JP2005155375A - エンジンンの始動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 リコイルスタータで始動するエンジンにおいて、慣性回転中の着火チャンスを逃さないようにする。
【解決手段】 リコイルスタータ41でエンジンを回転させるとエンジンに直結されている発電機の出力が増大し、タイミングt0でCPU27がリセットされる。タイミングt1で、CPU27に対して回転数センサ29からパルスP1が入力されると、予定時間T1の経過時(t2)に最初の点火指示を出力する。タイミングt3では回転数センサ29からパルスP2が入力される。この時はCPU27は正常動作しているので、パルスP1とP2との間隔によってエンジン回転数が計算される。計算された回転数に従って点火時期マップ30から点火時期を求め、この点火時期に従って、タイミングt4で点火指示を出力させる。以後、点火時期は点火時期マップ30を用いて決定される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、内燃機関(以下、「エンジン」という)の始動装置に関し、特に、マイクロコンピュータを有し、バッテリを設けることなく、リコイルスタータ等、手動式の始動操作装置によって容易に始動できるようにしたエンジン始動装置に関する。
リコイルスタータ等、手動式の始動操作装置を備える汎用エンジンや農用エンジン等の小型エンジンにおいては、エンジンの点火タイミングは予め機械的に設定されており、点火位置(点火時期)は電気回路定数の調節によって変更されるのが一般的である。
これに対して、近年はマイクロコンピュータでデジタル式に点火時期を制御する点火装置をエンジンに搭載することが提案されている(例えば、特開平9−236071号公報)。
特開平9−236071号公報
上記公報に記載された点火装置では、エンジン始動に際して、まずバッテリからの電力でマイクロコンピュータ(CPU)を立ち上げる必要がある。しかし、バッテリ等、電源を搭載しない、例えば耕耘機や刈り払い機などのエンジン駆動作業機では、エンジンが手動で回転操作されて、このエンジン回転で駆動される発電機から充分な電力がCPUに供給されるまでは点火動作を行うことができない。
発電機からの電力でエンジンの点火始動を行うためには、手動式の始動操作装置で回転を開始したエンジンが慣性で回転している間、つまり慣性回転によって発電が行われている間に一連の処理(CPUのリセット、CPUの立ち上げ、および点火時期を決定するソフトウェア処理)を行う必要がある。したがって、バッテリを有していない、いわゆるバッテリレスのエンジンに対してCPUによるデジタル制御式の点火装置を採用するのは非常な困難を伴うことであった。
一方、CPUが立ち上がるまでの最初の点火信号をCPU処理によらないで電気回路でハード的処理することも考えられるが、専用のハード構成を必要とするため、回路が複雑になるのを避けられない。
本発明の目的は、上記問題点を解消して、手動操作によるエンジンの慣性回転中にCPUを立ち上げて点火動作を開始できるようにしたエンジン始動装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明は、エンジンに直結される発電機の出力電力を電源とするマイクロコンピュータで制御される点火装置を有するエンジンの始動装置において、前記エンジンのクランク軸に連結されたフライホイールを回転させる手動始動装置を具備し、前記マイクロコンピュータが、前記手動始動装置の操作による前記発電機の出力電力で立ち上がった後に、該マイクロコンピュータに最初に入力されるエンジン回転位置の基準信号に応答して、予め設定された時間経過時に点火指示を発生する初期点火機能を有している点に第1の特徴がある。
また、本発明は、前記予め設定された時間が、前記手動始動装置の操作による最低始動回転数の時に、定格運転時に使用される点火角度より遅角された点火角度であるように設定される点に第2の特徴がある。
また、本発明は、前記初期点火機能の動作後は、該初期点火機能の動作に代えて、前記マイクロコンピュータが、エンジンの回転数に応じた点火角度で前記基準信号の入力毎に次回の点火指示を発生するように構成された点に第3の特徴がある。
さらに、本発明は、前記点火装置が、前記エンジンの回転数に応じた点火角度で点火するように構成されたデジタル制御式である点に第4の特徴がある。
リコイルスタータ等による始動操作では、慣性回転している短い時間での着火チャンスを逃すことなく点火指示を行う必要がある。本発明では、マイクロコンピュータが立ち上がったならば、その後に入力信号があったときを基準として予定時間経過時点で点火指示を発生できるので、慣性回転中の少ない着火チャンスを逃すことなく点火を行うことができる。この点火指示の発生のために特別な回路構成を必要とせず、マイクロコンピュータでソフトウェア的に処理できる。
特に第2の特徴によれば、最低始動回転数の時に、定格運転時に使用される点火角度より遅角された点火角度となる点火指示を発生させるように設定するので、始動操作のばらつき、すなわち、エンジン始動回転数の変動があったとしても、最低始動回転数に達していれば、この変動にかかわらず適切な着火ゾーンでの最初の点火指示を行うことができる。
また、第3の特徴によれば、2回目以降の点火指示を回転数に対応した最適値に設定することが可能になる。
さらに第4の特徴によれば、点火角度を、エンジン回転数に応答して高速かつ簡単に決定できるので、エンジンの慣性回転中の短い時間内ですばやく点火指示をすることができる。
以下に図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る始動装置を適用することができるエンジンを搭載した作業機の第1例である刈り払い機の斜視図である。図2において、刈り払い機100は、エンジン1と、エンジン1から延びて先端に刈り刃110を備えた操作スリーブ20と、操作スリーブ20の途中に設けられたハンドル120と、ハンドル120の右側端部に設けられたグリップ兼用の操作装置16とを備える。さらに、操作装置16からエンジンのキャブレータ8まで延びるスロットルケーブル9が設けられる。エンジン1は刈り払い機100に好適な小型(例えば排気量25立方cm)の空冷式4ストローク単気筒エンジンであり、図示しないリコイルスタータによってエンジン1が始動される。
図3は、本発明の一実施形態に係る始動装置を適用することができるエンジンを搭載した作業機の第2例である管理機の斜視図である。管理機40には、リコイルスタータ41を備えた縦軸出力のエンジン42が設けられ、エンジン42の出力は下方の作業部軸43に伝達される。作業部軸43には、複数個の耕耘爪44が取り付けられている。エンジン42のフレームからハンドルポスト45が後上方に延び、その先端は二股に分岐してハンドル46を形成し、ハンドル先端にはグリップ47,47が設けられる。ハンドルポスト45には、上下に延びるポスト48が設けられ、ポスト48の上端には管理機40を持ち上げて運搬するのに使用されるグリップ49が設けられ、ポストの下端部50は耕耘高さ調整用の抵抗棒として作用する。
右ハンドルには、スロットルレバー51が設けられ、スロットルケーブル52は、図示しないキャブレータに接続される。左ハンドルのグリップ47にはエンジンストップスイッチ53が設けられる。エンジンストップスイッチ53から引き出されたスイッチコード54はエンジン42内の燃料カットおよび点火停止装置に接続される。
図4は、リコイルスタータ41を有するエンジン上部の斜視図である。エンジン42のクランク軸(先端を符号60で示す)には、ファンブレード57aを有するフライホイール57が連結される。フライホイール57に隣接してイグニッションコイル58が配置される。クランク軸には、フライホイール57と共にスタータプーリ59が取り付けられる。スタータプーリ59はカップ形状をなし、その端面は前記リコイルスタータ41と係合するカム面59aをなす。
図5は、図2,3のエンジンに適用した始動装置の構成を示すブロック図である。エンジン1,42(以下、エンジン42で代表させる)はこのエンジンに直結されるフライホイール発電機を有する。このフライホール発電機のコイル24から出力される電流は整流回路25で整流される。整流された電流はレギュレータ26に入力されて所定の電圧に調節される。つまり、レギュレータ26はCPU27の動作電圧およびイグニッションコイル28の一次電圧として適するように電圧を調整する。
回転数センサ29は、整流回路25の整流波形に基づいて発電機の1回転毎にパルス信号を出力する。CPU27では、このパルス信号の周期に基づいて発電機の周波数つまりエンジン42の回転数を代表する値を算出する。回転数センサ29の出力パルスに基づいてCPU27で算出されたエンジン回転数に関して点火時期(クランク角度)が設定された点火時期マップ30が設けられる。CPU27は、点火時期マップ30から入力されたエンジン回転数に対応する点火時期を検索して読み出す。CPU27は、点火時期をマップから検索するのではなく、予め設定したエンジン回転数の関数式を使って点火時期を計算するように構成してもよい。いずれにしても、エンジン回転数と点火時期との関係はデジタルデータを使用したデジタル演算処理で行われる。
エンジン42のクランク角度は、回転数センサ29の出力パルスタイミングに、相対位置分の定数を付加することで検知することができる。CPU27は、点火時期マップ30から読み出したクランク角と回転数センサ29の出力パルスタイミングで検知される現在のクランク角とが一致したときにイグニッションコイル28に点火指示を出力する。イグニッションコイル28はこの点火指示に応答して、点火プラグ32に接続される二次コイルに高圧を発生させて点火プラグ32を点火させる。
上記点火時期マップ30を用いて点火時期を決定し、点火プラグ32を点火させるためには、CPU27が立ち上がってプログラムが正常に動作し始めていなければならない。本実施形態ではプログラムが正常に動作するまでに点火指示を発生できるようにプログラムを設定している。
図1は、点火指示の出力タイミングを示すタイミングチャートである。同図において、リコイルスタータ41を操作してフライホイール57を回転させると、エンジンに直結されている発電機の出力が増大し、レギュレータ26の電圧(電源電圧)は徐々に増加し、タイミングt0でCPU27が起動可能な電圧になり、CPU27がリセットされる。そして、タイミングt1で、CPU27に対する最初の信号として回転数センサ29からのパルスP1が入力される。このパルスP1が入力されると、予め設定されている時間T1が経過後のタイミングt2でCPU27が最初の点火指示を出力する。その後、タイミングt3で回転数センサ29からパルスP2が入力される。その時点までにCPU27は正常に動作しているので、パルスP1とP2との時間間隔によってエンジン42の回転数が計算される。エンジンの回転数が算出されたならば、この回転数に従って点火時期マップ30を検索し、点火時期を求める。そして、この点火時期に従って、タイミングt4で点火指示を出力させる。以後、点火時期マップ30を用い、エンジン回転数に基づいて決定された点火時期で点火が行われエンジン42は通常に運転される。
CPU27がリセットされた後、最初の点火指示を発生するまでの時間をどのように決定するかの手法を示す。図6は、エンジンの点火時期と回転数との関係を示す図である。ここでは、定格運転での適当な点火時期が圧縮上死点前(BTDC)30°である場合を想定する。図6では、リコイルスタータを種々の力で引いた場合つまり種々の回転数でエンジンを始動させようとしたときにそれぞれの点火時期がBTDC30°になるよう設定した場合の、回転数の変化と実際の点火時期との対応を示すシミュレーション結果を示す。
図6において、例えば、線aに示すようにエンジン回転数500rpmが得られるようにリコイルスタータを操作したときに点火時期がBTDC30°となるように設定すると、回転数に対応する点火時期はかなり右下がりの特性になる。この線aから理解できるのは、さらに強い力でリコイルスタータが引かれた場合、点火時期が大きく遅角してしまうことを示している。
また、線hに示すように、エンジン回転数1000rpmが得られるようにリコイルスタータを操作したときに点火時期がBTDC30°となるように設定すると、回転数に対応する点火時期は緩い右下がりの特性になる。これは、さらに強い力でリコイルスタータが引かれたときには遅角の程度が緩やかである一方、リコイルスタータを引く力がエンジン回転数1000rpmに満たないときは点火時期が進角することを示す。
一方、線eに示すようにエンジン回転数750rpm(最低始動回転数)が得られるようにリコイルスタータを操作したときに点火時期がBTDC30°となるように設定した場合は、それ以上強い力で引かれたとしても、回転数に対応する点火時期は比較的緩やかな右下がりであるので、遅角の程度は緩やかであり、進角量は適当な範囲に収まる。
したがって、最低始動回転数が得られるようにリコイルスタータを操作したときに点火時期が定格回転数の点火時期BTDC30°となるように設定する(線eのように設定する)のが最も望ましい。しかし、少なくとも、最低始動回転数が得られるようリコイルスタータを引いたときに、定格運転時の点火角度より遅角された点火角度になるように設定されていればよい。大きい力で引かれた場合、点火時期の遅角量が大きくなるものの、エンジンの慣性が大きいので、圧縮上死点の乗り越しトルクに打ち勝って圧縮上死点を乗り越えることが可能だからである。すなわち、最初の点火時期の推奨範囲は図6の線d,eの範囲である。
また、上述の理由から、エンジンの慣性が大きくなる回転域で使用される場合、すなわち最低始動回転数が高く設定される場合には、a,b,cでも十分対応可能である。
しかしながら、最低始動回転数が低く設定される場合には、最低始動回転数においてBTDC0°以上を確保することが好ましい。
図6において、矢印Dは、エンジン始動時の回転数域の例であり、特に、矢印Eで示す範囲では、圧縮上死点の乗り越しのための充分なトルクが得られないので、点火時期の遅角は有効である。また、矢印Fは、リコイルスタータによる回転の慣性が大きいために圧縮上死点の乗り越しに充分なトルクが得られる回転数域を示す。
図7は、点火時期マップの一例を示す図である。CPU27が起動してプログラムがセットされた後この点火時期マップを使用して点火時期が決定される。つまり上記例では、パルスP2以後の点火指示のタイミングを決定するときに使用される。図に示すように、点火時期は、エンジン回転数に伴って段階的に進角させるように設定される。進角量は上死点を基準としたクランク角で示す。エンジン回転数が2000rpmまでは進角量は5°に設定され、2000rpm〜4500rpmでは進角量15°に設定されている。そして4500rpm以上の定格運転では進角量30°に設定されている。
なお、上記実施形態では、始動操作装置として手で操作するリコイルスタータの例を説明したが、本実施形態でいう手動始動操作装置とは、手で操作するリコイルスタータに限らず、足で操作するキック式や、ばねを補助動力として始動させる形式のものも含む。要は、バッテリ等電源を使用しないで主として人力を利用して始動させる装置を意味し、本発明は、このような装置で始動されるエンジンに対して好適である。
本発明の一実施形態に係るエンジン始動装置の動作を示すタイミングチャートである。 本発明の一実施形態に係るエンジン始動装置を適用するのに好適な刈り払い機の斜視図である。 本発明の一実施形態に係るエンジン始動装置を適用するのに好適な管理機の斜視図である。 リコイルスタータが取り付けられるエンジンの要部斜視図である。 エンジン始動装置のハード構成を示すブロック図である。 エンジン回転数と点火時期との関係を示す特性図である。 エンジン回転数と点火時期との関係を示す特性図である。
符号の説明
1,42…エンジン、 27…CPU(マイクロコンピュータ)、 29…回転数センサ、 30…点火時期マップ、 40…管理機、 41…リコイルスタータ、

Claims (4)

  1. エンジンと、該エンジンに直結される発電機と、該発電機の出力電力を電源とするマイクロコンピュータで制御される点火装置とを有するエンジンの始動装置において、
    前記エンジンのクランク軸に連結されたフライホイールを回転させる手動始動装置を具備し、
    前記マイクロコンピュータが、前記手動始動装置の操作による前記発電機の出力電力で立ち上がった後に、該マイクロコンピュータに最初に入力されるエンジン回転位置の基準信号に応答して、予め設定された時間経過時に点火指示を発生する初期点火機能を有していることを特徴とするエンジンの始動装置。
  2. 前記予め設定された時間が、前記手動始動装置の操作による最低始動回転数の時に、定格運転時に使用される点火角度より遅角された点火角度になるように設定されることを特徴とする請求項1記載のエンジンの始動装置。
  3. 前記初期点火機能の動作後は、該初期点火機能の動作に代えて、前記マイクロコンピュータが、エンジンの回転数に応じた点火角度で前記基準信号の入力毎に次回の点火指示を発生するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のエンジンの始動装置。
  4. 前記点火装置が、前記エンジンの回転数に応じた点火角度で点火するように構成されたデジタル制御方式であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエンジンの始動装置。
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