JP2005146019A - プロトン伝導膜の製造方法 - Google Patents

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幸平 後藤
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Abstract

【課題】 プロトン伝導膜の酸濃度を上げることなく、機械的強度およびプロトン伝導性に優れたプロトン伝導膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明のプロトン伝導膜の製造方法は、(a)イオン伝導成分を有するポリマー100重量部と、(b)分子量1000以上の水溶性有機化合物1〜100重量部と、(c)有機溶媒とを含む塗布液を基体に塗布し、有機溶媒(c)を除去して乾燥塗膜を形成した後、水溶性有機化合物(b)を除去することを特徴とする。また、前記乾燥塗膜から水溶性化合物(b)を除去する方法は、溶媒抽出であることが好ましく、溶媒抽出に用いられる溶媒は、温度が10〜100℃、かつ、pHが1〜7の範囲の水であることが望ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、プロトン伝導性および機械的強度に優れたプロトン伝導膜の製造方法に関する。
電解質は、通常、(水)溶液で用いられることが多い。しかし、近年、これを固体系に置き替えていく傾向が高まってきている。その第1の理由としては、たとえば、上記の電気・電子材料に応用する場合のプロセッシングの容易さであり、第2の理由としては、軽薄短小・省電力化への移行である。
従来、プロトン伝導性材料としては、無機物からなるもの、有機物からなるものの両方が知られている。無機物の例としては、たとえば水和化合物であるリン酸ウラニルが挙げられるが、これら無機化合物は界面での接触が十分ではなく、伝導層を基板あるいは電極上に形成するには問題が多い。
一方、有機化合物の例としては、いわゆる陽イオン交換樹脂に属するポリマー、たとえばポリスチレンスルホン酸などのビニル系ポリマーのスルホン化物、ナフィオン(商標、デュポン社製)を代表とするパーフルオロアルキルスルホン酸ポリマー、パーフルオロアルキルカルボン酸ポリマー、およびポリベンズイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱性高分子にスルホン酸基またはリン酸基を導入したポリマー〔Polymer Preprints, Japan, Vol.42, No.7, p.2490〜2492 (1993)、Polymer Preprints, Japan, Vol.43, No.3, p.735〜736 (1994)、Polymer Preprints, Japan, Vol.42, No.3, p.730 (1993)〕などの有機系ポリマーが挙げられる。
これら有機系ポリマーは、通常、フィルム状で電解質として用いられるが、溶媒に可溶性であること、または熱可塑性であることを利用して、電極上に伝導膜を接合加工できるという利点がある。しかしながら、これら有機系ポリマーの多くは、プロトン伝導性がまだ十分でないことに加え、耐久性や高温(100℃以上)でプロトン伝導性が低下してしまうこと、スルホン化により脆化し、機械的強度が低下すること、湿度条件下の依存性が大きいことなどの問題、あるいは電極との密着性が十分満足のいくものとはいえなかったり、含水ポリマー構造に起因する稼働中の過度の膨潤による強度の低下や形状の崩壊に至ったりするという問題がある。したがって、これらの有機ポリマーは、上記の電気・電子材料などに応用するには種々問題がある。
米国特許第5,403,675号公報(特許文献1)には、スルホン化された剛直ポリフェニレ
ンからなる固体高分子電解質が開示されている。このポリマーは、フェニレン連鎖からなる芳香族化合物を重合して得られるポリマーを主成分とし、これをスルホン化剤と反応させてスルホン酸基を導入している。しかしながら、スルホン酸基の導入量の増加によって、プロトン伝導度が向上するものの、同時に得られるスルホン化ポリマーの機械的性質、例えば破断伸び、耐折り曲げ性等の靭性や耐熱水性は著しく損なわれるという問題がある。
米国特許第5,403,675号公報
本発明の課題は、プロトン伝導膜の酸濃度を上げることなく、機械的強度およびプロトン伝導性に優れたプロトン伝導膜の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、このような従来技術における問題点に鑑み鋭意検討した結果、イオン伝導成分を有するポリマーと、分子量1000以上の水溶性有機化合物とを有機溶剤により均一に溶解させた塗布液を基板などに塗布し、溶媒を乾燥して、分子量1000以上の水溶性有機化合物をイオン伝導成分近傍に残存させ、次いで、それらを溶媒抽出により除去することにより、イオン伝導成分近傍に水分を保持しやすい構造が形成されるため、プロトン伝導膜の酸濃度を上げることなく、優れた機械的強度およびプロトン伝導度を有するプロトン伝導膜が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のプロトン伝導膜の製造方法は、
(a)イオン伝導成分を有するポリマーと、(b)分子量1000以上の水溶性有機化合物と、(c)有機溶媒とを含む塗布液を基体に塗布し、該有機溶媒(c)を除去して乾燥塗膜を形成した後、該水溶性有機化合物(b)を除去することを特徴とする。
また、前記塗布液中には、前記水溶性有機化合物(b)が、前記ポリマー(a)100重量部に対して0.1〜100重量部の割合で含まれていることが好ましい。
さらに、前記乾燥塗膜中には、前記水溶性有機化合物(b)が、前記ポリマー(a)100重量部に対して0.01〜100重量部の割合で含まれていることが好ましい。
また、前記乾燥塗膜から水溶性有機化合物(b)を除去する方法が、溶媒抽出であることが好ましく、該溶媒抽出に用いられる溶媒は、温度が10〜100℃、かつ、pHが1〜7の範囲の水であることが望ましい。
本発明によれば、イオン伝導成分近傍に水分を充分に保持することができるため、機械的強度の低下を招くことなく、十分なプロトン伝導度を発現するプロトン伝導膜が得られる。
本発明の製造方法により得られたプロトン伝導膜は、例えば一次電池用電解質、二次電池用電解質、表示素子、各種センサー、信号伝達媒体、固体コンデンサー、イオン交換膜などに用いられているプロトン伝導膜として利用可能である。
以下、本発明に係るプロトン伝導膜の製造方法について詳細に説明する。
本発明に係るプロトン伝導膜の製造方法は、(a)イオン伝導成分を有するポリマーと、
(b)分子量1000以上の水溶性有機化合物と、(c)有機溶媒とを含む塗布液を基体に塗布し、該有機溶媒(c)を除去して乾燥塗膜を形成した後、該水溶性有機化合物(b)を溶媒抽出により除去することを特徴とする。
<イオン伝導成分を有するポリマー(a)>
本発明で用いられるイオン伝導成分を有するポリマー(a)におけるイオン伝導成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基およびホスホン酸基などが挙げられる。
本発明で用いられるイオン伝導成分を有するポリマー(a)におけるベースとなるポリマーも、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエス
テル、ポリアリーレン、これらの共重合体もしくはブレンド物などが挙げられる。
本発明で用いられるイオン伝導成分を有するポリマー(a)は、好ましくは、イオン伝導成分基を有するポリマーセグメント(A)とイオン伝導成分基を有さないポリマーセグ
メント(B)とからなるポリマーであり、より好ましくは、上記ポリマーセグメント(A
)とポリマーセグメント(B)とが共有結合しているブロック共重合体であり、特に好ま
しくは、下記一般式(A)で表される構成単位と、下記一般式(B)で表される構成単位とを含む下記一般式(C)で表されるスルホン酸基を有するポリアリーレンである。
[スルホン酸基を有するポリアリーレン]
本発明で特に好ましく用いられるスルホン酸基を有するポリアリーレンは、下記一般式(A)で表される構成単位と、下記一般式(B)で表される構成単位とを含む下記一般式(C)で表される重合体である。
Figure 2005146019
式(A)中、Yは2価の電子吸引性基を示し、具体的には−CO−、−SO2−、−S
O−、−CONH−、−COO−、−(CF2)l−(ここで、lは1〜10の整数である)、−C(CF32−などが挙げられる。
Zは2価の電子供与性基または直接結合を示し、電子供与性基の具体例としては、
−(CH2)−、−C(CH32−、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C―およ
Figure 2005146019
などが挙げられる。なお、電子吸引性基とは、ハメット(Hammett)置換基常数がフェニ
ル基のm位の場合0.06以上、p位の場合0.01以上の値となる基をいう。
Arは−SO3Hで表される置換基を有する芳香族基を示し、芳香族基として具体的に
はフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナンチル基などが挙げられる。これらの基のうち、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
mは0〜10、好ましくは0〜2の整数、nは0〜10、好ましくは0〜2の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。
Figure 2005146019
式(B)中、R1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基、アリール基およびシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基などが好ましい。
フッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられ、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが好ましい。
アリル基としては、プロペニル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
Wは2価の電子吸引性基または単結合を示し、Tは2価の有機基または単結合を示す。
pは0または正の整数であり、上限は通常100、好ましくは10〜80である。
Figure 2005146019
式(C)中、W、T、Y、Z、Ar、m、n、k、pおよびR1〜R8は、それぞれ上記一般式(A)および(B)中のW、T、Y、Z、Ar、m、n、k、pおよびR1〜R8と同義である。
本発明で用いられるスルホン酸基を有するポリアリーレンは、式(A)で表される構成単位を0.5〜100モル%、好ましくは10〜99.999モル%の割合で、式(B)で表される構成単位を99.5〜0モル%、好ましくは90〜0.001モル%の割合で
含有している。
[スルホン酸基を有するポリアリーレンの製造方法]
スルホン酸基を有するポリアリーレンは、上記一般式(A)で表される構造単位となりうるスルホン酸エステル基を有するモノマーと、上記一般式(B)で表される構造単位となりうるオリゴマーとを共重合させ、スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを製造し、このスルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを加水分解して、スルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換することにより合成することができる。
また、スルホン酸基を有するポリアリーレンは、上記一般式(A)においてスルホン酸基およびスルホン酸エステル基を有しない構造単位と、上記一般式(B)の構造単位とからなるポリアリーレンを予め合成し、この重合体をスルホン化することにより合成することもできる。
上記一般式(A)の構造単位となりうるモノマーとしては、例えば、下記一般式(D)で表されるスルホン酸エステル(以下、モノマー(D)ともいう。)が挙げられる。
Figure 2005146019
式(D)中、Xはフッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2G(
ここで、Gはアルキル基、フッ素置換アルキル基またはアリール基を示す。)から選ばれる原子または基を示し、Y、Z、Ar、m、nおよびkは、それぞれ上記一般式(A)中のY、Z、Ar、m、nおよびkと同義である。
aは炭素原子数1〜20、好ましくは4〜20の炭化水素基を示し、具体的には、メ
チル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert-ブチル基、iso-ブチル
基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチル基、アダマンタンメチル基、2−エチルヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]へプチル基、ビシクロ[2.2.1]へプチルメチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メチルブチル基、3,3−ジメチル−2,4−ジオキソランメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基などの直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、脂環式炭化水素基、5員の複素環を有する炭化水素基などが挙げられる。これらの中では、n−ブチル基、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、特にネオペンチル基が好ましい。
Arは−SO3bで表わされる置換基を有する芳香族基を示し、芳香族基として具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナンチル基などが挙げられる。これらの基のうち、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
置換基−SO3bは、芳香族基に1個または2個以上置換しており、置換基−SO3b
が2個以上置換している場合には、これらの置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
ここで、Rbは炭素原子数1〜20、好ましくは4〜20の炭化水素基を示し、具体的
には上記炭素原子数1〜20の炭化水素基などが挙げられる。これらの中では、n−ブチル基、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、特にネオペンチル基が好ましい。
mは0〜10、好ましくは0〜2の整数、nは0〜10、好ましくは0〜2の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。
式(D)で表されるスルホン酸エステルの具体例としては、以下の様な化合物が挙げられる。
Figure 2005146019
Figure 2005146019
Figure 2005146019
Figure 2005146019
Figure 2005146019
Figure 2005146019
Figure 2005146019
Figure 2005146019
Figure 2005146019
また、上記化合物において塩素原子が臭素原子に置き換わった化合物、上記化合物において−CO−が−SO2−に置き換わった化合物、上記化合物において塩素原子が臭素原
子に置き換わり、かつ−CO−が−SO2−に置き換わった化合物なども挙げられる。
一般式(D)中のRb基は1級のアルコール由来で、β炭素が3級または4級炭素であ
ることが、重合工程中の安定性に優れ、脱エステル化によるスルホン酸の生成に起因する重合阻害や架橋を引き起こさない点で好ましく、さらには、これらのエステル基は1級アルコール由来でβ位が4級炭素であることが好ましい。
また、上記一般式(D)において、スルホン酸基およびスルホン酸エステル基を有しない化合物の具体例としては、下記の様な化合物が挙げられる。
Figure 2005146019
Figure 2005146019
上記化合物において塩素原子が臭素原子に置き換わった化合物、上記化合物において
−CO−が−SO2−に置き換わった化合物、上記化合物において塩素原子が臭素原子に
置き換わり、かつ−CO−が−SO2−に置き換わった化合物なども挙げられる。
上記一般式(B)の構造単位となりうるオリゴマーとしては、例えば下記一般式(E)で表されるオリゴマー(以下、オリゴマー(E)ともいう。)が挙げられる。
Figure 2005146019
式(E)中、R'およびR''は互いに同一でも異なっていてもよく、フッ素原子を除く
ハロゲン原子または−OSO2G(ここで、Gはアルキル基、フッ素置換アルキル基また
はアリール基を示す。)で表される基を示す。Gが示すアルキル基としてはメチル基、エチル基などが挙げられ、フッ素置換アルキル基としてはトリフルオロメチル基などが挙げられ、アリール基としてはフェニル基、p−トリル基などが挙げられる。
1〜R8は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アリル基、アリール基およびシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基などが挙げられ、メチル基、エチル基などが好ましい。
フッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられ、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが好ましい。
アリル基としては、プロペニル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
Wは2価の電子吸引性基または単結合を示し、電子吸引性基としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
Tは2価の有機基または単結合であって、電子吸引性基であっても電子供与性基であってもよい。電子吸引性基および電子供与性基としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
pは0または正の整数であり、上限は通常100、好ましくは10〜80である。
上記一般式(E)で表される化合物として具体的には、p=0の場合、例えば4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンズアニリド、ビス(クロロフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−クロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4−ク
ロロ安息香酸−4−クロロフェニル、ビス(4−クロロフェニル)スルホキシド、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが挙げられる。これらの化合物において塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物、さらにこれらの化合物において4位に置換したハロゲン原子の少なくとも1つ以上が3位に置換した化合物などが挙げられる。
またp=1の場合、上記一般式(E)で表される具体的な化合物としては、例えば4,
4'−ビス(4−クロロベンゾイル)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロベ
ンゾイルアミノ)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジフェニルエーテル、4,4'−ビス(4−クロロフェニル)ジフェニルエーテルジカルボキシレート、4,4'−ビス〔(4−クロロフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフル
オロプロピル〕ジフェニルエーテル、4,4'−ビス〔(4−クロロフェニル)テトラフルオロエチル〕ジフェニルエーテル、これらの化合物において塩素原子が臭素原子またはヨウ素原子に置き換わった化合物、さらにこれらの化合物において4位に置換したハロゲン原子が3位に置換した化合物、さらにこれらの化合物においてジフェニルエーテルの4位に置換した基の少なくとも1つが3位に置換した化合物などが挙げられる。
さらに上記一般式(E)で表される化合物としては、2,2−ビス[4−{4−(4−
クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロ
パン、ビス[4−{4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ}フェニル]スルホン、および下記式で表される化合物などが挙げられる。
Figure 2005146019
Figure 2005146019
Figure 2005146019
上記一般式(E)で表される化合物は、例えば以下に示す方法で合成することができる。
まず電子吸引性基で連結されたビスフェノールを、対応するビスフェノールのアルカリ金属塩とするために、N−メチル−2−ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキサイドなどの誘電率の高い極性溶媒中でリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩などを加える。
アルカリ金属はフェノールの水酸基に対して過剰気味で反応させ、通常、1.1〜2倍当量、好ましくは1.2〜1.5倍当量で用いる。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどの水と共沸する溶媒を共存させて、電子吸引性基で活性化されたフッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された芳香族ジハライド化合物、例えば、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−クロロフルオロベンゾフェノン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、4−フルオロフェニル−4'−クロロフェニルスルホン、ビス
(3−ニトロ−4−クロロフェニル)スルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、ヘキサフルオロベンゼン、デカフルオロビフェニル、2,
5−ジフルオロベンゾフェノン、1,3−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼンなどを
反応させる。反応性から言えば、フッ素化合物が好ましいが、次の芳香族カップリング反応を考慮した場合、末端が塩素原子となるように芳香族求核置換反応を組み立てる必要がある。
活性芳香族ジハライドはビスフェノールに対し、2〜4倍モル、好ましくは2.2〜2.8倍モルの使用である。芳香族求核置換反応の前に予め、ビスフェノールのアルカリ金属塩としていてもよい。反応温度は60℃〜300℃で、好ましくは80℃〜250℃の範囲である。反応時間は15分〜100時間、好ましくは1時間〜24時間の範囲である。最も好ましい方法としては、下記式で示される活性芳香族ジハライドとして反応性の異なるハロゲン原子を一個ずつ有するクロロフルオロ体を用いることであり、フッ素原子が優先してフェノキシドと求核置換反応が起きるので、目的の活性化された末端クロロ体を得るのに好都合である。
Figure 2005146019
(式中、Wは一般式(E)に関して定義した通りである。)
また、特開平2−159号公報に記載のように求核置換反応と親電子置換反応を組み合わせて、目的の電子吸引性基および電子供与性基からなる屈曲性化合物を合成してもよい。
具体的には、電子吸引性基で活性化された芳香族ビスハライド、例えばビス(4−クロロフェニル)スルホンをフェノールで求核置換反応させてビスフェノキシ化合物とし、次いで、このビスフェノキシ化合物と4−クロロ安息香酸クロライドとのフリーデルクラフト反応から目的の化合物を得ることができる。
ここで用いる電子吸引性基で活性化された芳香族ビスハライドとしては、上記で例示した化合物が挙げられる。フェノール化合物は置換されていてもよいが、耐熱性や屈曲性の観点から無置換化合物が好ましい。なお、フェノールの置換反応にはアルカリ金属塩とすることが好ましく、使用可能なアルカリ金属化合物としては、上記で例示した化合物が挙げられる。使用量はフェノール1モルに対し、1.2〜2倍モルである。反応に際し、上述した極性溶媒や水との共沸溶媒を用いることができる。
クロロ安息香酸クロライドは、ビスフェノキシ化合物に対し2〜4倍モル、好ましくは2.2〜3倍モルで使用される。また、ビスフェノキシ化合物と、アシル化剤であるクロロ安息香酸クロライドとのフリーデルクラフト反応は、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛などのフリーデルクラフト活性化剤の存在下で行うことが好ましい。フリーデルクラフト活性化剤は、アシル化剤のクロロ安息香酸などの活性ハライド化合物1モルに対し、1.1〜2倍当量使用する。反応時間は15分〜10時間の範囲で、反応温度は−20℃から80℃の範囲である。使用溶媒は、フリーデルクラフト反応に不活性な、クロロベンゼンやニトロベンゼンなどを用いることができる。
また、一般式(E)において、pが2以上である化合物は、例えば、一般式(E)において電子供与性基Tであるエーテル性酸素の供給源となるビスフェノールと、電子吸引性基Wである、>C=O、−SO2−および>C(CF32から選ばれる少なくとも1種の
基とを組み合わせた化合物、具体的には2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケト
ン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビスフェノールのアルカリ
金属塩と、過剰の4,4−ジクロロベンゾフェノン、ビス(4−クロロフェニル)スルホンなどの活性芳香族ハロゲン化合物との置換反応を、N−メチル−2−ピロリドン、N,N
−ジメチルアセトアミド、スルホランなどの極性溶媒の存在下で前記単量体の合成手法に順次重合して得られる。
このような化合物の例示としては、下記式で表される化合物などを挙げることができる。
Figure 2005146019
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上記において、pは0または正の整数であり、上限は通常100、好ましくは10〜80である。
上記スルホン酸エステル基を有するポリアリーレン(C)は、モノマー(D)とオリゴマー(E)とを触媒の存在下に反応させることにより合成されるが、この際使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、(1)遷移金属塩および配位子となる化合物(以下、「配位子成分」という。)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)、および(2)還元剤を必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために、「塩」を添加してもよい。
ここで、遷移金属塩としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセチルアセトナートなどのニッケル化合物;塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウムなどのパラジウム化合物;塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄などの鉄化合物;塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルトなどのコバルト化合物などが挙げられる。これらのうち特に、塩化ニッケル、臭化ニッケルなどが好ましい。
また、配位子成分としては、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジン、1,5−
シクロオクタジエン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンなどが挙げられる
。これらのうち、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジンが好ましい。上記配位子成分である化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
さらに、配位子が配位された遷移金属錯体としては、例えば、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケル
ビス(トリフェニルホスフィン)、硝酸ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、臭化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ヨウ化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、硝酸ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ビス(1,5−シク
ロオクタジエン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどが挙げられる。これらのうち、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)が好ましい。
上記触媒系に使用することができる還元剤としては、例えば、鉄、亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどが挙げられる。これらのうち、亜鉛、マグネシウム、マンガンが好ましい。これらの還元剤は、有機酸などの酸に接触させることにより、より活性化して用いることができる。
また、上記触媒系において使用することのできる「塩」としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのナトリウム化合物;フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム化合物;フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウムなどのアンモニウム化合物などが挙げられる。これらのうち、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムが好ましい。
各成分の使用割合は、遷移金属塩または遷移金属錯体が、上記モノマーの総計((D)+(E)、以下同じ)1モルに対し、通常、0.0001〜10モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。0.0001モル未満では、重合反応が十分に進行しないことがあり、一方、10モルを超えると、分子量が低下することがある。
触媒系において、遷移金属塩および配位子成分を用いる場合、この配位子成分の使用割合は、遷移金属塩1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、触媒活性が不十分となることがあり、一方、100モルを超えると、分子量が低下することがある。
また、還元剤の使用割合は、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、重合が十分進行しないことがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難になることがある。
さらに、「塩」を使用する場合、その使用割合は、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.001〜100モル、好ましくは0.01〜1モルである。0.001モル未満では、重合速度を上げる効果が不十分であることがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難となることがある。
モノマー(D)とオリゴマー(E)とを反応させる際に使用することのできる重合溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,
N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリド
ン、γ−ブチロラクトン、N,N'−ジメチルイミダゾリジノンなどが挙げられる。これらのうち、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N'−ジメチルイミダゾリジノンが好ましい。これらの重合溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。
重合溶媒中における上記モノマーの総計の濃度は、通常、1〜90重量%、好ましくは
5〜40重量%である。
重合する際の重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは50〜120℃である。また、重合時間は、通常、0.5〜100時間、好ましくは1〜40時間である。
モノマー(D)を用いて得られたスルホン酸エステル基を有するポリアリーレンは、スルホン酸エステル基を加水分解して、スルホン酸基に変換することによりスルホン酸基を有するポリアリーレンとすることができる。
加水分解の方法としては、
(1)少量の塩酸を含む過剰量の水またはアルコールに、上記スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを投入し、5分間以上撹拌する方法
(2)トリフルオロ酢酸中で、上記スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを80〜120℃程度の温度で5〜10時間程度反応させる方法
(3)スルホン酸エステル基を有するポリアリーレン中のスルホン酸エステル基(−SO3R)1モルに対して1〜3倍モルのリチウムブロマイドを含む溶液、例えばN−メチル
ピロリドンなどの溶液中で、上記ポリアリーレンを80〜150℃程度の温度で3〜10時間程度反応させた後、塩酸を添加する方法
などを挙げることができる。
上記スルホン酸基を有するポリアリーレン(C)は、上記一般式(D)で表されるモノマー(D)においてスルホン酸エステル基を有しないモノマーと、上記一般式(E)で表されるオリゴマー(E)とを共重合させることによりポリアリーレン系共重合体を予め合成し、このポリアリーレン系共重合体をスルホン化することにより合成することもできる。この場合、上記合成方法に準じた方法によりスルホン酸基を有しないポリアリーレンを製造した後、スルホン化剤を用い、スルホン酸基を有しないポリアリーレンにスルホン酸基を導入することにより、スルホン酸基を有するポリアリーレンを得ることができる。
このスルホン化の反応条件としては、スルホン酸基を有しないポリアリーレンを、無溶剤下または溶剤存在下でスルホン化剤を用い、常法によりスルホン酸基を導入することにより得ることが出来る。
スルホン酸基を導入する方法としては、例えば、上記スルホン酸基を有しないポリアリーレンを、無水硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸、硫酸、亜硫酸水素ナトリウムなどの公知のスルホン化剤を用いて、公知の条件でスルホン化することができる〔Polymer Preprints, Japan, Vol.42, No.3, p.730 (1993);Polymer Preprints, Japan, Vol.43, No.3, p.736 (1994);Polymer Preprints, Japan, Vol.42, No.7, p.2490〜2492 (1993)〕。
すなわち、このスルホン化の反応条件としては、上記スルホン酸基を有しないポリアリーレンを、無溶剤下または溶剤存在下で、上記スルホン化剤と反応させる。用いられる溶剤としては、例えば、n−ヘキサンなどの炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのような非プロトン系極性溶剤、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。反応温度は特に制限はないが、通常、−50〜200℃、好ましくは−10〜100℃である。また、反応時間は、通常、0.5〜1,000時間、好ましくは1〜200時間である。
上記のような方法により製造されるスルホン酸基を有するポリアリーレン(C)中の、スルホン酸基量は通常0.3〜5meq/g、好ましくは0.5〜3meq/g、さらに好ましくは0.8〜2.8meq/gである。0.3meq/g未満では、プロトン伝導
度が低く実用的ではない。一方、5meq/gを超えると、耐水性が大幅に低下してしまうことがあるため好ましくない。
上記のスルホン酸基量は、例えばモノマー(D)およびオリゴマー(E)の種類、使用割合、組み合わせを変えることにより、調整することができる。
このようにして得られるスルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万、好ましくは2万〜80万である。
スルホン酸基を有するポリアリーレンには、老化防止剤、好ましくは分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物を含有させて使用してもよく、老化防止剤を含有することで電解質としての耐久性をより向上させることができる。
本発明で使用することのできるヒンダードフェノール系化合物としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5
−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 259
)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン(商品名:IRGANOX 565)、ペンタエリスリチルーテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4
−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(商品名:IRGANOX
1076)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(IRGAONOX 1098)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:IRGANOX 1330)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト(商品名:IRGANOX 3114)、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチ
ルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:Sumilizer GA-80)などを挙げることができる。
本発明において、スルホン酸基を有するポリアリーレン100重量部に対してヒンダードフェノール系化合物は0.01〜10重量部の量で使用することが好ましい。
<水溶性有機化合物(b)>
本発明で用いられる分子量1000以上の水溶性有機化合物は、水溶性溶媒、その中でも水に溶解しうるものであれば、特に限定されるものではないが、鎖状で、架橋のない高分子で−OH、−CONH2、−COOH、−NH2、−COO−、−SO3−、−NR3+
などのような親水基を含むものが挙げられる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビニルアルキルエーテル、アリルアミン、ビニルエステル、ビニルピロリドン、グリセリン、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体などからなる分子量1000以上の重合体または共重合体などが挙げられる。
具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体のアルコール付加物、ポリビニルメチルエーテル、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリグリセリン等が挙げられる。また、β−シクロデキストリン、γーシクロデキストリンなどの糖
類も挙げられる。
上記水溶性有機化合物およびそれらの誘導体は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
上記水溶性有機化合物(b)は、イオン伝導成分を有するポリマー(a)を溶解する有機溶媒(c)に溶解できること、キャスト溶媒の乾燥温度以下で安定であること、酸性条件下で安定であることが好ましい。
また、上記水溶性有機化合物(b)の分子量は1000以上、好ましくは1000〜100万、より好ましくは1000〜50万の範囲である。上記水溶性有機化合物が上記範囲内であると、塗布液(プロトン伝導体組成物)の保存安定性に優れるため好ましい。一方、上記分子量が1000未満であると、経時的に塗布液中で結晶化し、保存安定性に問題が発生する場合がある。
<塗布液(プロトン伝導体組成物)>
本発明で用いられる塗布液(以下、プロトン伝導体組成物ともいう。)は、上記イオン伝導成分を有するポリマー(a)と、分子量1000以上の水溶性有機化合物(b)とを有機溶媒(c)により溶解した均一な溶液からなる。
上記塗布液のポリマー濃度は、イオン伝導成分を有するポリマー(a)の分子量にもよるが、通常5〜40重量%、好ましくは7〜25重量%である。5重量%未満では、厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすい。一方、40重量%を超えると、溶液粘度が高すぎてフィルム化し難く、また、表面平滑性に欠けることがある。
上記水溶性有機化合物(b)は、ポリマー(a)100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは5〜60重量部の割合で、上記塗布液に含まれていることが望ましい。
また、上記水溶性有機化合物(b)は、上記塗布液を基体に塗布し溶媒を乾燥した乾燥塗膜(フィルム)中に、ポリマー(a)100重量部に対して0.01〜100重量部、好ましくは5〜60重量部の割合で含まれていることが望ましい。
上記範囲内に水溶性有機化合物(b)が、塗布液および乾燥塗膜(フィルム)中に含まれていることにより、水溶性有機化合物(b)を抽出除去した後の膜において、イオン伝導成分近傍に水分を保持しやすい構造が形成されるため、十分なプロトン伝導度を得ることができる。また、上記範囲未満であると、イオン伝導成分近傍に水分を保持しやすい構造が十分に形成されないため、プロトン伝導度の向上効果が低くなることがある。一方、上記範囲を超えると膜の膨潤による寸法変化が大きくなり、燃料電池の発電中に電極層面からの剥れ、電極層のひび割れなどが発生する傾向にある。
なお、本発明で用いられる塗布液の溶液粘度は、ポリマー(a)の分子量および濃度、水溶性有機化合物(b)の含有割合によっても異なるが、通常2,000〜100,000mPa・s、好ましくは3,000〜50,000mPa・sである。2,000mPa・s未満では、加工中の溶液の滞留性が悪く、基体から流れてしまうことがある。一方、100,000mPa・sを超えると、粘度が高過ぎるため、ダイからの押し出しができず、流延法によるフィルム化が困難となることがある。
上記塗布液に用いられる有機溶媒(c)としては、上記ポリマー(a)および水溶性有機化合物(b)を均一に溶解できる有機溶媒であれば、特に制限されるものではなく、
例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール
、シクロヘキサノール、ジシクロヘキサノール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1.3―ブタンジオール、グリセロール、m−クレゾール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチルラクテート、n―ブチルラクテート、ジアセトンアルコール、ジオキサン、ブチルエーテル、フェニルエーテル、イソペンチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、シネオール、ベンジルエチルエーテル、フラン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール、アセタール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、
2−オクタノン、アセトフェノン、メシチルオキサイド、ベンズアルデヒド、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸イソアミル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセタート、酪酸メチル、酪酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ―ブチロラクトン、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジメチルジエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルサルフィド、アセトニトリル、ブチロニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、2−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、シメチルアセアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記有機溶媒(c)は、上記イオン伝導成分を有するポリマーおよび上記水溶性化合物に対する溶解性の点で、水溶性の非プロトン性有機溶媒を含有することが好ましい。
本発明で用いられる塗布液は、例えば、ウエーブローター、ホモジナイザー、ディスパーサー、ペイントコンディショナー、ボールミルなどの混合機を用いて、上記各成分を混合することにより調製することができる。また、各成分を同時に混合せずに、例えば、水溶性有機化合物(b)を上記有機溶媒(c)に均一に溶解したものを、イオン伝導成分を有するポリマー溶液に混合・攪拌して塗布液を調製してもよい。
<プロトン伝導膜の製造方法>
本発明に係るプロトン伝導膜の製造方法は、上記プロトン伝導体組成物(塗布液)を用いて乾燥塗膜(フィルム)を形成し、上記水溶性有機化合物(b)を除去することを特徴とする。
上記プロトン伝導体組成物を用いて乾燥塗膜(フィルム)を形成する方法としては、上記プロトン伝導体組成物を基体上に流延してフィルム状に成形するキャスティング法などが挙げられる。
上記基体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが挙げられるが、通常の溶液キャスティング法に用いられる基体、例えばプラスチック製基体、金属製
基体などであれば、特に制限されるものではない。
上記キャスティング法による製膜後、30〜160℃、好ましくは50〜150℃で、3〜180分、好ましくは5〜120分乾燥することにより、溶媒を乾燥したフィルムを得ることができる。このとき、キャスト溶媒が完全に除去されている必要はなく、フィルム状に成形されていればよいが、キャスト溶媒が除去されていることが好ましい。また、水溶性有機化合物(b)が析出していても析出していなくてもよい。
上記乾燥後のフィルムから水溶性有機化合物(b)を除去する方法としては、フィルムを溶媒に浸漬して水溶性有機化合物(b)を抽出除去する溶媒抽出法が挙げられる。溶媒抽出に用いられる抽出溶媒としては、イオン伝導成分を有するポリマー(a)を溶解せず、水溶性有機化合物(b)を溶解することができる溶媒、好ましくは水が挙げられる。
抽出溶媒として好ましく用いられる水の温度は、10〜100℃、好ましくは20〜95℃である。水の温度が上記範囲未満であると水溶性有機化合物(b)の抽出速度が遅く、抽出処理時間が長くなり、フィルムの劣化が懸念される。一方、上記範囲を超えると、水溶性化合物の抽出速度は速いが、温度によるフィルムの劣化が懸念される。
また、抽出溶媒として用いる水のpHは、1〜7の範囲内であることが好ましい。水のpHが上記範囲以内であると、ポリマー(a)中のイオン伝導成分が塩を形成しても、元のイオン交換成分に置換できる。また、上記範囲未満であると、酸強度が高すぎるため、フィルムの劣化が懸念され、上記範囲を超えると、ポリマー(a)中のイオン伝導成分と酸−塩基相互作用し、フィルム中のイオン交換容量が低下する可能性がある。pHの調製は、例えば、硫酸を水に添加することにより行うことができる。
また、抽出溶媒として、水と水溶性有機溶媒とからなる混合溶媒を用いることもできる。混合することができる水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテルなどが挙げられる。上記混合溶媒中の水溶性有機溶媒の含有割合は、30重量%以下であることが好ましい。
上記のような抽出溶媒を用いて水溶性有機化合物(b)を抽出する時間は、通常0.5時間以上、好ましくは1〜48時間である。また、抽出効率を向上させるために、溶媒を数回入れ替えて行ってもよく、また、フィルムを流出溶媒槽中に投入してもよい。
溶媒抽出により水溶性有機化合物(b)を除去したフィルムを、30〜160℃、好ましくは50〜150℃で、3〜180分間、好ましくは5〜120分間乾燥して抽出溶媒を除去することにより、膜厚が、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μmのプロトン伝導膜を得ることができる。
上記のようにして得られたプロトン伝導膜には、平均細孔が形成されていてもよいが、その直径は100nm以下、好ましくは直径30nm以下であることが望ましい。上記範囲を超えると、十分な機械的強度が得られないことがある。なお、平均細孔径は、水銀ポロシメーターまたはガス吸着法等により測定できる。
また、膜のモルフォロジーは、イオン伝導成分が連続相を形成した構造が好ましく得られ、さらに非イオン伝導成分が非連続相を形成した構造が好ましく得られる。
<イオン伝導成分近傍にある水分量>
<イオン伝導成分近傍にある水分量>
膜中に吸着された水には、一般的に、不凍水、0℃以下に融解温度を示す水、および自由水があり、不凍水は、イオン伝導成分と強い相互作用で結びついた水であり、0℃以下に融解温度を示す水は、イオン伝導成分と弱い相互作用で結びついた水、あるいは、不凍水と弱い相互作用で結びついた水であり、自由水は、イオン伝導成分と相互作用をもたない水であるとされている(Yu Seung Kimら、Macromolecules、2003(36)6282参照)。不凍水量は、膜中のイオン交換容量に大きく依存し、0℃以下に融解温度を示す水量は、イオン伝導成分近傍の構造にも大きく依存すると考えられる。したがって、本発明において新たにイオン伝導成分近傍に形成される水は、0℃以下に融解温度を示す水により見積もることができる。
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、スルホン酸当量、分子量、イオン伝導成分近傍に保持される水分量、抽出処理前のフィルム中の水溶性化合物の含有量、機械的強度およびプロトン伝導度は、以下のようにして求めた。
1.スルホン酸当量
得られたスルホン酸基を有する重合体の水洗水が中性になるまで洗浄し、フリーに残存している酸を除いて充分に水洗し、乾燥後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解したフェノールフタレインを指示薬とし、NaOHの標準液を用いて滴定を行い、中和点からスルホン酸当量を求めた。
2.分子量の測定
スルホン酸基を有しないポリアリーレンの分子量は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、GPCによって、ポリスチレン換算の分子量を求めた。スルホン酸基を有するポリアリーレンの分子量は、溶剤として臭化リチウムと燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶離液として用い、GPCによって、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
3.イオン伝導成分近傍に保持される水分量の測定
プロトン伝導膜を90℃の水に30分間浸漬した後、示差走査熱量計(Thermal Analyst 2000;DuPont Instraments製)において、5℃/minで−100℃まで降温させ、次
に、200℃まで昇温させる。その時の水の融解ピークの熱量から、ポリマー1gあたりの0℃以下に融解温度を示す水分量を算出し、イオン伝導成分近傍に保持される水分量とした。
算出式:イオン伝導成分近傍に保持される水分量(g/g)=[膜中の0℃以下の水の融
解熱量(J)/水の融解熱量(J/g)]/測定後重量(g)
4.抽出処理前のフィルム中の水溶性化合物の含有量の測定
まず、抽出処理前のフィルム中の残存溶媒量をNMRにより測定する。次に、抽出処理後の乾燥フィルム中のスルホン酸当量を上記1の方法により測定する。この時、水溶性化合物を添加せずに作製したフィルムと同等のスルホン酸当量にならなければ、水溶性化合物が除去されていないことを意味する。水溶性化合物が除去されていなければ、さらに抽出処理を行い、水溶性化合物が除去されたフィルムを作製する。得られたフィルムの重量を、抽出処理後の乾燥フィルム重量とする。そして、下記式によりポリマー100重量部に対する抽出処理前のフィルム中の水溶性化合物の含有割合(重量部)を算出した。
算出式:抽出処理前のフィルム中の水溶性化合物の含有割合(重量部)=[抽出処理前のフィルム重量(g)−抽出処理後の乾燥フィルム重量(g)−抽出処理前のフィルム中の残留溶媒量(g)]/抽出処理後の乾燥フィルム重量(g)×100
5.機械的強度の測定
JIS K7127に規定される方法により、プロトン伝導膜の引張り強度を測定し、機械的強度とした。
6.プロトン伝導度の測定
交流抵抗は、5mm幅の短冊状のプロトン伝導膜試料の表面に、白金線(f=0.5mm)を押し当て、恒温恒湿装置中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンス測定から求めた。すなわち、85℃、相対湿度45%、50%、70%、90%の環境下で交流10kHzにおけるインピーダンスを測定した。抵抗測定装置として、(株)NF回路設計ブロック製のケミカルインピーダンス測定システムを用い、恒温恒湿装置には、(株)ヤマト科学製のJW241を使用した。白金線は、5mm間隔に5本押し当てて、線間距離を5〜20mmに変化させ、交流抵抗を測定した。線間距離と抵抗の勾配から、膜の比抵抗を算出し、比抵抗の逆数から交流インピーダンスを算出し、このインピーダンスから、プロトン伝導度を算出した。
比抵抗R(Ω・cm)=0.5(cm)×膜厚(cm)×抵抗線間勾配(Ω/cm)
[合成例1]オリゴマーの調製
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三つ口のフラスコに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)67.3g(0.20モル)、4,4'−ジクロロベンゾフェノン(4,4'−DCBP)60.3g(0.24モル)、炭酸カリウム71.9g(0.52モル)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)300mL、ト
ルエン150mLをとり、オイルバス中、窒素雰囲気下で加熱し撹拌下130℃で反応させた。反応により生成する水をトルエンと共沸させ、Dean-Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。その後、反応温度を130から徐々に150℃まで上げながら大部分のトルエンを除去し、150で10時間反応を続けた後、4,4'−DCBP10.0g(0.040モル)を加え、さらに5時間反応した。得られた反応液を放冷後、副生した無機化合物の沈殿物を濾過除去し、濾液を4Lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別、回収し乾燥後、テトラヒドロフラン300mLに溶解した。これをメタノール4Lに再沈殿し、目的の化合物95g(収率85%)を得た。
得られた化合物のGPC(THF溶媒)で求めたポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は11,200であった。また、得られた化合物はTHF、NMP、DMAc、ス
ルホランなどに可溶で、Tgは110℃、熱分解温度は498℃であった。
得られた化合物は式(I)で表されるオリゴマー(以下、「BCPAFオリゴマー」という)であった。
Figure 2005146019
[合成例2]ネオペンチル基を保護基としたポリアリーレン共重合体(PolyAB−SO3 neo-Pe)の調製
撹拌機、温度計、冷却管、Dean-Stark管、窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三つ口のフラスコに、4−[4−(2,5−ジクロロベンゾイル)フェノキシ]ベンゼンス
ルホン酸neo-ペンチル(A−SO3 neo-Pe)39.58g(98.64ミリモル)、合成例1で得られたBCPAFオリゴマー(Mw=11200)15.23g(1.36ミリモル)、Ni(PPh32Cl2 1.67g(2.55ミリモル)、PPh3 10.49g(40ミリモル)、NaI 0.45g(3ミリモル)、亜鉛末 15.69g(240ミリモル)、乾燥NMP 390mLを窒素下で加えた。反応系を攪拌下に加熱し(最
終的には75℃まで加温)、3時間反応させた。重合反応液をTHF 250mLで希釈
し、30分攪拌し、セライトを濾過助剤に用いて濾過し、濾液を大過剰のメタノール1500mLに注ぎ、凝固させた。凝固物を濾集、風乾し、さらにTHF/NMP(それぞれ200/300mL)に再溶解し、大過剰のメタノール1500mLで凝固析出させた。風乾後、加熱乾燥により目的の黄色繊維状のネオペンチル基で保護されたスルホン酸誘導体からなる共重合体(PolyAB-SO3 neo-Pe)47.0g(収率99%)を得た。GPC
による分子量は数平均分子量(Mn)が47,600、Mwが159,000であった。
こうして得られたPolyAB-SO3 neo-Pe 5.1gをNMP60mLに溶解し、90℃に加温した。反応系にメタノール50mLと濃塩酸8mLの混合物を一時に加えた。懸濁状態となりながら、温和の還流条件で10時間反応させた。蒸留装置を設置し、過剰のメタノールを溜去させ、淡緑色の透明溶液を得た。この溶液を大量の水/メタノール(1:1重量比)中に注いで、ポリマーを凝固させた後、洗浄水のpHが6以上となるまで、イオン交換水でポリマーを洗浄した。こうして得られたポリマーのIRスペクトルおよびイオン交換容量の定量分析から、スルホン酸エステル基(−SO3Ra)は定量的にスルホン酸基(−SO3H)に転換していることがわかった。
得られたスルホン酸基を有するポリアリーレン共重合体のGPCによる分子量は、Mnが53,200、Mwが185,000であり、スルホン酸当量は1.9meq/gであった。
〔実施例1〕
合成例2で得られたスルホン酸基を有するポリアリーレン4g、N−メチル−2−ピロリドン32.0gおよび平均分子量が約3000のポリオキシエチレングリコール(商品名:PEG−4000N、三洋化成工業株式会社製)1.2g(30重量%複合化量)を50ccのスクリュー管に加え、ウエーブローターで24時間攪拌を行い、粘度5000cpの均一なポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をPETフィルム上にバーコーダー法によりキャストし、80℃で30分間、次いで120℃で60分間乾燥することで、均一かつ透明なフィルムを得た。
得られた乾燥後のフィルム(10cm四方)を95℃、pH6の水2Lに1時間浸漬し、この水浸漬を4回繰り返した後、フィルムを取出し、50℃で60分乾燥することで膜厚35μmの均一かつ透明なプロトン伝導膜Aを得た。この膜のスルホン酸当量は1.9meq/gであり、ポリオキシエチレングリコールが除去されていることを確認した。
フィルムの内部構造は、フィルムの超薄切片を切り出し、該切片を硝酸鉛で染色した後、日立製作所製HF-100FA透過型電子顕微鏡(以下、TEMという。)で観察した。T
EM観察では、イオン伝導成分を有するポリマーセグメント(A)からなるドメインと、
イオン伝導成分を有さないポリマーセグメント(B)からなるドメインとが等方的にミク
ロ相分離している様子が観察された。ポリマーセグメント(B)からなるドメインは、部
分的に非連続なドメインを形成し、ポリマーセグメント(A)からなるドメインは、マト
リックスをなし、ネットワーク上に連結し、膜を貫いて連続していることが観測された。また、TEM写真を画像処理ソフト(scion image)により解析した結果、構
造の長周期は23nmであった。
得られたプロトン伝導膜Aの評価結果を表1に示す。
〔実施例2〕
合成例2で得られたスルホン酸基を有するポリアリーレン4g、N−メチル−2−ピロリドン28.3gおよび平均分子量が約3000のポリオキシエチレングリコール(商品名:PEG−4000N、三洋化成工業株式会社製)0.6g(15重量%複合化量)を50ccのスクリュー管に加え、ウエーブローターで24時間攪拌を行い、粘度4500cpの均一なポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をPETフィルム上にバーコーダー法によりキャストし、80℃で30分間、次いで120℃で60分間乾燥することで、均一かつ透明なフィルムを得た。
得られた乾燥後のフィルム(10cm四方)を95℃、pH6の水2Lに1時間浸漬し、この水浸漬を4回繰り返した後、フィルムを取出し、50℃で60分乾燥することで膜厚37μmの均一かつ透明なプロトン伝導膜Bを得た。この膜のスルホン酸当量は1.9meq/gであり、ポリオキシエチレングリコールが除去されていることを確認した。
フィルムの内部構造は、フィルムの超薄切片を切り出し、該切片を硝酸鉛で染色した後、TEMで観察した。TEM観察では、イオン伝導成分を有するポリマーセグメント(A)からなるドメインと、イオン伝導成分を有さないポリマーセグメント(B)からなるドメインとが等方的にミクロ相分離している様子が観察された。ポリマーセグメント(B)か
らなるドメインは、部分的に非連続なドメインを形成し、ポリマーセグメント(A)から
なるドメインは、マトリックスをなし、ネットワーク上に連結し、膜を貫いて連続していることが観測された。また、TEM写真を画像処理ソフト(scion image)に
より解析した結果、構造の長周期は25nmであった。
得られたプロトン伝導膜Bの評価結果を表1に示す。
〔比較例1〕
合成例2で得られたスルホン酸基を有するポリアリーレン4g、N−メチル−2−ピロリドン29.3gを50ccのスクリュー管に加え、ウエーブローターで24時間攪拌を行い、粘度5100cpの均一なポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をPETフィ
ルム上にバーコーダー法によりキャストし、80℃で30分間、次いで120℃で60分間乾燥することで、均一かつ透明なフィルムを得た。
得られた乾燥後のフィルム(10cm四方)を95℃、pH6の水2Lに1時間浸漬し、この水浸漬を4回繰り返した後、フィルムを取出し、50℃で60分乾燥することで膜厚38μmの均一かつ透明なプロトン伝導膜Cを得た。
フィルムの内部構造は、フィルムの超薄切片を切り出し、該切片を硝酸鉛で染色した後、TEMで観察した。TEM観察では、イオン伝導成分を有するポリマーセグメント(A)からなるドメインと、イオン伝導成分を有さないポリマーセグメント(B)からなるドメインとが等方的にミクロ相分離している様子が観察された。ポリマーセグメント(A)か
らなるドメインは、非連続相なドメインを形成し、ポリマーセグメント(B)からなるド
メインは、ネットワーク上に連結し、膜を貫いて連続したドメインを形成していることが観測された。また、TEM写真を画像処理ソフト(scion image)により解析
した結果、構造の長周期は30nmであった。
得られたプロトン伝導膜Cの評価結果を表1に示す。
Figure 2005146019

Claims (6)

  1. (a)イオン伝導成分を有するポリマーと、(b)分子量1000以上の水溶性有機化合物と、(c)有機溶媒とを含む塗布液を基体に塗布し、該有機溶媒(c)を除去して乾燥塗膜を形成した後、該水溶性有機化合物(b)を除去することを特徴とするプロトン伝導膜の製造方法。
  2. 前記塗布液中に、前記水溶性有機化合物(b)が、前記ポリマー(a)100重量部に対して0.1〜100重量部の割合で含まれていることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導膜の製造方法。
  3. 前記乾燥塗膜中に、前記水溶性有機化合物(b)が、前記ポリマー(a)100重量部に対して0.01〜100重量部の割合で含まれていることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導膜の製造方法。
  4. 前記乾燥塗膜から水溶性有機化合物(b)を除去する方法が、溶媒抽出であることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導膜の製造方法。
  5. 前記溶媒抽出に用いられる溶媒が水であることを特徴とする請求項4に記載のプロトン伝導膜の製造方法。
  6. 前記溶媒抽出に用いられる水の温度が10〜100℃の範囲であり、かつ、pHが1〜7の範囲であることを特徴とする請求項5に記載のプロトン伝導膜の製造方法。
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