JP4086224B2 - 光記録媒体及び光記録方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に光ビームを照射することによって、結晶と非結晶間を転移させて、情報の記録・再生を行ない、かつ書き換えが可能である相変化型光記録媒体、特に大容量光ファイル、DVD+RWに応用される相変化型光記録媒体およびその記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザービームのような光ビームの照射による情報の記録・再生及び書き換え可能な光記録媒体の一つとして、結晶と非結晶間の転移を利用した、いわゆる相変化型光記録媒体が従来から知られ、広く実用化されている。
相変化型光記録媒体は、初期にものに比してその進歩はめざましく最近ではかなりの大容量の画像データを扱うことが可能なってきているが、より大容量の記録媒体の出現が望まれているのは言うまでもなく、データをより高速に記録再生できるものが要求されている。
相変化型光記録媒体は、CD、DVDのような書き換え型記録媒体として普及しているが、その理由は大容量で高速記録が可能であることだけではなく、ROMとの互換性が高いことが挙げられる。
高速記録が可能なCD−ROM、CD−Rも実用化されているが、さらなる高速化が要求されている。しかし、高線速に対応したディスクは、低速ディスクに対応している低速ドライブでも記録できることが望ましい。CD−Rは、これが可能であり、広い線速に対応可能なものである。
高い線速で記録するためには、より高い記録パワーの出せるレーザーが必要になるが、低速ドライブに搭載されているレーザー光のパワーは、高線速対応ドライブのものより低いのが普通であり、高線速対応ディスクを低線速で、より低いパワーで記録することは線速範囲が広がれば広がるほど相変化型記録媒体では難しくなる。
さらにCD−ROMあるいはDVD−ROMとの互換を確保する必要から、感度を上げるために例えば反射率を必要以上に下げることはできない。
書き換え可能型DVDはここ数年の間に商品化されているが、商品化されているものでは2.4倍速が最高であり、より高線速に対応したディスク及びドライブはなく、しかも低線速ドライブで記録できる下位互換可能な高線速ディスクは、未だ商品化されていない。
【0003】
これらの要求を満たすためには、低い記録パワーでしかも記録パワーのマージンが広い相変化型光記録媒体の記録層および記録方法を最適化することがまず必要である。
相変化型光記録媒体の記録層を構成する材料の代表的なものとして、GeSbTe系,AgInSbTe系、GeAgInSbTe系の各材料が挙げられる。中でもSbTe系の状態図に示されているSb:Te=70:30(原子比)付近の共晶組成を基本にして、Ag、In、Geを添加して得られるAgInSbTe系、GeAgInSbTe系は、高密度でより高線速記録をしても繰り返し記録特性に優れた材料である。
【0004】
一方、記録層材料及び媒体構成以外に、記録方法に関する工夫もなされている。
所定の長さのマークを形成をするため、記録媒体に入射するレーザー光を複数のパルス状の発光波形で記録することが必要である。また特開2000−322740号公報には、低線速度から高線速度の範囲で所定のマーク長に記録する方法が開示されている。この方法は、マークを形成するための複数の加熱、冷却パルス部の組からなるマルチパルス部と、マーク間において、その記録パワーで決まる一定のパワーを照射する発光波形により、繰り返し記録を行なう方法であり、発光波形は従来用いられている方法であるが、先頭パルス、中間パルス、後部パルスを各記録線速で最適な記録特性を得るための方法である。
しかし、下位互換が可能でしかも高線速記録に対し、この方法をそのまま用いても特性の改善ができず、さらに最適な方法を見出す必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、上記従来技術に鑑みて、相変化型光記録媒体において、下位互換が可能でしかも高線速記録が可能な記録媒体及び記録方法を提供することである。特に、DVD書き換え型記録媒体において、DVDと等速の線速3.49m/sから、最大でその4倍である14m/s(13.96m/s)までの記録線速で記録ができ、しかも該光記録媒体でより低い記録線速と、より低い記録パワーで記録するドライブで記録が可能である下位互換がとれ、DVD−ROMとの互換も可能な記録媒体及びそれを用いた記録方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、本発明の(1)「基板上に、第1誘電体保護層、レーザー光を照射することによって結晶相と非晶質相の可逆的相変化に伴う光学定数の変化を利用した相変化型記録層、第2誘電体保護層及び反射層を順次設けられてなる相変化型記録媒体において、波長655nmから660nm、対物レンズのNAが0.65、盤面パワー12mWのDC光を照射して測定した該記録媒体の再結晶化上限線速度Vcu(m/s)が最高記録線速度Vmax.=14m/sと最低記録線速度Vmin.=3.49m/sの間にあって、Vcuが
【数12】
(Vmax.+Vmin.)/2<Vcu
<(Vmax.+Vmin.)/2+3
であることを特徴とする光記録媒体」、(2)「第2の誘電体保護層がイオウを含み、反射層がAgまたはAg合金で構成され、反射層と第2の誘電体保護層の間に膜厚が8nm以下のSiCまたはSiからなる硫化防止層が設けられたことを特徴とする前記第(1)項に記載の光記録媒体」、(3)「第1の誘電体保護層と記録層の間に、ZrO、TiO、SiOからなる混合物とYあるいはMgOのいずれかを含み膜厚が1nm〜4nmである第3の誘電体層が設けられたことを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載の光記録媒体」、(4)「記録層がAgInSbTeGeからなり、各元素の原子比(at%)が
【0007】
【数13】
0<Ag≦1
【0008】
【数14】
0<In≦3
【0009】
【数15】
65<Sb≦75
【0010】
【数16】
15<Te<25
【0011】
【数17】
2<Ge≦5
であって、これらの原子比の和が100%であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項の何れか1に記載の光記録媒体」、(5)「記録層がGeMnSbTeからなり、各元素の原子比が
【0012】
【数18】
0<Mn≦5
【0013】
【数19】
65<Sb≦75
【0014】
【数20】
15<Te<25
【0015】
【数21】
2<Ge≦5
であって、これらの原子比の和が100%であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項の何れか1に記載の光記録媒体」、(6)「記録層にGaが添加され、その添加量が3at%以下であることを特徴とする前記第(4)項または第(5)項に記載の光記録媒体」、(7)「情報が記録された前記第(1)項乃至第(6)項の何れかに記載の光記録媒体」により達成される。
【0016】
また、上記課題は、本発明の(8)「前記第(1)項乃至第(6)項の何れかに記載の光記録媒体の最低記録線速度が3.49m/s、最高記録線速度が14m/sであって、所定の時間の長さがnT(nは2以上の整数、Tは基準クロック)である記録マークを形成するための発光波形が、先頭部の加熱パルス、冷却パルスと中間部の加熱パルスと冷却パルスと最後部の加熱パルスと冷却パルスからなるパルス列であり、加熱パルス時間をOPi、冷却パルス時間をFPi(iは一個の加熱パルス部と一個の冷却パルス部を一組のパルス部とした場合のそのパルス数mでm=(n−2))とした場合に、先頭部の各パルス幅をOP1、FP1、後端部の各パルス幅をOPm、FPm、一個ないし複数個からなる中間部の各パルス幅がOPj、FPj(j=2〜m−1)の場合、前記第(1)項に記載のVcuより高い記録線速で記録するときに、OP1の開始時間を形成されるマークの先端部から、1T以上遅れて記録することを特徴とする光記録方法」、(9)「マーク形成するための発光波形の加熱、冷却パルスを照射する各パワーを記録パワー(Pw)、ボトムパワー(Pb)としたときに、マークと次のマークを形成する間に照射するパワーを消去パワー(Pe)とし、この消去パワーが、2値であって、後端部の冷却パルスの後に照射され、記録パワーの変化とともに変動する部分Pevと次のマークの先端加熱パルス部まで照射する一定の値の消去パワーPecとからなり、Pevの照射時間がT以下であることを特徴とする前記第(8)項に記載の光記録方法」、(10)「2つの消去パワー、Pev、Pecが、中間記録線速から最高記録線速の間において、Pevは記録パワーとともに変化し、Pecは最もマークの消去比がよい一定のパワーの2値であり、最低記録線速から中間記録線速の間において、Pec=Pevであり、1値となることを特徴とする前記第(9)項に記載の光記録方法」、(11)「Fpmの終了時間Lpを、形成されるマークの後端部から、
【0017】
【数22】
0≦Lp<(1−OPm)
の時間だけ速く終わることを特徴とする前記第(8)項に記載の光記録方法」、(12)「中間線速(Vmax.+Vmin.)/2より高い記録線速で記録するときの、記録パワーPwと消去パワーPevの比Pev/Pwが、0.2から0.5であることを特徴とする前記第(8)項乃至第(11)項の何れか1に記載の光記録方法」、(13)「最低線速から中間線速(Vmax.+Vmin.)/2以下の各パルス幅OP1、OPj、OPmが、0.3*Tから0.6*Tの範囲であることを特徴とする前記第(8)項に記載の光記録方法」、(14)「中間線速(Vmax.+Vmin.)/2以上から最高線速での、各パルス幅OP1、OPj、OPmが、0.4*Tから0.7*Tの範囲であることを特徴とする前記第(8)項に記載の光記録方法」により達成される。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
従来の記録媒体の構成は、透明基板上に、第1の誘電体保護層、非晶質相と結晶相の可逆的相変化をする相変化型記録層、第1の誘電体保護層、反射層の順に積層したものが基本である。
用いる基板としては、記録再生光の波長に対し透明である、ポリカーボネート(PC)、ポリメタアクリル酸(PMMA)などのプラスチックやガラスが挙げられるが、特にポリカーボネート製の基板が好ましい。
【0019】
基板と記録層の間に用いる第1誘電体保護層、記録層と反射層の間に用いる第2誘電体保護層を構成する材料としては、SiOx、ZnO、SnO2、Al23、TiO2、In23、MgO、ZrO2、Ta25等の金属酸化物、Si34、AlN、TiN、BN、ZrN等の窒化物、ZnS、TaS4、等の硫化物、SiC、TaC、B4C、WC、TiC、ZrC等の炭化物が挙げられる。これらの材料は、単体で保護層あるいは混合物として用いることもできる。
中でも、ZnSとSiOの混合物が相変化型記録媒体では、一般的に用いられており、その混合比は80:20(モル比)がよい。
第1の誘電体保護層は、熱伝導率が低く、比熱が小さく、オーバーライトにより結晶化しない、加熱と急冷の多数回の履歴によるクラックの発生、元素の拡散などがないことがよい。ZnS-SiO(80:20)はこれら条件に対し適しており、第1の誘電体保護層にも用いられている。
しかしながら、線速が高くなるほど、より短時間に加熱、急冷を行なう必要があり、より材料の検討が必要になる。ZrOは、Yを3mol%から6mol%を含む混合物は屈折率が、ZnSSiOとほぼ同じかそれよりも大きく、熱伝導率も低い。
バルクにおける熱伝導率はレーザーフラッシュ法により測定したところ、ZrOを主成分とする系として、ZrO、ZrO・SiO(5mol%)、ZrO・TiO(50mol%)、ZrO・TiO(40mol%)・SiO(20at%)がそれぞれ、5.1、3.5、1.73、2.6(W/mK)、ZnS・SiO(20mol%)が、8.4(W/mK)であった。屈折率(n)は、ZrO・SiO(5mol%以外は、すべて2以上であった。また、Yの代わりに、MgOを用いてもよい。いずれもスパッタ法による成膜のためのターゲットを作製する際に、ターゲットの割れを防止するために用いる材料である。
【0020】
一方、これら材料を第2の誘電体保護層に用いて、媒体を作製し、記録後に80℃、85%RHで記録マークの保存性を調べたところ、ZrOの含有量が50at%より多い系の場合は、マークが消滅するか、ジッター劣化が大きい。
しかし、ZrO系の繰り返しオーバーライト特性は良く、1000回記録した後のジッター劣化はZnSSiOより少なかった。そこで、好ましい材料としては、SiOは5〜50mol%,ZrOは20〜50mol%添加することが好ましい。
記録マークの保存性は、保存性の高い記録層材料を用いることにより、劣化を低くできることがわかっている。ZrO系は、結晶化を促進させる作用もあり、より高線速でオーバーライトするにはより効果的になる。
また、第2の誘電体保護層として、従来用いているZnS−SiO(80:20)でもよい。特許第2511964号公報には、ZrO単体あるいはSiO単体を記録層と接するように設けることが開示されているが、これは、ZrO2単体であり、しかも膜厚が30nm以上である。本発明のように混合物であり、ZrOの結晶化を抑制させる働きとしてSiOを添加すること、結晶化促進をさせる記述がない。
【0021】
さらに、ZrO系保護層材料を第1の誘電体保護層と記録層の間に設けることも効果的である。この場合は、膜厚は1nm以上でよい。
第1の誘電体保護層の膜厚は、45乃至250nmの範囲として、65nm乃至200nmが好ましい。45nmより薄くなると、耐環境性保護機能の低下、耐熱性低下、畜熱効果の低下となり好ましくない。繰り返しオーバーライト特性の劣化が大きくなる。250nmより厚くなると、スパッタ法等による製膜過程において、膜温度の上昇により膜剥離やクラックが生じる。
第2の誘電体保護層の膜厚は5nm乃至50nmの範囲とし、8nm乃至20nmが好ましい。5nmより薄いと、記録感度が低下する。50nmより厚くなると、温度上昇による変形、放熱性の低下により繰り返しオーバーライト特性が悪くなる。
【0022】
反射層を構成する材料としては、Al,Ag,Cu,Pd,Cr,Ta,Tiなどの金属材料を挙げることができる。膜厚は、50nm乃至250nm程度が好ましく、特に100nm以上がよい。膜厚が厚くなり過ぎると放熱性がより向上するが、薄膜を作製する間に媒体の温度上昇により、基板の変形が起きてしまう。DVDの場合は、基板の厚さがCDの半分の0.6mmであるために、変形がより大きくなり易い。膜厚が薄すぎると、放熱性が悪くなり記録特性が劣化し、また記録感度の低下、記録パワーに対するマージンが狭くなる。
反射層は、従来は、AlあるいはAl合金を用いてきたが、DVDの2倍速では、熱伝導率がより高いAgを用いることにより、特性が向上した。線速が速くなると、冷却速度が大きくなるがマーク形成する際に、発光パルスの加熱パルス時間を長くする必要があった。これは基準クロックが小さくなるために、加熱不足になるためである。パワーを大きくしていけばよいがパワーの限界がある。
一方、加熱時間を長くすると、冷却時間が短くなってしまい冷却時間の不足が起きるため、マークが形成しにくくなる。これは、一つの加熱と冷却のパルス時間の和が基準クロックであり、この制約の中で変えているためである。そこで、媒体で冷却効率を上げるために、反射層をAgで形成するのが好ましい。
【0023】
しかしながら、ここで第2の誘電体保護層がイオウを含む材料で、反射層がAgでそれぞれ形成される場合、高温高湿下ではAgSが生成されて、これが特性劣化とか欠陥発生原因になり問題となる場合がある。そのような問題の対応策として、本発明者等は、反射層と第2の誘電体保護層の間に硫化反応防止層を設け、その材料として酸化物、窒化物、炭化物あるいは金属を用いることを鋭意検討した結果、Si、SiC、ZrO、MgO、TiOxが好ましく、特にSiCがAgとSとの反応防止に有効であり、膜厚を3nm程度に薄く形成しても高い効果が得られるを確認した。
硫化反応防止層の膜厚は2nm以上、上限は10nmが好ましい。これ以上厚いと、反射層と第2誘電体保護層との距離が離れるため放熱効率が下がってしまい、また吸収係数が高いために反射率が低下してしまう。
反射層をAgで形成すると特性が向上する旨前記したが、硫化防止層は、Agそのものの腐食性(硫化性)に対して効果を示すものの、反射層と硫化防止層との剥離が問題になる場合がある。したがって、Agからなる反射層と硫化防止層との密着性を高めるのに、反射層にAg単体を用いる場合、薄膜作製時のスパッタリング条件(アルゴンガス圧)を最適化して、Agの結晶粒径を小さくし、粒成長を抑制すれば、Agの薄膜表面が平滑になって、密着性が向上させることができて好ましい。粒径が大きくなるにつれ、表面が凹凸状になって密着性が弱い箇所から剥がれやすくなり好ましくない。
このAgの結晶粒径が制御されたAg単体からなる反射層は密着性が高いため、硫化防止層の形成の如何を問わず隣接層との剥離防止に有効である。
【0024】
また、本発明の相変化型光記録媒体においては、該媒体を指粉、油成分あるいは外気等から保護し耐環境性を向上させるために、反射層上に紫外線硬化樹脂を硬化させる等して形成される保護膜(環境保護層)を設けることができる。
このような環境保護層を設ける場合、反射層との密着性が高いことが望ましい。特に反射層にAg単体を用いる場合、その配慮が必要であり、そのために環境保護層として用いる紫外線硬化型樹脂の硬化条件あるいは厚さを最適化することによって、密着性を高めることができる。
しかし、最適条件で作製されていなかったり、記録膜のない基板を貼り合わせる前の保管条件、または基板自身あるいは紫外線硬化型樹脂の吸湿によって、劣化する可能性はある。
以上のようなAg単体を用いる場合に懸念される課題を回避するには、Ag単体に換えて、Agを95at%以上、残りをCu及びNiを添加した合金、例えば、AgxCuyNi1−x−y、x≧95、y≦5(at%)用いることが好ましく、信頼性をが向上させることができる。Agに対する添加量は、5at%を超えると熱伝導率が著しく減少する傾向があるため、2at%以下が好ましい。Agの膜をスパッタ法により作製する場合に、Ag膜の結晶粒径を小さくするために基板とターゲット間にかけるパワーは、3kW以下がよい。これ以上だと結晶粒が大きくなる。Agは、熱伝導率が金属の中では、Al、Auに比べて高く、反射層に用いた場合に放熱性がよい。低い記録線速側では高い冷却速度が必要となる。特に、最低線速から、中間の線速領域では、再結晶化速度が高いため冷却速度が高いほどマークが形成し易い。
また、低い記録パワーでは、感度を高めるために加熱パルス幅を広げ記録層の温度を上げようとすると、冷却パルス幅がその分短くなる。冷却速度が高くなればこの冷却パルス幅をより広くすることがなくなるため、記録感度が上がる。
【0025】
本発明の相変化型光記録媒体の記録層の膜厚は、10nm〜20nmが好ましく、10nm以下では、結晶と非晶質相の反射率差が小さくなり、これ以上厚いと記録感度、繰り返しオーバーライト特性が悪くなる傾向がある。
該記録層を構成する相変化型記録材料として、Sb70Te30付近の共晶組成を基本とし、Ag、InさらにGeを添加したAgInSbTe系、AgInSbTeGe系のそれぞれの材料が、他の材料に比して高線速でしかも高密度の記録に適しているため、従来から注目されている。
しかしながら本発明者等の検討によれば、Sbは、Teに対する比率が大きくなるほど、特にSb量が80at%を超えると結晶化速度が高くなるが、反面保存性が悪くしかも非晶質相を形成しにくくなる傾向があり、従って、高線速記録に対応するためには、Sb量が65at%以上80at%より少ない方が好ましく、一方Te量は15at%以上25at%以下が好ましいことを確認した。
【0026】
Geは遅いにかかわらず、記録したマークの高温環境下での保存性を向上させるのに、重要な元素である。GeとTeの結合エネルギーが大きく、しかもGe添加量が増加する程、結晶化温度を高くするため保存性がよいと考えられる。しかし、あまり多く入れると結晶化温度がさらに高くなり、結晶化速度も遅くなるので5at%以下がよい。
Agを添加すると、記録マークを安定化させるが、結晶化温度はあまり増加させない。Agの添加量があまり多いと結晶化の速度を下げてしまうため、高々1at%程度の添加量が好ましい。
また、Inは、結晶化速度を上げるとともに、結晶化温度が上がるので保存性も向上させる効果を有するが、反面偏析しやすく、多く入れると繰り返しオーバーライト特性の劣化と再生光パワーに対する劣化が起きる傾向がある。そのためInの添加量は、5at%以下が好ましく、特に3at%以下が好ましい。
【0027】
In以外に、結晶化速度を速くするものにGaがある。Gaは同量のInに比べ、結晶化速度をより速くするが、結晶化温度もより高くなる。Geが5at%で、Gaが5at%以上になると結晶化温度が200℃をはるかに超えて、250℃以上にもなる。そのため、記録層を非晶質状態から結晶化させるための初期化過程において、トラック一周の反射率分布が大きくなり、記録特性、データエラーの原因になるため、Gaは結晶化速度を速くさせるための補助的な元素として、3at%以下添加するのがよい。
【0028】
AgInSbTeGe系は、より高線速な材料としては限界があり、Ag,Inに代わる元素を検討した結果、結晶化速度を上げるが必要以上に上げない元素として、Mnが効果的であることがわかった。
Mnは多く添加しても、オーバーライト特性を劣化させずに保存特性も良好である。結晶化温度も上げるが量に対する増加量は小さく、再生光劣化も小さい。Mnは、多くて5at%入れれば充分である。
このように、GeMnSbTe系も高線速に適した材料であるが、さらにGaを添加し結晶化速度と保存性を向上させることができる。
【0029】
以上説明した相変化型光記録媒体は、記録波長が400〜780nmの範囲で記録再生が可能である。DVDの場合、波長650nm、対物レンズの開口率を0.60〜0.65とし、入射光のビーム径を1μm以下とする。そのため、基板の厚さは0.6mmとし、収差を小さくしている。
マークが書き込まれる溝部と溝部のピッチは、0.74μm、溝の深さは15nm〜45nm、溝幅は0.2〜0.3μmとする。溝は、約820kHzの周期をもつ蛇行状溝となっている。
アドレス部は、蛇行溝の周波数の位相を変調させ、この位相変化部分を検出し、2値化信号に変換しアドレス(番号)を読み取る。この蛇行部の振幅は、5nmから20nmである。記録線密度は、0.267μm/bitで、(8−16)変調方法で記録する。最短マーク長は0.4μmになる。
DVDの2倍速は、線速7m/s(6.98m/s)であり、基準クロック周波数は52.3MHz(T:19.1ナノ秒)になる。4倍速では、線速14m/s(13.96m/s)になり基準クロック周波数は105MHz(T:9.6ナノ秒)である。
書き換え型DVDには、すでにDVD−RAM、DVD−RW、DVD+RWといった規格の異なる記録媒体及びドライブが商品化されているが、DVD+RWは、記録線速がDVDの1倍から2.4倍速である。記録パワーは、最大15mW、消去パワーは最大8mWである。
【0030】
本発明は、主にこのDVD+RWの1倍速から4倍速まで記録ができ、しかも既に商品化されている記録パワー、消去パワーの限られた2.4倍速までのドライブでも記録が可能な下位互換が可能な記録媒体及び4倍速が記録可能な記録方法に関するものであり、まず、上記で述べた記録媒体の下位互換が可能な条件を考える必要がある。
相変化型光記録媒体に、一定のDC光を照射しながら、線速を1倍速から4倍速まで変えていき、このときの反射信号強度を測定していくと、通常ある線速から反射強度が減少し始め、それ以上の速い線速になるとさらに反射強度が減少しやがて飽和していく傾向がある。このときの反射強度が減少し始める線速を転移線速と呼ぶ。
この転移線速は主に、相変化型光記録媒体を構成する、記録層の構成元素の組成と各層の膜厚によって決まる。これは、転移線速以下では記録層が結晶状態にあり、転移線速より速い線速では非晶質相が形成し始め、充分高い線速では記録層全体が非晶質相になっている。1倍速から2.4倍速まで記録可能とするためには、転移線速を2.4倍すなわち、8.4m/sより低い線速とした。好ましい範囲は、最高記録線速より1m/sから1.5m/s遅くすることである。
一方、4倍速が最高線速の場合は転移線速を12.5m/sから13m/sとすることになる。しかし、この場合実際に1倍速から4倍速まで記録した場合、記録パワーは15mW以上が必要となる。
転移線速以下では、一旦非晶質相が形成されすぐに再結晶化されることも含まれるという意味から、この転移線速を最結晶化上限速度ということもできる。
【0031】
本発明の相変化型光記録媒体は、再結晶化上限速度Vcuが最高記録線速度Vmax.と最低記録線速度Vmin.に対して
【0032】
【数23】
(Vmax.+Vmin.)/2<Vcu
<{(Vmax.+Vmin.)/2}+3
で表わされるものであり、本発明はこのような相変化型光記録媒体を用いることによって、高線速記録と下位互換を可能にしたものである。
最低線速度が3.5m/s、最高線速度が14m/sの場合、Vcuは、8.75m/sから11.75m/sの間である。
特に、9m/sから11m/sが好ましいが、この好ましい線速は波長655nmから660nmの範囲にあるLDで、対物レンズのNAが0.65の光学ヘッドを用い、盤面パワー12mWを照射した場合の値である。これら条件を決めるにあたり、表6に示す記録層材料及び組成と基板の上に、下部保護層ZnSSiO、記録層、上部保護層ZnSSiO、硫化防止層SiC,反射層Agを表に示す条件で順に作製し、環境保護層をつけた後、接着材により0.6mmの膜のない基板と貼り合わせた。これを、波長659nm,NA0.65の対物レンズ゛を用いて、4倍速と1倍速で記録した。表1及び図6に、各線速において、4倍速は記録パワー17mW,1倍速は記録パワー15mWで5トラックを連続記録した後、中心のトラックのオーバーライト1000回後のジッターを測定した。
【0033】
【表1】
Figure 0004086224
記録媒体の再結晶化上限速度をこの範囲に設定することによって、下位互換と高線速記録を可能にすることができる。すなわち、この範囲に入りさえすれば、記録層材料あるいは各層の膜厚条件に限定的な条件はなく、下位互換と高線速記録を可能にできるが、より良い特性を得るには、記録層材料あるいは各層の膜厚等を前述したような条件を選択することが好ましい。
さらに、記録方法を最適化すると、高い線速でよりマージンを広げることができる。
【0034】
図1に記録消去するための従来用いられてきた発光波形を示す。照射パワーとして、記録パワー(Pw)、消去パワー(Pe)、ボトムパワー(Pb)があり、記録パワーを照射し、記録層を加熱するための先頭加熱パルス部OP1、中間部の加熱パルス部OPj(j=2〜m−1)、後部加熱パルス部OPmと、ボトムパワーを照射する冷却パルス部FP1、FPj、FPmがあり、さらに、中間部の加熱パルス部と冷却パルス部の時間の和がTになっている。パルスの数はマーク長nTに対し、(n−1)個である。先頭加熱部の開始時間は形成されるマークの先端0Tから1Tまでの範囲にしていた。
【0035】
しかし、本発明において、特に最高線速度4倍速(14m/s)では、1Tかそれよりも長い時間遅らせることがよいことがわかった。特にオーバーライト1回目において効果が顕著になる。
特に、4倍速では記録層が充分な記録パワー記録する場合、非晶質相に相変化し易い線速領域のためであり、オーバーライト1回目では記録マークの消去比が低いため、マーク長が所定の長さより長くなったり、消し残りが生じる。
先頭パルスの開始時間を1T以上に遅らせること以外に、後端冷却パルス部FPmの終了時間Lpを、形成されるマークの後端部から、0≦Lp<(1−OPm)の時間だけ速く終了させるとさらに、オーバーライト特性がよい。図2のOP1、OPj、OPmは、各記録線速毎にきまる基準クロックTに比例して変化する。より記録特性を最適化させるために、基準クロックTに比例する時間と固定された時間の和で決めてもよい。2.4倍速の、OP1が、0.33T+6nsec.、OPj,OPmが0.17T+6nsec.となる。さらに中間線速(Vmax.Vmin.)/2から最高線速の間の線速領域において、オーバーライト特性を向上させるためには、消去比を向上させ、さらに記録パワーに対するマージンを広げることが必要である。
図2に示すように、2つの消去パワー、Pev、Pecが2値であって、中間記録線速から最高記録線速の間において、Pevは記録パワーとともに変化し、Pecは最もマークの消去比がよい一定の消去パワーである。
【0036】
一方、最低記録線速から中間記録線速の間において、Pec=Pevであり、Pecの1値となる。
中間記録線速から最高記録線速領域の最適消去パワーのパワーマージンが狭いため、従来の相変化記録媒体の消去パワーは、記録パワーと消去パワーの比(Pe/Pw)を決めて、記録パワーの変化とともに変わる。
これがPevであるが、この場合より低い記録パワーでは消去パワーも低くなってしまうため、消去比が悪くなる。また、より高い記録パワーでは消去パワーも高くなり消去比が悪くなるよりも、消去パワーの温度上昇で1部非晶質相が形成されてしまう。従って、パワーマージンが狭くなる。
そこで、消去比が高い最適消去パワーをPevを照射したあとに、次のマークを記録するまでの間照射すれば消し残ることがほとんどなく、記録パワーマージンが広がる。また、消去パワーをPecの1値のみにしてしまうと、より低い記録パワーでは逆にマーク長を短くしてしまったりするため、ある時間の間は、Pevを照射した方がよい。
Pevの照射時間は好ましくは、0.5Tから1Tである。記録パワーPwとPevの比Pev/Pwを、中間線速より高い記録線速で記録するときは、0.2から0.5であり、線速が高くなるほど小さくなる。2.4倍速で(Pev/Pw)を0.4〜0.5、4倍速で0.30〜0.40である。
【0037】
各加熱パルス時間OP1、OPj、OPmは、中間線速(Vmax.+Vmin.)/2以上から最高線速での、各パルス幅OP1、OPj、OPmが、0.4*Tから0.7*Tの範囲が最適である。また、最低線速から中間線速では、各パルス幅OP1、OPj、OPmが、0.3*Tから0.6*Tの範囲とすることが最適である。媒体を記録再生するドライブには、これら発光波形が出力されるためのLD駆動回路が設けられている。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を示す。
(実施例1−3)
基板の溝ピッチを0.74μm、溝幅0.25μm、溝深さ25nm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板を用い、この上にスパッタリング方式によって各層を次のように順次形成した。
この基板上に、ZnS:SiO=80:20(mol%)のターゲットを使用して膜厚68nmの第一の誘電体保護層を形成した後、その上に、表1に示すGeAgInSbTe系材料からなる膜厚16nmの相変化記録層を形成した。
次に、この記録層の上に、第一の誘電体保護層と同じZnS:SiO=80:20(mol%)からなる膜厚9nmの第二の誘電体保護層を設けた。
第二の誘電体保護層の上に、膜厚4nmのSiCからなる硫化反応防止層を、さらに膜厚140nmのAgからなる反射層を順次設けた。Agの製膜の際、特にスパッタ投入パワーを3kWとした。
耐環境性を向上させるために、大日本インキ製SD318紫外線硬化樹脂を塗布後、硬化させ5ミクロン厚として保護膜とした。
最後に、膜のないもう一枚の同一基板を紫外線硬化樹脂(アクリル製、日本化薬DVD003)で厚さ40μmとして、貼合わせて記録媒体とした。これにより、80℃、85%RHまたは、95%の湿度で25℃と40℃の温度サイクル試験を行なっても欠陥のない媒体ができる。
こうして作成した相変化型光記録媒体について、波長810nm大口径LD(ビーム径;トラック方向1μmx半径方向75μm)を用い、線速9m/s、パワー1000mW、ヘッドの送り速度18μm/回転で記録層を結晶化させ、初期化した。
【0039】
記録再生は波長657nm、対物レンズNA0.65のピックアップヘッドを用いて、最高線速度14m/sで記録密度が0.267μm/bitとなるように記録した。記録データの変調方式は(8.16)変調。記録パワーは17mW、バイアスパワーは0.1mW、消去パワーは6mWとして記録した。
記録方法は、図2に示す記録波形にて行なった。各マーク長のパルスの数は、(n−1)とした。先頭パルスの開始時間を1.05T遅らせた。図2に対応する各時間は、OP1 5.8ナノ秒(0.61T)、FP1 3.7秒、OPj5.5ナノ秒(0.58T)、OPm 4.0ナノ秒、FPj 5.8ナノ秒(0.58T)、OPm 1.6ナノ秒とした。Tは9.5ナノ秒である。
表1に、隣接する5トラックをDOW(ダイレクトオーバーライト)10回記録した場合の中心トラックのdata to clockジッター値を示す。
1回記録のジッター(σ/T)は、7%から8%であった。10回記録後、80℃、85%RH、300時間、高温高湿環境下に置いた後のジッター増加量が1%以下を(○)、2%以下を(△)、それ以上の場合を(×)とした。再結晶化速度Vcuをさらに表2に示した。
【0040】
【表2】
Figure 0004086224
【0041】
(実施例4〜6)
実施例1〜3と同様の作製方法で媒体を作製した。記録層は、表2に示すとおりであり、初期化条件を線速10m/s、パワー1100mW、ヘッドの送り速度18μm/回転で記録層を結晶化させた。
記録方法は、実施例1〜3と同じである。表2に、隣接する5トラックをDOW10回記録した場合の中心トラックのdata to clockジッター値を示す。
1回記録のジッター(σ/T)は、7%から8%であった。10回記録後、80℃、85%RH、300時間、高温高湿環境下に置いた後のジッター増加量が1%以下を(○)、2%以下を(△)、それ以上の場合を(×)とした。再結晶化速度Vcuをさらに表3に示した。
【0042】
【表3】
Figure 0004086224
【0043】
(実施例7〜9)
実施例1〜3と同様の作製方法で媒体を作製した。記録層は、表3に示すとおりであり、初期化条件を線速9m/s、パワー1000mW、ヘッドの送り速度18μm/回転で記録層を結晶化させた。
記録方法は、実施例1〜3と同じである。表2に、隣接する5トラックをDOW10回記録した場合の中心トラックのdata to clockジッター値を示す。
1回記録のジッター(σ/T)は、7%から8%であった。10回記録後、80℃、85%RH、300時間、高温高湿環境下に置いた後のジッター増加量が1%以下を(○)、2%以下を(△)、それ以上の場合を(×)とした。再結晶化速度Vcuをさらに表4に示した。
【0044】
【表4】
Figure 0004086224
【0045】
(実施例10〜12)
実施例1〜3と同様の作製方法で媒体を作製した。記録層は、表3に示すとおりであり、初期化条件を線速9m/s、パワー1000mW、ヘッドの送り速度18μm/回転で記録層を結晶化させた。
記録方法は、実施例1〜3と同じである。表4に、隣接する5トラックをDOW10回記録した場合の中心トラックのdata to clockジッター値を示す。
1回記録のジッター(σ/T)は、7%から8%であった。10回記録後、80℃、85%RH、300時間、高温高湿環境下に置いた後のジッター増加量が1%以下を(○)、2%以下を(△)、それ以上の場合を(×)とした。再結晶化速度Vcuをさらに表5に示した。
【0046】
【表5】
Figure 0004086224
【0047】
(実施例13〜15)
媒体構成を実施例1から12の第1誘電体保護層と記録層の間にSiO,TiO,ZrO,Yあるいは、SiO,TiO,ZrO,MgOを第3の誘電体層を設けた図3のような構成とした。この層もこれら混合物のスパッタターゲットを用い、スパッタ法により作製した。膜厚は、2nmとした。記録方法は、実施例1から12と同じである。用いた記録層は、実施例1から3の場合の記録層材料である。
初期化条件は、線速9m/s、パワー1000mW、ヘッドの送り速度18μm/回転である。
【0048】
表6に、隣接する5トラックをDOW10回記録した場合とDOW1000回記録した場合の中心トラックのdata to clockジッター値を示す。1回記録のジッター(σ/T)は、7%から8%であった。10回記録後、80℃、85%RH、300時間、高温高湿環境下に置いた後のジッター増加量が1%以下を(○)、2%以下を(△)、それ以上の場合を(×)とした。実施例1から12において、DOW1000回後のジッターは、9%から10%の間であり、DOWのジッターが改善された。
【0049】
【表6】
Figure 0004086224
【0050】
(実施例16)
実施例1で用いた記録媒体を用いた。記録方法を記録線速14m/sの場合、Pec 5.7mWとし、Pevは記録パワーに対し、Pev=Pw*0.35となるようにした。
記録線速3.5m/sにおいて、Pecは、Pevと同じ値であり、Pev=Pw*0.53となるようにした。線速14m/sでは、OP1、OPj、OPmが、0.58*T、記録線速3.5m/sでは、OP1を0.4T、OPj、OPmを、0.30*Tとした。図4に、線速14m/sのジッターの記録パワー依存性を示す。
比較例として、実施例1の場合の、記録パワー依存性の記録線速14m/sの場合を示す。図5に線速3.5m/sの場合のジッターの記録パワー依存性を示す。
図4、図5から、最低記録線速から最高記録線速まで充分な記録特性が得られていることがわかる。
また、図5から従来のドライブの記録パワー条件である15mW以下で記録パワーマージンが広く、高線速記録対応の媒体でも下位互換が可能であることがわかる。
【0051】
【発明の効果】
本発明の光記録媒体は、高い記録線速に対応でき、低い線速で低い記録パワーで記録可能であり、さらに下位互換に対応できるものである。
また、本発明の光記録媒体は、第2の誘電体保護層がイオウを含む保護層AgまたはAg合金からなる反射層、反射層と第2の誘電体保護層の間に、Si,SiCからなり8nm以下の薄い膜厚の硫化防止層からなる構成にすることにより、低い記録線速から高い記録線速までの高い記録感度を持つ、特性のよいものである。
また、本発明の光記録媒体は、低い記録線速から高い記録線速まで、オーバーライト特性を向上させることができ優れた書き換え型である。
また、本発明の光記録方法は、特にレーザー駆動回路を具備したドライブを用いることにより、下位互換の特性を維持したまま、特に、中間線速度から最高線速度の記録線速範囲で、オーバーライト特性の向上と記録パワーマージンの広い記録特性が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】記録消去するための従来用いられてきた発光波形を示した図である。
【図2】記録消去するための本発明における発光波形を示した図である。
【図3】本発明の記録媒体の構成図の一例である。
【図4】本発明において線速で線速14m/sのジッターの記録パワー依存性を示した図である。
【図5】本発明において線速3.5m/sの場合のジッターの記録パワー依存性を示した図である。
【図6】本発明における、ジッタ−値と再結晶化上限線速度との関係を示し、(数1)を支持する図である。
【符号の説明】
1 基板
2 第1の誘電体保護層
3 第3の誘電体層
4 記録層
5 第2の誘電体保護層
6 硫化防止層
7 反射層

Claims (14)

  1. 基板上に、第1誘電体保護層、レーザー光を照射することによって結晶相と非晶質相の可逆的相変化に伴う光学定数の変化を利用した相変化型記録層、第2誘電体保護層及び反射層を順次設けられてなる相変化型記録媒体において、波長655nmから660nm、対物レンズのNAが0.65、盤面パワー12mWのDC光を照射して測定した該記録媒体の再結晶化上限線速度Vcu(m/s)が最高記録線速度Vmax.=14m/sと最低記録線速度Vmin.=3.49m/sの間にあって、Vcuが
    Figure 0004086224
    であることを特徴とする光記録媒体。
  2. 第2の誘電体保護層がイオウを含み、反射層がAgまたはAg合金で構成され、反射層と第2の誘電体保護層の間に膜厚が8nm以下のSiCまたはSiからなる硫化防止層が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
  3. 第1の誘電体保護層と記録層の間に、ZrO、TiO、SiOからなる混合物とYあるいはMgOのいずれかを含み膜厚が1nm〜4nmである第3の誘電体層が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の光記録媒体。
  4. 記録層がAgInSbTeGeからなり、各元素の原子比(at%)が
    Figure 0004086224
    Figure 0004086224
    Figure 0004086224
    Figure 0004086224
    Figure 0004086224
    であって、これらの原子比の和が100%であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1に記載の光記録媒体。
  5. 記録層がGeMnSbTeからなり、各元素の原子比が
    Figure 0004086224
    Figure 0004086224
    Figure 0004086224
    Figure 0004086224
    であって、これらの原子比の和が100%であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1に記載の光記録媒体。
  6. 記録層にGaが添加され、その添加量が3at%以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の光記録媒体。
  7. 情報が記録された請求項1乃至6の何れかに記載の光記録媒体。
  8. 請求項1乃至6の何れかに記載の光記録媒体の最低記録線速度が3.49m/s、最高記録線速度が14m/sであって、所定の時間の長さがnT(nは2以上の整数、Tは基準クロック)である記録マークを形成するための発光波形が、先頭部の加熱パルス、冷却パルスと中間部の加熱パルスと冷却パルスと最後部の加熱パルスと冷却パルスからなるパルス列であり、加熱パルス時間をOPi、冷却パルス時間をFPi(iは一個の加熱パルス部と一個の冷却パルス部を一組のパルス部とした場合のそのパルス数mでm=(n−2))とした場合に、先頭部の各パルス幅をOP1、FP1、後端部の各パルス幅をOPm、FPm、一個ないし複数個からなる中間部の各パルス幅がOPj、FPj(j=2〜m−1)の場合、請求項1に記載のVcuより高い記録線速で記録するときに、OP1の開始時間を形成されるマークの先端部から、1T以上遅れて記録することを特徴とする光記録方法。
  9. マーク形成するための発光波形の加熱、冷却パルスを照射する各パワーを記録パワー(Pw)、ボトムパワー(Pb)としたときに、マークと次のマークを形成する間に照射するパワーを消去パワー(Pe)とし、この消去パワーが、2値であって、後端部の冷却パルスの後に照射され、記録パワーの変化とともに変動する部分Pevと次のマークの先端加熱パルス部まで照射する一定の値の消去パワーPecとからなり、Pevの照射時間がT以下であることを特徴とする請求項8に記載の光記録方法。
  10. 2つの消去パワー、Pev、Pecが、中間記録線速から最高記録線速の間において、Pevは記録パワーとともに変化し、Pecは最もマークの消去比がよい一定のパワーの2値であり、最低記録線速から中間記録線速の間において、Pec=Pevであり、1値となることを特徴とする請求項9に記載の光記録方法。
  11. Fpmの終了時間Lpを、形成されるマークの後端部から、
    Figure 0004086224
    の時間だけ速く終わることを特徴とする請求項8に記載の光記録方法。
  12. 中間線速(Vmax.+Vmin.)/2より高い記録線速で記録するときの、記録パワーPwと消去パワーPevの比Pev/Pwが、0.2から0.5であることを特徴とする請求項8乃至11の何れか1に記載の光記録方法。
  13. 最低線速から中間線速(Vmax.+Vmin.)/2以下の各パルス幅OP1、OPj、OPmが、0.3*Tから0.6*Tの範囲であることを特徴とする請求項8に記載の光記録方法。
  14. 中間線速(Vmax.+Vmin.)/2以上から最高線速での、各パルス幅OP1、OPj、OPmが、0.4*Tから0.7*Tの範囲であることを特徴とする請求項8に記載の光記録方法。
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