以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。本形態においては、ディスクブレーキの一例として電動ディスクブレーキを例にとり説明を行う。
図1は、本発明の第1の形態としての電動ディスクブレーキの全体断面図であり、図2は図1における押圧力センサ近傍を拡大して示した断面図である。
第1の形態における電動ディスクブレーキは、図1に全体構造を示すように、ディスクロータDより車両内側に位置する車両の非回転部(ナックル等、図示せず)に固定されるキャリア1と、キャリア1に形成される一対の支持部(図示せず)にスライドピン(図示せず)を用いてディスクロータDの軸方向(図1中矢印A方向及び矢印B方向)へ摺動可能に支持されたキャリパ2と、キャリア1の一対の支持部間に、ディスクロータDの両面側に位置してその軸方向へ移動可能に支持された一対のブレーキパッド3,4とから概略構成されている。
キャリパ2は、先端側に爪部5を有する爪部材6と、この爪部材6の基端側にボルト(図示せず)により結合された環状基体7と、この基体7に連結されたモータケース8とから構成されている。前記爪部材6の爪部5は、車両外側のブレーキパッド4の背面に近接して配置されている。上記環状基体7とモータケース8とでキャリパケーシング9が構成され、後述するようにキャリパケーシング9内にブレーキパッド3,4をディスクロータDへ押圧する部材が配置されるようになっている。なお、モータケース8の後部開口は蓋板10により覆われている。
上記キャリパケーシング9には、車両内側のブレーキパッド3の背面に当接可能なピストン11(直動部材)と、図示せぬ制御装置により駆動されるモータ12と、このモータ12の回転を直線運動に変換して前記ピストン11を推進する回転直動変換機構であるボールランプ機構13とが内装されている。また、上記モータ12の回転を減速して上記ボールランプ機構13に伝える減速機構14、及びブレーキパッド3,4の摩耗に応じてピストン11の位置を変更するためのパッド摩耗追従機構15も上記キャリパケーシング9に内装されている。上記ピストン11には、車両内側のブレーキパッド3に近接して配置され、ピストン11の推力によりブレーキパッド3を押圧するための押圧部材16が設けられている。また、上記ピストン11の内部に形成された段付の貫通孔17には、押圧部材16によるブレーキパッド3の押圧力を検出する押圧力センサ18が配置されている。
上記モータ12は、モータケース8に嵌合固定されたステータ19と、ステータ19内に配置された中空のロータ20とを備え、ロータ20は、モータケース8に軸受21,22によって回動可能に支持されている。
モータ12は、制御装置(図示せず)からの指令でロータ20を所望トルクで回転させるように作動し、そのロータ20の回転角は、ロータ20の内側に固定したレゾルバロータ23とモータケース8の端板24に固定したレゾルバステータ25とからなる回転検出器26によって検出されるようになっている。
なお、モータケース8には、ステータ19、回転検出器26、及び前記押圧力センサ18を前記制御装置に接続するケーブルL(動力線および信号線)を取り回すためのコネクタ27が取付けられている。
上記ボールランプ機構13は、前記減速機構14を介してモータ12の回転力が伝達されて回転する第1ディスク部材28とこの第1ディスク部材28の回転力を受けて前記ロータ20の軸方向に直動する第2ディスク部材29とからなっている。第1ディスク部材28は、リング状に形成され、キャリパ本体9の環状基体7の内周部に軸受30を介して回動可能に支持されている。第1ディスク部材28と第2ディスク部材29との対向面には、前記ロータ20の軸方向に対して所定の傾斜角を有するランプ溝31,32がそれぞれ複数形成されている。このランプ溝31,32にはボール33が配置され、第1ディスク部材28が回転することにより、ボール33がランプ溝31,32内を移動する。これにより、第2ディスク部材29が第1ディスク部材28から離れてブレーキパッド3の方向へ直動するようになっている。なお、第1の形態においては、上記第1ディスク28、前記モータ12、及び減速機構14にがアクチュエータとして構成され、前記ピストン11と第2ディスク部材29が直動部材を構成している。また、回転直動変換機構としてボールランプ機構13を用いて説明しているが、この他にローラネジ機構やボールネジ機構を用いてもよい。
第2ディスク部材29は、ピストン11と第1ディスク部材28との間をモータケース8内まで延ばされた段付の筒状部34を備えており、この筒状部34の延長端部と後述の支持ロッド53との間には、常時は第2ディスク部材29を図1の右方すなわち第1ディスク部材28側へ付勢する皿ばね35が介装されている。さらに、第2ディスク部材29は、その筒状部34の内周面に形成しためねじ36を前記ピストン11に形成されたおねじ37に螺合させることにより該ピストン11に作動連結されている。第2ディスク部材29側のめねじ36は、ピストン11の全長をほぼカバーする長さを有し、一方、ピストン11のおねじ37は、そのモータ12側端部(後端部)に限定的に形成されている。
前記ピストン11側のおねじ37の長さ、すなわちピストン11と第2ディスク部材29との噛合い長さは、後述するピストン11の推進に必要な強度を確保するに足る大きさとなっており、ここでは、ピストン11の後端側のほぼ半分長がこのおねじ37に提供されている。換言すれば、ピストン11の、押圧部材16に対する連結端側(前端側)のほぼ半分長は非ねじ部38となっており、ここでは、この非ねじ部38が平滑面として構成されている。
一方、第2ディスク部材29側のめねじ36の長さは、前記強度上必要な噛合い長さに、前記パッド摩耗追従機構15による摩耗追従に必要な量をさらに加えた長さを確保するに足る大きさとなっている。
上記減速機構14は、モータ12のロータ20の、ディスクロータD側への延長端部に形成された偏心軸39と、この偏心軸39に回動可能に嵌装された、一対の外歯歯車を有する偏心歯車40と、キャリパケーシング9に固定され前記偏心歯車40の一方の外歯歯車に噛合する第1内歯歯車41と、ボールランプ機構13の第1ディスク部材28の後端側に一体に設けられ、前記偏心歯車40の他方の外歯歯車に噛合する第2内歯歯車42とからなっている。
偏心歯車40は、第1内歯歯車41および第2内歯歯車42との噛合により偏心軸39(ロータ20)の回転に応じて公転運動及び自転運動をする。そして、第1内歯歯車41の歯数と第2内歯歯車42の歯数とが異なっていることによりボールランプ機構13の第1ディスク部材28がロータ20と一定の回転比(減速比)で該ロータ20と逆方向に回転するようになる。
押圧部材16のピストン11側に配置されたカップ状の保持部材43は、キャリパケーシング9の内径部に嵌合され、かつその外周縁部44をキャリパケーシング9の内径段差45に係合させることで、該キャリパケーシング9に抜け不能に固定されている。また、保持部材43の中心部に形成された円形穴46の内周には、前記ピストン11の外周に摺接する円環状のシール部材47が焼付接合されている。
一方、押圧部材16とキャリパケーシング9との間にはダストブーツ48が介装されている。ダストブーツ48のキャリパ本体9側のビード部49は、前記保持部材43の外周部分によりキャリパケーシング9に対して押圧固定されている。
したがって、ピストン11とキャリパケーシング9との間は、シール部材47とダストブーツ48とにより二重にシールされており、モータ12、ボールランプ機構13、減速機構14、パッド磨耗追従機構15への水滴や埃等の異物の浸入を防止している。
上記ピストン11の貫通孔17のモータ側開口部50には、環状部材51が圧入されている。この環状部材51には非円形断面(例えば、六角断面)の孔52が形成されており、孔52には、モータケース8の後端に結合した端板24から延出する支持ロッド53の非円形断面の先端部54が嵌入されている。すなわち、ピストン11は、支持ロッド53により軸方向に摺動可能かつ回転不能に支持されている。
押圧力センサ18の配線55は、コイル状に形成されたカール部56と直線状部57とからなり、直線状部57が環状基体7に形成された孔56に挿通されてコネクタ27及びケーブルLを介して前記制御装置に接続されている。なお、前記カール部57によりピストン11がブレーキパッド3の方向へ推進したときにロータ20の軸方向に伸長するようになっている。これにより、ピストン11の移動によって押圧力センサ18の配線55が断線してしまうことを防止できるようになっている。
図2に詳細に示すように、押圧部材16のピストン11との対向面側には、突起60が形成されている。この突起60は、ピストン11の貫通孔17へブレーキパッド3側の開口部61から挿通され、その先端面62が前記押圧力センサ18に近接して設けられている。突起60の周面63には、角形断面を有する環状の周溝(押圧部材側周溝)64が形成されるとともに、この周溝64よりも突起60の基端側にスプライン65が形成されている。
前記ピストン11の貫通孔17には、上記周溝64に対向するように角形断面を有する環状の周溝(直動部材側周溝)66が形成されている。上記押圧部材16の周溝64とピストン11の周溝66とは、両周溝64,66が対向するときに、押圧部材16が押圧力センサ68を押圧しないように上記突起60の先端面62と押圧力センサ18との間にわずかな隙間が生じる位置となっている。
上記周溝66よりも開口部61側には、上記スプライン65に噛み合うスプライン67が形成されている。上記押圧部材16のスプライン65とピストン11のスプライン67とが噛み合うことで、押圧部材16がピストン11に対して回転しないようになっている。
上記押圧部材16の周溝64とピストン11の周溝66とで形成される隙間には、ゴム製のOリングからなるシール部材(係止部材)68が両周溝64,66内に亘って配置されるように介装されている。そして、シール部材68は、周溝64の底部64aと周溝66の底部66aとにそれぞれ密着している。
また、非制動時に、シール部材68と周溝64の側面64b,64c及び周溝66の側面66b,66cとの間には、それぞれ若干のクリアランスが形成されるようになっている。本形態においては、これらクリアランスにより、押圧部材16がピストン11に対し、その軸方向においてシール部材68に当たることなく、わずかながら移動できるようになっている。
このように構成されているので、製造時やメンテナンス時に押圧部材16のブレーキパッド対向面が重力方向に向いた場合や押圧部材16に引っ張り力が加わったような場合、ピストン11に対して押圧部材16が図中A方向に移動する。このとき、前記クリアランスを超えて押圧部材16が移動すると、シール部材68と周溝64の側面64c及び周溝66の側面66bとが当接して、シール部材68がピストン11及び押圧部材16の軸方向の相対移動を制限する。このため、押圧部材16がピストン11から抜けてしまわないようになっている。
また、シール部材68は周溝64の底部64aと周溝66の底部66aとにそれぞれ密着してシールしているので、ダストブーツ48が破損してしまったときに、押圧力センサ18に水滴や埃等の異物が到達しないようになっている。
つぎに、第2の形態について、図3を示して説明する。なお、第2の形態においては、第1の形態における図2に示す部分の構成が異なるのみであるので、図1に示すような全体の構成についての説明を省略する。
第2の形態は、第1の形態の構成に対してピストンと押圧部材との嵌合形態が異なっており、押圧部材100の突起101に形成された孔102にピストン103の先端部104が挿入されている。この孔102の底面105が後述の押圧力センサ106に近接して設けられている。孔102の内周面107には、角形断面を有する環状の周溝(押圧部材側周溝)108が形成されるとともに、この周溝108よりも底面105側の内周面107にスプライン109が形成されている。
前記ピストン103には貫通孔110が形成されており、貫通孔110内には押圧力センサ106が設けられ、押圧力センサ106は、その先端がピストン103の先端部104から突出した状態で貫通孔110内に配置されている。また、ピストン103の先端側外周面111には、上記周溝108に対向するように角形断面を有する環状の周溝(直動部材側周溝)112が形成されている。上記押圧部材100の周溝108とピストン103の周溝112とは、両周溝108,112が対向するときに、押圧部材100が押圧力センサ106を押圧しないように上記突起101の底面105と押圧力センサ106との間にわずかな隙間が生じる位置となっている。
上記周溝112よりも先端部104側の外周面111には、上記スプライン109に噛み合うスプライン113が形成されている。上記押圧部材100のスプライン109とピストン103のスプライン113とが噛み合うことで、押圧部材100がピストン103に対して回転しないようになっている。
上記押圧部材100の周溝108とピストン103の周溝112とで形成される隙間には、ゴム製のOリングからなるシール部材(係止部材)114が、両周溝108,112内に亘って配置されるように介装されている。
この両周溝108,112とシール部材114との関係は第1の形態と同様になっており、説明を省略する。
上記の構成を有する第2の形態においても、第1の形態と同様の効果を有しており、ブレーキパッド交換作業等のメンテナンス時に、押圧部材100のブレーキパッド対向面が重力方向に向いた場合や押圧部材100に引っ張り力が加わった場合でも、シール部材114がピストン103及び押圧部材100の軸方向の相対移動を制限するため、押圧部材100がピストン103から抜けてしまうようなことがなく、ディスクブレーキのメンテナンス性が向上する。
つぎに、第3の形態について、図4を示して説明する。なお、第3の形態においても、第1の形態における図2に示す部分の構成が異なるのみであるので、第2の形態の説明と同様に、図1に示す全体構成についての説明を省略する。
第3の形態は、第1の形態の構成に対して周溝とスプラインとの位置関係が異なっているのみであり、この異なる構成について説明する。
押圧部材200の突起201の周面203には、角形断面を有する環状の周溝(押圧部材側周溝)204が形成されるとともに、この周溝204よりも突起201の先端面202側にスプライン205が形成されている。
ピストン206の貫通孔207内には、押圧力センサ208が配置され、押圧力センサ208よりもピストン206の開口部209側の貫通孔207内に上記周溝204に対向するように角形断面を有する環状の周溝(直動部材側周溝)210が形成されている。上記周溝210よりも押圧力センサ208側には、上記スプライン205に噛み合うスプライン211が形成されている。上記押圧部材200のスプライン205とピストン206のスプライン211とが噛み合うことで、押圧部材200がピストン206に対して回転しないようになっている。
上記押圧部材200の周溝204とピストン206の周溝210とで形成される隙間には、ゴム製のOリングからなるシール部材(係止部材)212が、両周溝204,210内に亘って配置されるように介装されている。
この両周溝204,210とシール部材212との関係は第1の形態と同様になっており、その説明を省略する。
上記の構成を有する第3の形態においても、第1の形態と同様の効果を有しており、ブレーキパッド交換作業等のメンテナンス時に、押圧部材200のブレーキパッド対向面が重力方向に向いた場合や押圧部材200に引っ張り力が加わった場合でも、シール部材212がピストン206及び押圧部材200の軸方向の相対移動を制限するため、押圧部材200がピストン206から抜けてしまうようなことがなく、ディスクブレーキのメンテナンス性が向上する。
また、第3の形態においては、両周溝208,210を両スプライン205,211よりもピストン206の貫通孔207の開口部209側に配置しているため、ダストブーツ48が破損してしまったときに、両スプライン205,211に水滴や埃等の異物が到達しないようになっている。このため、両スプライン205,211に腐食等が生じ難く、ディスクブレーキの耐久性が向上することになる。
つぎに、第4の形態について、図5を示して説明する。なお、第4の形態においても、第1の形態における図1に示す部分の構成が異なるのみであるので、第2の形態の説明と同様に、図1に示す全体構成についての説明を省略する。
第4の形態は、第1の形態の構成に対して周溝とスプラインとの位置関係、及びシール部材の形状が異なっており、この異なっている構成について説明する。
押圧部材300の突起301の周面303には、角形断面を有する環状の周溝(押圧部材側周溝)304が形成されるとともに、この周溝304の両側にスプライン305a,305bが形成されている。
ピストン306の貫通孔307内には、押圧力センサ308が配置され、押圧力センサ308よりもピストン306の開口部309側の貫通孔207内に上記周溝304に対向するように角形断面を有する環状の周溝(直動部材側周溝)310が形成されている。上記周溝310の両側には、上記スプライン305に噛み合うスプライン311a,311bが形成されている。上記押圧部材300のスプライン305a,305bとピストン306のスプライン311a,311bとが噛み合うことで、押圧部材300がピストン306に対して回転しないようになっている。
上記押圧部材300の周溝304とピストン306の周溝310とで形成される隙間には、ゴム製の断面が四角形の角リングからなるシール部材(係止部材)312が、両周溝304,310内に亘って配置されるように介装されている。
シール部材312は、内周面312aが平面で形成されており、溝304の底部304aに密着するようになっている。シール部材312の外周面312bは図中A方向に向って拡径するテーパ状になっており、その最大径部分が周溝310の底部310aに密着するようになっている。このように、シール部材312の外周面312bが上記のようなテーパ状になっていることで、ピストン306の貫通孔307へ押圧部材300の突起301を挿入する際に、シール部材312による挿入抵抗が低減され、ディスクブレーキの組み付け性が向上する。
また、シール部材312の側面312c,312dは、非制動時に周溝304の側面304b,304cと周溝310の側面310b,310cとにそれぞれ若干のクリアランスが形成されるようになっている。本形態においては、これらクリアランスにより、押圧部材300がピストン306に対し、その軸方向においてシール部材312に当たることなく、わずかながら移動できるようになっている。
このように構成されているので、製造時やメンテナンス時に押圧部材300のブレーキパッド対向面が重力方向に向いた場合や押圧部材300に引っ張り力が加わったような場合、ピストン306に対して押圧部材300が図中A方向に移動する。このとき、前記クリアランスを超えて押圧部材300が移動すると、シール部材312と周溝304の側面304c及び周溝310の側面310bとが当接して、シール部材312がピストン306及び押圧部材300の軸方向の相対移動を制限する。このため、押圧部材300がピストン306から抜けてしまわないようになっている。
つぎに、第5の形態について、図6を示して説明する。なお、第5の形態においても、第1の形態における図2に示す部分の構成が異なるのみであるので、第2の形態の説明と同様に、図1に示す全体構成についての説明を省略する。
第5の形態は、第1の形態の構成に対し、シール部材によってピストンに対する押圧部材の抜け止めを行っていない点が異なっており、この異なる構成について説明する。
押圧部材400の突起401の周面402には、角形断面を有する環状の周溝403が形成されるとともに、この周溝403よりも突起401の基端側にスプライン405が形成されている。上記周溝403内には、ゴム製のOリングからなるシール部材406が挿入され、このシール部材406により後述する貫通孔409に設けられる押圧力センサ410への異物の侵入が阻止される。
スプライン405の軸方向中央部には押圧部材400の径方向が長手方向となる長方形断面を有する環状の周溝(押圧部材側周溝)407が形成されている。
ピストン408の貫通孔409内には、押圧力センサ410が配置されるとともに、この押圧力センサ410に前記押圧力部材400の先端面404が対向するように前記突起401が挿入されるようになっている。
貫通孔409の押圧力センサ410よりも開口部411側には、シール部材406の外周側が密接する小径内周部412が形成されている。この小径内周部412よりも開口部411側には、上記スプライン405に噛み合うスプライン413が形成されている。上記押圧部材400のスプライン405とピストン408のスプライン413とが噛み合うことで、押圧部材400がピストン408に対して回転しないようになっている。
スプライン413の軸方向中央部には、前記押圧部材400の周溝407に対向して、ピストン408の軸方向が長手方向となる長方形断面を有する環状の周溝(直動部材側周溝)414が形成されている。
上記押圧部材400の周溝407とピストン408の周溝414とで形成される隙間は、押圧部材400及びピストン408の径方向が長手方向となる長方形断面を有して環状に形成される。この隙間には、金属製のCリング(係止部材)415が、両周溝407,414内に亘って配置されるように介装されている。
このCリング415を両周溝407,414内に亘って配置するため、周溝407は、Cリング415の外周がピストン408側スプライン413の山の先端に当接した際にも、Cリング415全体が周溝407内に収まるような溝深さに形成されている。このため、押圧部材400の突起401をピストン408の貫通孔409に挿入する際に、その挿入がCリング415によって阻害されないようになっている。また、周溝414の溝深さは、上記した周溝407の溝深さよりも浅く、周溝414の底部にCリング415の外周が当接したときに、Cリング415の断面中心とスプライン405,413の嵌合中心とが一致するように設定されている。なお、この周溝414の溝深さを変更することで、押圧部材400に任意の引っ張り力を加えたときに、ピストン408から押圧部材400を抜け難くしたり、抜けやすくすることが可能である。
上述のように、前記Cリング415が両周溝407,414に亘って配置されることによって、ブレーキパッド交換作業等のメンテナンス時に、押圧部材400のブレーキパッド対向面が重力方向に向いた場合や押圧部材400に作業者の意に反した引っ張り力が加わったような場合でも、Cリング415がピストン408及び押圧部材400の軸方向の相対移動を制限するため、押圧部材400がピストン408から抜けてしまうようなことがなく、ディスクブレーキのメンテナンス性が向上する。
なお、上述した実施形態においては、ディスクブレーキの一例として電動モータの回転によってピストン(直動部材)を推進する電動ディスクブレーキを例に説明をおこなった。しかしながら、これに限らず、押圧力センサからの検出信号によってピストンを推進する制御が行われるものであれば、超音波モータや圧電素子等のアクチュエータを用いた電動ディスクブレーキや、液圧アクチュエータで駆動されるディスクブレーキに適用してもよい。