JP2005089363A - 生成アダマンタン誘導体の分離精製方法及び原料の回収方法 - Google Patents

生成アダマンタン誘導体の分離精製方法及び原料の回収方法 Download PDF

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英俊 大野
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田中  慎司
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小土井  浩一
Naoyoshi Hatakeyama
直良 畠山
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Abstract

【課題】 アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する化合物を原料とし、上記酸性水酸基のうち少なくとも1個を変換してアダマンタン誘導体を生成させる反応において、反応混合物から、原料と目的生成物を、汎用的かつ工業的に分離する方法を提供する。
【解決手段】 アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する化合物を原料とし、上記酸性水酸基のうち少なくとも1個を変換してアダマンタン誘導体を生成させる反応において、該生成アダマンタン誘導体と未反応の原料を分離するにあたり、該生成アダマンタン誘導体と原料を含む反応混合物を水と実質的に完全混合しない有機溶媒に溶解させた後、アルカリ性水溶液で原料を抽出することを特徴とする生成アダマンタン誘導体の分離精製方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、生成アダマンタン誘導体の分離精製方法及び原料の回収方法に関し、より詳しくは、アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する化合物を原料とし、上記酸性水酸基のうち少なくとも1個を変換してアダマンタン誘導体を生成させる反応において、該生成アダマンタン誘導体を効率的に分離精製する方法及び原料を効率的に回収する方法に関する。
アダマンタンは、ダイヤモンドの構造単位と同じ構造を持つ、対称性の高いカゴ型化合物として知られている。化学物質としては、(1)分子の歪みエネルギーが少なく、熱安定性に優れ、(2)炭素密度が大きいため脂溶性が大きく、(3)昇華性があるにもかかわらず、臭いが少ないなどの特徴を有しており、1980年代からは医薬品分野においてパーキンソン氏病治療薬,インフルエンザ治療薬中間体として注目されていたが、近年、アダマンタン誘導体の有する耐熱性や透明性などの特性が、半導体製造用フォトレジスト,磁気記録媒体,光ファイバー,光学レンズ,光ディスク基板原料などの光学材料分野や、耐熱性プラスチック,塗料,接着剤などの機能性材料、化粧品、潤滑油などの分野で注目され、その用途が増大しつつある。また、医薬分野においても抗癌剤,脳機能改善,神経性疾患,抗ウイルス剤の中間体としての需要が増大してきている。
そこで、アダマンタノールやアダマンタンジオールを始めとする、アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有するアダマンタン化合物が中間体の出発原料として脚光を浴びるようになった。アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する化合物を原料とし、上記酸性水酸基のうち少なくとも1個を変換してアダマンタン誘導体を生成させる反応を行ない、その後、未反応の原料を分離し、反応生成物を単離する方法として、蒸留あるいは再結晶が一般的かつ工業的な手法である。また、実験室レベルにおいてはカラムによる分離も可能である。しかしながら、原料と反応生成物の沸点が近い場合や反応生成物が熱に極めて不安定で重合や分解を起こす場合、蒸留による精製は不可能である。また、反応混合物が固体でない場合、再結晶による精製はできない。さらに、カラムによる分離精製は、熱に不安定で、固体でない反応混合物に対しては極めて有効であるが、スケールアップが極めて困難であり、工業的な手法としては用いることはできない。したがって、汎用的に使用できる工業的分離精製法は未だ確立されていないのが現状である。
本発明は、上記状況下でなされたもので、アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する化合物を原料とし、上記酸性水酸基のうち少なくとも1個を変換してアダマンタン誘導体を生成させる反応において、反応混合物から、原料と目的生成物を、汎用的かつ工業的に分離する方法を提供するものである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、抽出法を採用することにより、上記課題を達成しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
1.アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する化合物を原料とし、上記酸性水酸基のうち少なくとも1個を変換してアダマンタン誘導体を生成させる反応において、該生成アダマンタン誘導体と未反応の原料を分離するにあたり、該生成アダマンタン誘導体と原料を含む反応混合物を水と実質的に完全混合しない有機溶媒に溶解させた後、アルカリ性水溶液で原料を抽出することを特徴とする生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
2.アダマンチル基が、ハロゲン原子により1〜15個置換されているものである上記1記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
3.アルカリ性水溶液が、pH7を超える緩衝液である上記1又は2に記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
4.原料が、ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールである上記1〜3のいずれかに記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
5.ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールの酸性水酸基を変換して得られる生成アダマンタン誘導体が、3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル アクリレート及び/又はペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジアクリレートである上記4記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
6.原料のペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールと生成物の3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル アクリレートを分離する方法において、抽出終了後のアルカリ性水溶液のpHが11以下である上記項4又は5に記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
7.ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールの酸性水酸基を変換して得られる生成アダマンタン誘導体が、3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル メタクリレート及び/又はペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジメタクリレートである上記4記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
8.原料のペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールと生成物の3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル メタクリレートを分離する方法において、抽出終了後のアルカリ性水溶液のpHが11以下である上記4又は7に記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
9.アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する化合物を原料とし、上記酸性水酸基のうち少なくとも1個を変換してアダマンタン誘導体を生成させる反応において、該生成アダマンタン誘導体と原料を含む反応混合物を水と実質的に完全混合しない有機溶媒に溶解させた後、アルカリ性水溶液で原料を抽出し、次いでこの抽出液に酸を加えてpHを5以下とし、さらに水と実質的に完全混合しない有機溶媒で原料を抽出することを特徴とする、アダマンチル基及び少なくとも1個の酸性水酸基を有する原料の回収方法。
本発明によれば、アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する化合物を原料とし、上記酸性水酸基のうち少なくとも1個を変換してアダマンタン誘導体を生成させる反応において、反応混合物から、原料と目的生成物を、汎用的かつ工業的に分離する方法を提供することができる。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本願の第一発明は、アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する化合物を原料とし、上記酸性水酸基のうち少なくとも1個を変換してアダマンタン誘導体を生成させる反応において、該生成アダマンタン誘導体と未反応の原料を分離するにあたり、該生成アダマンタン誘導体と原料を含む反応混合物を水と実質的に完全混合しない有機溶媒に溶解させた後、アルカリ性水溶液で原料を抽出することを特徴とする生成アダマンタン誘導体の分離精製方法である。
本願の第二発明は、アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する化合物を原料とし、上記酸性水酸基のうち少なくとも1個を変換してアダマンタン誘導体を生成させる反応において、該生成アダマンタン誘導体と原料を含む反応混合物を水と実質的に完全混合しない有機溶媒に溶解させた後、アルカリ性水溶液で原料を抽出し、次いでこの抽出液に酸を加えてpHを5以下とし、さらに水と実質的に完全混合しない有機溶媒で原料を抽出することを特徴とする、アダマンチル基及び少なくとも1個の酸性水酸基を有する原料の回収方法である。
原料のアダマンチル基としては、特に限定されないが、ハロゲン原子により1〜15個置換されているものが好ましい。
原料のアダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する化合物として、具体的には、ペルフルオロ−1−アダマンタノール、2−H−ペルフルオロ−2−アダマンタノール、ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール、ペルフルオロアダマンタン−1,3,5−トリオール、ビストリフルオロメチルアダマンタン−1−メタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロプロピル)アダマンタン、ペルフルオロアダマンタン−1−メタノール、ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジメタノール、5−フルオロ−2−アダマンタノール、5−クロロ−2−アダマンタノール、5−ブロモ−2−アダマンタノール、4−フルオロ−2−アダマンタノール、4−クロロ−2−アダマンタノール、4−ブロモ−2−アダマンタノールなどを挙げることができるが、なかでも、ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールが好ましい。
上記の酸性水酸基の少なくとも1個を変換する反応として、エステル化反応、エーテル化反応、ハロゲン化反応、還元水素化反応、コッホ反応、ベンジル化反応、トリメチルシリル化反応などを挙げることができる。
好ましい態様として、具体的には、ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールをアクリル酸クロライドによってエステル化させ、3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル アクリレート及び/又はペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジアクリレートを得る反応、ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールをメタクリル酸クロライドによってエステル化させ、3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル メタクリレート及び/又はペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジメタクリレートを得る反応を挙げることができる。
次に、本発明の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法及び原料の回収方法に使用する試薬類について述べる。
「水と実質的に完全混合しない有機溶媒」とは、有機溶媒中に溶解する水の量が5容量%以下のものをいい、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、トルエン、ベンゼンなどの芳香族系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒を挙げることができる。
アルカリ性水溶液として、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液又はpHが7を超える緩衝溶液を使用することができる。なかでも、pHが7を超える緩衝溶液が好ましく、例えば、リン酸第二水素カリウム−水酸化ナトリウム緩衝溶液、ホウ酸−水酸化ナトリウム緩衝溶液、炭酸水素ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝溶液、リン酸二水素ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝溶液、水酸化ナトリウム−塩化カリウム緩衝溶液などを挙げることができる。
最後に、本願の第一発明及び第二発明をまとめて、操作手順に従って説明する。
(1)反応生成液を濃縮し、水と実質的に完全混合しない有機溶媒を反応生成濃縮液に対し、1〜100倍(容量)程度加え溶解させる。反応溶媒として、水と実質的に完全混合しない有機溶媒を用いている場合には、前記の濃縮操作を省略することができる。
(2)(1)の溶液にアルカリ性水溶液を加える。加える容量については特に限定されないが、(1)の溶液に対し、通常1/100〜100倍(容量)程度である。アルカリ性水溶液の量が上記範囲であれば、洗浄効果がよく、廃水処理も容易となる。好ましくは1/10〜10倍(容量)である。アルカリ性水溶液のpHは特に限定されないが、反応生成物によっては分解等を起こす可能性がある。このような場合には、反応生成物が分解しない範囲のpHの緩衝溶液を用いるとよい。
(3)有機層と水層を十分に混合する。混合方法は攪拌等一般的な方法が採用される。混合時間については特に限定されないが、通常数秒〜1日程度である。上記範囲にあれば、原料の抽出が充分に行われると共に、生産性も良好である。好ましくは数分〜1時間である。
(4)静置後、液液分離を行う。有機層の原料残存量を分析し、目標の残存量になるまで、(2)、(3)の操作を繰り返す。
(5)(4)の有機層を濃縮することにより、原料が除去され、反応生成物だけを得ることができる。
(6)(4)で分離した水層に塩酸、硫酸等の酸を加えpHを調整する。ここでpHの範囲は、化合物によっては分解等の望ましくない反応を起こす可能性があるので、5以下の範囲で適宜選定される。このpHが5を超えると、次の(8)、(9)の操作で抽出が不充分となる。
(7)(6)の溶液に水と実質的に完全混合しない有機溶媒を加える。加える容量としては特に限定されないが、抽出効率及び経済性の面から、水層に対し、通常1/100〜100倍(容量)、好ましくは1/10〜10倍(容量)である。
(8)有機層と水層を十分に混合する。混合方法は攪拌等一般的な方法が採用される。混合時間については特に限定されないが、抽出効率及び生産性の面から、通常数秒〜1日、好ましくは数分〜1時間である。
(9)静置後、液液分離を行う。有機層の原料残存量を分析し、まだ水層側に原料が残存している場合、(7)、(8)の操作を繰り返す。
(10)(9)の有機層を濃縮することにより、未反応の原料が回収される。
なお、原料のペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールと生成物の3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル アクリレートを分離する場合には、抽出終了後のアルカリ水溶液のpHを11以下に調整するように操作する方が抽出効率上好ましい。また、原料のペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールと生成物の3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル メタクリレートを分離する場合も同様に、抽出終了後のアルカリ水溶液のpHを11以下に調整するように操作する方が抽出効率上好ましい。
次に、実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
製造例1:ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールとアクリル酸クロライドの反応による3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル アクリレート及びペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジアクリレートの製造
攪拌羽根を取り付けた1リットル三つ口フラスコにペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール126g(300ミリモル)を入れ、ジエチルエーテル600ミリリットル及びトリエチルアミン36.4g(360ミリモル)を加え、攪拌をしながら溶解させた。フラスコを氷浴に浸し、0℃に保ちながら、ジエチルエーテル600ミリリットルで希釈したアクリル酸クロライド24.4g(270ミリモル)を滴下した。4時間後、フラスコに純水100ミリリットル加え、反応を停止させた。1リットルの分液ロートに移し、水層を分離した。さらに、純水200ミリリットルを加えて攪拌後、静置をして、水層を分離した。この操作を2回行った。水洗後の有機層の成分をガスクロにより分析したところ、ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール、3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル アクリレート、ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジアクリレートはそれぞれ154ミリモル、129ミリモル、17ミリモルであった。
実施例1:ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールと3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル アクリレート及びペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジアクリレートの抽出分離
製造例1の操作により得られたペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール、3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル アクリレート及びペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジアクリレートの混合物のジエチルエーテル溶液を分液ロートに入れ、pH9.5のホウ酸−水酸化ナトリウム緩衝溶液(ホウ酸濃度:0.3モル/リットル)500ミリリットルを加え、攪拌後、静置して水層を分離した。この操作を3回繰り返した。操作終了後の、有機層の成分をガスクロにより分析した。結果を第1表に示す。また、水層のpHを測定したところ9.3であった。有機層からはペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールのみが除去され、3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル アクリレート及びペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジアクリレートは水層へ抽出されることなく、また分解も起こっていないことがわかる。
Figure 2005089363
実施例2:水層からのペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールの回収
実施例1からの水層に塩酸を加え、pHを1に調整した。水層を分液ロートに移し、ジエチルエーテル300ミリリットルを加え、攪拌後、静置して液液分離を行った。同様の操作で水層からの抽出を3回行った。有機層をまとめて、硫酸マグネシウムで乾燥後、ジエチルエーテルを留去したところ、ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール60gが回収された。
製造例2:ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールとメタクリル酸クロライドの反応による3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル メタクリレート及びペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジメタクリレートの製造
攪拌羽根を取り付けた1リットル三つ口フラスコにペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール126g(300ミリモル)を入れ、テトロヒドロフラン600ミリリットル及びトリエチルアミン36.4g(360ミリモル)を加え、攪拌をしながら溶解させた。フラスコを氷浴に浸し、0℃に保ちながら、テトラヒドロフラン600ミリリットルで希釈したメタクリル酸クロライド28.2g(270ミリモル)を滴下した。4時間後、フラスコに純水100ミリリットル加え、反応を停止させた。1リットルの分液ロートに移し、水層を分離した。さらに、水層にジエチルエーテル300ミリリットルを加えて2回抽出した。有機層をまとめて、純水100ミリリットルで2回水洗した。水洗後の有機層の成分をガスクロにより分析したところ、ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール、3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル メタクリレート、ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジメタクリレートはそれぞれ163ミリモル、130ミリモル、7ミリモルであった。
実施例3:ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールと3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル メタクリレート及びペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジメタクリレートの抽出分離
製造例2の操作により得られたペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール、3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル メタクリレート及びペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジメタクリレートの混合物のジエチルエーテル溶液を分液ロートに入れ、pH9.5のホウ酸−水酸化ナトリウム緩衝溶液(ホウ酸濃度:0.3モル/リットル)500ミリリットルを加え、攪拌後、静置して水層を分離した。この操作を3回繰り返した。操作終了後の、有機層の成分をガスクロにより分析した。結果を第2表に示す。また、水層のpHを測定したところ9.2であった。有機層からはペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールのみが除去され、3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル メタクリレート及びペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジメタクリレートは水層へ抽出されることなく、また分解も起こっていないことがわかる。
Figure 2005089363
実施例4:水層からのペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールの回収
実施例3からの水層に塩酸を加え、pHを1に調整した。水層を分液ロートに移し、ジエチルエーテル300ミリリットルを加え、攪拌後、静置して液液分離を行った。同様の操作で水層からの抽出を3回行った。有機層をまとめて、硫酸マグネシウムで乾燥後、ジエチルエーテルを留去したところ、ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール60gが回収された。

Claims (9)

  1. アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する化合物を原料とし、上記酸性水酸基のうち少なくとも1個を変換してアダマンタン誘導体を生成させる反応において、該生成アダマンタン誘導体と未反応の原料を分離するにあたり、該生成アダマンタン誘導体と原料を含む反応混合物を水と実質的に完全混合しない有機溶媒に溶解させた後、アルカリ性水溶液で原料を抽出することを特徴とする生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
  2. アダマンチル基が、ハロゲン原子により1〜15個置換されているものである請求項1記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
  3. アルカリ性水溶液が、pH7を超える緩衝液である請求項1又は2に記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
  4. 原料が、ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールである請求項1〜3のいずれかに記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
  5. ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールの酸性水酸基を変換して得られる生成アダマンタン誘導体が、3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル アクリレート及び/又はペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジアクリレートである請求項4記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
  6. 原料のペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールと生成物の3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル アクリレートを分離する方法において、抽出終了後のアルカリ性水溶液のpHが11以下である請求項4又は5に記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
  7. ペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールの酸性水酸基を変換して得られる生成アダマンタン誘導体が、3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル メタクリレート及び/又はペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオール ジメタクリレートである請求項4記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
  8. 原料のペルフルオロアダマンタン−1,3−ジオールと生成物の3−ヒドロキシ−1−ペルフルオロアダマンチル メタクリレートを分離する方法において、抽出終了後のアルカリ性水溶液のpHが11以下である請求項4又は7に記載の生成アダマンタン誘導体の分離精製方法。
  9. アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する化合物を原料とし、上記酸性水酸基のうち少なくとも1個を変換してアダマンタン誘導体を生成させる反応において、該生成アダマンタン誘導体と原料を含む反応混合物を水と実質的に完全混合しない有機溶媒に溶解させた後、アルカリ性水溶液で原料を抽出し、次いでこの抽出液に酸を加えてpHを5以下とし、さらに水と実質的に完全混合しない有機溶媒で原料を抽出することを特徴とする、アダマンチル基及び酸性水酸基1個以上を有する原料の回収方法。
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