JP4062174B2 - インクジェット用及び電子写真兼用の記録用紙、並びにそれを用いた記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にカール、波打ちに優れたゼログラフィ共用のインクジェット記録用紙、インクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式はカラー化が容易であり、また、消費エネルギーが少なく、記録時の騒音も低く、さらにプリンタの大きさ、製造コストを低く抑えることができるという特徴を有することから広く注目されてきている。さらに近年では高画質化、高速化、高信頼化が進んでおり、普通紙に対する画質の向上が顕著である。こうしたことより、インクジェット記録を用い、オフィス用として使用する用途が拡大してきている。
【0003】
従来のインクジェットプリンターは、黒文字画質と混色にじみを改善するため、黒インクは顔料を色材とした用紙への浸透性の比較的遅いインクを使用し、カラーは染料を色材とした用紙への浸透性の速いインクを使用したものが主流である。しかしながら、オフィス用にインクジェット記録を用いる場合には、高生産性が要求され、高速印字の必要が生じている。そのため、カラーインクに限らず、黒インクも普通紙への浸透性の早いインクを使用する必要が生じた。また、オフィス文書では、プレゼンテーション文書や、掲示用文書などで、画像面積率の大きい文書もある。こうした画像面積率の大きい文書に用紙への浸透性を早いインクを印字した場合は、印字直後及び印字乾燥後のカール、波打ち発生が大きく、プリンター内での用紙づまりや画像部のこすれが発生する。またオフィス文書でよく用いられる両面印字に対しても、印字後のカールや波うちが大きいと用紙づまりやヘッドなどでの画像部のこすれが発生するなどの問題があった。
【0004】
こうしたインクジェット記録における印字後のカール、波打ちを改善するために、抄造したシートを一度加湿し、紙の応力を緩和することでカール、波打ちを軽減する方法が提案されており(例えば、特許文献1参照。)、記録紙の水中伸度を制御する方法なども提案されているが(例えば、特許文献2〜5参照。)、一定の効果は発現するものの、水に対しての紙の伸びをなくすことは非常に困難であり、特に用紙内部への浸透性が速いインクでインクの吐出量が多い場合や印字速度が速く単位時間当たりに吐出されるインク量が多くなる場合にはカールが大きく実用に供することはできない。さらに、このような普通紙はゼログラフィ方式の記録装置で記録した場合の熱収縮カールを抑えることは難しかった。
また、多層構造のシートによりカールを低減しようとする試みも提案されている。たとえば、不織布にピグメントからなるインク受理層を持つフィルムを貼り付けたインクジェット用紙が提案されているが(例えば、特許文献6参照。)、普通紙性には遠く、オフィスにはなじまない欠点がある。また、透明樹脂フィルムにカチオン性樹脂に浸漬した極薄紙を貼り付けたインクジェット用紙が提案されているが(例えば、特許文献7参照。)、やはり透明なシート材料であり、オフィスで使用する普通紙には使用できない欠点がある。
【0005】
さらに、電子写真用転写紙として、ねじれカールを低減させるために表裏の繊維配向角差が10度以下である転写紙の提案があるが(例えば、特許文献8参照。)、インクジェット記録に使用した際には、大きなカールを生じるという欠点がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平3−38375号公報
【特許文献2】
特開平3−38376号公報
【特許文献3】
特開平3−199081号公報
【特許文献4】
特開平7−276786号公報
【特許文献5】
特開平10−46498号公報
【特許文献6】
特開平9−254535号公報
【特許文献7】
特開平11−42847号公報
【特許文献8】
特許第3311399号明細書
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
オフィスに使用するインクジェット記録装置では、高速記録が望まれ、その結果前述したように、浸透性の早いインクを使用した方式が使用される。この際、インクジェット記録で顕著に発生する記録用紙の印字後のカール、波打ちと電子写真方式でのカールを低減することを目的とする。また、インクジェット記録及び電子写真方式のカール、波打ち発生を低減させ、さらに高品質な画像を発現する記録用紙及び記録方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上記のような欠点を解決すべく鋭意検討した結果、普通紙において、紙層を多層構造とし、各々の層の繊維配向の方向を記録用紙の1辺を基準にして交差するように抄きあわせることにより、水性インクを用いたインクジェット記録のみならず電子写真方式の熱定着方式においても劇的にカールや波うち現象が低減することを見出した。さらに、サイズプレスなどで、記録紙上に水溶性の多価金属塩が処理されていることにより、大幅な画質向上と水性インクジェットにおけるカール、波うちさらに低減することを見出し、本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 木材パルプ繊維を主体とし、少なくとも隣接する2層以上の抄き合わせからなる記録用紙であって、
前記2層の各層の繊維配向角が、記録用紙の1辺に対して5度を超え20度以下であり、
前記1辺を基準として、前記2層のうち1層の繊維配向角が、他の1層の繊維配向角とは反対方向に配向してなり、
すべての層の繊維配向角を合算した値が、5度以下であり、
サイズ剤および導電剤によりサイズ処理されてなる、
ことを特徴とするインクジェット及び電子写真兼用の記録用紙。
(2) 少なくとも片面に、単位面積当りの質量が0.1g/m2以上5g/m2未満の範囲内で、水溶性の多価金属塩が塗布されていることを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット及び電子写真兼用の記録用紙。
(3) 水溶性多価金属塩が、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、及び酢酸マグネシウムからなる郡から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット及び電子写真兼用の記録用紙。
(4) 粘度が1.5mPa・s以上5.0mPa・s以下であり、表面張力が25mN/m以上37mN/m以下である水性インクを用い、該水溶性インクの液滴を記録信号に応じてオリフィスから出させて記録を行うインクジェット記録方法であって、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の記録用紙に記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
(5) 前記水溶性インクが、少なくとも水溶性色材、水、及び界面活性剤を含むことを特徴とする前記(4)に記載のインクジェット記録方法。
(6) 前記水溶性インクが、少なくとも水不溶性色材、水溶性有機溶媒、及び水を含むことを特徴とする前記(4)に記載のインクジェット記録方法。
(7) 電子写真用トナーを用いて、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の記録用紙に画像を形成する電子写真記録方法。
さらに詳細に本発明の作用を説明する。本発明者らは、印字直後に発生するカール及び波打ちは、水性インク中の水を吸収した繊維層の急激な伸びにより発生すること、及び、用紙の厚さ方向へのインク浸透が早い程、カール及び波打ちが大きくなること、を確認した。また、放置乾燥後に発生するカール及び波打ちについては、インクを吸収した繊維層の脱湿による縮みにより発生すること、及び、用紙の厚さ方向へのインク浸透が早く、インクの浸透が深くなる程、放置乾燥後のカール及び波打ちが大きくなることを確認した。浸透性の早いインクは、オフィス等で好まれて使用されているため、これらの結果から本発明者らは、浸透性の早いインクを用いたインクジェット記録においても、いかにカール、波うちを小さくできるかについて検討した。
そこで、本発明者らは、繊維自体の水による伸び縮みの挙動を抑えるのでなく、シートの伸び及び縮みを層構成のシート間で相殺することを試みた。すると驚くべくことに、実験用の抄紙機で抄紙したシートを繊維配向角が10度を超える角度差をつけて抄き合わせた多層シートに、水性インクジェット記録をしたところ印字直後のカールも乾燥後のカールも激減した。また電子写真方式記録装置で熱定着してもカールがほとんど発生しないことを見出すことができた。
【0010】
より好ましい条件を実験用抄紙機で確認したところ、シートのある1辺に対して繊維の配向角が20度を超えたシートをその辺に対して逆方向に20度を超えるシートと抄き合わせた場合には前述の効果が薄れることを見出した。同様に5度以下の繊維配向角では効果がやはり低くなっていた。記録用紙のある1辺を基準とするのは、記録装置の搬送方向、印字方向に起因するためである。すなわち、単に、ある繊維配向角を有するシートを抄き合わせた記録用紙ではなく、記録装置の搬送方向、印字方向を考慮し繊維配向を行なうことが、記録用紙のカール・波打ち低減に極めて有効であることを見出した。
また、抄き合わせたすべての層の繊維配向角を合算した値が、5度を越えるとねじれが発生することも確認できた。したがって、少なくとも隣接する2層の繊維配向角が5度を超え20度以下で、かつすべての層の繊維配向角を合算した値が5度以下の記録用紙は、カール、波打ちを更に低減する効果があることを突き止めた。
さらに、繊維配向比(繊維が配向している方向の超音波伝播速度/繊維が配向している方向に直角の方向の超音波伝播速度)が1.1以上2.0以下の時、上述したカール、波打ち低減効果が顕著に現れた。
【0011】
また、このように作製した多層記録用紙の表面に、水溶性の多価金属塩を少量処理したところ、浸透性の早いインクを使用したインクジェット記録においても、カール、及び波打ち低減効果が大きくなることを突き止めた。これは、インク中の色材が水溶性多価金属塩により凝集し、インクが増粘することにより、インクの浸透性が低下してカール改善効果が増大したものと思われる。
【0012】
上記(1)〜(7)の手段により、浸透性の早いインクを使用しても、上記多層記録用紙を用いれば、印字後のカール及び波打ちを低減させ、さらに高品質な画像を発現させることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
まず、記録用紙の層構成について、詳細に説明する。
本発明の記録用紙は、少なくとも2層以上の抄き合わせからなり、3層以上であっても良い。また、各層の繊維配向角は、0度以上20度以下であるが、そのうち、少なくとも隣接する2層において、各層の繊維配向角は、5度以上20度以下でなければならず、好ましくは、7度以上18度以下である。
ここで、記録用紙は、矩形のカットシートであり、繊維配向角は、カットシートの1辺に対して求められる。いずれか1辺からみて、上記範囲の繊維配向角となる記録用紙は、本発明に該当する。また、当該1辺に対し、時計回り方向を+とし、反時計周り方向を−として求める。請求項1および2に示す繊維配向角は、絶対値で表示した。
本発明では、当該基準となる1辺に対し、隣接する2層の配向角が、それぞれ反対方向であることを特徴とする。例えば、一方の層が、時計回りに繊維が配向していれば、他層は、反時計回りとなる。少なくとも隣接する2層が、反対方向の繊維配向であればよいが、すべての層において、隣接する層どうしが、反対方向の繊維配向であることが好ましい。
【0015】
また、上記隣接する2層において、繊維配向角を合算した値が、5度以下である。例えば、基準となる1辺に対し、1層の繊維配向角が−5度であり、他層の繊維配向角が+8度であれば、繊維配向角の合算値は、+3度となる。より好ましくは、すべての層の繊維配向角を合算した値が、5度以下の場合であり、更に好ましくは、すべての層の繊維配向角を合算した値が、3度以下の場合である。
【0016】
また繊維配向角は、野村商事株式会社製Sonic Sheet Testerを使用して算出した。
【0017】
さらに、繊維配向比(繊維が配向している方向の超音波伝播速度/繊維が配向している方向に直角の方向の超音波伝播速度)が、1.1以上2.0以下の時、上述したカール、及び波打ち低減効果が顕著に現れた。さらに好ましくは、1.15〜1.70のときである。
【0018】
次に、本発明の記録用紙について説明する。本発明の記録用紙には、化学パルプ、具体的には広葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等、木材及び綿、麻、じん皮等の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプ等を使用できる。また、木材やチップを機械的にパルプ化したグランドウッドパルプ、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、及び、チップをやや軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ等も使用できる。これらはバージンパルプのみで使用してもよいし、必要に応じて古紙パルプを加えてもよい。
【0019】
また、バージンで使用するパルプは、塩素ガスを使用せず二酸化塩素を使用する漂白方法(Elementally Chlorine Free;ECF)や塩素化合物を一切使用せずにオゾン/過酸化水素等を主に使用して漂白する方法(Total Chlorine Free; TCF)で漂白処理されたものであってもよい。
また、古紙パルプの原料として、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙、印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙などの上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙、中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙を配合することができる。
また本発明の記録用紙では、不透明度、白さ及び表面性を調整するため、填料を30質量%程度まで配合することができる。配合量が30質量%を超えるとインクジェット記録において発色性が劣ることがあり、また、紙粉の発生が顕著となりインクジェット記録時にヘッドづまりを発生させたり、電子写真方式の記録装置ともに紙づまりを発生したりする。填料は配合しなくてもかまわないが、裏写り防止や、白さの確保のため配合したほうが好ましい。カール発生防止の観点からも、繊維間の伸縮挙動を低減する目的から、好ましくは3質量%から20質量%配合する。使用できる填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の白色無機顔料、及び、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、尿素樹脂、等の有機顔料を挙げることができる。また、古紙を配合する場合には、古紙原料に含まれる灰分を予め推定して添加量を調整する必要がある。
【0020】
更に、本発明の記録用紙に使用する内添サイズ剤としては、ロジンサイズ剤などの酸性抄紙に使われるもの、中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)、アルキルケテンダイマー(AKD)、石油樹脂系サイズ剤などの中性抄紙に用いられるサイズ剤が使用できるがこれらに限定されるものではない。カチオン性樹脂の内部への浸透を抑制するためには、該樹脂を塗布する前の用紙サイズ度は10秒以上60秒未満であることが好ましい。
【0021】
本発明に使用される記録用紙の坪量は、好ましくは、60g/m2以上128g/m2以下が良い。更に好ましくは、60g/m2以上100g/m2以下が良い。また更に好ましくは60g/m2以上90g/m2以下坪量がよい。坪量が高い程、カール、及び波打ちには有利であるが、坪量が127g/m2を超えると用紙の腰が強く、プリンターの用紙走行性が低下することがある。60g/m2より低いと、カール、波打ちの発生を小さく抑えることが難しく、裏移りの観点からも好ましくない。
【0022】
本発明の記録用紙表面には、表面の繊維のピック防止や、サイズ性向上などを目的として、酸化でんぷん、リン酸エステル化でんぷん、自家製変性でんぷん、カチオン化でんぷん又は各種変性でんぷん、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ハイドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤、又はそれらの誘導体等を単独あるいは混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。
撥水性の指標であるサイズ度は、前述した内添サイズ剤、表面サイズ剤の添加量によって調整する。ステキヒトサイズ度としては5秒以上60秒以下が好ましい。
【0023】
また、これらの表面塗布液には水溶性の多価金属塩を混合することができる。これは、インクジェットインク中のアニオン基を持つ色材や、ポリマーを多価金属塩の持つカチオン基で凝集させ、優れた印字画質をえることや、色材の凝集性をすばやく起こすことによりインク粘度を増化させ用紙内部への浸透を抑制することに効果があり、印字直後に発生するカール、波打ち、放置乾燥後のカール、波打ち対しても効果を発生するものである。
【0024】
本発明で利用できる多価金属塩としては、カリウム、バリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、錫、マンガン、アルミニウムの他の多価金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩、ギ酸塩、酢酸塩等が使用でき、具体的には、塩化バリウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、ギ酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、ギ酸亜鉛、塩化錫、硝酸錫、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、ギ酸マンガン、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム等が例示でき、これらは単独又は2種以上併用して利用できる。これら多価金属塩のうち、水への溶解度が高く、価数の高い金属塩が好ましい。さらに多価金属塩の対イオンが強酸であると、塗布後の用紙黄変が発生するため、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムが好ましい。
【0025】
さらに表面塗布液には用紙表面の導電性を付与する目的で、上述した水溶性の多価金属塩をはじめ、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機物や、アルキルリン酸エステル酸、アルキル硫酸エステル酸、スルホン酸ナトリウム塩、第4級アンモニウム塩等の有機系の材料を単独で又は混合して使用することができる。この他に、紙力増強剤、染料、pH調整剤等、通常の塗被紙用基紙に配合される各種助剤などを適宜使用することが可能である。
次に、上記表面塗布溶液をサイズプレス、シムサイズ、ゲートロール、ロールコーター、バーコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、ブレードコーター等の通常使用されている塗布手段によって前記原紙に塗布することができる。その後乾燥工程を経て、本発明の記録用紙を得ることができる。
多価金属塩の塗布量としては、0.1g/m2以上5g/m2以下が好ましい。塗布量が0.1g/m2より少ないと、インク中の顔料やアニオン高分子との反応が弱まるため、結果として画質の低下が生じやすい。また印字直後のカール、波打ち、放置乾燥後のカール、波打ちに対する効果が若干低下する。また塗布量が5g/m2を越える場合は、インクの浸透性が悪化し、高速印字においてインク乾燥性の問題が生じる。特に0.1g/m2以上2g/m2以下が同様の理由により、より好ましい。
【0026】
これらの紙料により、多層で抄紙する方法は、各層の紙料をそれぞれ用意し、たとえば円網型のバット式、サクションフォーマー、ウルトラフォーマーなどの抄紙機や、長網型のArcu−Former(Tampella AB:OY製)、Ultra−Twin−Former(株式会社小林製作所製)、Alladin−Former(三起鉄工株式会社製)などの抄紙機を用いることができるが、これらに限られるものではない。
【0027】
本発明の記録用紙は、インクジェット用、電子写真用として用いることができるが、その他の記録用紙としても使用することが可能である。
【0028】
前記のように、本発明の記録用紙に記録する方法については、特に限定されないが、インクジェット及び電子写真等が挙げられる。
本発明のインクジェット記録方法は、インク液滴を記録信号に応じて、オリフィスから上記本発明の記録用紙上にインクを噴射(以下、「吐出」とする場合あり)して画像を記録(印字)する方法であれば特に限定されない。例えば、ピエゾインクジェット方式や熱インクジェット方式等の公知の方式を使用するものであってもよい。ただし、インクジェットプリンターの印字速度の高速化や画像解像度の向上を実現する観点からみた場合には、熱インクジェット記録方式を採用することが好ましい。
当該インクは、少なくとも水溶性色材、水、及び界面活性剤を含むもの、又は、少なくとも水不溶性色材、水溶性有機溶媒、及び水を含むもの、が好ましいが、その他、顔料分散剤、界面活性剤、各種添加剤等を含有することができる。
以下、それぞれの成分について説明する。
【0029】
1.色材
本発明のインクに使用される色材は、水溶性染料、有機顔料、無機顔料であってもよい。
黒インクの場合は顔料を主体としたものが一般的であり、黒色の顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられ、具体的な例としては、Raven7000、Raven5750、Raven5250、Raven5000 ULTRA II、Raven3500、Raven2000、Raven1500、Raven1250、Raven1200、Raven1190 ULTRA II、Raven1170、Raven1255、Raven1080、Raven1060(以上コロンビアンDカーボン社製)、Regal400R、Regal330R、Regal660R、Mogul L、BlackPearlsL,Monarch700,Monarch800、Monarch880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black 18、Color Black FW200、Color Black S150、ColorBlack S160、Color Black S170、Pritex35、PritexU、Pritex Vrintex140U、Printex140V、Special Black6、Special Black 5、Special、Black 4A、Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等が挙げられる。
【0030】
カーボンブラックの好適な構造を一律に議論することは困難であるが、粒子径が15〜30nm、BET表面積が70m2/g以上300m2/g以下、DBP吸油量が0.5L/g以上1.0×10-3L/g以下、揮発分0.5質量%以上10質量%以下、灰分0.01質量%以上1.00質量%以下であることが好ましい。上記範囲から外れたカーボンブラックを使用すると、インク中での分散粒子径が大きくなることがある。
シアン、マゼンタ、イエローインクは、、色材としては染料に限らず、疎水性顔料に親水基を含む分散剤を添加して親水性を持たせた顔料及び、自己分散型顔料も使用することができる。
【0031】
水溶性染料は、公知のもの、あるいは新規に合成したものを用いることができる。中でも、鮮やかな色彩の得られる、直接染料あるいは酸性染料が好ましい。具体的には、C.I.ダイレクトブルー−1、−2、−6、−8、−22、−34、−70、−71、−76、−78、−86、−142、−199、−200、−201、−202、−203、−207、−218、−236及び287、C.I.ダイレクトレッド−1、−2、−4、−8、−9、−11、−13、−1、−20、−28、−31、−33、−37、−39、−51、−59、−62、−63、−73、−75、−80、−81、−83、−87、−90、−94、−95、−99、−101、−110及び189、C.I.ダイレクトイエロー−1、−2、−4、−8、−11、−12、−26、−27、−28、−33、−34、−41、−44、−48、−86、−87、−88、−135、−142及び144、C.I.アシッドブルー−1、−7、−9、−15、−22、−23、−27、−29、−40、−43、−55、−59、−62、−78、−80、−81、−90、−102、−104、−111、−185及び254、C.I.アシッドレッド−1、−4、−8、−13、−14、−15、−18−21、−26、−35、−37、−249及び257、C.I.アシッドイエロー−1、−3、−4、−7、−11、−12、−13、−14、−19、−23、−25、−34、−38、−41、−42、−44、−53、−55、−61、−71、−76及び79等が用いられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。また、カチオン性染料としては、例えば、C.I.ベーシックイエロー−1、−11、−13、−19、−25、−33、−36;C.I.ベーシックレッド−1、−2、−9、−12、−13、−38、−39、−92;C.I.ベーシックブルー−1、−3、−5、−9、−19、C.I.−24、−25、26、28等があげられる。
【0032】
シアン色の顔料の具体的な例としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigment Blue−3、C.I.Pigment Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:1、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.PigmentBlue−15:34、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等が挙げられる。
【0033】
マゼンタ色の顔料の具体的な例としては、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48、C.I.Pigment Red48:1、C.I.Pigment Red57、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122、C.I.PigmentRed 123、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 168、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red 202等が挙げられる。
【0034】
イエロー色の顔料の具体的な例としては、C.I.Pigment Yellow−1、C.I.Pigment Yellow−2、C.I.PigmentYellow−3、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17、C.I.PigmentYellow−73、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−75、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.Pigment Yellow−95、C.I.PigmentYellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129,C.I.Pigment Yellow−151,C.I.Pigment Yellow−154等が挙げられる。
【0035】
なお、本発明において使用することができる顔料は、水に自己分散可能なものであってもよい。水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、顔料分散剤の存在がなくても安定に分散する顔料のことである。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して、酸・塩基処理、カップリグ剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより水に自己分散可能な顔料を得ることができる。また、このような表面改質処理を施した顔料の他、水に自己分散可能な顔料として、キャボット社製のcab−o−jet−200、cab−o−jet−300、IJX−55、IJX−253、IJX266、IJX−273オリエント化学社製のNicrojet Black CW−1、日本触媒社により販売されている顔料等の市販のものを用いてもよい。
【0036】
水に自己分散可能な顔料の表面に存在する水に対する可溶化基は、ノニオン性、カチオン性、アニオン性のいずれであってもよいが、特に、スルホン酸、カルボン酸、水酸基、リン酸が望ましい。スルホン酸、カルボン酸、リン酸の場合、そのまま遊離酸の状態でも用いることができるが、水溶性を高めるため、塩基性の化合物との塩の状態として使用することが好ましい。この場合、塩基性の化合物として、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属類、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族アミン類、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルコールアミン類、アンモニア等の塩基性化合物を使用することができる。これらの中でも、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属類の塩基性化合物は特に好ましく使用することができる。これは、アルカリ金属類の塩基性化合物が強電解質であり、酸性基の解離を促進する効果が大きいためと考えられる。
【0037】
インクにおける顔料の含有量は、0.5質量%以上20質量%以下、特に2質量%以上10質量%以下の範囲とすることが好ましい。顔料の含有量が0.5質量%未満となると、光学濃度が低くなる場合がある。また、20質量%を超えると、画像定着性が悪化する場合がある。
インク中の染料の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下、好ましくは0.5質量%以上8質量%以下、より好ましくは0.8質量%以上6質量%以下である。10質量%より多く含有させるとプリントヘッド先端での目詰まりが発生しやすく、また0.1質量%より少ないと十分な画像濃度を得ることができない。
【0038】
2.アニオン性水溶性高分子
本発明の記録材料におけるインクにおいて使用されるアニオン性の水溶性高分子としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸等の酸及びこれらの誘導体、アニオン性ポリマーエマルジョン等が挙げられ、後記するアニオン性の顔料分散剤であってもよい。
カルボン酸の具体的な例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、乳酸、酒石酸、安息香酸、アクリル酸、クロトン酸、ブテン酸、メタクリル酸、チグリン酸、アリル酸、2−エチル−2−ブテン酸、蓚酸、マロン酸、こはく酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、メチルマレイン酸、グリセリン酸などのカルボン酸及びそれらの重合体、誘導体等が挙げられる。また、これらの化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等を用いることもできる。
スルホン酸の具体的な例としては、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ベンゼントリスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、ブロモベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、4,5−ジヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸ナトリウム、o−アミノベンゼンスルホン酸等のスルホン酸、及びそれらの誘導体、また、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0039】
また、これらの化合物は、水溶性を高めるため、塩基性の化合物との塩の状態で使用することが好ましい。これらの化合物と塩を形成する化合物としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属類、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族アミン類、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルコールアミン類、アンモニア等を使用することができる。
【0040】
アニオン性水溶性高分子のより好ましい具体例としては、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等及び、これらの共重合体の塩及び誘導体が挙げられる。
なお、インクに含まれるアニオン性水溶性高分子は、親水性部と疎水性部からなる構造を持つことが好ましく、さらに、親水性官能基としてカルボン酸又はカルボン酸の塩を含むことが好ましい。
【0041】
具体的には、アニオン性水溶性高分子としては、親水性部を構成する単量体は、アクリル酸、メタクリル酸及び(無水)マレイン酸から選ばれる1種以上であることが好ましい。一方、アニオン性化合物の疎水性部を構成する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられるが、それらの中でも、スチレン、(メタ)アクリル酸のアルキル、アリール及びアルキルアリールエステルから選ばれる1種以上であることが好ましい。
これらのアニオン性水溶性高分子は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。インクにおけるアニオン性水溶性高分子の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下、特に、0.3質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。0.1未満となると、長期保存安定性に劣る場合や、光学濃度が低下する場合があり、10質量%を超えると正常に噴射できない場合や、光学濃度が低下する場合がある。
【0042】
3.水溶性有機溶媒
本発明の記録材料におけるインクにおいて用いられる水溶性有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール誘導体、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素溶媒、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄溶媒、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等が挙げられる。水溶性有機溶媒は、単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
インクにおける水溶性有機溶媒の含有量は、1質量%以上60質量%以下、特に5質量%以上40質量%以下とすることが好ましい。水溶性有機溶媒の含有量が1質量%未満となると、長期保存性が劣る場合がある。また、60質量%を超えると、吐出安定性が低下する場合があり、正常に吐出しない場合がある。
【0044】
4.水
本発明の記録材料におけるインクにおいて用いられる水は、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水等を用いることができる。
インクにおける水の含有量は、15質量%以上98質量%以下、特に45質量%以上90質量%以下とすることが好ましい。15質量%未満となると、吐出安定性が低下する場合があり、正常に吐出しない場合がある。また、98質量%を超えると、長期保存安定性で劣る場合がある。
【0045】
4.その他の成分
1)顔料インク−顔料分散剤−
インク中の顔料の分散のために、顔料分散剤を用いることができる。顔料分散剤の具体例としては、高分子分散剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの顔料分散剤の中で、水中にて電離した場合に有機陰イオンとなる顔料分散剤を、本発明においてアニオン性顔料分散剤として表現する。このアニオン性顔料分散剤は、上記のインク中のアニオン性水溶性高分子として用いることができる。
【0046】
高分子分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部を有する重合体であれば有効に使用することができる。親水性構造部と疎水性構造部を有する重合体の例としては、縮合系重合体と付加重合体が挙げられる。縮合系重合体の例としては、公知のポリエステル系分散剤が挙げられる。付加重合体の例としては、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの付加重合体が挙げられる。親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーと、疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーを適宜組み合わせて共重合することにより、目的の高分子分散剤を得ることができる。また、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独重合体を用いることもできる。
【0047】
親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、リン酸基等を有するモノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロオキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
一方、疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステルが挙げられる。
【0048】
これらのモノマーの好ましい共重合体の例としては、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0049】
また、これらの重合体に、ポリオキシエチレン基、水酸基を有するモノマーを適宜共重合して用いることもできる。さらに、酸性官能基を表面に有する顔料との親和性を高め、分散安定性を良くするために、カチオン性の官能基を有するモノマー、例えばN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノアクリルアミド、N−ビニルピロール、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール等を適宜共重合して用いることもできる。
これらの共重合体は、ランダム、ブロック、及びグラフト共重合体等のいずれの構造のものでもよい。また、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアルギン酸、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロックコポリマー、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリアミド類、ポリビニルイミダゾリン、アミノアルキルアクリレートDアクリルアミド共重合体、キトサン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリビニールアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類とその誘導体等も使用することができる。
【0050】
なお、特に限定するわけではないが、顔料分散剤の親水基はカルボン酸又はカルボン酸の塩であることが好ましい。
顔料分散剤の中和量としては、共重合体の酸価に対して50%以上、特に、80%以上中和されていることが好ましい。顔料分散剤の分子量は、重量平均分子量(Mw)で、2000以上15000以下、特に3500以上10000以下のものが好ましい。また、疎水性部分と親水性部分の構造及び組成率は、顔料及び溶媒との組み合わせの中から好ましいものを用いることができる。
【0051】
これら顔料分散剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。顔料分散剤の添加量は、顔料によって大きく異なるので一概には言えないが、顔料に対して、一般的には0.1質量%以上100質量%以下、好ましくは1質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは3以上50質量%以下の量である。
【0052】
2)界面活性剤
インクは、界面活性剤を含有することもできる。顔料インクの顔料分散剤及びインクの表面張力や濡れ性を調整するため、又は、有機不純物を可溶化し、噴射の信頼性を向上するためである。界面活性剤の種類としては、水不溶色材の分散状態、あるいは水溶性染料の溶解状態に影響を及ぼしにくいノニオン及びアニオン界面活性剤が好ましい。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレンアルコールエチレンオキシド付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル等を使用することができる。アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、及び高級アルキルスルホコハク酸塩等を使用することができる。また両性界面活性剤としては、ベタイン、スルフォベタイン、サルフェートベタイン、イミダゾリン等を使用することができる。その他、ポリシロキサンポリオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤やオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルなどのフッソ系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチンなどのバイオサーファクタント等も使用することができる。インクにおいて使用される界面活性剤は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。添加量は、表面張力等の目的の特性により調整すればよい。
【0053】
3)その他の添加剤
さらに、インクには、必要に応じて、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、キレート化剤、水溶性染料、分散染料、油溶性染料等を添加することもできる。
【0054】
(インクの製造方法)
本発明の記録材料の成分であるインクは、水溶液に所定量の色材を添加し、十分に撹拌した後、分散機を用いて分散を行い、遠心分離等で粗大粒子を除いた後、所定の溶媒、添加剤等を加えて撹拌混合し、次いで濾過を行って得ることができる。
分散機は、市販のものを用いることができる。例えば、コロイドミル、フロージェットミル、スラッシャーミル、ハイスピードディスパーザー、ボールミル、アトライター、サンドミル、サンドグラインダー、ウルトラファインミル、アイガーモーターミル、ダイノーミル、パールミル、アジテータミル、コボルミル、3本ロール、2本ロール、エクストリューダー、ニーダー、マイクロフルイダイザー、ラボラトリーホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられ、これらを単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。なお、無機不純物の混入を防ぐためには、分散媒体を使用しない分散方法を用いることが好ましく、その場合には、マイクロフルイダイザーや超音波ホモジナイザー等を使用することが好ましい。本発明の実施例においては、超音波ホモジナイザーにより分散を行った。
【0055】
水に自己分散可能な顔料を用いたインクは、例えば、顔料に対して表面改質処理を行ない、得られた顔料を水に添加し、十分攪拌した後、必要に応じて上記と同様の分散機による分散を行ない、遠心分離等で粗大粒子を除いた後、所定の溶媒、添加剤等を加えて攪拌、混合、濾過を行なうことにより得ることができる。
【0056】
(インクのpH)
本発明の記録材料の成分であるインクのpHは、3以上11以下とすることが好ましく、特に4.5以上9.5以下とすることが好ましい。また、顔料表面にアニオン性遊離基を持つインクにおいては、インクのpHは6以上11以下とすることが好ましく、6以上9.5以下とすることがより好ましく、7.5以上9.0以下とすることがさらに好ましい。一方、顔料表面にカチオン性遊離基を持つインクにおいて、インクのpHは4.5以上8.0以下とすることが好ましく、4.5以上7.0以下とすることがより好ましい。
【0057】
(インクの粘度)
本発明の記録材料の成分であるインクの粘度は、1.5mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましく、1.5mPa・s以上4.0mPa・s以下であることがより好ましい。インクの粘度が5.0mPa・sより大きい場合には、記録用紙への浸透性が遅くなるため、混色にじみが発生しやすい。一方、インクの粘度が1.5mPa・sより小さい場合には、記録用紙への浸透性が速すぎてしまい、インク顔料、アニオン性化合物を凝集させることができず、インクが記録用紙内部まで浸透するため、濃度の低下、文字の滲みが発生してしまう。
【0058】
(インク表面張力)
本発明におけるインクの表面張力は、主に前記界面活性剤の量により調整し、25mN/m以上37mN/m以下であることが好ましい。表面張力が25mN/mを下回ると、記録用紙へのインク浸透性が速すぎてしまい、インク色材、アニオン性水溶性高分子を凝集させることができず、インクが記録用紙内部まで浸透するため、濃度の低下、文字の滲みが発生し好ましくない。また37mN/mより大きいと記録用紙へのインク浸透性が遅くなるため、乾燥性が悪化するため好ましくない。さらに好ましくは、本発明の記録用紙にインクを滴下した直後の接触角変化を動的に測定することにより、記録紙へのインクの表面張力に関連した記録紙での浸透特性が評価できる。接触角変化が大きいほど浸透性が大きいことを示している。
この評価は、ASTM D5725に準拠した方法で測定できる。すなわち本発明においては、FIBRO system ab社製のDAT1100を使用し、JIS P 8111に準拠した試験環境で記録用紙を調湿したのちに、インクを滴下した後0.04秒から10秒までの接触角変化を測定し、それが0.5度/秒以上であるインクを用いることにより乾燥性に優れたインクを選定した。望ましい接触角変化は、インクを滴下した後0.04秒から10秒までの接触角変化が0.5度/秒以上であり、表面張力に換算するとほぼ37mN/m以下に相当する。より好ましい接触角変化は、0.7度/秒以上である。
【0059】
本発明のインクジェット記録方法において使用する装置は、特に限定されるものではなく、例えば、通常のインクジェット記録装置、インクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載した記録装置、中間体転写機構を搭載しており、中間体に記録材料を印字した後、記録用紙に転写する記録装置等を使用してもよい。
【0060】
次に、本発明の記録用紙に用いることのできる電子写真記録方法について説明する。当該電子写真記録方法は、電子写真用トナー(以下、「トナー」と略す場合がある)を用いて、記録用紙に画像を形成する方法であれば特に限定されない。電子写真記録方法を利用して本発明の記録用紙に画像を形成した場合には、従来の普通紙を用いた場合と同様な品質のドキュメントを得ることが可能である。さらに、本発明の記録用紙は、水の吸脱湿による寸法変化が抑えられるために、従来の普通紙と比べると確実にカール・波打ちの発生を抑制することができる。
【0061】
なお、本発明の電子写真記録方は、具体的には潜像保持体(感光体)表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程と、を含むものであることが好ましく、必要に応じて公知の他の工程を有していてもよい。
【0062】
また、本発明の電子写真記録方法に用いられる画像形成装置も、電子写真方式を利用するものであれば特に限定されない。たとえば、シアン、マゼンタ、イエロー、および、ブラックの4色のトナーを用いる場合には、1つの感光体に、各色のトナーを含む現像剤を順次付与してトナー像を形成する4サイクルの現像方式によるカラー画像形成装置や、各色毎に対応した、潜像形成工程と現像工程とを少なくとも実施可能な現像ユニットを4つ備えたカラー画像形成装置(所謂タンデム機)等が利用できる。
【0063】
画像形成に際して用いられるトナーも公知のものであれば特に限定されないが、例えば、高精度な画像が得られる点で、球状で、粒度分布の小さいトナーを用いたり、省エネルギーに対応するために、低温定着が可能な融点の低い結着樹脂を含むトナーを用いたりすることができる。
【0064】
【実施例】
以下実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、もちろん本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明の実施に使用するインクの実施例について説明する。
【0065】
<インクセット▲1▼(カラー染料インク)>
(Magenta インク)
ダイレクトレッド227(10%水溶液) 20重量部
エチレングリコール 25重量部
尿素 5重量部
サーフィノール465 2重量部
【0066】
上記組成と脱イオン水で全量を100重量部とし、30分間攪拌した。この後、1μmのメンブランフィルターを通過させた。このインクの表面張力は31mN/m、粘度2.0mPa・sであった。
【0067】
(Cyanインク)
ダイレクトブルー142(10%水溶液) 20重量部
エチレングリコール 25重量部
尿素 5重量部
サーフィノール465 2重量部
【0068】
上記組成と脱イオン水で全量を100重量部とし、30分間攪拌した。この後、1μmのメンブランフィルターを通過させた。このインクの表面張力は31mN/m、粘度2.0mPa・sであった。
【0069】
(Yellowインク)
ダイレクトイエロー144(10%水溶液) 20重量部
エチレングリコール 25重量部
尿素 5重量部
サーフィノール465 2重量部
【0070】
上記組成と脱イオン水で全量を100重量部とし、30分間攪拌した。この後、1μmのメンブランフィルターを通過させた。このインクの表面張力は31mN/m、粘度2.0mPa・s、接触角変化1.0度/秒であった。
【0071】
<インクセット▲2▼(顔料インク)>
(黒インク)
表面処理顔料(Cab−o−jet−300 キャボット社製)
4重量部
スチレン−マレイン酸−マレイン酸ナトリウム共重合体 0.5重量部
ジエチレングリコール 20重量部
界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製) 0.5重量部
尿素 5重量部
イオン交換水 70重量部
【0072】
上記組成と脱イオン水で全量を100重量部とし、30分間攪拌した。この後、1μmのメンブランフィルターを通過させた。このインクの表面張力は32mN/m、粘度は2.8mPa・s、接触角変化0.8度/秒であった。
【0073】
(Cyanインク)
表面処理顔料(IJX−253 キャボット社製) 4重量部
スチレン−マレイン酸−マレイン酸ナトリウム共重合体 0.5重量部
ジエチレングリコール 20重量部
界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製) 0.5重量部
尿素 5重量部
イオン交換水 70重量部
表面張力は32mN/m、粘度は2.5mPa・s、接触角変化0.8度/秒であった。
【0074】
(Magentaインク)
表面処理顔料(IJX−266 キャボット社製) 4重量部
スチレン−マレイン酸−マレイン酸ナトリウム共重合体 0.5重量部
ジエチレングリコール 20重量部
界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製) 0.5重量部
尿素 5重量部
イオン交換水 70重量部
表面張力は33mN/m、粘度は2.7mPa・s、接触角変化0.8度/秒であった。
【0075】
(Yellowインク)
表面処理顔料(IJX−273 キャボット社製) 4重量部
スチレン−マレイン酸−マレイン酸ナトリウム共重合体 0.5重量部
ジエチレングリコール 20重量部
界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製) 0.5重量部
尿素 5重量部
イオン交換水 70重量部
表面張力は33mN/m、粘度は2.7mPa・s、接触角変化0.8度/秒であった。
【0076】
次に本発明で使用する記録用紙の例を説明をする。
<記録用紙例▲1▼>
濾水度470mlになるよう叩解調整した広葉樹クラフトパルプを0.3質量%になるようパルプ分散液を調整し、分散液にパルプ100重量部に対して無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤(日本エヌエスシー(株)製Fibran−81)を0.1重量部、カチオン化澱粉(日本エヌエスシー(株)製Cato−304)0.5重量部配合し紙料とした。この紙料を熊谷理機製実験用配向性抄紙機により、80メッシュワイヤーを用い、抄速1000m/min、紙料吐出圧力1.5kg/cm2の条件で坪量40g/m2のシートを抄紙した。その後、抄紙した紙の上下に濾紙1枚、濾紙の上下に金属板を挟み、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kg/cm2で1分間圧搾した。この抄紙した紙の繊維配向比を、野村商事(株)製SSTにより測定したところ、1.5であった。
同様にして抄紙したシートを、抄紙した紙の上下に濾紙1枚、濾紙の上下に金属板を挟み、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kg/cm2で1分間圧搾し、計2枚のウエット状態のシートを、格子の入った寸法板上で長手辺に対して時計方向に10度回転させたシートと、半時計方向に−10度回転させたシートを重ね合わせ、格子板を参考に正確に長手辺を基準にして、はがきサイズに切り出した。この重ね合わせたシートを、再度上下に濾紙1枚、濾紙の上下に金属板を挟み熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kg/cm2で2分間圧搾した。さらに熊谷理機製KRK回転型乾燥機で110℃、0.5m/min条件で乾燥し、Total坪量80g/m2の記録用紙を得た。このとき、あらかじめ同様の方法で抄紙し、プレスし、乾燥させたシートの繊維配向角を野村商事(株)製SSTで測定し、長手辺に対する繊維配向角が0度になるように抄紙条件を調整しておいた。
【0077】
さらにこの記録用紙に熊谷理機(株)製実験用サイズプレスにより、酸化でんぷんを1g/m2、塩化ナトリウム0.1g/m2になるように表面処理を行って再度、熊谷理機製KRK回転型乾燥機で110℃、0.5m/min条件で乾燥し記録用紙▲1▼を得た。
【0078】
<記録用紙例▲2▼>
記録用紙例▲1▼と同様に調整した紙料を同様の方法で抄紙した紙の上下に濾紙1枚、濾紙の上下に金属板を挟み、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kg/cm2で1分間圧搾した25g/m2のシートを2枚と30gsm/m2のシート1枚を作製した。それぞれの繊維配向比は、1.5,1.5,1.45であった。記録用紙例▲1▼と同様の方法で、+6度、−12度、+7度回転させたシートを重ね合わせ、同様にプレスをし、乾燥させたTotal坪量80g/m2の記録用紙を得た。この抄き合わせシートを同様の方法で同様材料をサイズプレスをして同様の方法で乾燥し、記録用紙▲2▼を得た。
【0079】
<記録用紙例▲3▼>
記録用紙例▲1▼と同様に調整した紙料を同様の方法で抄紙した紙の上下に濾紙1枚、濾紙の上下に金属板を挟み、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kg/cm2で1分間圧搾した35g/m2のシートを2枚を作製した。それぞれの繊維配向比は、1.5,1.5であった。記録用紙例▲1▼と同様の方法で、−17度、+20度回転させたシートを重ね合わせ、同様にプレスをし、乾燥させたTotal坪量70g/m2の記録用紙を得た。この抄き合わせシートを同様の方法で酸化でんぷん1g/m2と塩化カルシウム0.8g/m2になるようにサイズプレスをして同様の方法で乾燥し、記録用紙▲3▼を得た。
【0080】
<記録用紙例▲4▼>
記録用紙例▲1▼と同様に調整した紙料を同様の方法で抄紙した紙の上下に濾紙1枚、濾紙の上下に金属板を挟み、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kg/cm2で1分間圧搾した35g/m2のシートを2枚を作製した。それぞれの繊維配向比は、1.5,1.5であった。記録用紙例▲1▼と同様の方法で、−6度、+11度回転させたシートを重ね合わせ、同様にプレスをし、乾燥させたTotal坪量70g/m2の記録用紙を得た。この抄き合わせシートを同様の方法で酸化でんぷん1g/m2と酢酸カルシウム0.8g/m2になるようにサイズプレスをして同様の方法で乾燥し、記録用紙▲4▼を得た。
【0081】
<記録用紙例▲5▼>
記録用紙例▲1▼と同様に調整した紙料を同様の方法で抄紙した紙の上下に濾紙1枚、濾紙の上下に金属板を挟み、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kg/cm2で1分間圧搾した40g/m2のシートを2枚を作製した。それぞれの繊維配向比は、1.5,1.5であった。記録用紙例▲1▼と同様の方法で、−4度、+5度回転させたシートを重ね合わせ、同様にプレスをし、乾燥させたTotal坪量80g/m2の記録用紙を得た。この抄き合わせシートを同様の方法で酸化でんぷん1g/m2と塩化ナトリウム0.1g/m2になるようにサイズプレスをして同様の方法で乾燥し、記録用紙▲5▼を得た。
【0082】
<記録用紙例▲6▼>
記録用紙例▲1▼と同様に調整した紙料を同様の方法で抄紙した紙の上下に濾紙1枚、濾紙の上下に金属板を挟み、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kg/cm2で1分間圧搾した40g/m2のシートを2枚を作製した。それぞれの繊維配向比は、1.45,1.5であった。記録用紙例▲1▼と同様の方法で、+10度、−16度回転させたシートを重ね合わせ、同様にプレスをし、乾燥させたTotal坪量80g/m2の記録用紙を得た。この抄き合わせシートを同様の方法で酸化でんぷん1g/m2と塩化ナトリウム0.1g/m2になるようにサイズプレスをして同様の方法で乾燥し、記録用紙▲6▼を得た。
【0083】
<記録用紙例▲7▼>
記録用紙例▲1▼と同様に調整した紙料を同様の方法で抄紙した紙の上下に濾紙1枚、濾紙の上下に金属板を挟み、そのセットを熊谷理機製角型シートマシン用プレスにより、10kg/cm2で1分間圧搾した40g/m2のシートを2枚を作製した。それぞれの繊維配向比は、1.55,1.5であった。記録用紙例▲1▼と同様の方法で、+10度、−21度回転させたシートを重ね合わせ、同様にプレスをし、乾燥させたTotal坪量80g/m2の記録用紙を得た。この抄き合わせシートを同様の方法で酸化でんぷん1g/m2と塩化ナトリウム0.1g/m2になるようにサイズプレスをして同様の方法で乾燥し、記録用紙▲7▼を得た。
【0084】
上述したインク例と記録用紙例を組み合わせて、表1に示す実施例1〜5の組み合わせと、比較例1〜3を作製した。これらの組み合わせについてサーマルインクジェット記録装置にて印字評価を実施した結果と富士ゼロックス株式会社製の電子写真方式カラープリンターであるDocuColor1250での印字後カールの結果を表1に示す。
DocuColor1250での印字画像は、Magenta30%面積率で前面印字させた。
【0085】
<インクジェット印字評価>
23℃、50%RHの環境において、印刷は四個の記録ヘッドを備えたマルチパス印字の評価用サーマルインクジェット記録装置を使用した。印字ヘッドのインク吐出ノズルピッチは800dpi、インク吐出ノズル数256ノズル、吐出量約15pl、印字は片側一括印字にて、ヘッドスキャンスピード約28cm/秒で実施した。
【0086】
<印字直後カール評価>
はがきサイズの記録紙に余白を5mm取り、Magenta 100%ベタ画像を印字し、印字面とは反対面に発生する印字直後ハンギングカール発生量を測定した。測定値を曲率に換算し評価を行った。評価基準は以下の通りで、◎、○が許容レベルである。
◎:ほとんどカールしない
○:若干カールする
△:カールが目立つ
×:丸まってしまう
【0087】
<印字直後波打ち評価>
はがきサイズの記録紙に2cm×2cmの2次色100%ベタ(Blue)画像をはがきの中央に印字し、印字直後に発生する波打ちの最大高さをレーザー変位計にて測定した。評価基準は以下の通りで、◎、○が許容レベルである。
◎:1mm未満
○:1mm以上2mm未満
△:2mm以上3mm未満
×:3mm以上
【0088】
<放置乾燥後カール評価>
はがきサイズの記録紙に余白を5mm取り、Magenta100%ベタ画像を印字し、23℃、50%RHの環境に印字面を上に平置きに放置し、印字後100時間放置した後に発生するハンギングカール発生量を測定した。測定値をカール曲率に換算し評価を行った。評価基準は以下の通りで、◎、○が許容レベルである。
◎:ほとんどカールしない
○:若干カールする
△:カールが目立つ
×:丸まってしまう
【0089】
電子写真方式の印字後カールの評価は方法は前述したとおりであり、評価尺度は次に従った。
評価基準は以下の通りで、◎、○が許容レベルである。
◎:ほとんどカールしない
○:若干カールする
△:カールが目立つ
×:丸まってしまう
【0090】
また参考として画質評価を実施した。
はがきサイズの記録紙に余白を5mm取り、Magenta100%ベタ画像を印字し、その画質を以下の基準で評価した。
◎:色が鮮やかに発色している。
○:発色は鮮やかではないが、画像のにじみは発生していない。
×:画像上に白い点が発生しているか、画像のにじみが発生する
【0091】
評価結果を表1にまとめた。
【表1】
【0092】
表1の結果に示すように、隣接する2層各層の繊維配向角が、記録用紙の1辺に対して5度を超え20度以下であり、前記1辺を基準として、前記2層のうち1層の繊維配向角が、他の1層の繊維配向角とは反対方向に配向し、且つすべての層の繊維配向角を合算した値が、5度以下である記録用紙を用いた実施例1〜5では、印字直後及び乾燥後のカール・波打ちが低減され、優れた記録用紙となった。
また、実施例1〜5の記録用紙は、カール・波打ちが極めて有効に低減されていた。加えて表面に水溶性の多価金属塩が塗布されている実施例3はカール・波打ちがよりいっそう有効に低減され、画質が向上した。
【0093】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、インクジェット記録方式で印字した時、印字直後に発生するカール、波打ちが大幅に低減し、さらに放置乾燥後に発生するカール、波打ちを改善することができる。さらに電子写真記録方式での印字後カールの低減効果も顕著である。
Claims (7)
- 木材パルプ繊維を主体とし、少なくとも隣接する2層以上の抄き合わせからなる記録用紙であって、
前記2層の各層の繊維配向角が、記録用紙の1辺に対して5度を超え20度以下であり、
前記1辺を基準として、前記2層のうち1層の繊維配向角が、他の1層の繊維配向角とは反対方向に配向してなり、
すべての層の繊維配向角を合算した値が、5度以下であり、
サイズ剤および導電剤によりサイズ処理されてなる、
ことを特徴とするインクジェット及び電子写真兼用の記録用紙。 - 少なくとも片面に、単位面積当りの質量が0.1g/m2以上5g/m2未満の範囲内で、水溶性の多価金属塩が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット及び電子写真兼用の記録用紙。
- 水溶性多価金属塩が、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、及び酢酸マグネシウムからなる郡から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット及び電子写真兼用の記録用紙。
- 粘度が1.5mPa・s以上5.0mPa・s以下であり、表面張力が25mN/m以上37mN/m以下である水性インクを用い、該水溶性インクの液滴を記録信号に応じてオリフィスから出させて記録を行うインクジェット記録方法であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録用紙に記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
- 前記水溶性インクが、少なくとも水溶性色材、水、及び界面活性剤を含むことを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水溶性インクが、少なくとも水不溶性色材、水溶性有機溶媒、及び水を含むことを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録方法。
- 電子写真用トナーを用いて、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の記録用紙に画像を形成する電子写真記録方法。
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