JP2005120434A - リング状線材の加熱装置および加熱方法 - Google Patents
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Abstract
【要 約】
【課 題】 線材熱処理ラインに適用して、迅速にかつ均一に所定の加熱温度に再加熱することが可能なリング状線材の加熱装置および加熱方法を提供する。
【解決手段】 リング状線材の周囲に発生させる交番磁界の方向が異なる少なくとも2つ以上の誘導コイルを、リング状線材の搬送方向に連設した加熱装置およびそれを用いたリング状線材の加熱方法。
【選択図】 図3
【課 題】 線材熱処理ラインに適用して、迅速にかつ均一に所定の加熱温度に再加熱することが可能なリング状線材の加熱装置および加熱方法を提供する。
【解決手段】 リング状線材の周囲に発生させる交番磁界の方向が異なる少なくとも2つ以上の誘導コイルを、リング状線材の搬送方向に連設した加熱装置およびそれを用いたリング状線材の加熱方法。
【選択図】 図3
Description
本発明は、線材熱処理ラインに適用して、迅速に且つ均一に所定の加熱温度に再加熱することができるリング状線材の加熱装置および加熱方法に関する。
鋼線材は、熱間圧延等により所定の径に加工された後、一般に巻取装置により図8(a)、(b)に示す如くリング状に巻き取られ、この形状のまま搬送コンベアにより集束装置の設置位置に搬送され、図9(a)に示す如くコイル状に集束されて製造されている。図9(a)中、符号Dは、集束装置により集束されたコイル状線材Mのコイル径を示し、符号dは、線材の直径を示す。
このような過程で製造される線材は、一般に、仕上圧延機により所定の仕上温度範囲内、減面率で仕上圧延され、その後水冷帯で所定温度に冷却され、引き続き、搬送コンベア上において所定の熱処理を受ける。例えば、搬送コンベア上においてリング状に巻き取られた線材には、放冷もしくは衝風、或いは冷却水により冷却する熱処理や、搬送コンベアを保熱カバーで覆って冷却速度を遅くする熱処理が施されている。
このような熱処理を施された鋼線材の冷間加工性は、例えば、高圧縮率で冷間加工される部品に対しては必ずしも十分なものではない。そこで、冷間鍛造性に優れた線材とするには、その後、線材圧延ラインと別設されたオフライン熱処理設備に運び、コイル状熱間圧延線材Mに対して炭化物の球状化焼鈍または軟化焼鈍を行って製造されていた。このため、効率が悪く、冷間鍛造性に優れた線材を効率的に製造できる線材熱処理ラインが必要とされていた。
ところで、冷間鍛造性に優れた線材を線材圧延ラインで製造するには、仕上圧延され、その後、水冷帯で所定温度にまで冷却されたリング状の線材をインラインで所定の加熱温度に再加熱し、所定の加熱温度に到達させてから緩冷却することが有効である。これを実現するのには、迅速に且つ均一に所定の加熱温度に再加熱することができるリング状熱間圧延線材の加熱装置と加熱方法が必要である。
ここで、搬送コンベア上を搬送されるリング状の線材の形状について説明する。巻取装置により巻き取られた線材形状は、代表例を図8(a)に例示した如く、巻取装置が線材を1巻する毎に線材の位置が移送方向に所定量だけずれることにより形成される。例えば、巻取装置の最初の2巻では、図8(b)に示す如く、1巻目においてL0〜L1の線材により、L0とL1間が移送方向に所定量だけずれたリングが形成され、2巻目においてL1〜L2の線材により、L1とL2間が移送方向にずれているリングが形成される。
図8(b)中、符号P1、P2、は、移送方向にずれているリング同士が交差し、重なっている部分である。
このように巻取装置により巻き取られた線材を、以下、リング状線材Lともいうが、リング状線材Lは、搬送コンベア上を搬送さているうえに、上述したとおり、リング同士が重なっている部分を有しているので、均一に且つ迅速に再加熱することが困難である。
これに対して、熱処理の自由度を格段に拡大させた熱処理ラインが特許文献1に示されている。特許文献1に記載の熱間圧延線材の熱処理ラインは、電気ヒータやラジアントチューブなどを有する保熱カバーで搬送コンベアを覆うことにより、リング状熱間圧延線材Lの冷却速度を遅くできるように構成されている。
特開2000−345244号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の線材の熱処理ラインは、リング状線材Lを所定の加熱温度に再加熱しようとすると、電気ヒータやラジアントチューブなどを有する保熱カバーを用いているから、加熱温度に到達するまでに長時間かかるという問題があった。
また、特許文献1に記載の線材の熱処理ラインは、電気ヒータやラジアントチューブなどを有する保熱カバーを用いているため、リング同士が重なっている部分を有しているリング状熱間圧延線材Lを短時間に且つ均一に所定の加熱温度に再加熱するのが困難であるという欠点があった。
また、特許文献1に記載の線材の熱処理ラインは、リング状線材Lを再加熱するに際し、所定の加熱温度に到達するまでに時間がかかり、加熱時間に見合った長さの搬送コンベアが必要となるため、ラインが長大となるという問題もあった。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するものであり、線材熱処理ラインに適用して、迅速にかつ均一に所定の加熱温度に再加熱することが可能なリング状線材の加熱装置および加熱方法を提供することを目的とする。
(1)搬送されるリング状線材の周囲に誘導コイルにより交番磁界を発生させて、前記リング状線材を加熱するリング状線材の加熱装置であって、リング状線材の周囲に発生させる交番磁界の方向が異なる少なくとも2つ以上の誘導コイルを、前記リング状線材の搬送方向に連設したことを特徴とするリング状線材の加熱装置である。
(2)搬送されるリング状線材の周囲に交番磁界を発生させて、前記リング状線材を誘導加熱する方法であって、前記リング状線材に対して一定の磁界方向を有する第1の交番磁界中を通過させた後、前記第1の交番磁界とは磁界方向が異なる第2の交番磁界中を通過させて、前記リング状線材を誘導加熱することを特徴とするリング状線材の加熱方法である。
(2)搬送されるリング状線材の周囲に交番磁界を発生させて、前記リング状線材を誘導加熱する方法であって、前記リング状線材に対して一定の磁界方向を有する第1の交番磁界中を通過させた後、前記第1の交番磁界とは磁界方向が異なる第2の交番磁界中を通過させて、前記リング状線材を誘導加熱することを特徴とするリング状線材の加熱方法である。
本発明によれば、線材熱処理ラインにおいて、迅速にかつ均一に所定の加熱温度に再加熱することができる。このため、本発明を適用した線材熱処理ラインにおいて、熱間圧延線材の炭化物の球状化焼鈍または軟化焼鈍を行うことができ、冷間鍛造性に優れた熱間圧延線材を効率よく製造することが可能である。
以下、図面を用いて本発明の実施例の形態について説明する。
図1は、本発明の実施例の形態に係るリング状熱間圧延線材の加熱装置を適用した線材熱処理ラインの説明図であり、図2は、図1に示す線材熱処理ラインの要部を示す縦断面模式図である。図3〜5は、本発明の実施例の形態に係るリング状熱間圧延線材の加熱装置の構成を示す概略図である。
先ず、本発明を適用した線材熱処理ラインについて図を用いて説明する。
この本発明を適用した線材熱処理ラインは、図1、図2において、符号を付した装置を使用するラインである。すなわち、仕上圧延機1、冷却帯2、巻取装置3、搬送装置としての搬送コンベア4、加熱装置5、集束装置6、およびトラバース装置7、トンネル型徐冷炉8、取り出し室9を使用する。
この線材熱処理ラインにおいては、仕上圧延機1で仕上圧延され、冷却帯2により所定の温度に水冷された熱間圧延線材を巻取装置3によりリング状に巻き取った後、リング状熱間圧延線材Lを搬送コンベア4で搬送しつつ、加熱装置5により所定の加熱温度に再加熱し、第1の集束装置6により集束してコイル状熱間圧延線材Mとする。引き続き、この線材熱処理ラインでは、コイル状熱間圧延線材Mを第1の集束装置6に連設したトンネル型徐冷炉8を通過させる。このようなライン構成とすることで、加熱装置5により所定の加熱温度に再加熱されたコイル状熱間圧延線材を0.5℃/秒以下の冷却速度で徐冷できる。
仕上圧延機1は、供給された中間素材に所望の減面率、所定の温度範囲で仕上圧延を施して、冷却帯2に仕上圧延された熱間圧延線材を送給可能に構成され、また、冷却帯2は、仕上圧延された熱間圧延線材を水冷あるいは空冷により効率よく冷却し、仕上圧延された熱間圧延線材の温度を該鋼のAr1変態点以下の温度に冷却することができる。所定の温度に冷却された熱間圧延線材は、巻取装置3に送給される。巻取装置3は、レイングヘッドを有し、所定の温度に冷却された熱間圧延線材を巻き取って、リング状熱間圧延線材Lとすることができる。搬送コンベア4は、搬送ローラ4Aを有し、巻取装置3によって巻き取られ、リング状熱間圧延線材Lを集束装置6まで搬送可能に構成されている。加熱装置5については後述する。
また、トラバース装置7は、コイル状熱間圧延線材を集束装置6の位置からトンネル型徐冷炉8の入側位置へ搬送する、例えば、搬送台車などを有する装置とされている。トンネル型徐冷炉8は、入口、出口の遮蔽扉と、上、下の複数箇所に設置されたラジアントチューブと、回転可能な複数の循環ファンよび複数の搬送ローラを有するものとすることができる。図1、図2中、符号M1、M2、M3、M4…Mnは、各過程でのコイル状熱間圧延線材を示す。
先ず、本発明を適用した線材熱処理ラインについて図を用いて説明する。
この本発明を適用した線材熱処理ラインは、図1、図2において、符号を付した装置を使用するラインである。すなわち、仕上圧延機1、冷却帯2、巻取装置3、搬送装置としての搬送コンベア4、加熱装置5、集束装置6、およびトラバース装置7、トンネル型徐冷炉8、取り出し室9を使用する。
この線材熱処理ラインにおいては、仕上圧延機1で仕上圧延され、冷却帯2により所定の温度に水冷された熱間圧延線材を巻取装置3によりリング状に巻き取った後、リング状熱間圧延線材Lを搬送コンベア4で搬送しつつ、加熱装置5により所定の加熱温度に再加熱し、第1の集束装置6により集束してコイル状熱間圧延線材Mとする。引き続き、この線材熱処理ラインでは、コイル状熱間圧延線材Mを第1の集束装置6に連設したトンネル型徐冷炉8を通過させる。このようなライン構成とすることで、加熱装置5により所定の加熱温度に再加熱されたコイル状熱間圧延線材を0.5℃/秒以下の冷却速度で徐冷できる。
仕上圧延機1は、供給された中間素材に所望の減面率、所定の温度範囲で仕上圧延を施して、冷却帯2に仕上圧延された熱間圧延線材を送給可能に構成され、また、冷却帯2は、仕上圧延された熱間圧延線材を水冷あるいは空冷により効率よく冷却し、仕上圧延された熱間圧延線材の温度を該鋼のAr1変態点以下の温度に冷却することができる。所定の温度に冷却された熱間圧延線材は、巻取装置3に送給される。巻取装置3は、レイングヘッドを有し、所定の温度に冷却された熱間圧延線材を巻き取って、リング状熱間圧延線材Lとすることができる。搬送コンベア4は、搬送ローラ4Aを有し、巻取装置3によって巻き取られ、リング状熱間圧延線材Lを集束装置6まで搬送可能に構成されている。加熱装置5については後述する。
また、トラバース装置7は、コイル状熱間圧延線材を集束装置6の位置からトンネル型徐冷炉8の入側位置へ搬送する、例えば、搬送台車などを有する装置とされている。トンネル型徐冷炉8は、入口、出口の遮蔽扉と、上、下の複数箇所に設置されたラジアントチューブと、回転可能な複数の循環ファンよび複数の搬送ローラを有するものとすることができる。図1、図2中、符号M1、M2、M3、M4…Mnは、各過程でのコイル状熱間圧延線材を示す。
ここで、符号4Aは、巻取装置3から集束装置6までの間に配置された搬送ローラを示す。リング状熱間圧延線材Lは、搬送ローラ4Aにより搬送されながら、加熱装置5により所定の加熱温度に再加熱される。
図3を用いて、本発明の実施例の形態に係るリング状熱間圧延線材の加熱装置5について説明する。
図中、符号5Aは一方側の誘導コイル、5Bは他方側の誘導コイル(5B1,5B2)を示し、また、符号S1、S2、T1、T2、U1、U2はそれぞれの誘導コイルのコイル端を示す。この場合、移送方向上流側を一方側とし、ソレノイド型誘導コイル5Aを配置し、他方側には、一対のコの字状誘導コイル5B1、5B2をリング状熱間圧延線材Lの仮想中心線41を挟んで線対称に配置し、対称コの字状誘導コイル5Bとした。図3中、D’は、リング状熱間圧延線材Lの移送幅を示す。また、図4(a)、図5(a)に示す如く、一方側の誘導コイル5Aのコイル端S1、S2は、交流電源21に接続され、他方側の誘導コイル5B(5B1,5B2)は、交流電源22に接続されている。
なお、図4(a)中、符号42は、一方側のソレノイド型誘導コイル5Aが発生する磁界方向を示し、図5(a)中、符号43は、他方側の対称コの字状誘導コイル5Bが発生する磁界方向を示す。
本発明の実施例の形態に係るリング状線材の加熱装置は、図3に示す如く、移送方向に隣接して配置された一方側の誘導コイル5Aと、他方側の誘導コイル5B(5B1,5B2)を有する。
ソレノイド型誘導コイル5Aは、導線を曲げてコイル内をリング状熱間圧延線材Lが通過可能なように成形したもので、図5(a)に示す如く、導線が、リング状熱間圧延線材Lの上方および下方の面上で、移送方向に対して直角となるように巻いてある。
そこで、一方側のソレノイド型誘導コイル5Aの内部で発生する磁界方向42は、リング状熱間圧延線材Lの移送方向に平行となる。
これに対して、他方側の誘導コイル5Bの発生する磁界方向43は、リング状熱間圧延線材Lの周囲で、移送方向に対して90°となることを以下に説明する。
対称コの字状誘導コイル5Bを構成する一対のコイル5B1,5B2はそれぞれ、図4、図6に示す如く、導線がリング状熱間圧延線材Lに対して上方の面上で逐次、移送方向と直角な方向、移送方向、移送方向と直角な方向と折り曲げられた後、下方の面に向けて折り曲げられ、下方の面上で上記と同様、逐次、移送方向と直角な方向、移送方向、移送方向と直角な方向と折り曲げられ、さらに上記の折り曲げが繰り返され、リング状熱間圧延線材Lの移送方向には一部を、リング状熱間圧延線材Lの移送方向と直角な方向(移送幅方向)には、リング状熱間圧延線材Lの略半分を覆うように形成されたコイルであり、一対のコイル5B1,5B2によりリング状熱間圧延線材Lの移送幅全面を覆っている。
上述した一対のコの字状誘導コイル5B1、5B2は、図5(a)に示す如く、誘導コイル5B1のコイル端T1、T2と誘導コイル5B2のコイル端U1、U2がそれぞれ交流電源22に接続されている。そこで、導線が上方の面上で移送方向に対して平行な部分と導線が下方の面上で移送方向に対して平行な部分には、互いに逆向の交番電流が流れ、対称コの字状誘導コイル5Bが発生する磁界方向43は、リング状熱間圧延線材Lの上方および下方の面上で、移送方向に対して90°となる。
なお、誘導加熱方式の加熱装置における、誘導コイルの巻き数および誘導コイルに供給する電力は、加熱温度、加熱速度、線材の材質、線材の直径d、コイル径D等により、適宜決めることができる。
上述した加熱装置の作用について、図6を用いて説明する。
なお、誘導加熱方式の加熱装置における、誘導コイルの巻き数および誘導コイルに供給する電力は、加熱温度、加熱速度、線材の材質、線材の直径d、コイル径D等により、適宜決めることができる。
上述した加熱装置の作用について、図6を用いて説明する。
図6(a)は、図3に示した加熱装置の誘導コイルへの電力供給方法を説明するグラフである。また、同図(b)は、図3に示した加熱装置の作用の説明図である。同図(c)は、同図(b)に用いたリング周方向位置を表す角度αの定義図である。
上記の加熱装置を用いた場合の加熱方法は、リング状熱間圧延線材Lを、二つの誘導コイル5A、5Bの隣接配置位置に順次搬送するに際し、図6(a)に示す如く、二つの誘導コイル5A、5Bを使用状態とし、交番磁界によって生起される誘導電流によりリング状熱間圧延線材Lを誘導加熱する。先ず、リング状熱間圧延線材は、誘導コイル5Aを通過する際に、磁界方向が移送方向と平行な第1の交番磁界中を通過する。次いで誘導コイル5Bを通過する際に、磁界方向が移送方向と直交する第2の交番磁界中を通過する。その際、図6(b)に示す如く、リング状熱間圧延線材Lには、二つの誘導コイル5A、5Bの発生する磁界方向が互いに異なる交番磁界によってリング状熱間圧延線材Lのリング周方向にわたり、互いに補い合う誘導電流が生じる。この結果、この誘導電流によりリング状熱間圧延線材Lは、均一にかつ急速に再加熱される。
但し、図6(b)は、上述した誘導コイルの配置位置にリング状熱間圧延線材Lを搬送したときに、リング周方向位置に生起される、リング周方向単位長さ当たりの誘導電流量の分布を示す模式図であり、実線(イ)は、一方側の誘導コイル5Aによって生起されるリング周方向単位長さ当たりの誘導電流量を示し、破線(ロ)は、他方側の誘導コイル5Bによって生起されるリング周方向単位長さ当たりの誘導電流量を示す。2点鎖線(ハ)は、2つの誘導コイル5A、5Bによりそれぞれ生起された誘導電流の合計量を示す。
ここで、一方側のソレノイド型誘導コイル5Aの作用について詳述する。リング状熱間圧延線材Lに対して、上下面からレノイド型誘導コイル5Aにより磁界方向42の交番磁界が与えられると、これに対応する誘導電流(渦電流とも称され、この渦電流は、線材の長さ方向直角断面で見て、線材の周方向を周回するように流れる)が生起されるが、渦電流の浸透深さに対して線材の直径が細い場合、線材の軸方向と磁界方向42が近いリング部分(図6(c)に示すリング周方向位置を表す角度α(α:リング周方向位置Qにおける外向き法線と移送方向とのなす角α=90°、270°…に近い部分)には誘導電流が多く流れるものの、線材の軸方向が磁界方向42に対してなす角度が90°である部分(すなわち、上記のリング周方向位置を表す角度α=0、180°、360°…の部分)には、誘導電流が生起されない。従って、ソレノイド型誘導コイル5Aを一つ用いただけでは、リング状熱間圧延線材Lを均一に再加熱することができないことがわかった。このため本発明では、一方側の誘導コイル5Aによって生起される誘導電流を他方側の誘導コイル5Bによって生起される誘導電流により補い、リング周方向全長にわたって発熱量を均一としたのである。
上述したように実施例の形態に係るリング状熱間圧延線材の加熱装置によれば、リング状熱間圧延線材Lを急速にかつ均一に再加熱することができ、従来のラジアントチューブあるいは電気ヒータなどを用いた間接加熱方式の加熱装置に比べて、短時間で所定の加熱温度に再加熱することができるから、熱処理ライン長を短縮することができる。
但し、本発明の実施例の形態に係るリング状熱間圧延線材の加熱装置としては、図3に示した2つの誘導コイルに代わり、図7に示すような2つの誘導コイル5A’、5B’を移送方向に隣接して配置した装置とすることもできる。
図7(a)は平面図、同図(b)は、X3−X3断面図、同図(c)はX4−X4断面図である。θ1は、一方側の誘導コイル5A’がその内部に発生させる磁界方向44と移送方向とのなす角を示し、θ2は、他方側の誘導コイル5B’ がその内部に発生させる磁界方向45と移送方向とのなす角を示す。
一方側の誘導コイル5A’および他方側の誘導コイル5B’は、導線を曲げてコイル内をリング状熱間圧延線材Lが通過可能なように成形され、それぞれリング状熱間圧延線材Lの上方および下方の面上で、導線が移送方向に対して45°をなし、かつ互いに反対方向に傾斜させて巻いてある。この加熱装置は、一方側の誘導コイル5A’のコイル端は、交流電源23に接続され、他方側の誘導コイル5B’のコイル端は交流電源24に接続され、交番電流を二つの誘導コイルに流すことができる。この加熱装置における作用効果は、図3に示した加熱装置の場合と同様であるので説明を省略する。
以上説明した本発明の実施の形態に係るリング状熱間圧延線材の加熱装置を、図1、図2に示した線材熱処理ラインに適用することにより、軟化焼鈍処理あるいは炭化物の球状化焼鈍処理を行うことができる。このような熱処理を施した再加熱線材は、例えば、高圧縮率で冷間加工される部品に好適に使用することができる。
なお、上述した実施形態では、リング状熱間圧延線材の加熱装置および加熱方法に、本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、リング状の線材を搬送中に加熱する場合には好適に用いることができる。
以上説明した本発明の実施の形態に係るリング状熱間圧延線材の加熱装置を、図1、図2に示した線材熱処理ラインに適用することにより、軟化焼鈍処理あるいは炭化物の球状化焼鈍処理を行うことができる。このような熱処理を施した再加熱線材は、例えば、高圧縮率で冷間加工される部品に好適に使用することができる。
なお、上述した実施形態では、リング状熱間圧延線材の加熱装置および加熱方法に、本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、リング状の線材を搬送中に加熱する場合には好適に用いることができる。
図1、2に示した線材の圧延ラインを用いて、規格JIS SCM415(C:0.15mass%、Si:0.20mass%、Mn:0.30mass%、P:0.01mass%、S:0.01mass%、Cr:1.1mass%、Mo:0.18mass%、残部Feおよび不可避的不純物)を直径4.0mmφに仕上圧延した後、冷却帯2にて 650℃まで冷却し、ついで、巻取装置3でコイル径Dが1000mm、移送方向のずれ量が10mmのリング状熱間圧延線材とし、その後に加熱装置5を用いて加熱するにあたり、加熱装置として以下に示した4種類の加熱装置を用いた。
[発明例]
加熱方式:誘導加熱
誘導コイル配置:誘導コイル5A、5Bを移送方向に連設(図3参照)
加熱装置の移送方向全長:8m
リング状熱間圧延線材の通過時間:15秒
供給電力:誘導コイル5A、5Bに、それぞれ800kWの電力を常時供給
[比較例1]
加熱方式:誘導加熱
誘導コイル配置:誘導コイル5Aを単独で配置(図4参照)
加熱装置の移送方向全長:8m
リング状熱間圧延線材の通過時間:15秒
供給電力:常時800kW
[比較例2]
加熱方式:誘導加熱
誘導コイル配置:誘導コイル5Bを単独で配置(図5参照)
加熱装置の移送方向全長:8m
リング状熱間圧延線材の通過時間:15秒
供給電力:常時800kW
[比較例3]
加熱方式:電気ヒータによる炉加熱
設定炉温度:800℃
加熱炉の移送方向全長:8m
リング状熱間圧延線材の通過時間:15秒
供給電力:常時800kW
そして、加熱装置出側における鋼材温度を放射温度計により測定した。放射温度計はリング状熱間圧延線材のライン幅方向中央部(図6(c)においてα=0oとなる位置)、ライン幅方向端部(図6(c)においてα=90oとなる位置)、および、ライン幅方向中央から353mm幅方向にずらした位置(図6(c)においてα=45oとなる位置)の温度を測定できるように配置した。ライン幅方向中央部とライン幅方向端部の測定結果を表1に示す。
加熱方式:誘導加熱
誘導コイル配置:誘導コイル5A、5Bを移送方向に連設(図3参照)
加熱装置の移送方向全長:8m
リング状熱間圧延線材の通過時間:15秒
供給電力:誘導コイル5A、5Bに、それぞれ800kWの電力を常時供給
[比較例1]
加熱方式:誘導加熱
誘導コイル配置:誘導コイル5Aを単独で配置(図4参照)
加熱装置の移送方向全長:8m
リング状熱間圧延線材の通過時間:15秒
供給電力:常時800kW
[比較例2]
加熱方式:誘導加熱
誘導コイル配置:誘導コイル5Bを単独で配置(図5参照)
加熱装置の移送方向全長:8m
リング状熱間圧延線材の通過時間:15秒
供給電力:常時800kW
[比較例3]
加熱方式:電気ヒータによる炉加熱
設定炉温度:800℃
加熱炉の移送方向全長:8m
リング状熱間圧延線材の通過時間:15秒
供給電力:常時800kW
そして、加熱装置出側における鋼材温度を放射温度計により測定した。放射温度計はリング状熱間圧延線材のライン幅方向中央部(図6(c)においてα=0oとなる位置)、ライン幅方向端部(図6(c)においてα=90oとなる位置)、および、ライン幅方向中央から353mm幅方向にずらした位置(図6(c)においてα=45oとなる位置)の温度を測定できるように配置した。ライン幅方向中央部とライン幅方向端部の測定結果を表1に示す。
表1に示す結果から、本発明の加熱装置によればリング状線材を周方向に均一に加熱することが可能となる。
これに対し、比較例1は誘導コイルにより発生する交番磁界の磁界方向がリング状線材の移送方向のみであるため、リング状線材のライン幅方向中央部が加熱されなかった。また、比較例2は、誘導コイルにより発生する交番磁界の磁界方向がリング状線材の移送方向と直角な方向のみであるため、リング状線材のライン幅方向端部が加熱されなかった。また、比較例3の電気ヒータによる炉加熱の場合には、昇温速度が遅いため15秒間ではリング状線材の温度上昇がほとんど認められなかった。
なお、上記の発明例においては、リング状線材の移送方向に磁界を発生させる誘導コイル5Aと、移送方向に直角な方向に磁界を発生させる誘導コイル5Bとの2つの誘導コイルを移送方向に連設したが、本発明はこれに限定されず、例えば誘導コイルを3つとして、それぞれ磁界の発生させる方向を60oづつずらすようにし、これらの誘導コイルに対し順次リング状線材を通過させるようにしてもよい。
また、上記の発明例においては、誘導コイル5A、誘導コイル5Bを各1台づつとしたが、それぞれを複数台づつとし、誘導コイル5Aと誘導コイル5Bとを搬送方向に沿って交互に配置するようにしてもよい。
L リング状熱間圧延線材
M(M1、M2、M3、M4…Mn) コイル状熱間圧延線材
D コイル径
d 線材の直径
D’ リング状熱間圧延線材Lの移送幅
1 仕上圧延機
2 冷却帯
3 巻取装置
4 搬送コンベア(搬送装置)
4A 搬送コンベア4の搬送ローラ
5 加熱装置
6 集束装置
7 トラバース装置
8 トンネル型徐冷炉
9 取り出し室
5A、5A’ 一方側の誘導コイル
5B、5B’ 他方側の誘導コイル
S1、S2、T1、T2、U1、U2 コイル端
21、22、23、24 交流電源
41 リング状熱間圧延線材の仮想中心線
42、43、44、45 磁界方向
M(M1、M2、M3、M4…Mn) コイル状熱間圧延線材
D コイル径
d 線材の直径
D’ リング状熱間圧延線材Lの移送幅
1 仕上圧延機
2 冷却帯
3 巻取装置
4 搬送コンベア(搬送装置)
4A 搬送コンベア4の搬送ローラ
5 加熱装置
6 集束装置
7 トラバース装置
8 トンネル型徐冷炉
9 取り出し室
5A、5A’ 一方側の誘導コイル
5B、5B’ 他方側の誘導コイル
S1、S2、T1、T2、U1、U2 コイル端
21、22、23、24 交流電源
41 リング状熱間圧延線材の仮想中心線
42、43、44、45 磁界方向
Claims (2)
- 搬送されるリング状線材の周囲に誘導コイルにより交番磁界を発生させて、前記リング状線材を加熱するリング状線材の加熱装置であって、
リング状線材の周囲に発生させる交番磁界の方向が異なる少なくとも2つ以上の誘導コイルを、前記リング状線材の搬送方向に連設したことを特徴とするリング状線材の加熱装置。 - 搬送されるリング状線材の周囲に交番磁界を発生させて、前記リング状線材を誘導加熱する方法であって、
前記リング状線材に対して一定の磁界方向を有する第1の交番磁界中を通過させた後、前記第1の交番磁界とは磁界方向が異なる第2の交番磁界中を通過させて、前記リング状線材を誘導加熱することを特徴とするリング状線材の加熱方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003357077A JP2005120434A (ja) | 2003-10-16 | 2003-10-16 | リング状線材の加熱装置および加熱方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003357077A JP2005120434A (ja) | 2003-10-16 | 2003-10-16 | リング状線材の加熱装置および加熱方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005120434A true JP2005120434A (ja) | 2005-05-12 |
Family
ID=34614071
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003357077A Pending JP2005120434A (ja) | 2003-10-16 | 2003-10-16 | リング状線材の加熱装置および加熱方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005120434A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1988179A3 (en) * | 2007-04-13 | 2009-11-11 | Saet S.p.A. | Device and method for performing a localized induction hardening treatment on mechanical components, specifically thrust blocks for large-sized rolling bearings |
-
2003
- 2003-10-16 JP JP2003357077A patent/JP2005120434A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1988179A3 (en) * | 2007-04-13 | 2009-11-11 | Saet S.p.A. | Device and method for performing a localized induction hardening treatment on mechanical components, specifically thrust blocks for large-sized rolling bearings |
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