JP2005118827A - 熱間圧延線材の製造ライン - Google Patents

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Abstract

【要 約】
【課 題】 線材圧延ラインにおいてインラインで、迅速にかつ均一に所定の加熱温度に再加熱することが可能な加熱装置を配置した熱間圧延線材の製造ラインを提供する。
【解決手段】 リング状熱間圧延線材をその形状のままで再加熱可能な直接加熱方式の装置が巻取装置から集束装置に至る途中に配置され、集束装置により集束されたコイル状熱間圧延線材を冷却可能な徐冷手段が集束装置に連設されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、線材圧延ラインにおいて、インラインで熱間圧延線材の炭化物の球状化焼鈍または軟化焼鈍を行うことが可能な熱間圧延線材の製造ラインに関する。
熱間圧延された鋼線材は、一般に巻取装置により図8(a)、(b)に示す如くリング状に巻き取られ、この形状のまま搬送コンベアにより集束装置の設置位置に搬送され、図9(a)に示す如くコイル状に集束されて製造されている。図9(a)中、符号Dは、集束装置により集束されたコイル状熱間圧延線材Mのコイル径を示し、符号dは、線材の直径を示す。
このような過程で製造される熱間圧延線材は、一般に、仕上圧延機により所定の温度範囲、減面率で仕上圧延された後、水冷帯で所定温度に冷却され、引き続き、搬送コンベア上において所定の熱処理を受ける。例えば、搬送コンベア上においてリング状に巻き取られた熱間圧延線材には、放冷もしくは衝風、或いは冷却水により冷却する熱処理や、搬送コンベアを保熱カバーで覆って冷却速度を遅くする熱処理が施されている。
このような熱処理を線材圧延ラインで施された鋼線材の冷間加工性は、例えば、高圧縮率で冷間加工される部品に対しては必ずしも十分なものではない。そこで、冷間鍛造性に優れた熱間圧延線材を製造するには、その後、線材圧延ラインと別設されたオフライン熱処理設備に運び、コイル状熱間圧延線材Mに対して炭化物の球状化焼鈍または軟化焼鈍を行っていた。このため、効率が悪く、冷間鍛造性に優れた熱間圧延線材を効率的に製造できる線材圧延ラインが必要とされていた。
ところで、冷間鍛造性に優れた熱間圧延線材を線材圧延ラインで製造するには、仕上圧延され、その後水冷帯で所定温度にまで冷却されたリング状の熱間圧延線材を所定の加熱温度に再加熱してから緩冷却する必要がある。
ここで、搬送コンベア上を搬送されるリング状の熱間圧延線材の形状について説明する。巻取装置により巻き取られた線材形状は、代表例を図8(a)に例示した如く、巻取装置で1巻する毎に線材の位置が移送方向に所定量だけずれることにより形成される。例えば、巻取後の最初の2巻では、図8(b)に示す如く、1巻目においてL〜Lの線材により、LとL間が移送方向に所定量だけずれたリングが形成され、2巻目においてL〜Lの線材により、LとL間が移送方向にずれているリングが形成される。
図8(b)中、符号P1、、は、移送方向にずれているリング同士が交差し、重なっている部分である。
このように巻取装置により巻き取られた熱間圧延線材を、以下、リング状熱間圧延線材Lともいうが、リング状熱間圧延線材Lは、搬送コンベア上を搬送さているうえに、上述したとおり、リング同士が、重なっている部分を有しているので、均一に且つ迅速に再加熱することが困難である。
これに対して、熱処理の自由度を格段に拡大させた熱間圧延線材の熱処理ラインが特許文献1に示されている。特許文献1に記載の熱間圧延線材の熱処理ラインは、電気ヒータやラジアントチューブなどを有する保熱カバーで搬送コンベアを覆うことにより、リング状熱間圧延線材Lの冷却速度を遅くできるように構成されていると共に、コイル状熱間圧延線材Mを緩冷却することもできる構成とされている。
特開2000−345244号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の熱間圧延線材の熱処理ラインにおいて、リング状熱間圧延線材Lを所定の加熱温度に再加熱しようとすると、電気ヒータやラジアントチューブなどの輻射熱を用いているから、加熱温度に到達するまでに長時間かかるという問題があった。また、そのため、例えばC含有量が0.5mass%を超えるような高C鋼線材を熱処理しようとすると、線材表面に脱炭層が形成して表面近傍について所望の強度が確保できないという問題も生じる。
また、輻射熱によりリング状熱間圧延線材Lを間接加熱する加熱方式では、リング同士が重なっている部分を均一な温度に再加熱するのが困難であるという欠点があった。
また、特許文献1に記載の熱間圧延線材の熱処理ラインは、加熱時間に見合った長さの搬送コンベアが必要となるため、ラインが長大となるという問題もあった。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するものであり、線材圧延ラインにおいて、インラインで迅速にかつ均一に所定の加熱温度に再加熱することが可能な加熱装置を配置した熱間圧延線材の製造ラインを提供することを目的とする。
本発明に係る熱間圧延線材の製造ラインは、仕上圧延機とその下流側に、仕上圧延された熱間圧延線材を移送方向にずれの存在するリング状に巻き取る巻取装置と、移送方向にずれの存在するリング状熱間圧延線材を搬送する搬送装置と、移送方向にずれの存在するリング状熱間圧延線材をコイル状に集束する集束装置とがこの順に配置され、さらに、前記リング状熱間圧延線材をその形状のままで再加熱可能な直接加熱方式の加熱装置が前記巻取装置から前記集束装置に至る途中に配置され、前記集束装置により集束されたコイル状熱間圧延線材を冷却可能な徐冷手段が前記集束装置に連設されていることを特徴とする。
ここで、前記仕上圧延機と前記加熱装置との間に、仕上圧延された熱間圧延線材を冷却する冷却帯を有することが好ましい。
また本発明の熱間圧延線材の製造ラインは、前記加熱装置を、前記リング状熱間圧延線材の周囲に発生させる磁界方向が異なる少なくとも二つの誘導コイルを配置した誘導加熱方式の装置とするか、もしくは、リング状熱間圧延線材を挟んで、リング状熱間圧延線材に電流を流すことが可能な少なくとも一対の電極を配置した直接通電加熱方式の装置とすることが好ましい。
また本発明の熱間圧延線材の製造ラインは、前記徐冷手段を通過させるラインと、前記徐冷手段を通過させないラインとが切り替え可能に構成されていることが好ましい。
本発明によれば、線材圧延ラインにおいて、インラインで熱間圧延線材の炭化物の球状化焼鈍または軟化焼鈍を行うことができる。この結果、冷間鍛造性に優れた熱間圧延線材を効率よく製造することができる。
図1〜図3を用いて本発明の実施例の形態に係る熱間圧延線材の製造ラインについて説明する。この熱間圧延線材の製造ラインは、図1〜3に示すように、加熱装置5で再加熱した後、コイル状に集束し、さらに徐冷炉を通過させるラインと、加熱装置5を通過した熱間圧延線材をコイル状に集束した後、徐冷炉には装入しないラインとが切り替え可能に構成されている。
本発明の実施例の形態に係る熱間圧延線材の製造ラインは、仕上圧延機1とその下流側に、仕上圧延された熱間圧延線材を移送方向にずれの存在するリング状に巻き取る巻取装置3と、その形状の熱間圧延線材を搬送する搬送装置としての第1の搬送コンベア4と、リング状熱間圧延線材をコイル状に集束する第1の集束装置6とがこの順に配置されている。
図1〜図2中、符号Lは、リング状熱間圧延線材(図8参照)を示す。また、符号4Aは、巻取装置3から第1の集束装置6までの間に配置された搬送ローラを示し、第1の搬送コンベア4は上述した再加熱線材を搬送可能な搬送ローラ4Aを有する。リング状熱間圧延線材Lは、この第1の搬送コンベア4により搬送されながら加熱装置5により所定の加熱温度に再熱される。
また、図1〜図3中、符号M(M、M、M、M…M)は、コイル状熱間圧延線材を示す(図7(a)参照)。コイル状熱間圧延線材Mは、第1の集束装置6で集束されている途中の線材を示し、コイル状熱間圧延線材Mは、トラバース装置7により、第1の集束装置6の位置からトンネル型徐冷炉8の入側位置へ搬送された線材を示す。
徐冷手段としてのトンネル型徐冷炉8内では、コイル状熱間圧延線材M、M…が、搬送ローラ8Fにより入側から出側に到達するまでの間、徐冷されている。符号9は、トンネル型徐冷炉8内で所定の温度にまで冷却されたコイル状熱間圧延線材Mの取り出し室を示す。
ここで、符号4Bは、第1の集束装置6から第2の集束装置10までの間に配置された搬送ローラを示し、第2の搬送コンベア11は搬送ローラ4Bを有し、上述した非再加熱線材を搬送可能に構成されている。
上記、第2の集束装置10と、第2の搬送コンベア11は、図3(a)に示すライン切換コンベア12と共に使用され、トンネル型徐冷炉を通過させない非徐冷線材を通過させるラインを構成する。
上述した仕上圧延機1は、供給された中間素材に所望の減面率、所定の温度範囲内で仕上圧延を施すことが可能に構成された、複数のスタンドからなる線材4ロールミルとするのが好ましい。線材4ロールミルは、2つで一対のロールを二対、互いに圧下方向が直交するように複数のブロックに配置し、ブロック毎に圧下方向が45°ずらせてあって、このような線材用仕上圧延機では、圧下位置の調整により高寸法精度で線材の直径を変更することができる。
仕上圧延後の線材の寸法精度が悪い場合には、軟質化のための熱処理を行った後に、別のラインにて伸線を行って寸法調整を行う必要が生じることがあり、圧延と同一のラインにて再加熱、徐冷を行ったとしても、得られる線材コイルを最終製品とするには不利となり、インラインにて再加熱、徐冷を行うことのメリットが少なくなる。しかし、仕上圧延機が4ロール圧延機であれば、圧延後に高寸法精度の線材が得られ、後の伸線は省略できるので、インラインで再加熱、徐冷を行うことの効果が絶大となる。よって、仕上圧延機は4ロール圧延機であることが好ましい。巻取装置3は、仕上圧延され、所定温度にまで水冷された熱間圧延線材を移送方向にずれの存在するリング状に巻き取ることができるように構成されている。
上述した第1の搬送コンベア4の線材移送方向長さは、巻取装置3により移送方向にずれの存在するリング状に巻き取り、移送方向にずれの存在するリング状熱間圧延線材(単に、リング状熱間圧延線材ともいう)のまま、搬送しつつ、加熱装置5により所定の加熱温度の範囲に再加熱してから、第1の集束装置6により集束できるだけの長さとされている。なお、加熱装置5の出側から第1の集束装置6までの距離は必要最小限とするのが、加熱装置5により再加熱した所定の加熱温度の近傍で第1の集束装置6により集束してコイル状熱間圧延線材とすることができるので好ましい。
図3(a)、(b)中、符号7は、トラバース装置を示し、トラバース装置7は、第1の集束装置6により集束されたコイル状熱間圧延線材をその位置からトンネル型徐冷炉8の入側位置へ搬送することが可能な台車などを有する装置とされている。
ここで、本発明の実施例の形態に係る熱間圧延線材の製造ラインには、巻取装置3により巻き取ったリング状熱間圧延線材Lを再加熱可能な直接加熱方式の加熱装置5が巻取装置3から第1の集束装置6に至る途中に配置され、第1の集束装置6により集束されたコイル状熱間圧延線材Mを冷却可能な徐冷手段としてトンネル型徐冷炉8が第1の集束装置6に連設されている。上記の直接加熱方式の加熱装置5としては、発生する磁界方向が異なる少なくとも二つの誘導コイルを配置した誘導加熱方式の装置、あるいは、リング状熱間圧延線材を挟んで、リング状熱間圧延線材に電流を流すことが可能な少なくとも一対の電極を配置した直接通電加熱方式の装置とすることが好ましい。このような直接加熱方式の加熱装置を配置したラインとすることにより、所定の加熱温度にまでより短時間に、かつ加熱温度のリング周方向のバラツキも小さく、より均一に再加熱することができるようになり、ライン長を短縮できるからである。
以下に、発生する磁界方向が異なる二つの誘導コイルを配置した誘導加熱方式の加熱装置について例示する。図4は、図1に示す製造ラインに配置して好適な加熱装置の概略斜視図である。また、図5(a)は、図4に示す一方側の誘導コイル5Aの概略平面図であり、同図(b)は、そのX−X断面図である。同じく、図6(a)は、図4に示す他方側の誘導コイル5Bの概略平面図であり、同図(b)は、そのX−X断面図である。
図4中、符号5Aは一方側の誘導コイル、5Bは他方側の誘導コイル(5B1,5B2)を示し、また、符号S、S、T、T、U、Uはそれぞれの誘導コイルのコイル端を示す。なお、図5(a)、図6(a)に示す如く、一方側の誘導コイル5Aのコイル端S、Sは、交流電源21に接続され、他方側の誘導コイル5B(5B1,5B2)は、交流電源22に接続されている。
ここで、図5(a)、図6(a)中、符号42、43は、一方側の誘導コイル5Aが発生する磁界方向と他方側の誘導コイル5Bが発生する磁界方向をそれぞれ示す。
上記の線材の製造ラインに配置して好適な加熱装置は、図4に示す如く、移送方向に隣接して配置された一方側の誘導コイル5Aと、他方側の誘導コイル5B(5B1,5B2)を有する。この場合、移送方向上流側を一方側とし、ソレノイド型誘導コイル5Aを配置した。また、他方側には、一対のコの字状誘導コイル5B1、5B2をリング状熱間圧延線材Lの仮想中心線41を挟んで線対称に配置し、対称コの字状誘導コイル5Bとした。図4中、D’は、リング状熱間圧延線材Lの移送幅を示す。
ソレノイド型誘導コイル5Aは、導線を曲げてコイル内にリング状熱間圧延線材Lが通過可能なように成形したもので、図5(a)に示す如く、上下面で導線が移送方向に対して直角となるように巻いてある。従って、一方側のソレノイド型誘導コイル5Aがその内部に発生させる磁界方向42は、リング状熱間圧延線材Lの移送方向となる。
これに対して、他方側の誘導コイル5Bが発生させる磁界方向43は、リング状熱間圧延線材Lの周囲で、移送方向に対して90°となることを以下に説明する。
対称コの字状誘導コイル5Bを構成する一対のコイル5B1,5B2はそれぞれ、図4、図6に示す如く、導線がリング状熱間圧延線材Lに対して上方の面上で逐次、移送方向と直角な方向、移送方向、移送方向と直角な方向と折り曲げられた後、下方の面に向けて折り曲げられ、下方の面上で上記と同様、逐次、移送方向と直角な方向、移送方向、移送方向と直角な方向と折り曲げられ、さらに上記の折り曲げが繰り返され、リング状熱間圧延線材Lの移送方向には一部を、リング状熱間圧延線材Lの移送方向と直角な方向(移送幅方向)には、リング状熱間圧延線材Lの略半分を覆うように形成されたコイルであり、一対のコイル5B1,5B2によりリング状熱間圧延線材Lの移送幅全面を覆っている。
上述した一対のコの字状誘導コイル5B1、5B2は、図6(a)に示す如く、誘導コイル5B1のコイル端T、Tと誘導コイル5B2のコイル端U、Uがそれぞれ交流電源22に接続されている。そこで、導線が上方の面上で移送方向に対して平行な部分と導線が下方の面上で移送方向に対して平行な部分には、互いに逆向の交番電流が流れ、対称コの字状誘導コイル5Bが発生する磁界方向43は、リング状熱間圧延線材Lの上方および下方の面上で、移送方向に対して90°となる。
上述した誘導加熱方式の加熱装置の作用について、図10を用いて説明する。
図10(a)は、図4に示した加熱装置の誘導コイルへの電力供給方法を説明するグラフである。また、同図(b)は、図4に示した加熱装置の作用の説明図である。同図(c)は、同図(b)に用いたリング周方向位置を表す角度αの定義図である。
上記の加熱装置を用いた場合、リング状熱間圧延線材の加熱方法は、リング状熱間圧延線材Lを、二つの誘導コイル5A、5Bの隣接配置位置に順次搬送するに際し、図10(a)に示す如く、二つの誘導コイル5A、5Bを使用状態とし、交番磁界によって生起される誘導電流によりリング状熱間圧延線材Lを誘導加熱する。その際、図10(b)に示す如く、リング状熱間圧延線材Lには、二つの誘導コイル5A、5Bの発生する磁界方向が互いに異なる交番磁界によって、リング状熱間圧延線材Lのリング周方向にわたり、互いに補い合う誘導電流が生じる。この結果、この誘導電流によりリング状熱間圧延線材Lは、均一にかつ急速に再加熱される。
但し、図10(b)は、上述した誘導コイルの配置位置にリング状熱間圧延線材Lを搬送したときに、リング周方向位置に生起される、リング周方向単位長さ当たりの誘導電流量の分布を示す模式図であり、実線(イ)は、一方側の誘導コイル5Aによって生起されるリング周方向単位長さ当たりの誘導電流量を示し、破線(ロ)は、他方側の誘導コイル5Bによって生起されるリング周方向単位長さ当たりの誘導電流量を示す。2点鎖線(ハ)は、2つの誘導コイル5A、5Bによりそれぞれ生起された誘導電流の合計量を示す。
ここで、一方側のソレノイド型誘導コイル5Aの作用について詳述する。リング状熱間圧延線材Lに対して、上下面からレノイド型誘導コイル5Aにより磁界方向42の交番磁界が与えられると、これに対応する誘導電流(渦電流とも称され、この渦電流は、リング長手方向直角断面で見て、線材の円周方向を周回するように流れる)が生起されるが、渦電流の浸透深さに対して線材の直径が細い場合、線材の軸方向と磁界方向42が近いリング部分(図10(c)に示すリング周方向位置を表す角度α(α:リング周方向位置Qにおける外向き法線と移送方向とのなす角α=90°、270°…に近い部分)には誘導電流が多く流れるものの、線材の軸方向が磁界方向42に対してなす角度が90°である部分(すなわち、上記のリング周方向位置を表す角度α=0、180°、360°…の部分)には、誘導電流が生起されない。従って、ソレノイド型誘導コイル5Aを一つ用いただけでは、リング状熱間圧延線材Lを均一に再加熱することができないことがわかった。このため本実施形態では、一方側の誘導コイル5Aによって生起される誘導電流を他方側の誘導コイル5Bによって生起される誘導電流により補い、リング周方向全長にわたって発熱量を均一としたのである。
なお、誘導加熱方式の加熱装置における、誘導コイルの巻き数および誘導コイルに供給する電力は、加熱温度、加熱速度、線材の材質、線材の直径d、コイル径D等により適宜決めることができる。
上述した誘導加熱方式の加熱装置では、リング状熱間圧延線材Lを急速にかつ均一に再加熱することができ、従来のラジアントチューブあるいは電気ヒータなどを用いた間接加熱方式の加熱装置に比べて、加熱速度を極めて速くすることができるから、熱処理ライン長を短縮することができる。
また、本発明の製造ラインに配置して好適な直接加熱方式の加熱装置としては、図7に例示する直接通電加熱方式の加熱装置とすることもできる。
図7は、本発明に適用して好適な、リング状熱間圧延線材Lを挟んで、リング状熱間圧延線材Lに電流を流すことが可能な少なくとも一対の電極50を配置した直接通電加熱方式の加熱装置を示す概略構成図である。
この場合、6対の電極50は、リング状熱間圧延線材Lの移送方向に対して直角な方向のリング外縁を挟むように、リング状熱間圧延線材Lの移送方向複数箇所に配置され、各対の電極50は、並列に、各対の電極50に電気を供給する電源51に接続されている。各対の電極50に電気を供給する電源51は、直流もしくは交流とすることができる。
なお、リング状熱間圧延線材Lの電気抵抗が小さいので、電源51は大電流を流すことができるものとし、電極の材質はカーボンなどの材質とするのが好ましい。また、各対の電極50は、矢印52で示すように、リング状熱間圧延線材の移送方向に対して直角な方向に移動可能とするのが好ましい。このような構造とすることにより、リング状熱間圧延線材Lを再加熱するに際し、リング状熱間圧延線材Lと一対の電極50と間の接触抵抗を下げかつリング状熱間圧延線材Lの移送方向に対して直角な方向の外縁に引っかかってしまわない程度に適宜な押し付け力で押し付けることができるようになる。
電極50は、回転自在に支持されたローラ型電極とすることが望ましく、ローラ型カーボン電極とした場合、強度、寿命などの観点から直径は、100〜200mm、その高さは、リング状熱間圧延線材Lと電極とが常時接触することも勘案し、50〜100mmとするのが好ましい。上述した少なくとも一対の電極50は、リング状熱間圧延線材Lに対して移送方向と直角な方向の両側に配置したが、リング状熱間圧延線材Lに対して上下に配置することもできる。
リング状熱間圧延線材Lの移送方向位置に配置する電極対の数およびそれらに供給する電流は、加熱温度、加熱速度、線材の材質、線材の直径d、コイル径D等により、適宜決めることができる。
上述した直接通電加熱方式の装置によれば、リング状熱間圧延線材Lを再加熱するに際し、リング状熱間圧延線材Lを搬送しつつ、少なくとも一対の電極を、リング状熱間圧延線材Lに接触させて、リング状熱間圧延線材Lに適宜な電流を流し、リング状熱間圧延線材自体を直接通電加熱することができる。このため、所定の加熱温度にまで、より短時間にかつ加熱温度のリング周方向のバラツキが小さく、より均一に再加熱することができる。このような直接通電加熱方式の加熱装置は、従来のラジアントチューブあるいは電気ヒータなどによる間接加熱方式の装置に比べて、加熱速度を極めて速くすることができるから、製造ラインの長さを短くすることができる。
またトンネル型徐冷炉8は、入口、出口の遮蔽扉8A、8Bと、上、下の複数箇所に設置されたラジアントチューブ8C、8Eと、回転可能な複数の循環ファン8Dおよび複数の搬送ローラ8Fを有するものとし、炉温を検出し、ラジアントチューブ内での燃焼制御を行うことが好ましい。このようなトンネル型徐冷却炉8を配置した熱処理ラインとすることにより、第1の集束装置6によりコイル状熱間圧延線材とした時点からトンネル型徐冷炉8を出るまでの間における、線材の冷却速度を50℃/hr以下の冷却速度に確実に制御することができる。
なお、本発明では、トンネル型徐冷炉8に代わり、図3(c)に例示するような、複数の搬送ローラ8Fにより搬送されるポット型炉80を用いることもできる。この場合には、コイル状熱間圧延線材を、ポット型炉80で覆って、徐冷する。
以上説明した実施例の形態に係る熱間圧延線材の製造ラインでは、冷間鍛造性に優れた熱間圧延線材を製造するに際して、インラインで軟化焼鈍処理あるいは炭化物の球状化焼鈍処理を行うことができる。
上述した熱間圧延線材の製造ラインは、トンネル型徐冷炉を通過させる徐冷線材を通過させるラインと、トンネル型徐冷炉を通過させない非徐冷線材を通過させるラインとが切り替え可能に構成されているが、このようなラインとすると、同じラインにより、非徐冷・コイル状熱間圧延線材を製造することができるのでより好ましい。
徐冷を行わない非徐冷線材を通過させる場合には、例えば、図3(a)に示すような、加熱装置5の出側に設置した第1の集束装置6の開口を塞ぐことができるライン切換コンベア12を使用状態とする。ライン切換コンベア12は、複数の搬送ローラを有し、使用状態で第1の搬送コンベア4と第2の搬送コンベア11とをライン切換コンベア12を介して繋げることができる。このようにして切り換えたラインでは、仕上圧延され、巻取装置3でリング状に巻き取られた熱間圧延線材を再加熱後、徐冷せずに集束装置10を用いて、コイル状に集束することができる。また、徐冷だけでなく再加熱も必要ない線材を製造する場合には加熱装置6の稼動を停止すればよい。再加熱および徐冷を行わず、この製造ラインを経た非再加熱・コイル状熱間圧延線材は、普通、特別な加熱熱処理を施さず、冷間加工をあまり受けない部品に適用される。
一方、ライン切換コンベア12をオフライン位置に退避させて不使用状態とした場合には、第1の集束装置6が使用状態となり、このライン構成では、上述したとおり、加熱装置5で再加熱を行い、さらに、トンネル型徐冷炉8を通過させることによりインラインで軟化焼鈍処理あるいは炭化物の球状化焼鈍処理を行うことができる。このような熱処理をインラインで施した再加熱線材は、例えば、高圧縮率で冷間加工される部品に適用される。
本発明の線材の製造ラインにおいては、図11に示すように仕上圧延機1と加熱装置5との間に、仕上圧延された熱間圧延材を冷却する冷却帯2を設けることが好ましい(図11は仕上圧延機出側に冷却帯2を設けた例)。
本発明者らは、仕上圧延後の鋼線材中の炭化物を球状化させ、線材の加工性を向上するためには、圧延後の線材を一旦Ar変態点以下にまで下げ、炭化物(セメンタイト)を十分に析出させ、その後にAc点以上に加熱して炭化物の一部を溶解させ、次いで徐冷を行うことで、残部炭化物を核として再加熱時に固溶したCを再析出させることが非常に有利であることを見出している。したがって、仕上圧延機1と加熱装置5との間に冷却帯2を設けることが、冷間鍛造性等の加工性が良好な線材を得る上で非常に有利となる。また、本発明のように圧延ラインの仕上圧延機出側においてこの処理を行う場合には、再加熱を行う加熱装置が、誘導加熱または通電加熱のような直接加熱方式で急速加熱を行うことが可能な加熱装置であることも非常に重要となる。
なお、冷却帯としては水スプレーによるもの、あるいは、水槽内に線材を通過させるものといった水冷帯や、プロアによる風冷を行う空冷帯が適用できる。また、図11では、仕上圧延機1と巻取装置3との間に冷却帯2を設けているが、巻取装置3と加熱装置5との間に冷却帯が設けられていてもよい。
図11に示す線材の製造ラインを用いて、規格JIS SCM415(C:0.15mass%、Si:0.20mass%、Mn:0.30mass%、P:0.01mass%、S:0.01mass%、Cr:1.1mass%、Mo:0.18mass%、残部Feおよび不可避的不純物)を直径4.0mmφに仕上圧延した後、冷却帯2にて冷却し、ついで、巻取装置3でコイル径Dが1000mm、移送方向のずれ量が10mmのリング状熱間圧延線材とし、これを加熱装置5を用いて加熱した後、集束装置6により集束コイルとし、次いでトンネル型徐冷炉8内で徐冷した。徐冷炉における冷却速度は0.03℃/sで冷却停止温度(トンネル型徐冷炉8出側における集束コイル温度)は600℃であった。
ここで、加熱装置5は、誘導加熱装置、通電加熱装置、電気ヒータによる加熱炉のいずれかを用い、加熱装置内のリング状熱間圧延線材の通過時間を15秒(加熱装置を通過する単位時間当たりの質量で30トン/時間)とした。加熱温度の目標は800℃である。
誘導加熱装置は、誘導加熱コイル形状:ソレノイド型誘導コイルとコの字状誘導コイルを直列に配置(図4参照)とし、供給電力各誘導コイルに800kW、合計1600kWの供給電力とした。加熱装置のライン方向全長は8mである。
通電加熱装置は、リング状熱間圧延線材Lをライン側方両側から10対のローラ型電極により適宜な押し付け力で挟持しつつ通電した(図7参照)。電源の電圧は30Vとし、合計で10kAの電流を流した。最上流の電極から最下流の電極までの移送方向距離は8mである。
電気ヒータによる加熱炉は、リング状熱間圧延線材を移送方向8mの長さにわたって取り囲むように配置した。炉温を900℃に設定した。
加熱装置の出側で、放射温度計によりリング状熱間圧延線材の温度を測定し、リング状熱間圧延線材の周方向温度における温度のバラツキを測定した。表1にはこの結果についても示す。
また、得られた線材から、直径4.0mmφ、長さ6.0mmの冷間鍛造試験片を切り出した。冷間鍛造試験は、室温で種々の圧縮率についてそれぞれ30個の試験片を用いて長さ方向に圧縮加工を行って圧縮割れの有無を調査し、各圧縮率での割れの発生率と圧縮率の関係をグラフにプロットし、試験片の50%(15個)が割れる圧縮率をもって冷間鍛造性評価値とした。この値が大きいほど冷間鍛造性に優れる。表1には、冷間鍛造性評価値についても併記する。
Figure 2005118827
表1からわかるように、加熱装置5として誘導加熱装置あるいは通電加熱装置を用いた本発明例は、高い加熱速度が得られており、目標温度800±10℃の範囲に加熱することができた。また、得られた線材の冷間鍛造性についても優れた特性を示していた。
これに対し、加熱装置5として電気ヒータによる加熱炉を用いた場合には、加熱速度が低く、目標温度の800℃まで加熱することができず、得られた線材の冷間鍛造性は低いものであった。No.5の製造条件では、加熱装置の昇温速度が遅いため、仕上圧延後の線材に対して炭化物を十分に球状化できる程度の温度にまで再加熱できなかったことが原因と考えれれる。また、No.6の条件では、冷却後の線材に対して炭化物を十分に球状化できる程度の温度にまで再加熱できなかったことが原因と考えられる。さらにNo.7の条件では、加熱装置5において高い温度を確保するために仕上圧延終了温度を高め(770℃)に設定し、さらに圧延後の冷却を行わなかった例であるが、この場合には仕上圧延後にAr点(739℃)以下までの冷却がなされないので、冷間鍛造性が悪いものとなった。
本発明の実施例の形態に係る熱間圧延線材の製造ラインの説明図である。 図1に示す製造ラインの要部を示す縦断面模式図である。 (a)は、図1に示す製造ラインに配置された徐冷炉8の概略図であり、(b)はその構成図である。(c)は、トンネル型徐冷炉8に代わる搬送ローラ8Fで搬送されるポット型炉80の模式図である。 図1に示す製造ラインに配置して好適な加熱装置の概略斜視図である。 (a)は、図4に示す一方側の誘導コイルの概略平面図であり、(b)は、そのX−X断面図である。 (a)は、図4に示す他方側の誘導コイルの概略平面図であり、(b)は、そのX−X断面図である。 本発明に適用して好適な他の加熱装置を示す概略構成図である。 (a)は、移送方向遅れの存在するリング状熱間圧延線材Lの形状を示す平面図であり、(b)はその説明図である。 コイル状熱間圧延線材Mの形状を示す正面図である。 図4に示した加熱装置の作用を説明する模式図である。 本発明の他の実施例の形態に係る熱間圧延線材の製造ラインの説明図である。
符号の説明
L 移送方向遅れの存在するリング状熱間圧延線材
M(M、M、M、M…M) コイル状熱間圧延線材
D コイル径
d 線材の直径
D’ リング状熱間圧延線材Lの移送幅
1 仕上圧延機
2 冷却帯
3 巻取装置
4、11 第1、第2の搬送コンベア(搬送装置)
4A 第1の搬送コンベア4の搬送ローラ
4B 第2の搬送コンベア11の搬送ローラ
12 搬送ローラを有するライン切換コンベア
5 加熱装置
5A ソレノイド型誘導コイル
5B 対称コの字状誘導コイル
、S、T、T、U、Uコイル端
6、10 第1、第2の集束装置
7 トラバース装置
8 トンネル型徐冷炉(徐冷手段)
8A、8B 入口、出口の遮蔽扉
8C、8E 上、下のラジアントチューブ
8D 循環ファン
8F 搬送ローラ
80 ポット型炉(徐冷手段)
9 取り出し室
21、22 交流電源
・ リング状熱間圧延線材の仮想中心線
・ 電極
・ 電源
・ 電極移動方向

Claims (4)

  1. 仕上圧延機とその下流に、仕上圧延された熱間圧延線材を移送方向にずれの存在するリング状に巻き取る巻取装置と、移送方向にずれの存在するリング状熱間圧延線材を移送する搬送コンベアと、移送方向にずれの存在するリング状熱間圧延線材をコイル状に集束する集束装置とがこの順に配置され、さらに、前記リング状熱間圧延線材をその形状のままで再加熱可能な直接加熱方式の加熱装置が前記巻取装置から前記集束装置に至る途中に配置され、前記集束装置により集束されたコイル状熱間圧延線材を冷却可能な徐冷手段が前記集束装置に連設されていることを特徴とする熱間圧延線材の製造ライン。
  2. 前記仕上圧延機と前記加熱装置との間に、仕上圧延された熱間圧延線材を冷却する冷却帯を有することを特徴とする請求項1記載の熱間圧延線材の製造ライン。
  3. 前記加熱装置を、前記リング状熱間圧延線材の周囲に発生させる磁界方向が異なる少なくとも二つの誘導コイルを配置した誘導加熱方式の装置とするか、もしくは前記リング状熱間圧延線材を挟んで、リング状熱間圧延線材に電流を流すことが可能な少なくとも一対の電極を配置した直接通電加熱方式の装置とすることを特徴とする請求項1または2に記載の熱間圧延線材の製造ライン。
  4. 前記徐冷手段を通過させるラインと、前記徐冷手段を通過させないラインとが切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱間圧延線材の製造ライン。
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