近年の市場では、多品種少量生産が求められる傾向にあるが、製作対象の基板の種類が頻繁に変更されると、図16の方法では生産効率が低下する、という問題が生じる。特に、最初のはんだの塗布工程では、図17に示すように、基板の種類変更に応じて、マスク3を交換したり、装置を洗浄するなどの作業が必要となり、多大な時間を消費してしまう。
このような問題を解決するために、はんだ印刷工程を後続の工程と切り離して実行し、はんだが塗布された基板を発注が入るまで保管しておく、という方法が考えられる。しかしながら、クリームはんだには粘着性があるため、取り扱いが難しい上、つぎの図18に示すような問題が生じる。
図18は、クリームはんだ印刷後の基板の変化を段階的に示す。図18(a)は、クリームはんだ5を印刷した直後の状態であり、各電極2上には、はんだ粒子5aとフラックス5bとを混合したクリームはんだ5が適度に搭載されている。しかしながら、この状態から時間が経過すると、図18(b)に示すように、フラックス5bが蒸発してはんだ粒子5aのみとなる。さらに時間が経過すると、図18(c)に示すように、はんだ粒子5aが風化してしまう可能性がある。このような理由により、クリームはんだ5の品質を維持した状態で基板を保管するのは、大変困難である。
ここで、前記特許文献1や特許文献2に開示されたプリコート法によれば、電極上のはんだは、フラックスを含まない固化した状態となるので、部品を実装する必要が生じるまではんだの品質を維持でき、また容易に保管することができる。しかしながら、これらの方法は、微細部品用の小さな電極に適用することを前提としているため、微細部品と通常の大きさの部品とが混在する基板に適用すると、面積の大きい電極に対するはんだが不足する、という問題が生じる。
図19は、上記の問題を示すものである。電極2の部分にはんだ粒子5aを付着させる場合、電極2の大きさにばらつきがあっても、各電極2上に付着できるはんだ粒子5aは一層のみとなる(図19(a)参照。)。メッキによるはんだプリコート法でも、電極2毎にはんだ量を調整することができないため、メッキの層5cの厚みは同一になる(図19(b)参照。)。このため、これらのプリコート法を大きさの異なる複数の電極2に一律に適用すると、図19(c)に示すように、電極2の面積が大きくなるほど、溶融後のはんだ51の量が相対的に少なくなると考えられる。なお、図19(c)中の点線は、はんだ51が適正量である場合の上面の位置を示すものである。
はんだの量が少ないと、部品の装着や電気接続に支障が生じる可能性がある。このため、面積の大きい電極2に対しては、別途、別工程ではんだを追加する必要が生じるから、はんだ塗布工程の効率を向上することは困難になる。
一方、マスクを用いた印刷によりはんだプリコート基板を製作する方法も公知の技術として存在する。たとえば前記した特許文献1に示唆されているほか、下記の特許文献3に開示されている。
マスクを用いたはんだプリコート法では、前記図16のはんだ印刷工程と同様の方法で各電極にはんだを塗布した後、基板を加熱処理して、はんだを溶融する。マスクの各開口部は、それぞれ対応する電極の大きさに等しく形成されているから、上記図19のように、電極が大きくなるにつれてはんだが不足する、という問題は起こらない。
ただし、マスクによる印刷では、微細部品用の電極に対し、十分なはんだを印刷できない可能性がある。特許文献3では、この問題を解決するために、微細部品の電極に対するはんだプリコートを別工程で実行するため、処理が煩雑化している。また、図16に示すような従来のマスク3を用いてクリームはんだ5を印刷すると、図20に示すように、印刷後のクリームはんだ5を加熱・冷却して出来上がるプリコートはんだ50は、電極の大きさによって高さが異なるものとなる。
製作する基板の種類が多岐にわたる場合、部品実装時のフラックスの塗布は、転写ローラなどを用いて一括で行うのが望ましい。しかしながら、プリコートはんだ50の高さのばらつきが大きくなると、転写ローラの位置決めやフラックスの厚みの設定が難しくなり、背の低いはんだに十分なフラックスが転写されなかったり、背の高いはんだが転写ローラ本体に接触する可能性がある。また、転写ローラを下げすぎると、基板の表面にもフラックスが付着し、加熱処理時にそのフラックスが液状化して部品が滑るおそれもある。
ところで、図16に示した通常の方法で部品実装基板を製作する場合には、はんだ印刷工程において前記した微細部品用の電極に対するはんだ不足が生じるのを解消するために、微細部品用の電極に対応する開口部を電極よりも大きく形成することが試みられている。しかしながら、部品の微細化や高密度化、基板の小型化に伴い、この方法を使用するのは困難になっている。その理由について、図21を用いて説明する。
図21(a)は、クリームはんだ5が印刷された直後の基板1を示すものである。図中の21,22は、微小チップ部品用の電極であるが、マスクの開口部を広くしたことに伴い、電極21,22よりも広い範囲にクリームはんだ5が搭載され、その結果、はんだ間の間隔が狭くなっている。一般的な部品実装工程では、部品の装着を安定させるために、部品に若干の押圧力をかけて装着するようにしている。このため、図21(a)のような印刷方法をとると、部品実装時の押圧によってクリームはんだ5が潰れ、図20(b)に示すように、隣り合う電極間のクリームはんだ5が一体化する可能性がある。さらにつぎの加熱工程では、フラックス5bの液状化によってはんだ粒子5aが流れ出す可能性がある(図20(c)参照。)。この結果、図20(d)に示すように、加熱、冷却後の基板1上では、複数の電極2間にブリッジが発生することになる。このように、部品密度の高い基板や、微細部品が搭載された基板においては、はんだ印刷工程で各電極に適正な量のはんだを塗布できても、その後の工程でブリッジが発生する可能性が高く、適正なはんだ付けを行うのは困難となる。
この発明は、種々のサイズの部品が実装される基板を製作する場合に、電極の上方がはんだで被覆されたプリコート基板を効率良く製作するとともに、このプリコート基板の各はんだにフラックスを塗布する工程も省力化して、部品実装基板の生産効率を向上することを目的とする。
また、この発明は、部品の実装密度が高い基板や微小部品が搭載される基板について、プリコートはんだの高さが揃えられたはんだプリコート基板を簡単に製作できるようにすることを目的とする。さらに、この発明では、このはんだプリコート基板を用いることにより、電極間にブリッジが発生するのを防止し、部品実装基板の生産における歩留まりを大幅に向上することを目的とする。
この発明にかかる部品実装基板の製作方法は、電極の上方がはんだで被覆されたはんだプリコート基板を製作した後、前記はんだプリコート基板の各プリコートはんだにフラックスを塗布する工程と、前記フラックスに電子部品を装着する工程と、部品装着後の基板を加熱する工程とを順に実行して部品実装基板を完成させるものである。はんだプリコート基板を製作する工程では、各電極上のプリコートはんだの高さが一目標値に近似する値となるようにそれぞれの電極に対応する開口部の大きさが調整されたマスクを前記基板に重ね合わせ、各開口部から電極の上方にクリームはんだを流し込むはんだ印刷工程と、前記はんだ印刷工程を経た基板を加熱することにより、クリームはんだ中のフラックスを蒸発させるとともにはんだの粒子を溶融させるはんだ加熱工程とを実行する。また、はんだプリコート基板の各プリコートはんだにフラックスを塗布する工程では、所定の厚みがあるフラックスの層に対してはんだプリコート基板を相対的に移動させることにより、前記はんだプリコート基板の各プリコートはんだがフラックスの層内を通過するようにしている。
上記のはんだプリコート基板を製作する工程を実行するには、あらかじめ、各電極上のはんだの高さについて共通の目標値を定め、その目標値に基づき各開口部の大きさを定めたマスクを製作する必要がある。この目標値は、前記はんだ印刷工程とはんだ加熱処理とを経て電極上に形成される最終形態のはんだ、すなわち、フラックスが含まれず、各はんだの粒子が溶融して一つの合金として一体化したプリコートはんだの高さに対するものである。また、この目標値は、基板上の最も大きな電極について、部品の装着や電気的な接合に支障が生じないと考えられるはんだの量(以下、これを「はんだの適正量」という。)に基づき設定されるのが望ましい。
プリコートはんだは、クリームはんだ中のフラックスが蒸発して、はんだ粒子同士が溶着して形成されたものであるから、その体積は、マスクの開口部に埋め込まれたクリームはんだ中のはんだ粒子の体積の総和に相当すると考えることができる。すなわち、開口部の体積(p)にクリームはんだ中のはんだ粒子の比率(q)を掛け合わせた値(p×q)がプリコートはんだの体積になる。
一方で、プリコートはんだを、対応する電極を底面とする錐体(四角錐,円錐など)もしくは円錐台などに近似すると考えて、電極の面積とプリコートはんだの高さとからプリコートはんだの近似体積を求めることができる。したがって、電極の面積と前記目標値とから必要なプリコートはんだの近似体積rを求め、この近似体積rと所定の係数sとを掛け合わせた値(r×s)が前記(p×q)に等しくなるものとして、pの値を求めることができる。
ただし、pの値を求めるには、q,sの値を特定する必要がある。このうちqは、使用するクリームはんだにおけるはんだ粒子とフラックスとの比率により求めることができる。一方のsは、あらかじめ開口部の大きさが既知のマスクを用いて製作されたプリコートはんだの高さと、前記開口部の既知の体積に基づき求めることができる。すなわち、前記(p×q)の値が既知となり、また前記電極の面積と高さの測定値から近似体積を導き出せるから、これらの値に基づき係数sを求めることができる。
よって、電極毎に、上記の方法により開口部の体積pを求め、開口部の大きさとすることができる。また、マスクの厚みがあらかじめ定められている場合には、開口部の面積をもって開口部の大きさを表してもよい。
上記のようにして各開口部の大きさが設定されたマスクを製作した後、このマスクを用いたはんだ印刷工程とはんだ加熱工程とを実行することにより、各電極上に前記目標値に近似する高さを持つプリコートはんだを形成することが可能となる。また、基板上で最も大きな電極に対するはんだの適正量に基づき前記目標値を設定した場合、微細部品の電極には、適正量を大幅に上回るプリコートはんだが形成される可能性がある。しかしながらはんだの量が多くなっても、部品の装着や電気接続に悪影響が及ぶおそれはない。また、微細部品の電極については、その電極よりも開口部を大きくすることができるので、マスクが引き上げられる際に、はんだがマスクに付着してはんだ不足が起こる、という問題も解消することができる。
はんだプリコート基板の各プリコートはんだにフラックスを塗布する工程では、転写ローラや転写板などの表面に所定の厚みのあるフラックスの層を形成し、その下方ではんだプリコート基板を移動させることにより、各プリコートはんだがフラックスの層内を通過するようにすることができる。または、基板は移動させずに、その上方で転写ローラや転写板を移動させるようしてもよい。前記したはんだプリコート基板の製作工程によれば、各はんだの高さのばらつきを少なくすることができるので、前記フラックスの層の位置や厚みを各プリコートはんだの高さに合わせて簡単に調整することができ、また、フラックスの層が基板表面に触れないように調整することも容易になる。よって、フラックスの層に対してはんだプリコート基板を相対的に移動させるだけで、各プリコートはんだに十分な量のフラックスを塗布することが可能となり、フラックスの塗布工程を効率良くすすめることができる。
つぎに、この発明にかかるフラックス塗布装置は、電極の上方がはんだで被覆されたはんだプリコート基板の各はんだにフラックスを塗布するための装置であって、フラックスを転写するための転写部と、この転写部に所定厚みを持つフラックスの層を形成するためのスキージとが、前記はんだプリコート基板の支持面の上方に上下動可能に配備されるとともに、転写部およびスキージの高さをはんだプリコート基板の厚みとプリコートはんだの高さとに応じて調整する高さ調整手段を具備する。
転写部は、つぎに述べる転写ローラのほか、転写板とすることができる。この転写部およびスキージは、たとえば、はんだプリコート基板の支持面に起立するガイドに沿って上下動し、所定の高さ位置で支持されるように構成することができる。この転写部の表面にフラックスを供給しつつ、この転写部またはスキージを移動させることによって、厚みの均一なフラックスの層を形成することができる。また、転写部やスキージの高さを調整することによって、フラックスの層の高さや厚みを変動させることができる。
高さ調整手段は、コンピュータのほか、転写部やスキージ用の駆動部(たとえばサーボモータ)を作動させるための駆動回路などを含ませることができる。コンピュータは、複数種の基板について、基板の厚みやプリコートはんだの高さなどのパラメータをメモリに登録し、製作対象の基板に応じた登録データを読み出して、転写部やスキージの高さを調整するように設定されるのが望ましい。
上記フラックス塗布装置の好ましい態様では、前記転写部として転写ローラが使用されるとともに、前記はんだプリコート基板の支持面には、はんだプリコート基板を前記転写ローラの回転方向に対応する方向に搬送するための搬送路が配備される。
上記の搬送路は、たとえばコンベア装置により構成することができる。上記の態様では、転写ローラの下方の面におけるフラックスの流れに沿って基板が搬送されるように、搬送路の方向を設定することができる。このようにすれば、前方のはんだへの転写によりフラックスの層の一部が欠落しても、その欠落部分が後方のはんだに出会わないようにすることができ、いずれのはんだにも、所定厚みのフラックスを作用させることが可能になる。
さらに好ましい態様にかかるフラックス塗布装置には、前記はんだプリコート基板の搬送路の移動速度と転写ローラの回転速度とが一致するように調整する速度調整手段が設けられる。この速度調整手段は、転写ローラや搬送路の各駆動系に同期信号を与える回路や、この回路を制御する制御部(前記したコンピュータでもよい。)を含むものとすることができる。
たとえば、基板の移動速度が転写ローラの回転速度よりも早いと、フラックスの層の流れと基板の搬送方向とを合わせても、前方のプリコートはんだによりフラックスが欠落した部分が上方に移動する前に後方のプリコートはんだに出会う可能性がある。また、基板の移動速度が転写ローラの回転速度よりも遅いと、各はんだがフラックスの層の流れに押されて基板の向きが傾くなどの不具合が出る可能性がある。
これに対し、上記の態様によれば、各プリコートはんだを、フラックスの層の流れに沿って、その流れと同じ速度で移動させることができるから、基板の姿勢を安定させた状態で搬送しつつ、各はんだに確実にフラックスを塗布することができる。
なお、上記のフラックス塗布装置には、転写ローラにフラックスを供給するための手段として、ディスペンサやシリンジを設けるのが望ましい。また、転写ローラの回転方向、搬送路の搬送方向とも、一方向に限定されるものではなく、必要に応じて、方向を逆転できるようにしてもよい。
この発明によれば、あらかじめ各電極がプリコートはんだで被覆されたはんだプリコート基板を製作して保管しておき、必要に応じて、保管されたプリコート基板を用いて部品実装基板を製作することができる。部品実装基板を完成させる工程では、事前準備にかかる時間が最も長いはんだ塗布工程を省略することができるから、製作対象の基板が変更されても、マスクの取替などの環境の切替に要する時間が不要となる。また、フラックスを塗布する工程では、プリコートはんだの高さのばらつきが少ないはんだプリコート基板を使用することにより、電極の位置を考慮することなく、各プリコートはんだに簡単にフラックスを塗布することができる。よって、製作対象の基板の種類が頻繁に切り替えられても、その切替にすみやかに対応することができ、基板の多品種少量生産に適した部品実装ラインを構築することができる。
また、上記のはんだプリコート基板の製作工程によれば、微細部品や標準的な大きさの部品が混在する基板を製作する場合でも、マスクを用いたスクリーン印刷により各電極に少なくとも適正量のクリームはんだを印刷することができ、品質の高いはんだプリコート基板を簡単に製作することができる。部品実装基板を製作する工程では、プリコートはんだ上にフラックスを塗布して部品を装着するので、部品装着時の押圧によりはんだが崩れるおそれがない。しかも、プリコートはんだは、電極毎に1つの合金となるので、加熱処理を受けても、表面張力により形状が維持され、ブリッジが発生するおそれもない。
よって、部品の密度が高い基板を製作する際にも、はんだ付け不良が生じるおそれがなく、品質の良い部品実装基板を製作でき、歩留まりを向上することができる。
図1,図2は、この発明の一実施例にかかる部品実装基板の製作方法の流れを示す。
この実施例の部品実装基板製作方法は、各電極2の上方がはんだで被覆されたはんだプリコート基板1Aを製作する工程(以下、「第1工程」という。)と、前記はんだプリコート基板1Aを用いて部品実装基板1Bを完成させる工程(以下、「第2工程」という。)とを、別々の場所で実施するようにしている。図1は第1工程の概要を、図2は第2工程の概要を、それぞれ示すもので、いずれの図でも、処理の流れに沿って、基板の斜視図と断面図とを左右に対応づけている。また、断面図のハッチングを省略し、代わりに、斜視図と断面図との間での対応する構成を、同一のパターンにより塗りつぶして示す。また、各図とも、構成をわかりやすくするため、基板1を小さくし、部品7や電極2を拡大して示す。
第1工程では、基板1上の各電極2に対応する開口部30を具備するマスク3を用意し、このマスク3を前記基板1上にセットした後、スキージ4を用いてクリームはんだ5を各開口部30に流し込む(図1(1)(2))。この後、マスク3を上方に引き上げると、各電極2上にクリームはんだ5が搭載された状態となる。つぎに、図1(3)に示すように、この基板1をリフロー炉に搬入して加熱することにより、クリームはんだ5中のフラックスを蒸発させ、はんだ粒子を溶融させる(図中、一点鎖線の矢印は熱が作用する方向を示す。)。各はんだ粒子は、溶融によって、電極毎に1つの合金となる。さらに、このはんだ溶融後の基板を冷却すると、図1(4)に示すように、各電極2上にプリコートはんだ50が形成されたはんだプリコート基板1Aが完成することになる。
なお、以下では、プリコートはんだ50を単に「はんだ50」という場合もある。
第2工程では、まず、前記第1工程で製作されたはんだプリコート基板1Aの各はんだ50に粘着性フラックス6を塗布する(図2(1))。つぎに、フラックス塗布後の基板1の各部品実装位置に、該当する部品7を実装する処理を行う(図2(2))。
部品実装処理が終了すると、前記基板1をリフロー炉に搬入して加熱処理する(図2(3))。これにより、前記プリコートはんだ50上のフラックス6が蒸発するとともに、プリコートはんだ50が再溶融する。このプリコートはんだ50の溶融および冷却によって部品7側の電極70は基板1側の電極2にはんだ付けされ、図2(4)に示すような部品実装基板1Bが完成することになる。なお、この図2(4)の51は、プリコートはんだ50の溶融により、電極2,70間に凝固した最終形態のはんだである。
上記工程によれば、各電極2上のプリコートはんだ50は、完全に固化した状態となるので、基板の取り扱いが容易になり、簡単に保管することができる。また、はんだ50の品質を維持することができるので、長期の保管にも耐えることができる。上記の方法では、第1工程において、相当数のはんだプリコート基板1Aを製作する一方、第2工程では、受注に応じた数の部品実装基板1Bを製作するようにしている。第2工程では、従来のクリームはんだ5の印刷工程が省略される代わりに、フラックス6を塗布する工程が実行されるが、この工程では後記するような簡単な方法で各電極2にフラックス6を塗布することができるので、基板の種類が切り替えられても、容易に対応することができる。したがって、頻繁に基板の種類が切り替えられても、環境設定のための時間を短くすることができ、生産効率が低下するのを防止することができる。
さらに、この実施例の第1工程では、微細部品の電極2にも少なくとも適正量のクリームはんだ5が印刷されるようにし、また各プリコートはんだ50の高さがほぼ均一になるようなスクリーン印刷を実行する。この印刷は、各電極2上のプリコートはんだ50の高さが予め定めた共通の目標値に近似する値になるように、それぞれの電極2に対応する開口部30の大きさが調整されたマスク3を用いることにより実現されるものである。図1に例示したマスク3では、上記の調整の結果、図1(1)の断面図に示すように、各開口部30が対応する電極2よりも大きくなる傾向がある。
図3は、前記マスク3の開口部の大きさを求める際に使用するパラメータを示す。図中、(1)の電極サイズは、1つの電極2の面積(ただし、円形の電極については直径により示す。)であって、Sa,Sb・・・として示す。(2)の開口部の体積Va,Vb・・・は、各電極2に対応する開口部30の面積とマスク3の厚みとを掛け合わせた値に相当する。(3)のプリコートはんだの高さha,hb・・・は、製作されたはんだプリコート基板1Aから計測されるものである。
(4)のプリコートはんだ近似体積va,vb・・・は、プリコートはんだ50が所定の形状に近似するとして求めた体積である。この実施例では、図4に示すように、マスク3の開口部30内に埋め込まれたクリームはんだ5を加熱および冷却することにより完成したプリコートはんだ50を、このはんだ50に対応する電極を底面とする四角錐50a(ただし、円形電極の場合は円錐)に近似するものとして、近似体積を求めるようにしている。
(5)の係数については後述する。(6)はプリコートはんだの高さの目標値であり、いずれの部品とも、同一の値Hが設定される。(7)は、プリコートはんだの高さを前記目標値Hにするのに必要な開口部30の面積a,b・・・(以下、「新マスク開口部面積」という。)である。
この実施例では、まず、各開口部30が従来の大きさに設定されたマスク3(各開口部30は電極2と同一または電極2よりやや小さく形成される。)を用いてはんだプリコート基板1Aを製作する。そして、製作されたはんだプリコート基板1Aを用いて各プリコートはんだ50の高さを測定し、その測定値やその他の既知の値、および前記目標値Hを用いて新マスク開口部の面積を求める。
以下、図3の各部品のうち、1番目の抵抗を例にして、新マスク開口部の面積を求める方法を説明する。
プリコートはんだ50は、マスク3の開口部30に埋め込まれたクリームはんだ5からフラックスが蒸発し、はんだ粒子が溶融後に凝固して形成されたものであるから、プリコートはんだ50の体積は、開口部30内のはんだ粒子の体積の総和に等しくなる。
したがって、プリコートはんだ50の体積は、前記開口部30の体積Vaにクリームはんだ5中のはんだ粒子の比率kを掛け合わせたものとなる。なお、クリームはんだ5におけるフラックスとはんだ粒子との体積比は、一般に1:1となるから、k=1/2とすることができる。
ここで、プリコートはんだの体積を前記近似体積vaに所定の係数αを掛け合わせたものであるとすると、つぎの(A)式を導き出すことができる。
Va×k =(Sa×ha/3)×α ・・・(A)
(A)式中、Saは既知であり、またVaも、使用したマスク3の開口部30の面積にマスク3の厚みを掛け合わせることで求められる。また,haには、前記従来のマスク3を用いた印刷により形成されたプリコートはんだ50の高さの計測値をあてはめることができる。したがって、上記(A)式のVa,k,Sa,haに具体的な数値を代入することができるから、係数αを求めることができる。
つぎに、新マスク開口部面積を求めるために、前記(A)式のVaを未知数とし、haに前記目標値Hを代入する。Saには前回と同様の既知の値をあてはめ、係数αは、前回の算出で求めた数値とする。これにより、プリコートはんだ50の高さを目標値Hにするための開口部30の体積Vaの値を求めることができる。さらに、求められたVaの値をあらかじめ定めたマスク3の厚みで除算することにより、新マスク開口部の面積aを求めることができる。
他の部品についても、上記と同様に、従来のマスクにより形成されたプリコートはんだ50の高さhb,hc,hd,・・・を用いて係数β,γ,δ・・・を求めた後、この係数β,γ,δ・・・や電極の面積Sb,Sc,Sdを用いて、プリコートはんだ50の高さを前記目標値Hにするための開口部30の面積b,c,dを求めることができる。
図5は、電極の大きさにばらつきのある基板について、上記の原理に基づき開口部の大きさを設定したマスク3を用いてプリコートはんだを形成した例を示す。図中の2A,2B,2Cは電極であり、このうちの2Aが面積が最も大きい電極であり、以下、2B,2Cの順に小さくなる。この例では、この最大の電極2Aへのはんだの適正量に基づき、前記目標値Hを定め、それぞれの電極に対応する開口部30A,30B,30Cの大きさを設定している。この結果、完成後のプリコートはんだ50A,50B,50Cの高さは、ほぼ均一となる。なお、各開口部30A,30B,30Cと電極2A,2B,2Cとの大きさを比較すると、最大の電極2Aに対応する開口部30Aはこの電極2Aとほぼ同一の大きさとなるが、これより小さい電極2B,2Cに対応する開口部30A,30Bは、いずれも、電極2B,2Cよりも大きく形成される。したがって、これら面積の小さい電極2B,2Cでも、マスク3が引き上げられる際にクリームはんだ5がマスク3に付着して欠落するのを防止でき、十分な量のプリコートはんだ50を形成することができる。
なお、はんだ50の量が少ない場合には、はんだ付け部位には接合不良が生じるが、はんだ50が多少過剰になっても、ブリッジが生じない限り、不備は起こらない。プリコートはんだ50は、フラックスを含まず、また電極2毎に1つの合金になっているから、加熱処理により溶融しても、その形状は表面張力によって維持され、ブリッジが生じることがない。
したがって、図5の場合、最大の電極2Aにおけるはんだ適正量に基づき前記目標値Hを定めて、各開口部30A,30B,30Cの大きさを設定すれば、いずれの大きさの電極にも、少なくとも適正量のプリコートはんだ50を形成することができ、そのプリコートはんだ50により、部品を適正に実装することができる。
なお、前記した第1工程では、図1(3)の加熱工程の後に、図6のような工程を実施することができる。この工程は、樹脂板130などを用いて各プリコートはんだ50を上方から押圧することにより、各はんだ50の上面を平坦にするもので、各はんだ50が固まりかけた時点で行うのが望ましい。このような工程を加えたはんだプリコート基板1Aによれば、プリコートはんだ50の高さを完全に一致させることができる。また図2(2)の部品実装工程をより安定して行うことができる。
つぎに、図7は、前記第2工程を実行するための基板組立ラインの概略構成を、基板の流れとともに示す。この基板組立ラインは、フラックス塗布装置100、部品実装装置200、はんだ付け装置300の計3つの装置が、一方向に沿って配列されたもので、これらの装置を順に通過する一対の搬送路(実線および点線で示す。)が設けられる。実線の搬送路は、フラックス塗布装置100、部品実装装置200、はんだ付け装置300の順に基板1を送り込んで第2工程を実行させるためのもので、以下では、第1搬送路という。点線の搬送路は、最終のはんだ付け工程を終えた部品実装基板1Bを回収するためのもので、以下では、第2搬送路という。なお、第1搬送路を構成するコンベアは、装置毎に独立しており、基板を搬送する制御も装置毎に個別に行われる。一方、第2搬送路は、はんだ付け装置のリフロー炉内で第1搬送路の終端から基板を受け取って出口まで搬送する第1のコンベアと、リフロー炉から出た基板を終端位置まで搬送する第2のコンベアとにより構成されており、各コンベアの搬送動作は、後記する主制御装置400により一括で制御される。
なお、この実施例のはんだプリコート基板1Aは、基板としての最小単位である個片基板であり、所定大きさの治具(プラテン)に載せられた状態で各搬送路を移動する。従来の部品実装基板の生産ラインでは、複数の個片基板が連結したマルチ基板を製作することが多かったが、基板の多品種少量生産に対応するために、個片基板を処理することにしたのである。このように個片基板を製作対象とするため、図7の各装置100,200,300が小型化され、たとえば、1つのテーブル上に各装置100,200,300を搭載することができる。また、この実施例では、第1搬送路の始端と第2搬送路の終端とを、フラックス塗布装置100を構成する機体の同一端面側に設けているので、はんだプリコート基板1Aの送り込みと完成基板の回収とを一箇所で行うことができ、1人の作業者でも対応することができる。なお、処理済みの基板を搬送する第2搬送路を第1搬送路の下方に配備すれば、機体をさらに小型化することができる。
図8は、前記基板組立装置の装置構成を示す。
前記フラックス塗布装置100、部品実装装置200、はんだ付け装置300には、それぞれ個別の制御部101,201,301や、前記第1搬送路のコンベアの動作を制御するためのコンベア駆動機構108,208,303が配備される。各制御部101,201,301は、いずれも、CPUやメモリを含むものであり、上位装置としての主制御装置400に接続される。この主制御装置400も、CPUやメモリを具備するもので、周辺装置として、各種設定データなどを入力するための入力装置402(キーボード、コンソールなど)、モニタ装置401、前記第2搬送路用のコンベア駆動機構403などが接続される。
フラックス塗布装置100には、後記する転写ローラ112およびスキージ123のそれぞれに対する上下動機構102,103、転写ローラ112の駆動部であるサーボモータ107、転写ローラ112へのフラックス6の供給を制御するためのディスペンサ106などが設けられる。なお、サーボモータ107およびディスペンサ106には、それぞれ専用のコントローラ105,104が配備される。これらのコントローラ105,104は、いずれも、前記制御部101からのコマンドに基づき、制御対象であるサーボモータ107またはディスペンサ106への駆動信号を生成する。
部品実装装置200には、部品実装のために、装着ヘッド205を具備する4軸ロボット204が配備される。4軸ロボット204は、X,Y,Zの3軸方向と、ヘッドの回転角度とに基づき、装着ヘッド205の動作を制御する。装着ヘッド205には、部品吸着用のノズルが取り付けられる。4軸ロボット204には、専用のコントローラ202が接続される。このコントローラ202は、制御部201からのコマンドに基づいて4軸ロボット204の位置や姿勢を調整しつつ、吸着ノズルに部品の吸着や解放を行わせることにより、定められた部品実装位置に該当する部品を装着する。
さらに、この部品実装装置には、エア吸着ユニット207やカメラ206が配備される。エア吸着ユニット207は、作業位置に搬送された基板をプラテン上にエア吸着するためのものである(この吸着固定のために、前記プラテンの底面には吸引孔が形成されている。)。カメラ206は、部品実装後の基板1を撮像するためのものである。制御部201は、このカメラ206により得た画像を用いて各部品の実装状態の良否を判断した上で、基板1をはんだ付け装置300に搬出するようにしている。なお、前記4軸ロボット204と同様に、カメラ206の位置や姿勢も、専用のコントローラ203により制御される。また、カメラ206から得た画像データは、主制御装置400に伝送されるので、必要に応じてモニタ装置401に検査対象の画像を表示することができる。
はんだ付け装置3には、前記したリフロー炉302が含まれる。このリフロー炉302には、第1,第2の各搬送路を構成するコンベアのほか、ヒータ、冷却ファン、第1搬送路と第2搬送路とをつなぐ昇降機構(いずれも図示せず。)などが設けられている。
上記構成において、主制御装置400内のメモリには、あらかじめ、複数種の基板毎に、各装置100,200,300がその基板を処理するのに必要なデータ(以下、「設定データ」という。なお、この設定データには、処理用のプログラムを含むこともできる。)が格納される。たとえば、フラックス塗布装置100については、基板の種類毎に、転写ローラ112やスキージ123の高さを示すデータや、転写ローラ112の回転速度などが格納される。また、部品実装装置200については、実装される各部品の種類、使用される部品吸着ノズルの種類、装着ヘッド205の位置決め制御のための軸毎の座標データ、前記した検査を実行するために必要なデータなどが、格納される。また、はんだ付け装置300についても、必要に応じて、加熱強度やコンベアの搬送速度にかかるデータなどを格納することができる。
上記構成の基板組立装置を使用する場合、作業者は、前記入力装置402を用いて必要なデータ設定を実行する。主制御装置400は、入力されたデータに基づき、メモリから基板の製作に必要なデータを読み出し、これを種毎に分けて各装置100,200,300に伝送する。この後、作業者が製作する基板の種類に対応するはんだプリコート基板1Aを第1搬送路に送り込むと、この基板1Aは、フラックス塗布装置100、部品実装装置200、はんだ付け装置300に順に搬送され、前記図2に示した処理を受ける。リフロー炉302を出た基板は、第2搬送路により搬送されて、最初に基板が送り込まれた側に返送される。
以下、最初の処理部であるフラックス塗布装置100の構成について説明する。なお、部品実装装置200およびはんだ付け装置300については、機体が小型になったことを除けば、従来のマルチ基板用の装置に準じた機構を具備すると考えられるので、詳細な説明は省略する。
図9は、フラックス塗布装置100の外観を示す。なお、この図は、第1搬送路の下流側からフラックス塗布装置100を見たイメージ図である。すなわち、はんだプリコート基板1Aは、紙面の奥から手前に向けて搬送されることになる(図中、基板の搬送方向を矢印Fで示す。)
以下では、第1搬送路の下流側(紙面の手前側)を前方として説明を進める。
前記第1搬送路は、一対のコンベア109,109により構成される。また、コンベア109の一端には、前記コンベア駆動機構108を構成するサーボモータ(図示せず。)が取り付けられる。なお、図中の8は前記したプラテンであり、平坦な支持プレート9上に搭載された状態で各コンベア109上を搬送される。
フラックス塗布装置100は、各コンベア109,109が配備されたステージ110上にガイド部111を起立配置させた構成のものである。前記ガイド部111は、中央に基板導入用の開口部120が形成された板状体であって、板面を垂直にし、かつ開口部120が各コンベア109,109の上方に位置するようにしてステージ110上に配備される。
ガイド部111の前面の両側縁部には、それぞれ長さ方向に沿ってガイド溝114が形成される。また、各ガイド溝114,114の内側には、所定長さの支持板116が板面をガイド部111の前面に直交させた状態で配備される。これらの支持板116,116の内側にも、それぞれ長さ方向に沿うガイド溝115が形成される。
外側のガイド溝114,114には、それぞれ板状の往復部材117が取り付けられる。これらの往復部材117,117は、前記支持板116,116よりも前方に突出している。各往復部材117,117の間には、支持軸113を介して、両側に円盤122,122を有する転写ローラ112が取り付けられる。また、支持軸113の一端には、前記したサーボモータ107が取り付けられる。
前記支持板116,116には、スキージ123が取り付けられる。このスキージ123は、板状の本体部123aの両端に所定長さの支持部123b,123bを連続させたもので、各支持部123b,123bがガイド溝115,115に取り付けられる。
各往復部材117,117は、前記図8のローラ上下動機構102により、ガイド溝115,115に沿って同じタイミングで上下動する。また、スキージ123も、スキージ上下動機構103によりガイド溝115,115に沿って上下動する。
前記転写ローラ112の上方には、フラックス6を供給するためのシリンジ119が配備される。このシリンジ119は、ガイド部111の上端部に配備された取付板118に嵌め込まれて支持されており、ステージ110の所定位置に設けられたディスペンサ106にホース121を介して接続される。
図10および図11は、基板1上の各プリコートはんだ50にフラックス6が転写される状態を示す。なお、転写ローラ112について、図10では、長さ方向に沿って切断した断面を示し、図11では、径方向に沿って切断した断面を示す。
前記制御部101は、あらかじめ各上下動機構102,103を用いて、転写ローラ112およびスキージ123の高さが所定位置になるように調整するともに、転写ローラ112を後回り(図中の矢印Hの方向)に回転させる。前記シリンジ119は、所定のタイミングでディスペンサ106からの空気圧を受けて所定量のフラックス6を吐出する。このフラックス6は、転写ローラ112が前から後に回転することにより、後方のスキージ123によって転写ローラ112の周面全体にわたって引き伸ばしされる。これにより、転写ローラ112の周面に所定厚みのフラックスの層6Aが形成される。また、転写ローラ112とスキージ123との高さ関係を調整することにより、フラックスの層6Aの厚みを変化させることができる。
各コンベア109,109には、それぞれプラテン8に搭載されたはんだプリコート基板1Aが所定の間隔をあけて送り込まれる。はんだプリコート基板1Aは、前記ガイド部111の開口部120を通過した後、転写ローラ112の下方に到達する。転写ローラ112の高さは、基板1A上の各プリコートはんだ50がフラックスの層6Aを通過できるように調整されているので、基板1の移動に伴い、各プリコートはんだ50の上面にフラックス6が転写されるようになる。
この実施例では、転写ローラ112を後回りに回転させるとともに、コンベア109を後から前に移動させているので、転写ローラ112上のフラックスの層6Aは、コンベア109に対向する側ではこのコンベア109と同じ方向(後から前)に流れることになる。この実施例では、基板1の厚みやプリコートはんだ50の高さに基づき、フラックスの層6Aが基板1の表面よりも所定距離だけ上方に位置し、かつ各プリコートはんだ50の上半分がフラックスの層6Aを通過するように、転写ローラ112やスキージ123の高さを調整している。
なお、図10,11には示していないが、プリコートはんだ50にフラックス6が転写されると、フラックスの層6Aには、その転写に伴う「欠け」が生じる。この実施例では、前記したように、プリコート基板1Aをフラックスの層6Aの流れに沿って搬送するとともに、この層6Aの流れる速度が基板1Aの搬送速度に一致するように、コンベア109やサーボモータ107の動作を制御している。このような制御によれば、前方のプリコートはんだ50への転写により欠けた部分は、後方のはんだ50に出会う前に上方に移動するから、各プリコートはんだ50に所定厚みのフラックスの層6Aを出会わせることができ、確実にフラックス6を転写することができる。また、欠けの部分には、上方で新たなフラックス6が補充される。
また、この実施例で使用されるはんだプリコート基板1Aは、各プリコートはんだ50の高さがほぼ均一になるように調整されているので、転写ローラ112やスキージ113の高さ調整により、フラックスの層6Aの高さや厚みが転写に最適な状態になるようにする設定を容易に行うことができる。図12は、この調整の条件を設定するためのパラメータを示す。なお、図12では、各パラメータをわかりやすくするために、各プリコートはんだ50の高さのばらつきを大きくして示している。
図12のAは、基板1とフラックスの層6Aとの間に確保すべき間隙の大きさを、Bは基板1上のはんだ50の高さの最小値を、Cは基板1上のはんだ50の高さの最大値を、それぞれ示す。このような場合、最小の高さのはんだがフラックスの層6Aを通過し、かつ最大の高さのはんだ50が転写ローラ119の周面に触れないようにするためには、AおよびDの値をつぎの(B)式のように設定する必要がある。
0<A<B かつ C−B<D<C ・・・(B)
上記(B)式によれば、プリコートはんだ50の高さに多少のばらつきがあっても、理論上は、AやDの値を調整することができる。しかしながら、フラックスの層6Aの厚みは、主として転写ローラ119とスキージ123との間隔により決まるので、C−Bの値がある程度大きくなると、調整は困難になる。これに対し、この実施例のはんだプリコート基板1Aによれば、C−Bの値を0に近い値とすることができるから、フラックスの層6Aの厚みDを、最大のはんだ高さCに基づいて定めれば良く、調整を簡単に行うことができる。なお、前記のCは、前記マスク3の開口部30の大きさ設定に使用した目標値Hに一致すると考えることができる。
以下、前記フラックス塗布装置100の考えられ得る設計変更について述べる。
まず、先の実施例では、フラックス転写後の基板1を後続の部品実装装置200に搬送するために、コンベア109の搬送方向Fを一方向に限定した。これに対し、図9の構成のフラックス塗布装置100と部品実装装置200とを連結していない場合などには、フラックス6の転写完了後にコンベア109を逆転させて、基板1を送り込み位置に戻すようにしてもよい。また、転写ローラ112へのフラックスの供給は、必ずしもシリンジ119により行う必要はなく、作業員が行うようにしてもよい。
また、転写ローラ112に代えて、図13に示すような転写板124を使用してもよい。この例では、搬送路109より所定の高さ位置に転写板124を配備し、その上面にフラックス6を供給した後、スキージ123によりフラックス6の厚みを均一にする。この後、転写板124の上下を反転させ、基板1を搬送することにより、その基板1上の各プリコートはんだ50にフラックス6を転写することができる。
なお、図13の例では、はんだプリコート基板1Aを支持プレート9上に直接載せて搬送しているが、この例でも、プラテン8を使用してもよい。プラテン8を使用する場合には、基板1Aを安定して支持することができるから、図9の例と同様に、基板1Aの搬送方向に沿って基板1Aと同じ速度で転写板124を移動させることができる。このようにすれば、各プリコートはんだ50へのフラックス6の転写を確実なものとすることができる。
つぎに、図14の例でも、プラテン8を使用せずに、支持プレート9上に直接はんだプリコート基板1Aを設置して搬送している。また、転写ローラ112の長さを基板1の幅に対応させるとともに、この転写ローラ112の両側の円盤122,122を基板1の両側縁に接触させ、その状態で転写ローラ112を回転させながら基板1を搬送している。なお、基板表面の円盤122,122に接触する部分には、部品が実装されないことが条件となる。また、この例でも、基板1の厚みやプリコートはんだ50の高さに応じて転写ローラ112の高さを調整しなければならない点は、先の実施例と同様である。フラックスの層の6Aの高さや厚みを確保しながら各円盤112,112を基板1に接触させるには、円盤の径を若干大きくしなければならない可能性がある。
基板1がプラテン8で支持されていない場合、処理中の基板1に反りが生じることがある。図14の実施例では、基板1の反りを抑えつつ、基板1上のプリコートはんだ50に確実にフラックスを転写することができる。
図15の例は、プラテン8を使用するが、搬送路はコンベア109ではなく、駆動系を持たない単なる基板の導入路125として構成される。また、転写ローラ112の長さは、プラテン8の幅に応じて設定される。
上記の例では、基板1を支持するプラテン8は、作業員により転写ローラ112の下方に設置されることになる。設置が完了すると、転写ローラ112は、両側の円盤122,122がプラテン8の表面(基板のない両側部)に接触する位置まで下がる。この状態で転写ローラ112を回転させると、プラテン8に円盤122,122の回転力が伝えられ、その回転方向に沿って移動することになる。
この実施例でも、転写ローラ112の高さは、基板1の厚みやプリコートはんだ50の高さに応じて調整されているので、基板1上の各プリコートはんだ50は、前記プラテン8の移動に伴ってフラックスの層6Aを順に通過するようになる。よって、各プリコートはんだ50に適切な量のフラックス6を転写することができる。
なお、図13〜15のいずれにおいても、転写ローラ112(図13では転写板124)やスキージ123は、図9と同様に上下動可能に配備され、処理対象の基板1に応じて高さが調整される。
最後に、上記した第1工程および第2工程は、個片基板に限らず、マルチ基板に対しても適用することができる。また、両面に部品が実装されるタイプの基板についても、第1工程および第2工程を、それぞれ各面に対して行うことにより、対応することができる。ただし、両面実装基板を処理対象とする場合には、前記したプラテン8などにより下方の面を保護する必要がある。