JP2005112665A - 単結晶セラミックス粒子、球状酸化物粉末 - Google Patents

単結晶セラミックス粒子、球状酸化物粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】 安定して大量に製造することが可能な単結晶セラミックス粒子、球状酸化物粉末を提供することを目的としている。
【解決手段】 バーナからの燃焼炎で原料粉体を溶融させて球状化した後に、熱処理(アニール)することにより得るようにした単結晶セラミックス粒子を、ABO3で表されるものを主剤とし、AはCa、Sr、Ba、Mgの中から選ばれた一種または二種以上のアルカリ土類元素、BはTi、Zrの中から選ばれた一種または二種以上の元素からなり、粒径が0.1〜30μmで、格子間距離の最大値maxと最小値minの比max/minで表される格子定数比が1.7未満であるものとした。
【選択図】図1

Description

本発明は、単結晶セラミックス粒子、球状酸化物粉末に関する。
従来、誘電体粒子や磁性フェライト粒子等のセラミックス粒子が多くの分野で使用されている。例えば誘電体粒子として、チタン酸バリウムや酸化チタン等は誘電性、圧電性および焦電性に優れ、磁器コンデンサやフィルタ、センサ等の材料として用いられている。
セラミックス粒子を磁器コンデンサ用の材料として使用する場合、誘電率が高く、損失の小さいものが望まれる。また磁性フェライト材料として使用する場合は、損失が小さく、透磁率がフラットに高周波域まで伸びているものが望まれる。これら特性はセラミックス粒子の形状、粒径、純度、反応性等の物性に依存する。例えば、セラミックス粒子が多結晶や不定形の粒子であると、局部的異常粒成長を起こし、あるいは組成の不均一を生じやすくなり、磁気的特性や電気的特性の劣化を招くことになる。したがってセラミックス粒子は結晶粒界や不純物を有せず、単相であり、また単結晶であることが好ましい。また、さらに優れた特性を得るため、セラミックス粒子は2種類以上の金属と酸素の化合物であることが好ましい。
しかし、優れた特性を有するセラミックス粒子は製造することが難しい。例えば固相反応法では、最終生成物の組成に対応した金属酸化物の混合粒子を空気中や不活性ガス中で焼成することにより、2種類以上の金属と酸素の化合物である金属酸化物の誘電体を得ることができるが、単相の粒子を得ることが難しい。また、共沈法等の液相法では、金属塩の水溶液或いは有機溶媒溶液から水和物などの金属酸化物の前駆体(一次粒子)を製造し、この前駆体を空気中や不活性ガス中で焼成してセラミックス粒子を得る。しかし、結晶性に優れた誘電体粒子を得ることは難しく、また金属酸化物の前駆体の結合が強く最終的に大きな塊として得られるため、誘電体粒子を得るためには焼成後の誘電体を粉砕しなければならない。このようにして得られる粒子では、個々の粒子の形状が不定形であり、また粒度分布も広いものとなり、さらに不純物が混入する可能性も高い。
そこで、粒子の形状や粒度分布を改良した水熱合成法や気相反応法等も提案されているが、いずれも生産性やコストの点で工業的に効率的に製造することは困難である。また特許文献1には、溶液に原料を溶解させたものを加水分解や共沈法等により酸化物の微粒子を形成し、微粒子を熱処理して結晶化および粒子の成長を促し、さらに得られたものに含まれるガラスを溶解除去し、粒径の揃った単結晶セラミックス粒子を得る方法が開示されている。しかし、この方法では工程が複雑であり、工業的に量産するのが困難である。
また特許文献2には、平均粒径が10μm以下のチタン酸バリウムを1618℃未満1200℃以上で焼結させて、単結晶のチタン酸バリウムを得る方法が開示されている。この方法では、チタン酸バリウムの融点より低い温度で、焼結時に温度勾配を付けて異常粒成長をさせ、単結晶のチタン酸バリウムを形成している。しかし、この方法では、得られるチタン酸バリウムの粒径が500μm程度と大きく、微粒子を得るものではない。また単結晶は多結晶体中に含有された状態で得られるので、粒子形状が不規則であり、単結晶を取り出すには多結晶体を濃塩酸中に浸漬させて多結晶部分を溶解する工程が必要である。
ところで、セラミックス粒子は、粒子のみを単体として利用する場合もあるが、樹脂材料と複合化した複合材料として利用することもある。複合材料として用いられるセラミックス粒子には、樹脂材料に対する分散性、充填性が要求される。樹脂材料に対する分散性、充填性を確保するための一つの要素として、粒子を構成する微粒子の粒径がある。
しかし、前記した共沈法で得られるセラミックス粒子は粒径が微細すぎて樹脂材料に対する分散性、充填性を確保することができない。また、前記した液相法により得られたセラミックス粒子は、粉砕により得られるものであるため粒子の形態が不定形となり、樹脂材料に対する分散性、充填性を確保することができない。また前記特許文献2に記載の単結晶のチタン酸バリウムは粒径が大きいので、高い充填性を得ることが難しい。
そこで本出願人は、優れた特性を有する球状の単結晶セラミックス粒子を得るために、セラミックス成分からなる粉体をキャリアガスとともに加熱処理領域に供給する粉体供給工程と、加熱処理領域に供給された粉体を当該粉体の融点以上に加熱する加熱処理工程と、加熱処理工程で得られた生成物を冷却することにより単結晶セラミックス粒子を得る冷却工程とを備える製造する方法を先に提案している(特許文献3参照。)。
特開平7−33579号公報 特開平9−263496号公報 特許第3423303号公報
その後も、本発明者らは、0.1〜30μmといった微小粒径の単結晶セラミックス粒子、球状酸化物粉末を実験レベルでなく量産レベルで製造することを目的として開発を続けていたが、特許文献3に開示された方法を含む従来の方法では、そのような物質の単結晶粒子を製造できないか、製造できたとしても安定して大量に製造することができないのが実情であった。例えば、特許文献3にて提案した方法は、樹脂材料への分散性、充填性に優れた球状の単結晶セラミックス粒子を容易に得るために好適な方法であるものの、当該方法で得られた球状の粒子の中には、非晶質状態の粒子が含まれることがあることが確認された。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、安定して大量に製造することが可能な単結晶セラミックス粒子、球状酸化物粉末を提供することを目的としている。
上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討を行った結果、原料粉体を火炎中に投入して溶融させ、球状化を図るのが、量産性に優れていることを把握し、さらに、原料粉体の少なくとも一部を溶融した後、凝固させて凝固物粒子を得る溶融凝固工程と、凝固物粒子を熱処理し、単結晶セラミックス粒子を得る熱処理工程と、を備える製造方法が、単結晶セラミックス粒子を安定して大量に生産するのに特に有効であることを把握した。
この方法によれば、溶融凝固工程では、原料粉体の一部を溶融させることで、その中心部に結晶質部分を残し、その外周部に非晶質部分が形成された凝固物粒子を得ることができる。これにより、その後の熱処理工程で、中心部の結晶質部分の結晶が成長し、冷却工程を経ることで単結晶セラミックス粒子を得ることができる。溶融凝固工程では、バーナで発生する燃焼炎中に原料粉体をキャリアガスとともに供給することで原料粉体の一部を溶融するのが好ましく、燃焼炎温度T1を、原料粉体の融点Tmに対し、T1≦Tmとするのが好ましい。一方、熱処理工程では、熱処理温度T2を、原料粉体の融点Tmに対し、T2≦Tmとするのが好ましく、さらには、
0.45 ≦ T2/Tm ≦ 0.75
とするのが好ましい。
本発明は、例えば上記したような方法をとることで、大量に生産することが可能な単結晶セラミックス粒子、単結晶セラミックス粒子を多く含む球状酸化物粉末である。
本発明の単結晶セラミックス粒子は、ABO3で表されるものを主剤とし、AはCa、Sr、Ba、Mgの中から選ばれた一種または二種以上のアルカリ土類元素、BはTi、Zrの中から選ばれた一種または二種以上の元素からなり、粒径が0.1〜30μmで、格子間距離の最大値maxと最小値minの比max/minで表される格子定数比が1.7未満であることを特徴とする。本発明の単結晶セラミックス粒子の、さらに好ましい格子定数比は、1.01未満である。
また、この単結晶セラミックス粒子は、Mn、Si、希土類元素、V、Ni、Ag、Cu、Fe、Li、Nb、Ta、Cr、Sc、Bi、Pbから選ばれた一種または二種以上の酸化物を、合わせて0.05〜5.0mass%さらに含むこともできる。
このような単結晶セラミックス粒子は、Wadellの実用的球状度が0.85以上であるのが好ましい。
また、本発明の球状酸化物粉末は、格子間距離の最大値maxと最小値minの比max/minで表される格子定数比が1.7未満、さらに好ましくは1.01未満である物質からなり、粒子一個あたりのグレインの数が3つ以下である結晶性粒子を主体とすることを特徴とする。球状酸化物粉末を構成する粒子の平均粒径は、0.1〜50μmであるのが好ましく、さらには0.1〜30μmであるのが好ましい。また、粒子を形成する物質はABO3で表されるものを主剤とし、AはCa、Sr、Ba、Mgの中から選ばれた一種または二種以上のアルカリ土類元素、BはTi、Zrの中から選ばれた一種または二種以上の元素であるのが好ましい。このような物質は、この物質の融点よりも低い燃焼炎温度の燃焼炎で溶融し、球状化した球状粉体を得る工程と、球状粉体をアニールする工程と、を経ることで、安定して得ることができる。
もちろん、本発明にかかる単結晶セラミックス粒子、球状酸化物粉末を得ることができるのであれば、その製造方法は上記方法に限定するものではなく、他の方法を適宜採用することが可能である。ただしその場合も、単結晶セラミックス粒子、球状酸化物粉末を安定して大量に製造できることが重要である。
本発明によれば、例えばバーナからの燃焼炎で原料粉体を溶融させて球状化した後に、得られた処理粉体を熱処理することにより安定して得ることのできる単結晶セラミックス粒子、球状酸化物粉末を提供することができる。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施の形態では、誘電体粉末として用いることのできる球状酸化物粉末を製造するにあたり、図1に示すように、まず原料を粉砕して原料粉体を得る。次いで、原料粉体をバーナで溶融して球状化し、球状粉体を得た後、この球状粉体を熱処理することで単結晶セラミックス粒子を得る。また、ここでは原料粉体に粉砕粉を用いる例を示すが、本発明はこれに限定されるものではなく、原料を顆粒化し、これを原料粉体とする場合等をも含む。
このような工程を経ることで、単結晶セラミックス粒子、単結晶セラミックス粒子を主体とする球状酸化物粉末を得ることが可能である。ここで、上記工程で得られる粒子は、その全てが単結晶セラミックス粒子ではあるとは限らず、各種条件等に応じ、粒子全体に含まれる単結晶セラミックス粒子の割合が異なる。もちろん、得られる粒子の全てが単結晶セラミックス粒子であるのが望ましいが、多結晶粒子に比較して粒子一個あたりのグレインの数が十分に少ない、例えば粒子一個あたりのグレインの数が3つ以下であれば、多結晶粒子に比較して十分に高特性が得られ有効であるため、本実施の形態においては、得られる粒子が、単結晶粒子および粒子一個あたりのグレインの数が3つ以下であるものを結晶性粒子と称することとする。
上記工程を経ることで得ることのできる結晶性粒子は、格子定数比(max/min)が1.7未満であることが好ましい。結晶性粒子の、さらに好ましい格子定数比は、1.01未満である。格子定数比が、1.7以上、特に2.0以上となると、多結晶になる傾向が非常に強く、単結晶になったとしても棒状等となり、球状の粒子が得られない。
これら結晶性粒子としては、ABO3(AはCa、Sr、Ba、Mg、Pbの中から選ばれた一種または二種以上のアルカリ土類元素、BはTi、Zrの中から選ばれた一種または二種以上の元素)で表されるものを主剤としたものがある。さらにこのような結晶性粒子は、上記主剤に加え、Mn、Si、希土類元素、V、Ni、Ag、Cu、Fe、Liから選ばれた一種または二種以上の酸化物を、合わせて含むことができる。
このような結晶性粒子を構成する組成物としては、BaTiO3(正方晶)、CaTiO3(立方晶)、SrTiO3(立方晶)、SrZrO3(斜方晶)、BaZrO3(立方晶)、CaZrO3(斜方晶)、Ca0.65Sr0.35Ti0.95Zr0.053(立方晶)、Ba0.10Sr0.25Ca0.65TiO3(立方晶)、Ca0.65Sr0.35TiO3(立方晶)、Ba0.6Ca0.4TiO3(立方晶)、Ba0.77Ca0.23TiO3(正方晶)、Ba0.5Ca0.5TiO3(立方晶)、BaTi0.75Zr0.253(立方晶)、BaTi0.75Zr0.256(立方晶)等がある。
これら結晶性粒子について、格子間距離a、b、cと格子定数比(max/min)を表1に示した。
Figure 2005112665
以下、本実施の形態における結晶性粒子の製造工程について詳細に説明する。
まず、原料粉体生成工程において、セラミックス成分からなる原料より原料粉体を形成する。原料粉体生成工程では、セラミックス成分からなる原料を粉砕し、好ましくは平均粒径が5μm以下となるように調整する。この粒径は、最終的に得られる結晶性粒子の粒径を左右するだけではなく、このような粒径の原料粉体を用いることにより、結晶性粒子の品質を優れたものとすることができる。粉砕方法は特に限定されないが、例えばボールミル等を使用することができる。
本発明におけるセラミックス成分とは、セラミックスとして認識される酸化物の化合物を包含している。また、単一のセラミックスのみならず、複数のセラミックスの混合体、複合酸化物、複合窒化物等の複合化合物をも包含している。セラミックス成分の具体例として、誘電体材料や磁性材料がある。
誘電体材料としては、ABO3で表されるものを主剤とすることが好ましく、AはCa、Sr、Ba、Mgの中から選ばれた一種または二種以上のアルカリ土類元素、BはTi、Zrの中から選ばれた一種または二種以上の元素とすることができる。また、上記主剤に加え、Mn、Si、希土類元素、V、Ni、Ag、Cu、Fe、Li、Nb、Ta、Cr、Sc、Bi、Pbから選ばれた一種または二種以上の酸化物を、合わせて0.05〜5.0mass%含むこともできる。
なお、これらセラミックス成分を構成する原料粉体は、市販されているセラミックス微粒子、例えば、金属塩から作製した金属酸化物粒子(湿式沈殿法、噴霧熱分解法、スプレー法等による粒子)を使用することもでき、その他、セラミックス成分を形成するための組成物や材料を焼成することによって原料粉体を得ることができる。その中でも、溶液による出発原料を用いることにより、粉砕工程を経て得られる粒子よりも粒子の粒度分布をシャープに作製できる。
原料粉体としては、固相法により仮焼した後に粉砕した粉砕粉、溶液法から得た粒子のいずれであってもよい。
以上の原料粉体は、キャリアガスとともに球状化処理工程に供給する。
本実施の形態では、上記のようにして生成された原料粉体に対し、その流動性を高め、凝集を防止するための処理剤や添加剤を添加した後、この原料粉体を球状化処理装置に供給し、バーナの燃焼炎中に投入することで、球状粉体を得る。
原料粉体に処理剤を添加する場合、用いる処理剤としては、分散材、表面処理材として用いられる高級脂肪酸、もしくはその誘導体、高級炭化水素、高級アルコール等のワックス類、およびシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等があるが、この中でも、カップリング剤が好ましく、特にシランカップリング剤が好適である。
処理剤や添加剤が添加された原料粉体は、図2に示すような球状化処理装置10に供給され、球状化処理がなされる。ここで、球状化処理装置10の構成について説明する。なお、以下に説明する球状化処理装置10の構成はあくまで一例であり、適宜他の構成を採用することが可能である。
図2に示すように、球状化処理装置10は、チャンバ20、チャンバ20の上部に設けられたバーナ30を有する。チャンバ20の下部には、回収容器41とサイクロン42とから構成される処理粉体回収手段と、ガス排出手段50が設けられている。
チャンバ20は、例えば耐熱性の高いSUS、アルミナ等で形成され、上下方向に軸線を有した円筒状で、同一の内径を有する円筒壁部20aと、その下端部に連続して形成され、下方に行くにしたがい内径が徐々に小さくなるテーパ部20bとを有している。
チャンバ20の上部は開口しており、この開口部に蓋体21が設けられている。この蓋体21は、チャンバ20の中央部に臨む位置にバーナ30を備えている。
バーナ30自体の詳細な構成は後述するが、このバーナ30は多重管構造をなし、各々の領域に、原料粉体100aを供給する原料粉体供給系統31、支燃ガスとして酸素を供給する酸素供給系統32および燃焼ガスを供給する燃焼ガス供給系統33が接続されている。
原料粉体100aの供給は、空気、酸化性ガス、不活性ガス等のキャリアガスを用いて行われる。酸化性ガスとしては、酸素濃度が20%以上のガスを用いることができる。不活性ガスとしては、N2ガス、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、Xeガス、Rnガス等を用いることができる。
また、バーナ30内では、このとき、原料粉体100aが後述する燃焼炎F内へ供給される前に、原料粉体供給系統31で搬送される原料粉体100aの搬送方向に対し、所定の角度θで凝集解砕用ガスを噴出するのが好ましい。これにより、原料粉体100aが燃焼炎F内へ供給される前に、搬送中の原料粉体100aに対して凝集解砕用ガスを噴射し、原料粉体100aの凝集を解砕するのである。
ここで、凝集解砕用ガスとしては、上述したキャリアガスと同様のもの、つまり空気、酸化性ガス、不活性ガス等を用いることができる。また、燃焼ガスとして挙げたLPG、水素、アセチレン等を凝集解砕用ガスとして用いてもよい。また、凝集解砕用ガスの噴出角度θは、5〜85°とするのが好ましい。
このようなバーナ30は、酸素供給系統32から供給される酸素と燃焼ガス供給系統33から供給される燃焼ガスとをチャンバ20内の下方に向けて噴出しつつ、これに着火することで、チャンバ20中央部の上部に、燃焼炎Fを生成する。
燃焼炎Fを得るための燃焼ガスは、特に制限されない。LPG、水素、アセチレン等公知の燃焼ガスを用いることができる。
また、バーナ30で生成される燃焼炎Fの温度T1は、原料粉体100aに含まれる酸化物の融点Tm(絶対温度)に対し、
0.75 ≦ T1/Tm ≦ 1.20
となるようにするのが好ましい。温度T1が低すぎると、粒子を溶融させることができない。また温度T1が高すぎると、粒子間の融合や粒子の蒸発が発生するほか、粒子内の結晶構造が完全に壊され、その後の熱処理工程で単結晶が得られにくくなる。
原料粉体100aは、燃焼炎F中に投入され、自然落下しながら燃焼炎F中に所定時間滞留し、燃焼炎Fの熱によって溶融され、または化学的・物理的修飾を受け、チャンバ20内を落下する。原料粉体100aが溶融すると、その表面張力により、溶融状態の原料粉体100aは球状化する。そして原料粉体100aは、チャンバ20内を落下する間にその温度が低下し、凝固する。
このようにして燃焼炎Fを通過した原料粉体100aは、処理粉体100bとなる。なお、化学的・物理的修飾とは、原料粉体100aの物質形態、純度、粒子サイズ、粒子構造、形状もしくは表面性状を変化させることを意味する。
このとき、本発明では、原料粉体100aの少なくとも一部を溶融し、溶融後の凝固した状態で、図3(a)に示すように、原料粉体100aの表層部101が非晶質で、中心部102が核となる結晶質である状態、あるいは図3(b)に示すように、原料粉体100aの全体が単結晶となる状態とする。これは、前記の如く、燃焼炎Fの温度T1を、原料粉体100aに含まれる酸化物の融点Tm(絶対温度)に対し、
0.75 ≦ T1/Tm ≦ 1.20
とすることで実現できる。
また、燃焼炎F中における原料粉体100aの飛行速度が、5〜50m/secとなるよう、キャリアガスの供給量等を調整するのが好ましい。飛行速度が低い(5m/secを下回る)と、原料粉体100aが凝集しやすく、また生産性が低くなり、飛行速度が高い(50m/secを上回る)と、原料粉体100aの不完全溶融が生じやすいからである。
上記のような処理が行われるチャンバ20のテーパ部20bの下端部には、回収容器41が接続されている。この回収容器41の側面には、サイクロン42が接続されている。
チャンバ20内を落下した処理粉体100bは、回収容器41の底部に堆積し、またその一部はガスとともにサイクロン42に送り込まれる。
サイクロン42では、処理粉体100bが混在したガスの気体(ガス)と固体(処理粉体100b)とを上下に分離する。ガスと分離された処理粉体100bはサイクロン42の底部に堆積する。
これら回収容器41およびサイクロン42の底部に堆積した処理粉体100bを回収することで、球状粉体(粒子)100cを得ることができるのである。
また、サイクロン42の上部にはバグフィルタ等のフィルタ装置52が接続され、サイクロン42から排出されるガスに残存する球状粉体100cを、フィルタ本体52aで回収し、ガスのみを、排風機53を介して、排出管54から排出するようになっている。
このようにして、球状化処理装置10では、その前段にて処理剤が添加された原料粉体100aを、図示しないフィーダからキャリアガスによって原料粉体供給管60を通して搬送し、バーナ30の先端部から燃焼炎F中に投入する。これによって原料粉体100aが溶融し、さらに燃焼炎F外に移動することで冷却・凝固して球状化処理が施され、最終的に球状粉体100cを得ることができるようになっている。
上記のようにして得られた球状粉体100cは、坩堝やセッター等に載せて高温炉内で所定時間熱処理すればよい。また、粒子間の凝集を防ぐために、粒子を浮遊させた状態、または流動層等で撹拌させた状態で熱処理を行うのが望ましい。
球状粉体100cを加熱炉において所定の温度に加熱することにより、単結晶のセラミックス粒子を得るときの熱処理温度T2を、原料粉体100aに含まれる酸化物の融点Tmに対し、
0.45 ≦ T2/Tm ≦ 0.75
とするのが好ましい。T2/Tmが0.45を下回ると熱処理効果が得られず、0.75を上回ると粒子間の融着や凝集がひどくなる。
また、熱処理の雰囲気は、酸素含有量20%以上とするのが好ましい。
これにより、球状粉体100cから結晶性粒子が生成される。このとき、熱エネルギーが加えられることによって、球状粉体100c内部の結晶性の部分を核として結晶化が進み、表面エネルギーが小さくかつ安定な球状の結晶性粒子を形成する。また、溶融状態からの凝固でないため、生成される粒子が非晶質となることを防ぐことができる。
このようにして、バーナ30からの燃焼炎Fで原料粉体100aを溶融させて球状化した後に、得られた球状粉体100cを熱処理(アニール)することにより、ABO3(AはCa、Sr、Ba、Mgの中から選ばれた一種または二種以上のアルカリ土類元素、BはTi、Zrの中から選ばれた一種または二種以上の元素)で表されるものを主剤とした物質からなる結晶性粒子を得ることができる。また、上記結晶性粒子は、上記主剤に加え、Mn、Si、希土類元素、V、Ni、Ag、Cu、Fe、Liから選ばれた一種または二種以上の酸化物を、合わせて0.05〜5.0mass%含むこともできる。また、上記方法により、格子定数比(max/min)が1.7未満である物質からなる結晶性粒子を得ることができる、とも言える。
そして、得られる結晶性粒子の集合体である球状酸化物粉末は、平均粒径0.1〜50μm、グレイン数が粒子一個あたり3つ以下でありかつ球形の結晶性粒子を主体とすることができる。ここで「球形」とは、表面が平滑な完全な球形のほか、極めて真球に近い多面体を含む。具体的には、Wulffモデルで表されるような安定な結晶面で囲まれた等方的な対称性を有し、かつ球形度が1に近い多面体粒子も含まれる。ここで「球形度」とは、Wadellの実用的球形度、すなわち粒子の投射面積に等しい円の直径の粒子の投射像に外接する最小円の直径の比である。本実施の形態では、球形度が0.85以上の結晶性粒子を得ることができる。
そして、本実施の形態で得られる上記物質の結晶性粒子は結晶粒界や不純物を有さず、単相で、且つ単結晶あるいはグレイン数が少なく、結晶性が向上する。そのため、この結晶性粒子は、誘電体材料や磁性材料として使用する場合に、磁性または誘電特性の向上に寄与できる、優れた特性を示す。
さらに、本実施の形態では粒径が小さく、且つ球形である結晶性粒子を得ることができる。このような結晶性粒子は凝集性が低く、分散性と充填性に優れたものとなる。
以上の考え方は、結晶性粒子が磁性体材料から構成される場合にも適用することができる。つまり、相対的に融点の低い磁性体材料中に、相対的に融点の高い磁性体材料からなる結晶性粒子が分散、保持された複合磁性材料を得ることができる。
ところで、上記のようにして得られる単結晶セラミックス粒子は、溶融後に熱処理する過程で、結晶の核生成がほとんど無く、そのまま単結晶化するものもあるが、溶融後に大量の核が生成され、その後の熱処理過程で、まずは多結晶となり、そのあとは異常粒成長により単結晶化するものもあると考えられる。
原料粉体100aとして、平均粒径1.2μm、最大粒径5μmのCa0.65Sr0.35Ti0.95Zr0.053破砕粉(融点2080℃)を用意した。
この原料粉体100aを、1.5%のGE東芝シリコーン株式会社製のTSL−8113(商品名)シランカップリング剤で表面処理した後、球状化処理装置10にて溶融球状化した。このときの条件は、燃焼ガス(LPG)の流量を15 l(リットル)/min、支燃ガス(O2)の流量を75 l(リットル)/min、キャリアガス(N2)の流量を70 l(リットル)/min、原料粉体100aの供給量は1.8kg/hrとした。
球状化させた球状粉体100cを球状化処理装置10から回収し、加熱炉にて熱処理(アニーリング)した。このとき、融点Tmが2080℃である球状粉体100cに対し、熱処理温度T2を、1000℃、1150℃、1200℃の3通り、熱処理時間については4hrとした。
熱処理前後の球状粉体100cについて、粒子の形態変化をSEM(走査電子顕微鏡)で確認した。
図4、図5は、その結果を示すものである。
図4(a)は、熱処理前の球状粉体100c、(b)は熱処理温度T2=1000℃、図5(a)は熱処理温度T2=1150℃、(b)は熱処理温度T2=1200℃で熱処理した球状粉体100cである。
その結果、図4(b)、図5(a)、(b)に示すように、粒径1〜2μm程度の極めて真球状に近い粉体であること、およびこれら粉体に凝集がないことが確認された。さらに平均粒径を測定したところ約1.2μmであり、また球形度は約0.98であることが判明した。また、熱処理温度T2が高いほど、ファセットが見える粒子の割合が多く、また粒子表面のファセットも明確となる傾向が確認された。図4(b)の熱処理温度T2=1000℃では、数パーセント程度の粒子において、うっすらとファセットが確認されたのみであったが、図5(a)、(b)の熱処理温度T2=1150℃以上の粒子では、ほとんどの粒子からファセット模様が確認された。ただし、熱処理温度T2=1150℃以上の粒子では、熱処理後に粒子間のネックグロースが進行しているため、解砕処理する必要がある。そこで粒度分布を確認したところ、図5(a)の熱処理温度T2=1150℃の粒子では、4hrの解砕が必要であり、図5(b)の熱処理温度T2=1200℃の粒子では、6hrの解砕処理が必要であった。
さらに、熱処理前の球状粉体100c、熱処理温度T2=1000℃、および熱処理温度T2=1200℃で熱処理が施された球状粉体100cから、それぞれファセットが一番明確に観察された、図5(b)の熱処理温度T2=1200℃の粒子から、一個の粒子を抽出し、粒子の結晶性等を評価した。
<熱処理前の球状粉体>
図6(a)に示すように、ファセット・結晶面の方向の断面に沿ってFIB(集束イオンビーム加工観察装置)で粒子を削り、粒子の薄片を切り出した。これをTEM(透過電子顕微鏡)で解析した。図6(b)が、その観察像(写真)である。この図6(b)に示すように、観察像から、粒子内に試料の微小な湾曲や傾き、そして試料作成時に発生した歪等によるドメインのような電子線の回折コントラスト模様が観察されたが、粒界が認められなかった。
さらに、粒子より切り出した薄片をTEMでさらに拡大して解析したところ、図7に示すように、粒子の表層部101が非晶質であり、それより内方の部分102が結晶質であることが認められた。
そこで、その粒子の薄片を、EDS(エネルギー分散形分析装置)で組成分析し、またSADP(制限視野電子回折)で撮影した。
EDSでは、図6(b)に示す点a、点b、点c、点d、点eの計5点について組成分析を行った。図8(a)、(b)、(c)、図9(d)、(e)は、その分析結果を示すものである。その結果、図8(b)に示した、粒子の中心部に位置する点bと、図8(a)、(c)、図9(d)、(e)に示した、粒子の表層部に位置する点a、c、d、eとでは、組成に差が認められなかった。
また、図10(a)と図10(b)は、SADPで入射方向を互いに異ならせて粒子全体を制限視野に入れた制限視野電子線回折パターンであるが、これらは、入射方向が異なっても単一なパターンを示している。
これら、EDS、SADPでの分析・回折結果から、観察対象の、熱処理前の球状粉体100c、つまり溶融後の粒子は、粒子の表層部が非晶質であり、それより内方の部分が単一核の結晶質であると認められる。
<熱処理温度T2=1000℃の球状粉体>
図11(a)に示すように、ファセット・結晶面の方向の断面に沿ってFIBで粒子を削り、粒子の薄片を切り出した。これをTEMで解析した。図11(b)が、その観察像(写真)である。この図11(b)に示すように、観察像から、粒子内に試料の微小な湾曲や傾き、そして試料作成時に発生した歪等によるドメインのような電子線の回折コントラスト模様が観察されたが、粒界が認められなかった。
そこで、その粒子より切り出した薄片を、EDSで組成分析し、またSADPで撮影した。
EDSでは、図11(b)に示す点f、点g、点h、点i、点jの計5点について組成分析を行った。図12(f)、(g)、(h)、図13(i)、(j)は、その分析結果を示すものである。その結果、図12(g)に示した、粒子の中心部に位置する点gと、図12(f)、(h)、図13(i)、(j)に示した、粒子の表層部に位置する点f、h、i、jとでは、組成に差が認められなかった。
また、図14(a)と図14(b)は、SADPで入射方向を互いに異ならせて粒子全体を制限視野に入れた制限視野電子線回折パターンであるが、これらは、入射方向が異なっても単一なパターンを示している。
これら、EDS、SADPでの分析・回折結果から、観察対象の粒子は単結晶だと認められる。
<熱処理温度T2=1200℃の球状粉体>
図15(a)に示すように、ファセット・結晶面の方向の断面に沿ってFIBで粒子を削り、粒子の薄片を切り出した。これをTEM(透過電子顕微鏡)で解析した。図15(b)が、その観察像(写真)である。この図15(b)に示すように、観察像から、粒子内に試料の微小な湾曲や傾き、そして試料作成時に発生した歪等によるドメインのような電子線の回折コントラスト模様が観察されたが、粒界は認められなかった。
そこで、その粒子より切り出した薄片を、EDSで組成分析し、またSADP(制限視野電子回折)で撮影した。
EDSでは、図15(b)に示す点a、点b、点c、点dの計4点について組成分析を行った。図16(a)、(b)、(c)、(d)は、その分析結果を示すものである。その結果、図16(a)に示した、粒子の中心部に位置する点aと、図16(b)、(c)、(d)に示した、粒子の表層部に位置する点b、c、dとでは、組成に差が認められなかった。
また、図17(a)と図17(b)は、SADPで入射方向を互いに異ならせて粒子全体を制限視野に入れた制限視野電子線回折パターンであるが、これらは、入射方向が異なっても単一なパターンを示している。
これら、EDS、SADPでの分析・回折結果から、観察対象の粒子は単結晶だと認められる。
なお、図18は、SADPに基づいての面指数付の結果を示す。
このようにして、バーナ30からの燃焼炎Fで原料粉体100aを溶融させて球状化した後に、得られた球状粉体100cを熱処理(アニール)する工程では、適切に処理条件を選ぶことにより単結晶球状粒子が得られることを確認できた。
次に、温度を一定としたバーナ30の燃焼炎Fに対し、融点Tmが異なる複数種の原料粉体100aを溶融させて球状化させた後、熱処理を行った場合の比較をしたのでその結果を示す。
原料粉体100aとして、
実施例1:平均粒径1.2μm、最大粒径5μmのCa0.65Sr0.35Ti0.95Zr0.053破砕粉(融点Tmは2080℃)を用意した。
比較例1:BaNd2Ti412(融点Tmは1550℃)を用意した。
比較例2:Ba5Bi0.8Nd6Ti8Si0.321.8(融点Tmは1450℃)を用意した。
実施例1、比較例1、比較例2とも、原料粉体100aを、1.5%のGE東芝シリコーン株式会社製のTSL−8113(商品名)シランカップリング剤で表面処理した後、球状化処理装置10にて溶融球状化した。このときの条件は、バーナ30の燃焼炎Fの温度T1が約1800℃、燃焼ガス(LPG)の流量を15 l(リットル)/min、支燃ガス(O2)の流量を75 l(リットル)/min、キャリアガス(N2)の流量を70 l(リットル)/min、原料粉体100aの供給量は1.8kg/hrとした。
球状化させた球状粉体100cを球状化処理装置10から回収し、加熱炉にて熱処理(アニーリング)した。このとき、融点Tmが2080℃である実施例1の球状粉体100cは、熱処理温度T2を1200℃×4hrとし、融点Tmが1550℃である比較例1の球状粉体100cは、熱処理温度T2を1150℃×4hr、融点Tmが1450℃である比較例2の球状粉体100cは、熱処理温度T2を1100℃×4hrとした。
熱処理前後の球状粉体100cについて、粒子の形態変化をSEM(走査電子顕微鏡)で確認した。
図19、図20は、その結果を示すものである。
図19は、熱処理前の球状粉体100cを示すものであり、(a)は実施例1、(b)は比較例1、(c)は比較例2である。図20は、熱処理後の球状粉体100cを示すものであり、(a)は実施例1、(b)は比較例1、(c)は比較例2である。
なお、表2に、実施例、比較例1、比較例2のそれぞれについて、
条件(1):0.75≦T1/Tm≦1.20
条件(2):0.45≦T2/Tm≦0.75
の上限値、下限値を示した。
Figure 2005112665
図20(a)に示したように、燃焼炎Fの温度T1および熱処理温度T2が、条件(1)、(2)を満たす実施例では、溶融凝固後の粒子はガラス質の平滑な表面を持ち、ファセットが観察できないものの、XRDにより非常に良い結晶性を示していることが確認された。融点Tmを下回る実施例1では、熱処理後の球状粉体100cの粒子表面にファセットが明確に確認された。これに対し、図20(b)に示したように、条件(1)、(2)ともに満たすものの、燃焼炎Fの温度T1が融点Tmを上回る比較例1では、熱処理後の球状粉体100cの粒子表面に粒界の存在が観察され、単結晶ではないことが確認された。また、図19(c)に示したように、条件(1)、(2)ともに満足しない比較例2では、熱処理前の球状粉体100cにおいて、粒子表面に一部結晶化しているのが観察され、熱処理後には、図20(c)に示したように、結晶が成長しているのが観察された。
これらの結果から、条件(1)、(2)ともに満たすものの、燃焼炎Fの温度T1が融点Tmを上回れば単結晶化が実現せず、条件(1)、(2)ともに満たす、つまり燃焼炎Fの温度T1と、熱処理温度T2を、
0.75≦T1/Tm≦1.20
0.45≦T2/Tm≦0.75
ともに満たす条件に設定することが必要であることが確認された、と言える。
次に、格子定数比が異なる複数種の原料粉体100aを溶融させて球状化させた後、熱処理を行った場合の比較をしたのでその結果を示す。
原料粉体100aとして、
実施例11:Ca0.65Sr0.35Ti0.95Zr0.053破砕粉
実施例12:Ba0.10Sr0.25Ca0.65TiO3破砕粉
実施例13:Ca0.65Sr0.35TiO3破砕粉
実施例14:BaTiO3破砕粉
実施例15:CaTiO3破砕粉
実施例16:SrTiO3破砕粉
比較例11:BaNd2Ti412
比較例12:Ba2Nd2.6Bi0.35Ti1026.5
比較例13:BaSm2Ti412
を用意した。
実施例11〜16、比較例11〜13の格子間距離a、b、c、格子定数比(max/min)、融点Tmは表3の通りであり、実施例11〜16は格子定数比をいずれも1.7未満のものとし、比較例11〜13は、格子定数比をいずれも1.7以上のものとした。
Figure 2005112665
実施例11〜16、比較例11〜13とも、原料粉体100aを、1.5%のGE東芝シリコーン株式会社製のTSL−8113(商品名)シランカップリング剤で表面処理した後、球状化処理装置10にて溶融球状化した。そして、球状化させた球状粉体100cを球状化処理装置10から回収し、加熱炉にて熱処理(アニーリング)した。
このときの、バーナ30の燃焼炎Fの温度T1、加熱炉における熱処理温度T2は、表3のように設定した。
ここで、実施例11については、燃焼炎Fの温度T1を、700、1100、1200、1300、1550℃に振った(実施例11−1、11−2、11−3、11−4、11−5)。比較例11も、燃焼炎Fの温度T1を1500、1800℃に振った(比較例11−1、11−2)
また、実施例11、12、13、14については、添加剤(添加物)の添加したものについても試料を作成した(実施例11−6、実施例12−2、実施例13−2、13−3、実施例14−2)。
さらに、実施例13、比較例12は、添加剤の種類を変えて試料を作成した(実施例13−2、13−3、比較例12−1、12−2)。
熱処理前後の球状粉体100cについて、粒子の形態変化をSEM(走査電子顕微鏡)で確認した。
図21は、その結果を示すものである。
図21(a)は実施例11−3、図21(b)は実施例12−1、図21(c)は実施例13−1、図21(d)は比較例11−1の、熱処理後の球状粉体100cを示すものである。
図21(a)、(b)、(c)に示した実施例11−3、12−1、13−1をはじめ、格子定数比がいずれも1.7未満であり、熱処理温度T2が条件(2)を充たす実施例11−2〜11−6、12−1〜2、13−1〜3、14−1〜2、15、16では、いずれも、球状粉体100cの粒子表面にファセットが明確に確認された。
これに対し、図21(d)に示した比較例11−1をはじめ、格子定数比がいずれも1.7以上である比較例11−1〜2、12−1〜2、13では、熱処理後の球状粉体100cの粒子表面に粒界の存在が観察され、単結晶ではないことが確認された。
このようにして、格子定数比が1.7未満である組成系において、球状化処理装置10にて溶融球状化した後に、熱処理(アニーリング)を施すことで、添加物の有無、種類にかかわらず、単結晶球状粒子が得られることを確認できた。
本実施の形態における結晶性粒子の製造工程を示す図である。 球状化工程で用いる球状化処理装置の例を示す図である。 球状化粉体の例を示す図である。 熱処理温度の違いによる粒子形態の変化を示す図であり、(a)は熱処理前、(b)は熱処理温度1000℃での粒子の写真である。 同、(a)は熱処理温度1150℃、(b)は熱処理温度1200℃での粒子の写真である。 熱処理前の粒子の断面を観察するにあたり、(a)は粒子断面の位置を示す図、(b)は断面(観察用薄片)のTEM像である。 熱処理前の粒子の断面の拡大TEM像である。 図6(b)に示した位置a、b、cにおけるEDS定性スペクトルを示す図である。 図6(b)に示した位置d、eにおけるEDS定性スペクトルを示す図である。 SADPによる制限視野電子線回折パターンであり、(a)は[10T]方向、(b)は[21(−4)]方向の制限視野電子線回折パターンである。 1000℃で熱処理した粒子の断面を観察するにあたり、(a)は粒子断面の位置を示す図、(b)は断面(観察用薄片)のTEM像である。 図11(b)に示した位置f、g、hにおけるEDS定性スペクトルを示す図である。 図11(b)に示した位置i、jにおけるEDS定性スペクトルを示す図である。 SADPによる制限視野電子線回折パターンであり、(a)は[10T]方向、(b)は[21(−4)]方向の制限視野電子線回折パターンである。 1200℃で熱処理した粒子の断面を観察するにあたり、(a)は粒子断面の位置を示す図、(b)は断面(観察用薄片)のTEM像である。 図15(b)に示した位置a、b、c、dにおけるEDS定性スペクトルを示す図である。 SADPによる制限視野電子線回折パターンであり、(a)は[10T]方向、(b)は[21(−4)]方向の制限視野電子線回折パターンである。 SADPに基づく面指数付を示す図である。 原料粉体の組成、バーナ燃焼温度の違いを比較する図であって、球状化処理後(溶融後)の撮影像である。 同、熱処理後(溶融後)の撮影像である。 格子定数比が異なる組成物の違いを比較する図であって、球状化処理後(溶融後)の撮影像である。
符号の説明
10…球状化処理装置、30…バーナ、100a…原料粉体、100c…球状粉体(粒子)、F…燃焼炎、T1…燃焼炎の温度、T2…熱処理温度、Tm…融点

Claims (7)

  1. ABO3で表されるものを主剤とし、AはCa、Sr、Ba、Mgの中から選ばれた一種または二種以上のアルカリ土類元素、BはTi、Zrの中から選ばれた一種または二種以上の元素からなり、粒径が0.1〜30μmで、格子間距離の最大値maxと最小値minの比max/minで表される格子定数比が1.7未満であることを特徴とする単結晶セラミックス粒子。
  2. Mn、Si、希土類元素、V、Ni、Ag、Cu、Fe、Li、Nb、Ta、Cr、Sc、Bi、Pbから選ばれた一種または二種以上の酸化物を、合わせて0.05〜5.0mass%さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の単結晶セラミックス粒子。
  3. Wadellの実用的球状度が0.85以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の単結晶セラミックス粒子。
  4. 格子間距離の最大値maxと最小値minの比max/minで表される格子定数比が1.7未満である物質からなり、粒子一個あたりのグレインの数が3つ以下である結晶性粒子を主体とすることを特徴とする球状酸化物粉末。
  5. 前記粒子の平均粒径が0.1〜30μmであることを特徴とする請求項4に記載の球状酸化物粉末。
  6. 前記物質はABO3で表されるものを主剤とし、AはCa、Sr、Ba、Mgの中から選ばれた一種または二種以上のアルカリ土類元素、BはTi、Zrの中から選ばれた一種または二種以上の元素であることを特徴とする請求項4または5に記載の球状酸化物粉末。
  7. 前記物質を、当該物質よりも低い燃焼炎温度の燃焼炎で溶融し、球状化した球状粉体を得る工程と、
    前記球状粉体をアニールする工程と、を経て得られたものであることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の球状酸化物粉末。
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