JP2005150425A - トランス、トランス用磁心およびその製造方法 - Google Patents

トランス、トランス用磁心およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 インダクタンスが高く、インダクタンスの公差が小さく、かつ高調波歪、特に総高調波歪(THD)の小さいトランス用磁心、トランスおよび上記特性を有するトランス用磁心の製造方法を提供する。
【解決手段】 インダクタンス調整用のギャップを有するトランス用磁心であって、前記ギャップを構成するギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が、RaG≦0.70μm、好ましくはRaG≦0.45μmであることを特徴とするトランス用磁心および、前記ギャップを構成するギャップ形成面を研磨砥粒の粒度が#400〜#8000、好ましくは#600〜#8000(JIS−R6001)である研削砥石を使用して研磨することを特徴とするトランス用磁心の製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、トランス用磁心およびトランスに係り、さらに詳しくは、各種通信機器等における伝送用トランスに好適である高調波歪が小さいトランス用磁心およびトランスに関する。
伝送トランスや電源用トランスの磁心としては、一般にフェライトから構成される磁心が使用されている。これは、フェライトが他の軟磁性金属材料に比べ、高周波数帯域での初透磁率の低下や電力損失の増大が少なく、安価に製造できるためである。
近年、各種電子機器分野では、更なる電子機器の小型化、薄型化および高性能化などの要求が高まっており、その要求に応えるべく、フェライトから構成されるトランス用の磁心の性能向上が試みられている。
たとえば、特許文献1に、中央脚部と外側脚部とこれら両脚部を接続する底面部とからなる磁心(磁芯)構造を持ち、中央脚部よりも外側脚部を僅かに長くし、かつ該外側脚部先端面の最高点と前記中央脚部先端面の最低点との高さの差を0.3μm以下に鏡面加工してなるフェライト磁心が開示されている。
この文献によると、上記フェライト磁心を複数個突き合わせてトランスやインダクタの磁心を構成した際に突き合わせ面に生じるエアーギャップを充分小さくすることができ、高インダクタンスを実現できる旨記載されている。
また、特許文献2には、すり合せ面を対面させて、組み合わされたトランス用コアにおいて、対面するすり合せ面間に、鉄原子およびアルコキシ基を含み、スピネル構造を呈するスピネル磁性層を介して、接合されるトランス用コアが開示されている。
この文献によると、トランス用コアを上記構成とすることにより、磁束の漏洩を防ぐことができ、透磁率の向上を図ることが可能となる旨記載されている。
一方、トランス用の磁心を電源トランスなどで使用する場合には、損失が問題になるが、トランス用の磁心を伝送トランスとして使用する場合においては、損失だけでなく高調波歪の低減が求められている。しかし、上記特許文献1,2記載の発明からは、通信伝送トランスとして使用する際に要求されるような、小さい高調波歪を有するトランス用磁心を得ることは困難である。
また、通信機器の分野では、大容量のデータをより高速通信できる方式への要求が高まっており、高速通信を可能とする技術としてxDSL(x Digital Subscriber Line)技術が普及している。xDSL技術としては、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Lines)やVDSL(Very high−bit−rate Digital Subscriber Line)等がある。
xDSL技術においては、デジタル信号とアナログ信号とを変換するモデムが必要であり、このモデムにはラインと絶縁するための伝送トランスが必要となる。このようなxDSL技術に使用される伝送トランスとしては、広周波帯域において高いインダクタンスを有することおよび、伝送信号の再現性や通信速度の維持のため、トランスを介して信号を伝送する際に発生する総高調波歪(THD:Total Harmonic Distortion)が小さいことが要求される。ここで、総高調波歪(THD)は、高調波成分の実効値総和と基本波の実効値との比を表し、下記式(1)で算出される。
THD(dB)=20×log[(高調波+ノイズ)/(基本波+高調波+ノイズ)]…式(1)
特許文献3には、外脚と内脚とを形成した脚付磁心と、当該脚付磁心と突き合わせる磁心とにおいて、磁心同士の突き合わせ面の中心線平均あらさRaを1.2μm以下とした磁心を使用した通信機器用電子部品が、開示されている。
この文献によると、磁心同士の突き合わせ面の中心線平均あらさRaを1.2μm以下とすることにより、THD(THDは、THDを振幅透磁率μaで除した値)を小さくすることができる旨が記載されている。しかしながら、この文献においては、THD(またはTHD)の低減を目的として、面粗さの改善を行っているが、面粗さの改善を行っているのは、突き合わせ面についてのみであり、この文献記載の発明では、THD(またはTHD)の低減が十分に図られているとは言い難い。
各周波数の高調波歪を低減するためには、トランスの駆動条件におけるフェライトコアのヒステリシス損失の低減や、B−H曲線における磁化曲線の直線性を良くすることが必要である。フェライトコアにおいては、特にヒステリシス損失の低減が高調波歪を小さくするために重要である。
特開平11−260652号公報 特開平5−299279号公報 特開2003−297641号公報
本発明の目的は、インダクタンスが高く、インダクタンスの公差が小さく、かつ高調波歪の小さいトランス用磁心、およびトランスを提供することである。さらに、本発明は、上記特性を有するトランス用磁心の製造方法を提供することも目的とする。
本発明者等は、インダクタンスを調整する目的で形成されるギャップを構成するギャップ形成面の表面粗さ(RaG)に着目し、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を所定の範囲内とすることにより、インダクタンスを高く保ちつつ、インダクタンスの公差を小さくし、高調波歪、特に総高調波歪(THD)を低減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の観点に係るトランス用磁心は、
インダクタンス調整用のギャップを有するトランス用磁心であって、前記ギャップを構成するギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が、RaG≦0.70μmであることを特徴とする。
本発明の第1の観点によると、ギャップを構成するギャップ形成面を有するトランス用磁心(分割型または非分割型)において、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を上記範囲とすることにより、インダクタンスが高く、インダクタンスの公差が小さく、かつ高調波歪の小さいトランス用磁心が得られる。
本発明の第2の観点に係るトランス用磁心は、
基準面とギャップ形成面とを有し、前記基準面と前記ギャップ形成面との高さの差であるギャップを有する分割型のトランス用磁心であって、前記ギャップを構成するギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が、RaG≦0.70μmであることを特徴とする。
本発明の第2の観点によると、本発明のトランス用磁心の基準面と他のトランス用磁心の基準面とを組み合わせて使用する分割型のトランス用磁心において、前記ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を上記範囲とすることにより、インダクタンスが高く、インダクタンスの公差が小さく、かつ高調波歪の小さいトランス用磁心が得られる。なお、前記他のトランス用磁心としては、本発明のトランス用磁心でも良いし、そうでなくても良い。
なお、従来より、インダクタンスの大きさとギャップの深さに相関関係があることは知られており、分割型のトランス用磁心において、インダクタンスを調整する目的で、トランス用磁心のギャップ加工は行われていた。
また、従来においては、高調波歪を低減する等の目的で、直接他方の磁心と接触する基準面(突き合わせ面)については鏡面加工を行い、その表面粗さを小さくすることが行われることがあった。
しかし、ギャップ加工を施した際に形成されるギャップ形成面については、直接他方の磁心と接触することがなく、インダクタンスを所定の値に調整するためにギャップ深さを制御することが目的であり、接触面となる基準面のように、表面粗さを極めて小さくするような加工を施す必要はないと考えられており、積極的にそのような加工が行われることはなかった。
ところが、本発明者等の新たな知見によると、高調波歪を低減させるためには、基準面の表面粗さ(RaS)を制御するよりも、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を制御するほうが、より重要である。そのため、本発明によれば、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を上記範囲とすることにより高調波歪を低減させることができる。
本発明に係るトランス用磁心は、好ましくは、前記ギャップを構成するギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が、RaG≦0.45μmである。
本発明に係るトランス用磁心は、好ましくは、前記ギャップを構成するギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が、RaG≧0.005μmである。
本発明に係るトランス用磁心は、好ましくは、前記基準面の表面粗さ(RaS)が、0.005μm≦RaS≦1.0μmである。
本発明においては、前記ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を上記範囲とすると共に、基準面の表面粗さ(RaS)を上記範囲とすることにより、さらなる高調波歪の低減を図ることができる。
本発明に係るトランス用磁心は、好ましくは、前記ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)と前記基準面の表面粗さ(RaS)との関係が、RaG≦RaSの関係である。
本発明者等の新たな知見によると、前記ギャップ形成面と前記基準面のいずれも、その表面粗さを小さくすれば高調波歪を小さくすることが可能だが、ギャップ形成面(RaG)を小さくした場合の方が、表面粗さを小さくした場合の高調波歪の改善効果が大きい。
すなわち、研磨等の方法により、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)と基準面の表面粗さ(RaS)をそれぞれ同等の水準まで小さくした場合においては、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を小さくした場合の方が、高調波歪を低減することができる。
そのため、高調波歪を低減するためには、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を加工する方が、基準面の表面粗さ(RaS)を加工するよりも効果的であるため、RaG≦RaSとすることが好ましい。
本発明によれば、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を上記範囲とすることにより、基準面の表面粗さ(RaS)について高精度に加工することなく、高調波歪の低減を達成することができる。
本発明に係るトランス用磁心は、好ましくは、Mn−Zn系フェライトで構成されている。
本発明に係るトランス用磁心においては、好ましくは、前記Mn−Zn系フェライトが、酸化鉄をFe換算で51.0〜55.0mol%、酸化マンガンをMnO換算で20.0〜30.0mol%、酸化亜鉛をZnO換算で18.0〜25.0mol%含有する。
本発明に係るトランスは、上記いずれかのトランス用磁心の回りにコイルを巻線することにより、作製される。
あるいは、本発明に係るトランスは、上記いずれかのトランス用磁心と、前記トランス用磁心に組み合わされる他のトランス用磁心とを有し、組み合わされたトランス用磁心の回りにコイルを巻線することにより、作製される。
なお、上記他のトランス用磁心としては、本発明のトランス用磁心であっても良いし、そうでなくても良い。つまり、組み合わされるトランス用磁心のうち少なくとも1つが本発明のトランス用磁心であれば良い。
本発明に係るトランスは、好ましくは、通信用の伝送トランスである。
通信用の伝送トランスとしては、たとえば、xDSL技術においてデジタル信号とアナログ信号とを変換するモデムに使用される伝送用トランス、特にADSL用モデムに使用される伝送用トランス等が挙げられる。
本発明に係るトランス用磁心の製造方法は、前記ギャップを構成するギャップ形成面を研磨砥粒の粒度が#400〜#8000(JIS−R6001)である研削砥石を使用して研磨することを特徴とする。
本発明に係るトランス用磁心の製造方法は、好ましくは、前記研削砥石として、研磨砥粒の粒度が#600〜#8000(JIS−R6001)である研削砥石を使用することを特徴とする。
本発明によると、インダクタンスを調整する目的で形成されるギャップを構成するギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を所定の範囲内とすることにより、インダクタンスが高く、インダクタンスの公差が小さく、高調波歪、特に総高調波歪(THD)の小さいトランス用磁心およびトランスを提供することができる。
また、本発明の製造方法によると、ギャップを構成するギャップ形成面を研磨する際に使用する研削砥石の研磨砥粒の粒度を所定の範囲内とすることにより、インダクタンスが高く、インダクタンスの公差が小さく、高調波歪、特に総高調波歪(THD)の小さいトランス用磁心の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1(a)、(b)は本発明の一実施形態に係るギャップ形成面を有するEP型磁心の斜視図および正面図、図1(c)、(d)はギャップ形成面を有しないEP型磁心の斜視図および正面図、
図2(a)、(b)はギャップ形成面を有するEP型磁心とギャップ形成面を有しないEP型磁心を突き合わせ面で組み合わせる前後の状態を示す正面図、
図3は本発明の実施形態に係るトランス用磁心のギャップ形成面の加工方法の例を示す図、
図4は本発明の実施形態に係るトランス用磁心のギャップ形成面の加工方法の例を示す図、
図5(a)〜(e)は本発明の実施形態に係るトランス用磁心の例を示す図、
図6は本発明の実施形態に係るトランス用磁心の基準面およびギャップ形成面の加工方法の例を示す図、
図7は本発明の実施形態に係るトランス用磁心の基準面およびギャップ形成面の加工方法の例を示す図、
図8(a)、(b)は本発明の実施例において作製したEP型磁心の寸法を説明するための図、
図9は本発明の実施例においてTHD測定を行った回路図、
図10は本発明の実施例におけるギャップ形成面および基準面の表面粗さとTHDとの関係を示すグラフ、
図11は本発明の実施例における基準面の表面粗さとTHDとの関係を示すグラフである。
図2(a)、(b)に示すように、本発明の一実施形態に係るトランス用磁心1は、EP型の磁心11および12が組み合わされ、各磁心11、12は、中脚部2と外脚部3を底板部4で接続して構成される。
図1(a)、(b)に示すギャップ形成面を有する一方のEP型磁心11は、中脚部2の上面にギャップ形成面21を有し、外脚部3の上面に基準面31を有する。このEP型磁心11は、ギャップ形成面21と基準面31との底板部4からの高さの差であるギャップΔGを有する。
図1(c)、(d)に示すギャップ形成面を有しないEP型磁心12は、中脚部2の上面に基準面22を有し、外脚部3の上面にも基準面31を有し、これらは略同一平面になっており、ギャップΔGを有しない。
本実施形態に係るトランス用磁心1は、図2(a)、(b)に示すようにギャップ形成面を有するEP型磁心11とギャップ形成面を有しないEP型磁心12が、外脚部3の基準面31がお互いに重なるように組み合わされ、一対のトランス用磁心1として使用される。このように組み合わされたトランス用磁心1は、ギャップ形成面を有するEP型磁心11のギャップ形成面21と、ギャップ形成面を有しないEP型磁心12の基準面22との間にギャップΔGが形成される。本実施形態に係るトランスは、インダクタンスを調整するためのギャップΔGを有しており、このギャップΔGの深さを調整することによりインダクタンスを調整することが可能となる。
トランス用磁心
本実施形態のトランス用磁心1(磁心11および12)は、酸化鉄、酸化マンガン、酸化亜鉛を含有するMn-Zn系フェライト組成物で構成されている。
酸化鉄の含有量の範囲は、Fe換算で51.0〜55.0mol%であることが好ましく、さらに好ましくは52.0〜54.0mol%である。
酸化鉄の含有量が少なすぎると磁心における結晶磁気異方性が大きくなり高調波歪が増大する傾向にあり、同様に多すぎても高調波歪が増大する傾向にある。
酸化マンガンの含有量の範囲は、MnO換算で20.0〜30.0mol%であることが好ましく、さらに好ましくは21.0〜28.0mol%である。
酸化マンガンの含有量が少なすぎるとキュリー点が実使用温度領域まで低下し、フェライトとしての特性が失われる傾向にあり、多すぎると磁心の結晶磁気異方性が大きくなり、高調波歪は増大する。
酸化亜鉛の含有量の範囲は、ZnO換算で18.0〜25.0mol%であることが好ましく、さらに好ましくは21.0〜25.0mol%である。
酸化亜鉛の含有量が少なすぎると磁心の結晶磁気異方性が大きくなり、高調波歪は増大し、多すぎるとキュリー点が実使用温度領域まで低下し、フェライトとしての特性が失われる。
また、本発明の目的を達成できる範囲において、上述した酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マンガン以外にも、種々の添加物を含有させることが可能である。
次に、本実施形態のトランス用磁心1(磁心11および12)の製造方法を説明する。
まず、出発原料として、Fe、MnO、ZnO、あるいは焼成後にこれらの酸化物となる原料および、必要に応じて他の原料を用意する。
用意した出発原料を秤量し、焼成後の最終的な組成において、目的の組成となるように調整する。
なお、原料混合物中には、原料中の不可避的不純物元素が含まれ得る。このような元素としては、B、Al、Si、P、Ca、Cr、Co、Na、K、S、Clなどが挙げられる。電力損失や磁気特性への影響を抑えるためには、これら各元素の組成物全体に対する重量比率が500ppm以下であることが好ましく、特にB、Pについては100ppm以下であることが好ましい。
秤量した出発原料を混合し、仮焼きを行う。仮焼きは、原料の熱分解、成分の均質化、フェライトの生成、焼結による超微粉の消失と適度の粒子サイズへの粒成長を起こさせ、原料混合物を後工程に適した形態に変換するために行われる。仮焼は酸化性雰囲気中、通常は空気中で行われる。仮焼温度は800〜1000度とすることが好ましい。
次に、上記にて得られた仮焼き材料の粉砕を行い、粉砕材料を得る。粉砕は、仮焼き材料の凝集をくずして適度の焼結性を有する粉体を製造するために行われる。仮焼き材料が大きい塊を形成しているときには、粗粉砕を行ってからボールミルやアトライターなどを用いて湿式粉砕を行う。
次に、粉砕材料の造粒(顆粒)を行い、造粒物を得る。造粒は、粉砕材料を適度な大きさの凝集粒子とし、成形に適した形態に変換するために行われる。こうした造粒法としては、たとえば、加圧造粒法やスプレードライ法などが挙げられる。スプレードライ法は、粉砕材料に、ポリビニルアルコールなどの通常用いられる結合剤を加えた後、スプレードライヤー中で霧化し、乾燥する方法である。
次に、造粒物を所定形状に成形し、成形体を得る。造粒物の成形としては、たとえば、乾式成形、湿式成形、押出成形などが挙げられる。乾式成形法は、造粒物を、金型に充填して圧縮加圧(プレス)することにより行う成形法である。
成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜決定すればよいが、本実施形態においては、図1(a)〜(d)に示すようなEP型磁心である。
本実施形態においては、まず、図1(c)、(d)に示す中脚部2の基準面22と外脚部3の基準面31の高さが同じであるギャップ形成面を有しないEP型磁心12を複数成形し、本焼成を行い、ギャップ形成面を有しないEP型磁心12の焼結体を得る。
本焼成は、多くの空隙を含んでいる成形体の粉体粒子間に、融点以下の温度で粉体が凝着する焼結を起こさせ、緻密な焼結体を得るために行われ、50〜300℃/hrで昇温し、安定温度1200〜1400℃で2〜8時間程度行い、安定温度から冷却部においてはMn−Zn系フェライトの平衡酸素分圧に制御した雰囲気中で焼成することが好ましい。
次に、焼結体の表面研削を行う。まず、ギャップ形成面を有しないEP型磁心12の焼結体の中脚部2の基準面22、外脚部3の基準面31について、基準面の表面粗さ(RaS)を調整するための表面研削を行う。
基準面の表面粗さ(RaS)を調整するための表面研削の方法としては、特に限定はされず、基準面の表面粗さや平坦度を制御可能な加工方法であれば何でもよく、たとえば、バーチカル加工機を使用した加工方法等が挙げられる。
基準面の表面粗さ(RaS)は、0.005μm≦RaS≦1.0μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.005μm≦RaS≦0.70μmであり、より好ましくは0.005μm≦RaS≦0.20μmである。
基準面の表面粗さ(RaS)が大きすぎると、磁束の漏洩が生じ、ヒステリシス損失が大きくなるため、高調波歪が大きくなる傾向にある。また、基準面の表面粗さ(RaS)を極めて小さい値(たとえばRaS=0.005μm以下)にすることは、フェライトのような多結晶体においては結晶粒子間や結晶粒子内に空孔が存在することや、加工コストが高くなるために困難である。なお、本実施形態においては、突き合わせ面となる基準面について、鏡面加工等の微細加工を行い、基準面の表面粗さ(RaS)を0.005〜0.20μmとすることが特に好ましい。
なお、ここで、表面粗さとは、JIS−B0601に準拠した表面粗さ(算術表面高さ:Ra)をいう。また、表面粗さの測定は、たとえば、表面粗さ計等を使用して行うことができる。
次に、図1(a)、(b)に示すギャップ形成面を有するEP型磁心11を得るために、上記にて表面研削を行ったギャップ形成面を有しないEP型磁心12について、中脚部2の上面部にギャップ加工を目的とした表面研削を行い、中脚部2の上面部にギャップ形成面21を形成する。
ギャップ加工を目的とした表面研削の方法としては、特に限定はされず、トランス用磁心の形状に合わせて適宜選択すれば良いが、たとえば、本実施形態のEP型磁心のような分割型の磁心の場合は、図3または図4に示すような加工方法で行うことができる。
図3に示す加工方法においては、下面および側面に研磨砥粒面を有する円柱状の研削砥石5を回転させながら、ギャップ深さ分降下させ、EP型磁心11の中脚部2を研削するように前後に動かし、ギャップ形成面21を形成する。
また、図4に示す加工方法においては、研削台7の上に、EP型磁心11を中脚部2の上面が下向きになるように固定し、上面に研磨砥粒面を有する研削砥石6およびEP型磁心11を回転させ、研削砥石6を昇降させることにより、中脚部2の上面を研削し、ギャップ形成面21を形成する。なお、EP型磁心11は、研削台7を回転させることにより、回転させてもよい。
本実施形態においては、ギャップ加工により形成されるギャップ形成面21の表面粗さ(RaG)はRaG≦0.70μmであり、好ましくはRaG≦0.45μm、さらに好ましくはRaG≦0.30μmである。また、表面粗さの下限としては、RaG≧0.005μm程度であることが好ましい。
本発明の特徴点としては、ギャップ形成面21の表面粗さ(RaG)を上記範囲とする点にあり、このようにすることにより、インダクタンスが高く、かつインダクタンスの公差が小さく、高調波歪の小さいトランス用磁心を得ることが可能となる。
なお、ギャップ形成面21の表面粗さ(RaG)と高調波歪との相関関係については必ずしも明確ではないが、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が大きいと、ギャップ形成面における磁束密度のばらつきが大きくなったり、磁束の漏洩が大きくなり、交流磁場中でのヒステリシス損失が増大し、その結果高調波歪が増大すると考えられる。
ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が大きすぎると、上述した原因により、高調波歪が増大する傾向にある。また、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を極めて小さい値(たとえばRaG=0.005μm以下)にすることは、フェライトのような多結晶体においては結晶粒子間や結晶粒子内に空孔が存在することや、加工コストが高くなるために困難である。
また、上述したように、高調波歪が増大する要因としてはギャップ形成面の表面粗さ(RaG)だけでなく、基準面31(突き合わせ面)の表面粗さ(RaS)を制御することも重要である。そのため、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を上記範囲とし、さらに、基準面の表面粗さ(RaS)を上述した範囲とすることが好ましく、このようにすることにより、従来と比較して高調波歪を低減することが可能となる。
本実施形態では、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)と基準面の表面粗さ(RaS)との関係を、RaG≦RaSの関係とする。これは、高調波歪を低減するためには、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を加工する方が、基準面の表面粗さ(RaS)を加工するよりも効果的であるためである。
ギャップ加工を目的とした表面研削を行う際に使用する研削砥石としては、研削砥石を構成する研磨砥粒の粒度が#400〜#8000(JIS−R6001)であることが好ましく、さらに好ましくは#600〜#8000である。
研磨砥粒の粒度が#400より大きいとギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を十分に小さくすることができない傾向にあり、また粒度が#8000より小さいと加工コストが増大する傾向にある。
トランス
本実施形態に係るトランスは、図2に示すようにギャップ形成面を有するEP型磁心11とギャップ形成面を有しないEP型磁心12を、外脚部3の基準面31がお互いに重なるように組み合わせ、一対のトランス用磁心とし、中脚部2の周囲に所定巻数だけ巻線することにより形成される。
本実施形態に係るトランスは、ギャップ形成面を有するEP型磁心11のギャップ形成面21とギャップ形成面を有しないEP型磁心12の基準面22との間に形成されたギャップΔGの深さを調整することによりインダクタンスを調整することが可能となっている。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態においては、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)と基準面の表面粗さ(RaS)との関係を、RaG≦RaSの関係としたが、本発明の目的を達成できる範囲内で、RaG≦RaSの関係とならない範囲とすることも可能である。すなわち、上述した実施形態では、効率的に高調波歪を低減させるためにRaG≦RaSの関係としたが、製造工程の困難性を考慮しなければ、RaG>RaSとしても良い。
また、上述した実施形態では、EP型のトランス用磁心を例示したが、本発明に係るトランス用磁心としては、図5(a)〜(e)に示す各形状を有する磁心とすることもできる。
図5(a)は、非分割型の磁心であり、磁心の一部をファインカッターやサーフェイス等で切断し、ギャップを形成することにより得られる、ギャップΔGを有するトロイダル型磁心である。
図5(b)も、非分割型の磁心であり、同様に、磁心の一部をファインカッターやサーフェイス等で切断し、ギャップを形成することにより得られる、ギャップΔGを有するFT型磁心である。
図5(c)は、分割型の磁心であり、E型の磁心とI型の磁心が組み合わされて構成されるEI型磁心である。この磁心においては、たとえば、E型の磁心の真ん中の脚についてギャップ加工を行いギャップ形成面を形成する。そして、このギャップ形成面を有するE型の磁心とI型の磁心とを組み合わせることによりギャップΔGが形成される。
なお、E型の磁心のギャップ加工を行う際には、加工方法として、たとえば図6または7に示す方法で加工を行うことができる。
図6は、突き合わせ面およびギャップ形成面について、連続して加工を行う方法である。この方法においては、まず、E型の磁心13の外脚部132および中脚部131の上面と、下面および側面に研磨砥粒面を有する円板状の研削砥石8aの下面とを接触させ、円板状の研削砥石8aを回転させることにより、外脚部132および中脚部131の上面の研削を行う。次いで、E型の磁心13の中脚部131の上面と、側面に研磨砥粒面を有する円板状の研削砥石8bの側面とを接触させ、円板状の研削砥石8bを回転させることにより、中脚部131の上面について研削を行い、ギャップ形成面を形成する。なお、図6に示した加工方法においては、E型の磁心を固定させた状態でそれぞれ研削を行う。また、研削砥石8aの回転軸と研削砥石8bの回転軸とは、垂直な関係にある。
図7に示す加工方法も、図6に示す加工方法と同様に、突き合わせ面およびギャップ形成面について、連続して加工を行う方法であるが、図6に示した加工方法と異なり、E型の磁心をマグネットチャック9の上に固定し、マグネットチャック9が動くことにより連続的に研削を行う方法である。なお、図6および7に示す加工方法は、いずれも突き合わせ面およびギャップ形成面について、連続して加工を行う方法であるが、突き合わせ面または、ギャップ形成面の研削を別々に行う方法としても良い。すなわち、図6,7において、研削砥石8aを使用しない加工方法、または、研削砥石8bを使用しない加工方法とすることも可能である。
図5(d)も、分割型の磁心であり、二つのU型の磁心が組み合わされて構成されるUU型の磁心である。この磁心においては、たとえば、両方のU型の磁心の二つの脚の側面部をギャップ形成面とし、両磁心のギャップ形成面間に誘電体フィルムを挟むことにより、ギャップΔGが形成される。
図5(e)も、分割型の磁心であり、二つのE型の磁心が組み合わされて構成されるEE型の磁心である。この磁心においては、たとえば、二つのE型の磁心のうち一方の磁心の真ん中の脚についてギャップ加工を行いギャップ形成面を形成する。そして、このギャップ形成面を有するE型の磁心とギャップ形成面を有しないE型の磁心とを組み合わせることによりギャップΔGが形成される。または、ギャップ形成面を有するコア同士での組み合わせでも良い。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
[磁心の作製]
主成分および副成分の出発原料を準備した。主成分の出発原料としては、Fe、MnO 、ZnOを用いた。また、副成分の出発原料としては、SiO、CaOを用いた。これらの出発原料は、焼成後の組成が以下のようになるように、秤量した。
Fe:53モル%
MnO:24モル%
ZnO:23モル%
SiO:0.01重量%
CaO:0.06重量%
なお、Fe、MnO 、ZnOの量は、主成分全体に対するモル%で、SiO、CaOの添加量はフェライト組成物全体に対する重量%で表した。
次に、これらの原料を、以下の条件で配合、仮焼成、粉砕を行いフェライト材料を調製した。
・配合および粉砕用ポット:ステンレスボールミルポット使用
・配合および粉砕用メディア:スチールボール使用
・配合時間:16時間
・仮焼成条件:850℃、3時間
・仮焼き後の粉砕時間:8時間
得られたフェライト材料100重量部にバインダーとしてのポリビニルアルコールを1.0重量部添加して造粒して造粒物とし、加圧成形し、1350℃で焼成することにより、中脚部および外脚部を有するEP型磁心(EP13型)を得た。なお、EP型磁心の寸法は、図8において、A=12.5±0.3mm、B=10.0±0.3mm、φC=4.35±0.15mm、2D=12.85±0.15mm、E=8.8±0.2mm、2H=9.2±0.2mmとした。
次に、上記にて得られた焼結体の中脚部および外脚部の基準面をバーチカル加工機により表面加工を行い、ギャップ形成面を有しないEP型磁心を得た。中脚部および外脚部の基準面の表面粗さ(RaS)は、RaS=0.100μmであった。なお、表面粗さの測定には、(株)小坂研究所製 サーフコーダSE−30Dを使用した。
さらに、ギャップ形成面を有しないEP型磁心試料のうち半分の試料について、中脚部の基準面をMGL(ミニギャップライン)加工によりギャップ加工を行い、ギャップ形成面を有するEP型磁心を得た。ここで、各試料についてMGL加工を行う際の研削砥石の研磨砥粒の粒度および、研削速度等の加工条件を調整することにより、表1に示すギャップ形成面の表面粗さ(RaG)の異なる試料1〜16を作製した。なお、このときのギャップ深さは、インダクタンスが5.0mH、インダクタンスの公差が±9%となるように調整した。その結果ギャップ深さは約30μmであった。インダクタンスの測定は、100ターンコイルを作製し、LCRメーター(ヒューレットパッカード(株)製)を使用し、測定周波数1kHz、測定電流0.5mAで行った。
[トランスの作製]
同様に、ギャップ形成面を有しないEP型磁心とギャップ形成面を有するEP型磁心とを、図2に示すように外脚部3の接触面31がお互いに重なる状態とし、かつ両磁心の中脚部2を1次巻線と2次巻線とが巻回されたボビンに挿入することによりトランス試料を作製した。
なお、巻線は、リーケージインダクタンスを小さくするために、1次巻線を2分割して、1次巻線(70ターン)−2次巻線(140ターン)−1次巻線(70ターン)というサンドイッチ巻きとした。
[総高調波歪(THD)の測定]
上記にて作製したトランス試料をオーディオアナライザ(Precision社製 System2)に接続し、THDの測定を行った。本実施例においては、トランス試料の高調波歪を評価するに際して、総高調波歪(THD)を測定し、評価を行った。なお、総高調波歪(THD)は、下記式(1)で算出される。
THD(dB)=20×log[(高調波+ノイズ)/(基本波+高調波+ノイズ)]…式(1)
図9に示すように、1次巻線Npは10Ωの抵抗を直列に接続して、ジェネレータ側の端子t1、t2に接続し、2次巻線Nsは50Ωの抵抗を並列に接続して、アナライザー側の端子t3、t4に接続する。なお測定器のジェネレータ側には40Ωの抵抗が直列に接続されているため、1次巻線には合計で50Ωの抵抗が直列に接続されていることになる。
測定は、端子t1、t2より、トランスの1次巻線Npに、周波数5kHzのデータ信号を、1次巻線の両端の電圧が2.5Vとなるように入力し、このとき、1次巻線Np側から2次巻線Ns側に出力される伝送波形を端子t3、t4より入力し、分析することにより行った。このとき、トランスを図9に示すように、恒温槽THに格納し、25℃に保持して測定した。THDの値は小さい方が好ましい。
なお、一般に、高周波数でTHDの測定を行うと、THDの値が小さくなり、良好な結果となりやすくなる傾向にあるため、トランスのTHD特性に有意差が現れにくい。そのため、トランスのTHD特性に有意差が現れるためには、低周波数で測定を行うことが必要であり、本実施例では、5kHzでTHDの測定を行った。
Figure 2005150425
表1に、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)の異なるギャップ形成面を有するEP型磁心とするトランス試料1〜16のギャップ形成面の表面粗さ(RaG)、基準面の表面粗さ(RaS)およびTHDの測定結果を示した。なお、いずれの試料も基準面の表面粗さ(RaS)は、RaS=0.100μmとした。
本実施例において、トランスを構成する磁心の各基準面(図1において、ギャップ形成面を有するEP型磁心11の外脚部3の基準面31、ギャップ形成面を有しないEP型磁心12の中脚部2の基準面22および外脚部3の基準面31の合計3面)の表面粗さ(RaS)は、同じとした。
表1より、基準面の表面粗さ(RaS)が一定である場合、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を小さくしていくと、THDの値が小さくなっていくことが確認できる。また、この傾向は、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)とTHDの測定結果をグラフ化した図10(本実施例の結果は、図10中において、黒塗りの点で示した)からも明らかである。また、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)がRaG=0.700μm以下である実施例の試料1〜11は、THDの値がいずれも−88.5dB以下となり良好な値となった。
実施例2
ギャップ形成面を有しないEP型磁心とギャップ形成面を有するEP型磁心を作製する際に、以下の条件で基準面の加工およびギャップ形成面の加工を行ったこと以外は、実施例1と同様の条件で磁心を作製し、その磁心を用いてトランス試料を作製し、THDの測定を行った。
基準面の加工は、実施例1と同様にバーチカル加工機により行ったが、本実施例では加工条件を変化させ、基準面の表面粗さ(RaS)の異なるギャップ形成面を有しないEP型磁心を作製した。
さらに、ギャップ形成面を有するEP型磁心を得ることを目的として、上記にて作製したギャップ形成面を有しないEP型磁心それぞれについて、ギャップ形成面の加工を行った。ギャップ形成面の加工は、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が、RaG=0.240μmと一定となるように行った。
すなわち、本実施例においては、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を一定とし、基準面の表面粗さ(RaS)を変化させた磁心を作製し、特性評価を行った。また、本実施例においても、実施例1と同様に各トランス試料を構成する磁心の各基準面(合計3面)の表面粗さ(RaS)は、同じとした。
Figure 2005150425
表2に、基準面の表面粗さ(RaS)の異なるトランス試料3,17〜25のギャップ形成面の表面粗さ(RaG)、基準面の表面粗さ(RaS)およびTHDの測定結果を示した。なお、表2に示した試料は、いずれの試料もギャップ形成面の表面粗さ(RaG)は、RaG=0.240μmとした試料である。
表2より、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が一定である場合、基準面の表面粗さ(RaS)を小さくしていくと、THDの値が小さくなっていくことが確認できる。また、この傾向は、基準面の表面粗さ(RaS)とTHDの値をグラフ化した図10(本実施例の結果は、図10中において、白抜きの点で示した)からも明らかである。また、基準面の表面粗さ(RaS)がRaS=1.000μm以下である実施例の試料3,17〜24は、THDの値がいずれも−88.5dB以下となり良好な値となった。
なお、図10より、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を変化させた場合(黒塗りの点)の近似直線1は、基準面の表面粗さ(RaS)を変化させた場合(白抜きの点)の近似直線2と比較して、傾きが大きいことが確認できる。すなわち、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を変化させた場合のほうが、基準面の表面粗さ(RaS)を変化させた場合と比較して、THDの改善効果が大きい
ことが確認された。したがって、本実施例においては、RaG>RaSである実施例の試料2〜11においても良好な結果が得られており、RaG>RaSとしても、本発明の目的を達成することは可能であるが、上記の結果を考慮すると、RaG≦RaSとすることが、より好ましい。
なお、この理由については必ずしも明らかではないが、EP型の磁心においては、突き合わせ面を有する外脚部より、ギャップが形成されている中脚部の方が磁束が集中するためであると考えられる。
実施例3
ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)をRaG=0.500μmと一定にした以外は、実施例2と同様に磁心を作製し、その磁心を用いてトランス試料を作製し、THDの測定を行った。また、本実施例においても、実施例1、2と同様に各トランスを構成する磁心の各基準面(合計3面)の表面粗さ(RaS)は、同じとした。
Figure 2005150425
表3に、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が、RaG=0.240μmまたは、RaG=0.500μmであり、基準面の表面粗さ(RaS)の異なるトランス試料3,21,25〜28のギャップ形成面の表面粗さ(RaG)、基準面の表面粗さ(RaS)およびTHDの測定結果を示した。
表3より、基準面の表面粗さ(RaS)が、RaS=0.100μmと同じであり、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が異なる試料3,26は、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が小さい試料3の方が、THDが小さい値となった。また、試料21と27、試料25と28においても同様の結果となった。
また、試料21は、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)がRaG=0.240μmであるため、基準面の表面粗さ(RaS)がRaS=0.650μmであるにもかかわらず、基準面の表面粗さ(RaS)がRaS=0.100である試料26と同程度のTHDとすることができた。
つまり、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)を小さくすることにより、基準面の表面粗さ(RaS)を高精度(たとえばRaS=0.100以下)とすることなく、高精度とした場合と同程度のTHDを得ることが可能であるということが確認できた。また、試料25と27についても同様の傾向がみられた。
さらに、この傾向は、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)がRaG=0.240μmである試料とRaG=0.500μmである試料の基準面の表面粗さ(RaS)とTHDとの関係をグラフ化した図11からもこの傾向は、明らかである。つまり、図11より、たとえば、THDの値を−90以下としたい場合においては、RaG=0.500μmである場合には、RaS=0.1μm程度にする必要があるが、RaG=0.240μmである場合には、RaS=0.5μm程度でも十分達成することが可能であるということがわかる。
実施例4
ギャップ形成面を有するEP型磁心を作製する際に、以下の条件でギャップ形成面の加工を行ったこと以外は、実施例1と同様の条件で磁心を作製し、その磁心を用いてトランス試料を作製し、THDの測定を行った。
ギャップ形成面の加工は、実施例1と同様にMGL加工により行ったが、MGL加工する際に使用する研削砥石の研磨砥粒の粒度をそれぞれ#200、#300、#400、#600、#800と変化させ、それ以外の加工条件を一定とすることにより行った。なお、基準面の表面粗さ(RaS)は、RaS=0.100μmとし、本実施例においても、実施例1と同様に各トランスを構成する磁心の各基準面(合計3面)の表面粗さ(RaS)は、同じとした。
Figure 2005150425
表4に研磨砥粒の粒度を変化させた試料29〜33の研磨砥石の粒度、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)、基準面の表面粗さ(RaS)およびTHDの測定結果を示した。
表4より、使用する研磨砥石の粒度を細かくすると、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が小さくなり、THDも小さくなることが確認できた。特に、粒度を#400、#600、#800とした試料は、ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)がRaG=0.700以下、THDが−88.5dB以下となり良好な結果となった。
図1(a)、(b)は本発明の一実施形態に係るギャップ形成面を有するEP型磁心の斜視図および正面図、図1(c)、(d)はギャップ形成面を有しないEP型磁心の斜視図および正面図である。 図2(a)、(b)はギャップ形成面を有するEP型磁心とギャップ形成面を有しないEP型磁心を突き合わせ面で組み合わせる前後の状態を示す正面図である。 図3は本発明の実施形態に係るトランス用磁心のギャップ形成面の加工方法の例を示す図である。 図4は本発明の実施形態に係るトランス用磁心のギャップ形成面の加工方法の例を示す図である。 図5(a)〜(e)は本発明の実施形態に係るトランス用磁心の例を示す図である。 図6は本発明の実施形態に係るトランス用磁心の基準面およびギャップ形成面の加工方法の例を示す図である。 図7は本発明の実施形態に係るトランス用磁心の基準面およびギャップ形成面の加工方法の例を示す図である。 図8(a)、(b)は本発明の実施例において作製したEP型磁心の寸法を説明するための図である。 図9は本発明の実施例においてTHD測定を行った回路図である。 図10は本発明の実施例におけるギャップ形成面および基準面の表面粗さとTHDとの関係を示すグラフである。 図11は本発明の実施例における基準面の表面粗さとTHDとの関係を示すグラフである。
符号の説明
1… トランス用磁心
11… ギャップ形成面を有するEP型磁心
12… ギャップ形成面を有しないEP型磁心
13… E型の磁心
131… 中脚部
132… 外脚部
2… 中脚部
21… ギャップ形成面
22… 基準面
3… 外脚部
31… 基準面
4… 底板
5,6… 研削砥石
7… 研削台
8a,8b… 研削砥石
9… マグネットチャック

Claims (13)

  1. インダクタンス調整用のギャップを有するトランス用磁心であって、前記ギャップを構成するギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が、RaG≦0.70μmであることを特徴とするトランス用磁心。
  2. 基準面とギャップ形成面とを有し、前記基準面と前記ギャップ形成面との高さの差であるギャップを有する分割型のトランス用磁心であって、前記ギャップを構成するギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が、RaG≦0.70μmであることを特徴とするトランス用磁心。
  3. 前記ギャップを構成するギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が、RaG≦0.45μmである請求項1または2に記載のトランス用磁心。
  4. 前記ギャップを構成するギャップ形成面の表面粗さ(RaG)が、RaG≧0.005μmである請求項1〜3のいずれかに記載のトランス用磁心。
  5. 前記基準面の表面粗さ(RaS)が、0.005μm≦RaS≦1.0μmである請求項2〜4のいずれかに記載のトランス用磁心。
  6. 前記ギャップ形成面の表面粗さ(RaG)と前記基準面の表面粗さ(RaS)との関係が、RaG≦RaSの関係である請求項2〜4のいずれかに記載のトランス用磁心。
  7. 前記トランス用磁心が、Mn−Zn系フェライトで構成されている請求項1〜6のいずれかに記載のトランス用磁心。
  8. 前記Mn−Zn系フェライトが、酸化鉄をFe換算で51.0〜55.0mol%、酸化マンガンをMnO換算で20.0〜30.0mol%、酸化亜鉛をZnO換算で18.0〜25.0mol%含有する請求項7に記載のトランス用磁心。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のトランス用磁心の周囲にコイルを巻回してあるトランス。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載のトランス用磁心と、前記トランス用磁心に組み合わされる他のトランス用磁心とを有し、組み合わされたトランス用磁心の周囲にコイルが巻回してあるトランス。
  11. 前記トランスが、通信用の伝送トランスである請求項9または10に記載のトランス。
  12. 請求項1〜8のいずれか記載のトランス用磁心の製造方法であって、前記ギャップを構成するギャップ形成面を研磨砥粒の粒度が#400〜#8000(JIS−R6001)である研削砥石を使用して研磨することを特徴とするトランス用磁心の製造方法。
  13. 前記研削砥石として、研磨砥粒の粒度が#600〜#8000(JIS−R6001)である研削砥石を使用することを特徴とする請求項12に記載のトランス用磁心の製造方法。
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