JP2005116180A - セパレータの機能を併せ持つ拡散層を備えた燃料電池と拡散層用の材料 - Google Patents

セパレータの機能を併せ持つ拡散層を備えた燃料電池と拡散層用の材料 Download PDF

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Abstract

【課題】 製造コストの安価な新規な構成の燃料電池を得る。
【解決手段】 電解質膜1を挟持する一対の電極2、3と、その外側から電極を挟持する一対の拡散層6、6を有するセルaから構成される燃料電池において、拡散層をガス通気性と電気伝導性を併せ持つ材料で構成し、かつ、拡散層の電極と接しない部位にガス気密性と電気伝導性を併せ持つ材料を含浸して含浸層5を形成する。含浸層5がセパレータに代わるものとして機能する。それにより、高価なセパレータを省略することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は燃料電池、特に固体高分子電解質形燃料電池において、その構成を簡素化して製造コストを低減できるようにした新規な構成を持つ燃料電池に関する。
燃料電池、例えば固体高分子電解質形燃料電池のセルは、図3に示すように、固体高分子電解質膜10と、それを挟持する一対の電極(触媒層)20、20と、ガス拡散層30、30と、セパレータ40とで通常構成される。セパレータ40には燃料ガス(水素)および酸化ガス(酸素、通常は空気)のための流体流路50が形成され、流体流路50から流入する燃料ガスおよび酸化ガスは、例えばカーボンクロスのようなカーボン基材の材料で構成される多孔性の拡散層30内でセル面内に拡散しながら、電極20、20に供給される。
拡散層30は、上記したガス拡散機能に加えて、電極20で発生した電気を集電体(セパレータにこの機能を持たせるのが普通である)に集電させる機能も必要であり、そのために前記したように電気伝導性を備えるカーボン基材のものが通常用いられる。カーボンクロスのようなカーボン基材は高価であることから、拡散層の材料をカーボン粉末と撥水性を有する高分子物質との混合物から構成することも提案されている(特許文献1:特開2000−182625号公報)。
セパレータ40は、充分なガス気密性を備えることによって、隣り合うセルのそれぞれに供給される燃料ガスおよび酸化ガスが混じり合うのを防ぐ機能と、集電体としての機能の双方が必要とされる。そのために、従来、セパレータには、高い電気伝導性を持つカーボン材料あるいは金属材料を用いて製造されている。金属材料は強度に優れているため、カーボン材料に比べて薄いセパレータを製造することができ、燃料電池全体を小型化することができる。しかし、金属材料の場合は耐食性向上のために表面処理が必要となり、コストアップの一因となる。カーボン材料を素材とする場合は、材料自体のカーボン材が高価であるばかりでなく、比較的もろいカーボン材料を薄く加工することや、機械切削などにより精密なガス流路を形成することが容易でない。そのような課題を解決するものとして、特許文献2(特開2002−100372号公報)には、拡散層側に流体流路を形成し、カーボン基材であるセパレータを平板かつ薄手のものとすることも提案されている。
特開2000−182625号公報 特開2002−100372号公報
上記のように燃料電池の製造コストを低減するためのいくつかの提案がなされている。しかし。これまでの提案は、ガス気密性と電気伝導性の機能を併せ持つカーボン材料あるいは金属材料で造られたセパレータを用いることが前提となっており、このようなセパレータは構成部材のなかでも特にコストが高い要素であることから、燃料電池全体の製造コスト低減には限度があった。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、高コストの要因となるセパレータを独立した部材として備えることなく所要の発電機能を奏することができるようにした新規な構成の燃料電池を提供することを目的とする。セパレータを独立した部材として持たないことから、燃料電池の製造コストは大きく低減する。
上記の課題は、基本的に、拡散層に部分的に気密材料を含浸させてセパレータとしての機能を併せ持たせるようにしたことを特徴とする燃料電池によって解決される。より具体的には、本発明による燃料電池は、電解質膜、電解質膜を挟持する一対の電極、外側から電極を挟持する一対の拡散層を有するセルから構成される燃料電池であって、拡散層はガス通気性と電気伝導性を併せ持つ材料からなり、拡散層の電極と接しない部位には電気伝導性は保持するがガス気密性とされた領域がセパレータに代わるものとして形成されていることを特徴とする。
本発明による燃料電池において、電解質膜と電解質膜を挟持する一対の電極は、従来の例えば固体高分子電解質形燃料電池で用いられているものと同じであってよい。電解質膜としては、例えば、デュポン社製「ナフィオン」(商品名)のようなものであってよく、電極は、触媒物質(例えば、金や白金)と担持体(例えば、カーボン担体)と水性溶媒あるいは有機溶媒などからなる触媒物質担持体含有インクを前記電解質膜の上に塗布するなどによって形成されるものであってよい。
本発明による燃料電池において、拡散層はガス通気性と電気伝導性を併せ持つ材料で造られ、その前記電極とは接しない部位には電気伝導性は保持するがガス気密性とされた領域が形成される。そして、その領域が従来の燃料電池におけるセパレータと同様の機能を果たす。従って、従来の燃料電池のように、カーボン材料あるいは金属材料で造った別部材としての高価なセパレータを省略することが可能となり、燃料電池の製造コストは大きく低減する。
拡散層を構成する基材、すなわち、ガス透過性と電気伝導性を併せ持つ材料としては、金属またはカーボンなどの多孔体などを挙げることができ、より具体的には、金属多孔体、金属を吸着させた多孔性セラミックス、金属繊維の多孔質焼結体、カーボン繊維の多孔質焼結体、金属と有機ポリマーの複合体、などのような材料を挙げることができる。
また、セパレータとしての機能を果たす電気伝導性は保持するがガス気密性とされた領域は、上記した材料(拡散層の基材)に、ガス気密性と電気伝導性を併せ持つ材料、例えば、銀、ステンレス、カーボン、導電性樹脂、導電性ゴムなどの導電性ペースト、もしくは、ニッケル、銅のような金属ロウ材、などの材料を含浸させるなどの方法で、容易に形成することができる。なお、本発明で「含浸」とは、上記拡散層の基材中に前記含浸材が入り込んで、基材の一部に電気伝導性は保持するがガスに対しては気密性とされた領域を形成できる手段をすべて含むものとして用いており、例えば、含浸材が金属の場合には基材の表面層に金属材料をメッキする手段、含浸材がニッケルや銅などのろう材の場合には基材の表面層に該ろう材を塗布し乾燥させる手段、含浸材が導電性樹脂や導電性ゴムなどの導電性ペーストの場合には、該ペースト中に気密面を形成したい領域のみを適当な深さまで漬ける、あるいは該ペーストを表面層に塗布し常温または加熱して硬化させるような手段が挙げられる。
発電に際し、ガス(燃料ガスとしての水素ガスあるいは酸化剤ガスとしての空気)は、拡散層のガス気密性とされた領域以外の領域を拡散しながら通過して電極に至り、従来の燃料電池の場合と同様にして発電に寄与する。発電した電気はガス気密性とされた領域で集電され取り出される。
本発明の燃料電池において、2つのセルが隣接する部位での拡散層はその中間部に前記した電気伝導性は保持するがガス気密性とされた領域が形成され、両端に位置するセルの外側の拡散層では電極と反対側の面が電気伝導性は保持するがガス気密性とされた領域とされる。このように多数のセルを並置した場合においても、前記拡散層におけるガス気密性とされた領域がセパレータとしての機能を果たし、隣り合うセルのそれぞれに供給される燃料ガスおよび酸化ガスが混じり合うことはなく、さらに、隣り合うセルを電気的に接続するので、多セル形の燃料電池として有効に機能する。なお、中間部に電気伝導性は保持するがガス気密性とされた領域を有する拡散層は、表面層にガス気密性とされた領域を形成した2枚の拡散層をガス気密性が対向するようにして重ね合わせるなどの方法により成形することができる。
本発明は、また、ガス通気性と電気伝導性を併せ持つ基材の一部にガス気密性と電気伝導性を併せ持つ材料が含浸され、それにより、厚さ方向の1領域が電気伝導性は保持するがガス気密性とされた領域とされていることを特徴とする燃料電池拡散層用の材料をも開示する。上記のように、この材料を拡散層として用いることにより、従来別部材とし用いていたセパレータを省略できるので、燃料電池の製造コストは低減する。
本発明によれば、コストの高い要因となるセパレータを独立した部材として持つことなく、拡散層の一部にその機能を持たせるようにしたので、燃料電池の製造コストを大きく低減することができる。
以下、本発明を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の燃料電池を構成する1つのセルを示す模式図であり、図2は多数のセルを積層して燃料電池スタックとした場合の模式図である。
図中、1は電解質膜であり、電解質膜1を挟持するようにしてその両側に一対の電極(アノード電極2とカソード電極3)が配置される。この構成は、従来、膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)と呼ばれているものであり、前記特許文献1あるいは特許文献2に記載されるような従来知られた膜電極接合体をそのまま用いることができる。
各電極2、3の電解質膜1と反対側にはセパレータ機能を兼ね備えたガス拡散層6、6がそれぞれ配置される。各拡散層6は、前記したように金属多孔体のようなガス通気性と電気伝導性を併せ持つ材料を基材としており、供給される燃料ガスあるいは酸化剤ガスは、材料中の気孔によりセル面に拡散して電極2、3に供給される。
拡散層6の電極2、3と接する面とは反対側の面には、厚さ方向に所要の深さで導電性材料または金属がメッキ(含浸)されており、ガス気密性と電気伝導性を併せ持つ含浸層5が形成されている。この含浸層5が、従来燃料電池で用いられていたセパレータの機能を果たす。なお、金属のメッキに代えて、ニッケルや銅などの金属ろう材や銀、ステンレス、カーボンのような導電性ペーストを表面層に塗布してもよいことは、前記したとおりである。
上記のようであり、セルaは、拡散層6に形成した含浸層5の部分がセパレータとしての機能を果たすことができるので、別部材としてのセパレータを備えることなく、燃料電池としての所要の電気化学反応を遂行することができる。
図2は、上記構成のセルaを多数(図での4つ)積層して燃料電池スタックとする場合の例を示している。4つのセルa1〜a4のうち、隣接するセル同士(例えば、セルa1とa2)は1つの拡散層6’を共有している。すなわち、拡散層6’は上記した拡散層6と同じ材料を基材としているが、ガス気密性と電気伝導性を併せ持つ領域は、その外側面にではなく、厚さ方向のほぼ中央部に同じような厚さで配置されている。
それにより、この拡散層6’は、セパレータとしての機能を果たす含浸層5の両側にガス拡散層4a,4bが配置された形態となっており、隣り合うセルa1、a2のそれぞれに供給される燃料ガスおよび酸化ガス、すなわち、一方のガス拡散層4aに流入し拡散するガス(例えば燃料ガス)と他方のガス拡散層4bに流入し拡散するガス(例えば空気)とが混じり合うのを阻止している。当然に、各セル間の電気的接続も確保される。外側のセルa1およびセルa4における外側に位置する含浸層6,6は、図1に示した形態の含浸層6が設けられる。なお、上記の構成の拡散層6’は、図1で説明した拡散層6を2枚用い、その含浸層5を対向するようにして積層して造ることもできる。
形成される燃料電池スタックAは、別部材してのセパレータを有しないことを除き、機能的には従来の燃料電池スタックと同様であり、従来品と同じようにして各セルa1〜a4に燃料ガスと酸化剤ガスを供給することにより、所要の電力を発電する。なお、本発明のセルaにおいて、従来セパレータに形成されていたように明確な形状を持つガス流路は存在せず、拡散層6を形成する材料が持つ気孔がガス流路とガス拡散路の双方の機能を果たす。
本発明の燃料電池を構成する1つのセルを示す模式図。 多数のセルを積層して燃料電池スタックとした場合の構成を示す模式図。 従来の燃料電池の構成例を示す模式図。
符号の説明
a,a1〜a4…セル、A…燃料電池スタック、1…電解質膜、2、3…電極、4,4a,4b…ガス拡散層、5…セパレータとしての機能を果たす含浸層、6、6’…拡散層

Claims (4)

  1. 拡散層に部分的に気密材料を含浸させてセパレータとしての機能を併せ持たせるようにしたことを特徴とする燃料電池。
  2. 電解質膜、電解質膜を挟持する一対の電極、外側から電極を挟持する一対の拡散層を有するセルから構成される燃料電池であって、拡散層はガス通気性と電気伝導性を併せ持つ材料からなり、拡散層の電極と接しない部位には電気伝導性は保持するがガス気密性とされた領域がセパレータに代わるものとして形成されていることを特徴とする燃料電池。
  3. 2つのセルが隣接する部位での拡散層はその中間部に電気伝導性は保持するがガス気密性とされた領域が配置されており、両端に位置するセルの外側の拡散層は電極と反対側の面が電気伝導性は保持するがガス気密性とされた領域とされていることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池。
  4. ガス通気性と電気伝導性を併せ持つ基材の一部にガス気密性と電気伝導性を併せ持つ材料が含浸され、それにより、厚さ方向の1領域が電気伝導性は保持するがガス気密性とされた領域とされていることを特徴とする燃料電池拡散層用の材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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