JP5434508B2 - チタン酸化合物粒子の製造方法及びチタン酸化合物粒子 - Google Patents

チタン酸化合物粒子の製造方法及びチタン酸化合物粒子 Download PDF

Info

Publication number
JP5434508B2
JP5434508B2 JP2009261766A JP2009261766A JP5434508B2 JP 5434508 B2 JP5434508 B2 JP 5434508B2 JP 2009261766 A JP2009261766 A JP 2009261766A JP 2009261766 A JP2009261766 A JP 2009261766A JP 5434508 B2 JP5434508 B2 JP 5434508B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
titanic acid
particles
acid compound
particle
compound particles
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2009261766A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011105542A (ja
Inventor
義久 別府
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
AGC Inc
Original Assignee
Asahi Glass Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Glass Co Ltd filed Critical Asahi Glass Co Ltd
Priority to JP2009261766A priority Critical patent/JP5434508B2/ja
Publication of JP2011105542A publication Critical patent/JP2011105542A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5434508B2 publication Critical patent/JP5434508B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)

Description

本発明はチタン酸化合物粒子の製造方法及びチタン酸化合物粒子に関する。
従来から、チタン酸バリウム(BaTiO3)やチタン酸バリウムストロンチウム(BaxSr1-xTiO3)等のチタン酸化合物は、誘電体材料、焦電体材料、圧電体材料等として広汎に利用されている。チタン酸化合物粒子の製造方法としては、固相反応法等の固相法、水熱合成法、シュウ酸法、噴霧熱分解法、ゾル−ゲル法等の液相法が用いられている。得られる粒子の形状は球形状や楕円状が一般的である。
チタン酸化合物粒子の形状に関しては、板状の粒子(特許文献1)、立方体形状の粒子(特許文献2)、針状の粒子(非特許文献1)等が提案されている。これらの一次粒子は凝集したり、また焼結することによって、二次粒子を形成した形態をなすものが多い。さらに、非特許文献2にはBaO−TiO2−B23系の溶融物を急冷してガラス体とし、このガラス体に熱処理を施して結晶化させることによって、一辺が1〜10μmの孤立した立方体形状のBaTiO3を得る方法が記載されている。
このようなチタン酸化合物粒子は、それを成形及び焼成して部材とするのみならず、基板上にスピンコート法やディップコート法等で塗布した後に焼成して種々の部材を得ている。さらに、エアロゾルデポジション法と呼ばれる、原料粒子を減圧下で直接基板に衝撃させて部材を得る方法も開発されている。また、粒子単独ではなく、樹脂、金属、その他のセラミックスと混合してコンポジット材料を得る方法も広汎に利用されている。
高機能のコンポジット材料を得るためには、各構成成分が密に充填され、それぞれの結合が強いことが要求される。そのためには各粒子の含量、形状、粒度及びその分布等を高度に制御することが必要となる。粒子形状に関しては、板状粒子であると二次元方向に、針状粒子であると一次元方向に配向させることが可能であるが、これらの粒子間を充填するマトリックス部分の制御が難しい。また、立方体粒子は理論的には三次元配置させることが可能であるが、粒度分布を均一にすることはきわめて難しく、さらに粒子を三次元配置させる技術は開発されていないのが現状である。
特開2007−022857号公報 特開2008−230872号公報
Y.Masuda,T.Yamada and K.Koumoto,Cryatal Growth & Design,Vol.8,pp.169〜171,2008 K.Kusumoto,T.Sekiya and Y.Murase,Mat.Res.Bull., Vol.28,pp.461〜467,1993
本発明の目的は、例えばチタン酸化合物を用いたコンポジット材料の構造や製造性等を改良することによって、高機能化や新たな機能の発現等を可能にする新規な粒子形状を有するチタン酸化合物粒子の製造方法及びチタン酸化合物粒子を提供することにある。
本発明の態様に係るチタン酸化合物粒子の製造方法は、AO(AはBa、Sr、Ca、Mg及びPbから選ばれる少なくとも1種の元素である)、TiO2及びB23からなる溶融物を得る工程と、前記溶融物を急速冷却して非晶質物とする工程と、前記非晶質物を二段階加熱し、AO−B23化合物結晶とチタン酸化合物結晶とをこの順に析出させる工程と、前記AO−B23化合物結晶と前記チタン酸化合物結晶とを含む結晶物から前記チタン酸化合物結晶を分離・精製し、海綿状の形態をなすと共に、貫通孔が存在するチタン酸化合物粒子を作製する工程とを具備することを特徴としている。
本発明の態様に係るチタン酸化合物粒子は、Ba x Sr 1-x TiO 3 (xは0≦x≦1である)で表される組成を有し、かつ海綿状の形態を有する粒子を備え、前記粒子内に貫通孔が存在することを特徴としている。
本発明の態様に係るチタン酸化合物粒子の製造方法によれば、海綿状の形態をなし、貫通孔が存在する構造を有すると共に、結晶性に優れるチタン酸化合物粒子を得ることができる。このようなチタン酸化合物粒子はその新規な粒子形状に基づいて、例えばコンポジット材料の製造性を高めたり、また高機能化や新たな機能の発現等が期待されることから、チタン酸化合物粒子の各種分野への応用展開に大きく寄与するものである。
本発明の実施例1で得られたチタン酸バリウム粒子を拡大して示すSEM像である。 本発明の実施例1で得られたチタン酸バリウム粒子のX線回折パターンを示す図である。 本発明の実施例2で得られたチタン酸バリウム粒子を拡大して示すSEM像である。 本発明の実施例3で得られたチタン酸バリウム粒子を拡大して示すSEM像である。 本発明の実施例5で得られたチタン酸バリウムストロンチウム粒子を拡大して示すSEM像である。
以下、本発明のチタン酸化合物粒子及びその製造方法の実施形態について説明する。この実施形態のチタン酸化合物粒子は、海綿状の形態を有する粒子を備え、前記粒子内に貫通孔が存在するものである。チタン酸化合物粒子の組成は必ずしも限定されるものではないが、ATiO3(AはBa、Sr、Ca、Mg及びPbから選ばれる少なくとも1種の元素である)で表される組成を有することが好ましい。特に、BaxSr1-xTiO3(0≦x≦1)で表される組成、さらにBaTiO3で表される組成を有するチタン酸化合物粒子は、電子材料として好適に用いられるので好ましい材料である。
上述したような形態及び構造を有するチタン酸化合物粒子は、後述する製造方法によって特異的に得られやすい。ここで、海綿状の形態をなし、貫通孔が存在する構造を有する粒子の例を図1に示す。図1に示すように、粒子全体が海綿状の形態をなしており、粒子内部には貫通孔が存在している。チタン酸化合物粒子は単結晶であっても、また多結晶であってもよい。粒子の強度は特に限定されるものではなく、他の材料と混合や混練する場合に、その構造が一部崩れるようなものであってもよい。
チタン酸化合物粒子を他の材料と混合もしくは混練するにあたって、チタン酸化合物粒子が海綿状の形態をなすと共に、粒子内に貫通孔を有するため、各成分を均一に分布させることができる。また、チタン酸化合物粒子の他の材料との密着性や反応性を向上させることができる。なお、密着性や反応性を促進もしくは抑制するために、予めチタン酸化合物粒子に表面処理して用いてもよい。ここで、他の材料としては、例えば樹脂、金属、他のセラミックス材料及びその前駆体(アルコキシド等)が挙げられる。
チタン酸化合物粒子と他の材料とのコンポジット材料は、そのまま成型して加熱したり、また湿式又は乾式で膜として利用することができる。なかでも、得られる膜の強度が高く、成分の均一性が高くなると考えられるエアロゾルデポジション法が好適に用いられる。この実施形態のチタン酸化合物粒子は、他の材料とコンポジット材料を作製する際の原料粒子として好適に用いられるものであるが、海綿状のチタン酸化合物粒子を例えば多孔質材料として単独で使用することも可能である。
チタン酸化合物粒子の粒径、気孔径、気孔率等は特に限定されるものではないが、作業性の良い粒径、気孔径、気孔率を発現させるために、比表面積が1〜200m2/gの範囲であることが好ましい。海綿状のチタン酸化合物粒子の比表面積が1m2/g未満であると粒子が大きくなる傾向があり、他の材料との混合性や混練性が低下する。粒子の比表面積が200m2/gを超えると気孔径が細かくなりすぎたり、気孔率が高くなりすぎるため、他の材料との混合性や混練性が低下したり、またコンポジット材料におけるチタン酸化合物粒子の含有量が低下しやすくなる。
この実施形態のチタン酸化合物粒子は以下のようにして製造されるものである。すなわち、AO(AはBa、Sr、Ca、Mg及びPbから選ばれる少なくとも1種の元素である)、TiO2及びB23からなる溶融物を得る工程(以下「溶融物の生成工程」という)と、前記溶融物を急速冷却して非晶質物とする工程(以下「急速冷却工程」という)と、前記非晶質物を二段階加熱し、AO−B23化合物結晶とチタン酸化合物結晶とをこの順に析出させる工程(以下「結晶析出工程」という)と、前記AO−B23化合物結晶と前記チタン酸化合物結晶とを含む結晶物から前記チタン酸化合物結晶を分離・精製し、チタン酸化合物粒子を作製する工程(以下「分離・精製工程」という)とを、この順に備える製造方法によれば、海綿状のチタン酸化合物粒子を再現性よく得ることができる。
海綿状の形態をなし、貫通孔を有するチタン酸化合物粒子が生成される機構は明確ではないが、AO、TiO2及びB23からなる溶融物を急速冷却して得た、組成的に均一な非晶質物を二段階加熱すると、まずホウ酸を主成分とするAO−B23化合物結晶が島状に析出し、この結晶が十分に成長した後に、チタン酸化合物(ATiO3)結晶がそれを取り囲むように核生成及び粒成長するため、先に析出したAO−B23化合物(ホウ酸塩)を選択的に除去することによって、海綿状のチタン酸化合物粒子が得られるものと考えられる。各工程について以下に詳述する。
[溶融物の生成工程]
まず、目的とするチタン酸化合物粒子を構成する各成分源(AO源及びTiO2源)とガラス骨格形成成分としてB23源とからなる原料混合物を調製する。原料混合物は酸化物基準のモル%表示で、AOを40〜60%、TiO2を5〜35%、B23を15〜45%の範囲で含む組成を有することが好ましい。このような組成域の原料混合物は、溶融工程で完全に溶融させることができ、また溶融物が適度な粘性を有し、続く急速冷却工程で非晶質物を得ることが可能であるので好ましい。さらに、この組成域の原料混合物によれば、ATiO3で表される組成を有するチタン酸化合物粒子を得ることができる。
非晶質物を得るためのガラス骨格形成成分としては、工程の容易さ、目的微粒子の得やすさ、安全性等の点からホウ酸塩系が用いられる。B23源としては、酸化ホウ素(B23)やホウ酸(H 3 BO3)が安価で入手しやすいことから好ましい。また、B23源としてホウ酸塩(AB24、AB47等)を用いてもよい。
AO源としては、炭酸塩(ACO3)、水酸化物(A(OH)2)及び酸化物(AO)から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。これらは安価で入手しやすく、また扱いやすいので好ましい。また、AO源としてホウ酸塩(AB24、AB47等)、硝酸塩(A(NO32)、塩化物(ACl2)、硫酸塩(ASO4)、フッ化物(AF2)、シュウ酸塩(A(COO)2)や酢酸塩(A(CH3COO)2)のような有機酸塩等を用いてもよい。これらの化合物は、それぞれ結晶水を含む場合はその含水化合物を含むものである。
TiO2源としては、酸化チタン(ルチル型TiO2、アナターゼ型TiO2等)が安価で入手しやすく、また扱いやすいので好ましい。また、TiO2源として硝酸チタン(Ti(NO34)、塩化チタン(TiCl4)、硫酸チタン(Ti(SO42)、チタンの有機酸塩等を用いてもよい。これらの化合物は、それぞれ結晶水を含む場合はその含水化合物を含み、またそれぞれのオキシ塩を含むものである。
各原料の純度は溶融して均一な溶融物が得られる範囲であれば特に限定されるものではないが、99%以上であることが好ましく、より好ましくは99.9%以上である。各原料の粒度も特に限定されるものではないが、各原料は回転式ミキサ、ボールミル、遊星ミル等の混合・粉砕手段を用いて、乾式又は湿式で混合してから溶融することが好ましい。
原料混合物の溶融は、抵抗加熱炉、高周波誘導炉、又はプラズマアーク炉を用いて行うことが好ましい。抵抗加熱炉は、ニクロム合金等の金属製、炭化ケイ素製、又はケイ化モリブデン製の発熱体を備えた電気炉であることが好ましい。溶融に用いるるつぼは、アルミナ製、白金製、又はロジウムを含む白金合金製であることが好ましいが、耐火物製のるつぼを用いることも可能である。さらに、原料成分の揮散や蒸発を防止するために、るつぼに蓋を装着して溶融することが好ましい。
高周波誘導炉は誘導コイルを備えており、出力を制御できるものであればよい。容器としては、炭素製、炭化ケイ素製、ホウ化ジルコニウム製、ホウ化チタン製、白金やモリブデン等の金属製のものを用いることが好ましい。プラズマアーク炉はカーボン等からなる電極を備え、これによって発生するプラズマアークを利用できるものであればよい。さらに、赤外線加熱やレーザ直接加熱による溶融を適用してもよい。原料混合物は粉体状態で溶融してもよいし、予め成型した混合物を溶融してもよい。プラズマアーク炉を利用する場合には、予め成型した混合物をそのまま溶融し、さらに急速冷却することもできる。
原料混合物の溶融温度は特に限定されるものではなく、原料混合物を完全に溶融できる温度であればよい。例えば、抵抗加熱炉を用いる場合には、原料混合物を1000〜1500℃の範囲、さらには1100〜1400℃の範囲の温度で溶融することが好ましい。得られたガラス溶融物は均一性を高めるために撹拌することが好ましい。溶融雰囲気は特に制御する必要はなく、大気雰囲気中で溶融することができる。酸化還元の度合いを調整する場合には、酸素分圧を制御しながら原料混合物を溶融することが好ましい。溶融物の組成は、基本的には原料混合物の組成と理論上対応するものである。
[急速冷却工程]
急速冷却工程は上記のようにして得た溶融物を急速冷却して非晶質物を得る工程である。冷却速度は100℃/秒以上とすることが好ましく、さらに1×104℃/秒以上とすることがより好ましい。溶融物の急速冷却工程には、高速で回転する双ローラの間に溶融物を滴下してフレーク状の非晶質物を得る方法、高速で回転するドラムにより溶融物から連続的にファイバ状の非晶質物(長繊維)を巻き取る方法、冷却した金属板や炭素板に溶融物を鋳込む方法等が好適に用いられる。
双ローラやドラムとしては、金属製又はセラミックス製のものを用いることが好ましい。また、側壁に細孔を設けたスピナーを高速で回転させることによって、ファイバ状の非晶質物(短繊維)を得るようにしてもよい。これらの方法によれば、溶融物を効果的に急速冷却して、高純度の非晶質物を得ることができる。
非晶質物がフレーク状の場合には、その厚さが200μm以下、より好ましくは100μm以下となるように急速冷却することが好ましい。繊維状の場合には、その直径が50μm以下、より好ましくは30μm以下となるように急速冷却することが好ましい。粒状の場合には、その直径が200μm以下、より好ましくは100μm以下となるように急速冷却することが好ましい。これらの厚さや直径を超える非晶質物が形成されるような条件下で急速冷却すると、続く結晶析出工程(加熱工程)における結晶化効率が低下するおそれがある。上記した厚さや直径を超える非晶質物の場合、また細粒化する場合には、非晶質物の粉砕を行った後に結晶析出工程(加熱工程)を実施することが好ましい。
[結晶析出工程]
結晶析出工程(加熱工程)は、急速冷却工程で得られた非晶質物を二段階で加熱し、AO−B23化合物結晶とチタン酸化合物結晶とをこの順に析出させる工程である。二段階加熱における一段目の加熱温度は、予め熱分析を行い、それによるガラス転移点以上の温度とすることが好ましく、さらに第一結晶化温度付近又はそれ以上の温度とすることがより好ましい。また、チタン酸化合物の結晶が析出する温度未満の温度で一段目の加熱を実施する。具体的な加熱温度は450〜700℃の範囲の温度とすることが好ましい。この温度域は上記範囲に相当する。このような温度域で2〜28時間保持することによって、AO−B23化合物結晶を析出させ、さらに粒成長させることが好ましい。
二段目の加熱温度は、予め熱分析を行い、それによるチタン酸化合物の結晶化温度付近又はそれ以上の温度であることが好ましい。なお、熱分析でチタン酸化合物の結晶化温度を同定しにくい場合には、予め加熱温度と生成相、組織、構造、粒径等との関係を調べておき、所望の特性を備える粒子が得られる温度に設定することが好ましい。また、AO−B23化合物結晶やチタン酸化合物結晶が融解する温度未満の温度で二段目の加熱を実施する。具体的な加熱温度は720〜950℃の範囲の温度とすることが好ましい。この温度域は上記範囲に相当する。このような温度域で2〜28時間保持することによって、チタン酸化合物結晶を析出させ、さらに粒成長させることが好ましい。
前述したように、AO、TiO2及びB23からなる組成的に均一な非晶質物に一段目の加熱処理を施すと、まずホウ酸を主成分とするAO−B23化合物結晶が島状に析出する。この結晶が十分に成長した後に二段目の加熱処理を施すと、AO−B23化合物結晶を取り囲むようにチタン酸化合物(ATiO3)の結晶核が生成し、さらにチタン酸化合物が粒成長する。従って、先に析出したAO−B23化合物(ホウ酸塩)を選択的に除去することによって、海綿状のチタン酸化合物粒子を得ることができる。
結晶析出工程における結晶化温度(加熱温度)を高くするほど、析出する結晶の生成量及び析出する結晶の粒子径が大きくなる傾向がある。また、結晶化温度が低いほど、チタン酸化合物結晶が海綿状の形態を呈しやすい。結晶化時間(加熱時間)に関しては、それを長くするほど、析出する結晶の生成量及び析出する結晶の粒子径が大きくなる傾向がある。従って、所望の粒径に応じて結晶化温度や結晶化時間を設定することが好ましい。結晶化のための加熱は抵抗加熱炉等の電気炉を用いて行うことが好ましく、また必要に応じて加熱時の雰囲気制御を行うことが好ましい。
[分離・精製工程]
分離・精製工程は、加熱工程で得られた結晶物からチタン酸化合物結晶を分離・精製し、目的とする海綿状のチタン酸化合物粒子を作製する工程である。結晶物は、目的物質であるチタン酸化合物粒子部分とそれ以外のAO−B23化合物を主とするマトリックス部分とからなる。このような結晶物からチタン酸化合物粒を分離するために、マトリックス部分を水溶液や酸溶液等の分離液、特に酸溶液で溶解・除去する。
酸溶液としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸溶液や、酢酸、ギ酸、プロピオン酸等の有機酸溶液が用いられる。これらの中でも、分離能の良さから塩酸や硝酸、またpH緩衝能を有することから酢酸を用いることが好ましい。酸溶液の濃度は溶解能に優れる0.05〜5mol/Lの範囲とすることが好ましい。また、チタン酸化合物粒子の純度低下を抑制するために、分離液(酸溶液等)にA元素イオンを含む溶液を添加してもよい。
マトリックス部分の溶解処理は、室温から90℃以下の範囲の温度の分離液中で実施することが好ましい。分離液を室温未満に冷却する必要はない。また、結晶物からの目的粒子の分離能を高める上で、分離液は加熱して使用することが好ましい。ただし、分離液の温度が90℃を超えると沸騰するおそれがあり、成分の揮発や蒸発が生じるために、密閉する等の方策を講じない限り好ましくない。
チタン酸化合物粒子の分離処理は、上述したような分離液を用いて結晶物からマトリックス部分を溶解し、生成された粒子を沈降させて上澄みと分離することにより実施される。粒子と上澄みとの分離は、自然沈降、ろ過、フィルタープレス、遠心沈降等を適用して実施することが好ましい。マトリックス部分の溶解処理と粒子の上澄みからの分離処理は、目的とするチタン酸化合物粒子のみが得られるまで繰り返し実施してもよい。
上述したチタン酸化合物粒子の分離処理に引き続いて精製処理を行う。精製処理は溶解処理後に残存する水溶性のイオンや塩を除去するために実施するものである。精製処理は水のみで実施してもよいし、また上記した分離操作と同様にA元素イオンを含む水溶液を用いて行ってもよい。精製処理は多段階で実施し、徐々にA元素イオンの濃度を低下させてもよい。また、最終的には水のみで洗浄することが好ましい。
次に、本発明の具体的な実施例及びその評価結果について述べる。なお、以下の説明は本発明を限定するものではく、本発明の趣旨に沿った形での改変が可能である。
(実施例1)
溶融物の組成がBaO、TiO2及びB23を基準とするモル%表示で、それぞれ50%、20%、30%となるように、炭酸バリウム(BaCO3)、ルチル型酸化チタン(TiO2)及び酸化ホウ素(B23)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕して原料混合物を調製した。この原料混合物を、ロジウムを20質量%含む白金合金製のノズル付きるつぼに充填し、ケイ化モリブデン製の発熱体を備える電気炉を用いて、大気中にて1300℃で0.5時間加熱して完全溶融させた。
次に、るつぼに設けられたノズルの下端部を電気炉で加熱しながらガラス溶融物を滴下させ、300rpmで回転する直径約15cmの双ローラを通すことによって、液滴を1×105℃/秒程度の冷却速度で急速冷却してフレーク状の固化物を作製した。得られたフレーク状固化物は無色透明な非晶質物であった。フレークを粉砕した後に150μmの篩を通してフレーク粉砕物を得た。
上述したフレーク粉砕物を600℃で8時間、次いで790℃で8時間加熱することによって、BaO−B23化合物結晶とBaTiO3結晶とを順に析出させた。加熱時の昇温速度は200℃/hとした。次いで、これらの結晶を含む結晶物を、1mol/Lの酢酸溶液(70℃)中で4時間、振とう撹拌して可溶性物質を溶脱した。溶脱した液を遠心分離して上澄み液を捨てた。この分離操作を5回行った。さらに、水で5回洗浄した後に乾燥させることによって、目的の粒子を得た。
得られた粒子の形態を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果(SEM像)を図1に示す。図1に示すように、得られた粒子は海綿状の形態をなし、貫通孔が存在する構造を有することが確認された。また、得られた粒子の鉱物相をX線回折装置で同定したところ、その回折パターンは既存の正方晶系のBaTiO3(PDF番号81−2202)の回折パターンと一致した。図2にX線回折パターンを示す。粒子の窒素吸着によりBETの式から求めた比表面積は8.6m2/gであった。
(実施例2、3)
実施例1と同様にして原料混合物を溶融及び急速冷却し、さらに粉砕工程を実施してフレーク粉砕物を得た。このフレーク粉砕物を600℃で8時間加熱し、次いで760℃で8時間(実施例2)の条件で、又は800℃で8時間(実施例3)の条件で加熱する以外は、実施例1と同様にして粒子を得た。
得られた粒子のSEM像を図3(実施例2)及び図4(実施例3)に示す。図3及び図4に示すように、得られた粒子は海綿状の形態をなし、貫通孔が存在する構造を有していた。また、得られた粒子の鉱物相をX線回折装置で同定したところ、その回折パターンはいずれも既存の正方晶系のBaTiO3(PDF番号81−2202)の回折パターンと一致した。粒子のBET比表面積はそれぞれ32m2/g、3.0m2/gであった。
(実施例4)
溶融物の組成がBaO、TiO2及びB23を基準とするモル%表示で、それぞれ50%、30%、20%となるように、炭酸バリウム(BaCO3)、ルチル型酸化チタン(TiO2)及び酸化ホウ素(B23)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕して原料混合物を調製した。この原料混合物を1450℃で溶融する以外は実施例1と同様にして粒子を得た。得られた粒子の鉱物相をX線回折装置で同定したところ、その回折パターンは既存の正方晶系のBaTiO3(PDF番号81−2202)の回折パターンと一致した。粒子のBET比表面積は9.6m2/gであった。
(実施例5)
溶融物の組成がBaO、SrO、TiO2及びB23を基準とするモル%表示で、それぞれ40%、10%、20%、30%となるように、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、ルチル型酸化チタン(TiO2)及び酸化ホウ素(B23)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕して原料混合物を調製した。この原料混合物を1400℃で溶融する以外は実施例1と同様にして粒子を得た。
得られた粒子のSEM像を図5に示す。図5に示すように、得られた粒子は海綿状の形態をなし、貫通孔が存在する構造を有することが確認された。また、得られた粒子の鉱物相をX線回折装置で同定したところ、その回折パターンは既存の立方晶系のBa0.6Sr0.4TiO3(PDF番号34−0411)の回折パターンと一致した。粒子のBET比表面積は12m2/gであった。
(比較例1)
実施例1と同様にして原料混合物を溶融及び急速冷却し、さらに粉砕工程を実施してフレーク粉砕物を得た。このフレーク粉砕物を980℃で2時間加熱する以外は、実施例1と同様にして粒子を作製した。得られた粒子のX線回折パターンは既存の正方晶系のBaTiO3(PDF番号81−2202)のそれと一致したが、粒子の形状及び構造を走査型電子顕微鏡で観察したところ、立方体形状の粒子であり、貫通孔等は存在していなかった。粒子のBET比表面積は0.26m2/gであった。

Claims (8)

  1. AO(AはBa、Sr、Ca、Mg及びPbから選ばれる少なくとも1種の元素である)、TiO2及びB23からなる溶融物を得る工程と、
    前記溶融物を急速冷却して非晶質物とする工程と、
    前記非晶質物を二段階加熱し、AO−B23化合物結晶とチタン酸化合物結晶とをこの順に析出させる工程と、
    前記AO−B23化合物結晶と前記チタン酸化合物結晶とを含む結晶物から前記チタン酸化合物結晶を分離・精製し、海綿状の形態をなすと共に、貫通孔が存在するチタン酸化合物粒子を作製する工程と
    を具備することを特徴とするチタン酸化合物粒子の製造方法。
  2. 前記二段階加熱工程は、まず前記非晶質物を450〜700℃の範囲の温度で加熱し、次いで720〜950℃の範囲の温度で加熱することを特徴とする請求項1記載のチタン酸化合物粒子の製造方法。
  3. 前記チタン酸化合物結晶の分離・精製工程で酸溶液を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のチタン酸化合物粒子の製造方法。
  4. 前記チタン酸化合物粒子は、ATiO3で表される組成を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のチタン酸化合物粒子の製造方法。
  5. 前記チタン酸化合物粒子は、BaxSr1-xTiO3(xは0≦x≦1である)で表される組成を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のチタン酸化合物粒子の製造方法。
  6. 前記チタン酸化合物粒子は1〜200m2/gの範囲の比表面積を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のチタン酸化合物粒子の製造方法。
  7. Ba x Sr 1-x TiO 3 (xは0≦x≦1である)で表される組成を有し、かつ海綿状の形態を有する粒子を備え、前記粒子内に貫通孔が存在することを特徴とするチタン酸化合物粒子。
  8. 記粒子は1〜200m2/gの範囲の比表面積を有することを特徴とする請求項7記載のチタン酸化合物粒子。
JP2009261766A 2009-11-17 2009-11-17 チタン酸化合物粒子の製造方法及びチタン酸化合物粒子 Expired - Fee Related JP5434508B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009261766A JP5434508B2 (ja) 2009-11-17 2009-11-17 チタン酸化合物粒子の製造方法及びチタン酸化合物粒子

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009261766A JP5434508B2 (ja) 2009-11-17 2009-11-17 チタン酸化合物粒子の製造方法及びチタン酸化合物粒子

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011105542A JP2011105542A (ja) 2011-06-02
JP5434508B2 true JP5434508B2 (ja) 2014-03-05

Family

ID=44229488

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009261766A Expired - Fee Related JP5434508B2 (ja) 2009-11-17 2009-11-17 チタン酸化合物粒子の製造方法及びチタン酸化合物粒子

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5434508B2 (ja)

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6033216A (ja) * 1983-07-30 1985-02-20 Taiyo Yuden Co Ltd 針状チタン酸鉛焼成粉体の製造法
JPH01219014A (ja) * 1988-02-29 1989-09-01 Toshiba Glass Co Ltd 誘電体材料粉末の製造方法
JPH0733579A (ja) * 1993-07-21 1995-02-03 Sumitomo Chem Co Ltd 微細単結晶粉末の製造方法
JPH0986906A (ja) * 1995-07-13 1997-03-31 Toshiba Glass Co Ltd 機能性薄膜用機能性酸化物粉末の製造方法
JP4752194B2 (ja) * 2003-05-21 2011-08-17 旭硝子株式会社 チタン酸バリウム微粒子の製造方法
JP2010001180A (ja) * 2008-06-19 2010-01-07 Taiyo Yuden Co Ltd チタン酸バリウム微粒子,その製造方法,積層コンデンサ

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011105542A (ja) 2011-06-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2634210B2 (ja) 粉末状チタン酸バリウムの製造方法
JPH07232923A (ja) ペロブスカイト化合物の結晶性セラミック粉体の合成方法
WO2009028888A2 (en) Method of manufacturing flake aluminum oxide using microwave
Yang et al. Powder synthesis and properties of LiTaO3 ceramics
US20060008928A1 (en) Process for producing fine particles of bismuth titanate
WO1998030498A1 (en) Method of making barium titanate
CN103796956B (zh) 草酸氧钛钡的制造方法和钛酸钡的制造方法
JP5233007B2 (ja) 透明導電材用塗料および透明導電膜の製造方法
KR20090115732A (ko) 무정형 미립자 분말, 그 제조 방법 및 그것을 이용한 페로브스카이트형 티탄산바륨 분말
WO2009028887A2 (en) Method of manufacturing flake aluminum oxide
JP2013087151A (ja) 赤外線吸収粒子とその製造方法
US20050019248A1 (en) High-gravity reactive precipitation process for the preparation of barium titanate powders
JP2010285334A (ja) 複合酸化物微粒子の製造方法
JP2003019427A (ja) 噴霧熱分解法による微粒子の製造方法
JP5434508B2 (ja) チタン酸化合物粒子の製造方法及びチタン酸化合物粒子
JP4431947B2 (ja) 単結晶セラミックス粒子、球状酸化物粉末
JP4752194B2 (ja) チタン酸バリウム微粒子の製造方法
JP2004331492A (ja) チタン酸ジルコン酸鉛微粒子の製造方法
JP5531595B2 (ja) ニオブ酸化合物微粒子の製造方法
Yan et al. Preparation of SrTiO 3 nanofibres by hydrothermal method
JP5407834B2 (ja) タンタル酸化合物微粒子の製造方法
US20060275201A1 (en) Production of perovskite particles
JP2003064534A (ja) 金属酸化物短繊維の製造方法
JP5054414B2 (ja) 酸化ニオブ粉
WO2007077781A1 (ja) 酸化インジウム粉末

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120803

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130919

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20131001

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131025

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20131112

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20131125

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5434508

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees