JP4207501B2 - 高結晶性酸化物粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶性の高い金属または半金属の酸化物粉末の製造方法に関するものである。特に、誘電体材料、磁性体材料、導体材料、半導体材料、蛍光体材料、磁気記録材料、二次電池用材料、電磁波吸収材料等のエレクトロニクス用機能性材料、触媒材料、またはそれらの製造用原料として、また種々のセラミックの製造用原料として、更にその他様々な分野で使用される工業材料として有用な、高純度でかつ粒度の揃った、高分散性高結晶性酸化物粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
機能性材料として用いられる金属酸化物粉末や半金属酸化物粉末は、その機能を十分に発揮させるため、高純度であること、組成的に均一で結晶性の高いものであることが望まれる。また、粒子の表面および内部に欠陥や格子歪がないことなども必要である。酸化物粉末を焼結プロセスにより成形、熱処理して焼結体とする場合にも、原料の酸化物粉末の特性制御が重要である。たとえば優れた磁気特性、機械的強度を有する高性能金属酸化物コアや酸化物永久磁石を得るためには、原料となる金属酸化物粉末が、微細で粒度が揃っており、等方形状であることや、単結晶であることなどが要求される。また酸化物粉末を樹脂等のマトリックス中に分散させて厚膜ペースト、インク、塗料やシート、圧粉体、その他の複合材料として使用する場合には、酸化物本来の特性の向上に加えて、分散性、充填性、加工性をよくするため、粒子形状および粒径が揃っていること、粒子が凝集していないことが重要である。特に厚膜ペースト用には、凝集がなく、粒度分布の狭い、平均粒径が0.1〜10μm程度の微細な単分散粉末であることが望ましい。
【0003】
従来、酸化物粉末は、固相反応法、気相反応法、液相反応法、噴霧焙焼法、噴霧熱分解法などにより製造されている。
シュウ酸塩や炭酸塩等を固相で熱分解し、機械的に粉砕する固相反応法で製造された酸化物粉末は、粒子形状が不規則で粒度分布の大きい凝集体であり、また粉砕工程からの不純物混入が多い。また粉砕処理中に受けた物理的な衝撃により粒子表面が変質し、粉末表面および内部に欠陥が多く発生するため、結晶性の低下や、酸化物が本来有する物理的特性の低下を招くことがあった。
【0004】
金属または金属化合物の蒸気を気相中で反応させる気相反応法では、微細な金属酸化物粉末を製造することが可能であるが、コストが高いばかりでなく、得られる粉末は凝集しやすく、しかも粒子径の制御が困難である。
液相反応法は、液相沈殿法や、無機塩やアルコキシドの加水分解等によるものであり、比較的表面変質がなく、結晶性の高い酸化物微粉末を得るが、凝集のない、分散性の高い微粉末とすることが難しい。また、高純度原料が必要であったり、反応や分離操作に長時間を要するなど製造コストが高くなる。
【0005】
噴霧培焼法または噴霧熱分解法は、例えば特開平5-310425号公報等に記載されているように、金属の塩化物、酸化物、硝酸塩などの金属化合物を溶媒に溶解または分散させた混合溶液を、燃料ガスと共に噴霧して液滴とし、これを培焼するか、電気炉を用いて熱分解を行うことにより、微細な金属酸化物粉末を得るものである。この方法では、凝集のない、微細な単分散粒子が得られ、また不純物の混入も少ない。しかし、溶媒として水や、アルコール、アセトン、エーテル等の有機溶媒を大量に使用するため、溶媒を蒸発させるのに多大なエネルギーを要し、熱分解時のエネルギーロスが大きくなってコストが高くなる。更に溶媒の分解により、熱分解時の雰囲気制御が難しい。また、反応容器内において液滴の合一や分裂が起こることにより、生成する粉末の粒度分布が大きくなることがある。このため、噴霧速度、キャリヤガス中での液滴濃度、反応容器中での滞留時間等、反応条件の設定が難しい。更にこの方法では、出発原料が溶液化または懸濁液化できるものに限られるため、原料組成範囲、濃度に制限があり、製造できる酸化物粉末の種類が限定される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、不純物の混入がなく、高分散で、粒度の揃った高結晶性酸化物粉末を、低コストかつ簡単な工程で製造することにある。また特に均質性、純度および結晶性が高いことが強く要求される機能性セラミックスや機能性複合材料の製造原料として適した、高結晶性酸化物粉末の製造方法を提供することを目的とする。更に他の目的は、厚膜ペーストやインクに適した形状、粒度を有し、粒度の揃った高純度、高分散、高結晶性の微細な酸化物粉末を容易に得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、1種のみの金属元素または半金属元素を含有する、金属化合物(但し、金属酸化物を除く)粉末および半金属化合物(但し、半金属酸化物を除く)粉末から選ばれる原料粉末を、キャリヤガスと共にノズルを通して反応容器中に噴出させ、該原料粉末を10g/l以下の濃度で気相中に分散させた状態で、その分解温度もしくは反応温度より高く、かつ生成する酸化物の融点をTm℃としたとき(Tm/2)℃以上の温度で加熱することにより酸化物粉末を生成させることを特徴とする、高結晶性酸化物粉末の製造方法を要旨とするものである。
【0008】
また、本発明は、原料粉末を反応容器中に噴出させる際の条件が、キャリヤガスの単位時間あたりの流量をV(l/min)、ノズルの開口部の断面積をS(cm2)としたとき、V/S>600である、前記高結晶性酸化物粉末の製造方法を要旨とするものである。更に、原料粉末を、ノズルを通して反応容器中に噴出させる前に、分散機を用いてキャリヤガス中に混合、分散させることを特徴とする前記高結晶性酸化物粉末の製造方法、また、予め粒度調整された原料粉末を用いる前記高結晶性酸化物粉末の製造方法を要旨とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、酸化物の構成成分となる金属元素または半金属元素は特に制限はなく、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Ga、In、Sn、Tl、Pb等の典型金属元素、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Ru等の遷移金属元素、Y、La、Ce、Gd、Eu、Tb、Sm、Pr、Ce、Yb等のランタン系希土類金属元素、Si、B、Ge、Sb、Bi等の半金属元素等、通常酸化物を作る元素が選択される。
【0010】
本発明の方法により様々な酸化物が製造可能であり、特に限定されない。主なものを挙げれば、SiO2、Al2O3、TiO2、Fe3O4、Fe2O3、CoO、Co3O4、NiO、Cu2O、CuO、ZnO、Li2O、BaO、Y2O3、La2O3、RuO2、Ta2O5、CeO2、SnO2、In2O3などがある。
原料として、金属化合物粉末および半金属化合物粉末から選ばれる、1種のみの金属元素または半金属元素を含有する原料粉末を準備する。金属や半金属の化合物の粉末としては、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、オキシ硝酸塩、オキシ硫酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、硼酸塩、珪酸塩、アンモニウム塩、アンモニウム錯体、リン酸塩、カルボン酸塩、樹脂酸塩、スルホン酸塩、アセチルアセトナート、アルコキシド、アミド化合物、イミド化合物、尿素化合物等の無機化合物または有機化合物の粉末が使用される。
【0011】
キャリヤガスとしては、通常、空気、酸素、水蒸気などの酸化性ガスや、窒素、アルゴンなどの不活性ガス、これらの混合ガスなどが使用される。加熱処理時の雰囲気を還元性雰囲気とする必要がある場合、水素、一酸化炭素、メタン、アンモニアガスなどの還元性ガスや、加熱時に分解して還元性雰囲気を作り出すようなアルコール類、カルボン酸類などの有機化合物を混合してもよい。また、熱分解時に一酸化炭素やメタン等を生成して還元性雰囲気を作り出すことのできる金属化合物を原料として用いれば、外部から反応系に還元性ガスを供給することなく、還元性雰囲気とすることも可能である。
【0012】
なお、コントロールされた量の酸素欠損が必要な酸化物を製造する場合、従来の水溶液を用いた噴霧熱分解法では、水の分解により炉の内部の雰囲気が酸化性雰囲気に傾くため、還元性ガスを導入したとしても雰囲気制御が難しい。しかし、本発明では水等の溶媒を使用しないため、容易に強還元性雰囲気を作ることができる。本法は、このように酸化物の酸化の程度や酸素欠損の量を厳密にコントロールしたい場合に、特に適している。
【0013】
本発明においては、固体の原料粉末を、キャリヤガスと共にノズルを通して反応容器中に噴出させ、気相中に原料粉末粒子を高度に分散させた状態で加熱処理することが重要である。即ち反応容器内では、原料粉末を、原料粒子および生成粒子が互いに衝突を起こさないよう、低い濃度に分散させた状態で加熱処理を行なう必要がある。このため気相中での濃度は、10g/l以下でなくてはならない。これより濃度が高いと、粉末同士の衝突、焼結が生じ、粒度の揃った酸化物粉末が得られない。分散濃度は10g/l以下であれば特に制限はなく、用いる分散装置や加熱装置に応じて適宜決定する。しかしあまり低濃度になると生産効率が悪くなるので、好ましくは0.01g/l以上とする。
【0014】
個々の原料粉末粒子をより確実に分散した状態で反応容器中に供給するためには、原料粉末を、ノズルを通して反応容器中に噴出させる前に、分散機を用いてキャリヤガス中に混合、分散させることが望ましい。分散機としては、エジェクタ型、ベンチュリ型、オリフィス型等、公知の気流式分散機や公知の気流式粉砕機が使用される。
【0015】
また、キャリヤガスの単位時間あたりの流量をV(l/min)、ノズルの開口部の断面積をS(cm2)としたとき、V/S>600となるような条件で、原料粉末を高速で反応容器中に噴出させると、反応容器内での急激な気体の膨張により、再凝集することなく、気相中に良好に分散させることができる。なおノズルには特に制限はなく、断面が円形、多角形またはスリット状のもの、先端が絞られているもの、途中まで絞られており開口部で広がっているものなど、いかなる形状のものを使用してもよい。
【0016】
本方法では、気相中に高度に分散させた状態で加熱するため、原料粉末1粒子あたり1粒子の酸化物粉末が生成すると考えられる。このため生成する酸化物粉末の粒度は、原料粉末の種類によってその比率は異なってくるが、原料粉末の粒度にほぼ比例する。従って均一な粒径の酸化物粉末を得るためには、原料粉末の粒度の揃ったものを用いる。原料粉末の粒度分布が広い場合は、粉砕機や分級機で粉砕、解砕または分級を行なうことにより、予め粒度調整をしておくことが望ましい。粉砕機としては、気流式粉砕機、湿式粉砕機、乾式粉砕機等いずれを用いてもよい。また、粒度の調整は、原料粉末をキャリヤガスに分散させる前に行ってもよいが、気流式粉砕機等を用いることにより、キャリヤガスに分散させた後に、あるいは分散と同時に行うこともできる。
【0017】
低濃度の分散状態を保ったまま加熱処理を行なうためには、例えば外側から加熱された管状の反応容器を用い、一方の開口部から、原料粉末をノズルを通して、キャリヤガスとともに一定の流速で噴出させて反応容器内を通過させ、加熱処理されて生成した酸化物粉末を他方の開口部から回収する。反応容器内での粉末とキャリヤガスの混合物の通過時間は、粉末が所定の温度に十分に加熱されるように、用いる装置に応じて設定されるが、通常は0.3〜30秒程度である。加熱は電気炉やガス炉等により反応容器の外側から行なうほか、燃焼ガスを反応容器中に供給しその燃焼炎を用いてもよい。
【0018】
加熱は、原料粉末の分解温度もしくは反応温度より高い温度で、かつ酸化物の融点をTm℃としたとき(Tm/2)℃以上で行うことが必要である。加熱温度が(Tm/2)℃より低いと、目的とする粉末が得られない。最適な加熱温度は、酸化物粉末の種類や用途、結晶性の程度、球形度、耐熱性等の要求特性によって異なるので、目的により適宜決定する。一般に、より結晶性の高い粉末を得るためには、目的とする酸化物の焼結開始温度以上の温度で加熱することが望ましい。また粒子形状の揃った高結晶性または単結晶の酸化物微粉末を得るためには、熱処理を目的とする酸化物の融点近傍またはそれ以上の温度で行うことが好ましい。
【0019】
本発明では、原料粉末を気相中に低濃度で、かつノズルからの高速気流によって高度に分散させた状態で加熱するので、高温でも、融着、焼結により粒子同士が凝集することなく分散状態を保つことができ、熱分解と同時に1粒子内で固相反応が起こると推定される。限られた領域内での固相反応であるため、短時間で結晶成長が促進され、高結晶性で内部欠陥が少なく、しかも凝集のない一次粒子からなる高分散性の酸化物粉末が得られると考えられる。
【0020】
なお、熱分解の際、あるいは熱分解後に該原料粉末が窒化物、炭化物等を生成する場合には、これらが分解する条件で加熱を行なう必要がある。また所望により、得られた酸化物微粉末に更にアニール処理を施してもよい。本発明で得られた粉末は粒子の結晶性が高く、組成の均質性が保たれているため、高温でアニール処理を行っても、焼結による粒子の凝集が起こりにくい。
【0021】
【実施例】
次に、実施例、参考例および比較例により本発明を具体的に説明する。
参考例1
市販の高純度酸化亜鉛粉末(亜鉛華)を、気流式粉砕機によって粉砕して、平均粒径約2μmの、粒度の揃った粉末とした。この粉末を、キャリヤガスとして流量200 l/minの空気を随伴させ、5kg/hrの供給速度で、開口部の断面積0.13cm2のノズルを通して、電気炉で1200℃に加熱された反応管中に噴出させ、この分散濃度を保ったままで反応管を通過させて、加熱を行った。反応管内における気相中の原料粉末分散濃度は0.4g/lであり、またV/S=1500である。生成した白色の粉末をバグフィルターで捕集した。
得られた粉末をX線回折計で分析したところ、ZnOの単一結晶相からなっており、極めて高い結晶性を有する酸化物粉末であった。また走査型電子顕微鏡(SEM)で観察を行ったところ、生成粒子には凝集が無く、形状はほぼ球状で、平均粒径2μm、最大粒径5μmの粒度分布の狭い粉末であることが確認された。
【0022】
参考例2〜6
気相中の原料粉末分散濃度、ノズルの開口部の断面積、電気炉の温度をそれぞれ表1に示すとおりとする以外は参考例1と同様にして酸化物粉末を製造した。得られた粉末の特性を表1に併せて示す。表中の結晶性は、参考例1の粉末のX線回折強度を100としたときの相対強度である。
【0023】
比較例1
原料粉末の供給速度を150kg/hrとする以外は参考例1と同様にした。反応管内での気相中の粉末濃度は12.0g/lであった。得られた粉末をSEMで観察したところ、複数の粒子が融着して巨大な不定形粒子となっており、粒度分布の広いものであった。粉末の特性を表1に示す。
【0024】
比較例2
電気炉の温度を800℃とする以外は参考例1と同様にした。この加熱温度は、酸化亜鉛の融点である約2000℃(加圧下)の1/2より低い温度である。得られた粉末は不定形状で、結晶性の低いものであった。粉末特性を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例1
市販の炭酸亜鉛粉末を、気流式粉砕機によって粉砕して、平均粒径約0.2μmの原料粉末を得た。この粉末を、1.25kg/hrの供給速度で、エジェクタ型分散機を用いて空気キャリヤと混合し、得られた固−気混合物を、流量200 l/minで、開口部の断面積0.13cm2のノズルを通して、電気炉で1200℃に加熱された反応管中に噴出させ、反応管を通過させて加熱を行った。粉末の供給速度、反応管内における気相中の原料粉末分散濃度は0.1g/lであり、またV/S=1500である。生成した白色の粉末をバグフィルターで捕集した。
得られた粉末は、X線回折により結晶性の良いZnO粉末であることが確認された。SEM観察の結果、凝集のない球状粒子からなっており、平均粒径0.2μm、最大粒径0.8μmであった。
【0027】
実施例2
塩化セリウムの水溶液に、シュウ酸アンモニウムの水溶液を撹拌しながら添加して、シュウ酸セリウムを沈殿させ、濾別、乾燥してシュウ酸セリウム粉末を調製した。この粉末を、気流式粉砕機によって粉砕して、平均粒径約1μmの原料粉末を得た。この粉末を、キャリヤガスとして流量200 l/minの空気を随伴させ、5kg/hrの供給速度で、開口部の断面積0.13cm2のノズルを通して、電気炉で1500℃に加熱された反応管中に噴出させ、この分散濃度を保ったままで反応管を通過させて、加熱を行った。なお、酸化セリウムの融点は約1950℃である。反応管内における気相中の原料粉末分散濃度は0.4g/lであり、またV/S=1500である。生成した淡黄色の粉末をバグフィルターで捕集した。
得られた粉末は、X線回折により結晶性の良いCeO2粉末であることが確認された。
SEM観察の結果、凝集のない球状粒子からなっており、平均粒径0.8μm、最大粒径2μmであった。
【0028】
実施例3
硫酸チタニルの加水分解により製造された含水酸化チタンを、流量200 l/minの空気を使用して気流式粉砕機で粉砕、分散させ、そのまま開口部の断面積0.13cm2のノズルを通して、電気炉で1400℃に加熱された反応管中に噴出させ、この分散濃度を保ったままで反応管を通過させて、加熱を行った。酸化チタンの融点は約1850℃である。反応管内における気相中の原料粉末分散濃度は0.4g/lであり、またV/S=1500である。生成した白色の粉末をバグフィルターで捕集した。
得られた粉末は、X線回折により、結晶性の良いルチル型のTiO2であることが確認された。SEM観察の結果、凝集のない球状粒子からなっており、平均粒径2μm、最大粒径5μmであった。
【0029】
実施例4
市販の塩基性炭酸コバルトを気流式粉砕機によって粉砕して、平均粒径約1μmの原料粉末を得た。この粉末を、5kg/hrの供給速度でエジェクタ型分散機を用いて空気キャリヤと混合し、得られた固−気混合物を、流量200 l/minで、開口部の断面積0.13cm2のノズルを通して、電気炉で1500℃に加熱された反応管中に噴出させ、この分散濃度を保ったままで反応管を通過させて、加熱を行った。なお、酸化コバルトの融点は約1935℃である。反応管内における気相中の原料粉末分散濃度は0.4g/lであり、またV/S=1500である。生成した灰黒色の粉末をバグフィルターで捕集した。
得られた粉末は、X線回折によりCoOとCo3O4が混在した結晶性の良い粉末であることが確認された。SEM観察の結果、凝集のない球状粒子からなっており、平均粒径0.7μm、最大粒径1.5μmであった。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、高結晶性で、粒子形状の揃った、凝集のない一次粒子からなる、高分散性の酸化物粉末が容易に得られる。また純度に影響を及ぼす添加剤や溶媒を使用しないので、不純物の少ない高純度な粉末が得られるうえ、粉砕処理を必要としないので、粉末表面および内部に欠陥や歪が少ない。
【0031】
更に本方法では、原料粉末の粒度および分散条件をコントロールすることにより、0.1μm以下のものから20μm程度までの、任意の平均粒径を有する、粒径の揃った酸化物粉末を得ることができる。従って粉砕工程や分級工程の必要がなく、粒度分布の狭い微粉末が得られ、各種機能性材料やその原料として、また焼結原料や複合材料に使用するのにも適している。
【0032】
また、原料を溶液、懸濁液状としないため、通常の噴霧熱分解法と比べて溶媒の蒸発によるエネルギーロスが少なく、ローコストで容易に製造できる。しかも液滴の合一の問題がなく、比較的高濃度で気相中に分散させることができるため、効率が高い。また、原料を溶液化または懸濁液化する必要がないため、出発原料の選択範囲が広く、従って多種類の酸化物粉末の製造が可能である。更に溶媒からの酸化性ガスの発生がないので、低酸素分圧下で合成する必要のある酸化物粉末にも適している。しかも、原料化合物の選択により分解時に系内を還元雰囲気にすることができるため、還元性ガスを外部から供給する必要がなく、酸化を抑えることができるので、反応条件の設定が簡単である。
Claims (4)
- 1種のみの金属元素または半金属元素を含有する、金属化合物(但し、金属酸化物を除く)粉末および半金属化合物(但し、半金属酸化物を除く)粉末から選ばれる原料粉末を、キャリヤガスと共にノズルを通して反応容器中に噴出させ、該原料粉末を10g/l以下の濃度で気相中に分散させた状態で、その分解温度若しくは反応温度より高く、かつ生成する酸化物の融点をTm℃としたとき(Tm/2)℃以上の温度で加熱することにより酸化物粉末を生成させることを特徴とする、高結晶性酸化物粉末の製造方法。
- 原料粉末を反応容器中に噴出させる際の条件が、キャリヤガスの単位時間あたりの流量をV(l/min)、ノズルの開口部の断面積をS(cm2)としたとき、V/S>600であることを特徴とする、請求項1に記載の高結晶性酸化物粉末の製造方法。
- 原料粉末を、ノズルを通して反応容器中に噴出させる前に、分散機を用いてキャリヤガス中に混合、分散させることを特徴とする、請求項1または2に記載の高結晶性酸化物粉末の製造方法。
- 原料粉末が、予め粒度調整されたものである、請求項1ないし3のいずれかに記載の高結晶性酸化物粉末の製造方法。
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