JP3776034B2 - ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法に関する。さらに詳しくはポリエチレンテレフタレート樹脂に不活性粒子を均一に混錬するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート樹脂は優れた物理的および化学的性質を有することから、繊維、樹脂、フィルムなどに大量に使用されている。ところで、ポリエチレンテレフタレート樹脂をフィルムにする場合、フィルムを得る工程や得られたフィルムを取り扱う工程での取り扱い性の向上やしわなどの品質トラブルの発生防止を目的に、ポリエチレンテレフタレート樹脂中に粒子を存在させる。この粒子の存在によってフィルム表面には適度の凹凸が付与され、フィルムの滑り性を向上でき、前述の問題が解消できるのである。このような粒子としては、シリカ、カオリン、二酸化チタンなどに代表される無機粒子やシリコーン、ポリスチレンなどの有機粒子が挙げられる。
【0003】
しかしながら、これらの粒子には、粒子自身に含まれる粗大粒子やポリエチレンテレフタレート樹脂への分散不良によって発生する凝集粗大粒子などが混在することが多く、フィルム製品のうちでも特に平坦性が求められる用途、例えば磁気記録用テープなどに用いると、電磁変換特性の低下や、ドロップアウトなどの欠点が発生するなど、品質を損なう場合がある。
【0004】
そこで、このような粗大粒子の混入を抑制するために、種々の方法が採用されている。例えば、分散スラリー化、分級、濾過などの操作を行った粒子をポリエチレンテレフタレート樹脂を製造する際の溶液重縮合の反応系へ添加して、粒子の分散性を向上する方法が挙げられる。
【0005】
しかしこの方法では、各工程の単位操作に多大な時間と労力が必要であること、また反応系に添加された後、粒子が再凝集を起こすことなどの問題は依然として潜在している。
【0006】
また、反応系へ添加する以外の方法としては、単軸や二軸の混練押出し機を用いて、重縮合して得られたポリエステル樹脂に、直接粒子を混練分散させる方法(特開平1−157806号公報)があり、この方法での粒子の分散性を向上させるために、添加する粒子を媒体に分散させたスラリー状態とし、該スラリーを添加する方法(特開平6−91635号公報)が提案されている。
【0007】
しかしながら、このスラリーを混練押出し機を用いて混練させる方法を、溶融加工温度が250℃を越えるような比較的高融点のポリエチレンテレフタレート樹脂に採用すると、スラリー化した粒子を添加する際に、ヒートショックによる粒子の再凝集が発生し、凝集粗大粒子が増加する問題が潜在していた。
【0008】
また、そのような粗大粒子はポリエチレンテレフタレート樹脂をフィルムとした際、ポリエチレンテレフタレート樹脂との界面にボイドと呼ばれる空隙を生じさせ、フィルムの透明性を損なわせたり、あるいは磁気記録テープとしてビデオデッキで走行させた時に、ボイドが原因となって粒子の脱落が起こり、削れ性を悪化させるなどの問題も潜在している。
【0009】
そのため、粗大粒子を存在させることなく粒子を均一に分散させ、かつ粒子とポリエチレンテレフタレート樹脂との界面にボイドなどが生じない高い親和性を有するポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法を確立することは強く望まれていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上述の問題を解消し、粗大粒子を存在させることなく不活性粒子を均一に分散させ、しかも、不活性粒子とポリエチレンテレフタレート樹脂の界面にボイドなどの空隙が生じにくいポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべくポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法について鋭意研究した結果、混練押出し機を用いる添加方法において、不活性粒子のほかにポリブチレンテレフタレート樹脂の微粉末を同時に添加することで、凝集粒子の発生を抑制しつつ、粒子の分散性を飛躍的に向上でき、しかも、粒子とポリエチレンテレフタレート樹脂の界面にボイドの生じにくい親和性の高いポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することができることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
かくして本発明によれば、ポリエチレンテレフタレート樹脂を加熱して溶融状態にする第1の工程、溶融状態のポリエチレンテレフタレート樹脂に不活性粒子を添加する第2の工程および溶融状態のポリエチレンテレフタレート樹脂と不活性粒子とを混練する第3の工程からなり、不活性粒子を添加する際に、平均粒子が10〜1000μmであるポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末を不活性粒子と同時に添加することを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明で粒子を添加するポリエチレンテレフタレート樹脂は、全ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸、全グリコール成分の80モル%以上がエチレングリコールからなるものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、他の第3成分が共重合されていても良い。共重合させる第3成分としては、酸成分ではコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムジカルボン酸などが、またグリコール成分では、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ブタンジオールなどのアルキレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノールなどが好ましく挙げられる。
【0014】
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を加熱して溶融状態にする第1の工程、溶融状態のポリエチレンテレフタレート樹脂に不活性粒子を添加する第2の工程および溶融状態のポリエチレンテレフタレート樹脂と不活性粒子とを混練する第3の工程からなり、これらの工程は、通常同じ混練押出し機内にて行われる。
【0015】
本発明で使用する混練押出し機としては、1軸混練押出し機でも2軸混練押出し機でも良いが、均一な混練状態を形成しやすいことから2軸混練押出し機が好ましい。2軸混練押出し機としては、例えば、ニーディングディスクおよび逆ねじの混練用エレメントを配したスクリュー構成を有するベント式2軸混練押出し機やロータ型2軸連続混練機(例えば「合成樹脂」Vol.41(7)P.9.7(1995)に記載)が好ましい。
【0016】
以下、図面を用いて本発明で使用する混練押出し機を説明する。図1は、本発明で使用するベント付き二軸混練押出し機を例示した側面図である。図1において、1は押出し機本体、2は加熱シリンダー、3はスクリュー、4はポリマーの吐出口、5は定量フィーダーをそれぞれ示す。なお、該押出し機には、上流側からポリマーの吐出口4に向かって、ポリマー投入口6、粒子および微粉末状ポリマーの投入口7、ベント口9が、この順で設けられている。
【0017】
以上のようなベント付き二軸混練押出し機1において、ポリエチレンテレフタレートは、チップの状態で定量フィーダー5からポリマー投入口6、そして押出し機のシリンダー2中へ投入され、吐出口4へ向けてスクリュー3によって移送される。投入されたチップは、その後加熱軟化される。この際、粒子および微粉末状ポリマーの投入口7は、ポリエチレンテレフタレート樹脂の70重量%以上、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは全てが軟化する位置よりも下流側に設けられる。この位置よりも上流側に投入口7が位置すると、ポリエチレンテレフタレート樹脂が未溶融状態であり、ポリエチレンテレフタレート樹脂中で、不活性粒子とポリブチレンテレフタレート樹脂の微粉末とが分離し、不活性粒子が混練押出し機内で凝集したり、フィルムに延伸しようとするとボイドが発生したりする。ここで、チップの70重量%以上が軟化する位置とは、押出し機内のポリエチレンテレフタレート樹脂の断面を見たときに、チップの形状を維持している樹脂の割合が重量比で、30重量%以下になる位置を意味する。他方、ポリエチレンテレフタレート樹脂の70重量%以上が軟化する位置よりも下流側であれば、投入口7の位置は特に制限されないが、粒子および微粉末状ポリマーを均一に混練し易いことから、上流側であることが好ましく、具体的には、不活性粒子を添加後、40秒以上、特に60秒以上溶融混練することが好ましい。
【0018】
本発明でポリエチレンテレフタレート樹脂に添加する不活性粒子は、使用するポリエチレンテレフタレート樹脂の溶融状態の温度に対して、十分な耐熱性を有するものなら特に限定されない。特に溶融縮重合の反応系へスラリーとして添加すると凝集しやすい粒子、または、溶融混練押出し機にて添加・混練した際に、ヒートショックを受けて再凝集を起こしやすい粒子に有効である。本発明で使用するポリエチレンテレフタレート樹脂に添加する不活性粒子は、耐熱性に優れる点からは無機粒子が好ましい。具体的な無機粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化チタン、カオリンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。一方、本発明で使用するポリエチレンテレフタレート樹脂に添加する不活性粒子は、凝集粒子を抑制する効果が出やすいことからは、有機粒子が好ましい。具体的な有機粒子としては、シリコーンまたは架橋ポリスチレンからなる粒子が好ましい。なお、本発明で使用する不活性粒子は、無機粒子と有機粒子の組み合わせでもよく、溶融した時の耐熱性に問題が生じなければ、ポリエチレンテレフタレートとの親和性を向上させるような表面処理を施した、例えばシランカップリング剤で処理した粒子でも良い。本発明で使用する不活性粒子の平均粒径は、好ましくは0.03から10μm、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。平均粒径が小さすぎるとフィルムにした時の滑り性が不十分で、逆に大きすぎるとフィルム表面粗さが過度に粗くなる。
【0019】
本発明において、不活性粒子の添加量は、成形品の使用目的により適宜調整すれば良い。好ましくは成形性を安定に維持しやすいことから、ポリエチレンテレフタレート樹脂の重量を基準として、高々20重量%である。上限を超えると、成形が困難になることがある。特にフィルム用に使用する場合は、分散性を高度に維持しやすいことから、ポリエチレンテレフタレート樹脂の重量を基準として、10重量%以下、特に5重量%以下であることが好ましい。なお、不活性粒子のポリエステル樹脂に対する添加量の下限は、特に制限されないが、得られるフィルムの取扱い性を維持しやすいことから、少なくとも0.01重量%であることが好ましい。
【0020】
ところで、本発明の製造方法の最大の特徴は、不活性粒子を添加する際に、ポリブチレンテレフタレート樹脂の微粉末を添加することにあり、以下に詳述する。
【0021】
本発明において、添加するポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末は、その平均粒径が10〜1000μmであることが必要である。ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の平均粒径が10μm未満であると、粉末の流動性が悪くなり、溶融状態のポリエチレンテレフタレート樹脂に連続添加する際、均一量の添加が困難となる。一方、ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の平均粒径が1000μmを超えると、不活性粒子との混合状態が不均一となり、ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末を添加する効果が半減する。このような平均粒径を有する微粉末は、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂ペレットを加熱して結晶化させたあと、液体窒素などを加えた冷却状態で粉砕することで得られる。好ましいポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の平均粒径は10〜500μmであり、より好ましくは10〜300μmである。なお、ここでいうポリブチレンテレフタレート樹脂とは、ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸成分、全グリコール成分の80モル%以上が1,4−ブタンジオール成分からなるものである。また、本発明において、ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末のうちの70重量%以上は、その平均粒径に対して0.2〜2倍の範囲内の粒径を有していることが好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末がこの範囲を満たすものであると、不活性粒子と混合する際の均一混合性、粉末の流動性、ポリエチレンテレフタレート樹脂中での分散性等の点で、より優れた効果が得られるので好ましい。
【0022】
本発明におけるポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の添加量は、不活性粒子の重量を基準として、10重量%以上が好ましく、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の添加量が下限より少ないと、不活性粒子の分散性が低下したり、不活性粒子の周囲にボイドが発生しやすくなる。なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の添加量の上限は、不活性粒子の重量を基準として、高々500重量%であることがポリエチレンテレフタレート樹脂の有する優れた透明性や機械的特性を維持しやすいことから好ましい。なお、本発明では、不活性粒子をポリブチレンテレフタレート樹脂中に予め均一に分散する必要がないので、500重量%以下という不活性粒子に対して少量のポリブチレンテレフタレート樹脂量でも、均一に不活性粒子を分散させることができる。
【0023】
また、本発明におけるポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の添加量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の重量を基準として、0.001〜40重量%が好ましく、より好ましくは0.001〜20重量%である。ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の添加量が下限よりも少ないと、不活性粒子の分散性が悪くなったり、粒子の周囲にボイドが発生しやすくなる。一方、ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の添加量が上限を超えると、ポリエチレンテレフタレート樹脂の有する優れた透明性や機械的特性を損なうことがある。
【0024】
本発明におけるポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の添加方法は、添加の前に不活性粒子と予め混合してから添加するのが複雑な装置を要しないので好ましい。もちろん、不活性粒子とポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の添加速度を一定に保つことができ、同じ位置に添加することが出来る装置であれば、予備的に混合することなく別々に供給してもよい。
【0025】
このようにして得られた本発明の方法で製造されたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、従来の多大な労力を掛けて分散性を向上させた溶融重縮合の反応系へ添加する方法と同等もしくはそれ以上に均一な不活性粒子の分散状態を、工程が簡単な混練押出し機による混錬で達成することができる。その結果、本発明により製造されたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を単層または積層形態のフィルムにした場合、表面に均一な凹凸が得られ、粗大突起の少ない、耐摩耗性、すべり性に優れるフィルムを得ることができる。
【0026】
本発明における不活性粒子の分散性向上のメカニズムについては、ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点がポリエチレンテレフタレート樹脂より低く、かつ微粉末状であることから微粉末の溶融速度が早く、不活性粒子は溶融する微粉末に運ばれる形で分散すること、さらに溶融した直後のベースのポリエチレンテレフタレート樹脂に対し、ポリブチレンテレフタレート樹脂が高度の親和性を有することから混錬効果を受けやすく、分散性が向上するのではないかと推定される。すなわちポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末は、不活性粒子の分散剤的役割を果たしているのではないかと推定される。
【0027】
また、本発明における不活性粒子の周囲のボイド抑制については、ポリエチレンテレフタレート樹脂に不活性粒子とポリブチレンテレフタレート樹脂とが同時に添加されるため、不活性粒子の周囲にポリブチレンテレフタレート樹脂が優先的に存在し、ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点がポリエチレンテレフタレートより低いことから、延伸工程において、ポリエチレンテレフタレート樹脂と不活性粒子の間でポリブチレンテレフタレート樹脂が緩衝剤として機能し、ボイドの発生が抑制されるのではないかと考えられる。
【0028】
このように、不活性粒子を均一に分散でき、しかも、延伸工程での不活性粒子の周囲のボイドを抑制できる本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法を用いれば、透明性が高く不活性粒子の脱落による削れ性の悪化の懸念がない優れたポリエステルフィルムをえることができる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、実施例における各特性値は、以下の方法にて測定または評価した。
(1)不活性粒子の平均粒子径
微粒子粉体については、島津製作所製レーザー散乱式粒度分布測定装置、SALD−2000にて、エチレングリコールに不活性粒子を分散させた状態で測定した。
【0030】
(2)ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の平均粒径および粒径分布
セイシン企業(株)製音波振動式全自動フルイ分け測定器、RPS−85Pを使用し、ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の平均粒径および粒径分布を測定した。まず前記測定器を用い粒径の重量累積分布を測定し、得られた重量累積分布より50重量%時点の粒径を平均粒径とした。
【0031】
(3)ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度
ポリエチレンテレフタレートはO−クロロフェノール溶媒下、ポリブチレンテレフタレートはフェノール/テトラクロロエタン(50/50)溶媒下で、それぞれ共に35℃の雰囲気下で測定した。
【0032】
(4)ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物中の不活性粒子の分散性
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の表面にプラズマ処理(ヤマト科学製プラズマリアクターPR−31型)を施し、該表面に粒子を露出させ、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍の倍率のもと、1.2mm2の面積に存在する凝集粒子数を数え、次の基準で分散性を判定した。なお、本測定における凝集粒子とは、4個以上の有機粒子が凝集したものである。
○:凝集粒子が観察されない。
△:凝集粒子が9個以下である。
×:凝集粒子が10個以上である。
【0033】
(5)ポリエチレンテレフタレートフィルム中の不活性粒子の分散性
フィルム表面にプラズマ処理(ヤマト科学製プラズマリアクターPR−31型)を施し、フィルム表面に露出した粒子を、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍の倍率のもと、1.2mm2の面積に存在する凝集粒子数を数え、次の基準で分散性を判定した。
なお、本測定における凝集粒子とは、2個以上の粒子が凝集したものである。
◎:凝集粒子が5個以下である。
○:凝集粒子が6〜10個である。
△:凝集粒子が11〜50個である。
×:凝集粒子が51個以上である。
【0034】
(6)ポリエチレンテレフタレートフィルムのボイド比
フィルム表面にプラズマ処理(ヤマト科学製プラズマリアクターPR−31型)を施し、該表面に粒子を露出させた後、走査型電子顕微鏡を用い、粒子の粒径に応じて5000倍〜20000倍の倍率にて粒子及び周囲の空隙(ボイド)を観察する。その観察像から画像解析装置を用い、粒子面積と粒子を含むボイドの面積を測定し、(粒子を含むボイド面積)/(粒子面積)の比をもってボイド比とする。この測定を粒子100個について実施し、その平均値をポリエチレンテレフタレートフィルムのボイド比とした。
【0035】
(7)フィルムの静摩擦係数(μs)
ASTM−D−1894−63に従い、スリップテスターを用いて測定した。
【0036】
[実施例1]
固有粘度0.64の微粒子を含まないポリエチレンテレフタレート(PET)を水分率0.4%以下の未乾燥樹脂の状態で、振動式定量フィーダー5より20kg/hの割合で、ニーディングディスクバドルをスクリュー構成要素として有する、同方向回転噛合せ型の図1に示すベント付き2軸混錬押出し機に供給した。この押出し機は、ポリマー投入口6〜ポリマーの吐出口4との距離が1200mmで、ポリマーの投入口から下流側300mmの位置に不活性粒子とポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂微粉末の投入口7を有し、ポリマーの投入口から下流側500mmおよび900mmの位置にそれぞれベント口8および9を有する。
【0037】
つぎに、ポリブチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.85)を粉砕して平均粒径295μmの微粉末状にしたポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末50部と、シリコーン樹脂微粒子(東芝シリコーン(株)製、商品名トスパール120、平均粒径2μm)50部との均一混合物を用意した。そして、前述の押出し機のポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の投入口7から、該混合物を得られる樹脂組成物中のシリコーン樹脂微粒子の濃度が0.4重量%となるように振動式定量フィーダーを用いて添加した。この際、ベント口の真空度は100Pa、シリンダー温度は290℃、添加時のポリエチレンテレフタレートは全て軟化(チップ形状を保持したポリマーはなし)、ポリエチレンテレフタレート樹脂の押出し機内の滞留時間は2分であった。粒子を添加後、ポリエチレンテレフタレート樹脂、シリコーン樹脂粒子およびポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末は混練され、溶融状態でポリマー吐出口4から押し出し、ペレット化されたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を製造した。
【0038】
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の特性を表1に示す。
また、得られたシリコーン樹脂微粒子含有PET樹脂組成物(固有粘度0.59)と固有粘度0.64の微粒子を含まないPET樹脂とをシリコーン樹脂微粒子の濃度が0.02%になるように混合し、170℃で3時間乾燥後、溶融押出し機にて溶融温度280〜300℃で溶融し、ダイから押出して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを75℃に予熱し、低速ローラーと高速ローラーの間で15mm上方より800℃の表面温度の赤外線ヒーター1本にて加熱して製膜方向(縦方向)に3.1倍に延伸し、急冷し、続いてステンターに供給し、120℃にて製膜方向に直交する方向(横方向)に3.9倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを235℃の温度で5秒間熱固定し、厚み14μmの2軸配向フィルムを得た。
得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0039】
[実施例2]
ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末と混合する粒子を球状シリカ粒子(日本触媒(株)製、商品名シーホスター、平均粒径1.5μm)とした以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物およびフィルムの特性を表1に示す。
【0040】
[実施例3]
ポリブチレンテレフタレート樹脂を粉砕して平均粒径285μmの微粉末状とし、不活性粒子をシリコーン樹脂微粒子(東芝シリコーン(株)製、商品名トスパール105:平均粒径0.5μm)とし、また、ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末とシリコーン樹脂微粒子の混合比やシリコーン樹脂微粒子の濃度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物およびフィルムの特性を表1に示す。
【0041】
[実施例4]
粉砕したポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の平均粒径を800μmとした以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物およびフィルムの特性を表1に示す。
【0042】
[実施例5]
ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末とシリコーン樹脂微粒子の混合比やシリコーン樹脂微粒子の濃度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物およびフィルムの特性を表1に示す。
【0043】
[比較例1]
粉砕したポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の平均粒径を1150μmとした以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物およびフィルムの特性を表1に示す。
【0044】
[比較例2]
粉砕したポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末を添加しなかった以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物およびフィルムの特性を表1に示す。
【0045】
[比較例3]
粉砕したポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末を添加しなかった以外は、実施例2と同様な操作を繰り返した。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物およびフィルムの特性を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
ここで、表1中の、PETはポリエチレンテレフタレート樹脂、PBTはポリブチレンテレフタレート樹脂、特定粒径の微粉末割合は平均粒径の0.2〜2倍の範囲にある微粉末の全微粉末中にしめる重量割合である。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、不活性粒子を添加する際に、ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末を添加するため、ポリエチレンテレフタレート樹脂中に不活性微粒子を凝集させることなく飛躍的に分散させることが出来、さらにポリエチレンテレフタレート樹脂と不活性粒子の界面のボイド発生も抑制することが出来、結果として均一に不活性粒子が分散した表面が平坦でありながらすべり性に優れ、しかも透明性や耐削れ性にも優れるフィルムを得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用するベント付二軸混錬押出し機を例示した側断面図である。
【符号の説明】
1 押出し機本体
2 加熱シリンダー
3 スクリュー
4 ポリマーの吐出口
5 定量フィーダー
6 ポリマー投入口
7 粒子および微粉末状ポリマーの投入口
8、9 ベント口
Claims (8)
- ポリエチレンテレフタレート樹脂を加熱して溶融状態にする第1の工程、溶融状態のポリエチレンテレフタレート樹脂に不活性粒子を添加する第2の工程および溶融状態のポリエチレンテレフタレート樹脂と不活性粒子とを混練する第3の工程からなり、不活性粒子を添加する際に、平均粒径が10〜1000μmのポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末を不活性粒子と同時に添加することを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 不活性粒子の添加量が、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の重量を基準として、0.01〜20重量%の範囲にある請求項1記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
- ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の添加量が、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の重量を基準として、0.001〜40重量%の範囲にある請求項1記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
- ポリブチレンテレフタレート樹脂微粉末の添加量が、不活性粒子の重量を基準として、10重量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 不活性粒子が無機粒子である請求項1記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 不活性粒子が有機粒子である請求項1記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 不活性粒子の平均粒径が、0.03〜10μmの範囲にある請求項1記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
- 溶融状態での混練が、ベント付二軸混練押出し機による請求項1記載のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
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