業者が適正に行った際、このカートリッジをリセットして再度正常に使用できるようになる。
また、本願の請求項2に記載の発明によれば、前記請求項1に記載の発明の効果が奏されると共に、前記記憶素子に電源電圧が供給されたとき、プリンタからIDデータのアドレスへアクセスされたとき、又は、一定量の印字が行われたときに前記IDデータの生成が自動的に行われるので、プリンタが保持しているIDデータに対応するカートリッジが寿命終了カートリッジとして認識されることが少なくなる。
また、本願の請求項3に係る発明によれば、新たに生成したIDデータはEEPROMのIDデータ用アドレスに書き込みされるので、プリンタが記憶素子のID領域のデータを読み出そうとした際にはこの新たに生成したIDデータが送信されるので、この場合も前記請求項1に記載の発明と同様の効果が奏される。
また、本願の請求項4に記載の発明によれば、前記任意のIDデータは、前記制御ICに組み込まれた乱数発生プログラムによる乱数或いは予め定めた所定の演算によるものであるので、固定IDに比べるとプリンタが保持している寿命終了カートリッジのIDデータと偶然に一致する危険度は劇的に減少する。
以下、本願発明を実施するための最良の形態を図面を参照して実施例により詳細に説明するが、以下に示す実施例は、本発明をこの実施例に示されたものに限定することを意図して開示されたものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
本発明においては、カートリッジに元々付属していたROMに換えてプログラム可能な記憶素子を用い、その記憶素子のIDデータを一定の機会ごとに自動的に書き換えるようにする。この書き換えは、記憶素子への電源電圧の供給が開始されるとき、IDのアドレスへプリンタがアクセスしたとき、一定量の印字が行われたとき、各印字ジョブの終了後など適宜に選択して行わせる。本発明の記憶素子を備えたカートリッジとプリンタとの間の信号処理経路の概略を図1に示す。なお、図1においては図10に記載のものと同一の構成部分には理解を容易にするために同一の参照符号を付与することとしてその詳細な説明は省略する。
本発明の記憶素子10は、マイコンやPLD、FPGAといったプログラム可能な制御IC14を備えた不揮発性メモリEEPROM12と共に用いて、最初からカートリッジに取り付けられていた記憶素子と同じ働きをさせる点は、前述の図10に記載の従来の互換性を有する記憶素子と同様であるが、クロックSCLとデータSDAは直接EEPROM12には接続されず、制御IC14を介して通信するようになっている点が相違している。
この構成により、プリンタが記憶素子10のID領域のデータを読み出そうとした際、記憶素子10は、EEPROM14に記憶されていたデータではなく、制御ICにより自動的にIDデータを生成させ、この生成したIDデータをプリンタに送ることが可能となる。このIDデータの生成は、制御IC14内で適当な乱数発生のプログラムを用いて乱数を発生させるか、あるいは一定の方法で変化させる方法を適宜に採用することができる。プリンタが保持している寿命終了カートリッジのIDデータとの偶然の一致をさけるためには、より大きなデータ量を変化させることが好ましいが、1バイトだけを変化させても、固定IDデータの場合に比べれば偶然に一致する危険度は劇的に減少する。
また、記憶素子が正しいかどうかを判定するため、書き換えが防止されていることになっているアドレスに書き込みを行った後、同じアドレスのデータを読み出して、書き込みが行われていないことを確認する過程を有する場合に対処するため、制御IC14により特定のアドレス領域を書き換え不可能とすることは、従来の互換性を有する記憶素子の場合と同様にEEPROM12の書き込み禁止端子WPを用いることによって、あるいはEEPROM12に対するSCL端子及びSDA端子への通信を途中で終了させる方法によって、実現できる。
このような本発明の記憶素子10の動作の一例を図2に示したフローチャートを用いてより詳細に説明する。図2に示した例では、プリンタの電源が投入され、あるいはカートリッジがプリンタに装填されてカバーが閉じられることによって記憶素子10に電源が供給されると、記憶素子10の制御IC14はプリンタ16からの通信を待ち、ステップS11において通信が開始されたことを検知すると、ステップS12においてそれが読み出しデータであるか或いは書き込みデータであるかを判断する。ステップS12において読み出しデータであると判断された場合にはステップS13においてそのアドレス情報を監視し、それが記憶素子のIDデータのアドレスであるかどうかを調べ、IDデータのアドレスでなければ通常のデータの読み出しであるのでステップS14において受信したアドレスのデータをEEPROM12から読み出し、ステップS15において読み出したデータをプリンタ16に送信して待機状態に入る。
ステップS13においてIDデータのアドレスに合致していると判断された場合は、ステップS16において制御IC14で新たなIDデータを生成して、ステップS17においてこの生成したIDデータをプリンタに送信して待機状態に入る。このとき、送信されたIDデータがプリンタ16に記憶されている寿命が終了したカートリッジのIDと合致しなければ、そのカートリッジは以後正常に動作する。
更に、ステップS12において書き込み処理であると判断された場合は、ステップS18においてプリンタ16から書き込むデータを受信し、ステップS19において受信したデータをEEPROM12の対応するアドレスに書き込んで、待機状態に入る。なお、図2には書き込み不可のアドレスが指定された場合の応答は示されていないが、従来型と同様の方法でEEPROM12への書き込みを防ぐことができる。
図2に示した例は、プリンタ16から送信されたデータのアドレスがIDデータのアドレスであった場合に新しいIDデータを生成する例を示したが、最初に新しいIDデータを発生させてそれをEEPROM12のIDデータ領域に書き込んでおくことも可能である。この変形例の動作を図3により説明する。まず、プリンタの電源が投入され、あるいはカートリッジがプリンタに装填されてカバーが閉じられることによって記憶素子10に電源が供給されると、ステップS21において制御IC14は図2に示したものと同様に新しいIDデータを作成し、ステップS22においてEEPROM12のIDデータ記憶領域に記憶して、プリンタ16からの通信があるまで待機状態に入る。
ステップS23においてプリンタから通信が開始されたことを検知すると、ステップS24においてそれが読み出し処理であるか或いは書き込み処理であるかを判断する。ステップS24おいて読み出し処理であると判断された場合にはステップS25において受信したアドレスのデータをEEPROM12から読み出し、ステップS26において読み出したデータをプリンタ16に送信して待機状態に入る。この場合、図2に示したものとは異なり、EEPROM12に記憶されているIDデータはステップS21及びS22において発生及び記憶された新しいIDデータであるため、特にIDデータのアドレスからの読み出し処理であるか否かを監視しなくてもよい。
更に、ステップS24で書き込み処理であると判断された場合は、ステップS27においてプリンタ16から書き込むデータを受信し、ステップS28において受信したデータをEEPROM12の対応するアドレスに書き込んで、待機状態に入る。なお、図3にも書き込み不可のアドレスが指定された場合の応答は示されていないが、従来型と同様の方法でEEPROM12への書き込みを防ぐことができる。