JP2005093704A - 面発光レーザおよび光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システム - Google Patents

面発光レーザおよび光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システム Download PDF

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俊一 佐藤
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Abstract

【課題】 実用的な光出力、駆動電圧で動作し、更に酸化によるストレスの問題を低減し信頼性が高いエアギャップ狭窄構造を有する面発光レーザを提供する。
【解決手段】 半導体基板上に、活性層を含む共振器領域と、共振器領域の上下に形成された多層膜反射鏡とが積層構造として積層された垂直共振器型面発光レーザにおいて、積層構造は、メサ形状にメサ部として形成され、さらに、メサ部に設けられたエッチング層をメサ部の側面からサイドエッチングした電流狭窄構造を備えており、前記エッチング層は、多層膜反射鏡を構成する高屈折率層または低屈折率層の厚さよりも薄く、発振光の定在波の節の位置を含むように設けられていることを特徴としている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、面発光レーザおよび光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システムに関する。
近年、インターネットの爆発的普及に見られるように、扱われる情報量が飛躍的に増大しており、今後さらに加速すると考えられる。このため、幹線系のみならず、各家庭やオフィスといった加入者系やLAN(Local Area Network )などのユーザーに近い伝送路、さらには各機器間や機器内の配線へも光ファイバーが導入され、光による大容量情報伝送技術が極めて重要となる。
そして、安価で、距離を気にしないで光ネットワーク,光配線の大容量化を図るためには、光源として面発光レーザ(VCSEL: Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器型面発光半導体レーザ素子)は極めて有望である。面発光レーザは、端面発光型レーザに比べて、低価格,低消費電力,小型であり、2次元集積化に向き、実際にGaAs基板上に形成できる0.85μm帯ではすでに高速LANである1Gbit/sのイーサネットなどで実用化されている。
面発光レーザの電流狭窄構造として、例えば特許文献1に示されているAlAs選択酸化狭窄構造が良く用いられている。これは、所定の大きさのメサを少なくともp−AlAs被選択酸化層の側面を露出させて形成し、側面の現れたAlAsを水蒸気で側面から選択的に酸化してAl電流狭窄部を形成し、電流をAlAs層の非酸化領域のみに狭窄し電流注入部が形成される構造であり、容易に電流狭窄が可能となる。更に、Alの屈折率は、1.6程度と、他の半導体層に比べて低いことから、共振器構造内に横方向の屈折率差が生じ、発振光がメサ中央に閉じ込められるので、素子の効率を向上させることが可能であり、低しきい値電流,高効率等の優れた特性を有することができる。また、単一基本横モード発振を得るためには、狭窄径を小さくし、高次モードに対する回折損失を大きくする必要がある。狭窄径の一辺、又は直径として発振波長の3〜4倍程度まで狭くすることが必要とされている。波長1.3μmの場合で、およそ5μm程度となる。また、酸化狭窄径を小さくすることにより、しきい値電流を低減できる。
しかしながら、発振に寄与する領域が減少するので、高出力が得られにくくなるという問題がある。加えて、電流通路の面積が減少するので素子抵抗が大きくなり、駆動電圧が大きくなるとともに、素子発熱による出力飽和により、更に高出力動作が困難となるという問題がある。
また、例えば特許文献2には、AlAs層を酸化した領域では体積の収縮が発生し、素子にクラック等の欠陥が発生したり、酸化後の工程で素子が壊れてしまったり、素子の信頼性を低下させることが報告されている。
AlAs選択酸化狭窄構造と同様に低しきい値電流で動作させる構造として、エアギャップ狭窄構造がある。これは、メサ構造側面からエッチング層を選択的にエッチングしてエアギャップを形成し、電流を非エッチング領域のみに狭窄する構造である。エアギャップ狭窄構造の従来例としては、例えば非特許文献1に報告されている。半導体多層膜反射鏡(DBR)は、主にAlGaAs/GaAs多層構造から構成されるが、共振器領域に一番近い低屈折率層(媒質内における発振波長の1/4倍の厚さ)をAlAsとしエッチング層として用いている。AlAs層は共振器領域を形成するAl0.5Ga0.5Asクラッド層とGaAsとに挟まれた層となっている。
エアギャップ狭窄構造では、AlAs酸化狭窄構造のように、素子に対して応力をかけることがないため、信頼性の低下を抑制することができると考えられる。
また、従来の選択酸化狭窄構造ではAlの屈折率は1.6程度であるが、エアギャップ狭窄構造とすると、Alの部分を空気,真空等にすることができるので、屈折率は1と小さくなり、共振器構造内の横方向の屈折率差が大きくなり、光閉じ込めが強くなる。
しかしながら、逆に光閉じ込めが強くなることから、単一基本横モード発振を得るためには、選択酸化狭窄構造の場合よりも狭窄径を小さくする必要があるが、この場合には、選択酸化狭窄構造の場合よりも更に高出力が得られにくくなることや、素子抵抗が大きくなり、駆動電圧が大きくなるといった問題が生じる。
米国特許第5,493,577号 特開2000−294872号公報 IEEE Photonics Technology Letters, Vol.8, No.5, (1996) pp.590−592.
本発明は、実用的な光出力、駆動電圧で動作し、更に酸化によるストレスの問題を低減し信頼性が高いエアギャップ狭窄構造を有する面発光レーザおよび光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システムを提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、半導体基板上に、活性層を含む共振器領域と、共振器領域の上下に形成された多層膜反射鏡とが積層構造として積層された垂直共振器型面発光レーザにおいて、積層構造は、メサ形状にメサ部として形成され、さらに、メサ部に設けられたエッチング層をメサ部の側面からサイドエッチングした電流狭窄構造を備えており、前記エッチング層は、多層膜反射鏡を構成する高屈折率層または低屈折率層の厚さよりも薄く、発振光の定在波の節の位置を含むように設けられていることを特徴としている。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の面発光レーザにおいて、前記エッチング層が設けられる定在波の節の位置は、腹の位置となる活性層から数えて3つ目以降の節の位置であることを特徴としている。
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の面発光レーザにおいて、半導体基板はGaAsであり、多層膜反射鏡は主にAlGaAs系材料から構成され、エッチング層は、GaInPAsまたはGaInPまたはGaPAsから構成されていることを特徴としている。
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、エッチング層をエッチングすることで現れた表面にはAlが含まれていないことを特徴としている。
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の面発光レーザにおいて、エッチング層に接する層が、GaAs層であることを特徴としている。
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、前記活性層は、窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだIII−V族混晶半導体で構成されていることを特徴としている。
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の面発光レーザが光源として用いられていることを特徴とする光送信モジュールである。
また、請求項8記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の面発光レーザが光源として用いられていることを特徴とする光送受信モジュールである。
また、請求項9記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の面発光レーザが光源として用いられていることを特徴とする光通信システムである。
請求項1乃至請求項5記載の発明によれば、半導体基板上に、活性層を含む共振器領域と、共振器領域の上下に形成された多層膜反射鏡とが積層構造として積層された垂直共振器型面発光レーザにおいて、積層構造は、メサ形状にメサ部として形成され、さらに、メサ部に設けられたエッチング層をメサ部の側面からサイドエッチングした電流狭窄構造を備えており、前記エッチング層は、多層膜反射鏡を構成する高屈折率層または低屈折率層の厚さよりも薄く、発振光の定在波の節の位置を含むように設けられているので、光の回折損失は小さくなる。従って、光学損失を抑えて、低しきい値動作,高出力動作を得ることができる。更に、AlAs選択酸化狭窄構造のAl電流狭窄層のような大きなストレスの原因が除外されており、高い信頼性が得られる。
また、エアギャップ狭窄部の比誘電率はほぼ1となり、選択酸化狭窄構造のAlに比べて小さくなるので、面発光レーザの寄生容量が低減され、高速動作に有利となる。
特に、請求項2記載の発明では、請求項1記載の面発光レーザにおいて、前記エッチング層が設けられる定在波の節の位置は、腹の位置となる活性層から数えて3つ目以降の節の位置であるので(換言すれば、共振器領域の厚さが1波長分の厚さの場合、エッチング層を共振器領域から数えて2つ目以降の電界強度分布の節の位置に設けてやり、エアギャップ狭窄構造部と活性層との距離を遠ざけることで)、共振器構造内の横方向の実効的な屈折率差を低減することができる。従って、狭窄径を広げることができ、抵抗の増加を抑えるとともに、光学損失を抑えて、低しきい値動作,高出力動作を得ることができる。
また、請求項3記載の発明では、請求項1または請求項2記載の面発光レーザにおいて、半導体基板はGaAsであり、多層膜反射鏡は主にAlGaAs系材料から構成され、エッチング層は、GaInPAsまたはGaInPまたはGaPAsから構成されており、Pを含んだGaInPAs,GaInP,GaPAsは、例えば塩酸系エッチング溶液を用いることで、DBRを構成するAlGaAs系材料に対してエッチングの選択性を持たせることができ、エッチング層として機能させることができる。また、Alを含んでおらず、酸化速度が極めて遅いため、エッチング後にエッチング層端部が大気中等で自然に酸化されることによって生じるストレスの発生を低減できる。これにより、選択酸化狭窄構造で問題であったようなAlの体積収縮によるストレスの影響が更に改善される。その結果、信頼性の高い面発光レーザが得られる。
また、請求項4記載の発明では、エッチング層のエッチング後に現れた表面が大気にさらされても、現れた表面にはAlが含まれていないことで、この部分で酸化されることによって生じるストレスの発生を低減できる。その結果、更に信頼性の高い面発光レーザが得られる。
請求項4の構成は、具体的には、例えば、請求項5のように、エッチング層に接する層を、GaAs層とすることで実現できる。Pを含んだGaInPAs,GaInP,GaPAsは、GaAsに対してもエッチングの選択性を持たせることができるので、AlGaAs系材料との間にGaAsを挿入することで、エッチング層の選択エッチング後にAlを含まないGaAsが表面に現れ、請求項4の構成が満たされることになる。
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、前記活性層は、窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだIII−V族混晶半導体で構成されているので(例えばGaInNAs系材料を活性層にしているので)シリカファイバーの伝送ロスが小さく整合性が良い1.3μm帯,1.55μm帯の波長に対応できる。
また、エアギャップ狭窄構造と組み合わせることで、光ファイバーの伝送損失が小さく、長距離伝送が可能で、低価格,低消費電力,小型であり、温度特性が良く、信頼性の高い面発光レーザを得ることができる。
なお、MOCVD法で形成すると、面発光レーザの多層膜反射鏡(半導体分布ブラッグ反射鏡)の抵抗を低減できるので、低電圧駆動が可能となり、好ましい。これにより、安価で、距離を気にしないで、光ネットワーク,光配線の大容量化を図ることができる。
また、請求項7記載の発明によれば、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の面発光レーザを光源として用いた光送信モジュールであるので、冷却素子が不要となり、低コストであって信頼性が高い光送信モジュールを実現することができる。
また、請求項8記載の発明によれば、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の面発光レーザを光源として用いた光送受信モジュールであるので、冷却素子が不要となり、低コストであって信頼性が高い光送受信モジュールを実現することができる。
また、請求項9記載の発明によれば、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の面発光レーザを光源として用いた光通信システムであるので、冷却素子が不要となり、低コストであって信頼性が高い光ファイバー通信システム,光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本発明は、半導体基板上に、活性層を含む共振器領域と、共振器領域の上下に形成された多層膜反射鏡とが積層構造として積層された垂直共振器型面発光レーザにおいて、積層構造は、メサ形状にメサ部として形成され、さらに、メサ部に設けられたエッチング層をメサ部の側面からサイドエッチングした電流狭窄構造を備えており、前記エッチング層は、多層膜反射鏡を構成する高屈折率層または低屈折率層の厚さよりも薄く、発振光の定在波の節の位置を含むように設けられていることを特徴としている。
従来、エッチング層としては、DBR(半導体分布ブラッグ反射鏡)を構成する低屈折率層または高屈折率層の1層が用いられる場合や、特許第3052552のように活性層を含む共振器領域すべてをエッチング層として構成していた。
しかし、エアギャップ幅が厚くなるほど、共振器構造内の横方向の屈折率差が大きくなり、散乱損失が大きくなるとともに、単一基本横モード発振を得るための狭窄径が狭くなってしまう。また、DBRを構成する低屈折率層または高屈折率層の1層を用いる場合、発振光の定在波の腹の位置を含んでしまうので、光の回折損失が高い構造となっており、低しきい値化,高出力化を阻んでいた。
これに対し、本発明のように、多層膜反射鏡を構成する高屈折率層または低屈折率層の厚さよりも薄く、かつ発振光の定在波の節の位置を含むようにエッチング層を設けることで、光の回折損失は小さくなる。従って、光学損失を抑えて、低しきい値動作,高出力動作を得ることができる。更に、AlAs選択酸化狭窄構造のAl電流狭窄層のような大きなストレスの原因が除外されており、高い信頼性が得られる。また、エアギャップ狭窄部の比誘電率はほぼ1となり、選択酸化狭窄構造のAlに比べて小さくなるので、面発光レーザの寄生容量が低減され、より高速動作が可能な素子が得られる。
上記本発明の面発光レーザにおいて、前記電界強度分布の節の位置(エッチング層が設けられる定在波の節の位置)は、より好ましくは、腹の位置となる活性層から数えて3つ目以降の節の位置であるのが良い。
従来の選択酸化狭窄構造ではAlの屈折率は1.6程度であるが、エアギャップ狭窄構造とすると、Alの部分を空気,真空等にすることができるので、屈折率は1と小さくなり、共振器構造内の横方向の屈折率差が大きくなり、光閉じ込めが強くなる。しかしながら、逆に光閉じ込めが強くなることから、単一基本横モード発振を得るためには、選択酸化狭窄構造の場合よりも狭窄径を小さくする必要がある。これにより、散乱損失が大きくなり、また発光領域が狭くなることによって選択酸化狭窄構造の場合より高出力が得られなかったり、素子抵抗が大きくなり駆動電圧が大きくなるといった問題が生じる。
上記のように、エッチング層を電界強度分布の腹の位置となる活性層から数えて3つ目以降の電界強度分布の節の位置、つまり活性層から5λ/4nより遠い位置に設け、エアギャップ狭窄構造部と活性層との距離を遠ざけることで、共振器構造内の横方向の実効的な屈折率差が低減される。従って、狭窄径を広げることができ、抵抗の増加を抑えるとともに、光学損失を抑えて、低しきい値動作、高出力動作を得ることができる。これにより、抵抗値が選択酸化狭窄構造の場合と同等であって、より一層の低しきい値動作,高出力動作が可能になるとともに、同時にAlAs選択酸化狭窄構造のように大きなストレスの原因が除外されており、高い信頼性も得られる。
また、上記本発明の面発光レーザにおいて、半導体基板はGaAsであり、多層膜反射鏡は主にAlGaAs系材料から構成され、エッチング層はGaInPAsまたはGaInPまたはGaPAsから構成されているのがより好ましい。
すなわち、AlAs層をエッチング層とした場合、AlAs層が極めて活性なため、エッチング後、発光領域に極めて近いAlAs層の端部が室温で酸化されてしまい、完全にはストレスの原因の除外ができていなかった。酸化速度はAl組成に大きく依存しAl組成を下げると遅くなるが、エッチング層を選択的にエッチングするためにはDBRを構成する他のAlGaAsとのAl組成差は大きい方が好ましく、安易にエッチング層のAl組成を下げることはできない。
これに対し、Pを含んだGaInPAs,GaInP,GaPAsは、例えば塩酸系エッチング溶液を用いることで、DBRを構成するAlGaAs系材料に対してエッチングの選択性を持たせることができ、エッチング層として機能させることができ、さらには、Alを含んでおらず、酸化速度が極めて遅いため、エッチング後にエッチング層端部が大気中等で自然に酸化されることによって生じるストレスの発生を低減できる。これにより、選択酸化狭窄構造で問題であったようなAlの体積収縮によるストレスの影響が更に改善される。その結果、信頼性の高い面発光レーザが得られる。
なお、Pを含んだGaInPAs,GaInP,GaPAsは、N,Tl,Sb等の他のIII−V族元素を含んでいる場合もある。
また、上記本発明の面発光レーザにおいて、エッチング層をエッチングすることで現れた表面には、Alが含まれていないことが好ましい。
すなわち、エッチング層のエッチング後に現れた表面にAlが含まれていると、その表面が大気にさらされて室温で酸化されてしまい、新たにこの部分でも酸化によるストレスの問題が生じる。
エッチング層のエッチング後に現れた表面が大気にさらされても、Alを含まない材料となっていることで、この部分で酸化されることによって生じるストレスの発生を低減できる。その結果、更に信頼性の高い面発光レーザが得られる。
これは、例えば、エッチング層に接する層を、GaAs層とすることで実現できる。すなわち、Pを含んだGaInPAs,GaInP,GaPAsは、GaAsに対してもエッチングの選択性を持たせることができるので、AlGaAs系材料との間にGaAsを挿入することで、エッチング層の選択エッチング後にAlを含まないGaAsが表面に現れることになる。
なお、エッチング層のエッチング後に現れる表面の材料のAl組成が小さい場合は問題は低減されるが、エッチング層のエッチング後に現れる表面は、できれば、Alを含まない材料であるのが好ましい。
また、上記本発明の面発光レーザにおいて、活性層は、例えば、窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだIII−V族混晶半導体で構成されている。
安価で、距離を気にしないで、光ネットワーク,光配線の大容量化を図るためには、光源としてシリカファイバーの伝送ロスが小さく整合性の良い1.3μm帯,1.55μm帯の波長が好ましい。
1.3μm帯,1.55μm帯では、従来、InP基板上の材料系が一般的であり、端面発光型レーザでは実績がある。しかし、この従来の長波長帯半導体レーザでは、環境温度が室温から80℃になると動作電流が3倍にも増加する大きな欠点を持っている。従って、冷却素子を使わない低コストシステムを実現するために、温度特性の良好な長波長帯半導体レーザの開発が極めて重要である。温度特性が悪い主な理由は伝導帯バンド不連続が小さいために電子がオーバーフローし易く、これの温度依存性が大きいためである。また、面発光レーザにおいては反射鏡に適した材料がないため高性能化は困難であり、実用レベルの特性が得られていないのが現状である。
最近、GaAs基板上に1.3μm帯を形成できる材料系が注目され、GaInNAs(例えば、特開平6−37355号公報参照)が研究されている。新材料GaInNAsはレーザ特性の温度依存性を極めて小さくすることができる材料として注目されている。GaInNAsは、窒素(N)と他のV族元素を含んだIII−V族混晶半導体である。すなわち、GaInNAsは、GaAsより格子定数が大きいGaInAsに窒素(N)を添加することで格子定数をGaAsに格子整合させることが可能であり、更にバンドギャップエネルギーが小さくなり、1.3μm,1.55μm帯での発光が可能な材料である。また、文献「Jpn. J. Appl. Phys. Vol.35 (1996) pp.1273−1275」では、近藤らにより、GaInNAsのバンドラインナップが計算されている。GaInNAsは、窒素(N)の添加によりバンドギャップエネルギーが小さくなるが、伝導帯と価電子帯ともにエネルギーが下がり、GaInP,AlGaAs、GaAs等のGaAs格子整合系材料に対して伝導帯のバンド不連続が極めて大きくなり、このため、高特性温度半導体レーザが実現できると予想されており、実際に半導体レーザのしきい値電流密度が1kA/cm以下の低い値であって、かつ、環境温度が室温から80℃になっても動作電流がわずか1.3倍にしか増加せず、特性温度が200Kを越える良好な端面型レーザが報告されている(文献「Jpn. J. Appl. Pyys. Vol.39 (2000) pp.3403−3405」を参照)。このため、窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだIII−V族混晶半導体からなる材料は、1.3μm帯,1.55μm帯等の長波長帯面発光レーザの活性層材料として好ましい。また、GaAs基板上に形成できるので、0.85μm帯面発光レーザで実用化されている高性能なAlGaAs系DBRを用いることができる。
従って、本発明のエアギャップ狭窄構造と組み合わせることで、光ファイバーの伝送損失が小さく長距離伝送可能で、低価格,低消費電力,小型であり、温度特性が良く、信頼性の高い面発光レーザを得ることができる。なお、GaInNAs系材料とは、P,Sb,Al等の他のIII−V族元素を含んでいる場合もある。
また、上述した本発明の面発光レーザを光源として用いた光送信モジュールを構築することができる。
上述したような低価格,低消費電力,小型であり、温度特性が良く、信頼性が高い本発明の面発光レーザを用いることによって、冷却素子が不要となり、低コストで信頼性が高い光送信モジュールを実現することができる。
また、上述した本発明の面発光レーザを光源として用いた光送受信モジュールを構築することができる。
上述したような低価格,低消費電力,小型であり、温度特性が良く、信頼性が高い本発明の面発光レーザを用いることによって、冷却素子が不要となり、低コストで信頼性が高い光送受信モジュールを実現することができる。
また、上述した本発明の面発光レーザを光源として用いた光通信システムを構築することができる。
上述したような低価格,低消費電力,小型であり、温度特性が良く、信頼性が高い本発明の面発光レーザを用いることによって、冷却素子が不要となり、低コストで信頼性が高い光ファイバー通信システム,光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
図1は本発明の実施例1のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子(面発光レーザ)を示す図である。また、図2は実施例1に示す面発光レーザのエッチング層周辺の層構成を示す図である。
図1に示すように、この実施例1における面発光型半導体レーザ素子(面発光レーザ)は、3インチの大きさの面方位(100)のn−GaAs基板上に、それぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さでn−AlGa1−xAs(x=0.9)とn−GaAsとを交互に35周期積層した周期構造からなるn−半導体分布ブラッグ反射鏡(下部半導体分布ブラッグ反射鏡:単に下部反射鏡ともいう)が形成されている。
そして、その上に、共振器領域として、アンドープ下部GaAsスペーサ層,3層のGaInNAs井戸層と4層のGaNPAs障壁層からなる多重量子井戸活性層,アンドープ上部GaAsスペーサ層が形成されている。厚さは合計で1λ/nとし、活性層が発振光の定在波の腹の位置となるように形成されている。
そして、その上に、p−半導体分布ブラッグ反射鏡(上部半導体分布ブラッグ反射鏡:単に上部反射鏡ともいう)が形成されている。上部反射鏡は、Cドープのp−AlGa1−xAs(x=0.9)とp−GaAsとをそれぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さで交互に積層した周期構造(例えば、25周期)で構成されている。
なお本実施例では、上部反射鏡中の共振器領域から数えて2ペア目のp−AlGa1−xAs(x=0.9)層部分を、エッチング層となるAlAsを挟んで合計3λ/4n厚さとなるようにしている。より具体的には、図2に示すように、屈折率をnとして、λ/4n−15nmのCドープp−AlGa1−xAs(x=0.9)、Znドープp−AlAsエッチング層30nm、2λ/4n−15nmのCドープp−AlGa1−xAs(x=0.9)とし、GaInPエッチング層が発振光の定在波の節の位置となるようにしている。つまり、エッチング層が設けられる定在波の節の位置は、腹の位置となる活性層から数えて3つ目の節の位置となっている。なお、選択酸化狭窄構造の場合は、腹の位置となる活性層から数えて2つ目の節の位置に設けることが多い。
また、上部反射鏡の最上部のGaAs層は、電極とのコンタクトを取るコンタクト層を兼ねている。
この実施例1では、活性層内の井戸層のIn組成xは33%,窒素組成は1.0%としている。また、井戸層は、厚さが7nmであり、GaAs基板に対して約2.1%の圧縮歪(高歪)を有している。また、GaNPAs障壁層は、N組成0.8%,P組成4%、厚さは20nmとし、GaAs基板に対して0.3%の引張り歪みを有している。
成長方法はMOCVD法で行なった。キャリアガスには、Hを用いた。また、GaInNAs活性層の原料には、TMG(トリメチルガリウム),TMI(トリメチルインジウム),AsH(アルシン)を用い、そして、窒素の原料には、DMHy(ジメチルヒドラジン)を用いた。DMHyは低温で分解するので、600℃以下のような低温成長に適しており、特に低温成長の必要な歪みの大きい量子井戸層を成長する場合に好ましい原料である。この実施例1のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の活性層のように歪が大きい場合は、非平衡となる低温成長が好ましい。この実施例1では、GaInNAs層は550℃で成長させた。
この実施例1では、所定の大きさのメサを少なくともp−AlAsエッチング層の側面を露出させて形成し、Al組成が大きいほどエッチング速度が大きくなるような硫酸系エッチング液で、側面の現れたAlAsを側面からエッチングしエアギャップ狭窄部を形成した。そして、SiNからなる保護膜を形成し、次にポリイミドでエッチング部を埋め込んで平坦化し、pコンタクト部と光出射部のある上部反射鏡上のポリイミドを除去し、pコンタクト層上の光出射部以外にp側電極を形成し、また、基板の裏面にn側電極を形成した。
作製した面発光レーザの発振波長は約1.3μmであった。すなわち、GaInNAsを活性層に用いたので、GaAs基板上に長波長帯の面発光レーザを形成できた。
また、障壁層は引張り歪み組成となっており、大きな圧縮歪みを有する活性層を用いていても、結晶欠陥が発生することなく井戸数を増やすことができ、高出力が得られ、また、歪みの低減効果により素子の信頼性が向上した。
また、エッチング層の一部をエッチング除去し電流狭さくを行ったので、電流を非エッチング領域のみに狭窄でき、活性層に近づけて形成することで電流の広がりを抑えられ、大気に触れない微小領域に効率良くキャリアを閉じ込めることができる。更に、エアギャップ狭窄部分は、空気,真空等で構成され屈折率は1と小さくなり、共振器構造内の横方向の屈折率差が大きくなり、キャリアの閉じ込められた微小領域に効率良く光も閉じ込めることができ、効率が良くなり、しきい値電流は低減される。また、容易に電流狭さく構造を形成できることから、製造コストを低減できる。
また、本発明のように、エッチング層として、多層膜反射鏡を構成する高屈折率層または低屈折率層の厚さよりも薄く、かつ発振光の定在波の節の位置を含むように形成することで、光の回折損失は小さくなる。従って、光学損失が抑えられ、更に低しきい値動作,高出力動作を得ることができる。
更にAlAs選択酸化狭窄構造のような大きなストレスの原因が除外されており、更に高い信頼性が得られる。
また、エアギャップ狭窄部の比誘電率はほぼ1となり、選択酸化狭窄構造のAlに比べて小さくなるので、面発光レーザの寄生容量が低減され、高速動作に有利となる。
また、従来の選択酸化狭窄構造ではAlの屈折率は1.6程度であるが、エアギャップ狭窄構造とするとエアギャップ部分を空気,真空等にすることができるので、屈折率は1と小さくなり、共振器構造内の横方向の屈折率差が大きくなり、光閉じ込めが強くなる。
しかしながら、逆に光閉じ込めが強くなることから、単一基本横モード発振を得るためには、選択酸化狭窄構造の場合より狭窄径を小さくする必要があるが、この場合には、散乱損失が大きくなることや発光領域が狭くなることによって選択酸化狭窄構造の場合よりも更に高出力が得られにくくなることや、素子抵抗が大きくなり、駆動電圧が大きくなるといった問題が生じる。
これに対し、本実施例のように、エッチング層そのものをAlAs選択酸化狭窄構造の酸化層と同等レベル(例えば15nm〜60nm)まで薄く形成するとともに、エッチング層を共振器領域から数えて2つ目以降の電界強度分布の節の位置(つまり、腹の位置となる活性層から数えて3つ目の節の位置)に設け、エアギャップ狭窄構造部と活性層との距離を遠ざけることで、1つ目の節の位置に設けるよりも共振器構造内の横方向の実効的な屈折率差を、AlAs選択酸化狭窄構造の場合と同程度まで低減することができる。従って、狭窄径を広げることができ、抵抗の増加を抑えるとともに、光学損失を抑えて、更に低しきい値動作,高出力動作を得ることができる。
なお、エッチングにより形成されたエアギャップ部の厚さが薄いので、SiNからなる保護膜の形成時にエアギャップ部にSiN膜が形成されるのが制限されるが、エアギャップ部の上と下の部分上に形成されたSiN膜が膜厚の増加とともに結合し、エアギャップ部の上と下の部分はSiN膜により固定される。これにより、エアギャップ部を形成することによる機械的強度の低下を補償している。
また、GaInNAs等の窒素と他のV族を含んだ半導体層の作製にはMBE法が主に用いられていたが、原理的に高真空中での成長なので原料供給量を大きくできない。すなわち、原料供給量を大きくすると、排気系に負担がかかるというデメリットがある。高真空排気系の排気ポンプを必要とするが、MBEチャンバー内の残留原料等を除去するなどのために排気系に負担がかかり故障しやすいことからスループットは悪い。面発光レーザは、レーザ光を発生する少なくとも1層の活性層を含んだ活性領域(共振器領域)を半導体多層膜反射鏡で挟んで構成されている。端面発光型レーザの結晶成長層の厚さが3μm程度であるのに対して、例えば1.3μm波長帯の面発光型半導体レーザ素子では、結晶成長層の厚さとして10μmを超える厚さが必要になるが、MBE法では高真空を必要とすることから原料供給量を高くすることができず、成長速度は1μm/時程度であり、10μmの厚さを成長するには原料供給量を変えるための成長中断時間を設けないとしても最低10時間かかる。
活性領域の厚さは全体に比べて通常ごくわずかであり(10%以下)、ほとんどが多層膜反射鏡を構成する層である。半導体多層膜反射鏡はそれぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さ(λ/4 の厚さ)で低屈折率層と高屈折率層を交互に積層して(例えば20〜40ペア)形成されている。GaAs基板上の面発光型半導体レーザ素子では、AlGaAs系材料を用いAl組成を変えて低屈折率層(Al組成大)と高屈折率層(Al組成小)としている。しかし実際には、特にp側は各層のヘテロ障壁によって抵抗が大きくなるので、低屈折率層と高屈折率層との間に、Al組成が両者の間となる中間層を挿入して多層膜反射鏡の抵抗を低減している。
このように、面発光型半導体レーザ素子は、100層を超える組成の異なる半導体層を成長しなければならない他に、多層膜反射鏡の低屈折率層と高屈折率層との間にも中間層を設けるなど、瞬時に原料供給量を制御する必要がある素子である。しかし、MBE法では、原料供給量を原料セルの温度を変えて制御しており、臨機応変に組成をコントロールすることができない。よって、MBE法により成長した半導体多層膜反射鏡は、抵抗を低くするのは困難であり、動作電圧が高い。
一方、MOCVD法は、原料ガス流量を制御するだけで良く、瞬時に組成をコントロールできるとともに、MBE法のような高真空を必要とせず、また成長速度を例えば3μm/時以上と高くでき、容易にスループットを上げられることから、極めて量産に適した成長方法である。
このように、この実施例1によれば、低抵抗,低消費電力で低コストの1.3μm帯の面発光型半導体レーザ素子を実現できる。
なお、本実施例ではGaInNAsを活性層に用いた1.3μm帯の例を示したが、GaAs,GaInAs,AlGaAs,GaInP等を活性層に用いた、他の波長の面発光レーザにも、本発明を適用できる。
図3は本発明の実施例2の面発光レーザを示す図(断面図)である。この実施例2の素子の実施例1の素子との違いは、エッチング層としてGaInPを用いた点である。
Pを含んだGaInPAs,GaInP,GaPAsは、例えば塩酸系エッチング溶液を用いることで、DBRを構成するAlGaAs系材料に対してエッチングの選択性を持たせることができ、エッチング層として機能させることができる。
また、従来のようにAlAs層をエッチング層とした場合、AlAs層が極めて活性なため、エッチング後、発光領域に極めて近いAlAs層の端部が室温で酸化されてしまい、完全にはストレス原因の除外ができていなかった。酸化速度はAl組成に大きく依存し、Al組成を下げると遅くなるが、エッチング層を選択的にエッチングするためにはDBRを構成する他のAlGaAsとのAl組成差は大きい方が好ましく、安易にエッチング層のAl組成を下げることはできない。
本実施例では、エッチング層にAlを含んでおらず、酸化速度が極めて遅いため、エッチング後にエッチング層端部が大気中等で自然に酸化されることによって生じるストレスの発生を低減できる。これにより、選択酸化狭窄構造で問題であったようなAlの体積収縮によるストレスの影響が大幅に改善される。その結果、信頼性の高い面発光レーザが得られる。
図4は本発明の実施例3の面発光レーザのエッチング層周辺の構成を示す図(断面図)である。この実施例3の素子の実施例2の素子との違いは、エッチング層であるGaInPの上下にGaAs中間層を設けた点である。GaAs中間層は厚さを2nmとし、その分、上下のAlGaAs層の厚さを薄くした。
エッチング層のエッチング後に現れた表面にAlを含んでいると、その表面が大気にさらされて室温で酸化されてしまい、新たにこの部分でも酸化によるストレスの問題が生じていた。
エッチング層のエッチング後に現れた表面が大気にさらされても、Alを含まないことでこの部分で酸化されることによって生じるストレスの発生を低減できる。その結果、更に信頼性の高い面発光レーザが得られる。
例えば、本実施例のように、エッチング層に接する層をGaAs層とすることで実現できる。Pを含んだGaInPAs,GaInP,GaPAsは、GaAsに対してもエッチングの選択性を持たせることができるので、AlGaAs系材料との間にGaAsを挿入することで、エッチング層の選択エッチング後にAlを含まないGaAsが表面に現れることになる。
また、p側は各層のヘテロ障壁により抵抗が大きくなるので、低屈折率層と高屈折率層との間に、Al組成が両者の間となる中間層を挿入して多層膜反射鏡の抵抗を低減した方が好ましい。これは、GaAs中間層とその上または下のAlGaAs層との間や、GaAs中間層とエッチング層との間も同様である。
図5は本発明の実施例4の面発光レーザのエッチング層周辺の構成を示す図(断面図)である。この実施例4の素子の実施例2の素子との違いは、エッチング層であるGaInPを3λ/4nの厚さのGaAs中の、共振器領域から2つ目の節の位置に設けた点である。この実施例4では、実施例2のようにエッチング層をAlGaAs中に設けるのではなく、GaAs中に設けることで特別にGaAs中間層を設ける必要がなくなる。
図6は本発明の実施例5に係る面発光型半導体レーザ素子(面発光レーザ)を示す図である。この実施例6の面発光レーザは、イントラキャビティーコンタクト型となっている。また、図7は図6の面発光レーザのエッチング層周辺の構成を示す図(断面図)である。図6,図7を参照すると、下部DBRと上部DBRとの間の共振器領域中に、GaInNAs量子井戸活性層とGaNPAs障壁層とからなる多重量子井戸活性層と、AlAsエッチング層と、GaAsコンタクト層とが形成されている。それぞれの間には、GaAsスペーサ層が挿入されている。なお、GaInPエッチングストップ層がコンタクト層と隣接しており、作製工程においてコンタクト層表面をエッチングで出すのを容易にしている。また、少なくともエッチング層よりも上部のGaAs層はp型にドープされている。そして、共振器領域中に構成されるコンタクト層上にp側電極が形成されている。共振器領域の厚さは3λ/nとした。上部及び下部DBRと共振器領域の界面は発振光の定在波の腹の位置となるが、多重量子井戸活性層は下部DBRから2λ/4n離れた腹の位置に設け、電流注入部を形成するAlAsエッチング層は活性層から5λ/4n離れた節の位置に設けた。つまり活性層から数えて3番目の節の位置に設けた。またキャリア濃度が高いGaAsコンタクト層はエッチング層から更に5λ/4n離れた節の位置に設け、光学的損失を低減した。
この実施例5の面発光レーザでは、上部DBR(p−DBR)を電流経路としておらず、従って、キャリア濃度を低くすることができ、p−DBRによる正孔の自由キャリア吸収、及び価電子帯間吸収による光学的損失を低減でき、低しきい値動作,高出力化ができた。
なお、エッチング層の位置が、腹の位置となる活性層から数えて3つ目以降の節の位置となっていればよく、共振器領域の厚さや、エッチング層とコンタクト層の間隔は他の値を用いることができる。
図8は本発明の実施例6の面発光レーザアレイを示す図(上面図)である。この実施例6の面発光レーザアレイは、実施例3の面発光レーザが10素子、1次元に並んだものとなっている。これは、2次元に集積させてもかまわない。ただし、実施例6の面発光レーザアレイは、実施例3と導電型p,nが逆になっている。すなわち、実施例6の面発光レーザアレイでは、上面にn側個別電極が形成され、基板裏面にp側共通電極が形成されている。これは、アノードコモンとして高速動作が可能なバイポーラトランジスタ駆動回路を用いることができるので、複数の素子により同時により多くのデータを伝送することができるからである。これにより、同時により多くのデータを伝送する並列伝送が可能となる。
図9は本発明の実施例7の光送信モジュールを示す図であり、実施例7の光送信モジュールは、実施例6の面発光レーザアレイチップとシリカファイバーとを組み合わせたものとなっている。この実施例7では、面発光レーザアレイチップからのレーザ光が光ファイバーに入力され伝送される。ここで、光ファイバーには、シングルモードファイバーを用いている。同時により多くのデータを伝送するために、複数の半導体レーザが集積されたレーザアレイを用いた並列伝送が試みられている。この実施例7では、シングルモード高出力面発光レーザを用いているので、高速な並列伝送が可能となり、従来よりも多くのデータを同時に伝送できるようになった。
さらに、本発明による面発光レーザを用いると、低コストで信頼性が高い光送信モジュールを実現できることの他に、これを用いた低コスト,高信頼性の光通信システムを実現できる。また、GaInNAsを用いた面発光型半導体レーザ素子は、温度特性が良いこと、及び、低しきい値であることにより、発熱が少なく高温まで冷却なしで使えるシステムを実現できる。
この実施例7では、面発光レーザと光ファイバーとを1対1に対応させたが、発振波長の異なる複数の面発光レーザ素子を1次元または2次元にアレイ状に配置して、波長多重送信することにより、伝送速度を更に増大することが可能となる。
図10は本発明の実施例8の光送受信モジュールを示す図であり、この実施例8の光送受信モジュールは、実施例3の面発光レーザ素子と、受信用フォトダイオードと、光ファイバーとを組み合わせたものとなっている。
本発明による面発光レーザを光通信システムに用いる場合、面発光レーザ素子は低コストであるので、図10に示すように、送信用の面発光レーザ(1.3μm帯GaInNAs面発光型半導体レーザ素子)と、受信用フォトダイオードと、光ファイバーとを組み合わせた低コスト,高信頼性の光通信システムを実現できる。また、本発明に係るGaInNAsを用いた面発光レーザは、温度特性が良いこと、動作電圧が低いこと、及び、低しきい値であることにより、発熱が少なく、高温まで冷却なしで使えるより低コストのシステムを実現できる。
さらに、1.3μm等の長波長帯で低損失となるフッ素添加POF(プラスチックファイバ)とGaInNAsを活性層に用いた面発光レーザとを組み合わせると、ファイバが低コストであること、ファイバの径が大きくてファイバとのカップリングが容易で実装コストを低減できることから、極めて低コストのモジュールを実現できる。
本発明の面発光レーザを用いた光通信システムとしては、光ファイバーを用いた長距離通信に用いることができるのみならず、LAN(Local Area Network )などのコンピュータ等の機器間伝送、さらには、ボード間のデータ伝送、ボード内のLSI間,LSI内の素子間等、光インターコネクションとして短距離通信に用いることができる。
近年、LSI等の処理性能は向上しているが、これらを接続する部分の伝送速度が今後ボトルネックとなる。システム内の信号接続を従来の電気接続から光インターコネクトに変えると(例えばコンピュータシステムのボード間,ボード内のLSI間,LSI内の素子間等を本発明に係る光送信モジュールや光送受信モジュールを用いて接続すると)、超高速コンピュータシステムが可能となる。
また、複数のコンピュータシステム等を本発明に係る光送信モジュールや光送受信モジュールを用いて接続すると、超高速ネットワークシステムが構築できる。特に面発光レーザは端面発光型レーザに比べて桁違いに低消費電力化でき、2次元アレイ化が容易なので、並列伝送型の光通信システムに適している。
以上説明したように、窒素を含んだ半導体層であるGaInNAs系材料によると、GaAs基板を用いた0.85μm帯面発光型半導体レーザ素子などで実績のあるAl(Ga)As/(Al)GaAs系半導体多層膜分布ブラッグ反射鏡を適用でき、また本発明に示したエアギャップ狭窄構造を適用することで、実用レベルの高性能の1.3μm帯等の長波長帯面発光型半導体レーザ素子を実現でき、さらにこれらの素子を用いると、冷却素子不要で低コストの光ファイバー通信システム、光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
本発明の実施例1のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子(面発光レーザ)を示す図である。 本発明の実施例1の面発光レーザのエッチング層周辺の層構成を示す図である。 本発明の実施例2の面発光レーザを示す図(断面図)である。 本発明の実施例3の面発光レーザのエッチング層周辺の構成を示す図(断面図)である。 本発明の実施例4の面発光レーザのエッチング層周辺の構成を示す図(断面図)である。 本発明の実施例5に係る面発光型半導体レーザ素子(面発光レーザ)を示す図である。 図6の面発光レーザのエッチング層周辺の構成を示す図(断面図)である。 本発明の実施例6の面発光レーザアレイを示す図(上面図)である。 本発明の実施例7の光送信モジュールを示す図である。 本発明の実施例8の光送受信モジュールを示す図である。

Claims (9)

  1. 半導体基板上に、活性層を含む共振器領域と、共振器領域の上下に形成された多層膜反射鏡とが積層構造として積層された垂直共振器型面発光レーザにおいて、積層構造は、メサ形状にメサ部として形成され、さらに、メサ部に設けられたエッチング層をメサ部の側面からサイドエッチングした電流狭窄構造を備えており、前記エッチング層は、多層膜反射鏡を構成する高屈折率層または低屈折率層の厚さよりも薄く、発振光の定在波の節の位置を含むように設けられていることを特徴とする面発光レーザ。
  2. 請求項1記載の面発光レーザにおいて、前記エッチング層が設けられる定在波の節の位置は、腹の位置となる活性層から数えて3つ目以降の節の位置であることを特徴とする面発光レーザ。
  3. 請求項1または請求項2記載の面発光レーザにおいて、半導体基板はGaAsであり、多層膜反射鏡は主にAlGaAs系材料から構成され、エッチング層は、GaInPAsまたはGaInPまたはGaPAsから構成されていることを特徴とする面発光レーザ。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、エッチング層をエッチングすることで現れた表面にはAlが含まれていないことを特徴とする面発光レーザ。
  5. 請求項4記載の面発光レーザにおいて、エッチング層に接する層が、GaAs層であることを特徴とする面発光レーザ。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、前記活性層は、窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだIII−V族混晶半導体で構成されていることを特徴とする面発光レーザ。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の面発光レーザが光源として用いられていることを特徴とする光送信モジュール。
  8. 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の面発光レーザが光源として用いられていることを特徴とする光送受信モジュール。
  9. 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の面発光レーザが光源として用いられていることを特徴とする光通信システム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008235574A (ja) * 2007-03-20 2008-10-02 Sumitomo Electric Ind Ltd 面発光半導体レーザ
WO2021124967A1 (ja) * 2019-12-20 2021-06-24 ソニーグループ株式会社 垂直共振器型面発光レーザ素子、垂直共振器型面発光レーザ素子アレイ、垂直共振器型面発光レーザモジュール及び垂直共振器型面発光レーザ素子の製造方法

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