JP2005120500A - 紡績糸及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】紡績糸Yを、一定方向の撚りが付与された撚糸状短繊維群c1と毛羽状短繊維c2とからなる芯繊維Cと、該芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維sとから構成するとともに、前記芯繊維の毛羽状短繊維と前記芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維とが交絡しており、且つ、前記芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の量が、長手方向において、周期的或いは非周期的に異なるように構成したものである。
【効果】太さむらを有する紡績糸を構成する芯繊維の毛羽状短繊維と該芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維とが交絡しているので、芯糸が、短繊維に対してずれて、芯ずれが発生するようなことがなく、また、芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の芯繊維からの脱落が減少し、従って、ピルの発生原因となる脱落繊維の減少により、抗ピル性が向上する。
【選択図】図4

Description

本発明は、太さが、長手方向において、周期的に或いは非周期的に変化する太さむらを有する紡績糸及び該紡績糸の製造方法に関するものである。
従来、空気精紡機において、ドラフト装置のフロントローラに切欠溝を設けることにより、スライバの送り出し量を変化させて、太さむら(スラブ)を有する紡績糸を製造する方法が、特許文献1に開示されており、また、リング精紡機において、ミドルローラの回転数を不規則に変化させ、ドラフトされたストランドに供給むらを生じさせることにより、太さむらを有する紡績糸を製造する方法が、特許文献2に開示されている。
特開平5−5229号公報。 特公平2−40768号公報。
上述したように、スラブを伴う太さむらを有する紡績糸やリング精紡機により製造された太さむらを有する紡績糸は、太い部分の撚り数が、細い部分の撚りより少なくなる傾向があり、従って、紡績糸の長手方向に沿って、撚り数や強度にむらがあり、また、太い部分の撚り数が少ないために、太い部分を構成する繊維が抜け易いという問題がある。特に、太い部分と細い部分との太さの差を大きくして、むら糸としての特性を顕著にすると、撚り数や強度のむらが更に大きくなり、物性の均一な紡績糸の製造が更に困難になるという問題がある。
本発明の目的は、上述した従来の紡績糸及びその製造方法が有する課題を解決することにある。
本発明は、上述した目的を達成するために、第1には、紡績糸を、一定方向の撚りが付与された撚糸状短繊維群と毛羽状短繊維とからなる芯繊維と、該芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維とから構成するとともに、前記芯繊維の毛羽状短繊維と前記芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維とが交絡しており、且つ、前記芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の量が、長手方向において、周期的或いは非周期的に異なるように構成したものであり、第2には、上記の紡績糸において、芯繊維の太さを、長手方向において、略均一としたものであり、第3には、同じく、上記の紡績糸において、芯繊維を、太い部分と細い部分とが、長手方向において、周期的或いは非周期的に存在するように構成したものであり、第4には、紡績糸を、一定方向の撚りが付与された撚糸状短繊維群と毛羽状短繊維とからなり、長手方向において、太い部分と細い部分とが、周期的或いは非周期的に存在する芯繊維と、該芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維とから構成し、且つ、前記芯繊維の毛羽状短繊維と前記芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維とが交絡しており、更に、前記芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の量が、略一定になるように構成したものであり、第5には、上記の芯繊維の撚り方向と該芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の撚り方向とを逆としたものである。
また、本発明は、上述した目的を達成するために、第1には、一定方向の撚りが付与された撚糸状短繊維群と毛羽状短繊維とからなる芯繊維を、ドラフトされつつ走行する繊維束に合流させるとともに、前記繊維束を、旋回気流が発生している紡績室を有する紡績部材に、その量が、長手方向において、周期的或いは非周期的に変化するように供給し、次いで、前記芯繊維の毛羽状短繊維と前記繊維束を構成する短繊維とを、前記旋回気流を、中空ガイド軸体付近に作用させることにより、前記中空ガイド軸体外周に巻き付けつつ交絡させることにより、太さむらを有する紡績糸を製造するように構成したものであり、第2には、上記の紡績糸の製造方法において、芯繊維として、太さが、長手方向において、略均一であるものを供給するようにしたものであり、第3には、同じく、上記の紡績糸の製造方法において、芯繊維として、太い部分と細い部分とが、長手方向において、周期的或いは非周期的に存在するものを供給するようにしたものであり、第4には、一定方向の撚りが付与された撚糸状短繊維群と毛羽状短繊維とからなるとともに、太い部分と細い部分とが、長手方向において、周期的或いは非周期的に存在する芯繊維を、ドラフトされつつ走行する繊維束に合流させるとともに、前記芯繊維及び略一定量の繊維束を、旋回気流が発生している紡績室を有する紡績部材に供給し、次いで、前記芯繊維の毛羽状短繊維と前記繊維束を構成する短繊維とを、前記旋回気流を、中空ガイド軸体付近に作用させることにより、前記中空ガイド軸体外周に巻き付けつつ交絡させることにより、太さむらを有する紡績糸を製造するように構成したものであり、第5には、上記の芯繊維の撚り方向と上記の紡績室内に発生している旋回気流の旋回方向とが逆方向となるように構成したものである。
本発明は、以上説明した構成を有しているので、以下に記載する効果を奏するものである。
太さむらを有する紡績糸を構成する芯繊維の毛羽状短繊維と該芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維とが交絡しているので、芯糸が、短繊維に対してずれて、芯ずれが発生するようなことがなく、また、芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の芯繊維からの脱落が減少し、従って、ピルの発生原因となる脱落繊維の減少により、抗ピル性が向上する。
また、芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の量を、長手方向において、周期的或いは非周期的に異なるように構成するとともに、芯繊維を、太い部分と細い部分とが、長手方向において、周期的或いは非周期的に存在するように構成することにより、太い部分と細い部分とが、より複雑に出現した紡績糸となる。
更に、芯繊維の撚り方向と該芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の撚り方向とが逆であるので、芯糸の撚り方向に起因する撚りトルクと、芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の撚り方向に起因する撚りトルクとが相殺されて、紡績糸が、実質的に、ノントルクとなり、従って、スナールやキンク等の発生のない紡績糸となる。
一定方向の撚りが付与された撚糸状短繊維群と毛羽状短繊維とからなる芯繊維を、ドラフトされつつ走行する繊維束に合流させるとともに、前記繊維束を、旋回気流が発生している紡績室を有する紡績部材に、その量が、長手方向において、周期的或いは非周期的に変化するように供給し、次いで、前記芯繊維の毛羽状短繊維と前記繊維束を構成する短繊維とを、前記旋回気流を、中空ガイド軸体付近に作用させることにより、前記中空ガイド軸体外周に巻き付けつつ交絡させることにより、太さむらを有する紡績糸を製造するように構成したので、芯糸が、該芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維に対してずれて、芯ずれが発生するようなことがなく、また、ピルの発生原因となる脱落繊維の減少した、太さむらを有する紡績糸を製造することができる。
また、芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の量を、長手方向において、周期的或いは非周期的に変化させるとともに、芯繊維として、太い部分と細い部分とが、長手方向において、周期的或いは非周期的に存在するものを使用することにより、太い部分と細い部分とが、より複雑に出現した紡績糸を製造することができる。
更に、一定方向の撚りが付与された撚糸状短繊維群と毛羽状短繊維とからなり、太い部分と細い部分とが、長手方向において、周期的或いは非周期的に存在する芯繊維を使用するとともに、芯繊維の外周に巻き付けられる短繊維の量を、略一定としたので、太い部分と細い部分とが、長手方向において、周期的或いは非周期的に存在する芯繊維を使用するだけで、ドラフト装置等に何ら変更を加えることなく、太さむらを有する紡績糸を製造することができるので、太さむらを有する紡績糸の製造コストを低減化することができる。
更にまた、芯繊維の撚り方向と紡績室内に発生している旋回気流の旋回方向とが逆方向となるように構成したので、芯糸の撚り方向に起因する撚りトルクと、芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の撚り方向に起因する撚りトルクとが相殺され、従って、実質的に、ノントルクで、スナールやキンク等の発生のない、太さむらを有する紡績糸を製造することができる。
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明の趣旨を越えない限り何ら、本実施例に限定されるものではない。
先ず最初に、図1を用いて、一例としての紡績機の全体構成について説明する。
Sは、ケンス1に収容されている、スライバ−等の短繊維の集合体としての繊維束であり、Dは、バックローラー2、サードローラー3、エプロンベルト4aが張設されたセカンドローラー4及びフロントローラー5からなる、一例としての4線式のドラフト装置である。Pは、後述する紡績部材であり、6は、ニップローラー6aとデリベリーローラー6bとからなる糸送り部材である。7は、図示されていないボビンホルダーに支持されたボビン8に形成された巻き取りパッケージであり、巻き取りパッケージ7は、その表面に、回転駆動されているフリクションローラー9が当接することにより、回転されるように構成されている。10は、図示されていない綾振り装置の綾振りガイドである。
Cは、芯糸であり、図示されていない給糸パッケージから引き出された芯糸Cは、セカンドローラー4とフロントローラー5間に位置する繊維束Sの幅方向の略中央に載置され、繊維束Sに合流されるように構成されている。芯糸Cは、図2に示されているように、一方向の撚り(Z撚り或いはS撚り)が、連続的に或いは部分的に付与された糸状の短繊維群(以下、単に、撚糸状短繊維群と称する。)c1と、一方向の撚りが付与された撚糸状短繊維群c1の表面から、短繊維が毛羽状に突出している毛羽状短繊維c2とから構成されている。このような芯糸Cの代表的なものは、リング精紡機により生成されたリング糸である。但し、これに限定されるものではない。なお、図2には、一例として、S撚りが付与された芯糸Cが示されている。
次に、図3を用いて、紡績部材Pについて説明する。
11は、ドラフト装置Dによりドラフトされ、フロントローラー5から排出された繊維束S及び芯糸Cが導入される導入孔11aを有するとともに、導入孔11aに沿って配設されたニードル11bを有する繊維導入ブロックである。12は、ノズルブロックであり、ノズルブロック12には、複数の空気噴射孔12aが穿設されている。繊維導入ブロック11とノズルブロック12とは、相対する面が当接するように配置されるとともに、繊維導入ブロック11は、ノズルハウジング13に穿設されたフロントローラー5側の取り付け孔13aに嵌入されている。また、ノズルブロック12は、ノズルハウジング13に穿設された、フロントローラー5と反対側の取り付け孔13bに、リング状パッキン14を介して、挿着されているともに、メインハウジング15に穿設された取り付け孔15a及ノズルハウジング13とメインハウジング15とに挟持された中間板材16に穿設された取り付け孔16aに嵌入されている。なお、17は、ノズルブロック12とノズルハウジング13とにより挟持されるとともに、繊維導入ブロック11の外周に配置されたリング状パッキンである。
ノズルブロック12とノズルハウジング13と間には、環状の空気溜め18が形成されており、環状の空気溜め18には、連通孔19が連接されている。連通孔19は、図示されていないパイプを介して、圧縮空気供給源に連結されている。従って、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気は、連通孔19から空気溜め18に入り、その後、ノズルブロック12に穿設された空気噴射孔12aから噴出されることになる。
20は、非回転の中空ガイド軸体であり、中空ガイド軸体20は、メインハウジング15の開口部15bに装着される軸体支持ブロック21に穿設された取り付け孔21aに嵌入されている。22は、メインハウジング15と軸体支持ブロック21との間に形成された空気室であり、空気室22は、メインハウジング15に形成された吸引孔15cに連結されたパイプ23を介して、図示されていない、弱い吸引圧で空気を吸引する空気吸引源に連結されており、紡績中は、ノズルブロック12に穿設された空気噴射孔12aから噴出される空気の逃げ道空間として機能するとともに、紡績中に発生する浮遊繊維等を吸引除去する機能をするものである。
次に、上述した紡績機による、芯糸Cと外層部としての鞘繊維層とからなる紡績糸の生成過程について説明する。
ケンス1から引き出された繊維束Sは、ドラフト装置Dにより延伸され、ドラフト装置Dのフロントローラー5から送り出される。一方、上述したように、図示されていない給糸パッケージから引き出された芯糸Cは、セカンドローラー4とフロントローラー5間に位置する繊維束Sの略中央に載置される。このようにして、フロントローラー5から送り出された繊維束Sと芯糸Cは、繊維導入ブロック11の導入孔11aに入り、その後、ノズルブロック12と中空ガイド軸体20の円錐状先端部20aとの間に形成された紡績室p1内に入る。
紡績室p1内には、ノズルブロック12に穿設された空気噴射孔12aから噴出される空気により、旋回気流が形成されており、旋回気流は、中空ガイド軸体20の外周に沿って旋回しながら下方に流れ、空気室22に入り、その後、吸引孔15cから、パイプ23を経て排出されるように構成されている。ノズルブロック12に穿設された空気噴射孔12aからの噴出空気の作用により、繊維導入ブロック11のフロントローラー5側の導入孔11aの入口付近には、吸引空気流が発生しているので、従って、フロントローラー5から送出されるドラフトされた繊維束S及び芯糸Cは、繊維導入ブロック11の導入孔11aに吸い込まれることになる。
上述したようにして、紡績室p1内に入った繊維束Sと芯糸Cとのうち、芯糸Cは、その状態を保持したまま、中空ガイド軸体20の中空通路20bに挿通されることになるが、芯糸Cの毛羽状短繊維c2は、図4に示されているように、紡績室p1内に発生している旋回気流により、中空ガイド軸体20の円錐状先端部20aの外周壁面に、旋回気流の旋回方向に沿ってなびくように巻き付くことになる。なお、本実施例には、芯糸Cには、S撚りが付与されており、且つ、ノズルブロック12に穿設された空気噴射孔12aから噴出される空気により、紡績室p1内には、芯糸Cの走行方向に向かって、反時計方向(図4において、矢印で示されている方向)の旋回気流が発生している例が示されている。
一方、紡績室p1内に入った繊維束Sは、中空ガイド軸体20の中空通路20bの入口20b1に、その先端が接近して配置されているニードル11bに巻き付きつつ、中空ガイド軸体20の中空通路20bに導入されることになるが、図5に模擬的に示されているように、繊維束Sを構成する短繊維sの先端領域s1は、芯糸Cの長手方向と略平行な状態で、芯糸Cの撚糸状短繊維群c1に巻き付くとともに、残余の後端領域s2は、芯糸Cから遠ざかりながら、芯糸Cの撚糸状短繊維群c1に螺旋状に巻き付くような状態となる。このような状態で、芯糸Cの撚糸状短繊維群c1に巻き付いた、繊維束Sを構成する短繊維sの先端領域s1は、芯糸Cの撚糸状短繊維群c1と一緒に、中空ガイド軸体20の中空通路20b内に挿入されることになるが、繊維束Sを構成する短繊維sの後端領域s2は、紡績室p1内に発生している旋回気流により、中空ガイド軸体20の円錐状先端部20aに沿って周回しつつ、図4に示されているように、中空ガイド軸体20の円錐状先端部20aの外周壁面に沿って屈曲することになる。このように、中空ガイド軸体20の円錐状先端部20aの外周壁面には、芯糸Cの毛羽状短繊維c2及び繊維束Sを構成する短繊維sの後端領域s2が、ランダムに混在するように巻き付いている。そして、紡績室p1内に発生している旋回気流により、繊維束Sを構成する短繊維sの後端領域s2は、中空ガイド軸体20の円錐状先端部20aに沿って周回しているので、繊維束Sを構成する短繊維sの後端領域s2と芯糸Cの毛羽状短繊維c2とが交絡しながら、繊維束Sを構成する短繊維sが、芯糸Cに、一定方向に巻き付きながら、芯糸Cを被覆することになる。従って、旋回気流により加撚される繊維は、外層部を構成する繊維束Sと芯糸Cの一部の毛羽状短繊維c2なので、多量の繊維を加撚しなくても、芯糸Cの内層部と繊維束Sを構成する短繊維sの外層部との積層により、太番手の紡績糸を生成することができる。
内層部としての芯糸Cと、該芯糸Cの外周に形成された、繊維束Sの短繊維sからなる外層部としての鞘繊維層y1とにより構成される紡績糸Yが製造されることになるが、上述したように、芯糸Cの毛羽状短繊維c2と繊維束Sを構成する短繊維sの後端領域s2とが交絡しているので、芯糸Cが、鞘繊維層y1に対してずれて、芯ずれが発生するようなことがなく、また、芯糸Cと鞘繊維層y1とからなる紡績糸Yの強度が向上する。更に、芯糸Cの毛羽状短繊維c2と繊維束Sを構成する短繊維sの後端領域s2とが交絡しているので、鞘繊維層y1を構成する短繊維sの脱落が減少し、従って、ピルの発生原因となる脱落繊維の減少により、抗ピル性が向上する。
また、本実施例においては、芯糸Cには、S撚りが付与されており、且つ、ノズルブロック12に穿設された空気噴射孔12aから噴出される空気により、紡績室p1内には、芯糸Cの走行方向に向かって、反時計方向(図4において、矢印で示されている方向)の旋回気流が発生しているので、鞘繊維層y1を構成する繊維束Sの短繊維sには、芯糸Cと反対方向のZ撚りが付与される。従って、上述した紡績方法により、芯糸Cが、S撚りで、鞘繊維層y1が、Z撚りの紡績糸Yが製造されることになる。このように、芯糸Cが、S撚りで、鞘繊維層y1が、Z撚りであるので、芯糸CのS撚りに起因する撚りトルクと、鞘繊維層y1のZ撚りに起因する撚りトルクとが相殺されて、紡績糸Yは、実質的に、ノントルクとなり、従って、スナールやキンク等の発生のない紡績糸Yを製造することができる。
なお、繊維束Sは、繊維導入ブロック11に配設されたニードル11bに、一旦、巻き付けられているので、旋回気流により掛けられた一部の撚りが、フロントローラー5方向へ伝播しようとしても、ニードル11bによってその伝播が阻止されるので、フロントローラー5から送りだされる繊維束Sが撚られるようなことはない。なお、必要に応じて、ニードル11bを省略することもできる。
上述した実施例における芯糸Cとしてのリング糸に代えて、図6に示されているような、結束糸を芯糸Cとして使用することもできる。芯糸Cとしての結束糸は、短繊維が束状に略平行に配置された非結束領域c3と、束状の短繊維を束ねるとともに、一方向の撚り(Z撚り或いはS撚り)が付与された結束領域c4とを有しており、芯糸Cとしての結束糸には、上述した芯糸Cの毛羽状繊維c2と同様の毛羽状繊維c5が突出している。
次に、上述した紡績機を用いて、太さむらを有する紡績糸Yの製造方法について説明する。
先ず最初に、図7に示されているように、ドラフト装置Dを構成するバックローラー2のトップローラ2aとボトムローラ2bのニップ点Nbと、サードローラー3のトップローラ3aとボトムローラ3bのニップ点Ntとの距離(以下、ドラフトゲージと称する。)Gを、適宜、調整することにより、紡績部材Pに供給される繊維束Sの量を、長手方向において、周期的に或いは非周期的に変化させる手段について説明する。なお、繊維束Sの一例としての綿繊維の場合について説明する。
繊維束Sを構成する1本の短繊維sに注目すると、短繊維sは、バックローラー2に把持されて、サードローラー3方向に送られ、次いで、バックローラー2の表面速度より速い表面速度で回転しているサードローラー3に把持されて、セカンドローラー4方向に送られることになる。そして、短繊維sの長さが、ドラフトゲージGより長いと、短繊維sは、バックローラー2とサードローラー3との両方に、同時に把持され切断されることになるので、ドラフトゲージGより長い短繊維sが、繊維束S中に、多く含まれることは好ましくない。また、ドラフトゲージGより、若干、短い短繊維sは、バックローラー2のトップローラ2aとボトムローラ2bとによる把持が解放された後、直ぐに、サードローラー3のトップローラ3aとボトムローラ3bとにより把持され、バックローラー2とサードローラー3との何方にも把持されていない時間が、短いので、周囲の短繊維sの動きに大きく左右されることなく、安定した状態で、ドラフトされ移送されることになる。更に、ドラフトゲージGより、相当、短い短繊維(例えば、ドラフトゲージGの略70%以下の短繊維)sは、バックローラー2及びサードローラー3の何方にも把持されていない時間が長く、従って、周囲の短繊維sの動きに大きく左右されて、不規則な挙動をとることになり、このような短繊維sは、所謂、浮遊繊維と称されている。
バックローラー2とサードローラー3の何方にも把持されていない時間が長く、周囲の短繊維sの動きに大きく左右される、浮遊繊維と称される短繊維sが、集合して移送され、紡績部材Pに供給されると、紡績糸Yの太い部分が生成され、また、このように集合して移送された浮遊繊維と称される短繊維sの残余の部分が、紡績部材Pに供給されると、紡績糸Yの細い部分が生成されることになり、このようにして、太さむらを有する紡績糸Yが製造されることになる。そして、バックローラー2とサードローラー3の何方にも把持されていない時間が長く、周囲の短繊維sの動きに大きく左右される、浮遊繊維と称される短繊維sの多少により、紡績糸Yの太い部分の太さ及び細い部分の太さが変化することになる。
本実施例は、ドラフトゲージGを、むらのない紡績糸を製造する通常の紡績状態におけるドラフトゲージGより大きくすることにより、紡績部材Pに供給される繊維束Sの量を、長手方向において、周期的に或いは非周期的に変化させることにより、太さむらを有する紡績糸Yを製造するようにしたものである。
例えば、繊維束Sとしての綿繊維の有効繊維長(有効繊維長については、「繊維便覧−加工編」、昭和61年1月20日第2版第4刷発行、丸善株式会社発行、10.標準試験法、10・1・2繊維長(第1093〜1094頁)に定義されており、また、この有効繊維長は、実用新案登録第2513582号公報に記載されている実効繊維長に相当する。)が、30mm程度である場合、むらのない紡績糸を製造する通常の紡績状態におけるドラフトゲージGは、36mm程度であるが、本実施例においては、ドラフトゲージGを、40mm程度とすることにより、太さむらを有する紡績糸Yを製造することができる。
本実施例においては、紡績部材Pの紡績室p1内に発生している旋回気流により、中空ガイド軸体20の円錐状先端部20aに沿って、繊維束Sを構成する短繊維sと芯糸Cの毛羽状短繊維c2とを周回させつつ交絡させることにより、芯糸Cに、外層部を構成する短繊維sを巻き付けるようにして、芯糸Cと短繊維sにより形成される外層部とからなる紡績糸Yを製造することになるが、上述したように、紡績部材Pに供給される繊維束Sの量が、長手方向において、周期的に或いは非周期的に変化するので、中空ガイド軸体20の円錐状先端部20aに沿って周回する繊維束Sを構成する短繊維sの量も、長手方向において、周期的に或いは非周期的に変化することになり、従って、図4に示されているように、芯糸Cの外層に巻き付けられる短繊維sの量が、鞘繊維層y1の太さむら部分X1の如く変化し、太さむらを有する紡績糸Yが製造されることになる。
なお、上述した実施例には、バックローラー2とサードローラー3間のドラフトゲージGを広くした例が示されているが、バックローラー2とサードローラー3間のドラフトゲージGを広くする代わりに、サードローラー3とセカンドローラー4間のドラフトゲージGを広くすることもでき、更には、バックローラー2とサードローラー3間のドラフトゲージG及びサードローラー3とセカンドローラー4間のドラフトゲージGの両方のドラフトゲージGを広くすることもできる。
次に、図8及び図9を用いて、ドラフト装置Dを構成するフロントローラー5付近で発生する随伴流を利用して、紡績部材Pに供給される繊維束Sの量を、長手方向において、周期的に或いは非周期的に変化させる手段について説明する。
フロントローラー5は、フロントローラー5を構成するトップローラ5aとボトムローラ5bとにより、セカンドローラー4に把持され移送される繊維束Sを把持するとともに、紡績部材P方向に移送することになるが、トップローラ5aの表面には、その周方向に、トップローラ5aの回転方向に沿って、トップローラ側随伴流Aaが発生し、同様に、ボトムローラ5bの表面にも、その周方向に、ボトムローラ5bの回転方向に沿って、ボトムローラ側随伴流Abが発生することになる。そして、セカンドローラー4側から、トップローラ5aとボトムローラ5bのニップ点Nf方向に流れるトップローラ側随伴流Aaとボトムローラ側随伴流Abは、ニップ点Nf付近で合流することになるが、トップローラ側随伴流Aaの旋回方向とボトムローラ側随伴流Abの旋回方向とは、逆であるので、合流したトップローラ側随伴流Aaとボトムローラ側随伴流Abは、図9に示されているように、トップローラ5aとボトムローラ5bの軸線方向に沿って、互いに反対方向に流れる離反随伴流Adとなる。
上述したトップローラ5aとボトムローラ5bの軸線方向に沿って、互いに反対方向に流れる離反随伴流Adにより、セカンドローラー4側で、且つ、ニップ点Nf付近に位置する繊維束Sの両側付近に位置する短繊維sのうち、何本かは、離反随伴流Adの流れに沿って、図9に示されているように、離反随伴流Adの影響を受けない繊維束Sの中央部分から、トップローラ5aとボトムローラ5bの軸線方向に逸れて、逸脱短繊維s’となる。逸脱短繊維s’は、その後、トップローラ5aとボトムローラ5bに把持され、紡績部材P側で、且つ、ニップ点Nf付近に位置する繊維束Sに合流されることになるが、セカンドローラー4側においては、繊維束Sがドラフトされ、繊維束Sを構成する短繊維sは、常に、その位置を変えているので、セカンドローラー4側において、所定個所の繊維束Sから逸脱された逸脱短繊維s’は、紡績部材P側において、上記所定個所の元の個所に戻るようなことはない。
上述したように、離反随伴流Adの影響を受けて逸脱短繊維s’が抜けた状態の繊維束Sにより生成される紡績糸Yは、細くなり、また、逸脱短繊維s’が合流した繊維束Sにより生成される紡績糸Yは、太くなる。このようにして、太さむらを有する紡績糸Yが製造されることになる。離反随伴流Adの流れを大きくして、逸脱短繊維s’を増やすことにより、太い部分と細い部分のより顕著な紡績糸Yを製造することができる。
離反随伴流Adの流れは、フロントローラー5を構成するトップローラ5aやボトムローラ5bに、回転方向に沿った溝や突起等を形成すると、弱くなるので、トップローラ5aやボトムローラ5bは、このような溝や突起等が形成されていない、平坦なものとすることが好ましい。また、離反随伴流Adの流れは、トップローラ5aの幅が広いほど、大きくなるので、トップローラ5aの幅を広くすることが好ましい。
上述した実施例において、芯糸Cとして、太さが略均一なものを使用することもできるが、図10や図11に示されているように、長手方向において、周期的或いは非周期的に、太い部分C1と通常の太さ部分C2とを有する芯糸Cを使用することもできる。このように、太い部分C1と通常の太さ部分C2とを有する芯糸Cを使用するとともに、上述したように、紡績部材Pに供給される繊維束Sの量を、長手方向において、周期的に或いは非周期的に変化させることにより、太い部分と細い部分とが、より複雑に出現する紡績糸Yを製造することができる。
上述したように、紡績部材Pに供給される繊維束Sの量を、長手方向において、周期的に或いは非周期的に変化させるとともに、図10〜図12に示されているように、長手方向において、周期的或いは非周期的に、太い部分C1と通常の太さ部分C2とを有する芯糸Cを使用した場合において、芯糸Cの通常の太さ部分C2に、量の増えた繊維束Sが供給された際には、芯糸Cの通常の太さ部分C2の外周に、厚い鞘繊維層y1が形成された、紡績糸Yの太い部分Y1が生成されることになり、また、芯糸Cの太い部分C1に、量の増えた繊維束Sが供給された際には、芯糸Cの太い部分C1の外周に、厚い鞘繊維層y1が形成された、紡績糸Yのより太い部分Y2が生成されることになり、更に、芯糸Cの太い部分C1に、通常の量の繊維束Sが供給された際には、芯糸Cの太い部分C1の外周に、通常の厚さの鞘繊維層y1が形成された、紡績糸Yの太い部分Y3が生成されることになる。
また、上述したように、紡績部材Pに供給される繊維束Sの量を、長手方向において、周期的に或いは非周期的に変化させることなく、紡績部材Pに供給される繊維束Sの量を、略一定にし、図10や図11に示されているように、長手方向において、太い部分C1と細い部分C2とを有する芯糸Cを使用するだけで、太い部分と細い部分とを有する紡績糸Yを製造することもできる。
上述したようにして製造された、太さむらを有する紡績糸Yは、外層部を構成する短繊維sと芯糸Cの毛羽状短繊維c2とが交絡しているので、芯糸Cが、外層部を構成する短繊維sに対してずれて、芯ずれが発生するようなことがなく、また、芯糸Cと外層部とからなる紡績糸Yの強度が向上するとともに、芯糸Cの毛羽状短繊維c2と外層部を構成する短繊維sとが交絡しているので、外層部を構成する短繊維sの脱落が減少し、従って、ピルの発生原因となる脱落繊維の減少により、抗ピル性が向上する。
また、上述したように、紡績室p1内に発生している旋回気流により、中空ガイド軸体20の円錐状先端部20aに沿って、繊維束Sを構成する短繊維sと芯糸Cの毛羽状短繊維c2とを周回させつつ交絡させることにより、芯糸Cに、繊維束Sを構成する短繊維sを巻き付けるようにして製造された、太さむらを有する紡績糸Yは、旋回気流の作用を、いずれの短繊維も略均一に受けることができる製造方法で生成されたものである。従って、太い部分と細い部分との撚り数が同じであるので、撚り数の多少に起因する紡績糸Yの強度の低下を防止することができる。
更に、芯糸Cとして、ポリエステル等の化学繊維からなる結束糸を用いると、リング糸に比べて、吸水性や水分の拡散性が良好であるので、リング糸を, 芯糸Cとした紡績糸Yに比べて、紡績糸Yの吸水性や水分の拡散性が向上するとともに、紡績糸Yの乾燥性が向上する。また、芯糸Cとして、図11に示されているように、太い部分C1と細い部分C2とを有するものを用いてもよい。
更にまた、外層部を構成する短繊維sを、コーマ綿とすることにより、芯糸Cの原料にかかわらず、綿タッチで、しかも、外観が、純コーマ綿のような高級感のある太さむらを有する紡績糸Yを生成することができる。
図1は、本発明の紡績糸を製造するための及び本発明の紡績糸の製造方法を実施するための紡績機の斜視図である。 図2は、本発明の紡績糸を製造する際に使用される一例としての芯糸の模擬的斜視図である。 図3は、図1に示されている紡績機を構成する紡績部材等の要部の側断面図である。 図4は、本発明の紡績糸の生成過程を説明するための紡績部材等の部分拡大斜視図である。 図5は、外層部としての鞘繊維層を構成する短繊維の芯糸への巻き付きを説明するための模擬的斜視図である。 図6は、本発明の紡績糸を製造する際に使用される他の芯糸の模擬的斜視図である。 図7は、本発明の紡績糸を製造するための及び本発明の紡績糸の製造方法を実施するための紡績機を構成するドラフト装置のバックローラとサードローラの一部断面を含む拡大側面図である。 図8は、本発明の紡績糸を製造するための及び本発明の紡績糸の製造方法を実施するための紡績機を構成するドラフト装置のフロントローラの一部断面を含む拡大側面図である。 図9は、本発明の紡績糸を製造するための及び本発明の紡績糸の製造方法を実施するための紡績機を構成するドラフト装置のフロントローラの拡大平面図である。 図10は、太い部分と細い部分とを有する、図2に示されている芯糸と同様の芯糸の模擬的斜視図である。 図11は、太い部分と細い部分とを有する、図6に示されている芯糸と同様の芯糸の模擬的斜視図である。 図12は、太さ部分を有する芯糸が使用された状態の図4と同様の紡績部材等の部分拡大斜視図である。
符号の説明
C・・・・・・・・・・・・・・・芯糸
c1・・・・・・・・・・・・・・撚糸状短繊維群
c2・・・・・・・・・・・・・・毛羽状短繊維
D・・・・・・・・・・・・・・・ドラフト装置
P・・・・・・・・・・・・・・・紡績部材
p1・・・・・・・・・・・・・・紡績室
S・・・・・・・・・・・・・・・繊維束
s・・・・・・・・・・・・・・・短繊維
Y・・・・・・・・・・・・・・・紡績糸
2・・・・・・・・・・・・・・・バックローラ
3・・・・・・・・・・・・・・・サードローラ
4・・・・・・・・・・・・・・・セカンドローラ
5・・・・・・・・・・・・・・・フロントローラ
11・・・・・・・・・・・・・・繊維導入ブロック
12・・・・・・・・・・・・・・ノズルブロック
20・・・・・・・・・・・・・・中空ガイド軸体

Claims (10)

  1. 一定方向の撚りが付与された撚糸状短繊維群と毛羽状短繊維とからなる芯繊維と、該芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維とから構成されているとともに、前記芯繊維の毛羽状短繊維と前記芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維とが交絡されており、且つ、前記芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の量が、長手方向において、周期的或いは非周期的に異なるように構成されていることを特徴とする太さむらを有する紡績糸。
  2. 上記芯繊維の太さが、長手方向において、略均一であることを特徴とする請求項1に記載の紡績糸。
  3. 上記芯繊維を、太い部分と細い部分とが、長手方向において、周期的或いは非周期的に存在するものとしたことを特徴とする請求項1に記載の紡績糸。
  4. 一定方向の撚りが付与された撚糸状短繊維群と毛羽状短繊維とからなり、長手方向において、太い部分と細い部分とが、周期的或いは非周期的に存在する芯繊維と、該芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維とから構成されており、且つ、前記芯繊維の毛羽状短繊維と前記芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維とが交絡されており、更に、前記芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の量が、略一定であることを特徴とする太さむらを有する紡績糸。
  5. 上記芯繊維の撚り方向と該芯繊維の外周に巻き付けられた短繊維の撚り方向とが逆であるとを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の紡績糸。
  6. 一定方向の撚りが付与された撚糸状短繊維群と毛羽状短繊維とからなる芯繊維を、ドラフトされつつ走行する繊維束に合流させるとともに、前記繊維束を、旋回気流が発生している紡績室を有する紡績部材に、その量が、長手方向において、周期的或いは非周期的に変化するように供給し、次いで、前記芯繊維の毛羽状短繊維と前記繊維束を構成する短繊維とを、前記旋回気流を、中空ガイド軸体付近に作用させることにより、前記中空ガイド軸体外周に巻き付けつつ交絡させることを特徴とする太さむらを有する紡績糸の製造方法。
  7. 上記芯繊維として、太さが、長手方向において、略均一であるものを供給することを特徴とする請求項6に記載の紡績糸の製造方法。
  8. 上記芯繊維として、太い部分と細い部分とが、長手方向において、周期的或いは非周期的に存在するものを供給することを特徴とする請求項6に記載の紡績糸の製造方法。
  9. 一定方向の撚りが付与された撚糸状短繊維群と毛羽状短繊維とからなるとともに、太い部分と細い部分とが、長手方向において、周期的或いは非周期的に存在する芯繊維を、ドラフトされつつ走行する繊維束に合流させるとともに、前記芯繊維及び略一定量の繊維束を、旋回気流が発生している紡績室を有する紡績部材に供給し、次いで、前記芯繊維の毛羽状短繊維と前記繊維束を構成する短繊維とを、前記旋回気流を、中空ガイド軸体付近に作用させることにより、前記中空ガイド軸体外周に巻き付けつつ交絡させることを特徴とする太さむらを有する紡績糸の製造方法。
  10. 上記芯繊維の撚り方向と上記紡績室内に発生している旋回気流の旋回方向とを逆方向としたことを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の紡績糸の製造方法。
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