JP2005161599A - 機械特性に優れた成形体およびその製造方法 - Google Patents

機械特性に優れた成形体およびその製造方法 Download PDF

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Kazuhiko Sato
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Abstract

【課題】 機械特性に優れた成形体を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂100重量部と、単層カーボンナノチューブ0.01〜100重量部とからなる組成物からなり、下記式(1)
P=IYY/IXX (1)
[式中、偏光ラマン分光測定で入射レーザーを成形体の側面に成形体の長手方向と直交方向から照射したときの単層カーボンナノチューブ由来のラマンスペクトルにおいて、レーザー偏光面を成形体の長手方向と平行に配置した場合のGバンド強度をIXX、レーザー偏光面を成形体の長手方向と垂直に配置した場合のGバンド強度をIYYとする。]
で表される単層カーボンナノチューブの配向度Pが0以上0.7以下であることを特徴とする成形体の長手方向に単層カーボンナノチューブが配向した成形体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂と単層カーボンナノチューブとの組成物からなる機械特性に優れた繊維、面状体等の成形体、およびその製造方法に関するものである。
カーボンナノチューブと有機あるいは無機ポリマーとの複合材料についての報告例がある。(例えば特許文献1参照)。またポリパラフェニレンベンゾオキサゾールと単層カーボンナノチューブとの組成物による力学特性改善の報告例が有る(例えば非特許文献1参照)。しかし、熱可塑性樹脂に単層カーボンナノチューブを加え紡糸、延伸することにより単層カーボンナノチューブを配向させ機械的強度の改善された成型体を得たとの報告はない。
特公平8−26164号公報 第5−7頁、第1図 Macromolecules 2002,35,9039−9043
本発明の課題は機械特性に優れた成形体、その製造方法を提供することにある。
本発明は、熱可塑性樹脂100重量部と、単層カーボンナノチューブ0.01〜100重量部とからなる組成物からなり、下記式
P=IYY/IXX (1)
[式中、偏光ラマン分光測定で入射レーザーを繊維組成物の側面に成形体の長手方向と直交方向から照射したときの単層カーボンナノチューブ由来のラマンスペクトルにおいて、レーザー偏光面を成形体の長手方向と平行に配置した場合のGバンド強度をIXX、レーザー偏光面を成形体の長手方向と垂直に配置した場合のGバンド強度をIYYとする。]
で表される単層カーボンナノチューブの配向度Pが0以上0.7以下であることを特徴とする成形体の長手方向に単層カーボンナノチューブが配向した成形体である。また本発明は上記の成形体の製造方法である。
本発明の熱可塑性樹脂と単層カーボンナノチューブとの組成物からなる成形体は、とくに延伸することで高度に配向することにより、機械特性、とくに弾性に優れた繊維または面状体を得ることができる。
以下、本発明の繊維組成物について詳述する。
(熱可塑性樹脂について)
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテル、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリスルフィド、ポリスルホン、およびポリエーテルスルホンなどが例示出来る。
これらの中でポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート等が好ましく、なかでもポリエステルが好ましく、さらにはポリアルキレンテレフタレート、またはポリアルキレンナフタレートが好ましい。
本発明で使用するポリエステルとしてはカルボン酸及び/またはその誘導体とジオールを重縮合したもの、あるいはヒドロキシカルボン酸からなるもの、あるいは、さらにこれらの共重合体が挙げられる。
ポリエステルを構成するカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’―ビフェニルジカルボン酸、2,2’―ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、オクタデカンジカルボン酸、ダイマー酸、マレイン酸及びフマル酸等の脂肪族カルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの環状脂肪族ジカルボン酸等、が挙げられる。
ジオールとしてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の脂肪族ジオールや、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA及び2,2−ビス(2’―ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等のジフェノール類が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシエトキシ安息香酸、6−ヒドロキシ―2―ナフトエ酸、7−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシ−ビフェニル−4−カルボン酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
好ましいポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート−テレフタレート共重合体、ポリブチレンイソフタレート−テレフタレート共重合体、ポリシクロヘキシレンジメチレンイソフタレート−テレフタレート共重合体などが挙げられる。
(単層カーボンナノチューブについて)
本発明で使用する単層カーボンナノチューブは直径が0.4nm〜1.5nm好ましくは0.8nm〜1.3nmの単層のグラファイトシートが円柱状に巻かれたものが好ましく使用される。
またアスペクト比の好ましい値として上限の制限はないが下限としては5.0以上、さらには10.0以上、さらに好ましくは50.0以上である事が好ましい。
これら単層カーボンナノチューブは従来既知の方法で製造され、気相流動法、触媒担持型気相流動法、レーザーアブレーション法、高圧一酸化炭素法、アーク放電法等が挙げられるがこれに限定されるものではない。なかでも単層カーボンナノチューブが気相流動法あるいは触媒担持型気相流動法により製造されたものであることが好ましい。
本発明の成形体の組成は熱可塑性樹脂100重量部に対して、単層カーボンナノチューブが0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜100重量部、さらに好ましくは0.1〜60重量部、より好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。単層カーボンナノチューブが0.01重量部未満だと力学強度の向上の効果が観察されにくく、100重量部より上のものは成型が困難である。
また、本発明の成形体を構成する組成物には、その特性を損なわない範囲内で、紫外線吸収剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、無機あるいは有機の各種フィラー、無機強化繊維等を必要に応じて添加することも可能である。
(成形体の製造方法について)
成形体の製造方法としては熱可塑性樹脂の重合原料に単層カーボンナノチューブを混合して重合せしめ、得られた樹脂を紡糸またはTダイから溶融押し出した後、次いで延伸配向させる方法が好ましく利用できる。重合原料に単層カーボンナノチューブを混合する方法としては、例えば溶媒中に単層カーボンナノチューブを分散させた分散液を調整し重合原料に混合することができる。
成形体が繊維である場合の成形体の製造方法としてあるいは熱可塑性樹脂に単層カーボンナノチューブを溶融混合し、紡糸またはTダイから溶融押し出した後、延伸配向させる方法が好ましく利用できる。溶融混合の方法は特に制限はないが、一軸あるいは二軸押し出し機、ニーダー、ラボプラストミルなどを用いて混練する事により得られる。
この際に例えば単層カーボンナノチューブを溶媒中でビーズミル処理することや超音波処理を施す、強力なせん断処理を施す、溶媒に添加する前にあらかじめ単層カーボンナノチューブを酸で処理しておくことが分散性を向上し配向に優れる樹脂組成物を得るうえでさらに好ましい。
(配向、及び配向方法について)
単層カーボンナノチューブの配向度Pは,ラマンシフト波数1580cm−1付近のグラファイト構造由来のGバンド強度を用いて下記式(1)
P=IYY/IXX (1)
[式中、偏光ラマン分光測定で入射レーザーを繊維組成物の側面に成形体の長手方向と直交方向から照射したときの単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて、レーザー偏光面を成形体の長手方向と平行に配置した場合のGバンド強度をIXX、レーザー偏光面を成形体の長手方向と垂直に配置した場合のGバンド強度をIYYとする。]
で表される。本発明の繊維組成物において単層カーボンナノチューブの配向度Pが0以上1以下であることを特徴とする。
配向度Pはナノチューブが成形体の長手方向に平行に配向したときにP=0に漸近し,ランダムな配向ではP=1となる。
本発明における単層カーボンナノチューブの配向度Pの上限は0.7さらには0.5であり、下限としては0、好ましくは0.001、さらに好ましくは0.01、より好ましくは0.1である。
これらの配向方法としては熱可塑性樹脂に中に単層カーボンナノチューブを分散させたものをラビング、キャスティング、流動配向、液晶配向、せん断配向、又は延伸配向させる事等が挙げられる。成型方法は、湿式、乾式、乾式湿式の併用いずれでも良い。得られた繊維組成物をさらに延伸配向させる事により炭素繊維の配向係数を上昇させる事も本発明の樹脂組成物を得るうえでさらに好ましい。配向係数の上昇度(すなわちPの値としては減少する)としては0.01以上、好ましくは0.05以上、さらには0.10以上が好ましい。
(成形体について)
本発明の成形体としては繊維、フィルム、パルプなどの面状体等の成形材料が好ましく挙げられる。成型方法としては溶融、乾式、湿式等公知のいかなるものも適用でき、例えば、該熱可塑性樹脂組成物を溶融紡糸法により繊維、フィブリッド等、および溶融押出法によりフィルム等に成形することができる。これらの成型品を1軸あるいは2軸延伸によりポリマー、単層カーボンナノチューブの配向を高め機械特性を向上させる事が出来る。好ましい延伸倍率としては2〜50倍、好ましくは3〜30倍である。また好ましい延伸配向時の温度としては0℃〜500℃好ましくは10℃〜300℃である。このように本発明により弾性に優れた成形体を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
還元粘度測定:フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(重量比60/40)中、単層カーボンナノチューブをのぞいたポリマー重量分の濃度が1.2g/100mlの濃度で、温度35℃で測定した値である。
ラマン分光測定:ラマン分光装置は,顕微レーザーラマン分光測定装置(堀場ジョバンイボン製LabRamHR)を用いた。励起レーザー光源は波長785nmの半導体レーザーを用い,レーザービーム径は約1μmに集光した。偏光ラマン分光測定は,入射レーザーを繊維組成物の側面に成形体の長手方向と直交方向から照射した時の単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルにおいて,レーザー偏光面を成形体の長手方向と平行に配置した場合のラマンシフト波数1580cm−1付近のGバンド強度をIXX,レーザー偏光面を成形体の長手方向と垂直に配置した場合のGバンド強度をIYYを得た。
機械特性:オリエンテック株式会社製テンシロン万能試験機1225Aにより引っ張り試験を行い弾性率を求めた。
[参考例1](単層カーボンナノチューブの製造)
多孔性担体にY型ゼオライト粉末(東ソー製;HSZ−390HUA)を用い、触媒金属化合物に酢酸第二鉄と酢酸コバルトを用いて、Fe/Co触媒をゼオライトに担持した。触媒の担持量はそれぞれ2.5重量%に調製した。その後、石英ボートに触媒粉末を乗せてCVD装置の石英管内に設置して真空排気をおこない、Arを流量10ml/分で導入しながら室温から800℃まで昇温した。800℃に達した後、エタノール蒸気を流量3000ml/分で導入し、Ar/エタノール雰囲気下で30分間保持した。得られた黒色の生成物をレーザーラマン分光法(レーザー波長:514nm)で測定した結果、単層のカーボンナノチューブが生成していることが確認された。ついで,得られた生成物(マルチウォールカーボンナノチューブ/ゼオライト/金属触媒)を,フッ酸に24時間浸漬後,中性になるまでイオン交換水で洗浄することでゼオライトおよび金属触媒を除去してカーボンナノチューブを精製した。
[参考例2](単層カーボンナノチューブ−ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造)
0.3重量部の単層カーボンナノチューブを10重量部のエチレングリコール中でホモジナイザーにて1時間処理した分散液を40重量部のビスヒドロキシエチルテレフタレートに加え三酸化アンチモン0.014重量部を加え200℃にて反応を開始した。30分かけて270℃に昇温し、その後系内の圧力を常圧から0.3mmHgへ2時間かけて減圧し、最終的に270℃、0.3mmHgで30分反応を行い樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物の還元粘度は0.71dl/gであった。
[実施例1]
参考例2にて得られた樹脂組成物をホール径0.2mmのモノホールキャップを用い285℃にて押し出し15デニールのフィラメントを得た。
得られたフィラメントを常温で延伸倍率4.7倍に延伸し延伸フィラメントを得た。
[実施例2]
参考例2にて得られた樹脂組成物をホール径0.2mmのモノホールキャップを用い285℃にて押し出し15デニールのフィラメントを得て、得られたフィラメントを常温で延伸倍率7.2倍に延伸し延伸フィラメントを得た。
各種物性を表にまとめる。
Figure 2005161599

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂100重量部と、単層カーボンナノチューブ0.01〜100重量部とからなる組成物からなり、下記式(1)
    P=IYY/IXX (1)
    [式中、偏光ラマン分光測定で入射レーザーを成形体の側面に成形体の長手方向と直交方向から照射したときの単層カーボンナノチューブ由来のラマンスペクトルにおいて、レーザー偏光面を成形体の長手方向と平行に配置した場合のGバンド強度をIXX、レーザー偏光面を成形体の長手方向と垂直に配置した場合のGバンド強度をIYYとする。]
    で表される単層カーボンナノチューブの配向度Pが0以上0.7以下であることを特徴とする成形体の長手方向に単層カーボンナノチューブが配向した成形体。
  2. 単層カーボンナノチューブが熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部からなる請求項1に記載の成形体。
  3. 熱可塑性樹脂がポリエステルである請求項1〜2のいずれかに記載の成形体。
  4. 熱可塑性樹脂がポリアルキレンテレフタレート及びまたはポリアルキレンナフタレートからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項3に記載の成形体。
  5. 単層カーボンナノチューブが気相流動法あるいは触媒担持型気相流動法により製造されたものである事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の成形体。
  6. 熱可塑性樹脂に単層カーボンナノチューブを溶融混合し、紡糸または溶融押し出した後、延伸することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成形体の製造方法。
  7. 重合原料に単層カーボンナノチューブを混合して重合せしめ、得られた樹脂を紡糸または溶融押し出した後、延伸することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成形体の製造方法。
  8. 紡糸工程における延伸により配向度Pが紡糸前と比較して0.01以上減少することを特徴とする請求項6または7に記載の繊維組成物の製造方法。
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