JP4334845B2 - 面発光レーザ及び面発光レーザアレイ及び光送信モジュール及び光送受信モジュール及び光通信システム及びレーザプリンター及び光ピックアップシステム - Google Patents

面発光レーザ及び面発光レーザアレイ及び光送信モジュール及び光送受信モジュール及び光通信システム及びレーザプリンター及び光ピックアップシステム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、面発光レーザ及び面発光レーザアレイ及び光送信モジュール及び光送受信モジュール及び光通信システム及びレーザプリンター及び光ピックアップシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットの爆発的普及に見られるように、扱われる情報量が飛躍的に増大しており、今後さらに加速すると考えられる。このため、幹線系のみならず、各家庭やオフィスといった加入者系やLAN(Local Area Network)などのユーザに近い伝送路、さらには各機器間や機器内の配線へも光ファイバーが導入され、光による大容量情報伝送技術が極めて重要となる。
【0003】
そして、安価で、距離を気にしないで光ネットワーク、光配線の大容量化を図るためには、光源としてシリカファイバーの伝送ロスが小さく整合性の良い1.3μm帯,1.55μm帯の面発光レーザ(VCSEL: Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直空洞面発光型半導体レーザ素子)は極めて有望である。面発光レーザは、基板に対して垂直方向に光を出射する半導体レーザであり、活性層体積が小さいために低消費電力であり、また、へき開による共振器面形成がなく基板に対して垂直方向に光を出射するのでアレイ化が容易で検査も容易であり、また、共振器長を小さくできるので縦モードシングル化が容易であり、小型,低価格等、端面発光型レーザに比べて、メリットが多い。実際に、GaAs基板上に形成できる0.85μm帯では、すでに高速LANである1Gbit/sのイーサネットなどで実用化されている。
【0004】
1.3μm,1.55μm等の長波長帯では、InP基板上の材料系が一般的であり、端面発光型レーザでは実績がある。しかし、この従来の長波長帯半導体レーザでは、環境温度が室温から80℃になると動作電流が3倍にも増加するという大きな欠点を持っている。また、面発光型半導体レーザ素子においては反射鏡に適した材料がないため高性能化は困難であり、実用レベルの特性が得られていないのが現状である。このため、InP基板上の活性層とGaAs基板上のAlGaAs/GaAs反射鏡を直接接合で貼り合わせた構造が提案されており(例えば、特許文献1参照。)、実際に多くの実験報告がある。しかし、この方法は、格子定数が違う材料が直接接合しているため、そこで大きなストレスが発生し、電流通電等により結晶欠陥が発生し、劣化を招くなどの問題があった。
【0005】
また、上記光通信システム用はもとより、0.65μm帯,0.78μm帯等の短波長面発光レーザは、レーザプリンター,光ピックアップシステム用光源などの応用において、高出力が求められている。しかしながら、面発光レーザは、活性層体積が小さいため、端面型に比べて出力が小さいという欠点を持っている。そして、最大出力は電流注入による発熱によって出力飽和することで決定されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−335967号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、反射鏡と活性層との接着において格子歪に伴う欠陥発生を抑えた実用レベルの面発光レーザ及び面発光レーザアレイ及び光送信モジュール及び光送受信モジュール及び光通信システム及びレーザプリンター及び光ピックアップシステムを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、基板上に、少なくとも1層の活性層を含む活性領域と、活性層の上部および下部に設けられた第1反射鏡および第2反射鏡を含む共振器構造とを有する面発光レーザにおいて、少なくとも反射鏡の一部を含んだ領域と、少なくとも活性層を含んだ領域とが、金属を介して接着されており、前記少なくとも活性層を含んだ領域は、活性層の上部及び下部に半導体からなる反射鏡の少なくとも一部を含むことを特徴としている。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の面発光レーザにおいて、前記金属を介して接着された接着層には、光を通す金属アパーチャー部が形成され、金属アパーチャー部には、接着層の厚さを固定する接着層厚さ制御層が形成されていることを特徴としている。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の面発光レーザにおいて、前記金属は、Au−Sn合金であることを特徴としている。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、前記少なくとも反射鏡の一部を含んだ領域は、GaP基板とAlGa1−xP(0≦x≦1)系材料からなる半導体分布ブラッグ反射鏡とを少なくとも含むことを特徴としている。
【0013】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザがアレイ状に配列されて構成されていることを特徴とする面発光レーザアレイである。
【0014】
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とする光送信モジュールである。
【0015】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とする光送受信モジュールである。
【0016】
また、請求項8記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とする光通信システムである。
【0017】
また、請求項9記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とするレーザプリンターである。
【0018】
また、請求項10記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とする光ピックアップシステムである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態の面発光レーザ(面発光型半導体レーザ)は、基板上に、少なくとも1層の活性層を含む活性領域と、活性層の上部および下部に設けられた第1反射鏡および第2反射鏡を含む共振器構造とを有し、少なくとも反射鏡の一部を含んだ領域と、少なくとも活性層を含んだ領域とが、金属を介して接着されていることを特徴としている。
【0021】
この第1の実施形態では、活性領域と反射鏡とを金属を用いて接着しており、格子定数の違う材料が直接結合していないので、格子歪に伴う欠陥の発生が抑えられ、信頼性の高い面発光レーザを得ることができる。また、InP格子整合系の長波長活性層と、GaAs格子整合系材料であり高性能の得られるAlGaAs系反射鏡とを接着することで、信頼性が高く実用レベルの1.3μm帯,1.55μm帯等の長波長帯の面発光レーザを得ることができる。
【0022】
(第2の実施形態)
本発明の第2実施形態の面発光レーザは、上述した第1の実施形態の面発光レーザにおいて、金属を介して接着された接着層には、光を通す金属アパーチャー部が形成され、金属アパーチャー部には、接着層の厚さを固定する接着層厚さ制御層が形成されていることを特徴としている。
【0023】
面発光レーザは、少なくとも1層の活性層を含む活性領域と、活性層の上部および下部に設けられた第1反射鏡および第2反射鏡を含む共振器構造からなり、その共振器構造中に、光を通さない金属、または、光吸収の大きい金属を設けることはできない。しかし、光を通す金属アパーチャー部を設けることで、共振器構造を形成できる。
【0024】
また、面発光レーザは、反射鏡の反射帯域と共振器長とを厳密に合わせる必要があり、膜厚制御が重要である。金属接着は、接着させたい2枚の基板の接着面の少なくともいずれか一方に金属膜を形成して、金属の融点以上に温度を上げて溶かして2枚の基板を接着することができる。しかし、最終的な金属接着層の厚さは、接着条件等で変わってしまうが、この第2の実施形態では、熱処理等の接着工程で厚さが変わらず、厚さの制御された接着層厚さ制御層を設けているので、接着層の厚さを厳密に制御できる。
【0025】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態の面発光レーザは、第1または第2の実施形態の面発光レーザにおいて、前記金属がAu−Sn合金であることを特徴としている。
【0026】
金属としては、はんだ材料等の融点の低い金属が好ましい。ただし、面発光レーザの使用環境温度範囲よりは融点が高いことが好ましく、融点が200℃〜300℃程度であるAu−Sn合金が好ましい。
【0027】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態の面発光レーザは、第1乃至第3のいずれかの実施形態の面発光レーザにおいて、前記少なくとも活性層を含んだ領域は、活性層の上部及び下部に半導体からなる反射鏡の一部を含むことを特徴としている。
【0028】
本発明の面発光レーザは、少なくとも反射鏡の一部を含んだ領域と、少なくとも活性層を含んだ領域とを、別々の半導体基板上に結晶成長し、金属により両方のエピ基板を接合する構造となっている。面発光レーザは、共振器長を厳密に制御する必要があるが、反射鏡の膜厚揺らぎにも影響を受け、上記少なくとも活性層を含んだ領域として、クラッド(スペーサ)層と活性層とを含んだ共振器のみとしてはずれる場合もあり得る。また、反射鏡を含まない構造で、光学的厚さを厳密に測定することは困難である。これに対し、第4の実施形態では、共振器の上下に反射鏡の一部を含むことで、エピ後に光学的共振器長を測定可能となり、少なくとも反射鏡の一部を含んだ領域と、少なくとも活性層を含んだ領域とを貼り合わせて形成した共振器構造においても、制御性を向上させることができる。
【0029】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態の面発光レーザは、第1乃至第4のいずれかの実施形態の面発光レーザにおいて、前記少なくとも反射鏡の一部を含んだ領域は、GaP基板とAlGa1−xP(0≦x≦1)系材料からなる半導体分布ブラッグ反射鏡とを少なくとも含むことを特徴としている。
【0030】
AlP,GaPを終端物質としたAlGaP系材料は、AlAs,GaAsを終端物質としたAlGaAs系材料と同様に、屈折率差が大きく、しかもAl組成によらず格子定数が近く、GaP基板上に結晶成長できる。具体的に、格子定数は、GaPが5.4495オングストローム、AlPが5.4625オングストロームであり、GaAsが5.65325オングストローム、AlAsが5.6611オングストロームである。屈折率(バンドギャップ波長における)は、GaPが3.452、AlPが3.03であり、GaAsが3.655、AlAsが3.178である。よって、AlGaP系材料は、AlGaAs系材料と同様に、半導体分布ブラッグ反射鏡の材料として適していると考えられる。
【0031】
また、AlGaP系材料は、AlGaAs系材料に比べてバンドギャップエネルギーが大きいことから、およそ0.55μmよりも長波長の光を透過する。また、AlGaAs系材料と同様、屈折率差を大きく取れるので、容易に99%以上の高反射率が得られ、積層数を低減できる。特に0.9μmよりも短波長帯において、AlGaAs系材料よりも積層数を少なくでき、適した半導体分布ブラッグ反射鏡が形成できる。
【0032】
さらに、関連材料の熱伝導率は、それぞれ、GaAsが0.54Wcm−1−1 、AlAsが0.91Wcm−1−1 、GaPが1.1Wcm−1−1 、AlPが0.9Wcm−1−1 である。また、二元化合物に比べて混晶半導体においては、他の元素がわずかに加わっただけで急激に熱抵抗が高くなり、混晶組成が中心付近の材料で最も熱抵抗率が高くなる。例えばAlGaAs混晶半導体の熱低効率の組成依存性が、文献「M. A. Afromowitz, J. Appl. Phys., 44 (1973) p.1292」に記載されている。AlGaAs系の場合、低屈折率層としてAlAs、高屈折率層としてGaAsを用いるのが好ましいが、GaAsはおよそ0.9μmよりも短波長を吸収するので、これらの波長の面発光レーザでは、Alを加えて吸収のない組成としたAlGaAsを用いなければならない。更に、面発光レーザの電流狭窄方法のブレークスルーとなったAlAs選択酸化狭窄技術を用いる場合、酸化するために少なくともAlAs被選択酸化層側面があらわれるまでエピ構造をメサエッチングするが、少なくとも側面のあらわれる反射鏡には酸化を避けるためにAlAsを用いることはできない。このため低屈折率層としてGaを数%加えたAlGaAsを用いるなどの制限が生じてしまい、熱抵抗が大きくなる。一方、本願の発明者の実験から、AlPはAlAsに比べて酸化速度が極めて遅いことがわかっており、また、AlGaP系材料の熱伝導率はAlGaAs系材料よりも大きく、更に全組成範囲において0.55μmよりも長波長の光を透過するので、0.55μmから0.9μmの範囲においても特に熱抵抗の小さい二元化合物であるAlPとGaPを用いることができる。よって、放熱が極めて良くなり、動作時の温度上昇を抑制でき、低しきい値,高出力化ができ、更に温度特性が向上する。
【0033】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態の面発光レーザアレイ(面発光型半導体レーザアレイ)は、第1乃至第5のいずれかの実施形態の面発光レーザがアレイ状に配列されて構成されていることを特徴としている。
【0034】
本発明の面発光レーザでは、放熱が改善されるので、アレイとした場合、他の素子で発生した熱の干渉による特性劣化(しきい値上昇,出力低下など)が低減し、高性能の面発光レーザアレイを実現できる。さらに他の素子への熱の影響を低減できることから、素子間の間隔を狭くできるなどのメリットがある。
【0035】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態の光送信モジュールは、第1乃至第5のいずれかの実施形態の面発光レーザ、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイを光源として用いたことを特徴としている。
【0036】
本発明では、低消費電力であり光ファイバーの伝送損失の小さい長波長帯面発光レーザの信頼性が改善されたので、これを用いた光送信モジュールの信頼性を向上させることができる。
【0037】
(第8の実施形態)
本発明の第8の実施形態の光送受信モジュールは、第1乃至第5のいずれかの実施形態の面発光レーザ、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイを光源として用いたことを特徴としている。
【0038】
本発明では、低消費電力であり光ファイバーの伝送損失の小さい長波長帯面発光レーザの信頼性が改善されたので、これを用いた光送受信モジュールの信頼性を向上させることができる。
【0039】
(第9の実施形態)
本発明の第9の実施形態の光通信システムは、第1乃至第5のいずれかの実施形態の面発光レーザ、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイを光源として用いたことを特徴としている。
【0040】
本発明では、低消費電力であり光ファイバーの伝送損失の小さい長波長帯面発光レーザの信頼性が改善されたので、これを用いた光通信システムの信頼性を向上させることができる。
【0041】
また、POF(プラスチックオプティカルファイバー)を用いることで、安い光源である面発光レーザ、安い光ファイバーであるPOFを用いた経済的な光通信システムを実現できる。また、面発光レーザを用いていることから、高速伝送可能であり、かつ極めて経済的であることから、特に一般家庭やオフィスの室内,機器内などの光通信システムに用いることが効果的である。
【0042】
(第10の実施形態)
本発明の第10の実施形態のレーザプリンターは、第1乃至第5のいずれかの実施形態の面発光レーザ、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイを光源として用いたことを特徴としている。
【0043】
面発光レーザは、低消費電力動作に有利であり、プリンターのような箱の中の温度上昇を低減できる。また、面発光型なので、アレイ化が容易でしかも通常の半導体プロセスで形成するので、素子の位置制度が高く、同時にマルチビームでの書きこみが容易となり、書きこみ速度が格段に向上し、書きこみドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷できる。また、同じ書きこみドット密度の場合は印刷速度を早くできる。また、特にAlGaP系反射鏡を用いた場合、放熱性が改善されるので、低消費電力で容易に書きこみに必要な出力が得られる。
【0044】
(第11の実施形態)
本発明の第11の実施形態の光ピックアップシステムは、第1乃至第5のいずれかの実施形態の面発光レーザ、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイを光源として用いたことを特徴としている。
【0045】
記録媒体(メディア)への光書き込み,再生用光源である半導体レーザの波長は、CDでは0.78μm、DVDでは0.65μmが用いられている。面発光レーザは、端面型半導体レーザに比べて1桁程度消費電力が小さく、電力が長持ちすることから、通常の光ピックアップシステムはもちろん、ハンディータイプの光ピックアップシステムを実現できる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【0047】
(第1の実施例)
図1は本発明の第1の実施例の面発光レーザを示す図である。この第1の実施例の面発光レーザは、GaAs基板上に結晶成長した反射鏡と、InP基板上に結晶成長した活性領域とを接着した、長波長帯面発光レーザとなっている。
【0048】
より詳細に、図1に示すように、この第1の実施例の面発光レーザでは、GaAs基板上に、媒質内における設計波長の1/4倍の厚さであるAlGaAsとGaAsとを交互に例えば35周期積層した周期構造と1/4の厚さのGaInP層とからなる半導体分布ブラッグ反射鏡(第1反射鏡)が形成されている。そして、その上に、InPからなる上下クラッド層(スペーサ層)と、活性領域(1.3μm組成波長のGaInPAs井戸層と1.0μm組成波長のGaInPAs障壁層とからなる多重量子井戸活性層)と、p−GaInPAsコンタクト層とが形成されている。そして、その上には、8ペアのTiO/SiOからなる誘電体反射鏡(第2反射鏡)が形成されている。
【0049】
この第1の実施例の半導体レーザが従来の半導体レーザと異なる点は、GaAsに格子整合する第1反射鏡と、InPに格子整合する活性領域を含むエピ構造とが、金属によって接着されていることである。ここで、金属には、Au−Sn合金を用いた。ただし、面発光レーザとして機能させるために、共振器構造を形成する部分として上記金属の無い金属アパーチャー部が形成されている。その部分には第1反射鏡を形成しているGaInPが媒質内における設計波長の1/4倍の厚さで形成されている。このGaInP層は、接着層の厚さを固定する接着層厚さ制御層として機能する。
【0050】
この第1の実施例の面発光レーザのウエハは、次のように作製される。
【0051】
すなわち、図2の下部に示すように、GaAs基板上に、AlGaAsとGaAsとを積層した周期構造とGaInP接着層厚さ制御層からなる第1反射鏡を形成する。そして、共振器構造を形成する部分を残して、GaInP接着層厚さ制御層をエッチング除去する。そして、残されたGaInP接着層厚さ制御層上に、レジストをパターニングし、Au−Snを接着層厚さ制御層より厚めに蒸着し、リフトオフ法により、GaInP接着層厚さ制御層以外の部分にAu−Snからなる金属接着層を形成する。
【0052】
また、図2の上部に示すように、InP基板上に、GaInAsエッチングストップ層、p−GaInPAsコンタクト層、p−InPクラッド層(スペーサ層)、7層の1.3μm組成波長のGaInPAs井戸層と8層の1.0μm組成波長のGaInPAs障壁層とからなる多重量子井戸活性層、n−InPクラッド層(スペーサ層)を形成する。
【0053】
ここで、結晶成長はMOCVD法により行なった。また、原料には、TMG(トリメチルガリウム),TMA(トリメチルアルミニウム),TMI(トリメチルインジウム),PH(フォスフィン),AsH(アルシン),n型のドーパントとしてHSe(セレン化水素),p型のドーパントとしてCBrを用いた。また、キャリアガスにはHを用いた。MOCVD法は、MBE法のような高真空を必要とせず、原料ガスの供給流量や供給時間を制御すれば良いので、量産性に優れている。
【0054】
そして、2枚の成長基板の結晶成長面(具体的には、GaInP接着層厚さ制御層とn−InPクラッド層)を密着させ、重りを載せて高温(例えば400℃)でN雰囲気で熱処理して接着する。この時、Au−Snは溶けるので厚さを制御するのが困難となるが、厚さの制御された接着層厚さ制御層を設けているので、Au−Snがこの厚さを越えることは無い。Au−SnはGaInP接着層厚さ制御層より厚めに成膜しておくと良く、更に、つぶれて余ったAu−Snが移動できるように隙間を設けておくと良い。
【0055】
この第1の実施例では、金属として、Au−Snを用いたが、融点が面発光レーザの使用環境温度よりも高ければ他の材料でもかまわない。ただし、熱処理時の活性層の劣化や不純物の拡散等、結晶へのダメージを避けるために熱処理温度はできるだけ低い方が好ましく、低融点金属が良い。
【0056】
その後、InP基板をGaInAsエッチングストップ層まで化学的,選択的にエッチング除去する。このエッチングには例えば塩酸を用いることができる。更に今度はGaInAsエッチングストップ層を選択的にエッチングする。これにより、p−GaInPAsコンタクト層表面が現れる。そして、電流経路外の部分をプロトン(H)照射によって絶縁層(高抵抗部)にして、電流狭さく部を形成する。そして、TiO/SiOからなる誘電体反射鏡を電子ビーム蒸着法で形成し、必要部分を残してエッチング除去する。更に、n−InPクラッド層に達するまでエッチングしてn側電極を形成し、p−GaInPAsコンタクト層上にp側電極を形成し、素子が完成する。AlGaAs系反射鏡はGaInPAs系反射鏡より熱抵抗が小さく、放熱性は良い。
【0057】
この第1の実施例のように格子定数の異なる材料を直接接合することなく1.3μm帯面発光レーザを形成することができた。更に格子定数の異なる材料を直接接合していないので、格子緩和に伴う結晶欠陥が発生して素子の信頼性を悪くする事を防ぐことができた。
【0058】
なお、二種の基板を金属を用いて貼り合わせた長波長面発光レーザの例は米国特許No.5,513,204や米国特許No.6,252,896(特開2000−261096)に記載されている。しかし、これらはGaAs格子整合系材料による短波長面発光レーザとInP格子整合系活性層を用いた長波長面発光レーザ構造とを接合して、短波長面発光レーザを励起光源として長波長面発光レーザを発振させるものであり、短波長,長波長のそれぞれに共振器構造を有している。また、長波長面発光レーザ部の反射鏡には、InP格子整合系材料、誘電体、または、GaAs格子整合系材料が用いられている。GaAs格子整合系材料の場合は直接接合となっており、本発明とは構造が異なる。これらの構造では、2素子で1素子となるので、コストが高くなる。
【0059】
(第2の実施例)
図3は本発明の第2の実施例の面発光レーザを示す図である。この第2の実施例の面発光レーザは、GaInP/AlGaInP系材料を活性層とした650nm帯赤色面発光レーザとなっている。
【0060】
より詳細に、図3に示すように、この第2の実施例の面発光レーザでは、GaP基板上に、媒質内における設計波長の1/4倍の厚さであるAlPとGaPとを交互に例えば25周期積層した周期構造からなる半導体分布ブラッグ反射鏡(第1反射鏡(A))が形成されている。そして、その上に、n−AlGaAs系材料からなる第1反射鏡(B)が形成されており、第1反射鏡(A)と第1反射鏡(B)とで第1反射鏡を構成している。なお、この第2の実施例では、AlGaAs系第1反射鏡(B)は5ペアとした。また、AlGaAs系第1反射鏡(B)はn−AlGa1−xAs(x=0.95)とn−AlGa1−xAs(x=0.5)とを交互に積層した構造とし、第1反射鏡(A)と接する最上層(高屈折率層)はGaIn1−xP(x=0.6)キャップ層とした。この際、GaP基板上の最上層であるGaP接着厚さ制御層とGaAs基板最上層であるGaInPキャップ層の厚さは、合計でλ/4の奇数倍とした。
【0061】
そして、第1反射鏡(B)上には、n−GaIn1−xP(x=0.6)コンタクト層、(Al0.7Ga)0.5In0.5P下部クラッド層(スペーサ層)、4層のGa0.4In0.6P量子井戸層と5層の(Al0.5Ga)0.5In0.5P障壁層からなる多重量子井戸活性層、(Al0.7Ga)0.5In0.5P上部クラッド層(スペーサ層)、n−AlGa1−xAs(x=0.95)とn−AlGa1−xAs(x=0.5)とを交互に積層した第2反射鏡、p−GaAsコンタクト層が形成されている。そして、p−GaAsコンタクト層上にp側電極、n−GaInPコンタクト層上にn側電極が形成されている。なお、第1反射鏡(B)と第2反射鏡とで挟まれた領域(共振器)の厚さは、媒質内における設計波長(λ)の厚さ(ラムダキャビティー)とした。
【0062】
この第2の実施例では、第1反射鏡(A)がn−GaP基板上に形成され、第1反射鏡(B)、量子井戸活性層とAlGaInP下部クラッド層(スペーサ層)、第2反射鏡、p−GaAsコンタクト層がGaAs基板上に形成されている。そこで、第1の実施例と同様に、Au−Snにより2種の基板を接着し、GaAs基板をエッチング除去した。なお、GaAs基板の除去は、第1の実施例と同様に、エッチングストップ層を設け、選択的エッチングにより行うことができる。
【0063】
面発光レーザは共振器長を厳密に制御する必要があるが、厳密には反射鏡の膜厚揺らぎにも影響を受け、クラッド(スペーサ)層と活性層とを含んだ共振器のみで決まるものではない。また、反射鏡を含まない構造で、光学的厚さを厳密に測定することは困難である。この第2の実施例のように、GaAs基板上の共振器の上下に反射鏡の一部を含む(この第2の実施例では、第1反射鏡(B)と第2反射鏡)ことで、エピ後に光学的共振器長を測定可能となり、二種のエピ基板を貼り合わせた時の共振器構造の制御性を向上させることができる。
【0064】
また、この第2の実施例では、電流狭窄構造の形成をプロトン照射ではなく、AlAs層の選択酸化で行った。すなわち、p側反射鏡(第2反射鏡)の活性層に近い低屈折率層の一部をAlAs層とし、所定の大きさのメサを少なくともp−AlAs被選択酸化層の側面を露出させて形成し、側面の現れたAlAsを水蒸気で側面から酸化してAl電流狭さく部を形成した。酸化速度はAl組成がわずかに小さくなると遅くなるので、反射鏡の低屈折率層としてはわずかにGaを含んだn−AlGa1−xAs(x=0.95)を用いた。
【0065】
AlGaP系反射鏡はAlGaAs系反射鏡に比べて材料のバンドギャップが大きく、短波長帯においては少ない積層数で吸収が少なくかつ高い反射率を得ることができる。AlGaAs系反射鏡において、AlAsとGaAsは屈折率差が大きく反射鏡に適した材料といえるが、レーザの波長が短くなるに従い吸収を避けるため高屈折率層のAl組成を大きくする必要がある。このため例えば波長650nmでは高屈折率層にAl0.5Ga0.5Asがよく用いられる。よって低屈折率層との屈折率差がAlAs/GaAsとの組み合わせに比べて約半分になり、必要な反射率を得るために積層数は2倍程度に増加してしまう。さらに実際には積層数が増えると膜厚の揺らぎがあり、また、完全には吸収を抑えたDBR組成ではないので、吸収のため高い反射率を得るのが困難になってしまい、面発光レーザの特性を悪化させてしまうという問題がある。一方、反射鏡にAlGaP系材料を用いると550nmよりも長い波長に対して透明となり、これらの波長においてGaPとAlPとの間のどの組成をも用いることが可能となる。これにより、屈折率差が大きく取れ、積層数を増加させることなく結晶成長は容易であり、高反射率を容易に得ることができる。
【0066】
また、GaP基板はGaAs基板よりも熱伝導率が大きいことと、AlGaP系反射鏡はAlGaAs系反射鏡に比べて熱伝導率が大きいことにより、放熱が改善される。二元化合物に比べて他の元素がわずかに加わっただけで急激に熱抵抗が高くなり、混晶組成が中心付近の材料で最も熱抵効率が高くなる。650nm帯の場合、反射鏡の高屈折率層材料として、AlGa1−xAs(x=0.5)が良く用いられており、GaAsやAlAsに比べても極めて熱抵抗が高いので、本発明の効果が高い。よってGaAs基板上に形成した素子に比べてしきい値が低く、出力が高く、高温まで連続動作が可能であった。
【0067】
また、格子定数の異なる材料を用いているが、この第2の実施例のように結晶同士を直接接合していないので、格子緩和に伴う結晶欠陥が発生して素子の信頼性を悪くする事を防ぐことができた。
【0068】
また、AlとAsを主成分とした被選択酸化層の選択酸化により電流狭さくを行ったので、しきい値電流は低かった。被選択酸化層を選択酸化したAl酸化膜からなる電流狭さく層を用いた電流狭さく構造によると、電流狭さく層を活性層に近づけて形成することで電流の広がりを抑えられ、大気に触れない微小領域に効率良くキャリアを閉じ込めることができる。さらに酸化してAl酸化膜となることで屈折率が小さくなり凸レンズの効果でキャリアの閉じ込められた微小領域に効率良く光を閉じ込めることができ、極めて効率が良くなり、しきい値電流は低減される。また、容易に電流狭さく構造を形成できることから、製造コストを低減できる。
【0069】
(第3の実施例)
図4は本発明の第3の実施例の面発光レーザを示す図である。この第3の実施例の面発光レーザは、AlGaAs系材料を活性層とした780nm帯面発光レーザとなっている。
【0070】
この第3の実施例では、第2の実施例よりも波長が長く、吸収しない組成範囲が広くなり、低Al組成を高屈折率層に用いることができる。具体的には、AlGaAs系反射鏡をn−AlGa1−xAs(x=0.9)とn−AlGa1−xAs(x=0.3)とを交互に積層した構造とした。また、クラッド層をAlGa1−xAs(x=0.6)とし、3層のAlGa1−xAs(x=0.1)量子井戸層と2層のAlGa1−xAs(x=0.3)障壁層とからなる多重量子井戸構造とした。またn側電極を形成するためのコンタクト層をGaInPAs層とした。
【0071】
他は、第2の実施例と同様である。
【0072】
GaP基板はGaAs基板よりも熱伝導率が大きいことと、AlGaP系反射鏡はAlGaAs系反射鏡に比べて熱伝導率が大きいことにより、放熱が改善される。特に混晶組成が中心付近の材料は熱抵効率が高くなる。780nm帯の場合、反射鏡の高屈折率層材料としてAlGa1−xAs(x=0.3)が良く用いられており、熱抵抗が高いので、本発明の効果が高い。GaAs基板上に形成した素子に比べて、しきい値が低く、出力が高く、高温まで連続動作が可能であった。
【0073】
なお、共振器構造ごと熱伝導性の良い基板に貼り合わせた従来例がある。例えば文献「T. Ouchi et al. Applied Physics Letter, Vol.77, pp1602 − 1604 (2000)」では、GaAs基板上に形成した通常の構造からなる830nm帯面発光レーザの二つの反射鏡と活性層からなる共振器構造部分のみをAlN基板に接着したものである。AlNの熱伝導率は、1.7Wcm−1−1と記載されており、高い。しかしながら、主に発熱する活性層とAlN基板との間は、従来のAlGaAs系混晶半導体を用いた反射鏡であり、この第3の実施例のAlGaP系反射鏡に比べて熱抵抗が高く、活性層の熱が基板まで逃げにくい。この第3の実施例のように反射鏡の熱抵抗も低い方が好ましい。
【0074】
(第4の実施例)
図5は本発明の第4の実施例の面発光レーザを示す図である。この第4の実施例の面発光レーザは、GaAs基板上のGaInNAs系材料を活性層とした1.3μm帯面発光レーザとなっている。
【0075】
この第4の実施例では、第3の実施例よりも波長が長く、吸収しない組成範囲が広くなり、低Al組成を高屈折率層に用いることができる。具体的には、AlGaAs系反射鏡をn−AlGa1−xAs(x=0.9)とn−AlGa1−xAs(x=0)とを交互に積層した構造とした。また、クラッド層をAlGa1−xAs(x=0.3)とGaAsとの2層構造とした。ここで、活性層側をGaAsとした。また、活性層は、3層のGaInNAs量子井戸層と2層のAlGa1−xAs(x=0)障壁層とからなる多重量子井戸構造とした。また、n側電極を形成するためのコンタクト層をGaAs層とした。
【0076】
他は、第2の実施例と同様である。
【0077】
最近、長波長帯面発光レーザの活性層材料として、GaAs基板上に1.3μm帯等の長波長を形成できる材料系が注目され、(Ga)InAs量子ドット、GaAsSbやGaInNAs(例えば、特開平6−37355号公報参照)が研究されている。特に、新材料であるGaInNAsは、レーザ特性の温度依存性を極めて小さくすることができる材料として注目されている。しかし、GaAs基板上に形成されるGaInNAs系半導体レーザは、窒素添加によりバンドギャップが小さくなり添加量に応じて長波長化するが、窒素組成増加に伴って結晶性が劣化し、GaAs量子井戸活性層を用いた0.85μm帯面発光レーザや、GaInAs量子井戸活性層を用いた0.98μm帯面発光レーザに比べて高出力を得るのが困難であった。
【0078】
これに対し,GaP基板はGaAs基板よりも熱伝導率が大きいことと、AlGaP系反射鏡はAlGaAs系反射鏡に比べて熱伝導率が大きいことにより、放熱が改善される。この第4の実施例では、AlGaP系反射鏡を用いGaP基板上に形成したので、GaAs基板上に形成した従来の素子に比べて、しきい値が低く、出力が高く、高温まで連続動作が可能であった。
【0079】
(第5の実施例)
図6は本発明の第5の実施例の面発光レーザアレイ(面発光レーザアレイチップ)を示す図(上面図)である。
【0080】
この第5の実施例の面発光レーザアレイは、第4の実施例の面発光レーザが8素子、1次元に並んだものとなっている。なお、面発光レーザアレイは、1次元に限らず、2次元に集積させてもかまわない。また、図6の面発光レーザアレイでは、上面にp側個別電極とn側共通電極とが形成されている。この面発光レーザアレイでは、発熱を低減し放熱を良好にしたので、隣りの素子へ悪影響は及ぼさなかった。
【0081】
(第6の実施例)
図7は第6の実施例の光送信モジュールの概要図であり、第5の実施例の面発光レーザアレイチップとシリカファイバーとを組み合わせたものとなっている。この第6の実施例では、面発光レーザからのレーザ光が光ファイバーに入力されて伝送されるシングルモードファイバーを用いており、同時により多くのデータを伝送するために、複数の面発光レーザが集積した面発光レーザアレイを用いた並列伝送が可能となっている。このように、シングルモード高出力面発光レーザを用いているので、高速な並列伝送が可能となり、従来よりも多くのデータを同時に伝送できるようになった。
【0082】
この第6の実施例では、面発光レーザ素子と光ファイバーは1対1に対応させたが、発振波長の異なる複数の面発光レーザ素子を1次元または2次元にアレイ状に配置して、波長多重送信することにより伝送速度を更に増大することが可能となる。
【0083】
(第7の実施例)
図8は本発明の第7の実施例の光送受信モジュールの概要図であり、第4の実施例の面発光レーザと、受信用フォトダイオードと、アクリル系POFとを組み合わせたものとなっている。
【0084】
本発明による面発光レーザを光通信システムに用いる場合、面発光レーザとPOFは低コストであるので、図8に示すように、送信用の面発光レーザ素子と受信用フォトダイオードとPOFとを組み合わせた光送受信モジュールを用いた低コストの光通信システムを実現できる。また、POFはファイバの径が大きくてファイバとのカップリングが容易で実装コストを低減できることから、極めて低コストのモジュールを実現できる。また、本発明の面発光レーザ素子の場合、温度特性が良いこと、及び、低しきい値であることにより、発熱が少なく、高温まで冷却なしで使えることにより、低コストのシステムを実現できる。
【0085】
本発明の面発光レーザ素子を用いた光通信システムとしては、光ファイバーを用いたLAN(Local Area Network)などのコンピュータ等の機器間伝送、さらには機器内のボード間データ伝送、ボード内のLSI間、LSI内の素子間等の、光インターコネクションとして特に短距離通信に用いることができる。
【0086】
近年、LSI等の処理性能は向上しているが、これらを接続する部分の伝送速度が今後ボトルネックとなる。システム内の信号接続を従来の電気接続から光インターコネクトに変えると、例えばコンピュータシステムのボード間、ボード内のLSI間、LSI内の素子間等を本発明に係る光送信モジュールや光送受信モジュールを用いて接続すると、超高速コンピュータシステムが可能となる。
【0087】
また、複数のコンピュータシステム等を本発明に係る光送信モジュールや光送受信モジュールを用いて接続した場合、超高速ネットワークシステムが構築できる。特に、面発光レーザ素子は、端面発光型レーザに比べて、桁違いに低消費電力化でき、2次元アレイ化が容易なので、並列伝送型の光通信システムに適している。
【0088】
(第8の実施例)
図9は本発明の第8の実施例のレーザプリンターの光走査部分の概要図であり、波長780nmである4×4の二次元に配置された本発明の第3の実施例に係わる面発光レーザアレイチップと、感光帯ドラムとを組み合わせたものとなっている。図10は図9の面発光レーザアレイチップの概略構成を示す図(上面図)である。この面発光レーザアレイチップの点灯のタイミングを調整することで、感光帯上では図10のように副走査方向に20μm間隔で光源が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。この第8の実施例では、面発光レーザアレイからの複数のビームを、同じ光学系を用い走査用ポリゴンミラーを高速回転させてドット位置を点灯のタイミングを調整して副走査方向に分離した複数の光スポットとして被走査面である感光帯上に集光して、一度に複数のビームを走査している。
【0089】
この第8の実施例によると、副走査方向に20μm間隔で感光帯上に書き込み可能であり、1200DPI(ドット/インチ)に相当する。主走査方向の書き込み間隔は、光源の点灯のタイミングで容易に制御できる。この第8の実施例では、16ドットを同時に書き込み可能であり、高速印刷できた。アレイ数を増加させることで、更に高速印刷が可能である。また、面発光レーザ素子の間隔を調整することで副走査方向の間隔を調整でき、1200DPIよりも高密度にすることができ、より高品質の印刷が可能となる。高密度化するためにはレンズ系を用いてビーム径をより絞る必要があるが、波長による限界があり、光源の波長は短い方が好ましい。また高出力が必要である。面発光レーザは活性層堆積が小さく端面発光型に比べて高出力化が難しいが、この第8の実施例に用いた面発光レーザアレイでは、放熱を良好にしたので、高出力が得られるようになり、かつ周辺の素子への熱干渉が小さく、書き込み光源に用いることができるようになった。
【0090】
なお、この第8の実施例では、本発明の面発光レーザアレイのレーザプリンターへの応用例を示したが、本発明の面発光レーザアレイをCD等の記録,再生用光源としても用いることができる。
【0091】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1乃至請求項4記載の発明によれば、基板上に、少なくとも1層の活性層を含む活性領域と、活性層の上部および下部に設けられた第1反射鏡および第2反射鏡を含む共振器構造とを有する面発光レーザにおいて、少なくとも反射鏡の一部を含んだ領域と、少なくとも活性層を含んだ領域とが、金属を介して接着されており(活性領域と反射鏡とを金属を用いて接着しており)、格子定数の違う材料が直接結合していないので、格子歪に伴う欠陥の発生が抑えられ、信頼性の高い面発光レーザを得ることができる。また、InP格子整合系の長波長活性層とGaAs格子整合系材料であり高性能の得られるAlGaAs系反射鏡とを接着することで、信頼性が高く実用レベルの1.3μm帯,1.55μm帯等の長波長帯の面発光レーザを得ることができる。また、請求項1記載の発明では、前記少なくとも活性層を含んだ領域は、活性層の上部及び下部に半導体からなる反射鏡の少なくとも一部を含んでおり、共振器の上下に反射鏡の一部を含むことで、エピ後に光学的共振器長を測定可能となり、少なくとも反射鏡の一部を含んだ領域と少なくとも活性層を含んだ領域とを貼り合わせて形成した共振器構造においても、反射鏡の反射帯域と共振器長とのマッチングの制御性を向上させることができる。
【0092】
特に、請求項2記載の発明では、請求項1記載の面発光レーザにおいて、前記金属を介して接着された接着層には、光を通す金属アパーチャー部が形成され、金属アパーチャー部には、接着層の厚さを固定する接着層厚さ制御層が形成されているので(熱処理等の接着工程で厚さが変わらず、厚さの制御された接着層厚さ制御層を設けているので)、接着層の厚さを厳密に制御でき、ウエハ貼り合わせ面発光レーザにおいて共振器構造を容易に形成できる。すなわち、面発光レーザは反射鏡や共振器長を厳密に合わせる必要があり膜厚制御が重要であり、これを達成できる。
【0093】
また、請求項3記載の発明では、請求項1または請求項2記載の面発光レーザにおいて、前記金属はAu−Sn合金であり、Au−Sn合金の融点は低いが、面発光レーザの使用環境温度範囲よりは高く、適度な融点を持っているので、扱いやすく、素子へのダメージは少なく好ましい。
【0095】
また、請求項4記載の発明では、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、前記少なくとも反射鏡の一部を含んだ領域は、GaP基板とAlGa1−xP(0≦x≦1)系材料からなる半導体分布ブラッグ反射鏡とを少なくとも含むので、容易に99%以上の高反射率が得られ、積層数を低減できる。すなわち、AlP,GaPを終端物質としたAlGaP系材料は、AlAs,GaAsを終端物質としたAlGaAs系材料と同様に屈折率差が大きく、しかもAl組成によらず格子定数が近く、GaP基板上に結晶成長できる。また、AlGaAs系材料に比べてバンドギャップエネルギーが大きいことから、およそ0.55μmより長波長の光を透過する。よって容易に99%以上の高反射率が得られ、積層数を低減できる。特に0.9μmより短波長帯においてAlGaAs系材料よりも積層数を少なくでき、適した半導体分布ブラッグ反射鏡が形成できる。さらに、AlGaP系材料の熱伝導率はAlGaAs系材料よりも大きいので、放熱が良くなり、動作時の温度上昇を抑制でき、低しきい値,高出力化が可能となり、更に温度特性が向上する。
【0096】
また、請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザがアレイ状に配列されて構成されていることを特徴とする面発光レーザアレイであるので、高性能の面発光レーザアレイを実現できる。すなわち、本発明の面発光レーザは、放熱が改善されたので、これをアレイとした場合、他の素子で発生した熱の干渉による特性劣化(しきい値上昇,出力低下など)が低減し、高性能の面発光レーザアレイを実現できる。さらに他の素子への熱の影響を低減できることから、素子間の間隔を狭くできるなどのメリットがある。
【0097】
また、請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とする光送信モジュールであるので、光送信モジュールの信頼性を向上させることができる。すなわち、本発明では、低消費電力であり光ファイバーの伝送損失の小さい長波長帯面発光レーザの信頼性が改善されたので、光送信モジュールの信頼性を向上させることができる。
【0098】
また、請求項7記載の発明によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とする光送受信モジュールであるので、光送受信モジュールの信頼性を向上させることができる。すなわち、本発明では、低消費電力であり光ファイバーの伝送損失の小さい長波長帯面発光レーザの信頼性が改善されたので、光送受信モジュールの信頼性を向上させることができる。
【0099】
また、請求項8記載の発明によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とする光通信システムであるので、光通信システムの信頼性を向上させることができる。すなわち、本発明では、低消費電力であり光ファイバーの伝送損失の小さい長波長帯面発光レーザの信頼性が改善されたので、光通信システムの信頼性を向上させることができる。また、POFを用いることで、安い光源である面発光レーザ、安い光ファイバーであるPOFを用いた経済的な光通信システムを実現できる。面発光レーザを用いていることから高速伝送可能であり、かつ極めて経済的であることから特に一般家庭やオフィスの室内、機器内などの光通信システムに用いることが効果的である。
【0100】
また、請求項9記載の発明によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とするレーザプリンターであるので、温度上昇を低減でき、また、書き込み速度が格段に向上し、書き込みドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷できる。すなわち、本発明の面発光レーザは、低消費電力動作をするので、プリンターのような箱の中の温度上昇を低減できる。また、面発光型なのでアレイ化が容易でしかも通常の半導体プロセスで形成するので、素子の位置制度が高く、同時にマルチビームでの書き込みが容易となり、書き込み速度が格段に向上し、書き込みドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷できる。また同じ書き込みドット密度の場合は印刷速度を早くできる。また、AlGaP系反射鏡を用いた場合、放熱性が改善されるので低消費電力で容易に書き込みに必要な出力が得られる。
【0101】
また、請求項10記載の発明によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とする光ピックアップシステムであるので、通常の光ピックアップシステムはもちろん、ハンディータイプの光ピックアップシステムを実現できる。すなわち、本発明の面発光レーザは、端面発光型半導体レーザに比べて1桁程度消費電力が小さく電力が長持ちすることから、通常の光ピックアップシステムはもちろん、ハンディータイプの光ピックアップシステムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の面発光レーザを示す図である。
【図2】第1の実施例の面発光レーザの作製例を説明するための図である。
【図3】本発明の第2の実施例の面発光レーザを示す図である。
【図4】本発明の第3の実施例の面発光レーザを示す図である。
【図5】本発明の第4の実施例の面発光レーザを示す図である。
【図6】本発明の第5の実施例の面発光レーザアレイを示す図である。
【図7】本発明の光送信モジュールの一例を示す図である。
【図8】本発明の光送受信モジュールの一例を示す図である。
【図9】本発明のレーザプリンターの一例を示す図である。
【図10】図9のレーザプリンターの動作を説明するための図である。

Claims (10)

  1. 基板上に、少なくとも1層の活性層を含む活性領域と、活性層の上部および下部に設けられた第1反射鏡および第2反射鏡を含む共振器構造とを有する面発光レーザにおいて、少なくとも反射鏡の一部を含んだ領域と、少なくとも活性層を含んだ領域とが、金属を介して接着されており、前記少なくとも活性層を含んだ領域は、活性層の上部及び下部に半導体からなる反射鏡の少なくとも一部を含むことを特徴とする面発光レーザ。
  2. 請求項1記載の面発光レーザにおいて、前記金属を介して接着された接着層には、光を通す金属アパーチャー部が形成され、金属アパーチャー部には、接着層の厚さを固定する接着層厚さ制御層が形成されていることを特徴とする面発光レーザ。
  3. 請求項1または請求項2記載の面発光レーザにおいて、前記金属は、Au−Sn合金であることを特徴とする面発光レーザ。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の面発光レーザにおいて、前記少なくとも反射鏡の一部を含んだ領域は、GaP基板とAlGa1−xP(0≦x≦1)系材料からなる半導体分布ブラッグ反射鏡とを少なくとも含むことを特徴とする面発光レーザ。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザがアレイ状に配列されて構成されていることを特徴とする面発光レーザアレイ。
  6. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とする光送信モジュール。
  7. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とする光送受信モジュール。
  8. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とする光通信システム。
  9. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とするレーザプリンター。
  10. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の面発光レーザ、または、請求項5記載の面発光レーザアレイが、光源として用いられていることを特徴とする光ピックアップシステム。
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