JP3981513B2 - 金属酸化物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属酸化物の製造方法に関する。さらに詳しくは、導電材料[酸化スズ、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、スズ含有酸化インジウム(ITO)、アルミ含有酸化亜鉛(AZO)等]、磁性材料[マグネタイト、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト等]、光学材料[酸化亜鉛、酸化チタン、フッ化マグネシウム等]、焼結材料[シリカ、板状アルミナ、ジルコニア、炭化珪素等]、触媒[酸化チタン、酸化亜鉛等]、顔料[コバルトブルー、コバルトグリーン等]、圧電材料[チタン酸バリウム等]、抗菌剤[酸化チタン等]等の用途に好適に用いられる機能性金属酸化物の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
金属酸化物を製造する従来方法としては、例えば、固相法、気相法及び液相法を挙げることができる。いずれも公知の手法であり、工業的に汎用されている。
【0003】
固相法としては、粉砕法、晶析法;気相法としては、電気炉法、化学炎法、プラズマ法、レーザ法等のCVD法やPVD法;液相法としては、共沈法、化合物沈殿法、金属アルコキシド法、水熱反応法等の化学的液相法や噴霧乾燥法、凍結乾燥法等の物理的液相法を挙げることができる。特に、金属酸化物微粒子の工業的製造には、主として気相法又は液相法が用いられている。
しかしながら、これらの方法には、それぞれ以下のような問題点を有していた。
【0004】
1.固相法
被粉砕物に衝撃力、打撃力を与えて粉砕する、いわゆる粉砕法としては、例えば、ジェット法、ハンマー法、ミル法等があるが、粉砕法により製造される金属酸化物微粒子の粒径は、サブミクロン領域が限度であり、それ以下のサイズの微粒子は、製造が極めて困難である。粒径1〜3μmの微粒子を得るのが限界で、得られる微粒子の粒径のばらつきも大きい。
【0005】
また、固相から又は2種類の固相間から、新しい固相を生成させる、いわゆる晶析法としては、例えば、転移反応、固溶反応、結合反応、トポタクティック反応等を用いたものがあるが、出発原料が、高純度であることが必要であるとともに、特に金属酸化物微粒子の製造に際しては、均一かつ微細な粒径を有することが必要である。
【0006】
2.気相法
その代表例として、揮発性金属化合物を熱分解したり、揮発性金属化合物又は金属蒸気と他の気体とを反応させる、いわゆる化学蒸着法(CVD法)(例えば、電気炉法、化学炎法、プラズマ法等)があるが、乾燥粉末が直接得られるために比較的分散性の良い粉末が得られるものの、一般的には量産性に乏しく、高コストとなるために工業生産には適さない。PVD法も同様である。
【0007】
3.液相法
液相法は、溶液中の化学反応により結晶核を生成、成長させ、次いで、乾燥、焼成させる工程を有するが、微粒子の製造については、反応温度、濃度等の条件制御が重要で、微粒子を各工程で核成長させないように製造条件を厳密に制御する必要がある。
【0008】
また、液相法では、乾燥時に粒子を固く凝集させてしまうと、分散に大きなエネルギーが必要になるため、凝集させないことが重要であるが、それは極めて困難である。
【0009】
具体的には、沈殿反応、水熱反応等を利用して、易溶性塩の金属イオンを難溶性金属塩(例えば、水酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩等がある)として沈殿させ、焼成して金属酸化物に変化させる、いわゆる化学的製造方法としては、例えば、均一沈殿法、化合物沈殿法、アルコキシド法、水熱法等があるが、試薬が限定されてしまうとともに、焼成が必要であるため、焼成による粒子の凝集が生じる恐れがある。
【0010】
また、溶液の温度変化等を利用して、易溶性塩の金属イオンを難溶性金属塩として沈殿させたり、溶液の噴霧又は噴霧燃焼を利用して、溶媒を除去することによって、金属酸化物微粒子を得る、いわゆる物理的製造方法としては、例えば、噴霧法、溶液燃焼法、凍結乾燥法等があるが、得られる微粒子の粒径のばらつきが大きいとともに、粒子組成の偏析が生じる恐れがある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
現在、最も広く行われている金属酸化物の工業的製造方法は、前記液相での化学的製造方法によるものが主であるが、この方法によると、生産性及び量産性は優れているものの、前述のように、高温での焼成が必要であるため凝集が起こり易く、また高温焼成であるためエネルギー的に不利である。
【0012】
例えば、特開平6−80421号公報に開示された、薄片状酸化亜鉛粉末及びその製造方法では、酸化亜鉛の焼結に950℃という高温を要しており、また特開平9−270402号公報に開示された酸化セリウム研磨剤及び基板の製造法では酸化セリウムの焼結に400℃以上を要している。
【0013】
また、液相法では、乾燥過程での2次凝集を必然的に伴うが、乾燥時に粒子を固く凝集させてしまうと、分散に大きなエネルギーが必要になる。
【0014】
このように、従来法ではどうしても粒子の凝集が生じ、分散し微粒子化させるために多大なエネルギーを必要とするとともに、分散自体も困難であり、コスト的にも不利である。
【0015】
特に、金属酸化物微粒子(粒径1μm以下)を製造する場合には、焼結体を粉砕して微粒子にする必要があり、その粉砕工程において多大なエネルギー必要とするという問題が加重される。
【0016】
このような金属酸化物微粒子の利用形態としては、セラミックス分野等における焼結体(シリカ、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素等)として利用する場合と、ナノ複合化の原材料、触媒、研磨材(酸化セリウム等)、潤滑剤、顔料(コバルトブルー、コバルトグリーン等)等のように、粒子をそのまま利用する場合と、粒子を他の分散媒中に分散させて利用する場合とがある。
【0017】
上記のように金属酸化物微粒子を利用する場合、二次凝集体がその製造反応系内に存在すると機能発現、効率という点で不都合を生じるが、従来の技術では必然的に乾燥、高温焼結工程を伴うため、まず乾燥過程での原料反応系での凝集が起こり、ついで高温焼結過程において粒子の二次凝集が生じ、さらに粒子の分散時においても二次凝集が起こり得る。機能性金属酸化物を材料反応系に複合し、機能性複合体として用いるには二次凝集体の粉砕、分散にエネルギーを要し、極めて効率が悪くかつ高コストになるという問題があった。
【0018】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、均一かつ均質な金属酸化物、特に、均質で、一次粒径の揃った、二次凝集しない金属酸化物微粒子を、エネルギー的に有利に、従来法よりも大幅に低温で、簡素な設備で、かつ簡易な作業で得ることができるとともに、従来法に比べて極めて低温で結晶性の金属酸化物を得ることができる、金属酸化物の製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述の課題を解決するべく鋭意研究した結果、金属元素を含む化合物及びその金属元素の単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する反応系を調製し、この反応系に、これまで化合物の製造には用いられたことがないキャビテーション現象を利用することにより、上記目的を達成することができることを知見し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の金属酸化物の製造方法を提供するものである。
【0020】
[1]金属元素を含む化合物及びその金属元素の単体からなる群から選ばれる少なくとも1種と、反応性ラジカルを生成可能な化合物とを含有する反応系を調製し、この反応系にキャビテーション現象を誘起させることにより、その金属元素の酸化物を得ることを特徴とする金属酸化物の製造方法。
【0021】
[2]前記反応系の調製が、前記金属元素を含む化合物及びその金属元素の単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を、液体に分散及び/又は溶解することによるものである前記[1]に記載の金属酸化物の製造方法。
【0022】
[3]前記反応系の調製が、前記金属元素を含む化合物及びその金属元素の単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を、液体に分散及び/又は溶解し、さらに反応性ラジカルを生成可能な化合物を添加することによるものである前記[1]に記載の金属酸化物の製造方法。
【0023】
[4]前記キャビテーション現象を誘起させる手段が、前記反応系に対する超音波照射である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
【0024】
[5]前記金属元素を含む化合物が、金属錯体、有機金属錯体、金属塩及び金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
【0025】
[6]前記反応系が、水酸化物イオンを含有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
【0026】
[7]前記反応系の温度が、−60℃〜220℃である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
【0027】
[8]前記反応系の雰囲気が、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、He、Ne、Ar、Kr又はXeである前記[1]〜[7]のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
【0028】
[9]前記超音波照射が、周波数15kHz〜1THzの範囲の超音波を照射するものである前記[4]〜[8]のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
【0029】
[10]得られる金属酸化物が、金属酸化物粒子である前記[1]〜[9]のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
【0030】
[11]前記金属酸化物粒子の平均粒径が、1〜1000nmである前記[10]に記載の金属酸化物粒子の製造方法。
【0031】
[12]得られる金属酸化物が、結晶性金属酸化物である前記[1]〜[11]のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明の金属酸化物の製造方法は、金属元素を含む化合物及びその金属元素の単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する反応系を調製し、この反応系にキャビテーション現象を誘起させることにより、その金属元素の酸化物を得ることを特徴とする。
【0033】
1.金属酸化物の生成メカニズム
本発明の上記構成が、金属酸化物を生成させるメカニズムを以下に説明する。反応系にキャビテーション現象を誘起させると、微視的には高温かつ高圧の反応場が得られるが巨視的には常温常圧である。これはキャビテーション現象により、反応系に空洞(気体を含む)が出現し、これが最終的には断熱圧縮により崩壊する。この時に、この空洞領域において高温(数千度)及び高圧(数百気圧)が生じ、また、空洞の周辺も、空洞領域内ほどではないが、高温場を持つことになる。本発明においてはこれを化学反応場として利用している。
【0034】
この反応場を利用すると、反応系全体として常温での金属酸化物の製造が可能となり、製造した微粒子の二次凝集が抑制され、また、ミクロンオーダの巨大粒子の生成が抑制される。また、常温であるので、樹脂をあらかじめ反応系中に分散させておき、樹脂中に金属酸化物を分散させた金属酸化物/樹脂の複合体を得ることもできる。
例えば、所定の化合物の固体に昇華性の化合物をミクロンオーダで分散させておき、圧力を変動させることによりキャビテーション現象を誘起させる方法を挙げることができる。
【0035】
2.反応系の調製
本発明の金属酸化物の製造方法においては、まず、金属元素を含む化合物及びその金属元素の単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する反応系(固相、気相及び固気相のいずれであってもよい)を調製する。
【0036】
本発明に用いられる金属元素としては特に制限はないが、例えば、Cu,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Hg,Al,Ga,In,Y,B,Si,Ge,Sn,Pb,Ti,Zr,As,Sb,Bi,V,Nb,Ta,Se,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Co,Ni,La,Ce,Sm等を挙げることができる。
【0037】
また、このような金属元素を含む化合物としては特に制限はないが、例えば、金属錯体、有機金属錯体、金属塩及び金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を好適例として挙げることができる。本発明においては、上記金属元素を含む化合物の他に、その金属元素の単体を用いてもよい。
【0038】
具体的には、金属塩として、例えば、硫酸塩,硝酸塩,塩化物,カルボン酸塩,錯塩,アルコキシド等を挙げることができる。錯塩としては、アセチルアセトン錯塩,EDTA錯塩,アンミン錯塩等を挙げることができる。これらの金属塩は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。また、金属錯体として、例えば、任意の金属の硫酸塩、硝酸塩、塩化物等を挙げることができる。また、有機金属錯体として、例えば、任意の金属のカルボン酸塩、アルコキシド、アセチルアセトン、錯塩等を挙げることができる。
【0039】
このような反応系の調製方法としては特に制限はないが、例えば、金属元素を含む化合物及びその金属元素の単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を、液体に分散及び/又は溶解することによるものを挙げることができる。
【0040】
このような反応系の調製方法は、液体反応系としてキャビテーション現象を誘起させて反応場とするものである。
【0041】
本発明に用いられる液体としては特に制限はないが、例えば、水、有機溶媒、化合物の溶融体等を挙げることができる。
【0042】
本発明に用いられる有機溶媒としては特に制限はないが、例えば、メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール等の多価アルコール類;エチルエーテル,アニソール,ジフェニルエーテル等のエーテル類;アセトン,メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルスルホキシド等のイオウ化合物;N,N−ジメチルホルムアミド等の窒素化合物;ベンゼン,トルエン,キシレン等の炭化水素類等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0043】
また、本発明においては、反応系中に金属の水酸化物を生成させるため、反応系に水酸化物イオンを含有させることが好ましい。金属の水酸化物を含む反応系に、例えば、超音波を照射して、キャビテーション現象を誘起させることによっても金属酸化物を得ることができる。水酸化物イオンを含有する有機溶媒としては、NaOH、KOH、NH4OH、N24・H2O等を有機溶媒に添加したものを挙げることができる。
【0044】
また、本発明においては、反応系に、反応性ラジカルを生成可能な化合物を添加することが好ましい。
反応系が、気体や揮発性の高い反応物(ハロカーボン、フロン等)を用いたものであれば、キャビティ内での直接熱分解又は熱加水分解反応が進行するが、揮発性が低く疎水性の高い反応物(界面活性剤、脂肪酸等)を用いたものであると、キャビティ界面にそれらの物質が蓄積することによって熱分解されるか、又は、例えば、水の超音波分解から生成したヒドロキシルラジカルとの反応が起こり、また、揮発性及び疎水性が共に低い反応物(酢酸,ピロガロール等)を用いたものであると、主にバルク溶液中で活性ラジカルとの反応が起こると推測される。つまり、キャビテーション現象の各反応場における反応性は、キャビティ≫キャビティ界面>バルク溶液の順と考えられ、反応物をキャビティ内又はその界面に効率良く集めることが、反応速度の向上につながると考えられる。このことから、反応を促進する反応性ラジカル(例えば、ヒドロキシルラジカル、水素ラジカル)を生成することが可能な化合物を添加させた反応系はキャビテーション現象を利用した反応をより効率よく行うことができる。
【0045】
このような反応を促進する反応性ラジカルを生成可能な化合物としては、ポリマー、オリゴマー、モノマー、界面活性剤、有機酸、ハロカーボンのうちの少なくとも少なくとも1種から構成されることが好ましい。
【0046】
具体的には、ポリビニルピロリドン、ドデシル硫酸ナトリウム、リン酸反応系オリゴマー、ブチラール樹脂、オキサゾリン、酢酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リノール酸、オレイン酸、ステアリン酸等を挙げることができる。
【0047】
3.キャビテーション現象の誘起
本発明の金属酸化物の製造方法においては、上記のように反応系を調製した後、この反応系にキャビテーション現象を誘起させることにより金属酸化物を得る。
【0048】
キャビテーション現象を誘起させる手段としては特に制限はないが、例えば、上記のようにして調製した反応系に超音波を照射する方法、高速回転スクリューを反応系中で回転させる方法等を挙げることができる。
【0049】
超音波を照射する方法の場合、反応系に超音波を照射することにより誘起される超音波キャビテーション現象を利用するが、特に高出力超音波を利用することが、誘起するキャビテーション現象が特殊反応場を誘起することから好ましい。メカニズムとしては、疎密波である超音波を溶液に照射すると、微小な気泡(キャビティ)が生成し、疎と密の連続的な圧力波を受けているキャビティは伸縮を繰り返し、最終的に激しく崩壊する。この崩壊の際にキャビティ内部は極めて高温(数千度)及び高圧(数百〜千気圧)の状態となる。この著しい温度及び圧力上昇は崩壊の際に断熱圧縮過程を経由することで説明される。すなわち、本発明は、高温焼結を用いず、このキャビティ内部の特殊反応場を利用して金属酸化物を得るという点に特徴を有する。
【0050】
照射する超音波の周波数としては、15kHz〜1THzまでの超音波であれば特に制限はないが、好ましくは、15Hz〜1MHzであり、さらに好ましくは15Hz〜600Hzである。照射超音波の周波数が高すぎるとキャビテーションが起こり難い。
【0051】
超音波を利用する金属酸化物の製造における金属酸化物の生成は、キャビテーション(キャビティの性質)に大きく依存し、反応系が液相の場合、液体反応系中に溶存するガスに著しく影響されると推測される。
【0052】
一般に、熱伝導率の小さいガスを反応系の反応雰囲気に用いれば、より高温のキャビティが生成することが推測できる。また,ガスの比熱比(定圧比熱/定積比熱)が大きいものほど崩壊キャビティの温度が高くなることや、ガスの溶解量がキャビティの数等に影響を与えることも推測できる。このように溶存ガスはキャビテーション現象に大きく影響を与えることがあると考えられるため、照射雰囲気の選択は超音波による金属酸化物合成を行う上で重要な因子となることがある。
【0053】
このような反応系の雰囲気又は溶存気体としては特に制限はないが、例えば、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、He、Ne、Ar、Kr又はXeを挙げることができる。
【0054】
このような反応系の温度としては特に制限はないが、−60℃〜220℃が好ましく、さらに好ましくは、0℃〜100℃である。従来の方法では、乾燥及び高温焼成という、手間及びエネルギーを多く要する工程が必要であったが、本発明によれば、従来の方法では金属酸化物の製造が不可能な温度範囲(−60℃〜220℃)においても金属酸化物を製造することができる。
【0055】
また、反応系の温度が、前記の範囲内であれば、例えば、反応系内に有機材料が存在していても、有機物が分解することがない。すなわち、有機材料分散反応系又は有機材料を溶媒に溶解した溶液中で、そのまま金属酸化物を製造することが可能となり、金属酸化物と有機材料の複合体が、分散プロセスを必要とすることなしに製造することが可能となる。
【0056】
4.金属酸化物微粒子及び結晶性金属酸化物の製造
本発明の金属酸化物の製造方法は、特に、金属酸化物微粒子及び結晶性金属酸化物の製造に好適である。
本発明では、1〜1000nmの範囲の平均粒径を有する金属酸化物微粒子を適宜得ることができる。このような範囲の平均粒径を有する金属酸化物微粒子は、他の材料と複合したときに機能を発現させるために好適である。
【0057】
また、金属酸化物の結晶性は、特に導電材料として金属酸化物を利用するときに重要な性質であり、結晶性の格子が精密に構成されていないと、ドーパントをドープしても導電性が発現せず、例えば、近赤外遮蔽効果や電磁波シールド性等の性能を発現させ難くなる。本発明では、このような結晶性金属酸化物を極めて低温で製造することができる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限を受けるものではない。
【0059】
実施例1〜21および参考例1〜18
溶媒、金属錯体、反応促進剤(ラジカル源)、水酸化物イオン源(OH源)を表1に示す重量比率で混合し、撹拌、溶解(分散)させた。
この溶液に、200kHz、3W/cm2の超音波を20分間照射した。照射雰囲気は常圧の空気下であった。
超音波照射後、白色の微粒子が試験管中に沈殿した。こうして得られた微粒子を、ろ過、洗浄、乾燥した。得られた金属酸化物を同定し、金属酸化物量を測定した。
【0060】
なお、金属酸化物の同定には、X線回折(XRD)測定の結果を用い、結晶性金属酸化物が得られているものを○、そうでないものは×とした。
金属酸化物量も測定し、収率=生成金属酸化物の金属重量/原料金属錯体の金属重量×100によって算出した。これらの結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
Figure 0003981513
【0062】
表1で用いた略号の意味を下記に示す。
EtOH:エタノール
2O:水
Zn(acac):亜鉛アセチルアセトナート
Zn(Ac):酢酸亜鉛
ZnCl:塩化亜鉛
Al(acac):アルミニウムアセチルアセトナート
AlCl3:塩化アルミニウム
Ce(acac):セリウムアセチルアセトナート
In(acac):インジウムアセチルアセトナート
InCl3:塩化インジウム
Sn(acac):スズアセチルアセトナート
SnCl4:塩化スズ
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム
PVP:ポリビニルピロリドン
22:過酸化水素水
NaOH:水酸化ナトリウム
NH3:アンモニア
【0063】
実施例1〜3および参考例1,2で得られた化合物については、XRD測定の結果、結晶性の酸化亜鉛が生成していることを確認した。
実施例4〜6および参考例3,4で得られた化合物については、XRD測定の結果、結晶性酸化亜鉛のピークしか認められなかった。アルミが酸化亜鉛結晶にドープされていると考えられる。
実施例7〜9および参考例5,6で得られた化合物については、XRD測定の結果、結晶性の酸化インジウムが生成していることを確認した。
実施例10〜12および参考例7,8で得られた化合物については、XRD測定の結果、結晶性酸化インジウムのピークしか認められなかった。スズが酸化インジウム結晶格子にドープされていると考えられている。
実施例13〜15および参考例9,10で得られた化合物については、XRDの結果、結晶性酸化セリウムが生成していることを確認した。
実施例16〜18および参考例11,12で得られた化合物については、XRDの結果、結晶性酸化亜鉛が生成していることを確認した。
実施例19〜21および参考例13,14で得られた化合物については、XRDの結果、結晶性酸化亜鉛が生成していることを確認した。
参考15で得られた化合物については、XRDの結果、結晶性酸化亜鉛が生成していることを確認した。
参考16で得られた化合物については、XRD測定の結果、結晶性酸化亜鉛のピークしか認められなかった。アルミが酸化亜鉛結晶にドープされていると考えられる。
参考17で得られた化合物については、XRD測定の結果、結晶性の酸化インジウムが生成していることを確認した。
参考18で得られた化合物については、XRD測定の結果、結晶性酸化インジウムのピークしか認められなかった。スズが酸化インジウム結晶格子にドープされていると考えられている。
比較例1〜7で得られた化合物については、XRD測定の結果結晶格子を示すピークは認められなかった。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によって、均一かつ均質な金属酸化物、特に、均質で、一次粒径の揃った、二次凝集しない金属酸化物微粒子を、エネルギー的に有利に、従来法よりも大幅に低温で、簡素な設備で、かつ簡易な作業で得ることができるとともに、従来法に比べて極めて低温で結晶性の金属酸化物を得ることができる、金属酸化物の製造方法を提供することができる。
また、本発明は、分散プロセスを必要とすることなしに、金属酸化物、特に金属酸化物微粒子、の均一分散塗料や、金属酸化物、特に金属酸化物微粒子と樹脂との均一分散機能性複合体を製造することもできる。

Claims (12)

  1. 金属元素を含む化合物及びその金属元素の単体からなる群から選ばれる少なくとも1種と、反応性ラジカルを生成可能な化合物とを含有する反応系を調製し、この反応系にキャビテーション現象を誘起させることにより、その金属元素の酸化物を得ることを特徴とする金属酸化物の製造方法。
  2. 前記反応系の調製が、前記金属元素を含む化合物及びその金属元素の単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を、液体に分散及び/又は溶解することによるものである請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
  3. 前記反応系の調製が、前記金属元素を含む化合物及びその金属元素の単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を、液体に分散及び/又は溶解し、さらに反応性ラジカルを生成可能な化合物を添加することによるものである請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
  4. 前記キャビテーション現象を誘起させる手段が、前記反応系に対する超音波照射である請求項1〜3のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
  5. 前記金属元素を含む化合物が、金属錯体、有機金属錯体、金属塩及び金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
  6. 前記反応系が、水酸化物イオンを含有する請求項1〜5のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
  7. 前記反応系の温度が、−60℃〜220℃である請求項1〜6のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
  8. 前記反応系の雰囲気が、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、He、Ne、Ar、Kr又はXeである請求項1〜7のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
  9. 前記超音波照射が、周波数15kHz〜1THzの範囲の超音波を照射するものである請求項4〜8のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
  10. 得られる金属酸化物が、金属酸化物粒子である請求項1〜9のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
  11. 前記金属酸化物粒子の平均粒径が、1〜1000nmである請求項10に記載の金属酸化物粒子の製造方法。
  12. 得られる金属酸化物が、結晶性である請求項1〜11のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
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