JP2005138538A - 熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法およびポリエステルフィルム - Google Patents

熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法およびポリエステルフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物中に粗大粒子を存在させることなく不活性粒子を均一に分散させる製造方法を提供し、これらの製造方法を用いて表面平滑性に優れた、不活性粒子の脱落による削れの発生が少ないポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)を加熱して溶融状態にする第1の工程、溶融状態の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)に不活性粒子を添加する第2の工程および溶融状態の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)と不活性粒子とを混練する第3の工程とからなり、該第2の工程において不活性粒子を添加する際に、平均粒径が10〜1000μmかつ該熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)より固有粘度の高い熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)を、不活性粒子と同時に添加する熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法およびポリエステルフィルムに関する。さらに詳しくは、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂に不活性粒子を均一に混錬する熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法およびポリエステルフィルムに関するものである。
熱可塑性芳香族ポリエステル(以下、ポリエステルと略記することがある)樹脂は優れた物理的および化学的性質を有することから、繊維、樹脂、フィルムなどに大量に使用されている。ところで、ポリエステル樹脂をフィルムにする場合、フィルムを得る工程や得られたフィルムを取り扱う工程における取り扱い性の向上およびしわなどの品質トラブルの発生防止を目的として、ポリエステル樹脂に不活性粒子を添加する方法が用いられている。不活性粒子が存在することによって、フィルム表面に適度な凹凸が付与され、結果としてフィルムの滑り性が向上し、前述の問題を解消することができる。このような不活性粒子としては、例えばシリカ、カオリン、二酸化チタンなどに代表される無機粒子やシリコーン、ポリスチレンなどに代表される有機粒子が挙げられる。
ところで、これらの不活性粒子には、粗大粒子が混在していたり、ポリエステル樹脂に対して分散性が不良である場合に凝集粗大粒子が発生することがある。このような粗大粒子がフィルム中にあると、フィルム製品のうちでも特に平坦性が求められる用途、例えば磁気記録用テープなどに用いた場合、電磁変換特性が低下したり、ドロップアウトなどの欠点が発生するなど品質を損なう場合があった。
そこで、このような粗大粒子の混入を抑制するために、種々の方法が採用されている。例えば、分散スラリー化、分級、濾過などの操作を行い粗大粒子を予め除去した不活性粒子を、ポリエステル樹脂を製造する溶融重縮合の反応系へ添加して、粒子の分散性を向上する方法が挙げられる。
しかしこの方法では、各工程の単位操作に多大な時間と労力が必要であること、また溶融重縮合反応系に添加された後、不活性粒子が再凝集を起こすといった問題は依然として潜在している。
一方、溶融重縮合反応系へ添加する以外の方法としては、例えば特開平1−157806号公報(特許文献1)に、単軸や二軸の混練押出機を用いて、重縮合して得られたポリエステル樹脂に、直接不活性粒子を混練分散させる方法が提案されている。また、押出機を用いた混練分散方法で不活性粒子の分散性を向上させるために、添加する粒子を媒体に分散させたスラリー状態で添加する方法が特開平6−91635号公報(特許文献2)に提案されている。
しかしながら、このようなスラリーを混練押出機を用いて混練させる方法を、溶融加工温度が250℃を越える比較的高融点のポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートなどに代表されるポリエステル樹脂に採用すると、スラリー化した不活性粒子を添加する際に、ヒートショックによる粒子の再凝集が発生し、凝集粗大粒子が増加する問題が潜在していた。
また、上述の粗大粒子はポリエステル樹脂をフィルムとした際、フィルム表面に粗大な突起を形成するため、磁気記録テープとしてビデオデッキで走行させた時に、粗大突起部分からの不活性粒子の脱落が起こり易く、削れ性を悪化させるといった問題も潜在していた。
そのため、ポリエステルフィルム中に粗大粒子を存在させることなく不活性粒子を均一に分散させ、かつ不活性粒子の脱落による削れの生じ難いポリエステル樹脂組成物の製造方法を確立すること、およびそれらの製造方法を用いて表面平滑性に優れたポリエステルフィルムを得ることが強く望まれていた。
特開平1−157806号公報 特開平6−91635号公報
本発明の目的は、上述の問題のない、表面平滑性に優れたポリエステルフィルムを提供することにある。さらに詳しくはポリエステル樹脂組成物中に粗大粒子を存在させることなく不活性粒子を均一に分散させ、不活性粒子の脱落による削れが生じにくい製造方法を提供し、これらの製造方法を用いて表面平滑性に優れたポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)を加熱して溶融状態にする第1の工程、溶融状態の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)に不活性粒子を添加する第2の工程および溶融状態の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)と不活性粒子とを混練する第3の工程とからなり、該第2の工程において不活性粒子を添加する際に、平均粒径が10〜1000μmかつ該ポリエステル樹脂(A)より固有粘度の高い熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)を、不活性粒子と同時に添加する製造方法を用いることによって、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物中に粗大粒子を存在させることなく不活性粒子が均一に分散され、しかも、不活性粒子の脱落による削れが生じにくくなり、表面平滑性に優れたポリエステルフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明は不活性粒子の添加量が熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の重量を基準として0.01〜20重量%であること、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)の添加量が熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の重量を基準として0.001〜40重量%であること、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)の固有粘度が熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)の固有粘度を基準として下記式(I)で表される範囲であること、
1.02≦η/η≦1.2・・・(I)
(ここで、ηは熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)の固有粘度、ηは熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)の固有粘度を表す)
ならびに熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)および熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリトリメチレン−2,6−ナフタレートからなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい態様として包含される。
さらに、不活性粒子が無機粒子であること、有機粒子であること、不活性粒子の平均粒径が0.03〜10μmであることも本発明の好ましい態様として包含される。
また、本発明において溶融状態での混練方法がベント付二軸混練押出機による方法であることも、好ましい態様として挙げられる。
また本発明は、上述の製造方法によって得られた、(a)熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂、(b)不活性粒子とからなるポリエステルフィルムであって、該フィルム中の不活性粒子が2個以上凝集して形成される凝集粒子数が1.2mmあたり10個以下であるポリエステルフィルムであることも好ましい態様として包含される。
さらに、かかるポリエステルフィルムは、(a)熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリトリメチレン−2,6−ナフタレートからなる群より選ばれた少なくとも1種であってもよい。
本発明によれば、溶融混練工程において不活性粒子を添加する際に、特定範囲の固有粘度および特定範囲の平均粒径のポリエステル樹脂微粉末を同時に添加することによって、ポリエステル樹脂組成物中に不活性粒子が凝集して形成される粗大粒子を存在させることなく、極めて均一に分散させることができ、さらに不活性粒子の脱落による削れの発生が少ないポリエステル樹脂組成物を極めて簡便に製造することができる。そして、本発明の製造方法によって得られたポリエステル樹脂組成物をフィルムにした場合、不活性粒子が均一に分散していることから、表面が平滑でありながらすべり性に優れ、しかも耐削れ性にも優れるポリエステルフィルムとして磁気記録用テープなどに好適に使用される。
以下、本発明の構成をさらに詳細に説明する。
[熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂]
本発明における熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)は、全ジカルボン酸成分の80モル%以上が芳香族ジカルボン酸、全グリコール成分の80モル%以上が脂肪族グリコールからなるものであれば特に限定はされないが、かかる熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリトリメチレン−2,6−ナフタレートからなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の第3成分が共重合されていても良い。
上記の共重合成分としては、ジカルボン酸成分として例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムジカルボン酸、またグリコール成分として例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ブタンジオールなどのアルキレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。なお、これらの共重合成分は、ポリマーの構成成分であるジカルボン酸およびジオール以外の成分から選ばれ、1種のみでなく2種以上を併用してもよい。これら共重合成分は全ジカルボン酸成分の20モル%未満、および/または全ジオール成分の20モル%未満の範囲で使用される。
本発明における熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)の固有粘度は、オルトクロロフェノール溶媒下、35℃で0.4dl/g〜0.8dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.5dl/g〜0.7dl/gである。固有粘度が下限未満の場合は、フィルムに製膜後、各製品に使用する際に要求される機械強度が不足することがある。他方、固有粘度が上限を超える場合は、溶融重合工程およびフィルム製膜工程における溶融混練時の生産性が損なわれることがある。
[不活性粒子]
本発明における熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物は、製膜性やしわ等の品質トラブルの発生防止を目的に不活性粒子を含有する。かかる不活性粒子としては、ポリエステル樹脂の溶融状態の温度に対して、十分な耐熱性を有するものであれば特に限定されず、溶融縮重合の反応系へスラリーとして添加すると凝集しやすい不活性粒子、または、溶融混練押出機にて添加・混練した際に、ヒートショックを受けて再凝集を起こしやすい不活性粒子も好適に用いることができる。本発明で用いられる不活性粒子として、耐熱性に優れる点から無機粒子が挙げられ、シリカ、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化チタン、カオリンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。また、本発明で用いられる不活性粒子として、凝集粒子を抑制する効果が出やすい点から、有機粒子が挙げられ、シリコーンおよび/または架橋ポリスチレンであることが好ましい。なお、本発明で使用する不活性粒子は、無機粒子と有機粒子の組み合わせであってもよく、さらに溶融した時の耐熱性に問題が生じなければ、ポリエステル樹脂との親和性を向上させるような表面処理方法、例えばシランカップリング剤で表面処理した不活性粒子であっても良い。
本発明で用いられる不活性粒子の平均粒径は、好ましくは0.03〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。不活性粒子の平均粒径が下限未満の場合は、フィルムにした時の滑り性が不十分であり、不活性粒子の平均粒径が上限を超える場合は、フィルム表面粗さが過度に粗くなる。
本発明における不活性粒子の添加量は、フィルムに製膜後、各製品に使用する際の使用目的により適宜調整すれば良い。好ましくはフィルム製膜性を安定に維持しやすいことから、ポリエステル樹脂組成物の重量を基準として、高々20重量%である。20重量%を超えた場合、製膜性が困難になることがある。本発明における不活性粒子の添加量は、製膜時における不活性粒子の分散性を高度に維持しやすいことから、ポリエステル樹脂組成物の重量を基準として、10重量%以下、特に5重量%以下であることが好ましい。なお、不活性粒子の添加量の下限は、特に制限されないが、得られるフィルムの取扱い性を維持しやすいことから、少なくとも0.01重量%であることが好ましい。
本発明における不活性粒子は、本発明の製造方法によって得られるポリエステルフィルム中の凝集粒子数が1.2mm2あたり10個以下であることが、フィルムの表面平滑性の点から好ましく、更には5個以下、特に好ましくは1個以下である。ここで、「凝集粒子」とは、不活性粒子が2個以上凝集して形成される凝集粒子を指す。具体的には、フィルム表面にプラズマ処理(ヤマト科学製プラズマリアクター−PR−31型)を施して不活性粒子をフィルム表面に露出させ、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍の倍率のもと、1.2mm2の面積に存在する凝集粒子数を測定して、その値をもって「凝集粒子数」とする。凝集粒子数が上限を超えた場合、フィルム表面粗さが過度に粗くなる。なお、凝集粒子数の下限は、特に制限されないが、通常120mm2の面積において1個以上である。
[熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末]
本発明の製造方法における最大の特徴は、不活性粒子を添加する際に熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)を同時に添加することにあり、以下に詳述する。
本発明におけるポリエステル樹脂微粉末(B)は、その平均粒径が10〜1000μmであることが必要である。ポリエステル樹脂微粉末(B)の平均粒径は、10〜500μmであることがより好ましく、更には10〜300μmであることが好ましい。ポリエステル樹脂微粉末(B)の平均粒径が10μm未満であると、該微粉末が嵩高くなるため、二軸混練押出機に投入させるフィーダー内での流動性が悪くなり、溶融状態のポリエステル樹脂に連続添加する際、均一に添加することが困難となる。一方、ポリエステル樹脂微粉末(B)の平均粒径が上限を超えると、不活性粒子との混合状態が不均一となり、ポリエステル樹脂微粉末(B)を添加する効果が半減する。
このような平均粒径を有するポリエステル樹脂微粉末は、例えば、ポリエステル樹脂ペレットをガラス転移点以上、融点以下の温度で加熱して結晶化させたあと、液体窒素などを加えた冷却状態で粉砕する方法で得られる。
また、本発明の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)は、固有粘度がポリエステル樹脂(A)より高いことが必要である。ポリエステル樹脂微粉末(B)の固有粘度がポリエステル樹脂(A)より低いと、不活性粒子の脱落が起こりやすくなる場合がある。本発明のポリエステル樹脂微粉末(B)の固有粘度は、オルトクロロフェノール溶媒下、35℃で0.41〜1.0dl/gであることが好ましい。本発明のポリエステル樹脂微粉末(B)の固有粘度は、より好ましくは、0.5〜0.95dl/gである。また本発明のポリエステル樹脂微粉末(B)の固有粘度は、ポリエステル樹脂(A)の固有粘度を基準として下記式(I)で表される範囲であることが好ましい。
1.02≦η/η≦1.2・・・(I)
(ここで、ηは熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)の固有粘度、ηは熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)の固有粘度を表す)
なお、本発明で用いられるポリエステル樹脂微粉末(B)は、全ジカルボン酸成分の80モル%以上が芳香族ジカルボン酸成分、全グリコール成分の80モル%以上が脂肪族グリコール成分からなるものでからなるものであれば特に限定はされないが、かかる熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリトリメチレン−2,6−ナフタレートからなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。かかるポリエステル樹脂微粉末(B)は、ポリエステル樹脂(A)と同種および異種のいずれであってもよく、また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の第3成分が共重合されていても良い。かかる共重合成分としては、ジカルボン酸成分として例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムジカルボン酸、またグリコール成分として例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ブタンジオールなどのアルキレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。なお、これらの共重合成分は、ポリマーの構成成分であるジカルボン酸およびジオール以外の成分から選ばれ、1種のみでなく2種以上を併用してもよい。これら共重合成分は全ジカルボン酸成分の20モル%未満、および/または全ジオール成分の20モル%未満の範囲で使用される。
また、本発明において、ポリエステル樹脂微粉末(B)のうち70重量%以上は、該微粉末の平均粒径に対して0.2〜2倍の範囲内の粒径を有していることが好ましい。ポリエステル樹脂微粉末(B)の70重量%以上がこの範囲を満たすことによって、不活性粒子と混合する際の均一混合性、該微粉末を二軸混練押出機に投入させるフィーダー内での流動性、ポリエステル樹脂中での不活性粒子の分散性等の点で、より優れた効果が得られる。
本発明におけるポリエステル樹脂微粉末(B)の添加量は、ポリエステル樹脂組成物全体の重量を基準として、0.001〜40重量%が好ましく、より好ましくは0.001〜20重量%である。ポリエステル樹脂微粉末(B)の添加量が下限より少ない場合、不活性粒子の分散性が悪くなったり、不活性粒子の脱落が発生しやすくなる。一方、ポリエステル樹脂微粉末(B)の添加量が上限を超える場合、ポリエステル樹脂の有する優れた機械的特性を損なうことがある。
また、本発明におけるポリエステル樹脂微粉末(B)の添加量は、不活性粒子の重量を基準として、10重量%以上が好ましく、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。ポリエステル樹脂微粉末(B)の添加量が下限より少ないと、不活性粒子の分散性が低下したり、不活性粒子の脱落が発生しやすくなる。なお、ポリエステル樹脂微粉末(B)の添加量の上限は、不活性粒子の重量を基準として、高々500重量%であることがポリエステル樹脂の有する優れた機械的特性を維持しやすい点から好ましい。
[製造方法]
本発明におけるポリエステル樹脂組成物の製造方法は、ポリエステル樹脂(A)を加熱して溶融状態にする第1の工程、溶融状態のポリエステル樹脂(A)に不活性粒子を添加する第2の工程および溶融状態のポリエステル樹脂(A)と不活性粒子とを混練する第3の工程とからなり、これらの工程は、通常同じ混練押出機内にて行われる。
本発明で使用する混練押出機としては、1軸混練押出機、2軸混練押出機のいずれでも良いが、均一な混練状態を形成しやすいことから2軸混練押出機が好ましく用いられる。
かかる2軸混練押出機としては、例えば、ニーディングディスクおよび逆ねじといった混練を高めるエレメントを配したスクリュー構成を有するベント式2軸混練押出機やロータ型2軸連続混練機(例えば「合成樹脂」Vol.41(7)P.9.7(1995)に記載)が挙げられる。
以下、図面を用いて本発明で使用する混練押出機を説明する。図1は、本発明で使用するベント付二軸混練押出機を例示した側面図である。図1において、1は押出機本体、2は加熱シリンダー、3はスクリュー、4はポリマーの吐出口、5は定量フィーダーをそれぞれ示す。なお、該押出機には、上流側からポリマーの吐出口4に向かって、ポリマー投入口6、不活性粒子および微粉末ポリマーの投入口7、ベント口8、9が、この順で設けられている。
以上のようなベント付二軸混練押出機1において、ポリエステル樹脂(A)は、チップとしてポリマー投入口6から押出機のシリンダー2中へ投入され、吐出口4へ向けてスクリュー3によって移送される。投入されたチップは、その後加熱軟化される。
この際、不活性粒子および微粉末ポリマーの投入口7は、ポリエステル樹脂(A)の70重量%以上、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは全てが軟化する位置よりも下流側に設けられる。この位置よりも上流側に投入口7を設けた場合、ポリエステル樹脂(A)が未溶融状態であるため、ポリエステル樹脂(A)中で、不活性粒子とポリエステル樹脂微粉末(B)とが分離し、不活性粒子が混練押出機内で凝集し、フィルムに延伸する際、凝集粒子によるボイドが発生したりする。ここで、ポリエステル樹脂(A)の70重量%以上が軟化する位置とは、押出機内のポリエステル樹脂(A)の断面を見たときに、チップの形状を維持している樹脂の割合が重量比で30重量%未満になる位置を意味する。ポリエステル樹脂(A)の70重量%以上が軟化する位置よりも下流側であれば、投入口7の位置は特に制限されないが、不活性粒子および微粉末ポリマーを均一に混練しやすいという観点から、不活性粒子とポリエステル樹脂微粉末(B)の分離が起こらない範囲で、より上流側に設置されることが好ましく、具体的には、不活性粒子を添加した後、40秒以上、さらには60秒以上溶融混練し得る位置であることが好ましい。
本発明における不活性粒子とポリエステル樹脂微粉末(B)との添加方法は、混練押出機に供給する前に予め混合してから添加する方法が複雑な装置を要しない点から好ましい。不活性粒子とポリエステル樹脂微粉末(B)の添加速度を一定に保つことができ、同じ投入位置から添加することができる装置であれば、予め混合することなく別々に供給してもよい。
なお、溶融混練温度は250℃〜330℃であることが好ましい。溶融混練温度が250℃より低い場合は、溶融樹脂粘度が高く、混練押出機に過度な負荷がかかり好ましくない。また溶融混練温度が330℃より高い場合は、熱劣化によって得られるフィルムの機械強度が低下しやすくなる。
本発明におけるフィルム製膜方法は、逐次二軸延伸法や同時二軸延伸法、インフレーション法などの公知の方法を用いて、二軸延伸フィルムに製膜される。延伸倍率は、使用される用途の要求特性にもよるが、通常縦方向ならびに横方向それぞれ2.0倍以上4.5倍以下の範囲で延伸処理が施され、その後必要に応じて熱固定処理が行われる。得られたフィルムの厚みは、3μm〜250μmであることが好ましい。
このようにして本発明の方法を用いて製造されたポリエステル樹脂組成物は、従来のような多大な労力をかけて不活性粒子の分散性を向上させた、溶融重縮合の反応系へ添加する方法と同等、もしくはそれ以上に均一な不活性粒子の分散性を、混練押出機を用い、より簡便な工程による混練で達成することができる。
その結果、本発明により製造されたポリエステル樹脂組成物を単層または積層形態のフィルムにした場合、表面に均一な凹凸が得られ、粗大突起の少ない、耐摩耗性、すべり性に優れるポリエステルフィルムを得ることができ、磁気記録用テープなどに好適に用いることができる。
本発明の製造方法によって得られるポリエステルフィルムは、前述の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂、および不活性粒子とからなるポリエステルフィルムであって、該フィルム中の不活性粒子が2個以上凝集して形成される凝集粒子数が1.2mmあたり10個以下であることが好ましい。
また、本発明の製造方法によって得られるポリエステルフィルムは、不活性粒子の削れが少ないことが好ましい。ここで、不活性粒子の削れとは、磁気記録用テープとして使用される際、ヘッドおよびテープガイドとの接触によって生じる不活性粒子の脱落に起因する削れ粉を指す。
本発明における不活性粒子の分散性向上のメカニズムについては、ポリエステル樹脂微粉末(B)が微粉末状であることから溶融速度が早く、不活性粒子は押出機内の混練過程で、溶融する微粉末に運ばれる形で分散すること、さらに溶融した直後のベースのポリエステル樹脂(A)に対し、ポリエステル樹脂微粉末(B)が高度の親和性を有することから混練効果を受けやすく、分散性が向上すると推定される。すなわちポリエステル樹脂微粉末(B)は、不活性粒子の分散剤的役割を果たしていると推定される。
また、本発明における不活性粒子の脱落抑制については、ポリエステル樹脂(A)に不活性粒子とポリエステル樹脂微粉末(B)とが同時に添加されるため、不活性粒子の周囲にポリエステル樹脂微粉末(B)が優先的に存在し、固有粘度の高いポリエステル樹脂微粉末(B)の存在により、不活性粒子がより強固に保持された状態でフィルム中に存在するため、不活性粒子の脱落が抑制されるのではないかと考えられる。
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、実施例における各特性値は、以下の方法にて測定または評価した。
(1)不活性粒子の平均粒子径
島津製作所製レーザー散乱式粒度分布測定装置、SALD−2000にて、エチレングリコールに不活性粒子を分散させた状態で不活性粒子の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布の50体積%時点の粒子径を平均粒子径とした。
(2)ポリエステル樹脂微粉末(B)の平均粒径および粒径分布
セイシン企業(株)製音波振動式全自動フルイ分け測定器、RPS−85Pを使用し、ポリエステル樹脂微粉末(B)の平均粒径および粒径分布を測定した。まず前記測定器を用い粒径の重量累積分布を測定し、得られた重量累積分布より50重量%時点の粒径を平均粒径とした。
(3)ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂微粉末(B)の固有粘度
それぞれ、O−クロロフェノール溶媒下、35℃の雰囲気下で測定した。
(4)ポリエステル樹脂組成物中の不活性粒子の分散性
溶融混練後、冷却して得られたポリエステル樹脂組成物の表面にプラズマ処理(ヤマト科学製プラズマリアクターPR−31型)を施し、該表面に不活性粒子を露出させ、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍の倍率のもと、1.2mm2の面積に存在する凝集粒子数を数え、次の基準で分散性を判定した。なお、本測定における凝集粒子とは、4個以上の不活性粒子が凝集したものである。
○:凝集粒子が観察されない。
△:凝集粒子が9個以下である。
×:凝集粒子が10個以上である。
(5)ポリエステルフィルム中の不活性粒子の分散性
得られたポリエステルフィルム表面にプラズマ処理(ヤマト科学製プラズマリアクターPR−31型)を施し、フィルム表面に露出した不活性粒子を、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍の倍率のもと、1.2mm2の面積に存在する凝集粒子数を数え、次の基準で分散性を判定した。
なお、本測定における凝集粒子とは、2個以上の不活性粒子が凝集したものである。
◎:凝集粒子が5個以下である。
○:凝集粒子が6〜10個である。
△:凝集粒子が11〜50個である。
×:凝集粒子が51個以上である。
(6)ポリエステルフィルムの静摩擦係数(μs)
ASTM−D−1894−63に従い、スリップテスターを用いて測定した。
(7)ポリエステルフィルムの削れ性
図2に示した装置を用いて下記のようにして測定する。図2中、11は巻き出しリール、12はテンションコントローラー、13、15、16、18、19および21はフリーローラー、14はテンション検出機(入口)、17は固定棒、20はテンション検出機(出口)、22はガイドローラー、23は巻き取りリールをそれぞれ示す。温度20℃、湿度60%の環境で、幅1/2インチに裁断したフィルムを17の固定棒に角度θ=60°で接触させて、毎分300mの速さで、入口張力が50gとなるようにして200m走行させる。走行後に固定棒17上に付着した削れ粉の量を下記の判定基準により評価する。この時、固定棒としてSUS焼結板を円柱状に曲げた表面仕上げの不充分な6mmφのテープガイド(表面粗さRa=0.15μm)を使用する。
<削れ粉判定>
◎:削れ粉が全く見られない
○:うっすらと削れ粉が見られる
△:削れ粉の存在が一見して判る
×:削れ粉がひどく付着している
○以上を不活性粒子脱落による削れ性良好と判定し、△以下を不活性粒子脱落による削れ性不良と判定する。
[実施例1]
固有粘度0.60のポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)樹脂チップ(A)を水分率0.4%以下になるように乾燥した状態で、ポリマー投入口6より、振動式定量フィーダー5を用いて20Kg/hの吐出速度で、ニーディングディスクバドルをスクリュー構成要素として有する、同方向回転噛合せ型の図1に示すベント付き2軸混練押出機に供給した。この押出機は、ポリマー投入口6とポリマーの吐出口4との距離が1200mmで、ポリマーの投入口6から下流側300mmの位置に不活性粒子とポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)樹脂微粉末(B)の投入口7を有し、ポリマーの投入口6から下流側500mmおよび900mmの位置にベン口8およびベント口9を有する。
つぎに、PEN樹脂(固有粘度0.70)を粉砕して平均粒径295μm、およびPEN樹脂微粉末中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が75重量%の微粉末状にしたPEN樹脂微粉末(B)50部およびシリコーン樹脂微粒子(東芝シリコーン(株)製、商品名「トスパール120」、平均粒子径2μm)50部とを予め均一に混合させた混合物を、前述の押出機のPEN樹脂微粉末の投入口7から振動式定量フィーダーを用いて添加した。なお、該混合物の吐出速度は、得られるPEN樹脂組成物を基準としてシリコーン樹脂微粒子の濃度が0.4重量%となるように調整した。この際、ベント口の真空度は100Pa、シリンダー温度は280℃、PEN樹脂(A)は全て軟化(チップ形状を保持したポリマーはなし)、PEN樹脂(A)の押出機内の滞留時間は2分であった。投入口7でシリコーン樹脂微粒子およびPEN樹脂微粉末(B)を添加した後、PEN樹脂(A)、シリコーン樹脂微粒子およびPEN樹脂微粉末(B)は混練され、溶融状態でポリマー吐出口4から押出され、ペレット化されてPEN樹脂組成物が得られた。
得られたPEN樹脂組成物の特性を表1に示す。
また、得られたシリコーン樹脂微粒子含有PEN樹脂組成物(固有粘度0.56)と、シリコーン樹脂微粒子を含まないPEN樹脂(固有粘度0.60)とを、シリコーン樹脂微粒子の濃度が0.02重量%になるように混合し、170℃で6時間乾燥後、溶融押出機にて溶融温度295℃で溶融し、ダイから押出して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを120℃に予熱し、低速ローラーと高速ローラーの間で15mm上方より900℃の表面温度の赤外線ヒーター1本にて加熱して製膜方向に3.5倍に延伸後急冷し、続いてステンターに供給し、140℃にて横方向に3.9倍に延伸した。得られた二軸配向延伸フィルムを205℃の熱固定温度で5秒間熱固定処理し、厚み14μmの2軸配向延伸フィルムを得た。
得られたPENフィルムの特性を表1に示す。
[実施例2]
PEN樹脂微粉末(B)と混合する不活性粒子を球状シリカ粒子(日本触媒(株)製、商品名「シーホスター」、平均粒径1.5μm)とした以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
[実施例3]
PEN樹脂(固有粘度0.70)を粉砕して平均粒径285μm、およびPEN樹脂微粉末(B)中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が85重量%の微粉末状とし、不活性粒子をシリコーン樹脂微粒子(東芝シリコーン(株)製、商品名「トスパール105」:平均粒径0.5μm)とし、また、PEN樹脂微粉末(B)とシリコーン樹脂微粒子の混合比やシリコーン樹脂微粒子の濃度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
[実施例4]
PEN樹脂(固有粘度0.70)を粉砕して平均粒径800μm、およびPEN樹脂微粉末(B)中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が80重量%の微粉末状とした以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
[実施例5]
PEN樹脂微粉末(B)とシリコーン樹脂微粒子の混合比を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
[実施例6]
PEN樹脂微粉末(B)の固有粘度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
[比較例1]
PEN樹脂(固有粘度0.70)を粉砕して平均粒径1150μm、およびPEN樹脂微粉末(B)中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が60重量%の微粉末状とした以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
[比較例2]
粉砕したPEN樹脂微粉末(B)を添加しなかった以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
[比較例3]
粉砕したPEN樹脂微粉末(B)を添加しなかった以外は、実施例2と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
[比較例4]
固有粘度0.48のPEN樹脂を粉砕して平均粒径295μm、およびPEN樹脂微粉末中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が75重量%の微粉末状にしたPEN樹脂微粉末(B)を使用した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
[比較例5]
固有粘度0.58のPEN樹脂を粉砕して平均粒径295μm、およびPEN樹脂微粉末中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が75重量%の微粉末状にしたPEN樹脂微粉末(B)を使用した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたPEN樹脂組成物およびPENフィルムの特性を表1に示す。
Figure 2005138538
ここで、表1中、PENはポリエチレン−2,6−ナフタレート、不活性粒子の「濃度」はポリエチレン−2,6−ナフタレート樹脂組成物中の不活性粒子濃度、「混合比」は不活性粒子とPEN樹脂微粉末(B)との混合割合をそれぞれ示す。
また、表1に記載の「特定粒径の微粉末割合」は、平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有するPEN樹脂微粉末の全微粉末に占める重量割合をさす。
表1に示すように、実施例1〜6のPEN樹脂組成物およびPENフィルムはいずれも、PEN樹脂微粉末(B)の平均粒径およびPEN樹脂微粉末(B)中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が適切であり、かかる微粉末(B)の固有粘度がPEN樹脂(A)より高く、かつ不活性粒子とPEN樹脂微粉末(B)とが同時添加された結果、PEN樹脂組成物中ならびにPENフィルム中の不活性粒子の凝集が抑制され、分散性が良好であった。また、不活性粒子脱落による削れが少なく、表面平滑性に優れ、静摩擦係数が小さいPENフィルムが得られた。
一方、比較例1はPEN樹脂微粉末(B)の平均粒径およびPEN樹脂微粉末(B)中における該微粉末平均粒径の0.2〜2倍の粒径を有する微粉末の割合が不適切であった結果、PEN樹脂組成物中ならびにPENフィルム中、不活性粒子の凝集が生じ、十分な分散性が得られず、PENフィルムの静摩擦係数は、磁気記録テープなどとして使用するのに十分とはいえないレベルであった。また、比較例2および比較例3は、PEN樹脂微粉末(B)を添加しなかった結果、PEN樹脂組成物中ならびにPENフィルム中、不活性粒子の凝集が大量に生じ、十分な分散性が得られなかった。また、不活性粒子脱落による削れも生じ、得られたPENフィルムの静摩擦係数は、磁気記録テープなどとして使用するのに十分とはいえないレベルであった。比較例4および5はPEN樹脂微粉末(B)の固有粘度がPEN樹脂(A)より低かったため、不活性粒子脱落による削れの発生が見られた。
本発明の製造方法によって得られた熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物から得られたポリエステルフィルムは、不活性粒子が均一に分散し、しかも不活性粒子の脱落による削れの発生が少ないことから、表面が平滑でありながらすべり性に優れ、しかも耐削れ性にも優れるポリエステルフィルムとして、磁気記録用テープなどに好適に使用される。
本発明に使用するベント付二軸混錬押出機を例示した側断面図である。 ポリエステルフィルムの削れ性を測定する装置の概略図である。
符号の説明
1 押出機本体
2 加熱シリンダー
3 スクリュー
4 ポリマーの吐出口
5 定量フィーダー
6 ポリマー投入口
7 不活性粒子およびポリエステル樹脂微粉末の投入口
8、9 ベント口
11 巻き出しリール
12 テンションコントローラー
13、15、16、18、19、21 フリーローラー
14 テンション検出機(入口)
17 固定棒
20 テンション検出機(出口)
22 ガイドローラー
23 巻き取りリール

Claims (11)

  1. 熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)を加熱して溶融状態にする第1の工程、溶融状態の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)に不活性粒子を添加する第2の工程および溶融状態の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)と不活性粒子とを混練する第3の工程とからなり、該第2の工程において不活性粒子を添加する際に、平均粒径が10〜1000μmかつ該ポリエステル樹脂(A)より固有粘度の高い熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)を、不活性粒子と同時に添加することを特徴とする熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  2. 不活性粒子の添加量が、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の重量を基準として、0.01〜20重量%である請求項1に記載の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  3. 熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)の添加量が、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の重量を基準として、0.001〜40重量%である請求項1に記載の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  4. 熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)の固有粘度が、熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)の固有粘度を基準として下記式(I)で表される範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
    1.02≦η/η≦1.2・・・(I)
    (ここで、ηは熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)の固有粘度、ηは熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)の固有粘度を表す)
  5. 熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂(A)および熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂微粉末(B)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリトリメチレン−2,6−ナフタレートからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  6. 不活性粒子が無機粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  7. 不活性粒子が有機粒子である請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  8. 不活性粒子の平均粒径が、0.03〜10μmである請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  9. 溶融状態における混練方法が、ベント付二軸混練押出機による方法である請求項1に記載の熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法によって得られた、(a)熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂、(b)不活性粒子とからなるポリエステルフィルムであって、該フィルム中の不活性粒子が2個以上凝集して形成される凝集粒子数が1.2mmあたり10個以下であることを特徴とするポリエステルフィルム。
  11. (a)熱可塑性芳香族ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリトリメチレン−2,6−ナフタレートからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項10に記載のポリエステルフィルム。
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