〔動作原理〕
まず、本発明によるダイバーシティ受信用回り込みキャンセラの動作原理について、数式を用いて説明する。以下の説明において、伝達関数、信号スペクトル、デジタルフィルタのタップ係数などは複素数で表現されるものとする。また、ωは角周波数〔rad/sec〕を表すものとする。
一般的に、適応フィルタとは、その特性が調整可能なフィルタと、なんらかのアルゴリズムに基づきフィルタの特性を制御する制御回路から構成され、特定の目的に適合するようにフィルタの特性が自動的に調整される装置を意味する場合が多いが、本明細書においては、外部からの制御によって、その伝達関数を変化させることが可能なフィルタ回路、例えば、外部から供給されたタップ係数を用いて畳み込み演算を行う可変タップ係数のFIR(Finite Impulse Response)フィルタ(本文中では適応FIRフィルタと称する)などを適応フィルタと称するものとする。
図1は本発明によるダイバーシティ受信用回り込みキャンセラの原理的な構成を示すブロック図である。ここでは、ブランチ#1とブランチ#2の2系統の受信系を用いる場合を例として説明する。図1において、親局送信信号のスペクトルをS(ω)、中継局の送信信号スペクトルをT(ω)、中継局における増幅部の増幅率をG、ブランチ#1の受信アンテナ1−1で受信される親局波のマルチパスを含む伝搬路の伝達関数をMl(ω)(以下、単にマルチパス特性Ml(ω)と称する)、ブランチ#2の受信アンテナ1−2で受信される親局波のマルチパスを含む伝搬路の伝達関数をM2(ω)(以下、単にマルチパス特性M2(ω)と称する)、ブランチ#1の受信アンテナ1−1に対する回り込み伝搬路の伝達関数をC1(ω)、ブランチ#2の受信アンテナ1−2に対する回り込み伝搬路の伝達関数をC2(ω)とする。次に、ブランチ#1のダイバーシティ合成用適応FIRフィルタであるTF1の伝達関数をD1(ω)、ブランチ#2のダイバーシティ合成用適応FIRフィルタであるTF2の伝達関数をD2(ω)、狭帯域な特性を有するBPF(バンドパスフィルタ)の伝達関数をN(ω)、回り込みキャンセル用の適応FIRフィルタであるTF3の伝達関数をW(ω)とする。さらに、観測点P1における信号のスペクトルをR1(ω)、観測点P2における信号のスペクトルをR2(ω)、観測点P3における信号のスペクトルをI(ω)、観測点P4における信号のスペクトルをO(ω)、観測点P5における信号のスペクトルをT(ω)と表記する。
まず、この図1の構成における回り込みのキャンセル条件を求める。ブランチ#1の受信信号のスペクトルR1(ω)とブランチ#2の受信信号のスペクトルR2(ω)は(1)、(2)式で表される。
ブランチ#1とブランチ#2の受信信号を、それぞれ適応FIRフィルタであるTF1及びTF2においてダイバーシティ合成用に最適な周波数特性上の重み付けを行なってから加算部にてダイバーシティ合成した後の観測点P3における信号スペクトルI(ω)は(3)式で表される。
(3)式に(1)、(2)式を代入すると(4)式が得られる。
観測点P3における信号を狭帯域BPFや適応FIRフィルタTF3や減算部で構成される回り込みキャンセル回路で回り込みをキャンセルした後の観測点P4の信号スペクトルO(ω)は(5)式で表すことができる。
(4)式を(5)式に代入すると(6)式が得られる。
(7)式に示すように、中継局の送信信号T(ω)は観測点P4の信号O(ω)のG倍されたものであり、(7)式を(6)式に代入して(8)式を得る。
(8)式においてT(ω)の項をまとめると(9)式が得られる。
(9)式をT(ω)について解くと(10)式が得られる。
系全体の伝達関数をH(ω)とするとH(ω)は(11)式で表される。
(11)式に(10)式を代入すると(12)式が得られる。
回り込みがキャンセルされる条件は、巡回応答が無くなることであり、(12)式において、分母が1になることである。すなわち、(13)式で表すことができる。
(14)式に示すように、回り込みのキャンセル残差をE(ω)と表すと、(12)式は(15)式のように書き換えることができる。
ここで、注意すべき点は、ダイバーシティ合成用の適応FIRフィルタTF1,TF2の特性を変更することにより、回り込みのキャンセル状態が乱され、キャンセル状態を復元するために、回り込みキャンセル用の適応FIRフィルタTF3の伝達関数W(ω)を補正する必要が生じることである。一方、ダイバーシティ合成と同時にマルチパスの等化を実現するための条件は、(16)式で表すQ(ω)が(17)式で示すように、振幅と遅延がωと無関係に一定になることである。
(16)式と(17)式を(15)式に代入すると(18)式が得られる。
(18)式は、ダイバーシティ合成、親局波に含まれるマルチパスの等化及び回り込みのキャンセルが完全に実現された場合の系の伝達関数を示している。
次に、観測点P1、P2及びP4の信号を観測して系の伝達関数を求め、ダイバーシティ合成・マルチパス等化用の適応FIRフィルタであるTF1、TF2と回り込みキャンセル用の適応FIRフィルタであるTF3の特性を制御し、マルチパス特性M1(ω)、M2(ω)や回り込み伝搬路特性C1(ω)、C2(ω)の変化に対して、ダイバーシティ合成、マルチパス等化及び回り込みキャンセルを常に最良な状態に維持することを考える。各観測点における信号の観測結果より系の伝達関数を求める方法として、OFDM信号に含まれるSP(Scattered Pilot)を利用する方法や、データキャリアも含めた全てのOFDMキャリアの観測値と、そのキャリアの判定値との差分値を利用する方法などが考案されている。これらの方法は、いずれも各観測点の信号をFFT(高速フーリエ変換)して周波数領域のデータとし、各サンプル点での振幅及び位相の観測値から伝達関数を算出するもので、本願発明者らによる「周波数特性算出回路及びそれを用いたキャンセラならびに装置:特願2001−332870」、「回り込みキャンセラ:特願平10−162189(特開平11−355160号公報)」及び「地上デジタル放送SFNのための放送波中継用回り込みキャンセラの検討:信学技報、EMCJ98−111,Mar.1999」に詳しく記載されているので、ここでは詳細な説明は省く。
次に、ダイバーシティ合成・マルチパス等化用適応FIRフィルタであるTFl、TF2と回り込みキャンセル用適応FIRフィルタであるTF3の制御方法として、以下の2つの方法について詳しく説明する。
A.ダイバーシティ合成・マルチパス等化用適応FIRフィルタのTFl、TF2と回り込みキャンセル用適応FIRフィルタのTF3を交互に制御する方法。
B.ダイバーシティ合成・マルチパス等化用適応FIRフィルタのTFl、TF2と回り込みキャンセル用適応FIRフィルタのTF3を同時に制御する方法。
以下の説明では、信号スペクトルや伝達関数(伝送路やフィルタなどの周波数特性)は伝送路特性の時間的変動やデジタルフィルタの適応制御を考慮して周波数と時間の2変数の関数として扱うのと同時に、サンプリング(離散化)された形式で扱うものとする。サンプリングは時間軸と周波数軸の両方について行い、時間軸のサンプリング間隔はOFDM信号のシンボル間隔、周波数軸のサンプリング間隔はOFDM信号のキャリア間隔とする。連続値形式でH(ω)と表現された伝達関数もしくは信号スペクトルは、離散値形式ではH(is,ic)と表現される。ここでisはシンボル番号を、icはキャリア番号をそれぞれ示す整数であり、icはNcをOFDM信号の全キャリア数として、−(Nc−1)/2≦ic≦(Nc−1)/2の条件を満たすものとする。なお、説明を簡単化するため、ここではNcを奇数としている。すなわち、H(is,ic)は、シンボル番号isの時刻におけるキャリア番号icの周波数でのH(ω)のサンプリング値(複素数)を示すものとする。また、デジタルフィルタのタップ係数もデジタルフィルタの適応制御を考慮して、時間(タップ係数更新番号iQ又はシンボル番号is)とタップ番号iTの2変数の関数として表記する。なお前記(1)〜(16)の各式についても、離散値形式に置き換えて引用する。処理はシンボル単位で行われるので、伝達関数や周波数特性は、特定のシンボル番号isにおける、−(Nc−1)/2≦ic≦(Nc−1)/2を満足するNc個の複素数のデータの集合体で表される。
〔TFl、TF2とTF3を交互に制御する方法〕
この制御方法における処理の流れを図2に示す。この制御方法では、ダイバーシティ合成・マルチパス等化用適応FIRフィルタであるTF1及びTF2の特性を変更することによる回り込みキャンセル誤差の増大を小さく抑制するために、一度に変更するTFl及びTF2の特性の変化量を小さく制限する。図2に示す処理の流れに沿って、詳しく説明する。
ステップ(s1): 観測点P1及びP2において、OFDM信号のシンボル番号isの有効シンボル期間を同時に取得する。
ステップ(s2): ステップs1で取得した観測点Pl及びP2におけるシンボル番号isの有効シンボル期間の波形データをFFTし、SPの観測値又はデータキャリアを含む全てのOFDMキャリアの観測値とその判定値との差分値を利用して伝達関数Hl(is,ic)、H2(is,ic)を算出する。
ステップ(s3): ステップs2で算出された伝達関数Hl(is,ic)、H2(is,ic)から、OFDM信号のシンボル番号isの有効シンボル期間における、ブランチ#1、#2の受信系統におけるマルチパス特性Ml(is,ic)、M2(is,ic)を以下のように求める。
(1)、(2)式で表される観測点Pl、P2の信号スペクトルR1(is,ic)、R2(is,ic)を送信信号のスペクトルS(is,ic)で除算し、さらに(11)式を代入することで、Hl(is,ic)、H2(is,ic)は、それぞれ(19)、(20)式で表すことができる。
(19)、(20)式に(15)、(16)式を代入することで(21)、(22)式を得る。
ここで、N(ω)は時間的な変動がないので、離散化した結果の表記はN(ic)となる。(21)、(22)式を変形すると(23)式及び(24)式が得られる。
ここで、(23)、(24)式を見ると、それぞれM1(is,ic)、M2(is,ic)を0次項とするN(ic)に関しての、べき級数となっていることが判る。一方、地上デジタル放送の放送波中継局においては、親局受信用として、多素子の八木アンテナや口径の大きなグリッドパラボラアンテナなど、指向特性の鋭いアンテナを使用するため、親局波受信信号に含まれるマルチパスは、遅延時間の短い遅延波(いわゆる近接マルチパス)のみによって生じるのが一般的である。そこで(21)、(22)式をIFFT(逆離散フーリエ変換)して、時間軸のインパルス応答上(遅延プロファイル上)で考えると、Ml(is,ic)、M2(is,ic)の項は遅延時間が短く、第2項以降のN(ic)に関する高次項の遅延時間はN(ic)の遅延時間より長くなるため、N(ic)の遅延時間、すなわち、狭帯域BPFの遅延時間を適当に選ぶことにより、あるいはダイバーシティ合成・マルチパス等化用適応FIRフィルタであるTF1とTF2の遅延時間を適当に選ぶことにより、又は適当な遅延時間の遅延回路を中継放送機を含む本線信号系に挿入することにより、マルチパスを含む親局波の伝搬路特性であるMl(is,ic)、M2(is,ic)と、回り込みによる巡回応答に相当する第2項以降の項をインパルス応答上で分離することができることが判る。また、インパルス応答上(遅延プロファイル上)での遅延時間差による特性分離は、周波数軸上での周波数特性波形に対する畳み込みによるフィルタ処理に相当するため、観測して得られたHl(is,ic)、H2(is,ic)に信号が回り込みのループを一巡した時に生じる遅延時間より短い遅延時間の応答を遅延プロファイル上で抽出するのに相当する周波数特性波形に対するLPF(低域フィルタ)処理を行うことで、それぞれMl(is,ic)、M2(is,ic)を分離、取得することができる。すなわち、H1(is,ic)をLPF処理した結果をHF1(is,ic)、H2(is,ic)をLPF処理した結果をHF2(is,ic)とすれば、(25)、(26)式が成立する。
ステップ(s4): ステップs3で算出したM1(is,ic)、M2(is,ic)より、TFlとTF2に設定する特性DQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)を算出する。
得られた各ブランチにおける親局波のマルチパス特性Mb(is,ic)、(b=1〜NB、NB:ブランチ数)から各ブランチのダイバーシティ合成・マルチパス等化用適応FIRフィルタの特性を求めるアルゴリズムに関しては、本発明者らによる「OFDMデジタル信号中継装置:特願2000−353245(特開2002−158632号公報)」や「スペースダイバシティを用いた地上デジタル放送の放送波中継の検討:映像情報メディア学会技術報告、Vol.25,No.31,PP.7〜12BCS2001−11(Mar.2001)」に記載されているので、ここでは詳しい説明を省略するが、1例として最大比合成を行う場合の適応フィルタ特性の目標値DG1(ω)、DG2(ω)の算出式を(27)、(28)式に示す。
(27)、(28)式において、M* 1(ω)はM1(ω)の複素共役を、M* 2(ω)はM2(ω)の複素共役をそれぞれ示す。(27)、(28)式を離散値形式に書き換えて、(25)、(26)式を代入すると(29)、(30)式が得られる。
前にも述べた通り、TFl、TF2とTF3を交互に制御する方法においては、TFlとTF2の特性の変化が回り込みのキャンセル状態を乱し、キャンセル量を劣化させるため、1回のシーケンスで更新するTF1とTF2の特性の変化量は小さく制限する必要がある。そこで、1≧μD>0を満足するμDを更新係数として下記の(31)、(32)式を用いて、TFlとTF2に設定する特性DQl(iQ,ic)及びDQ2(iQ,ic)を求める。
ここで、iQはシンボル番号ではなく、タップ係数の更新番号を示す整数である。実際のハードウェアでは、回路の動作速度等の問題で、毎シンボルごとにタップ係数を更新できない場合が多く、タップ係数の更新番号iQとシンボル番号isは一致しない。また、TFl、TF2及びTF3を交互に制御する方法においては、1つの動作シーケンスにおいてダイバーシティ合成用のTFlとTF2のタップ係数を決定するための信号観測、回り込みキャンセル用のTF3のタップ係数を決定するための信号観測を交互に行うため、図4及び図5に示すように、回路の動作速度に関係なくタップ係数更新番号iQとシンボル番号isは異なった数値になる。ダイバーシティ合成用のTFlとTF2に関して、任意のシンボル番号isとタップ係数更新番号iQの間には(33)式で表される関係が成立する。
(33)式において、LQはタップ係数の更新間隔をシンボル数で表した正の整数、NDIはダイバーシティ合成用のTF1とTF2のタップ係数更新シーケンス番号iQ=0の期間における最初のシンボルの番号であり、FLR(x)は実数xを超えない最大の整数を与える関数を示す。シンボル番号isを独立変数とするダイバーシティ合成用のTFlとTF2の伝達関数D1(is,ic)、D2(is,ic)と、DQl(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)との間には(34)、(35)式で表される関係が成立する。
ステップ(s5): ステップs4で算出したDQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)より、ダイバーシティ合成用のTFlとTF2のタップ係数dq1(iQ,iT)、dq2(iQ,iT)を求める。ここで、iTは適応FIRフィルタのタップ係数のタップ番号を表す整数であり、また、iQは、前記タップ係数更新番号を表す整数である。
ステップs4で算出したDQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)を(36)、(37)式に示すようにIFFTし、TFlとTF2のタップ係数dq1(iQ,iT)及びdq2(iQ,iT)を求める。
ステップ(s6): TFlとTF2のタップ係数を更新する。
(33)、(34)式で求めたdq1(iQ,iT)、dq2(iQ,iT)を、OFDM信号のシンボル番号(is+ND)のガードインターバル期間において、それぞれTFl、TF2に設定、更新する。
ここで、NDはTFlとTF2のタップ係数を算出するために信号観測を行うシンボルの末尾からTFl、TF2のタップ係数を更新するシンボルまでの期間長をシンボル数で表した正の整数である。また、TFlとTF2のタップ係数を更新したことにより生じる過渡応答が収束するまで、シンボル数NWDの時間長だけ待って、次の処理を行う。
ステップ(s7): 観測点Pl、P2、P4において、OFDM信号のシンボル番号i’sの有効シンボル期間を取得する。ここで、i’sは(38)式で表される。
ステップ(s8): ステップs7で取得した観測点Pl、P2、P4のOFDM信号をFFTし、SPの観測値又はデータキャリアを含む全てのOFDMキャリアの観測値と、その判定値との差分値を利用して伝達関数H1(i’s,ic)、H2(i’s,ic)、H4(i’s,ic)を算出する。
観測したOFDM信号から伝達関数H4(i’s,ic)を算出する際に、本願発明者らによる特願平11−98829(特開2000−295195号公報)の「OFDM復調装置」や特願平11−147885(特開2000−341238号公報)の「回り込みキャンセラ」に記載のアルゴリズムを適用できることは明白であり、ここでは詳細な説明は省く。
ステップ(s9): (25)、(26)式を用いて、算出した伝達関数H1(i’s,ic)、H2(i’s,ic)から、M1(i’s,ic)、M2(i’s,ic)を求める。
ステップ(s10): ステップs8で得られた伝達関数H4(i’s,ic)とステップs9で得られたM1(i’s,ic)、M2(i’s,ic)から、TF3の補正量E(i’s,ic)を算出する。
TF3の補正量E(i’s,ic)を算出する式は以下のように導出される。まず、(15)式を離散化形式に書き換えて(39)式を得る。
また、H(i’s,ic)とH4(i’s,ic)の間には(40)式の関係がある。
(39)式に(40)式を代入すると(41)式が得られる。
(41)式を変形して(42)式を得る。
(42)式をさらに変形して(43)式を得る。
(43)式をE(i’s,ic)について解くと(44)式を得る。
(44)式において、D1(i’s,ic)、D2(i’s,ic)をステップs4で算出したDQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)に置き換えて変形すると(45)式を得る。
ここで、N(ic)は既知であるから、E(i’s,ic)を算出することができる。また、精度は悪くなるが簡易な計算法として、(45)式右辺の第二項の分子を時間的に変化のないDf(ic)と置くことで、計算量を削減することが可能である。この場合、ダイバーシティ合成用のタップ係数生成と回り込みキャンセル用タップ係数生成の処理を分離でき、ハードウェアを簡略化することができる
ステップ(s11): E(i’s,ic)よりTF3のタップ係数wq(iQ,iT)を作成する。
ステップs10で算出したE(i’s,ic)をIFFTし、TF3のタップ係数の補正量eq(iQ,iT)を(46)式を用いて求める。ここで、iTは適応FIRフィルタTF3のタップ係数のタップ番号を示す整数であり、iQはタップ係数更新番号を示す整数である。また、TFl、TF2の場合と同様の理由で、タップ係数更新番号iQとシンボル番号i’sは異なった番号になる。
回り込みキャンセル用のTF3に関して、任意のシンボル番号isとタップ係数更新番号iQの間には(47)式で表される関係が成立する。
ここで、LQはタップ係数の更新間隔をシンボル数で表した正の整数、NLIは回り込みキャンセル用のTF3のタップ係数更新シーケンス番号iQ=0の期間における最初のシンボルの番号であり、FLR(x)は実数xを超えない最大の整数を与える関数を示す。
E(i’s,ic)からeq(iQ,iT)を求めるアルゴリズムに関しては、単純な(46)式以外に本願発明者らによる特願平11−153430(特開2000−341242号公報)の「回り込みキャンセラ」に記載のアルゴリズムが適用できることは明らかであり、ここでは、詳細な説明を省く。次に、得られたTF3のタップ係数補正量eq(iQ,iT)から、TF3に設定するタップ係数を(48)式に基づいて作成する。ここでμLは更新係数であり1≧μL>0を満足する。
また、(48)式の代わりに本願発明者らによる特願平2000−156549(特開2001−237749号公報)の「回り込みキャンセラ」や特願平11−353090の「回り込みキャンセラ」のような予測アルゴリズムを適用することで、回り込みの変動に対する追従性能を向上させ得ることは明らかであり、ここでは詳細な説明は省く。また、シンボル番号isを独立変数とする回り込みキャンセル用のTF3のタップ係数w(is,iT)と、wq(iQ,iT)の間には(49)式で表される関係が成立する。
ステップ(s12): TF3のタップ係数を更新する。
(48)式で得られたTF3のタップ係数wq(iQ,iT)を、OFDM信号のシンボル番号(i’s+NL)のガードインターバル期間にTF3に設定、更新する。ここで、NLはTF3のタップ係数を決定するための信号観測を行うシンボルの末尾から、TF3のタップ係数を更新するシンボルまでの期間長をシンボル数で表した正の整数である。また、TF3のタップ係数を更新したことにより生じる過渡応答が収束するまで、シンボル数NWLの時間長だけ待って、動作シーケンスの先頭のステップs1の処理に戻る。以降、同様の動作シーケンスを繰り返す。TFl、TF2、TF3のタップ係数更新間隔(シンボル数)は(50)式で表される。
図4にTFl,TF2とTF3を交互に制御する場合の動作シーケンスの1例を示す。この例では、観測点P1,P2の信号を観測してからTFl、TF2のタップ係数を生成するまでに2シンボルの時間(ND=2)、観測点P1,P2,P4の信号を観測してからTF3のタップ係数を生成するまでに同じく2シンボルの時間(NL=2)を要する場合について示している。また、各TFのタップ係数を変更してからの過渡応答はガードインターバル期間内で収まるものとしている(NWD=0、NWL=0)。黒塗りの△はTFl、TF2のタップ係数更新タイミングを、△はTF3のタップ係数更新タイミングをそれぞれ示している。斜めにハッチングした信号期間はガードインターバルを示している。図4の例における各TFの係数更新間隔LQは6シンボルである。
図5は図4と同様に信号を観測してから、TF1,TF2又はTF3のタップ係数を生成するまでに2シンボルの時間を要する場合(ND=2、NC=2)を示しているが、各TFのタップ係数を更新してから、過渡応答が収束するのにガードインターバルより長い時間を要する場合の動作シーケンスを示しており、観測する信号期間に各TFのタップ係数を更新した時の過渡応答が残留しないようにするために、1シンボル期間の観測待ち時間((NWD=1、NWL=1)を設定している。過渡応答の時間長は、装置のパラメータや伝搬路の条件により異なるため、ここでは詳細な説明は省く。図5の例における各TFの係数更新間隔LQは8シンボルである。
〔TFl,TF2とTF3を同時に制御する方法〕
この制御方法における処理の流れを図3に示す。この制御方法は、前述の「TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法」に比べ、TFl、TF2、TF3の特性を同時に変更するため、マルチパスの変動に追従するために行うTFl、TF2の特性更新による回り込みキャンセル誤差の増大が生じないため、より高い性能が期待できる。言い換えれば、TFl、TF2の特性を更新することによるキャンセルバランスの変化を推測し、回り込みの変化に対する補正と合わせて反映するようTF3の特性を決定して、TFl、TF2、TF3の特性を同時に更新することに特徴がある。図3に示す処理の流れに沿って、詳しく説明する。以下の説明での表記は、前記「TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法」の場合と同様である。
ステップ(s1): 観測点Pl、P2及びP4において、OFDM信号のシンボル番号isの有効シンボル期間を同時に取得する。
ステップ(s2): ステップs1で取得した観測点Pl、P2、P4におけるシンボル番号isの有効シンボル期間の波形データをFFTし、SPの観測値又はデータキャリアを含む全てのOFDMキャリアの観測値と、その判定値との差分値を利用して伝達関数H1(is,ic)、H2(is,ic)、H4(is,ic)を算出する。
ステップ(s3): ステップs2で算出された伝達関数H1(is,ic)、H2(is,ic)から、ブランチ#1、#2の受信信号に関するマルチパス特性M1(is,ic)、M2(is,ic)を求める。
具体的な方法は、前記〔TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法〕のステップs3と同じで(25)、(26)式を用いる。
ステップ(s4): M1(is,ic)、M2(is,ic)より、TFlとTF2に設定する特性DQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)を算出する。
具体的な方法は、前記〔TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法〕のステップs4と同じであるが、〔TF1,TF2とTF3を同時に制御する方法〕では、ダイバーシティ合成用のTFl、TF2の特性を.更新することの影響も加味して、回り込みキャンセル用のTF3の特性を決定するため、前記〔TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法〕のように、TFl、TF2の特性の1回の更新における変化量を小さく抑える必要はなく、雑音の影響を考慮した上でなるべくμDは大きく設定して、変動追従性を良くすることができる。
ステップ(s5): TFlとTF2のタップ係数を作成する。
ステップs4で算出したDQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)を(36)、(37)式に示すようにIFFTし、TFlとTF2のタップ係数dql(iQ,iT)及びdq2(iQ,iT)を求める。
ステップ(s6): ステップs2で算出したH1(is,ic)、H2(is,ic)、H4(is,ic)、及びステップs3で算出されたM1(is,ic)、M2(is,ic)から、各ブランチに対する回り込み特性C1(is,ic)、C2(is,ic)を求める。
まず、(19)、(20)式を、次のように書き換える。
ここで、観測点P5における伝達関数H(is,ic)はG・H4(is,ic)に等しいため、(51)、(52)式は以下のように書き換えられる。
得られた(53)、(54)式より各ブランチの回り込み特性C1(is,ic)、C2(is,ic)を算出する。HF1(is,ic),HF2(is,ic)は、それぞれH1(is,ic),H2(is,ic)をローパスフィルタ処理した結果であるから、(53),(54)式の分子項は、それぞれH1(is,ic),H2(is,ic)をハイパスフィルタ処理した結果となる。
ステップ(s7): ステップs4で算出したTFlとTF2に設定する特性DQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)とステップs6で算出した各ブランチの回り込み特性C1(is,ic)、C2(is,ic)より、回り込みキャンセル用の適応フィルタTF3に与える特性W(is,ic)を算出する。
まず、(13)式で表される回り込みのキャンセル条件を離散形式に書き換える。
さらに、(55)式をW(is,ic)について解き、(53)、(54)式を代入すると、(56)式が得られる。
TFl、TF2、TF3のタップ係数更新後は、D1=(is,ic)、D2(is,ic)は、それぞれDQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)となっていることを考慮し、(56)式を(57)式のように書き換える。
ここで、〔TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法〕の場合と同様に、iQはシンボル番号ではなく、タップ係数の更新番号を示す整数である。〔TFl,TF2とTF3を同時に制御する方法〕においても、回路の動作速度等の問題で、実際のハードウェアにおいて毎シンボルごとにタップ係数を更新することができない場合が多く、タップ係数の更新番号iQとシンボル番号isは一致しない。また、中間段階でC1(is,ic)、C2(is,ic)を求めなくても、(57)式を直接計算することでWQ(iQ,ic)を算出できるため、ステップs4は実質的には不要である。
また、〔TFl,TF2とTF3を同時に制御する方法〕では、ダイバーシティ合成用のTFl、TF2、及び回り込みキャンセル用のTF3に関して、任意のシンボルの番号isとタップ係数更新番号iQの間には(58)式で表される関係が成立する。
(58)式において、LQはタップ係数の更新間隔をシンボル数で表した正の整数、NLDIはダイバーシティ合成用のTFl、TF2及び回り込みキャンセル用のTF3のタップ係数更新シーケンス番号iQ=0の期間における最初のシンボルの番号であり、FLR(x)は(33)、(47)式と同様に、実数xを超えない最大の整数を与える関数を示す。シンボル番号isを独立変数とするTFl、TF2及びTF3の伝達関数D1(is,ic)、D2(is,ic)、及びW(is,ic)と、DQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)、及びWQ(iQ,ic)との間には(59)、(60)及び(61)式で表される関係が成立する。
ステップ(s8): TF3のタップ係数wq(iQ,iT)を求める。
ステップs7で算出したWQ(iQ,ic)を(62)式に示すようにIFFTしてTF3のタップ係数wq(iQ,iT)を求める。
(62)式で求めたwq(iQ,iT)を直接使用することも可能であるが、雑音による影響を軽減するために、(62)式の代わりに(63)式を適用することもできる。ここでμLは更新係数であり、1≧μL>0を満足する定数とする。
ステップ(s9): TFl,TF2及びTF3のタップ係数を更新する。
OFDM信号のガードインターバル期間にTFl、TF2及びTF3のタップ係数を設定、更新する。また、各TFのタップ係数を更新したことにより生じる過渡応答が収束するまで、シンボル数NWLDの時間長だけ待って、動作シーケンスの先頭のステップs1の処理に戻る。また、TFl、TF2、TF3のタップ係数更新間隔(シンボル数)は(64)式で表される。ここで、NLDはTFl、TF2、TF3のタップ係数を算出するために信号観測を行うシンボルの末尾からTFl、TF2、TF3のタップ係数を同時に更新するシンボルまでの期間長をシンボル数で表した正の整数である。
図6にTFl、TF2、TF3を同時に制御する場合の動作シーケンスの1例を示す。この例では、観測点P1、P2、P4の信号を観測してからTFl、TF2、TF3のタップ係数を生成するまでに2シンボルの時間を要する場合(NLD=2)について示している。また、各TFl、TF2、TF3の各フィルタのタップ係数を変更することにより生じる過渡応答はガードインターバル期間内で収まるものとしている(NWLD=0)。具体例は示さないが、TFl、TF2、TF3を同時に制御する場合でも、過渡応答か収束するのにガードインターバルより長い時間を要する場合には、1シンボルの待ち時間を設定する必要がある。図6の例における各TFの係数更新間隔LQは3シンボルである。
〔中継局システムの構成例〕
続いて、本発明によるダイバーシティ受信用回り込みキャンセラの具体的な構成例について説明する。まず、図7に本発明によるダイバーシティ受信用回り込みキャンセラを適用したSFN(単一周波数ネットワーク)放送波中継局全体の構成例を示す。この構成例はブランチ数が2つの場合であり、以下の具体的な説明においてもブランチ数は2つの場合について説明する。
親局から送信された希望波(OFDM波)は、本実施例に基づくダイバーシティ受信用回り込みキャンセラを備えるSFN放送波中継局において、空間的に離れて設置された2つの受信アンテナ1−1と1−2で受信される。この時、2つの受信アンテナでは、それぞれ異なる特性のマルチパス波と回り込み波が同時に受信される。
受信アンテナ1−1と1−2より出力された受信信号はフィーダーケーブルを通して、それぞれ受信フィルタ2−1と2−2に入力され、希望波の周波数帯域外の不要な信号成分が除去される。
受信フィルタ2−1と2−2の出力信号は、それぞれ受信変換部3α−1、3α−2に入力され、そのレベルが一定になるようにAGC増幅された後、周波数変換されてIF信号となり、それぞれ出力される。このIF信号の中心周波数としては、37.15MHzが一般に用いられる。
受信変換部3α−1、3α−2より出力されたIF信号は、ダイバーシティ受信用回り込みキャンセラ4に入力される。また、受信変換部3α−1、3α−2において行われたAGC増幅における利得制御量に関する情報も、それぞれダイバーシティ受信用回り込みキャンセラ4に供給される。これはダイバーシティ受信用回り込みキャンセラ4において、各ブランチ#1、#2からの信号を合成するための合成係数を算出するのに利用される。
ダイバーシティ受信用回り込みキャンセラ4は、ブランチ#1、#2からのIF帯の受信信号を合成すると共に、合成した信号に含まれる回り込み波を除去した後に入力信号と同じ周波数のIF信号として出力する。
ダイバーシティ受信用回り込みキャンセラ4から出力されたIF信号は送信変換部5αに供給される。送信変換部5αは入力されたIF信号をRF帯に周波数変換し、その周波数を受信アンテナ1−1,1−2から出力される受信信号と同一とした後、一定レベルになるように増幅して出力する。
送信変換部5αより出力されたRF信号はPA(電力増幅器)6に供給される。PA6は所望の出力の送信信号を得るために、入力されたRF信号を電力増幅して出力する。
PA6より出力された送信信号は送信フィルタ7に入力され、帯域外の不要輻射成分が除去される。送信フィルタ7で帯域外の不要な成分が除去された送信信号は、フィーダーを通して送信アンテナ8に供給されて電波となって放射される。
また、ローカル信号発生器(LO)9より出力されたローカル信号は分配器10において3分配される。3分配されたローカル信号の内の2つは受信変換部3α−1、3α−2に供給され、残りの1つは送信変換部5αに供給される。こうすることでブランチ#1とブランチ#2のIF信号の周波数を互いに同期させると共に、受信信号と送信信号の周波数も同期させることができる。ローカル信号は周波数変換に必要となる周波数の正弦波を直接発生させて分配、供給してもよいが、特定周波数の基準信号(例えば10MHz)を発生させて、受信変換部3α−1、3−2及び送信変換部5αに供給すると共に、各部においてそれぞれ別々にPLL回路で周波数変換に必要な周波数の正弦波信号を生成、使用してもよい。この場合、ローカル信号発生器9は基準信号発生器として働く。
次に、ダイバーシティ受信用回り込みキャンセラ4の構成例として日本の地上デジタル放送方式であるISDB−Tに本発明を適用した場合について詳しく説明する。以下に説明する構成例では、前記「TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法」及び「TFl,TF2とTF3を同時に制御する方法」のいずれも実現することが可能である。
尚、以下の説明において、ブランチ#1を構成する機能ブロックには参照番号に“−1”という添え字を付し、ブランチ#2を構成する機能ブロックには参照番号に“−2”という添え字を付加する。共通する部分には添え字は付加しない。図8〜図14においては、I軸信号、Q軸信号から構成される等価ベースバンド信号で機能ブロック間を接続する場合には、I軸信号(同相成分信号)とQ軸信号(直交成分信号)の2本の信号線で接続を示すと共に、I軸信号のみ、又はQ軸信号のみを処理する機能ブロックには機能ブロックの参照番号にI又はQの文字を付与して示してある。図の中の信号線がアナログ信号用であるか、デジタル信号用であるかは以下の説明より自明であるので特に明言しない。デジタル信号に関しては、その信号線が何ビットで構成されるかという点についても明言しないが、必要なビット数分は確保されるものとしている。伝達関数や周波数特性データはNC個の複素数のデータ集合体である。適応フィルタ(適応FIRフィルタ)のタップ長については、特に言及しないが、所望の特性を得るのに必要なタップ長は確保されているものとする。タップ係数は、構成例によって、実数タイブの場合と複素数タイブの場合があり、それぞれ、タップ長分の実数又は複素数のデータ集合体である。
〔具体的な構成例1〕
図8は本発明によるダイバーシティ受信用回り込みキャンセラの第1の構成例を示している。本実施例は、IF信号を直接A/D変換してデジタルIF信号とした後、直交復調して等価ベースバンド信号に変換し、ダイバーシティ合成、回り込みキャンセルを行った後に直交変調して再びデジタルIF信号に戻し、D/A変換してアナログIF信号を出力する構成としている。また、A/D変換するIF信号の中心周波数及び等価ベースバンド信号のサンプリング周波数をOFDM信号のFFTクロック周波数(日本の地上デジタル放送方式であるISDB一Tの場合、512/63=8.127MHzとなる。)と同じとしている。
受信変換部3α−1、3α−2から出力されるIF帯の受信信号を第1のIF信号とし、上記、直接A/D変換されるIF信号を第2のIF信号とする。
入力された受信変換部3α−1、3α−2からの第1のIF信号は、それぞれ、BPF41−1、41−2(中心周波数:37.15MHz、通過帯域幅:5.6MHz)に供給され、信号帯域外の不要な成分が除去された後、ダウンコンバータ(D/C)42−1、42−2にそれぞれ入力される。
ダウンコンバータ(D/C)42−1、42−2に入力されたIF信号は、それぞれ中心周波数がOFDM信号のFFTクロック周波数と等しい第2のIF信号(中心周波数:8.127MHz、信号帯域幅:約5.6MHz)に変換された後に出力され、BPF43−1、43−2に入力される。
ローカル信号発生器413は、ダウンコンバータ(D/C)42−1、42−2及びアップコンバーター(U/C)430が必要とするローカル信号を発生して分配器414に供給する。分配器414は入力されたローカル信号を3分配して出力する。分配器414から出力された3つのローカル信号はダウンコンバータ(D/C)42−1、42−2及びアップコンバータ(U/C)430にそれぞれ供給きれる。
BPF43−1、43−2に入力されたIF信号はA/D変換によって折り返し歪が生じないように信号帯域外の不要な成分が除去された後、出力される。
BPF43−1、43−2から出力された各ブランチのIF信号は、それぞれAGC増幅器44−1、44−2に入力され、A/D変換において最もS/Nが高く、かつクリップ歪が生じないようその信号レベルが調整されて出力される。また、AGC増幅器44−1、44−2はAGC増幅における利得制御量に関する情報を、それぞれダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αに供給する。
AGC増幅器44−1、44−2においてA/D変換に最適なレベルにレベル制御されたIF信号はA/D変換器45−1、45−2にそれぞれ入力されて、デジタル化されたIF信号に変換される。本実施例では、A/D変換器45−1、45−2のサンプリング周波数はFFTクロック周波数の4倍(4×512/63=32.508MHz)の周波数としている。
A/D変換器45−1、45−2から出力されたIF信号は直交復調器46Dl−1、46Dl−2にそれぞれ入力される。直交復調器46Dl−1、46Dl−2に入力されたIF信号は、サンプリング周波数がFFTクロック周波数の4倍のI、Q等価ベースバンド信号(I信号は同相成分信号、Q信号は直交成分信号)に変換された後、それぞれ出力される。
直交復調器46D1−1、46D1−2の構成を図15(a)に示す。直交復調器46D1−1、46D1−2は、固定周波数のデジタルローカル信号を用いて直交復調を行う回路であり、固定周波数のデジタルローカル信号は直交復調器内で生成する構成となっている。さらに、直交復調器46Dl−1、46Dl−2の動作クロック周波数はOFDM信号のFFTクロック周波数の4倍であり、入力されるデジタルIF信号の中心周波数はOFDM信号のFFTクロック周波数に等しい。したがって、直交復調器46Dl−1、46Dl−2では、入力IF信号が乗算されるデジタルのローカル信号の周波数とサンプリング周波数の比率が1:4の関係となり、図15(a)に示すように、COS信号の代わりに{1、0−1、0……}の固定パターン46Dl−3を、−SIN信号の代わりに{0、−1、0、1……}の固定パターン46Dl−4を乗算する小規模な回路で直交復調処理を実現できる利点がある。
ブランチ#1の直交復調器46Dl−1から出力されたI、Q信号は、それぞれLPF47DI−1、47DQ−1に入力される。LPF47DI−1、47DQ−1は、入力されたI、Q信号に含まれる直交復調の際に生じたイメージ成分を除去すると共に、後段の間引き処理において折り返し歪が生じないように不要な信号成分を除去して出力する。LPF47DI−1、47DQ−1から出力されたI、Q信号は間引き回路48I−1、48Q−1(間引き率は4:1)に入力される。間引き回路48I−1、48Q−1は、入力されたI、Q信号に対して間引き処理を行い、そのサンプリング周波数をFFTクロック周波数と同じ周波数に変換して出力する。
また、ブランチ#2の直交復調器46DI−2から出力されたI、Q信号は、それぞれLPF47DI−2、47DQ−2に入力される。LPF47DI−2、47DQ−2は、入力されたI、Q信号に含まれる直交復調の際に生じたイメージ成分を除去すると共に、後段の間引き処理において折り返し歪が生じないように不要な信号成分を除去して出力する。LPF47DI−2、47DQ−2から出力されたI、Q信号は間引き回路48I−2、48Q−2(間引き率は4:1)に入力される。間引き回路48I−2、48Q−2は入力されたI、Q信号に対して間引き処理を行い、そのサンプリング周波数をFFTクロック周波数と同じ周波数に変換して出力する。
ブランチ#1の間引き回路48I−1、48Q−1から出力されたI、Q信号はそれぞれ2分配されて、一方は位相回転器49−1に、もう一方は、さらに2分配されてタイミング再生部415とAFC部416Dlにそれぞれ供給される。同様にブランチ#2の間引き回路48I−2、48Q−2から出力されたI、Q信号もそれぞれ2分配されて、一方は位相回転器49−2に、もう一方は、さらに2分配されてタイミング再生部415とAFC部416Dlにそれぞれ供給される。
タイミング再生部415は入力されたブランチ#1及びブランチ#2からのI、Q信号よりFFTクロック信号、シンボルクロック信号、FFT窓タイミング信号など、装置を駆動させるために必要な各種タイミング信号を再生及び生成すると共に、当該タイミング信号を必要とする各部へ供給する。タイミング信号の再生方法に関してはガードインターバル相関を利用した様々な方法が既に提案されているので、ここでは詳細な記述を省く。
また、AFC部416Dlは、入力されたブランチ#1及びブランチ#2からのI、Q信号より周波数離調量を検出し、その検出した離調周波数と同じ周波数を持つ再生キャリア信号(I、Q信号)を生成して出力する。AFC部416Dlから出力されたI、Qの再生キャリア信号は3分配されて、ブランチ#1の位相回転器49−1、ブランチ#2の位相回転器49−2及び周波数極性反転回路417にそれぞれ供給される。OFDM信号に関する離調周波数の検出方法や再生キャリア信号の発生方法に関しても、ガードインターバル相関を利用した様々な方法が既に提案されているので、ここでは詳細な記述を省く。
ブランチ#1の位相回転器49−1は、AFC部416Dlより供給された再生キャリア信号の周波数極性を反転し(I、Q再生キャリア信号の内、Q信号の極性を反転する)、間引き回路48I−1、48Q−1より供給されたI、Q信号と複素乗算することで、間引き回路48I−1、48Q−1より供給されたI、Q信号の周波数ずれを補正して出力する。ブランチ#2の位相回転器49−2も同様な処理を行うことで、間引き回路48I−2、48Q−2より供給されたI、Q信号の周波数ずれを補正して出力する。
ブランチ#1の位相回転器49−1より出力された周波数ずれ補正済みのI、Q信号は2分配され、一方はTFlに相当する複素適応フィルタ411C−1に、もう一方は伝送路特性推定部410−1に供給される。同様にブランチ#2の位相回転器49−2より出力された周波数ずれ補正済みのI、Q信号も2分配され、一方はTF2相当する複素適応フィルタ411C−2に、もう一方は伝送路特性推定部410−2に供給される。
ブランチ#1の伝送路特性推定部410−1は、入力されたI、Q信号をFFTして、伝達関数H1(is,ic)、及び、H1(i’s,ic)を算出する。同様にブランチ#2の伝送路特性推定部410−2は入力されたブランチ#2のI、Q信号をFFTして伝達関数H2(is,ic)、及び、H2(i’s,ic)を算出する。観測した信号のFFT結果より伝達関数を算出する方法としては、本願発明者らによる「回り込みキャンセラ」(特願平10−162189:特開平11−355160号公報)及び「地上デジタル放送SFNのための放送波中継用回り込みキャンセラの検討:信学技報、EMCJ98−111,Mar.1999」に詳しく記載されているOFDM信号に含まれるSP(Scattered Pilot)を利用する方法や、同じく本願発明者らによる、「周波数特性算出回路及びそれを用いたキャンセラならびに装置」(特願2001−332870)に詳しく記載されているデータキャリアを含む全てのOFDMキャリアの観測値とその測定値との差分値を利用する方法などが利用できる。これらの方法は、希望波であるOFDM信号を受信機においてFFT復調するのと同様に、受信信号のキャリア周波数同期を確立させ、さらに受信信号に同期したFFTクロックで受信信号の有効シンボル期間をFFTすることを前提とするが、受信信号とは非同期で行ったFFT結果より伝達関数を求める方法や、観測信号の時間軸上での自己相関演算の結果より伝達関数を求める方法もあるが、ここでは詳細な説明は省く。
伝送路特性推定部410−1と伝送路特性推定部410−2おいて算出されて出力された伝達関数H1(is,ic)とH2(is,ic)及びH1(i’s,ic)とH2(i’s,ic)は、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αに入力される。ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αの動作は、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αの動作と共に後で述べる。
ブランチ#1の複素適応フィルタ411C−1はダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αから供給された係数データdq1(iQ,iT)をタップ係数として、複素位相回転器49−1より供給されるブランチ#1のI、Q信号に畳み込み演算を行い、ブランチ#2よりの信号と最大比合成が実現されるよう周波数軸上での重み付け処理を実現する。同様にブランチ#2の複素適応フィルタ411C−2はダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αから供給された係数データdq2(iQ,iT)をタップ係数として、複素位相回転器49−2より供給されるブランチ#2のI、Q信号に畳み込み演算を行い、周波数軸上での重み付け処理を実現する。
ブランチ#1の複素適応フィルタ411C−1から出力される周波数軸上での重み付け処理後のI、Q信号は、加算器418I、418Qの被加算信号入力端子に供給される。同様にブランチ#2の複素適応フィルタ411C−2から出力される周波数軸上での重み付け処理後のI、Q信号は、加算器418I、418Qのもう一方の被加算信号入力端子に供給される。加算器418I、418Qは、被加算信号入力端子に供給されたブランチ#1とブランチ#2のI、Q信号をそれぞれ加算合成して出力する。
加算器418I、418Qから出力される加算合成後のI、Q信号は回り込みキャンセルのための減算器419I、419Qの被減算信号入力端子に供給される。−方、減算器419I、419Qの減算信号入力端子には、回り込みの複製信号を生成するための複素適応フィルタ422Cから出力されるI、Q信号が入力される。
減算器419I、419Qの減算出力端子から出力される回り込み波の複製信号を差し引いた後のI、Q信号はLPF420I、420Qに入力され、帯域制限される。LPF420I、420Qの通過帯域は、希望波成分を減衰なく通過させると同時に、回り込み伝搬路を含む中継装置の本線信号経路すべての中で最も帯域を狭く設定する必要がある。これは、回り込み波の受信電力が希望波の受信電力より大きい負のD/Uの状態においても信号帯域外で発振を生じないようにするための条件の1つであり、本願発明者らによる回り込みキャンセラに関する発明である特願2000−180877に詳しく述べられているので、ここでは詳細な説明を省く。
LPF420I、420Qはトランスパーサルーフィルタで容易に実現することができる。LPF420I、420Qから出力されるI、Q信号は2分配され、一方は位相回転器424に供給される。2分配されたI、Q信号のもう一方はさらに2分配され、回り込みキャンセル用適応FIRフィルタTF3に相当する複素適応フィルタ422Cと、伝送路特性推定部421に供給される。
伝送路特性推定部421は、入力されたI、Q信号をFFTして、伝達関数H4(is,ic)又はH4(i’s,ic)(図1の観測点P4における伝達関数)を算出し、その結果を回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αに供給する。複素適応フィルタ422Cは、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αから供給された係数データw(iQ,iT)をタップ係数として、入力されたI,Q信号に対して畳み込み演算を行ない、中継放送機を含む実際の回り込みループの周波数特性を与えて、回り込み成分の複製信号を生成し出力する。複素適応フィルタ422Cから出力されたI,Q信号は、減算器419I,419Qの減算信号入力端子にそれぞれ入力される。
位相回転器424に入力されたI、Q信号は、位相回転器49−1、49−2で補正された周波数誤差成分を逆に加えられて出力される。位相回転器424から出力されたI、Q信号は、ゼロ内挿によるアップサンプル回路425I、425Qに入力される。
アップサンプル回路425I、425Qに入力されたI、Q信号は、そのサンプリング周波数を4倍に変換された後に出力される。アップサンプル回路425I、425Qから出力されたI、Q信号はLPF426DI、426DQにそれぞれ入力される。
LPF426DI、426DQに入力されたアップサンプル後のI、Q信号は、アップサンプルによって生じた折り返し成分を除去することで補間処理されて出力される。
LPF426DI、426DQから出力された補間処理済みのI、Q信号は、直交復調器427Dlで直交変調され、中心周波数が第2IF周波数のデジタルIF信号に変換された後に出力される。
直交変調器427Dlの構成を図16(a)に示す。直交変調器427Dlは、固定周波数のデジタルローカル信号を用いて直交変調を行う回路であり、固定周波数のデジタルローカル信号は直交変調器内で生成する構成となっている。さらに、直交変調器427Dlの動作クロツク周波数はOFDM信号のFFTクロック周波数の4倍であり、出力されるデジタルIF信号の中心周波数はOFDM信号のFFTクロック周波数に等しい。したがって、直交変調器427Dlでは、入力されるI、Q等価ベースバンド信号が乗算されるデジタルのローカル信号の周波数と、サンプリング周波数の比率が1:4の関係となり、図16(a)に示すように、COS信号の代わりに{1、0、−1、0……}の固定パターン427Dl−4を、SIN信号の変わりに{0、1、0、−1……}の固定パターン427Dl−5を乗算する小規模な回路で直交変調処理を実現できる利点がある。
直交変調器427Dlから出力されたデジタルIF信号はD/A変換器428でアナログIF信号に変換される。
D/A変換器428から出力されたアナログIF信号はBPF429に入力される。BPF429に入力されたアナログIF信号は補間処理されて、基本波成分のみが抽出される。
BPF429から出力された中心周波数が第2IF周波数のアナログIF信号はアップコンパータ(U/C)430に入力される。アップコンバータ(U/C)430に入力されたIF信号は、本例のダイバーシティ受信用回り込みキャンセラへの入力信号と同じ周波数である第1IF周波数に変換されて出力される。アップコンバータ(U/C)430は分配器414から供給されたローカル信号を使用して周波数変換を行う。
アップコンバータ(U/C)430から出力された中心周波数が第1IF周波数のIF信号はBPF431に入力される。BPF431に入力されたIF信号は、アップコンバータ(U/C)430における周波数変換で生じたイメージ成分など、信号帯域外の不要な信号成分を除去された後に出力される。BPF431から出力されたIF信号は、ダイバーシティ受信用回り込みキャンセラの出力信号として送信変換部5αに供給される。
続いて、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αと回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αの動作について説明する。ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412α及び回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αの動作は、前記「TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法」と前記「TFl,TF2とTF3を同時に制御する方法」で異なるため、各々について説明する。
最初に、「TF1,TF2とTF3を交互に制御する方法」の場合について説明する。この方法では、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αは、まず、入力された伝達関数H1(is,ic)、H2(is,ic)と複素適応フィルタ411C−1、411C−2の前回更新時のタップ係数dq1(iQ−1,iT)、dq2(iQ−1,iT)を算出する過程で算出したDQ1(iQ−1,ic)、DQ2(iQ−1,ic)を用いて、前記(25)、(26)、(29)、(30)、(31)、(32)、(36)、(37)式で表される処理を行い、複素適応フィルタ411C−1と411C−2のタップ係数dql(iQ,iT)とdq2(iQ,iT)を算出して、複素適応フィルタ411C−1と411C−2にそれぞれ供給し、ガードインターバル期間内に更新する。続いて、入力された伝達関数H1(i’s,ic)とH2(i’s,ic)を用いて(25)式、(26)式で表される処理を行い、M1(i’s,ic)、M2(i’s,ic)を算出し、タップ係数dq1(iQ,iT)とdq2(iQ,iT)を算出する過程で得られた、DQl(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)と共に、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αに供給する。また、精度は良くないが簡易な計算法として、(45)式右辺の第二項の分子を時間的に変化のないDf(ic)と置く場合、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αは回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αにM1(i’s,ic)、M2(i’s,ic)、DQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)を供給する必要はない。さらに、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αは、受信変換3α−1、3α−2及びAGC増幅器44−1、44−2より、AGC増幅における利得制御情報を入力して、複素適応フィルタ411C−1、411C−2のタップ係数dq1(iQ,iT)、dq2(iQ,iT)の生成に利用する。
回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αは、入力された伝達関数H4(i’s,ic)、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αより供給されるDQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)、M1(i’s,ic)、M2(i’s,ic)と前回更新時のタップ係数wq(iQ−1,iT)をもとに、(45)、(46)、(48)式で示される演算を行い、複素適応フィルタ422Cのタップ係数wq(iQ,iT)を算出、供給し、ガードインターバル内で更新する。
次に、「TFl,TF2とTF3を同時に制御する方法」の場合について説明する。この方法では、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αは、入力された伝達関数H1(is,ic)、H2(is,ic)と複素適応フィルタ411C−1、411C−2の前回更新時のタップ係数dql(iQ−1,iT)、dq2(iQ−1,iT)を算出する過程で算出したDQl(iQ−1,ic)、DQ2(iQ−1,ic)を用いて、前記(25)、(26)、(29)、(30)、(31)、(32)、(36)、(37)式で表される処理を行い、複素適応フィルタ411C−1と411C−2のタップ係数dql(iQ,iT)とdq2(iQ,iT)を算出すると共に、複素適応フィルタ411C−1と411C−2のタップ係数dql(iQ,iT)、dq2(iQ,iT)を算出する過程で算出したM1(is,ic)、M2(is,ic)、DQ1(is,ic)、DQ2(is,ic)と入力された伝達関数H1(is,ic)、H2(is,ic)を回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αに供給する。
さらに、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αは、前記「TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法」の場合と同様に、受信変換部3α−1、3α−2及びAGC増幅器44−1、44−2より、AGC増幅における利得制御情報を入力して、複素適応フィルタ411C−1、411C−2のタップ係数dq1(iQ,iT)、dq2(iQ,iT)の生成に利用する。
回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αは、入力された伝達関数H4(is,ic)、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αより供給されたH1(is,ic)、H2(is,ic)、M1(is,ic)、M2(is,ic)、DQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)及び前回更新時のタップ係数wq(iQ−1,iT)を用いて(57)、(63)式で表される処理を行い、複素適応フィルタ422Cのタップ係数wq(iQ,iT)を算出する。そして、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αは、複素適応フィルタ411C−1と411C−2に、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αは、複素適応フィルタ422Cにそれぞれ算出したタップ係数を供給し、ガードインターバル内において同時に更新する。
また、前記「TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法」では、複素適応フィルタ422Cのタップ係数の更新に対し、本願発明者らによる特願2000−156549(特開2001−237749号公報)に記載されているような、過去のシーケンスにおける回り込みキャンセル誤差を利用して、回り込み特性の変動を予測し、キャンセル誤差をより少なくするアルゴリズムを適用することが可能である。「TFl,TF2とTF3を同時に制御する方法」に対しても同様の予測もしくは予測補間アルゴリズムを適用することが可能であるが、この場合、参照するのは過去のシーケンスにおける各ブランチの回り込み特性の検出結果である。いずれの場合も上記予測アルゴリズム等を適用する場合、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αは、過去のシーケンスにおける回り込みキャンセル誤差検出結果又は各ブランチの回り込み特性検出結果を必要な分だけ記憶する機能を有するものとする。なお、上記予測又は予測補間アルゴリズムをダイバーシティ合成用の複素適応フィルタ411C−1と411C−2のタップ係数の算出及び更新にも適用可能であるが、ここでは詳しい説明を省く。
さらに、前記「TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法」及び「TFl,TF2とTF3を同時に制御する方法」の両方に対して、本願発明者らによる特願平11−153430(特開2000−341242号公報)の「回り込みキャンセラ」に記載されている回り込みの複製信号の帯域幅を拡大するアルゴリズムを適用することが可能であり、親局波の受信電力よりも回り込み波の受信電力のほうが大きい負のD/Uの状悪でのキャンセル動作を安定にすることができる。
なお、図8では、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αから回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αへ複素数の周波数特性データを供給するために、実数部用と虚数部用の2系統の信号線を使用している。したがって、M1(i’s,ic)、M2(i’s,ic)、DQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)やH1(is,ic)、H2(is,ic)、M1(is,ic)、M2(is,ic)、DQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)は、時分割でダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αから回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αへ送る必要があるが、実数部用と虚数部用の信号系統の対を更に増やして高速に転送することも可能である。ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αから回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αへの周波数特性データの転送方法として様々な形態が考えられるが、ここでは、より詳しい説明は省く。
〔具体的な構成例2〕
図9は本発明によるダイバーシティ受信用回り込みキャンセラの第2の構成例を示している。図9において、図8に示した構成例1と同じ機能を有するブロックには同じ参照番号を付して示してある。構成例1と構成例2で同じ動作を行う部分に関する説明は省略し、構成例1と構成例2で異なる部分についてのみ説明する。図9に示す第2の構成例では、ブランチ#1の伝送路特性推定部410−1が算出して出力した伝達関数H1(is,ic)、H1(i’s,ic)は2分配され、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412βと回り込みキャンセル用タップ係数生成部423βにそれぞれ供給される。同様にブランチ#2の伝送路特性推定部410−2が算出して出力した伝達関数H2(is,ic)、H2(i’s,ic)も2分配され、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412βと回り込みキャンセル用タップ係数生成部423βの双方に供給される。
ここで、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412βと回り込みキャンセル用タップ係数生成部423βは、前記「TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法」と前記「TFl,TF2とTF3を同時に制御する方法」で異なった動作をするため、別々に説明する。
まず、「TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法」の場合について説明する。ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412βは、入力された伝達関数H1(is,ic)、H2(is,ic)と複素適応フィルタ411C−1、411C−2の前回更新時のタップ係数dq1(iQ−1,iT)、dq2(iQ−1,iT)を算出する過程で算出されたDQ1(iQ−1,ic)、DQ2(iQ−1,ic)を用いて前記(25)、(26)、(29)、(30)、(31)、(32)、(36)、(37)式で表される処理を行い、複素適応フィルタ411C−1と411C−2のタップ係数dq1(iQ,iT)とdq2(iQ,iT)を算出して複素適応フィルタ411C−1と411C−2に供給し、ガードインターバル期間内に更新する。さらに、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412βは、複素適応フィルタ411C−1、411C−2のタップ係数dq1(iQ,iT)、dq2(iQ,iT)を算出する過程で得られるDQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)を回り込みキャンセル用タップ係数生成部423βに供給する。次に、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423βは、入力された伝達関数H1(i’s,ic)、H2(i’s,ic)、H4(i’s,ic)、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412βから供給されるDQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)及び複素適応フィルタ422Cの前回更新時のタップ係数wq(iQ−1,iT)を用いて前記(25)、(26)、(45)、(46)、(48)式の演算を行い、回り込みキャンセル用の複素適応フィルタ422C(TF3)のタップ係数wq(iQ,iT)を算出して、ガードインターバル期間内で更新する。
次に「TFl,TF2とTF3を同時に制御する方法」の場合について説明する。ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412βは、入力された伝達関数H1(is,ic)、H2(is,ic)と複素適応フィルタ411C−1、411C−2の前回更新時のタップ係数dq1(iQ−1,iT)、dq2(iQ−1,iT)を算出する過程で算出したDQ1(iQ−1,ic)、DQ2(iQ−1,ic)を用いて前記(25)、(26)、(29)、(30)、(31)、(32)、(36)、(37)式で表される処理を行い、複素適応フィルタ411C−1と411C−2のタップ係数dq1(iQ,iT)とdq2(iQ,iT)を算出すると共に、複素適応フィルタ411C−1と411C−2のタップ係数dq1(iQ,iT)、dq2(iQ,iT)を算出する過程で算出したM1(is,ic)、M2(is,ic)、DQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)を回り込みキャンセル用タップ係数生成部423βに供給する。回り込みキャンセル用タップ係数生成部423βは、入力された伝達関数H1(is,ic)、H2(is,ic)、H4(is,ic)、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412βより供給されたM1(is,ic)、M2(is,ic)、DQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)及び複素適応フィルタ422Cの前回更新時のタップ係数wq(iQ−1、iT)を用いて前記(57)、(63)式で表される処理を行い、複素適応フィルタ422Cのタップ係数wq(iQ,iT)を算出する。そして、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412βは.複素適応フィルタ411C−1と411C−2に、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423βは複素適応フィルタ422Cにそれぞれ算出したタップ係数を供給し、ガードインターバル内において同時に更新する。
すなわち、図8に示す具体的な構成例1との違いは、「TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法」の場合では、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423βが必要とするM1(i’s,ic)とM2(i’s,ic)をダイバーシティ合成用タップ係数生成部412βが供給するのではなく、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423β自身が、伝送路特性推定部410−1及び伝送路特性推定部410−2から直接、伝達関数H1(i’s,ic)、H2(i’s,ic)を入力すると共に、前記(25)、(26)式に示す演算を行い算出する点であり、「TF1,TF2とTF3を同時に制御する方法」では、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423βが必要とする伝達関数H1(is,ic)とH2(is,ic)をダイバーシティ合成用タップ係数生成部412βが供給するのではなく、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423β自身が、伝送路特性推定部410−1及び伝送路特性推定部410−2から直接、供給を受ける点にある。
〔具体的な構成例3〕
図10は本発明によるダイバーシティ受信用回り込みキャンセラの第3の構成例を示している。図10において、図8に示した構成例1及び図9に示した構成例2と同じ機能を有するブロックには同じ参照番号を付して示してある。構成例1及び構成例2と同じ動作を行う部分に関する説明は省略し、構成例1及び構成例2と構成例3で異なる部分についてのみ説明する。図10に示す第3の構成例では、ダイバーシティ合成用の複素適応フィルタ411C−1(TFl)、411C−2(TF2)のタップ係数dq1(iQ,iT)、dq2(iQ,iT)と、回り込みキャンセル用の複素適応フィルタ422C(TF3)のタップ係数wq(iQ,iT)を別々のタップ係数生成部で作成するのではなく、ダイバーシティ合成用及び回り込みキャンセル用タップ係数生成部436の1つの処理ブロックで3つの複素適応フィルタ(411C−1、411C−2、422C)のタップ係数を生成して、各複素適応フィルタヘ供給して更新することを特徴としている。この構成の利点は、1つのタップ係数生成部で全ての適応フィルタのタップ係数を生成するため、1つのタップ係数生成部から他のタップ係数生成部へ、伝達関数や周波数特性データなどを供給する必要がないことにある。ただし、全ての適応フィルタのタップ係数を1つの処理ブロックで生成するため、より高速な回路動作が要求される。
次に、ダイバーシティ合成用及び回り込みキャンセル用タップ係数生成部436の動作について説明する。ダイバーシティ合成用及び回り込みキャンセル用タップ係数生成部436の動作は、前記「TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法」と前記「TFl,TF2とTF3を同時に制御する方法」で異なるため、各々について説明する。
最初に、「TFl,TF2とTF3を交互に制御する方法」の場合について説明する。この方法ではダイバーシティ合成用及び回り込みキャンセル用タップ係数生成部436は、まず、入力された伝達関数H1(is,ic)、H2(is,ic)と複素適応フィルタ411C−1、411C−2の前回更新時のタップ係数dq1(iQ−1,iT)、dq2(iQ−1,iT)を算出する過程で算出されたDQ1(iQ−1,ic)、DQ2(iQ−1,ic)を用いて、前記(25)、(26)、(29)、(30)、(31)、(32)、(36)、(37)式で表される処理を行い、複素適応フィルタ411C−1と411C−2のタップ係数dq1(iQ,iT)とdq2(iQ,iT)を算出して、複素適応フィルタ411C−1と411C−2に供給し、ガードインターバル期間内に更新する。続いて、入力された伝達関数H1(i’s,ic)とH2(i’s,ic)を用いて前記(25)、(26)式で表される処理を行い、M1(i’s,ic)、M2(i’s,ic)を算出すると共に、入力された伝達関数H4(i’s,ic)、タップ係数dq1(iQ,iT)、dq2(iQ,iT)を算出する過程で得られたDQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)及び複素適応フィルタ422Cの前回更新時のタップ係数wq(iQ−1,iT)をもとに前記(45)、(46)、(48)式で示される演算を行って、複素適応フィルタ422Cのタップ係数wq(iQ,iT)を算出して供給し、ガードインターバル内で更新する。
次に「TFl,TF2とTF3を同時に制御する方法」の場合について説明する。この方法では、ダイバーシティ合成用及び回り込みキャンセル用タップ係数生成部436は、入力された伝達関数H1(is,ic)、H2(is,ic)と複素適応フィルタ411C−1、411C−2の前回更新時のタップ係数dq1(iQ−1,iT)、dq2(iQ−1,iT)を算出する過程で算出されたDQ1(iQ−1,ic)、DQ2(iQ−1,ic)を用いて前記(25)、(26)、(29)、(30)、(31)、(32)、(36)、(37)式で表される処理を行い、複素適応フィルタ411C−1と411C−2のタップ係数dq1(iQ,iT)とdq2(iQ,iT)を算出すると共に、入力された伝達関数Hl(is,ic)、H2(is,ic)、H4(is,ic)、複素適応フィルタ411C−1と411C−2のタップ係数dq1(iQ,iT)、dq2(iQ,iT)を算出する過程で算出したM1(is,ic)、M2(is,ic)、DQ1(iQ,ic)、DQ2(iQ,ic)及び複素適応フィルタ422Cの前回更新時のタップ係数wq(iQ−1,iT)を用いて前記(57)、(63)式で表される処理を行い、複素適応フィルタ422Cのタップ係数wq(iQ,iT)を算出する。そして、複素適応フィルタ411C−1、411C−2、422Cに算出したそれぞれのタップ係数を供給し、ガードインターバル内において同時に更新する。
また、ダイバーシティ合成用及び回り込みキャンセル用タップ係数生成部436は、構成例1のダィバーシティ合成用タップ係数生成部412α及び構成例2のダイバーシティ合成用タップ係数生成部412βと同様に、受信変換部3α−1、3α−2及びAGC増幅器44−1、44−2より、AGC増幅における利得制御情報を入力して、複素通応フィルタ411C−1、411C−2のタップ係数dq1(iQ,iT)、dq2(iQ,iT)の生成に利用する。
〔具体的な構成例4〕
図11は本発明によるダイバーシティ受信用回り込みキャンセラの第4の構成例を示している。図11において、図8に示した構成例1、図9に示した構成例2及び図10に示した構成例3の中の処理ブロックと同じ機能を有する処理ブロックには同じ参照番号を付して示してある。図11に示す構成例4は、図8に示した構成例1とAFCによる周波数誤差の補正の方法が異なる。構成例1と同じ動作を行う部分に関する説明は省略し、構成例1と構成例4で異なる部分について説明する。図11に示す第4の構成例では、入力のBPF(41−1、41−2)からA/D変換器(45−1、45−2)まで構成例1と同じ装置構成で、同じ処理が行われる。
ブランチ#1のA/D変換器45−1から出力されたIF信号は直交復調器46D2−1に、ブランチ#2のA/D変換器45−2から出力されたIF信号は直交復調器46D2−2にそれぞれ入力される。ブランチ#1の直交復調器46D2−1とブランチ#2の直交復調器46D2−2は、NCO(数値制御発振器)432から供給されたI、Q等価ベースバンド形式のローカル信号を用いて、入力された各IF信号を、サンプリング周波数がFFTクロック周波数の4倍のI、Q等価ベースバンド信号に変換して、それぞれ出力する。直交復調器46D2−1、46D2−2の構成を図15(b)に示す。直交復調器46D2−1、46D2−2は、入力されたデジタルのI、Qローカル信号を用いて、入力されたデジタルIF信号をI、Q等価ベースバンド信号に変換するデジタル処理型の直交復調器である。
ブランチ#1の直交復調器46D2−1から出力されたI、Q信号は、それぞれLPF47DI−1、47DQ−1に入力される。LPF47DI−1、47DQ−1は、入力されたI、Q信号に含まれる直交復調の際に生じたイメージ成分を除去すると共に、後段の間引き処理において折り返し歪が生じないように不要な信号成分を除去して出力する。LPF47DI−1、47DQ−1から出力されたI、Q信号は間引き回路48I−1、48Q−1(間引き率は4:1)に入力される。間引き回路48I−1、48Q−1は、入力されたI、Q信号に対して間引き処理を行い、そのサンプリング周波数をFFTクロック周波数と同じ周波数に変換して出力する。
また、ブランチ#2の直交復調器46D2−2から出力されたI、Q信号は、それぞれLPF47DI−2、47DQ−2に入力される。LPF47DI−2、47DQ−2は、入力されたI、Q信号に含まれる直交復調の際に生じたイメージ成分を除去すると共に、後段の間引き処理において折り返し歪が生じないように不要な信号成分を除去して出力する。LPF47DI−2、47DQ−2から出力されたI、Q信号は間引き回路48I−2、48Q−2(間引き率は4:1)に入力される。間引き回路48I−2、48Q−2は、入力されたI、Q信号に対して間引き処理を行い、そのサンプリング周波数をFFTクロック周波数と同じ周波数に変換して出力する。
ブランチ#1の間引き回路48I−1、48Q−1から出力されたI、Q信号はそれぞれ2分配される。2分配されたI、Q信号の一方は、さらに2分配されて、TFlに相当する複素適応フィルタ411C−1と伝送路特性推定部410−1に供給される。2分配されたI、Q信号のもう一方も、さらに2分配されてタイミング再生部415とAFC部416D2にそれぞれ供給される。
ブランチ#2の間引き回路48I−2、48Q−2から出力されたI、Q信号はそれぞれ2分配される。2分配されたI、Q信号の一方は、さらに2分配されて、TF2に相当する複素適応フィルタ411C−2と伝送路特性推定部410−2に供給される。2分配されたI、Q信号のもう一方も、さらに2分配されてタイミング再生部415とAFC部416D2にそれぞれ供給される。
タイミング再生部415は、前記構成例1、2、3と同様に、入力されたブランチ#1及びブランチ#2からのI、Q信号よりFFTクロック信号、シンボルクロック信号、FFT窓タイミング信号など、装置を駆動させるために必要な各種タイミング信号を再生及び生成すると共に、当該タイミング信号を必要とする各部へ供給する。
AFC部416D2は、入力されたブランチ#1及びブランチ#2からのI、Q信号より周波数離調量を検出し、その検出した周波数離調量に基づいてNCO(数値制御発振器)432を制御するための周波数制御信号をNCO432に供給する。前記構成例1のAFC部416D1は、検出した周波数離調量△fに基づき、離調周波数△fと同じ周波数の再生キャリア信号(I、Q信号)を生成して出力する機能を有するが、構成例4のAFC部416D2は、NCO432を制御するための周波数制御信号のみを出力し、再生キャリア信号自体は直接に生成しない点が異なる。
NCO432は、ブランチ#1の直交復調器46D2−1及びブランチ#2の直交復調器46D2−2が必要とする、周波数がOFDM信号のFFTクロック周波数と等しいローカル信号(I、Q信号)を生成して、直交復調器46D2−1及び直交復調器46D2−2に供給する。さらに、NCO432はAFC部416D2が検出した離調周波数△fがゼロになるように、AFC部416D2からの周波数制御信号に基づき、生成するローカル信号の周波数を調整する。
NCO432から出力されたローカル信号(I、Q信号)は3分配される。3分配されたローカル信号の1つは、ブランチ#1の直交復調器46D2−1に、1つはブランチ#2の直交復調器46D2−2に、そして残りの1つは周波数極性反転部417を経て直交変調器427D2にそれぞれ供給される。
構成例4において、複素適応フィルタ411C−1、411C−2以降、LPF420I、420Qまでの処理、及び伝送路特性推定部410−1、410−2以降、適応フィルタのTFl、TF2、TF3のそれぞれのタップ係数を作成し、各適応フィルタに供給するまでの処理は、構成例1と同じであるため説明を省く。
LPF420I、420Qから出力される帯域制限後のI、Q信号は3分配され、ゼロ内挿によるアップサンプル回路425I、425Q、回り込みキャンセル用FIRフィルタTF3に相当する複素適応フィルタ422C及び伝送路特性推定部421にそれぞれ供給される。複素適応フィルタ422C及び伝送路特性推定部421の動作は構成例1と同じである。
アップサンプル回路425I、425Qに入力されたI、Q信号は、ゼロを内挿することによりそのサンプリング周波数を4倍に変換された後に出力される。アップサンプル回路425I、425Qから出力されたI、Q信号はLPF426DI、426DQにそれぞれ入力される。
LPF426DI、426DQに入力されたアップサンプル後のI、Q信号は、アップサンプルによって生じた折り返し成分を除去することで補間処理されて出力される。
LPF426DI、426DQから出力された補間処理済みのI、Q信号は直交変調器427D2に入力される。直交変調器427D2は、NCO432から分配、供給されたローカル信号(I、Q信号)を用いて、入力されたI、Q信号を中心周波数が第2IF周波数のデジタルIF信号に変換して出力する。直交変調器427D2の構成を図16(b)に示す。直交変調器427D2は入力されたデジタルのI、Qローカル信号を用いて、入力されたI、Q等価ベースバンド信号をデジタルIF信号に変換するデジタル処理型の直交変調器である。直交変調器427D2以降の処理は構成例1と同じなので説明を省略する。また、構成例4に対して、構成例2に示したダイバーシティ合成用タップ係数生成部と回り込みキャンセル用タップ係数生成部の構成を適用することが可能なこと及び構成例3に示したダイバーシティ合成用及び回り込みキャンセル用タップ係数生成部の構成を適用することが可能なことはいずれも明白である。
〔具体的な構成例5〕
図12は本発明によるダイバーシティ受信用回り込みキャンセラの第5の構成例を示している。図12において、図8に示した構成例1、図9に示した構成例2、図10に示した構成例3、図11に示した構成例4の中の処理ブロックと同じ機能を有する処理ブロックには同じ参照番号を付して示してある。これまで、説明してきた構成例1〜4は、いずれも直交変復調処理をデジタル回路で行う構成であったのに対し、構成例5は、直交変復調をアナログ回路で行うことを特長としている。以下、その動作について説明する。
入力された受信変換部3α−1、3α−2からのIF帯の受信信号は、それぞれ、BPF41−1、41−2(中心周波数=37.15MHz、通過帯域幅:5.6MHz)に供給される。BPF41−1、41−2は、それぞれ入力されたIF信号の帯域外の不要な成分を除去して出力する。
BPF41−1、41−2から出力された各ブランチのIF信号は、それぞれAGC増幅器44−1、42−2に入力される。AGC増幅器44−1、44−2は、後段の直交復調器やA/D変換器の入力信号が適正なレベルになるように、それぞれ入力された信号のレベル調整を行なって出力する。
また、AGC増幅器44−1、44−2は、AGC増幅によるレベル制御量に関する情報を、それぞれダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αに供給する。
AGC増幅器44−1、44−2から出力されたレベル調整済みのIF信号は、直交復調器46A−1、46A−2にそれぞれ入力される。直交復調器46A−1、46A−2は、分配器414から供給されたローカル信号を使用し、入力されたレベル調整済みのIF信号をそれぞれ直交復調し、I、Q等価ベースバンド信号に変換して出力する。直交復調器46A−1、46A−2の構成を図15(C)に示す。直交復調器46A−1、46A−2は、入力されたアナログのローカル信号を用いて、入力されたアナログIF信号をアナログのI、Q等価ベースバンド信号に変換するアナログ処理型の直交復調器とする。
ブランチ#1の直交復調器46A−1から出力されたI、Q信号は、それぞれLPF47AI−1、47AQ−1に入力される。LPF47AI−1、47AQ−1は、入力されたI、Q信号に含まれる直交復調の際に生じたイメージ成分を除去すると共に、後段のA/D変換処理において折り返し歪が生じないように、不要な信号成分を除去して出力する。LPF47AI−1、47AQ−1から出力されたI、Q信号は、A/D変換器45I−1、45Q−1にそれぞれ入力される。
A/D変換器45I−1、45Q−1は、入力されたアナログのI、Q信号をそれぞれA/D変換してデジタルのI、Q信号に変換して出力する。A/D変換器45I−1、45Q−1のサンプリング周波数は、FFTクロック周波数(512/63=8.127MHz)と同じとする。
A/D変換器45I−1、45Q−1から出力されたデジタルI、Q信号は、それぞれ4分配され、複素適応フィルタ411C−1、伝送路特性推定部410−1、タイミング再生部415、AFC部416Aに供給される。
ブランチ#2の直交復調器46A−2から出力されたI、Q信号は、それぞれLPF47AI−2、47AQ−2に入力される。LPF47AI−2、47AQ−2は、入力されたI、Q信号に含まれる直交復調の際に生じたイメージ成分を除去すると共に、後段のA/D変換処理において折り返し歪が生じないように不要な信号成分を除去して出力する。LPF47AI−2、47AQ−2から出力されたI、Q信号は、A/D変換器45I−2、45Q−2にそれぞれ入力される。
A/D変換器45I−2、45Q−2は、入力されたアナログのI、Q信号をそれぞれA/D変換してデジタルのI、Q信号に変換して出力する。A/D変換器45I−2、45Q−2のサンプリング周波数は、FFTクロック周波数(512/63=8.127MHz)と同じとする。
A/D変換器45I−2、45Q−2から出力されたデジタルI、Q信号は、それぞれ4分配され、複素適応フィルタ411C−2、伝送路特性推定部410−2、タイミング再生部415、AFC部416Aに供給される。
タイミング再生部415は、ブランチ#1のA/D変換器45I−1、45Q−1及びブランチ#2のA/D変換器45I−2、45Q−2からそれぞれ供給されたI、Q信号よりFFTクロック信号、シンボルクロック信号、FFT窓タイミング信号など、装置を駆動させるために必要な各種タイミング信号を再生及び生成すると共に、当該タイミング信号を必要とする各部へ供給する。
AFC部416Aは、ブランチ#1のA/D変換器45I−1、45Q−1及びブランチ#2のA/D変換器45I−2、45Q−2からそれぞれ供給されたI、Q信号より周波数離調量を検出して、VCOやVCXO等で構成されたローカル信号発生器413Vの発振周波数を制御するための制御信号を生成して出力する。
AFC部416Aから出力された制御信号は、ローカル信号発生器413Vの発振周波数制御端子に供給される。ローカル信号発生器413Vは、ブランチ#1の直交復調器46A−1とブランチ#2の直交復調器46A−2が必要とする、周波数が受信変換部3α−1、3α−2から供給される入力IF信号の中心周波数と等しいアナログのローカル信号を発生させると共に、AFC部416Aから入力される制御信号に応じて、発生させるローカル信号の周波数を調整する。ローカル信号発生器413Vから出力されたローカル信号は分配器414に入力される。分配器414は入力されたローカル信号を3分配して出力する。
分配器414から出力された3つのローカル信号は、直交復調器46A−1、46A−2及び直交変調器427Aにそれぞれ供給される。
構成例5において、複素適応フィルタ411C−1、411C−2以降、LPF420I、420Qまでの処理、及び伝送路特性推定部410−1、410−2以降、適応フィルタTFl、TF2、TF3のそれぞれのタップ係数を作成し、各適応フィルタに供給するまでの処理は、構成例1と同じであるため説明を省く。
LPF420I、420Qから出力される帯域制限後のI、Q信号は3分配され、D/A変換器428I、428Q、複素適応フィルタ422C及び伝送路特性推定部421にそれぞれ供給される。複素適応フィルタ422C及び伝送路特性推定部421の動作は構成例1と同じである。
D/A変換器428I、428Qは、供給された帯域制限済みのデジタルI、Q信号を、アナログI、Q信号に変換して出力する。D/A変換器428I、428Qから出力されたアナログI、Q信号はLPF426AI、426AQにそれぞれ入力される。
LPF426AI、426AQは、入力されたI、Q信号の補間処理を行って、D/A変換後のアナログI、Q信号に残る折り返し成分を除去し、基本波成分のみを抽出して出力する。
LPF426AI、426AQから出力された補間処理済みのI、Q信号は、直交変調器427Aに入力される。直交変調器427Aは、分配器414から供給されたローカル信号を用いて直交変調を行い、入力されたI、Q信号を中心周波数が受信変換部3α−1、3α−2から供給される入力IF信号の中心周波数と同じIF信号に変換して出力する。直交変調器427Aの構成を図16(C)に示す。
直交変調器427Aは、入力されたアナログのローカル信号を用いて、入力されたアナログのI、Q等価べースバンド信号をアナログのIF信号に変換するアナログ処理型の直交変調器である。
直交変調器427Aから出力されたIF信号は、BPF429に供給される。BPF429は、入力されたIF信号に含まれる帯域外の不要な成分を除去して出力する。BPF429から出力されたIF信号は、ダイバーシティ受信用回り込みキャンセラの出力として送信変換部5αへ供給される。
また、構成例5に対して、構成例2に示したダイバーシティ合成用タップ係数生成部と回り込みキャンセル用タップ係数生成部の構成を適用することが可能なこと、及び構成例3に示したダイバーシティ合成用及び回り込みキャンセル用タップ係数生成部の構成を適用することが可能なことはいずれも明白である。
〔具体的な構成例6〕
図13は本発明によるダイバーシティ受信用回り込みキャンセラの第6の構成例を示している。図13において、図8に示した構成例1、図9に示した構成例2、図10に示した構成例3、図11に示した構成例4及び図12に示した構成例5の中の処理ブロックと同じ機能を有する処理ブロックには同じ参照番号を付して示してある。これまで説明してきた構成例1〜5は、ダイバーシティ合成及び回り込みのキャンセル処理をI、Q等価ベースバンド信号の領域において行うのに対し、構成例6は、IF信号の領域で行うことを特長としている。以下、その動作について説明する。図13に示す第6の構成例では、入力のBPF(41−1、41−2)からA/D変換器(45−1、45−2)まで構成例1と同じ装置構成で、同じ処理が行われる(ブランチ#1はBPF41−1,D/C42−1,BPF43−1,AGC増幅器44−1,A/D変換器45−1、ブランチ#2はBPF41−2,D/C42−2,BPF43−2,AGC増幅器44−2,A/D変換器45−2)。
ブランチ#1のA/D変換器45−1から出力されたIF信号は2分配されて、適応フィルタ411−1と直交復調器46Dl−1にそれぞれ入力される。直交復調器46Dl−1、LPF47DI−1、47DQ−1、間引き回路48I−1、48Q−1の動作は構成例1と同じである。間引き回路48I−1、48Q−1から出力されたI、Q信号は3分配されて、伝送路特性推定部410−1、タイミング再生部415、AFC部416Aにそれぞれ供給される。
ブランチ#2のA/D変換器45−2から出力されたIF信号は2分配されて、適応フィルタ411−2と直交復調器46Dl−2にそれぞれ入力される。直交復調器46Dl−2、LPF47DI−2、47DQ−2、間引き回路48I−2、48Q−2の動作は構成例1と同じである。間引き回路48I−2、48Q−2から出力されたI、Q信号は3分配されて、伝送路特性推定部410−2、タイミング再生部415、AFC部416Aにそれぞれ供給される。
伝送路特性推定部410−1、410−2の動作は構成例1と同じである。ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412γの動作は、構成例1におけるダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αの動作と大部分は同じであるが、以下の点で異なる。すなわち、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αは、I、Q等価ベースバンド信号に対する複素適応フィルタ411C−1、411C−2用の複素数のタップ係数をそれぞれ作成するのに対し、構成例6のダイバーシティ合成用タップ係数生成部412γでは、IF信号に対する適応フィルタ411−1、411−2用の実数のタップ係数を作成する必要があることである。したがって、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412γは、まず、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412αと同じ動作で複素数のタップ係数を作成した後、タップ係数の周波数変換及び実数化を行なって適応フィルタ411−1,411−2に供給する。タップ係数の周波数変換及び実数化の処理の内容は、すでに多くの文献、書籍等で紹介されているためここでは説明を省く。なお、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412γが回り込みキャンセル用タップ係数生成部423γに供給する各種伝達関数や周波数特性は、複素数の形式でよい。
伝送路特性推定部410−1、410−2及びタイミング再生部415の動作は構成例1と同じであり、AFC部416Aの動作は構成例5と同じである。AFC部416Aから出力されたアナログの発振周波数制御信号は、ローカル信号発生器413Vの発振周波数制御端子に供給される。ローカル信号発生器413Vは構成例5と同様にVCOやVCXO等で構成される。ローカル信号発生器413Vは、ブランチ#1のD/C42−1とブランチ#2のD/C42−2が必要とするローカル信号を発生させると共に、AFC部416Aから入力される発振周波数制御信号に応じて、発生させるローカル信号の周波数を調整する。ローカル信号発生器413Vから出力されたローカル信号は分配器414に入力される。分配器414は入力されたローカル信号を3分配して出力する。分配器414から出力された3つのローカル信号はD/C42−1、D/C42−2及びU/C430にそれぞれ供給される。
ブランチ#1の適応フィルタ411−1は、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412γから供給されたタップ係数を用いて、A/D変換器45−1から供給されたIF信号に畳み込み演算を行い、ブランチ#2よりの信号と最大比合成が実現されるよう周波数領域での重み付け処理を実現する。
同様にブランチ#2の適応フィルタ411−2は、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412γから供給されたタップ係数を用いて、A/D変換器45−2から供給されたIF信号に畳み込み演算を行い、周波数領域での重み付け処理を実現する。
適応フィルタ411−1と411−2は入出力信号もタップ係数も実数形式(複素数ではない)のトランスバーサル型のFIRフィルタで構成される。
ブランチ#1の適応フィルタ411−1から出力された周波数領域での重み付け処理後のIF信号は加算器418の被加算信号入力端子に供給される。一方、ブランチ#2の適応フィルタ411−2から出力された周波数領域での重み付け処理後のIF信号は加算器418のもう一方の被加算信号入力端子に供給される。加算器418は、被加算信号入力端子に供給されたブランチ#1とブランチ#2のIF信号をそれぞれ加算合成して出力する。
加算器418から出力された加算合成後のIF信号は回り込みキャンセルのための減算器419の被減算信号入力端子に供給される。一方、減算器419の減算信号入力端子には、回り込みの複製信号を生成するための適応フィルタ422から出力されるIF信号が入力される。
減算器419は、被減算信号入力端子に供給されたダイバーシティ合成後のIF信号から、減算信号入力端子に供給された適応フィルタ422の出力信号を減算する処理を行なって出力する。
減算器419の減算出力端子から出力された回り込み波の複製信号を差し引いた後のIF信号はBPF420に入力される。BPF420に入力された回り込み波除去後のIF信号は帯域制限された後に出力される。構成例1〜5と同様に、BPF420の通過帯域は、希望波成分を減衰なく通過させると同時に回り込み伝搬路とダイバーシティ受信用回り込みキャンセラを含む中継装置の本線信号経路すべての中で最も帯域幅を狭く設定する必要がある。BPF420から出力された帯域制限後のIF信号は3分配され、適応フィルタ422、直交復調器433D及びD/A変換器428にそれぞれ供給される。
直交復調器433Dは、供給されたIF信号を、サンプリング周波数がFFTクロック周波数の4倍のI、Q等価ベースバンド信号に変換して出力する。直交復調器433Dから出力されたI、Q信号は、LPF434DI、434DQにそれぞれ入力される。
LPF434DI、434DQは、入力されたI、Q信号に含まれる直交復調の際に生じたイメージ成分を除去すると共に、後段の間引き処理において折り返し歪が生じないように不要な信号成分を除去して出力する。
LPF434DI、434DQから出力されたI、Q信号は間引き回路435I、435Q(間引き率は4:1)にそれぞれ入力される。
間引き回路435I、435Qは、入力されたI、Q信号に対して間引き処理を行い、そのサンプリング周波数をFFTクロック周波数と同じ周波数に変換して出力する。間引き回路435I、435Qから出力されたI、Q信号は、伝送路特性推定部421に入力される。
伝送路特性推定部421の動作は、構成例1と同じである。回り込みキャンセル用タップ係数生成部423γの動作は、構成例1における回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αの動作と大部分は同じであるが、以下の点で異なる。すなわち、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αはI、Q等価べ一スバンド信号に対する複素適応フィルタ422C用の複素数のタップ係数を作成するのに対し、構成例6の回り込みキャンセル用タップ係数生成部423γでは、IF信号に対する適応フィルタ422用の実数のタップ係数を作成する必要があることである。したがって、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423γは、まず、構成例1における回り込みキャンセル用タップ係数生成部423αと同じ動作で複素数のタップ係数を作成した後、タップ係数の周波数変換及び実数化を行なって適応フィルタ422に供給する。
適応フィルタ422は、回り込みの複製信号を生成するため、回り込みキャンセル用タップ係数生成部423γから供給された実数のタップ係数を用いて、BPF420から供給されたIF信号に畳み込み演算を行なって出力する。適応フィルタ422から出力されたIF信号は、減算器419の減算信号入力端子に供給される。
D/A変換器428は、BPF420から供給されたデジタルIF信号をアナログIF信号に変換して出力する。D/A変換器428から出力されたアナログIF信号はBPF429に供給される。
BPF429以降(BPF429、U/C430、BPF431)の構成及び処理は構成例1と同じである。
また、構成例6に対して、構成例2に示したダイバーシティ合成用タップ係数生成部と回り込みキャンセル用タップ係数生成部の構成を適用することが可能なこと、及び構成例3に示したダイバーシティ合成用及び回り込みキャンセル用タップ係数生成部の構成を適用することが可能なことはいずれも明白である。
〔具体的な構成例7〕
図14は本発明によるダイバーシティ受信用回り込みキャンセラの第7の構成例を示している。図14において、図8に示した構成例1、図9に示した構成例2、図10に示した構成例3、図11に示した構成例4、図12に示した構成例5及び図13に示した構成例6の中の処理ブロックと同じ機能を有する処理ブロックには同じ参照番号を付して示してある。これまで説明してきた構成例1〜6は、図7に示すダイバーシティ受信用回り込みキャンセラを適用したSFN放送波中継局全体の構成例における、ダイバーシティ受信用回り込みキャンセラ4の具体的な構成を示したものである。一方、図14に示す構成例7は、ダイバーシティ受信用回り込みキャンセラにおけるAFC機能を、SFN放送波中継局システムの中の受信変換や送信変換を含めた構成で実現するものである。また、構成例7は、図13に示した構成例6と同様に、ダイバーシティ合成及び回り込みのキャンセルの処理をIF信号の領域で行う形式としている。以下、その動作について説明する。
受信アンテナ1−1と1−2より出力された受信信号はフイーダーケーブルを通して、それぞれ受信フィルタ2−1と2−2に入力され、希望波の周波数帯域外の不要な信号成分が除去される。
受信フィルタ2−1と2−2の出力信号は、それぞれ受信変換部3β−1、3β−2に入力され、そのレベルが一定になるようにAGC増幅された後、周波数変換されてIF信号となり、それぞれ出力される。このIF信号の中心周波数は、受信変換部3α−1、3α−2とは異なり、OFDM信号のFFTクロック周波数と等しい8.127MHz(512/63MHz)とする。一方、ローカル信号発生器9Vで生成されたローカル信号は分配器10に入力される。分配器10は入力されたローカル信号を3分配して出力する。分配器10から出力された3つのローカル信号は、受信変換部3β−1、3β−2及び送信変換部5βにそれぞれ供給される。受信変換部3β−1、3β−2及び送信変換部5βと、受信変換部3α−1、3α−2及び送信変換部5αは、出力あるいは入力するIF信号の中心周波数が異なるため、必要とするローカル信号の周波数も異なる。したがって、ローカル信号発生器9Vとローカル信号発生器9は発振して出力するローカル信号の周波数が異なる。また、ローカル信号発生器9は固定周波数の発振回路で構成されるが、ローカル信号発振器9VはAFC部416Aから供給される発振周波数制御信号に応じて発生させるローカル信号の周波数を変化させるVCOやVCXO等の可変周波数発振回路で構成される。
次に、受信変換部3β−1、3β−2より出力されたIF信号は、BPF43−1、43−2にそれぞれ入力される。また、受信変換部3β−1、3β−2は、AGC増幅における利得制御量に関する情報をそれぞれダイバーシティ合成用タップ係数生成部412γに供給する。
BPF43−1、43−2以降、BPF429まで、及びAFC部416Aまでは、構成例6と同じ構成で同じ処理が行われるため説明を省く。
BPF429から出力されたIF信号は送信変換部5βに供給される。送信変換部5βは、分配器10から供給されたローカル信号を用いて、入力されたIF信号をRF帯に周波数変換し、その周波数を受信信号と同一とした後、一定レベルになるように増幅して出力する。なお、送信変換部5αと送信変換部5βは入力されるIF信号の中心周波数が異なる。
送信変換部5βより出力されたRF信号はPA6に供給される。PA6は所望の出力の送信信号を得るため、入力されたRF信号を電力増幅して出力する。
PA6より出力された送信信号は、送信フィルタ7に入力される。送信フィルタ7に入力された送信信号は帯域外の不要輻射成分が除去される。送信フィルタ7で帯域外の不要な成分が除去されて出力された送信信号は、フィーダーを通して送信アンテナ8に供給され電波となって放射される。
また、構成例7に対して、構成例2に示したダイバーシティ合成用タップ係数生成部と回り込みキャンセル用タップ係数生成部の構成を適用することが可能なこと、及び構成例3に示したダイバーシティ合成用及び回り込みキャンセル用タップ係数生成部の構成を適用することが可能なことはいずれも明白である。
以上、7つの具体的な構成例を示したが、これら7つの構成例の各部を組み合わせたり、パラメータ等を変更したりした、様々な形態の他の実施例が考えられるが、それらはいずれも容易に考えられるため、ここでは説明を省く。
また、上記構成例1〜7では、各ブランチでAGC増幅器は独立に動作する構成になっている。したがって、受信変換部3α−1の入力から伝送路特性推定部410−1までの回路利得と、受信変換部3α−2の入力から伝送路特性推定部410−2までの回路利得は、受信変換部3α−1の入力信号レベルと受信変換部3α−2の入力信号レベルの比に依存して異なった値になる。一方、放送波中継システムで加わる雑音は、受信変換の初段のLNAの熱雑音が支配的であり、親局波のC/Nが十分高ければ、受信信号のC/Nは受信変換の入力信号レベルで決定される。したがって、ダイバーシティ合成用の複素適応フィルタ411C−1、411C−2の特性は、各ブランチの受信信号の周波数振幅特性、すなわち、各ブランチの伝送路特性推定部が出力する伝達関数の振幅(本発明ではM1(is,ic)、M2(is,ic)又はM1(i’s,ic)、M2(i’s,ic)の絶対値)が、それぞれの周波数における信号のC/Nに比例するという仮定のもとに、合成後の信号のC/Nが最も大きくなるように(最大比合成)、それぞれの周波数ごとに決定される。そのために、受信変換の入力から伝送路特性推定部までの間の回路利得が、ブランチごとに異なると所望の合成特性を得ることができないという問題が生じる。そこで、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412α、412β、412γ、及びダイバーシティ合成用及び回り込みキャンセル用タップ係数生成部436は、各ブランチの各AGC増幅器から入力した利得制御情報を元に、所望の合成特性が得られるようにブランチ間の回路利得の差を補正する処理を行うものとする。
図15(a)〜(c)に構成例1〜7で使用した直交復調器の構成を示す。図16(a)〜(c)に同じく構成例1〜7で使用した直交変調器の構成を示す。直交変復調器ともに、よく知られている構成であり、詳しい説明は省く。
構成例1〜7で使用した複素適応フィルタや適応フィルタは、トランスバーサル型のFIRフィルタで構成されているとして説明を行った。トランスバーサル型の適応FIRフィルタに関しては、多くの文献、書物等で紹介されているので、ここでは詳しい説明を省く。また、本発明を具体化する場合において、複素適応フィルタや適応フィルタに使用可能なデジタルフィルタはトランスバーサル型に限定されるものではない。他の形式のデジタルフィルタも使用可能である。
本発明に関する以上の説明は、2ブランチの場合について具体的に行った。nブランチの場合に拡張、適用することは容易であり、具体的な説明は省く。
構成例1〜7に示す具体的な実施例では、信号処理を行う周波帯を低域に移動させるため、又は、一旦IF帯に周波数変換を行う実際の中継装置の構造に適合させるため、周波数変換処理を何度か行う構成となっている。一方、動作原理及び適応フィルタの制御法に関する説明及び数式においては、特に周波数変換の効果を含めていないが、周波数変換処理自体は、スぺクトルや伝達関数の単なる周波数シフトとして扱えるため、これまで説明してきた基本的な考え方に何ら影響を与えるものではなく、詳しい説明は省く。
構成例1〜7に示した実施例において、ダイバーシティ合成用タップ係数生成部412α、412β、412γや回り込みキャンセル用タップ係数生成部423α、423β、423γ、さらにダイバーシティ合成用及び回り込みキャンセル用タップ係数生成部436は、DSP(Digital Signal Processor)やFPGAを用いた専用回路により容易に実現できるため、それ自体の具体的な回路の説明は省く。