JP4410081B2 - 光記録方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光記録方法に関し、より詳しくは、書き換え可能な相変化型光記録媒体の光記録方法に関する。
近年、書き換え型光記録媒体(以下、光記録媒体を単に、ディスク又は光ディスクという場合がある。)として、相変化型の書き換え型コンパクトディスク(CD−RW、CD−Rewritable)又は、相変化型の書き換え型DVD(商品名:DVD−RW、DVD+RW、以下、「RW−DVD」という場合がある。)が使用されている。相変化型のCD−RW又はRW−DVDは、記録層における非晶質状態と結晶状態との屈折率差によって生じる反射率差および位相差変化を利用して記録情報信号の検出を行う。通常、相変化型のCD−RW又はRW−DVDは、基板上に下部保護層、相変化型記録層(以下、単に「記録層」という場合がある。)、上部保護層、反射層を設けた構造を有する。そして、これらの層の多重干渉を利用して、反射率差および位相差を制御しCD又はDVDと互換性を持たせることができる。
CD−RW又はRW−DVDにおける記録とは、記録と消去を同時に行うオーバーライト記録をいう。通常、1つの非晶質マークを形成するために、記録レーザーパルスを分割し、マーク長に対応した長さの記録パルス列を照射する(パルス分割方法)。具体的には、様々な長さを有する記録マーク長を形成する際に、記録層に照射するレーザー光を、記録パワーPwの光を照射する記録パルスと再生パワー程度の低いパワー(バイアスパワーPb)の光を照射する冷却パルスとに分割する。そして、記録パワーPwの光(記録パルス)とバイアスパワーPbの光(冷却パルス)とを繰り返し照射することによって、様々な長さを有する非晶質状態の記録マークを形成する。
図3は、一般的な光記録方法におけるパルス分割方法を説明する図である。図3(a)は、形成するnTの記録長の記録マークのタイミングチャートを示す。図3(b)は、nTの記録長の記録マークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを示す。図3(a)に示すnTの記録長の記録マークのタイミングチャート200は、長さnTの記録マークの時間幅に対応している。このタイミングチャート200は、基準クロックに同期して時間T1(nTマークの始点)で立ち上がり、時間nT経過後、また、基準クロックに同期して、時間T2でたち下がる(nTマークの終点)。図3(b)に示すnTの記録長の記録マークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャート201は、nTマーク長を形成するために、複数の記録パルス区間αTと冷却パルス区間βTとに分割した光エネルギーの時間変化を表す波形である。図3(b)に示すように、記録パルス区間αT(i=1〜mの整数)において記録パワーPwは一定であり、冷却パルス区間βT(i=1〜mの整数)においてバイアスパワーPbは一定である。そして、マークの間及びαT(i=1〜m)及びβT(i=1〜m)以外の区間において、消去パワーPeは一定である。
このように、様々な長さを有する記録マーク長を形成する際に、記録層に照射するレーザー光を、記録パワーPwの光を照射する記録パルスと再生パワー程度の低いバイアスパワーPbの光を照射する冷却パルスとに分割する理由の1つは、非晶質形成に必要な冷却速度を確保するためである。このため、パルス列中のパルス間の長さ(冷却パルス)が長くなると冷却速度は速くなる。また、記録マーク間は記録パワーPwより低い消去パワーPeを有するレーザー光を照射し、オーバーライト前に存在した非晶質マークを結晶化させる。
近年、データ転送レートを速くするため、高線速度で記録が可能な媒体の開発が進められている。高線速でのオーバーライト記録では、短時間で非晶質マークを結晶化(消去)する必要があるため、結晶化速度の速い記録材料が記録層に用いられる。一方、結晶化速度が速い記録材料を記録層に用いるために、マーク記録時においても再結晶化が起こりやすくなる。従って、結晶化速度が速い記録材料を用いる場合、マーク記録時に再結晶化を抑制して非晶質マークを形成するために、冷却速度を充分に速める必要がある。そのため、記録パルス間の冷却パルスを長くする必要がある。冷却パルスを充分に長くとるための有効な方法として、例えば、複数のマーク長を同一の分割数のパルス列で記録する方法が挙げられる。具体的には、CDの10倍の線速(12m/s)において、複数のマーク長を同一分割数のパルス列で記録する光記録方法に関する報告がなされている(特許文献1参照)。
特開2001−331936号公報(段落(0178)、段落(0179)参照)
ところで、このような高転送レートが可能な媒体には、同時に、比較的低線速での記録も可能であることが望まれる。これは、例えば、ディスクを一定回転数で回転させると、ディスクの内周部と外周部とでは3倍近い線速度の違いが生じるからである。また、用途によっては、比較的低転送レートで充分である場合も多いからである。
しかしながら、本発明者の検討によれば、高転送レートが可能な相変化型光記録媒体に、比較的低線速度での記録を行うと、良好な記録特性が得られにくい場合があることが明らかとなった。
本発明は、このように、高転送レートが可能な相変化型光記録媒体に低線速度で記録を行う際に浮かび上がった課題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、高転送レートが可能な結晶化速度の速い相変化型光記録媒体に、比較的低線速度で記録を行う場合において、優れた記録特性を示す光記録方法を提供することにある。
かかる課題を解決すべく、本発明においては、記録パルスの分割数を一定にして複数の記録マークをそれぞれ形成する場合に、複数の記録マークの中、最も短い記録マークを記録するための記録パワーを上げる方法を採用している。
即ち、本発明が適用される光記録方法は、結晶状態と非晶質状態とで情報の記録を行い、情報の書き換えが可能な相変化型記録層を有する光記録媒体に局所的に記録光を照射し、2種類の記録線速度V min 及び記録線速度V max (但し、V max >V min である)により、マーク長変調された情報を複数の時間的な長さを有する記録マークによって記録する光記録方法であって、一つの記録マークの時間的な長さをnTとしたとき(Tは、基準クロック周期であり、nは、2以上の自然数である。)、nTの時間的な長さを有する記録マークを記録するための光照射時間を、
Figure 0004410081
(mは、パルス分割数を表し自然数であり、α(1≦i≦m)は、0より大きい実数であり、β(1≦i≦m−1)は、0より大きい実数であり、βは、0以上の実数である。)の順に分割し、αT(1≦i≦m)の時間内に、記録パワーPw(1≦i≦m)の記録光を照射し、βT(1≦i≦m)の時間内に、Pb≦0.2×Pw(1≦i≦m)なるバイアスパワーPbの記録光を照射し、複数の時間的な長さを有する記録マークの中、少なくとも一つの記録マークについて、パルス分割数mを2以上とし、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークを同一のパルス分割数mで形成する光記録方法において、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが長い記録マークを形成する際の時間αT(1≦i≦m)における記録パワーPwの平均値をPwlongとし、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークのうち、最もnTが短い記録マークを形成する際の時間αT(1≦i≦m)における記録パワーPwの平均値をPwshortとしたとき、記録線速度V min において、Pwshort>Pwlongとなるmが存在することを特徴とするものである。
ここで、本発明が適用される光記録方法において、Pwshort>Pwlongとなるmが、1及び/又は2であることが好ましい。また、記録線速度Vminと記録線速度Vmaxとの関係が、Vmax≧2Vminであることが好ましい。
さらに、本発明が適用される光記録方法において、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが長い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個の記録パワーPwをそれぞれPwとし、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個の記録パワーPwの少なくとも一部の記録パワーPwをPwとし、残りの記録パワーPwをPwとしたとき、PwとPwとの関係を、Pw>Pwとすることが好ましい。この場合、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個の記録パワーPwの総てをPwとすることが好ましい。
また、本発明は、光記録媒体に局所的に記録光を照射し、マーク長変調された情報を複数の時間的長さを有する記録マークによって記録するための光記録方法である。本発明が適用される光記録方法は、結晶状態と非晶質状態とで情報の記録を行い、情報の書き換えが可能な相変化型記録層を有する光記録媒体に適用することが好ましい。即ち、記録層の溶融過程及び冷却過程を制御することにより記録層の再結晶化を制御することができ、良好な記録マークが得られるという効果が顕著に発揮されるようになる
本発明によれば、高転送レートが可能な結晶化速度の速い相変化型光記録媒体に、比較的低線速度で記録を行う場合において、優れた記録特性を示す光記録方法が得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態という。)について詳述する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
今、一つの記録マークの時間的な長さをnTとしたとき(Tは基準クロック周期であり、nは2以上の自然数である。)、nTの記録マークを記録するための光照射時間を、
Figure 0004410081
(mは、パルス分割数を表し自然数であり、α(1≦i≦m)は、0より大きい実数であり、β(1≦i≦m−1)は、0より大きい実数であり、βは、0以上の実数である。)の順に分割する。そして、記録パルスαT(1≦i≦m)の時間内において、記録パワーPw(1≦i≦m)の記録光を照射し、冷却パルスβT(1≦i≦m)の時間内において、Pb≦0.2×Pw(1≦i≦m)なるバイアスパワーPb(再生パワー程度の低パワー)の記録光を照射するパルス列を用いる。上述したように、記録パワーPwはiの値によって変化し得る値としている。
尚、nは、符号理論によって有限個の値をとることができる。また、nの値に上限を決める必要はない。但し、nは、通常100以下、実用的には50以下、より実用的には20以下の値をとる。一方、nは2以上の自然数とするが、nの最小値は、通常2又は3とする。
次に、基準クロック周期Tの一例について以下に説明する。
例えば、CDの1倍速(1.2m/s〜1.4m/s)基準速度では、T=231nsecであるが、40倍速では、T=5.8nsec、48倍速では、T=4.7nsecである。また、DVDの1倍速(3.49m/s)基準速度では、T=38.2nsecであるが、10倍速では、T=3.82nsec、12倍速では、T=3.2nsec、16倍速では、T=2.4nsec、である。
相変化記録層を有する光ディスクでは、レーザー光の照射により記録層を融点以上の温度に上げた後、急冷することにより非晶質のマークを形成する場合が多い。この場合、非晶質マーク形成のためには、温度を十分に上昇させることと急冷させることとの両方が必要となる。レーザー光の照射時間αTが長いと温度は上がりやすいが、過度に長いと、レーザー光を照射し始めた部分は冷却速度が遅くなり、非晶質が形成されずに再結晶化してしまう。したがって長いマークを形成するときには、通常、記録パワーのレーザー光の照射区間を、(αT、αT、・・・、αm−1T、αT)と、分割する必要が生じる。昇温させるためには分割数mの下限値は勿論1となる。通常、同一のmで記録する異なったマーク長の種類の数は6種類以下が好ましく、5種類以下がより好ましい。尚、各マーク長の種類すべてに異なった分割数mを用いる場合は本発明の対象外となる。
(高速での記録を行う場合)
次に、パルス分割方法による光記録方法を高速記録に適用する場合について説明する。高データ転送レートが可能な書換型相変化型記録媒体では、結晶化速度の速い記録材料を記録層に用いる必要がある。これは、オーバーライト時にオーバーライト前に存在した非晶質マークを短時間で結晶化する必要があるからである。一方、結晶化速度が速くなるために、非晶質状態の記録マーク記録時において再結晶化が起こりやすくなる。この記録時の再結晶化を抑制して非晶質マークを良好に形成するためには、冷却速度を速める必要がある。このため、パルス列中の冷却パルスの時間幅βTを長くとる必要がある。そして、βTの長さを基準クロック周期より長くとる必要がある場合には、基本的に複数の長さを有するnTマークを、同一の分割数mのパルス列で記録する記録方法を用いる必要が生じる。このような記録方法は、オーバーライト可能な最高線速度における基準クロック周期が10nsより短くなると必須となる場合が多い。
次に、このような複数のnTマークを同一の分割数mのパルス列で記録する光記録方法の場合を説明する。図4は、本実施の形態が適用される長さの異なる複数のnTマークを同一の分割数mのパルス列で記録する光記録方法を説明するための図である。図4(a)は、8Tマークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを示す。図4(b)は、9Tマークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを示す。そして、図4(c)は、10Tマークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを示す。尚、図4では、記録パワーPwはiによらず一定(Pw)としている。
図4(a)〜図4(c)に示すように、長さの異なる複数のnTマーク(8Tマーク〜10Tマーク)を同一の分割数m(図4の場合は、m=3)のパルス列で記録する場合、同一のパルス分割数(m=3)で記録される複数のnTマークの中、短いnTマーク(8Tマーク)形成用のパルス列は、長いnTマーク(9Tマーク又は10Tマーク)形成用のパルス列と比較して、マークの長さが短くなる。このため、短いnTマーク(8Tマーク)形成用のパルス列は、長いnTマーク(9Tマーク又は10Tマーク)形成用のパルス列と比較して、βの平均値を小さくするか又はαの平均値を小さくする必要がある。多くの場合は、αとβの両方の平均値を小さくする必要がある。
しかしながら、短いnTマーク(8Tマーク)においてβを平均的に短くすると、記録マーク形成時の冷却が不十分となる傾向がある。この結果、記録時に再結晶化が起こり記録特性が低下し易くなる傾向にある。そこで、この短いnTマーク(8Tマーク)についてのβは、マークの長さが短くなるからといって単純に短くすることができない。また、βを短くする場合でも、記録時の再結晶化による記録特性の低下が生じない程度の大きさを確保する必要がある。
短いnTマーク(8Tマーク)を形成する際に、βの大きさを確保する必要があるため、記録パルスに用いるαの平均長さは、長いnTマーク(9Tマーク又は10Tマーク)の場合と比較して、より小さくする必要がある。これはマーク長を理想的な長さ付近にするためである。つまり、マーク長は、通常、溶融する部分の長さ(記録パルスの長さ)と溶融後再結晶化する領域の長さで決まる。そして、溶融する部分の長さは、主に記録パワーPwを有する先端記録パルスから後端記録パルスまでの長さ、即ち、パルスの時間的な長さ(αT+βT+…+βm−1T+αT)に相当する空間的長さで主に決まる。即ち、(α+β+…+βm−1+α)の大きさで主に決まる。従って、βを大きくすると、マーク長を合わせるためにαは小さくする必要がある。そして、短いnTマーク(8Tマーク)を形成する際においてマーク長を合わせるためにαを小さくすると、この短マーク(8Tマーク)に関してのみ記録パワーPwが足りなくなる場合が生じる。
従って、本実施の形態が適用される光記録方法においては、この短マーク(8Tマーク)に関してのみ記録パワーPw(図4ではPw)を上げれば優れた記録特性が得られる。但し、上述の通り、溶融する部分の長さは(αT+βT+…+βm−1T+αT)に相当する空間的長さに対応する。このため、この短マーク(8Tマーク)に関してのみ記録パワーPwを上げる方法として、溶融する部分の全体(m個のαTの全体)に照射する記録パワーPwの平均値を上げるようにする。ここで、時間αT(1≦i≦m)におけるPwの平均値は、以下のようにして求めることができる。
即ち、まず、任意のiにおける時間の関数であるPwをαTの時間内で積分する。そして、この積分を、1≦i≦mにおけるm個それぞれのPw及びαTについて行う。このようにして得られたm個の積分値を合計して、これを時間(αT+αT+…+αT)で割った値を求めれば、時間αT(1≦i≦m)における記録パワーPwの平均値を得ることができる。例えば、総てのiにおけるαTにおいて記録パワーPwが一定値をとると仮定した場合、一つの記録マークを形成するために照射される記録パワーの合計値Σ(Pw×αT)は、以下のようになる。
Figure 0004410081
従って、時間αT(1≦i≦m)におけるPwの平均値は、
Figure 0004410081
を計算することにより求めることができる。
そして、長さnTが異なる複数の記録マークを同一のパルス分割数mで形成する場合、この複数の記録マークの中、最も長い記録マークを形成する際の時間αT(1≦i≦m)におけるPwの平均値をPwlongとし、一方、最も短いnTの記録マークを形成する際の時間αT(1≦i≦m)におけるPwの平均値をPwshortとする。そして、Pwshort>Pwlongとなるmが存在するようにする。
(低線速度での記録を行う場合)
次に、パルス分割方法による光記録方法を低速記録に適用する場合について説明する。低線速での記録時は、仮に媒体上での光照射位置(記録パルスの時間的長さαTと、冷却パルスの時間的長さβTとの関係)を高線速記録の場合と同じにとると、時間的なパルスの長さ(αT)やパルス間の長さ(βT)は、高線速記録の場合と比較して、線速度に反比例して長くなる。これは、記録線速度Vとクロック周期Tとの積(V×T)は常に一定であるため、クロック周期Tが記録線速度Vに反比例して長くなるためである。
しかしながら、本発明者の実験によれば、低線速度の記録において、媒体上での光照射位置(記録パルスの時間的長さαTと、冷却パルスの時間的長さβTとの関係)を高線速記録の場合と同じにしたときは、冷却速度が小さくなる傾向があることが判明した。そして、この冷却速度の減少により、非晶質マークがうまく形成できない場合が多いことが判明した。このため、低線速度での記録においては、高線速記録での記録と比較して、冷却パルスをより長くとる(βをより大きくする)必要があることがわかった。即ち、記録パルス間(冷却パルス)に相当する媒体上での空間的(時間的)長さは、低線速記録であるほど長くする必要がある。これは、低線速度での記録では一般的に冷却速度が遅くなる傾向が強いからである。
このとき、高線速度での記録と同様に、記録パルスの時間的長さαT(1≦i≦m)に相当する媒体上での空間的長さは、マーク長を合わせるためより短くする必要がある。こうして記録パルスの時間的な幅αT(1≦i≦m)に相当する空間的長さは、低線速記録ほどより短くなる(低線速ほどα(1≦i≦m)が小さくなる)。そして、総てのマーク長においてα(1≦i≦m)が小さくなると、同一のパルス分割数mで複数のマーク長を記録する場合のα(1≦i≦m)の調整範囲も小さくなる。このため、複数のnTマークを同一分割数mで形成する際に、複数のnTマーク間での調整が難しくなり、短いnTマークにおいて記録パルスの時間的長さαT(1≦i≦m)の長さが不十分となりやすい。従って、高線速記録用媒体に比較的低線速で記録を行う場合に、本実施の形態が適用される光記録方法により得られる効果がより大きくなる。
即ち、異なるnTの時間的な長さを有する複数の記録マークを同一のパルス分割数mで形成する光記録方法において、この複数の記録マークの中、最もnTが長い記録マークを形成する際の時間αT(1≦i≦m)におけるPwの平均値をPwlongとし、一方、最もnTが短い記録マークを形成する際の時間αT(1≦i≦m)におけるPwの平均値をPwshortとする。そして、Pwshort>Pwlongとなるmが存在するようにする。
(高速記録時及び低速記録時の両方に共通する好ましい態様)
(1)本実施の形態が適用される光記録方法を適用する分割数m
このような光記録方法を用いる場合に、総ての分割数mでPwshort>Pwlongとしてもよい。好ましいのは、一部の分割数mで用いることである。具体的には、m=1及び/又はm=2においてPwshort>Pwlongとすることが特に好ましい。この理由は以下の通りである。
m=2又はm=1で記録される複数の記録マーク長の中で最短の記録マークについては、記録マークの長さを調節するためにβTを長い記録マークより短くすることが必要となる。一方、mが3以上の場合は、βT(i≠1)で記録マーク長を調整することが可能となり、自由度が高い。ここで、実験によれば、βT(i≠1)を短くする場合と比較して、βTを短くする場合の方が記録品質の特性低下が顕著となる傾向にある。これは、先頭パルス(αT部のパルス)が照射される部分の冷却速度が主にβTの長さで決まるため、βTを短くすると、記録マークの先端部分を形成するための冷却速度が不足し、相変化記録層の溶融後の再結晶化が記録マークの前端部分(先頭記録パルスが照射される側)で起こりやすくなるからである。そして、その結果、記録マーク先端部分が所望の形とならない(ジッタ特性が低下する)傾向となる。従って、m=2又はm=1のように、分割数が小さく、βTの長さをある程度確保することが必要となる場合は、同一分割数における短い記録マークを形成するための記録パワーが不足する傾向が強くなる。このような場合に本実施の形態が適用される光記録方法を用いる意義が大きい。
(2)記録パワーPw(1≦i≦m)設定方法の好ましい態様
パルス列の発生を制御する電子回路の設計の簡略化を行い、かつレーザー光照射用の光源の寿命を確保するために、Pw(1≦i≦m)を次のように設定することが好ましい。
即ち、同一の分割数mで異なる長さを有する複数の記録マークを形成する際に、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが長い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個のPwをPwと一定値とする。一方、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個のPwの中、少なくとも一部のPwをPwとし、残りのPwをPwとする。そして、Pw>Pwとする。Pwの値を頻繁に変化させることは、パルス発生の制御回路の設計を複雑にするだけでなく、レーザー光の光源の寿命を短くする可能性があるため、上記のような設定とすることが好ましい。
ここで、最も短い記録マークを形成する際に、記録パワーをPwとする好ましいi(1≦i≦m)、換言すれば記録パワーをPwとする好ましいαTは、1≦i≦mのαTの中、αTが最小となる記録パルスである。αTが最小となる記録パルスにおいては、記録層の溶融が不十分となりやすいため、記録パワーをPwと大きくすればよい。さらに、αTが最小となる記録パルスにおいて記録パワーを上げることは、冷却速度が速くなるという効果もある。なぜなら、αTが短いことは、温度上昇中の周りへの熱拡散の時間が短くなることを意味しており、最高温度に達したときの熱分布が空間的に急峻となるためである。また、記録パワーを上げることにより、αTがより長いパルスと同程度まで温度を上昇させることができるのである。
尚、最後の冷却パルスの時間的長さであるβTの長さを変えるとマーク後端部の再結晶化領域の大きさが変わりマーク長の調整に有効ではあるが、再生波形が歪む傾向にあるようである。
パルス分割数mがm=1及び/又は2において本実施の形態が適用される光記録方法を適用する場合には、αTにおける記録パワーをPwとすれば良好な記録品質を有する記録マークを形成することができる。
さらに好ましいのは、本実施の形態が適用される光記録方法において、同一の分割数mで、異なる長さを有する複数のnTの記録マークを形成する際に、これらの複数の記録マークの中、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個のPwの総てをPwとすることである。このような設定とすることにより、パルス発生の制御回路をさらに簡略化することができるようになる。
(3)PwshortとPwlongとの関係
本実施の形態が適用される光記録方法において、各マーク長における記録パワーの平均値は、少なくとも2種類以上の値をとり、用いる記録パワーの中、大きいのものがPwshortである。Pwshortは、Pwlongより大きければ効果があるが、Pwlongの1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.15倍以上が特に好ましい。一方、記録パワーが大きすぎるとレーザー寿命が短くなるため、Pwshortは、Pwlongの2倍以下が好ましく、1.6倍以下がより好ましく、1.4倍以下が特に好ましい。
また、本実施の形態が適用される光記録方法において、異なる長さを有する複数のnTの記録マークの中、最もnTが長い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個のPwをそれぞれPwとし、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個のPwの少なくとも一部のPwをPwとし、残りのPwをPwとしたときの、PwとPwとの関係も上記と同様にすればよい。即ち、Pwは、Pwより大きければ効果があるが、Pwの1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.15倍以上が特に好ましい。一方、記録パワーが大きすぎるとレーザー寿命が短くなるため、Pwは、Pwの2倍以下が好ましく、1.6倍以下がより好ましく、1.4倍以下が特に好ましい。また、本実施の形態が適用される光記録方法において、異なる長さを有する複数のnTの記録マークの中、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個のPwの総てをPwとする場合のPwとPwとの関係も上記と同様にすればよい。
(本実施の形態が適用される光記録方法の特に好ましい態様)
本発明者は、高データ転送レートが可能な相変化型記録媒体に比較的低線速度での記録を行う等の場合に、高速記録用に合わせ込んだ記録方法をそのまま用いると良好な記録特性が得られにくい場合があることを見出した。その原因を検討した結果、高速記録時の最適記録パワーでの記録で低速記録を行うと、特定のマーク長(特に、nが小さい値である短いマーク)の特性のみが悪化することがわかった。これら特定のマーク長(特に、nが小さい値である短いマーク)の特性を改善するには、適当な記録パルス波形を選んだ上で、この特定のマーク長を記録するための記録パルスの記録パワーを上げれば良いことを見出した。
即ち、高データ転送レートが可能な相変化型記録媒体に、Vmax>Vminとなる2種類の記録線速度Vmin及びVmaxで記録を行う場合に、記録線速度がVminにおいて、Pwshort>Pwlongとなるmを存在させるようにする。これにより、本実施の形態が適用される光記録方法により得られる効果がより顕著に発揮される。
記録パルスの発生を制御する電子回路の設計を簡略化し、ひいてはレーザー光の光源の寿命を延ばすために、高データ転送レートが可能な相変化型記録媒体においては、先ず、高速記録(記録線速度Vmax)において良好な記録品質を得られるように光記録方法を合わせ込むのが通常である。ところが、高速記録において合わせ込んだ光記録方法を低線速度に適用すると、前述した「低線速度での記録」において説明したように、冷却パルスを長くとる(βを大きくする)必要があるために、記録パルスが短くなる(αが短くなる)傾向にある。従って、低線速度での記録において、複数の長さを有する記録マークを同一のパルス分割数mで形成する際に、αをより短くしなければならない。そしてこのために、良好な記録品質を有する記録マークを得るための平均記録パワーPwshortが不十分となりやすい。このため、低線速記録時においてPwshortをPwlongよりも大きくする意義が大きくなる。
尚、上記の例においては、高速記録(記録線速度Vmax)においては、同一分割数mで形成する総ての長さの記録マークでPwを一定値とすれば、記録パルスの発生を制御する電子回路の設計をより簡略化できる利点がある。
また、VminとVmaxとの関係については、VminとVmaxとの差が大きくなればなるほど、Vminにおいて上記αをより短くしなければならない現象が顕著に発生する。従って、VminとVmaxとの差が大きくなるようなVminにおいて、本実施の形態が適用される光記録方法を適用する意義が大きくなる。具体的には、VminとVmaxとの関係を、Vmax≧2Vminとすることにより、本実施の形態が適用される光記録方法により得られる効果がより顕著に発揮される。
尚、上記の通り、VminとVmaxとの差は、大きくなればなるほど好ましい。従って、Vmaxの上限は特に規定する必要はない。但し、現実的には、Vmaxの上限は、Vminの1000倍又は100倍程度となる。
(本実施の形態が適用される光記録方法の一般的事項)
(1)α、βの値
α、βの値は、iの値、マーク長、記録線速度等によって変化する値である。本発明では、複数のマーク長を同一の分割数のパルス列で記録する光記録方法を想定しているため、1≦i≦m−1なる(α+β)Tの平均的な周期は、クロック周期Tより大きくなる。但し、大きすぎると1つのマークを形成するためのパルス列による非晶質部が光学的に分離されてしまう。従って、1≦i≦m−1での(α+β)の平均値は、通常1以上とするが、1.25以上が好ましく、2以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。一方、1≦i≦m−1での(α+β)の平均値は、通常6以下とするが、5以下が好ましく、4.5以下がさらに好ましい。
また、書き換え可能な相変化型記録層を有する記録媒体のオーバーライト可能な最高線速度においては、αの平均値(1≦i≦m)は、0より大きい実数とするが、0.8以上が好ましく、1以上がより好ましく、1.2以上がさらに好ましい。一方、αの平均値(1≦i≦m)は、通常5以下とするが、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。オーバーライト可能な最高線速度に対して記録線速度を小さくする場合はαは小さくする。このとき、αの好ましい範囲は、オーバーライト可能な最高線速度記録におけるαの好ましい範囲を線速度に比例して小さくした値となる。
β(1≦i≦m−1)は0より大きい実数とする。一方、β(1≦i≦m−1)の上限は、上記(α+β)の値とαの値との関係から必然的に決まる。β(1≦i≦m−1)は、通常5以下とするが、好ましくは4以下、より好ましくは3.5以下とする。
βは、大きすぎるとオーバーライト前に存在した非晶質マークの結晶化が不充分となり、小さすぎると記録層の溶融後の再結晶化が激しくなり記録特性が低下する。書換型相変化型記録媒体のオーバーライト可能な最高線速度におけるβの平均値は、0以上の実数とするが、0.2以上が好ましく、0.5以上がさらに好ましい。一方、βの平均値は、通常3以下とするが、2以下が好ましく、1.5以下がさらに好ましい。オーバーライト可能な最高線速度に対して記録線速度が小さくなる場合はβは大きくする。このとき、βの好ましい範囲は、オーバーライト可能な最高線速度記録におけるβの好ましい範囲を線速度に反比例して大きくした値となる。
(2)バイアスパワーPb、消去パワーPe、記録パワーPw
バイアスパワーPbは小さい方が冷却速度を上げる点で好ましい。従って、フォーカスやトラッキングサーボに支障が無い限りできるだけ0に近づけた方が好ましい。1≦i≦mにおいて、Pb/Pw≦0.2とするが、Pb/Pw≦0.1が好ましい。通常Pbは再生パワーと同程度の値とする。
本実施の形態が適用される光記録方法においては、αT及びβT以外の区間での記録光強度については、特に、定めていない。例えば、書換型相変化型光記録媒体では、消去パワーPeを照射する。結晶状態を未記録・消去状態とし、非晶質状態を記録マークとするオーバーライト可能な相変化媒体では、消去パワーPeは、記録層を結晶化温度以上、概ね融点以下の温度に昇温せしめる温度である。その場合、1≦i≦mにおけるPe/Pwは、通常0.1以上とするのが好ましい。一方、Pe/Pwは、通常0.6以下、好ましくは0.4以下とするのが好ましい。上記範囲の中、Pe/Pwは、特に、0.2以上0.4以下の範囲の値がより好ましい。この比が上記範囲より小さいと、消去パワーが低すぎて、非晶質マークの消え残りが生じる場合がある。一方、この比が上記範囲より大きいと、Peの照射部が溶融した後に非晶質化してしまう場合がある。
尚、記録パワーPw(1≦i≦m)、Pe及びPbの値は、必ずしも直流的に一定である必要はない。例えば、クロック周期Tの1/10程度以下の周期で高周波重畳を加えてレーザーの動作を安定させることができる。この場合のPw(1≦i≦m)、Pe及びPbはそれらの平均値となる。
記録パワーPwは、通常、4mW以上、60mW以下とする。例えば、波長400nm程度のレーザーでは、Pwは、4mW〜15mW程度とするのが一般的である。例えば、波長650nm程度のレーザーでは、Pwは、10mW〜50mW程度とするのが一般的である。また、例えば、波長780nm程度のレーザーでは、Pwは、10mW〜60mW程度とするのが一般的である。無論、記録パワーは記録条件やディスク構成やレーザーの性能により変化し得る値である。
バイアスパワーPbの値及び消去パワーPeの値の上下限値は、記録パワーPwの値を基に必然的に決まる。
(光記録装置)
本実施の形態が適用される光記録方法を実施するための光記録装置について以下に説明する。
本実施の形態が適用される光記録方法においては、図4(a)〜図4(c)に示すようなタイミングチャートで、記録パルスαT、冷却パルスβTを順番に発生させる。そして、同一分割数mで複数の長さ(nT)を有する記録マークを形成する場合に、上記複数の長さ(nT)を有する記録マークのうち、最もnTが長い記録マークを形成する際の記録パワーPwの平均値Pwlongとし、最も短いマークを形成する際の記録パワーPwの平均値Pwshortとする。そして、Pwshort>Pwlongとなるようなmを存在させる。
ここで、図4(a)〜図4(c)に示すような、実際の分割記録パルス光をレーザーダイオードから出力させる場合、通常、次のような操作を行なう。すなわち、図4(a)〜図4(c)に示すようなタイミングチャートでゲート信号を発生する論理レベルの集積回路出力を、レーザードライバー回路に入力する。そして、レーザードライバー回路においてレーザー駆動のための大電流を制御し、レーザーダイオードからの光出力を制御して、記録パワーPw、バイアスパワーPb、消去パワーPeを発生させる。このようにして、図4(a)〜図4(c)に示すような分割記録パルス光の制御が達成される。
図5は、本実施の形態が適用される光記録方法を実施するための光記録装置の一例を示す図である。図5には、コンピュータ用のデータを記録するための光ディスク記録・再生装置としての光記録装置2000が示されている。
図5に示された光記録装置2000の構成について説明する。I/F2001は、ホストコンピュータ(図示せず)とのデータの受け渡しをするためのインターフェース回路である。変調回路2002は、記録するデータを符号変調するための回路である。分割記録パルス生成制御回路2003は、変調回路2002により変調された信号に基づき、分割記録用のパルス列を生成するための回路である。LDドライバ2004は、分割記録パルス生成制御回路2003から出力される論理レベルの制御信号に基づき、レーザー光の出力を制御するためのドライバである。LD2005は、光記録装置2000の光源となる半導体レーザー(LD)である。ビームスプリッタ2006は、LD2005からのレーザー光を記録媒体である光ディスク2007上に出射光として出力させ、また光ディスク2007からの反射光を分離するための光学素子である。対物レンズ2009は、レーザー光を光ディスク2007上に集束させるための光学素子である。PD2008は、ビームスプリッタ2006により導かれた光ディスク2007からの反射光を受光して電気信号に変換するためのフォトディテクタである。再生回路2010は、PD2008から出力された電気信号から光ディスク2007上に記録された信号を検出し、この信号のための基準クロック(周期T)を生成するための回路である。復調回路2011は、再生回路2010より再生され、光ディスク2007上に記録されたデータを復調するための回路である。制御マイコン2012は、光記録装置2000全体を制御するためのコンピューターである。スピンドルモーター2013は、光ディスク2007を回転させるための駆動装置である。
次に、光記録装置2000の作用について説明する。
光ディスク2007上に記録される記録データは、変調回路2002より符号変調されたパラレルデータを、さらにシリアルなNRZI(Non Return to Zero Inverted)信号に変換するマーク変調記録方式が採用されている。その際の動作クロックは、再生回路2010から出力される基準クロックである。再生回路2010においては、通常、光ディスク2007上にあらかじめ形成された案内溝の溝蛇行(wobble)信号を検出して、基準クロックを抽出する。このため、記録線速度に応じた基準クロックが得られる。
分割記録パルス生成制御回路2003では、nTマーク長を形成するための分割記録パルスを分割生成する。この分割記録パルスをLDドライバ2004に入力し、LDドライバ2004においてレーザー駆動のための大電流を制御する。そして、LD2005からの光出力を制御して、記録パワーPwとバイアスパワーPbとの消去パワーPeを発生させる。このようにして、図4(a)〜図4(c)に示したように、分割記録パルス光の制御が達成される。
次に、上述した光記録装置2000を用いることにより、本実施の形態が適用される光記録方法の具体的な実施方法について説明する。
本実施の形態において、光記録装置2000では、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークを、同一のパルス分割数mで形成するように構成する。そして、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが長い記録マークを形成する際の時間αT(1≦i≦m)における記録パワーPwの平均値をPwlongとし、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークのうち、最もnTが短い記録マークを形成する際の時間αT(1≦i≦m)における記録パワーPwの平均値をPwshortとしたとき、Pwshort>Pwlongとなるmが存在するように構成すればよい。
このような構成は、例えば、制御マイコン2012から、分割数m、マーク長nT、Pwshort、及びPwlong等の情報を選択信号2020として、分割記録パルス生成制御回路2003に入力することによって実現できる(図5参照)。また、用いる光ディスク2007にとって好ましいm、n、Pwshort、及びPwlongの情報を光ディスク2007にプレピット列等で記録しておいてもよい。そして、この情報を光ディスク2007に記録するのに先立って読み出す。その後、この読み出した情報を用いて、光ディスク2007に所望の記録を行うようにしてもよい。
また、本実施の形態において、光記録装置2000は、前述したPwshort>Pwlongとなるmが、1及び/又は2となるように構成される事がより好ましい。
このような構成は、例えば、制御マイコン2012から、分割数m、Pwshort、及びPwlongの関係に関する情報を選択信号2020として、分割記録パルス生成制御回路2003に入力することによって実現できる(図5参照)。また、用いる光ディスク2007にとって好ましいm、Pwshort、及びPwlongの情報を光ディスク2007にプレピット列等で記録しておいてもよい。そして、この情報を光ディスク2007に記録するのに先立って読み出す。その後、この読み出した情報を用いて、光ディスク2007に所望の記録を行うようにしてもよい。
また、本実施の形態において、光記録装置2000は、2種類の記録線速度Vmin及び記録線速度Vmax(但し、Vmax>Vminである)を用いるように構成することが好ましい。ここで、記録線速度Vminにおいて、Pwshort>Pwlongとなるmが存在するように構成される事が好ましい。
さらに、本実施の形態において、光記録装置2000は、記録線速度Vminと記録線速度Vmaxとの関係が、Vmax≧2Vminであるように構成されることがより好ましい。
このような構成は、例えば、制御マイコン2012に、Vmin及びVmaxのデータを設定しておくことによって実現できる(図5参照)。また、用いる光ディスク2007にとって好ましいVmin、Vmaxの情報を光ディスク2007にプレピット列等で記録しておいてもよい。そして、この情報を光ディスク2007に記録するのに先立って読み出す。その後、この読み出した情報を用いて、光ディスク2007に所望の記録を行うようにしてもよい。
また、本実施の形態において、光記録装置2000は、同一の分割数mで形成する複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが長い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個の記録パワーPwをそれぞれPwとなるように構成させることが好ましい。さらに、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個の記録パワーPwの少なくとも一部をPwとし、残りをPwと構成することが好ましい。そして、PwとPwとの関係を、Pw>Pwとなるように構成されることが好ましい。
さらに、本実施の形態において、光記録装置2000は、複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個の記録パワーPwの総てをPwとなるように構成することがより好ましい。
このような構成は、例えば、制御マイコン2012に、1≦i≦mにおけるPw及びPwのデータを設定しておくことによって実現できる(図5参照)。また、用いる光ディスク2007にとって好ましいPw、Pwの情報を光ディスク2007にプレピット列等で記録しておいてもよい。そして、この情報を光ディスク2007に記録するのに先立って読み出す。その後、この読み出した情報を用いて、光ディスク2007に所望の記録を行うようにしてもよい。
(光記録媒体)
本実施の形態が適用される光記録方法は、結晶状態と非晶質状態とで情報の記録を行い、情報の書き換えが可能な相変化型記録層を有する光記録媒体に適用されることが好ましい。
相変化型記録層を有する光記録媒体の具体例としては、基板上に、下部保護層、記録層、上部保護層、反射層、及び保護コート層をこの順に有する層構成を有する光記録媒体を挙げることができる。この光記録媒体は、基板を通してレーザー光を照射することにより信号の記録再生を行う光記録媒体(基板面入射型の光記録媒体)である。また、相変化型記録層を有する光記録媒体の他の具体例としては、基板上に、反射層、下部保護層、記録層、上部保護層、及び保護コート層をこの順に有する層構成を有する光記録媒体を挙げることができる。この光記録媒体は、上部保護層を通じてレーザー光を照射することにより信号の記録再生を行う光記録媒体(膜面入射型の光記録媒体)である。膜面入射型の光記録媒体では、基板を通さずに第二保護層側からレーザー光を照射することにより信号の記録再生を行う。このため、記録層と光ヘッドの距離を数百ミクロン以下に接近させることが可能となり、開口数が0.7以上の対物レンズを使用することで媒体の記録密度を向上させることが出来る。
尚、上記基板面入射型の光記録媒体及び膜面入射型の光記録媒体それぞれの層構成は例示である。例えば、基板面入射型の光記録媒体及び膜面入射型の光記録媒体のいずれにおいても、保護層と反射層との間に界面層を設けることができる。また、例えば、膜面入射型の光記録媒体において、基板と反射層との間に下地層を設けてもよい。
本実施の形態において好ましいのは、高データ転送レートが可能な書き換え型相変化型の光記録媒体である。このような光記録媒体は、通常、結晶化速度の速い記録材料を記録層に用いることによって実現できる。
以下、記録層、基板、保護層、反射層、保護コート層を例にとって、これらの各層について説明する。
(1)記録層
記録層の材料としては、例えば、GeSbTe、InSbTe、AgSbTe、及びAgInSbTeといった系列の化合物のように、繰り返し記録が可能な材料が選ばれる。これらの中で、SbTeとGeTeの疑似2元合金を主成分とする組成、より具体的には、{(SbTe1−α(GeTe)α1−βSbβ組成(但し、0.2≦α≦0.9、0≦β≦0.1)が選ばれることが多い。あるいは、Sbを50原子%以上含むSbを主成分とする組成が選ばれることが多い。
本実施の形態において使用する光記録媒体は、結晶化速度を高めるために、記録層にSbを主成分とする組成を用いることが特に好ましい。尚、本実施の形態において、「Sbを主成分とする」とは、記録層全体のうち、Sbの含有量が50原子%以上であることを意味する。Sbを主成分とする理由は、Sbの非晶質は、非常に高速で結晶化できるため、非晶質マークを短時間で結晶化することが可能となる。このため、非晶質状態の記録マークの消去が容易となる。しかし、一方で、Sb単独で用いるよりも、非晶質形成を促進させ、かつ非晶質状態の経時安定性を高めるための添加元素をSbと共に併用することが好ましい。記録層の非晶質形成を促進させ、かつ非晶質状態の経時安定性を高めるためには、上記添加元素の含有量を、通常1原子%以上、好ましくは5原子%以上、より好ましくは10原子%以上とし、一方、通常50原子%以下とする。
非晶質形成を促進させ、かつ非晶質状態の経時安定性を高める上記添加元素は、結晶化温度を高める効果もある。このような添加元素としては、Ge、Te、In、Ga、Sn、Pb、Si、Ag、Cu、Au、希土類元素、Ta、Nb、V、Hf、Zr、W、Mo、Cu、Cr、Co、N、O、及びSe等を用いることができる。これら添加元素のうち、非晶質形成の促進、非晶質状態の経時安定性の向上、及び結晶化温度を高める観点から、好ましいのはGe、Te、In、Ga、及びSnからなる群から選ばれる少なくとも1つとすることである。特に好ましいのは、Ge及び/又はTeを少なくとも用いるか、In、Ga、及びSnの少なくとも1つを用いることである。
上述の通り、本実施の形態において使用する光記録媒体においては、記録層の材料として、SbとGe及び/又はTeとを併用することが特に好ましい。Ge又はTeそれぞれの含有量は、1原子%以上30原子%以下とすることが好ましい。つまり、Ge及びTeは、それぞれ単独で1原子%以上30原子%以下ずつ含有されていることが好ましい。但し、記録層の主成分をSbとした場合にSbの含有量は50原子%以上となる。このため、Sbと共にGe及びTeを記録層に含有させる場合、Ge及びTeの合計量は50原子%よりは少なくなる。
記録層中におけるGe又はTeのそれぞれの含有量は、より好ましくは3原子%以上とする。この範囲とすれば、非晶質マークを安定化する効果が十分に発揮されるようになる。一方、記録層中におけるGe又はTeのそれぞれの含有量は、より好ましくは20原子%以下、さらに好ましくは15原子%以下とする。この範囲とすれば、非晶質が安定になりすぎて逆に結晶化が遅くなるという傾向を良好に抑制することができるようになる。さらに、結晶粒界での光散乱によるノイズを抑制することができるようになる。
上記Sbを主成分とする組成は、記録層中に含有されるTeの量によって、2種類に分類することができる。一つは、Teを10原子%以上含有する組成である。もう一つはTeを10原子%未満含有する組成(Teを含有しない場合を含む)である。
Sbを主成分とする一つの組成は、Teを概ね10原子%以上含みつつ、Sb70Te30共晶組成よりも過剰のSbを含有する合金を主成分とする組成である。この記録層材料を、以下において、SbTe共晶系と呼ぶ。ここで、Sb/Teは3以上とすることが好ましく、4以上とすることがより好ましい。
上記Sbを主成分とするもう一つの組成としては、以下のものを挙げることができる。即ち、記録層の組成を、Sbを主成分としつつ、Teを10原子%未満とし、さらにGeを必須成分として含有するものが挙げられる。上記記録層の組成の具体例としては、Sb90Ge10近傍組成の共晶合金を主成分とし、Teを10原子%未満含有する合金(本明細書においては、この合金をSbGe共晶系と呼ぶ。)を好ましく挙げることができる。
Te添加量が10原子%未満の組成は、SbTe共晶系ではなく、SbGe共晶系としての性質を有するようになる。このSbGe共晶系の合金は、Ge含有量が10原子%程度と高くても、初期結晶化後の多結晶状態の結晶粒径は比較的微細なために結晶状態が単一相となりやすく、ノイズが低い。SbGe共晶系の合金においては、Teは、付加的に添加されるにすぎず必須元素とはならない。
SbGe共晶系合金では、Sb/Ge比を相対的に高くすることで、結晶化速度を速めることができ、再結晶化による非晶質マークの消去が良好にできる。
記録層にSbを主成分とする組成を用い、結晶状態を未記録・消去状態とし、非晶質マークを形成して記録を行う場合、冷却効率を良くすることが非常に重要となる。これは以下の理由による。
即ち、上記SbTe共晶系又はSbGe共晶系等のSbを主成分とする記録層は、高速記録に対応するために、Sb70Te30共晶点あるいはSb90Ge10共晶点近傍よりもさらにSbを過剰に添加し、結晶核生成速度ではなく結晶成長速度を高めることにより結晶化速度を高めている。このため、これら記録層においては、記録層の冷却速度を速くして、再結晶化による非晶質マークの変化(非晶質マークが所望のサイズよりも小さくなること)を抑制することが好ましい。従って、記録層を溶融した後に非晶質マークを確実に形成するために記録層を急冷することが重要となる。換言すれば、記録層の冷却効率を良くすることが非常に重要となるのである。そのため、上記記録層組成においては、反射層に放熱性の高いAg又はAg合金を用いることが特に好ましい。そして、このような記録時の冷却効率を上げる必要がある記録層を有する光記録媒体に対して、本実施の形態の光記録方法を用いる意義が大きい。
本実施の形態で使用する光記録媒体では、上記SbTe共晶系等のSbを主成分とする組成を用いる記録層において、さらに、In、Ge、及びSnの少なくとも1つを含有し、記録層中におけるIn、Ge、及びSnのそれぞれの含有量が1原子%以上30原子%以下であることが特に好ましい。
以下、Sbを主成分とする組成の具体例についてさらに説明する。
Sbを主成分とする組成としては、先ず、(SbTe1−x1−y(但し、0.6≦x≦0.9、0≦y≦0.45、Mは、Ge、Ag、In、Ga、Zn、Sn、Si、Cu、Au、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、S、Se、V、Nb、及びTaより選ばれる少なくとも1種)合金を主成分とするSbTe共晶系の組成を好ましく挙げることができる。尚、上記組成式は、原子数比で組成を表している。従って、例えばx=0.6は、60原子%を意味する。
上記(SbTe1−x1−y組成においては、Mとしては、Ge、Ga、Ag、Sn、又はInを単独又は併用して用いることが、オーバーライト特性等の記録特性の観点から特に好ましい。
上記(SbTe1−x1−y組成においては、xは、通常0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.75以上であり、一方、通常0.9以下とする。また、yは、通常0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、一方、通常0.45以下、好ましくは0.4以下である。x、yを上記範囲とすれば、高速記録に対応可能な記録層を得ることができるようになる。
上記(SbTe1−x1−y組成においてMとしてGeを用いる組成について更に説明する。この組成としては、Sb70Te30共晶点組成を基本として大幅に過剰のSbを含むSb70Te30合金を母体とし、さらにGeを含む、Ge(SbTe1−x1−y(但し、0.01≦y≦0.06、0.82≦x≦0.9)で表される組成を用いることが好ましい。Ge量は、Ge(SbTe1−x1−yにおけるyの値として0.01以上、特に、0.02以上であることが好ましい。一方、このようにSb含有量が多いSbTe共晶組成では、Ge量が多すぎると、GeTeやGeSbTe系の金属間化合物が析出するとともに、SbGe合金も析出しうるために、記録層中に光学定数の異なる結晶粒が混在すると推定される。そして、この結晶粒の混在により、記録層のノイズが上昇しジッタが増加することがある。また、Geをあまりに多く添加しても非晶質マークの経時安定性の効果が飽和する。このため、通常Ge量は、Ge(SbTe1−x1−yにおけるyの値として、0.06以下、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.04以下である。
上記GeSbTe共晶系の組成においては、さらにIn、Ga、Snを含有させることが特に好ましい。即ち、M1Ge(SbTe1−x1−y−z(0.01≦z≦0.4、0.01≦y≦0.06、0.82≦x≦0.9であり、M1は、In、Ga及びSnからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を表す。)で表される組成を用いることが特に好ましい。上記M1=In、Ga及びSnで示される一群の元素のうち少なくとも1種を添加することによりさらに特性が改善される。In、Ga、Snの元素は、結晶状態と非晶質状態の光学的コントラストを大きくでき、ジッタを低減する効果もある。M1の含有量を示すzは、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、一方、通常0.4以下、好ましくは0.35以下とする。この範囲とすれば、上記特性改善の効果が良好に発揮されるようになる。
上記GeSbTe共晶系の組成においてIn、Ga、Sn以外に含みうる元素としては、窒素、酸素及び硫黄を挙げることができる。これら元素は、繰返しオーバーライトにおける偏析の防止や光学特性の微調整ができるという効果がある。窒素、酸素及び硫黄の含有量は、Sb、Te及びGeの合計量に対して5原子%以下であることがより好ましい。
また、Cu、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Coを上記GeSbTe共晶系の組成に含有させることもできる。これら元素は、ごく微量の添加により、結晶成長速度を低下させることなく、結晶化温度を上昇させ、さらなる経時安定性の改善に効果がある。但し、これら元素の量が多すぎると特定の物質の経時的偏析や繰返しオーバーライトによる偏析が起こりやすくなるため、添加量は5原子%以下、特に3原子%以下とするのが好ましい。偏析が生じると、記録層が初期に有する非晶質の安定性や再結晶化速度等が変化して、オーバーライト特性が悪化することがある。
記録層の膜厚は、十分な光学的コントラストを得、また結晶化速度を速くし短時間での記録消去を達成するためには5nm以上あるのが好ましい。また反射率を十分に高くするために、より好ましくは10nm以上とする。
一方、クラックを生じにくく、かつ十分な光学的コントラストを得るためには、記録層膜厚は100nm以下とするのが好ましいが、より好ましくは50nm以下とする。これは、熱容量を小さくし記録感度を上げるためである。また、上記範囲とすれば相変化に伴う体積変化を小さくできる。このため、上下の保護層に対するオーバーライトによる記録層の繰り返しの体積変化の影響を小さくすることもできる。ひいては、不可逆な微視的変形の蓄積が抑えられノイズが低減され、繰り返しオーバーライト耐久性が向上する。
書き換え可能型DVDのような高密度記録用媒体では、ノイズに対する要求が一層厳しいため、より好ましくは記録層膜厚を30nm以下とする。
上記記録層は、通常、所定の合金ターゲットを不活性ガス、特にArガス中でDCまたはRFスパッタリングにより得ることができる。
また、記録層の密度は、バルク密度の通常80%以上、好ましくは90%以上とする。ここでいうバルク密度ρとは、通常下記(1)式による近似値を用いるが、記録層を構成する合金組成の塊を作成して実測することもできる。
Figure 0004410081
(ここで、mは各元素iのモル濃度であり、mρは元素iの原子量である。)
スパッタ成膜法においては、成膜時のスパッタガス(通常、Ar等の希ガス。以下、Arの場合を例に説明する。)の圧力を低くしたり、ターゲット正面に近接して基板を配置する等して、記録層に照射される高エネルギーAr量を多くすることによって、記録層の密度を上げることができる。高エネルギーArは、通常スパッタのためにターゲットに照射されるArイオンが一部跳ね返されて基板側に到達するものか、プラズマ中のArイオンが基板全面のシース電圧で加速されて基板に達するものかのいずれかである。
このような高エネルギーの希ガスの照射効果をAtomic peening効果という。一般的に使用されるArガスでのスパッタでは、Atomic peening効果によりArがスパッタ膜に混入される。膜中のAr量により、Atomic peening効果を見積もることができる。即ち、Ar量が少なければ、高エネルギーAr照射効果が少ないことを意味し、密度の疎な膜が形成されやすい。
一方、Ar量が多ければ、高エネルギーArの照射が激しくなり、膜の密度は高くなる。しかしながら、膜中に取り込まれたArが繰り返しオーバーライト時にvoidとなって析出し、繰り返しの耐久性が劣化しやすくなる。従って、適度な圧力、通常は、10−2Pa〜10−1Paのオーダーの範囲で放電を行う。
(2)基板
基板には、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン等の樹脂、あるいはガラスを用いることができる。なかでもポリカーボネート樹脂が最も好ましい。ポリカーボネート樹脂は、CD−ROM等において最も広く用いられている実績もあり、かつ安価でもあるからである。基板の厚さは、通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上であり、一方、通常20mm以下、好ましくは15mm以下である。一般的には、基板の厚さは、0.6mm〜1.2mm程度とされる。基板面入射型の光記録媒体においては、基板はレーザー光を透過する必要があるため、レーザー光に対して透明である必要がある。一方、膜面入射型の光記録媒体においては、基板は必ずしも透明である必要はない。
(3)保護層
記録層の相変化に伴う記録層の蒸発・変形を防止し、記録層の相変化に伴う熱拡散を制御するために、保護層が用いられる。保護層は、通常記録層の上下一方または上下両方に形成される。好ましくは、記録層の上下両方に保護層が形成される。保護層の材料は、屈折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、Li等のフッ化物等の誘電体を用いることができる。
この場合、これらの酸化物、硫化物、窒化物、炭化物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はない。すなわち、上記酸化物等は、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合して用いることも有効である。繰り返し記録特性を考慮すると誘電体の混合物が好ましい。より具体的には、ZnSや希土類硫化物等のカルコゲン化合物と、酸化物、窒化物、炭化物、フッ化物等の耐熱化合物と、の混合物が挙げられる。例えば、ZnSを主成分とする耐熱化合物の混合物や、希土類の硫酸化物、特に、YSを主成分とする耐熱化合物の混合物は好ましい保護層組成の一例である。
保護層の材料としては、通常、誘電体材料を挙げることができる。誘電体材料としては、例えば、Sc、Y、Ce、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Cr、In、Si、Ge、Sn、Sb、及びTe等の元素の酸化物;Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sb、及びPb等の元素の窒化物;Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、B、Al、Ga、In及びSi等の元素の炭化物等が挙げられる。また、上記材料の混合物を用いることもできる。また、誘電体材料としては、Zn、Y、Cd、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb及びBi等の元素の硫化物、セレン化物もしくはテルル化物;Mg、Ca等の元素のフッ化物等を挙げることができる。また上記材料の混合物を挙げることができる。
さらに誘電体材料の具体例としては、ZnS−SiO、SiN、SiO、TiO、CrN、TaS、YS等を挙げることができる。これら材料の中でも、ZnS−SiOは、成膜速度の速さ、膜応力の小ささ、温度変化による体積変化率の小ささ、及び優れた耐候性から広く利用される。ZnS−SiOを用いる場合、ZnSとSiOとの組成比ZnS:SiOは、通常、0:1〜1:0、好ましくは、0.5:0.5〜0.95:0.05、より好ましくは、0.7:0.3〜0.9:0.1とする。最も好ましいのは、ZnS:SiOを0.8:0.2とすることである。
繰り返し記録特性を考慮すると、保護層の膜密度はバルク状態の80%以上であることが機械的強度の面から望ましい。誘電体の混合物を用いる場合には、バルク密度として上述の一般式(1)の理論密度を用いる。
保護層の厚さは、一般的に、通常、1nm以上500nm以下である。1nm以上とすることで、基板や記録層の変形防止効果を十分確保することができる。そして、保護層としての役目を十分果たすことができる。また、保護層の膜厚を500nm以下とすれば、保護層としての役目を十分果たしつつ、保護層自体の内部応力や基板との弾性特性の差等が顕著になって、クラックが発生するということを防止することができる。
特に、基板と記録層の間に保護層(下部保護層と称することがある)を設ける場合、下部保護層は、熱による基板変形を抑制する必要がある。このため、下部保護層の厚さは通常1nm以上、好ましくは5nm以上、特に好ましくは10nm以上である。このようにすれば、繰り返し記録中の微視的な基板変形の蓄積が抑制される。さらに、上記膜厚範囲とすれば、再生光が散乱されてノイズ上昇が著しくなるということがなくなる。
一方、下部保護層の厚みは、成膜に要する時間の関係から、好ましくは、200nm以下、より好ましくは、150nm以下、さらに好ましくは、100nm以下である。このようにすれば、記録層平面で見た基板の溝形状が変わるということがなくなる。即ち、溝の深さや幅が、基板表面で意図した形状より小さくなったりする現象が起こりにくくなる。
記録層に対して基板とは反対側に保護層(上部保護層と称することがある)を設ける場合、上部保護層の膜厚は、記録層の変形抑制のために、通常、1nm以上、好ましくは、5nm以上、特に好ましくは、10nm以上である。また、上部保護層膜厚は、好ましくは、200nm以下、より好ましくは、150nm以下、さらに好ましくは、100nm以下、特に好ましくは、50nm以下である。上部保護層膜厚を上記範囲とすれば、繰り返し記録に伴って発生する上部保護層内部の微視的な塑性変形の蓄積を防止し、再生光の散乱によるノイズ上昇を抑制することができる。
尚、記録層及び保護層の厚みは、機械的強度、信頼性の面からの制限の他に、多層構成に伴う干渉効果も考慮して設定される。つまり、記録層及び保護層の厚みは、レーザー光の吸収効率がよく、記録信号の振幅(記録状態と未記録状態のコントラスト)が大きくなるように選ばれる。
(4)反射層
光記録媒体においては、さらに反射層を設けることができる。反射層の設けられる位置は、通常再生光の入射方向に依存する。つまり、反射層は、入射側に対して記録層の反対側に設けられる。例えば、基板側から再生光を入射する場合は、反射層は、基板に対して記録層の反対側に設けられるのが通常である。一方、例えば、記録層側から再生光を入射する場合は、反射層は、記録層と基板との間に設けられるのが通常である。
反射層に使用する材料は、反射率の大きい物質が好ましい。反射層に使用する材料は、特に放熱効果も期待できるAu、AgまたはAl等の金属が好ましい。反射層の放熱性は、通常、膜厚と熱伝導率で決まる。熱伝導率はこれら金属ではほぼ体積抵抗率に比例するため、反射層の放熱性能は、面積抵抗率で表すことができる。面積抵抗率は、通常、0.05Ω/□以上、好ましくは、0.1Ω/□以上、一方、通常、0.6Ω/□以下、好ましくは、0.5Ω/□以下とする。
これは、特に放熱性が高いことを保証するものである。上記のような反射層を用いることは、非晶質マーク形成において非晶質化と再結晶化の競合が顕著である場合に、再結晶化をある程度抑制するために必要なことである。反射層自体の熱伝導度制御や、耐腐蝕性の改善のために、上記の金属にTa、Ti、Cr、Mo、Mg、V、Nb、Zr、Si等を少量加えてもよい。添加量は、通常、0.01原子%以上20原子%以下である。Ta及びTiの少なくとも一方を15原子%以下含有するアルミニウム合金(特に、AlαTa1−α(0≦α≦0.15)なる合金)は、耐腐蝕性に優れているため、光記録媒体の信頼性を向上させる上で特に好ましい反射層材料である。
あるいは、Agに、Mg、Ti、Au、Cu、Pd、Pt、Zn、Cr、Si、Ge、希土類元素のいずれか一種の添加元素を含有するAg合金も好ましい。特に、上記添加元素を0.01原子%以上10原子%以下含むAg合金は、反射率、熱伝導率が高く、耐熱性も優れていて好ましい。
尚、上部保護層の膜厚を40nm以上50nm以下とする場合には、反射層を高熱伝導率にするため、上記添加元素を2原子%以下とするのが好ましい。
反射層の材料は、特に好ましくはAgを主成分とする。反射層の材料は、最も好ましくは純Agとする。Agを主成分とすることが好ましい理由は以下のとおりである。即ち、長期保存した記録マークを再度記録すると、保存直後の第一回目の記録だけ、相変化記録層の再結晶化速度が速くなる現象が発生する場合がある。このような現象が発生する理由は不明であるが、この保存直後における記録層の再結晶化速度の増加により、保存直後の第一回目の記録で形成した非晶質マークの大きさが所望するマークの大きさよりも小さくなるためではないかと推測される。したがって、このような現象が発生する場合には、反射層に放熱性が非常に高いAgを用いて記録層の冷却速度を上げるようにする。このようにすれば、保存直後における第一回目の記録時の記録層の再結晶化が抑制され、非晶質マークの大きさが所望の大きさに保たれるようになる。
反射層の膜厚は、透過光がなく完全に入射光を反射させるために、通常10nm以上とするが、20nm以上とすることが好ましく、40nm以上とすることがより好ましい。また、反射層の膜厚があまりに厚すぎても、放熱効果に変化はなくいたずらに生産性を悪くし、また、クラックが発生しやすくなる。このため、反射層の膜厚は、通常は500nm以下とするが、400nm以下とすることが好ましく、300nm以下とすることがより好ましい。
尚、純AgまたはAgを主成分とする反射層を、硫黄を含むZnS等を含む保護層と接して設ける場合には、Agの硫黄との反応による腐食を防ぐために、通常、硫黄を含まない界面層を設ける。界面層は、反射層として機能するような材料であることが好ましい。界面層の材料としては、Ta、Nbを挙げることができる。また界面層の膜厚は、通常1nm以上とする。一方、界面層の膜厚は、通常20nm以下、好ましくは10nm以下とする。
記録層、保護層及び反射層は、通常スパッタリング法等によって形成される。記録層用ターゲット、保護層用ターゲット、必要な場合には反射層材料用ターゲットを同一真空チャンバー内に設置したインライン装置で膜形成を行うことが各層間の酸化や汚染を防ぐ点で望ましい。また、生産性の面からも優れている。
(5)保護コート層
光記録媒体の最表面側には、空気との直接接触を防いだり、ごみとの接触による傷を防ぐため、紫外線硬化樹脂や熱硬化型樹脂からなる保護コート層を設けることが好ましい。保護コート層は通常1μmから数百μmの厚さである。また、硬度の高い誘電体保護層をさらに設けたり、その上にさらに樹脂層を設けることもできる。
以下に実施例を示して、本実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(基本例)
トラックピッチ0.74μmで、厚さ0.6mmのポリカーボネート樹脂基板を射出成形によって形成した。溝幅は約0.31μm、溝深さは約28nmとした。溝形状は、いずれも波長441.6nmのHe−Cdレーザー光を用いたU溝近似の光学回折法で求めた。続いて、ポリカーボネート樹脂基板上に、厚さ70nmの(ZnS)80(SiO20保護層、厚さ13nmのGeIn11Sb52Sn22Te11(GeIn11Sn22(Sb83Te1763)記録層、厚さ14nmの(ZnS)80(SiO20保護層、厚さ2nmのTa界面層、厚さ200nmのAg反射層、厚さ約4μmの紫外線硬化樹脂層をこの順に形成した。Ta界面層は、Ag反射層中へのSの拡散を防ぐための界面層である。各層の成膜は、ポリカーボネート樹脂基板上に、真空を解除することなく、順にスパッタリング法によって積層した。但し、紫外線硬化樹脂層はスピンコート法によって塗布した。その後、未成膜の同様の厚さ0.6mmのポリカーボネート樹脂基板を、接着剤を介して、前述した記録層面が内側になるように貼り合せ、相変化型光記録媒体(以下、単にディスクと記す)を作製した。
各層の膜厚は成膜レートを測定した後、スパッタ成膜時間によって制御した。記録層組成は、蛍光X線法による各元素の蛍光強度を、別途化学分析(原子吸光分析)によって求めた絶対組成によって校正した値を用いた。
次に、初期結晶化を行なった。初期結晶化は、波長810nm、長軸約75μm/短軸約1μmに集光した長楕円形状、パワー1500mW、のレーザー光を用いた。そして、このレーザー光を、長軸が上記案内溝に垂直になるようにして、24m/sで回転させたディスクに照射した。そして、1回転あたり送り量50μmで半径方向にレーザー光を連続的に移動させることにより、初期結晶化をおこなった。
記録再生評価は、パルステック株式会社製DDU1000テスタ(波長約650nm、NA=0.65、スポット形状は1/e強度で0.86μmの円形)を用いた。DVDの標準線速度3.49m/sを1倍速とし、4倍速以上でのオーバーライト特性を評価した。
各線速度におけるデータの基準クロック周期は、1倍速におけるデータの基準クロック周期38.2nsecに対して各線速度で反比例させたものとした。
再生は特に断わらない限り1倍速で行った。DDU1000からの出力信号を5〜20kHzにカットオフのある高周波通過フィルタを通した後、タイムインターバルアナライザー(横河電機株式会社製)でジッタを測定した。再生パワーPrは0.6mWとした。
記録パルス分割方法を制御するための論理レベルの生成は、任意信号発生器(AWG710、ソニーテクトロニクス株式会社製)を用いた。この任意信号発生器から、ECLレベルの論理信号をゲート信号として、このゲート信号を上記テスターのレーザードライバーに入力した。
実験例1)
基本例において調製したディスクに、線速度を10倍速としEFM+ランダムデータを10回オーバーライト記録した後、記録データのデータ・ツー・クロック・ジッタ(Data to clock jitter、以下では、基準クロック周期Tで規格化し%値で表したものを単にジッタ、jitter、と称する。)の記録パワーPw依存性を測定した。各マーク長記録用のパルス列の設定を表1に示す。
Figure 0004410081
マーク長によってはパルス列の照射タイミングを所定の時間だけずらし、この時間を表1中の「遅延時間」の欄に記した。数値はクロック周期Tで規格化した。照射タイミングを遅らせる場合を+(プラス)、早める場合を−(マイナス)と定義した。遅延時間を設けることにより形成されたマークは、理想的なEFM+ランダム信号に近づく。このため、ジッタが良好になる。バイアスパワーPbは0.5mWとした。マーク間部(表1に記載した以外の部分)には6.2mWの消去パワー(Pe)を照射した。データ・ツー・クロック・ジッタの記録パワーPw依存性の測定結果を図1に示す。
図1に示した結果から、記録パワーPwが22mW〜23mWで8.5%のジッタ値が得られており、充分に実用化を狙える特性であることが分かる。
実験例2)
基本例において作製したディスクに、線速度を4倍速としEFM+ランダムデータを10回オーバーライト記録した後、記録データのデータ・ツー・クロック・ジッタの記録パワーPw依存性を測定した。各マーク長記録用のパルス列の設定を表2に示す。
Figure 0004410081
消去パワーPeは6mW、バイアスパワーPbは0.5mWとした。データ・ツー・クロック・ジッタの記録パワーPw依存性を測定した結果を図1に示す。図1に示した結果から、21mW〜22mWで9.4%のジッタ値が得られており、実用化を狙える特性であるといえる。しかしながら、4倍速記録でのデータ・ツー・クロック・ジッタは、10倍速記録時のそれよりも多少悪い値となった。フォーカス、トラッキングサーボ等の特性は低線速の方が有利と思われることを考えると、ジッタ値が改善される可能性はあるように思われる。
そこで最適記録パワー22mWにおける記録信号の各マーク長それぞれについてのマーク長ジッタを測定した。マーク長ジッタの測定結果を表3に示す。
Figure 0004410081
表3に示した結果から、明らかに、分割数m=2で最も短い5Tマークのマーク長ジッタと、分割数m=1で最も短い3Tマークのマーク長ジッタと、が他のマーク長と比較して不良であることがわかる。この短いマークでのジッタ特性の低下が、全体のジッタを低下させている原因と思われる。尚、マーク長平均値の理想値からのずれは、どのマーク長でも同程度に小さく合わせてある。
マーク長ジッタが不良な理由は、5Tマーク、3Tマークの記録条件では冷却速度が充分ではなく、記録層溶融後の再結晶化が激しすぎるからであると考えられる。なぜなら、5Tマークと6Tマークの記録パルス列の違いはβの大きさだけであり、βを大きくして冷却速度を速めればマーク長ジッタは良くなることが示されているからである(もちろんこの場合、5Tマークは長くなりすぎてしまう)。3Tについても先頭記録パルスαは4Tを除く他のマーク長と同じであり、マーク長ジッタが悪い原因はこの部分の冷却速度が遅いためと考えられる。
そこで、冷却速度を速めるために表4に示すパルス列を用いた。そして、線速度を4倍速としEFM+ランダムデータを10回オーバーライト記録し、再度、マーク長ジッタを測定した。記録パワーPwは22mW、消去パワーPeは6mW、バイアスパワーPb=0.5mWとした。記録パルス列の表2からの変更点は、5Tと3Tについてαを小さくし、βを大きくしたことのみである。このときマーク長平均値は変化しないように調整した。マーク長ジッタの測定結果を表5に示す。
Figure 0004410081
Figure 0004410081
表5に示した結果から、冷却速度は速くなっていると思われるにもかかわらず、5Tと3Tのジッタはあまり改善されていないことが分かる。この原因は、αを小さくしたことによりマーク形成部の温度が充分に上がっていないためと考えられる。
実験例3)
実験例2において、冷却速度は速くなっていると思われるにもかかわらず、5Tと3Tのジッタはあまり改善されない原因は、αを小さくしたことによりマーク形成部の温度が充分に上がらないためと考えられる。そこで、この仮説を裏付けるため以下の測定を行った。表4に示すパルス列の設定に従い、Pw=22mW、Pe=6mW、Pb=0.5mWで、線速度を4倍速としEFM+ランダムデータを10回オーバーライト記録した部分に、さらに5Tのトーン信号(マーク長、マーク間長ともに5T狙いの信号)を、表4の5Tのパルス列で記録パワーPwを変えて(20〜28mW)1回オーバーライトし、マーク長ジッタを測定した。最後の記録において、オーバーライトする信号をトーン信号とした理由は、記録パワーを変えることによって他の長さのマークが変化する効果を除くためである。マーク長ジッタの測定を3Tについても同様に行った。測定結果を図2に示す。
図2に示す結果から、マーク長ジッタは記録パワーを上げることにより大きく改善されることが分かる。従って、表4の5Tと3Tのパルス列は、記録パワー22mWではパワー不足であると判断できる。
以上の結果は、5Tと3T以外のマーク長については22mWとし、5Tと3Tについてのみ記録パワーを上げれば、全体のデータ・ツー・クロック・ジッタを改善できるということを強く示唆している。但し、5Tと3Tについては記録パワーを上げることによって変わるマーク長の微調整(α、βの微調整)をする必要はあるであろう。
以上、本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。
本発明によれば、高データ転送レート可能な媒体に特定の記録方法でオーバーライトを行うことにより、書き換えが良好にできるようになる。特に、高転送レートが可能な光記録媒体に比較的低線速度での記録を行う場合に良好なオーバーライト記録を実現できる。
実験例1及び実験例2のデータ・ツー・クロック・ジッタの記録パワーPw依存性の測定結果を示す図である。 実験例3のマーク長ジッタの記録パワーPw依存性の測定結果を示す図である。 一般的な光記録方法におけるパルス分割方法を説明する図である。図3(a)は、形成するnTの記録長の記録マークのタイミングチャートを示す。図3(b)は、nTの記録長の記録マークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを示す。 本実施の形態が適用される、長さの異なる複数のnTマークを同一の分割数mのパルス列で記録する光記録方法を説明するための図である。図4(a)は、8Tマークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを示す。図4(b)は、9Tマークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを示す。そして、図4(c)は、10Tマークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャートを示す。 本実施の形態が適用される光記録方法を実施するための光記録装置の一例を示す図である。
符号の説明
200…nTの記録長の記録マークのタイミングチャート、201…nTの記録長の記録マークを形成するための記録パルス分割方法のタイミングチャート、2000…光記録装置、2001…I/F、2002…変調回路、2003…分割記録パルス生成制御回路、2004…LDドライバ、2005…LD、2006…ビームスプリッタ、2007…光ディスク、2008…PD、2009…対物レンズ、2010…再生回路、2011…復調回路、2012…制御マイコン、2013…スピンドルモーター

Claims (5)

  1. 結晶状態と非晶質状態とで情報の記録を行い、情報の書き換えが可能な相変化型記録層を有する光記録媒体に局所的に記録光を照射し、2種類の記録線速度V min 及び記録線速度V max (但し、V max >V min である)により、マーク長変調された情報を複数の時間的な長さを有する記録マークによって記録する光記録方法であって、
    一つの記録マークの時間的な長さをnTとしたとき(Tは、基準クロック周期であり、nは、2以上の自然数である。)、
    前記nTの時間的な長さを有する記録マークを記録するための光照射時間を、
    Figure 0004410081
    (mは、パルス分割数を表し自然数であり、α(1≦i≦m)は、0より大きい実数であり、β(1≦i≦m−1)は、0より大きい実数であり、βは、0以上の実数である。)の順に分割し、
    前記αT(1≦i≦m)の時間内に、記録パワーPw(1≦i≦m)の記録光を照射し、
    前記βT(1≦i≦m)の時間内に、Pb≦0.2×Pw(1≦i≦m)なるバイアスパワーPbの記録光を照射し、
    前記複数の時間的な長さを有する記録マークの中、少なくとも一つの記録マークについて、前記パルス分割数mを2以上とし、
    複数のnTの時間的な長さを有する記録マークを同一の前記パルス分割数mで形成する光記録方法において、
    前記複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが長い記録マークを形成する際の時間αT(1≦i≦m)における前記記録パワーPwの平均値をPwlongとし、
    前記複数のnTの時間的な長さを有する記録マークのうち、最もnTが短い記録マークを形成する際の時間αT(1≦i≦m)における前記記録パワーPwの平均値をPwshortとしたとき、
    前記記録線速度V min において、Pwshort>Pwlongとなるmが存在することを特徴とする光記録方法。
  2. 前記Pwshort>Pwlongとなるmが、1及び/又は2であることを特徴とする請求項1記載の光記録方法。
  3. 前記記録線速度Vminと前記記録線速度Vmaxとの関係が、Vmax≧2Vminであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光記録方法。
  4. 前記複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが長い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個の前記記録パワーPwをそれぞれPwとし、
    前記複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個の前記記録パワーPwの少なくとも一部の前記記録パワーPwをPwとし、残りの前記記録パワーPwを前記Pwとしたとき、
    前記Pwと前記Pwとの関係を、Pw>Pwとすることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の光記録方法。
  5. 前記複数のnTの時間的な長さを有する記録マークの中、最もnTが短い記録マークを形成する際の1≦i≦mにおけるm個の前記記録パワーPwの総てをPwとすることを特徴とする請求項4記載の光記録方法。
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