JP2005119014A - 記録用紙及びそれを用いた画像記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 インクジェット記録方式及び電子写真記録方式に共用でき、インクジェット記録方式によって印刷した場合に、インクの乾燥が速く、得られた画像が高画像濃度で、色間にじみ及びフェザリングが少なく、かつ裏写り濃度が低い、表面に特殊なコーティングを施していない記録用紙、及びそれを用いた画像記録方法を提供することである。
【解決手段】 パルプ繊維と填料とを主体に構成される原紙の表面に、水溶性高分子と、下記(1)〜(3)で示される成分のうちから選択される1つと、を少なくとも含み、かつ顔料を実質的に含まない処理液を塗布してなることを特徴とする記録用紙である。
(1)二価以上の金属と結合したアミノ酸キレート物質
(2)pHが7の水に不溶なキトサン及び複素カルボン酸
(3)水溶性単量体アミノ酸
【選択図】 なし

Description

本発明は、記録用紙、及びそれを用いた画像記録方法に関するものであり、詳細には、表面に特殊なコーティングを施していない、いわゆる普通紙と呼ばれる記録用紙、及びそれを用いたインクジェット方式及び電子写真方式の画像記録方法に関する。
インクジェット記録方式はカラー化が容易であり、また、消費エネルギーが少なく、記録時の騒音も低く、さらにプリンタの製造コストを低く抑えることができるという特徴を有する。このような特徴を有するため、近年では広くオフィスでも使用され、レーザープリンターや複写機などの電子写真記録方式の機器と併用される機会も増えてきている。
前記インクジェット記録方式には、いわゆる普通紙、インクジェット用コート紙、及び光沢紙、白色フィルム、透明フィルムといった被記録媒体(記録用紙)が用いられる。特に、オフィス等でレーザープリンターや複写機と併用される場合には、これらの電子写真記録方式の機器を用いた画像形成も容易で、価格が安く入手の容易な普通紙に印刷する機会が最も多い。したがって、インクジェット記録方式では普通紙に対する記録適性を向上させることが極めて重要である。しかしながら、これまでのインクジェット記録方式では、普通紙に対して印刷する際に次のような問題点があった。
(1)紙の繊維に沿ってインクが流れ出す、いわゆるフェザリングという現象が発生する。このフェザリングによって、特に文字画質を著しく損なう。
(2)いわゆる普通紙は、一般に表面にサイズ(撥水性)を効かせている。このためインクの吸収が遅くなり、異なる色同士が接する部分において、いわゆる色間にじみ(Inter Color Breed:ICB)が発生する。
(3)紙表面に付与されたサイズ(撥水性)によりインクの吸収性が遅いため、印字された文書を重ねた場合、印字面と接する部分が汚れてしまう。
(4)インク中の色材が普通紙の表面に留まりにくく、特にカラーの発色性が十分ではない。
(5)インク中の色材が用紙内部まで浸透するため、印字画像が用紙裏面(印字された面と反対側の面)から透けて見えてしまい、両面印字ができない。
特に、近年のインクジェットプリンターのオフィス市場への進出に伴い、インクジェットプリンターもレーザープリンター並みの高速化を目指しているが、インク吸収性(乾燥性)の向上と、画質向上、両面印字適性との両立は大変困難であった。
これらの問題点を改善するために、カチオンポリマー、多価金属塩などのカチオン性物質で原紙を表面処理した記録用紙を用いて、インク成分の凝集・沈降を促し、画質改善する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。それらの中でも特に、インク中にカチオン性物質と反応して高粘度化する物質を添加して、インク着弾時に色材の不均一な流れ出しを抑制する方法は、画質向上には有用ではあるが、これらのカチオン性物質をそのまま原紙表面に処理する方法では、イオン性の強い物質での表面処理であるため周囲の環境変動に過剰な反応を示し、記録用紙の電気抵抗率が低下してしまう。したがって、電子写真方式を用いたレーザープリンター、コピー機等のトナー転写性に悪影響を及ぼす懸念があるため電子写真記録方式への使用は適さず、オフィスではプリンター毎に異なる記録用紙を用意する必要が発生する。
また、表面にコート層(塗工層)を有し、そのコート層が金属−アミノ酸錯体をドープした顔料とバインダーとで形成されたインクジェット用コート紙が提案されているが(例えば、特許文献5参照)、アミノ酸錯体の状態ではカチオン性の金属との錯体であっても金属イオンを放出することは無く、また、この処方は普通紙のような特殊なコーティングが施されていないものについては適用することができない(特許文献5参照)。
また、古くから染料定着性のよい天然カチオン性高分子としてキトサンが使用されてきた。しかしながらキトサンは一般に分子量が高く、顔料インク着弾時の電解質濃度の上昇を図るには溶出速度、単位面積あたりのモル当量が小さく、単独では顔料インクに対する画質向上効果は乏しい。また、キトサンもしくはキトサン塩をカチオン性顔料と同時に用紙表面処理して、顔料、キトサンの双方で染料を捕捉する方法も提案されているが(例えば、特許文献6、7参照)、こちらも顔料インクに対する画質向上効果は乏しく、更に顔料を表面処理に使用することで普通紙としての風合いを損なったり、電子写真記録方式に適用した場合に感光体を傷つけることになるため、好ましくない。
さらに、印字時の記録用紙変形制御、耐オゾンガス性のために、記録用紙表面へのアミノ酸付与が提案されているが(例えば、特許文献8〜10参照)、単量体アミノ酸単体では普通紙に対して表面から付与したとしても、記録用紙内部へ浸透してしまい、画質向上に対して効果を有さないという問題があった。
特開平10−166713号公報 特開平7−257017号公報 特開平8−216498号公報 特開平10−100531号公報 特開平10−129113号公報 特開昭63−203896号公報 特開平5−169789号公報 特開平7−276791号公報 特開平8−295075号公報 特開2003−11492号公報
本発明は、前記問題点を解決することを課題とする。
すなわち、本発明は、インクジェット記録方式及び電子写真記録方式に共用でき、インクジェット記録方式によって印刷した場合に、インクの乾燥が速く、得られた画像が高画像濃度で、色間にじみ及びフェザリングが少なく、かつ裏写り濃度が低い、表面に特殊なコーティングを施していない記録用紙、及びそれを用いた画像記録方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題について鋭意研究した結果、以下の本発明によりこれらの課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、
<1> パルプ繊維と填料とを主体に構成される原紙の表面に、水溶性高分子と、下記(1)〜(3)で示される成分のうちから選択される1つと、を少なくとも含み、かつ顔料を実質的に含まない処理液を塗布してなることを特徴とする記録用紙である。
(1)二価以上の金属と結合したアミノ酸キレート物質
(2)pHが7の水に不溶なキトサン及び複素カルボン酸
(3)水溶性単量体アミノ酸
<2> 前記処理液中のアミノ酸キレート物質と前記水溶性高分子との固形分の質量比(アミノ酸キレート物質/水溶性高分子)が、1/9〜9/1の範囲であり、前記アミノ酸キレート物質の原紙表面への処理量が、固形分として0.1〜5g/m2の範囲であることを特徴とする<1>に記載の記録用紙である。
<3> 前記アミノ酸キレート物質を構成するアミノ酸が、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸であることを特徴とする<1>に記載の記録用紙である。
<4> 前記二価以上の金属が、ベリリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、及びラジウムのうちから選択される1種以上であることを特徴とする<1>に記載の記録用紙である。
<5> 前記処理液中のキトサンと複素カルボン酸との固形分の質量比(キトサン/複素カルボン酸)が、1/5〜5/1の範囲であり、前記キトサン及び複素カルボン酸の原紙表面への各処理量が、それぞれ固形分として0.1〜5g/m2の範囲であり、かつ前記キトサン及び複素カルボン酸の原紙表面への全処理量が、固形分として0.6〜5g/m2の範囲であることを特徴とする<1>に記載の記録用紙である。
<6> 前記キトサンの脱アセチル化度が、80%以上であることを特徴とする<1>に記載の記録用紙である。
<7> 前記複素カルボン酸の溶解度が、5g以上であることを特徴とする<1>に記載の記録用紙である。
<8> 前記複素カルボン酸が、クマリン酸、フランカルボン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロールカルボン酸、及びピリジンペンタカルボン酸のうちから選択される1種以上であることを特徴とする<1>に記載の記録用紙である。
<9> 前記水溶性単量体アミノ酸の溶解度が、5g以上であることを特徴とする<1>に記載の記録用紙である。
<10> 前記処理液中の水溶性単量体アミノ酸と水溶性高分子と固形分の質量比(水溶性単量体アミノ酸/水溶性高分子)が、3/7〜7/3の範囲であり、前記水溶性単量体アミノ酸及び水溶性高分子の原紙表面への各処理量が、それぞれ固形分として0.1〜3g/m2の範囲であり、かつ前記水溶性単量体アミノ酸及び水溶性高分子の原紙表面への全処理量が、固形分として5g/m2以下であることを特徴とする<1>に記載の記録用紙である。
<11> 前記水溶性単量体アミノ酸が、グリシン、プロリン、アラニン、及びシステインのうちから選ばれる1種類以上であることを特徴とする<1>に記載の記録用紙である。
<12> 無色もしくは淡色の前処理液を記録用紙表面に付与した後、少なくとも、水及び/または水溶性の有機溶媒と、親水性色材とを含有するインクの液滴を記録用紙表面へ吐出させ、該記録用紙に画像を記録するインクジェット記録方式の画像記録方法であって、
前記記録用紙が、<1>に記載の記録用紙であることを特徴とする画像記録方法である。
<13> 前記前処理液のpHが、4以下であることを特徴とする<12>に記載の画像記録方法である。
<14> 前記前処理液が、複素カルボン酸を含有することを特徴とする<12>に記載の画像記録方法である。
<15> 前記複素カルボン酸が、クマリン酸、フランカルボン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロールカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸のうちから選択される1種以上であることを特徴とする<14>に記載の記録方法である。
<16> 前記インクが、親水性部分と疎水性部分とを有し、該親水性部分の親水基がカルボキシル基である水溶性高分子を含有することを特徴とする<12>に記載の記録方法である。
<17> 少なくとも、水及び/または水溶性の有機溶媒と、親水性色材とを含有するインクの液滴を記録用紙表面へ吐出させ、該記録用紙に画像を記録するインクジェット記録方式の画像記録方法であって、
前記記録用紙が、<1>に記載の記録用紙であることを特徴とする画像記録方法である。
<18> 静電潜像担持体表面を帯電する帯電工程と、該静電潜像担持体表面を露光し静電潜像を形成する露光工程と、該静電潜像担持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像剤を用いて現像し、トナー画像を形成する現像工程と、該トナー画像を記録用紙表面に転写する転写工程と、該記録用紙表面のトナー画像を定着する定着工程と、を含む電子写真方式の画像記録方法であって、
前記記録用紙が、<1>に記載の記録用紙であることを特徴とする画像記録方法である。
本発明によれば、インクジェット記録方式及び電子写真記録方式に共用でき、インクジェット記録方式によって印刷した場合に、インクの乾燥が速く、得られた画像が高画像濃度で、色間にじみ及びフェザリングが少なく、かつ裏写り濃度が低く、電子写真記録方式によって印刷した場合に、転写不良が発生しない記録用紙、及びそれを用いた画像記録方法を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<記録用紙>
本発明の記録用紙は、パルプ繊維と填料とを主体に構成される原紙の表面に、水溶性高分子と、下記(1)〜(3)で示される成分のうちから選択される1つと、を少なくとも含み、かつ顔料を実質的に含まない処理液を塗布してなることを特徴とする。
(1)二価以上の金属と結合したアミノ酸キレート物質
(2)pHが7の水に不溶なキトサン及び複素カルボン酸
(3)水溶性単量体アミノ酸
上記(1)〜(3)の成分を各々含む前記処理液を塗布してなる記録用紙を、それぞれ本発明の第1〜第3の記録用紙とし、以下個々に説明する。
(第1の記録用紙)
本発明の第1の記録用紙は、前記原紙表面に、二価以上の金属と結合したアミノ酸キレート物質と、水溶性高分子とを少なくとも含み、顔料を実質的に含まない処理液を塗布してなることを特徴とする。
原紙表面に二価以上の金属と結合したアミノ酸キレート物質と、水溶性高分子とを含ませることにより、高湿環境下においても前記金属がイオン化することなく保持され、電気抵抗率(表面抵抗率、体積抵抗率)を過剰に下げることが無いため、電子写真用の記録用紙として問題なく使用することができる。
また、後述するインクジェット記録方式の画像形成方法によって前処理液を吐出した後にインクを用いて印刷した場合に、インクの乾燥が速く、得られた画像が高画像濃度で、色間にじみ及びフェザリングが少なく、かつ裏写り濃度が低い記録用紙が得られる。
これは、記録用紙表面に存在する金属と結合したアミノ酸キレート物質の保護構造が、低pHの前処理液によって崩され前記金属がイオンとして放出されるため、インク着弾時にカチオン(金属イオン)とインク色材表面及び/またはインク成分のアニオン性基とが錯体を形成し、不溶・高分子化して記録用紙表面に捕捉されるものであり、特に、高浸透性インクを用いた場合においては、色間にじみやフェザリングを効果的に防止して、より高画質な画像が得られる働きが顕著になる。
本発明においては、前記錯体形成が染料インクに対しても顔料インクに対しても同様に起こるため、インクの着色材料を問わず、前記効果を得ることができる。
なお、前記処理液における「顔料を実質的に含まない」とは、表面処理された本発明の記録用紙が、いわゆるコート紙のような表面に顔料を含む塗工層を有していない普通紙であることを意味する。すなわち、記録用紙表面に顔料を含む塗工層を有するコート紙は、電子写真用の記録用紙としては、コストの面や、感光体への傷や紙粉の影響等から本発明では好ましくない。この点は後述する本発明の第2、第3の記録用紙も同様である。
このように本発明の第1の記録用紙を用いれば、インクジェット用の記録用紙として高画質な画像が得られると共に、電子写真用の普通紙として安定した画像を長期にわたって得ることができる。
次に、本発明の記録用紙に用いられる原紙について説明する。
本発明の記録用紙に用いられる原紙は、パルプ繊維と填量とを主体に含む。パルプ繊維としては、化学パルプ、具体的には広葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等の他、木材及び綿、麻、じん皮等の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプ等が好ましく挙げられる。
また、木材やチップを機械的にパルプ化したグランドウッドパルプ、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、及びチップをやや軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ等も使用できる。これらはバージンパルプのみで使用してもよいし、必要に応じて古紙パルプを加えてもよい。
特に前記バージンパルプとしては、塩素ガスを使用せず二酸化塩素を使用する漂白方法(Elementally Chrorine Free:ECF)や、塩素化合物を一切使用せずにオゾン/過酸化水素等を主に使用して漂白する方法(Total Chlorine Free:TCF)で漂白処理されたものであることが好ましい。
また、前記古紙パルプの原料としては、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙などの上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙;を配合することができる。
本発明に用いられる原紙において使用する古紙パルプは、前記古紙原料を、オゾン漂白処理または過酸化水素漂白処理の少なくとも一方で処理して得られたものであることが好ましい。また、より白色度の高い記録用紙を得るという観点から、前記漂白処理によって得られた古紙パルプの配合率を50〜100質量%の範囲とすることが好ましい。さらに資源の再利用という観点から、前記古紙パルプの配合率を70〜100質量%の範囲とすることがより好ましい。
前記オゾン漂白処理は、上質紙に通常含まれている蛍光染料等を分解する作用があり、前記過酸化水素漂白処理は、脱墨処理時に使用されるアルカリによる黄変を防ぐ作用がある。
前記古紙パルプは、オゾン漂白処理または過酸化水素漂白処理の二つの処理を組み合わせることによって、古紙の脱墨を容易にするだけでなくパルプの白色度もより向上させることができる。また、パルプ中の残留塩素化合物を分解・除去する作用もあるため、塩素漂白されたパルプを使用した古紙の有機ハロゲン化合物含有量低減において多大な効果を得ることができる。
また、本発明に用いられる原紙には、パルプ繊維に加えて、不透明度、白さ、及び表面性を調整するため填料が添加される。また、記録用紙中のハロゲン量を低減したい場合には、ハロゲンを含まない填料を使用することが好ましい。
前記填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の無機顔料、及び、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、キトサン粒子、セルロース粒子、ポリアミノ酸粒子、尿素樹脂、等の有機顔料を挙げることができる。また、原紙に古紙パルプを配合する場合には、古紙パルプ原料に含まれる灰分を予め推定して添加量を調整する必要がある。
前記填量の配合量は、特に制限されないが、前記パルプ繊維100質量部に対して、1〜80質量部の範囲であることが好ましく、1〜50質量部の範囲であることがより好ましい。
既述のように、本発明の第1の記録用紙は、表面に二価以上の金属と結合したアミノ酸キレート物質と水溶性高分子とを含有することを特徴とする。
上記アミノ酸キレート物質を構成するアミノ酸としては、アニオン性官能基を2つ以上持っていて、金属とキレート形成できるものであれば特には限定されないが、その中でもL−グルタミン酸、D−グルタミン酸、DL−グルタミン酸、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、DL−アスパラギン酸は分子量が小さく、画質向上効果が高いため特に好ましい。
また、キレート形成する金属としては、二価以上の金属であれば特に制限されないが、典型金属元素がよい。例を挙げると、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、アルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、カドミウム、インジウム、錫、アンチモン、水銀、タリウム、鉛、ビスマスなどが挙げられ、好ましくはアルカリ土類金属であるベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムが良い。これらの金属とのキレートは、記録用紙表面において安定性が高く、前記前処理液が着弾した際には速やかにキレートが崩れ金属イオンを放出しやすく画質向上効果が高いため、特に好ましい。
また、前記アミノ酸キレート物質は、水溶性高分子とともに処理液(サイズプレス液)によって、原紙表面にサイズプレス処理を施す方法等により、原紙の表面に塗布され含有せしめられることが好ましい。
前記水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、カチオン変性セルロース等のセルロース誘導体類;カードラン、ポリビニールアルコール(PVA)、カチオン変性ポリビニールアルコール等のPVAおよびその誘導体類;カチオン化デンプン、酸化デンプン、アニオン化デンプン、疎水基導入デンプンなどの澱粉類;ポリアクリル酸などの吸水性の高い樹脂類;等が挙げられる。
前記処理液中のアミノ酸キレート物質と前記水溶性高分子との固形分の質量比(アミノ酸キレート物質/水溶性高分子)は、1/9〜9/1の範囲であることが好ましく、3/7〜7/3の範囲であることがより好ましい。
前記アミノ酸キレート物質の比率が1/9より少ないと、インクの着弾時に十分な錯体形成が起こらず記録用紙表面に捕捉され難くなる場合がある。また、比率が9/1より多いと、水溶性高分子による物理的な色材捕捉効果が低下し、画質低下となる場合がある。
前記処理液は、サイズプレス処理の他、シムサイズ、ゲートロール、ロールコーター、バーコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、ブレードコーター等の通常使用されている塗工手段によって、原紙の表面に塗布することができる。アミノ酸キレート物質及び水溶性高分子を塗布された原紙は乾燥工程を経て、本発明の第1の記録用紙を得ることができる。
本発明において、アミノ酸キレート物質の原紙表面への処理量としては、固形分として0.1〜5g/m2の範囲であることが好ましく、0.5〜3g/m2の範囲であることがより好ましい。処理量がアミノ酸キレート物質の固形分として0.1g/m2より少ないと、インク着弾時のインク成分への溶出量が少ないため、結果として画質の低下、具体的には濃度低下、フェザリングの悪化、ICBの悪化、色再現性の悪化となる場合がある。また、前記処理量が5g/m2を越えると、いわゆる普通紙としての風合いを損なう場合がある。
本発明の第1の記録用紙のサイズ度は、バインダーの量、種類のみによっても必要な値に調整することができる。しかし、それだけではサイズ度の調整が十分でない場合には、さらに、表面サイズ剤を使用してもよい。このような表面サイズ剤としてはロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤、澱粉、ポリビニルアルコール等を使用することができる。また、抄紙工程中のスラリー調製段階で内添サイズ剤を配合し、予めサイズ度を調整してもよい。なお、記録用紙中のハロゲン量を低減したい場合には、ハロゲンを含まない内添サイズ剤や表面サイズ剤を使用することが好ましい。具体的には、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等を使用することができる。さらにサイズ剤と繊維の定着剤とを組み合わせて使用することもできる。この場合には、定着剤として硫酸アルミニウム、カチオン化澱粉等を使用することができる。また、記録用紙の保存性を向上させる観点からは、中性サイズ剤を使用することが好ましい。サイズ度はサイズ剤の添加量によって調整する。
本発明に用いられる記録用紙は、そのステキヒトサイズ度が10〜60秒の範囲であることが好ましく、15〜30秒の範囲であることがより好ましい。前記ステキヒトサイズ度が10秒未満であると、インクジェット記録方式により印刷する場合、フェザリングが悪化し、細かい文字が判別不能になってしまったり、バーコード等を印字した場合に読み取り不可能となったりして実用性を損なう場合がある。一方、前記ステキヒトサイズ度が60秒を超えると、インクの浸透が遅くなるため色間にじみが発生しカラー画質が悪化すると同時に、インク乾燥性が悪化して高速印字時に用紙の裏面汚れが発生する場合がある。
なお、前記ステキヒトサイズ度とは、JIS−P−8111:1998に規定する標準環境(温度23℃、相対湿度50%RH)において測定したJIS−P−8122:1976にいうステキヒトサイズ度である。
本発明の第1の記録用紙は、インクジェット記録方式により印字する以外に、電子写真記録方式により画像形成するためにも用いることができる。この場合、トナー転写性を良好にし、粒状性を向上させる観点から、記録用紙の平滑度が20〜100秒以下の範囲であることが好ましく、70〜100秒の範囲であることがより好ましい。平滑度が20秒未満であると、粒状性が悪化する場合がある。また、平滑度が100秒を超えると、高い平滑度を得るために製造の際、ウェットの状態で高圧プレスすることとなり、その結果として用紙の不透明性が下がってしまったり、インクジェット印字における印字後カールが大きくなる場合がある。
なお、前記平滑度はJIS−P−8119:1998に準拠して測定されたものを意味する。
また、本発明の第1の記録用紙は、電子写真記録方式による画像形成に際して、画質として雲状の班(モトル)を改善する観点から、地合い指数が20以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。この地合い指数が、20を下回ると、電子写真記録方式においてトナーを熱融着させる際に用紙へのトナーの浸透が不均一になり、モトルが発生し画質を損なう場合がある。
ここで、前記地合い指数とは、M/K Systems,Inc.(MKS社)製の3Dシートアナライザー(M/K950)を使い、そのアナライザーの絞りを直径1.5mmとし、マイクロフォーメーションテスター(MFT)を用いて測定したものである。すなわち、3Dシートアナライザーにおける回転するドラム上にサンプルを取り付け、ドラム軸に取り付けられた光源と、ドラムの外側に光源と対応して取り付けられたフォトディテクターによって、サンプルにおける局部的な坪量差を光量差として測定する。この時の測定対象範囲は、フォトディテクターの入光部に取り付けられる絞りの径で設定される。次にその光量差(偏差)を増幅し、A/D変換し、64の光測定的な坪量階級に分級し、1回のスキャンで1,000,000個のデータを取り、そのデータ分のヒストグラム度数を得る。そしてそのヒストグラムの最高度数(ピーク値)を64の微小坪量に相当する階級に分級されたもののうち100以上の度数を持つ階級の数で割り、それを1/100にした値が地合い指数として算出される。この地合い指数はその値が大きいほど地合いがよいことを示す。
本発明の第1の記録用紙を、インクジェット記録方式のみならず、電子写真方式、更に熱転写用、及びそれらを兼用する被記録媒体として使用するときには、導電剤を配合して記録用紙の表面抵抗率を調整することが好ましい。但し、記録用紙中のハロゲン量を低減するために、ハロゲンを含まない導電剤を使用することが好ましい。このような導電剤としては、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、メタケイ酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等の無機電解質;スルホン酸塩、硫酸エステル塩、カルボン酸塩、リン酸塩などのアニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビット等の非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤;高分子電解質などを使用することができる。
なお、既述のアミノ酸キレート物質を含有する処理液を塗布する工程において、前記処理液が原紙中へ浸透するのを制御するための手法として、塗布前の原紙をキャレンダー処理等して、原紙透気度を10〜30秒に調整しておくことが好ましい。原紙透気度を高くすることによって、処理液の内部への浸透を抑制することができるからである。しかしながら、原紙透気度を高めすぎると、インクジェット印字におけるインクの浸透性をも阻害してしまい、色間にじみや乾燥性の悪化を招く場合があるため、これらも考慮の上で原紙透気度を調整することが好ましい。
また、抄紙後サイズプレス工程を通さず乾燥させた原紙に対して、別途サイズプレス工程を通すことによって、処理液の原紙への浸透を少なくする手法もある。
本発明の第1の記録用紙は、少なくとも印刷(印字)される側の面(印字面)の表面抵抗率が、JIS P8111:1998に規定する標準環境(温度23℃、相対湿度50%RH)において、JIS−K−6911に準拠した方法で測定した場合に、1.0×109〜1.0×1011Ω/□の範囲であることが好ましく、5.0×109〜7.0×1010Ω/□の範囲であることがより好ましく、5.0×109〜2.0×1010Ω/□の範囲であることがさらに好ましい。なお、前記印字面とは、原紙の表面にアミノ酸キレートを処理された方の面を意味する。
また、前記表面抵抗率は高温高湿(28℃、85%RH)環境下において、3.0×107〜1.0×109Ω/□の範囲であることが好ましく、4.0×108〜1.0×109Ω/□の範囲であることがより好ましい。
本発明の記録用紙の体積電気抵抗率は、JIS−P−8111:1998に規定する標準環境(温度23℃、相対湿度50%RH)において、JIS−K−6911に準拠した方法で測定した場合に、1.0×1010〜1.0×1012Ω・cmの範囲であることが好ましく、1.3×1010〜1.6×1011Ω・cmの範囲であることがより好ましく、1.3×1010〜4.3×1010Ω・cmの範囲であることがさらに好ましい。
また、前記体積抵抗率は高温高湿(28℃、85%RH)環境下において、1.0×107〜1.0×109Ω・cmの範囲であることが好ましく、5.0×108〜1.0×109Ω・cmの範囲であることがより好ましい。
(第2の記録用紙)
本発明の第2の記録用紙は、前記原紙表面に、pHが7の水に不溶なキトサン(以下、「特定のキトサン」という)及び複素カルボン酸と、水溶性高分子とを少なくとも含み、顔料を実質的に含まない処理液を塗布してなることを特徴とする。
原紙表面に前記特定のキトサン及び複素カルボン酸と、水溶性高分子とを含ませることにより、高湿環境下においても電気抵抗率(表面抵抗率、体積抵抗率)を過剰に下げることが無いため、電子写真用の記録用紙として問題なく使用することができる。
また、後述するインクジェット記録方式の画像形成方法によってインクを用いて印刷した場合に、インクの色材種類を問わず、インクの乾燥が速く、得られた画像が高画像濃度で、色間にじみ及びフェザリングが少なく、かつ裏写り濃度が低い記録用紙が得られる。
これは、例えば染料インクに対しては、主に記録用紙表面に存在する特定のキトサンが、インク着弾時に溶解性の高い複素カルボン酸のもとで表面官能基がイオン解離してカチオン化するため、キトサン分子のアミノ基が染料と錯体形成して色材を捕捉し、濃度向上など画質を改善させるものである。
一方、顔料インクに対しては、主に複素カルボン酸がインク着弾時に速やかに溶出し、その共鳴構造によって高い電離度を示すため、着弾したインク中でカルボキシルイオン濃度を上昇させ、顔料表面官能基であるカルボキシル基およびインク含有成分のカルボキシル基の不溶化を起こさせて、色材を記録用紙表面に捕捉するものであり、特に高浸透性インクを用いた場合においては、色間にじみやフェザリングを効果的に防止して、より高画質な画像が得られる働きが顕著になる。
このように本発明の第2の記録用紙を用いれば、インクジェット用の記録用紙として高画質な画像が得られると共に、電子写真用の普通紙として安定した画像を長期にわたって得ることができる。
本発明の第2の記録用紙に用いられる原紙は、前述の本発明の第1の記録用紙に用いたものと同様のものを用いることができる。
前記のように、本発明の第2の記録用紙は、表面にpHが7の水に不溶なキトサン及び複素カルボン酸と水溶性高分子とを含むことを特徴とする。
本発明におけるキトサンとは、(1→4)−2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルカンの構造を持つキチンの脱アセチル化物である。キチンはエビ、カニをはじめとして、昆虫、貝、きのこなどきわめて多くの生物に含まれている天然物質である。セルロースに似た構造を持っているが、N−アセチル−D−グルコサミンが鎖状につながったアミノ多糖である。キトサンとは前記キチンをアルカリ処理することにより脱アセチル化し、主にD−グルコサミンの鎖状高分子としたものである。
前記キトサンは分子量の小さいものは水に溶けるが、本発明においてはpHがの水に不溶なキトサン(特定のキトサン)を使用する。pHが7、すなわち中性の水に対して溶解しない特定のキトサンを用いることで、高湿度環境に対しての記録用紙の過剰な電気抵抗率の変動を抑制することができる。
ここで、上記「pHが7の水に対して不溶」とは、溶解度(pHが7で水温20℃の水100gに対して最大溶解する量(g))で1g以下であることをいう。
また、前記キトサンの脱アセチル化度は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。前述のように、キトサンはアセチル化されることによりアミノ基となり、これによりカチオン性が発現される。本発明においてはインク着弾時に強いカチオン性が必要とされ、前記アセチル化度は80%未満ではカチオン性が弱く錯体形成が十分でない場合がある。
また、前記複素カルボン酸としては、例えば、2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2,5−ジメチル−3−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、2−(2−フリル)アクリル酸、フリル酸などのフラン構造をもつカルボン酸、ブチロラクトン−β−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−酢酸、3−ブテン−4−ペンタノリド−3−カルボン酸等のヒドロフラン構造をもつカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、2−ピロン−6−カルボン酸、4−ピロン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−4−ピロン−2−カルボン酸、4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸等のピラン構造をもつカルボン酸、クマル酸、チオフェンカルボン酸、2−α−ピロールカルボン酸、2−β−ピロールカルボン酸、ピロール−N−カルボン酸、2−3−ジメチルピロール−4−プロピオン酸、2,4,5−トリメチルピロール−3−プロピオン酸、2,5−ジオキソ−4−メチル−3−ピロリン−3−プロピオン酸、2−ピロリジンカルボン酸(プロリン)、4−ヒドロキシプロリン、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸、2−ピロリドンカルボン酸(PCA)、5−カルボキシ−1−メチルピロリジン−2−酢酸などのピロリジン構造をもつカルボン酸、3−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸、3−インドールカルボン酸、3−インドール酢酸、トリプトファン、N−メチルトリプトファン等のインドール構造をもつカルボン酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、2−3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、3,6−ピリジンジカルボン酸、2,3,4−ピリジントリカルボン酸、2,3,5−ピリジントリカルボン酸、2,4,5−ピリジントリカルボン酸、3,4,5−ピリジントリカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸、1,2,5,6−テトラヒドロ−1−メチルニコチン酸等のピリジン置換誘導体、2−キノリンカルボン酸、4−キノリンカルボン酸、2−フェニル−4−キノリンカルボン酸、2−3−キノリンジカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、6−メトキシ−4−キノリンカルボン酸等のキノリン構造をもつカルボン酸等が挙げられるが、これに限定されるものではない。更に好ましくは溶解度が5g以上のものがよい。ここでの溶解度とは水温20℃の水100gに対して最大溶解する量である。
なかでもピロリドンカルボン酸、クマリン酸、フランカルボン酸、ピロールカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸の中から選ばれる1種以上が好ましい。これらの複素カルボン酸は溶解度が高く、キトサン溶解に必要な低pHを示すのみならず、インクへの溶出時には共鳴構造によって高い電離度を示し、インク中でのカルボキシルイオンの濃度を高めるため、顔料及びインク成分の親水性官能基であるカルボキシル基を不溶化する作用が大きい。また、インク着弾時にキトサンのカチオン基を解離させる効果も高い。
前記処理液中のキトサンと複素カルボン酸との固形分の質量比(キトサン/複素カルボン酸)は、1/5〜5/1の範囲であることが好ましく、2/3〜3/2の範囲であることがより好ましい。
前記キトサンの比率が1/5より少ないと、インクの着弾時に十分な錯体形成が起こらず記録用紙表面に捕捉され難くなる場合がある。また、比率が5/1より多いと、インク浸透性を遅延させ、色間にじみ(ICB)やフェザリングの悪化、となる場合がある。
前記水溶性高分子としては、前記本発明の第1の記録用紙で用いたものと同様のものを使用することができる。また処理液の塗工手段、塗工方法等も同様である。
本発明において、特定のキトサン、複素カルボン酸を原紙表面に処理する場合の各処理量としては、各々固形分として0.1〜5g/m2の範囲であることが好ましく、0.5〜3g/m2の範囲であることがより好ましい。特定のキトサン及び複素カルボン酸の処理量が0.1g/m2より少ないと、インク着弾時のインク成分への溶出量及びインク着弾時のカチオン当量が少ないため、結果として画質の低下、具体的には濃度低下、フェザリングの悪化、ICBの悪化、色再現性の悪化となる場合がある。また、前記処理量が5g/m2を越えると、いわゆる普通紙としての風合いを損なう場合がある。
同様の理由から、特定のキトサン及び複素カルボン酸の原紙表面への全処理量は、固形分として0.6〜5g/m2の範囲であることが好ましく、1.0〜2.0g/m2の範囲であることがより好ましい。
本発明の第2の記録用紙における好ましいサイズ度、平滑度、地合い指数、電気抵抗率の範囲、及びそれらの調整方法は、前記第1の記録用紙と同様である。
(第3の記録用紙)
本発明の第3の記録用紙は、前記原紙表面に、水溶性単量体アミノ酸と、水溶性高分子とを少なくとも含み、顔料を実質的に含まない処理液を塗布してなることを特徴とする。
原紙表面に前記上述のように、水溶性単量体アミノ酸と、水溶性高分子とを含ませることにより、高湿環境下においても電気抵抗率(表面抵抗率、体積抵抗率)を過剰に下げることが無いため、電子写真用の記録用紙として問題なく使用することができる。
また、後述するインクジェット記録方式の画像形成方法によってインクを用いて印刷した場合に、インクの乾燥が速く、得られた画像が高画像濃度で、色間にじみ及びフェザリングが少なく、かつ裏写り濃度が低い記録用紙が得られる。
これは、記録用紙表面に存在する水溶性単量体アミノ酸が、インク着弾時に速やかに溶出し、該水溶性単量体アミノ酸のアミノ基部分とインク色材表面のアニオン性基とが錯体を形成して不溶・高分子化し、かつ高分子化した色材を水溶性高分子によって物理的に記録用紙表面に捕捉するものであり、特に高浸透性インクを用いた場合においては、色間にじみやフェザリングを効果的に防止して、より高画質な画像が得られる働きが顕著になる。
本発明においては、前記錯体形成が染料インクに対しても顔料インクに対しても同様に起こるため、インクの着色材料を問わず、前記効果を得ることができる。
このように本発明の第3の記録用紙を用いれば、インクジェット用の記録用紙として高画質な画像が得られると共に、電子写真用の普通紙として安定した画像を長期にわたって得ることができる。
本発明の第3の記録用紙に用いられる原紙は、前述の本発明の第1の記録用紙に用いたものと同様のものを用いることができる。
前記のように、本発明の第3記録用紙は、表面に水溶性単量体アミノ酸と水溶性高分子を含有することを特徴とする。
前記水溶性単量体アミノ酸としては、例えば、L−グリシン、D−グリシン、DL−グリシン、L−セリン、D−セリン、DL−セリン、L−アスパラギン、D−アスパラギン、DL−アスパラギン、L−フェニルアラニン、D−フェニルアラニン、DL−フェニルアラニン、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、DL−ヒスチジン、L−メチオニン、D−メチオニン、DL−メチオニン、L−システイン、D−システイン、DL−システイン、L−プロリン、D−プロリン、DL−プロリン、L−グルタミン酸、D−グルタミン酸、DL−グルタミン酸、L−リジン、D−リジン、DL−リジン、L−グルタミン、D−グルタミン、DL−グルタミン、L−アルギニン、D−アルギニン、DL−アルギニン、L−アラニン、D−アラニン、DL−アラニン、L−バリン、D−バリン、DL−バリン、L−ロイシン、D−ロイシン、DL−ロイシン、L−イソロイシン、D−イソロイシン、DL−イソロイシン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記の中でも、グリシン、アラニン、プロリン、及びシステインは、後述する水への溶解性、及び画質向上効果が高く特に好ましい。
また、本発明における水溶性単量体アミノ酸は、20℃、100gの水に対する溶解度が、5g以上であり、10g以上であることがより好ましく、20g以上であることが更に好ましい。前記水溶性単量体アミノ酸の水に対する溶解度が5g未満であると、インク着弾時にアミノ酸が溶出しないため、目的の効果が得られない場合がある。
前記水溶性高分子としては、前記本発明の第1の記録用紙で用いたものと同様のものを使用することができる。また処理液の塗工手段、塗工方法等も同様である。
前記処理液中の水溶性単量体アミノ酸と前記水溶性高分子との固形分の質量比(水溶性単量体アミノ酸/水溶性高分子)は、3/7〜7/3の範囲であることが好ましく、4/5〜5/4の範囲であることがより好ましい。
前記水溶性単量体アミノ酸の比率が3/7より少ないと、インクの着弾時に十分な錯体形成が起こらず記録用紙表面に捕捉され難くなる場合がある。また、比率が7/3より多いと、水溶性高分子が少なすぎ高分子化した色材を記録用紙表面に捕捉することができない場合がある。
本発明において、水溶性単量体アミノ酸および水溶性高分子を原紙表面の処理する場合の各処理量としては、それぞれ固形分として0.1〜3g/m2の範囲であることが好ましく、0.5〜3g/m2の範囲であることがより好ましい。水溶性単量体アミノ酸の処理量が0.1g/m2より少ないと、インク成分への溶出量が少ないため、結果として画質の低下、具体的には濃度低下、フェザリングの悪化、ICBの悪化、色再現性の悪化となる場合がある。また、水溶性高分子の処理量が0.1g/m2より少ないと、物理的な色材捕捉効果が弱まり、画質の低下、具体的には濃度低下、色再現性の悪化、裏写りの悪化となる場合がある。また、水溶性単量体アミノ酸および水溶性高分子の各処理量が3g/m2を超えると、いわゆる普通紙としての風合いを損なう場合がある。
同様の理由から、水溶性単量体アミノ酸及び水溶性高分子の原紙表面への全処理量は、固形分として5g/m2以下であることが好ましく、3g/m2以下であることがより好ましい。
本発明の第3の記録用紙における好ましいサイズ度、平滑度、地合い指数、電気抵抗率の範囲、及びそれらの調整方法は、前記第1の記録用紙と同様である。
<画像記録方法>
次に、本発明のインクジェット方式の画像記録方法(以下、「インクジェット記録方法」という場合がある。)について説明する。本発明のインクジェット記録方法は、前処理液を記録用紙表面に付与する工程を含む第1のインクジェット記録方法、及び該工程を含まない第2のインクジェット記録方法である。
(第1のインクジェット記録方法)
本発明における第1のインクジェット記録方法は、無色、または淡色の前処理液を本発明の記録用紙に対して吐出した後にインクを用いて印字するものである。そして、この第1のインクジェット記録方法には、記録用紙として前記第1の記録用紙が用いられる。
前記前処理液としては、pH4以下の酸性水溶液を用いることが好ましい。更には複素カルボン酸を含有するのが好ましい。例えば、2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2,5−ジメチル−3−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、2−(2−フリル)アクリル酸、フリル酸などのフラン構造をもつカルボン酸、ブチロラクトン−β−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−酢酸、3−ブテン−4−ペンタノリド−3−カルボン酸等のヒドロフラン構造をもつカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、2−ピロン−6−カルボン酸、4−ピロン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−4−ピロン−2−カルボン酸、4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸等のピラン構造をもつカルボン酸、クマル酸、チオフェンカルボン酸、2−α−ピロールカルボン酸、2−β−ピロールカルボン酸、ピロール−N−カルボン酸、2,3−ジメチルピロール−4−プロピオン酸、2,4,5−トリメチルピロール−3−プロピオン酸、2,5−ジオキソ−4−メチル−3−ピロリン−3−プロピオン酸、2−ピロリジンカルボン酸(プロリン)、4−ヒドロキシプロリン、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸、2−ピロリドンカルボン酸(PCA)、5−カルボキシ−1−メチルピロリジン−2−酢酸などのピロリジン構造をもつカルボン酸、3−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸、3−インドールカルボン酸、3−インドール酢酸、トリプトファン、N−メチルトリプトファン等のインドール構造をもつカルボン酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、2−3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、3,6−ピリジンジカルボン酸、2,3,4−ピリジントリカルボン酸、2,3,5−ピリジントリカルボン酸、2,4,5−ピリジントリカルボン酸、3,4,5−ピリジントリカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸、1,2,5,6−テトラヒドロ−1−メチルニコチン酸等のピリジン置換誘導体、2−キノリンカルボン酸、4−キノリンカルボン酸、2−フェニル−4−キノリンカルボン酸、2−3−キノリンジカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、6−メトキシ−4−キノリンカルボン酸等のキノリン構造をもつカルボン酸等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
更に好ましくはピロリドンカルボン酸、クマリン酸、フランカルボン酸、ピロールカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸の中から選ばれる1種以上が良い。これらの物質は低pHを安定して維持することが可能であり、アミノ酸キレート物質のキレート構造を崩す効果が高いためである。
前記前処理液を記録用紙表面に付与する方法としては、インクの液滴が吐出される前であれば特に制限されないが、例えば、後述するような記録ヘッドと同様なヘッドにより行うことができる。
本発明に用いられるインクとしては公知のインクであれば特に限定されないが、少なくとも水と、親水性色材とを含有するインクが好ましい。
ここで、親水性色材には、染料の他に、親水基を含む顔料分散剤と併用され、これによりインク中に分散することができる疎水性顔料だけでなく、後述する自己分散型顔料も含まれる。また、溶媒としては水以外にも公知の水溶性の有機溶媒を用いることができ、界面活性剤等、必要に応じて各種添加剤等を更に含有することができる。
前記インクとしては、上述のように親水性の色材を含むインクが好適に用いられる。また、多色で印字する場合に用いられるインクセットの例としては、少なくとも黒、シアン、マゼンタ、イエローの各インクを備えたインクセットが考えられ、これらのインクは、更に水、水溶性有機溶媒、色材、界面活性剤等を配合し調製されることが好ましい。
前記インクセットにおける各インクは、水、水溶性有機溶媒、色材、界面活性剤、及び水溶性高分子等を含み、色材として顔料を用いる場合には、自己分散型顔料(顔料分散剤なしで水に分散可能な顔料)が用いられる場合が多い。自己分散型顔料は、その表面に水に対する可溶化基を多く含み、インク中に顔料分散剤が存在しなくても、安定に分散させることのできる顔料である。
本発明において、自己分散型顔料は、下記要件を満たすものとする。
まず、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、マイクロフルイダイザー、ボールミル等の分散装置を用いて、顔料分散剤を用いずに、水95質量%に対し、顔料5質量%の濃度となるように顔料を水に分散させる。次に、この顔料が分散された分散液をガラス瓶に入れ、一昼夜放置し、その後における上澄みの顔料濃度が初期濃度の98%以上である顔料を自己分散型顔料とする。このとき、顔料濃度の測定方法は、特に限定されず、サンプルを乾燥させて固形分を測定する方法や、適当な濃度に希釈して透過率から求める方法のいずれでもよく、他に顔料濃度を正確に求める方法があれば、もちろんその方法によってもよい。
前記「自己分散型顔料」は、通常の顔料に、酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理または酸化/還元処理等の表面改質処理を施すことにより製造することができる。このような表面処理を行うことにより、水に対する可溶化基を通常の顔料より多く含むことになり、顔料分散剤を用いなくともインク中での良好な分散が可能となる。
前記表面処理を施される顔料は特に限定されないが、以下の顔料が具体例として挙げられる。
黒色の顔料としては、Raven7000、Raven5750、Raven5250、Raven5000 ULTRA II、Raven3500、Raven2000、Raven1500、Raven1250、Raven1200、Raven1190 ULTRA II、Raven1170、Raven1255、Raven1080、Raven1060(以上、コロンビアンDカーボン社製);Regal400R、Regal330R、Regal660R、Mogul L、Black PearlsL、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400(以上、キャボット社製);Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black 18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Pritex35、PritexU、Pritex V、Printex140U、Printex140V、Special Black6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black4(以上、デグッサ社製);No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等が挙げられる。
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigment Blue−3、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:1、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:34、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等が挙げられる。
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48、C.I.Pigment Red48:1、C.I.Pigment Red 57、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 123、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 168、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red 202等が挙げられる。
イエロー色の顔料としては、C.I.Pigment Yellow−1、C.I.Pigment Yellow−2、C.I.Pigment Yellow−3、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17、C.I.Pigment Yellow−73、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−75、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.Pigment Yellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151、C.I.Pigment Yellow−154等が挙げられる。
また、本発明においては、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等を用いてもよい。
また、前記「自己分散型顔料」としては、市販のものをそのまま用いることができる。このような市販の顔料の例としては、キャボット社製のcab−o−jet−200、cab−o−jet−300、IJX−55、IJX−164、IJX−253、IJX−266、及びIJX−273;オリエント化学社製のMicrojet black CW−1;日本触媒社により販売されている顔料;等が挙げられる。
「自己分散型顔料」に含まれる水に対する可溶化基は、ノニオン性、カチオン性、アニオン性のいずれであってもよいが、主にスルホン基、カルボキシル基、水酸基、リン酸基等が好ましい。スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基の場合には、そのまま遊離酸の状態でも用いることができるが、塩を形成しても構わない。塩を形成している場合には、酸の対イオンは、一般的にLi、Na、K、NH4、及び有機アミンであることが好ましい。
前記顔料の含有量は、全インク質量に対し、0.1〜15質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜10質量%の範囲であることがより好ましく、1.0〜8.0質量%の範囲であることがさらに好ましい。前記顔料の含有量が15質量%を越えると、プリントヘッドのノズル先端での目詰まりが生じ易くなり、0.1質量%未満では十分な画像濃度が得られない場合がある。
前記顔料は、精製品を使用することが好ましい。不純物は、例えば、水洗浄や、限外濾過膜法、イオン交換処理、活性炭、ゼオライト等による吸着等の方法で除去することができる。精製法は特に限定されるわけではないが、インク中において色材の不純物に由来する無機物の濃度は、500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。
色材として水溶性色材、すなわち染料を用いる場合は、公知のもの、あるいは新規に合成したものを用いることができる。中でも、鮮やかな色彩の得られる、直接染料あるいは酸性染料が好ましい。具体的には次のようなものが挙げられる。
青色染料としては、C.I.ダイレクトブルー−1、−2、−6、−8、−22、−34、−70、−71、−76、−78、−86、−142、−199、−200、−201、−202、−203、−207、−218、−236及び−287;C.I.アシッドブルー−1、−7、−9、−15、−22、−23、−27、−29、−40、−43、−55、−59、−62、−78、−80、−81、−90、−102、−104、−111、−185及び−254が挙げられる。
赤色染料としては、C.I.ダイレクトレッド−1、−2、−4、−8、−9、−11、−13、−1、−20、−28、−31、−33、−37、−39、−51、−59、−62、−63、−73、−75、−80、−81、−83、−87、−90、−94、−95、−99、−101、−110及び−189;C.I.アシッドレッド−1、−4、−8、−13−14、−15、−18、−21、−26、−35、−37、−249及び−257が挙げられる。
黄色染料としては、C.I.ダイレクトイエロー−1、−2、−4、−8、−11、−12、−26、−27、−28、−33、−34、−41、−44、−48、−86、−87、−88、−135、−142及び−144;C.I.アシッドイエロー−1、−3−4、−7、−11、−12、−13、−14、−19、−23、−25、−34、−38、−41、−42、−44、−53、−55、−61、−71、−76及び−79等が挙げられる。
これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
また、直接染料あるいは酸性染料以外にも、カチオン性染料を用いることができ、例えば、C.I.ベーシックイエロー−1、−11、−13、−19、−25、−33及び−36;C.I.ベーシックレッド−1、−2、−9、−12、−13、−38、−39、−92;C.I.ベーシックブルー−1、−3、−5、−9及び−19、−24、−25、−26及び−28等が挙げられる。
前記染料の含有量は、インク質量に対し、合計で0.1〜10質量%の範囲が好ましく、0.5〜8質量%の範囲がより好ましく、0.8〜6質量%の範囲が更に好ましい。前記染料の含有量が10質量%より多いと、インクジェット方式で印刷した場合プリントヘッド先端での目詰まりが発生しやすくなる場合がある。一方、前記染料の含有量0.1質量%より少ないと、十分な画像濃度を得ることができない場合がある。
前記水溶性の有機溶媒は公知のものを使用することができる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールエーテル類;ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒;エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等の一価アルコール類;あるいは、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルオキシド等の含硫黄溶媒;炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を使用することができる。
前記界面活性剤はインクの表面張力を調整するために添加される。界面活性剤としては、顔料の分散状態に影響を及ぼしにくいノニオン及びアニオン界面活性剤が好ましい。前記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレンアルコールエチレンオキシド付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル等を使用することができる。
前記アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、スルホン酸塩、及び高級アルキルスルホコハク酸塩等を使用することができる。
また、両性界面活性剤を使用してもよく、該両性界面活性剤としては、ベタイン、スルフォベタイン、サルフェートベタイン、イミダゾリン等を使用することができる。その他、ポリシロキサンポリオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤やオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルなどのフッソ系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチンなどのバイオサーファクタント等も使用することができる。
また、前記インクが含有する水溶性高分子としては、アルギン酸塩、アクリル酸塩、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが挙げられるが、中でも親水性部分を構成するα、β−エチレン性不飽和基を有する単量体と疎水性部分を構成するα、β−エチレン性不飽和基を有する単量体とからえられる共重合体が好ましい。更に好ましくは、親水性部分を構成する単量体が、アクリル酸、メタクリル酸及び無水マレイン酸、マレイン酸から選ばれる少なくとも一種であり、疎水性部分を構成する単量体が、スチレンアクリル酸並びにスチレンメタクリル酸のアルキル、アリール及びアルキルアリールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
上記水溶性高分子の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法による重量平均分子量で、3000〜15000の範囲、好ましくは4000〜10000の範囲、より好ましくは4000〜7000の範囲のものが良い。
また、前記親水性部分を構成するα、β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、特に限定されないが、カルボキシル基またはスルホン基を有するモノマーなど、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレンを用いることができる。この中でも、特にアクリル酸、メタクリル酸、およびマレイン酸、無水マレイン酸のような親水基がカルボキシル基であるものが好ましく、これらは単独で用いても二種以上を混合して用いても良い。
疎水性部を構成するα、β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、特に限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステルを好ましく使用することができ、特にスチレン並びにメタアクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、アリール及びアルキルアリールエステルは好ましい。これらは単独で用いても二種以上を用いても良い。
これら水溶性高分子は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。添加量は、色材によって大きく異なるので一概には言えないが、前記色材に対して、0.1〜100質量%の範囲であることが好ましく、1〜70質量%の範囲であることがより好ましく、3〜50質量%の範囲であることがより好ましい。
また、これらの化合物は、水溶性を高めるため、塩基性の化合物との塩の状態で使用することが好ましい。これらの化合物と塩を形成する化合物としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属類、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族アミン類、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルコールアミン類、アンモニア等を使用することができる。これらの中でも、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属類の塩基性化合物が使用される。これは、アルカリ金属類の塩基性化合物が強電解質であり、酸性基の解離を促進する効果が大きいからである。
本発明におけるインクには、粘度調整剤として、メチルセルロース、エチルセルロース及びその誘導体、グリセリン類やポリグリセリン及びそのポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド付加物の他、多糖類及びその誘導体を添加するのも有用である。前記粘度調整剤として具体的には、例えばグルコース、フルクトース、マンニット、D−ソルビット、デキストラン、キサンサンガム、カードラン、シクロアミロース、マルチトール及びそれらの誘導体が挙げられる。
なお、本発明の第1のインクジェット記録方法に用いられるインクの粘度は、1.5〜5.0mPa・sの範囲であることが好ましく、1.5〜4.0mPa・sの範囲であることがより好ましい。前記インクの粘度の測定は、回転型粘度計レオマット115(Contraves社製)を用い、測定温度23℃、せん断速度1400s-1で行った。
また、インクのpHを所望の値に調整してもよく、pHを調整するものとしては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、アンモニア、リン酸アンモニウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、硫酸ナトリウム、酢酸塩、乳酸塩、安息香酸塩、酢酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、プロピオン酸、p−トルエンスルフォン酸等が使用できる。あるいは、一般的なpH緩衝剤、例えばグッドバッファー類を使用してもよい。
なお、インクのpHは3〜11の範囲であることが好ましく、特に4.5〜9.5の範囲であることがより好ましい。
更に、インクの表面張力が20〜37mN/mの範囲であることが好ましい。表面張力が20mN/mを下回ると、記録用紙へのインク浸透性が速すぎてしまい、インク中の色材不溶化、水溶性高分子の不溶化が困難となり、インクが記録用紙内部まで浸透するため、画像濃度の低下、文字の滲みが発生してしまう場合がある。表面張力が37mN/mより大きいと記録用紙へのインク浸透性が遅くなり、乾燥性が悪化する場合があるため、印字の高速化への対応等の観点から好ましくない。
前記インクの表面張力は、25〜37mN/mの範囲であることがより好ましく、28〜35mN/mの範囲であることが更に好ましい。
なお、インクの表面張力は、ウィルヘルミー型表面張力計を用いて、23℃、55%RHの環境下にて測定したものである。
前記インクの表面張力を調整する方法としては、例えば、前記界面活性剤、多価アルコール類、及び、一価アルコール類から選択される少なくとも一種を含有させる方法がある。界面活性剤を含有させる場合、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤から少なくとも一種選ぶことが好ましい。また、インク中の前記化合物の含有量の合計は、0.01〜3.0質量%の範囲であることが好ましく、は0.03〜2.0質量%の範囲であることがより好ましく、0.05〜1.5質量%の範囲であることがさらに好ましい。特に、界面活性剤を単独で用いる場合には、含有量は0.3〜1.5質量%の範囲であることが好ましい。
一価アルコール類としてエーテル結合を含むものを用いる場合は、下記一般式(2)から選択される1種以上の化合物が用いられる。インク中の含有量の合計は、1〜5質量%の範囲であることが好ましく、2〜10質量%の範囲であることがより好ましく、3〜8質量%の範囲であることがさらに好ましい。
一般式(2)
n2n+1(CH2CRHO)m
〔但し、一般式(2)において、nは1から6の整数、mは1から3の整数、Rは水素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基を表す。〕
また、一般式(2)で示される以外の一価アルコール類を含有させる場合は、エタノール、プロパノール、ブタノール等が好ましく用いられる。インク中の含有量の合計は、1.0〜8.0質量%の範囲であることが好ましく、2.0〜5.0質量%の範囲であることがより好ましい。また、上述した界面活性剤、多価アルコール類、一価アルコール類は同時に含有させても構わない。
本発明における第1のインクジェット記録方法において、インクが、色材として顔料を用いたインクである場合には、例えば、前記顔料分散剤を所定量含む水溶液に所定量の前記顔料を添加し、十分に撹拌した後、分散機を用いて分散を行い、遠心分離等で粗大粒子を除いた後、所定の前記水溶性有機溶媒、前記添加剤等を加えて撹拌混合し、次いで濾過を行って得ることができる。この際、予め顔料の濃厚分散体を作製し、インク調製時に希釈する方法も使用できる。また、分散工程の前に顔料の粉砕工程を設けてもよい。あるいは、所定の水溶性有機溶媒、水、顔料分散剤を混合後、顔料を添加して、分散機を用いて分散させてもよい
前記分散機は、市販のものを用いることができる。例えば、コロイドミル、フロージェットミル、スラッシャーミル、ハイスピードディスパーザー、ボールミル、アトライター、サンドミル、サンドグラインダー、ウルトラファインミル、アイガーモーターミル、ダイノーミル、パールミル、アジテータミル、コボルミル、3本ロール、2本ロール、エクストリューダー、ニーダー、マイクロフルイダイザー、ラボラトリーホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられ、これらを単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。なお、無機不純物の混入を防ぐためには、分散媒体を使用しない分散方法を用いることが好ましく、その場合には、マイクロフルイダイザーや超音波ホモジナイザー等を使用することが好ましい。なお、本発明の実施例においては、超音波ホモジナイザーにより分散を行った。
一方、色材顔料として自己分散型顔料を用いたインクは、例えば、顔料に対して表面改質処理を行ない、得られた顔料を水に添加し、十分攪拌した後、必要に応じて前記と同様の分散機による分散を行ない、遠心分離等で粗大粒子を除いた後、所定の溶媒、添加剤等を加えて攪拌、混合、濾過を行なうことにより得ることができる。
本発明の記録用紙に対して、以上に説明したようなインクを用いて、インクジェット方式により印字する場合、ノズルから吐出されるインクドロップ量は、1〜20plの範囲であることが好ましく、3〜18plの範囲であることがさらに好ましい。
なお、熱エネルギーを作用させて液滴を形成し記録を行う、いわゆる熱インクジェット方式により印字で、且つ、インクドロップ量を前記のように1〜20plの範囲、好ましくは3〜18plの範囲とする場合には、インク中における顔料の分散粒子径が、体積平均粒子径で20〜120nmの範囲で、かつ、500nm以上の粗大粒子数がインク2μl中に5×105個以下であることが好ましい。体積平均粒子径が20nmより小さいと、充分な画像濃度が得られない場合がある。また、体積平均粒径が120nmより大きいと、プリントヘッド内で目詰まりが発生しやすく、安定した吐出性を確保できない。さらに体積平均粒径が500nm以上の粗大粒子数がインク2μl中に5×105個より多くなると、同様にプリントヘッド内で目詰まりが発生しやすく、安定してインクを吐出できない場合がある。この粗大粒子数は、3×105個以下であることがより好ましく、2×105個以下であることがさらに好ましい。
また、24℃におけるインクの貯蔵弾性率が、5×10-4〜1×10-2Paの範囲であることが特に好ましい。この領域において適当な弾性を有することで、記録用紙表面での挙動が好ましいものとなるからである。なお、前記貯蔵弾性率は、角速度が1〜10rad/sの範囲における低せん断速度領域で測定したときの値である。この値は、低せん断速度領域の粘弾性が測定できる装置を使用すれば容易に測定できる。当該測定装置としては、例えば、VE型粘弾性アナライザー(VILASTIC SCIENTIFIC INC.社製)、DCR極低粘度用粘弾性測定装置(Paar Physica社製)等がある。
本発明における第1のインクジェット記録方法は、公知のインクジェット装置であれば、いずれのインクジェット記録方式を用いたものであっても良好な印字品質を得ることができる。さらに、印字中または印字の前後に記録用紙等の加熱手段を設け、記録用紙及びインクを50℃から200℃の温度で加熱し、インクの吸収及び定着を促進する機能を持った方式に対しても、本発明におけるインクジェット記録方法を適用することができる。
次に、本発明におけるインクジェット記録方法を実施するのに適したインクジェット記録装置の一例について説明する。この例はいわゆるマルチパス方式と呼ばれるもので、記録ヘッドが記録用紙表面を複数回走査することによって画像を形成するものである。
ノズルからインクを吐出する方式は、まず、ノズル内に備えられたヒータに通電加熱することによってノズル内のインクを発泡させ、その圧力によってインクを吐出する、いわゆるサーマルインクジェット方式がある。また、圧電素子に通電することにより該素子を物理的に変形させて、その変形によって生ずる力を利用してノズルからインクを吐出する方式もある。この方式では、圧電素子にピエゾ素子を使用したものが代表的である。本発明におけるインクジェット記録方法において用いられるインクジェット記録装置においては、ノズルからインクを吐出する方式は前記いずれの方式であってもよく、またこれらの方式に限定されるものではない。この点は以下同様である。
ノズルは、ヘッドキャリッジの主走査方向と略直角方向に配置される。具体的には1インチ当たり800個の密度で一列に配置することができる。ノズルの個数及び密度は任意である。また、一列に配列するのみならず、千鳥状に配置することもできる。
記録ヘッド上部にはシアン、マゼンタ、イエロー及びブラック各色の、本発明に用いるインクを収納したインクタンクが、それぞれの記録ヘッドに対して一体的に取り付けられている。該インクタンクに収納されているインクは、それぞれの色に対応する記録ヘッドに供給される。なお、インクタンクとヘッドとは一体的に形成されていてもよい。しかし、この方式に限らず、例えばインクタンクを記録ヘッドと別個に配置し、インク供給チューブを介してインクを記録ヘッドに供給する方式であってもよい。前記前処理液もまた、インクと同様にタンクに収納し記録ヘッドに対して一体的に取り付けて使用してもよい。
さらに、これらの各記録ヘッドには、信号ケーブルが接続されている。この信号ケーブルは、前処理液、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色について、画素処理部で処理された後の画像情報を、各記録ヘッドに伝達する。
なお、前処理液の吐出タイミングは、各色インクの吐出前であれば特に制限されない。
前記記録ヘッドは、ヘッドキャリッジに固定されている。このヘッドキャリッジは、ガイドロッド及びキャリッジガイドに沿って主走査方向に摺動自在に取り付けられている。そして駆動モータを所定のタイミングで回転駆動することによって、タイミングベルトを介してヘッドキャリッジを主走査方向にそって往復駆動させることができる。
なお、ヘッドキャリッジ下方にはプラテンが固定されており、紙送り用の搬送ローラによって、このプラテン上に、本発明に用いる記録用紙が所定のタイミングで搬送される。当該プラテンは、例えばプラスチックの成型材等で構成することができる。
このようにして、本発明の記録用紙に対して、前述のようなインクを使用して印字することができる。なお、前記マルチパス方式の例では、前処理液を含めて五個のヘッドを備えた例について説明した。しかし、本発明におけるインクジェット記録方法をマルチパス方式に適用できる範囲はこの例に限られるものではない。ブラックヘッドとカラーヘッドとの計二つのヘッドを備えて、このうちカラーヘッドは、ノズルをその並び方向に分割し、分割したそれぞれの領域に所定の色を割り当ててあるようなものであってもよい。
印字ヘッド走査速度とは、印字ヘッドが記録用紙排出方向に対して垂直に走行する、いわゆる前記マルチパス方式において、記録ヘッドが記録用紙表面を複数回走査して印字を行う場合の、記録ヘッドの移動速度をいう。
オフィスでのレーザープリンターに匹敵する、印字速度が10ppm(10枚/分)以上の高速印字を行う際には、前記印字ヘッドの走査速度を25cm/秒以上とすることは必至であるが、それによって異なる2色のインクが印字される間隔も狭くなり、色間にじみ(ICB)が発生しやすくなる。また、インクの乾燥性を高めるために表面張力の低いインクを使用することが必要となり、フェザリング発生や画像濃度低下の原因となり、このような表面張力の低いインクは用紙への浸透性が高いため、印字した文字、画像が裏面から透けて見えやすくなり、両面印字性を損なうことになる。
次に、本発明における第1のインクジェット記録方法を実施するのに適したインクジェット記録装置の第二の例について説明する。この例はワンパス方式といわれるもので、このワンパス方式は、記録用紙の幅にほぼ等しい幅を有する記録ヘッドを持ち、記録用紙がヘッドの下方を通過すると印刷が終了するものである。マルチパス方式に比べて同じ走査速度で高い生産性が得られるため、レーザー記録方式以上の高速印字が可能となる。
ワンパス方式はマルチパス方式のように、記録ヘッドを複数回走査する必要がないため、10ppm以上に対応する60mm/秒以上の記録用紙搬送速度(記録用紙が記録ヘッド下方を通過する速度)でも、容易に高速印字を行うことができる。しかし、一方で分割印字を行うことができないため、一度に多量のインクを吐出することが必要になる。このため、本発明の記録用紙を用いない従来のインクジェット記録方法では、フェザリングや色間にじみが発生したり、また、画像濃度の低下や両面印字性の低下、乾燥性の悪化を招いていた。
しかしながら、本発明におけるインクジェット記録方法においては、前記マルチパス方式における印字ヘッド走査速度が250mm/秒以上の高速印字、また前記マルチパス方式における印字ヘッドが固定された状態での記録用紙搬送速度が60mm/秒以上の高速印字を行った場合でも、既述の記録用紙と前処理液との接触時にアミノ酸キレートが崩壊し、金属イオンが放出されることによって、続いてインクが記録用紙と接触した際に金属イオンが速やかに溶出し、インク染料の不溶化や、インク顔料及び/またはインクに内添された水溶性高分子の凝集・沈降の作用により、フェザリングや色間にじみの発生のない、高画質な画像を得ることができ、両面印字性を損なわず、乾燥性を高めることができる。
なお、前記印字ヘッドの走査速度は、「レーザープリンターに匹敵する生産性」という観点から、500mm/秒以上であることが好ましく、1000mm/秒以上であることがより好ましい。また、前記記録用紙の搬送速度は、100mm/秒以上であることが好ましく、210mm/秒以上であることがより好ましい。
さらに、本発明におけるインクジェット記録方法においては、前処理液の最大打ち込み量は3〜15ml/m2の範囲であることが好ましい。また、さらに最大インク打ち込み量が、6〜30ml/m2の範囲であることが好ましい。
前記最大インク打ち込み量とは、1色以上のインクを用いてベタ画像を形成する場合に、1回の走査で吐出される単位面積あたりのインク量のことである。
前記いずれの方式においても、少ない走査回数でべた画像を形成するのに十分なインクを記録用紙に付与するため、最大インク打ち込み量は6ml/m2以上と大きくなってしまう。しかし、このような大きなインク打ち込み量となる高速対応の印字でも、本発明におけるインクジェット記録方法を用いれば、フェザリングや色間にじみの発生のない画像を得ることができ、レーザー印字方式と比較しても遜色のない両面印字が可能である。
なお、前記最大インク打ち込み量は7〜20ml/m2の範囲であることが好ましく、10〜18ml/m2の範囲であることがより好ましい。
以上のように、本発明における第1のインクジェット記録方法によれば、印字速度が10ppm以上の高速印字を行うインクジェット記録装置においても、色間にじみやフェザリング等の画像不良を発生することなく、十分な画像濃度が得られる印字を行うことができるものである。
(第2のインクジェット記録方法)
本発明の第2のインクジェット記録方法は、前記第1のインクジェット記録方法における前処理液を記録用紙表面に付与する工程がない以外は、すべて第1のインクジェット記録方法と同じである。
この第2のインクジェット記録方法には、記録用紙として、前記本発明の第2の記録用紙、第3の記録用紙が用いられる。
(電子写真方式の画像記録方法)
本発明における電子写真方式の画像記録方法は、静電潜像担持体表面を均一に帯電する帯電工程と、該静電潜像担持体表面を露光し静電潜像を形成する露光工程と、該静電潜像担持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像剤を用いて現像し、トナー画像を形成する現像工程と、該トナー画像を記録用紙表面に転写する転写工程と、該記録用紙表面のトナー画像を定着する定着工程とを含み、前記記録用紙が既述の本発明の記録用紙であることを特徴とする。
本発明における電子写真方式の画像記録方法では、前記インクジェット記録方法と共通の記録用紙を用いているにもかかわらず、従来と同様に高画質な画像を安定して得ることができる。その理由は、既述の如く、本発明の記録用紙では高湿環境等の環境変化に対して電気抵抗率の変化が少なく、また、顔料を含む塗工層を有していないため、通常の普通紙として感光体(静電潜像担持体)を傷つけたり、紙粉を発生させたりすることなく電子写真用として使用することができるからである。
また、本発明における電子写真方式の画像記録方法に用いられる画像形成装置は、前記帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程及び定着工程の各工程を行うことができる手段を有する画像形成装置であれば特に限定されない。たとえば、シアン、マゼンタ、イエロー、および、ブラックの4色のトナーを用いる場合には、1つの感光体に、各色のトナーを含む現像剤を順次付与してトナー像を形成する4サイクルの現像方式によるカラー画像形成装置や、各色毎に対応した現像ユニットを4つ備えたカラー画像形成装置(所謂タンデム機)等が利用できる。
画像形成に際して用いられるトナーも公知のものであれば特に限定されないが、例えば、高精度な画像が得られる点で、球状で、粒径が小さく粒度分布の狭いトナーを用いたり、省エネルギーに対応するために、低温定着が可能な融点の低い結着樹脂を含むトナーを用いたりすることができる。
なお、本発明の記録用紙は、以下に例示するカラートナーを用いたカラー画像形成方法に好適に用いられるものであるが、本発明の画像形成方法は、カラー画像形成方法に限定されず、モノクロトナーを用いた画像形成にも適用されるものである。
図1は電子写真方式の画像記録方法に用いられる画像形成装置の一例である。この画像形成装置には図示しないパーソナルコンピュータ等から送られてくるカラー画像情報や、画像データ入力装置、画像読み取り装置より読み取られたカラー原稿のカラー画像情報等が入力され、入力された画像情報に対して画像処理が行われる。
1Y、1M、1C、1Kはそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色トナー画像を形成する電子写真画像形成ユニットであり、複数の張架ロール10により張架された無端状の中間転写体9の進行方向に対して1Y、1M、1C、1Kの順で直列に配設されている。また中間転写体9は各電子写真画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの静電潜像担持体2Y、2M、2C、2Kとそれぞれに対向して配設される転写手段6Y、6M、6C、6Kとの間を挿通している。
中間転写体9への画像形成の動作をイエロートナー画像を形成する、電子写真画像形成ユニット1Yを代表して説明する。
まず、静電潜像担持体2Yは、一様帯電器3Yによりその表面を一様に帯電される。次に露光器4Yによりイエロー画像に対応する像露光がなされ、静電潜像担持体2Yの表面にはイエロー画像に対応する静電潜像が形成される。このイエロー画像に対応する静電潜像は現像装置5Yによってイエロートナー画像となり、一次転写手段の一部を構成する一次転写ロール6Yの圧接力及び静電吸引によって中間転写体9上に転写される。転写後の静電潜像担持体2Y上に残留したイエロートナーは、静電潜像担持体クリーニング装置7Yよって掻き取られる。静電潜担持体2Yの表面は除電装置8Yによって除電された後、次の画像形成サイクルのために一様帯電器3Yにより再び帯電される。
多色のカラー画像形成を行なう本画像形成装置100では、各電子写真画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの相対的な位置の違いを考慮したタイミングで、上記と同様の画像形成工程が電子写真画像形成ユニット1M、1C、1Kにおいても行われ、中間転写体9上にフルカラートナー画像が形成される。中間転写体9上に形成されたフルカラートナー画像は、所定のタイミングで二次転写位置へと搬送される記録用紙18に、中間転写体9を支持するバックアップロール13と、バックアップロール13に圧接する二次転写手段の一部を構成する二次転写ロール12の圧接力及び静電吸引によって転写される。
本発明の記録用紙18は、図1に示すように、画像形成装置100内の下部に配置された電子写真用記録用紙収容部としての給紙カセット17から、所定のサイズのものが給紙ロール17aによって給紙される。給紙された記録用紙18は、複数の搬送ロール19及びレジストロール20によって、所定のタイミングで中間転写体9の二次転写位置まで搬送される。そして、記録用紙18には、上述のように、二次転写手段としてのバックアップロール13と二次転写ロール12とによって、中間転写体9上からフルカラートナー画像が一括して転写されるようになっている。
また、中間転写体9上からフルカラートナー画像が転写された記録用紙18は、中間転写体9から分離された後、二次転写手段の下流側に配設された定着装置15へと搬送され、この定着装置15によって熱及び圧力でトナー画像が記録用紙18上に定着される。
また、二次転写手段により記録用紙18上に転写できなかった中間転写体9上の残トナーは、そのまま中間転写体9上に付着した状態で中間転写体クリーニング装置14まで搬送され、クリーニング手段14により、中間転写体9上から除去され次の画像形成に備える。
前記定着装置15は、図2に示すような小熱容量の定着ロール30と、加圧ベルト31及び加圧パッド32からなる加圧ベルト式定着装置である。
定着ロール30は、アルミニウムからなる肉厚1.5mm、外径25mm、長さ380mmのコア30a表面に、ゴム硬度(JIS−A)が33°のシリコーンゴムからなる弾性体層30bを厚さ0.5mm、長さ320mmに被覆し、さらに弾性体層30bの表面に厚さ30μmのPFAチューブからなる離型層30cを被覆して形成されている。定着ロール30の内部には、加熱源として650Wのハロゲンランプ33が配設されており、定着ロール30の表面温度が所定の温度(トナーの溶融温度によるが、一般には140〜190℃)となるように内部から加熱する。
前記加圧ベルト31は、厚さ75μm、外径30mm、長さ330mmのポリイミドベルトの表面に、厚さ30μmのPFAチューブからなる離型層が形成されている。加圧ベルト31内部には、加圧ベルト31を定着ロール30に押圧しニップを形成する加圧パッド32が配置されている。加圧パッド32の押圧荷重は33kgで、ニップ幅は6.5mmである。加圧ベルト31及び加圧パッド32側には熱源を持たない。
本画像形成装置100内の電子写真用記録用紙搬送経路11は画像形成装置100の側面に設けられており、その電子写真用記録用紙搬送経路11は略垂直となるように構成されている。
この略垂直な電子写真用記録用紙搬送経路11により画像形成、及び定着された記録用紙18は、画像形成装置の上部に排出することが可能な構成となっている。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、後述する実施例、および、比較例において使用される記録用紙を以下に説明するようにして作製した。
−記録用紙の作製−
<記録用紙1>
広葉樹クラフトパルプを酸素漂白工程、アルカリ抽出工程、気相二酸化塩素処理工程からなるECF多段漂白法にて漂白処理した。得られたパルプを濾水度450mlになるよう叩解調整し、前記パルプ100質量部に対して、ベントナイト填料を3質量部、軽質炭酸カルシウム填料を3質量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.1質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水90質量部、L−アスパラギン酸マグネシウム10質量部、水溶性高分子として酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースA)4質量部、導電剤として硫酸ナトリウム1質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にL−アスパラギン酸マグネシウムが1.5g/m2、酸化澱粉が0.7g/m2処理された記録用紙1を得た。
なお、参考までに述べれば、インクジェット記録にのみ使用する場合には導電剤の塗工は必要とせず、これは、以下の記録用紙作製例についても同様である。
<記録用紙2>
広葉樹クラフトパルプをキシラナーゼ処理工程、アルカリ抽出工程、過酸化水素処理工程、オゾン処理工程からなるTCF多段漂白法にて漂白処理した。得られたパルプを濾水度450mlになるように叩解調整し、前記パルプ100質量部に対して、カオリン填料を3質量部、軽質炭酸カルシウム填料を6質量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.2質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水85質量部、水溶性高分子としてポリアクリル酸5質量部、L−アスパラギン酸カルシウム5質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にL−アスパラギン酸カルシウムが0.8g/m2、ポリアクリル酸が0.7g/m2処理された記録用紙2を得た。
<記録用紙3>
針葉樹機械パルプをハイドロサルファイトで漂白処理し、濾水度が450mlになるように叩解調整し、前記パルプ100質量部に対して、軽質炭酸カルシウム填料を8質量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.02質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水85質量部、水溶性高分子としてカチオン変性ポリビニルアルコール(日本合成化学(株)製、ゴーセファイマー)5質量部、L−アスパラギン酸バリウム10質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にL−アスパラギン酸バリウムが2.0g/m2、カチオン変性ポリビニルアルコールが1.0g/m2処理された記録用紙3を得た。
<記録用紙4>
広葉樹クラフトパルプを記録用紙2と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対して、軽質炭酸カルシウム填料を3質量部、サポナイト填料を3質量部、中性ロジンサイズ剤を2質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水80質量部、水溶性高分子として酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースA)5質量部、塩化カルシウム5質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面に酸化澱粉が1.0g/m2、塩化カルシウムが1.0g/m2処理された記録用紙4を得た。
<記録用紙5>
広葉樹サルファイトパルプを記録用紙2と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対して軽質炭酸カルシウム填料を15質量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.1質量部配合して抄紙した。更に表面サイズ剤として水80質量部、水溶性高分子として酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースB)5質量部、L−アスパラギン酸10質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にL−アスパラギン酸が2.0g/m2、酸化澱粉が0.8g/m2処理された記録用紙5を得た。
<記録用紙6>
針葉樹サルファイトパルプを記録用紙2と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対してカオリン填料を20質量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.05質量部配合して抄紙した。更に表面サイズ剤として水92質量部、水溶性高分子として酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースA)5質量部、カチオン性樹脂(東洋紡(株)製ポリアリルアミン、PAA−HCL−10L)15質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にポリアリルアミンが3.0g/m2、酸化澱粉が1.0g/m2処理された記録用紙6を得た。
<記録用紙7>
記録用紙1の作製において、L−アスパラギン酸マグネシウムで表面改質した炭酸カルシウム60質量部を、酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製 エースA)の20%溶液100質量部と混合し、厚さ10μmの塗工層を形成した以外は同様にして、記録用紙7を作製した。
<記録用紙8>
広葉樹クラフトパルプを酸素漂白工程、アルカリ抽出工程、気相二酸化塩素処理工程からなるECF多段漂白法にて漂白処理した。得られたパルプを濾水度450mlになるよう叩解調整し、前記パルプ100質量部に対して、ベントナイト填料を3質量部、軽質炭酸カルシウム填料を3質量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.1質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水93質量部、脱アセチル化度86%のキトサン(大日精化工業(株)製、ダイキトサンP−VL、pH7の水に不溶)1質量部、クマリン酸(溶解度:5g)2質量部、水溶性高分子として酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースA)3質量部、導電剤として硫酸ナトリウム1質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にキトサンが0.5g/m2、クマリン酸が1.0g/m2、酸化澱粉が1.2g/m2処理された記録用紙8を得た。
<記録用紙9>
広葉樹クラフトパルプをキシラナーゼ処理工程、アルカリ抽出工程、過酸化水素処理工程、オゾン処理工程からなるTCF多段漂白法にて漂白処理した。得られたパルプを濾水度450mlになるように叩解調整し、前記パルプ100質量部に対して、カオリン填料を3質量部、軽質炭酸カルシウム填料を6質量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.2質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水97質量部、ポリアクリル酸1質量部、脱アセチル化度100%キトサン(大日精化工業(株)製 ダイキトサン100−D、pH7の水に不溶)1質量部、ピロリドンカルボン酸(溶解度:7g)1質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にポリアクリル酸が0.5g/m2、キトサンが0.5g/m2、ピロリドンカルボン酸が0.5g/m2処理された記録用紙9を得た。
<記録用紙10>
針葉樹機械パルプをハイドロサルファイトで漂白処理し、濾水度が450mlになるように叩解調整し、前記パルプ100質量部に対して、軽質炭酸カルシウム填料を8質量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.02質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水96質量部、カチオン変性ポリビニルアルコール(日本合成化学(株)製、ゴーセファイマー)1質量部、脱アセチル化度100%キトサン(大日精化工業(株)製 ダイキトサン100−D−VL、pH7の水に不溶)2質量部、ピロールカルボン酸(溶解度:5g)1質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にピロールカルボン酸が0.5g/m2、キトサンが1.0g/m2、カチオン変性ポリビニルアルコールが0.5g/m2処理された記録用紙10を得た。
<記録用紙11>
広葉樹クラフトパルプを記録用紙8と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対して、軽質炭酸カルシウム填料を3質量部、サポナイト填料を3質量部、中性ロジンサイズ剤を2質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水64質量部、酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースA)5質量部、0.1N酢酸30質量部、記録用紙7に使用したキトサン1質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面に酸化澱粉が1.0g/m2、酢酸が0.036g/m2、キトサンが0.5g/m2処理された記録用紙11を得た。
<記録用紙12>
広葉樹サルファイトパルプを記録用紙8と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対して軽質炭酸カルシウム填料を15質量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.1質量部配合して抄紙した。更に表面サイズ剤として水80質量部、酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースB)5質量部、フランカルボン酸(溶解度:7g)10質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にフランカルボン酸が2.0g/m2、酸化澱粉が0.8g/m2処理された記録用紙12を得た。
<記録用紙13>
針葉樹サルファイトパルプを記録用紙8と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対してカオリン填料を20質量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.05質量部配合して抄紙した。更に表面サイズ剤として水92質量部、酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースA)5質量部、脱アセチル化度86%のキトサン(大日精化工業(株)製 ダイキトサンP−VL、pH7の水に不溶)1質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にキトサンが1.0g/m2、酸化澱粉が2.0g/m2処理された記録用紙13を得た。
<記録用紙14>
広葉樹サルファイトパルプを記録用紙8と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対してカオリン填料を20質量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.05質量部配合して抄紙した。更に表面サイズ剤として水89質量部、酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースA)5質量部、脱アセチル化度86%のキトサン(大日精化工業(株)製 ダイキトサンP−VL、pH7の水に不溶)1質量部、低分子カチオンである塩化カルシウム(溶解度:63.8g)5質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にキトサンが0.5g/m2、塩化カルシウムが2.0g/m2、酸化澱粉が2.0g/m2処理された記録用紙14を得た。
<記録用紙15>
記録用紙8の作製において、表面サイズ剤として、水63質量部、脱アセチル化度86%のキトサン(大日精化工業(株)製、ダイキトサンP−VL、pH7の水に不溶)1質量部、クマリン酸(溶解度:5g)2質量部、水溶性高分子として酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースA)3質量部、白色顔料として炭酸カルシウム30質量部、導電剤として硫酸ナトリウム1質量部からなる塗工液を調製して塗工を行い、厚さ10μmの塗工層を形成した以外は同様にして、記録用紙15を作製した。
<記録用紙16>
広葉樹クラフトパルプを酸素漂白工程、アルカリ抽出工程、気相二酸化塩素処理工程からなるECF多段漂白法にて漂白処理した。得られたパルプを濾水度450mlになるよう叩解調整し、前記パルプ100質量部に対して、ベントナイト填料を3質量部、軽質炭酸カルシウム填料を3質量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.1質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水90質量部、L−グリシン(溶解度:20g)5質量部、水溶性高分子として酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製 エースA)4質量部、導電剤として硫酸ナトリウム1質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にL−グリシンが0.8g/m2、酸化澱粉が0.7g/m2処理された記録用紙16を得た。
<記録用紙17>
広葉樹クラフトパルプをキシラナーゼ処理工程、アルカリ抽出工程、過酸化水素処理工程、オゾン処理工程からなるTCF多段漂白法にて漂白処理した。得られたパルプを濾水度450mlになるように叩解調整し、前記パルプ100質量部に対して、カオリン填料を3質量部、軽質炭酸カルシウム填料を6質量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.2質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水85質量部、水溶性高分子としてポリアクリル酸5質量部、L−プロリン(溶解度:100g)10質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にL−プロリンが1.5g/m2、ポリアクリル酸が0.7g/m2処理された記録用紙17を得た。
<記録用紙18>
針葉樹機械パルプをハイドロサルファイトで漂白処理し、濾水度が450mlになるように叩解調整し、前記パルプ100質量部に対して、軽質炭酸カルシウム填料を8質量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.02質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水85質量部、水溶性高分子としてカチオン変性ポリビニルアルコール(日本合成化学(株)製、ゴーセファイマー)5質量部、L−システイン(溶解度:22g)10質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にL−システインが2.0g/m2、カチオン変性ポリビニルアルコールが1.0g/m2処理された記録用紙18を得た。
<記録用紙19>
広葉樹クラフトパルプを記録用紙17と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対して、軽質炭酸カルシウム填料を3質量部、サポナイト填料を3質量部、中性ロジンサイズ剤を2質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水80質量部、水溶性高分子として酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースA)5質量部からなる水溶性単量体アミノ酸を含有しない処理液を調製してサイズプレスを行い、表面に酸化澱粉が1.0g/m2処理された記録用紙19を得た。
<記録用紙20>
広葉樹サルファイトパルプを記録用紙17と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対して軽質炭酸カルシウム填料を15質量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.1質量部配合して抄紙した。更に表面サイズ剤として水80質量部、水溶性高分子として酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースB)5質量部、L−アスパラギン酸(溶解度:0.24g)10質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面にL−アスパラギン酸が2.0g/m2、カチオン化澱粉が0.8g/m2処理された記録用紙20を得た。
<記録用紙21>
針葉樹サルファイトパルプを記録用紙17と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対してカオリン填料を20質量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.05質量部配合して抄紙した。更に表面サイズ剤として水92質量部、水溶性高分子として酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製、エースA)5質量部、塩化カルシウム10質量部からなる処理液を調製してサイズプレスを行い、表面に塩化カルシウムが2.0g/m2、酸化澱粉が1.0g/m2処理された記録用紙21を得た。
<記録用紙22>
記録用紙16の作製において、表面サイズ剤として酸化澱粉を含まない処理液を用いた以外は同様にして、表面にL−グリシンが0.8g/m2処理された記録用紙22を作製した。
<記録用紙23>
記録用紙16の作製において、表面サイズ剤として、水60質量部、L−グリシン(溶解度:20g)5質量部、水溶性高分子として酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製 エースA)4質量部、炭酸カルシウム30質量部、導電剤として硫酸ナトリウム1質量部からなる塗工液を調製して、厚さ10μmの塗工層を形成した以外は同様にして、記録用紙23を作製した。
−記録用紙の物性の測定−
得られた記録用紙の物性は、以下の条件で測定した。ステキヒトサイズ度は JIS−P−8122:1976に準拠し標準環境(温度23℃、相対湿度50%RH)で測定した。また、表面抵抗率及びおよび体積抵抗率は、JIS−K−6911に準拠し標準環境及び高温高湿環境(28℃、85%RH)で測定した。
平滑度は 王研式デジタル表示型透気度平滑度測定器EY型(旭精工(株)製)を用いて、JIS−P−8119:1998に準拠して測定した。地合い指数は、M/K Systems,Inc.(MKS社)製の3Dシートアナライザー(M/K950)を使い、そのアナライザーの絞りを直径1.5mmとし、マイクロフォーメーションテスター(MFT)を用いて測定した。その結果を表1〜3に示す。
Figure 2005119014
Figure 2005119014
Figure 2005119014
−前処理液の調製−
<前処理液1>
下記の組成の混合物に脱イオン水を加え合計50質量部とし、30分間攪拌した後に2μmのメンブランフィルターを通過させて前処理液1を作製した。
・エチレングリコール:12質量部
・エタノール:4質量部
・尿素:5質量部
・ラウリル硫酸エステルナトリウム塩:0.1質量部
・ピロリドンカルボン酸:5質量部
<前処理液2>
下記の組成の混合物に脱イオン水を加えて合計50質量部とし、前処理液1と同様にして前処理液2を作製した。
・エチレングリコール:12質量部
・エタノール:5質量部
・尿素:3質量部
・界面活性剤(日信化学(株)製 サーフィノール465):0.1質量部
・クマリン酸:5質量部
<前処理液3>
下記の組成の混合物に脱イオン水を加えて合計50質量部とし、前処理液1と同様にして前処理液3を作製した。
・エチレングリコール:12質量部
・エタノール:5質量部
・尿素:3質量部
・界面活性剤(日信化学(株)製 サーフィノール465):0.1質量部
・フランカルボン酸:5質量部
これら前処理液のpHを、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下にて測定した。その結果を表4に示す。
Figure 2005119014
−インクの調製−
後述する実施例及び比較例において使用するインクは、以下のようにして調製した。
<インク1>
スチレン/メタクリル酸共重合体のNa塩(モノマー比:50/50、重量平均分子量:7000)の水溶性高分子(顔料を分散させるための分散剤)の水溶液(固形分10質量%)45質量部と、イオン交換水210質量部とを混合攪拌しながら、カーボンブラック(商品名:BPL、キャボット社製)45質量部を加え30分間攪拌した。その後、マイクロフルイダイザーで10000psi/30path分散した。分散後、1mol/lのNaOH水溶液でpH9に調整した。さらに、遠心分離装置で遠心分離(8000rpm、15分)を実施した後、2μmメンブランフィルターを通過させた。得られた分散液を純水で希釈して固形分10質量%の顔料分散液を得た。
次に、下記組成の混合物に脱イオン水を加え合計50質量部とし、30分間攪拌した。この後、前記顔料分散液を50質量部添加し、さらに攪拌を30分間続けた。これを2μmのメンブランフィルターを通過させてインク1を作製した。インク1の物性は、表面張力が35mN/m、粘度が2.6mPa・s、貯蔵弾性率が24℃において1.0×10-3Paであった。また、インク1中の粒径500nm以上の粗粒個数は11.2×104個であった。
・エチレングリコール:12質量部
・エタノール:4質量部
・尿素:5質量部
・ラウリル硫酸エステルナトリウム塩:0.1質量部
<インク2>
Cabojet300(キャボット社製)を遠心分離処理(8000rpm、40分)して、顔料分散液(顔料濃度14.4重量%)を得た。
次に、下記組成の混合物に脱イオン水を加え合計50質量部とし、この後、前記顔料分散液を50質量部を添加して全量を100質量部とし、1Nの水酸化リチウム水溶液をpHが8.0となるまで滴下した。その後30分間攪拌し、2μmのメンブランフィルターを通過させインク2を作製した。このインクの表面張力33mN/m、粘度は2.1mPa・sであった。貯蔵弾性率は24℃において5.0×10-3Pa、インク2中の粒径500nm以上の粗粒個数は18.6×104個であった。
・前記顔料分散液:35質量部
・ジエチレングリコール:18質量部
・尿素:5質量部
・水溶性高分子(n−ブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モノマー比:50/50、重量平均分子量:8200)):1.5質量部
<インク3>
下記組成の混合物に脱イオン水を加え全量を100質量部とし、30分間攪拌した。この後、2μmのメンブランフィルターを通過させた。このインク物性は、表面張力が30mN/m、粘度が2.8mPa・sであった。貯蔵弾性率は24℃において2.5×10-3Pa、インク3中の粒径500nm以上の粗粒個数は0.08×104個であった。
・顔料(C.I.Pigment Blue 15:3):4質量部
・水溶性高分子<スチレンアクリル酸/アクリル酸カリウム共重合体(モノマー比;33/67、重量平均分子量;6100>:1.5質量部
・ジグリセリンエチレンオキサイド付加物:5質量部
・スルホラン:5質量部
・界面活性剤(ノニオンE−215:日本油脂社製):0.03質量部
<インク4>
下記組成の混合物に脱イオン水を加え全量を100質量部とし、30分間攪拌した。この後、2μmのメンブランフィルターを通過させた。このインク物性は、表面張力が28mN/m、粘度が2.8mPa・sであった。貯蔵弾性率は24℃において1.0×10-2Pa、インク4中の粒径500nm以上の粗粒個数は0.03×104個であった。
・顔料(C.I.Pigment Red 122):4質量部
・ジエチレングリコール:10質量部
・プロピレングリコール:5質量部
・チオジエタノール:5質量部
・界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製):0.03質量部
<インク5>
下記組成の混合物に脱イオン水を加え全量を100質量部とし、30分間攪拌した。この後、2μmのメンブランフィルターを通過させた。このインク物性は、表面張力が29mN/m、粘度が2.9mPa・sであった。貯蔵弾性率は24℃において1.0×10-2Pa、インク5中の粒径500nm以上の粗粒個数は0.03×104個であった。
・表面処理顔料(C.I.Pigment Yellow 17):4質量部
・水溶性高分子(スチレンマレイン酸/メタクリル酸ナトリウム共重合体(モノマー比:20/80、重量平均分子量:6000)):1.5質量部
・グリセリン:15質量部
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル:5質量部
・界面活性剤(サーフィノールTG:日信化学社製):0.03質量部
<インク6>
下記組成と脱イオン水で全量を100質量部とし、30分間攪拌した。この後、1μmのメンブランフィルターを通過させた。このインクの表面張力は31mN/m、粘度2.0mPa・sであった。貯蔵弾性率は24℃において1.0×10-2Paであった。
・染料(ダイレクトレッド227、10%水溶液):20質量部
・エチレングリコール:25質量部
・水溶性高分子(スチレンマレイン酸/メタクリル酸ナトリウム共重合体(モノマー比:20/80、重量平均分子量:6000)):1.5質量部
・尿素:5質量部
・界面活性剤(サーフィノール465):2質量部
<インク7>
下記組成と脱イオン水で全量を100重量部とし、30分間攪拌した。この後、1μmのメンブランフィルターを通過させた。このインクの表面張力は31mN/m、粘度2.0mPa・sであった。貯蔵弾性率は24℃において1.0×10-2Paであった。
・染料(C.I.ダイレクトイエロー−1、10%水溶液):20質量部
・エチレングリコール:25質量部
・水溶性高分子(スチレンマレイン酸/メタクリル酸ナトリウム共重合体(モノマー比:20/80、重量平均分子量:6000)):1.5質量部
・尿素:5質量部
・界面活性剤(サーフィノール465):2質量部
<インク8>
インク2の作製において、水溶性高分子を用いなかった以外は同様にして、インク8を作製した。インクの物性は、表面張力が33mN/m、粘度が2.1mPa・s、貯蔵弾性率が24℃において5.0×10-3Paであった。また、インク2中の粒径500nm以上の粗粒個数は18.6×104個であった。
<インク9>
インク3の作製において、水溶性高分子を用いなかった以外は同様にして、インク9を作製した。インクの物性は、表面張力が30mN/m、粘度が2.8mPa・s、貯蔵弾性率が24℃において2.5×10-3Paであった。また、インク3中の粒径500nm以上の粗粒個数は0.08×104個であった。
<インク10>
インク6の作製において、水溶性高分子を用いなかった以外は同様にして、インク10を作製した。インクの物性は、表面張力が31mN/m、粘度が2.0mPa・s、貯蔵弾性率が24℃において1.0×10-2Paであった。
−インクの物性の測定−
上記得られたインクの物性は、以下の条件で測定した。表面張力はウイルヘルミー型表面張力計を用いて、23℃、55%RHの環境下で測定した。粘度は被測定インクを測定容器に入れ、ネオマット115(Contraves社製)に装着して、測定温度:23℃、せん断速度:1400s-1の条件で測定した。また、貯蔵弾性率はVE型粘弾性アナライザー(VILASTIC SCIENTIFIC INC.社製)を用いて24℃における貯蔵弾性率を測定した。角速度が1〜10rad/sとなる範囲での測定を行い、そのときの貯蔵弾性率を求めた。代表値として10rad/s場合の値を示した。その結果を表5に示す。
Figure 2005119014
(実施例1〜3および比較例1〜4)
得られた記録用紙1〜7、前処理液およびインク1〜6を表6に示すように組合せて、下記のインクジェット記録装置、及び後記電子写真記録装置にて印字テストを行い、各種評価を行った。その結果を表4に示す。尚、表6中の「記録用紙」の欄の「No」は、各々の実施例/比較例で用いた記録用紙(例えば、実施例1では記録用紙1)を意味し、「前処理液」の欄の「No」は各々の実施例/比較例で用いた前処理液を意味し、「インク」の欄の「No」は、各々の実施例/比較例で用いたインクを意味する。
印字テストに用いた熱インクジェット記録装置としては、富士ゼロックス(株)製の WorkCentreB900 を使用して、前処理液をインクタンクに充填したものをインクと同様に装着した。印字は、23℃、55%RHの環境において行った。また、ノズルピッチは800dpi、256ノズル、ドロップ量約15pl、最大インク/前処理液打ち込み量約15ml/m2、印字モードは片側一括印字にて、ヘッドスキャンスピード約1100mm/秒として実施した。
以下、各種評価について説明する。
−画像光学濃度−
印字一日後のソリッドパッチ部の画像光学濃度を、エックスライト369(エックスライト社製)を用いて測定した。
−色間にじみ(ICB)評価−
2色のインクを2cm×2cm角のパッチとしてそれぞれ接するように印字した。色間にじみ評価は接した印字物の混色を10人の被検者により目視にて、以下の基準で評価し、〇、△を許容範囲とした。
○:全く混色していない。
△:混色がわずかに発生しているが、問題にならないレベルであった。
×:混色が問題となるレベルで発生した。
−フェザリング評価−
フォントサイズ8ポイントの文字を染料インクおよび顔料インク各1種類により印字した。フェザリング評価は、目視にて、以下の基準により行った。◎、〇を許容範囲とした。
◎:漢字、ひらがな全てにおいて、滲みが全く観察されない。
○:漢字、ひらがなの極一部で、滲みが観察される。
×:漢字、ひらがなに滲みが観察され、実用には適さない。
−インク乾燥時間評価−
インク乾燥時間の評価は、印字直後から画像部に用紙を押付けて転写を観察することにより行った。用紙への転写が無くなるまでの時間を計測した。画像部はソリッドパッチ部を用い、以下の基準により評価を行った。◎、〇を許容範囲とした。
◎:2秒以下
○:2〜5秒
△:5〜10秒
×:10秒以上
−裏写り評価−
印字一日後のソリッドパッチ部の裏面の濃度を、エックスライト369(エックスライト社製)を用いて濃度を測定した。
さらに、電子写真記録装置として、富士ゼロックス(株)製のDocuCentreColor400CPを使用して、画像濃度、転写性の評価を下記の基準で行なった。
−画像濃度評価−
28℃85%RH環境下に8時間以上調湿した、実施例及び比較例の記録紙を用いて、5cm×5cmの大きさのマゼンタ100%ベタ画像を印字し、光学濃度をエックスライト369(エックスライト社製)を用いて測定した。判定基準は以下の通りとし、◎、〇を許容範囲とした。
◎:1.5以上
〇:1.1以上1.5未満
×:1.1未満
−転写性評価−
画像濃度評価で印字した画像について、転写不良による画像斑の発生レベルを確認した。判定基準は以下の通りとし、◎を許容範囲とした。
◎:画像の濃度斑が全く判別できない。
△:画像の斑がわずかながら肉眼で確認できる。
×:画像全体が斑だらけである。
以上の結果を表6に示す。
Figure 2005119014
(実施例4〜6および比較例5〜9)
得られた記録用紙8〜15、前処理液およびインク1、3〜6、7を表7に示すように組合せて、前記と同様のインクジェット記録装置、及び後記電子写真記録装置にて印字テストを行い、同様の各種評価を行った。その結果を表7に示す。
Figure 2005119014
(実施例7〜9および比較例10〜14)
得られた記録用紙16〜23、前処理液およびインク1、8〜10を表8に示すように組合せて、前記と同様のインクジェット記録装置、及び後記電子写真記録装置にて印字テストを行い、同様の各種評価を行った。その結果を表8に示す。
Figure 2005119014
表6、7、8に示すように、本発明の記録用紙を用いてインクジェット記録装置にて印字した場合には、比較例と比べて、色間にじみおよびフェザリングに優れると共に、画像濃度が高く、乾燥性が早く、両面印字適性である裏写り濃度も低減した。また、電子写真記録装置にて印字した場合にも、転写不良の発生無く、従来の記録用紙と同様に用いることができた。
本発明の画像形成方法に用いる電子写真方式の画像形成装置の好適な一例を示す概略構成図である。 本発明の画像形成方法に適用される定着装置の一例を示す概略構成図である
符号の説明
1Y,1M,1C,1K 電子写真形成ユニット
2Y,2M,2C,2K 静電線像担持体
3Y,3M,3C,3K 帯電器
4Y,4M,4C,4K 露光器
5Y,5M,5C,5K 現像装置
6Y,6M,6C,6K 一次転写ロール
7Y,7M,7C,7K 静電潜像担持体クリーニング装置
8Y,8M,8C,8K 除電装置
9 中間転写体
10 張架ロール
11 電子写真用記録用紙搬送経路
12 二次転写ロール
13 バックアップロール
14 クリーニング手段/中間転写体クリーニング装置
15 定着装置
16 搬送方向切替ゲート
17 給紙カセット
17a 給紙ロール
18 記録用紙
19 搬送ロール
20 レジストロール
21、23 電子写真用記録用紙排出口
22、24 排出ロール
25、26 電子写真用記録用紙排紙トレイ
30 定着ロール
30a コア
30b 弾性体層
30c 離型層
31 加圧ベルト
32 加圧パッド
100 画像形成装置

Claims (4)

  1. パルプ繊維と填料とを主体に構成される原紙の表面に、水溶性高分子と、下記(1)〜(3)で示される成分のうちから選択される1つと、を少なくとも含み、かつ顔料を実質的に含まない処理液を塗布してなることを特徴とする記録用紙。
    (1)二価以上の金属と結合したアミノ酸キレート物質
    (2)pHが7の水に不溶なキトサン及び複素カルボン酸
    (3)水溶性単量体アミノ酸
  2. 無色もしくは淡色の前処理液を記録用紙表面に付与した後、少なくとも、水及び/または水溶性の有機溶媒と、親水性色材とを含有するインクの液滴を記録用紙表面へ吐出させ、該記録用紙に画像を記録するインクジェット記録方式の画像記録方法であって、
    前記記録用紙が、請求項1記載の記録用紙であることを特徴とする画像記録方法。
  3. 少なくとも、水及び/または水溶性の有機溶媒と、親水性色材とを含有するインクの液滴を記録用紙表面へ吐出させ、該記録用紙に画像を記録するインクジェット記録方式の画像記録方法であって、
    前記記録用紙が、請求項1記載の記録用紙であることを特徴とする画像記録方法。
  4. 静電潜像担持体表面を帯電する帯電工程と、該静電潜像担持体表面を露光し静電潜像を形成する露光工程と、該静電潜像担持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像剤を用いて現像し、トナー画像を形成する現像工程と、該トナー画像を記録用紙表面に転写する転写工程と、該記録用紙表面のトナー画像を定着する定着工程と、を含む電子写真方式の画像記録方法であって、
    前記記録用紙が、請求項1に記載の記録用紙であることを特徴とする画像記録方法。
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