JP2004110884A - 光記録装置および光記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】下位互換性の高い相変化型光記録媒体に対する高い線速での記録を可能とする。
【解決手段】相変化型光記録媒体に対して、対をなす加熱パルスと冷却パルスとによって構成される幅Tのパルス部を複数有して、一対の加熱パルスおよび冷却パルスを有する先頭部と、1ないし複数対の加熱パルスおよび冷却パルスを有する中間部と、後端で一対の加熱パルスおよび冷却パルスを有する後端部とによって構成されるパルス列にしたがう発光波形の光を光ピックアップから照射させることにより記録マークを形成する光記録装置で、後端部の冷却パルスにおいて光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb1と、先頭部および中間部の冷却パルスにおいて光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb2とを異ならせるようにした。
【選択図】 図2
【解決手段】相変化型光記録媒体に対して、対をなす加熱パルスと冷却パルスとによって構成される幅Tのパルス部を複数有して、一対の加熱パルスおよび冷却パルスを有する先頭部と、1ないし複数対の加熱パルスおよび冷却パルスを有する中間部と、後端で一対の加熱パルスおよび冷却パルスを有する後端部とによって構成されるパルス列にしたがう発光波形の光を光ピックアップから照射させることにより記録マークを形成する光記録装置で、後端部の冷却パルスにおいて光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb1と、先頭部および中間部の冷却パルスにおいて光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb2とを異ならせるようにした。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光記録装置および光記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年では、画像データ等のように大容量のデータを扱うようになってきている。このため、今後、大容量の記録媒体がますます要求されるのは言うまでもない。
【0003】
このような大容量のデータの扱いに際しては、データの記録再生を高速化することが要求されている。そして、大容量であるとともに高速記録が可能であり、また、CD−ROM,DVD−ROM等の記録媒体との互換性が高いことから、CD,DVD等の記録媒体の中で書き換え型の記録媒体として用いられている相変化型光記録媒体が普及してきている。
【0004】
CD,DVDの書き換え型記録媒体である相変化型光記録媒体に対しては、CD−ROM,CD−Rにおける著しい高速化に伴い、さらなる高速化が要求されている。
【0005】
ところで、高速(高線速)記録に対応した記録媒体は、低速(低線速)記録に対応した記録媒体に対応する低速ドライブでも記録できることが望ましい。高線速記録に対応している記録媒体であるCD−Rは、低速ドライブでも記録することが可能であり、広い線速範囲での記録をカバーできている。
【0006】
ここで、高線速で記録するためには、より高い記録パワーの出せるレーザが必要になるが、低速ドライブに搭載されているレーザ光のパワーは、高線速記録に対応した高速ドライブに搭載されているレーザ光のパワーより低いのが普通である。このため、高線速記録に対応した相変化型光記録媒体に対して、低線速でより低い記録パワーで記録を行なうことは、カバーしようとする記録線速範囲が広がれば広がるほど難しくなる。
【0007】
また、CD,DVDの書き換え型記録媒体として用いられている相変化型光記録媒体では、CD−ROMあるいはDVD−ROMとの互換を確保する必要があるため高い感度を維持する必要があり、例えば、反射率を極端に下げるといった対策を講じることはできない。
【0008】
ここ数年の間に商品化されている相変化型光記録媒体としての書き換え可能型DVDにおいては、2.4Xが最高線速であり、これより高線速に対応した相変化型光記録媒体およびこの相変化型光記録媒体に対応したドライブはない。また、2.4Xに対応した高線速記録対応の相変化型記録媒体でも、低速ドライブで記録できる、いわゆる、下位互換可能な高線速記録対応の相変化型記録媒体はない。
【0009】
下位互換可能な高線速記録対応の相変化型記録媒体を実現するために、相変化型光記録層に用いられる材料としては、例えば、Ge−Sb−Te,Ag−In−Sb−Te系、Ge−Ag−In−Sb−Te系の材料が挙げられる。中でも、Sb−Te系の状態図に示されているSb:Te=70:30(原子比)付近の共晶組成を基本に、Ag,In、Geを添加したAg−In−Sb−Te系、Ge−Ag−In−Sb−Te系は、高密度、高線速記録をしても繰り返し記録(オーバーライト)特性に優れた記録材料である。また、相変化型光記録層を形成する材料には、高温環境下における記録マークの保存性の高いGe−Ag−In−Sb−Te系の材料が挙げられる。さらに、相変化型光記録層を形成する材料には、Ge−Mn−Sb−Te,Ge−Mn−Sb−Te−Ga系の材料が挙げられる。
【0010】
一方で、高線速記録に対応した記録媒体に対して下位互換を可能とする記録方法として、例えば、書き換え型CDで用いられている方法として、PWM記録の際に変調後信号幅nTの0信号の記録、書き換え時の記録波をeの連続波とし、変調後信号幅nTの1信号の記録、書き換え時の記録パルス列を、時間幅xと値aのfpと、合計時間がTとなる値bと値cとが交互にデューティ比yでn−n’回連続するmpと、時間幅zと値dのopとし、x,y,zを0.5T≦x≦2T、0.4≦y≦0.6、0.5T≦z≦1T、n’をn’≦nの正の整数とし、(a、c)>e>(b、d)とすることで、記録信号品質とオーバーライト繰り返し時の安定性の向上、信頼性、汎用性の向上を達成するようにした技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
特に、書き換え型DVDに対して、CAVで記録特性を得るためのレーザ光のパルス状発光波形におけるパルス幅を制御するようにした技術として、SbTeにAg、Au、Cu、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、N、P、Bi、La、Ce、Gd、Tbのうちの1種以上を添加した相変化型記録を有する光記録媒体を用い、これに記録マークを形成する際、レーザー光の発光波形を複数のオンパルスとこれに続くオフパルスからなる記録パルス列とし、内周から外周あるいは外周から内周へ記録半径位置に対応して連続的に記録周波数ν(ν=1/Tw;Twはウインドウ幅)を変化させて記録することにより、高記録線速度で高密度記録を行なうことができるようにした技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開平9−138947号公報
【特許文献2】
特開2000−322740公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述したように、相変化型光記録層材料や媒体の構成等により高線速記録対応の記録媒体に対する下位互換を可能にした場合、高線速側、特に最高線速側において十分な記録特性が得にくいという問題が生じる。例えば、DVDと等速の線速3.49m/sからその4倍である14m/s(13.96m/s)までの記録線速での記録ができる書き換え型のDVDディスクに対して、等速から2.4倍速(8.44m/s)を下位ドライブで記録する場合、4倍の記録線速のオーバーライト特性が十分でなく、記録パワーに対するマージンが狭くなってしまう。
【0014】
すなわち、下位互換性を優先すると、相変化型光記録媒体の記録線速に対する結晶化速度のうち最高線速に対する結晶化速度が遅くなり、非晶質相が形成され易くなる。このため、繰り返し記録を行なう場合に前の記録マークを消しにくくなり、十分な繰り返し記録特性が得にくくなるのである。
【0015】
これに対し、消去パワーを上げることによって結晶化させ易くすることが可能になるが、消去パワーを必要以上に上げると却って非晶質相を形成させ易くなってしまう。
【0016】
本発明の目的は、下位互換性の高い相変化型光記録媒体に対する高い線速での記録を可能とすることである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明の光記録装置は、相変化型光記録媒体に対して光を照射する光ピックアップと、前記光ピックアップに対して前記相変化型光記録媒体を相対的に移動させる相対移動手段と、周期Tの基準クロックを発生させるクロック発生手段と、前記光ピックアップを駆動制御することで、対をなす加熱パルスOPiと冷却パルスFPiとによって構成される幅T(T=OPi+FPi)のパルス部をi個(i=1,…,m)有して、先頭のパルス部である先頭部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOP1,FP1、続く中間のパルス部である中間部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOPj,FPj(j=2,…,m−1)、後端のパルス部である後端部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOPm,FPm(ただし、m=n−2,nは2以上の整数)とするパルス列にしたがう発光波形の光を前記光ピックアップから照射させることにより、時間的な長さがnTである記録マークを前記相変化型光記録媒体に形成する記録手段と、を具備し、前記記録手段は、前記後端部の冷却パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb1と、前記先頭部および前記中間部の冷却パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb2とを異ならせるようにした。
【0018】
したがって、低線速で低パワーでの記録を可能にする再結晶化速度が設定されている相変化型光記録媒体に対して、設定されている再結晶化速度以上の高線速で記録する場合にも、非晶質相を形成し易くすることができる。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の光記録装置において、消去パワーPeの光を前記光ピックアップから照射させることにより前記相変化型光記録媒体に形成された記録マークを消去する消去手段と、再生パワーPrの光を前記光ピックアップから照射させることにより前記相変化型光記録媒体に形成された記録マークを再生する再生手段と、を具備し、前記記録手段は、前記パルス列中の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPwと、消去パワーPeと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、Pw>Pe≧Pb1>Pb2とし、かつ、再生パワーPrと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、Pb1>Pr≧Pb2とする。
【0020】
したがって、高線速になる程非晶質相を形成し易くしているために繰り返し記録(オーバーライト)に際しての消去比が低下するような相変化型光記録媒体に対しても、繰り返し記録に際しての消去比を向上させることができる。
【0021】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の光記録装置において、前記記録手段は、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速Vmaxまでの範囲における照射パワーPwと、消去パワーPeと、再生パワーPrと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、Pw>Pe≧Pb1>Pb2,Pb1>Pr≧Pb2,ただし、Pb1=Pb2+(Pe−Pb2)*(2V−Vmax)/Vmaxとし、記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲における照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を、Pb1=Pb2とする。
【0022】
したがって、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、特に、高線速側での繰り返し記録に際しての消去比を向上させることができる。
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項1、2または3記載の光記録装置において、前記記録手段は、前記先頭部の加熱パルス,前記中間部の加熱パルス,前記後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させる。
【0024】
したがって、記録マーク長を制御して、記録マークが不用意に長くなることを抑制することができる。
【0025】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか一に記載の光記録装置において、前記記録手段は、前記先頭部の加熱パルスの開始時間を前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させる。
【0026】
したがって、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0027】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか一記載の光記録装置において、前記記録手段は、前記先頭部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw1と、前記中間部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw2と、前記後端部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw3とを、すべて同じとするか、すべて異ならせるか、または、いずれか2つを同じとする。
【0028】
したがって、基本的には、照射パワーPw1,Pw2,Pw3を同じとするが、いずれの場合にも繰り返し記録特性を改善することができる。
【0029】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか一に記載の光記録装置において、前記記録手段は、前記先頭部の加熱パルス幅OP1を0.3T≦OP1≦0.8Tとし、前記中間部および前記後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲では0.2T≦OPj,OPm≦0.6Tとし、記録線速Vが中間線速度から最高線速までの範囲では0.3T≦OPj,OPm≦0.7Tとする。
【0030】
したがって、先頭部の加熱パルス幅OP1に加えて、中間部および後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを記録線速Vに応じて制御することにより、記録線速Vに依存することなく良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0031】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか一に記載の光記録装置において、前記記録手段は、前記後端部の冷却パルス幅FPmを0≦FPm≦1.5Tとする。
【0032】
したがって、高線速記録である程短くする方が好ましい後端部の冷却パルスを制御することで、記録マーク長の制御が可能になる。
【0033】
請求項9記載の発明は、請求項1または2記載の光記録装置において、前記記録手段は、照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を記録線速Vに依らず、Pb1=Pb2とし、前記先頭部の加熱パルス,前記中間部の加熱パルス,前記後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させる。
【0034】
したがって、照射パワーPb1と照射パワーPb2と記録線速Vに依らず等しくすることで光ピックアップの駆動制御を容易化しつつ、先頭部の加熱パルス,中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間を制御することで、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0035】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の光記録装置において、前記先頭部の加熱パルスの開始時間を、前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させる。
【0036】
したがって、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0037】
請求項11記載の発明は、請求項9または10記載の記録装置において、前記記録手段は、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeと記録パワーPwとの比Pe/Pwを、記録パワーPw毎に変える。
【0038】
したがって、Pe/Pwを一定にした場合には低い記録パワーでの記録に際しての消去パワーも低下するために2回目記録(繰り返し記録1回目)の記録特性が劣化し、消去パワーの低下を防止するために消去パワーを一定にした場合には高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、Pe/Pwを記録パワーPw毎に変えることにより記録パワーPwに依らず繰り返し記録特性を改善することができる。
【0039】
請求項12記載の発明は、請求項1ないし11のいずれか一に記載の記録装置において、前記記録手段は、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とする。
【0040】
したがって、低記録パワー側で求められる消去パワーに固定すると高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とすることで、消去パワーPeを一定にした場合にも消去パワーを不足させることなく、処理を容易化することができる。
【0041】
請求項13記載の発明の光記録方法は、相変化型光記録媒体に対して光を照射する光ピックアップと、前記光ピックアップに対して前記相変化型光記録媒体を相対的に移動させる相対移動手段と、周期Tの基準クロックを発生させるクロック発生手段と、を具備する光記録装置を用いた光記録方法において、前記光ピックアップを駆動制御することで、対をなす加熱パルスOPiと冷却パルスFPiとによって構成される幅T(T=OPi+FPi)のパルス部をi個(i=1,…,m)有して、先頭のパルス部である先頭部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOP1,FP1、続く中間のパルス部である中間部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOPj,FPj(j=2,…,m−1)、後端のパルス部である後端部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOPm,FPm(ただし、m=n−2,nは2以上の整数)とするパルス列にしたがう発光波形の光を前記光ピックアップから照射させることにより、時間的な長さがnTである記録マークを前記相変化型光記録媒体に形成する際に、前記後端部の冷却パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb1と、前記先頭部および前記中間部の冷却パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb2とを異ならせるようにした。
【0042】
したがって、低線速で低パワーでの記録を可能にする再結晶化速度が設定されている相変化型光記録媒体に対して、設定されている再結晶化速度以上の高線速で記録する場合にも、非晶質相を形成し易くすることができる。
【0043】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の光記録方法において、前記パルス列中の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPwと、前記光ピックアップから照射させることにより前記相変化型光記録媒体に形成された記録マークを消去する消去パワーPeと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、Pw>Pe≧Pb1>Pb2とし、かつ、前記光ピックアップから照射させることにより前記相変化型光記録媒体に形成された記録マークを再生する再生パワーPrと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、Pb1>Pr≧Pb2とするようにした。
【0044】
したがって、高線速になる程非晶質相を形成し易くしているために繰り返し記録(オーバーライト)に際しての消去比が低下するような相変化型光記録媒体に対しても、繰り返し記録に際しての消去比を向上させることができる。
【0045】
請求項15記載の発明は、請求項13または14記載の光記録方法において、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速Vmaxまでの範囲における照射パワーPwと、消去パワーPeと、再生パワーPrと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、Pw>Pe≧Pb1>Pb2,Pb1>Pr≧Pb2,ただし、Pb1=Pb2+(Pe−Pb2)*(2V−Vmax)/Vmaxとし、記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲における照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を、Pb1=Pb2とするようにした。
【0046】
したがって、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、特に、高線速側での繰り返し記録に際しての消去比を向上させることができる。
【0047】
請求項16記載の発明は、請求項13、14または15記載の光記録方法において、前記先頭部の加熱パルス,前記中間部の加熱パルス,前記後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させるようにした。
【0048】
したがって、記録マーク長を制御して、記録マークが不用意に長くなることを抑制することができる。
【0049】
請求項17記載の発明は、請求項13ないし16のいずれか一に記載の光記録方法において、前記先頭部の加熱パルスの開始時間を前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させるようにした。
【0050】
したがって、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0051】
請求項18記載の発明は、請求項13ないし17のいずれか一記載の光記録方法において、前記先頭部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw1と、前記中間部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw2と、前記後端部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw3とを、すべて同じとするか、すべて異ならせるか、または、いずれか2つを同じとするようにした。
【0052】
したがって、基本的には、照射パワーPw1,Pw2,Pw3を同じとするが、いずれの場合にも繰り返し記録特性を改善することができる。
【0053】
請求項19記載の発明は、請求項13ないし18のいずれか一に記載の光記録方法において、前記先頭部の加熱パルス幅OP1を0.3T≦OP1≦0.8Tとし、前記中間部および前記後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲では0.2T≦OPj,OPm≦0.6Tとし、記録線速Vが中間線速度から最高線速までの範囲では0.3T≦OPj,OPm≦0.7Tとするようにした。
【0054】
したがって、先頭部の加熱パルス幅OP1に加えて、中間部および後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを記録線速Vに応じて制御することにより、記録線速Vに依存することなく良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0055】
請求項20記載の発明は、請求項13ないし19のいずれか一に記載の光記録方法において、前記後端部の冷却パルス幅FPmを0≦FPm≦1.5Tとするようにした。
【0056】
したがって、高線速記録である程短くする方が好ましい後端部の冷却パルスを制御することで、記録マーク長の制御が可能になる。
【0057】
請求項21記載の発明は、請求項13または14記載の光記録方法において、照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を記録線速Vに依らず、Pb1=Pb2とし、前記先頭部の加熱パルス,前記中間部の加熱パルス,前記後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させるようにした。
【0058】
したがって、照射パワーPb1と照射パワーPb2と記録線速Vに依らず等しくすることで光ピックアップの駆動制御を容易化しつつ、先頭部の加熱パルス,中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間を制御することで、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0059】
請求項22記載の発明は、請求項21記載の光記録方法において、前記先頭部の加熱パルスの開始時間を、前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させるようにした。
【0060】
したがって、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0061】
請求項23記載の発明は、請求項21または22記載の記録方法において、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeと記録パワーPwとの比Pe/Pwを、記録パワーPw毎に変えるようにした。
【0062】
したがって、Pe/Pwを一定にした場合には低い記録パワーでの記録に際しての消去パワーも低下するために2回目記録(繰り返し記録1回目)の記録特性が劣化し、消去パワーの低下を防止するために消去パワーを一定にした場合には高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、Pe/Pwを記録パワーPw毎に変えることにより記録パワーPwに依らず繰り返し記録特性を改善することができる。
【0063】
請求項24記載の発明は、請求項13ないし23のいずれか一に記載の記録方法において、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とするようにした。
【0064】
したがって、低記録パワー側で求められる消去パワーに固定すると高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とすることで、消去パワーPeを一定にした場合にも消去パワーを不足させることなく、処理を容易化することができる。
【0065】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態について図1および図2を参照して説明する。本実施の形態は、光記録装置として、例えば、DVD+RW(Digital Versatile Disc+ReWritable)等の繰り返し記録が可能な相変化型光記録媒体を対象とする光ディスク装置への適用例を示す。
【0066】
図1は、本実施の形態の光ディスク装置の構成を概略的に示すブロック図である。光ディスク装置1は、記録再生位置にセットされた相変化型光記録媒体としての光ディスク2を回転させる相対移動手段としてのスピンドルモータ3を備えている。
【0067】
なお、本実施の形態では、光ディスク2を回転させるスピンドルモータ3を相対移動手段として用いているため、記録再生に際して、例えば、光ディスク2と後述する光ピックアップ10とを直線的に移動させる場合と比較して、記録再生を高速化することができる。
【0068】
ここで、光ディスク装置1で用いられる光ディスク2について説明する。特に図示しないが、本実施の形態の光ディスク2は、データの書き換え(繰り返し記録)を可能とする相変化型光記録媒体であり、下部誘電体保護層、相変化型光記録層、上部誘電体保護層、硫化防止層および反射層を透明基板上に順次積層した構成、あるいは、下部誘電体保護層、相変化型光記録層、界面層、上部誘電体保護層、硫化防止層および反射層を透明基板上に順次積層した構成を基本構成として有する。
【0069】
透明基板は、記録再生光の波長に対して透明な材料によって形成されている。例えば、透明基板を形成する材料として、ポリカーボネート(PC),ポリメタアクリル酸(PMMA)等のプラスチックや、ガラス等が挙げられる。本実施の形態では、ポリカーボネートによって形成された透明基板を用い、厚さは0.6mmに設定されている。ポリカーボネート製の透明基板は、安価であり、現在、CD,DVD,MO等の記録媒体で用いられている。
【0070】
透明基板と相変化型光記録層との間に設けられる下部誘電体保護層や、相変化型光記録層と反射層との間に設けられる上部誘電体保護層を形成する材料としては、SiOx,ZnO,SnO2,Al2O3,TiO2,In2O3,MgO,ZrO2,Ta2O5等の金属酸化物、Si3N4,AlN,TiN,BN,ZrN等の窒化物、ZnS,TaS4,等の硫化物、SiC,TaC,B4C,WC,TiC,ZrC等の炭化物が挙げられる。これらの材料は、単体あるいは混合物として用いることもできる。
【0071】
中でも、相変化型光記録媒体の下部誘電体保護層を構成する材料としては、ZnSとSiO2との混合物(ZnS−SiO2)が一般的に用いられている。このZnSとSiO2との混合比は、80:20(モル比)が良い。ここで、ZnS−SiO2(80:20)は、熱伝導率が低く、比熱が小さく、繰り返し記録により結晶化せず、加熱と急冷の多数回の履歴によるクラックの発生、元素の拡散等がないため、下部誘電体保護層を形成する材料として適している。また、ZnS−SiO2(80:20)は、上述した性質から、上部誘電体保護層にも用いられる。
【0072】
また、屈折率がZnSSiO2とほぼ同じかそれよりも大きく、熱伝導率も低い材料として、ZrO2にY2O3を3mol%から6mol%を含む混合物が挙げられる。ZrO2を主成分とする系において、バルクにおける熱伝導率をレーザフラッシュ法により測定したところ、ZrO2・Y2O3(3mol%),ZrO2・SiO2(5mol%)・Y2O3(3mol%),ZrO2・TiO2(50mol%)・Y2O3(3mol%)、ZrO2・TiO2(40mol%)・SiO2(20at%)・Y2O3(3mol%)の熱伝導率は、それぞれ、5.1W/m・K、3.5W/m・K、1.73W/m・K、2.6W/m・K、ZnS・SiO2(20mol%)が、8.4W/m・Kであった。屈折率(n)は、ZrO2・SiO2(5mol%)以外は、すべて2以上であった。なお、Y2O3の代わりに、MgOを用いても良い。
【0073】
いずれもスパッタ法による成膜のためのターゲットを作製する際に、ターゲットの割れを防止するために用いる材料である。
【0074】
下部誘電体保護層の膜厚は、40nmないし250nmの範囲に設定されており、65nmないし200nmが好ましい。ここで、下部誘電体保護層の膜厚が40nmより薄くなると、耐環境性保護機能が低下し、放熱効果が低下して、繰り返し記録特性の劣化が大きくなる。一方、下部誘電体保護層の膜厚が250nmより厚くなると、スパッタ法等による製膜過程において、膜温度の上昇により膜剥離やクラックが生じる。また、透明基板の厚さが0.6mmともなると、下部誘電体保護層の膜厚を250nmより厚くすることで、クラック等の発生に伴って透明基板の変形を起こす。
【0075】
上部誘電体保護層の膜厚は、5nmないし50nmの範囲に設定されており、8nmないし20nmが好ましい。ここで、上部誘電体保護層の膜厚が5nmより薄くなると、記録感度が低下する。一方、上部誘電体保護層の膜厚が50nmより厚くなると、温度上昇による変形や放熱性の低下による繰り返し記録特性の低下を引き起こす。
【0076】
ところで、上述した材料を用いて形成した上部誘電体保護層を有する記録媒体に対して記録を行ない、80℃,85%RHで記録マークの保存性を調べたところ、ZrO2の含有量が50at%より多い系の場合には、記録マークが消滅するか、ジッターが大きく劣化することが判った。一方で、ZrO2系は、繰り返し記録特性が良好であり、1000回記録した後のジッター劣化は、ZnSSiO2より少なく、高線速で繰り返し記録する場合により効果があることが判る。このようなことから、上部誘電体保護層を形成する材料としては、ZnSSiO2:ZrO2が(80:20)が良い。
【0077】
本実施の形態では、繰り返し記録特性を良くする効果を活かすために、相変化型光記録層と上部誘電体保護層との間に、ZrO2系材料を界面層として設けることを検討し、その結果、ZrO2系材料の界面層を設ける場合には、膜厚が1nm以上5nmの範囲に設定された界面層を設けることにより、繰り返し記録特性が良好であるという効果を保ち、かつ、保存信頼性の劣化もかなり抑制されることが判った。
【0078】
界面層としては、ZrO2系材料の他に、SiCも有効である。なお、膜厚を厚くすると光吸収が大きくなり、反射率の低下を生じるため、SiCによって形成される界面層の膜厚は5nm以下が良い。
【0079】
反射層を形成する材料としては、Al,Ag,Cu,Pd,Cr,Ta,Ti等の金属材料が挙げられる。反射層は、膜厚が厚い程放熱性がより向上するが、厚くなり過ぎると薄膜を作製する間に媒体が温度上昇して透明基板が変形してしまい、逆に、薄すぎると放熱性が悪くなって記録特性(繰り返し記録特性を含む)が劣化するため、膜厚が50nmから250nmの範囲に設定されていることが良い。
【0080】
ここで、記録線速が速くなると冷却速度が大きくなって非晶質の記録マークを形成し易くなるが、記録マークを形成するためには相変化型光記録層を融点付近まで加熱させるので発光パルスの加熱パルス時間を長くする必要がある。一方で、一つの加熱パルス時間と冷却パルス時間との和は基準クロックの周期Tであり、この制約の中で加熱パルス時間と冷却パルス時間とを変えているため、加熱パルス時間を長くすると、冷却パルス時間が短くなってしまい冷却時間が不足して記録マークが形成しにくくなる。
【0081】
従来、反射層として、AlあるいはAl合金を用いてきたが、DVDの2倍速では、熱伝導率がより高いAgを用いることにより反射特性が向上することが判ったため、本実施の形態では、媒体で冷却効率を上げるために、反射層を形成する材料としてAgを用いることが好ましい。
【0082】
しかしながら、上部誘電体保護層がSを含み反射層がAgによって形成されている場合、高温高湿下ではAg2Sが生成されやすい。Ag2Sが生成されることにより、特性が劣化し、欠陥が発生する原因となる。
【0083】
このため、上部誘電体保護層がSを含み反射層がAgによって形成されている場合には、反射層と上部誘電体保護層との間に硫化反応防止層を設ける必要がある。
【0084】
これまで、酸化物、窒化物、炭化物、金属について鋭意検討した結果、硫化反応防止層を形成する材料としては、Si,SiCが好ましいことが判った。また、硫化反応防止層を形成する材料としては、ZrO2、MgO,TiOxも適しており好ましい。中でも、SiCは、AgとSとの反応を防止し、膜厚を3nmと薄くしてもその効果が高い。SiCによる硫化防止層の膜厚は、2nm以上とし、上限を10nmとする。硫化防止層の膜厚を10nm以上にすると、反射層と上部誘電体保護層との距離が離れて放熱効率が下がってしまったり、吸収係数が高いために反射率が低下してしまったりする。
【0085】
なお、反射層をAg単体とすることで、特性を向上させることができるが、Agそのものの腐食性や硫化防止層との密着性等を考慮する必要がある。
【0086】
例えば、Agそのものの腐食性については、粒径が大きくなると表面が凹凸状になり密着性の弱いところから剥がれやすくなるので、薄膜作製時のスパッタリング条件(アルゴンガス圧)を最適化し、Agの結晶粒径を小さくして粒成長を抑制してAgの薄膜表面を平滑とすることで、Ag単体でも、Ag層の腐食性や硫化防止層との密着性の不具合を解消することができる。Agの膜をスパッタ法により作製する場合には、Ag膜の結晶粒径を小さくするために透明基板とターゲット間に3kW以下のパワーをかけることが良い。
【0087】
また、例えば、硫化防止層との密着性を向上させるには、反射層の上にアクリル系紫外線硬化型樹脂によって形成される環境保護層を設け、このアクリル系紫外線硬化型樹脂の硬化条件や環境保護層の厚さを最適化することで、Ag単体の反射層を設けることも可能である。
【0088】
しかしながら、量産等に際しては、最適条件で作製されていなかったり、記録膜のない透明基板を貼り合わせる前の保管条件や、透明基板自身の吸湿、紫外線硬化型樹脂の吸湿等の条件が不適切であったりすることによってAgが劣化する懸念がある。
【0089】
そこで、Agを95at%以上の合金にすることにより、信頼性を向上させることができる。Agに添加する添加元素としては、Cu,Niが熱伝導率をあまり下げることなく、粒径成長を抑制し、耐環境性を向上させるため好ましい。Agに対する添加元素の添加量が5at%を超えると、熱伝導率が著しく減少するため、Agに対する添加元素の添加量は、好ましくは、2at%以下が良い。
【0090】
相変化型光記録層は、後述する光ピックアップ10の半導体レーザから照射されるレーザ光によって非晶質相と結晶相の可逆的相変化をする。相変化型光記録層を形成する材料としては、これまでSb70Te30付近の共晶組成を基本とし、Ag,Inや、さらにGeを添加したAgInSbTe系、AgInSbTeGe系が挙げられる。これらの材料系は、高線速でしかも高密度記録に適している。
【0091】
SbのTeに対する比率が大きくなる程、また、Sb量が80at%を超えると、相変化型光記録層の結晶化速度は高くなるが、保存性が極端に悪くしかも非晶質相を形成しにくくなるため、高線速記録に対応するための好ましいSb量としては、Sb量が65at%以上であって80at%より少ない方が良い。
【0092】
また、高線速記録に対応するための好ましいTe量は、15at%以上、25at%以下が良い。
【0093】
Geは、結晶化速度が遅いにも拘わらず、記録した記録マークの高温環境下での保存性を向上させるために必須の元素である。GeとTeとの結合エネルギーが大きいことから保存性が良いと考えられる。また、Ge添加量が増加する程、結晶化温度が高くなるためこれによっても保存性が良いと考えられる。
【0094】
しかしながら、Geをあまり多く入れると結晶化温度がさらに高くなり、結晶化速度も遅くなるので5at%以下がよい。Agは、記録マークを安定化させるが、結晶化温度はあまり増加させない。
【0095】
また、Agは、過剰に入れると結晶化の速度を下げてしまうが、結晶状態を安定化する役割も果たすため、3at%が良い。
【0096】
Inは、結晶化速度を上げるとともに結晶化温度を上げるため、保存性を向上させることができるが、多く入れると偏析しやすく繰り返し記録特性の劣化と再生光パワーに対する劣化が起きるため、In量は、5at%以下が良い。本発明においては、3at%以下がよい。
【0097】
In以外に、結晶化速度を速くする材料としては、Gaがある。Gaは、同量のInに比べ、結晶化速度をより速くするが、結晶化温度もより高くなる。例えば、Geが5at%で、Gaが5at%以上になると結晶化温度が200℃をはるかに超えて、250℃以上にもなる。これにより、相変化型光記録層を非晶質状態から結晶化させるための初期化過程において、トラック一周の反射率分布が大きくなり、記録特性、データエラーの原因になるため、Gaは、結晶化速度を速くさせるための補助的な元素として、3at%以下添加するのが良い。
【0098】
AgInSbTeGe系は、高線速な材料としては限界があり、Ag,Inに代わる元素を検討した結果、結晶化速度を速くするが、結晶化温度を必要以上に上げない元素として、Mnが効果的であることが判った。Mnは、Inと同じく結晶化速度を上げ、多量に入れても繰り返し記録特性を劣化させずに保存特性も良好である。また、Mnは、結晶化温度も上げるが、添加量に対する結晶化温度の増加量は小さく、再生光劣化も小さい。本実施の形態では、Mnを、多くて5at%入れれば充分である。このように、GeMnSbTe系も高線速に適した材料である。
【0099】
さらに、Gaを添加し結晶化速度と保存性を向上させる系も有効である。
【0100】
上述したような材料系によって形成される相変化型光記録層の膜厚は、10nmから20nmがよい。10nm以下では、結晶と非晶質相の反射率差が小さくなり、20nm以上に厚くなると記録感度、繰り返し記録特性が悪くなる。
【0101】
上述した相変化型光記録媒体には、ピッチ0.74μm,深さ15nm〜45nm,幅0.2〜0.3μmに設定されて、約820kHzの周期で5nmから20nmの振幅をもつ蛇行状とされた溝が設けられている。
【0102】
上述した光ディスク2に対して記録再生を行なう光ディスク装置1におけるスピンドルモータ3は、光ディスク装置1が備えるマイコン4によって駆動制御されるモータドライバ5とサーボ手段6とによって、線速度一定(CLV)または回転数一定(CAV)となるように制御される。
【0103】
マイコン4は、光ディスク装置1が備える各部を駆動制御するCPU(Central Processing Unit)7に、各種コンピュータプログラム等の固定的なデータを格納するROM(Read Only Memory)8と、CPU7のワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)9とを接続することによって構成されている。CPU7は、計時機能を有しており、光ディスク2に対する記録再生に際して周期Tの基準クロックを発生させる。このため、本実施の形態ではCPU7によってクロック発生手段としての機能が実現される。
【0104】
光ディスク装置1は、スピンドルモータ3によって回転駆動される光ディスク2に対して照射するレーザ光を出射する図示しない半導体レーザを有する光ピックアップ10を備えている。特に図示しないが、光ピックアップ10は、半導体レーザ、光学系、フォーカシングアクチュエータ、トラッキングアクチュエータ、受光素子、ポジションセンサ等を内蔵している。また、光ピックアップ10は、図示しないシークモータによってスレッジ方向(ディスク半径方向)に移動可能とされている。
【0105】
フォーカシングアクチュエータ、トラッキングアクチュエータ、シークモータは、モータドライバ5とサーボ手段6とによって駆動制御される。モータドライバ5、サーボ手段6は、受光素子やポジションセンサから得られる信号に基づいて、レーザスポットを光ディスク2上の目的の場所に位置させるように、フォーカシングアクチュエータ、トラッキングアクチュエータ、シークモータを駆動制御する。
【0106】
光ディスク装置1におけるデータの再生に際しては、モータドライバ5とサーボ手段6とによりフォーカシングアクチュエータ、トラッキングアクチュエータ、シークモータを駆動制御して、半導体レーザから出射されて光学系によって導かれるレーザ光を、光ディスク2にレーザスポットとして照射させる。
【0107】
一般的に、光ディスク2は、400〜780nmの波長範囲での記録再生が可能であるが、本実施の形態では光ディスク2としてDVDを例示しているため、本実施の形態の光ディスク装置1では、波長が650nmから660nmのレーザ光を半導体レーザから出射する。また、光ピックアップ10における図示しない対物レンズの開口率は、0.60〜0.65の範囲に設定されており、光ディスク2にレーザスポットとして照射されるレーザ光のビーム径が1μm以下とされている。
【0108】
光ディスク2に照射されたレーザ光は、反射層によって反射され、光学系によって所定の光路に導かれて受光素子で受光される。光ピックアップ10は、受光素子が受光した光信号を再生信号として取得する。
【0109】
光ピックアップ10で得られた再生信号は、リードアンプ11で増幅されて2値化された後、DVDデコーダ12に入力される。DVDデコーダ12に入力された2値化データは、DVDデコーダ12でEFM(Eight to Fourteen Modulation)復調される。
【0110】
光ディスク2に記録されているデータは、8ビットずつまとめられてEFM変調されているため、DVDデコーダ12では、8ビットを14ビットに変換し、結合ビットを3ビット付加して合計17ビットにする。このとき、結合ビットは、それまでの「1」と「0」との数が平均的に等しくなるように付けられる。この処理を「DC成分の抑制(DCカット)」といい、DC成分を抑制(DCカット)することで、再生信号のスライスレベル変動が抑圧される。
【0111】
復調されたデータは、デインターリーブとエラー訂正の処理が行われて、DVD−ROMデコーダ13に入力される。DVD−ROMデコーダ13では、データの信頼性を高めるためのエラー訂正処理が行われる。
【0112】
このように、2回のエラー訂正の処理が行われたデータは、バッファマネージャ14によって一旦バッファRAM15に蓄積される。バッファRAM15に蓄積されたデータは、セクタデータとして揃ったときに、ATAPI/SCSIインターフェイス16によって、セクタデータとして揃った状態で図示しない外部装置へ一気に転送される。
【0113】
なお、音楽データの場合、DVDデコーダ12から出力されるデータは、D/Aコンバータ17に入力され、D/Aコンバータ17からアナログのオーディオ信号として取り出される。
【0114】
一方、ユーザデータの記録に際しては、ATAPI/SCSIインターフェイス16を介して、図示しない外部装置からユーザデータが転送されてくる。外部装置から転送されてきたユーザデータは、バッファマネージャ14によって、バッファRAM15に一旦蓄積される。ユーザデータの記録は、バッファRAM15にある程度のユーザデータが溜まったときに開始される。バッファRAM15のデータは、DVD−ROMエンコーダ18やDVDエンコーダ19でエラー訂正コードの付加やインターリーブが行われ、レーザコントローラ20、光ピックアップ10を介して光ディスク2に記録される。
【0115】
光ディスク装置1は、ユーザデータの記録に先立って、レーザスポットを書き込み開始地点に位置させ、光ディスク2に設けられた溝の蛇行によって該光ディスク2に予め刻まれているウォブル信号に基づいて、書き込み開始地点を求める。一般的に、ウォブル信号には、ADIP(Address in pre−groove)が含まれており、再生に際しては、蛇行する溝の周波数の位相を変調させて、この位相変化部分を検出し、2値化信号に変換することでアドレス(番号)を読み取る。ウォブル信号からADIPデコーダ21によって取り出されるADIPの情報に基づいて書き込み開始地点が求められる。
【0116】
本実施の形態の光ディスク装置1は、ユーザデータの記録に際して、光ディスク2に対して、0.267μm/bitの記録線密度で、(8−16)変調方法で記録を行なう。このときの最短記録マーク長は0.4μmになる。
【0117】
ユーザデータの記録に際しては、ATAPI/SCSIインターフェイス16を介して外部装置から送られてきたデータを一旦バッファRAM15に蓄えてから記録を開始するが、この記録に先立って、当該光ディスク2のPCA(Program Calibration Area)においてOPCを行い、半導体レーザの最適な記録パワーを求める。
【0118】
公知の技術であるため説明を省略するが、OPCの実行に際しては、例えば、光ディスク2のPCAにおいて、1ブロック毎に(1ステップ毎に)半導体レーザの記録パワーを増加させながら、所定回数分に相当する所定ブロック(例えば、15ブロック)分の試し記録を行ない、続いて、試し記録した領域を再生することにより光ピックアップ10において得られる反射光に応じたデータ信号をリードアンプ11によって増幅し、増幅したデータ信号から検出されるピークレベルやボトムレベル等のレベル信号をA/D変換し、それを基に、CPU7等でRF信号対称性を表すβ値を測定し、β値が目標値に最も近いブロックで使用された記録パワーを最適記録パワーとして決定する。
【0119】
なお、このOPC実行時には、光ディスク2は線速度一定なるCLV方式により回転駆動される。このような方法で最適記録パワーを計算しレーザコントローラ20に記録パワーの指令を出す。
【0120】
詳細は後述するが、レーザコントローラ20は、計算された記録パワーに基づいて、半導体レーザから出射するレーザ光量を調整する。このため、本実施の形態では、レーザコントローラ20によって記録手段としての機能が実現される。また、レーザコントローラ20は、光ディスク2に記録された記録マークを消去する消去パワーPeのレーザ光や、光ディスク2に記録された記録マークを再生する再生パワーPrのレーザ光を半導体レーザから出射させるように半導体レーザを駆動制御する。このため、本実施の形態では、レーザコントローラ20によって、消去手段および再生手段としての機能が実現される。
【0121】
なお、DVDの2倍速は、線速7m/s(6.98m/s)であり、基準クロック周波数は52.3MHz(T:19.1ns,Tは、基準クロックの周期)になる。また、DVDの4倍速では、線速14m/s(13.96m/s)になり基準クロック周波数は104.6MHz(T:9.56ns)である。
【0122】
このような光ディスク装置1において、上述した光ディスク2を、最適消去パワー以上の一定の消去パワーで消去するとともに記録線速を低い線速から高い線速まで変化させ、このときの反射信号をモニターしたところ、消去前は結晶状態にあった相変化型光記録層がある線速以上になると非晶質相となり、以降線速が増えるとともに非晶質相領域が広がり反射率が減少することが判った。
【0123】
以降、反射率が下がり始める線速を結晶から非晶質相に転移する線速ということで転移線速、または、ある線速以下では溶融後再結晶化するという意味で、再結晶化上限速度と呼び符号Vcを付して説明する。
【0124】
ところで、例えば、1−2.4倍速記録に際しての最大記録パワーが15mWである光ディスク装置1において4倍速記録するためには15mW以上の記録パワーが必要となる。これに対し、15mWで4倍速記録する光ディスク装置1において1−2.4倍速記録する場合には、15mW以下で記録されなければならない。
【0125】
なお、本実施の形態で用いる光ディスク2の構成は、上述した光ディスク装置を用いて、最低線速(min線速)を3.49m/s,最高線速(max線速)を13.96m/sとして12mWで消去する場合の再結晶化上限速度Vcが以下に示す(1)式を満たすような範囲となるように設定されている。
(max線速+min線速)/2<Vc<{(max線速+min線速)/2}+3 …(1)
【0126】
再結晶化上限速度Vcの最適範囲は、9.0m/sから10.5m/sであることが好ましい。
【0127】
光ディスク2の再結晶化上限速度を上述した(1)式に示す範囲内に設定することにより、高線速記録対応の光ディスクに対して低速ドライブでの記録を可能とする、すなわち、下位互換を可能としている。
【0128】
ところで、従来の光ディスク装置では、上述したような光ディスク2に対して、図10に示すようなパルス列にしたがう発光波形のレーザ光を照射する。ここで、図10は、従来光ディスク装置で用いられてきた発光波形を示している。図10に示すように、半導体レーザから照射されるレーザ光の照射パワーは、記録パワーPw、消去パワーPe、および、ボトムパワーPbに分類される。相変化型光記録層を加熱するための記録パワーPwは、先頭部における幅OP1の加熱パルス、中間部における幅OPj(j=2〜m−1)の加熱パルス、および、後端部における幅OPmの加熱パルスにおいて照射される。ボトムパワーPbは、先端部における幅FP1の冷却パルス、中間部における幅FPjの冷却パルス、後端部における幅FPmの冷却パルスにおいて照射される。このとき、中間部においてそれぞれ対をなす幅OPjの加熱パルスと幅FPjの冷却パルスとの時間の和はTになっている。パルス列におけるパルス数は、記録マーク長nTに対し、(n−1)個である。
【0129】
なお、パルスの数は(n−2)個でも良いが、本実施の形態では、記録マーク長制御をしやすい(n−1)個とする。
【0130】
先頭部の加熱パルスの開始時間は、形成される記録マークの先端である0Tから1Tまでの範囲に設定されている。
【0131】
図10に例示するようなパルス列にしたがう発光波形では、Δ2=0、Δ1を最大0.5*T、Δ3を−0.3〜0.2Tの範囲で調整することで、所定の長さの記録マークを記録することができる。ここで、記録マークの後端位置を0とし、この0を基準として記録マークの内側を+、外側を−とする。
【0132】
しかしながら、図10に例示するようなパルス列にしたがう発光波形では、線速2.4倍速までは良好な繰り返し記録特性を得ることができるが、記録線速が速くなって4倍線速度(14m/s)になってくると、所定の長さ(3Tから14T)の記録マークが形成しにくくなり、十分な記録特性を得ることが難しくなってくる。これは、結晶化速度が速くなることによって、記録マークが一旦形成された後に再結晶化する速度が速くなるためである。
【0133】
この対策として、先端部における加熱パルスの幅OP1,中間部における加熱パルスの幅OPj,後端部における加熱パルスの幅OPmを狭くし加熱時間を短くすることで相変化型光記録層を短時間で溶融させ、先端部における冷却パルスの幅FP1,中間部における冷却パルスの幅FPj,後端部における冷却パルスの幅FPmを広くし冷却時間を長くすることで、相変化型光記録層の再結晶化を抑えることが考えられるが、この方法では、相変化型光記録層を短時間で溶融させるために記録パワー(Pw)をより高くすることが必要となるため、光ディスク装置の記録パワーの上限値によってはパワーが不足してしまう。
【0134】
また、図10に示すような発光波形例では、低速側でも同様に、線速が高くなるほど相変化型光記録層が非晶質相を形成しやすくなり、繰り返し記録に際して先に記録されている記録マークを消去する消去比が悪くなって、2回目以降の記録特性(繰り返し記録特性)が悪くなる傾向がある。
【0135】
この対策としては、消去パワーを高くして消去比を上げることが良いが、消去パワーをあまり高くすると非晶質相が形成されやすくなり、ますます消去できない状態になる。加えて、消去パワーは、低すぎると記録マークを消去しにくい。特に、一旦、相変化型光記録層を溶融状態にしてから徐冷させる過程における消去が確実であるが、消去パワーを低くする場合にはこの過程を使えない。
【0136】
つまり、図10に示すような従来の発光例では、例えば、4倍速等の高線速になると最終冷却パルス部を長くとれない。一方で、低記録線速側では冷却パルス時間が必要となる。
【0137】
これに対して、本実施の形態では、図10中のパルス列の冷却パルスにおける照射パワーPbを、図2中のパルス列の後端部の冷却パルスにおいて光ピックアップ10から照射させる光の照射パワーPb1と、先頭部および中間部の冷却パルスにおいて光ピックアップ10から照射させる光の照射パワーPb2とに2値化し、照射パワーPb1と照射パワーPb2とを異ならせ、照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係が以下に示す(2)式および(3)式によって示される関係となるようにする。
Pw>Pe≧Pb1>Pb2 …(2)
Pb1>Pr≧Pb2 …(3)
【0138】
ここで、Pwはパルス列中の加熱パルスにおいて光ピックアップ10から照射させる光の照射パワーであり、Peは光ピックアップ10から照射させることにより光ディスク2に記録された記録マークを消去する照射パワーであり、再生に際して光ピックアップ10から照射させる光の照射パワーである。
【0139】
このように、ボトムパワーPbをPb1とPb2とに2値化することにより、低線速で低パワーでの記録を可能にするために設定されている光ディスク2に対して再結晶化速度以上の高線速で記録する場合にも、非晶質相を形成し易くすることができるので、下位互換性の高い光ディスク2に対する高線速記録を実現することができる。
【0140】
また、照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を(2)式および(3)式によって示される関係となるようにすることにより、高線速になる程非晶質相を形成し易くしているため繰り返し記録(オーバーライト)に際しての消去比が低下するような光ディスク2に対しても、繰り返し記録に際しての消去比を向上させることができ、これによって、繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0141】
ところで、光ディスク2に対する記録が可能な記録線速をVとすると、本実施の形態では、上述した(2)式および(3)式によって示される関係は、記録線速Vが中間線速から最高線速Vmaxまでの範囲において満足される。本実施の形態では、8.8m/sを中間線速とする。
【0142】
(2)式および(3)式によって示される関係が満足される場合の照射パワーPb1は、以下に示す(3)式の関係で表わされる。
Pb1=Pb2+(Pe−Pb2)*(2V−Vmax)/Vmax …(3)
【0143】
そして、記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲における照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係は、以下に示す(4)式によって表わされる。
Pb1=Pb2 …(4)
【0144】
このように、記録線速に応じて、照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を調整することにより、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、特に、高線速側での繰り返し記録に際しての消去比を向上させることができ、これによって、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0145】
図2に示すパルス列において、先頭部の加熱パルスにおいて光ピックアップ10から照射させる照射パワーPw1と、中間部の加熱パルスにおいて光ピックアップ10から照射させる照射パワーPw2と、後端部の加熱パルスにおいて光ピックアップ10から照射させる照射パワーPw3とは、すべて同じであっても、すべて異なっていても、さらには、2つが同じであっても(Pw1≠Pw2=Pw3、Pw1=Pw2≠Pw3)よく、いずれの場合にも図10に示すパルス列にしたがう発光波形と比較して繰り返し記録特性を改善することができる。なお、基本は、照射パワーPw1,Pw2,Pw3は、すべて同じパワーとする。
【0146】
図2のパルス列において先頭部の加熱パルス幅OP1は、以下に示す(6)式の範囲で調整される。
0.3T≦OP1≦0.8T …(6)
【0147】
このとき、図2のパルス列において中間部および後端部の加熱パルス幅OPj,OPmは、記録線速Vに応じて以下に示す(7)式または(8)式の範囲となるように調整される。
【0148】
すなわち、記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲では(7)式の範囲で調整され、記録線速Vが中間線速度から最高線速までの範囲では(8)式の範囲で調整される。
0.2T≦OPj,OPm≦0.6T …(7)
0.3T≦OPj,OPm≦0.7T …(8)
【0149】
このように、先頭部の加熱パルス幅OP1に加えて、中間部および後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを記録線速Vに応じて制御することにより、記録線速Vに依存することなく良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0150】
また、光ピックアップ10は、記録に際して、図2に示すパルス列における先頭部の加熱パルス,中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させる(図2中dTtop,dTmp,dTlp参照)。なお、マイナスは、記録マークの内側を示している。
【0151】
これにより、記録マークが不用意に長くなることを抑制し、記録マーク長を制御することができる。
【0152】
特に、先頭部の加熱パルスの開始時間を、基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させることにより、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0153】
また、中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間も、同様に、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0Tの間で変動させることにより、良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0154】
パルス列における加熱パルス幅OPjとパルス列における冷却パルス幅FPjとの関係が、OPj+FPj=Tとなる場合は、より良好な繰り返し記録特性が得られ易い。
【0155】
ただし、後端部の冷却パルスの幅FPmは、高い線速になるほど短くすることが良い。このため、本実施の形態では、後端部の冷却パルスの幅FPmの最適範囲が、以下に示す(9)式によって示される関係となるようにする。
0≦FPm≦1.5T …(9)
【0156】
これにより、高線速記録である程短くする方が好ましい後端部の冷却パルスを制御することができ、記録マーク長の制御が可能になる。
【0157】
なお、本実施の形態では、後端部の冷却パルスの幅FPmの最適範囲を(9)式によって示される範囲内としたが、好ましくは、0≦FPm≦1Tが良い。
【0158】
また、後端部の冷却パルスは、高線速記録である程短くする方が好ましいことから、最高線速では0Tでも良い。
【0159】
加えて、図2中のdTe(+が記録マークの内側、−が記録マークの外側)は、FPmと関係しており、FPmはdTe、OPm、dTlpから決めることもできる。
【0160】
本実施の形態では、記録に際しての発光波形を以下に示すように調整することにより、例えば、記録パワーや消去パワーの限られた2.4倍速までのドライブでも4倍速での記録ができる、すなわち、下位互換性を確保し、低いパワーでも高速記録することができる。
【0161】
次に、本発明の第2の実施の形態について図3を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0162】
図3は、本実施の形態の光ディスク装置の発光波形を示している。本実施の形態では、照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を記録線速Vに依らず、Pb1=Pb2とし、パルス列における先頭部の加熱パルス,中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させる。
【0163】
これにより、照射パワーPb1と照射パワーPb2と記録線速Vに依らず等しくすることにより、図2に示すように、Pbを2値で制御する場合と比較して、光ピックアップ10の駆動制御を容易化し、レーザコントローラを構成する回路の複雑化を抑制しながら、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0164】
特に、先頭部の加熱パルスの開始時間を、前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させることで、記録マークの先端部をより正確に制御することができ、好ましい。
【0165】
また、本実施の形態では、記録に際して、光ディスク2に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeと記録パワーPwとの比Pe/Pwを、記録パワーPw毎に変えるように半導体レーザを駆動制御する。
【0166】
ここで、従来では、記録パワーPwと消去パワーPeの比を一定にして、記録パワーPwと該記録パワーPwの変化とともに決まる消去パワーPeとによって記録消去を行っていたが、Pe/Pwを一定にした場合には低い記録パワーでの記録に際しての消去パワーも低下するために2回目記録(繰り返し記録1回目)の記録特性が劣化するという不具合がある。
【0167】
また、従来では、消去パワーの低下を防止するために消去パワーを一定にした場合、高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合がある。
【0168】
これに対し、本実施の形態では、Pe/Pwを、記録パワーPw毎に変えることにより記録パワーに依らず繰り返し記録特性を改善することができる。このとき、記録パワー毎に最適な消去パワーを設定する方がより好ましい。
【0169】
加えて、本実施の形態の光ディスク装置1では、光ディスク2に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲では、消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とする。
【0170】
これにより、低記録パワー側で求められる消去パワーに固定すると高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とすることで、消去パワーPeを一定にした場合にも消去パワーを不足させることなく、処理を容易化することができる。
【0171】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0172】
(実施例1)
実施例1では、ピッチが0.74μm,幅が0.25μm,深さが25nmに設定された溝が形成された厚さ0.6mmのポリカーボネート製透明基板の上に、スパッタリング方式により以下に示す条件に設定した下部誘電体層,相変化型光記録層,界面層,上部誘電体保護層,硫化防止層,反射層等の各層を積層し、光ディスク2を作製した。
【0173】
下部誘電体保護層は、ZnS:SiO2=80:20(mol%)系の材料によって形成し、膜厚を68nmとした。
【0174】
相変化型光記録層は、Ge:Ag:In:Sb:Te=3:1:3:73.0:20.0系の材料によって形成し、下部誘電体保護層上に膜厚を15nmに設定して積層した。
【0175】
界面層は、ZrO2:TiO2:Y2O3=67:30:3系の材料によって形成し、相変化型光記録層の上に膜厚2nmに設定して積層した。
【0176】
上部誘電体保護層は、ZnS:SiO2=80:20(mol%)系の材料によって形成し、膜厚11nmに設定した。
【0177】
硫化防止層としては、膜厚4nmに設定したSiC層を上部誘電体保護層の上に積層した。
【0178】
反射層は、Ag系の材料によって形成し、硫化防止層上に膜厚140nmで積層した。なお、Agの製膜に際しては、スパッタ投入パワーを3kWとした。
【0179】
加えて、耐環境性を向上させるために、大日本インキ製SD318紫外線硬化樹脂を塗布後、硬化させ5μm厚として保護膜を設けた後、いずれの層も製膜されていないポリカーボネート製透明基板を、厚さ40μmに塗布された紫外線硬化樹脂(アクリル製、日本化薬 DVD003)を介して貼合わせて光ディスク2とした。
【0180】
このような光ディスク2に対して、波長810nmの大口径LD(ビーム径;トラック方向1μm×半径方向75μm)を用いてレーザ光を照射して相変化型光記録層を結晶化させた。このときの線速は9m/s,パワーは1000mW、ヘッドの送り速度は18μm/回転とした。
【0181】
続いて、上述の光ディスク2を用いて記録再生を行なった。このとき、波長657nm,対物レンズのNAが0.65に設定された光ピックアップ10を用い、最高線速度14m/sで記録密度が0.267μm/bitとなるように設定した。このときの記録データの変調方式は(8,16)変調とし、バイアスパワーPb2は0.1mWとし、バイアスパワーPb1は3mWとし、Pe/Pw=0.335とした。なお、OPj+Fpj=Tに設定されている。
【0182】
記録方法は、図2に示すパルス列にしたがう記録波形にて行った。このときの記録条件を表1に示す。この結果を図4に示す。図4は、表1に示す条件で、隣接する5トラックの記録を行なった場合の中心トラックのdata to clockジッターの記録パワー依存性を示している。
【0183】
【表1】
【0184】
(実施例2)
実施例2の光ディスク2は、相変化型光記録層をGe:Ag:In:Sb:Te=3.0:1.0:2.5:72.5:21.0系の材料によって形成した以外は、実施例1の光ディスク2と同様の構成を有する。
【0185】
実施例2では、光ディスク2の相変化型光記録層の結晶化に際しての照射パワーPb1を2mWに設定した以外は、実施例1と同様にして結晶化した。
【0186】
このような光ディスク2に対して、表2に示す記録条件で記録を行ない、実施例1と同様に、隣接する5トラックを記録した場合の中心トラックのdata to clock ジッターの記録パワー依存性を調べた。その結果を図5に示す。
【0187】
【表2】
【0188】
(実施例3)
実施例3の光ディスク2は、相変化型光記録層をGe:Ag:In:Sb:Te=3.0:1.0:2.5:72.5:21.0系の材料によって形成した以外は、実施例1の光ディスク2と同様の構成を有する。
【0189】
実施例3では、光ディスク2の相変化型光記録層の結晶化に際しての照射パワーPb1,Pb2を0.1mWに設定し、図3に示すパルス列にしたがう記録波形にて行った。このとき、記録パワーPwおよび消去パワーPeは、記録パワーPw毎に最適化した。なお、記録パワーPwが15mWの場合の消去パワーPeを5.0mWとし、Pe/Pw=0.33となるようにした。また、記録パワーPwが19mWの場合の消去パワーPeを5.5mWとし、Pe/Pw=0.29となるようにした。
【0190】
このような光ディスク2に対して、表3に示す記録条件で記録を行ない、実施例1と同様に、隣接する5トラックを記録した場合の中心トラックのdata to clock ジッターの記録パワー依存性を調べた。その結果を図6に示す。
【0191】
【表3】
【0192】
(実施例4)
実施例4の光ディスク2は、相変化型光記録層をGe:Ag:In:Sb:Te=3.0:1.0:2.5:72.5:21.0系の材料によって形成した以外は、実施例1の光ディスク2と同様の構成を有する。
【0193】
実施例4では、実施例3と同様にして相変化型光記録層の結晶化を行なった。このとき、消去パワーPeを5.7mW一定とした。
【0194】
このような光ディスク2に対して、表4に示す記録条件で記録を行ない、実施例1と同様に、隣接する5トラックを記録した場合の中心トラックのdata to clock ジッターの記録パワー依存性を調べた。その結果を図7に示す。
【0195】
【表4】
【0196】
(実施例5)
実施例5では、実施例4と同様の光ディスク2を用いて、表5に示す記録条件で2.4X記録を行ない、実施例1と同様に、隣接する5トラックを記録した場合の中心トラックのdata to clock ジッターの記録パワー依存性を調べた。その結果を図8に示す。表5に示す記録条件は下位の記録ドライブにおける記録条件であり、記録パワーも下位の記録ドライブにおける記録パワー範囲を示している。
【0197】
【表5】
【0198】
図4ないし図8に示すように、いずれも繰り返し記録1回目(DOW1)、繰り返し記録1000回目(DOW1000)の記録パワーマージンが広くなっていることが判る。また、ジッター特性の基準値が9%以下であることが判る。また、表5から判るように、記録パワーPwが15mW以下において、記録パワーに対するマージンが確保できていることが判る。
【0199】
(比較例)
比較例として、実施例1と同様の光ディスク2を用い、図10に示すパルス列にしたがう発光波形により表6に示す記録条件で記録を行なった。このとき、Δ2=0とする。また、消去パワーPeは、記録パワーPwに対してPe/Pw=0.30となるようにした。その結果を図9に示す。
【0200】
【表6】
【0201】
なお、上述した実施例で示した4倍速記録は、CLV記録における条件である。設定された記録線速範囲内の任意の線速でCLV記録する場合は、(i*T/a)+j(i=1,2,…、j=2,3,…)(単位はns)として、パルス幅を設定する。例えば、a=6とした場合、パルス幅の精度を上げるためにはaを2倍の12とすればよい。
【0202】
このように、基準クロックの周期Tに比例する量でパルス幅およびパルス開始時間あるいは終了時間を決めたり、基準クロックの周期Tに比例する量と一定時間との和でパルス幅およびパルス開始時間あるいは終了時間を決めたりすることにより、CAVでも記録も可能となる。
【0203】
CAV記録は、中間線速から最高線速までと、最低線速から中間線速までの各線速範囲で可能であり、さらに最低線速から最高線速までの線速範囲でも可能である。
【0204】
中間線速から最高線速の場合は、一定のパルス幅、例えば、中間加熱パルス幅をb*T(b=0.1、0.2,0.4,0.5…の中から任意の定数を選択)固定とすれば、各線速に相当する基準クロックの周期Tで決まるため、連続的に線速が変わっても記録が可能である。
【0205】
【発明の効果】
請求項1記載の発明の光記録装置によれば、低線速で低パワーでの記録を可能にする再結晶化速度が設定されている相変化型光記録媒体に対して、設定されている再結晶化速度以上の高線速で記録する場合にも、非晶質相を形成し易くすることができるので、下位互換性の高い相変化型光記録媒体に対する高線速記録を実現することができる。
【0206】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の光記録装置において、高線速になる程非晶質相を形成し易くしているために繰り返し記録(オーバーライト)に際しての消去比が低下するような相変化型光記録媒体に対しても、繰り返し記録に際しての消去比を向上させ、繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0207】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の光記録装置において、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、特に、高線速側での繰り返し記録に際しての消去比を向上させ、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0208】
請求項4記載の発明によれば、請求項1、2または3記載の光記録装置において、記録マーク長を制御して記録マークが不用意に長くなることを抑制することにより、1回目の記録時よりも劣化し易い2回目の記録に際してのジッター特性の劣化を抑制することができる。
【0209】
請求項5記載の発明によれば、請求項1ないし4のいずれか一に記載の光記録装置において、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0210】
請求項6記載の発明によれば、請求項1ないし5のいずれか一記載の光記録装置において、基本的には、照射パワーPw1,Pw2,Pw3を同じとするが、いずれの場合にも繰り返し記録特性を改善することができる。
【0211】
請求項7記載の発明によれば、請求項1ないし6のいずれか一に記載の光記録装置において、先頭部の加熱パルス幅OP1に加えて、中間部および後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを記録線速Vに応じて制御することにより、記録線速Vに依存することなく良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0212】
請求項8記載の発明によれば、請求項1ないし7のいずれか一に記載の光記録装置において、高線速記録である程、短くする方が好ましい後端部の冷却パルスを制御することで、記録マーク長を制御して、良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0213】
請求項9記載の発明によれば、請求項1または2記載の光記録装置において、照射パワーPb1と照射パワーPb2と記録線速Vに依らず等しくすることで光ピックアップの駆動制御を容易化しつつ、先頭部の加熱パルス,中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間を制御することで、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0214】
請求項10記載の発明によれば、請求項9記載の光記録装置において、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0215】
請求項11記載の発明によれば、請求項9または10記載の記録装置において、Pe/Pwを一定にした場合には低い記録パワーでの記録に際しての消去パワーも低下するために2回目記録(繰り返し記録1回目)の記録特性が劣化し、消去パワーの低下を防止するために消去パワーを一定にした場合には高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、Pe/Pwを記録パワーPw毎に変えることにより記録パワーPwに依らず繰り返し記録特性を改善することができる。
【0216】
請求項12記載の発明によれば、請求項1ないし11のいずれか一に記載の記録装置において、低記録パワー側で求められる消去パワーに固定すると高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とすることで、消去パワーPeを一定にした場合にも消去パワーを不足させることなく、処理を容易化することができる。
【0217】
請求項13記載の発明の光記録方法は、低線速で低パワーでの記録を可能にする再結晶化速度が設定されている相変化型光記録媒体に対して、設定されている再結晶化速度以上の高線速で記録する場合にも、非晶質相を形成し易くすることができるので、下位互換性の高い相変化型光記録媒体に対する高線速記録を実現することができる。
【0218】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の光記録方法において、高線速になる程非晶質相を形成し易くしているために繰り返し記録(オーバーライト)に際しての消去比が低下するような相変化型光記録媒体に対しても、繰り返し記録に際しての消去比を向上させ、繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0219】
請求項15記載の発明は、請求項13または14記載の光記録方法において、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、特に、高線速側での繰り返し記録に際しての消去比を向上させ、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0220】
請求項16記載の発明は、請求項13、14または15記載の光記録方法において、記録マーク長を制御して記録マークが不用意に長くなることを抑制することにより、1回目の記録時よりも劣化し易い2回目の記録に際してのジッター特性の劣化を抑制することができる。
【0221】
請求項17記載の発明は、請求項13ないし16のいずれか一に記載の光記録方法において、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0222】
請求項18記載の発明は、請求項13ないし17のいずれか一記載の光記録方法において、基本的には、照射パワーPw1,Pw2,Pw3を同じとするが、いずれの場合にも繰り返し記録特性を改善することができる。
【0223】
請求項19記載の発明は、請求項13ないし18のいずれか一に記載の光記録方法において、先頭部の加熱パルス幅OP1に加えて、中間部および後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを記録線速Vに応じて制御することにより、記録線速Vに依存することなく良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0224】
請求項20記載の発明は、請求項13ないし19のいずれか一に記載の光記録方法において、高線速記録である程短くする方が好ましい後端部の冷却パルスを制御することで、記録マーク長を制御して、良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0225】
請求項21記載の発明は、請求項13または14記載の光記録方法において、照射パワーPb1と照射パワーPb2と記録線速Vに依らず等しくして光ピックアップの駆動制御を容易化しつつ、先頭部の加熱パルス,中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間を制御することで、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0226】
請求項22記載の発明は、請求項21記載の光記録方法において、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0227】
請求項23記載の発明は、請求項21または22記載の記録方法において、Pe/Pwを一定にした場合には低い記録パワーでの記録に際しての消去パワーも低下するために2回目記録(繰り返し記録1回目)の記録特性が劣化し、消去パワーの低下を防止するために消去パワーを一定にした場合には高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、Pe/Pwを記録パワーPw毎に変えることにより記録パワーに依らず繰り返し記録特性を改善することができる。
【0228】
請求項24記載の発明は、請求項13ないし23のいずれか一に記載の記録方法において、低記録パワー側で求められる消去パワーに固定すると高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とすることで、消去パワーPeを一定にした場合にも消去パワーを不足させることなく、処理を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の光ディスク装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】半導体レーザから照射するレーザ光の発光波形を示す説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の光ディスク装置が半導体レーザから照射するレーザ光の発光波形を示す説明図である。
【図4】実施例1においてdata to clockジッターの記録パワー依存性を示すグラフである。
【図5】実施例2においてdata to clockジッターの記録パワー依存性を示すグラフである。
【図6】実施例3においてdata to clockジッターの記録パワー依存性を示すグラフである。
【図7】実施例4においてdata to clockジッターの記録パワー依存性を示すグラフである。
【図8】実施例5においてdata to clockジッターの記録パワー依存性を示すグラフである。
【図9】比較例においてdata to clockジッターの記録パワー依存性を示すグラフである。
【図10】半導体レーザから照射するレーザ光の従来の発光波形を示す説明図である。
【符号の説明】
1 光記録装置
3 相対移動手段
10 光ピックアップ
20 記録手段、消去手段、再生手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、光記録装置および光記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年では、画像データ等のように大容量のデータを扱うようになってきている。このため、今後、大容量の記録媒体がますます要求されるのは言うまでもない。
【0003】
このような大容量のデータの扱いに際しては、データの記録再生を高速化することが要求されている。そして、大容量であるとともに高速記録が可能であり、また、CD−ROM,DVD−ROM等の記録媒体との互換性が高いことから、CD,DVD等の記録媒体の中で書き換え型の記録媒体として用いられている相変化型光記録媒体が普及してきている。
【0004】
CD,DVDの書き換え型記録媒体である相変化型光記録媒体に対しては、CD−ROM,CD−Rにおける著しい高速化に伴い、さらなる高速化が要求されている。
【0005】
ところで、高速(高線速)記録に対応した記録媒体は、低速(低線速)記録に対応した記録媒体に対応する低速ドライブでも記録できることが望ましい。高線速記録に対応している記録媒体であるCD−Rは、低速ドライブでも記録することが可能であり、広い線速範囲での記録をカバーできている。
【0006】
ここで、高線速で記録するためには、より高い記録パワーの出せるレーザが必要になるが、低速ドライブに搭載されているレーザ光のパワーは、高線速記録に対応した高速ドライブに搭載されているレーザ光のパワーより低いのが普通である。このため、高線速記録に対応した相変化型光記録媒体に対して、低線速でより低い記録パワーで記録を行なうことは、カバーしようとする記録線速範囲が広がれば広がるほど難しくなる。
【0007】
また、CD,DVDの書き換え型記録媒体として用いられている相変化型光記録媒体では、CD−ROMあるいはDVD−ROMとの互換を確保する必要があるため高い感度を維持する必要があり、例えば、反射率を極端に下げるといった対策を講じることはできない。
【0008】
ここ数年の間に商品化されている相変化型光記録媒体としての書き換え可能型DVDにおいては、2.4Xが最高線速であり、これより高線速に対応した相変化型光記録媒体およびこの相変化型光記録媒体に対応したドライブはない。また、2.4Xに対応した高線速記録対応の相変化型記録媒体でも、低速ドライブで記録できる、いわゆる、下位互換可能な高線速記録対応の相変化型記録媒体はない。
【0009】
下位互換可能な高線速記録対応の相変化型記録媒体を実現するために、相変化型光記録層に用いられる材料としては、例えば、Ge−Sb−Te,Ag−In−Sb−Te系、Ge−Ag−In−Sb−Te系の材料が挙げられる。中でも、Sb−Te系の状態図に示されているSb:Te=70:30(原子比)付近の共晶組成を基本に、Ag,In、Geを添加したAg−In−Sb−Te系、Ge−Ag−In−Sb−Te系は、高密度、高線速記録をしても繰り返し記録(オーバーライト)特性に優れた記録材料である。また、相変化型光記録層を形成する材料には、高温環境下における記録マークの保存性の高いGe−Ag−In−Sb−Te系の材料が挙げられる。さらに、相変化型光記録層を形成する材料には、Ge−Mn−Sb−Te,Ge−Mn−Sb−Te−Ga系の材料が挙げられる。
【0010】
一方で、高線速記録に対応した記録媒体に対して下位互換を可能とする記録方法として、例えば、書き換え型CDで用いられている方法として、PWM記録の際に変調後信号幅nTの0信号の記録、書き換え時の記録波をeの連続波とし、変調後信号幅nTの1信号の記録、書き換え時の記録パルス列を、時間幅xと値aのfpと、合計時間がTとなる値bと値cとが交互にデューティ比yでn−n’回連続するmpと、時間幅zと値dのopとし、x,y,zを0.5T≦x≦2T、0.4≦y≦0.6、0.5T≦z≦1T、n’をn’≦nの正の整数とし、(a、c)>e>(b、d)とすることで、記録信号品質とオーバーライト繰り返し時の安定性の向上、信頼性、汎用性の向上を達成するようにした技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
特に、書き換え型DVDに対して、CAVで記録特性を得るためのレーザ光のパルス状発光波形におけるパルス幅を制御するようにした技術として、SbTeにAg、Au、Cu、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、N、P、Bi、La、Ce、Gd、Tbのうちの1種以上を添加した相変化型記録を有する光記録媒体を用い、これに記録マークを形成する際、レーザー光の発光波形を複数のオンパルスとこれに続くオフパルスからなる記録パルス列とし、内周から外周あるいは外周から内周へ記録半径位置に対応して連続的に記録周波数ν(ν=1/Tw;Twはウインドウ幅)を変化させて記録することにより、高記録線速度で高密度記録を行なうことができるようにした技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開平9−138947号公報
【特許文献2】
特開2000−322740公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述したように、相変化型光記録層材料や媒体の構成等により高線速記録対応の記録媒体に対する下位互換を可能にした場合、高線速側、特に最高線速側において十分な記録特性が得にくいという問題が生じる。例えば、DVDと等速の線速3.49m/sからその4倍である14m/s(13.96m/s)までの記録線速での記録ができる書き換え型のDVDディスクに対して、等速から2.4倍速(8.44m/s)を下位ドライブで記録する場合、4倍の記録線速のオーバーライト特性が十分でなく、記録パワーに対するマージンが狭くなってしまう。
【0014】
すなわち、下位互換性を優先すると、相変化型光記録媒体の記録線速に対する結晶化速度のうち最高線速に対する結晶化速度が遅くなり、非晶質相が形成され易くなる。このため、繰り返し記録を行なう場合に前の記録マークを消しにくくなり、十分な繰り返し記録特性が得にくくなるのである。
【0015】
これに対し、消去パワーを上げることによって結晶化させ易くすることが可能になるが、消去パワーを必要以上に上げると却って非晶質相を形成させ易くなってしまう。
【0016】
本発明の目的は、下位互換性の高い相変化型光記録媒体に対する高い線速での記録を可能とすることである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明の光記録装置は、相変化型光記録媒体に対して光を照射する光ピックアップと、前記光ピックアップに対して前記相変化型光記録媒体を相対的に移動させる相対移動手段と、周期Tの基準クロックを発生させるクロック発生手段と、前記光ピックアップを駆動制御することで、対をなす加熱パルスOPiと冷却パルスFPiとによって構成される幅T(T=OPi+FPi)のパルス部をi個(i=1,…,m)有して、先頭のパルス部である先頭部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOP1,FP1、続く中間のパルス部である中間部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOPj,FPj(j=2,…,m−1)、後端のパルス部である後端部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOPm,FPm(ただし、m=n−2,nは2以上の整数)とするパルス列にしたがう発光波形の光を前記光ピックアップから照射させることにより、時間的な長さがnTである記録マークを前記相変化型光記録媒体に形成する記録手段と、を具備し、前記記録手段は、前記後端部の冷却パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb1と、前記先頭部および前記中間部の冷却パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb2とを異ならせるようにした。
【0018】
したがって、低線速で低パワーでの記録を可能にする再結晶化速度が設定されている相変化型光記録媒体に対して、設定されている再結晶化速度以上の高線速で記録する場合にも、非晶質相を形成し易くすることができる。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の光記録装置において、消去パワーPeの光を前記光ピックアップから照射させることにより前記相変化型光記録媒体に形成された記録マークを消去する消去手段と、再生パワーPrの光を前記光ピックアップから照射させることにより前記相変化型光記録媒体に形成された記録マークを再生する再生手段と、を具備し、前記記録手段は、前記パルス列中の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPwと、消去パワーPeと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、Pw>Pe≧Pb1>Pb2とし、かつ、再生パワーPrと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、Pb1>Pr≧Pb2とする。
【0020】
したがって、高線速になる程非晶質相を形成し易くしているために繰り返し記録(オーバーライト)に際しての消去比が低下するような相変化型光記録媒体に対しても、繰り返し記録に際しての消去比を向上させることができる。
【0021】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の光記録装置において、前記記録手段は、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速Vmaxまでの範囲における照射パワーPwと、消去パワーPeと、再生パワーPrと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、Pw>Pe≧Pb1>Pb2,Pb1>Pr≧Pb2,ただし、Pb1=Pb2+(Pe−Pb2)*(2V−Vmax)/Vmaxとし、記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲における照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を、Pb1=Pb2とする。
【0022】
したがって、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、特に、高線速側での繰り返し記録に際しての消去比を向上させることができる。
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項1、2または3記載の光記録装置において、前記記録手段は、前記先頭部の加熱パルス,前記中間部の加熱パルス,前記後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させる。
【0024】
したがって、記録マーク長を制御して、記録マークが不用意に長くなることを抑制することができる。
【0025】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか一に記載の光記録装置において、前記記録手段は、前記先頭部の加熱パルスの開始時間を前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させる。
【0026】
したがって、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0027】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか一記載の光記録装置において、前記記録手段は、前記先頭部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw1と、前記中間部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw2と、前記後端部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw3とを、すべて同じとするか、すべて異ならせるか、または、いずれか2つを同じとする。
【0028】
したがって、基本的には、照射パワーPw1,Pw2,Pw3を同じとするが、いずれの場合にも繰り返し記録特性を改善することができる。
【0029】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか一に記載の光記録装置において、前記記録手段は、前記先頭部の加熱パルス幅OP1を0.3T≦OP1≦0.8Tとし、前記中間部および前記後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲では0.2T≦OPj,OPm≦0.6Tとし、記録線速Vが中間線速度から最高線速までの範囲では0.3T≦OPj,OPm≦0.7Tとする。
【0030】
したがって、先頭部の加熱パルス幅OP1に加えて、中間部および後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを記録線速Vに応じて制御することにより、記録線速Vに依存することなく良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0031】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか一に記載の光記録装置において、前記記録手段は、前記後端部の冷却パルス幅FPmを0≦FPm≦1.5Tとする。
【0032】
したがって、高線速記録である程短くする方が好ましい後端部の冷却パルスを制御することで、記録マーク長の制御が可能になる。
【0033】
請求項9記載の発明は、請求項1または2記載の光記録装置において、前記記録手段は、照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を記録線速Vに依らず、Pb1=Pb2とし、前記先頭部の加熱パルス,前記中間部の加熱パルス,前記後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させる。
【0034】
したがって、照射パワーPb1と照射パワーPb2と記録線速Vに依らず等しくすることで光ピックアップの駆動制御を容易化しつつ、先頭部の加熱パルス,中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間を制御することで、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0035】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の光記録装置において、前記先頭部の加熱パルスの開始時間を、前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させる。
【0036】
したがって、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0037】
請求項11記載の発明は、請求項9または10記載の記録装置において、前記記録手段は、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeと記録パワーPwとの比Pe/Pwを、記録パワーPw毎に変える。
【0038】
したがって、Pe/Pwを一定にした場合には低い記録パワーでの記録に際しての消去パワーも低下するために2回目記録(繰り返し記録1回目)の記録特性が劣化し、消去パワーの低下を防止するために消去パワーを一定にした場合には高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、Pe/Pwを記録パワーPw毎に変えることにより記録パワーPwに依らず繰り返し記録特性を改善することができる。
【0039】
請求項12記載の発明は、請求項1ないし11のいずれか一に記載の記録装置において、前記記録手段は、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とする。
【0040】
したがって、低記録パワー側で求められる消去パワーに固定すると高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とすることで、消去パワーPeを一定にした場合にも消去パワーを不足させることなく、処理を容易化することができる。
【0041】
請求項13記載の発明の光記録方法は、相変化型光記録媒体に対して光を照射する光ピックアップと、前記光ピックアップに対して前記相変化型光記録媒体を相対的に移動させる相対移動手段と、周期Tの基準クロックを発生させるクロック発生手段と、を具備する光記録装置を用いた光記録方法において、前記光ピックアップを駆動制御することで、対をなす加熱パルスOPiと冷却パルスFPiとによって構成される幅T(T=OPi+FPi)のパルス部をi個(i=1,…,m)有して、先頭のパルス部である先頭部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOP1,FP1、続く中間のパルス部である中間部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOPj,FPj(j=2,…,m−1)、後端のパルス部である後端部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOPm,FPm(ただし、m=n−2,nは2以上の整数)とするパルス列にしたがう発光波形の光を前記光ピックアップから照射させることにより、時間的な長さがnTである記録マークを前記相変化型光記録媒体に形成する際に、前記後端部の冷却パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb1と、前記先頭部および前記中間部の冷却パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb2とを異ならせるようにした。
【0042】
したがって、低線速で低パワーでの記録を可能にする再結晶化速度が設定されている相変化型光記録媒体に対して、設定されている再結晶化速度以上の高線速で記録する場合にも、非晶質相を形成し易くすることができる。
【0043】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の光記録方法において、前記パルス列中の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPwと、前記光ピックアップから照射させることにより前記相変化型光記録媒体に形成された記録マークを消去する消去パワーPeと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、Pw>Pe≧Pb1>Pb2とし、かつ、前記光ピックアップから照射させることにより前記相変化型光記録媒体に形成された記録マークを再生する再生パワーPrと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、Pb1>Pr≧Pb2とするようにした。
【0044】
したがって、高線速になる程非晶質相を形成し易くしているために繰り返し記録(オーバーライト)に際しての消去比が低下するような相変化型光記録媒体に対しても、繰り返し記録に際しての消去比を向上させることができる。
【0045】
請求項15記載の発明は、請求項13または14記載の光記録方法において、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速Vmaxまでの範囲における照射パワーPwと、消去パワーPeと、再生パワーPrと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、Pw>Pe≧Pb1>Pb2,Pb1>Pr≧Pb2,ただし、Pb1=Pb2+(Pe−Pb2)*(2V−Vmax)/Vmaxとし、記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲における照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を、Pb1=Pb2とするようにした。
【0046】
したがって、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、特に、高線速側での繰り返し記録に際しての消去比を向上させることができる。
【0047】
請求項16記載の発明は、請求項13、14または15記載の光記録方法において、前記先頭部の加熱パルス,前記中間部の加熱パルス,前記後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させるようにした。
【0048】
したがって、記録マーク長を制御して、記録マークが不用意に長くなることを抑制することができる。
【0049】
請求項17記載の発明は、請求項13ないし16のいずれか一に記載の光記録方法において、前記先頭部の加熱パルスの開始時間を前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させるようにした。
【0050】
したがって、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0051】
請求項18記載の発明は、請求項13ないし17のいずれか一記載の光記録方法において、前記先頭部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw1と、前記中間部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw2と、前記後端部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw3とを、すべて同じとするか、すべて異ならせるか、または、いずれか2つを同じとするようにした。
【0052】
したがって、基本的には、照射パワーPw1,Pw2,Pw3を同じとするが、いずれの場合にも繰り返し記録特性を改善することができる。
【0053】
請求項19記載の発明は、請求項13ないし18のいずれか一に記載の光記録方法において、前記先頭部の加熱パルス幅OP1を0.3T≦OP1≦0.8Tとし、前記中間部および前記後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲では0.2T≦OPj,OPm≦0.6Tとし、記録線速Vが中間線速度から最高線速までの範囲では0.3T≦OPj,OPm≦0.7Tとするようにした。
【0054】
したがって、先頭部の加熱パルス幅OP1に加えて、中間部および後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを記録線速Vに応じて制御することにより、記録線速Vに依存することなく良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0055】
請求項20記載の発明は、請求項13ないし19のいずれか一に記載の光記録方法において、前記後端部の冷却パルス幅FPmを0≦FPm≦1.5Tとするようにした。
【0056】
したがって、高線速記録である程短くする方が好ましい後端部の冷却パルスを制御することで、記録マーク長の制御が可能になる。
【0057】
請求項21記載の発明は、請求項13または14記載の光記録方法において、照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を記録線速Vに依らず、Pb1=Pb2とし、前記先頭部の加熱パルス,前記中間部の加熱パルス,前記後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させるようにした。
【0058】
したがって、照射パワーPb1と照射パワーPb2と記録線速Vに依らず等しくすることで光ピックアップの駆動制御を容易化しつつ、先頭部の加熱パルス,中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間を制御することで、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0059】
請求項22記載の発明は、請求項21記載の光記録方法において、前記先頭部の加熱パルスの開始時間を、前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させるようにした。
【0060】
したがって、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0061】
請求項23記載の発明は、請求項21または22記載の記録方法において、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeと記録パワーPwとの比Pe/Pwを、記録パワーPw毎に変えるようにした。
【0062】
したがって、Pe/Pwを一定にした場合には低い記録パワーでの記録に際しての消去パワーも低下するために2回目記録(繰り返し記録1回目)の記録特性が劣化し、消去パワーの低下を防止するために消去パワーを一定にした場合には高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、Pe/Pwを記録パワーPw毎に変えることにより記録パワーPwに依らず繰り返し記録特性を改善することができる。
【0063】
請求項24記載の発明は、請求項13ないし23のいずれか一に記載の記録方法において、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とするようにした。
【0064】
したがって、低記録パワー側で求められる消去パワーに固定すると高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とすることで、消去パワーPeを一定にした場合にも消去パワーを不足させることなく、処理を容易化することができる。
【0065】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態について図1および図2を参照して説明する。本実施の形態は、光記録装置として、例えば、DVD+RW(Digital Versatile Disc+ReWritable)等の繰り返し記録が可能な相変化型光記録媒体を対象とする光ディスク装置への適用例を示す。
【0066】
図1は、本実施の形態の光ディスク装置の構成を概略的に示すブロック図である。光ディスク装置1は、記録再生位置にセットされた相変化型光記録媒体としての光ディスク2を回転させる相対移動手段としてのスピンドルモータ3を備えている。
【0067】
なお、本実施の形態では、光ディスク2を回転させるスピンドルモータ3を相対移動手段として用いているため、記録再生に際して、例えば、光ディスク2と後述する光ピックアップ10とを直線的に移動させる場合と比較して、記録再生を高速化することができる。
【0068】
ここで、光ディスク装置1で用いられる光ディスク2について説明する。特に図示しないが、本実施の形態の光ディスク2は、データの書き換え(繰り返し記録)を可能とする相変化型光記録媒体であり、下部誘電体保護層、相変化型光記録層、上部誘電体保護層、硫化防止層および反射層を透明基板上に順次積層した構成、あるいは、下部誘電体保護層、相変化型光記録層、界面層、上部誘電体保護層、硫化防止層および反射層を透明基板上に順次積層した構成を基本構成として有する。
【0069】
透明基板は、記録再生光の波長に対して透明な材料によって形成されている。例えば、透明基板を形成する材料として、ポリカーボネート(PC),ポリメタアクリル酸(PMMA)等のプラスチックや、ガラス等が挙げられる。本実施の形態では、ポリカーボネートによって形成された透明基板を用い、厚さは0.6mmに設定されている。ポリカーボネート製の透明基板は、安価であり、現在、CD,DVD,MO等の記録媒体で用いられている。
【0070】
透明基板と相変化型光記録層との間に設けられる下部誘電体保護層や、相変化型光記録層と反射層との間に設けられる上部誘電体保護層を形成する材料としては、SiOx,ZnO,SnO2,Al2O3,TiO2,In2O3,MgO,ZrO2,Ta2O5等の金属酸化物、Si3N4,AlN,TiN,BN,ZrN等の窒化物、ZnS,TaS4,等の硫化物、SiC,TaC,B4C,WC,TiC,ZrC等の炭化物が挙げられる。これらの材料は、単体あるいは混合物として用いることもできる。
【0071】
中でも、相変化型光記録媒体の下部誘電体保護層を構成する材料としては、ZnSとSiO2との混合物(ZnS−SiO2)が一般的に用いられている。このZnSとSiO2との混合比は、80:20(モル比)が良い。ここで、ZnS−SiO2(80:20)は、熱伝導率が低く、比熱が小さく、繰り返し記録により結晶化せず、加熱と急冷の多数回の履歴によるクラックの発生、元素の拡散等がないため、下部誘電体保護層を形成する材料として適している。また、ZnS−SiO2(80:20)は、上述した性質から、上部誘電体保護層にも用いられる。
【0072】
また、屈折率がZnSSiO2とほぼ同じかそれよりも大きく、熱伝導率も低い材料として、ZrO2にY2O3を3mol%から6mol%を含む混合物が挙げられる。ZrO2を主成分とする系において、バルクにおける熱伝導率をレーザフラッシュ法により測定したところ、ZrO2・Y2O3(3mol%),ZrO2・SiO2(5mol%)・Y2O3(3mol%),ZrO2・TiO2(50mol%)・Y2O3(3mol%)、ZrO2・TiO2(40mol%)・SiO2(20at%)・Y2O3(3mol%)の熱伝導率は、それぞれ、5.1W/m・K、3.5W/m・K、1.73W/m・K、2.6W/m・K、ZnS・SiO2(20mol%)が、8.4W/m・Kであった。屈折率(n)は、ZrO2・SiO2(5mol%)以外は、すべて2以上であった。なお、Y2O3の代わりに、MgOを用いても良い。
【0073】
いずれもスパッタ法による成膜のためのターゲットを作製する際に、ターゲットの割れを防止するために用いる材料である。
【0074】
下部誘電体保護層の膜厚は、40nmないし250nmの範囲に設定されており、65nmないし200nmが好ましい。ここで、下部誘電体保護層の膜厚が40nmより薄くなると、耐環境性保護機能が低下し、放熱効果が低下して、繰り返し記録特性の劣化が大きくなる。一方、下部誘電体保護層の膜厚が250nmより厚くなると、スパッタ法等による製膜過程において、膜温度の上昇により膜剥離やクラックが生じる。また、透明基板の厚さが0.6mmともなると、下部誘電体保護層の膜厚を250nmより厚くすることで、クラック等の発生に伴って透明基板の変形を起こす。
【0075】
上部誘電体保護層の膜厚は、5nmないし50nmの範囲に設定されており、8nmないし20nmが好ましい。ここで、上部誘電体保護層の膜厚が5nmより薄くなると、記録感度が低下する。一方、上部誘電体保護層の膜厚が50nmより厚くなると、温度上昇による変形や放熱性の低下による繰り返し記録特性の低下を引き起こす。
【0076】
ところで、上述した材料を用いて形成した上部誘電体保護層を有する記録媒体に対して記録を行ない、80℃,85%RHで記録マークの保存性を調べたところ、ZrO2の含有量が50at%より多い系の場合には、記録マークが消滅するか、ジッターが大きく劣化することが判った。一方で、ZrO2系は、繰り返し記録特性が良好であり、1000回記録した後のジッター劣化は、ZnSSiO2より少なく、高線速で繰り返し記録する場合により効果があることが判る。このようなことから、上部誘電体保護層を形成する材料としては、ZnSSiO2:ZrO2が(80:20)が良い。
【0077】
本実施の形態では、繰り返し記録特性を良くする効果を活かすために、相変化型光記録層と上部誘電体保護層との間に、ZrO2系材料を界面層として設けることを検討し、その結果、ZrO2系材料の界面層を設ける場合には、膜厚が1nm以上5nmの範囲に設定された界面層を設けることにより、繰り返し記録特性が良好であるという効果を保ち、かつ、保存信頼性の劣化もかなり抑制されることが判った。
【0078】
界面層としては、ZrO2系材料の他に、SiCも有効である。なお、膜厚を厚くすると光吸収が大きくなり、反射率の低下を生じるため、SiCによって形成される界面層の膜厚は5nm以下が良い。
【0079】
反射層を形成する材料としては、Al,Ag,Cu,Pd,Cr,Ta,Ti等の金属材料が挙げられる。反射層は、膜厚が厚い程放熱性がより向上するが、厚くなり過ぎると薄膜を作製する間に媒体が温度上昇して透明基板が変形してしまい、逆に、薄すぎると放熱性が悪くなって記録特性(繰り返し記録特性を含む)が劣化するため、膜厚が50nmから250nmの範囲に設定されていることが良い。
【0080】
ここで、記録線速が速くなると冷却速度が大きくなって非晶質の記録マークを形成し易くなるが、記録マークを形成するためには相変化型光記録層を融点付近まで加熱させるので発光パルスの加熱パルス時間を長くする必要がある。一方で、一つの加熱パルス時間と冷却パルス時間との和は基準クロックの周期Tであり、この制約の中で加熱パルス時間と冷却パルス時間とを変えているため、加熱パルス時間を長くすると、冷却パルス時間が短くなってしまい冷却時間が不足して記録マークが形成しにくくなる。
【0081】
従来、反射層として、AlあるいはAl合金を用いてきたが、DVDの2倍速では、熱伝導率がより高いAgを用いることにより反射特性が向上することが判ったため、本実施の形態では、媒体で冷却効率を上げるために、反射層を形成する材料としてAgを用いることが好ましい。
【0082】
しかしながら、上部誘電体保護層がSを含み反射層がAgによって形成されている場合、高温高湿下ではAg2Sが生成されやすい。Ag2Sが生成されることにより、特性が劣化し、欠陥が発生する原因となる。
【0083】
このため、上部誘電体保護層がSを含み反射層がAgによって形成されている場合には、反射層と上部誘電体保護層との間に硫化反応防止層を設ける必要がある。
【0084】
これまで、酸化物、窒化物、炭化物、金属について鋭意検討した結果、硫化反応防止層を形成する材料としては、Si,SiCが好ましいことが判った。また、硫化反応防止層を形成する材料としては、ZrO2、MgO,TiOxも適しており好ましい。中でも、SiCは、AgとSとの反応を防止し、膜厚を3nmと薄くしてもその効果が高い。SiCによる硫化防止層の膜厚は、2nm以上とし、上限を10nmとする。硫化防止層の膜厚を10nm以上にすると、反射層と上部誘電体保護層との距離が離れて放熱効率が下がってしまったり、吸収係数が高いために反射率が低下してしまったりする。
【0085】
なお、反射層をAg単体とすることで、特性を向上させることができるが、Agそのものの腐食性や硫化防止層との密着性等を考慮する必要がある。
【0086】
例えば、Agそのものの腐食性については、粒径が大きくなると表面が凹凸状になり密着性の弱いところから剥がれやすくなるので、薄膜作製時のスパッタリング条件(アルゴンガス圧)を最適化し、Agの結晶粒径を小さくして粒成長を抑制してAgの薄膜表面を平滑とすることで、Ag単体でも、Ag層の腐食性や硫化防止層との密着性の不具合を解消することができる。Agの膜をスパッタ法により作製する場合には、Ag膜の結晶粒径を小さくするために透明基板とターゲット間に3kW以下のパワーをかけることが良い。
【0087】
また、例えば、硫化防止層との密着性を向上させるには、反射層の上にアクリル系紫外線硬化型樹脂によって形成される環境保護層を設け、このアクリル系紫外線硬化型樹脂の硬化条件や環境保護層の厚さを最適化することで、Ag単体の反射層を設けることも可能である。
【0088】
しかしながら、量産等に際しては、最適条件で作製されていなかったり、記録膜のない透明基板を貼り合わせる前の保管条件や、透明基板自身の吸湿、紫外線硬化型樹脂の吸湿等の条件が不適切であったりすることによってAgが劣化する懸念がある。
【0089】
そこで、Agを95at%以上の合金にすることにより、信頼性を向上させることができる。Agに添加する添加元素としては、Cu,Niが熱伝導率をあまり下げることなく、粒径成長を抑制し、耐環境性を向上させるため好ましい。Agに対する添加元素の添加量が5at%を超えると、熱伝導率が著しく減少するため、Agに対する添加元素の添加量は、好ましくは、2at%以下が良い。
【0090】
相変化型光記録層は、後述する光ピックアップ10の半導体レーザから照射されるレーザ光によって非晶質相と結晶相の可逆的相変化をする。相変化型光記録層を形成する材料としては、これまでSb70Te30付近の共晶組成を基本とし、Ag,Inや、さらにGeを添加したAgInSbTe系、AgInSbTeGe系が挙げられる。これらの材料系は、高線速でしかも高密度記録に適している。
【0091】
SbのTeに対する比率が大きくなる程、また、Sb量が80at%を超えると、相変化型光記録層の結晶化速度は高くなるが、保存性が極端に悪くしかも非晶質相を形成しにくくなるため、高線速記録に対応するための好ましいSb量としては、Sb量が65at%以上であって80at%より少ない方が良い。
【0092】
また、高線速記録に対応するための好ましいTe量は、15at%以上、25at%以下が良い。
【0093】
Geは、結晶化速度が遅いにも拘わらず、記録した記録マークの高温環境下での保存性を向上させるために必須の元素である。GeとTeとの結合エネルギーが大きいことから保存性が良いと考えられる。また、Ge添加量が増加する程、結晶化温度が高くなるためこれによっても保存性が良いと考えられる。
【0094】
しかしながら、Geをあまり多く入れると結晶化温度がさらに高くなり、結晶化速度も遅くなるので5at%以下がよい。Agは、記録マークを安定化させるが、結晶化温度はあまり増加させない。
【0095】
また、Agは、過剰に入れると結晶化の速度を下げてしまうが、結晶状態を安定化する役割も果たすため、3at%が良い。
【0096】
Inは、結晶化速度を上げるとともに結晶化温度を上げるため、保存性を向上させることができるが、多く入れると偏析しやすく繰り返し記録特性の劣化と再生光パワーに対する劣化が起きるため、In量は、5at%以下が良い。本発明においては、3at%以下がよい。
【0097】
In以外に、結晶化速度を速くする材料としては、Gaがある。Gaは、同量のInに比べ、結晶化速度をより速くするが、結晶化温度もより高くなる。例えば、Geが5at%で、Gaが5at%以上になると結晶化温度が200℃をはるかに超えて、250℃以上にもなる。これにより、相変化型光記録層を非晶質状態から結晶化させるための初期化過程において、トラック一周の反射率分布が大きくなり、記録特性、データエラーの原因になるため、Gaは、結晶化速度を速くさせるための補助的な元素として、3at%以下添加するのが良い。
【0098】
AgInSbTeGe系は、高線速な材料としては限界があり、Ag,Inに代わる元素を検討した結果、結晶化速度を速くするが、結晶化温度を必要以上に上げない元素として、Mnが効果的であることが判った。Mnは、Inと同じく結晶化速度を上げ、多量に入れても繰り返し記録特性を劣化させずに保存特性も良好である。また、Mnは、結晶化温度も上げるが、添加量に対する結晶化温度の増加量は小さく、再生光劣化も小さい。本実施の形態では、Mnを、多くて5at%入れれば充分である。このように、GeMnSbTe系も高線速に適した材料である。
【0099】
さらに、Gaを添加し結晶化速度と保存性を向上させる系も有効である。
【0100】
上述したような材料系によって形成される相変化型光記録層の膜厚は、10nmから20nmがよい。10nm以下では、結晶と非晶質相の反射率差が小さくなり、20nm以上に厚くなると記録感度、繰り返し記録特性が悪くなる。
【0101】
上述した相変化型光記録媒体には、ピッチ0.74μm,深さ15nm〜45nm,幅0.2〜0.3μmに設定されて、約820kHzの周期で5nmから20nmの振幅をもつ蛇行状とされた溝が設けられている。
【0102】
上述した光ディスク2に対して記録再生を行なう光ディスク装置1におけるスピンドルモータ3は、光ディスク装置1が備えるマイコン4によって駆動制御されるモータドライバ5とサーボ手段6とによって、線速度一定(CLV)または回転数一定(CAV)となるように制御される。
【0103】
マイコン4は、光ディスク装置1が備える各部を駆動制御するCPU(Central Processing Unit)7に、各種コンピュータプログラム等の固定的なデータを格納するROM(Read Only Memory)8と、CPU7のワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)9とを接続することによって構成されている。CPU7は、計時機能を有しており、光ディスク2に対する記録再生に際して周期Tの基準クロックを発生させる。このため、本実施の形態ではCPU7によってクロック発生手段としての機能が実現される。
【0104】
光ディスク装置1は、スピンドルモータ3によって回転駆動される光ディスク2に対して照射するレーザ光を出射する図示しない半導体レーザを有する光ピックアップ10を備えている。特に図示しないが、光ピックアップ10は、半導体レーザ、光学系、フォーカシングアクチュエータ、トラッキングアクチュエータ、受光素子、ポジションセンサ等を内蔵している。また、光ピックアップ10は、図示しないシークモータによってスレッジ方向(ディスク半径方向)に移動可能とされている。
【0105】
フォーカシングアクチュエータ、トラッキングアクチュエータ、シークモータは、モータドライバ5とサーボ手段6とによって駆動制御される。モータドライバ5、サーボ手段6は、受光素子やポジションセンサから得られる信号に基づいて、レーザスポットを光ディスク2上の目的の場所に位置させるように、フォーカシングアクチュエータ、トラッキングアクチュエータ、シークモータを駆動制御する。
【0106】
光ディスク装置1におけるデータの再生に際しては、モータドライバ5とサーボ手段6とによりフォーカシングアクチュエータ、トラッキングアクチュエータ、シークモータを駆動制御して、半導体レーザから出射されて光学系によって導かれるレーザ光を、光ディスク2にレーザスポットとして照射させる。
【0107】
一般的に、光ディスク2は、400〜780nmの波長範囲での記録再生が可能であるが、本実施の形態では光ディスク2としてDVDを例示しているため、本実施の形態の光ディスク装置1では、波長が650nmから660nmのレーザ光を半導体レーザから出射する。また、光ピックアップ10における図示しない対物レンズの開口率は、0.60〜0.65の範囲に設定されており、光ディスク2にレーザスポットとして照射されるレーザ光のビーム径が1μm以下とされている。
【0108】
光ディスク2に照射されたレーザ光は、反射層によって反射され、光学系によって所定の光路に導かれて受光素子で受光される。光ピックアップ10は、受光素子が受光した光信号を再生信号として取得する。
【0109】
光ピックアップ10で得られた再生信号は、リードアンプ11で増幅されて2値化された後、DVDデコーダ12に入力される。DVDデコーダ12に入力された2値化データは、DVDデコーダ12でEFM(Eight to Fourteen Modulation)復調される。
【0110】
光ディスク2に記録されているデータは、8ビットずつまとめられてEFM変調されているため、DVDデコーダ12では、8ビットを14ビットに変換し、結合ビットを3ビット付加して合計17ビットにする。このとき、結合ビットは、それまでの「1」と「0」との数が平均的に等しくなるように付けられる。この処理を「DC成分の抑制(DCカット)」といい、DC成分を抑制(DCカット)することで、再生信号のスライスレベル変動が抑圧される。
【0111】
復調されたデータは、デインターリーブとエラー訂正の処理が行われて、DVD−ROMデコーダ13に入力される。DVD−ROMデコーダ13では、データの信頼性を高めるためのエラー訂正処理が行われる。
【0112】
このように、2回のエラー訂正の処理が行われたデータは、バッファマネージャ14によって一旦バッファRAM15に蓄積される。バッファRAM15に蓄積されたデータは、セクタデータとして揃ったときに、ATAPI/SCSIインターフェイス16によって、セクタデータとして揃った状態で図示しない外部装置へ一気に転送される。
【0113】
なお、音楽データの場合、DVDデコーダ12から出力されるデータは、D/Aコンバータ17に入力され、D/Aコンバータ17からアナログのオーディオ信号として取り出される。
【0114】
一方、ユーザデータの記録に際しては、ATAPI/SCSIインターフェイス16を介して、図示しない外部装置からユーザデータが転送されてくる。外部装置から転送されてきたユーザデータは、バッファマネージャ14によって、バッファRAM15に一旦蓄積される。ユーザデータの記録は、バッファRAM15にある程度のユーザデータが溜まったときに開始される。バッファRAM15のデータは、DVD−ROMエンコーダ18やDVDエンコーダ19でエラー訂正コードの付加やインターリーブが行われ、レーザコントローラ20、光ピックアップ10を介して光ディスク2に記録される。
【0115】
光ディスク装置1は、ユーザデータの記録に先立って、レーザスポットを書き込み開始地点に位置させ、光ディスク2に設けられた溝の蛇行によって該光ディスク2に予め刻まれているウォブル信号に基づいて、書き込み開始地点を求める。一般的に、ウォブル信号には、ADIP(Address in pre−groove)が含まれており、再生に際しては、蛇行する溝の周波数の位相を変調させて、この位相変化部分を検出し、2値化信号に変換することでアドレス(番号)を読み取る。ウォブル信号からADIPデコーダ21によって取り出されるADIPの情報に基づいて書き込み開始地点が求められる。
【0116】
本実施の形態の光ディスク装置1は、ユーザデータの記録に際して、光ディスク2に対して、0.267μm/bitの記録線密度で、(8−16)変調方法で記録を行なう。このときの最短記録マーク長は0.4μmになる。
【0117】
ユーザデータの記録に際しては、ATAPI/SCSIインターフェイス16を介して外部装置から送られてきたデータを一旦バッファRAM15に蓄えてから記録を開始するが、この記録に先立って、当該光ディスク2のPCA(Program Calibration Area)においてOPCを行い、半導体レーザの最適な記録パワーを求める。
【0118】
公知の技術であるため説明を省略するが、OPCの実行に際しては、例えば、光ディスク2のPCAにおいて、1ブロック毎に(1ステップ毎に)半導体レーザの記録パワーを増加させながら、所定回数分に相当する所定ブロック(例えば、15ブロック)分の試し記録を行ない、続いて、試し記録した領域を再生することにより光ピックアップ10において得られる反射光に応じたデータ信号をリードアンプ11によって増幅し、増幅したデータ信号から検出されるピークレベルやボトムレベル等のレベル信号をA/D変換し、それを基に、CPU7等でRF信号対称性を表すβ値を測定し、β値が目標値に最も近いブロックで使用された記録パワーを最適記録パワーとして決定する。
【0119】
なお、このOPC実行時には、光ディスク2は線速度一定なるCLV方式により回転駆動される。このような方法で最適記録パワーを計算しレーザコントローラ20に記録パワーの指令を出す。
【0120】
詳細は後述するが、レーザコントローラ20は、計算された記録パワーに基づいて、半導体レーザから出射するレーザ光量を調整する。このため、本実施の形態では、レーザコントローラ20によって記録手段としての機能が実現される。また、レーザコントローラ20は、光ディスク2に記録された記録マークを消去する消去パワーPeのレーザ光や、光ディスク2に記録された記録マークを再生する再生パワーPrのレーザ光を半導体レーザから出射させるように半導体レーザを駆動制御する。このため、本実施の形態では、レーザコントローラ20によって、消去手段および再生手段としての機能が実現される。
【0121】
なお、DVDの2倍速は、線速7m/s(6.98m/s)であり、基準クロック周波数は52.3MHz(T:19.1ns,Tは、基準クロックの周期)になる。また、DVDの4倍速では、線速14m/s(13.96m/s)になり基準クロック周波数は104.6MHz(T:9.56ns)である。
【0122】
このような光ディスク装置1において、上述した光ディスク2を、最適消去パワー以上の一定の消去パワーで消去するとともに記録線速を低い線速から高い線速まで変化させ、このときの反射信号をモニターしたところ、消去前は結晶状態にあった相変化型光記録層がある線速以上になると非晶質相となり、以降線速が増えるとともに非晶質相領域が広がり反射率が減少することが判った。
【0123】
以降、反射率が下がり始める線速を結晶から非晶質相に転移する線速ということで転移線速、または、ある線速以下では溶融後再結晶化するという意味で、再結晶化上限速度と呼び符号Vcを付して説明する。
【0124】
ところで、例えば、1−2.4倍速記録に際しての最大記録パワーが15mWである光ディスク装置1において4倍速記録するためには15mW以上の記録パワーが必要となる。これに対し、15mWで4倍速記録する光ディスク装置1において1−2.4倍速記録する場合には、15mW以下で記録されなければならない。
【0125】
なお、本実施の形態で用いる光ディスク2の構成は、上述した光ディスク装置を用いて、最低線速(min線速)を3.49m/s,最高線速(max線速)を13.96m/sとして12mWで消去する場合の再結晶化上限速度Vcが以下に示す(1)式を満たすような範囲となるように設定されている。
(max線速+min線速)/2<Vc<{(max線速+min線速)/2}+3 …(1)
【0126】
再結晶化上限速度Vcの最適範囲は、9.0m/sから10.5m/sであることが好ましい。
【0127】
光ディスク2の再結晶化上限速度を上述した(1)式に示す範囲内に設定することにより、高線速記録対応の光ディスクに対して低速ドライブでの記録を可能とする、すなわち、下位互換を可能としている。
【0128】
ところで、従来の光ディスク装置では、上述したような光ディスク2に対して、図10に示すようなパルス列にしたがう発光波形のレーザ光を照射する。ここで、図10は、従来光ディスク装置で用いられてきた発光波形を示している。図10に示すように、半導体レーザから照射されるレーザ光の照射パワーは、記録パワーPw、消去パワーPe、および、ボトムパワーPbに分類される。相変化型光記録層を加熱するための記録パワーPwは、先頭部における幅OP1の加熱パルス、中間部における幅OPj(j=2〜m−1)の加熱パルス、および、後端部における幅OPmの加熱パルスにおいて照射される。ボトムパワーPbは、先端部における幅FP1の冷却パルス、中間部における幅FPjの冷却パルス、後端部における幅FPmの冷却パルスにおいて照射される。このとき、中間部においてそれぞれ対をなす幅OPjの加熱パルスと幅FPjの冷却パルスとの時間の和はTになっている。パルス列におけるパルス数は、記録マーク長nTに対し、(n−1)個である。
【0129】
なお、パルスの数は(n−2)個でも良いが、本実施の形態では、記録マーク長制御をしやすい(n−1)個とする。
【0130】
先頭部の加熱パルスの開始時間は、形成される記録マークの先端である0Tから1Tまでの範囲に設定されている。
【0131】
図10に例示するようなパルス列にしたがう発光波形では、Δ2=0、Δ1を最大0.5*T、Δ3を−0.3〜0.2Tの範囲で調整することで、所定の長さの記録マークを記録することができる。ここで、記録マークの後端位置を0とし、この0を基準として記録マークの内側を+、外側を−とする。
【0132】
しかしながら、図10に例示するようなパルス列にしたがう発光波形では、線速2.4倍速までは良好な繰り返し記録特性を得ることができるが、記録線速が速くなって4倍線速度(14m/s)になってくると、所定の長さ(3Tから14T)の記録マークが形成しにくくなり、十分な記録特性を得ることが難しくなってくる。これは、結晶化速度が速くなることによって、記録マークが一旦形成された後に再結晶化する速度が速くなるためである。
【0133】
この対策として、先端部における加熱パルスの幅OP1,中間部における加熱パルスの幅OPj,後端部における加熱パルスの幅OPmを狭くし加熱時間を短くすることで相変化型光記録層を短時間で溶融させ、先端部における冷却パルスの幅FP1,中間部における冷却パルスの幅FPj,後端部における冷却パルスの幅FPmを広くし冷却時間を長くすることで、相変化型光記録層の再結晶化を抑えることが考えられるが、この方法では、相変化型光記録層を短時間で溶融させるために記録パワー(Pw)をより高くすることが必要となるため、光ディスク装置の記録パワーの上限値によってはパワーが不足してしまう。
【0134】
また、図10に示すような発光波形例では、低速側でも同様に、線速が高くなるほど相変化型光記録層が非晶質相を形成しやすくなり、繰り返し記録に際して先に記録されている記録マークを消去する消去比が悪くなって、2回目以降の記録特性(繰り返し記録特性)が悪くなる傾向がある。
【0135】
この対策としては、消去パワーを高くして消去比を上げることが良いが、消去パワーをあまり高くすると非晶質相が形成されやすくなり、ますます消去できない状態になる。加えて、消去パワーは、低すぎると記録マークを消去しにくい。特に、一旦、相変化型光記録層を溶融状態にしてから徐冷させる過程における消去が確実であるが、消去パワーを低くする場合にはこの過程を使えない。
【0136】
つまり、図10に示すような従来の発光例では、例えば、4倍速等の高線速になると最終冷却パルス部を長くとれない。一方で、低記録線速側では冷却パルス時間が必要となる。
【0137】
これに対して、本実施の形態では、図10中のパルス列の冷却パルスにおける照射パワーPbを、図2中のパルス列の後端部の冷却パルスにおいて光ピックアップ10から照射させる光の照射パワーPb1と、先頭部および中間部の冷却パルスにおいて光ピックアップ10から照射させる光の照射パワーPb2とに2値化し、照射パワーPb1と照射パワーPb2とを異ならせ、照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係が以下に示す(2)式および(3)式によって示される関係となるようにする。
Pw>Pe≧Pb1>Pb2 …(2)
Pb1>Pr≧Pb2 …(3)
【0138】
ここで、Pwはパルス列中の加熱パルスにおいて光ピックアップ10から照射させる光の照射パワーであり、Peは光ピックアップ10から照射させることにより光ディスク2に記録された記録マークを消去する照射パワーであり、再生に際して光ピックアップ10から照射させる光の照射パワーである。
【0139】
このように、ボトムパワーPbをPb1とPb2とに2値化することにより、低線速で低パワーでの記録を可能にするために設定されている光ディスク2に対して再結晶化速度以上の高線速で記録する場合にも、非晶質相を形成し易くすることができるので、下位互換性の高い光ディスク2に対する高線速記録を実現することができる。
【0140】
また、照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を(2)式および(3)式によって示される関係となるようにすることにより、高線速になる程非晶質相を形成し易くしているため繰り返し記録(オーバーライト)に際しての消去比が低下するような光ディスク2に対しても、繰り返し記録に際しての消去比を向上させることができ、これによって、繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0141】
ところで、光ディスク2に対する記録が可能な記録線速をVとすると、本実施の形態では、上述した(2)式および(3)式によって示される関係は、記録線速Vが中間線速から最高線速Vmaxまでの範囲において満足される。本実施の形態では、8.8m/sを中間線速とする。
【0142】
(2)式および(3)式によって示される関係が満足される場合の照射パワーPb1は、以下に示す(3)式の関係で表わされる。
Pb1=Pb2+(Pe−Pb2)*(2V−Vmax)/Vmax …(3)
【0143】
そして、記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲における照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係は、以下に示す(4)式によって表わされる。
Pb1=Pb2 …(4)
【0144】
このように、記録線速に応じて、照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を調整することにより、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、特に、高線速側での繰り返し記録に際しての消去比を向上させることができ、これによって、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0145】
図2に示すパルス列において、先頭部の加熱パルスにおいて光ピックアップ10から照射させる照射パワーPw1と、中間部の加熱パルスにおいて光ピックアップ10から照射させる照射パワーPw2と、後端部の加熱パルスにおいて光ピックアップ10から照射させる照射パワーPw3とは、すべて同じであっても、すべて異なっていても、さらには、2つが同じであっても(Pw1≠Pw2=Pw3、Pw1=Pw2≠Pw3)よく、いずれの場合にも図10に示すパルス列にしたがう発光波形と比較して繰り返し記録特性を改善することができる。なお、基本は、照射パワーPw1,Pw2,Pw3は、すべて同じパワーとする。
【0146】
図2のパルス列において先頭部の加熱パルス幅OP1は、以下に示す(6)式の範囲で調整される。
0.3T≦OP1≦0.8T …(6)
【0147】
このとき、図2のパルス列において中間部および後端部の加熱パルス幅OPj,OPmは、記録線速Vに応じて以下に示す(7)式または(8)式の範囲となるように調整される。
【0148】
すなわち、記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲では(7)式の範囲で調整され、記録線速Vが中間線速度から最高線速までの範囲では(8)式の範囲で調整される。
0.2T≦OPj,OPm≦0.6T …(7)
0.3T≦OPj,OPm≦0.7T …(8)
【0149】
このように、先頭部の加熱パルス幅OP1に加えて、中間部および後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを記録線速Vに応じて制御することにより、記録線速Vに依存することなく良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0150】
また、光ピックアップ10は、記録に際して、図2に示すパルス列における先頭部の加熱パルス,中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させる(図2中dTtop,dTmp,dTlp参照)。なお、マイナスは、記録マークの内側を示している。
【0151】
これにより、記録マークが不用意に長くなることを抑制し、記録マーク長を制御することができる。
【0152】
特に、先頭部の加熱パルスの開始時間を、基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させることにより、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0153】
また、中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間も、同様に、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0Tの間で変動させることにより、良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0154】
パルス列における加熱パルス幅OPjとパルス列における冷却パルス幅FPjとの関係が、OPj+FPj=Tとなる場合は、より良好な繰り返し記録特性が得られ易い。
【0155】
ただし、後端部の冷却パルスの幅FPmは、高い線速になるほど短くすることが良い。このため、本実施の形態では、後端部の冷却パルスの幅FPmの最適範囲が、以下に示す(9)式によって示される関係となるようにする。
0≦FPm≦1.5T …(9)
【0156】
これにより、高線速記録である程短くする方が好ましい後端部の冷却パルスを制御することができ、記録マーク長の制御が可能になる。
【0157】
なお、本実施の形態では、後端部の冷却パルスの幅FPmの最適範囲を(9)式によって示される範囲内としたが、好ましくは、0≦FPm≦1Tが良い。
【0158】
また、後端部の冷却パルスは、高線速記録である程短くする方が好ましいことから、最高線速では0Tでも良い。
【0159】
加えて、図2中のdTe(+が記録マークの内側、−が記録マークの外側)は、FPmと関係しており、FPmはdTe、OPm、dTlpから決めることもできる。
【0160】
本実施の形態では、記録に際しての発光波形を以下に示すように調整することにより、例えば、記録パワーや消去パワーの限られた2.4倍速までのドライブでも4倍速での記録ができる、すなわち、下位互換性を確保し、低いパワーでも高速記録することができる。
【0161】
次に、本発明の第2の実施の形態について図3を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
【0162】
図3は、本実施の形態の光ディスク装置の発光波形を示している。本実施の形態では、照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を記録線速Vに依らず、Pb1=Pb2とし、パルス列における先頭部の加熱パルス,中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させる。
【0163】
これにより、照射パワーPb1と照射パワーPb2と記録線速Vに依らず等しくすることにより、図2に示すように、Pbを2値で制御する場合と比較して、光ピックアップ10の駆動制御を容易化し、レーザコントローラを構成する回路の複雑化を抑制しながら、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0164】
特に、先頭部の加熱パルスの開始時間を、前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させることで、記録マークの先端部をより正確に制御することができ、好ましい。
【0165】
また、本実施の形態では、記録に際して、光ディスク2に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeと記録パワーPwとの比Pe/Pwを、記録パワーPw毎に変えるように半導体レーザを駆動制御する。
【0166】
ここで、従来では、記録パワーPwと消去パワーPeの比を一定にして、記録パワーPwと該記録パワーPwの変化とともに決まる消去パワーPeとによって記録消去を行っていたが、Pe/Pwを一定にした場合には低い記録パワーでの記録に際しての消去パワーも低下するために2回目記録(繰り返し記録1回目)の記録特性が劣化するという不具合がある。
【0167】
また、従来では、消去パワーの低下を防止するために消去パワーを一定にした場合、高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合がある。
【0168】
これに対し、本実施の形態では、Pe/Pwを、記録パワーPw毎に変えることにより記録パワーに依らず繰り返し記録特性を改善することができる。このとき、記録パワー毎に最適な消去パワーを設定する方がより好ましい。
【0169】
加えて、本実施の形態の光ディスク装置1では、光ディスク2に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲では、消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とする。
【0170】
これにより、低記録パワー側で求められる消去パワーに固定すると高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とすることで、消去パワーPeを一定にした場合にも消去パワーを不足させることなく、処理を容易化することができる。
【0171】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0172】
(実施例1)
実施例1では、ピッチが0.74μm,幅が0.25μm,深さが25nmに設定された溝が形成された厚さ0.6mmのポリカーボネート製透明基板の上に、スパッタリング方式により以下に示す条件に設定した下部誘電体層,相変化型光記録層,界面層,上部誘電体保護層,硫化防止層,反射層等の各層を積層し、光ディスク2を作製した。
【0173】
下部誘電体保護層は、ZnS:SiO2=80:20(mol%)系の材料によって形成し、膜厚を68nmとした。
【0174】
相変化型光記録層は、Ge:Ag:In:Sb:Te=3:1:3:73.0:20.0系の材料によって形成し、下部誘電体保護層上に膜厚を15nmに設定して積層した。
【0175】
界面層は、ZrO2:TiO2:Y2O3=67:30:3系の材料によって形成し、相変化型光記録層の上に膜厚2nmに設定して積層した。
【0176】
上部誘電体保護層は、ZnS:SiO2=80:20(mol%)系の材料によって形成し、膜厚11nmに設定した。
【0177】
硫化防止層としては、膜厚4nmに設定したSiC層を上部誘電体保護層の上に積層した。
【0178】
反射層は、Ag系の材料によって形成し、硫化防止層上に膜厚140nmで積層した。なお、Agの製膜に際しては、スパッタ投入パワーを3kWとした。
【0179】
加えて、耐環境性を向上させるために、大日本インキ製SD318紫外線硬化樹脂を塗布後、硬化させ5μm厚として保護膜を設けた後、いずれの層も製膜されていないポリカーボネート製透明基板を、厚さ40μmに塗布された紫外線硬化樹脂(アクリル製、日本化薬 DVD003)を介して貼合わせて光ディスク2とした。
【0180】
このような光ディスク2に対して、波長810nmの大口径LD(ビーム径;トラック方向1μm×半径方向75μm)を用いてレーザ光を照射して相変化型光記録層を結晶化させた。このときの線速は9m/s,パワーは1000mW、ヘッドの送り速度は18μm/回転とした。
【0181】
続いて、上述の光ディスク2を用いて記録再生を行なった。このとき、波長657nm,対物レンズのNAが0.65に設定された光ピックアップ10を用い、最高線速度14m/sで記録密度が0.267μm/bitとなるように設定した。このときの記録データの変調方式は(8,16)変調とし、バイアスパワーPb2は0.1mWとし、バイアスパワーPb1は3mWとし、Pe/Pw=0.335とした。なお、OPj+Fpj=Tに設定されている。
【0182】
記録方法は、図2に示すパルス列にしたがう記録波形にて行った。このときの記録条件を表1に示す。この結果を図4に示す。図4は、表1に示す条件で、隣接する5トラックの記録を行なった場合の中心トラックのdata to clockジッターの記録パワー依存性を示している。
【0183】
【表1】
【0184】
(実施例2)
実施例2の光ディスク2は、相変化型光記録層をGe:Ag:In:Sb:Te=3.0:1.0:2.5:72.5:21.0系の材料によって形成した以外は、実施例1の光ディスク2と同様の構成を有する。
【0185】
実施例2では、光ディスク2の相変化型光記録層の結晶化に際しての照射パワーPb1を2mWに設定した以外は、実施例1と同様にして結晶化した。
【0186】
このような光ディスク2に対して、表2に示す記録条件で記録を行ない、実施例1と同様に、隣接する5トラックを記録した場合の中心トラックのdata to clock ジッターの記録パワー依存性を調べた。その結果を図5に示す。
【0187】
【表2】
【0188】
(実施例3)
実施例3の光ディスク2は、相変化型光記録層をGe:Ag:In:Sb:Te=3.0:1.0:2.5:72.5:21.0系の材料によって形成した以外は、実施例1の光ディスク2と同様の構成を有する。
【0189】
実施例3では、光ディスク2の相変化型光記録層の結晶化に際しての照射パワーPb1,Pb2を0.1mWに設定し、図3に示すパルス列にしたがう記録波形にて行った。このとき、記録パワーPwおよび消去パワーPeは、記録パワーPw毎に最適化した。なお、記録パワーPwが15mWの場合の消去パワーPeを5.0mWとし、Pe/Pw=0.33となるようにした。また、記録パワーPwが19mWの場合の消去パワーPeを5.5mWとし、Pe/Pw=0.29となるようにした。
【0190】
このような光ディスク2に対して、表3に示す記録条件で記録を行ない、実施例1と同様に、隣接する5トラックを記録した場合の中心トラックのdata to clock ジッターの記録パワー依存性を調べた。その結果を図6に示す。
【0191】
【表3】
【0192】
(実施例4)
実施例4の光ディスク2は、相変化型光記録層をGe:Ag:In:Sb:Te=3.0:1.0:2.5:72.5:21.0系の材料によって形成した以外は、実施例1の光ディスク2と同様の構成を有する。
【0193】
実施例4では、実施例3と同様にして相変化型光記録層の結晶化を行なった。このとき、消去パワーPeを5.7mW一定とした。
【0194】
このような光ディスク2に対して、表4に示す記録条件で記録を行ない、実施例1と同様に、隣接する5トラックを記録した場合の中心トラックのdata to clock ジッターの記録パワー依存性を調べた。その結果を図7に示す。
【0195】
【表4】
【0196】
(実施例5)
実施例5では、実施例4と同様の光ディスク2を用いて、表5に示す記録条件で2.4X記録を行ない、実施例1と同様に、隣接する5トラックを記録した場合の中心トラックのdata to clock ジッターの記録パワー依存性を調べた。その結果を図8に示す。表5に示す記録条件は下位の記録ドライブにおける記録条件であり、記録パワーも下位の記録ドライブにおける記録パワー範囲を示している。
【0197】
【表5】
【0198】
図4ないし図8に示すように、いずれも繰り返し記録1回目(DOW1)、繰り返し記録1000回目(DOW1000)の記録パワーマージンが広くなっていることが判る。また、ジッター特性の基準値が9%以下であることが判る。また、表5から判るように、記録パワーPwが15mW以下において、記録パワーに対するマージンが確保できていることが判る。
【0199】
(比較例)
比較例として、実施例1と同様の光ディスク2を用い、図10に示すパルス列にしたがう発光波形により表6に示す記録条件で記録を行なった。このとき、Δ2=0とする。また、消去パワーPeは、記録パワーPwに対してPe/Pw=0.30となるようにした。その結果を図9に示す。
【0200】
【表6】
【0201】
なお、上述した実施例で示した4倍速記録は、CLV記録における条件である。設定された記録線速範囲内の任意の線速でCLV記録する場合は、(i*T/a)+j(i=1,2,…、j=2,3,…)(単位はns)として、パルス幅を設定する。例えば、a=6とした場合、パルス幅の精度を上げるためにはaを2倍の12とすればよい。
【0202】
このように、基準クロックの周期Tに比例する量でパルス幅およびパルス開始時間あるいは終了時間を決めたり、基準クロックの周期Tに比例する量と一定時間との和でパルス幅およびパルス開始時間あるいは終了時間を決めたりすることにより、CAVでも記録も可能となる。
【0203】
CAV記録は、中間線速から最高線速までと、最低線速から中間線速までの各線速範囲で可能であり、さらに最低線速から最高線速までの線速範囲でも可能である。
【0204】
中間線速から最高線速の場合は、一定のパルス幅、例えば、中間加熱パルス幅をb*T(b=0.1、0.2,0.4,0.5…の中から任意の定数を選択)固定とすれば、各線速に相当する基準クロックの周期Tで決まるため、連続的に線速が変わっても記録が可能である。
【0205】
【発明の効果】
請求項1記載の発明の光記録装置によれば、低線速で低パワーでの記録を可能にする再結晶化速度が設定されている相変化型光記録媒体に対して、設定されている再結晶化速度以上の高線速で記録する場合にも、非晶質相を形成し易くすることができるので、下位互換性の高い相変化型光記録媒体に対する高線速記録を実現することができる。
【0206】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の光記録装置において、高線速になる程非晶質相を形成し易くしているために繰り返し記録(オーバーライト)に際しての消去比が低下するような相変化型光記録媒体に対しても、繰り返し記録に際しての消去比を向上させ、繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0207】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の光記録装置において、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、特に、高線速側での繰り返し記録に際しての消去比を向上させ、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0208】
請求項4記載の発明によれば、請求項1、2または3記載の光記録装置において、記録マーク長を制御して記録マークが不用意に長くなることを抑制することにより、1回目の記録時よりも劣化し易い2回目の記録に際してのジッター特性の劣化を抑制することができる。
【0209】
請求項5記載の発明によれば、請求項1ないし4のいずれか一に記載の光記録装置において、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0210】
請求項6記載の発明によれば、請求項1ないし5のいずれか一記載の光記録装置において、基本的には、照射パワーPw1,Pw2,Pw3を同じとするが、いずれの場合にも繰り返し記録特性を改善することができる。
【0211】
請求項7記載の発明によれば、請求項1ないし6のいずれか一に記載の光記録装置において、先頭部の加熱パルス幅OP1に加えて、中間部および後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを記録線速Vに応じて制御することにより、記録線速Vに依存することなく良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0212】
請求項8記載の発明によれば、請求項1ないし7のいずれか一に記載の光記録装置において、高線速記録である程、短くする方が好ましい後端部の冷却パルスを制御することで、記録マーク長を制御して、良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0213】
請求項9記載の発明によれば、請求項1または2記載の光記録装置において、照射パワーPb1と照射パワーPb2と記録線速Vに依らず等しくすることで光ピックアップの駆動制御を容易化しつつ、先頭部の加熱パルス,中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間を制御することで、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0214】
請求項10記載の発明によれば、請求項9記載の光記録装置において、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0215】
請求項11記載の発明によれば、請求項9または10記載の記録装置において、Pe/Pwを一定にした場合には低い記録パワーでの記録に際しての消去パワーも低下するために2回目記録(繰り返し記録1回目)の記録特性が劣化し、消去パワーの低下を防止するために消去パワーを一定にした場合には高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、Pe/Pwを記録パワーPw毎に変えることにより記録パワーPwに依らず繰り返し記録特性を改善することができる。
【0216】
請求項12記載の発明によれば、請求項1ないし11のいずれか一に記載の記録装置において、低記録パワー側で求められる消去パワーに固定すると高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とすることで、消去パワーPeを一定にした場合にも消去パワーを不足させることなく、処理を容易化することができる。
【0217】
請求項13記載の発明の光記録方法は、低線速で低パワーでの記録を可能にする再結晶化速度が設定されている相変化型光記録媒体に対して、設定されている再結晶化速度以上の高線速で記録する場合にも、非晶質相を形成し易くすることができるので、下位互換性の高い相変化型光記録媒体に対する高線速記録を実現することができる。
【0218】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の光記録方法において、高線速になる程非晶質相を形成し易くしているために繰り返し記録(オーバーライト)に際しての消去比が低下するような相変化型光記録媒体に対しても、繰り返し記録に際しての消去比を向上させ、繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0219】
請求項15記載の発明は、請求項13または14記載の光記録方法において、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、特に、高線速側での繰り返し記録に際しての消去比を向上させ、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0220】
請求項16記載の発明は、請求項13、14または15記載の光記録方法において、記録マーク長を制御して記録マークが不用意に長くなることを抑制することにより、1回目の記録時よりも劣化し易い2回目の記録に際してのジッター特性の劣化を抑制することができる。
【0221】
請求項17記載の発明は、請求項13ないし16のいずれか一に記載の光記録方法において、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0222】
請求項18記載の発明は、請求項13ないし17のいずれか一記載の光記録方法において、基本的には、照射パワーPw1,Pw2,Pw3を同じとするが、いずれの場合にも繰り返し記録特性を改善することができる。
【0223】
請求項19記載の発明は、請求項13ないし18のいずれか一に記載の光記録方法において、先頭部の加熱パルス幅OP1に加えて、中間部および後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを記録線速Vに応じて制御することにより、記録線速Vに依存することなく良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0224】
請求項20記載の発明は、請求項13ないし19のいずれか一に記載の光記録方法において、高線速記録である程短くする方が好ましい後端部の冷却パルスを制御することで、記録マーク長を制御して、良好な繰り返し記録特性を得ることができる。
【0225】
請求項21記載の発明は、請求項13または14記載の光記録方法において、照射パワーPb1と照射パワーPb2と記録線速Vに依らず等しくして光ピックアップの駆動制御を容易化しつつ、先頭部の加熱パルス,中間部の加熱パルス,後端部の加熱パルスの開始時間を制御することで、高線速になる程非晶質相を形成し易くしている相変化型光記録媒体に対して、高線速側での繰り返し記録特性を向上させることができる。
【0226】
請求項22記載の発明は、請求項21記載の光記録方法において、記録マークの先端部をより正確に制御することができる。
【0227】
請求項23記載の発明は、請求項21または22記載の記録方法において、Pe/Pwを一定にした場合には低い記録パワーでの記録に際しての消去パワーも低下するために2回目記録(繰り返し記録1回目)の記録特性が劣化し、消去パワーの低下を防止するために消去パワーを一定にした場合には高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、Pe/Pwを記録パワーPw毎に変えることにより記録パワーに依らず繰り返し記録特性を改善することができる。
【0228】
請求項24記載の発明は、請求項13ないし23のいずれか一に記載の記録方法において、低記録パワー側で求められる消去パワーに固定すると高記録パワーでの消去パワーが不足するという不具合が生じるが、中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とすることで、消去パワーPeを一定にした場合にも消去パワーを不足させることなく、処理を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の光ディスク装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】半導体レーザから照射するレーザ光の発光波形を示す説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の光ディスク装置が半導体レーザから照射するレーザ光の発光波形を示す説明図である。
【図4】実施例1においてdata to clockジッターの記録パワー依存性を示すグラフである。
【図5】実施例2においてdata to clockジッターの記録パワー依存性を示すグラフである。
【図6】実施例3においてdata to clockジッターの記録パワー依存性を示すグラフである。
【図7】実施例4においてdata to clockジッターの記録パワー依存性を示すグラフである。
【図8】実施例5においてdata to clockジッターの記録パワー依存性を示すグラフである。
【図9】比較例においてdata to clockジッターの記録パワー依存性を示すグラフである。
【図10】半導体レーザから照射するレーザ光の従来の発光波形を示す説明図である。
【符号の説明】
1 光記録装置
3 相対移動手段
10 光ピックアップ
20 記録手段、消去手段、再生手段
Claims (24)
- 相変化型光記録媒体に対して光を照射する光ピックアップと、
前記光ピックアップに対して前記相変化型光記録媒体を相対的に移動させる相対移動手段と、
周期Tの基準クロックを発生させるクロック発生手段と、
前記光ピックアップを駆動制御することで、対をなす加熱パルスOPiと冷却パルスFPiとによって構成される幅T(T=OPi+FPi)のパルス部をi個(i=1,…,m)有して、先頭のパルス部である先頭部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOP1,FP1、続く中間のパルス部である中間部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOPj,FPj(j=2,…,m−1)、後端のパルス部である後端部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOPm,FPm(ただし、m=n−2,nは2以上の整数)とするパルス列にしたがう発光波形の光を前記光ピックアップから照射させることにより、時間的な長さがnTである記録マークを前記相変化型光記録媒体に形成する記録手段と、
を具備し、
前記記録手段は、前記後端部の冷却パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb1と、前記先頭部および前記中間部の冷却パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb2とを異ならせるようにした光記録装置。 - 消去パワーPeの光を前記光ピックアップから照射させることにより前記相変化型光記録媒体に形成された記録マークを消去する消去手段と、
再生パワーPrの光を前記光ピックアップから照射させることにより前記相変化型光記録媒体に形成された記録マークを再生する再生手段と、
を具備し、
前記記録手段は、前記パルス列中の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPwと、消去パワーPeと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、
Pw>Pe≧Pb1>Pb2
とし、かつ、再生パワーPrと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、
Pb1>Pr≧Pb2
とする請求項1記載の光記録装置。 - 前記記録手段は、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速Vmaxまでの範囲における照射パワーPwと、消去パワーPeと、再生パワーPrと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、
Pw>Pe≧Pb1>Pb2,
Pb1>Pr≧Pb2,
ただし、Pb1=Pb2+(Pe−Pb2)*(2V−Vmax)/Vmax
とし、記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲における照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を、
Pb1=Pb2
とする請求項1または2記載の光記録装置。 - 前記記録手段は、前記先頭部の加熱パルス,前記中間部の加熱パルス,前記後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させる請求項1、2または3記載の光記録装置。
- 前記記録手段は、前記先頭部の加熱パルスの開始時間を前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させる請求項1ないし4のいずれか一に記載の光記録装置。
- 前記記録手段は、前記先頭部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw1と、前記中間部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw2と、前記後端部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw3とを、すべて同じとするか、すべて異ならせるか、または、いずれか2つを同じとする請求項1ないし5のいずれか一記載の光記録装置。
- 前記記録手段は、前記先頭部の加熱パルス幅OP1を0.3T≦OP1≦0.8Tとし、前記中間部および前記後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲では0.2T≦OPj,OPm≦0.6Tとし、記録線速Vが中間線速度から最高線速までの範囲では0.3T≦OPj,OPm≦0.7Tとする請求項1ないし6のいずれか一に記載の光記録装置。
- 前記記録手段は、前記後端部の冷却パルス幅FPmを0≦FPm≦1.5Tとする請求項1ないし7のいずれか一に記載の光記録装置。
- 前記記録手段は、照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を記録線速Vに依らず、
Pb1=Pb2
とし、前記先頭部の加熱パルス,前記中間部の加熱パルス,前記後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させる請求項1または2記載の光記録装置。 - 前記先頭部の加熱パルスの開始時間を、前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させる請求項9記載の光記録装置。
- 前記記録手段は、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeと記録パワーPwとの比Pe/Pwを、記録パワーPw毎に変える請求項9または10記載の記録装置。
- 前記記録手段は、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とする請求項1ないし11のいずれか一に記載の記録装置。
- 相変化型光記録媒体に対して光を照射する光ピックアップと、前記光ピックアップに対して前記相変化型光記録媒体を相対的に移動させる相対移動手段と、周期Tの基準クロックを発生させるクロック発生手段と、を具備する光記録装置を用いた光記録方法において、
前記光ピックアップを駆動制御することで、対をなす加熱パルスOPiと冷却パルスFPiとによって構成される幅T(T=OPi+FPi)のパルス部をi個(i=1,…,m)有して、先頭のパルス部である先頭部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOP1,FP1、続く中間のパルス部である中間部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOPj,FPj(j=2,…,m−1)、後端のパルス部である後端部の加熱パルスおよび冷却パルスの各パルス幅をOPm,FPm(ただし、m=n−2,nは2以上の整数)とするパルス列にしたがう発光波形の光を前記光ピックアップから照射させることにより、時間的な長さがnTである記録マークを前記相変化型光記録媒体に形成する際に、前記後端部の冷却パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb1と、前記先頭部および前記中間部の冷却パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPb2とを異ならせるようにしたことを特徴とする光記録方法。 - 前記パルス列中の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる光の照射パワーPwと、前記光ピックアップから照射させることにより前記相変化型光記録媒体に形成された記録マークを消去する消去パワーPeと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、
Pw>Pe≧Pb1>Pb2
とし、かつ、前記光ピックアップから照射させることにより前記相変化型光記録媒体に形成された記録マークを再生する再生パワーPrと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、
Pb1>Pr≧Pb2
とするようにしたことを特徴とする請求項13記載の光記録方法。 - 前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速Vmaxまでの範囲における照射パワーPwと、消去パワーPeと、再生パワーPrと、照射パワーPb1と、照射パワーPb2との関係を、
Pw>Pe≧Pb1>Pb2,
Pb1>Pr≧Pb2,
ただし、Pb1=Pb2+(Pe−Pb2)*(2V−Vmax)/Vmax
とし、記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲における照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を、
Pb1=Pb2
とするようにしたことを特徴とする請求項13または14記載の光記録方法。 - 前記先頭部の加熱パルス,前記中間部の加熱パルス,前記後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させるようにしたことを特徴とする請求項13、14または15記載の光記録方法。
- 前記先頭部の加熱パルスの開始時間を前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させるようにしたことを特徴とする請求項13ないし16のいずれか一に記載の光記録方法。
- 前記先頭部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw1と、前記中間部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw2と、前記後端部の加熱パルスにおいて前記光ピックアップから照射させる照射パワーPw3とを、すべて同じとするか、すべて異ならせるか、または、いずれか2つを同じとするようにしたことを特徴とする請求項13ないし17のいずれか一記載の光記録方法。
- 前記先頭部の加熱パルス幅OP1を0.3T≦OP1≦0.8Tとし、前記中間部および前記後端部の加熱パルス幅OPj,OPmを、前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが最低線速から中間線速までの範囲では0.2T≦OPj,OPm≦0.6Tとし、記録線速Vが中間線速度から最高線速までの範囲では0.3T≦OPj,OPm≦0.7Tとするようにしたことを特徴とする請求項13ないし18のいずれか一に記載の光記録方法。
- 前記後端部の冷却パルス幅FPmを0≦FPm≦1.5Tとするようにしたことを特徴とする請求項13ないし19のいずれか一に記載の光記録方法。
- 照射パワーPb1と照射パワーPb2との関係を記録線速Vに依らず、
Pb1=Pb2
とし、前記先頭部の加熱パルス,前記中間部の加熱パルス,前記後端部の加熱パルスの開始時間を、基準クロックの基準位置から−0.5T〜0.5Tの間でそれぞれ変動させるようにしたことを特徴とする請求項13または14記載の光記録方法。 - 前記先頭部の加熱パルスの開始時間を、前記基準位置から−0.5T〜0.2Tの間で変動させるようにしたことを特徴とする請求項21記載の光記録方法。
- 前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeと記録パワーPwとの比Pe/Pwを、記録パワーPw毎に変えるようにしたことを特徴とする請求項21または22記載の記録方法。
- 前記相変化型光記録媒体に対する記録が可能な記録線速Vが中間線速から最高線速までの範囲での消去パワーPeを記録パワーPwに依らずに一定とするようにしたことを特徴とする請求項13ないし23のいずれか一に記載の記録方法。
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