しかしながら、その方法では、情報記録装置が市場に出た後に発売されて当該情報記録装置が認識できない光情報記録媒体、或いは、当該情報記録装置による記録方法の条件が設定されていない光情報記録媒体については、記録を行うことができない。仮に、記録動作を行うことができる場合でも、元々設定してある条件の一つを使用して記録動作を実行してしまうことになるため、良好な特性での記録を行うことができないことが多く、様々な光情報記録媒体への対応について、汎用性に乏しい。
例えば、記録方法が設定されていない光情報記録媒体が装填された際には、元々設定してある条件の一つを使用して記録動作を実行してしまう情報記録装置に対して、この情報記録装置による記録方法が設定されてなく、かつ、最高記録線速度(VMh)が当該情報記録装置に元々設定されている最高記録線速度(VAh)よりも高い(VMh>VAh)ような光情報記録媒体を装填したとき、当該情報記録装置は、この光情報記録媒体に対しても、線速度VAhにて元々設定してある条件の一つを使用して記録動作を実行することになり、この光情報記録媒体を線速度VAhにて記録する場合における適正な記録パワー及び記録パルスパターンを使用した記録を行うことができないため、良好な特性での記録ができずに、記録されていたデータを壊したり、情報記録装置でマウントすることができない光情報記録媒体となったりすることがある。
このように、情報記録装置が認識できない光情報記録媒体、或いは、情報記録装置による記録方法の条件が設定されていない光情報記録媒体の使用には様々な不具合が多く、事実上使用することが困難であるため、情報記録装置が発売されてある程度の期間が経ち、例に挙げたような最高線速度の向上した光情報記録媒体の新機種が市場に立ち並ぶ頃には、情報記録装置の製品寿命は終了してしまうことになってしまう。そして、このことは、情報記録装置の多量廃棄を産む原因にもなる。
このような問題を避けるため、情報記録装置にとっては既知ではない光情報記録媒体であっても、良好な特性での記録を行うことができるようにするために、情報記録装置に内蔵された記録方法についての情報を書換えて、当該光情報記録媒体を既知のものとし、記録方法の情報を持たせることによって、対応を行うことができる。その方法として、現状では、インターネット上の情報記録装置メーカ各社のホームページ上に掲載されているファームウェアのバージョンアップソフトにより導入する手法が採られているが、この方法では、ユーザが各自で実施することになり、各ユーザの自由意思や作業スキルに依存してしまうため、実際に導入される率が低く、実用的ではない。
加えて、新たな光情報記録媒体が市場に投入される度に対応を行う必要があり、バージョンアップしたファームウェアを準備する情報記録装置メーカにとっても、その都度ファームウェアの変更を要求されるユーザにとっても、負荷が大きく、この点からも、実用的とは言えない。
そのため、情報記録装置にとっては既知ではない光情報記録媒体であっても、良好な特性での記録を行う条件を設定できる方法が必要とされる。このときの最適な記録条件は、前述したように、光情報記録媒体の材料、構造、仕様や情報記録装置の構成・仕様などによって異なる。そのため、未知の光情報記録媒体に対し、既存の情報記録装置において良好な信号特性での記録に行うための設定を容易に行うことができるようにするためには、適正な記録条件の設定方法についての明確な指標となる光情報記録媒体の特性値を決めることが望ましい。
本発明の目的は、光情報記録媒体への情報記録に際して、既存の情報記録装置にとって未知の光情報記録媒体であっても、当該光情報記録媒体と当該情報記録装置との組合せにおける適正な記録方法を選択する方法を決めることにより、情報記録装置が光情報記録媒体に対して良好な特性での記録を行えるようにすることである。
請求項1記載の発明は、案内溝を有する基板上に少なくとも相変化記録層を有する光情報記録媒体に対して、時間的長さnT(nは自然数、Tは基本クロック周期)の記録マーク及びマーク間でPWM変調方式に従い、強度変調させたパルスパターンにより発光させたレーザ光を照射することにより前記相変化記録層に相変化を生じさせることで、情報の記録を行う情報記録方法において、記録動作実行に先立ち、対象となる光情報記録媒体に対して消去パワーレベルPeのレーザ光の連続光を照射したとき、当該レーザ光照射前後の反射光強度比Rr=(レーザ光照射後の反射光強度Ra)/(レーザ光照射前の反射光強度Rb)がRr<1となる線速度の最小値である転位線速度Voを求めるステップと、前記転位線速度Voより速い線速度範囲で記録動作を行うステップを有する。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の情報記録方法において、転位線速度Voを求める際に照射する連続光の消去パワーレベルPeを、強度変調させたパルスパターンを用いて記録を実行する場合における最適な記録パワーレベルPwoに対して、
(Pwo/2)≦Pe≦(Pwo/2)×1.5
とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の情報記録方法において、消去パワーレベルPeを規定するための最適な記録パワーレベルPwoは、OPC(Optimum Power Control)法による試し書き記録により決定された値である。
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の情報記録方法において、転位線速度Voを求める際に、前記光情報記録媒体の回転速度を変化させるとともに、当該光情報記録媒体のデータ領域よりも外周部の領域を使用して反射光強度の測定を実行することで、異なる線速度における反射光強度比Rrを求めることにより、転位線速度Voを求める。
請求項5記載の発明は、請求項1又は2記載の情報記録方法において、転位線速度Voを求める際に、前記光情報記録媒体をCAV方式で回転させながら、内周部から外周部まで測定位置を変化させて反射光強度の測定を実行することで、異なる線速度における反射光強度比Rrを求めることにより、転位線速度Voを求める。
請求項6記載の発明は、請求項1又は2記載の情報記録方法において、求められた転位線速度Voを含む線速度範囲について全面又は部分CAV方式で記録を行うとき、転位線速度Voよりも低い線速度で、消去パワーレベル比ε(ε=消去パワーレベルPe/記録パワーレベルPw)を切換える。
請求項7記載の発明は、請求項6記載の情報記録方法において、転位線速度Voよりも低い線速度領域における消去パワーレベル比εLと、転位線速度Voよりも高い線速度領域における消去パワーレベル比εHとの比(εH /εL )が、(εH /εL )<1である。
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7の何れか一記載の情報記録方法において、転位線速度Voを求める際のテスト線速度範囲に関する情報がプリフォーマット情報としてエンコードされている光情報記録媒体を対象とする場合、転位線速度Voを求める際に、当該光情報記録媒体からテスト線速度範囲に関する情報を取得して転位線速度Voを求める際のテスト線速度範囲を決定するようにした。
請求項9記載の発明は、請求項1ないし7の何れか一記載の情報記録方法において、転位線速度Voを求める際に使用される連続光の消去パワーレベルPeの範囲に関する情報がプリフォーマット情報としてエンコードされている光情報記録媒体を対象とする場合、転位線速度Voを求める際に、当該光情報記録媒体から連続光の消去パワーレベルPeの範囲に関する情報を取得して転位線速度Voを求める際の連続光のパワーレベルPeを決定するようにした。
請求項10記載の発明の光情報記録媒体は、消去パワーレベルPeのレーザ光の連続光を照射したとき、当該レーザ光照射前後の反射光強度比Rr=(レーザ光照射後の反射光強度Ra)/(レーザ光照射前の反射光強度Rb)がRr<1となる線速度の最小値である転位線速度Voより速い線速度範囲で記録動作が行われる案内溝を有する基板上に少なくとも相変化記録層を有する光情報記録媒体であって、前記転位線速度Voを求める際に用いられるテスト線速度範囲に関する情報がプリフォーマット情報としてエンコードされている。
請求項11記載の発明の光情報記録媒体は、消去パワーレベルPeのレーザ光の連続光を照射したとき、当該レーザ光照射前後の反射光強度比Rr=(レーザ光照射後の反射光強度Ra)/(レーザ光照射前の反射光強度Rb)がRr<1となる線速度の最小値である転位線速度Voより速い線速度範囲で記録動作が行われる案内溝を有する基板上に少なくとも相変化記録層を有する光情報記録媒体であって、前記転位線速度Voを求める際に使用される連続光の消去パワーレベルPeの範囲に関する情報がプリフォーマット情報としてエンコードされている。
請求項12記載の発明は、請求項10又は11記載の光情報記録媒体において、プリフォーマット情報は、グルーブのウォブリングにエンコードされている。
請求項13記載の発明は、請求項12記載の光情報記録媒体において、プリフォーマット情報は、ウォブリングの位相変調によって記録されている。
請求項14記載の発明は、案内溝を有する基板上に少なくとも相変化記録層を有する光情報記録媒体に対して、時間的長さnT(nは自然数、Tは基本クロック周期)の記録マーク及びマーク間でPWM変調方式に従い、強度変調させたパルスパターンにより発光させたレーザ光を照射することにより前記相変化記録層に相変化を生じさせることで、情報の記録を行う情報記録装置において、前記光情報記録媒体を回転させる回転駆動機構と、前記光情報記録媒体に対して照射するレーザ光を発するレーザ光源と、このレーザ光源を発光させる光源駆動手段と、回転駆動される前記光情報記録媒体とこの光情報記録媒体に照射されるレーザ光との間の相対的な線速度を制御しながら、前記光源駆動手段をPWM変調方式に従い制御して前記レーザ光源を発光させることで前記光情報記録媒体に対する情報の記録を行わせる記録動作実行手段と、記録動作実行に先立ち、対象となる光情報記録媒体に対して消去パワーレベルPeのレーザ光の連続光を照射したとき、当該レーザ光照射前後の反射光強度比Rr=(レーザ光照射後の反射光強度Ra)/(レーザ光照射前の反射光強度Rb)がRr<1となる線速度の最小値である転位線速度Voを求める転位線速度測定手段と、この転位線速度測定手段により求められた転位線速度Voより速い線速度範囲で記録動作を実行するように前記記録動作実行手段により実行される記録動作を制御する記録動作制御手段と、を備える。
請求項15記載の発明は、請求項14記載の情報記録装置において、前記転位線速度測定手段は、転位線速度Voを求める際に照射する連続光の消去パワーレベルPeが、強度変調させたパルスパターンを用いて記録を実行する場合における最適な記録パワーレベルPwoに対して、
(Pwo/2)≦Pe≦(Pwo/2)×1.5
となるように前記光源駆動手段を制御する。
請求項16記載の発明は、請求項15記載の情報記録装置において、記録動作に先立ち、光情報記録媒体に対してOPC(Optimum Power Control)法による試し書き記録を行い最適な記録パワーレベルPwoを求めるOPC手段を備え、前記転位線速度測定手段は、消去パワーレベルPeを規定するための最適な記録パワーレベルPwoとして、OPC(Optimum Power Control)法による試し書き記録により決定された値を用いる。
請求項17記載の発明は、請求項14又は15記載の情報記録装置において、前記転位線速度測定手段は、転位線速度Voを求める際に、前記光情報記録媒体の回転速度を変化させるとともに、当該光情報記録媒体のデータ領域よりも外周部の領域を使用して反射光強度の測定を実行することで、異なる線速度における反射光強度比Rrを求めることにより、転位線速度Voを求める。
請求項18記載の発明は、請求項14又は15記載の情報記録装置において、前記転位線速度測定手段は、転位線速度Voを求める際に、前記光情報記録媒体をCAV方式で回転させながら、内周部から外周部まで測定位置を変化させて反射光強度の測定を実行することで、異なる線速度における反射光強度比Rrを求めることにより、転位線速度Voを求める。
請求項19記載の発明は、請求項14又は15記載の情報記録装置において、前記記録動作制御手段は、求められた転位線速度Voを含む線速度範囲について全面又は部分CAV方式で記録を行うとき、転位線速度Voよりも低い線速度で、消去パワーレベル比ε(ε=消去パワーレベルPe/記録パワーレベルPw)を切換えるように前記記録動作実行手段により実行される記録動作を制御する。
請求項20記載の発明は、請求項19記載の情報記録装置において、転位線速度Voよりも低い線速度領域における消去パワーレベル比εLと、転位線速度Voよりも高い線速度領域における消去パワーレベル比εHとの比(εH /εL )が、(εH /εL )<1である。
請求項21記載の発明は、請求項14ないし20の何れか一記載の情報記録装置において、転位線速度Voを求める際のテスト線速度範囲に関する情報がプリフォーマット情報としてエンコードされている光情報記録媒体を対象とする場合、前記転位線速度測定手段は、転位線速度Voを求める際に、当該光情報記録媒体からテスト線速度範囲に関する情報を取得して転位線速度Voを求める際のテスト線速度範囲を決定する。
請求項22記載の発明は、請求項14ないし20の何れか一記載の情報記録装置において、転位線速度Voを求める際に使用される連続光の消去パワーレベルPeの範囲に関する情報がプリフォーマット情報としてエンコードされている光情報記録媒体を対象とする場合、前記転位線速度測定手段は、転位線速度Voを求める際に、当該光情報記録媒体から連続光の消去パワーレベルPeの範囲に関する情報を取得して転位線速度Voを求める際の連続光のパワーレベルPeを決定する。
請求項23記載の発明のプログラムは、案内溝を有する基板上に少なくとも相変化記録層を有する光情報記録媒体に対して、時間的長さnT(nは自然数、Tは基本クロック周期)の記録マーク及びマーク間でPWM変調方式に従い、強度変調させたパルスパターンにより発光させたレーザ光を照射することにより前記転位線速度Voより速い線速度範囲で記録動作を行い、前記相変化記録層に相変化を生じさせることで、情報の記録を行う情報記録装置が備えるコンピュータにインストールされ、当該コンピュータに、記録動作実行に先立ち、対象となる光情報記録媒体に対して消去パワーレベルPeのレーザ光の連続光を照射したとき、当該レーザ光照射前後の反射光強度比Rr=(レーザ光照射後の反射光強度Ra)/(レーザ光照射前の反射光強度Rb)がRr<1となる線速度の最小値である転位線速度Voを求める転位線速度測定処理を実行させる。
請求項24記載の発明のコンピュータ読取り可能な記憶媒体は、請求項23記載のプログラムを格納している。
請求項1,14,23,24記載の発明によれば、レーザ光照射による加熱後、記録層を再結晶化できる限界の条件、記録層全体を結晶化することができなくなり始める条件を示す転位線速度は、相変化型の光情報記録媒体において消去(書換え)を行うことができる限界の条件を示すこととなり、転位線速度が高いほど再結晶化しやすく高い線速度でも消去可能なことから高線速度記録向きの媒体となり、転位線速度が低いほど再結晶化しにくく低線速度記録向きの媒体となる。つまり、転位線速度は、相変化型の光情報記録媒体の適正な記録線速度に対する指標となるパラメータといえる。そこで、対象となる光情報記録媒体の転位線速度を求めてから、当該光情報記録媒体に対する記録動作について特定化することで、未知の光情報記録媒体であっても、記録できる線速度範囲についての適正な情報を得ることができるため、適正な線速度での記録を実行することができる。
請求項2,15記載の発明によれば、転位線速度を求める際に用いられる連続光の消去パワーレベルPeの適正値を特定化することで、転位線速度の測定精度を高めることができる。
請求項3,16記載の発明によれば、転位線速度を求める際に用いられる連続光の消去パワーレベルの適正値を特定化することで、転位線速度の測定精度を高めることができる。
請求項4,17記載の発明によれば、CLV方式で転位線速度を求める際の手法を特定化することで、転位線速度の測定精度を高めることができる。
請求項5,18記載の発明によれば、CAV方式で転位線速度を求める際の手法を特定化することで、転位線速度の測定精度を高めることができる。
尚、本明細書に記載の発明によれば、転位線速度を指標にして、適正な記録方法を選択する方法を特定化することで、良好な信号特性での光情報記録媒体への記録を実行することができる。特に、転位線速度が高いほど再結晶化しやすく高い線速度でも消去可能なことから高線速度向きの媒体の場合に好適となり、かつ、より高速での記録を重視する場合の記録に好適となる。
請求項6,19記載の発明によれば、転位線速度を指標にして、適正な記録方法を選択する方法を特定化することで、良好な信号特性での光情報記録媒体への記録を実行することができる。
請求項7,20記載の発明によれば、転位線速度を指標にして、適正な記録方法を選択する方法を特定化することで、良好な信号特性での光情報記録媒体への記録を実行することができる。
請求項8,21記載の発明によれば、転位線速度を求めるための条件を光情報記録媒体にプリフォーマットされている情報を利用して決定することにより、転位線速度を、迅速に、かつ高い精度で求めることができる。
請求項9,22記載の発明によれば、転位線速度を求めるための条件を光情報記録媒体にプリフォーマットされている情報を利用して決定することにより、転位線速度を、迅速に、かつ高い精度で求めることができる。
請求項10記載の発明によれば、転位線速度を求めるための条件が光情報記録媒体にプリフォーマットされているので、転位線速度を求める際にこの情報を提供することにより、転位線速度を、迅速に、かつ高い精度で求めることができる。
請求項11記載の発明によれば、転位線速度を求めるための条件が光情報記録媒体にプリフォーマットされているので、転位線速度を求める際にこの情報を提供することにより、転位線速度を、迅速に、かつ高い精度で求めることができる。
請求項12記載の発明によれば、転位線速度を求めるための指標を入力する手法を特定化することで、良好な信号特性での記録が可能な光情報記録媒体を提供することができる。特に、グルーブのウォブリングに記録しているため、媒体の記録容量を犠牲にすることなく、数多くのパラメータをプリフォーマットすることが可能となる。
請求項13記載の発明によれば、転位線速度を求めるための指標に関する情報が、ウォブリングの位相変調によって記録されているので、いわゆる書換え可能なDVD系の光情報記録媒体の場合に好適に適用できる。
以上
本発明を実施するための最良の形態について図面に基づいて説明する。
[情報記録装置の構成例]
図1は本実施の形態の情報記録方法が用いられる情報記録装置の一例のハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。この情報記録装置は、例えばCD/DVD用の光ディスクドライブであり、例えば、ホスト(図示せず)に接続されて使用される。当該情報記録装置は、CD/DVD等の光情報記録媒体1を回転駆動するためのスピンドルモータ2、光ピックアップ装置3、レーザコントロール回路4、エンコーダ5、モータドライバ6、再生信号処理回路7、サーボコントローラ8、バッファRAM9、バッファマネージャ10、インターフェース11、ROM12、CPU13及びRAM14などを備えている。なお、図1中の接続線は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
光ピックアップ装置3は、光源としての半導体レーザ、この半導体レーザから出射される光束を光情報記録媒体1の記録面に導くとともに、この記録面で反射された戻り光束を所定の受光位置まで導く光学系、その受光位置に配置され戻り光束を受光する受光素子、及び、駆動系(フォーカシングアクチュエータ、トラッキングアクチュエータ、シークモータ等)(何れも図示せず)などを含んで構成されている。受光素子からは、その受光量に応じた電流(電流信号)が再生信号処理回路17に出力される。
再生信号処理回路7は、光ピックアップ装置3の出力信号である電流信号を電圧信号に変換し、この電圧信号に基づいてウォブル信号、RF信号及びサーボ信号(フォーカスエラー信号やトラックエラー信号など)を検出する。再生信号処理回路7では、ウォブル信号からADIP(Address In Pre-groove)情報及び同期信号などを抽出する。ここで抽出されたADIP情報はCPU13に出力され、同期信号はエンコーダ5に出力される。さらに、再生信号処理回路7は、RF信号に対して誤り訂正処理等を行った後、バッファマネージャ10を介してバッファRAM9に格納する。また、フォーカスエラー信号及びトラックエラー信号は、再生信号処理回路7からサーボコントローラ8に出力される。
サーボコントローラ8は、フォーカスエラー信号に基づいて光ピックアップ装置3のフォーカシングアクチュエータを制御する制御信号を生成し、トラックエラー信号に基づいて光ピックアップ装置3のトラッキングアクチュエータを制御する制御信号を生成する。各制御信号はサーボコントローラ8からモータドライバ6に各々出力される。
バッファマネージャ10は、バッファRAM9へのデータの入出力を管理し、蓄積されたデータ量が所定の値になると、CPU13に通知する。
モータドライバ6は、サーボコントローラ8からの制御信号に基づいて、光ピックアップ装置3のフォーカシングアクチュエータ及びトラッキングアクチュエータを駆動する。また、モータドライバ6は、CPU13の指示に基づいて、光情報記録媒体1をCLV方式(線速度一定方式)又はCAV方式(角速度一定方式;全面CAV方式又は部分CAV方式)でスピンドルモータ2を制御する。さらに、モータドライバ6は、CPU13の指示に基づいて、光ピックアップ装置3のシークモータを駆動し、光ピックアップ装置3のスレッジ方向(光情報記録媒体1の半径方向)の位置を制御する。
エンコーダ5は、CPU13の指示に基づいて、バッファマネージャ10を介してバッファRAM9から取り出したデータに対してエラー訂正コードの付加などを行い、光情報記録媒体1への書き込みデータを作成するとともに、再生信号処理回路7からの同期信号に同期して、書き込みデータをレーザコントロール回路4に出力する。
レーザコントロール回路4では、エンコーダ5からの書き込みデータ及びCPU13の指示に基づいて、光ピックアップ装置3の半導体レーザの出力を制御する。
インターフェース11は、ホストとの双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)及びSCSI(Small Computer System Interface)等の標準インターフェースに準拠している。
記憶媒体としても機能するROM12には、CPU13により解読可能なコードで記述された後述するような情報記録用プログラムを含むプログラム等が格納されている。なお、情報記録装置の電源がオン状態になると、当該制御プログラムはメインメモリ(図示せず)にロード(インストール)され、CPU13はそのプログラムに従って上記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータ等を一時的にRAM14に保存する。即ち、CPU13はROM12及びRAM14とともに当該情報記録装置が備えるコンピュータを構成している。
[光情報記録媒体の構成例]
ここで、光情報記録媒体1としては、CD/DVDの何れも使用可能であるが、本実施の形態では、特に相変化型光情報記録媒体の使用を想定している。後述する情報記録方法への適用に好適な光情報記録媒体1の一例を図2に示す。基本的な構成は、螺旋状又は同心円状の案内溝を有する透明基板21上に下部保護層22、記録層23、上部保護層24、反射層25、オーバーコート層26を有する。さらに、オーバーコート層26上には印刷層28、基板21の鏡面側にはハードコート層27を有しても良い。
上記の単板ディスクを、接着層29を介して貼り合わせる構造としても良い。貼り合わせる反対面のディスクは、同様の単板ディスクでも、透明基板のみでも良い。また、単板ディスクに印刷層を形成せずに貼り合わせ、貼り合わせ後に反対面側に印刷層28'を形成しても良い。
基板21の材料は、通常ガラス、セラミックス或いは樹脂であり、樹脂基板が成形性、コストの点で好適である。樹脂の例としては、ポリカーボネート樹脂,アクリル樹脂,エポキシ樹脂,ポリスチレン樹脂,アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,シリコーン系樹脂,フッ素系樹脂,ABS樹脂,ウレタン樹脂などが挙げられるが、成形性、光学特性、コストの点で優れるポリカーボネート樹脂,アクリル系樹脂が好ましい。
記録層23の材料としては、結晶−アモルファス相間の相変化を起こし、各々が安定化又は準安定化状態をとることができるSb,Teを含む相変化型記録材料が、記録(アモルファス化)感度・速度、消去(結晶化)感度・速度、及び、消去比が良好なため適している。このSbTe材料に、Ga,Ge,Ag,In,Bi,C,N,O,Si,Sなどの元素を添加することで、記録・消去感度や信号特性、信頼性などを改善することができる。そのため、目的とする記録線速度及び線速度領域により、添加する元素や材料の組成比を調整して、最適な記録線速度を制御すると同時に、記録した信号の再生安定性や信号の寿命(信頼性)を確保することが望ましい。本実施の形態で用いられる相変化型の光情報記録媒体1においては、これらの特性を総合的に満足できる記録層の材料として、構成元素にAg及び/又はGe,Ga及び/又はIn,Sb,Teを含んでおり、これらの元素の組成比(Ag及び/又はGe)α(Ga及び/又はIn)βSbγTeδ(α,β,γ,δは原子%)が、α+β+γ+δ=100としたときに、
0<α≦6
2≦β≦10
60≦γ≦85
15≦δ≦27
である材料が、信号の再生安定性や信号の寿命が優れており、好適である。
相変化型の記録層23の膜厚としては5〜40nmとするのが良い。さらに、ジッタ等の初期特性、オーバーライト特性、量産効率を考慮すると、好適には10〜25nmとするのが良い。5nmより薄いと光吸収能が著しく低下し、記録層としての役割を果たさなくなる。また、40nmより厚いと高速で均一な相変化が起こりにくくなる。このような相変化型の記録層23は、各種気相成長法,例えば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。中でも、スパッタリング法が量産性、膜質等に優れている。
このような記録層23の下層及び上層には保護層22,24が形成される。保護層22,24の材料としては、SiO,SiO2,ZnO,SnO2,Al2O3,TiO2,In2O3,MgO,ZrO2などの金属酸化物、Si3N4,AlN,TiN,BN,ZrNなどの窒化物、ZnS,In2S3,TaS4などの硫化物、SiC,TaC,BC,WC,TiC,ZrCなどの炭化物やダイヤモンド状カーボン、或いは、それらの混合物が挙げられる。これらの材料は、単体で保護層とすることもできるが、互いの混合物としても良い。必要に応じて不純物を含んでも良い。また、単層でなく、2層以上を積層した構造としても良い。ただし、保護層22,24の融点は、相変化型記録層よりも高いことが必要である。このような保護層22,24は、各種気相成長法、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。中でも、スパッタリング法が量産性、膜質等に優れている。
保護層22,24の膜厚は、反射率、変調度や記録感度に大きく影響している。これらの特性を満足するためには、下部保護層22の膜厚は30〜200nmとすることが要求される。さらに良好な信号特性を得るためには、好適には40〜100nmとするのが良い。上部保護層24の膜厚としては5〜40nm、好適には7〜30nmとするのが良い。5nmより薄くなると耐熱性保護層としての機能を果たさなくなる。また、記録感度の低下を生じる。一方、40nmより厚くなると、界面剥離を生じやすくなり、繰り返し記録性能も低下する。
反射層25としては、Al,Au,Ag,Cu,Ta,Ti,Wなどの金属材料、又は、これらの元素を含む合金などを用いることができる。また、耐腐食性の向上、熱伝導率の改善などのために、上記材料に対してCr,Ti,Si,Cu,Ag,Pd,Taなどの元素を添加しても良い。添加比率は、0.3〜2at%とするのが適している。0.3at%より少ないと、耐腐食性の効果に劣る。2at%より多くなると、熱伝導率が下がりすぎ、アモルファス状態を形成し難くなる。このような反射層25は、各種気相成長法、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。合金又は金属層の膜厚としては50〜200nm、好適には70〜160nmとするのが良い。また、合金又は金属層を多層化することも可能である。多層化した場合では、各層の膜厚は少なくとも10nm以上必要で、多層化膜の合計膜厚は50〜160nmとするのが良い。
反射層25の上には、その酸化防止のためにオーバーコート層26が形成される。オーバーコート層26としては、スピンコートで作製した紫外線硬化型樹脂が一般的である。その厚さは3〜15μmが適当である。3μmより薄くすると、オーバーコート層上に印刷層を設ける場合、エラーの増大が認められることがある。一方、15μmより厚くすると、内部応力が大きくなってしまい、ディスクの機械特性に大きく影響してしまう。
ハードコート層22としては、スピンコートで作製した紫外線硬化型樹脂が一般的である。その厚さは2〜6μmが適当である。2μmより薄くすると、十分な耐擦傷性が得られない。6μmより厚くすると、内部応力が大きくなってしまい、ディスクの機械特性に大きく影響してしまう。その硬度は、布で擦っても大きな傷がつかない鉛筆硬度であるH以上とする必要がある。必要に応じて、導電性の材料を混入させ、帯電防止を図り、埃等の付着を防止することも効果的である。
印刷層28’は、耐擦傷性の確保、ブランド名などのレーベル印刷、インクジェットプリンタに対するインク受容層の形成などを目的としており、紫外線硬化型樹脂をスクリーン印刷法にて形成するのが一般的である。その厚さは3〜50μmが適当である。3μmより薄くすると、層形成時にムラが生じてしまう。50μmより厚くすると、内部応力が大きくなってしまい、ディスクの機械特性に大きく影響してしまう。
接着層29としては、紫外線硬化型樹脂、ホットメルト接着剤、シリコーン樹脂などの接着剤を用いることができる。このような接着層29の材料は、オーバーコート層26又は印刷層28上に、材料に応じて、スピンコート、ロールコート、スクリーン印刷法などの方法により塗布し、紫外線照射、加熱、加圧等の処理を行って反対面のディスクと貼り合わせる。反対面のディスクは、同様の単板ディスクでも透明基板のみでも良く、反対面ディスクの貼合せ面については、接着層29の材料を塗布してもしなくても良い。また、接着層29としては、粘着シートを用いることもできる。接着層29の膜厚は特に制限されるものではないが、材料の塗布性、硬化性、ディスクの機械特性の影響を考慮すると、5〜100μmが好適である。接着面の範囲は特に制限されるものではないが、DVD及び/又はCD互換が可能な光情報記録媒体に応用する場合、接着強度を確保するためには内周端の位置がΦ15〜40mm、好適にはΦ15〜30mmであることが望ましい。
[記録ストラテジ等について]
従って、このような相変化型光情報記録媒体1を用いる場合、当該光情報記録媒体1をスピンドルモータ12で回転駆動すると共に、光ピックアップ装置13のレーザ駆動回路により半導体レーザを駆動し、光学系を介して光情報記録媒体1に図3ないし図7に示すようなフロントパルス部、マルチパルス部及びエンドパルス部を有する各種のパルスパターンのレーザ光を照射して当該光情報記録媒体1の記録層23に光学的な変化(相変化)を生じさせ、光情報記録媒体1からの反射光を光ピックアップ装置13で受光し、光情報記録媒体1に対する情報の記録や再生を行うこととなる。
記録方式としては、光情報記録媒体1の記録層23に対してマークの幅として信号を記録する、いわゆるPWM記録(マークエッジ記録)方式を使用し、記録すべき信号を変調部のクロックを用いて、例えば、コンパクトディスク(CD)の情報記録に用いられるEFM(Eight-to-Fourteen Modulation,8−14)変調方式、又はその改良変調方式(EFM+)で変調して記録を行う。
PWM記録方式にて記録を行う際、変調後の信号幅がnT(nは所定の値、Tはクロック時間:信号の変調に用いるクロックの周期に相当する時間)である“0”信号の記録(書換えを含む;以下同様)を行う場合の記録パルスについては、消去パワーレベルPe(消去パルス)の連続光とする。
変調後の信号幅がnTである“1”信号の記録を行う場合の記録パルスのパターン(記録パルスストラテジ)としては何種類かある。その幾つかの例を挙げると、一例としては、時間幅xTで加熱パルス用のパワーレベルPwであるフロントパルス部と、計(n−n’)回の時間幅yTでパワーレベルPw’の高レベルパルスとその高レベルパルスの間に時間幅(1−y)Tで冷却パルス用のパワーレベルPbの低レベルパルスを有する1T周期のマルチパルス部と、時間幅zTでパワーレベルPb’であるエンドパルス部とで構成され、n及びn’をn’≦nの正の整数,パワーレベルが(Pw及びPw’)>Pe>(Pb及びPb’)である記録光のパルスパターンとする方法が挙げられる。図3は、n=6,n’=2のときのパルスパターン例、図4は、n=6,n’=3のときのパルスパターン例を示している。
また、別の例としては、nが奇数のときと偶数のときで異なるパターンを組合せて、nが偶数のときには、時間幅x'Tで加熱パルス用のパワーレベルPwであるフロントパルス部と、計{(n/2)−1}回の時間幅y'TでパワーレベルPw’の高レベルパルスとその高レベルパルスの間に時間幅(2−y’)Tで冷却パルス用のパワーレベルPbの低レベルパルスを有する2T周期のマルチパルス部と、時間幅z'TでパワーレベルPb'であるエンドパルス部とで構成され、nが奇数のときには、マルチパルス部のパルスパターンが、計({(n−1)/2}−1)回の時間幅y'TでパワーレベルPw’の高レベルパルスとその高レベルパルスの間に時間幅(2−y’)TでパワーレベルPbの低レベルパルスを有する2T周期のパルスパターンで構成されており、nを正の整数とし、パワーレベルが(Pw及びPw’)>Pe>(Pb及びPb’)である記録光のパルスパターンとする方法が挙げられる。図5、図6は、各々n=6(偶数),n=7(奇数)のときのパルスパターン例を示している。
また、他にも、図5、図6と同様のパルスパターンにおいて、nが奇数のときのマルチパルス部が、計({(n−1)/2}−1)回の時間幅y'TでパワーレベルPw’の高レベルパルスとその高レベルパルスの間に時間幅{(n/{(n−1)/2})−y’}TでパワーレベルPbの低レベルパルスを有する(n/{(n−1)/2})T周期のパルスパターンで構成されている方法も挙げられる。図7は、n=7のときのパルスパターン例である。
これらの異なるパルスパターンにおいては、同一構成の光情報記録媒体1であっても、記録可能な線速度範囲と、各々の記録線速度における最適なパルス幅の係数(上記の例におけるパルス幅の係数x,x',y,y',z,z')や最適なパワーレベル(上記の例におけるPw,Pw’,Pe,Pb,Pb’)は異なってくる。
例えば、上記のように、パルスパターンの周期が異なる場合、同一構成の光情報記録媒体1では、一般的には、パルスパターンの一周期の時間が長い方が、加熱パルスの立上り、立下り時間を除く実効パワーが掛かる時間を十分に取ることができるため、記録線速度の速い領域まで記録を行うことができる。また、同一記録線速度においては、低い記録パワーで良好な記録を行うことができる。
良好な信号特性となる記録を行うためには、上記パルスパターンにおけるパルス幅、パワーレベルについて、最適なパラメータ値を選択する必要がある。そのため、一般的には、情報の記録を行う前に、予め試し書きを行い、最適な値を決定している。
特にパワーレベルについては、OPC(Optimum Power Control)法により試し書きを行って決定する方法が、簡便に適正な値を求めるためには好適である。OPCについての具体的な例は、特許3081551号公報や、特許3124721号公報などに挙げられており、これらの公報に示される手法を用いる場合には、記録信号振幅(変調度)mの変化量を記録パワーPwで規格化した傾斜をg(P)としたとき、記録パワーPsの場合における傾斜g(P)の値である特定値Sや、Psに乗じて最適記録パワーを算出するための係数R、消去パワーレベル比ε(ε=Pe/Pw(Pw’))、テスト記録を特定の記録パワーを中心として前後20%程度のパワー範囲を変動させて行う際に参照する特定の記録パワーPwiなどのパラメータを設定し、これらの設定値を基にOPCを実行することにより、最適な記録パワーレベルPwoを求めることができる。
[本実施の形態の情報記録方法]
このような背景において、本実施の形態の情報記録方法では、記録動作実行に先立ち、対象となる光情報記録媒体1に対して消去パワーレベルPeのレーザ光の連続光を照射したとき、当該レーザ光照射前後の反射光強度比Rr=(レーザ光照射後の反射光強度Ra)/(レーザ光照射前の反射光強度Rb)がRr<1となる線速度の最小値である転位線速度Voを求めるステップを実行するようにしている。
ここで、「転位線速度」について説明する。「転位線速度Vo」とは、図1に示すような情報記録装置を用いて、相変化型の光情報記録媒体1を種々の線速度で回転させ、半導体レーザ光をその光情報記録媒体1の案内溝にトラッキングしながら、消去パワーレベルPeのレーザ光の連続光を照射した後の当該光情報記録媒体1の反射光強度(又は、反射率)Raと、照射前の反射光強度(又は、反射率)Rbとを比較した反射光強度比(又は反射率比)Rrの測定結果(図8参照)において、線速度増大に伴って反射光強度(又は、反射率)Raが下がり始めるところ、即ち、Rr<1となる線速度の最小値(図8中に矢印で示す線速度)を意味する。
転位線速度Voについて、詳細には、特許文献3,4にも述べられているが、相変化型の光情報記録媒体1に対し、レーザ光の連続光を照射して熱を加えることにより、相変化記録層23が融点以上の温度まで加熱され、記録層23が溶融する。その後、徐々に冷却されると、再度、結晶相が形成される。記録層23が溶融された後、急激に冷やされ、再結晶化できない場合には、アモルファス(非結晶)相となる。この現象の違いは、加えられる熱量(レーザ光のパワーレベル×照射時間)と冷却の速さ(走査線速度)に、依存している。
このため、相変化型の光情報記録媒体1を種々の線速度で回転させ、半導体レーザ光を相変化型の光情報記録媒体1の案内溝にトラッキングしながら、消去パワーレベルPeのレーザ光の連続光を照射する際、消去パワーレベルPeを固定し、レーザ光の走査線速度を速くしていくと、単位面積当たりの加熱量が段々と下がっていき、かつ、熱が加えてられている場所から遠ざかる速度が速くなることから記録層23の冷却が段々と速くなるため、或る線速度を超えると、記録層23全体を再結晶化できなくなり、アモルファス相の混在した状態となる。
CD−RW、DVD+RW、DVD−RW、DVD−RAMのように、相変化記録層23が結晶状態である方がアモルファス状態よりも高反射率となる記録層材料を用いたような一般的な相変化型の光情報記録媒体1では、記録層23が溶融された後、再度、結晶状態を取ることができる場合、反射強度比(又は、反射率比)はRr≧1となる。記録層23が溶融された後、再結晶化することができず、アモルファス相が混在した状態、若しくは、全体がアモルファス状態となっている場合、反射強度比(又は、反射率比)はRr<1となる。
つまり、ここで定義した転位線速度、即ち、Rr≧1からRr<1に転位する線速度は、レーザ光照射による加熱後、記録層23を再結晶化できる限界の条件、記録層23全体を結晶化することができなくなり始める条件を示すことになり、相変化型の光情報記録媒体1において、消去(書換え)を行うことができる限界の条件を示すこととなる。転位線速度Voが高いほど、再結晶化しやすく、高い線速度でも消去可能なことから、高線速度記録向きの相変化型光情報記録媒体と言える。反対に、転位線速度Voが低いほど、再結晶化し難く、低線速度記録向きの相変化型光情報記録媒体となる。従って、転位線速度Voは、相変化型の光情報記録媒体1の適正な記録線速度に対する指標となるパラメータである。
このRr≧1からRr<1に転位する条件は、記録層23に加えられている熱量と冷却の速さに依存するため、記録層材料の性質や、相変化型の光情報記録媒体1の各層の構成、照射されるレーザ光の消去パワーレベルPeに依存して、変動する。
具体例を挙げると、記録層材料に結晶化しやすい材料を用いた場合、転位線速度Voは高くなるが、反対に、結晶化し難い材料を用いた場合には、転位線速度Voは低くなる。記録層23や上部保護層24の膜厚を厚くすると、光情報記録媒体1の熱容量が大きくなるため、消去パワーレベルPe固定の場合、転位する条件におけるレーザ光の照射時間が長くなり、転位線速度Voは低くなる。反対に、記録層23や上部保護層24の膜厚を薄くした場合は、転位線速度Voは高くなる。
転位線速度Voを測定する際のレーザ光の消去パワーレベルPeを高くすると、相変化記録層23に加わる熱量が増加し、記録層23が溶融する範囲が広がり、かつ、記録層23の昇温される温度が上がるため、冷却時には、急激に冷やされることになる。このため、同一の相変化型光情報媒体1であっても、測定時の消去パワーレベルPeを高くするほど、転位線速度Voの値は低くなる。
従って、消去パワーレベルPeが高すぎると、転位線速度Voは低い速度の範囲で求めることになるため、測定の誤差の割合が大きくなり、光情報記録媒体1毎の差異を見分け難くなる。反対に、消去パワーレベルPeを低くすると、転位線速度Voは高くなるため、測定時の回転速度が速くなり、測定の精度が低くなる。更に、測定範囲が広範囲となるため、転位線速度Voに達する前に、当該情報記録装置の回転速度の上限に到達してしまうことがある。そのため、転位線速度Voの測定の際には、消去パワーレベルPeは、
(Pwo/2)≦Pe≦(Pwo/2)×1.5
の範囲の値を用いることが好適である。さらに好適には、
(Pwo/2)≦Pe≦(Pwo/2)×1.3
の範囲の値を用いると良い。
また、反射光強度(又は、反射率)の減少が見られず、反射光強度比(又は、反射率比)が常にRr≧1となり、転位線速度Voを求めることができないことがある。これは、記録層23に加える熱量が低く、融点以上に加熱できずに記録層23を溶融することができないため、結晶相が変化しない場合や、記録層23は溶融するが、容易に結晶化する記録層材料であるため、測定条件内では、再結晶化しない条件とならない場合などに起こっている。
転位線速度Voは、前述のように、種々の線速度において、消去パワーレベルPeの連続光を照射した前後の反射光強度(又は、反射率)を測定することにより求められる。従って、図1に例示したような記録可能な情報記録装置においては、容易に測定できる特性値であり、図1に例示したような情報記録装置にとって、ディスク情報等によって記録条件を設定されていない未知の光情報記録媒体1については、光情報記録媒体1毎に転位線速度Voを求めるテスト測定を行ってから(転位線速度測定手段)、記録条件を決定することが望ましい。テスト測定の結果、反射光強度比(又は、反射率比)が常にRr≧1となり、転位線速度を求めることができない場合は、その情報記録装置にとって記録を行うことが困難な光情報記録媒体である可能性が高く、記録を実行しないことが望ましい。
転位線速度Voの測定時における線速度の変更方法としては、測定半径位置を固定し、CLV(Constant Liner Velocity;線速度一定)方式で回転させる速度を上げながら測定を行う方法、光情報記録媒体をCAV方式で回転させ、測定半径位置を変えながら測定を行う方法が挙げられる。
CLV方式を用いる場合は、光情報記録媒体1の外周部を用いる方が、内周部を用いる場合に比べて回転速度が遅く、より安定な測定を行うことができるために望ましく、かつ、データ領域の外側を用いた方が、ユーザ使用の容量への影響がないため、なお望ましい。
CAV方式を用いる場合は、回転速度が一定であるため、測定装置(情報記録装置)の回転モータ(スピンドルモータ2)の制御が容易となり、測定を短時間で行うことができることが利点となる。
また、光情報記録媒体1に、転位線速度Voを求める際のテスト線速度範囲に関する情報(テスト線速度範囲又は当該テスト線速度範囲の指標となるパラメータ)や、転位線速度Voを求める際に使用されるレーザ光の連続光となる消去パワーレベルPeの範囲に関する情報(消去パワーレベルPeの範囲又は当該消去パワーレベルPeの範囲の指標となるパラメータ)をプリフォーマット情報としてエンコードしておけば、当該光情報記録媒体1が情報記録装置に装填された場合、エンコードされたプリフォーマット情報の値を読取り、テストする線速度範囲や使用する消去パワーレベルPeの値を予め決めることができる場合、各々の光情報記録媒体と情報記録装置の組合せにおいて、転位線速度Voを、迅速に、かつ、高い精度で求めることができる。
プリフォーマットは任意の手法を用いることができるが、プリピット法、ウォブルエンコード法、フォーマット法がある。プリピット法は光情報記録媒体上の任意の領域にROMピットを用いて記録条件に関する情報をプリフォーマットする手法である。基板成形時にROMピットが形成されるため量産性に優れ、かつ、ROMピットを用いているので、再生信頼性及び情報量の点で有利である。しかし、ROMピットを形成する技術(即ち、ハイブリッド技術)は課題が多く、RW系のプリピットによるプリフォーマット技術は困難とされている。
フォーマット法は、情報記録装置を用いて通常の記録と同様の手法を用いて情報を記録しておくものである。しかし、この手法は、光情報記録媒体を製造後、各媒体にフォーマットを施す必要があり、量産性の点から困難である。さらに、プリフォーマット情報を書換えることが可能であるため、媒体固有の情報を記録する手法としては適切ではない。
ウォブルエンコード法は、CD−RW,DVD+RWで実際に採用されている手法である。この手法は光情報記録媒体のアドレス情報をグルーブ(媒体上の案内溝)のウォブリングにエンコードする技術を利用している。エンコードの方法としては、CD−RWのATIP(Absolute Time In Pregroove)のように周波数変調を用いても、DVD+RWのADIP(Address In Pregroove)のように位相変調を用いてもよい。ウォブルエンコード法は、光情報記録媒体の基板成形時にアドレス情報と一緒に基板に作成されるため、生産性に優れると同時に、プリピット法のような特殊なROMピットを形成する必要がないため、基板成形も容易に行えるという利点がある。CD−RWの場合はこれらのパラメータはATIP Extra Informationsとして、プリフォーマットされ、DVD+RWの場合はPhysical Informationとしてプリフォーマットされる。
ところで、相変化型の光情報記録媒体1への記録を前述したようなパルスパターンを用いて行う場合、良好な信号特性での情報の記録を行うために、転位線速度Voよりも高い線速度領域では、消去時に相変化記録層23を融点以上に加熱してしまうとアモルファス化してしまう(再結晶化ができない)ため、記録層23を結晶化温度以上融点未満の温度に加熱してから冷却することによって結晶状態としている。そのため、消去パワーレベルPeは、低いパワーで制御する必要がある。
また、転位線速度Voよりも低い線速度領域においても、消去の際に、転位線速度Voよりも高い線速度領域のときと同様に、記録層23を結晶化温度以上融点未満の温度に加熱してから冷却することによって結晶状態とすることもできる。しかし、より良好な信号特性での記録を実現するためには、消去時には、相変化記録層23を一旦融点以上に加熱して溶かし、その後に冷却して結晶状態とする方が、結晶状態を揃えることができるため、望ましい。その場合には、転位線速度Voよりも高い線速度領域のときに比べて、比較的高い消去パワーレベルPeが必要とされる。
また、特許文献5により報告されているように、相変化型の光情報記録媒体1では、記録マークのジッタ特性が極小となる消去パワーレベルPeが2値以上有するものがあるが、その理由を上記の結晶化方法の違いで説明することができる。即ち、転位線速度Vo以下のある線速度において、前述のパルスパターンを用いて、パルス幅及びパワーレベルPw(Pw’)、Pb(Pb’)を固定し、消去パワーレベルPeのみを変動させたとき、0信号(結晶相)の形成は、消去パワーレベルPeが低いときには、相変化記録層23への加熱量が低く、結晶化は結晶化温度以上融点未満の温度に加熱してから冷却することによって行われる。それに対して、消去パワーレベルPeが高いときには、相変化記録層23を一旦融点以上に加熱して溶かし、その後に冷却して結晶状態することによって、結晶化が行われることによって形成される。各々の結晶化方法毎に、最適な消去パワーレベルPe値が存在するため、ジッタ特性値が極小となる消去パワーレベルPeは、2値存在することとなる。一般的には、相変化記録層23を一旦溶かしてから冷却して結晶状態とした方(Peの高い方)が、ジッタ特性値が最小となる。また、2つの極小値間の消去パワーレベルPeでは、どちらの結晶化方法にとっても最適な値ではないため、ジッタ特性値は悪化している。
しかしながら、転位線速度Voよりも高い線速度においては、相変化記録層23を一旦融点以上に加熱して溶かすと再結晶化ができないため、結晶化方法は、記録層23を結晶化温度以上融点未満の温度に加熱してから冷却することによって結晶状態とする方法を用いることになる。
従って、良好な信号特性での記録を行うための最適な消去パワーレベル比ε(ε=消去パワーレベルPe/記録パワーレベルPw)は、転位線速度Voを境にして異なることとなり、転位線速度Voよりも低い線速度領域における最適な消去パワーレベル比εLと、転位線速度Voよりも高い線速度領域における最適な消去パワーレベル比εH を比較すると、εLの方が高く、(εH/εL)<1となる。
全面又は部分CAV記録を行う場合、途中で消去パワーレベル比εが切換わるような記録条件の設定よりも、1種類の消去パワーレベル比εに固定して記録条件を設定する方が容易である。そのため、記録線速度の領域は、予め求めた転位線速度Vo以下の線速度範囲とするか、又は、転位線速度Voよりも高い線速度範囲とすることが望ましい。転位線速度Vo以下の線速度範囲で記録を行う場合には、消去パワーレベル比の高いεLを用いた記録条件を使用し、転位線速度Voよりも高い線速度範囲で記録を行う場合には、消去パワーレベル比の低いεHを用いた記録条件を使用することが、好適である。
CLV記録を行う場合も含めて、信頼性が高く、より良好な信号特性での記録を重視する場合には、消去パワーレベル比εを高くした記録を行うことができる転位線速度Vo以下の線速度範囲にて記録を行うことが望ましい。反対に、転位線速度Voよりも高い線速度範囲での記録は、より高速での記録を重視する場合に行われる。
全面又は部分CAVを行う場合に必要となる記録線速度範囲が広く、転位線速度Voを含む線速度範囲となる場合、途中で消去パワーレベル比εを切換えることなく記録を行うためには、転位線速度Voよりも高い線速度範囲で設定される消去パワーレベル比εHを使用した記録条件とする。
低線速度領域では良好な信号特性での記録を行うことを重視する場合には、転位線速度Voよりも低い線速度では消去パワーレベル比εL を、転位線速度Voよりも高い線速度領域では消去パワーレベル比εH を用いて記録を行う。転位線速度よりも高い線速度領域では、消去時に相変化記録層23を融点以上に加熱してしまうと情報の記録ができないため、消去パワーレベル比をεLからεHへと切換える線速度は、転位線速度Voよりも低い線速度とした方が良い。
このとき、記録線速度の変動とともに、消去パワーレベル比をεLからεHへと線形に変動させる方法は、途中の消去パワーレベル比で記録マークのジッタ特性が悪化することがあるため、望ましくない。
このように、相変化型の光情報記録媒体1の転位線速度Voが求められることができれば、記録できる線速度範囲と、適正な消去パワーレベル比εについて、情報を得ることができる。記録を行う線速度を決定することができれば、OPC法により、最適な記録パワーレベルを求めることができる。
従って、相変化型の光情報記録媒体1の転位線速度Voを求めることにより、情報記録装置が予め記録条件を設定していないような未知の光情報記録媒体1であっても、各々の情報記録装置において、適正な線速度と、適正な記録パワーレベルPw及び消去パワーレベルPeを使用して、記録を実行することが可能となる。
従って、前述したような情報記録方法を、CPU13により実行される情報記録用プログラムとして表現すると、図9に示す概略フローチャートとして表すことができる。まず、光情報記録媒体1の装填をチェックしており、光情報記録媒体1が装填されると(ステップS1のY)、その光情報記録媒体1の種類等を認識する処理を行い(S2)、認識可能な媒体であり(S2のY)、その媒体に関する記録方法の条件が当該情報記録装置において設定されている場合には(S3のY)、その設定に従い通常通りの記録動作に移行させる(省略)。一方、媒体の種類等が認識できなかった場合(S2のN)、或いは、認識できてもその媒体に関する記録方法の条件が当該情報記録装置に設定されていない場合(S3のN)には、転位線速度Voを測定する処理を行う(S4)。即ち、線速度を変えなから反射光強度Ra,Rbを測定し、その反射光強度比RrがRr<1となる転位線速度Voを求める。このステップS4の処理が転位線速度取得手段、転位線速度測定処理として実行される。
転位線速度Voが求められたら、記録動作を特定化する(S5)。即ち、転位線速度Voが求まることにより、記録可能な線速度範囲、適正な消去パワーレベル比ε等が判るので、転位線速度Vo以下の線速度範囲で記録動作を行わせる等の記録動作の特定化を行う。そして、この特定化に従い、記録線速度が決まるので、OPC法により試し書きを行い、最適記録パワーレベルPwoを決定し(S6)、引き続き、実際の記録動作に移行する(S7)。これらのステップS5ないしS7の処理が、記録動作制御手段の機能として実行される。
本実施の形態に準ずる実施例を以下に例示する。本発明は、これらの実施例に限定されて解釈されるものではないのはもちろんである。
[実施例1]
転位線速度Voを求める際のテスト線速度範囲を5.0〜12.0m/s、使用する消去パワーレベルPeの範囲を7.5〜8.0mW、転位線速度Vo以下の線速度領域での消去パワーレベル比εL=0.50とするプリフォーマット情報を、位相変調ウォブルエンコード法にてエンコードした案内溝を有し、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を射出成形により形成し、この基板上に、下部保護層、記録層、上部保護層及び反射層を順次スパッタリング法により積層した。
下部及び上部保護層には(ZnS)80(SiO2)20、記録層にはAg2Ge2In4Sb70Te22相変化記録材料、反射層にはAgを用い、膜厚は、基板側から順に80nm、20nm、15nm、140nmとした。
さらに、反射層上に紫外線硬化型樹脂のスピンコートによるオーバーコート層を形成し、DVD−ROM再生互換性を有する相変化型光情報記録媒体の単板ディスクを作成した。
次に、オーバーコート層上に接着層を介してポリカーボネート基板を貼り合わせ、ポリカーボネート基板の表面(貼り合わせ面の反対面)側に印刷層を形成し、貼り合わせディスクを得た。
その後、大口径LD(ビーム径200×1μm)を有する初期化装置によって、相変化型光情報記録媒体の記録層を全面結晶化した。
このようにして得たDVD−ROM互換性を有する光情報記録媒体に対して、転位線速度Vo×95%の線速度にてCLV記録を実行するDVD互換の情報記録装置(株式会社リコー製テストドライブ)にて、照射する連続光の消去パワーレベルPe=8.0mWとして、ディスクの外周部分を使用し、消去パワーレベルPeのレーザ光照射前後の反射光強度比を測定して、転位線速度Voを求めたところ、Vo=8.9m/sであった。
この光情報記録媒体について、上記の情報記録装置を用いて、線速度8.9×95%=8.5m/sでの最適な記録パワーレベルPwoを、OPC法を使用して求めたところ、Pwo=14.2mWであった。そこで、Pw=14.2mW、ε=0.50として、線速度8.5m/sとしたCLV方式により、DVDコンテンツ・データのディスク全面への記録を行った。
この記録部について、DVD用再生評価装置(パルステック工業株式会社製DDU−1000)にて、半径24mm、41mm、58mmの位置でのジッタ(データ・トゥ・クロック・ジッタ)特性を測定したところ、各々、7.0%、6.6%、6.8%と、DVD−ROM規格における8%以下という仕様値を十分に満たしており、良好な特性となっていた。
また、この光情報記録媒体について、DVD−ROM再生装置(株式会社リコー製MP9120A)により記録したコンテンツデータの読取りを行ったところ、読取りエラーを起こすことなく、データの読取りを行うことに成功した。
[実施例2]
実施例1と同様にして作製したDVD−ROM互換性を有する光情報記録媒体に対して、転位線速度Vo×95%の線速度を最高線速度とする全面(半径24〜58mm)CAV記録を実行するDVD互換の情報記録装置(株式会社リコー製テストドライブ)にて、照射する連続光の消去パワーレベルPe=8.0mWとして、ディスクの回転数を2000rpmに固定し、内周部から外周部へ位置を変えながら、線速度5.0〜12.0m/sの範囲で、消去パワーレベルPeのレーザ光照射前後の反射光強度比を測定して、転位線速度Voを求めたところ、Vo=8.9m/sであった。
この光情報記録媒体について、上記の情報記録装置を用いて、OPCにより、線速度8.9×95%=8.5m/sでの最適な記録パワーレベルPwoを求めたところ、Pwo=14.4mWであった。また、線速度8.5/(58/24)=3.5m/sでの最適な記録パワーレベルPwoを求めたところ、Pwo=14.8mWであった。そこで、半径58mmにおける線速度8.5m/sのときの回転数1400rpmに固定し、線速度3.5m/s〜8.5m/sの範囲でのゾーンCAV(部分CAV)方式により、DVDコンテンツ・データをディスク全面に記録した。このとき、Pwは、内周部(線速度3.5m/s)を14.8mW、外周部(線速度8.5m/s)を14.4mWとし、その間は線形に減少させた値、例えば中周部(線速度6.0m/s)では14.6mW、を使用した。εについては、ε=0.50に固定した。
この記録部について、DVD用再生評価装置(パルステック工業株式会社製DDU−1000)にて、半径24mm、41mm、58mmの位置でのジッタ(データ・トゥ・クロック・ジッタ)特性を測定したところ、各々、6.2%、6.2%、6.9%と、DVD−ROM規格における8%以下という仕様値を十分に満たしており、良好な特性となっていた。
また、この光情報記録媒体について、DVD−ROM再生装置(株式会社リコー製MP9120A)により記録したコンテンツデータの読取りを行ったところ、読取りエラーを起こすことなく、データの読取りを行うことに成功した。
[実施例3]
転位線速度Voを求める際のテスト線速度範囲を7.5〜18.0m/s、使用する消去パワーレベルPeの範囲を10.0〜12.0mW、転位線速度Vo以下の線速度領域での消去パワーレベル比εL=0.48、転位線速度Voより高い線速度領域での消去パワーレベル比εH=0.30とするプリフォーマット情報を、位相変調ウォブルエンコード法にてエンコードした案内溝を有し、直径120mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を射出成形により形成し、この基板上に、下部保護層、記録層、上部保護層及び反射層を順次スパッタリング法により積層した。
下部及び上部保護層には(ZnS)80(SiO2)20、記録層にはAg2Ge2In4Sb72Te20相変化記録材料、反射層にはAgを用い、膜厚は、基板側から順に70nm、15nm、15nm、120nmとした。
さらに、反射層上に紫外線硬化型樹脂のスピンコートによるオーバーコート層を形成し、DVD−ROM再生互換性を有する相変化型光情報記録媒体の単板ディスクを作成した。
次にオーバーコート層上に接着層を介してポリカーボネート基板を貼り合わせ、ポリカーボネート基板の表面(貼り合わせ面の反対面)側に印刷層を形成し、貼り合わせディスクを得た。
その後、大口径LD(ビーム径75×1μm)を有する初期化装置によって、相変化型光情報記録媒体の記録層を全面結晶化した。
このようにして得たDVD−ROM互換性を有する光情報記録媒体に対して、14.0m/s(DVD−ROM再生の4倍速相当)を最高線速度とする全面CAV記録を実行するDVD互換の情報記録装置(株式会社リコー製テストドライブ)にて、照射する連続光の消去パワーレベルPe=11.0mWとして、ディスクの回転数を3000rpmに固定し、内周部から外周部へ位置を変えながら、線速度7.5〜18.0m/sの範囲で、消去パワーレベルPeのレーザ光照射前後の反射光強度比を測定して、転位線速度Voを求めたところ、Vo=11.0m/sであった。
この光情報記録媒体について、上記の情報記録装置を用いて、OPCにより、線速度14.0m/sでの最適な記録パワーレベルPwoを求めたところ、Pwo=20.0mWであった。また、この場合の最低線速度となる線速度5.8m/sでの最適な記録パワーレベルPwoを求めたところ、Pwo=17.8mWであった。さらに中間値に当たる線速度9.9m/sでの最適な記録パワーレベルPwoを求めたところ、Pwo=17.8mWであった。そこで、半径58mmにおける線速度14.0m/sのときの回転数2300rpmに固定し、内周部(線速度5.8m/s)から半径43.5mm(線速度10.7m/s)までは、Pw=17.8mW、ε=0.48としたゾーンCAV方式を用いて、半径43.5mm(線速度10.7m/s)から外周部(線速度14.0m/s)までは、Pw=20.0mW、ε=0.30としたゾーンCAV方式を用いて、DVDコンテンツ・データをディスク全面に記録した。
この記録部について、DVD用再生評価装置(パルステック工業株式会社製DDU−1000)にて、半径24mm、41mm、58mmの位置でのジッタ(データ・トゥ・クロック・ジッタ)特性を測定したところ、各々、6.9%、6.6%、7.5%と、DVD−ROM規格における8%以下という仕様値を十分に満たしており、良好な特性となっていた。
また、この光情報記録媒体について、DVD−ROM再生装置(株式会社リコー製MP9120A)により記録したコンテンツデータの読取りを行ったところ、読取りエラーを起こすことなく、データの読取りを行うことに成功した。
[実施例4]
転位線速度Voを求める際に使用するパワーレベルPeの範囲を18.0〜20.0mW、転位線速度Vo以下の線速度領域での消去パワーレベル比εL=0.45、転位線速度Voより高い線速度領域での消去パワーレベル比εH=0.35とするプリフォーマット情報を、周波数変調ウォブルエンコード法にてエンコードした案内溝を有し、直径120mm、厚さ1.2mmのポリカーボネート基板を射出成形により形成し、この基板上に、下部保護層、記録層、上部保護層及び反射層を順次スパッタリング法により積層した。
下部及び上部保護層には(ZnS)80(SiO2)20、記録層にはGe4Ga2Sb72Te22相変化記録材料、反射層にはAl98Ti2を用い、膜厚は、基板側から順に85nm、20nm、20nm、140nmとした。
更に、反射層上に紫外線硬化型樹脂のスピンコートによるオーバーコート層を形成し、CD−ROM再生互換性を有する相変化型光情報記録媒体を作成した。
その後、大口径LD(ビーム径100×1μm)を有する初期化装置によって、相変化型光情報記録媒体の記録層を全面結晶化した。
このようにして得たCD−ROM互換性を有する光情報記録媒体に対して、19.2m/s(CD−ROM再生の16倍速相当)での全面CLV記録を実行するCD互換の情報記録装置(株式会社リコー製テストドライブ)にて、照射する連続光の消去パワーレベルPe=18.0mWとして、ディスクの外周部分を使用して、消去パワーレベルPeのレーザ光照射前後の反射光強度比を測定して、転位線速度Voを求めたところ、Vo=14.5m/sであった。
この光情報記録媒体について、上記の情報記録装置を用いて、OPCにより、線速度19.2m/sでの最適な記録パワーレベルPwoを求めたところ、Pwo=28.0mWであった。そこで、Pw=28.0mW、ε=0.35として、線速度19.2m/sとしたCLV方式により、CDコンテンツ・データのディスク全面への記録を行った。
この記録部について、CD用再生評価装置(パルステック工業株式会社製DDU−1000)にて、半径24mm、41mm、58mmの位置での3Tジッタ特性を測定したところ、各々、28ns、25ns、30nsと、CD−ROM規格における35ns以下という仕様値を十分に満たしており、良好な特性となっていた。
また、この光情報記録媒体について、CD−ROM再生装置(株式会社リコー製MP9120A)により記録したコンテンツデータの読取りを行ったところ、読取りエラーを起こすことなく、データの読取りを行うことに成功した。
[実施例5]
転位線速度Voを求める際に使用する消去パワーレベルPeの範囲を18.0〜20.0mW、転位線速度Voより高い線速度領域での消去パワーレベル比εH=0.32とするプリフォーマット情報を、周波数変調ウォブルエンコード法にてエンコードした案内溝を有し、直径120mm、厚さ1.2mmのポリカーボネート基板を射出成形により形成し、この基板上に、下部保護層、記録層、上部保護層及び反射層を順次スパッタリング法により積層した。
下部及び上部保護層には(ZnS)80(SiO2)20、記録層にはGe3Ga7Sb72Te18相変化記録材料、反射層にはAgを用い、膜厚は、基板側から順に80nm、15nm、15nm、120nmとした。
さらに、反射層上に紫外線硬化型樹脂のスピンコートによるオーバーコート層を形成し、CD−ROM再生互換性を有する相変化型光情報記録媒体を作成した。
その後、大口径LD(ビーム径100×1μm)を有する初期化装置によって、相変化型光情報記録媒体の記録層を全面結晶化した。
このようにして得たCD−ROM互換性を有する光情報記録媒体に対して、最高記録線速度が24.0m/s(CD−ROM再生の20倍速相当)であり、最高回転数が7000rpmであるCD互換の情報記録装置(株式会社リコー製テストドライブ)にて、照射する連続光の消去パワーレベルPe=20.0mWとして、ディスクの外周部分を使用して、消去パワーレベルPeのレーザ光照射前後の反射光強度比を測定して、転位線速度Voを求めたところ、Vo=15.0m/sであった。
この光情報記録媒体について、上記の情報記録装置を用いて、OPCにより、線速度24.0m/sでの最適な記録パワーレベルPwoを求めたところ、Pwo=31.0mWであった。また、回転数7000rpmの半径24mmにおける線速度である線速度17.5m/sでの最適な記録パワーレベルPwoを求めたところ、Pwo=29.0mWであった。そこで、内周部から回転数7000rpmで線速度24.0m/sに達する半径32.7mmまでは、回転数を7000rpmに固定し、線速度17.5m/s〜24.0m/sの範囲でのゾーンCAV方式を用いて、半径32.7mmから外周部までは、線速度24.0m/sとしたCLV方式を用いて、CDコンテンツ・データをディスク全面に記録した。このとき、記録パワーレベルPwは、内周部(線速度17.5m/s)を29.0mW、半径37.2mm以降外周部まで(線速度24.0m/s)を31.0mWとし、その間は線形に増加させた値を使用した。εについては、ε=0.32に固定した。
この記録部について、CD用再生評価装置(パルステック工業株式会社製DDU−1000)にて、半径24mm、41mm、58mmの位置での3Tジッタ特性を測定したところ、各々、25ns、25ns、30nsと、CD−ROM規格における35ns以下という仕様値を十分に満たしており、良好な特性となっていた。
また、この光情報記録媒体について、CD−ROM再生装置(株式会社リコー製MP9120A)により記録したコンテンツデータの読取りを行ったところ、読取りエラーを起こすことなく、データの読取りを行うことに成功した。
[実施例6]
実施例1と同様にして作製したDVD−ROM互換性を有する光情報記録媒体に対して、線速度8.5m/sにて記録を実行するDVD互換の情報記録装置(株式会社リコー製テストドライブ)にて、照射する連続光の消去パワーレベルPe=11.0mWとして、ディスクの内周部分を使用し、消去パワーレベルPeのレーザ光照射前後の反射光強度比を測定して、転位線速度Voを求めたところ、Vo=7.5m/sであった。
この光情報記録媒体について、上記の情報記録装置を用いて、線速度8.5m/sでの最適な記録パワーレベルPwoを、OPC法を使用して求めたところ、Pwo=14.2mWであった。
そこで、転位線速度Voよりも高い線速度領域での記録となるため、消去パワーレベル比εを実施例1の場合と比べて低い値となる0.30とし、Pw=14.2mWにて、線速度8.5m/sのCLV方式により、DVDコンテンツ・データのディスク全面への記録を行った。
この記録部について、DVD用再生評価装置(パルステック工業株式会社製DDU−1000)にて、半径24mm、41mm、58mmの位置でのジッタ(データ・トゥ・クロック・ジッタ)特性を測定したところ、各々、8.6%、7.8%、8.2%と、実施例1の場合に比べてジッタ特性が悪化しており、一部の測定位置においては、DVD−ROM規格における8%以下という仕様値を外れる特性となっていた。
また、この光情報記録媒体について、DVD−ROM再生装置(株式会社リコー製MP9120A)により記録したコンテンツ・データの読取りを行ったところ、読取りエラーを起こすことなく、データの読取りを行うことには成功した。
[比較例1]
実施例3と同様にして作製したDVD−ROM互換性を有する光情報記録媒体に対して、線速度14.0m/sにて記録を実行するDVD互換の情報記録装置(株式会社リコー製テストドライブ)にて、照射する連続光の消去パワーレベルPe=8.0mWとして、ディスクの外周部分を使用し、消去パワーレベルPeのレーザ光照射前後の反射光強度比を測定したところ、線速度3.5m/sから22.0m/sの範囲では、レーザ光照射前後の反射光強度比Rr<1となる現象が観測されなかった。また、線速度22.0m/sを超える範囲では、ディスクの回転数が速く、トラッキング・サーボが外れてしまい、レーザ光照射前後の反射光強度比を測定することができなかった。
このため、この測定条件下においては、転位線速度Voを求めることができなかった。また、OPC法を使用して求めた線速度14.0m/sにおける最適な記録パワーレベルPwoは20.0mWであった。
これらの実施例1〜6及び比較例1の結果を表1にまとめて示す。