JP2005166209A - 光ピックアップ装置 - Google Patents

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Abstract

【構成】 ビームエキスパンダユニット20内のレンズホルダ40に巻かれた駆動コイル44は、マグネット46によって形成される磁界内に配置されている。このため、駆動コイル44に電流を流すと、電流は磁界から力を受けて、エキスパンダ第2レンズ24を光軸方向であるX方向に移動させる。この結果、エキスパンダ第1レンズ22とエキスパンダ第2レンズ24との距離が変わるので、ビームエキスパンダユニット20から対物レンズに射出される光は拡散光または収束光になる。このため、対物レンズはカバー層の厚さが基準値からずれたことによって生じた球面収差とは逆方向に球面収差を発生させ、球面収差を相殺させる。
【効果】 可動部を移動させるために、ステッピングモータを必要としないので、球面収差の補正ができる光ピックアップ装置を小型化することができる。
【選択図】 図9

Description

この発明は、光ピックアップ装置に関し、特にたとえば光ディスクの表面から信号記録層までのカバー層の厚さが基準値からずれることにより生じる球面収差の補正が可能な、光ピックアップ装置に関する。
近年、光ディスクは、映像データ、音声データおよびコンピュータデータなどのデータを記録する媒体として広く使用されており、光ディスクに対する高記録密度化および大容量化の要求は、ますます強くなっている。
光ディスクは、信号記録層上に光を透過するカバー層を有しており、このカバー層を透過して信号記録層に光を照射することにより記録および/または再生が行なわれる。対物レンズは、カバー層の厚さが基準値(光ディスクの規格値の標準値)のときに、信号記録層上で球面収差が最小となるように設計されている。このため、片面に複数の信号記録層がある場合、またはカバー層の厚さに製造上のばらつきがある場合など、カバー層の厚さが基準値からずれると球面収差が発生する。
特許文献1に開示されている従来の光ピックアップ装置では、このようなカバー層の厚さの基準値からのずれによって発生する球面収差を補正するため、2枚の凸レンズ、または1枚の凸レンズと1枚の凹レンズからなるビームエキスパンダがコリメータレンズと対物レンズの間に配置されていた。このビームエキスパンダは、いずれか一方のレンズをステッピングモータで駆動して2枚のレンズ間の距離を調整し、射出光を収束光または拡散光としていた。例えば光ディスクのカバー層の厚さが薄い場合、ビームエキスパンダは対物レンズに収束光を入射させる。この結果、カバー層が薄くなったことによって生じた球面収差を対物レンズで発生する球面収差で相殺し、信号記録層ではほぼ無収差としていた。
特開2003−77142号公報「G11B 7/085、7/09、7/125」
しかし、ビームエキスパンダ内のレンズを駆動するためのステッピングモータを光ピックアップ装置内に配置すると、球面収差補正の可能な光ピックアップ装置が大型化するという問題があった。
それゆえに、この発明の主たる目的は、小型で球面収差の補正ができる、光ピックアップ装置を提供することである。
請求項1記載の発明は、信号記録層の上にカバー層が形成されている光ディスクの記録および/または再生を行う光ピックアップ装置であって、光源、カバー層を透過して光源からの光を信号記録層に集光させる対物レンズ、固定部と可動部を含み、光源と対物レンズとの間に配置され光源からの光を拡散光、収束光および平行光のいずれか1つに変換して射出するビームエキスパンダユニット、磁界内に配置された可動部に含まれる駆動コイルに電流を流すことによって可動部を光軸方向に移動させる移動手段を備える、光ピックアップ装置である。 請求項1の発明では、ビームエキスパンダユニットの可動部内の駆動コイルは、磁界内に配置されている。このため、駆動コイルに電流を流すと、電流は磁界から力を受けて、可動部を光軸方向に移動させる。この結果、ビームエキスパンダユニットに含まれる2枚のレンズ間距離が変わるので、ビームエキスパンダユニットから射出される光が拡散光または収束光になる。このため、対物レンズはカバー層の厚さが基準値からずれたことによって生じた球面収差とは逆方向に球面収差を発生させ、球面収差を相殺させる。この場合、可動部を移動させるために、ステッピングモータを必要としないので、球面収差の補正ができる光ピックアップ装置を小型化することができる。
したがって、カバー層の厚さが基準値からずれた場合に、可動部を光軸方向に移動させて、対物レンズへの入射光を拡散光または収束光にする。次に、対物レンズによってカバー層の厚さの基準値からのずれによって生じた球面収差とは逆方向に球面収差を発生させて、球面収差を相殺させることにより、信号記録層上での球面収差を抑制する。このように、可動部を移動させるために、ステッピングモータを必要としないので、球面収差の補正ができる光ピックアップ装置を小型化することができる。
また、ステッピングモータを使用しない場合は、使用する場合と比べて、ステッピングモータを制御するために必要な4本以上の信号線、および可動部の位置検出のためのリミットスイッチを制御するために必要な2本〜4本の信号線の合計6本〜8本以上の信号線が不要となり、代わりに必要な信号線は駆動コイルを制御するための2本だけなので、制御系が簡素化される。
請求項2の発明は、請求項1記載の光ピックアップ装置において、駆動コイルは光軸方向に直交する方向に巻かれ、マグネットは駆動コイルに流す電流の方向および光軸方向のいずれにも直交する方向に磁界が生じるように固定部に配置されている。
請求項2の発明では、駆動コイルに電流を流すと、駆動コイルは磁界から光軸方向の力を受ける。このため、可動部を光軸方向に移動させて、対物レンズへの入射光を拡散光または収束光にすることにより、球面収差を抑制することができる。
請求項3の発明は、請求項1または2記載の光ピックアップ装置において、ビームエキスパンダユニットは可動部の位置を駆動コイルによって移動させられる前の位置に復元させる復元手段をさらに備える。
請求項3の発明では、光軸方向に移動した可動部を復元手段により移動前の位置に戻すことができるので、可動部の位置を検出するリミッタスイッチを光ピックアップ装置内に設ける必要がない。このため、光ピックアップ装置をさらに小型化することができる。
請求項4の発明は、請求項3記載の光ピックアップ装置において、復元手段は互いに接触しない2枚の渦巻状板バネを含み、2枚の渦巻状板バネに駆動コイルの両端部がそれぞれ電気的に接続されている。
請求項4の発明では、可動部は、2つの渦巻状板バネによって移動させられる前の位置に戻される。渦巻状にすることで移動方向への負荷が少なくすることができるので、可動部の感度を向上させることができる。また、2つの渦巻状板バネは、接触していないので、可動部に巻かれた駆動コイルの両端を2つの渦巻状板バネにそれぞれ電気的に接続し、渦巻状板バネを介して駆動コイルに電流を供給することができる。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の光ピックアップ装置において、光源とビームエキスパンダユニットとの間に配置され光源からの光を平行光に変換するコリメータレンズをさらに備える。
請求項5の発明では、光源からの光をコリメータレンズによって平行光にした後、ビームエキスパンダユニットに入射させるので、入射した平行光を拡散光、収束光および平行光のいずれか1つへの変換するために必要な可動部の調整が容易である。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の光ピックアップ装置を含み、
光源の周囲温度を測定する温度センサ、および温度センサの測定結果に基づいて移動手段を制御する第1制御手段をさらに備える、光ディスク記録および/または再生装置である。
請求項6の発明では、光源の周囲温度を測定する温度センサをさらに備え、移動手段はこの温度センサが測定した温度に応じて可動部を移動させる。光源の周囲温度により、光源からの光の波長が変動する。さらに、光の波長の変動に応じて、カバー層の屈折率も変わるので、球面収差が発生する。このため、第1制御手段は、温度センサによって得られた光源の周囲温度に基づいて、ビームエキスパンダユニットの可動部を光軸に沿って移動させるように移動手段を制御し、球面収差を抑制する。
請求項7の発明は、請求項5記載の光ディスク記録および/または再生装置において、
光源の出力を測定する出力センサ、および出力センサの測定結果に基づいて移動手段を制御する第2制御手段をさらに備える。
請求項7の発明では、光源の出力を測定する出力センサを備えている。光源の出力が変われば、光源から射出される光の波長が変動する。さらに、光の波長の変動に応じてカバー層の屈折率も変わるので、球面収差が発生する。このため、第2制御手段は、出力センサによって得られた光源の出力に基づいて、可動部を光軸に沿って移動させるように移動手段を制御し、球面収差を抑制する。
請求項8の発明は、請求項6または7記載の光ディスク記録および/または再生装置において、対物レンズの光軸方向の位置情報を検出する検出手段、および検出手段の結果に基づいて移動手段を制御する第3制御手段をさらに備える。
請求項8の発明では、対物レンズの光軸方向の位置情報を検出し、検出された位置情報に基づいて移動手段を制御して、可動部を移動させる。光ディスクの信号記録層に焦点を合わせるために、対物レンズを移動させれば、対物レンズとビームエキスパンダとの距離も変わり、球面収差が発生する。このため、第3制御手段は、対物レンズのフォーカス方向である光軸方向の位置情報を対物レンズ駆動用のアクチュエータのフォーカス電圧と電圧感度から求めて移動させるよう移動手段を制御し、球面収差を抑制する。
この発明によれば、ビームエキスパンダの可動部に巻かれた駆動コイルに流れる電流とマグネットによる磁界との相互作用を利用して、ビームエキスパンダの可動部を光軸に沿って移動させることで、球面収差の補正ができる光ピックアップ装置を小型化することができる。
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
図1を参照して、光ディスク30の記録、再生に使用する光ピックアップ装置10の実施例について説明する。図1には、光ピックアップ装置10の斜視図、平面図および側面図がそれぞれ示されている。
光ピックアップ装置10は光源である半導体レーザ12を含む。半導体レーザ12から射出された直線偏光のレーザ光は、偏光ビームスプリッタ14を透過した後、1/4波長板16により円偏光に変換される。
円偏光に変換されたレーザ光は、コリメータレンズ18によって平行光にされ、ビームエキスパンダユニット20に入射する。ビームエキスパンダユニット20は、凹レンズであるエキスパンダ第1レンズ22と凸レンズであるエキスパンダ第2レンズ24を含み、エキスパンダ第2レンズ24はレーザ光の光軸に沿ってX方向に移動できるようになっている。その構造の詳細については後述する。
ビームエキスパンダユニット20を透過したレーザ光は、次に45度反射ミラー26により対物レンズ28が配置されている+Z方向に反射され、対物レンズ28によって光ディスク30の信号記録層に集光される。
光ディスク30により反射された円偏光のレーザ光は、再び45度反射ミラー26で反射された後、ビームエキスパンダユニット20とコリメータレンズ18を透過し、さらに1/4波長板16により最初の偏光方向に対して90度回転した直線偏光のレーザ光に変換される。直線偏光に変換されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ12によって、入射方向と90度の角度をなす+Y方向に反射される。
反射された光は、集光レンズ32、フォーカスサーボができるように非点収差を引き起こす円筒レンズ34を透過して、光検出器36に入射する。光検出器36はフォトダイオードを含み、入射した光の強度に応じた出力信号を出力する。
図2〜4を参照して、光ディスク30のカバー層の厚さが基準値からずれることにより発生する球面収差と、この球面収差を補正するために、対物レンズ28の入射光との関係について説明する。
まず、図2(A)を参照して、対物レンズ28に平行光を入射させると、平行光はディスク表面30aからカバー層38aを透過して、ディスク表面30aに近い第1信号記録層30bに集光するように対物レンズ28を設計した場合、第1信号記録層30bに集光するスポット光の球面収差は最小となる。
この対物レンズ16を使用して、図2(B)に示すように、第1信号記録層30bよりも深い位置にある第2信号記録層30cに平行光を集光させると、基準値よりも厚いカバー層38aおよび38bを透過するので、球面収差が発生する。そこで、対物レンズ28への入射光を拡散光とすると、この球面収差をほぼ相殺するような球面収差が対物レンズ28からの射出光に生じ、第2信号記録層30cに集光するスポット光の球面収差を抑制することができる。
次に、図3(A)を参照して、対物レンズ28に平行光を入射させると、この平行光はディスク表面30aからカバー層38aおよび38bを透過して第2信号記録層30cに集光するように対物レンズ28を設計した場合、第2信号記録層30cに集光するスポット光の球面収差は最小となる。
この対物レンズ28を使用して、図3(B)に示すように、第1信号記録層30bに集光させると、平行光はカバー層38aのみを透過するため、球面収差が生じる。そこで、対物レンズ28への入射光を収束光とすると、この球面収差をほぼ相殺するような球面収差が対物レンズ28からの射出光に生じ、第1信号記録層30bに集光するスポット光の球面収差を抑制することができる。
さらに、図4(A)を参照して、対物レンズ28に平行光を入射させると、この平行光は第1信号記録層30bと第2信号記録層30cに挟まれたカバー層38bとのちょうど中間の位置30dに集光するように対物レンズ28を設計した場合、その中間の位置30dでスポット光の球面収差は最小となる。
この対物レンズ28を使用して、図4(B)に示すように、第1信号記録層30bに集光する場合には、入射光はカバー層30aのみを透過することになるので、第1信号記録層30bで球面収差が発生する。このとき、対物レンズ28に入射する光を収束光にすると、この球面収差をほぼ相殺するような球面収差が対物レンズ28からの射出光に生じるので、第1信号記録層30bに集光するスポット光の球面収差を抑制することができる。
また、図4(C)に示すように、第2信号記録層30cに集光する場合は、入射光はカバー層30aおよび30bを透過することになるので、第2信号記録層30cで球面収差が発生する。このとき、対物レンズ16に入射する光を拡散光にすると、この球面収差をほぼ相殺するような球面収差が対物レンズ28からの射出光に生じるので、第2信号記録層30cに集光するスポット光の球面収差を抑制することができる。
このように対物レンズ28への入射光を収束光または拡散光として球面収差を抑制することにより、光ピックアップ装置10の記録および/または再生特性の劣化を低減することができる。
なお、光ディスク30のカバー層30aおよび30bの厚さは、光ディスク30製造時の膜厚のばらつきにより、基準値からずれることもあるが、この場合も同様にして球面収差を抑制することができる。
また、光源である半導体レーザ12の温度、出力などが変動すると、それに伴い波長がわずかながら変動する。このとき、レーザ光の波長に対応する光ディスク30のカバー層38aおよび38bの屈折率も変わるので球面収差が発生するが、この場合も同様に球面収差を抑制することができる。
次に、図5を参照して、ビームエキスパンダユニット20に含まれる2枚のレンズのレンズ間距離によって、対物レンズ28への入射光を平行光、拡散光、収束光のいずれかに変えられることを説明する。
この実施例では、エキスパンダ第1レンズ22(コリメータレンズ18側)を凹レンズとし、エキスパンダ第2レンズ24(対物レンズ28側)を凸レンズとしている。また、半導体レーザ(光源)12、コリメータレンズ18、エキスパンダ第1レンズ22、対物レンズ28の位置は固定されており、エキスパンダ第2レンズ24のみが光軸方向に移動可能である。また、“a”は対物レンズ28の射出側の焦点距離(後側焦点距離)であり、“b”は対物レンズ28の入射側の焦点距離(前側焦点距離)である。
図5の中央の図は、光ディスク30のカバー層の厚さが、基準値である場合を示している。このとき、エキスパンダ第1レンズ22とエキスパンダ第2レンズ24間の距離は、コリメータレンズ18から射出された平行光がエキスパンダ第1レンズ22によって拡散光となり、さらにエキスパンダ第2レンズ24によって再び平行光になるような距離である。したがって、エキスパンダ第2レンズ24からの射出光は平行光となる。
図5の上側の図は、光ディスク30のカバー層の厚さが基準値よりも厚い場合を示している。このときのエキスパンダ第2レンズ24は、図5の中央の図の場合に比べて、光源12側に移動しているので、エキスパンダ第2レンズ24からの射出光は拡散光となる。
図5の下側の図は、光ディスク30のカバー層の厚さが基準値よりも薄い場合を示している。このときのエキスパンダ第2レンズ24は、図5の中央の図の場合に比べて、対物レンズ28側に移動しているので、エキスパンダ第2レンズ24からの射出光は収束光となる。
図6を参照して、光ディスクのカバー層の厚さが70μmから130μmの範囲で発生する球面収差と、この球面収差に対して上述の補正を行なった場合のシミュレーション結果について説明する。ここで、カバー層の厚さの基準値を100μm、対物レンズの開口数NAを0.85とした。
例えば、カバー層の厚さが基準値である100μmから±25μmはずれた場合、すなわちカバー層の厚さが125μmまたは75μmの場合には、図6からわかるように、球面収差の発生量は約0.10λ(「λ」は光の波長、以下同じ)にまで増加する。一般に、良好な記録再生特性を得るためには球面収差の発生量は、光ピックアップ装置全体で0.07λ以下に抑えなければ、良好な記録再生特性は得られないとされているので、球面収差の発生量が0.25λでは良好な記録再生特性は得られない。
そこで、この場合に、エキスパンダ第2レンズ24を光軸方向であるX方向に動かして、対物レンズ28に入射する光を拡散光または収束光とする補正を行なうと、球面収差の発生量を0.01λ以下にすることができる。すなわち、補正を行なわない場合に比べて球面収差を大幅に抑制できる。このように、球面収差の発生量が0.01λ以下であれば、光ピックアップ装置10の記録再生特性への影響はほとんどないと考えられる。
次に、図7を参照して、ビームエキスパンダユニット20の構造について説明する。ビームエキスパンダユニット20は、可動部20aと固定部20bとを含む。可動部20aは、凸レンズであるエキスパンダ第2レンズ24が嵌め込まれたレンズホルダ40、レンズホルダ40の外周に光軸に直交するように巻かれた駆動コイル44、および2枚の渦巻状板バネ46aおよび46bを含む。レンズホルダ40の一方端側の近傍には駆動コイル44が巻かれ、他方端側の端部には、他の部分よりもその直径が大きくかつ切欠きによって4等分された突出部が形成されている。なお、駆動コイル44の両端は、それぞれ渦巻状板バネ46aおよび46bに電気的に接続されている。また、渦巻状板バネ46aおよび46bの取付け方法については後述する。
固定部20bは、ヨーク50を含む。ヨーク50に形成された開口部の内壁に配置されたリング状のマグネット46と、開口部中央にエキスパンダ第1レンズ22を嵌め込んだ突起とによって挟まれた空間に、可動部20aのレンズホルダ40がX方向に移動可能な状態で収納されている。なお、ヨーク50は、マグネット46とともに磁気回路を構成し、マグネット46により発生する磁界の強度を強める働きをしている。
絶縁材からなるスペーサ48は、ヨーク50と渦巻状板バネ46aおよび46bとを絶縁するためのものである。スペーサ48は、その両端の直径が中央部の直径よりも細い円柱形状であり、その一方端はヨーク50の四隅に形成された穴52に挿入され、他方端は渦巻状板バネ46aおよび46bに2個ずつ形成された穴に挿入される。この結果、スペーサ48の中央部によってヨーク50と、渦巻状板バネ46aおよび46bが絶縁される。なお、渦巻状板バネ46aおよび46bを固定部20bに固定する方法の詳細については後述する。また、マグネット46がリング状である場合には、部品点数を少なくできるが、マグネット46が小さいため製造が難しいという問題がある。このため、X方向から見ると扇形となるように、マグネット46を複数の部分に分割して開口部の内壁に配置してもよい。
図8を参照して、渦巻状板バネ42aおよび42bの形状について説明する。図8(A)からわかるように、渦巻状板バネ42bは、長さの異なる4本の円弧が円弧の幅よりも広い間隔を隔てて渦巻状に配置されており、これらの円弧は分離しないように接続されている。最外周の円弧には、スペーサ48の一方端を挿入できる穴が2個形成されている。この穴にスペーサ48の一方端を挿入することにより、渦巻状板バネ42bをビームエキスパンダ20の固定部20bに固定することができる。
渦巻状板バネ42aも、図8(B)からわかるように、渦巻状板バネ42bと同一形状である。したがって、図8(C)に示すように、渦巻状板バネ42aおよび42bを同一平面内で互いに180度回転させて組み合わせると、渦巻状板バネ42aの各円弧が渦巻状板バネ42bの円弧と円弧との間にそれぞれ配置される。このように、渦巻状板バネ42aおよび42bは互いに接触することなく組み合わされるので、渦巻状板バネ42aおよび42bを介して駆動コイル44に電流を供給することができる。
図9を参照して、ビームエキスパンダユニット41の構造についてさらに説明する。図9(A)は、ビームエキスパンダユニット20を+X方向から見た図である。渦巻状板バネ42aおよび42bは、その最外周の円弧に設けられた穴をヨーク50に固定されたスペーサの他方端に挿入し、最内周の円弧をレンズホルダ40の突出部の裏面に接着剤で固定されている。なお、最内周の円弧の一部が、レンズホルダ40の4箇所の切欠き部から見えている。
このように、渦巻状板バネ42aおよび42bは、いずれも一端が固定部20bのヨーク50に、他端が可動部20aのレンズホルダ40に固定され、渦巻状になっている。この結果、可動部20aをX方向に移動させる場合に、可動部20aに大きな力を加えなくても移動させることができる。したがって、可動部20aの感度を向上させることができる。たとえば、ピックアップ装置10の可動部20aは、力を加えられていない状態からX方向に±1mm移動させることができる。一方、カバー層の厚さの基準値からのずれによる球面収差を相殺するために必要な可動部20aは、X方向に±0.6mm〜0.7mm移動できれば十分である。このため、渦巻状板バネ42aおよび42bを使用することにより、カバー層38a、38bの厚さの基準値からのずれによる球面収差を十分相殺することができる。
また、停電などにより電源スイッチが突然オフされた場合、可動部20aは渦巻状板バネ42aおよび42bの復元力によって、力を加えていない位置に戻る。したがって、再び電源スイッチがオンされた場合に、可動部20aの位置を検出するリミッタスイッチを光ピックアップ装置10内に配置する必要がないので、光ピックアップ装置10をより小型化することができる。
また、図9(B)は、ビームエキスパンダユニット20の中央断面を+Y方向から見た断面図である。図9(B)からわかるように、エキスパンダ第2レンズ24はレンズホルダ40に嵌め込まれ、駆動コイル44はレンズホルダ40の外周部に巻かれている。また、ヨーク50の開口部中央の突起にはエキスパンダ第2レンズ240に固定されており、ヨーク50の開口部内壁にはマグネット46が固定されている。また、レンズホルダ40はヨーク50内を光軸方向(X方向)に移動可能なように取り付けられている。

図10を参照して、ビームエキスパンダユニット20の駆動原理を説明する。可動部20aの駆動コイル44を囲むように、マグネット46が配置される。マグネット46の内周面がN極、外周面がS極であるとき、マグネット46による磁界の方向は、YZ面内でマグネット46の中心から外側に向かって放射状に出ていく方向である。一方、駆動コイル44は、光軸の周りを光軸に直行する方向に巻かれている。駆動コイル44に右回りの電流を流すと、駆動コイル44にはフレミング左手の法則により電流の方向および磁界の方向のいずれにも垂直な方向である+X方向(紙面に垂直に裏面から表面向かう方向)に力が働く。
この結果、エキスパンダ第2レンズ24とエキスパンダ第1レンズ22との間の距離が長くなり、エキスパンダ第2レンズ24からの射出光は収束光となる。
一方、エキスパンダ第2レンズ24からの射出光を拡散光にしたい場合は、駆動コイル44に流す電流を左回りに流せばよい。このように、光ディスク30の信号記録層上に生じる球面収差は、駆動コイル44に流す電流を右回りまたは左回りに流して、可動部20aを+X方向または−X方向に移動させることにより補正される。
このように、ビームエキスパンダユニット20の可動部20a内に駆動コイル44を配置し、駆動コイル44に流す電流と磁界との相互作用により可動部20aを光軸方向に移動させて、エキスパンダ第2レンズ24とエキスパンダ第1レンズ22との間の距離を調整する。したがって、可動部20aを移動させるステッピングモータを光ピックアップ装置10内に配置する必要がないので、光ピックアップ装置10を小型化できる。
また、ステッピングモータを使用しない場合は、使用する場合に比べて、ステッピングモータを制御するために必要な4本以上の信号線、および可動部20aの位置検出をするリミットスイッチを制御するために必要な2本〜4本の信号線の合計6本〜8本以上の信号線が不要となり、代わりに必要な信号線は駆動コイル44を制御するための2本だけなので、制御系が簡素化される。
なお、光ピックアップ装置10では、エキスパンダ第1レンズ22を凹レンズとし、エキスパンダ第2レンズ24を凸レンズとしたが、エキスパンダ第1レンズ22を凸レンズとし、エキスパンダ第2レンズ24を凹レンズとしてもよい。また、エキスパンダ第1レンズ22およびエキスパンダ第2レンズ24をともに凸レンズとしてもよい。
次に、図11を参照して、光ピックアップ装置10を用いた光ディスク記録および/または再生装置60について説明する。この光ディスク記録および/または再生装置60は、光ピックアップ装置10を含み、さらに信号生成回路62およびCPU72を備える。
光ピックアップ装置10は、半導体レーザ12、ビームエキスパンダユニット20、対物レンズ28、光検出器36、レーザ駆動回路64、対物レンズアクチュエータ70を含む。光ピックアップ装置10は、さらに半導体レーザ12の周囲温度を測定する温度センサ74、半導体レーザ12の出力をモニタする出力センサとして機能するフロントモニタダイオード68を備えており、これらによって測定された温度および出力はCPU72に与えられる。
また、信号生成回路62は、光検出器36からの出力信号に基づいてフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、RF信号などの信号を生成し、生成された信号をCPU72に与える。
CPU72は、与えられたフォーカスエラー信号に基づいて、レーザ光が光ディスク30の信号記録層に焦点が合っていないことを検知すると、対物レンズアクチュエータ70を駆動して、対物レンズ28をフォーカス方向に移動させて合焦させる。次に、CPU72は、合焦されたときの対物レンズ28のフォーカス方向の位置情報を、対物レンズアクチュエータ70のフォーカス駆動電圧とフォーカス電圧感度に基づいて計算する。ここで、対物レンズ28の位置を計算するのは、対物レンズ28の位置が変われば、対物レンズ28とエキスパンダ第2レンズ24との間の距離が変わり、球面収差の発生に影響を与えるからである。
同様に、CPU72は、トラッキングエラー信号によって、レーザ光が光ディスク30のトラック上からはずれていることを検知すると、対物レンズアクチュエータ70を駆動して、対物レンズ28を光ディスク30の主面に平行に移動させて、レーザ光が常に光ディスク30のトラック上に照射されるように制御する。
さらに、CPU72は、信号生成回路62によって生成されたRF信号、温度センサ74によって測定された半導体レーザ12の周囲温度、フロントモニタダイオード68によって測定された半導体レーザ12の出力および対物レンズ28の位置情報に基づいて、ビームエキスパンダユニット20を制御し、球面収差を補正する。ここで、半導体レーザ12の周囲温度および出力が必要な理由は、レーザ光の波長が半導体レーザ12の周囲温度または出力の変動にともなって変化するので、その波長に対応する光ディスク30のカバー層の屈折率も変化して、球面収差が生じるからである。また、対物レンズ28の位置情報が必要な理由は、例えば光ディスク30が反っているとき、対物レンズ28をフォーカス方向に移動させて合焦させると、対物レンズ28とエキスパンダ第2レンズ24との距離が変わるからである。
また、CPU72は、フロントモニタダイオード68から出力された半導体レーザ12の出力を半導体レーザ駆動回路64にフィードバックして、半導体レーザ12の出力を安定させたり、光ディスク30に記録させるために強いパルスレーザ光を発生させたりするため、半導体レーザ駆動回路64に信号を与えて半導体レーザ12を駆動する。
次に、図12を参照して、ビームエキスパンダユニット20の位置を調整するCPU72の処理フローについて説明する。まず、ステップS1で、記録および/または再生を行なう信号記録層がディスクの第1信号記録層であるレイヤ0か否かを判断する。その結果、レイヤ0であれば、ステップS3で、レイヤ0としてビームエキスパンダユニット20内のエキスパンダ第2レンズ24の位置の粗調整を行なう。一方、信号記録層がレイヤ0でない場合は、第2信号記録層であるレイヤ1であるので、ステップS5で、レイヤ1としてエキスパンダ第2レンズ24の位置を粗調整する。すなわち、球面収差を大略打ち消すことができるように、コリメータレンズをX方向の仮の位置まで移動させる。
次に、ステップS7で、半導体レーザ12の温度情報、半導体レーザ12の出力情報、対物レンズ28の位置情報に基づいて発生する球面収差を求める。
すなわち、温度センサ74から得られた半導体レーザ12の温度情報に基づいて、以下の式(1)、(2)により球面収差ΔXを求める。
[数1]
Δλ=A×ΔT・・・(1)
ここで、Δλ:波長変化量
ΔT:温度変化量
:カバー層の厚さ、レーザ光の波長などにより変わる係数
[数2]
ΔX≒B×λ=A×ΔT・・・(2)
ここで、ΔX:球面収差の発生量
:カバー層の厚さ、レーザ光の波長などにより変わる係数
同様にして、フロントモニタダイオード68から得られた半導体レーザ12の出力情報
に基づいて、以下の式(3)、(4)により球面収差ΔXを求める。
[数3]
Δλ=A×ΔP・・・(3)
ここで、Δλ:波長変化量
ΔP:出力変化量
:カバー層の厚さ、レーザ光の波長などにより変わる係数
[数4]
ΔX≒B×λ=A×ΔP・・・(4)
ここで、Δ:球面収差の発生量
:カバー層の厚さ、レーザ光の波長などにより変わる係数
さらに、位置センサから得られた対物レンズの位置情報に基づいて、以下の式
(5)〜(9)により球面収差ΔXを求める。
[数5]
α=1/((1/fb2)+(1/(L1-fb1+ΔB)))・・・(5)
ここで、fb1:ビームエキスパンダ第一レンズの焦点距離(凹レンズは負)
b2:ビームエキスパンダ第二レンズの焦点距離
ΔB:コリメータレンズの基準位置(コリメータレンズから射
出されたレーザ光が平行光となる位置)からの移動量で、対物レンズ側を正の方
向とする。
[数6]
a=L2−α+ΔOL・・・(6)
ここで、L2:対物レンズとビームエキスパンダ第二レンズ43間の距離
ΔOL:対物レンズの基準位置(カバー層が基準値のときに、信
号記録層にレーザ光の焦点が合う対物レンズの位置)からの移動量で、光ディス
ク側を正の方向とする。
[数7]
b=1/((1/fOL)+(1/a))・・・(7)
ここで、fOL:対物レンズの焦点距離
したがって、対物レンズに拡散光が入射する場合の球面収差ΔXS1は、
[数8]
ΔXS1=C×(b/a)+E・・・(8)
ここで、C:カバー層の厚さ、レーザ光の波長などにより変わる負の係数
E:カバー層の厚さ、レーザ光の波長などにより変わる係数
また、対物レンズに収束光が入射する場合の球面収差ΔXS2は、
[数9]
ΔXS2=D×(b/a)+E・・・(9)
ここで、D:カバー層の厚さ、レーザ光の波長などにより変わる正の係数
次に、ステップS7で求めた球面収差を補正するために、エキスパンダ第2レンズ24をステップS3またはステップS5の仮の位置から、ステップS9でさらに微調整によって移動させる。このようにして、エキスパンダ第2レンズ24の位置を決めた後、ステップS11で、光ディスク30の記録および/または再生の試行を行なう。すなわち、半導体レーザ12の温度センサ74、フロントモニタダイオード68、対物レンズ28の位置センサによって、半導体レーザ12の温度情報、出力情報および対物レンズ28の位置情報がそれぞれ得られる。CPU72は、得られた温度情報、出力情報および位置情報に基づいて球面収差を求める。次に、CPU72は、求められた球面収差の発生量に応じて、エキスパンダ第2レンズ24の位置を微調整する。この結果、発生した球面収差は打ち消される。
そして、ステップS13で、ステップS11で行なった試行の結果が、最適条件かどうかの判断を行う。この判断は、例えば、ステップS11で記録したデータの再生結果が、あらかじめ決めておいたエラーレートよりも低いかどうかをみることにより行う。
その結果、最適条件ではないと判断された場合は、ステップS15でエキスパンダ第2レンズ24の位置を少しずらした後、再びステップS11で、光ディスク30への記録および/または再生の試行を行なう。
また、ステップS13で、最適条件と判断された場合は、ステップS17で光ディスク30への記録および/または再生を行なう。
なお、この処理フローでは、ステップS1で、信号記録層が2層のうちのどちらの層であるかを判断しているが、この処理フローは信号記録層が2層の場合に限定されず、3層以上の場合にも、また光ディスク30のカバー層の膜厚にばらつきがある場合にも同様に適用できる。
この発明の光ピックアップ装置の一実施例を示す図解図である。 球面収差と対物レンズの入射光の関係を示す図解図である。 球面収差と対物レンズの入射光の関係を示す他の図解図である。 球面収差と対物レンズの入射光の関係を示すその他の図解図である。 ビームエキスパンダの位置と対物レンズの入射光との関係を示す図解図であ る。 図1実施例による補正の効果を示すグラフである。 図1実施例の一部を示す図解図である。 図1実施例の他の一部を示す図解図である。 図1実施例のその他の一部を示す図解図である。 図1実施例の動作原理を示す図解図である。 図1実施例を含む光ディスク記録および/または再生装置を示すブロック 図である。 図1実施例の動作を示すフロー図である。
符号の説明
10…光ピックアップ装置
12…半導体レーザ
18…コリメータレンズ
20…ビームエキスパンダユニット
20a…ビームエキスパンダユニットの可動部
20b…ビームエキスパンダユニットの固定部
22…エキスパンダ第1レンズ
24…エキスパンダ第2レンズ
28…対物レンズ
30…光ディスク
30a、30b…信号記録層
36…光検出器
38a、38b…カバー層
40…レンズホルダ
42a、42b…渦巻状板バネ
44…駆動コイル
46…マグネット
50…ヨーク
60…光ディスク記録および/または再生装置
62…信号生成回路
68…フロントモニタダイオード
70…対物レンズアクチュエータ
72…CPU
74…温度センサ

Claims (8)

  1. 信号記録層の上にカバー層が形成されている光ディスクの記録および/または再生を行う光ピックアップ装置であって、
    光源、
    前記カバー層を透過して前記光源からの光を前記信号記録層に集光させる対物レンズ、
    可動部と固定部を含み、前記光源と前記対物レンズとの間に配置され前記光源からの光を拡散光、収束光および平行光のいずれか1つに変換して射出するビームエキスパンダユニット、
    磁界内に配置された前記可動部に含まれる駆動コイルに電流を流すことによって前記可動部を光軸方向に移動させる移動手段を備える、光ピックアップ装置。
  2. 前記駆動コイルは前記光軸方向に直交する方向に巻かれ、
    前記マグネットは前記駆動コイルに流す電流の方向および光軸方向のいずれにも直交する方向に磁界が生じるように固定部に配置されている、請求項1記載の光ピックアップ装置。
  3. 前記ビームエキスパンダユニットは前記可動部の位置を前記駆動コイルによって移動させられる前の位置に復元させる復元手段をさらに備える、請求項1または2記載の光ピックアップ装置。
  4. 前記復元手段は互いに接触しない状態で配置された2枚の渦巻状板バネを含み、前記2枚の渦巻状板バネに前記駆動コイルの両端部がそれぞれ電気的に接続されている、請求項3記載の光ピックアップ装置。
  5. 前記光源と前記ビームエキスパンダとの間に配置され光源からの光を平行光に変換するコリメータレンズをさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の光ピックアップ装置を含み、
    前記光源の周囲温度を測定する温度センサ、および
    前記温度センサの測定結果に基づいて前記移動手段を制御する第1制御手段をさらに備える、光ディスク記録および/または再生装置。
  7. 前記光源の出力を測定する出力センサ、および
    前記出力センサの測定結果に基づいて前記移動手段を制御する第2制御手段をさらに備える、請求項5記載の光ディスク記録および/または再生装置。
  8. 前記対物レンズの光軸方向の位置情報を検出する検出手段、および
    前記検出手段の検出結果に基づいて前記移動手段を制御する第3制御手段をさらに備える、請求項6または7記載の光ディスク記録および/または再生装置。
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