JP2004022007A - 光記録方法及び光情報記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】書き換え可能な相変化記録媒体において、記録線速が3.5m/s以上から最大で約20m/sのより高線速で記録でき、かつこれら線速の範囲内で記録可能にするための、記録層材料、保護層材料、媒体構成及び記録方法を提供し、特に、DVD線速の2倍から5倍速で記録でき、かつ保存特性、初期結晶化が容易な光記録媒体及び最適な記録方法を提供すること。
【解決手段】所定の記録マークの時間の長さがnT(nは2以上の整数、Tは基準クロック)であり、該マークを先頭部と中間部と最後部のそれぞれの加熱パルスと冷却パルスからなるマルチパルス発光により記録する方法において、加熱パルス時間をOPi、冷却パルス時間をFPi(iは一組の加熱パルス部と冷却パルス部をパルス部とした場合のパルス数)とした場合に、前記パルスの長さOPi+FPi(i=1,…,m)が基準クロックTの1.5倍を基本とする。
【選択図】 図5
【解決手段】所定の記録マークの時間の長さがnT(nは2以上の整数、Tは基準クロック)であり、該マークを先頭部と中間部と最後部のそれぞれの加熱パルスと冷却パルスからなるマルチパルス発光により記録する方法において、加熱パルス時間をOPi、冷却パルス時間をFPi(iは一組の加熱パルス部と冷却パルス部をパルス部とした場合のパルス数)とした場合に、前記パルスの長さOPi+FPi(i=1,…,m)が基準クロックTの1.5倍を基本とする。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、相変化光ディスク、書き換え可能光ディスク等の光情報記録媒体及び光記録方法に関するもので、大容量光ファイル、DVD+RWに応用できる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
結晶、非晶質相の可逆的相変化を用いたいわゆる相変化型記録媒体は、書き換え可能な記録媒体として世界的に普及している。CD−RWにおいては、普及とともに高速記録化が進んでおり相変化記録媒体も高速記録が必須となっている。
【0003】
高速記録、すなわち、高い線速度で記録する場合、記録密度が高くなるとともに、レーザー光の発光パルスの基準クロックが短くなる。そのため、マーク(非晶質相)を形成するために、より遅い線速度で記録する場合に比べ、1つの光パルスの光照射(加熱)時間及び冷却に必要なより低いパワーを照射(あるいは、パワーを照射しない場合もある)する時間がともに短くなる。
【0004】
さらに、LDを用いた光記録においては、LDの立ちあがり時間、立下り時間が限られているために、一つの光パルスにおいて、加熱と冷却をし、マークを形成することが難しくなってくる。そのため、より高い記録パワーを照射すれば、加熱は可能となるが、記録パワーの限界がある。また、加熱後、急冷するため、冷却時間をある程度とる必要があるが長くできない。基準クロック内で、加熱と冷却を制御し、所定の長さのマークをより高い線速度で記録することが困難になってくる。
【0005】
その一方で、相変化記録層の記録材料及び媒体構成の最適化も必要である。高速記録で、繰り返し記録特性を確保するためには結晶化速度をより速くして、消去比を高くするため、記録層材料及び各構成元素の組成比の最適化を行う必要がある。
【0006】
しかし、あまり結晶化速度を速くすると非晶質相が形成しにくくなる。この場合、媒体構成を急冷構造にすれば良いが、記録パワーも必要になる。Ag−In−Sb−Te系、Sb−Te共晶系は、あまりSb量を多くすることで結晶化速度は速くできるが、非晶質相が形成しにくい上に、マークの高温環境下の保存性が悪くなる。また、媒体構成により、急冷構造とすると、感度不足の問題がある。
【0007】
高速記録により、繰り返し記録特性を劣化させる原因に短時間で、高温に加熱し、冷却を繰り返すため、記録層だけでなく、記録層と反射層の間にある上部保護層の劣化、すなわち構成元素が記録膜中に拡散したり、保護層が熱衝撃によりクラックを発生することが挙げられる。そこで高速化に伴い、記録層材料、保護層材料、反射層材料の検討が必要である。
【0008】
また、上記理由により、記録方法の検討も必要である。これまでに高線速記録に対応した記録層材料として公開されたものとして特開2000−313170号公報がある。該公報においては、式((SbxTel−x)yGe1−y)zM1−zは、MがIn及び/又はGaとしたものであるが、CD線速の約7倍の線速であり、特にGeInSbTeの4元素からなる記録材料が好ましいとされている。
【0009】
しかし、Inはあまり多く入れると、線速は速くなるが再生光パワーが高くなると再生劣化を伴うこと、繰り返し特性が悪くなるため、あまりより高速にすることが不可能になる。
【0010】
一方、記録方法において、高密度かつ高線速記録にともなうパルスの立ちあがり、立ち下がり時間が加熱パルスの時間程度になった場合の問題を解決する手段として、特開平9−134525号公報が知られている。該公報においては、一つの光パルスの加熱、冷却時間を基準クロックと同じかそれ以上とし、その分所定のマーク長とするためにパルスの数を減じて、記録感度の向上、変調度の向上を図るものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来技術は、主としてRewritable CD系に適用したものであり、より高密度、高線速記録に適用しても、十分な特性が得られない。この技術を高線速記録に適用した技術として、WO0072316が知られているが、しかし、この方法によれば、記録時に隣接トラックのマークを消してしまうこと、オーバーライト1回目の消し残り、溝と溝の間のランド部にマークが広がることが原因によるトラッキングが安定にかからないなどの問題があり、この結果より適用性が高く、広い特性マージンが得られる記録方法を見出す必要がでてきている。
【0012】
本発明は、書き換え可能な相変化記録媒体において、記録線速が3.5m/s以上から最大で約20m/sのより高線速で記録でき、かつこれら線速の範囲内で記録可能にするための、記録層材料、保護層材料、媒体構成及び記録方法を提供することを目的とする。
【0013】
特に、DVD線速の2倍から5倍速(線速7m/sから17.5m/s相当)で記録でき、かつ保存特性、初期結晶化が容易な光情報記録媒体及び最適な記録方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明では、所定の記録マークの時間の長さがnT(nは2以上の整数、Tは基準クロック)であり、該マークを先頭部の加熱パルス、冷却パルスと中間部の加熱パルスと冷却パルスと最後部の加熱パルスと冷却パルスからなるマルチパルスの光を発光させて記録する光記録方法において、加熱パルス時間をOPi、冷却パルス時間をFPi(iは一個の加熱パルス部と一個の冷却パルス部を一組のパルス部とした場合のそのパルス数m)とした場合に、先頭部の各パルス時間をOP1,EP1,後端部の各パルス時間をOPm,FPm,一個ないし複数個からなる中間部の各パルス時間がOPj,FPj(j=2,…,m−1)で表されるパルス列において、該パルスの長さOPi+FPi(i=1,…,m)が基準クロックTの1.5倍を基本とする光記録方法を最も主要な特徴とする。
【0015】
請求項2によれば、請求項1記載の光記録方法において、中間部のパルス時間OPj+FPj(j=2,…,m−1)が、基準クロックTの1.5倍を基本とする光記録方法を主要な特徴とする。
【0016】
請求項3によれば、請求項1又は2記載の光記録方法において、記録マーク長nTの内、
(i)n≦4の時、パルスの数を(n−1)以下とし、
(ii)5≦n≦8の時、パルスの数を(n−2)以下とし、
(iii)n=9及び10の時、パルスの数を(n−3)以下とし、
(iv)n=11の時、パルスの数を(n−4)以下とし、
(v)n=14の時、パルスの数を(n−5)以下
とする光記録方法を主要な特徴とする。
【0017】
請求項4によれば、請求項1から3のいずれか記載の光記録方法において、各マークの時間的な長さnTに対して、パルス列(OPi+FPi)の和(i=1,…,m)が、
(nT−1.0T)〜(nT+0.5T)
である光記録方法を最も主要な特徴とする。
【0018】
請求項5によれば、請求項1又は2記載の光記録方法において、加熱パルス部の時間が、3.5ナノ秒以上、後部冷却パルス時間が2.5ナノ秒以上である光記録方法を主要な特徴とする。
【0019】
請求項6によれば、一定の線密度で、記録半径位置によらず一定の記録線速度でその速度における一定の基準クロックで記録する場合、あるいは半径位置の内周から外周で連続的に線速度が変化し、それに伴い基準クロックが連続的に変化するいずれかの光記録方法において、先頭加熱パルスの開始時間を、基準クロックに比例した変化量で制御し、各マーク長毎にそれを制御する光記録方法を最も主要な特徴とする。
【0020】
請求項7によれば、請求項1から5のいずれか記載の光記録方法において、先頭パルス加熱時間、中間パルス加熱時間、後部加熱パルス時間を基準クロックに比例した時間と、一定時間の和で決まられる時間で制御し、各マーク長毎にそれを制御する光記録方法を主要な特徴とする。
【0021】
請求項8によれば、請求項1から5のいずれか記載の光記録方法において、後部冷却パルスの終了時間を、基準クロックに比例した変化量で制御し、各マーク長毎にそれを制御する光記録方法を主要な特徴とする。
【0022】
請求項9によれば、請求項1から5のいずれか記載の光記録方法において、加熱パルス時間に照射する記録パワーPw、冷却パルス時間内に照射するボトムパワーPb、及び消去するための消去パワーPeがPw>Pe>Pbであり、Pbが再生パワーPrに対し、Pb≦Prであり、記録線速毎に異なるPbとし、より高い線速Vh,低い線速Vlにおいて、それぞれのパワーPbをPbh,Pblとした時にPbh≧Pblとする光記録方法を主要な特徴とする。
【0023】
請求項10によれば、請求項1又は2に記載の光記録方法において、後部冷却パルスの後に補正パルス部を設け、そのパワーをPcとし、そのパワーがPw>Pc>Peであり、かつ補正パルス時間が、各記録マーク毎に異なる光記録方法を主要な特徴とする。
【0024】
請求項11によれば、請求項1又は2に記載の光記録方法において、後部冷却パルスの後に補正パルス部を設け、そのパワーをPcとし、そのパワーがPc<Peであり、かつ補正パルス時間が、各記録マーク毎に異なる光記録方法を主要な特徴とする。
【0025】
請求項12によれば、請求項1に記載の光記録方法において、n≦3の場合、パルス数が1個であり、
1.5*T < OP1+FP1 < 2.5*T
である光記録方法を主要な特徴とする。
【0026】
請求項13によれば、電磁波を照射することにより,結晶相と非晶質相の可逆的相変化を利用した相変化記録材料を記録層とする光情報記録媒体において、記録層の主要構成元素が、Ge,Mn,Sb,Teである光情報記録媒体を最も主要な特徴とする。
【0027】
請求項14によれば、請求項13記載の記録層において、添加元素Xを含み、
式 XαGeβMnγSbδTeε
で表わされ、XがGa,Sn,Seのすくなくとも一つを含み、α、β、γ、δ、εの各組成比(at%)が
0≦α≦5
1≦β<7
0<γ≦10
65≦δ<80
15≦ε≦25
α+β+γ+δ+ε=100
かつ、 γ≧α
である光情報記録媒体を主要な特徴とする。
【0028】
請求項15によれば、請求項14記載の光情報記録媒体において、前記記録層が昇温速度10℃/分での結晶化温度が150℃以上220℃以下である光情報記録媒体を主要な特徴とする。
【0029】
請求項16によれば、請求項13から15のいずれか記載の光情報記録媒体において、基板上に少なくとも下部保護層、記録層、上部保護層、反射層を設けたものであり,該反射層がAg又はAgを95%以上含む合金である光情報記録媒体を最も主要な特徴とする。
【0030】
請求項17によれば、請求項16記載の光情報記録媒体において、上部保護層がイオウを含む場合において、反射層との間に第2の上部保護層を設けた光情報記録媒体を主要な特徴とする。
【0031】
請求項18によれば、請求項16に記載の光情報記録媒体において、第2の上部保護層がSi又はSiCを主成分とする層からなる光情報記録媒体を主要な特徴とする。
【0032】
請求項19によれば、請求項17又は18記載の光情報記録媒体において,第2の上部保護層の膜厚が2nm以上10nm以下である光情報記録媒体を主要な特徴とする。
【0033】
請求項20によれば、請求項16記載の光情報記録媒体において、Ag合金が、
AgxCuyNi1−x−y ,x≧95,y≦5(at%)
である光情報記録媒体を主要な特徴とする。
【0034】
【発明の実施の形態】
従来、記録媒体の構成としては、図7に示すように透明基板上1に、誘電体下部保護層2、非晶質相と結晶相の可逆的相変化をする記録層3、上部保護層4、反射層5の順に積層したものが基本である。
【0035】
ここで、使用する基板は、記録再生するための光の波長に対し透明であり、材料としてポリカーボネート(PC)、ポリメタアクリル酸(PMMA)などのプラスチックやガラスがある。
【0036】
現在、安価なポリカーボネート製の基板が、CD、DVD、MOなどで用いられており、本発明においてもこれを主に使用する。下部保護層、上部保護層材料としては、SiOx、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgO、ZrO2、Ta2O5等の金属酸化物、Si3N4、AlN、TiN、BN、ZrN等の窒化物、ZnS、TaS4等の硫化物、SiC、TaC、B4C、WC、TiC、ZrC等の炭化物が挙げられる。
【0037】
これらの材料は、単体で保護層として用いることができ、また、混合物として用いることもできる。中でも、ZnSとSiO2の混合物が相変化型記録媒体では、一般的に用いられており、その混合比は80:20(モル比)が良い。下部保護層2は、ZnS・SiO2(80:20)を用いるが、これに限定されるものではない。
【0038】
一方、上部保護層は記録、消去時の熱制御に重要な役割を果たす。記録層を融点付近まで加熱するには、上部保護層の熱伝導率が低い方が蓄熱しやすく、記録層の温度を短時間にあげることができる。
【0039】
しかし、蓄熱は記録マークを形成する時だけでなく、マークを消去する場合にも、記録層を溶融させ結晶成長させるために必要である。だがその一方、上部保護層の蓄熱は、記録消去が完了した後はただちに放熱させる必要がある。そのために反射層が光を反射するだけでなく、放熱する役割を担っている。
【0040】
上部保護層は、熱伝導率が低く、比熱が小さく、オーバーライトにより結晶化しない、加熱と急冷の多数回の履歴によるクラックの発生、元素の拡散などがないことが良い。ZnS・SiO2はこれら条件に対し適しており、上部保護層にも用いられている。しかしながら、線速が高くなるほど、より短時間に加熱、急冷を行う必要がありより材料の検討が必要になる。さらに、感度を上げるためにも、より熱伝導率が低く、オーバーライト時の短時間に加熱と急冷の繰り返しに対する耐熱衝撃、クラックの発生の抑制、密着性を向上させる必要がある。
【0041】
他の保護層材料として、ZrO2を含む材料がある。ZrO2は屈折率がZnS・SiO2とほぼ同じかそれよりも大きく、2.0以上である。しかし、薄膜にする場合は、ターゲット材を使用しこれをスパッタリング法により作製する。ZrO2は、ターゲット作製時に、安定化させるためにY2O3を燒結助剤として使用する。その量は、2〜10mol%であり、好ましくは3〜6mol%が良い。
【0042】
以下で述べるZrO2はY2O3を3mol%添加したものを指す。
ZrO2、ZrO2・SiO2(5mol%)、ZnS・ZrO2(20mol%)、ZrO2・TiO2(50mol%)、ZnS・SiO2(20mol%)について、バルク状態の熱伝導率(室温)を測定した。順に、5.1、3.48、12.1、1.73、8.4(W/m・K)であった。屈折率(n)は、ZrO2・SiO2(5mol%)以外は、すべて2以上であった。
【0043】
中でもZnS・ZrO2(20mol%)は、2.3と最も高かった。減衰定数(k)は、ZnS・SiO2(20mol%)が最も小さく、ほぼ0であり、ZrO2を含む系はそれより大きい。光学定数の結果は、波長660nmの結果である。従って薄膜にした場合は、ZnS・SiO2以外はあまり膜厚を厚くすると光吸収が大きくなり、反射率を下げる原因となる。
【0044】
一方、これら上部保護層を用いて、媒体を作製した結果、記録後に80℃、85%RHで記録マークの保存性を調べたところ、ZrO2の場合は、マークが消滅するが、ZrO2系の繰り返しオーバーライト特性は良く、1000回記録した後のジッター劣化はZnS・SiO2より少なかった。
【0045】
これら検討の結果により、ZnS・SiO2にZrO2を添加することにより、繰り返しオーバーライト特性、感度がZnS・SiO2より良い。SiO2は5〜50mol%、ZrO2は5〜50mol%添加することが好ましい。ここで、ZnS:ZrO2:Y2O3:SiO2=72:10:3:15(mol%)の場合、屈折率2.1、熱伝導率5W/m・K、減衰係数は約10−5である。
【0046】
本発明において、下部保護層、上部保護層ともに、データ保存性と特性のバランスの良い、ZnS・SiO2を用いる。
【0047】
下部保護層の膜厚は、45〜250nmの範囲として、65〜200nmが好ましい。45nmより薄くなると、耐環境性保護機能の低下、耐熱性低下、畜熱効果の低下となり好ましくない。繰り返しオーバーライト特性の劣化が大きくなる。250nmより厚くなると、スパッタ法等による製膜過程において、膜温度の上昇により膜剥離やクラックが生じたり、記録時の感度の低下をもたらすので好ましくない。
【0048】
上部保護層の膜厚は5〜50nmの範囲とし、8〜20nmが好ましい。5nmより薄いと、記録感度が低下する。50nmより厚くなると、温度上昇による変形、放熱性の低下により繰り返しオーバーライト特性が悪くなる。反射層は、Al、Ag、Cu、Pd、Cr、Ta、Tiなどの金属材料を用いる。膜厚は、500nmから250nmが良い。膜厚が厚くなり過ぎると放熱性がより向上するが、薄膜を作製する間に媒体の温度上昇により、基板の変形が起きてしまう。DVDの場合は、基板の厚さがCDの半分の0.6mmであるために、変形がより大きくなり易い。
【0049】
反射層は、従来は、AlあるいはAl合金を用いてきたが、DVDの2倍速では、熱伝導率がより高いAgを用いることにより、特性が向上した。線速が速くなると、冷却速度が大きくなるがマーク形成する際に、発光パルスの加熱パルス時間を長くする必要があった。これは基準クロックが小さくなるために、加熱不足になるためである。パワーを大きくしていけば良いがパワーの限界がある。
【0050】
一方、加熱時間を長くすると、冷却時間が短くなってしまい冷却時間の不足が起きるため、マークが形成しにくくなる。これは、一つの加熱と冷却のパルス時間の和が基準クロックであり、この制約の中で変えているためである。そこで、媒体で冷却効率をあげるために、Agを用いるのが良い。
【0051】
しかし、ここで上部保護層がS(イオウ)を含み、反射層がAgの場合、高温高湿下ではAg2Sが形成されやすく、これが特性劣化、欠陥発生の原因になり、問題となる。そこで、反射層と上部保護層の間に第2の上部保護層6を設けることが必要になってくる(図8参照)。これまで、酸化物、窒化物、炭化物、金属について鋭意検討した結果、Si、SiC、ZrO2、MgO、TiOxが好ましい。Si、SiCは、Agとの密着性が良い。Si、SiCでは、SiはSiCよりも良い。
【0052】
しかし、これらは光吸収が大きく反射率を低くするため、膜厚はあまり厚くできない。一方、ZrO2、MgO、TiOxの酸化物系は、Agとの熱膨張係数の差が小さく、膜がはがれにくい。密着性も良く透明であるため、反射率を下げることもない。
【0053】
上部第2保護層の膜厚は、Ag2Sを形成しない程度に極力薄いことが良いが、3nm以上が良い。上限は10nmである。これ以上厚いと反射層と距離が離れるため、放熱効率がさがってしまう。ZrO2、MgO、TiOxの酸化物系は、成膜速度が遅い。本発明では、Si、SiCを用いる。反射層をAgにすることで、特性は向上するが、Agそのものの腐食性、上部保護層との密着性を考慮すると、Ag単体でも、薄膜作製時のスパッタリング条件を最適化すること、反射層の上に環境保護層として用いるアクリル系紫外線硬化型樹脂の硬化条件、厚さを最適化することで、実用上問題はなくAg単体でも良い。
【0054】
しかし、最適条件で作製されていなかったり、DVDのように、記録膜のない基板を貼り合わせる前の保管条件や、基板自身の吸湿、紫外線硬化型樹脂の吸湿により、劣化する懸念がある。そこで、Agを95at%以上、残りをCu及びNiを添加した合金、
AgxCuyNi1−x−y ,x≧95,y≦5(at%)
を用いることで、信頼性が向上する。CuとNiの割合は、NiよりもCuが多い方が良い。又、Agに対する添加量は、5at%を超えると、熱伝導率が著しく減少するため、好ましくは、2at%以下が良い。
【0055】
相変化記録層はこれまでSb70Te30付近の共晶組成を基本とした、AgInSbTe系、AgInSbTeGe系が記録特性が良いため用いられてきた。SbはTeに対する比率が大きくなるほど、また、Sb量が80at%を超えると、結晶化速度が高くなるが、保存性が悪く、しかも記録マークを形成しにくくなる。従って、高線速記録に対応するための好ましい量は、65at%以上、80at%より少ない方が良い。一方、Teは、15at%以上、25at%以下が良い。Geは遅いにかかわらず、記録したマークの高温環境下での保存性を向上させるのに、必須の元素である。
【0056】
中でもGe−Te間の結合エネルギーが大きく、しかもGe添加量が増加する程、結晶化温度を高くするため保存性が良い。しかし、あまり多く入れると結晶化温度がさらに高くなる。結晶化速度も遅くなるので限度がある。Agはマークを安定化させるが、結晶化温度はあまり増加させない。あまり多く入れると、結晶化の速度を下げてしまうため、結局多くは入れることができない。
【0057】
Inは、結晶化速度を上げるとともに、結晶化温度を上げるので、保存性も向上させるが、偏析しやすく、繰り返しオーバーライト特性の劣化と再生光パワーに対する劣化が起きる。従って、DVD 2倍速以上の高線速記録に対しては、AgInSbTeGe系、AgInSbTe系を見直すことが必要である。
【0058】
そこで、本発明においては、Ag、Inに代わる元素を検討した。Inと同様の効果があるものとしはGaがある。Gaは、同量のInに比べより結晶化速度を速くするが、結晶化温度もより高くなってしまう。従って、あまり多く入れることができない。Geが5at%で、Gaが6at%以上になると結晶化温度が200℃をはるかに超えて、250℃以上にもなる。そのため、記録層を非晶質状態から結晶化させるための初期化過程において、反射率が低くなること、トラック一周の反射率分布が大きくなり、記録特性、デ−タエラ−の原因になることから、初期化が難しくなる。従って、GeGaSbTe、GeInSbTe系は十分でない。
【0059】
そこで、本発明者らは、結晶化速度を速くするが、結晶化温度を必要以上に上げない元素ということで、希土類、アルカリ土類金属、遷移元素を検討した結果、Mn,Snが効果的であることがわかった。特に、MnはInと同じく結晶化速度を上げる。多く入れても、オーバーライト特性を劣化させずに保存特性も良好である。結晶化温度もあげるが量に対する増加量は小さい。再生光劣化も小さい。
【0060】
SnはMnよりも結晶化速度を高くするが、あまり多く入れると、オーバーライト特性が悪くなる。従って、GeMnSbTe系を基本とし、Sn、Ga、Snを添加して、結晶化速度を調整すること、マーク形成及びマークの安定性を向上させるために、Seを添加することが良いということが分かった。
【0061】
Sn、Ga、Snの好ましい範囲は、1〜3at%である。Mnは、3〜7at%が好ましい。また、これらGa、Snの量はMnよりも少ない方が良い。Seは3at%以下が良い。
【0062】
記録層の膜厚は10〜25nmの範囲が良く、薄すぎると、変調度、反射率が小さくなり、厚すぎると記録感度、繰り返し記録特性が悪くなる。本記録媒体は、DVD−ROMとの互換性をとるために、反射率が下がり、変調度が小さくなることはDVD−ROMプレーヤーでのトラッキング安定性が悪くなる理由からも記録層の膜厚を薄くすることはできない。
【0063】
以上の相変化型記録媒体は、記録波長が400〜780nmの範囲で記録再生が可能である。DVDの場合、波長650nm,対物レンズの開口率を0.60〜0.65とし、入射光のビ−ム径を1μm以下とする。そのため、基板の厚さは0.6mmとし、収差を小さくしている。マークが書きこまれる溝部と溝部のピッチは、0.74μm,溝の深さは15〜45nm、溝幅は0.2〜0.3μmとする。溝は、約820kHzの周期をもつ蛇行状溝となっている。
【0064】
アドレス部は、この位相を反転させ、この位相変化部分を検出し、2値化信号に変換しアドレス(番号)を読み取る。この蛇行部の振幅は、5nmから20nmである。記録線密度は、0.267μm/bitで、(8−16)変調方法で記録する。最短マーク長は0.4μmになる。DVDの2倍速は、線速7m/s(6.98m/s)であり、基準クロック周波数は52.3MHz(T:19.1ナノ秒)になる。
【0065】
5倍速の場合は、線速17.5m/s、基準クロック周波数は130.8MHz(T:7.65ナノ秒)になる。同じ記録密度で高線速になるほど、基準クロックが短くなるが、使用している650nmの波長を発振するLDのパルスの立ち上がり、立下り時間が、約2ナノ秒であるため、より速い線速度によっては基準クロックはパルスの立ち上がり、立下り時間に近づいてくる。このため、記録層を加熱、冷却するための時間が短くなるだけでなく、パルスの立ちあがり、立下り時間に要する時間を考慮すれば、実効的な加熱、冷却時間はより短くなってしまう。
【0066】
このため、記録マークが所定の長さにすることができないだけでなく、マークの面積が小さくなり、十分な信号特性が得られない。加熱時間が短くなる分、記録パワーをより高くすれば良いが、パワーにも限界がある。一方、冷却時間が短くなる分、媒体での放熱効率を高くするにしても、結局感度が悪くなること、より高い熱伝導率を求めるにしてもそのような材料も容易には見つけることもできない。
【0067】
従って、記録方法を新たに考えることが必要になってくる。従来の記録方法で用いてきた発光パルスのパルス波形を図4に示す。記録パワー(Pw)を照射し、加熱する加熱時間部OPi(i=1〜m)と消去パワー(Pe)及び再生パワーより低いパワーの状態の冷却時間部FPi(i=1〜m)の和を、基本的にTとなるように、加熱と冷却時間を調整し、最適条件としている。
【0068】
パルスの数は、パルスの数mは、各マーク長ともに(n−1)個である。先頭部の加熱パルスの開始時間は、所定のマーク長になるよう開始時間を調整する。先端パルス部は、冷却時間の和はTを超えることがある。線速が17.5m/sの場合、基準クロックが約7.5ナノ秒になり、1Tの長さのマークを記録する場合、加熱と冷却をこの時間内で制御しなければならないため、各々0.5Tとしても、4ナノ秒以下である。パルスの立ちあがりが1.5〜2ナノ秒であるため、発光開始してから発光を終了する時間内で十分、記録層が加熱されないし、加熱されても溝の中心部に限られてしまい、マークの面積が小さい、細長いマークになってしまう。また、冷却時間も同じことであり、十分な時間がとれないとマークが記録できなくなり、所定の長さのマークが形成しにくくなる。
【0069】
従来の方法でも、記録ができないわけではないが、線速が20m/sより速くなると、ますます高い記録パワーが必要となるか、記録できてもパルス時間のマージンがほとんどなくなり、実用化が困難である。
【0070】
そこで、このような問題により、将来的に、高密度、高線速記録において、記録マーク形成がますます困難になることが考えられる。その解決方法として、特開平9−134525号公報に示されているように、加熱、冷却パルスの和を1Tより長くとり、パルスの数を減らし、さらに3Tマークを除き、奇数長、偶数長で中間部、後部パルスの加熱、冷却パルス時間の幅をそれぞれ定義している。奇数マークでは、3Tのパルスは1個であり、n=5,7,9,…とマーク長が2T長くなる毎に加熱、冷却パルスが各1Tでその和が2Tのパルスを一個ずつ増加する。偶数では、4Tマークがパルス2個で、2T増える毎にパルスを一個ずつ増加することで、高速、高い密度で記録を可能にしている。
【0071】
この技術をDVDに展開した場合の発光波形を図3に示す。2T周期を、基本的にしている。この方法で、17.5m/sで記録した場合、記録感度が改善され、特にマークの面積が十分とれ、最長マークの振幅も十分とれる。
【0072】
しかし、面積が広くなる弊害として、溝と溝の間のランド部にもマークが広がること、記録された溝部の隣の溝に記録した場合に、記録済みの溝部のマークの一部が消されるクロスイレースや、再生時に隣接トラックの信号を拾ってしまうクロストークの影響が大きい。また、高い記録パワーになるほどマークの広がりがランド部まで及ぶために、トラッキングの制御が不安定になるなどの問題もある。さらに、一回目のオーバーライトの特性が悪いことも特徴である。
【0073】
記録線速が、DVDの5倍速である17.5m/sまでは、図3の方法において記録すると、マーク端部を制御する先頭パルス部と後端冷却パルスのマージンが狭い。そこで、これらのことからマージンが確保でき、一回目のオーバーライト時の特性、特にジッターの劣化を小さく、クロスイレースの影響を小さくすることが可能な記録方法として、一個のパルス時間 OPi+FPi(i=1,2,…,m)を基本クロックの1.5倍とすることにより、1T周期よりも、加熱時間、冷却時間が長くでき、2T周期より短くなるため、マーク長の制御がより容易になり、必要以上にマークの面積を大きくしないため、高い記録パワーでのマージンが広がる。
【0074】
2T周期の場合は、高い記録パワーのマージンが狭くなってしまう。図1に本発明の記録波形を示す。マーク長3Tから6Tまでがパルスの数が(n−2)個、7Tから9Tまでが(n−3)個である。10T、11Tが(n−4)、14Tが(n−5)個である。少なくとも、4T以降の先頭部加熱、冷却パルスの和及び、5T以降に存在する、中間部パルスは基本的に1.5Tである。
【0075】
7Tの場合には、後部パルスの加熱パルスが1T、後部冷却パルスが1Tである。記録線速が高いほど、十分高い記録パワーを照射できるLDがあれば、加熱パルス幅が短くても、記録パワーをあげられるため、冷却パルス時間を長くすることができるため、マークを形成しやすくなるが、パワーの制限のため図4の従来方法において、加熱時間と冷却時間を互いに十分とれなくなるため、十分なマークの面積とマークを所定の長さに記録することが難しかった。
【0076】
斯かる制約が、本発明の記録方法により除かれ、所定の長さの記録マークを形成することが容易になる。本来、長さnTのマークを形成するためには、1Tマークをn個つなげて記録した方が精度よく、マークが記録できる。そのことからも、発光パルスの数はできるだけ多い方が良い。
【0077】
図2は、7Tマーク以下の短いマーク長のパルス数を図1より、増やしている。こうすることでより、各マーク長の制御がしやすくなる。先頭パルスの開始位置は、実際に記録される記録マークの先端(先頭)位置を基準とした場合、遅れ時間として、0から1.0T遅れることが良い。
【0078】
先頭パルスの加熱時間OP1は、3.5ナノ秒以上か、あるいは0.2Tから1.5Tが良い。ただし、1T以上の幅をとるのは、3Tマーク以下の最短マークの場合である。中間パルスの加熱、冷却パルス時間の範囲は、3.5ナノ秒以上か0.2T<OPj<0.9Tが良い。後端部の加熱パルス時間は、0.4T<OPm<1.5T、後端部の冷却パルス幅は0.3T<FPm<1.5Tか、2.5ナノ秒以上である。
【0079】
これらは、好ましい範囲を示すが、記録特性を損なわない場合は、これに限らない。これら記録方法は、媒体の記録半径位置によらず一定の線速度で記録するCLV方式はもちろん、半径位置で線速が連続的に変化していくCAV方式にも対応するために、図5に示すような各加熱パルス幅Ttop、Tmp又は中間部Tmpと後端部加熱パルスTmpを別々に制御する場合はTmp、Tmp’、後端部冷却パルス幅dclを、基準クロックに比例する時間と(a*T:aは係数)、一定時間に比例する時間(bあるいはb’*k,kは整数)の和で定められた時間で制御することにより、線速が変化しても最適な記録発光波形を媒体に照射でき、線速依存性の小さい記録方法となる。
【0080】
好ましい幅は、−1.0T<dcl<1.0Tである。これら、記録方法において、加熱パルス時間に照射するLDのパワーを記録パワーPw、冷却時間に照射するパワーをボトムパワーPbとする。このパワーは、すべてのパルスにおいて一定とするが、場合により先頭部のみかあるいは後端部のみの記録パワーを他の加熱パルス部と異なるようにしても良い。また、線速によりボトムパワーPbを変えても良い。線速がより速い場合は、遅い場合より高くした方が良い場合がある。
【0081】
Pbは、再生パワーPeと同じかそれ以下が良い。記録線速が10m/s以上になってくると、初期化(結晶化)後の一回目の記録は比較的容易であるが、オーバーライトする場合に、一回目に記録したマークが消し残ることが起こり易い。
後端部のPbからPeまでのパルスの立ちあがり時間が平均2ナノ秒以下にならないこと、線速度が速いために消去に必要な温度に達する時間が短いため、あまりPeが低いと消しの残りが顕著になり、あまりPeが高いと溝中央部の温度の高い領域が非晶質相を形成しやすいことから、一旦溶融してから結晶化させる方法においては、最適Pe値に対するマージンが狭くなる。
【0082】
そこで、図6に示すように、後端部の冷却パルス後に、Pbより高いがPeよりも低い補正パワーPc(Pw>Pc>Pe)を照射することで、高い線速でも結晶化速度が速い記録材料において、マーク形成のため、より長い冷却パルス時間をとらなければならなく、そのためマーク後端部より後の領域にマークが残りやすい。
【0083】
この場合は、本来の後部冷却パルス時間より少し短くし、短くした時間をPcを照射する時間にする。tcは、1T以下が好ましい。これにより、より高い線速でのマーク後端部の長さを制御でき、消去パワーを高くしても残りのマークを消去することができる。
【0084】
また、PcをPeより高くし(Pe<Pc)する方法も考えられる。これは、記録線速度での結晶化速度が遅い記録層に対し有効である。消去パワーPeがあまりあげると、マークが広がりやすくなるため、マーク形成後に記録層を融点近くまで加熱するためにPcを照射後、Peを照射することでオーバーライトしてもマークが広がらずに所定の長さになるように消去できる。このパワーの照射時間も1T以下が良い。各パワーは、Pw≦22mW、Pc,Pe≦15mW、Pb≦Pr、Pr<1mWの条件で行った。
【0085】
【実施例】
以下に実施例を示す。
(実施例1)
図1は、本発明の発光波形の一例である。パルス開始位置を、記録開始位置から0.5T遅らせる。各マーク長のパルス幅(単位:T)は、
3T : 1.25, 0.75
4T : 0.75, 0.75, 1.0, 1.0
5T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
6T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.5
7T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 1.0, 1.0
8T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
9T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
10T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 1.0, 1.0
11T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
14T: 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
とした。表記は、加熱パルス、冷却パルス、加熱パルス、冷却パルス、…を示している。
【0086】
(実施例2)
図2に、本発明の発光波形の第2の実施例を示す。
3T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
4T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
5T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 1.0, 1.0
6T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
7T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
8T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 1.0, 1.0
9T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
10T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 1.0, 1.0
11T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
14T: 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
短いマーク長に対して、パルス数を実施例1よりも増やしている。
【0087】
(実施例3、4)
図5は、実施例1、2の基本発光波形に対して、加熱部パルス幅を先頭部Ttop、中間部加熱パルス幅をTmp、後部冷却パルス幅を、マークの後端部を基準とした場合の変化時間dclとして、最適記録ができるようこれらパラメータを変化させることを示したものである。必要に応じて、中間パルス幅Tmpと後端部加熱パルス幅をTmp’として、それぞれ独立に変えても良い。先頭加熱パルスの開始位置の遅れ時間をTdlとした。これらパラメータは媒体の記録位置によらず一定の線速度で記録するCLV方式の場合は、再適な値を決めてしまえば良いが、記録半径位置の内側から外側に向けて、線速度が連続的に速くなるCAV方式のに対応するために、各パラメータを基準クロックに比例する項と、一定時間の項から最適パラメータを求めることにより、線速に応じた基準クロックが決まっているので、任意の線速に対し最適なパラメータを決めることができる。
【0088】
この場合は、線密度は一定としている。例えば、Tmp=T*(1/6)+4(ナノ秒)とすることにより、
線速が17.5m/sでは、
Tmp=7.6*(1/6)+4=5.26=0.69T
線速が14m/sでは、
Tmp=9.5*(1/6)+4=0.59T
となる。記録媒体によっては、Tの係数を線速によらず一定にしても良い。Tdl、Ttop、Tmp、dclについて、
(パルス幅)=T*n*(1/m)+k*l
と表記する。
ここで、mはパルス幅の分割数で1以上の整数、nは整数、kは任意の固定時間、lは、0以上の整数である。
【0089】
実施例4は、実施例3の後部冷却パルスの後に、Pcなる補正パワーをある時間tcかけた発光波形を示した場合である。Pcは、Pw>Pc>Peの場合と、Pe>Pc’>Pbの場合がある。照射時間tcは、0<tc<Tが好ましい。
この補正パルスは、より高い線速でオーバーライトする場合に有効である。Pcは、Pe±3mWが好ましい。特に、オーバーライト1回目における前マークの消去比を高め、ジッターを実施例3よりも低くすることが可能である。線速が高くなるにつれ、後部冷却パルスを照射後から、Peを照射する時間は、LDの立ちあがり時間とマーク後端部が一定の温度(融点近傍)になるまでの温度上昇時間で決まるので、立ちあがり時間が長く、温度上昇時間が長ければ、長いマークの上により短いマークを記録した場合に、十分な温度に達しないため、余分なマークの消去が完全になされない。
【0090】
従って、この方法は、速い時間に一定の温度に達するようにいわゆる予備加熱部を設けることになり、有効な方法となる。単に消去パワーPeを高くしてしまうと、温度が上がりすぎてかえって、マーク形成を助長してしまう。
【0091】
(実施例5−12)
基板の溝ピッチを0.74μm、溝幅0.25μm、溝深さ25nm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板を用い、この上にスパッタリング方式により各層を積層する。下部保護層は、ZnS:SiO2=80:20(mol%)のターゲットを使用し、膜厚を70nmとした。
【0092】
次に、表1に示す相変化記録層を各々合金ターゲットにして、膜厚16nmとし、順に作製した。用いた記録層は、GeMnSbTe、GeGaMnSbTe、GeSnMnSbTeを表1に示す所定の組成比にした。下部保護層と同じZnS:SiO2=80:20(mol%)を膜厚10nmとし、上部保護層とした。その上に表1に示す第2の上部保護層をそれぞれ膜厚4nmとした。その上に、Ag又は、AgCuNi合金の膜を膜厚140nmとした。その上に、耐環境性を向上させるために、大日本インキ製SD318、紫外線硬化樹脂を塗布後、硬化させ5ミクロン厚として保護膜とした。最後に、膜のないもう一枚の同一基板を紫外線硬化樹脂(アクリル製、日本化薬 DVD003)で厚さ40μmとして、貼合わせて記録媒体とした。
【0093】
その後、大口径LD(トラック方向1μmx半径方向196μm)を用い、線速3.5m/s、ワー850mW、ヘッドの送り速度36μm/回転で記録層を結晶化させた。記録再生は波長657nm、物レンズNA0.65のピックアップヘッドを用いて、所定の線速度17.5m/sで記録密度が0.267μm/bitとなるように記録した。記録デ−タの変調方式は(8,16)変調である。記録パワーは19mW、バイアスパワーは0.1mW、消去パワーは8mWとして、記録した。記録方法は、実施例2に示す方法で記録した。表1に、隣接する5トラックをDOW(ダイレクトオーバーライト)1及び1000回記録し、中心トラックを再生した場合のdata to clock ジッター値を示す。
【0094】
1回記録のジッター(σ/T)は、7%から7.5%である。10回記録後、80℃、85%RH 300時間、高温高湿環境下に置いた後のジッター上昇値を載せた。
【0095】
(実施例13−14)
実施例5から12と同様の方法で媒体を作製した。記録層材料、組成は表1に示すとおりである。記録条件は、発光波形を実施例4により行った以外は実施例5から12と同じである。Pcは、9mWとし、tcを0.5Tとした。表1に、隣接する5トラックをDOW(ダイレクトオーバーライト)1及び1000回記録し、中心トラックを再生した場合のdata to clock ジッター値を示す。1回記録のジッター(σ/T)は、7.5%である。10回記録後、80℃、85%RH 300時間、高温高湿環境下に置いた後のジッター上昇値を載せた。DOW1,DOW1000後のジッターが改善された。
【0096】
(比較例5)
比較例5は下部保護層、上部保護層がZnS・SiO2、記録層がAgInSbTe、反射層がAlTiの場合を示す。媒体の作製は実施例5〜14と同じ方法で行った。
【0097】
表1に、隣接する5トラックをDOW(ダイレクトオーバーライト)1000回記録した場合のdata to clock ジッター値を示す。記録方法は、比較例1の発光波形により、記録パワー21mW、消去パワー11mWで行った。
初回記録のジッターは、11%であった。DOW1.DOW1000回記録後のジッター(σ/T)と、10回記録後、80℃、85%RH 300時間、高温高湿環境下に置いた後のジッター上昇値を表1に示す。高温環境下のデ−タ保存性、初期特性ともに悪い。
【0098】
(比較例6,7)
表1に示す媒体構成により、比較例2による発光波形により、記録パワー18mW、消去パワー6mWで記録した。初回記録のジッターは、8.5%である。表1に、隣接する5トラックをDOW(ダイレクトオーバーライト)1000回記録した場合のdata to clock ジッター値を示す。DOW1.DOW1000回記録後のジッター(σ/T)と、10回記録後、80℃、85%RH 300時間、高温高湿環境下に置いた後のジッター上昇値を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【発明の効果】
請求項1によれば、所定の記録マークの時間の長さがnT(nは2以上の整数、Tは基準クロック)であり、該マークを先頭部の加熱パルス、冷却パルスと中間部の加熱パルスと冷却パルスと最後部の加熱パルスと冷却パルスからなるマルチパルスの光を発光させて記録する方法において、加熱パルス時間をOPi、冷却パルス時間をFPi(iは一個の加熱パルス部と一個の冷却パルス部を一組のパルス部とした場合のそのパルス数m)とした場合に、先頭部の各パルス時間をOP1,FP1,後端部の各パルス時間をOPm,FPm,一個ないし複数個からなる中間部の各パルス時間がOPj,FPj(j=2,…,m−1)で表されるパルス列において、該パルスの長さOPi+FPi(i=1,…,m)が基準クロックTの1.5倍を基本としたので、高線速で良好な記録特性が得られることとなった。
【0101】
請求項2によれば、中間部のパルス時間OPj+FPj(j=2,…,m−1)が、基準クロックTの1.5倍を基本としたので、高線速で良好な記録特性が得られることとなった。
【0102】
請求項3によれば、記録マーク長nTの内、(i)n≦4の時、パルスの数を(n−1)以下とし、(ii)5≦n≦8の時、パルスの数を(n−2)以下とし、(iii)n=9及び10の時、パルスの数を(n−3)以下とし、(iv)n=11の時、パルスの数を(n−4)以下とし、(v)n=14の時、パルスの数を(n−5)以下としたので、高線速で良好な記録特性が得られるとともに、記録パワーに対するマージンを広げることができた。
【0103】
請求項4、5によれば、各マークの時間的な長さnTに対して、パルス列の和OPi+FPiが、
(nT−1.0T)〜(nT+0.5T)
で加熱パルス部の時間が、3.5ナノ秒以上、後部冷却パルス時間が2.5ナノ秒以上であることとしたので、高線速で良好な記録特性が得られることとなった。
【0104】
請求項6から8によれば、マークを制御よく記録でき、CAV、CLVいずれにも対応でき、良好な記録特性が得られることとなった。
【0105】
請求項9から12によれば、高線速での初回記録のみならず、オーバーライト特性が向上できることとなった。
【0106】
請求項13から15によれば、相変化記録層の主要構成元素が、Ge、Mn、Sb、Teであり、さらに、添加元素Xを含み、記録層材料、組成が
式 XαGeβMnγSbδTeε
XがGa、Sn、Seのすくなくとも一つを含み、α、β、γ、δ、ε 各組成比(at%)が
0≦α≦5
1≦β<7
0<γ≦10
65≦δ<80
15≦ε≦25
α+β+γ+δ+ε=100
かつ、 γ≧α
であることとしたので、高い線速で良好な記録特性が得られるだけでなく、保存信頼性の優れた記録媒体が得られる。
【0107】
請求項15によれば、結晶化温度範囲をもつ記録層材料を用いることで、初期結晶化が容易に高速に行われ、そのため良好な記録特性が得られることとなった。
【0108】
請求項16から20によれば、反射層材料と硫化防止層を設けることで、高速での記録特性の向上が図られるだけでなく、高温環境における信頼性の高い記録媒体が得られることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマルチパルス発光式・光記録方法における発光波形の説明図である。
【図2】本発明の記録方法でマーク長を制御し易くするための発光波形の説明図である。
【図3】従来の記録方法の高速記録時の発光パルスとクロックとの関係説明図である。
【図4】従来の記録方法の発光パルス波形でのマーク形成の困難性の説明図である。
【図5】本発明の記録方法でパルス幅制御で線速依存性の少い記録法を得る発光波形の説明図である。
【図6】本発明の記録方法で補正パワー照射により高線速記録を可能にする記録法を得る発光波形の説明図である。
【図7】従来の記録媒体の構成例の説明図である。
【図8】本発明の反射層と上部保護層の間に第2の上部保護層6を設けた記録媒体の構成例の説明図である。
【符号の説明】
T 基準クロック
OP1 先頭部加熱パルス時間
FP1 先頭部冷却パルス時間
OP2 次回加熱パルス時間
FP2 次回冷却パルス時間
OP3 後端加熱パルス時間
FP3 後端冷却パルス時間
Pw 加熱照射パルスパワー
Pb 冷却照射パルスパワー
Pe 消去パルスパワー
Pc 補正照射パルスパワー
Td1 パルス開始遅れ時間
Ttop 先頭部加熱パルス幅
Tmp 中間部、後端部加熱パルス幅
dcl マーク後端部基準変化時間
tc 補正パルス照射時間
【発明の属する技術分野】
本発明は、相変化光ディスク、書き換え可能光ディスク等の光情報記録媒体及び光記録方法に関するもので、大容量光ファイル、DVD+RWに応用できる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
結晶、非晶質相の可逆的相変化を用いたいわゆる相変化型記録媒体は、書き換え可能な記録媒体として世界的に普及している。CD−RWにおいては、普及とともに高速記録化が進んでおり相変化記録媒体も高速記録が必須となっている。
【0003】
高速記録、すなわち、高い線速度で記録する場合、記録密度が高くなるとともに、レーザー光の発光パルスの基準クロックが短くなる。そのため、マーク(非晶質相)を形成するために、より遅い線速度で記録する場合に比べ、1つの光パルスの光照射(加熱)時間及び冷却に必要なより低いパワーを照射(あるいは、パワーを照射しない場合もある)する時間がともに短くなる。
【0004】
さらに、LDを用いた光記録においては、LDの立ちあがり時間、立下り時間が限られているために、一つの光パルスにおいて、加熱と冷却をし、マークを形成することが難しくなってくる。そのため、より高い記録パワーを照射すれば、加熱は可能となるが、記録パワーの限界がある。また、加熱後、急冷するため、冷却時間をある程度とる必要があるが長くできない。基準クロック内で、加熱と冷却を制御し、所定の長さのマークをより高い線速度で記録することが困難になってくる。
【0005】
その一方で、相変化記録層の記録材料及び媒体構成の最適化も必要である。高速記録で、繰り返し記録特性を確保するためには結晶化速度をより速くして、消去比を高くするため、記録層材料及び各構成元素の組成比の最適化を行う必要がある。
【0006】
しかし、あまり結晶化速度を速くすると非晶質相が形成しにくくなる。この場合、媒体構成を急冷構造にすれば良いが、記録パワーも必要になる。Ag−In−Sb−Te系、Sb−Te共晶系は、あまりSb量を多くすることで結晶化速度は速くできるが、非晶質相が形成しにくい上に、マークの高温環境下の保存性が悪くなる。また、媒体構成により、急冷構造とすると、感度不足の問題がある。
【0007】
高速記録により、繰り返し記録特性を劣化させる原因に短時間で、高温に加熱し、冷却を繰り返すため、記録層だけでなく、記録層と反射層の間にある上部保護層の劣化、すなわち構成元素が記録膜中に拡散したり、保護層が熱衝撃によりクラックを発生することが挙げられる。そこで高速化に伴い、記録層材料、保護層材料、反射層材料の検討が必要である。
【0008】
また、上記理由により、記録方法の検討も必要である。これまでに高線速記録に対応した記録層材料として公開されたものとして特開2000−313170号公報がある。該公報においては、式((SbxTel−x)yGe1−y)zM1−zは、MがIn及び/又はGaとしたものであるが、CD線速の約7倍の線速であり、特にGeInSbTeの4元素からなる記録材料が好ましいとされている。
【0009】
しかし、Inはあまり多く入れると、線速は速くなるが再生光パワーが高くなると再生劣化を伴うこと、繰り返し特性が悪くなるため、あまりより高速にすることが不可能になる。
【0010】
一方、記録方法において、高密度かつ高線速記録にともなうパルスの立ちあがり、立ち下がり時間が加熱パルスの時間程度になった場合の問題を解決する手段として、特開平9−134525号公報が知られている。該公報においては、一つの光パルスの加熱、冷却時間を基準クロックと同じかそれ以上とし、その分所定のマーク長とするためにパルスの数を減じて、記録感度の向上、変調度の向上を図るものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来技術は、主としてRewritable CD系に適用したものであり、より高密度、高線速記録に適用しても、十分な特性が得られない。この技術を高線速記録に適用した技術として、WO0072316が知られているが、しかし、この方法によれば、記録時に隣接トラックのマークを消してしまうこと、オーバーライト1回目の消し残り、溝と溝の間のランド部にマークが広がることが原因によるトラッキングが安定にかからないなどの問題があり、この結果より適用性が高く、広い特性マージンが得られる記録方法を見出す必要がでてきている。
【0012】
本発明は、書き換え可能な相変化記録媒体において、記録線速が3.5m/s以上から最大で約20m/sのより高線速で記録でき、かつこれら線速の範囲内で記録可能にするための、記録層材料、保護層材料、媒体構成及び記録方法を提供することを目的とする。
【0013】
特に、DVD線速の2倍から5倍速(線速7m/sから17.5m/s相当)で記録でき、かつ保存特性、初期結晶化が容易な光情報記録媒体及び最適な記録方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明では、所定の記録マークの時間の長さがnT(nは2以上の整数、Tは基準クロック)であり、該マークを先頭部の加熱パルス、冷却パルスと中間部の加熱パルスと冷却パルスと最後部の加熱パルスと冷却パルスからなるマルチパルスの光を発光させて記録する光記録方法において、加熱パルス時間をOPi、冷却パルス時間をFPi(iは一個の加熱パルス部と一個の冷却パルス部を一組のパルス部とした場合のそのパルス数m)とした場合に、先頭部の各パルス時間をOP1,EP1,後端部の各パルス時間をOPm,FPm,一個ないし複数個からなる中間部の各パルス時間がOPj,FPj(j=2,…,m−1)で表されるパルス列において、該パルスの長さOPi+FPi(i=1,…,m)が基準クロックTの1.5倍を基本とする光記録方法を最も主要な特徴とする。
【0015】
請求項2によれば、請求項1記載の光記録方法において、中間部のパルス時間OPj+FPj(j=2,…,m−1)が、基準クロックTの1.5倍を基本とする光記録方法を主要な特徴とする。
【0016】
請求項3によれば、請求項1又は2記載の光記録方法において、記録マーク長nTの内、
(i)n≦4の時、パルスの数を(n−1)以下とし、
(ii)5≦n≦8の時、パルスの数を(n−2)以下とし、
(iii)n=9及び10の時、パルスの数を(n−3)以下とし、
(iv)n=11の時、パルスの数を(n−4)以下とし、
(v)n=14の時、パルスの数を(n−5)以下
とする光記録方法を主要な特徴とする。
【0017】
請求項4によれば、請求項1から3のいずれか記載の光記録方法において、各マークの時間的な長さnTに対して、パルス列(OPi+FPi)の和(i=1,…,m)が、
(nT−1.0T)〜(nT+0.5T)
である光記録方法を最も主要な特徴とする。
【0018】
請求項5によれば、請求項1又は2記載の光記録方法において、加熱パルス部の時間が、3.5ナノ秒以上、後部冷却パルス時間が2.5ナノ秒以上である光記録方法を主要な特徴とする。
【0019】
請求項6によれば、一定の線密度で、記録半径位置によらず一定の記録線速度でその速度における一定の基準クロックで記録する場合、あるいは半径位置の内周から外周で連続的に線速度が変化し、それに伴い基準クロックが連続的に変化するいずれかの光記録方法において、先頭加熱パルスの開始時間を、基準クロックに比例した変化量で制御し、各マーク長毎にそれを制御する光記録方法を最も主要な特徴とする。
【0020】
請求項7によれば、請求項1から5のいずれか記載の光記録方法において、先頭パルス加熱時間、中間パルス加熱時間、後部加熱パルス時間を基準クロックに比例した時間と、一定時間の和で決まられる時間で制御し、各マーク長毎にそれを制御する光記録方法を主要な特徴とする。
【0021】
請求項8によれば、請求項1から5のいずれか記載の光記録方法において、後部冷却パルスの終了時間を、基準クロックに比例した変化量で制御し、各マーク長毎にそれを制御する光記録方法を主要な特徴とする。
【0022】
請求項9によれば、請求項1から5のいずれか記載の光記録方法において、加熱パルス時間に照射する記録パワーPw、冷却パルス時間内に照射するボトムパワーPb、及び消去するための消去パワーPeがPw>Pe>Pbであり、Pbが再生パワーPrに対し、Pb≦Prであり、記録線速毎に異なるPbとし、より高い線速Vh,低い線速Vlにおいて、それぞれのパワーPbをPbh,Pblとした時にPbh≧Pblとする光記録方法を主要な特徴とする。
【0023】
請求項10によれば、請求項1又は2に記載の光記録方法において、後部冷却パルスの後に補正パルス部を設け、そのパワーをPcとし、そのパワーがPw>Pc>Peであり、かつ補正パルス時間が、各記録マーク毎に異なる光記録方法を主要な特徴とする。
【0024】
請求項11によれば、請求項1又は2に記載の光記録方法において、後部冷却パルスの後に補正パルス部を設け、そのパワーをPcとし、そのパワーがPc<Peであり、かつ補正パルス時間が、各記録マーク毎に異なる光記録方法を主要な特徴とする。
【0025】
請求項12によれば、請求項1に記載の光記録方法において、n≦3の場合、パルス数が1個であり、
1.5*T < OP1+FP1 < 2.5*T
である光記録方法を主要な特徴とする。
【0026】
請求項13によれば、電磁波を照射することにより,結晶相と非晶質相の可逆的相変化を利用した相変化記録材料を記録層とする光情報記録媒体において、記録層の主要構成元素が、Ge,Mn,Sb,Teである光情報記録媒体を最も主要な特徴とする。
【0027】
請求項14によれば、請求項13記載の記録層において、添加元素Xを含み、
式 XαGeβMnγSbδTeε
で表わされ、XがGa,Sn,Seのすくなくとも一つを含み、α、β、γ、δ、εの各組成比(at%)が
0≦α≦5
1≦β<7
0<γ≦10
65≦δ<80
15≦ε≦25
α+β+γ+δ+ε=100
かつ、 γ≧α
である光情報記録媒体を主要な特徴とする。
【0028】
請求項15によれば、請求項14記載の光情報記録媒体において、前記記録層が昇温速度10℃/分での結晶化温度が150℃以上220℃以下である光情報記録媒体を主要な特徴とする。
【0029】
請求項16によれば、請求項13から15のいずれか記載の光情報記録媒体において、基板上に少なくとも下部保護層、記録層、上部保護層、反射層を設けたものであり,該反射層がAg又はAgを95%以上含む合金である光情報記録媒体を最も主要な特徴とする。
【0030】
請求項17によれば、請求項16記載の光情報記録媒体において、上部保護層がイオウを含む場合において、反射層との間に第2の上部保護層を設けた光情報記録媒体を主要な特徴とする。
【0031】
請求項18によれば、請求項16に記載の光情報記録媒体において、第2の上部保護層がSi又はSiCを主成分とする層からなる光情報記録媒体を主要な特徴とする。
【0032】
請求項19によれば、請求項17又は18記載の光情報記録媒体において,第2の上部保護層の膜厚が2nm以上10nm以下である光情報記録媒体を主要な特徴とする。
【0033】
請求項20によれば、請求項16記載の光情報記録媒体において、Ag合金が、
AgxCuyNi1−x−y ,x≧95,y≦5(at%)
である光情報記録媒体を主要な特徴とする。
【0034】
【発明の実施の形態】
従来、記録媒体の構成としては、図7に示すように透明基板上1に、誘電体下部保護層2、非晶質相と結晶相の可逆的相変化をする記録層3、上部保護層4、反射層5の順に積層したものが基本である。
【0035】
ここで、使用する基板は、記録再生するための光の波長に対し透明であり、材料としてポリカーボネート(PC)、ポリメタアクリル酸(PMMA)などのプラスチックやガラスがある。
【0036】
現在、安価なポリカーボネート製の基板が、CD、DVD、MOなどで用いられており、本発明においてもこれを主に使用する。下部保護層、上部保護層材料としては、SiOx、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgO、ZrO2、Ta2O5等の金属酸化物、Si3N4、AlN、TiN、BN、ZrN等の窒化物、ZnS、TaS4等の硫化物、SiC、TaC、B4C、WC、TiC、ZrC等の炭化物が挙げられる。
【0037】
これらの材料は、単体で保護層として用いることができ、また、混合物として用いることもできる。中でも、ZnSとSiO2の混合物が相変化型記録媒体では、一般的に用いられており、その混合比は80:20(モル比)が良い。下部保護層2は、ZnS・SiO2(80:20)を用いるが、これに限定されるものではない。
【0038】
一方、上部保護層は記録、消去時の熱制御に重要な役割を果たす。記録層を融点付近まで加熱するには、上部保護層の熱伝導率が低い方が蓄熱しやすく、記録層の温度を短時間にあげることができる。
【0039】
しかし、蓄熱は記録マークを形成する時だけでなく、マークを消去する場合にも、記録層を溶融させ結晶成長させるために必要である。だがその一方、上部保護層の蓄熱は、記録消去が完了した後はただちに放熱させる必要がある。そのために反射層が光を反射するだけでなく、放熱する役割を担っている。
【0040】
上部保護層は、熱伝導率が低く、比熱が小さく、オーバーライトにより結晶化しない、加熱と急冷の多数回の履歴によるクラックの発生、元素の拡散などがないことが良い。ZnS・SiO2はこれら条件に対し適しており、上部保護層にも用いられている。しかしながら、線速が高くなるほど、より短時間に加熱、急冷を行う必要がありより材料の検討が必要になる。さらに、感度を上げるためにも、より熱伝導率が低く、オーバーライト時の短時間に加熱と急冷の繰り返しに対する耐熱衝撃、クラックの発生の抑制、密着性を向上させる必要がある。
【0041】
他の保護層材料として、ZrO2を含む材料がある。ZrO2は屈折率がZnS・SiO2とほぼ同じかそれよりも大きく、2.0以上である。しかし、薄膜にする場合は、ターゲット材を使用しこれをスパッタリング法により作製する。ZrO2は、ターゲット作製時に、安定化させるためにY2O3を燒結助剤として使用する。その量は、2〜10mol%であり、好ましくは3〜6mol%が良い。
【0042】
以下で述べるZrO2はY2O3を3mol%添加したものを指す。
ZrO2、ZrO2・SiO2(5mol%)、ZnS・ZrO2(20mol%)、ZrO2・TiO2(50mol%)、ZnS・SiO2(20mol%)について、バルク状態の熱伝導率(室温)を測定した。順に、5.1、3.48、12.1、1.73、8.4(W/m・K)であった。屈折率(n)は、ZrO2・SiO2(5mol%)以外は、すべて2以上であった。
【0043】
中でもZnS・ZrO2(20mol%)は、2.3と最も高かった。減衰定数(k)は、ZnS・SiO2(20mol%)が最も小さく、ほぼ0であり、ZrO2を含む系はそれより大きい。光学定数の結果は、波長660nmの結果である。従って薄膜にした場合は、ZnS・SiO2以外はあまり膜厚を厚くすると光吸収が大きくなり、反射率を下げる原因となる。
【0044】
一方、これら上部保護層を用いて、媒体を作製した結果、記録後に80℃、85%RHで記録マークの保存性を調べたところ、ZrO2の場合は、マークが消滅するが、ZrO2系の繰り返しオーバーライト特性は良く、1000回記録した後のジッター劣化はZnS・SiO2より少なかった。
【0045】
これら検討の結果により、ZnS・SiO2にZrO2を添加することにより、繰り返しオーバーライト特性、感度がZnS・SiO2より良い。SiO2は5〜50mol%、ZrO2は5〜50mol%添加することが好ましい。ここで、ZnS:ZrO2:Y2O3:SiO2=72:10:3:15(mol%)の場合、屈折率2.1、熱伝導率5W/m・K、減衰係数は約10−5である。
【0046】
本発明において、下部保護層、上部保護層ともに、データ保存性と特性のバランスの良い、ZnS・SiO2を用いる。
【0047】
下部保護層の膜厚は、45〜250nmの範囲として、65〜200nmが好ましい。45nmより薄くなると、耐環境性保護機能の低下、耐熱性低下、畜熱効果の低下となり好ましくない。繰り返しオーバーライト特性の劣化が大きくなる。250nmより厚くなると、スパッタ法等による製膜過程において、膜温度の上昇により膜剥離やクラックが生じたり、記録時の感度の低下をもたらすので好ましくない。
【0048】
上部保護層の膜厚は5〜50nmの範囲とし、8〜20nmが好ましい。5nmより薄いと、記録感度が低下する。50nmより厚くなると、温度上昇による変形、放熱性の低下により繰り返しオーバーライト特性が悪くなる。反射層は、Al、Ag、Cu、Pd、Cr、Ta、Tiなどの金属材料を用いる。膜厚は、500nmから250nmが良い。膜厚が厚くなり過ぎると放熱性がより向上するが、薄膜を作製する間に媒体の温度上昇により、基板の変形が起きてしまう。DVDの場合は、基板の厚さがCDの半分の0.6mmであるために、変形がより大きくなり易い。
【0049】
反射層は、従来は、AlあるいはAl合金を用いてきたが、DVDの2倍速では、熱伝導率がより高いAgを用いることにより、特性が向上した。線速が速くなると、冷却速度が大きくなるがマーク形成する際に、発光パルスの加熱パルス時間を長くする必要があった。これは基準クロックが小さくなるために、加熱不足になるためである。パワーを大きくしていけば良いがパワーの限界がある。
【0050】
一方、加熱時間を長くすると、冷却時間が短くなってしまい冷却時間の不足が起きるため、マークが形成しにくくなる。これは、一つの加熱と冷却のパルス時間の和が基準クロックであり、この制約の中で変えているためである。そこで、媒体で冷却効率をあげるために、Agを用いるのが良い。
【0051】
しかし、ここで上部保護層がS(イオウ)を含み、反射層がAgの場合、高温高湿下ではAg2Sが形成されやすく、これが特性劣化、欠陥発生の原因になり、問題となる。そこで、反射層と上部保護層の間に第2の上部保護層6を設けることが必要になってくる(図8参照)。これまで、酸化物、窒化物、炭化物、金属について鋭意検討した結果、Si、SiC、ZrO2、MgO、TiOxが好ましい。Si、SiCは、Agとの密着性が良い。Si、SiCでは、SiはSiCよりも良い。
【0052】
しかし、これらは光吸収が大きく反射率を低くするため、膜厚はあまり厚くできない。一方、ZrO2、MgO、TiOxの酸化物系は、Agとの熱膨張係数の差が小さく、膜がはがれにくい。密着性も良く透明であるため、反射率を下げることもない。
【0053】
上部第2保護層の膜厚は、Ag2Sを形成しない程度に極力薄いことが良いが、3nm以上が良い。上限は10nmである。これ以上厚いと反射層と距離が離れるため、放熱効率がさがってしまう。ZrO2、MgO、TiOxの酸化物系は、成膜速度が遅い。本発明では、Si、SiCを用いる。反射層をAgにすることで、特性は向上するが、Agそのものの腐食性、上部保護層との密着性を考慮すると、Ag単体でも、薄膜作製時のスパッタリング条件を最適化すること、反射層の上に環境保護層として用いるアクリル系紫外線硬化型樹脂の硬化条件、厚さを最適化することで、実用上問題はなくAg単体でも良い。
【0054】
しかし、最適条件で作製されていなかったり、DVDのように、記録膜のない基板を貼り合わせる前の保管条件や、基板自身の吸湿、紫外線硬化型樹脂の吸湿により、劣化する懸念がある。そこで、Agを95at%以上、残りをCu及びNiを添加した合金、
AgxCuyNi1−x−y ,x≧95,y≦5(at%)
を用いることで、信頼性が向上する。CuとNiの割合は、NiよりもCuが多い方が良い。又、Agに対する添加量は、5at%を超えると、熱伝導率が著しく減少するため、好ましくは、2at%以下が良い。
【0055】
相変化記録層はこれまでSb70Te30付近の共晶組成を基本とした、AgInSbTe系、AgInSbTeGe系が記録特性が良いため用いられてきた。SbはTeに対する比率が大きくなるほど、また、Sb量が80at%を超えると、結晶化速度が高くなるが、保存性が悪く、しかも記録マークを形成しにくくなる。従って、高線速記録に対応するための好ましい量は、65at%以上、80at%より少ない方が良い。一方、Teは、15at%以上、25at%以下が良い。Geは遅いにかかわらず、記録したマークの高温環境下での保存性を向上させるのに、必須の元素である。
【0056】
中でもGe−Te間の結合エネルギーが大きく、しかもGe添加量が増加する程、結晶化温度を高くするため保存性が良い。しかし、あまり多く入れると結晶化温度がさらに高くなる。結晶化速度も遅くなるので限度がある。Agはマークを安定化させるが、結晶化温度はあまり増加させない。あまり多く入れると、結晶化の速度を下げてしまうため、結局多くは入れることができない。
【0057】
Inは、結晶化速度を上げるとともに、結晶化温度を上げるので、保存性も向上させるが、偏析しやすく、繰り返しオーバーライト特性の劣化と再生光パワーに対する劣化が起きる。従って、DVD 2倍速以上の高線速記録に対しては、AgInSbTeGe系、AgInSbTe系を見直すことが必要である。
【0058】
そこで、本発明においては、Ag、Inに代わる元素を検討した。Inと同様の効果があるものとしはGaがある。Gaは、同量のInに比べより結晶化速度を速くするが、結晶化温度もより高くなってしまう。従って、あまり多く入れることができない。Geが5at%で、Gaが6at%以上になると結晶化温度が200℃をはるかに超えて、250℃以上にもなる。そのため、記録層を非晶質状態から結晶化させるための初期化過程において、反射率が低くなること、トラック一周の反射率分布が大きくなり、記録特性、デ−タエラ−の原因になることから、初期化が難しくなる。従って、GeGaSbTe、GeInSbTe系は十分でない。
【0059】
そこで、本発明者らは、結晶化速度を速くするが、結晶化温度を必要以上に上げない元素ということで、希土類、アルカリ土類金属、遷移元素を検討した結果、Mn,Snが効果的であることがわかった。特に、MnはInと同じく結晶化速度を上げる。多く入れても、オーバーライト特性を劣化させずに保存特性も良好である。結晶化温度もあげるが量に対する増加量は小さい。再生光劣化も小さい。
【0060】
SnはMnよりも結晶化速度を高くするが、あまり多く入れると、オーバーライト特性が悪くなる。従って、GeMnSbTe系を基本とし、Sn、Ga、Snを添加して、結晶化速度を調整すること、マーク形成及びマークの安定性を向上させるために、Seを添加することが良いということが分かった。
【0061】
Sn、Ga、Snの好ましい範囲は、1〜3at%である。Mnは、3〜7at%が好ましい。また、これらGa、Snの量はMnよりも少ない方が良い。Seは3at%以下が良い。
【0062】
記録層の膜厚は10〜25nmの範囲が良く、薄すぎると、変調度、反射率が小さくなり、厚すぎると記録感度、繰り返し記録特性が悪くなる。本記録媒体は、DVD−ROMとの互換性をとるために、反射率が下がり、変調度が小さくなることはDVD−ROMプレーヤーでのトラッキング安定性が悪くなる理由からも記録層の膜厚を薄くすることはできない。
【0063】
以上の相変化型記録媒体は、記録波長が400〜780nmの範囲で記録再生が可能である。DVDの場合、波長650nm,対物レンズの開口率を0.60〜0.65とし、入射光のビ−ム径を1μm以下とする。そのため、基板の厚さは0.6mmとし、収差を小さくしている。マークが書きこまれる溝部と溝部のピッチは、0.74μm,溝の深さは15〜45nm、溝幅は0.2〜0.3μmとする。溝は、約820kHzの周期をもつ蛇行状溝となっている。
【0064】
アドレス部は、この位相を反転させ、この位相変化部分を検出し、2値化信号に変換しアドレス(番号)を読み取る。この蛇行部の振幅は、5nmから20nmである。記録線密度は、0.267μm/bitで、(8−16)変調方法で記録する。最短マーク長は0.4μmになる。DVDの2倍速は、線速7m/s(6.98m/s)であり、基準クロック周波数は52.3MHz(T:19.1ナノ秒)になる。
【0065】
5倍速の場合は、線速17.5m/s、基準クロック周波数は130.8MHz(T:7.65ナノ秒)になる。同じ記録密度で高線速になるほど、基準クロックが短くなるが、使用している650nmの波長を発振するLDのパルスの立ち上がり、立下り時間が、約2ナノ秒であるため、より速い線速度によっては基準クロックはパルスの立ち上がり、立下り時間に近づいてくる。このため、記録層を加熱、冷却するための時間が短くなるだけでなく、パルスの立ちあがり、立下り時間に要する時間を考慮すれば、実効的な加熱、冷却時間はより短くなってしまう。
【0066】
このため、記録マークが所定の長さにすることができないだけでなく、マークの面積が小さくなり、十分な信号特性が得られない。加熱時間が短くなる分、記録パワーをより高くすれば良いが、パワーにも限界がある。一方、冷却時間が短くなる分、媒体での放熱効率を高くするにしても、結局感度が悪くなること、より高い熱伝導率を求めるにしてもそのような材料も容易には見つけることもできない。
【0067】
従って、記録方法を新たに考えることが必要になってくる。従来の記録方法で用いてきた発光パルスのパルス波形を図4に示す。記録パワー(Pw)を照射し、加熱する加熱時間部OPi(i=1〜m)と消去パワー(Pe)及び再生パワーより低いパワーの状態の冷却時間部FPi(i=1〜m)の和を、基本的にTとなるように、加熱と冷却時間を調整し、最適条件としている。
【0068】
パルスの数は、パルスの数mは、各マーク長ともに(n−1)個である。先頭部の加熱パルスの開始時間は、所定のマーク長になるよう開始時間を調整する。先端パルス部は、冷却時間の和はTを超えることがある。線速が17.5m/sの場合、基準クロックが約7.5ナノ秒になり、1Tの長さのマークを記録する場合、加熱と冷却をこの時間内で制御しなければならないため、各々0.5Tとしても、4ナノ秒以下である。パルスの立ちあがりが1.5〜2ナノ秒であるため、発光開始してから発光を終了する時間内で十分、記録層が加熱されないし、加熱されても溝の中心部に限られてしまい、マークの面積が小さい、細長いマークになってしまう。また、冷却時間も同じことであり、十分な時間がとれないとマークが記録できなくなり、所定の長さのマークが形成しにくくなる。
【0069】
従来の方法でも、記録ができないわけではないが、線速が20m/sより速くなると、ますます高い記録パワーが必要となるか、記録できてもパルス時間のマージンがほとんどなくなり、実用化が困難である。
【0070】
そこで、このような問題により、将来的に、高密度、高線速記録において、記録マーク形成がますます困難になることが考えられる。その解決方法として、特開平9−134525号公報に示されているように、加熱、冷却パルスの和を1Tより長くとり、パルスの数を減らし、さらに3Tマークを除き、奇数長、偶数長で中間部、後部パルスの加熱、冷却パルス時間の幅をそれぞれ定義している。奇数マークでは、3Tのパルスは1個であり、n=5,7,9,…とマーク長が2T長くなる毎に加熱、冷却パルスが各1Tでその和が2Tのパルスを一個ずつ増加する。偶数では、4Tマークがパルス2個で、2T増える毎にパルスを一個ずつ増加することで、高速、高い密度で記録を可能にしている。
【0071】
この技術をDVDに展開した場合の発光波形を図3に示す。2T周期を、基本的にしている。この方法で、17.5m/sで記録した場合、記録感度が改善され、特にマークの面積が十分とれ、最長マークの振幅も十分とれる。
【0072】
しかし、面積が広くなる弊害として、溝と溝の間のランド部にもマークが広がること、記録された溝部の隣の溝に記録した場合に、記録済みの溝部のマークの一部が消されるクロスイレースや、再生時に隣接トラックの信号を拾ってしまうクロストークの影響が大きい。また、高い記録パワーになるほどマークの広がりがランド部まで及ぶために、トラッキングの制御が不安定になるなどの問題もある。さらに、一回目のオーバーライトの特性が悪いことも特徴である。
【0073】
記録線速が、DVDの5倍速である17.5m/sまでは、図3の方法において記録すると、マーク端部を制御する先頭パルス部と後端冷却パルスのマージンが狭い。そこで、これらのことからマージンが確保でき、一回目のオーバーライト時の特性、特にジッターの劣化を小さく、クロスイレースの影響を小さくすることが可能な記録方法として、一個のパルス時間 OPi+FPi(i=1,2,…,m)を基本クロックの1.5倍とすることにより、1T周期よりも、加熱時間、冷却時間が長くでき、2T周期より短くなるため、マーク長の制御がより容易になり、必要以上にマークの面積を大きくしないため、高い記録パワーでのマージンが広がる。
【0074】
2T周期の場合は、高い記録パワーのマージンが狭くなってしまう。図1に本発明の記録波形を示す。マーク長3Tから6Tまでがパルスの数が(n−2)個、7Tから9Tまでが(n−3)個である。10T、11Tが(n−4)、14Tが(n−5)個である。少なくとも、4T以降の先頭部加熱、冷却パルスの和及び、5T以降に存在する、中間部パルスは基本的に1.5Tである。
【0075】
7Tの場合には、後部パルスの加熱パルスが1T、後部冷却パルスが1Tである。記録線速が高いほど、十分高い記録パワーを照射できるLDがあれば、加熱パルス幅が短くても、記録パワーをあげられるため、冷却パルス時間を長くすることができるため、マークを形成しやすくなるが、パワーの制限のため図4の従来方法において、加熱時間と冷却時間を互いに十分とれなくなるため、十分なマークの面積とマークを所定の長さに記録することが難しかった。
【0076】
斯かる制約が、本発明の記録方法により除かれ、所定の長さの記録マークを形成することが容易になる。本来、長さnTのマークを形成するためには、1Tマークをn個つなげて記録した方が精度よく、マークが記録できる。そのことからも、発光パルスの数はできるだけ多い方が良い。
【0077】
図2は、7Tマーク以下の短いマーク長のパルス数を図1より、増やしている。こうすることでより、各マーク長の制御がしやすくなる。先頭パルスの開始位置は、実際に記録される記録マークの先端(先頭)位置を基準とした場合、遅れ時間として、0から1.0T遅れることが良い。
【0078】
先頭パルスの加熱時間OP1は、3.5ナノ秒以上か、あるいは0.2Tから1.5Tが良い。ただし、1T以上の幅をとるのは、3Tマーク以下の最短マークの場合である。中間パルスの加熱、冷却パルス時間の範囲は、3.5ナノ秒以上か0.2T<OPj<0.9Tが良い。後端部の加熱パルス時間は、0.4T<OPm<1.5T、後端部の冷却パルス幅は0.3T<FPm<1.5Tか、2.5ナノ秒以上である。
【0079】
これらは、好ましい範囲を示すが、記録特性を損なわない場合は、これに限らない。これら記録方法は、媒体の記録半径位置によらず一定の線速度で記録するCLV方式はもちろん、半径位置で線速が連続的に変化していくCAV方式にも対応するために、図5に示すような各加熱パルス幅Ttop、Tmp又は中間部Tmpと後端部加熱パルスTmpを別々に制御する場合はTmp、Tmp’、後端部冷却パルス幅dclを、基準クロックに比例する時間と(a*T:aは係数)、一定時間に比例する時間(bあるいはb’*k,kは整数)の和で定められた時間で制御することにより、線速が変化しても最適な記録発光波形を媒体に照射でき、線速依存性の小さい記録方法となる。
【0080】
好ましい幅は、−1.0T<dcl<1.0Tである。これら、記録方法において、加熱パルス時間に照射するLDのパワーを記録パワーPw、冷却時間に照射するパワーをボトムパワーPbとする。このパワーは、すべてのパルスにおいて一定とするが、場合により先頭部のみかあるいは後端部のみの記録パワーを他の加熱パルス部と異なるようにしても良い。また、線速によりボトムパワーPbを変えても良い。線速がより速い場合は、遅い場合より高くした方が良い場合がある。
【0081】
Pbは、再生パワーPeと同じかそれ以下が良い。記録線速が10m/s以上になってくると、初期化(結晶化)後の一回目の記録は比較的容易であるが、オーバーライトする場合に、一回目に記録したマークが消し残ることが起こり易い。
後端部のPbからPeまでのパルスの立ちあがり時間が平均2ナノ秒以下にならないこと、線速度が速いために消去に必要な温度に達する時間が短いため、あまりPeが低いと消しの残りが顕著になり、あまりPeが高いと溝中央部の温度の高い領域が非晶質相を形成しやすいことから、一旦溶融してから結晶化させる方法においては、最適Pe値に対するマージンが狭くなる。
【0082】
そこで、図6に示すように、後端部の冷却パルス後に、Pbより高いがPeよりも低い補正パワーPc(Pw>Pc>Pe)を照射することで、高い線速でも結晶化速度が速い記録材料において、マーク形成のため、より長い冷却パルス時間をとらなければならなく、そのためマーク後端部より後の領域にマークが残りやすい。
【0083】
この場合は、本来の後部冷却パルス時間より少し短くし、短くした時間をPcを照射する時間にする。tcは、1T以下が好ましい。これにより、より高い線速でのマーク後端部の長さを制御でき、消去パワーを高くしても残りのマークを消去することができる。
【0084】
また、PcをPeより高くし(Pe<Pc)する方法も考えられる。これは、記録線速度での結晶化速度が遅い記録層に対し有効である。消去パワーPeがあまりあげると、マークが広がりやすくなるため、マーク形成後に記録層を融点近くまで加熱するためにPcを照射後、Peを照射することでオーバーライトしてもマークが広がらずに所定の長さになるように消去できる。このパワーの照射時間も1T以下が良い。各パワーは、Pw≦22mW、Pc,Pe≦15mW、Pb≦Pr、Pr<1mWの条件で行った。
【0085】
【実施例】
以下に実施例を示す。
(実施例1)
図1は、本発明の発光波形の一例である。パルス開始位置を、記録開始位置から0.5T遅らせる。各マーク長のパルス幅(単位:T)は、
3T : 1.25, 0.75
4T : 0.75, 0.75, 1.0, 1.0
5T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
6T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.5
7T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 1.0, 1.0
8T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
9T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
10T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 1.0, 1.0
11T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
14T: 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
とした。表記は、加熱パルス、冷却パルス、加熱パルス、冷却パルス、…を示している。
【0086】
(実施例2)
図2に、本発明の発光波形の第2の実施例を示す。
3T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
4T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
5T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 1.0, 1.0
6T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
7T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
8T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 1.0, 1.0
9T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
10T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 1.0, 1.0
11T : 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
14T: 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75, 0.75
短いマーク長に対して、パルス数を実施例1よりも増やしている。
【0087】
(実施例3、4)
図5は、実施例1、2の基本発光波形に対して、加熱部パルス幅を先頭部Ttop、中間部加熱パルス幅をTmp、後部冷却パルス幅を、マークの後端部を基準とした場合の変化時間dclとして、最適記録ができるようこれらパラメータを変化させることを示したものである。必要に応じて、中間パルス幅Tmpと後端部加熱パルス幅をTmp’として、それぞれ独立に変えても良い。先頭加熱パルスの開始位置の遅れ時間をTdlとした。これらパラメータは媒体の記録位置によらず一定の線速度で記録するCLV方式の場合は、再適な値を決めてしまえば良いが、記録半径位置の内側から外側に向けて、線速度が連続的に速くなるCAV方式のに対応するために、各パラメータを基準クロックに比例する項と、一定時間の項から最適パラメータを求めることにより、線速に応じた基準クロックが決まっているので、任意の線速に対し最適なパラメータを決めることができる。
【0088】
この場合は、線密度は一定としている。例えば、Tmp=T*(1/6)+4(ナノ秒)とすることにより、
線速が17.5m/sでは、
Tmp=7.6*(1/6)+4=5.26=0.69T
線速が14m/sでは、
Tmp=9.5*(1/6)+4=0.59T
となる。記録媒体によっては、Tの係数を線速によらず一定にしても良い。Tdl、Ttop、Tmp、dclについて、
(パルス幅)=T*n*(1/m)+k*l
と表記する。
ここで、mはパルス幅の分割数で1以上の整数、nは整数、kは任意の固定時間、lは、0以上の整数である。
【0089】
実施例4は、実施例3の後部冷却パルスの後に、Pcなる補正パワーをある時間tcかけた発光波形を示した場合である。Pcは、Pw>Pc>Peの場合と、Pe>Pc’>Pbの場合がある。照射時間tcは、0<tc<Tが好ましい。
この補正パルスは、より高い線速でオーバーライトする場合に有効である。Pcは、Pe±3mWが好ましい。特に、オーバーライト1回目における前マークの消去比を高め、ジッターを実施例3よりも低くすることが可能である。線速が高くなるにつれ、後部冷却パルスを照射後から、Peを照射する時間は、LDの立ちあがり時間とマーク後端部が一定の温度(融点近傍)になるまでの温度上昇時間で決まるので、立ちあがり時間が長く、温度上昇時間が長ければ、長いマークの上により短いマークを記録した場合に、十分な温度に達しないため、余分なマークの消去が完全になされない。
【0090】
従って、この方法は、速い時間に一定の温度に達するようにいわゆる予備加熱部を設けることになり、有効な方法となる。単に消去パワーPeを高くしてしまうと、温度が上がりすぎてかえって、マーク形成を助長してしまう。
【0091】
(実施例5−12)
基板の溝ピッチを0.74μm、溝幅0.25μm、溝深さ25nm、厚さ0.6mmのポリカーボネート製基板を用い、この上にスパッタリング方式により各層を積層する。下部保護層は、ZnS:SiO2=80:20(mol%)のターゲットを使用し、膜厚を70nmとした。
【0092】
次に、表1に示す相変化記録層を各々合金ターゲットにして、膜厚16nmとし、順に作製した。用いた記録層は、GeMnSbTe、GeGaMnSbTe、GeSnMnSbTeを表1に示す所定の組成比にした。下部保護層と同じZnS:SiO2=80:20(mol%)を膜厚10nmとし、上部保護層とした。その上に表1に示す第2の上部保護層をそれぞれ膜厚4nmとした。その上に、Ag又は、AgCuNi合金の膜を膜厚140nmとした。その上に、耐環境性を向上させるために、大日本インキ製SD318、紫外線硬化樹脂を塗布後、硬化させ5ミクロン厚として保護膜とした。最後に、膜のないもう一枚の同一基板を紫外線硬化樹脂(アクリル製、日本化薬 DVD003)で厚さ40μmとして、貼合わせて記録媒体とした。
【0093】
その後、大口径LD(トラック方向1μmx半径方向196μm)を用い、線速3.5m/s、ワー850mW、ヘッドの送り速度36μm/回転で記録層を結晶化させた。記録再生は波長657nm、物レンズNA0.65のピックアップヘッドを用いて、所定の線速度17.5m/sで記録密度が0.267μm/bitとなるように記録した。記録デ−タの変調方式は(8,16)変調である。記録パワーは19mW、バイアスパワーは0.1mW、消去パワーは8mWとして、記録した。記録方法は、実施例2に示す方法で記録した。表1に、隣接する5トラックをDOW(ダイレクトオーバーライト)1及び1000回記録し、中心トラックを再生した場合のdata to clock ジッター値を示す。
【0094】
1回記録のジッター(σ/T)は、7%から7.5%である。10回記録後、80℃、85%RH 300時間、高温高湿環境下に置いた後のジッター上昇値を載せた。
【0095】
(実施例13−14)
実施例5から12と同様の方法で媒体を作製した。記録層材料、組成は表1に示すとおりである。記録条件は、発光波形を実施例4により行った以外は実施例5から12と同じである。Pcは、9mWとし、tcを0.5Tとした。表1に、隣接する5トラックをDOW(ダイレクトオーバーライト)1及び1000回記録し、中心トラックを再生した場合のdata to clock ジッター値を示す。1回記録のジッター(σ/T)は、7.5%である。10回記録後、80℃、85%RH 300時間、高温高湿環境下に置いた後のジッター上昇値を載せた。DOW1,DOW1000後のジッターが改善された。
【0096】
(比較例5)
比較例5は下部保護層、上部保護層がZnS・SiO2、記録層がAgInSbTe、反射層がAlTiの場合を示す。媒体の作製は実施例5〜14と同じ方法で行った。
【0097】
表1に、隣接する5トラックをDOW(ダイレクトオーバーライト)1000回記録した場合のdata to clock ジッター値を示す。記録方法は、比較例1の発光波形により、記録パワー21mW、消去パワー11mWで行った。
初回記録のジッターは、11%であった。DOW1.DOW1000回記録後のジッター(σ/T)と、10回記録後、80℃、85%RH 300時間、高温高湿環境下に置いた後のジッター上昇値を表1に示す。高温環境下のデ−タ保存性、初期特性ともに悪い。
【0098】
(比較例6,7)
表1に示す媒体構成により、比較例2による発光波形により、記録パワー18mW、消去パワー6mWで記録した。初回記録のジッターは、8.5%である。表1に、隣接する5トラックをDOW(ダイレクトオーバーライト)1000回記録した場合のdata to clock ジッター値を示す。DOW1.DOW1000回記録後のジッター(σ/T)と、10回記録後、80℃、85%RH 300時間、高温高湿環境下に置いた後のジッター上昇値を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【発明の効果】
請求項1によれば、所定の記録マークの時間の長さがnT(nは2以上の整数、Tは基準クロック)であり、該マークを先頭部の加熱パルス、冷却パルスと中間部の加熱パルスと冷却パルスと最後部の加熱パルスと冷却パルスからなるマルチパルスの光を発光させて記録する方法において、加熱パルス時間をOPi、冷却パルス時間をFPi(iは一個の加熱パルス部と一個の冷却パルス部を一組のパルス部とした場合のそのパルス数m)とした場合に、先頭部の各パルス時間をOP1,FP1,後端部の各パルス時間をOPm,FPm,一個ないし複数個からなる中間部の各パルス時間がOPj,FPj(j=2,…,m−1)で表されるパルス列において、該パルスの長さOPi+FPi(i=1,…,m)が基準クロックTの1.5倍を基本としたので、高線速で良好な記録特性が得られることとなった。
【0101】
請求項2によれば、中間部のパルス時間OPj+FPj(j=2,…,m−1)が、基準クロックTの1.5倍を基本としたので、高線速で良好な記録特性が得られることとなった。
【0102】
請求項3によれば、記録マーク長nTの内、(i)n≦4の時、パルスの数を(n−1)以下とし、(ii)5≦n≦8の時、パルスの数を(n−2)以下とし、(iii)n=9及び10の時、パルスの数を(n−3)以下とし、(iv)n=11の時、パルスの数を(n−4)以下とし、(v)n=14の時、パルスの数を(n−5)以下としたので、高線速で良好な記録特性が得られるとともに、記録パワーに対するマージンを広げることができた。
【0103】
請求項4、5によれば、各マークの時間的な長さnTに対して、パルス列の和OPi+FPiが、
(nT−1.0T)〜(nT+0.5T)
で加熱パルス部の時間が、3.5ナノ秒以上、後部冷却パルス時間が2.5ナノ秒以上であることとしたので、高線速で良好な記録特性が得られることとなった。
【0104】
請求項6から8によれば、マークを制御よく記録でき、CAV、CLVいずれにも対応でき、良好な記録特性が得られることとなった。
【0105】
請求項9から12によれば、高線速での初回記録のみならず、オーバーライト特性が向上できることとなった。
【0106】
請求項13から15によれば、相変化記録層の主要構成元素が、Ge、Mn、Sb、Teであり、さらに、添加元素Xを含み、記録層材料、組成が
式 XαGeβMnγSbδTeε
XがGa、Sn、Seのすくなくとも一つを含み、α、β、γ、δ、ε 各組成比(at%)が
0≦α≦5
1≦β<7
0<γ≦10
65≦δ<80
15≦ε≦25
α+β+γ+δ+ε=100
かつ、 γ≧α
であることとしたので、高い線速で良好な記録特性が得られるだけでなく、保存信頼性の優れた記録媒体が得られる。
【0107】
請求項15によれば、結晶化温度範囲をもつ記録層材料を用いることで、初期結晶化が容易に高速に行われ、そのため良好な記録特性が得られることとなった。
【0108】
請求項16から20によれば、反射層材料と硫化防止層を設けることで、高速での記録特性の向上が図られるだけでなく、高温環境における信頼性の高い記録媒体が得られることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマルチパルス発光式・光記録方法における発光波形の説明図である。
【図2】本発明の記録方法でマーク長を制御し易くするための発光波形の説明図である。
【図3】従来の記録方法の高速記録時の発光パルスとクロックとの関係説明図である。
【図4】従来の記録方法の発光パルス波形でのマーク形成の困難性の説明図である。
【図5】本発明の記録方法でパルス幅制御で線速依存性の少い記録法を得る発光波形の説明図である。
【図6】本発明の記録方法で補正パワー照射により高線速記録を可能にする記録法を得る発光波形の説明図である。
【図7】従来の記録媒体の構成例の説明図である。
【図8】本発明の反射層と上部保護層の間に第2の上部保護層6を設けた記録媒体の構成例の説明図である。
【符号の説明】
T 基準クロック
OP1 先頭部加熱パルス時間
FP1 先頭部冷却パルス時間
OP2 次回加熱パルス時間
FP2 次回冷却パルス時間
OP3 後端加熱パルス時間
FP3 後端冷却パルス時間
Pw 加熱照射パルスパワー
Pb 冷却照射パルスパワー
Pe 消去パルスパワー
Pc 補正照射パルスパワー
Td1 パルス開始遅れ時間
Ttop 先頭部加熱パルス幅
Tmp 中間部、後端部加熱パルス幅
dcl マーク後端部基準変化時間
tc 補正パルス照射時間
Claims (20)
- 所定の記録マークの時間の長さがnT(nは2以上の整数、Tは基準クロック)であり、該マークを先頭部の加熱パルス、冷却パルスと中間部の加熱パルスと冷却パルスと最後部の加熱パルスと冷却パルスからなるマルチパルスの光を発光させて記録する光記録方法において、加熱パルス時間をOPi、冷却パルス時間をFPi(iは一個の加熱パルス部と一個の冷却パルス部を一組のパルス部とした場合のそのパルス数m)とした場合に、先頭部の各パルス時間をOP1,EP1,後端部の各パルス時間をOPm,FPm,一個ないし複数個からなる中間部の各パルス時間がOPj,FPj(j=2,…,m−1)で表されるパルス列において、該パルスの長さOPi+FPi(i=1,…,m)が基準クロックTの1.5倍を基本とすることを特徴とする光記録方法。
- 中間部のパルス時間OPj+FPj(j=2,…,m−1)が、基準クロックTの1.5倍を基本とすることを特徴とする請求項1記載の光記録方法。
- 記録マーク長nTの内、
(i)n≦4の時、パルスの数を(n−1)以下とし、
(ii)5≦n≦8の時、パルスの数を(n−2)以下とし、
(iii)n=9及び10の時、パルスの数を(n−3)以下とし、
(iv)n=11の時、パルスの数を(n−4)以下とし、
(v)n=14の時、パルスの数を(n−5)以下
とすることを特徴とする請求項1又は2記載の光記録方法。 - 各マークの時間的な長さnTに対して、パルス列(OPi+FPi)の和(i=1,…,m)が、
(nT−1.0T)〜(nT+0.5T)
であることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の光記録方法。 - 加熱パルス部の時間が、3.5ナノ秒以上、後部冷却パルス時間が2.5ナノ秒以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の光記録方法。
- 一定の線密度で、記録半径位置によらず一定の記録線速度でその速度における一定の基準クロックで記録する場合、あるいは半径位置の内周から外周で連続的に線速度が変化し、それに伴い基準クロックが連続的に変化するいずれかの光記録方法において、先頭加熱パルスの開始時間を、基準クロックに比例した変化量で制御し、各マーク長毎にそれを制御することを特徴とする光記録方法。
- 先頭パルス加熱時間、中間パルス加熱時間、後部加熱パルス時間を基準クロックに比例した時間と、一定時間の和で決まられる時間で制御し、各マーク長毎にそれを制御することを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の光記録方法。
- 後部冷却パルスの終了時間を、基準クロックに比例した変化量で制御し、各マーク長毎にそれを制御することを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の光記録方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の光記録方法において、加熱パルス時間に照射する記録パワーPw、冷却パルス時間内に照射するボトムパワーPb、及び消去するための消去パワーPeがPw>Pe>Pbであり、Pbが再生パワーPrに対し、Pb≦Prであり、記録線速毎に異なるPbとし、より高い線速Vh,低い線速Vlにおいて、それぞれのパワーPbをPbh,Pblとした時にPbh≧Pblとすることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の光記録方法。
- 後部冷却パルスの後に補正パルス部を設け、そのパワーをPcとし、そのパワーがPw>Pc>Peであり、かつ補正パルス時間が、各記録マーク毎に異なることを特徴とする請求項1又は2記載の光記録方法。
- 後部冷却パルスの後に補正パルス部を設け、そのパワーをPcとし、そのパワーがPc<Peであり、かつ補正パルス時間が、各記録マーク毎に異なることを特徴とする請求項1又は2記載の光記録方法。
- n≦3の場合、パルス数が1個であり、
1.5*T < OP1+FP1 < 2.5*T
であることを特徴とする請求項1記載の光記録方法。 - 電磁波を照射することにより,結晶相と非晶質相の可逆的相変化を利用した相変化記録材料を記録層とする光情報記録媒体において、記録層の主要構成元素が、Ge,Mn,Sb,Teであることを特徴とする光情報記録媒体。
- 前記記録層が、添加元素Xを含み、
式 XαGeβMnγSbδTeε
で表わされ、XがGa,Sn,Seのすくなくとも一つを含み、α、β、γ、δ、εの各組成比(at%)が
0≦α≦5
1≦β<7
0<γ≦10
65≦δ<80
15≦ε≦25
α+β+γ+δ+ε=100
かつ、 γ≧α
であることを特徴とする請求項13記載の光情報記録媒体。 - 前記記録層が昇温速度10℃/分での結晶化温度が150℃以上220℃以下であることを特徴とする請求項14記載の光情報記録媒体。
- 基板上に少なくとも下部保護層、記録層、上部保護層、反射層を設けたものであり,該反射層がAg又はAgを95%以上含む合金であることを特徴とする請求項13から15のいずれか記載の光情報記録媒体。
- 上部保護層がイオウを含む場合において、反射層との間に第2の上部保護層を設けたことを特徴とする請求項16記載の光情報記録媒体。
- 第2の上部保護層がSi又はSiCを主成分とする層からなることを特徴とする請求項16記載の光情報記録媒体。
- 第2の上部保護層の膜厚が2nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項18又は19記載の光情報記録媒体。
- Ag合金が、
AgxCuyNi1−x−y ,x≧95,y≦5(at%)
であることを特徴とする請求項16記載の光情報記録媒体。
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