以下に、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態という。)について詳述する。但し、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[1]光記録方法
本実施の形態が適用される光記録方法の、その最も基本となる記録方法は、記録媒体に局所的に光を照射することによって、マーク長変調方式による記録マークを形成する場合において、記録マークを複数の記録パルスと冷却パルスに分割して記録を行う、いわゆる、分割記録パルスによる光記録方法に適用される。この最も基本となる記録方法を、以下に示すとおり記録パルス分割方法(I)と称する。
記録パルス分割方法(I);
一つの記録マークの記録マーク長をnTとしたとき(Tは基準クロック周期であり、nは2以上の自然数である。)、前記nTの記録マーク長を形成するために、
(ここで、mはパルス分割数を示す自然数である。αi(1≦i≦m)は0より大きい実数であり、βi(1≦i≦m−1)は0より大きい実数であり、βmは0以上の実数である。)のm個の記録パルスαiT(1≦i≦m)とm個のオフパルスβiT(1≦i≦m)を用い、1≦i≦mのいずれかにおけるαiTの時間内においては記録パワーPwiの記録光を照射し、1≦i≦m−1のいずれかにおけるβiTの時間内においては、Pbi<PwiかつPbi<Pwi+1なるバイアスパワーPbiの記録光を照射し、先頭の記録パルスα1Tは、前記nTの長さを有する記録マークの先頭位置から、時間dTtop(nTの長さを有する記録マークの先頭位置から遅れる場合を正とする。)だけずれて立ち上がるものとし、少なくとも2つの記録マークについては上記パルス分割数mを2以上とし、かつ、mが2以上の総ての記録マークについて2.5≦n/mとし、複数の異なる記録マーク長を同一のパルス分割数mでそれぞれ形成する場合に、α1及び/又はαmを変化させて前記異なる長さの記録マーク長をそれぞれ形成するとともに、前記α1を変化させる場合は、dTtop及び/又はβ1も変化させ、前記αmを変化させる場合は、βm−1及び/又はβmも変化させる、というパルス分割方法である。
このような記録パルス分割方法(I)の記録方法に従い光記録を行うことにより、基準クロック周波数が200MHz程度以上(基準クロック周期が5nsec程度以下)での高データ転送レートでのマーク長変調記録が良好にできるようになる。より具体的には、上記記録方法に従って光記録を行うことにより、RW−DVDの4倍速程度以上、CD−RWの32倍速程度以上の記録線速度において情報の書き換えが良好にできるようになる。また、上記記録方法に従って光記録を行うことにより、特に、基準クロック周波数が300MHz程度以上(基準クロック周期が3nsec程度以下)での高データ転送レートでの記録が良好にできるようになる。より具体的には、上記記録方法に従って光記録を行うことにより、RW−DVDの8倍速程度以上の記録線速度において、従来の記録ストラテジーでは実現不可能な良好なマーク長変調によるオーバーライト記録を実現できる。
本実施の形態が適用される光記録方法において、記録用光エネルギービームのエネルギー制御方法を、記録パルスストラテジー又はパルスストラテジーと総称する。特に、nTマークの形成を所定の時間的な長さに分割された複数の記録パワーレベルのパルス列で形成する方法を、分割記録パルスストラテジー、記録パルス分割方法、パルス分割方法、又は、分割記録パルス発生方法と称する。
Pwi及びPbiは、1≦i≦nにおける記録光の強度であり、特に、Pwiを記録パワーと称し、Pbiをバイアスパワー、オフパワー、又は冷却パワーと称する。本実施の形態においては、特に断らない限り、パワーとは、光エネルギーの強度のことを意味する。
また、記録パワーPwiを照射する区間αiTを、オンパルス区間あるいは記録パルス区間と称し、Pwiなる強度でαiTなる区間に照射する光エネルギーを、オンパルスあるいは記録パルスと称する。Pwiを照射することにより、記録層を記録マーク形成に必要な臨界温度Tcm以上に昇温せしめる。より具体的には、書き換え型相変化媒体においては、Tcmは記録層の融点である。
一方、バイアスパワーPbiを照射する区間βiTを、オフパルス区間あるいは冷却パルス区間と称し、Pbiなる強度でβiTなる区間に照射する光エネルギーを、オフパルスあるいは冷却パルスと称する。
そして、Pbi照射区間において、先行又は後続する記録パルス区間αiTで昇温された記録層から熱を放熱冷却させる。より具体的には、書き換え型相変化媒体では、非晶質マーク生成に必要な冷却速度を(単位時間当たりの温度低下率)を確保する。このため、1≦i≦m−1におけるPbiは、少なくとも直前の記録パルスの記録パワーPwi及び直後の記録パルスの記録パワーPwi+1よりも低くすることが必要である。具体的には、Pbi<Pwi、Pbi<Pwi+1であることが必要である。非晶質マークを形成する書き換え型相変化媒体においては、特に、Pbi≦0.2Pwi、Pbi≦0.2Pwi+1とし、冷却パルス区間において、より、効果的な拡散放熱が行われるようにする。
本実施の形態において、記録パワーPwi及びバイアスパワーPbiは、iの値によって可変としてもよいが、記録方法を簡便にしてより実使用に近づけるために、Pwi及びPbiは、原則として一定値、Pw及びPbを取ることが好ましい。特に、nが6以上では、記録パルス区間αiT乃至は冷却パルス区間βiTの時間幅のパラメータのみの調整で、同一の分割数mをとる複数のマーク長を形成するようにして、Pwi、Pbiはi及びnによらず、一定値Pw及びPbであることが好ましい。この場合にも、Pbmだけは、1≦i≦m−1におけるPbi=Pbとは異なる値をとることで、良好な結果が得られる場合がある。
なお、レーザーダイオードの動作の安定化のために、クロック周波数より概ね1桁以上高い高周波数で出力パワーを発振させる、いわゆる高周波重畳を行う場合には、平均パワーレベルをもって記録パワーレベルとする。平均パワーレベルをもって記録パワーレベルとすることは周知である。本発明でも、高周波重畳によるパワー変動は、平均化して考えることとする。
本明細書においては、記録パワーPwiをi(1≦i≦m)ごとに考慮する必要のある場合には、「Pwi」という表現を用いる。一方、記録パワーPwiをi(1≦i≦m)ごとに考慮する必要のない場合、又は、記録パワーPwiをi(1≦i≦m)によらず一定値と考える場合、には、「Pw」という表現を用いる。同様に、バイアスパワーPbiをi(1≦i≦m)ごとに考慮する必要のある場合には、「Pbi」という表現を用いる。一方、バイアスパワーPbiをi(1≦i≦m)ごとに考慮する必要のない場合、又は、記録パワーPbiをi(1≦i≦m)によらず一定値と考える場合、には、「Pb」という表現を用いる。
本実施の形態において、αiT及びβiT以外の区間での記録光強度については、特に、定めていないが、適用する記録媒体によって記録光強度が異なる。例えば、オーバーライト可能な書き換え型相変化媒体では、消去パワーPeを照射する。つまり、結晶状態を未記録・消去状態とし、非晶質状態を記録マークとするオーバーライト可能な書き換え型相変化媒体では、消去パワーPeは、記録層を結晶化温度以上、概ね融点以下の温度に昇温せしめる温度である。その場合、Pe/Pwは、通常0.1以上、好ましくは0.2以上とする。一方、Pe/Pwは、通常0.6以下、好ましくは0.4以下とする。上記範囲のうち、Pe/Pwは、0.1〜0.6のいずれかの値であり、特に、0.2〜0.4の範囲の値がより好ましい。この比が上記範囲より小さいと、消去パワーが低すぎて、非晶質マークの消え残りが生じやすくなる。一方、上記範囲より大きいと、Peの照射部が溶融したのち、再び非晶質化してしまう場合がある。尚、この場合、最後端の冷却パルス区間βmTにおけるバイアスパワーPbmは、Pbm<Pwm、0≦Pbm≦Peとするのが好ましい。
本実施の形態における記録マーク(あるいは、単にマーク)とは、記録層中に局所的に形成された、他の部分と光学的に区別しうる物理的状態として認識される。他の部分と光学的に区別できればよいため、一つの記録マークを連続的に形成してもよいし、一つの記録マークを光学的には連結してみえる程度であっても物理的には分離した複数のマークから形成してもよい。オーバーライト可能な書き換え型相変化記録の場合においては、記録マークは、結晶状態にある未記録・初期状態の記録層中に、局所的かつ空間的に連続的に形成された非晶質マーク、又は分離して形成された複数の非晶質マークから形成される。
上記記録マークを物理的に分離した複数のマークで形成する場合、複数の物理的マークを概ね0.2(λ/NA)の間隔よりも近接させるようにすれば、これらの複数の物理的マークを複数の分離したマークとしてではなく、一個のまとまったマークとして光学的に認識できるようになる。なお、NAは再生光の集束用の対物レンズの開口数であり、λは再生光波長である。
従って、マーク長nTの記録マーク1個を複数の物理的マークから形成する場合には、複数の物理的マークの間隔を0.2(λ/NA)よりも小さくするのが好ましい。
以下、図面に基づき、本実施の形態が適用される光記録方法について説明する。
図2は、本実施の形態が適用される光記録方法におけるパルス分割方法を実施する場合の、各記録パルスの関係の一例を説明するためのタイミングチャート図である。図2(a)は、形成するnTの記録長の記録マークのタイミングチャートを示す。図2(b)は、この記録マークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを示す。
光記録媒体に情報の記録を行う記録装置における、記録パワーPw、バイアスパワーPb、消去パワーPeそれぞれのレーザ光の照射タイミングを制御する電子回路(集積回路)は、図2に示すタイミングチャートを元に設計される。図2(b)においては、Pb≦Pe≦Pwとし、記録パルス区間αiT(i=1〜mの整数)における記録パワーはPwで一定であり、冷却パルス区間βiT(i=1〜mの整数)におけるバイアスパワーはPbで一定であり、マークの間及びαiT(i=1〜m)及びβiT(i=1〜m)以外の区間における光照射のパワーは消去パワーPeで一定である場合が示してある。
図2(a)において、200は長さnTの記録マークに対応した時間幅に対応する。図2(b)は、nTマーク長を形成するために、複数の記録パルス区間αiTと冷却パルス区間βiTに分割した光エネルギーを照射する時間変化をあらわす波形である。200は、基準クロックに同期して時間T1(nTマークの始点あるいは先頭位置と呼ぶ)で立ち上がり、時間nT経過後、また、基準クロックに同期して、時間T2(nTマークの終点あるいは後端位置と呼ぶ)で立ち下がる。マーク長変調記録では、nとして複数の整数値を取りうる。また、マークとマークとの間も、同様に複数の時間nTをとりうる。これをマーク間長もしくは、スペース長と呼ぶ。
先頭記録パルスα1Tの立ち上がるタイミング(始点)は、時間幅nTの立ち上がり(T1)から、dTtopの時間的ずれが存在するものとする。本実施の形態が適用される光記録方法では、dTtopは、T1から遅延する場合(nTの長さを有する記録マークの先頭位置から遅れる場合)を、正の値とする。dTtopは、図2及び以下の説明では、−2T以上2T以下の範囲を想定するが、nTマークの時間幅の信号図2(a)と、実際の分割記録パルス図2(b)との時間的位置関係は、相対的なものであり、時間T1をどこにとるかは任意性がある。なお、dTtopは、−2T以上2T以下の値を想定しており、当然dTtop=0(時間的ずれのない場合)もあり得る。
一方、βmTの終点とT2との時間的ずれがη2Tであり、T2より遅延する場合を、負の値とする。以上の定義に従えば、Σ(αi+βi)T+dTtop+η2T=nTとなる。Σ(αi+βi)Tは、必ずしも正確にnTである必要はないが、通常、nTとの差は、プラス・マイナス2Tの範囲内とするのが好ましい。
図1に示された従来の記録方式に対して、図2で示された本実施の形態が適用される光記録方法の意義は以下のとおりである。即ち、従来のCD−RW又はRW−DVDの規格書に記載の分割方式では、m=n−1、m=n/2又はm=(n+1)/2に固定されている。即ち、記録パルスとオフパルスからなる繰り返しの周期の平均値(本実施の形態においては、この一対の記録パルスとオフ(冷却)パルスからなる繰り返しの周期、即ち、(αi+βi)T、の平均値を、「分割(記録)パルスの平均周期」という場合がある。)は、約1T又は約2Tである。これに対して、本実施の形態においては、記録パルスの分割数mが2以上となるすべての記録マーク長において、n/mを2.5以上とする。nが6以上では、n/mは、2.5以上、好ましくは3以上とする。一方、n/mは、通常5以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4以下とする。
本実施の形態では、少なくとも2つの記録マーク長は、2個以上の記録パルスに分割して記録する。つまり、m=2以上である記録マーク長が少なくとも2つ存在する。マーク長変調記録では、nとしては2以上の自然数から複数かつ有限の値が選ばれるが、上記規定から、nとして5以上の値を含まれる場合を実質的に想定していることになる。通常CDで使用されるマーク長変調方式では、nとして3以上11以下の自然数を取りうる。また、DVDで使用されるマーク長変調方式では、nとして3以上11以下の自然数と14を取りうる。これらから、実用的なマーク長変調方式は、nとして5以上の値を含まれる場合を実質的に想定している。従って、本実施の形態が適用される光記録方法は、上記実用的なマーク長変調方式での記録に適用可能である。
なお、nは、符号理論によって有限個の値をとることができる。また、nの値に上限を決める必要はない。但し、nは、通常100以下、実用的には50以下、より実用的には20以下の値をとる。nが取りうる最大値をnmaxとする。一方、nの最小値(nmin)は、通常2又は3である。
ここで、仮にdTtop及びη2を0とすると、Σi(αi+βi)/m=n/mであるから、n/mは(αi+βi)の平均的な長さに対応する値であり、(n/m)Tは、また、分割パルスの平均周期に対応する値となる。従って、本実施の形態では、記録パルスとオフパルスからなる繰り返しの平均周期(分割パルスの平均周期)を概ね3Tとすることができる。
概ね3Tであるとは、mが2以上となるすべてのマーク長において、個々の(αi+βi)T(1≦i≦m−1)の値が2.5T以上、好ましくは3T以上となることをいう。一方、「概ね3T」という場合は、個々の(αi+βi)T(1≦i≦m−1)の値は、通常5T以下、好ましくは4.5T以下、より好ましくは4T以下となる。また、個々の(αi+βi)T(1≦i≦m−1)の平均値は、通常、2.5T以上4.5T以下となる。
ここで、(αm+βm)Tの場合を除外したのは以下の理由による。すなわち、後述のように、βmTは、ゼロとなりうる等他のβiTと大きく異なる値をとりうる。このため、(αm+βm)Tが必ずしも2.5T以上4.5T以下の範囲とならない場合があり得るからである。
この場合、同一分割数mで記録すべき、異なる記録マーク長の数が、平均して3個以上となるという特徴がある。即ち、n/mが概ね3であれば、必然的に、同一の分割数mで形成すべき記録マーク長は平均して3個となる。
本実施の形態の説明においては、従来の図1(b)、(c)で規定されたパルス分割方法を、記録パルスの繰り返し周期に注目した「1Tストラテジー」、及び「2Tストラテジー」と呼ぶ。一方、本実施の形態が適用されるパルス分割方法は、特にこの分割パルスの平均周期を概ね3Tとするため、「3Tストラテジー」と称する。
基準クロック周期Tがおよそ3nsecを切ると、従来の「1Tストラテジー」においては、分割パルスの平均周期が概ね3nsecを切る。従来の「2Tストラテジー」における分割パルスの平均周期は6nsecより短くなる。そしてこの場合、記録パルス区間αiTの平均値又はオフパルス区間βiTの平均値は「1Tストラテジー」では、約1.5nsec以下、「2Tストラテジー」でも約3nsec以下となる。これは少なくとも一つのiに対して、従来ストラテジーでは、αiTもしくはβiTのいずれかが3nsec以下になることを示す。なお、上記の説明において、どれか特定のαiもしくはβiを平均値より長くしたとしても、それは別のβiもしくはαiがさらに短くなることを意味している。このため、やはりαiTもしくはβiTのいずれかが小さくなることに変わりはない。そして、αiTもしくはβiTのいずれかが概ね3nsec以下、さらには、2nsec以下となると、高速記録においてビームの照射及び冷却時間が十分に確保されなくなる場合がある。
一方、本実施の形態が適用される光記録方法において、mが2以上となるすべての記録マーク長において、n/mを2.5以上とする。さらにnが6以上では、mを2以上とし、n/mを2.5以上とする。好ましくは、nが6以上では、mを2以上とし、n/mを3以上とすることである。一方、n/mの上限は、5以下とすることが好ましい。
m、n/mを上記のように規定することによって、記録パルスとオフパルスからなる繰り返しの平均周期を概ね3Tとすることができ、αiTとβiTの長さを十分なものとできるのである。例えば、記録パルス区間αiT、オフパルス区間βiTを1Tより十分長めに取ることができ、基準クロック周期Tが約3nsec程度になっても、平均的な記録パルス幅、及び、冷却パルス幅を約2nsec以上とできる。このため、記録層の加熱を十分に行うことができるようになる一方、後続パルスによる熱の供給を抑えて十分な冷却効果を得ることができる。このために、mが2以上の場合においては、隣り合う記録パルスの立ち上がり時間の間隔が、少なくとも2.5T以上、さらには3T以上離れており、βmTを除く、すべてのβiT(1≦i≦m−1)が、1Tより大きいことが好ましい。逆に、本実施の形態においては、基準クロック周期Tが、およそ3nsec以下となっても、βiT(1≦i≦m−1)を1Tより大きくすることが容易に実現できる。
mが2以上の記録マーク長のいずれかで、n/mが2.5未満であれば、図1に示された従来のストラテジーの範疇となり、一部の記録マークで上記本発明効果が得られず、ジッタ等が悪化するので、mが2以上のすべての記録マーク長に対してn/mが2.5以上となることが重要である。
一方、n/mは、n=5なる記録マークを一個の記録パルスで形成する場合を除き、通常5以下、好ましくは4.5以下とする。n/mが5より大きい場合、各記録パルス間の間隔が開きすぎて、光学的に見て連続な記録マークの形成が困難となる場合がある。
図2において、少なくともmが2以上となるすべての記録マーク長においては、3T乃至は4T周期のいずれかとなるように、αiTの立ち上がり及びαiTの立下りをクロック周期に同期させることが好ましい。これは、分割記録パルス発生のための電気回路が簡便化される、等の利点が発揮されるようになるためである。このため、1≦i≦m−1における個々の(αi+βi)Tの値は、3T乃至は4T(1≦i≦m−1における(αi+βi)が概ね3又は4のいずれかの値をとる)を基本とする。そして、先端のα1T及び後端のαmT立ち上がり(乃至は立下り)や、βmTの終点のタイミング(PbからPeへの切り替えのタイミング)を、当該3T乃至は4T周期を基準として、若干ずらすことが好ましい。なお、αiTと基準クロック周期は、αiTの立ち上がり(始点)で同期をとっても良いし、αiTの立ち下がり(終点)で同期をとっても良い。
つまり、nTマーク長に対応する時間幅nTの始点T1を基準として、記録パルスは、3Tあるいは、4T周期に同期して立ち上がる(乃至は立下りが同期する)ようにするのが好ましい。3T周期のみでもいいが、一部が4T周期となっていても良い。
ここで、α1Tは、かかる同期のタイミングT1に対して、dTtopのずれを許容する。また、αmTの立ち上がり時間をT3とすると、α1Tの立ち上がりの時間T1から、x個の3T周期とy個の4T周期(x、yは整数)を経てT3に到る。但し図2(b)に示すように、αmTの立ち上がりのタイミングは、かかる同期のタイミングに対して、dTlastのずれを許容するものとする。そして、T3からのずれをdTlastと定義する。dTlastは、T3から遅延する場合を、正の値とする。本実施の形態が適用される光記録方法では、このようなdTtop及びdTlast分のずれを考慮した上での、(αi+βi)に対する制限を、「(αi+βi)が概ね3又は4のいずれかの値をとる」という。
さて、本実施の形態が適用される光記録方法では、少なくとも2つ以上、好ましくは3個以上の記録マーク長において、mが2以上、つまり2個以上の記録パルスに分割して記録を行う。前述のように、n/mが概ね3であれば、必然的に、同一の分割数mで形成すべき記録マーク長は平均して3個となる。従って、同一の分割数で、少なくとも3個の異なる長さの記録マークを、それぞれ形成することが好ましい。
本実施の形態が適用される光記録方法では、複数の異なる記録マーク長を同一のパルス分割数mでそれぞれ形成するために、少なくともα1及び/又はαmを変化させる。つまり、主として、先頭の記録パルスα1T、又は、後端記録パルスαmTを変化させて前記異なる長さを有する記録マークを、それぞれ形成る。そして、前記α1を変化させる場合は、dTtop及び/又はβ1も変化させ、前記αmを変化させる場合には、βm−1及び/又はβmも変化させる。この場合、上記で変化させる可能性のある「α1、dTtop、β1」及び/又は「αm、βm−1、βm」以外の、αi(2≦i≦m−1)及びβi(2≦i≦m−2)は、iによらない一定値αc及びβcをとることがより好ましい。
本実施の形態が適用される光記録方法において好ましいのは、複数の異なる記録マーク長を同一のパルス分割数mでそれぞれ形成するために、少なくともα1又はαmを変化させることである。そして、前記α1を変化させる場合は、dTtop及び/又はβ1も変化させ、前記αmを変化させる場合には、βm−1及び/又はβmも変化させる。この場合、上記で変化させる可能性のある「α1、dTtop、β1」又は「αm、βm−1、βm」以外の、αi(2≦i≦m−1)及びβi(2≦i≦m−2)は、iによらない一定値αc及びβcをとることがより好ましい。
本実施の形態が適用される光記録方法においてより好ましいのは、以下の方法である。すなわち、同一のパルス分割数mで形成する複数の異なる記録マーク長における、1つの記録マーク長Aを形成するために用いる光記録方法を基準として考える。そしてこの基準とする光記録方法においてα1又はαmを変化させることにより、前記複数の異なる記録マーク長における前記記録マーク長A以外の記録マーク長を形成することである。このように、同一のパルス分割数mで形成する複数の異なる記録マーク長において基準となるマーク長を決めることにより、独立パラメータ数を削減できる。この結果、レーザー発光制御用の電子回路の設計が簡便となる。
ここで、同一のパルス分割数mで3つ以上の異なる記録マーク長を形成することが好ましい。このように3以上の記録マークを同一分割数mで形成するようにすれば、さらに独立パラメータの数を減らすことができる。この結果、レーザー発光制御用の電子回路の設計をさらに簡便にできるようになる。
(dTtop、α1T=Ttop、β1)及び(βm−1、αmT=Tlast、βmT=Tcl)は、それぞれマークの前後端位置とジッタの微調整に用いるパラメータであり、nTに比例したマーク長の補正は、主としてこれらの時間にかかわるパラメータの増減によって実現される。なお、前述のように、(αi+βi)が概ね3又は4のいずれかの値をとる場合には、β1Tはβ1T=(3Tもしくは4T)−(Ttop+dTtop)で自動的に決まり、βm−1Tはβm−1T=(3Tもしくは4T)−αcT+dTlastで自動的に決まる。その場合には、(Ttop、dTtop)で、マーク前端における調整を行い、(Tlast、dTlast、Tcl)で、マーク後端における調整を行う。
本発明者等は、前述した文献(例えば、Proceedings of PCOS2000、相変化記録研究会、2000年11月30日、2000年11月30日−12月1日号、p.52−55)において、同一の分割数mにおける偶数長マークと奇数長マークとの1T分のマーク長の差を良好に実現させるために、主としてβ1Tとβm−1Tの長さをそれぞれ補正してβ1’T、βm−1’Tとすることを提案している。
しかしながら、さらに検討を行った結果、上記β1とβm−1との補正だけでは、同一分割数mにおける複数の異なるマーク長を良好に形成することができなくなることが判明した。特に、同一分割数mで3個以上の異なるマーク長を、それぞれ形成する場合、β1、βm−1更にはその他のオフパルス区間の長さのみを調節して、同一分割数mにおける複数のマーク長を調整し、かつ、記録パワーがある程度変動した場合においても良好な記録特性を実現することは困難となることが判明した。
従来の記録パルス分割方法において、オフパルス区間βiT、(主としてβ1T、βm−1T)だけで、同一分割数mにおける複数の異なるマーク長を形成する場合、上記マーク形成のために付与される記録パルス区間の総和ΣαiTは、これらのマーク長で同一となる。また、本実施の形態において、好ましくは、一つの記録マークを形成する際の記録パルス区間における記録パワーPwが一定(つまり、α1TからαmTまでの各区間において記録パワーPwを一定とする。)である場合を想定している。このため、マーク長が異なるにもかかわらずΣαiTが同じであるということは、同一分割数の複数のマーク長形成にかかわる記録エネルギーの総和:Pw×(ΣαiT)が同一となることを意味する。
ところで、光記録媒体に記録を行うための記録装置(ドライブ)は、個々の記録装置間でレーザ発生装置の出力に若干のばらつきを有するのが通常である。これは、上記記録パワーPwが記録装置間でばらついているか、同一装置でも記録を行うごとに上記記録パワーPwがばらつくことを意味する。本発明者らが鋭意検討を加えた結果、上記した同一分割数の複数のマーク長形成に用いる記録エネルギーの総和:Pw×(ΣαiT)を一定とする記録エネルギーの照射方法では、上記記録装置間のPwのばらつき又は同一装置における記録毎のPwのばらつきにより、同一分割数mにおける各マーク長のPwによる変化率ΔTmarkが同一とならない問題があることがわかった。つまり、PwがばらついてΔPwの変化があったときに、各マーク長の変化率ΔTmarkがほぼ同一であれば問題はないが、記録方法としてオフパルス区間のみの補正(Pw×(ΣαiT)を一定とする方法)を行うと、ΔPwによって、各マークのΔTmarkの異なりが顕著になることが分かった。この場合、特に、マーク間長のジッタ(スペースジッタ又はランドジッタという)が大きくなりやすくなる。
尚、図1に示す従来の1Tベースの記録パルス分割方法では、マーク長が1T変化するたびに記録パルスを1個追加していたので、マーク長が長ければ、記録エネルギーの総和が単調増加するという規則が維持されていた。このため、記録装置間のPwのばらつき又は同一装置における記録毎のPwのばらつきに伴う、ΔTmarkは、ほぼ一定であったので、この問題は現れなかった。
一方、本発明「3Tストラテジー」の記録パルス分割方法では、上記Pwが変動したときのΔTmarkを同一分割数mで形成される複数のマーク長においてほぼ一定とする必要があるために、格別の工夫が必要になる。
このため、本発明者らは、記録装置間のΔPwに伴って生ずるΔTmarkを、同一分割数mで形成される複数のマーク長の間においてほぼ一定とするために、以下の方法が有効であることを見出した。すなわち、同一分割数mにおける、異なるマーク長を形成する場合に、αmT又はα1Tの少なくともいずれか一方を必ず補正し、記録エネルギーの総和Pw×(ΣαiT)を、マーク長ともに単調に増加させることが有効であることを見出したのである。
即ち、マーク長を短くする場合には、αmT乃至はα1Tの少なくとも一方を減少させることが好ましい。一方、マーク長を長くする場合には、αmT乃至はα1Tの少なくとも一方を増加させることが好ましい。
一方、記録パルスαiT(1≦i≦m)のうちのいずれを調整するかについては、mが増減する毎に最後尾のαiTが1個増えるのと同様の機能を持たせるために、同一のmにおいては最後尾のαiT即ち、αmTの長さを調節することが最も好ましい。α1T〜αm−1Tまでの、分割記録パルス発生方法を一定とできるので、独立パラメータ数を少なくできるからである。
次いで、Ttop=α1Tを調整することが好ましい。このように、最前部α1及び最後尾のαmを調節することが好ましいのは、このような調整により、少なくとも中間記録パルス、αiT(2≦i≦m−1)を一定に保つこと、αi+βi(2≦i≦m−1)を概ね3又は4のいずれかの値とすること、が可能となるからである。
そして、基準とするマーク長に対して、マーク長を±1T増減させる場合には、まず、Tlast=αmTを概ね1T以内で増減することが好ましい。2T以上のマーク長の増減を行う場合、これに加えて、Ttop=α1Tを概ね1T以内で増減するのが好ましい。
さらに、本発明者等の検討により、Ttop=α1Tを変更した場合には、dTtop及び/又はβ1Tを調整し、αmTを調整した場合には、βm−1T及び/又はβmTをあわせて調整することが、1T分のマーク長の補正と共に、マーク端における低いジッタを得ることに有効であることがわかった。
α1Tの長さの変化は、α1T照射による記録層溶融領域の前後への広がりを発生させるだけではない。つまり、この記録層溶融領域の前後への広がりに伴って、余熱効果も変化する。従って、α1Tの長さを変えると、マーク先端の再結晶化の状態が変化する傾向となる。このため、本発明においては、上記再結晶化の状態の変化を補うために、β1Tを調整する。そして、さらに好ましくはdTtopを微調整する。
つまり、α1Tを長くした場合には、上記余熱効果が増すため、β1Tも長くして、冷却効果を増すようにする。そして、必要に応じてdTtopの長さを調整することにより、マーク先端位置をより正確に制御する。一方、α1Tを短くした場合には、上記余熱効果が減るため、β1Tも短くして、冷却効果を減らすようにする。ただし、α1T及びβ1Tを短くすることは、(α1+β1)Tの周期を3Tより大幅に小さくすることとなる場合がある。このため、α1Tを長くするように調整を行うことが好ましい。
αmTの長さの変化は、α1Tの長さを変化させる場合と同様に、αmT照射による記録層溶融領域の前後への広がりを発生させるだけではない。つまり、この記録層溶融領域の前後への広がりに伴って、余熱効果も変化する。従って、αmTの長さを変えると、マーク後端の再結晶化の状態が変化する傾向にある。このため、本発明においては、上記再結晶化の状態の変化を補うために、βm−1Tを調整する。そして、さらに好ましくはβmTを調整する。
つまり、αmTを長くした場合には、上記余熱効果も増すため、βm−1T又はβmTを長くして冷却効果を増すようにする。一方、αmTを短くした場合は、上記余熱効果が減るため、βm−1T又はβmTを短くして冷却効果を減らすようにする。ただし、αmTを短くする場合にβm−1TやβmTを短くする操作と、αmTを長くする場合にβm−1TやβmTを長くする操作と、を比較すると、より重要なのは、αmTを短くする場合にβm−1TやβmTを短くする操作である。このため、αmTを長くする場合には、βm−1TやβmTを長くする操作は省略できる場合がある。
本実施の形態では、α1を調整する際にはdTtop及び/又はβ1を調整し、αmを調整する際にはβm−1及び/又はβmを調整する。しかしながら、同一分割数mで3以上の記録マーク長を形成する場合に2つの記録マーク長で上記条件が満足されていれば、ある程度の効果が得られる場合もある。このため、例えば以下の様な制御方法の例も本発明に含まれる。すなわち、例えば、同一分割数mで形成する3以上の記録マーク長における2つの記録マーク長を、αmを減ずると同時にβm−1及び/又はβmを調整して形成する。そして、上記2つの記録マーク長とは異なる記録マーク長を形成するために、αmを増やす場合には、βm−1、βmを変えないようにしてもよい。
これより、良好な高速記録が確実に行えるようになるとともに、特に、後述のCAVやP−CAV記録のように幅広い線速度範囲で良好な記録を行えることもわかった。
さらに、本発明者等の検討によれば、αmを増減して1T分のマーク長差を付与する場合に、その増減量は正確に1であるよりも、0〜1の範囲にあることが好ましいこともわかった。同様に、α1を増減して1T分のマーク長差を付与する場合に、その増減量は正確に1であるよりも、0〜1の範囲にあることが好ましいこともわかった。
さて、図2に示すような、実際の分割記録パルス光をレーザーダイオードから出力させるには、図3に例として示すようなタイミングチャートでゲート信号を発生する論理レベルの集積回路出力を、レーザードライバー回路に入力する。そして、レーザー駆動のための大電流を制御し、レーザーダイオードからの光出力を制御して記録パワーの制御をすることで、図2に示すような分割記録パルス光の制御が達成される。
図3は、本実施の形態が適用される光記録方法において、記録パルス分割方法を発生する(論理)回路のタイミングチャートの具体的な例であり、特に、n=11、m=4である場合に、各記録パルス及び冷却パルス区間が、基準クロック(300)とできるだけ同期するように設定された例である。つまり、1≦i≦m−1における(αi+βi)Tが、概ね3T周期となる例であるが、この一部または全部に4T周期が混じってもかまわない。図3では、論理レベルの高低2値レベルの切り替えに対応して、各パルスの生成(ON)と休止(OFF)とが決まる。
図3(a)は、時間幅nTのnTマーク長信号(301)であり、図3(b)〜(e)に示すように、302、303、304、305にそれぞれ示された複数の記録パルス制御用ゲートを組み合わせて生成される。即ち、先頭記録パルスα1Tを生成するゲート信号G1(302)、中間記録パルス群αiT(2≦i≦m−1)を生成するゲート信号G2(303)、および後端記録パルスαmT(304)を生成するゲートG3、Pe及びPbを印加する区間を定義して冷却パワーパルスを生成するための冷却パルス/消去パワー切り替えゲート信号G4(305)を別々に生成し、これを合成する。G1、G2、G3においては、ONレベルにおいて、記録パワーが発光されるものとする。なお、ゲート信号G4はそのオン区間は、α1Tの立ち上がりを基点として(即ち、T1からdTtopだけ遅延後)、Σ(αi+βi)Tの区間として設定される。
このようなゲート信号の優先関係は、ゲートのオン/オフを論理的な1(High)、0(Low)レベルに対応させて、各ゲート制御の論理信号の和演算を行うことによって達成される。具体的には、G1、G2、G3のオン信号が、G4のオン信号に優先し、G4オン期間中(Pb照射中)でも、G1、G2、G3がオンとなれば、Pwを照射するようにする。その結果、ゲート信号G4は、G1、G2、G3がいずれもオフとなる区間において、オフパルス区間βiTのタイミングを規定することになる。また、G1、G2、G3、G4の全てがオフの場合にPeが照射される。
図33は、本発明の光記録方法を実施するための光記録装置の一例であり、コンピュータ用のデータを記録するための光ディスク記録・再生装置としての実施形態の例である。
図33において、2001は、図示しないホストコンピュータとのデータの受け渡しをするためのインターフェース(I/F)回路、2002は記録するデータを符号変調するための変調回路、2003は該変調回路2002で変調された信号に基づき分割記録パルスを生成するための分割記録パルス生成制御回路である。また、2004は、分割記録パルス生成制御回路2003の出力する論理レベルの制御信号に基づいてレーザー光出力を制御するためのLDドライバ、2005は光ディスク記録・再生装置の光源となる半導体レーザー(LD)である。さらに、2006は、半導体レーザー2005からのレーザー光を記録媒体である光ディスク2007上に出射光として出力させ、光ディスク2007からの反射光を分離してフォトディテクタ2008に導くためのビームスプリッタである。
レーザー光は対物レンズ2009により、光ディスク2007上に集束する。なお、フォトディテクタ2008は反射光を受光して電気信号に変換するための部品である。
また、2010はフォトディテクタ2008の出力する電気信号から光ディスク2007上に記録された信号を検出し、そのための基準クロック(周期T)を生成する再生回路である。また、2011は上記再生回路2010より再生された光ディスク2007上に記録されたデータを復調するための復調回路であり、2012は光ディスク2007の記録・再生装置全体を制御するためのドライブマイコンである。さらに、2013は光ディスク(記録媒体)2007を回転させるためのスピンドルモーターである。
光ディスク(記録媒体)2007上に記録される記録データは、上記変調回路2002より符号変調されたパラレルデータをさらに、シリアルなNon Return to Zero Inverted(NRZI)信号に変換するマーク変調記録方式が採用されている。その際の動作クロックは上記再生回路2010から出力される基準クロックである。通常は、再生回路2010においては、光ディスク2007上にあらかじめ形成された案内溝の溝蛇行(wobble)信号を検出して、基準クロックを抽出する。このため、記録線速度に応じた基準クロックが得られる。
本実施の形態によれば、この分割記録パルス生成制御回路2003では、nTマーク長を形成するための分割記録パルスを、図3のタイミングチャートの例に示すような複数の部分パルスからなるゲート信号を分割生成する。そして、これらのうち記録パルスにかかわるゲート信号G1,G2,G3を合成した分割記録パルス制御信号Gsと、G4とを出力する。一連のnTマーク長が順に発生されるにつれ、対応するゲート信号Gsとマーク間の消去パワーレベルを規定するゲート信号G4が順次発生される。
なお、図3のタイミングチャートでは、4つの部分パルス群G1,G2,G3、G4を生成するゲート信号を用いたが、本発明における分割記録パルスの生成においては、必要に応じて、異なる組み合わせのゲート信号を用いることもできる。
一方、この4つのゲート信号発生において、たとえば、記録媒体Aに対して最適化された記録パルスを発生するためのゲート信号GA(G1A,G2A,G3A,G4A)、記録媒体Bに対して最適化された記録パルスを発生するためのゲート信号GB(G1B,G2B,G3B,G4B)のように、複数の記録媒体のそれぞれに適したゲート信号を用意し、ドライブマイコン2012からの選択信号2020によって選択することもできる。さらに、記録線速度のそれぞれに応じた分割記録パルスを生成するためのゲート信号を選択して使用する事もできる。
LDドライバ2004は、図34に示すような構成となっている。セレクタ2030は、複数(ここでは3個)のチャネル(出力端子)へそれぞれディジタル電圧制御信号を出力するためのものである。セレクタ2030で出力される3個のチャネルに対してそれぞれ指定されたディジタル電圧制御信号は、各チャネル(Ch1,Ch2,Ch3)から供給されるLD駆動用電流の大きさを示している。上記ドライブマイコン2012が設定した光ディスク2007に最適な分割記録パルスに基づき、例えば、ch1には、バイアスパワーPbに相当する値の電圧値、ch2にはバイアスパワーPbと合わせて消去パワーPeとなる値の電圧値、ch3には、バイアスパワーPb及び消去パワーPeと合わせて記録パワーPwになる値の電圧値を出力する。
このようなセレクタ2030の各チャネルからのディジタル電圧出力は、次に、ディジタル・アナログ変換器(Digital Analog Converter(以下DACという場合がある。)1,DAC2,DAC3(それぞれ、2031,2032,2033で示す)へ入力されてアナログ電圧に変換され、さらに、それぞれの電圧―電流(V/I)変換器2034,2035,2036により電流に変換される。その後、これら各チャネルの電流は、それぞれ、電流を増幅するためのイネーブル端子つきの電流増幅アンプ2037,2038,2039を介して電流加算器2040へ導かれる。その出力として半導体レーザー2005を制御・駆動するLD(制御電流)が得られる。
上記各チャネルch1、ch2の電流増幅アンプ2037,2038のイネーブル端子には、それぞれ分割記録パルス生成制御回路2003からのゲート信号GsとG4から生成した2種のチャネルイネーブル信号(ch1 enb,ch2 enb)が入力されている。
なお、各チャネルイネーブル信号(ゲート信号)とチャネル信号(各パワーレベルレベル)との関係を以下の表1に示す。こうして所望の電流パターンのLD制御信号が得られる。
なお、セレクタ2030においては、通常は、上記ch1、ch2に加え、再生光パワーレベルを出力するためのチャネルch3、チャネルイネーブル信号ch3 enbが追加される。また、G1、G2,G3のそれぞれに対して異なる記録パワーレベルを用いる場合には、それぞれを異なるチャネルに入力する。
中間記録パルス群αiT(2≦i≦m−1)は、mが3以上の場合に存在しうるが、その値は、iによらず一定値αcTを取ることが、ゲートG2を簡便化する上で好ましい。さらに、αcはnによって異なる値を取ることも可能であるが、nによらず一定値をとることが回路を簡便にするためには好ましい。
マーク後端位置は、最後端の後端記録パルスαmT=Tlastの立下り位置や、その後の記録層温度の冷却過程に依存する。また、マーク後端位置は、マーク最後端の分割パルス周期(αm+βm)Tにおける、記録パワーPwm、バイアスパワーPbm、βm−1、αm、及びβmの値に依存する。本実施の形態が適用される光記録方法では、最後端の記録パルス区間αmT=Tlast及びオフパルス区間βmT=Tclの値が、記録層の冷却速度に大きな影響を与える。
Tlastの立下り(終点)は、Tclの開始位置(始点)である。Tlastの立ち上がり(始点)は、やはり、dTlastによって基準クロックT3からのずれをもって規定される。dTlastは、T3より遅れる方向を正とする。後述のdTlast+及びdTlast−も同様に定義する。
dTlastは、通常−1.5T以上、好ましくは−T以上、より好ましくは−0.5T以上とする。一方、dTlastは、通常1.5T以下、好ましくはT以下、より好ましくは0.5T以下とする。αm−1Tの立ち上がり(始点)からT3までの時間が、3T又は4Tであれば、βm−1Tは、βm−1T=(3T又は4T)−αcT+dTlastで自動的に決まる。
先ず、Tlastを概ね1T、より好ましくは、0以上1T以下の範囲で増減して、マーク長を1T増減し、Tclで、ジッタが低くなるように調整し、dTlastで正確に1T分のマーク長差が得られるように微調整する。Tclの調整とdTlastの調整は、いずれか一方でもよい場合もある。また、βm−1が、上述のように、周期3T又は4T、Tlast、dTlastで自動的に決まってもかまわない。その場合、独立パラメータ数を少なくできる。
一方、マーク前端の位置は、ほぼ先頭記録パルスα1T=Ttopにおける記録パワーレーザー光の立ち上がり位置で決まり、そのジッタは、α1Tとβ1TにおけるパワーPw1、Pb1、さらには、α1Tとβ1Tのデューティー比で決まる。また、α1T=Ttopの立ち上がり位置は、クロック周期を基準にして、dTtopのずれにも依存する。dTtopは、T1より遅れる方向を正とする。
dTtopは、通常−1.5T以上、好ましくは−T以上、より好ましくは−0.5T以上とする。一方、dTtopは、通常1.5T以下、好ましくはT以下、より好ましくは0.5T以下とする。T1からα2Tの立ち上がり(始点)までの時間が、3T又は4Tであれば、β1Tは、β1T=(3T又は4T)−(Ttop+dTtop)で自動的に決まる。
先ず、Ttopを概ね1T、より好ましくは0以上1T以下の範囲で増減して、マーク長を1T増減する。そして、β1でジッタが低くなるように調整する。さらに、dTtopで正確に1T分のマーク長差が得られるように微調整する。
β1の調整とdTtopとの調整は、いずれか一方でもよい場合もある。また、β1が、上述のように、周期3T又は4T、Ttop、dTtopで自動的に決まってもかまわない。その場合、独立パラメータ数を少なくできる。
分割数mが3以上である場合は、先頭のパルスと最後尾のパルスと間に存在する中間記録パルス群のうち、i=2〜m−1のαiTは一定値αc、(αcT=Tmp)とすることでパルス発生回路を簡便化できることはすでに述べた。さらに、(αi+βi)Tも3T又は4Tのいずれかの値のみを取ることも、パルス発生回路を簡便化でき好ましいことをすでに述べた。ここで、「一定値」と言う場合、電子回路等の実性能上不可避的に発生するずれは許容されるものとする。即ち、良好な記録が可能となる本実施の形態の効果を奏する限り、多少のずれが生じてもよいのである。例えば、±0.2T程度のずれは、電子回路等の実性能上不可避的に発生するずれに含まれることになる。
以上のようにすることにより、記録パルスストラテジーの記録パルス及びオフパルスのレーザー光(パルス光)発生を制御する制御回路(論理回路、及びレーザードライバー回路)の設計がより簡便化されるようになる。
本実施の形態が適用される光記録方法では、図3に示したような論理回路レベルでの時間幅を基準にパルス幅を規定することとする。即ち、αiTの時間幅は、図3に示したタイミングチャートのような分割パルス発生論理回路におけるPwとPbとの間のパワーレベルの遷移、あるいはPwとPeとの間のパワーレベルの遷移に対応する論理レベルの遷移において、論理レベルの電圧又は電流出力が一方のレベルから他のレベルの半分に達した時間(半値幅)で定義する。Pe→Pwの遷移、Pb→Pwの遷移のいずれであっても、論理レベルでは2値レベル間の遷移となるので、半値幅の定義に区別はない。ここで論理レベルとは、例えば、TTLにおける、Lowレベル(通常0V)とHighレベル(通常3.5〜5V)との2値の電圧に対応するレベルのことである。
実際の出力光波形は、1〜2nsec程度の遅延を生じると共に、オーバーシュート、アンダーシュートを伴うので、その記録パワーの時間変動は、図2で示すような単純な方形波形状をしているわけではない。しかし、本実施の形態が適用される光記録方法における記録パルス分割方法では、記録パルス区間αiT(i=1〜m)が概ね2nsec以上あれば、記録光の立ち上がり/立ち下がりの問題はあるものの、記録パワーPwiを上げることで記録に必要な照射エネルギーを確保できる。その場合も、記録レーザー光パルスの立ち上がり及び立下りを、2nsec未満、より好ましくは1.5nsec未満、さらに好ましくは1nsec未満とすることで、必要な記録パワーPwを抑制することができる。
尚、実際の記録パワー立ち上がり、立下り時間は、通常、それぞれ、Pe又はPbとPwのパワーレベル間でパワーが遷移するとき、一方のレベルから、他方のレベルの差の10%から90%までの遷移に要する時間をいう。立ち上がり、立下り時間の合計は、通常αiTより小さく、αiTの80%以下であることが好ましく、αiTの50%以下であることがより好ましい。
本実施の形態が適用される光記録方法における記録パルス分割方法においては、論理レベルの時間幅と、実際の記録パワーの応答にずれがあったとしても、上記、立ち上がり、立下り時間程度の遅延であれば問題はなく、後述の記録パルス分割方法を規定する各パラメータ(論理レベルで規定)の、好ましいとする可変範囲において、良好な特性を得ることができる。逆に、そのような遅延やオーバーシュート等を必然的に伴う、レーザーダイオード出力であっても、概ね5nsec未満のクロック周期での分割記録パルスによるマーク長変調記録が可能となるのが本実施の形態が適用される光記録方法の重要な特徴である。
一方、オフパルス区間βiT(i=1〜m−1)も2nsec以上あれば、バイアスパワーPbを再生光パワーPrと同程度、あるいはトラッキングサーボ等他に支障の無い限り0まで下げることで冷却効果が確保できる。
さらに大きな冷却効果を得るためには、総ての記録マークの時間的長さについてΣi(αi)は0.5nよりも小さくするのが好ましい。より好ましくはΣi(αi)は0.4n以下とする。即ち、記録パルス区間の総和Σi(αiT)をΣi(βiT)より短くして、各マーク内でオフパルス区間が長くなるようにする。特に好ましくは、i=2〜m−1の総てのiに対してαiT≦βiTとし、少なくとも2番目以降の記録パルス列においてβiTをαiTよりも長くする。
本実施の形態において、βmを0として最後のオフパルス区間であるTcl=βmTにバイアスパワーのレーザ光を照射しなくてもよいが、通常は、マーク後端部の熱蓄積を避けるためにβmTを設けるのが好ましい。βmは0以上の実数とする。βmの上限は、通常10以下である。
具体的には、βmTは、通常2nsec以上とし、好ましくは3nsec以上とする。ここで、βmTのパルス時間幅は、上記αiTと同様に規定すればよい。すなわち、PwとPbとの間のパワーレベルの遷移及びPbとPeとの間のパワーレベルの遷移において、Pw−Pbの半分のパワーレベルに達した時間からPe−Pbの半分のパワーレベルに達した時間までをβmTのパルス時間幅とすればよい。そして、このパルス時間幅は、論理レベルの時間幅で代替しても良い。
本実施の形態が適用される記録方法において、αi(i=1〜m)及びβi(i=1〜m−1)の値は、記録パルス区間αiT(i=1〜m)やオフパルス区間βiT(i=1〜m−1)等の値によって適宜設定されるが、それぞれ0より大きく、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上であり、他方、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。特に、αi(i=1〜m)については、記録パルス区間αiTが長いと、溶融領域に熱がこもって非晶質マーク形成のための急冷が阻害される場合があるので、上限を2以下とすることが好ましい。一方、βi(i=1〜m−1)については、冷却効果を十分に確保するために、1以上とするのが好ましい。
オフパルス区間を大きくする効果は、マーク先端の形状に大きな影響を与える最初のオフパルス区間β1T及びマーク後端の形状に大きな影響を与える最後のオフパルス区間βmTにおいて特に大きい。
本実施の形態において、記録パルス区間αiT(i=1〜m)に照射する記録光のパワーPwi及びオフパルス区間βiT(i=1〜m−1)に照射する記録光のパワーPbiは、Pbi<Pwi、Pbi<Pwi+1なるものとする。但し、i及びnによらず、一つの記録パルス区間及びオフパルス区間中においては、Pw及びPbをそれぞれ一定値とすることが好ましい。大きな冷却効果を得るためには、総ての記録マークの時間的長さについて0≦Pb<Pwとするのが好ましい。より好ましくは0≦Pb/Pw≦0.2であり、さらに好ましくは0≦Pb/Pw≦0.1である。また、バイアスパワーPbは再生時に照射する光のパワーPrと等しくすることができる。その結果、パルス分割に必要な分割パルス回路の設定が簡便になる。
パルス幅に関するパラメータαi(i=1〜m)及びβi(i=1〜m−1)は、1/16T以上の高分解能で指定できることが好ましい。より好ましくは、1/20T以上、さらに好ましくは1/32T以上の光分解能で指定できることである。1/8Tより荒い低分解能では、良好な記録が可能な最適なパルス幅に関するパラメータ値を見出せない場合がある。
そのような場合に、特定の一つの記録マークの時間的長さに対して、iに応じてPbi及び/又はPwiとして異なる2以上の値を用いることもできる。例えば、先頭の記録パルス区間α1T及び最後尾の記録パルス区間αmTにおける記録パワーPw1及びPwmを、中間の記録パルス区間αiT(i=2〜m−1)における記録パワーPwi(i=2〜m−1)と異なる値とすることで、マークの始端部・終端部のマーク形状を正確に制御することができるようになる。この場合、中間の記録パルス区間αiT(i=2〜m−1)における記録パワーPwiは、総て同じパワー値にするのが、分割パルス回路の設定が簡便となり好ましい。オフパルス区間βiT(i=1〜m−1)におけるバイアスパワーPbiについても同様に、総てのiで同じパワー値とし、βmTにおけるバイアスパワーPbmのみを補助的に他のPbと異なる値とするのが好ましい。また、mが1である複数のマーク長のマークを良好に記録するために、異なるnを有する少なくとも2つの記録マークの間で、同じiに対して異なるPwi及び/又はPbiの値としてもよい。その場合も、Pbは一定とするのが好ましい。
バイアスパワーPbは再生光の再生に要する再生パワーPrとほぼ同じ値であることが好ましく、CD−RWにおいては、通常は2mW以下、好ましくは1.5mW以下、より好ましくは1mW以下、より一層好ましくは0.5mW以下の値とする。フォーカスやトラッキングサーボに支障が無い限りできるだけ0に近づけたほうが、Pb照射区間(オフパルス区間)における記録層の急冷効果が促進されて好ましい。なお、Pw、Pe及びPbの値は、必ずしも直流的に一定である必要はなく、例えばクロック周期Tの1/10程度以下の周期で高周波重畳を加えてレーザーの動作を安定させることができる。この場合のPw、Pe及びPbはそれらの平均値となる。
本実施の形態において、第1義的には、Ttop=α1T、dTtop、β1T、Tlast=αmT、dTlast、及びβmT=Tclのいずれかの時間の(パルス幅に関する)パラメータの制御のみで、正確なマーク長の制御と、低ジッタを実現できる。このため、上記時間のパラメータの設定になんらかの制限がある場合においてのみ、Pw1、Pwm、Pbmを個別に微調整することが回路を簡素化する上で好ましい。上記制限とは、具体的には、パルス幅に関するパラメータ値を設定するための分解能が荒く、パルス幅設定だけでは良好な記録ができないような場合である。
より具体的には、αiT、βiTは、1/8T、好ましくは、1/10Tより細かい時間刻みで、設定値を最適化できることが望ましい。しかしながら、電子回路の性能上、通常は、0.0l〜0.2nsecが、設定の限界であることが多い。たとえば、0.2nsecが限界となる場合、基準クロック周期がその10倍となる2nsecより短い場合には、記録パルスや冷却パルスの時間幅の制御だけでは、記録品質(ジッタ等)が不十分な場合がある。そのような場合には、補助的にα1T、αmT、βmTの期間における記録パワー強度や冷却パワー強度を、上記α1T、αmT、βmTの期間内において段階的に変化させたり、他のαiT、βiTにおける記録パワー強度や冷却パワー強度と異なる値とすることが、有効となる場合がある。
本実施の形態が適用される光記録方法における「3Tストラテジー」は、分割数mのnに対する周期性を維持することが望ましい。即ち、「分割数mのnに対する周期性」を維持する場合としては、nが3増える毎にmが1増える場合と、nが4増える場合にmが1増える場合とが考えられる。それぞれを、以下では、「n/3ストラテジー」及び「n/4ストラテジー」と呼ぶ。尚、同様の表記法を用いれば、記録パルスの繰り返し周期に注目した図1(b)の「1Tストラテジー」及び図1(c)の「2Tストラテジー」は、それぞれ、「n/1ストラテジー」及び「n/2ストラテジー」と呼ぶことができる。
以下において、「n/3ストラテジー」や「n/4ストラテジー」につき、その周期性に注目したより具体的な方法を述べるが、以下において、n=2、3、4、そして、場合によっては、n=5の場合は、このような周期的な分割数の増減や、図5のパラメータ(αi、βi、dTtop、dTlast)の周期的な変化の規則に従わないことが多い。
n=5の場合は、m=1乃至は2のいずれかをとりうるが、m=1でのみ、n/m=5となり、m=2とすれば、n/m=2.5となる。つまり、nが5以上の場合には、n/mの最小値は2.5をとりうるが、nが6以上の場合における、n/mは概ね3とするのが好ましく、具体的には、2.5<n/m≦4.5の範囲の値とするのが好ましい。尚、基準クロック周期が、概ね2nsecをきる場合には、m=1とし、それ以上の場合はm=2とするのが好ましい場合がある。5Tマーク(n=5)をm=2で形成する場合は、他のm=2である記録マーク長とのマーク長の差を正確に形成するために、PwやPbの値を、他のm=2であるマーク長とは異なる値とすることも有効である。
さらに、n=2、3、4の場合には、m=1とする。これら短いマーク(2Tマーク、3Tマーク、4Tマーク)を2個以上の記録パルスに分割して記録すると、記録パルス区間、冷却パルス区間の幅を平均して2Tより大きくすることが困難となる。このため、本実施の形態が適用される光記録方法の趣旨である、基準クロック周期を短くした場合に、記録区間の時間長又は冷却区間の時間長のいずれかが不十分となる傾向にある。
分割数mが1の場合、α1、β1がαm、βmを兼ねるから、他のnとは異なる値として、α1、β1のみで、マーク長とマーク前端のジッタと後端のジッタとを調整する必要がある。n=2、3、4の場合も、主として、パルス幅のパラメータであるα1、β1を調整して、異なるマーク長を、それぞれ形成するのであるが、特に、これらのマーク長においては、他のマーク長における記録パワーPw、バイアスパワーPbとは異なるPw1やPb1を補助的に用いて、異なるマーク長を、それぞれ形成することがより有効である。
さて、「n/3ストラテジー」の具体例として記録パルス分割方法(II)を以下に説明する。
記録パルス分割方法(II);
n=2、3、4のマーク長においてはm=1、n=5、6、7のマーク長においてはm=2、n=8、9、10のマーク長に対してはm=3、n=11、12、13のマーク長に対しては、m=4、n=14、15、16のマーク長に対しては、m=5である記録方法を挙げることができる。即ち、「n/3ストラテジー」では、同じ分割数mに対して、異なるマーク長が3つずつ組になっている。n=2〜16を、mが同じ3個のnごとに区切って、n/mを計算した値を順に並べると、(2、3、4)、(2.5、3、3.5)、(2.67、3、3.3)、(2.75、3、3.25)、(2.8、3、3.2)となる。nが17以上の場合にも同様に、n=3L−1、3L、3L+1(Lは自然数)を一組として、m=Lとすればよい。
この場合、全マーク長におけるn/mの平均値は、ちょうど3となる。また、mが2以上の場合のn/mの平均値もちょうど3となる。さらに、nが5以上(mが2以上)のマーク長においては、個々のn/mも2.5以上となるので、αi+βiも2.5以上とすることが可能となる。また、n/mが3以下となるn=5、8、11、14のマーク長においても、n=5(m=2)の場合を除いて、n/mは、約2.7より大きくできる。このため、αiTの繰り返し周期を、概ね3に近い値とすることができる。
尚、nに関する3ごとの周期性を、n=6以上に限って適用し、6以上のすべてのnにおいてn/mを3以上とでき、αi+βiをより確実に3以上とすることができる方法として、以下の記録パルス分割方法(III)法が挙げられる。
記録パルス分割方法(III);
n=2、3、4のマーク長においてはm=1、n=5、6、7、8のマーク長においてはm=2、n=9、10、11のマーク長に対してはm=3、n=12、13、14のマーク長においてはm=4、n=15、16、17のマーク長に対しては、m=5である記録方法を挙げることができる。nが6以上では、同じ分割数mに対して、異なるマーク長が3つずつ組になっている。n=2〜17を、mが同じものごとに区切って、n/mを計算した値を順に並べると、(2、3、4)、(2.5、3、3.5、4)、(3、3.3、3.67)、(3、3.3、3.67)、(3、3.3、3.67)となる。nが18以上の場合も同様に、n=3L、3L+1、3L+2(Lは自然数)を一組として、m=Lとすればよい。
「n/3ストラテジー」(II)に対する、(III)の利点は、6以上のnに対して、αi+βiを3以上とできることと、後述のように、独立パラメータの数を少なくし、記録パルスの立ち上がり、立下りを基準クロックに同期させやすいということである。
一方、「n/4ストラテジー」の具体例としては、記録パルス分割方法(IV)が挙げられる。
記録パルス分割方法(IV);
n=2、3、4のマーク長においてはm=1、n=5、6、7、8のマーク長においてはm=2、n=9、10、11、12のマーク長に対してはm=3、n=13、14、15、16のマーク長に対しては、m=4である記録方法を挙げることができる。即ち、「n/4ストラテジー」では、n=2、3、4の場合を除いて、同じ分割数mに対して、異なるマーク長が4つずつ組になっている。n=2〜16を、mが同じものごとに区切って、n/mを計算した値を順に並べると、(2、3、4)、(2.5、3、3.5、4)、(3、3.3、3.67、4)、(3.25、3.5、3.75、4)となる。nが17以上の場合にも同様に、n=4L−3、4L−2、4L−1、4Lを一組として、m=Lとすればよい。
「n/3ストラテジー」に対する、「n/4ストラテジー」の利点は、n=2、5の場合を除いて、すべてのnにおいてn/mを3以上とでき、個々のαi+βiを3乃至は4とすることができる点である。これにより、αiT及びβiTを確実に1Tより大きな値とすることができる。さらには、αiT及びβiTを概ね1.5Tより大きな値とできるので、基準クロック周波数がより高い(基準クロック周期がより短い)場合まで適用できる。
以下において、各記録パルス分割方法を、独立パラメータの数を少なくし、記録パルスの立ち上がり、立下りを基準クロックに同期させるという観点から、より具体的で好ましい形態をもって説明する。以下の説明は、さらにまた、先頭記録パルスαiT=Ttop、中間記録パルス群αiT=αcT=Tmp(2≦i≦m−1、αcはこれらのiによらない一定値)、後端記録パルスαmT=Tlastの3つの部分に分けて、分割記録パルスを発生させるという、図3に示した論理回路に適応した方法となっている。
図4は、記録パルス分割方法(II)を、n=2〜16からなるマーク長に適用したタイミングチャートの具体例である。そして、各記録パルスの立ち上がり、または、立下りの位置を、基準クロックとできるだけ同期させている。それととともに、複数のマーク長における各パラメータを、nに関する周期性を考慮して、できるだけ規則的に変化させたものである。図4では、特に、mが2以上では、n=3L−1(図4(a))、n=3L(図4(b))、n=3L+1(図4(c))(L≧2の整数)の3つのマーク長を一組として考え、Lが1増減すれば、mを1増減させている。そして、n=3Lの記録マーク長を形成するために用いる光記録方法(記録パルス分割方法)を基準として、プラス・マイナス1Tのマーク長差を、原則として、Lによらない一定のパラメータを用いて実現している。
具体的には、同一の分割数m=L(L≧2)で形成する、n=3L−1、n=3L、n=3L+1の3つの記録マーク長を一組とし、n=3Lの記録マーク長を形成するために用いる光記録方法(記録パルス分割方法)を基準として、前記光記録方法において少なくともαmを増減することによって、n=3L−1とn=3L+1の記録マーク長をそれぞれ形成する。そして、n=3Lの系列、n=3L−1の系列、n=3L+1の系列のそれぞれで、Lに依存しない独立パラメータを決める。このようにすることで、独立パラメータの数を大幅に少なくできる。以下では、この具体例を記録パルス分割方法(IIa)とする。
図5は、特にL=4の場合の例である。図4におけるn=3L−1、n=3L、n=3L+1(L≧2の整数)の3つのマーク長を一組とする、周期的なパラメータ変化に注目して詳細な説明を行う。
先ず、記録パルス幅は一定値、Tmp=αcTを基本とする。そして、原則として、記録パルスは、周期3Tをもって基準クロック周期Tに同期して発生される。そして、nが3増える毎(マーク長が3T増える毎、Lが1増える毎)に、時間的長さTmpの中間記録パルスとそれに続くオフパルスの1組が、周期3Tで追加される。図5(a)に示すように、基準クロック周期Tは500の一箱の区間で表され、nTマークは、基準クロックに同期した一点である時間T1を先頭とする。
そして、図5(c)に示すように、n=3Lの場合には、Ttop=α1T(501)が、T1からdTtop(503)の時間的ずれをもって発生される。dTtopは、この図では、T1から遅延する場合を正の値とする。dTtopは、Ttopの先頭位置におけるnTマークの先頭位置(T1)からの同期のずれ時間を定義しており、正確なマーク前端位置の調整に利用される。通常は、先頭記録パルスには、それに先行する記録パルスからの余熱がないので、Ttop≧Tmpとして、後続のTmp区間における加熱と同等の加熱効果が得られるようにするのが好ましい。この場合には、β1T(504)は、β1T=3T−(Ttop+dTtop)で決まるので、独立パラメータではない。
Ttopの後、周期3Tで、基準クロックに同期してm−2個のTmp(502)と、Tlast=αmT(505)との順に記録パルスが発生され、最後にTcl=βmT(506)のオフパルスが発生される。よって、オフパルス区間βiT(2≦i≦m−2)は、3T−Tmp=(3−αc)T=βcT(507)となる。また、βm−1T(508)は、やはりβm−1T=3T−Tmpで決まるから、独立パラメータではない。Tmpは、前述のように、3T周期ごとに基準クロック周期に同期して繰り返し発生される。もちろん、n=5、6、7の場合には、中間記録パルス区間Tmpは発生されない。なお、Tlastの始点にdTlastのずれを付加することは適宜可能であるが、dTlast=0とすることが好ましい。
一方、図5(d)に示すように、n=3L+1の場合は、やはり、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生される。また、Ttopの後、m−2個のTmpとTlastとの順に記録パルスが発生され、最後にTclが発生される。ここで、Tlast及びTclは、n=3Lの場合とは異なる値Tlast+(510)、Tcl+(511)をとりうる独立パラメータである。また、Tlast+(510)は、補正値dTlast+(512)を付加して、基準クロックからの同期をずらすことができるものとする。Tlast+、Tcl+、及び、dTlast+により、n=3Lの場合より、1T長いマーク長が形成される。通常は、Tlast+>Tlastとし、0<(Tlast+−Tlast)≦Tとするのが好ましい。なお、βm−1T(513)は、βm−1T=3T−Tmp+dTlast+で決まるから、独立パラメータではない。つまり、dTlast+の調整は、βm−1Tの調整を行っていることを意味する。
図5(b)に示すように、n=3L−1の場合には、やはり、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生される。また、Ttopの後、m−2個のTmpと、Tlastとの順に記録パルスが発生され、最後にTclが発生される。ここで、Tlast、Tclは、n=3Lの場合とは異なる値Tlast−(520)、Tcl−(521)をとりうる独立パラメータである。また、Tlast−(520)は、補正値dTlast−(522)を付加して、基準クロックからの同期をずらすことができるものとする。Tlast−、Tcl−、及び、dTlast−により、n=3Lの場合より、1T短いマーク長が形成される。通常は、Tlast>Tlast−とし、0<(Tlast−Tlast−)≦Tとするのが好ましい。なお、βm−1T(523)は、βm−1T=3T−Tmp+dTlast−で決まるから、独立パラメータではない。つまり、dTlast−の調整は、βm−1Tの調整を行っていることを意味する。
ただし、n=5は、他のn=3L−1の場合とは異なるdTtop、Ttop、Tlast、dTlast、Tclをそれぞれ決める自由度があることが望ましい。このため、独立パラメータであることを明らかにするため、図4においては、dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5と表記している。5Tマーク長では、n/m=2.5であるため、他のn=3L−1であるマーク長と異なり、記録パルスの繰返し周期が2.5T程度と小さくなる。このため、5Tマーク長は、他のn=3L−1であるマーク長と同じパラメータでは、正確なマーク長と、低ジッタの実現が難しい場合がある。
n=2、3、4の場合は、m=1である。このため、一対の記録パルス区間Ttopとオフパルス区間β1T=Tclで、n=2、3、4のマーク長をそれぞれ形成すると同時に、低いマーク端ジッタを実現する。いずれの場合も、dTtop、Ttop、Tclの3つのパラメータで定義される。そして、それぞれのパラメータは、他のいずれのマーク長におけるdTtop、Ttop、Tclとは別に独立して、定められるものとする。即ち、図4に示すように、2Tマーク長においては、dTtop2、Ttop2、Tcl2、3Tマーク長においては、dTtop3、Ttop3、Tcl3、4Tマーク長においては、dTtop4、Ttop4、Tcl4をもって、それぞれ異なるマーク長を形成する。
以上をまとめると、図4で定義される記録パルス分割方法(IIa)における独立パラメータの数は、n=2、3、4におけるそれぞれ3個を合計した9個のパラメータ(dTtop2、Ttop2、Tcl2、dTtop3、Ttop3、Tcl3、dTtop4、Ttop4、Tcl4)、n=5における5個のパラメータ(dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5)、及びn=6以上における11個のパラメータ(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、Tcl+、dTlast+、Tlast−、Tcl−、dTlast−)である。パラメータの数は、全部で9+5+11=25個となる。
また、通常は、dTlast+、Tcl+のうちのいずれか一方は、dTlast+=0、乃至は、Tcl+=Tclとして、独立パラメータの数を一つ減らすことができる。同様に、dTlast−、Tcl−のうちのいずれか一方は、dTlast−=0、乃至は、Tcl−=Tclとして、独立パラメータの数を一つ減らすことができる。即ち、n=6以上における独立パラメータを(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、dTlast+、Tlast−、dTlast−)の9個、または(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、Tcl+、Tlast−、Tcl−)の9個とすることもできる。
n=5における5個のパラメータ(dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5)が、n=6以上の場合のn=3L−1におけるパラメータ(dTtop、Ttop、Tlast−、dTlast−、Tcl)と一部又は全部が同じであれば、独立パラメータの数をさらに減らすことができ好ましい。
記録パルス分割方法(IIa)の利点は、後端記録パルス区間αmT=Tlastの及びその前後の区間(βm−1T、βmT=Tcl)の調整で、n=3L−1、3L、3L+1の3つのマーク長をそれぞれ形成できる点にある。尚、βm−1Tの調整は、dTlastの調整を介して行っている。そして、n=6以上における11個のパラメータ、(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、Tcl+、dTlast+、Tlast−、Tcl−、dTlast−)がLによらず一定であるということは、n=5の場合を除いて、n=3L−1、3L、3L+1(L≧2)の3つの記録マーク長におけるそれぞれの(αm、βm−1、βm)の値が、Lによらず一定ということになる。
さらに、n=5における5個のパラメータ(dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5)が、L≧3の場合のn=3L−1の場合におけるパラメータと同じであれば、L≧2のすべての場合においてn=3L−1、3L、3L+1(L≧2)の3つの記録マーク長におけるそれぞれの(αm、βm−1、βm)の値が、Lによらず一定ということになる。
図22は、記録パルス分割方法(II)の他の一例である。図22では、特に、mが2以上では、n=3L−1、3L、3L+1(L≧2の整数)の3つのマーク長を一組として考え、Lが1増減すれば、mを1増減するようにしている。そして、n=3Lの記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、プラス・マイナス1Tのマーク長差を、原則として、Lによらず、一定のパラメータを用いて実現している。具体的には、同一の分割数m=L(L≧2)で形成する、n=3L−1、3L、3L+1の3つの記録マーク長を一組とし、n=3Lの記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において少なくともαmを減ずることによって、n=3L−1の記録マーク長を形成し、n=3Lの記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において少なくともα1を増加させることにより、n=3L+1の場合の記録マーク長を形成する。そして、n=3Lの系列、n=3L−1の系列、n=3L+1の系列のそれぞれで、Lに依存しない独立パラメータを決める。このようにすることで、独立パラメータの数を大幅に少なくできる。以下では、この具体例を記録パルス分割方法(IIb)とする。
特に、L=4の場合を例とする図23で、図22におけるn=3L−1、3L、3L+1(L≧2の整数)の3つのマーク長を一組とする、周期的なパラメータ変化に注目して詳細な説明を行う。
まず、記録パルス幅は一定値、Tmp=αcTを基本とする。そして、原則として、記録パルスは、周期3Tをもって基準クロック周期Tに同期して発生される。そして、nが3増える毎(マーク長が3T増える毎、Lが1増える毎)に、時間的長さTmpの中間記録パルスとそれに続くオフパルスの1組が、周期3Tで追加される。基準クロック周期Tは、図23(a)の600の一箱の区間で表され、nTマークは、基準クロックに同期した一点である時間T1を先頭とする。
そして、n=3L(図23(c))の場合には、Ttop=α1T(601)が、T1からdTtop(603)の時間的ずれをもって発生される。dTtopは、この図では、T1から遅延する場合を正の値とする。dTtopは、Ttopの先頭位置におけるnTマークの先頭位置(T1)からの同期のずれ時間を定義しており、正確なマーク前端位置の調整に利用される。通常は、先頭記録パルスには、それに先行する記録パルスからの余熱がないので、Ttop≧Tmpとして、後続のTmp区間における加熱と同等の加熱効果が得られるようにするのが好ましい。β1T(604)は、この場合には、β1T=3T−(Ttop+dTtop)で決まるので、独立パラメータではない。
Ttopの後、周期3Tで、基準クロックに同期してm−2個のTmp(602)と、Tlast=αmT(605)との順に記録パルスが発生され、最後にTcl=βmT(606)のオフパルスが発生される。よって、オフパルス区間βiT(2≦i≦m−2)は、3T−Tmp=(3−αc)T=βcT(607)となる。また、この場合には、βm−1T(608)も、βm−1T=3T−Tmpで決まるから、独立パラメータではない。なお、Tlastの始点にdTlastのずれを付加することは適宜可能であるが、dTlast=0とすることが好ましい。
Tmpは、前述のように、3T周期ごとに基準クロック周期に同期して繰り返し発生される。もちろん、n=5、6、7の場合には、中間記録パルス区間Tmpは発生されない。
一方、n=3L+1(図23(d))の場合には、やはり、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生されるが、Ttop、dTtopは、n=3Lの場合とは異なる値、Ttop+(610)、dTtop+(611)をとりうるものとする。
また、Ttop+の後、m−2個のTmpと、Tlastとの順に記録パルスが発生され、最後にTclが発生される。主として、Ttopをn=3Lとは異なる値Ttop+とし、dTtop+で補正することにより、n=3Lよりも1T長いマーク長を形成する。この際、α2Tは、T1から4T周期をもって立ち上がるものとする。通常は、Ttop+>Ttop、とし、0<(Ttop+−Ttop)≦Tとするのが好ましい。これに伴い、β1T(612)は、β1T=4T−(Ttop++dTtop+)により決まるので、独立パラメータではない。つまり、dTtop+及びTtop+の調整は、β1Tの調整を行っていることを意味する。
このように、Ttopを増減する場合、T1からα2Tの立ち上がりまでの周期を1T増減することで、後続の記録パルスの発生が1Tのずれで、基準クロック周期との同期を維持できる。また、Ttopを減少させる場合、T1とα2Tの立ち上がりまでの時間が2Tとなって、十分な冷却時間β1Tが維持できなくなる。このため、Ttopを可変して1Tのマーク長差を付ける場合は、1T増加させることが好ましい。
n=3L−1(図23(b))の場合には、やはり、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生される。また、Ttopの後、m−2個のTmpと、Tlastとの順に記録パルスが発生され、最後にTclが発生される。ここで、Tlast、Tclは、n=3Lの場合とは異なる値Tlast−(620)、Tcl−(621)をそれぞれとりうる独立パラメータである。また、Tlast−(620)は、補正値dTlast−(622)を付加して、基準クロックからの同期をずらすことができるものとする。Tlast−、Tcl−、及び、dTlast−により、n=3Lの場合より、1T短いマーク長を形成する。通常は、Tlast>Tlast−とし、0<(Tlast−Tlast−)≦Tとするのが好ましい。なお、βm−1T(623)は、βm−1T=3T−Tmp+dTlast−で決まるから、独立パラメータではない。つまり、dTlast−の調整は、βm−1Tの調整を行っていることを意味する。
ただし、n=5は、他のn=3L−1の場合とは異なるdTtop、Ttop、Tlast、dTlast、Tclをそれぞれ決める自由度があることが望ましい。このため、それぞれ、独立パラメータであることを明らかにするため、図22においては、dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5と表記する。5Tマーク長ではn/m=2.5であるため、他のn=3L−1であるマーク長と異なり、記録パルスの繰返し周期が2.5T程度と小さくなる。このため、5Tマーク長は、他のn=3L−1であるマーク長と同じパラメータでは、正確なマーク長と、低ジッタの実現が難しい場合がある。
n=2、3、4の場合は、m=1である。このため、一対の記録パルス区間Ttopとオフパルス区間β1T=Tclで、n=2、3、4のマーク長をそれぞれ形成すると同時に、低いマーク端ジッタを実現する。いずれの場合も、dTtop、Ttop、Tclの3つのパラメータで定義される。そして、それぞれのパラメータは、他のいずれのマーク長におけるdTtop、Ttop、Tclとは別に独立して、定められるものとする。すなわち、図4に示すように、2Tマーク長においては、dTtop2、Ttop2、Tcl2、3Tマーク長においては、dTtop3、Ttop3、Tcl3、4Tマーク長においては、dTtop4、Ttop4、Tcl4をもって、それぞれ異なるマーク長を形成する。
以上をまとめると、図22で定義される記録パルス分割方法(IIb)における独立パラメータの数は、n=2、3、4におけるそれぞれ3個を合計した9個のパラメータ(dTtop2、Ttop2、Tcl2、dTtop3、Ttop3、Tcl3、dTtop4、Ttop4、Tcl4)、n=5における5個のパラメータ(dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5)、及びn=6以上における10個のパラメータ(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、dTtop+、Ttop+、Tlast−、Tcl−、dTlast−)である。すなわち、パラメータの数は、全部で9+5+10=24個となる。
なお、m=2以上のn=3L−1のマーク長を形成する際に、dTlast−をゼロとするか、Tcl−=Tclとすることも可能である。つまり、n=3L−1における、dTlast又はTclの一方だけを、n=3Lの場合と異なる値とすることでも良好な結果が得られる場合が多い。この場合、n=6以上における独立パラメータを(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、dTtop+、Ttop+、Tlast−、Tcl−)の9個、または、(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、dTtop+、Ttop+、dTlast−、Tlast−)の9個とすることができる。
n=5における5個のパラメータ(dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5)が、n=3L−1(L≧3)における独立パラメータ(dTtop、Ttop、Tlast−、dTlast−、Tcl−)の一部又は全部と同じであれば、独立パラメータの数をさらに減らすことができ好ましい。
記録パルス分割方法(IIb)の利点は、同一分割数m=L(L≧2)における、n=3L−1、3L、3L+1となる3つの記録マーク長を一組とし、n=3Lの記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において、後端記録パルス区間αmT=Tlast及びその前後の区間(βm−1T、βmT=Tcl)の調整でn=3L−1の記録マーク長を形成する点にある。
また、記録パルス分割方法(IIb)の別の利点は、同一分割数m=L(L≧2)における、n=3L−1、3L、3L+1となる3つの記録マーク長を一組とし、n=3Lの記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において先端記録パルス区間α1T=Ttop及びその後の区間β1Tの調整でn=3L+1の記録マーク長を形成する点にある。
なお、βm−1Tの調整は、dTlastの調整を介して行っており、β1Tの調整は、Ttop=α1TとdTtopの調整を介して行っている。
そして、n=6以上における10個のパラメータ、(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、dTtop+、Ttop+、Tlast−、Tcl−、dTlast−)がLによらず一定であるということは、n=5の場合を除いて、n=3L−1、3L、3L+1(L≧2)の3つの記録マーク長におけるそれぞれの(α1、dTtop、β1、αm、βm−1、βm)の値が、Lによらず一定ということになる。さらに、n=5における5個のパラメータ(dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5)が、n=6以上の場合のn=3L−1の場合におけるパラメータと同じであれば、L≧2のすべての場合においてn=3L−1、3L、3L+1(L≧2)の3つの記録マーク長におけるそれぞれの(α1、dTtop、β1、αm、βm−1、βm)の値が、Lによらず一定ということになる。
なお、記録パルス分割方法(IIa)、(IIb)において、n=3L−1においてαmを小さくするのではなく、α1を小さくすることでマーク長を調整することも可能である。但し、α1を小さくすることによりα1+β1が3より短くなる場合があるため、この場合にはαmを小さくすることが好ましい。
図6は、記録パルス分割方法(III)を、n=2〜17からなるマーク長に適用した具体例である。そして、各記録パルスの立ち上がり、または、立下りの位置を、基準クロックとできるだけ同期させている。それとともに、複数のマーク長における各パラメータを、nに関する周期性を考慮して、できるだけ規則的に変化させたものである。以下では、この具体例を記録パルス分割方法(IIIa)とする。
nが6以上の場合には、n=3L、n=3L+1、n=3L+2(L≧2の整数)の3つのマーク長を一組として考える。そして、n=3Lの記録マーク長を形成するために用いる光記録方法(記録パルス分割方法)を基準として、プラス1T及びプラス2Tのマーク長差を、原則として、Lによらない一定のパラメータを用いて実現している。具体的には、同一の分割数m=L(L≧2)で形成する、n=3L、n=3L+1、n=3L+2の3つの記録マーク長を一組とし、n=3Lの記録マーク長を形成するために用いる光記録方法(記録パルス分割方法)を基準として、前記光記録方法において少なくともαmを増加させて、n=3L+1の記録マーク長を形成し、さらに、n=3L+1の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法(記録パルス分割方法)を基準として、前記光記録方法において少なくともα1を増加させることにより、n=3L+2との記録マーク長を形成する。そして、n=3Lの系列、n=3L+1の系列、n=3L+2の系列のそれぞれで、Lに依存しない独立パラメータを決める。このようにすることで、独立パラメータの数を大幅に少なくできる。
図7は、特にL=4の場合の例である。図6におけるn=3L、n=3L+1、n=3L+2(L≧2の整数)の3つのマーク長を一組とする、周期的なパラメータ変化に注目して詳細な説明を行う。
先ず、記録パルス幅は、一定値Tmp=αcTを基本とする。そして、原則として、記録パルスは、周期3Tをもって基準クロック周期Tに同期して発生される。そして、nが3増える毎(マーク長が3T増える毎、Lが1増える毎)に、時間的長さTmpの中間記録パルスとそれにつづくオフパルスとの1組が周期3Tで追加される。図7(a)に示すように、基準クロック周期Tは700の一箱の区間で表され、nTマークは、基準クロックに同期した一点である時間T1を先頭とする。
そして、図7(b)に示すように、n=3Lの場合には、Ttop=α1T(701)が、T1からdTtop(703)の時間的ずれをもって発生される。dTtopは、この図では、T1から遅延する場合を正の値とする。dTtopは、Ttopの先頭位置におけるnTマークの先頭位置(T1)からの同期のずれ時間を定義しており、正確なマーク前端位置の調整に利用される。通常は、先頭記録パルスには、それに先行する記録パルスからの余熱がないので、Ttop≧Tmpとして、後続のTmp区間における加熱と同等の加熱効果が得られるようにするのが好ましい。この場合には、β1T(704)は、β1T=3T−(Ttop+dTtop)で決まるので、独立パラメータではない。
Ttopの後、周期3Tで、基準クロックに同期してm−2個のTmp(702)と、Tlast=αmT(705)との順に記録パルスが発生され、最後にTcl=βmT(706)のオフパルスが発生される。よって、オフパルス区間βiT(2≦i≦m−2)は、3T−Tmp=(3−αc)T=βcT(707)となる。また、βm−1T(708)は、やはりβm−1T=3T−Tmpで決まるから、独立パラメータではない。Tmpは、前述のように、3T周期ごとに基準クロック周期に同期して繰り返し発生される。もちろん、n=5、6、7、8の場合には、中間記録パルス区間Tmpは発生されない。なお、Tlastの始点にdTlastのずれを付加することは適宜可能であるが、dTlast=0とすることが好ましい。
一方、図7(c)に示すように、n=3L+1の場合は、やはり、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生される。また、Ttopの後、m−2個のTmpと、Tlastとの順に記録パルスが発生され、最後にTclが発生されるのである。ここで、Tlast及びTclは、n=3Lの場合とは異なる値Tlast+(710)、Tcl+(711)をとりうる独立パラメータである。また、補正値dTlast+(712)を付加して、基準クロックからの同期をずらすことができるものとする。Tlast+、Tcl+、dTlast+により、n=3Lの場合より、1T長いマーク長を形成する。通常は、Tlast+>Tlastとし、0<(Tlast+−Tlast)≦Tとするのが好ましい。なお、βm−1T(713)は、βm−1T=3T−Tmp+dTlast+で決まるから、独立パラメータではない。つまり、dTlast+の調整は、βm−1Tの調整を行っていることを意味する。
図7(d)に示すように、n=3L+2の場合には、やはり、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生される。但し、Ttop、dTtopは、他の3L、3L+1の場合とは異なる値、Ttop+(720)、dTtop+(721)をとりうるものとする。また、Ttop+の後、m−2個のTmpと、Tlastとの順に記録パルスが発生され、最後にTclが発生される。ここで、Tlast、Tclは、n=3L+1の場合と同じ値Tlast+(723)、Tcl+(724)及び補正値dTlast+(725)をとりうるものとする。主として、Ttopをn=3L+1とは異なる値Ttop+とし、dTtop+で補正することにより、n=3L+1よりも1T長いマーク長が形成される。この際、α2Tは、T1から4T周期をもって立ち上がるものとする。通常は、Ttop+>Ttop、とし、0<(Ttop+−Ttop)≦Tとするのが好ましい。これに伴い、β1T(722)は、β1T=4T−(Ttop++dTtop+)により決まるので、独立パラメータではない。つまり、dTtop+及びTtop+の調整は、β1Tの調整を行っていることを意味する。
このように、Ttopを増減する場合、T1からα2Tの立ち上がりまでの周期を、1T増減することで、後続の記録パルスの発生が1Tのずれで、基準クロック周期との同期を維持できる。また、Ttopを減少させる場合、T1とα2Tの立ち上がりまでの時間が2Tとなって、十分な冷却時間β1Tが維持できなくなる場合がある。このため、Ttopを可変して1Tのマーク長差をつける場合は、1T増加させることが好ましい。
n=5は、他のn=3L+2の場合とは異なるdTtop、Ttop、Tlast、dTlast、Tclをそれぞれ決める自由度があることが望ましい。このため、それぞれ、独立パラメータであることを明らかにするため、図6においては、dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5と表記する。5Tマーク長ではn/m=2.5であるため、他のn=3L+2であるマーク長と異なり、記録パルスの繰返し周期が2.5T程度と小さくなる。このため、5Tマーク長は、他のn=3L+2であるマーク長と同じパラメータでは、正確なマーク長と、低ジッタの実現が難しい場合がある。
n=2、3、4の場合は、m=1である。このため、一対の記録パルス区間Ttopとオフパルス区間β1T=Tclで、n=2、3、4のマーク長をそれぞれ形成すると同時に、低いマーク端ジッタを実現する。いずれの場合も、dTtop、Ttop、Tclの3つのパラメータで定義される。そして、それぞれのパラメータは、他のいずれのマーク長における、dTtop、Ttop、Tclとは別に独立して、定められるものとする。即ち、図6に示すように、2Tマーク長においては、dTtop2、Ttop2、Tcl2、3Tマーク長においては、dTtop3、Ttop3、Tcl3、4Tマーク長においては、dTtop4、Ttop4、Tcl4をもって、それぞれ異なるマーク長を形成する。
以上をまとめると、図6で定義される記録パルス分割方法(IIIa)における独立パラメータの数は、n=2、3、4におけるそれぞれ3個を合計した9個のパラメータ(dTtop2、Ttop2、Tcl2、dTtop3、Ttop3、Tcl3、dTtop4、Ttop4、Tcl4)、n=5における5個のパラメータ(dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5)、及びn=6以上における10個のパラメータ(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、dTlast+、Tcl+、dTtop+、Ttop+)である。すなわち、パラメータの数は、全部で9+5+10=24個となる。
尚、m=2以上のn=3L+2のマーク長を形成する際に、さらに、Tlast+、Tcl+を、n=3L+1のマーク長の場合と異なる値Tlast+2、Tcl+2としてもよい。Tlast+2及びTcl+2を独立パラメータとして別途定めることで、より良いジッタが得られる場合がある。一方で、dTlast+、dTlast+2をゼロとするか、Tcl+=Tcl、Tcl+2=Tclとすることも可能である。つまり、n=3L+1、3L+2における、dTlastもしくは、Tclの一方だけをn=3Lの場合と異なる値とすることでも良好な結果が得られる場合が多い。この場合、n=6以上における独立パラメータを(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、Tcl+、dTtop+、Ttop+)又は(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、dTlast+、dTtop+、Ttop+)の9個とすることができる。
n=5における5個のパラメータ(dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5)が、n=3L+2(L≧2)における独立パラメータ(dTtop+、Ttop+、Tlast+、dTlast+、Tcl+)の一部又は全部と同じであれば、独立パラメータの数をさらに減らすことができ好ましい。
記録パルス分割方法(IIIa)の利点は、同一分割数m=L(L≧2)における、n=3L、3L+1、3L+2となる3つの記録マーク長を一組とし、n=3Lの記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において、後端記録パルス区間αmT=Tlast及びその前後の区間(βm−1T、βmT=Tcl)の調整のみでn=3L+1の記録マーク長を形成する点にある。
記録パルス分割方法(IIIa)の別の利点は、同一分割数m=L(L≧2)における、n=3L、3L+1、3L+2となる3つの記録マーク長を一組とし、n=3L+1の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において先端記録パルス区間α1T=Ttop及びその後の区間β1Tの調整でn=3L+2の記録マーク長を形成する点にある。
なお、βm−1Tの調整は、dTlastの調整を介して行っており、β1Tの調整は、Ttop=α1TとdTtopの調整を介して行っている。
そして、n=6以上における10個のパラメータ、(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、dTlast+、Tcl+、dTtop+、Ttop+)が、Lによらず一定であるということは、n=3L、3L+1、3L+2(L≧2)の3つの記録マーク長におけるそれぞれの(α1、dTtop、β1、αm、βm−1、βm)の値が、Lによらず一定であるということに他ならない。
図24は、記録パルス分割方法(III)の他の一例である。以下では、この具体例を記録パルス分割方法(IIIb)とする。
nが6以上の場合には、n=3L、3L+1、3L+2(L≧2の整数)の3つのマーク長を一組として考える。そして、n=3Lの記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、プラス1T及びプラス2Tのマーク長差は、原則として、Lによらない一定のパラメータを用いて実現している。具体的には、同一の分割数m=L(L≧2)で形成する、n=3L、3L+1、3L+2の3つの記録マーク長を一組とし、n=3Lの記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において少なくともα1を増加させて、n=3L+1の記録マーク長を形成し、n=3L+1の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において少なくともαmを増加させることにより、n=3L+2の場合の記録マーク長を形成する。そして、n=3Lの系列、n=3L+1の系列、n=3L+2の系列のそれぞれで、Lに依存しない独立パラメータを決める。このようにすることで、独立パラメータの数を大幅に少なくできる。
特に、L=4の場合を例とする図25において、図24におけるn=3L、3L+1、3L+2(L≧2の整数)の3つのマーク長を一組とする、周期的なパラメータ変化に注目して詳細な説明を行う。
まず、記録パルス幅は、一定値Tmp=αcTを基本とする。そして、原則として、記録パルスは、周期3Tをもって基準クロック周期Tに同期して発生される。そして、nが3増える毎(マーク長が3T増える毎、Lが1増える毎)に、Tmpの中間記録パルスとそれにつづくオフパルスとの1組が周期3Tで追加される。基準クロック周期Tは、図25(a)の800の一箱の区間で表され、nTマークは、基準クロックに同期した一点である時間T1を先頭とする。
そして、n=3L(図25(b))の場合には、Ttop=α1T(801)が、T1からdTtop(803)の時間的ずれをもって発生される。dTtopは、この図では、T1から遅延する場合を正の値とする。dTtopは、Ttopの先頭位置におけるnTマークの先頭位置(T1)からの同期のずれ時間を定義しており、正確なマーク前端位置の調整に利用される。通常は、先頭記録パルスには、それに先行する記録パルスからの余熱がないので、Ttop≧Tmpとして、後続のTmp区間における加熱と同等の加熱効果が得られるようにするのが好ましい。この場合には、β1T(804)は、β1T=3T−(Ttop+dTtop)で決まるので、独立パラメータではない。
Ttopの後、周期3Tで、基準クロックに同期してm−2個のTmp(802)と、Tlast=αmT(805)との順に記録パルスが発生され、最後にTcl=βmT(806)のオフパルスが発生される。よって、オフパルス区間βiT(2≦i≦m−2)は、3T−Tmp=(3−αc)T=βcT(807)となる。また、βm−1T(808)も、βm−1T=3T−Tmp決まるから独立パラメータではない。なお、Tlastの始点にdTlastのずれを付加することは適宜可能であるが、dTlast=0とすることが好ましい。
Tmpは、前述のように、3T周期ごとに基準クロック周期に同期して繰り返し発生される。もちろん、n=5、6、7、8の場合には、中間記録パルス区間Tmpは発生されない。
一方、n=3L+1(図25(c))の場合には、やはり、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生されるが、Ttop、dTtopは、他の3Lの場合とは異なる値、Ttop+(810)、dTtop+(811)をとりうるものとする。
また、Ttop+の後、m−2個のTmpと、Tlastとの順に記録パルスが発生され、最後にTclが発生される。主として、Ttopをn=3Lとは異なる値Ttop+とし、dTtop+で補正することにより、n=3Lよりも1T長いマーク長を形成する。この際、α2Tは、T1から4T周期をもって立ち上がるものとする。通常は、Ttop+>Ttop、とし、0<(Ttop+−Ttop)≦Tとするのが好ましい。これに伴い、β1T(812)は、β1T=4T−(Ttop++dTtop+)により決まるので、独立パラメータではない。つまり、dTtop+及びTtop+の調整は、β1Tの調整を行っていることを意味する。
n=3L+2(図25(d))の場合には、やはり、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生されるが、Ttop及び、dTtopは、n=3L+1と同じ値、Ttop+(820)及びdTtop+(821)をとるものとする。この際、α2T=Tmpは、T1から4T周期をもって立ち上がるものとする。これに伴い、β1T(822)は、β1T=4T−(Ttop++dTtop+)により決まるので、独立パラメータではない。つまり、dTtop+及びTtop+の調整は、β1Tの調整を行っていることを意味する。
α2Tを含めてm−2個のTmpが発生された後、Tlastの記録パルスが発生され、最後に冷却パルスTclが発生される。ここで、Tlast及びTclは、n=3L+1の場合とは異なる値Tlast+(823)、Tcl+(824)をとりうる。また、補正値dTlast+(825)を付加して、基準クロックからの同期をずらすことができるものとする。Tlast+、Tcl+、dTlast+により、n=3L+1の場合より、1T長いマーク長をするのである。通常は、Tlast+>Tlastとし、0<(Tlast+−Tlast)≦Tとするのが好ましい。なお、βm−1T(826)は、βm−1T=3T−Tmp+dTlast+で決まるから、独立パラメータではない。つまり、dTlast+の調整は、βm−1Tの調整を行っていることを意味する。
n=5は、他のn=3L+2の場合とは異なるdTtop、Ttop、Tlast、dTlast、Tclをそれぞれ決める自由度があることが望ましい。このため、それぞれ、独立パラメータであることを明らかにするため、図24においては、dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5と表記する。5Tマーク長ではn/m=2.5であるため、他のn=3L+2であるマーク長と異なり、記録パルスの繰返し周期が2.5T程度と小さくなる。このため、5Tマークは、他のn=3L+2であるマーク長と同じパラメータでは、正確なマーク長と、低ジッタの実現が難しい場合がある。
n=2、3、4の場合は、m=1である。このため、一対の記録パルス区間Ttopとオフパルス区間β1T=Tclで、n=2、3、4のマーク長をそれぞれ形成すると同時に、低いマーク端ジッタを実現する。いずれの場合も、dTtop、Ttop、Tclの3つのパラメータで定義される。そして、それぞれのパラメータは、他のいずれのマーク長における、dTtop、Ttop、Tclとは別に独立して、定められるものとする。すなわち、図24に示すように、2Tマーク長においては、dTtop2、Ttop2、Tcl2、3Tマーク長においては、dTtop3、Ttop3、Tcl3、4Tマーク長においては、dTtop4、Ttop4、Tcl4をもって、それぞれ異なるマーク長を形成する。
以上をまとめると、図24で定義される記録パルス分割方法(IIIb)における独立パラメータの数は、n=2、3、4におけるそれぞれ3個を合計した9個のパラメータ(dTtop2、Ttop2、Tcl2、dTtop3、Ttop3、Tcl3、dTtop4、Ttop4、Tcl4)、n=5における5個のパラメータ(dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5)、及びn=6以上における10個のパラメータ(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、dTtop+、Ttop+、Tlast+、dTlast+、Tcl+)である。すなわち、パラメータの数は、全部で9+5+10=24個となる。
なお、m=2以上のn=3L+2のマーク長を形成する際に、さらに、Ttop+、dTtop+を、n=3L+1のマーク長の場合と異なる値Ttop+2、dTtop+2としてもよい。Ttop+2及びdTtop+2を独立パラメータとして別途定めることで、より良いジッタが得られる場合がある。一方で、dTlast+をゼロとするか、Tcl+=Tclとすることも可能である。つまり、3L+2における、dTlastもしくは、Tclの一方だけをn=3L、3L+1の場合と異なる値とすることでも良好な結果が得られる場合が多い。この場合、n=6以上における独立パラメータを(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、dTtop+、Ttop+、Tlast+、Tcl+)の9個、もしくは、(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、dTtop+、Ttop+、dTlast+、Tlast+)の9個とすることができる。
n=5における5個のパラメータ(dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5)が、n=3L+2(L≧3)における独立パラメータ(dTtop+、Ttop+、Tlast+、dTlast+、Tcl+)の一部又は全部と同じであれば、独立パラメータの数をさらに減らすことができ好ましい。
記録パルス分割方法(IIIb)の利点は、同一分割数m=L(L≧2)における、n=3L、3L+1、3L+2となる3つの記録マーク長を一組とし、n=3Lの記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において、前記光記録方法において先端記録パルス区間α1T=Ttop及びその後の区間β1Tの調整でn=3L+1の記録マーク長を形成する点にある。
記録パルス分割方法(IIIb)の他の利点は、同一分割数m=L(L≧2)における、n=3L、3L+1、3L+2となる3つの記録マーク長を一組とし、n=3L+1の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、後端記録パルス区間αmT=Tlast及びその前後の区間(βm−1T、βmT=Tcl)の調整でn=3L+2の記録マーク長を形成する点にある。
なお、βm−1Tの調整は、dTlastの調整を介して行っており、β1Tの調整は、Ttop=α1TとdTtopの調整を介して行っている。
そして、n=6以上における10個のパラメータ、(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、dTlast+、Tcl+、dTtop+、Ttop+)が、Lによらず一定であるということは、n=3L、3L+1、3L+2(L≧2)の3つの記録マーク長におけるそれぞれの(α1、dTtop、β1、αm、βm−1、βm)の値が、Lによらず一定ということになる。
図8は、記録パルス分割方法(IV)を、n=2〜16からなるマーク長に適用したタイミングチャートの具体例である。そして、各記録パルスの立ち上がり、または、立下りの位置を、基準クロックとできるだけ同期させている。それとともに、複数のマーク長における各パラメータを、nに関する周期性を考慮して、できるだけ規則的に変化させたものである。図8では、特に、mが2以上では、n=4L−3、n=4L−2、n=4L−1、n=4L(L≧2の整数)の4つのマーク長を一組として考え、Lが1増減すれば、mを1増減させる。そして、原則として、n=4L−2の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法(記録パルス分割方法)を基準として、プラス2T・マイナス1Tのマーク長差を、原則として、Lによらない一定のパラメータを用いて実現している。
具体的には、同一の分割数m=L(L≧2)で形成する、n=4L−3、n=4L−2、n=4L−1、n=4Lの4つの記録マーク長を一組とし、n=4L−2の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法(記録パルス分割方法)を基準として、前記光記録方法において少なくともαmを増減して、それぞれn=4L−1とn=4L−3との記録マーク長をそれぞれ形成し、さらに、n=4L−1の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法(記録パルス分割方法)を基準として、前記光記録方法において少なくともα1を増加させて、n=4Lの記録マーク長を形成する。そして、n=4L−3の系列、n=4L−2の系列、n=4L−1の系列、n=4Lの系列のそれぞれで、Lに依存しない独立パラメータを決める。このようにすることで、独立パラメータの数を大幅に少なくできる。以下では、この具体例を記録パルス分割方法(VIa)とする。
図9は、特にL=3の場合の例である。図8におけるn=4L−3、n=4L−2、n=4L−1、n=4L(L≧2の整数)の4つのマーク長を一組とする周期的なパラメータ変化に注目して詳細な説明を行う。
先ず、記録パルス幅は、一定値Tmp=αcTを基本とする。そして、原則として、記録パルスは、周期3T乃至は4Tをもって基準クロック周期Tに同期して発生される。そして、nが4増える毎(マーク長が4T増える毎、Lが1増える毎)に、Tmpの中間記録パルスとそれに続くオフパルスの1組が周期4Tで追加される。基準クロック周期Tは、図9(a)の900の一箱の区間で表され、nTマークは、基準クロックに同期した一点である時間T1を先頭とする。
そして、図9(c)に示すように、n=4L−2の場合には、Ttop=α1T(901)が、T1からdTtop(903)の時間的ずれをもって発生される。dTtopは、この図では、T1から遅延する場合を正の値とする。
dTtopは、Ttopの先頭位置におけるnTマークの先頭位置(T1)からの同期のずれ時間を定義しており、正確なマーク前端位置の調整に利用される。通常は、先頭記録パルスには、それに先行する記録パルスからの余熱がないので、Ttop≧Tmpとして、後続のTmp区間における加熱と同等の加熱効果が得られるようにするのが好ましい。β1T(904)は、この場合にはβ1T=3T−(Ttop+dTtop)で決まるので、独立パラメータではない。
Ttopの後、周期3Tで、基準クロックに同期して最初のTmp(902)がT4で発生され、以後は周期4Tとなって、最後にT5でTlast=αmT(905)の順に記録パルスが発生され、最後にTcl=βmT(906)のオフパルスが発生される。よって、オフパルス区間βiT(2≦i≦m−2)は、4T−Tmp=(4−αc)T=βcTとなるが、図9に示す例では現れない。また、βm−1T(907)は、この場合には、4T−Tmp=(4−αm−1)Tとできる。この記録パルス分割方法においては、Lが一個増えればTmpが、4T周期ごとに基準クロック周期に同期して繰り返し発生される点が、記録パルス分割方法(IIa)、(IIIa)とは、異なる。もちろん、n=5、6、7、8の場合には、中間記録パルス区間Tmpは発生されない。なお、Tlastの始点にdTlastのずれを付加することは適宜可能であるが、dTlast=0とすることが好ましい。
図9(b)に示すように、n=4L−3の場合は、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生される。また、Ttopの後、周期3Tで、基準クロックに同期して最初のTmpがT4で発生され、以後は周期4Tとなって、T5でTlast=αmTの順に記録パルスが発生され、最後にTcl=βmTのオフパルスが発生される。ここで、Tlast、Tclは、n=4L−2の場合とは異なる値Tlast−(910)、Tcl−(911)をそれぞれとりうる独立パラメータである。また、Tlast−(910)は、補正値dTlast−(912)を付加して、基準クロックからの同期をずらすことができるものとする。Tlast−、Tcl−、及び、dTlast−により、n=4L−2の場合より、1T短いマーク長を形成する。通常は、Tlast>Tlast−とし、0<(Tlast−Tlast−)≦Tとするのが好ましい。なお、βm−1T(913)は、この場合にはβm−1T=4T−Tmp+dTlast−で決まるから、独立パラメータではない。つまり、dTlast−の調整は、βm−1Tの調整を行っていることを意味する。
一方、図9(d)に示すように、n=4L−1の場合は、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生される。また、Ttopの後、周期3Tで、基準クロックに同期して最初のTmpがT4で発生され、以後は周期4Tとなって、最後にT5でTlast=αmTの順に記録パルスが発生され、最後にTcl=βmTのオフパルスが発生される。ここで、Tlast、Tclは、n=4L−2の場合とは異なる値Tlast+(920)、Tcl+(921)をそれぞれとりうる独立パラメータである。また、Tlast+(920)は、補正値dTlast−(922)を付加して、基準クロックからの同期をずらすことができるものとする。Tlast+、Tcl+、及び、dTlast+により、n=4L−2の場合より、1T長いマーク長を形成する。通常は、Tlast+>Tlastとし、0<(Tlast+−Tlast)≦Tとするのが好ましい。なお、βm−1T(923)は、βm−1T=4T−Tmp+dTlast+で決まるから、独立パラメータではない。つまり、dTlast+の調整は、βm−1Tの調整を行っていることを意味する。
図9(e)に示すように、n=4Lの場合には、Ttopは、やはり、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生されるが、Ttop、dTtopは、他の4L−3、4L−2、4L−1の場合とは異なる値、Ttop+(930)、dTtop+(931)をそれぞれとりうるものとする。
また、Ttop+の後、m−2個のTmpと、Tlastとの順に、周期4Tで記録パルスが発生され、最後にTclが発生されるのであるが、Tlast、Tclは、n=4L−1の場合と同じ値Tlast+(933)、Tcl+(934)及び補正値dTlast+(935)をとりうるものとする。主として、Ttopをn=4L−1とは異なる値Ttop+とし、dTtop+で補正することにより、n=4L−1よりも1T長いマーク長を形成する。通常は、Ttop+>Ttop、とし、0<(Ttop+−Ttop)≦Tとするのが好ましい。これに伴い、β1T(932)は、β1T=4T−(Ttop++dTtop+)により決まるので、独立パラメータではない。つまり、Ttop+、及びdTlast+の調整は、β1Tの調整を行っていることを意味する。
ただし、n=5は、他のn=4L−3の場合とは異なるdTtop、Ttop、Tlast、dTlast、Tclをそれぞれ決める自由度があることが望ましい。このため、それぞれ、独立パラメータであることを明らかにするため、図8においては、dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5と表記する。5Tマーク長ではn/m=2.5であるため、他のn=3L−1であるマーク長と異なり、記録パルスの繰返し周期が2.5T程度と小さくなる。このため、5Tマーク長は、他のn=3L−1であるマーク長と同じパラメータでは、正確なマーク長と、低ジッタの実現が難しい場合がある。
n=2、3、4の場合は、m=1である。このため、一対の記録パルス区間Ttopとオフパルス区間β1T=Tclで、n=2、3、4のマーク長をそれぞれ形成すると同時に、低いマーク端ジッタを実現する。いずれの場合も、dTtop、Ttop、Tclの3つのパラメータで定義される。そして、それぞれのパラメータは、他のいずれのマーク長におけるdTtop、Ttop、Tclとは別に独立して、定められるものとする。即ち、図8に示すように、2Tマーク長においては、dTtop2、Ttop2、Tcl2、3Tマーク長においては、dTtop3、Ttop3、Tcl3、4Tマーク長においては、dTtop4、Ttop4、Tcl4をもって、それぞれ異なるマーク長を形成する。
以上をまとめると、図8で定義される記録パルス分割方法(IVa)における独立パラメータの数は、n=2、3、4におけるそれぞれ3個を合計した9個のパラメータ(dTtop2、Ttop2、Tcl2、dTtop3、Ttop3、Tcl3、dTtop4、Ttop4、Tcl4)、n=5における5個のパラメータ(dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5)、及びn=6以上における13個のパラメータ(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、Tcl+、dTlast+、Tlast−、Tcl−、dTlast−、dTtop+、Ttop+)である。すなわち、パラメータの数は、全部で9+5+13=27個となる。
また、通常は、dTlast+、Tcl+のうちのいずれか一方は、dTlast+=0乃至は、Tcl+=Tclとして、独立パラメータの数を一つ減らすことができる。同様に、dTlast−、Tcl−のうちのいずれか一方は、dTlast−=0、乃至は、Tcl−=Tclとして、独立パラメータの数を一つ減らすことができる。即ち、n=6以上における独立パラメータを(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、dTlast+、Tlast−、dTlast−、dTtop+、Ttop+)の11個、または(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、Tcl+、Tlast−、Tcl−、dTtop+、Ttop+)の11個とすることもできる。
記録パルス分割方法(IVa)の利点は、同一分割数m=L(L≧2)における、n=4L−3、4L−2、4L−1、4Lとなる4つの記録マーク長を一組とし、n=4L−2の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において後端記録パルス区間αmT=Tlast及びその前後の区間(βm−1T、βmT=Tcl)の調整でn=4L−3とn=4L−1との記録マーク長を形成する点にある。
記録パルス分割方法(IVa)の他の利点は、同一分割数m=L(L≧2)における、n=4L−3、4L−2、4L−1、4Lとなる4つの記録マーク長を一組とし、n=4L−1の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において先端記録パルス区間α1T=Ttop及びその後の区間β1Tの調整でn=4Lの記録マーク長を形成する点にある。
なお、βm−1Tの調整は、dTlastの調整を介して行っており、β1Tの調整は、Ttop=α1TとdTtopの調整を介して行っている。
そして、n=6以上における13個のパラメータ、(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、Tcl+、dTlast+、Tlast−、Tcl−、dTlast−、dTtop+、Ttop+)がLによらず一定であるということは、n=4L−3、4L−2、4L−1、4L(L≧2)の4つの記録マーク長におけるそれぞれの(α1、dTtop、β1、αm、βm−1、βm)の値が、n=5である場合をのぞいて、Lによらず一定であるということに他ならない。より好ましくは、n=5の場合も含めてLによらず一定とすることである。
図26は、記録パルス分割方法(IV)の他の一例である。図26では、特に、mが2以上では、n=4L−3、4L−2、4L−1、4L(L≧2の整数)の4つのマーク長を一組として考え、Lが1増減ずれば、mを1増減させる。そして、原則として、n=4L−2の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、プラス2T・マイナス1Tのマーク長差を、原則としてLによらない一定のパラメータを用いて、実現している。
具体的には、同一の分割数m=L(L≧2)で形成する、n=4L−3、4L−2、4L−1、4Lの4つの記録マーク長を一組とし、n=4L−2の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において少なくともαmを減じて、n=4L−3の記録マーク長を形成し、n=4L−2の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において少なくともα1を増加させて、n=4L−1の記録マーク長を形成し、さらに、n=4L−1の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において少なくともαmを増加させて、n=4Lの記録マーク長を形成する。そして、n=4L−3の系列、n=4L−2の系列、n=4L−1の系列、n=4Lの系列のそれぞれで、Lに依存しない独立パラメータを決める。このようにすることで、独立パラメータの数を大幅に少なくできる。以下では、この具体例を記録パルス分割方法(IVb)とする。
特にL=3の場合を例とする図27で、図26におけるn=4L−3、4L−2、4L−1、4L(L≧2の整数)の4つのマーク長を一組とする周期的なパラメータ変化に注目して詳細な説明を行う。
まず、記録パルス幅は、一定値Tmp=αcTを基本とする。そして、原則として、記録パルスは、周期3T乃至は4Tをもって基準クロック周期Tに同期して発生される。そして、nが4増える毎(マーク長が4T増える毎、Lが1増える毎)に、Tmpの中間記録パルスとそれに続くオフパルスの1組が周期4Tで追加される。基準クロック周期Tは、図27(a)の1000の一箱の区間で表され、nTマークは、基準クロックに同期した一点である時間T1を先頭とする。
そして、n=4L−2(図27(c))の場合には、Ttop=α1T(1001)が、T1からdTtop(1003)の時間的ずれをもって発生される。dTtopは、この図では、T1から遅延する場合を正の値とする。
dTtopは、Ttopの先頭位置におけるnTマークの先頭位置(T1)からの同期のずれ時間を定義しており、正確なマーク前端位置の調整に利用される。通常は、先頭記録パルスには、それに先行する記録パルスからの余熱がないので、Ttop≧Tmpとして、後続のTmp区間における加熱と同等の加熱効果が得られるようにするのが好ましい。β1T(1004)は、β1T=3T−(Ttop+dTtop)で決まるので、独立パラメータではない。
Ttopの後、周期3Tで、基準クロックに同期して最初のTmp(1002)がT4で発生され、以後は周期4Tとなって、T5でTlast=αmT(1005)の順に記録パルスが発生され、最後にTcl=βmT(1006)のオフパルスが発生される。よって、オフパルス区間βiT(2≦i≦m−2)は、4T−Tmp=(4−αc)T=βcTとなるが、図27に示す例では現れない。また、βm−1Tも、4T−Tmpとなるので、独立パラメータではない。この記録パルス分割方法においては、Lが一個増えれば、Tmpが4T周期ごとに基準クロック周期に同期して繰り返し発生される点が、記録パルス分割方法(IIb)、(IIIb)と異なる点である。もちろん、n=5、6、7、8の場合には、中間記録パルス区間Tmpは発生されない。なお、Tlastの始点にdTlastのずれを付加することは適宜可能であるが、dTlast=0とすることが好ましい。
以下、n=4L−3、n=4L−2及びn=4L−1における記録方法の関係は、記録パルス分割法法(IIb)における、n=3L−1、n=3L及びn=3L+1における記録方法の関係と同じである。また、以下、n=4L−2、n=4L−1及びn=4Lにおける記録方法の関係は、記録パルス分割法法(IIIb)における、n=3L、n=3L+1及びn=3L+2における記録方法の関係と同じである。
すなわち、n=4L−3(図27(b))の場合には、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生される。また、Ttopの後、周期3Tで、基準クロックに同期して最初のTmpがT4で発生され、以後は周期4Tとなって、T5でTlast=αmTの順に記録パルスが発生され、最後にTcl=βmTのオフパルスが発生される。ここで、Tlast、Tclは、n=4L−2の場合とは異なる値Tlast−(1010)、Tcl−(1011)をそれぞれとりうる独立パラメータである。また、Tlast−(1010)は、補正値dTlast−(1012)を付加して、基準クロックからの同期をずらすことができるものとする。Tlast−、Tcl−、及び、dTlast−により、n=4L−2の場合より、1T短いマーク長を形成する。通常は、Tlast>Tlast−とし、0<(Tlast−Tlast−)≦Tとするのが好ましい。なお、βm−1T(1013)は、βm−1T=4T−Tmp+dTlast−で決まるから、独立パラメータではない。つまり、dTlast−の調整は、βm−1Tの調整を行っていることを意味する。
一方、n=4L−1(図27(d))の場合には、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生されるが、Ttop、dTtopは、他の3Lの場合とは異なる値、Ttop+(1020)、dTtop+(1021)をとりうるものとする。
また、Ttop+の後、m−2個のTmpと、Tlastとの順に記録パルスが発生され、最後にTclが発生される。主として、Ttopをn=4L−2とは異なる値Ttop+とし、dTtop+で補正することにより、n=4L−2よりも1T長いマーク長を形成する。この際、α2Tは、T1から4T周期をもって立ち上がるものとする。通常は、Ttop+>Ttop、とし、0<(Ttop+−Ttop)≦Tとするのが好ましい。これに伴い、β1T(1022)は、β1T=4T−(Ttop++dTtop+)により決まるので、独立パラメータではない。つまり、dTtop+及びTtop+の調整は、β1Tの調整を行っていることを意味する。
n=4L(図27(e))の場合には、Ttop=α1Tが、T1からdTtopの時間的ずれをもって発生されるが、Ttop及び、dTtopは、n=4L−1と同じ値、Ttop+(1030)及びdTtop+(1031)をとるものとする。この際、α2T=Tmpは、T1から4T周期をもって立ち上がるものとする。これに伴い、β1T(1032)は、β1T=4T−(Ttop++dTtop+)により決まるので、独立パラメータではない。つまり、dTtop+及びTtop+の調整は、β1Tの調整を行っていることを意味する。
α2Tを含めてm−2個のTmpが発生された後、Tlastの記録パルスが発生され、最後に冷却パルスTclが発生されるのであるが、Tlast及びTclは、n=4L−1の場合とは異なる値Tlast+(1033)、Tcl+(1034)をそれぞれとりうる独立パラメータである。また、Tlast+(1033)は、補正値dTlast+(1035)を付加して、基準クロックからの同期をずらすことができるものとする。Tlast+、Tcl+、dTlast+により、n=4L−1の場合より、1T長いマーク長を形成するのである。通常は、Tlast+>Tlastとし、0<(Tlast+−Tlast)≦Tとするのが好ましい。なお、βm−1T(1036)は、βm−1T=4T−Tmp+dTlast+で決まるから、独立パラメータではない。つまり、dTlast+の調整は、βm−1Tの調整を行っていることを意味する。
ただし、n=5は、他のn=4L−3の場合とは異なるdTtop、Ttop、Tlast、dTlast、Tclをそれぞれ決める自由度があることが望ましい。このため、それぞれ、独立パラメータであることを明らかにするため、図26においては、dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5と表記する。5Tマーク長では、n/m=2.5であるため、他のn=3L−1であるマーク長と異なり、記録パルスの繰返し周期が2.5T程度と小さくなる。このため、5Tマーク長は、他のn=3L−1であるマーク長と同じパラメータでは、正確なマーク長と、低ジッタの実現が難しい場合がある。
n=2、3、4の場合は、m=1である。このため、一対の記録パルス区間Ttopとオフパルス区間β1T=Tclで、n=2、3、4のマーク長をそれぞれ形成すると同時に、低いマーク端ジッタを実現する。いずれの場合も、dTtop、Ttop、Tclの3つのパラメータで定義される。そして、それぞれのパラメータは、他のいずれのマーク長におけるdTtop、Ttop、Tclとは別に独立して、定められるものとする。すなわち、図26に示すように、2Tマーク長においては、dTtop2、Ttop2、Tcl2、3Tマーク長においては、dTtop3、Ttop3、Tcl3、4Tマーク長においては、dTtop4、Ttop4、Tcl4をもって、それぞれ異なるマーク長を形成する。
以上をまとめると、図26で定義される記録パルス分割方法(IVb)における独立パラメータの数は、n=2、3、4におけるそれぞれ3個を合計した計9個のパラメータ(dTtop2、Ttop2、Tcl2、dTtop3、Ttop3、Tcl3、dTtop4、Ttop4、Tcl4)、n=5における5個のパラメータ(dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5)、及びn=6以上における13個のパラメータ(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast−、Tcl−、dTlast−、dTtop+、Ttop+、Tlast+、Tcl+、dTlast+)である。すなわち、パラメータの数は、全部で9+5+13=27個となる。
また、通常は、dTlast+、Tcl+のうちのいずれかを、dTlast+=0乃至は、Tcl+=Tclとして、独立パラメータの数を一つ減らすことができる。同様に、dTlast−、Tcl−のうちのいずれか一方は、dTlast−=0、乃至は、Tcl−=Tclとして、独立パラメータの数を一つ減らすことができる。すなわち、n=6以上における独立パラメータを(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast−、dTlast−、dTtop+、Ttop+、Tlast+、dTlast+)の11個、または(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast−、Tcl−、dTtop+、Ttop+、Tlast+、Tcl+)の11個とすることもできる。
記録パルス分割方法(IVb)の利点は、同一分割数m=L(L≧2)における、n=4L−3、4L−2、4L−1、4Lとなる4つの記録マーク長を一組とし、n=4L−2の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において後端記録パルス区間αmT=Tlast及びその前後の区間(βm−1T、βmT=Tcl)の調整のみでn=4L−3とn=4L−2との記録マーク長をそれぞれ形成し、n=4L−1の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において先端記録パルス区間α1T=Ttop及びその後の区間β1Tの調整のみでn=4L−1と4L−2の記録マーク長をそれぞれ形成し、n=4L−1の記録マーク長を形成するために用いる光記録方法を基準として、前記光記録方法において後端記録パルス区間αmT=Tlast及びその前後の区間(βm−1T、βmT=Tcl)の調整のみでn=4L−1とn=4Lとの記録マーク長を、それぞれ形成する点にある。なお、βm−1Tの調整は、dTlastの調整を介して行っており、β1Tの調整は、Ttop=α1TとdTtopの調整を介して行っている。
そして、n=6以上における13個のパラメータ、(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast−、Tcl−、dTlast−、dTtop+、Ttop+、Tlast+、Tcl+、dTlast+)がLによらず一定であるということは、n=4L−3、4L−2、4L−1、4L(L≧2)の4つの記録マーク長におけるそれぞれの(α1、dTtop、β1、αm、βm−1、βm)の値が、n=5である場合をのぞいて、Lによらず一定であるということに他ならない。より好ましくは、n=5の場合も含めてLによらず一定とすることである。
以下に、上記のいずれの記録方式にも共通する留意点について述べる。
上記説明における分割記録パルスストラテジーを定義する独立パラメータ、即ち、n=2、3、4、5における独立パラメータ(dTtop2、Ttop2、Tcl2、dTtop3、Ttop3、Tcl3、dTtop4、Ttop4、Tcl4)、(dTtop5、Ttop5、Tlast5、dTlast5、Tcl5)、n=6以上における独立パラメータ、(dTtop、Ttop、Tmp、Tlast、Tcl、Tlast+、Tcl+、dTlast+、Tlast−、Tcl−、dTlast−、dTtop+、Ttop+)等は、基準クロック周期Tで規格化した値に置き換えても良い。Ttop2、Ttop+、Tlast2、Tlast+、Tcl2、Tcl+等を基準クロック周期Tで規格化したものは、添字はそのままで、α12、α1+、αm2、αm+、βm2、βm+等で表記する。一方、dTtop2、dTtop+、dTlast2、dTlast+等をTで規格化したパラメータは、それぞれの添字はそのままにして、ηtop2、ηtop+、ηlast2、ηlast+等のように表記することとする。
また、いずれの方法においても、Ttop=Tmp−dTtop*、Tlast=Tmp−dTlast*(*は、2、3、4、5、+、−等の添え字を表す。)とすることで、Ttop*やTlast*を従属パラメータとすることもできる。
上記の記録パルス分割方式は、基準クロック周期との同期とマーク長のnに関する周期性とを元に可能な限り規則性を保持することにより、独立パラメータ数を少なくする。
そして、上記記録パルス分割方式は、記録パルス発生回路を簡便化すること、最適パラメータの決定を容易にすること、を実現している。
当然ながら、本目的に反しない程度に、特定の記録パルスや冷却パルスの立ち上がり、立下りのタイミングを上記記録パルス分割方法で示したタイミングから、±0.2T程度ずらすことは、適宜可能である。また、特に、dTtopやβmT等を、当該記録マークに先行する記録マーク長や記録マーク間長に応じて、又は、当該記録マークに後続する記録マーク長や記録マーク間長に応じて、当該記録マーク毎に細かく調整することも可能である。これにより、隣り合う記録マークの間での熱干渉を抑制することができる。このように、付加的に独立パラメータの数が増えても、本発明の趣旨を超えるものではない。
上記の説明では、nとして、2〜16あるいは、2〜17の場合を例示したが、これらのnの取りうる値に限定されるものではない。n=16又は17以上については、例えば記録方法(IIa)、(IIIa)、(IVa)において、βm−1の前に、一対の冷却パルスと記録パルスTmpを周期3T又は4Tで追加していけばよいので、独立パラメータの数は増加しない。一方、nとしてこれらの値(2〜16、2〜17)を全部用いる必要もない。一方、nの最大値nmaxは16又は17に限定されるものではない。
例えば、本実施の形態が適用される光記録方法をCD−RWに適用する場合は、EFM変調された情報を複数の記録マーク長及び記録マーク間長により記録するにあたり、nmax=11とし、nとしては3〜11までの整数値をとる。そして、消去パワーPeと記録パワーPwとの比を、通常Pe/Pw=0.1〜0.6とし、バイアスパワーPbを、Pb≦0.2Peとするのが好ましい。
また、本実施の形態が適用される光記録方法をRW−DVDの記録方法として適用する場合は、EFM+変調された情報を複数の記録マーク長及び記録マーク間長により記録するにあたり、nmax=14とし、nとしては3〜11までの整数値、及び14をとる。そして、消去パワーPeと記録パワーPwとの比を、通常Pe/Pw=0.1〜0.6とし、バイアスパワーPbを、Pb≦0.2Peとするのが好ましい。
CD−RW及びRW−DVDにおける記録パルス分割方法(IIa)、(IIIa)、(IVa)の場合の独立パラメータ数は、n=2の場合の独立パラメータ数3個を差し引いた数となる。
さらにまた、本実施の形態が適用される光記録方法を最近話題となっているBlu−Ray等の記録方法として適用する場合には、nmax=8とし、nとしては2〜8までの整数値をとる。そして、消去パワーPeと記録パワーPwとの比を、通常Pe/Pw=0.2〜0.6とし、バイアスパワーPbを、Pb≦0.2Peとするのが好ましい。
また、本実施の形態が適用される光記録方法をCD−RWに適用する場合においては、記録パルス区間αiT(i=1〜m)の平均値およびオフパルス区間βiT(i=1〜m−1)の平均値をともに3nsec以上とすることが好ましい。これにより、照射する光パワーの時間追従性を確保しやすくなる。より好ましくは、個々のαiT(i=1〜m)およびβiT(i=1〜m−1)を3nsec以上とするのが好ましい。
一方、本実施の形態が適用される光記録方法をRW−DVD及びそれ以上の高密度の媒体に適用する場合においては、記録パルス区間αiT(i=1〜m)の平均値およびオフパルス区間βiT(i=1〜m−1)の平均値をともに2nsec以上とすることが好ましい。これにより、照射する光パワーの時間追従性を確保しやすくなる。
ここで、パルスαiT(i=1〜m)の時間幅は、PwとPb(又はPw−Pe)との間のパワーレベルの遷移において、Pw−Pb(又はPw−Pe)の半分のパワーレベルに達した時間で定義する。従って、例えば、図5のα1Tの記録パルスの時間幅は、前記パルスの立ち上がり部のPeからPwへ変化する際のPe−Pwの半分のパワーレベルに達した時間から、前記パルスの立ち下がり部のPwからPbへ変化する際のPw−Pbの半分のパワーレベルに達する時間までの間をいう。
CDにおいてはαiT(βiT)を3nsec以上とするのが好ましいのに対し、DVD以上の高密度記録においてはαiT(βiT)を2nsec以上とするのが好ましい理由を説明する。即ち、DVD系以上の高密度記録の場合は、記録用集束光ビームの径がCD系の場合の約70%程度以下であるから、1回の記録パルス照射があたえる空間的な影響も70%程度になる。このように集束光ビームの径が小さくなり空間分解能が向上するため、3nsecの約70%となる2nsec程度の短時間のパルス照射が有効となるのである。また、小さいビーム系の場合のほうが、昇温される面積が少ないので、冷却が速く、オフパルス区間に関しても、2nsec程度まで短縮しても十分な冷却効果が得られるのである。
さらに、以上の記録パルス分割方法において、n=4の場合に限って分割数mを2とすることで、良好な結果が得られる場合がある。上記の操作は、CD−RWにおいて適用することが最も好ましい。これは、CD−RWの場合、4T記録マークの長さが、約1.1μmと、RW−DVD(4Tマーク長 約0.53μm)以上の高密度媒体よりも倍以上大きいため、単一の記録パルスでは、溶融領域に蓄積された熱が逃げにくく、再結晶化が起こりやすいためである。この場合には、例えば図4の5Tマークにおいて、マークの基点T1から、dTlastの起点となる基準クロックの位置までの時間は、必ずしも3Tではなく、2T乃至2.5Tを基準としても良い。つまり、T1から、2T乃至2.5T経過したタイミングをdTlastの基準と考えても良い。
なお、この4Tマーク長における冷却不足を補うための別法として、記録パルスの分割数は1のままで、むしろ、α1Tに先行して、概ね1T程度より短い、冷却パルスβ0Tを挿入することも有効である。
なお、β0Tの挿入は、全てのnTマークに対して適用することもできる。
本実施の形態が適用される光記録方法(I)では、その記録方法を定めれば、おおむね40m/s以上の高線速を上限とし、その半分以下の任意の線速においても、良好な記録再生が可能となる。そして、上記の分割記録パルス発生方法(II)、(III)、(IV)を用いれば、記録パルス群の切り替え周期は概ね3T又は4Tで一定とし、分割数mを一定としたまま、αiとβi(ここでi=1〜m−1)の比を変化させることで、同一の媒体を異なる線速で使用できるようになる。さらに、上記の分割記録パルス発生方法(IIa)、(IIb)、(IIIa)、(IIIb)、(IVa)、(IVb)を用いれば、分割数m、基準クロックとの同期、nの3に関する周期性による所定の規則性を保ったまま、αiとβi(ここでi=1〜m−1)の比を変化させることで、同一の媒体を異なる線速で使用できるようになる。
この際、いずれの線速においても、通常は、図6に示すような、長さnTのマークを形成するために記録パワーPwとバイアスパワーPbとを交互に照射するパルス分割方式を採用するが、その具体的な方式を決定するパラメータの最適値は線速によって変わるのが一般的である。そこで、本実施の形態が適用される媒体には、記録線速に応じた最適記録パワーPw0、最適消去パワーPe0、最適バイアスパワーPb0やαi(iは1〜mの少なくとも1つ)、βi(iは1〜mの少なくとも1つ)、分割数m等の記録パルス分割方法情報のうちの少なくとも1つを媒体上あらかじめ記録しておくのが好ましい。
そして、記録パルス分割方法(I)を基本として、記録パルス分割方法(V)を適用する。
(記録パルス分割方法(V))
書き換え型光記録媒体が円盤状のディスクであり、同一ディスク面内において、複数の記録線速度で、記録マークの空間線密度を概ね一定としながら、記録を行う光記録方法であって、最大線速度Vmaxにおけるαi=αimax(i=1〜m)を0.5〜2とし、低線速度ほど、mは一定のまま、αi及びαi’(i=1〜m)をそれぞれ単調に減少させるように上記記録パルス分割方法(I)を用いる方法である。記録マークの空間線密度を概ね一定とするということは、基準クロック周期を線速度に反比例して変化させることで達成される。この際、(αi+βi)を概ね3又は4に保つことが望ましく、さらに、αi+βi(2≦i≦m−1)を線速によらずほぼ一定とすることが好ましい。
記録パルス分割方法(I)から派生した(II)、(III)、(IV)、(IIa)、(IIb)、(IIIa)、(IIIb)、(IVa)、(IVb)の各々に対しても同様に、記録パルス分割方法が定義でき、それぞれを(VI)、(VII)、(VIII)、(VIa)、(VIb)、(VIIa)、(VIIb)、(VIIIa)、(VIIIb)と呼ぶこととする。
mが一定のまま、良好な記録ができる記録線速度の下限を、Vminとする。
記録パルス分割方法(VIa)、(VIb)、(VIIa)、(VIIb)、(VIIIa)、(VIIIb)は、mを一定とし、さらには、αi+βi(2≦i≦m−1)を概ね3又は4に保ったまま、Vmax/Vminの比を少なくとも2以上とすることが可能である。これにより、広い線速度範囲で、変化する基準クロック周期との同期、及びnに関する周期性を保つことができる。さらに、分割記録パルス発生のための論理回路を簡便化できる。ひいては、各線速度で最適化する必要のある独立パラメータ数を少なくできる。
特に、これらの記録パルス分割方法においては、Tmp=αiTにおいては、線速度とαiとをほぼ比例する関係とするのが好ましい。特に、αiTの絶対時間幅をほぼ一定とすることで、正確に線速度とαiとを比例関係とできる。また、Tmp=αcT(2≦i≦m−1)に関しては、絶対時間幅を一定とする部分Tmp0と、基準クロック周期(従って線速度)に依存して、γTで定義される部分とを合わせて、Tmp=αcT=Tmp0+γTとしても良い。通常、γは0<γ<3、好ましくは0<γ≦2なる実数とする。この場合でも、αcは、線速度とほぼ比例させることが望ましい。α1T=Ttop=dTtop−Tmpと定義する場合には、Tmpの絶対時間幅をほぼ一定とし、一方で、dTtopは、各線速度で独立に変化させることも好ましい。
なお、具体例としてCD−RW及びRW−DVDに適用する場合、1倍速基準線速度、最大線速度Vmax、最小線速度VminについてCD−RWとRW−DVDで値を使い分ける。即ち、1倍速基準線速度V1とは、CD−RWの場合、1.2m/s〜1.4m/sであり、RW−DVDの場合、3.49m/sである。また、最大線速度Vmaxとは、CD−RWの場合、上記CD−RWの基準線速度の通常32倍〜約48倍速の範囲におけるいずれかの線速度であり、特に、40倍速又は48倍速をいう。RW−DVDの場合、上記RW−DVDの基準線速度の通常10倍速〜約16倍速の範囲におけるいずれかの線速度であり、特に10倍速、12倍速、及び16倍速をいう。
同様に、最小線速度Vminとは、CD−RWの場合、通常約12倍速以下のいずれかの線速度であり、RW−DVDの場合、通常約6倍速以下のいずれかの線速度である。当然のことながら、VmaxとVminが対で用いられる場合、Vmax>Vminとなる、線速度範囲から選ばれる。
従って、CD−RWを想定する場合には、1倍速基準線速度、Vmax、Vminとして上記記載のCD−RWの値を用い、RW−DVDを想定する場合には、1倍速基準線速度、Vmax、Vminとして上記記載のRW−DVDの値を用いる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、本発明の例示であり、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
また、本発明が適用可能な、具体的な例として、10倍速以上の高線速記録に用いる書き換え型DVD記録媒体が実現できる。より具体的には、記録層が非晶質の状態を記録マークとし、EFM+変調(データの基準クロック周期Tに対して3Tから11Tまで、及び14Tの時間的長さのマーク長及びマーク間長さの組み合わせ)によるマーク長変調記録を行うことにより、記録信号フォーマットについてはDVDと再生互換を有する書換え型記録媒体の記録方法を提供することができる。
また、40倍速以上の高線速記録に用いるCD−RWを実現できる。より具体的には、CD−RWでは、記録層が非晶質の状態を記録マークとし、EFM変調による(即ちデータの基準クロック周期Tに対して3Tから11Tまでの時間的長さのマーク長及びマーク間長さの組み合わせによる)マーク長変調記録を行うことにより、記録信号フォーマットについてはCDと再生互換を有する書換え型記録媒体の記録方法を提供することができる。
さらに、200Mbps以上の高データ転送レート記録に用いるDVRを実現できる。より具体的には、記録層が非晶質の状態を記録マークとし、(1、7)Run−Lnght−Limited変調による(即ちデータの基準クロック周期Tに対して2Tから8Tまでの時間的長さのマーク長及びマーク間長さの組み合わせによる)マーク長変調記録を行うことにより、高密度の書換え型記録媒体の記録方法を提供することができる。
[2]光記録方法に用いる記録媒体
本実施の形態が適用される光記録方法に用いる記録媒体としては、例えば、相変化型の記録層を有する光記録媒体を挙げることができる。このような光記録媒体の具体例としては、ディスク状の基板上に、第一保護層(下部保護層)、記録層(相変化型記録層)、第二保護層(上部保護層)、反射層、及び保護コート層をこの順に有する層構成をとり、基板を通してレーザ光を照射することにより信号の記録再生を行なう光記録媒体(基板面入射型の光記録媒体として用いられる)を挙げることができる。
また、相変化型記録層を有する光記録媒体の他の具体例としては、ディスク状の基板上に、反射層、第二保護層(下部保護層)、記録層(相変化型記録層)、第一保護層(上部保護層)、及び保護コート層をこの順に有する層構成をとり、上部保護層を通じてレーザ光を照射することにより信号の記録再生を行なう記録媒体(膜面入射型の光学的情報記録用媒体として用いられる。)を挙げることができる。この膜面入射型の光学的情報記録用媒体では、基板を通さずに上部保護層側からレーザ光を照射することにより信号の記録再生を行なうため、記録層と光ヘッドの距離を数百ミクロン以下に接近させることが可能となり、開口数が0.7以上の対物レンズを使用することで媒体の記録密度を向上させることが出来る。
尚、上記基板面入射型の光記録媒体及び膜面入射型の光記録媒体それぞれの層構成は例示である。例えば、基板面入射型の光記録媒体及び膜面入射型の光記録媒体のいずれにおいても、保護層と反射層との間に界面層を設けることができるし、膜面入射型の光記録媒体において、基板と反射層との間に下地層を設けてもよい。
本発明において好ましいのは、高データ転送レートを可能とする、結晶化速度の速い記録材料を記録層に用いた記録媒体を用いることである。
以下、基板、記録層、その他の層(保護層、反射層、保護コート層)の各層について説明する。
(1)基板
基板には、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィンなどの樹脂、あるいはガラスを用いることができる。なかでもポリカーボネート樹脂はCD−ROM等において最も広く用いられている実績もあり安価でもあるので最も好ましい。基板の厚さは、通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上であり、一方、通常20mm以下、好ましくは15mm以下である。一般的には0.6mm〜1.2mm程度とされる。基板面入射型の光記録媒体においては、基板はレーザ光を透過する必要があるため、レーザ光に対して透明である必要がある。一方、膜面入射型の光記録媒体においては、基板は必ずしも透明である必要はない。
基板には、通常、同心円状又はスパイラル状のトラック(グルーブ)が形成されている。また、基板の形状はディスク状とするが、ここで、「ディスク状」とは、回転可能な形状をいい、通常は平面円盤形状をいうが、平面円盤形状に限られるものではない。例えば、光学的情報記録用媒体の意匠を魅力的にするために、平面楕円形状や平面四角形状としてもよい。
(2)記録層
記録層としては、例えば、GeSbTe、InSbTe、AgSbTe、及びAgInSbTeといった系列の化合物が繰り返し記録可能な材料として選ばれる。これらの中で、Sb2Te3とGeTeの疑似2元合金を主成分とする組成、より具体的には、{(Sb2Te3)1−α(GeTe)α}1−βSbβ組成(ただし、0.2≦α≦0.9、0≦β≦0.1)、あるいは、Sbを50原子%以上含むSbを主成分とする組成のいずれかであることが多い。
本実施の形態が適用される光記録方法は、結晶化速度の速い材料を記録層に用いた記録媒体に適用することが好ましい。結晶化速度を高めるために、前記記録層にSbを主成分とする組成を用いることがより好ましい。なお、本発明において、「Sbを主成分とする」とは、記録層全体のうち、Sbの含有量が50原子%以上であることを意味する。Sbを主成分とする理由は、Sbの非晶質は、非常に高速で結晶化できるため、非晶質マークを短時間で結晶化することが可能となる。このため、非晶質状態の記録マークの消去が容易となる。この点から、Sbの含有量は60原子%以上であることが好ましく、70原子%以上であることがより好ましい。しかし、一方で、Sb単独で用いるよりも、非晶質形成を促進させ、かつ非晶質状態の経時安定性を高めるための添加元素をSbと共に併用することが好ましい。記録層の非晶質形成を促進させ、かつ非晶質状態の経時安定性を高めるためには、上記添加元素の含有量を、通常1原子%以上、好ましくは5原子%以上、より好ましくは10原子%以上とし、一方、通常30原子%以下とする。
非晶質形成を促進させ、かつ非晶質状態の経時安定性を高める上記添加元素は、結晶化温度を高める効果もある。このような添加元素としては、Ge、Te、In、Ga、Sn、Pb、Si、Ag、Cu、Au、希土類元素、Ta、Nb、V、Hf、Zr、W、Mo、Cu、Cr、Co、窒素、酸素、及びSe等を用いることができる。これら添加元素のうち、非晶質形成の促進、非晶質状態の経時安定性の向上、及び結晶化温度を高める観点から、好ましいのはGe、Te、In、Ga、及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1つとすることであり、特に好ましいのは、Ge及び/又はTeを用いるか、In、Ga、及びSnの少なくとも1つを用いることである。
上述の通り、記録媒体の記録層においては、高速での結晶化や非晶質の形成及び非晶質状態の経時安定性向上のために、記録層の材料として、SbとGe及び/又はTeとを併用することが特に好ましい。Ge及び/又はTeをSbに添加する際に、記録層中におけるGe又はTeそれぞれの含有量を、1原子%以上30原子%以下とすることが好ましい。つまり、Ge及びTeは、それぞれ単独で1原子%以上30原子%以下ずつ含有されていることが好ましい。但し、記録層の主成分をSbとした場合にSbの含有量は50原子%以上となるため、Sbと共にGe及びTeを記録層に含有させる場合、Ge及びTeの合計量は50原子%よりは少なくなる。
記録層中におけるGe又はTeのそれぞれの含有量は、より好ましくは3原子%以上、さらに好ましくは5原子%以上とする。この範囲とすれば、非晶質マークを安定化する効果が十分に発揮されるようになる。一方、記録層中におけるGe又はTeのそれぞれの含有量は、より好ましくは20原子%以下、さらに好ましくは15原子%以下とする。この範囲とすれば、非晶質が安定になりすぎて逆に結晶化が遅くなるという傾向を良好に抑制することができるようになり、結晶粒界での光散乱によるノイズを抑制することができるようになる。
上記Sbを主成分とする組成は、記録層中に含有されるTeの量によって、2種類に分類することができる。一つは、Teを10原子%以上含有する組成であり、もう一つはTeを10原子%未満含有する組成(Teを含有しない場合を含む)である。
そのひとつは、記録層材料を、Teを概ね10原子%以上含みつつ、Sb70Te30共晶組成よりも過剰のSbを含有する合金が主成分である組成範囲とすることである。この記録層材料を、以下において、SbTe共晶系と呼ぶ。ここで、Sb/Teは3以上とすることが好ましく、4以上とすることがより好ましい。
記録層中に含有されるTeの量によって分類することができる、上記Sbを主成分とするもう一つの組成としては以下のものをあげることができる。すなわち、記録層の組成を、Sbを主成分としつつ、Teを10原子%未満とし、さらにGeを必須成分として含有するようにするのである。上記記録層の組成の具体例としては、Sb90Ge10近傍組成の共晶合金を主成分とし、Teを10原子%未満含有する合金(本明細書においては、この合金をSbGe共晶系と呼ぶ。)を好ましく挙げることができる。
Te添加量が10原子%未満の組成は、SbTe共晶系ではなく、SbGe共晶系としての性質を有するようになる。このSbGe共晶系の合金は、Ge含有量が10原子%程度と高くても、初期結晶化後の多結晶状態の結晶粒径は比較的微細なために結晶状態が単一相となりやすく、ノイズが低い。SbGe共晶系の合金においては、Teは、付加的に添加されるにすぎず必須元素とはならない。
SbGe共晶系合金では、Sb/Ge比を相対的に高くすることで、結晶化速度を速めることができ、再結晶化による非晶質マークの再結晶化が可能である。
記録層にSbを主成分とする組成を用い、結晶状態を未記録・消去状態とし、非晶質マークを形成して記録を行なう場合、冷却効率を良くすることが非常に重要となる。これは以下の理由による。
すなわち、上記SbTe共晶系又はSbGe共晶系等のSbを主成分とする記録層は、高速記録に対応するために、Sb70Te30共晶点あるいはSb90Ge10共晶点近傍よりもさらにSbを過剰に添加して、結晶核生成速度ではなく結晶成長速度を高めることにより結晶化速度を高めている。このため、これら記録層においては、記録層の冷却速度を速くして、再結晶化による非晶質マークの変化(非晶質マークが所望のサイズよりも小さくなること)を抑制することが好ましい。従って、記録層を溶融した後に非晶質マークを確実に形成するために記録層を急冷することが重要となり、記録層の冷却効率を良くすることが非常に重要となるのである。そのため、上記記録層組成においては、反射層に放熱性の高いAg又はAg合金を用いることが特に好ましい。
上記、SbTe共晶系又はSbGe共晶系等のSbを主成分とする組成を用いる記録層において、さらに、In、Ga、及びSnの少なくとも1つを含有し、前記記録層中におけるIn、Ga、及びSnのそれぞれの含有量が1原子%以上30原子%以下であることが特に好ましい。
以下、Sbを主成分とする組成の具体例についてさらに説明する。
Sbを主成分とする組成としては、まず、(SbxTe1−x)1−yMy(ただし、0.6≦x≦0.9、0≦y≦0.3、MはGe、Ag、In、Ga、Zn、Sn、Si、Cu、Au、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、S、Se、V、Nb、及びTaより選ばれる少なくとも1種)合金を主成分とするSbTe共晶系の組成を好ましく挙げることができる。なお、上記組成式は、原子数比で組成を表している。従って、例えばx=0.6は、60原子%を意味する。
上記(SbxTe1−x)1−yMy組成においては、Mとしては、Ge、Ga、Ag又はInを単独又は併用して用いることが、オーバーライト特性等の記録特性の観点から特に好ましい。
上記(SbxTe1−x)1−yMy組成においては、xは、通常0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.75以上であり、一方、通常0.9以下とする。また、yは、通常0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、一方、通常0.3以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下である。x、yを上記範囲とすれば、高速記録に対応可能な記録層を得ることができるようになる。
上記(SbxTe1−x)1−yMy組成においてMとしてGeを用いる組成について更に説明する。この組成としては、Sb70Te30共晶点組成を基本として大幅に過剰のSbを含むSb70Te30合金を母体とし、さらにGeを含む、Gey(SbxTe1−x)1−y(ただし、0.01≦y≦0.06、0.7≦x≦0.9)であらわされる組成を用いることが好ましい。Ge量は、Gey(SbxTe1−x)1−yにおけるyの値として0.01以上、特に、0.02以上であることが好ましい。一方、このようにSb含有量が多いSbTe共晶組成では、Ge量が多すぎると、GeTeやGeSbTe系の金属間化合物が析出するとともに、SbGe合金も析出しうるために、記録層中に光学定数の異なる結晶粒が混在すると推定される。そして、この結晶粒の混在により、記録層のノイズが上昇しジッタが増加することがある。また、Geをあまりに多く添加しても非晶質マークの経時安定性の効果が飽和する。このため、通常Ge量は、Gey(SbxTe1−x)1−yにおけるyの値として、0.06以下、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.04以下である。
上記GeSbTe共晶系の組成においては、さらにIn、Ga、Snを含有させることが特に好ましい。すなわち、M1zGey(SbxTe1−x)1−y−z(0.01≦z≦0.4、0.01≦y≦0.06、0.7≦x≦0.9であり、M1は、In、Ga及びSnからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を表す。)で表される組成を用いることが特に好ましい。上記M1をIn、Ga及びSnで示される一群の元素のうち少なくとも1種を添加することによりさらに特性が改善される。In、Ga、Snの元素は、結晶状態と非晶質状態の光学的コントラストを大きくでき、ジッタを低減する効果もある。M1の含有量を示すzは、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、一方、通常0.15以下、好ましくは0.1以下とする。この範囲とすれば、上記特性改善の効果が良好に発揮されるようになる。
上記、In,Snを含むGeSbTe合金において、好ましい別の組成範囲として、Gex(InwSn1−w)yTezSb1−x−y−zを挙げることができる。ここで、Sbの含有量は、Geの含有量、Inの含有量、Snの含有量、及びTeの含有量のいずれよりも多く、原子数比を表すx、y、z、及びwは下記(i)から(vi)を満たすようにする。
(i)0≦x≦0.3
(ii)0.07≦y−z
(iii)w×y−z≦0.1
(iv)0<z
(v)(1−w)×y≦0.35
(vi)0.35≦1−x−y−z
上記記録層組成では、20m/s以上の線速度で良好にオーバーライトを行うことが可能になる。以下、上記記録層組成における、各元素含有量と特性との関係を詳細に説明する。
(Sb、式(vi))
Sbの含有量は、Geの含有量、Inの含有量、Snの含有量、及びTeの含有量のいずれよりも多い。すなわち、本発明の記録材料はSbを主体とする。具体的には、Sb含有量は35原子%以上であり他の含有元素のどれよりも含有量が多い。本発明の効果を十分に得るためにはSb含有量は40原子%以上であることが好ましく、45原子%以上であることがより好ましい。
(Sn、式(ii)、(v))
Sn含有量が結晶状態の反射率や結晶と非晶質の反射率差(信号振幅)に与える影響と、In含有量が結晶状態の反射率や結晶と非晶質の反射率差(信号振幅)に与える影響とはほぼ同等である。このため、上記記録層組成にはSn又はInの一方を含有させる。そして、Sn含有量とIn含有量との合計を、Te量より一定量の範囲内で多くすることにより結晶の反射率や信号振幅を大きくできる。一方、Te含有量が多くなると結晶の反射率や信号振幅が低下する。したがって、所望する結晶状態の反射率及び信号振幅を得るためには、Sn及び/又はInの含有量とTeの含有量との関係を制御することが重要となる。
このため、上記一般式における(y−z)の値は0.07以上とし、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.13以上、特に好ましくは0.15以上とする。yの値が大きくなると最適パワーが小さくなり好ましい。
また、Snが多すぎる場合にはジッタ特性が悪化する傾向にあるため、上記一般式における(1−w)×yの値は、0.35以下とし、好ましくは0.3以下とする。したがって、Teを多く含有させる場合、信号振幅を制御する観点からIn含有量とSn含有量との合計を多くする必要があるが、ジッタ特性を考慮するとSnはあまり多くすることができないため、Teの含有量を多くするときは、Snに加えInも含むようにすることが好ましくなる。具体的には、Snを35原子%を超えて含有させないとTeによる結晶の反射率や信号振幅の低下を抑えきれないほどTe含有量を多くするような場合は、Inを含有させればよい。
(In、式(iii))
Inを用いることにより、結晶状態の反射率や結晶と非晶質との反射率差(信号振幅)を大きくすることができるため、記録層に含有させる元素としてInを用いることが好ましい。
Inを用いることにより、結晶状態の反射率や結晶と非晶質の反射率差(信号振幅)を大きくすることができる上、Snに比べてジッタ特性への影響を少なくできるという利点がある。Sn,Teよりは、結晶粒界ノイズを低下させる機能があるものと推定される。一方で、Inは準安定結晶状態に由来すると思われる、長期保存による反射率の低下を引き起こす。これに対し、Teは長期保存による反射率低下を抑える傾向にある。したがって、長期保存における光学的情報記録用媒体の反射率の低下を抑制する観点から、In含有量とTe含有量とを所定の関係とすることが重要となる。
すなわち、上記一般式において、(In含有量−Te含有量)の値を所定の範囲内とすることで、長期保存による反射率の低下を抑制できるようになる。具体的には、上記一般式におけるw×y−zの値が小さいと長期保存による反射率の低下率が小さくなるので、w×y−zの値は0.1以下が好ましく、0.05以下がより好ましく、0以下とすることがさらに好ましい。ここで、w×y−z=0はIn含有量とTe含有量とが同一となることを意味する。したがって、In含有量がTe含有量と同一か、又はIn含有量がTe含有量よりも少ないことが本発明では更に好ましいのである。
このように長期保存による反射率低下をなるべく小さくしようとすると、InをTeに対して過度に多く含有させることができないので、前述の関係式0.07≦y−zを満たすためには、上記記録層組成において、Inに加えSnも含むようにすることが好ましい。具体的には、w×y−z<0.07となった場合には、Inに加えSnも含有させないと0.07≦y−zを満たすことができなくなる。また、Snを含有させずにInとTeの含有量を多くすると高速記録に適した結晶化速度を得にくくなるという点でもInとSnの両方を含有することが好ましくなる。すなわち、0<w<1とするのが好ましい。
なお、Inが過度に多いと、光学的情報記録用媒体の長期保存における信号品質が劣化する傾向にある。また、Snを含まずInを多くするとIn−Sb系で見られる低反射率の安定結晶層が出現する場合がある。このため、In含有量すなわちw×yの値は、0.35以下とすることが好ましい。
(Te、式(iv))
上記記録層組成においてはTeを含有させる。Teは繰り返し記録耐久性を向上させることができる。このためTe含有量はある程度多くすることが好ましいが、上述のとおり、In及び/又はSnとTeとの関係、及びInとTeとの関係を所定の範囲内に制御する必要がある。具体的には、上記一般式におけるTeの含有量を示すzを、0<zとするが、好ましくは0.01≦z、より好ましくは0.05≦z、さらに好ましくは0.08≦z、特に好ましくは0.1≦z、最も好ましくは0.1<zとする。
Te含有量を表わすzは通常0.29未満となるが、これは上記一般式に規定された他の関係式により必然的に決まる値である。上述のようにIn、Teはある程度含有量を多くすることが好ましいが、特にTeは結晶化速度を遅くするはたらきがあるため、高速記録に適した結晶化速度を得るためにはTe含有量を表わすzは、0.25以下とすることが好ましく、0.20以下とすることがより好ましい。
(Ge、式(i))
結晶化速度を調整するため、Geを用いることができる。すなわち、Geは、反射率、信号振幅(結晶と非晶質との反射率差)、媒体の長期保存による反射率低下等の特性には大きくは関係しない。このため、Geは、使用したい記録条件に適した結晶化速度を得るために用いることができる。Geが多くなると結晶化速度は遅くなるため、例えばより高速記録用の光学的情報記録用媒体ではGe含有量を少なくし、結晶化速度を調整することもできる。ただし、結晶化速度は他の元素含有量にも関係し、Snが多くなると結晶化速度は速くなり、In、Teが多くなると結晶化速度は遅くなる。したがって、前述の諸特性を考慮してGe以外の元素の含有量比を決めた後、Geの含有量を調整することにより記録条件に応じた結晶化速度の調整を行うことが好ましい。Ge含有量が多すぎると結晶化速度は遅くなりすぎるので、上記一般式におけるxは0.3以下とし、好ましくは0.25以下とし、より好ましくは0.2以下とする。なお、含有量が結晶化速度に与える影響は、GeとTeが特に大きい。
また、Ge含有量が多いと、記録された非晶質マークを長期保存した場合に保存前における記録直後よりも結晶化しにくくなる傾向にある。この現象が顕著になると、記録された光学的情報記録用媒体を長期保存した後にオーバーライトを行う場合に、重ね書きした記録信号の信号品質が不十分となってしまう。つまり、長期保存後の古いマークが十分に消えないため新しい記録マークの信号品質を悪化させるのである。この結晶化がしにくくなる現象は、長期保存後の第一回目の記録においてのみ問題となり、長期保存後に新たに記録される非晶質マークは正常な結晶化速度をもつようになる。いずれにせよ、Ge含有量を少なくすることによりこの現象は軽減される。この意味において、Ge含有量は少ない方が好ましく、上記一般式におけるxの値を0.1以下とすることが特に好ましく、0.07以下とすることが最も好ましい。
上述のように、TeやInは結晶化速度を遅くする効果があるので、結晶化速度を遅くする場合に同一の結晶化速度を得るにはTe、Inの含有量が多い方がGe含有量を少なくできる。この意味においてTe含有量、すなわちzの値は0.05以上であることが好ましく、0.08以上がより好ましく、0.1以上であることが最も好ましい。さらにこのとき、In含有量、すなわちw×yの値は0.05以上が好ましく0.08以上がより好ましい。また、前記のようにTe含有量が多い場合はInとSnの両方を含むことが好ましくなる。すなわち、最も好ましい組成ではGe、In、Sb、Sn、Teすべてを含有することとなる。
一方、Ge含有量が少なすぎると、非晶質マークの保存安定性が悪化し長期保存により結晶化する傾向にある。非晶質マークの保存安定性はInを多くすることによっても改善される傾向にあるが、Geの影響の方が強い傾向にある。一方、他の元素の影響により、Ge含有量がゼロであっても非晶質マークの保存安定性が比較的良い場合もある。したがって、上記一般式におけるxの値は0以上とするが、0より大きいことが好ましく、0.01以上がより好ましく、0.02以上がさらに好ましい。
上記GeSbTe共晶系の組成においてIn、Ga、Sn以外に含みうる元素としては、窒素、酸素及び硫黄を挙げることができる。これら元素は、繰返しオーバーライトにおける偏析の防止や光学特性の微調整ができるという効果がある。窒素、酸素及び硫黄の含有量は、Sb、Te及びGeの合計量に対して5原子%以下であることがより好ましい。 また、Sn、Cu、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Coを上記GeSbTe共晶系の組成に含有させることもできる。これらの元素は、ごく微量の添加により、結晶成長速度を低下させることなく、結晶化温度を上昇させ、さらなる経時安定性の改善に効果がある。ただし、これら元素の量が多すぎると特定の物質の経時的偏析や繰返しオーバーライトによる偏析が起こりやすくなるため、添加量は5原子%以下、特に3原子%以下とするのが好ましい。偏析が生じると、記録層が初期に有する非晶質の安定性や再結晶化速度等が変化して、オーバーライト特性が悪化することがある。
一方、Sbを主成分とする組成であるSbGe共晶系組成としては、SbGe共晶系にTeを添加するTeGeSb系を主成分とする組成、SbGe共晶系にIn、Ga又はSnを添加した、InGeSb系、GaGeSb系、又はSnGeSb系3元合金を主成分とする組成を挙げることができる。SbGe共晶系の合金に、Te、In、Ga、又はSnを添加することにより、結晶状態と非晶質状態の光学的特性差を大きくする効果を顕著とすることができるが、特にSnを添加することが好ましい。
このようなSbGe共晶系合金の好ましい組成としては、TeγM2δ(GeεSb1−ε)1−δ−γ(ただし、0.01≦ε≦0.3、0≦δ≦0.3、0≦γ<0.1、2≦δ/γ、0<δ+γ≦0.4であり、M2はIn、Ga、及びSnからなる群から選ばれる一つである。)を挙げることができる。SbGe共晶系合金に、In、Ga、又はSnを添加することにより、結晶状態と非晶質状態との光学的特性差を大きくできる効果を顕著とすることができる。
元素M2としてIn、Gaを用いることで、超高速記録におけるジッタが改善され、光学的なコントラストも大きくすることができるようになる。このため、In及び/又はGaの含有量を示すδは、通常0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上とする。ただし、In又はGaが過度に多いと、消去状態として使用する結晶相とは別に、非常に低反射率のIn−Sb系、又はGa−Sb系の他の結晶相が形成される場合がある。従って、δは、通常0.3以下、好ましくは、0.2以下とする。尚、InとGaとを比較すると、Inの方がより低ジッタを実現できるため、上記M2はInとすることが好ましい。
一方、元素M2としてSnを用いることで、超高速記録におけるジッタが改善され、光学的なコントラスト(結晶状態と非晶質状態の反射率差)が大きくとれるようになる。このため、Snの含有量を示すδは、通常0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上とする。ただし、Snが過度に多いと、記録直後の非晶質相が、低反射率の他の非晶質相に変化する場合がある。特に、長時間保存した場合に、この安定化非晶質相が析出して消去性能が低下する傾向がある。従って、δは、通常0.3以下、好ましくは0.2以下とする。
元素M2として、In、Ga、及びSnのうち複数の元素を用いることもできるが、特に、In及びSnを含有させることが好ましい。In及びSnを含有させる場合、これら元素の合計含有量は、通常1原子%以上、好ましくは5原子%以上とし、通常40原子%以下、好ましくは30原子%以下、より好ましくは25原子%以下とする。
上記TeM2GeSb系の組成においては、Teを含有することで超高速記録における消去比の経時的変化を改善することができるようになる。このため、Teの含有量を示すγは、通常0以上とするが、好ましくは0.01以上、特に好ましくは0.05以上とする。ただし、Teが過度に多いと、ノイズが高くなる場合があるため、γは、通常0.1より小とする。
尚、上記TeM2GeSb系の組成において、Teと元素M2とを含有させる場合は、これらの合計含有量を制御することが有効である。従って、Te及び元素M2の含有量を示すδ+γは、通常0より大きくするが、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上とすることである。δ+γを上記範囲とすることで、Te及び元素M2を同時に含有させる効果が良好に発揮されるようになる。一方、GeSb系共晶合金を主成分とする効果を良好に発揮されるために、δ+γは、通常0.4以下、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.3以下とする。一方、元素M2とTeとの原子数比を表すδ/γは2以上とするのが好ましい。Teを含有させることによって光学的コントラストが低下する傾向にあるため、Teを含有させた場合には、元素M2の含有量を若干多くする(δを若干大きくする)ことが好ましい。
上記TeM2GeSb系の組成に添加しうる元素としては、Au、Ag、Pd、Pt、Si、Pb、Bi、Ta、Nb、V、Mo、希土類元素、N、O等があり、光学特性や結晶化速度の微調整等に使われるが、その添加量は、最大で10原子%程度である。
以上において最も好ましい組成の一つは、InpSnqTerGesSbt(0≦p≦0.3、0≦q≦0.3、0<p+q≦0.3、0≦r<0.1、0<s≦0.2、0.5≦t≦0.9、p+q+r+s+t=1)なる合金系を主成分とする組成である。TeとIn及び/又はSnとを併用する場合は、(p+q)/r≧2とするのが好ましい。
記録層の膜厚は、十分な光学的コントラストを得、また結晶化速度を速くし短時間での記録消去を達成するためには5nm以上あるのが好ましい。また反射率を十分に高くするために、より好ましくは10nm以上とする。
一方、クラックを生じにくく、かつ十分な光学的コントラストを得るためには、記録層膜厚は100nm以下とするのが好ましいが、より好ましくは50nm以下とする。これは、熱容量を小さくし記録感度を上げるためである。また、上記範囲とすれば相変化に伴う体積変化を小さくできるため、上下の保護層に対する、繰り返しオーバーライトによる繰り返し体積変化の影響を小さくすることもできる。ひいては、不可逆な微視的変形の蓄積が抑えられノイズが低減され、繰り返しオーバーライト耐久性が向上する。
書き換え可能型DVDのような高密度記録用媒体では、ノイズに対する要求が一層厳しいため、より好ましくは記録層膜厚を30nm以下とする。
上記記録層は、通常、所定の合金ターゲットを不活性ガス、特にArガス中でDCまたはRFスパッタリングして得ることができる。
また、記録層の密度は、バルク密度の通常80%以上、好ましくは90%以上とする。ここでいうバルク密度ρとは、通常下記(1)式による近似値を用いるが、記録層を構成する合金組成の塊を作成して実測することもできる。
ρ=Σmiρi・・・(1)
(ここで、miは各元素iのモル濃度であり、miρiは元素iの原子量である。)
スパッタ成膜法においては、成膜時のスパッタガス(通常、Ar等の希ガス。以下、Arの場合を例に説明する。)の圧力を低くしたり、ターゲット正面に近接して基板を配置するなどして、記録層に照射される高エネルギーAr量を多くすることによって、記録層の密度を上げることができる。高エネルギーArは、通常スパッタのためにターゲットに照射されるArイオンが一部跳ね返されて基板側に到達するものか、プラズマ中のArイオンが基板全面のシース電圧で加速されて基板に達するものかのいずれかである。
このような高エネルギーの希ガスの照射効果をAtomic peening効果というが、一般的に使用されるArガスでのスパッタではAtomic peening効果により、Arがスパッタ膜に混入される。膜中のAr量により、Atomic peening効果を見積もることができる。すなわち、Ar量が少なければ、高エネルギーAr照射効果が少ないことを意味し、密度の疎な膜が形成されやすい。
一方、Ar量が多ければ、高エネルギーArの照射が激しくなり、膜の密度は高くなるものの、膜中に取り込まれたArが繰り返しオーバーライト時にvoidとなって析出し、繰り返しの耐久性を劣化させやすい。従って、適度な圧力、通常は10−2〜10−1Paのオーダーの範囲で放電を行なう。
(3)その他の層
(保護層)
記録層の相変化に伴う蒸発・変形を防止し、その際の熱拡散を制御するため、通常記録層の上下一方または両方、好ましくは両方に保護層が形成される。保護層の材料は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物等の誘電体を用いることができる。
この場合、これらの酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はなく、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いることも有効である。繰り返し記録特性を考慮すると誘電体の混合物が好ましい。より具体的には、ZnSや希土類硫化物等のカルコゲン化合物と酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等の耐熱化合物の混合物が挙げられる。例えば、ZnSを主成分とする耐熱化合物の混合物や、希土類の硫酸化物、特にY2O2Sを主成分とする耐熱化合物の混合物は好ましい保護層組成の一例である。
保護層の材料としては、通常、誘電体材料を挙げることができる。誘電体材料としては、例えば、Sc、Y、Ce、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Cr、In、Si、Ge、Sn、Sb、及びTe等の酸化物、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sb、及びPb等の窒化物、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Ga、In、及びSi等の炭化物、又はこれらの混合物を挙げることができる。また、誘電体材料としては、Zn、Y、Cd、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBi等の硫化物、セレン化物もしくはテルル化物、Mg、Ca、Li等のフッ化物、又はこれらの混合物を挙げることができる。
さらに誘電体材料の具体例としては、ZnS−SiO2、SiN、GeN、SiO2、TiO2、CrN、TaS2、Y2O2S等を挙げることができる。これら材料の中でも、ZnS−SiO2は、成膜速度の速さ、膜応力の小ささ、温度変化による体積変化率の小ささ、及び優れた耐候性から広く利用される。ZnS−SiO2を用いる場合、ZnSとSiO2との組成比ZnS:SiO2は、通常0:1〜1:0、好ましくは0.5:0.5〜0.95:0.05、より好ましくは0.7:0.3〜0.9:0.1とする。最も好ましいのはZnS:SiO2を0.8:0.2とすることである。
より具体的には、La,Ce,Nd,Y等の希土類の硫化物、硫酸化物を50mol%以上90mol%以下含む複合誘電体や、ZnS,TaS2を70mol%以上90mol%以下含有する複合誘電体が望ましい。
繰り返し記録特性を考慮すると、保護層の膜密度はバルク状態の80%以上であることが機械的強度の面から望ましい。誘電体の混合物を用いる場合には、バルク密度として上述の一般式(1)の理論密度を用いる。
保護層の厚さは、一般的に通常1nm以上500nm以下である。1nm以上とすることで、基板や記録層の変形防止効果を十分確保することができ、保護層としての役目を十分果たすことができる。また、500nm以下とすれば、保護層としての役目を十分果たしつつ、保護層自体の内部応力や基板との弾性特性の差等が顕著になって、クラックが発生するということを防止することができる。
特に、記録層からみて光の入射側に位置する第一保護層を設ける場合、第一保護層は、熱による基板変形を抑制する必要があるため、その厚さは通常1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは20nm以上、特に好ましくは40nm以上である。このようにすれば、繰り返し記録中の微視的な基板変形の蓄積が抑制され、再生光が散乱されてノイズ上昇が著しくなるということがなくなる。
一方、第一保護層の厚みは、成膜に要する時間の関係から、通常400nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下、特に好ましくは100nm以下である。このようにすれば、記録層平面で見た基板の溝形状が変わるということがなくなる。すなわち、溝の深さや幅が、基板表面で意図した形状より小さくなったりする現象が起こりにくくなる。
一方、記録層からみて光に入射側と反対側に位置する第二保護層を設ける場合、第二保護層は、記録層の変形抑制のために、通常その厚さは1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上である。また、繰り返し記録に伴って発生する上部保護層内部の微視的な塑性変形の蓄積を防止し、再生光の散乱によるノイズ上昇を抑制するため、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは60nm以下、特に好ましくは50nm以下、最も好ましくは30nm以下である。また、保護層は多層に設けてもよい。
なお、記録層及び保護層の厚みは、機械的強度、信頼性の面からの制限の他に、多層構成に伴う干渉効果も考慮して、レーザ光の吸収効率がよく、記録信号の振幅が大きく、すなわち記録状態と未記録状態のコントラストが大きくなるように選ばれる。
保護層は通常スパッタ法で形成されるが、ターゲットそのものの不純物量や、成膜時に混入する水分や酸素量も含めて全不純物量を2原子%未満とするのが好ましい。このために保護層をスパッタリングによって形成する際、プロセスチャンバの到達真空度は1×10−3Pa未満とすることが望ましい。
(反射層)
光記録媒体においては、さらに反射層を設けることができる。反射層の設けられる位置は、通常再生光の入射方向に依存し、入射側に対して記録層の反対側に設けられる。すなわち、基板側から再生光を入射する場合は、基板に対して記録層の反対側に反射層を設けるのが通常であり、記録層側から再生光を入射する場合は記録層と基板との間に反射層を設けるのが通常である。
反射層に使用する材料は、反射率の大きい物質が好ましく、特に放熱効果も期待できるAu、AgまたはAl等の金属が好ましい。その放熱性は膜厚と熱伝導率で決まるが、熱伝導率は、これら金属ではほぼ体積抵抗率に比例するため、放熱性能を面積抵抗率で表すことができる。面積抵抗率は、通常0.05Ω/□以上、好ましくは0.1Ω/□以上、一方、通常0.6Ω/□以下、好ましくは0.5Ω/□以下とする。
これは、特に放熱性が高いことを保証するものであり、上記記録層に用いる組成のように、非晶質マーク形成において、非晶質化と再結晶化の競合が顕著である場合に、再結晶化をある程度抑制するために必要なことである。反射層自体の熱伝導度制御や耐腐蝕性の改善のために、上記の金属にTa、Ti、Cr、Mo、Mg、V、Nb、Zr、Si等を少量加えてもよい。添加量は通常0.01原子%以上20原子%以下である。
本実施の形態に適した反射層の材料をより具体的に述べると、AlにTa,Ti,Co,Cr,Si,Sc,Hf,Pd,Pt,Mg,Zr,Mo及びMnからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含むAl合金を挙げることができる。これらの合金は、耐ヒロック性が改善されるため、耐久性,体積抵抗率,成膜速度等を考慮して用いることができる。上記元素の含有量は、通常0.1原子%以上、好ましくは0.2原子%以上、一方、通常2原子%以下、好ましくは1原子%以下である。Al合金に関しては、添加不純物量が少なすぎると、成膜条件にもよるが、耐ヒロック性は不十分であることが多い。また、多すぎると十分な放熱効果が得られにくい。
アルミニウム合金の具体例としては、Ta及びTiの少なくとも一方を15原子%以下含有するアルミニウム合金は、耐腐蝕性に優れており、光記録媒体の信頼性を向上させる上で特に好ましい反射層材料である。
反射層材料の好ましい例としては、純AgまたはAgにTi,V,Ta,Nb,W,Co,Cr,Si,Ge,Sn,Sc,Hf,Pd,Rh,Au,Pt,Mg,Zr,Mo、Cu、Zn、Mn、及び希土類元素からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含むAg合金を挙げることができる。経時安定性をより重視する場合には添加成分としてはTi,Mg又はPdが好ましい。上記元素の含有量は、通常0.01原子%以上、好ましくは0.2原子%以上、一方、通常10原子%以下、好ましくは5原子%以下である。
特に、AgにMg、Ti、Au、Cu、Pd、Pt、Zn、Cr、Si、Ge、希土類元素のいずれか一種を0.01原子%以上10原子%以下含むAg合金は、反射率、熱伝導率が高く、耐熱性も優れていて好ましい。
なお、上部保護層の膜厚を40nm以上50nm以下とする場合には特に、反射層を高熱伝導率にするため、含まれる添加元素を2原子%以下とするのが好ましい。
反射層の材料として特に好ましいのは、Agを主成分とすることであり、最も好ましいのは純Agとすることである。Agを主成分とすることが好ましい理由は以下のとおりである。すなわち、長期保存した記録マークを再度記録すると、保存直後の第一回目の記録だけ、相変化記録層の再結晶化速度が速くなる現象が発生する場合がある。このような現象が発生する理由は不明であるが、この保存直後における記録層の再結晶化速度の増加により、保存直後の第一回目の記録で形成した非晶質マークの大きさが所望するマークの大きさよりも小さくなるのではないかと推測される。したがって、このような現象が発生する場合には、反射層に放熱性が非常に高いAgを用いて記録層の冷却速度を上げることにより、保存直後における第一回目の記録時の記録層の再結晶化を抑制して非晶質マークの大きさを所望の大きさに保つことができるようになる。
反射層の膜厚としては、透過光がなく完全に入射光を反射させるために通常10nm以上とするが、20nm以上とすることが好ましく、40nm以上とすることがより好ましく、50nm以上とすることがさらに好ましい。また、あまりに厚すぎても、放熱効果に変化はなくいたずらに生産性を悪くし、また、クラックが発生しやすくなるので、通常は500nm以下とするが、400nm以下とすることが好ましく、300nm以下とすることがより好ましく、200nm以下とすることがさらに好ましい。
なお、反射層は通常スパッタ法や真空蒸着法で形成されるが、ターゲットや蒸着材料そのものの不純物量や、成膜時に混入する水分や酸素量も含めて全不純物量を2原子%未満とするのが好ましい。このために反射層をスパッタリングによって形成する際、プロセスチャンバの到達真空度は1×103Pa未満とすることが望ましい。
また、104Paより悪い到達真空度で成膜するなら、成膜レートを1nm/秒以上、好ましくは10nm/秒以上として不純物が取り込まれるのを防ぐことが望ましい。あるいは、意図的な添加元素を1原子%より多く含む場合は、成膜レートを10nm/秒以上として付加的な不純物混入を極力防ぐことが望ましい。
さらなる高熱伝導と高信頼性を得るために反射層を多層化することも有効である。この場合、少なくとも1層は全反射層膜厚の50%以上の膜厚を有する上記の材料とするのが好ましい。この層は実質的に放熱効果を司り、他の層が耐食性や保護層との密着性、耐ヒロック性の改善に寄与するように構成される。特に、純AgまたはAgを主成分とする反射層を、硫黄を含むZnS等を含む保護層と接して設ける場合には、Agの硫黄との反応による腐食を防ぐために、通常、硫黄を含まない界面層を設けるが、界面層が、反射層として機能するような金属であることが好ましい。界面層の材料としては、Ta、Nbを挙げることができる。
記録層用ターゲット、保護層用ターゲット、必要な場合には反射層材料用ターゲットを同一真空チャンバー内に設置したインライン装置で膜形成を行なうことが各層間の酸化や汚染を防ぐ点で望ましい。また、生産性の面からも優れている。
(保護コート層)
光記録媒体の最表面側には、空気との直接接触を防いだり、異物との接触による傷を防ぐため、紫外線硬化樹脂や熱硬化型樹脂からなる保護コート層を設けるのが好ましい。保護コート層は通常1μmから数百μmの厚さである。また、硬度の高い誘電体保護層をさらに設けたり、その上にさらに樹脂層を設けることもできる。
(その他)
なお、ここでは、CD−RWのような1層構造のものを例に説明したが、これに限られるものではなく、他の構造のもの(例えば2層構造のものやそれ以上の多層構造のもの、2層構造で片面入射型のものや両面入射型のものなど)にも本発明を適用することができる。
2001…インターフェース(I/F)回路、2002…変調回路、2003…分割記録パルス生成制御回路、2004…LDドライバ、2005…半導体レーザー(LD)、2006…ビームスプリッタ、2007…光ディスク、2008…フォトディテクタ、2009…対物レンズ、2010…再生回路、2011…復調回路、2012…ドライブマイコン、2013…スピンドルモーター、2020…選択信号、2030…セレクタ、2031,2032,2033…ディジタル・アナログ変換器(Digital Analog Converter DAC1,DAC2,DAC3)、2034,2035,2036…電圧―電流(V/I)変換器、2037,2038,2039…電流増幅アンプ、2040…電流加算器