JP2005139023A - モールドプレス成形用光学ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】 上記した問題を改善し、屈折率(nd)が1.65〜1.75、アッベ数(νd)が30〜40、軟化点が650℃以下、成形工程中に失透し難く、しかも、高い耐候性を兼ね備えたモールドプレス成形用光学ガラスを提供することである。
【解決手段】 本発明のモールドプレス成形用光学ガラスは、質量百分率で、SiO2 25〜45%、Al23 0〜5%、B23 5.5〜15%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、BaO 5.5〜14.5%、SrO 0〜10%、Li2O 0.5〜5%、Na2O 5〜15%、K2O 0〜10%、TiO2 10〜20%、Nb25 5.5〜15%、ZnO 5.5〜14.5%、ZrO2 0〜3%未満、Bi23 0〜3%、MgO+CaO+BaO+SrO 5.5〜20%未満であり、(TiO2+Nb25)/ZnO 1.7〜4.5であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、モールドプレス成形用光学ガラスに関するものである。
CD、MD、DVD、その他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、ビデオカメラや一般のカメラの撮影用レンズ等の光学レンズ用に、屈折率(nd)が1.65〜1.75の光学ガラスが使用されている。
これらの光ピックアップレンズや撮影用レンズの作製方法として、一旦、溶融ガラスをインゴットに成形し、これから適当な大きさに切りだした硝材を研磨した後、モールドプレスする方法と、溶融ガラスをノズル先端から滴下して液滴状にする、いわゆる液滴成形により成形した硝材を研磨した後、或いは研磨せずにモールドプレスする方法が知られている。
従来、モールドプレス成形法に適したガラス材質としてSiO2−PbO−R’2O(R’2OはLi2O、Na2O、K2Oを示す)を基本とした鉛含有ガラスが使用されていたが、近年では、環境上の問題からSiO2−RO(ROはMgO、CaO、SrO、BaOを示す)−R’2O−TiO2−Nb25等の非鉛系ガラスが提案されている。
特開平6−107425号公報 特開昭62−87432号公報
しかし、SiO2−RO−R’2O−TiO2−Nb25系ガラスは失透傾向が強いため、溶融ガラスを急冷鋳造してインゴットを作製する場合、その量産性が悪い。また、液滴成形の場合、液滴形成に適したガラスの成形粘度は101.5ポイズ程度であるが、SiO2−RO−R’2O−TiO2−Nb25系ガラスは、101.5ポイズの低粘度では失透してしまい、液滴成形には不向きであった。
また、上記の非鉛系のSiO2−RO−R’2O−TiO2−Nb25系ガラスは、軟化点(Ts)が700℃以上と高い。モールドプレス成形法では、硝材が軟化状態になるように軟化点付近まで加熱し成形するため、プレス金型はTsの温度近くに昇温される。硝材の軟化点が高い場合、金型も高温となり、金型の酸化などの劣化が促進され、量産性の低下を招く原因となる。Tsを低下する目的で、この系のガラスにR’2Oをさらに添加することも考えられるが、R’2Oを多量に含有させると失透性が更に増大する。加えて、モールドプレス成形時にガラスからR’2Oが揮発してガラスと金型が融着しやすくなるという問題も生じる。更に、研削、研磨、洗浄工程において、ガラス成分が研磨洗浄水や各種洗浄溶液へ溶出し、ガラス表面の変質が起こる等、耐候性が悪く、最終製品においても、高温多湿状態に長時間晒されるとガラスの表面が変質し、信頼性を損なうという問題も生じる。
本発明の目的は、上記した問題を改善し、屈折率(nd)が1.65〜1.75、アッベ数(νd)が30〜40、軟化点が650℃以下、成形工程中に失透し難く、しかも、高い耐候性を兼ね備えたモールドプレス成形用光学ガラスを提供することである。
本発明のモールドプレス成形用光学ガラスは、質量百分率で、SiO2 25〜45%、Al23 0〜5%、B23 5.5〜15%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、BaO 5.5〜14.5%、SrO 0〜10%、Li2O 0.5〜5%、Na2O 5〜15%、K2O 0〜10%、TiO2 10〜20%、Nb25 5.5〜15%、ZnO 5.5〜14.5%、ZrO2 0〜3%未満、Bi23 0〜3%、MgO+CaO+BaO+SrO 5.5〜20%未満であり、(TiO2+Nb25)/ZnO 1.7〜4.5であることを特徴とする。
本発明の光学ガラスは、失透し難く、モールドプレス成形に使用されるプリフォームガラスの量産性に優れ、しかも、650℃以下の軟化点と高い耐候性を兼ね備えているため、モールドプレス成形用として好適である。
本発明のモールドプレス成形用光学ガラスは、SiO2−RO−R’2O−TiO2−Nb25系ガラスにおいて、R’2Oの一部をZnO、B23に置換しているため、ガラスの軟化点を低くすることができ、しかも、高い耐候性を維持することができる。また、モールドプレス成形時における金型の汚染や融着を抑制することもできる。
また、TiO2、Nb25の一部をZnOに置換し、(TiO2+Nb25)/ZnOの割合を1.7〜4.5の範囲に厳密に制限しているため、作業温度範囲(成形温度−液相温度)が広がり、成形工程中での失透を抑えることができる。
本発明のモールドプレス成形用光学ガラスの組成範囲を上記のように限定した理由を述べる。
SiO2は、ガラスの骨格を構成する成分であり、耐候性を向上させる効果がある。その含有量は、25〜45%、好ましくは28〜40%、更に好ましくは28〜36.5%である。SiO2が45%を超えると、屈折率が著しく低下したり、軟化点が650℃を超えてしまう。一方、25%より少ないと、耐候性が著しく悪化する。
Al23はSiO2と共にガラスの骨格を構成する成分であり、耐候性を向上させる効果がある。しかし、この系のガラスにおいては、分相性が強く、脈理や泡がガラス中に残るなどの内部欠陥を生じやすくなり、レンズ用ガラスとしての要求品位を満たすことができなくなる。そのため、Al23の含有量は0〜5%、好ましくは0〜4%に制限される。
23はガラス中の酸素を強く引き付ける性質を有しているため、モールドプレス成形における金型の酸化を抑え、ガラスと金型との融着を防止する効果がある。さらに、軟化点を低下させる効果もあるため、耐候性を低下させる成分であるR’2Oの含有量を低減することができる。B23の含有量は5.5〜15%、好ましくは6.5〜15%である。B23が15%を超えると、ガラス溶融時にB23−R’2Oで形成される揮発物が多くなり、脈理の生成を助長してしまう。またモールド成形時にも揮発が生じて金型を汚染し、金型の寿命を大きく縮めてしまう。一方、5.5%より少ないと、軟化点が上昇し、融着防止効果が得難くなる。
MgOは屈折率を高める成分であるが、分相性が著しく強く、また液相温度を高める傾向があるため、その含有量は0〜5%、好ましくは0〜3%に制限される。
CaOは屈折率を高める成分であるが、分相性が強く、また液相温度を高める傾向があるため、その含有量は0〜10%、好ましくは0〜5%である。
BaOは屈折率を高める成分であり、またこのガラス系においては液相温度を低下させ作業性を向上させる効果もある。BaOの含有量は5.5〜14.5%、好ましくは5.5〜12%である。BaOが14.5%より多いと、高温多湿状態でガラス表面からの析出量が顕著になり、耐候性が著しく悪化し最終製品の耐候性を損なうこととなる。一方、5.5%より少ないと、液相温度が上昇し、作業性が悪化する。
SrOは屈折率を高める成分であるが、分相性が強く、また液相温度を高める傾向があるため、その含有量は0〜10%、好ましくは0〜5%である。
また、アルカリ土類金属酸化物であるMgO、CaO、BaO、SrOは、融剤として作用するとともに、この系のガラスにおいて、アッベ数を低下させずに屈折率を高める効果があり、これら成分の合量(RO)は5.5〜20%未満、好ましくは、5.5〜15%である。ROが20%以上になると、プリフォームガラスの溶融、成形工程中に失透ブツが析出し易く、液相温度が上がって作業温度範囲が狭くなり、量産化し難くなる。さらにガラスから研磨洗浄水や各種洗浄溶液中への溶出が激しくなり、また高温多湿状態でのガラス表面の変質が顕著となり、耐候性が著しく悪化する。一方、5.5%より少ないと、所望の屈折率が得難くなる。
Li2Oはアルカリ金属成分の中で最も軟化点を低下させる効果が大きい。その含有量は0.5〜5%、好ましくは2〜5%、さらに好ましくは2〜4.5%である。Li2Oが5%を超えると、液相温度が高くなって十分な作業温度範囲が得難くなる。また、モールド成形時にも揮発が生じて金型を汚染し、金型の寿命を大きく縮めたり、モールドプレス成形における金型との融着が起こりやすくなる。さらに、アルカリ溶出量が増加し、耐候性が低下する。一方、0.5%より少ないと軟化点が650℃を超えてしまう。
Na2Oは、軟化点を低下させる成分である。その含有量は5〜15%、好ましくは5〜12%である。Na2Oが15%を超えると、溶融時にB23−R'2Oで形成される揮発物が多くなり、脈理の生成を助長してしまう。またモールド成形時にも揮発が生じて金型を汚染し、金型の寿命を大きく縮めてしまう。さらに、アルカリ溶出量が増加し、耐候性が低下する。一方、5%より少ないと軟化点が650℃を超えてしまう。
2Oは、軟化点を低下させる効果があるが、多量に含有すると溶融時にB23−R'2Oで形成される揮発物が多くなり、脈理の生成を助長してしまう。またモールド成形時にも揮発が生じて金型を汚染し、金型の寿命を大きく縮めてしまう。さらに、アルカリ溶出量が増加し、耐候性が低下する。このためK2Oの含有量は0〜10%、好ましくは0〜5%に制限される。
尚、軟化点の上昇や耐候性の低下を抑えるには、アルカリ金属酸化物であるLi2O、Na2O、K2Oの合量(R'2O)を10〜20%にしたり、アルカリ比をそれぞれLi2O/R'2O 0.15〜0.30、Na2O/R'2O 0.45〜0.70、K2O/R'2O 0.10〜0.35にすることが望ましい。
TiO2は、屈折率を高める成分である。その含有量は、10〜20%、好ましくは10〜14.5%である。TiO2が20%を超えると、TiO2を核とする結晶が析出しやすくなり、失透性が増大する。一方、10%より少ないと、屈折率が著しく低下する。
Nb25は、TiO2に起因する結晶の析出を抑制しながら、屈折率を高める成分である。その含有量は、5.5〜15%、好ましくは6.5〜14%である。Nb25が15%を超えると、TiO2−Nb25で形成される結晶が析出しやすくなり、失透性が増大する。一方、5.5%より少ないと、TiO2に起因する結晶の析出を抑制する効果が小さくなるとともに、屈折率が著しく低下する。
ZnOは、屈折率を高め、耐失透性を向上させ、十分に広い作業温度範囲を確保するための成分である。また、軟化点を低下させる効果もあるため、耐候性を低下させる成分であるR’2Oの含有量を低減することができる。その含有量は5.5〜14.5%、好ましくは5.5〜12%、さらに好ましくは8.1〜12%である。ZnOが14.5%を超えると、分相性が強くなり、均質なガラスが得難くなる。一方、5.5%より少ないと、屈折率が低下したり、耐失透性が低下して、十分な作業温度範囲が得難くなる。
尚、作業温度範囲(成形温度−液相温度)が広がり、成形工程中での失透を抑えるために、(TiO2+Nb25)/ZnOの割合を1.7〜4.5、好ましくは1.7〜3.5の範囲に厳密に制限する必要がある。この値が、4.5を超えると、作業温度範囲が狭くなり、成形工程中で失透しやすくなる。一方、1.7より小さいと、屈折率が小さくなる。
さらに、成形工程中での失透を抑えるには、TiO2とNb25の合量を25%以下にすることが望ましい。
ZrO2は屈折率を高め、耐候性を向上させる成分であるが、軟化点を上昇させるため、その含有量は0〜3%未満、好ましくは0〜2%に制限される。
Bi23は屈折率を高める成分であり,モールドプレス成型において、ガラスと金型の融着防止に効果がある。ただし、溶融炉材との反応性が強いため、その含有率は0〜3%、好ましくは0〜2%に制限される。
清澄剤としてSb23を添加することもできる。尚、ガラスに対する過度の着色を避けるため、その含有量は0〜1.8%、特に0〜1%に制限することが望ましい。
上記以外にも、本発明の特徴を損ねない範囲でP25等の他成分を添加することができる。P25は、モールドプレス成形においてガラスと金型の融着防止や液相温度の低下に効果があるが、分相性が強く耐水性が低下する傾向があるため、0〜5%、特に0〜3%に制限することが望ましい。
尚、PbOは、環境上の問題から含有すべきでない。
また、As23は環境上の理由から、Ag及びハロゲン類は光可逆変色キャリヤーとなるため、本発明においては使用しないほうが望ましい。
上記組成を有するガラスは、屈折率(nd)が1.65〜1.75、アッベ数(νd)が30〜40である。また、軟化点を650℃以下、△T={成形温度(101.5ポイズでの温度)−液相温度}が20℃以上、日本工業規格R−3502によるアルカリ溶出量が1.0mg未満にすることができる。
尚、軟化点が650℃以下であれば、低温でプレス成形が可能であり、ガラス成分が揮発し難くなる。また、△T={成形温度(101.5ポイズでの温度)−液相温度}が20℃以上であれば、成形工程中での失透を抑えることができる。さらに、日本工業規格R−3502によるアルカリ溶出量が1.0mg未満であれば、高い耐候性を有し、実使用に耐えうるものと判断できる。
以下、本発明のモールドプレス成形用光学ガラスを実施例に基づいて詳細に説明する。
表1及び2は本発明の実施例(試料No.1〜8)と比較例(試料No.9〜10)をそれぞれ示している。
Figure 2005139023
Figure 2005139023
表中の各試料は、次のようにして調製した。
まず表に示す組成になるようにガラス原料を調合し、白金ルツボを用いて1200℃で4時間溶融した。溶融後、融液をカーボン板上に流しだし、更にアニール後、各測定に適した試料を作製した。
得られた試料について、屈折率(nd)、アッベ数(νd)、軟化点(Ts)、成形温度(TW)、液相温度(TL)、作業温度範囲(△T)、アルカリ溶出量を測定した。それらの結果を各表に示す。
表から明らかなように、本発明の実施例である試料No.1〜8の各試料は、屈折率(nd)が1.6828〜1.7127、アッベ数(νd)が31.7〜34.9であり、軟化点が629℃以下であった。また、作業温度範囲(△T)が40℃以上であり、作業性が優れていた。しかも、アルカリ溶出量は0.56mg以下であり、耐候性も良好であると考えられる。
これに対し、比較例である試料No.9及び10は、作業温度範囲(△T)が5℃以下であり、作業温度範囲を十分に確保することができなかった。また、試料No.10については、軟化点(Ts)が654℃と高く、さらに、アルカリ溶出量が1.10mgであり、耐候性は悪いと考えられる。
尚、屈折率(nd)は、ヘリウムランプのd線(587.6nm)に対する測定値で示した。
アッベ数(νd)は、上記したd線の屈折率と水素ランプのF線(486.1nm)、同じく水素ランプのC線(656.3nm)の屈折率の値を用い、アッベ数(νd)=[(nd−1)/(nF−nC)]式から算出した。
軟化点(Ts)は、日本工業規格R−3104に基づいたファイバーエロンゲーション法によって測定した。
作業温度範囲(△T)は、次のようして求めた。まず、成形温度(TW)を白金球引上げ法により測定し、101.5ポイズに相当する温度として求めた。また、液相温度(TL)は297〜500μmの粉末状になるよう試料を粉砕、分級してから白金製のボートに入れ、温度勾配を有する電気炉に24時間保持した後、空気中で放冷し、光学顕微鏡で失透の析出位置を求めることで測定した。このようにして得られた成形温度(TW)と液相温度(TL)の差を作業温度範囲(△T)とした。尚、作業温度範囲(△T)が大きいほど、成形工程中で失透し難く、作業性に優れることを示す。
アルカリ溶出量は、日本工業規格R−3502に基づき、ガラス試料を粒度250〜420μmに破砕し、その比重グラムを秤量して白金篭に入れ、それを50ccの蒸留水に入れて沸騰水浴中で60分間処理し、処理後の溶液中に溶出したアルカリ成分(Li2O、Na2O、K2O)を定量し、その合計量を表したものである。尚、アルカリ溶出量が少ないほど、耐候性に優れることを示す。

Claims (2)

  1. 質量百分率で、SiO2 25〜45%、Al23 0〜5%、B23 5.5〜15%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、BaO 5.5〜14.5%、SrO 0〜10%、Li2O 0.5〜5%、Na2O 5〜15%、K2O 0〜10%、TiO2 10〜20%、Nb25 5.5〜15%、ZnO 5.5〜14.5%、ZrO2 0〜3%未満、Bi23 0〜3%、MgO+CaO+BaO+SrO 5.5〜20%未満であり、(TiO2+Nb25)/ZnO 1.7〜4.5であることを特徴とするモールドプレス成形用光学ガラス。
  2. 屈折率(nd)が1.65〜1.75、アッベ数(νd)が30〜40、軟化点が650℃以下、△T={成形温度(101.5ポイズでの温度)−液相温度}が20℃以上、日本工業規格R−3502によるアルカリ溶出量が1.0mg未満であることを特徴とする請求項1のモールドプレス成形用光学ガラス。
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