JP4410081B2 - 光記録方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、本発明者の検討によれば、高転送レートが可能な相変化型光記録媒体に、比較的低線速度での記録を行うと、良好な記録特性が得られにくい場合があることが明らかとなった。
本発明は、このように、高転送レートが可能な相変化型光記録媒体に低線速度で記録を行う際に浮かび上がった課題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、高転送レートが可能な結晶化速度の速い相変化型光記録媒体に、比較的低線速度で記録を行う場合において、優れた記録特性を示す光記録方法を提供することにある。
即ち、本発明が適用される光記録方法は、結晶状態と非晶質状態とで情報の記録を行い、情報の書き換えが可能な相変化型記録層を有する光記録媒体に局所的に記録光を照射し、2種類の記録線速度V min 及び記録線速度V max (但し、V max >V min である)により、マーク長変調された情報を複数の時間的な長さを有する記録マークによって記録する光記録方法であって、一つの記録マークの時間的な長さをnTとしたとき(Tは、基準クロック周期であり、nは、2以上の自然数である。)、nTの時間的な長さを有する記録マークを記録するための光照射時間を、
今、一つの記録マークの時間的な長さをnTとしたとき(Tは基準クロック周期であり、nは2以上の自然数である。)、nTの記録マークを記録するための光照射時間を、
例えば、CDの1倍速(1.2m/s〜1.4m/s)基準速度では、T=231nsecであるが、40倍速では、T=5.8nsec、48倍速では、T=4.7nsecである。また、DVDの1倍速(3.49m/s)基準速度では、T=38.2nsecであるが、10倍速では、T=3.82nsec、12倍速では、T=3.2nsec、16倍速では、T=2.4nsec、である。
次に、パルス分割方法による光記録方法を高速記録に適用する場合について説明する。高データ転送レートが可能な書換型相変化型記録媒体では、結晶化速度の速い記録材料を記録層に用いる必要がある。これは、オーバーライト時にオーバーライト前に存在した非晶質マークを短時間で結晶化する必要があるからである。一方、結晶化速度が速くなるために、非晶質状態の記録マーク記録時において再結晶化が起こりやすくなる。この記録時の再結晶化を抑制して非晶質マークを良好に形成するためには、冷却速度を速める必要がある。このため、パルス列中の冷却パルスの時間幅βiTを長くとる必要がある。そして、βiTの長さを基準クロック周期より長くとる必要がある場合には、基本的に複数の長さを有するnTマークを、同一の分割数mのパルス列で記録する記録方法を用いる必要が生じる。このような記録方法は、オーバーライト可能な最高線速度における基準クロック周期が10nsより短くなると必須となる場合が多い。
そして、長さnTが異なる複数の記録マークを同一のパルス分割数mで形成する場合、この複数の記録マークの中、最も長い記録マークを形成する際の時間αiT(1≦i≦m)におけるPwiの平均値をPwlongとし、一方、最も短いnTの記録マークを形成する際の時間αiT(1≦i≦m)におけるPwiの平均値をPwshortとする。そして、Pwshort>Pwlongとなるmが存在するようにする。
次に、パルス分割方法による光記録方法を低速記録に適用する場合について説明する。低線速での記録時は、仮に媒体上での光照射位置(記録パルスの時間的長さαiTと、冷却パルスの時間的長さβiTとの関係)を高線速記録の場合と同じにとると、時間的なパルスの長さ(αiT)やパルス間の長さ(βiT)は、高線速記録の場合と比較して、線速度に反比例して長くなる。これは、記録線速度Vとクロック周期Tとの積(V×T)は常に一定であるため、クロック周期Tが記録線速度Vに反比例して長くなるためである。
(1)本実施の形態が適用される光記録方法を適用する分割数m
このような光記録方法を用いる場合に、総ての分割数mでPwshort>Pwlongとしてもよい。好ましいのは、一部の分割数mで用いることである。具体的には、m=1及び/又はm=2においてPwshort>Pwlongとすることが特に好ましい。この理由は以下の通りである。
m=2又はm=1で記録される複数の記録マーク長の中で最短の記録マークについては、記録マークの長さを調節するためにβ1Tを長い記録マークより短くすることが必要となる。一方、mが3以上の場合は、βiT(i≠1)で記録マーク長を調整することが可能となり、自由度が高い。ここで、実験によれば、βiT(i≠1)を短くする場合と比較して、β1Tを短くする場合の方が記録品質の特性低下が顕著となる傾向にある。これは、先頭パルス(α1T部のパルス)が照射される部分の冷却速度が主にβ1Tの長さで決まるため、β1Tを短くすると、記録マークの先端部分を形成するための冷却速度が不足し、相変化記録層の溶融後の再結晶化が記録マークの前端部分(先頭記録パルスが照射される側)で起こりやすくなるからである。そして、その結果、記録マーク先端部分が所望の形とならない(ジッタ特性が低下する)傾向となる。従って、m=2又はm=1のように、分割数が小さく、β1Tの長さをある程度確保することが必要となる場合は、同一分割数における短い記録マークを形成するための記録パワーが不足する傾向が強くなる。このような場合に本実施の形態が適用される光記録方法を用いる意義が大きい。
パルス列の発生を制御する電子回路の設計の簡略化を行い、かつレーザー光照射用の光源の寿命を確保するために、Pwi(1≦i≦m)を次のように設定することが好ましい。
即ち、同一の分割数mで異なる長さを有する複数の記録マークを形成する際に、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが長い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個のPwiをPw1と一定値とする。一方、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個のPwiの中、少なくとも一部のPwiをPw0とし、残りのPwiをPw1とする。そして、Pw0>Pw1とする。Pwiの値を頻繁に変化させることは、パルス発生の制御回路の設計を複雑にするだけでなく、レーザー光の光源の寿命を短くする可能性があるため、上記のような設定とすることが好ましい。
パルス分割数mがm=1及び/又は2において本実施の形態が適用される光記録方法を適用する場合には、α1Tにおける記録パワーをPw0とすれば良好な記録品質を有する記録マークを形成することができる。
さらに好ましいのは、本実施の形態が適用される光記録方法において、同一の分割数mで、異なる長さを有する複数のnTの記録マークを形成する際に、これらの複数の記録マークの中、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個のPwiの総てをPw0とすることである。このような設定とすることにより、パルス発生の制御回路をさらに簡略化することができるようになる。
本実施の形態が適用される光記録方法において、各マーク長における記録パワーの平均値は、少なくとも2種類以上の値をとり、用いる記録パワーの中、大きいのものがPwshortである。Pwshortは、Pwlongより大きければ効果があるが、Pwlongの1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.15倍以上が特に好ましい。一方、記録パワーが大きすぎるとレーザー寿命が短くなるため、Pwshortは、Pwlongの2倍以下が好ましく、1.6倍以下がより好ましく、1.4倍以下が特に好ましい。
本発明者は、高データ転送レートが可能な相変化型記録媒体に比較的低線速度での記録を行う等の場合に、高速記録用に合わせ込んだ記録方法をそのまま用いると良好な記録特性が得られにくい場合があることを見出した。その原因を検討した結果、高速記録時の最適記録パワーでの記録で低速記録を行うと、特定のマーク長(特に、nが小さい値である短いマーク)の特性のみが悪化することがわかった。これら特定のマーク長(特に、nが小さい値である短いマーク)の特性を改善するには、適当な記録パルス波形を選んだ上で、この特定のマーク長を記録するための記録パルスの記録パワーを上げれば良いことを見出した。
記録パルスの発生を制御する電子回路の設計を簡略化し、ひいてはレーザー光の光源の寿命を延ばすために、高データ転送レートが可能な相変化型記録媒体においては、先ず、高速記録(記録線速度Vmax)において良好な記録品質を得られるように光記録方法を合わせ込むのが通常である。ところが、高速記録において合わせ込んだ光記録方法を低線速度に適用すると、前述した「低線速度での記録」において説明したように、冷却パルスを長くとる(βiを大きくする)必要があるために、記録パルスが短くなる(αiが短くなる)傾向にある。従って、低線速度での記録において、複数の長さを有する記録マークを同一のパルス分割数mで形成する際に、αiをより短くしなければならない。そしてこのために、良好な記録品質を有する記録マークを得るための平均記録パワーPwshortが不十分となりやすい。このため、低線速記録時においてPwshortをPwlongよりも大きくする意義が大きくなる。
また、VminとVmaxとの関係については、VminとVmaxとの差が大きくなればなるほど、Vminにおいて上記αiをより短くしなければならない現象が顕著に発生する。従って、VminとVmaxとの差が大きくなるようなVminにおいて、本実施の形態が適用される光記録方法を適用する意義が大きくなる。具体的には、VminとVmaxとの関係を、Vmax≧2Vminとすることにより、本実施の形態が適用される光記録方法により得られる効果がより顕著に発揮される。
尚、上記の通り、VminとVmaxとの差は、大きくなればなるほど好ましい。従って、Vmaxの上限は特に規定する必要はない。但し、現実的には、Vmaxの上限は、Vminの1000倍又は100倍程度となる。
(1)αi、βiの値
αi、βiの値は、iの値、マーク長、記録線速度等によって変化する値である。本発明では、複数のマーク長を同一の分割数のパルス列で記録する光記録方法を想定しているため、1≦i≦m−1なる(αi+βi)Tの平均的な周期は、クロック周期Tより大きくなる。但し、大きすぎると1つのマークを形成するためのパルス列による非晶質部が光学的に分離されてしまう。従って、1≦i≦m−1での(αi+βi)の平均値は、通常1以上とするが、1.25以上が好ましく、2以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。一方、1≦i≦m−1での(αi+βi)の平均値は、通常6以下とするが、5以下が好ましく、4.5以下がさらに好ましい。
βmは、大きすぎるとオーバーライト前に存在した非晶質マークの結晶化が不充分となり、小さすぎると記録層の溶融後の再結晶化が激しくなり記録特性が低下する。書換型相変化型記録媒体のオーバーライト可能な最高線速度におけるβmの平均値は、0以上の実数とするが、0.2以上が好ましく、0.5以上がさらに好ましい。一方、βmの平均値は、通常3以下とするが、2以下が好ましく、1.5以下がさらに好ましい。オーバーライト可能な最高線速度に対して記録線速度が小さくなる場合はβmは大きくする。このとき、βmの好ましい範囲は、オーバーライト可能な最高線速度記録におけるβmの好ましい範囲を線速度に反比例して大きくした値となる。
バイアスパワーPbは小さい方が冷却速度を上げる点で好ましい。従って、フォーカスやトラッキングサーボに支障が無い限りできるだけ0に近づけた方が好ましい。1≦i≦mにおいて、Pb/Pwi≦0.2とするが、Pb/Pwi≦0.1が好ましい。通常Pbは再生パワーと同程度の値とする。
本実施の形態が適用される光記録方法においては、αiT及びβiT以外の区間での記録光強度については、特に、定めていない。例えば、書換型相変化型光記録媒体では、消去パワーPeを照射する。結晶状態を未記録・消去状態とし、非晶質状態を記録マークとするオーバーライト可能な相変化媒体では、消去パワーPeは、記録層を結晶化温度以上、概ね融点以下の温度に昇温せしめる温度である。その場合、1≦i≦mにおけるPe/Pwiは、通常0.1以上とするのが好ましい。一方、Pe/Pwiは、通常0.6以下、好ましくは0.4以下とするのが好ましい。上記範囲の中、Pe/Pwiは、特に、0.2以上0.4以下の範囲の値がより好ましい。この比が上記範囲より小さいと、消去パワーが低すぎて、非晶質マークの消え残りが生じる場合がある。一方、この比が上記範囲より大きいと、Peの照射部が溶融した後に非晶質化してしまう場合がある。
記録パワーPwiは、通常、4mW以上、60mW以下とする。例えば、波長400nm程度のレーザーでは、Pwiは、4mW〜15mW程度とするのが一般的である。例えば、波長650nm程度のレーザーでは、Pwiは、10mW〜50mW程度とするのが一般的である。また、例えば、波長780nm程度のレーザーでは、Pwiは、10mW〜60mW程度とするのが一般的である。無論、記録パワーは記録条件やディスク構成やレーザーの性能により変化し得る値である。
バイアスパワーPbの値及び消去パワーPeの値の上下限値は、記録パワーPwiの値を基に必然的に決まる。
本実施の形態が適用される光記録方法を実施するための光記録装置について以下に説明する。
本実施の形態が適用される光記録方法においては、図4(a)〜図4(c)に示すようなタイミングチャートで、記録パルスαiT、冷却パルスβiTを順番に発生させる。そして、同一分割数mで複数の長さ(nT)を有する記録マークを形成する場合に、上記複数の長さ(nT)を有する記録マークのうち、最もnTが長い記録マークを形成する際の記録パワーPwiの平均値Pwlongとし、最も短いマークを形成する際の記録パワーPwiの平均値Pwshortとする。そして、Pwshort>Pwlongとなるようなmを存在させる。
ここで、図4(a)〜図4(c)に示すような、実際の分割記録パルス光をレーザーダイオードから出力させる場合、通常、次のような操作を行なう。すなわち、図4(a)〜図4(c)に示すようなタイミングチャートでゲート信号を発生する論理レベルの集積回路出力を、レーザードライバー回路に入力する。そして、レーザードライバー回路においてレーザー駆動のための大電流を制御し、レーザーダイオードからの光出力を制御して、記録パワーPwi、バイアスパワーPb、消去パワーPeを発生させる。このようにして、図4(a)〜図4(c)に示すような分割記録パルス光の制御が達成される。
図5に示された光記録装置2000の構成について説明する。I/F2001は、ホストコンピュータ(図示せず)とのデータの受け渡しをするためのインターフェース回路である。変調回路2002は、記録するデータを符号変調するための回路である。分割記録パルス生成制御回路2003は、変調回路2002により変調された信号に基づき、分割記録用のパルス列を生成するための回路である。LDドライバ2004は、分割記録パルス生成制御回路2003から出力される論理レベルの制御信号に基づき、レーザー光の出力を制御するためのドライバである。LD2005は、光記録装置2000の光源となる半導体レーザー(LD)である。ビームスプリッタ2006は、LD2005からのレーザー光を記録媒体である光ディスク2007上に出射光として出力させ、また光ディスク2007からの反射光を分離するための光学素子である。対物レンズ2009は、レーザー光を光ディスク2007上に集束させるための光学素子である。PD2008は、ビームスプリッタ2006により導かれた光ディスク2007からの反射光を受光して電気信号に変換するためのフォトディテクタである。再生回路2010は、PD2008から出力された電気信号から光ディスク2007上に記録された信号を検出し、この信号のための基準クロック(周期T)を生成するための回路である。復調回路2011は、再生回路2010より再生され、光ディスク2007上に記録されたデータを復調するための回路である。制御マイコン2012は、光記録装置2000全体を制御するためのコンピューターである。スピンドルモーター2013は、光ディスク2007を回転させるための駆動装置である。
光ディスク2007上に記録される記録データは、変調回路2002より符号変調されたパラレルデータを、さらにシリアルなNRZI(Non Return to Zero Inverted)信号に変換するマーク変調記録方式が採用されている。その際の動作クロックは、再生回路2010から出力される基準クロックである。再生回路2010においては、通常、光ディスク2007上にあらかじめ形成された案内溝の溝蛇行(wobble)信号を検出して、基準クロックを抽出する。このため、記録線速度に応じた基準クロックが得られる。
本実施の形態において、光記録装置2000では、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークを、同一のパルス分割数mで形成するように構成する。そして、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが長い記録マークを形成する際の時間αiT(1≦i≦m)における記録パワーPwiの平均値をPwlongとし、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークのうち、最もnTが短い記録マークを形成する際の時間αiT(1≦i≦m)における記録パワーPwiの平均値をPwshortとしたとき、Pwshort>Pwlongとなるmが存在するように構成すればよい。
このような構成は、例えば、制御マイコン2012から、分割数m、Pwshort、及びPwlongの関係に関する情報を選択信号2020として、分割記録パルス生成制御回路2003に入力することによって実現できる(図5参照)。また、用いる光ディスク2007にとって好ましいm、Pwshort、及びPwlongの情報を光ディスク2007にプレピット列等で記録しておいてもよい。そして、この情報を光ディスク2007に記録するのに先立って読み出す。その後、この読み出した情報を用いて、光ディスク2007に所望の記録を行うようにしてもよい。
このような構成は、例えば、制御マイコン2012に、Vmin及びVmaxのデータを設定しておくことによって実現できる(図5参照)。また、用いる光ディスク2007にとって好ましいVmin、Vmaxの情報を光ディスク2007にプレピット列等で記録しておいてもよい。そして、この情報を光ディスク2007に記録するのに先立って読み出す。その後、この読み出した情報を用いて、光ディスク2007に所望の記録を行うようにしてもよい。
このような構成は、例えば、制御マイコン2012に、1≦i≦mにおけるPw1及びPw0のデータを設定しておくことによって実現できる(図5参照)。また、用いる光ディスク2007にとって好ましいPw1、Pw0の情報を光ディスク2007にプレピット列等で記録しておいてもよい。そして、この情報を光ディスク2007に記録するのに先立って読み出す。その後、この読み出した情報を用いて、光ディスク2007に所望の記録を行うようにしてもよい。
本実施の形態が適用される光記録方法は、結晶状態と非晶質状態とで情報の記録を行い、情報の書き換えが可能な相変化型記録層を有する光記録媒体に適用されることが好ましい。
相変化型記録層を有する光記録媒体の具体例としては、基板上に、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層、及び保護コート層をこの順に有する層構成を有する光記録媒体を挙げることができる。この光記録媒体は、基板を通してレーザー光を照射することにより信号の記録再生を行う光記録媒体(基板面入射型の光記録媒体)である。また、相変化型記録層を有する光記録媒体の他の具体例としては、基板上に、反射層、下部保護層、記録層、上部保護層、及び保護コート層をこの順に有する層構成を有する光記録媒体を挙げることができる。この光記録媒体は、上部保護層を通じてレーザー光を照射することにより信号の記録再生を行う光記録媒体(膜面入射型の光記録媒体)である。膜面入射型の光記録媒体では、基板を通さずに第二保護層側からレーザー光を照射することにより信号の記録再生を行う。このため、記録層と光ヘッドの距離を数百ミクロン以下に接近させることが可能となり、開口数が0.7以上の対物レンズを使用することで媒体の記録密度を向上させることが出来る。
本実施の形態において好ましいのは、高データ転送レートが可能な書き換え型相変化型の光記録媒体である。このような光記録媒体は、通常、結晶化速度の速い記録材料を記録層に用いることによって実現できる。
(1)記録層
記録層の材料としては、例えば、GeSbTe、InSbTe、AgSbTe、及びAgInSbTeといった系列の化合物のように、繰り返し記録が可能な材料が選ばれる。これらの中で、Sb2Te3とGeTeの疑似2元合金を主成分とする組成、より具体的には、{(Sb2Te3)1−α(GeTe)α}1−βSbβ組成(但し、0.2≦α≦0.9、0≦β≦0.1)が選ばれることが多い。あるいは、Sbを50原子%以上含むSbを主成分とする組成が選ばれることが多い。
Sbを主成分とする一つの組成は、Teを概ね10原子%以上含みつつ、Sb70Te30共晶組成よりも過剰のSbを含有する合金を主成分とする組成である。この記録層材料を、以下において、SbTe共晶系と呼ぶ。ここで、Sb/Teは3以上とすることが好ましく、4以上とすることがより好ましい。
Te添加量が10原子%未満の組成は、SbTe共晶系ではなく、SbGe共晶系としての性質を有するようになる。このSbGe共晶系の合金は、Ge含有量が10原子%程度と高くても、初期結晶化後の多結晶状態の結晶粒径は比較的微細なために結晶状態が単一相となりやすく、ノイズが低い。SbGe共晶系の合金においては、Teは、付加的に添加されるにすぎず必須元素とはならない。
SbGe共晶系合金では、Sb/Ge比を相対的に高くすることで、結晶化速度を速めることができ、再結晶化による非晶質マークの消去が良好にできる。
即ち、上記SbTe共晶系又はSbGe共晶系等のSbを主成分とする記録層は、高速記録に対応するために、Sb70Te30共晶点あるいはSb90Ge10共晶点近傍よりもさらにSbを過剰に添加し、結晶核生成速度ではなく結晶成長速度を高めることにより結晶化速度を高めている。このため、これら記録層においては、記録層の冷却速度を速くして、再結晶化による非晶質マークの変化(非晶質マークが所望のサイズよりも小さくなること)を抑制することが好ましい。従って、記録層を溶融した後に非晶質マークを確実に形成するために記録層を急冷することが重要となる。換言すれば、記録層の冷却効率を良くすることが非常に重要となるのである。そのため、上記記録層組成においては、反射層に放熱性の高いAg又はAg合金を用いることが特に好ましい。そして、このような記録時の冷却効率を上げる必要がある記録層を有する光記録媒体に対して、本実施の形態の光記録方法を用いる意義が大きい。
Sbを主成分とする組成としては、先ず、(SbxTe1−x)1−yMy(但し、0.6≦x≦0.9、0≦y≦0.45、Mは、Ge、Ag、In、Ga、Zn、Sn、Si、Cu、Au、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、S、Se、V、Nb、及びTaより選ばれる少なくとも1種)合金を主成分とするSbTe共晶系の組成を好ましく挙げることができる。尚、上記組成式は、原子数比で組成を表している。従って、例えばx=0.6は、60原子%を意味する。
上記(SbxTe1−x)1−yMy組成においては、Mとしては、Ge、Ga、Ag、Sn、又はInを単独又は併用して用いることが、オーバーライト特性等の記録特性の観点から特に好ましい。
上記(SbxTe1−x)1−yMy組成においては、xは、通常0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.75以上であり、一方、通常0.9以下とする。また、yは、通常0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、一方、通常0.45以下、好ましくは0.4以下である。x、yを上記範囲とすれば、高速記録に対応可能な記録層を得ることができるようになる。
また、Cu、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Coを上記GeSbTe共晶系の組成に含有させることもできる。これら元素は、ごく微量の添加により、結晶成長速度を低下させることなく、結晶化温度を上昇させ、さらなる経時安定性の改善に効果がある。但し、これら元素の量が多すぎると特定の物質の経時的偏析や繰返しオーバーライトによる偏析が起こりやすくなるため、添加量は5原子%以下、特に3原子%以下とするのが好ましい。偏析が生じると、記録層が初期に有する非晶質の安定性や再結晶化速度等が変化して、オーバーライト特性が悪化することがある。
一方、クラックを生じにくく、かつ十分な光学的コントラストを得るためには、記録層膜厚は100nm以下とするのが好ましいが、より好ましくは50nm以下とする。これは、熱容量を小さくし記録感度を上げるためである。また、上記範囲とすれば相変化に伴う体積変化を小さくできる。このため、上下の保護層に対するオーバーライトによる記録層の繰り返しの体積変化の影響を小さくすることもできる。ひいては、不可逆な微視的変形の蓄積が抑えられノイズが低減され、繰り返しオーバーライト耐久性が向上する。
書き換え可能型DVDのような高密度記録用媒体では、ノイズに対する要求が一層厳しいため、より好ましくは記録層膜厚を30nm以下とする。
また、記録層の密度は、バルク密度の通常80%以上、好ましくは90%以上とする。ここでいうバルク密度ρとは、通常下記(1)式による近似値を用いるが、記録層を構成する合金組成の塊を作成して実測することもできる。
スパッタ成膜法においては、成膜時のスパッタガス(通常、Ar等の希ガス。以下、Arの場合を例に説明する。)の圧力を低くしたり、ターゲット正面に近接して基板を配置する等して、記録層に照射される高エネルギーAr量を多くすることによって、記録層の密度を上げることができる。高エネルギーArは、通常スパッタのためにターゲットに照射されるArイオンが一部跳ね返されて基板側に到達するものか、プラズマ中のArイオンが基板全面のシース電圧で加速されて基板に達するものかのいずれかである。
一方、Ar量が多ければ、高エネルギーArの照射が激しくなり、膜の密度は高くなる。しかしながら、膜中に取り込まれたArが繰り返しオーバーライト時にvoidとなって析出し、繰り返しの耐久性が劣化しやすくなる。従って、適度な圧力、通常は、10−2Pa〜10−1Paのオーダーの範囲で放電を行う。
基板には、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン等の樹脂、あるいはガラスを用いることができる。なかでもポリカーボネート樹脂が最も好ましい。ポリカーボネート樹脂は、CD−ROM等において最も広く用いられている実績もあり、かつ安価でもあるからである。基板の厚さは、通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上であり、一方、通常20mm以下、好ましくは15mm以下である。一般的には、基板の厚さは、0.6mm〜1.2mm程度とされる。基板面入射型の光記録媒体においては、基板はレーザー光を透過する必要があるため、レーザー光に対して透明である必要がある。一方、膜面入射型の光記録媒体においては、基板は必ずしも透明である必要はない。
記録層の相変化に伴う記録層の蒸発・変形を防止し、記録層の相変化に伴う熱拡散を制御するために、保護層が用いられる。保護層は、通常記録層の上下一方または上下両方に形成される。好ましくは、記録層の上下両方に保護層が形成される。保護層の材料は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物等の誘電体を用いることができる。
保護層の厚さは、一般的に、通常、1nm以上500nm以下である。1nm以上とすることで、基板や記録層の変形防止効果を十分確保することができる。そして、保護層としての役目を十分果たすことができる。また、保護層の膜厚を500nm以下とすれば、保護層としての役目を十分果たしつつ、保護層自体の内部応力や基板との弾性特性の差等が顕著になって、クラックが発生するということを防止することができる。
記録層に対して基板とは反対側に保護層(上部保護層と称することがある)を設ける場合、上部保護層の膜厚は、記録層の変形抑制のために、通常、1nm以上、好ましくは、5nm以上、特に好ましくは、10nm以上である。また、上部保護層膜厚は、好ましくは、200nm以下、より好ましくは、150nm以下、さらに好ましくは、100nm以下、特に好ましくは、50nm以下である。上部保護層膜厚を上記範囲とすれば、繰り返し記録に伴って発生する上部保護層内部の微視的な塑性変形の蓄積を防止し、再生光の散乱によるノイズ上昇を抑制することができる。
光記録媒体においては、さらに反射層を設けることができる。反射層の設けられる位置は、通常再生光の入射方向に依存する。つまり、反射層は、入射側に対して記録層の反対側に設けられる。例えば、基板側から再生光を入射する場合は、反射層は、基板に対して記録層の反対側に設けられるのが通常である。一方、例えば、記録層側から再生光を入射する場合は、反射層は、記録層と基板との間に設けられるのが通常である。
反射層に使用する材料は、反射率の大きい物質が好ましい。反射層に使用する材料は、特に放熱効果も期待できるAu、AgまたはAl等の金属が好ましい。反射層の放熱性は、通常、膜厚と熱伝導率で決まる。熱伝導率はこれら金属ではほぼ体積抵抗率に比例するため、反射層の放熱性能は、面積抵抗率で表すことができる。面積抵抗率は、通常、0.05Ω/□以上、好ましくは、0.1Ω/□以上、一方、通常、0.6Ω/□以下、好ましくは、0.5Ω/□以下とする。
あるいは、Agに、Mg、Ti、Au、Cu、Pd、Pt、Zn、Cr、Si、Ge、希土類元素のいずれか一種の添加元素を含有するAg合金も好ましい。特に、上記添加元素を0.01原子%以上10原子%以下含むAg合金は、反射率、熱伝導率が高く、耐熱性も優れていて好ましい。
尚、上部保護層の膜厚を40nm以上50nm以下とする場合には、反射層を高熱伝導率にするため、上記添加元素を2原子%以下とするのが好ましい。
記録層、保護層及び反射層は、通常スパッタリング法等によって形成される。記録層用ターゲット、保護層用ターゲット、必要な場合には反射層材料用ターゲットを同一真空チャンバー内に設置したインライン装置で膜形成を行うことが各層間の酸化や汚染を防ぐ点で望ましい。また、生産性の面からも優れている。
光記録媒体の最表面側には、空気との直接接触を防いだり、ごみとの接触による傷を防ぐため、紫外線硬化樹脂や熱硬化型樹脂からなる保護コート層を設けることが好ましい。保護コート層は通常1μmから数百μmの厚さである。また、硬度の高い誘電体保護層をさらに設けたり、その上にさらに樹脂層を設けることもできる。
(基本例)
トラックピッチ0.74μmで、厚さ0.6mmのポリカーボネート樹脂基板を射出成形によって形成した。溝幅は約0.31μm、溝深さは約28nmとした。溝形状は、いずれも波長441.6nmのHe−Cdレーザー光を用いたU溝近似の光学回折法で求めた。続いて、ポリカーボネート樹脂基板上に、厚さ70nmの(ZnS)80(SiO2)20保護層、厚さ13nmのGe4In11Sb52Sn22Te11(Ge4In11Sn22(Sb83Te17)63)記録層、厚さ14nmの(ZnS)80(SiO2)20保護層、厚さ2nmのTa界面層、厚さ200nmのAg反射層、厚さ約4μmの紫外線硬化樹脂層をこの順に形成した。Ta界面層は、Ag反射層中へのSの拡散を防ぐための界面層である。各層の成膜は、ポリカーボネート樹脂基板上に、真空を解除することなく、順にスパッタリング法によって積層した。但し、紫外線硬化樹脂層はスピンコート法によって塗布した。その後、未成膜の同様の厚さ0.6mmのポリカーボネート樹脂基板を、接着剤を介して、前述した記録層面が内側になるように貼り合せ、相変化型光記録媒体(以下、単にディスクと記す)を作製した。
次に、初期結晶化を行なった。初期結晶化は、波長810nm、長軸約75μm/短軸約1μmに集光した長楕円形状、パワー1500mW、のレーザー光を用いた。そして、このレーザー光を、長軸が上記案内溝に垂直になるようにして、24m/sで回転させたディスクに照射した。そして、1回転あたり送り量50μmで半径方向にレーザー光を連続的に移動させることにより、初期結晶化をおこなった。
各線速度におけるデータの基準クロック周期は、1倍速におけるデータの基準クロック周期38.2nsecに対して各線速度で反比例させたものとした。
再生は特に断わらない限り1倍速で行った。DDU1000からの出力信号を5〜20kHzにカットオフのある高周波通過フィルタを通した後、タイムインターバルアナライザー(横河電機株式会社製)でジッタを測定した。再生パワーPrは0.6mWとした。
記録パルス分割方法を制御するための論理レベルの生成は、任意信号発生器(AWG710、ソニーテクトロニクス株式会社製)を用いた。この任意信号発生器から、ECLレベルの論理信号をゲート信号として、このゲート信号を上記テスターのレーザードライバーに入力した。
基本例において調製したディスクに、線速度を10倍速としEFM+ランダムデータを10回オーバーライト記録した後、記録データのデータ・ツー・クロック・ジッタ(Data to clock jitter、以下では、基準クロック周期Tで規格化し%値で表したものを単にジッタ、jitter、と称する。)の記録パワーPw依存性を測定した。各マーク長記録用のパルス列の設定を表1に示す。
図1に示した結果から、記録パワーPwが22mW〜23mWで8.5%のジッタ値が得られており、充分に実用化を狙える特性であることが分かる。
基本例において作製したディスクに、線速度を4倍速としEFM+ランダムデータを10回オーバーライト記録した後、記録データのデータ・ツー・クロック・ジッタの記録パワーPw依存性を測定した。各マーク長記録用のパルス列の設定を表2に示す。
そこで最適記録パワー22mWにおける記録信号の各マーク長それぞれについてのマーク長ジッタを測定した。マーク長ジッタの測定結果を表3に示す。
実験例2において、冷却速度は速くなっていると思われるにもかかわらず、5Tと3Tのジッタはあまり改善されない原因は、α1を小さくしたことによりマーク形成部の温度が充分に上がらないためと考えられる。そこで、この仮説を裏付けるため以下の測定を行った。表4に示すパルス列の設定に従い、Pw=22mW、Pe=6mW、Pb=0.5mWで、線速度を4倍速としEFM+ランダムデータを10回オーバーライト記録した部分に、さらに5Tのトーン信号(マーク長、マーク間長ともに5T狙いの信号)を、表4の5Tのパルス列で記録パワーPwを変えて(20〜28mW)1回オーバーライトし、マーク長ジッタを測定した。最後の記録において、オーバーライトする信号をトーン信号とした理由は、記録パワーを変えることによって他の長さのマークが変化する効果を除くためである。マーク長ジッタの測定を3Tについても同様に行った。測定結果を図2に示す。
以上の結果は、5Tと3T以外のマーク長については22mWとし、5Tと3Tについてのみ記録パワーを上げれば、全体のデータ・ツー・クロック・ジッタを改善できるということを強く示唆している。但し、5Tと3Tについては記録パワーを上げることによって変わるマーク長の微調整(αi、βiの微調整)をする必要はあるであろう。
以上、本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。
Claims (5)
- 結晶状態と非晶質状態とで情報の記録を行い、情報の書き換えが可能な相変化型記録層を有する光記録媒体に局所的に記録光を照射し、2種類の記録線速度V min 及び記録線速度V max (但し、V max >V min である)により、マーク長変調された情報を複数の時間的な長さを有する記録マークによって記録する光記録方法であって、
一つの記録マークの時間的な長さをnTとしたとき(Tは、基準クロック周期であり、nは、2以上の自然数である。)、
前記nTの時間的な長さを有する記録マークを記録するための光照射時間を、
前記αiT(1≦i≦m)の時間内に、記録パワーPwi(1≦i≦m)の記録光を照射し、
前記βiT(1≦i≦m)の時間内に、Pb≦0.2×Pwi(1≦i≦m)なるバイアスパワーPbの記録光を照射し、
前記複数の時間的な長さを有する記録マークの中、少なくとも一つの記録マークについて、前記パルス分割数mを2以上とし、
複数のnTの時間的な長さを有する記録マークを同一の前記パルス分割数mで形成する光記録方法において、
前記複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが長い記録マークを形成する際の時間αiT(1≦i≦m)における前記記録パワーPwiの平均値をPwlongとし、
前記複数のnTの時間的な長さを有する記録マークのうち、最もnTが短い記録マークを形成する際の時間αiT(1≦i≦m)における前記記録パワーPwiの平均値をPwshortとしたとき、
前記記録線速度V min において、Pwshort>Pwlongとなるmが存在することを特徴とする光記録方法。 - 前記Pwshort>Pwlongとなるmが、1及び/又は2であることを特徴とする請求項1記載の光記録方法。
- 前記記録線速度Vminと前記記録線速度Vmaxとの関係が、Vmax≧2Vminであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光記録方法。
- 前記複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが長い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個の前記記録パワーPwiをそれぞれPw1とし、
前記複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個の前記記録パワーPwiの少なくとも一部の前記記録パワーPwiをPw0とし、残りの前記記録パワーPwiを前記Pw1としたとき、
前記Pw0と前記Pw1との関係を、Pw0>Pw1とすることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の光記録方法。 - 前記複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個の前記記録パワーPwiの総てをPw0とすることを特徴とする請求項4記載の光記録方法。
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