JP2005083406A - 保持器及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 射出成型により、真円度や剛性の高いものとして製造することができる保持器及びその製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】 転がり軸受1の一部を構成し、金型による射出成型により製造される樹脂製の保持器5であって、これを製造する際、その金型は、3あるいは4点のゲート12を有しており、且つ、保持器5肉厚tの保持器5外径Rに対する比が0.05〜0.15で、この保持器5外径Rを10mm以上としている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、転がり軸受において複数の転動体を保持するために組み込まれ、射出成型によって製造される樹脂製の保持器に関し、特に、オルタネータやアイドル ステップ システム等の自動車用補機に取り付けられる転がり軸受の保持器、及びその製造方法に関するものである。
従来より、転がり軸受は、図8((B)は(A)のA−A断面図)に示すように、外輪2、内輪3、外輪2と内輪3の間に介在する転動体4、複数の転動体4を保持する保持器5、及び軸受内に潤滑剤を密封するシール6から構成されたものが一般的である。保持器5としては、図9に示すような冠型保持器5が多用されている。この冠型保持器5は、円環状の基部9と、この基部9の周方向に等間隔で配置された複数のポケット10等から成っている。
この転がり軸受1の中でも、オルタネータやアイドル ステップ システム等の自動車用補機に取り付けられる一方向クラッチ内蔵プーリー等に用いられる軸受は、最大130℃以上、1800rpm以上の高温・高速回転下で使用される。また、軽量化のために、保持器5の材料としては合成樹脂を用いる場合が多く、半径方向の肉厚は薄肉化を行っている。
保持器5に用いられる合成樹脂の具体的な例としては、特許文献1にも開示されているように、46ナイロン樹脂、66ナイロン樹脂、9Tナイロン樹脂、ポロフェニレンサルファイド樹脂等が挙げられるが、熱可塑性樹脂であれば、どの樹脂であっても良い。これらは単独又は2種類以上を任意の割合で混合して用いる。この合成樹脂の高温での剛性を高めるために、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ粒子、チタン酸カリウムウィスカー等を単独又は2種類以上を10〜40wt%で混合し、高温での剛性を高める場合も多い。
この樹脂製の保持器5は、図10に示すように、1点、あるいは図11に示すように、2点のゲート12を持った金型を用いて射出成型により製造されており、樹脂の成型時に分流した溶融材料の流れの合流部(ウェルド部)も1個所あるいは2個所となる。同図は、図示しない金型による射出成型で製造された保持器5が、その際に同時に形成されるスプルー13とランナー14を有する状態で示している。
特開2002−122148号公報、3頁
しかしながら、従来の上記樹脂製の保持器5においては、通常の厚さを持つものでは特に問題ないが、薄肉の保持器では、次のような問題が生じることがある。 上記ウェルド部は、溶融材料の融着が不完全であるため、ウェルド部以外の部分と比較して剛性が低くなる。その理由は、保持器に使用する樹脂は、一般に、ガラス繊維等の添加剤で強化されたものが多いが、ウェルド部では樹脂組成物が含んでいる添加剤の繊維が合流した相手の樹脂組成物に混入していない状態、即ち、合流した樹脂組成物同士が密着しただけの状態になっているためである。
また、樹脂を射出成型すると、溶解した樹脂が固化する過程で体積収縮が生じるので、成型物の寸法は金型の寸法よりも小さくなる。この収縮過程において、剛性の低いウェルド部に変形が集中するため、結果としてウェルド部に屈曲が生じ、真円度の低下の原因となるという問題点があった。
特に、自動車用補機に用いられる保持器は、瞬間的あるいは長期的に、高温・高速回転下で使用される。ここで、高温とは80℃以上で最大140℃、高速回転とは9000rpm以上で最大18000rpmである。一般的に、溶融樹脂はそのような高温条件下では剛性が低くなるので、熱膨張・遠心力による変形が生じる場合があるが、特に、射出成型時の真円度が低い場合は、それらの変形量が顕著となり、騒音、回転不良の原因になるという問題点があった。
本発明は、上述した従来例の有する不都合を改善し、射出成型により、真円度や剛性の高いものとして製造できる保持器及びその製造方法を提供することを課題としている。
上記課題を達成するために、本発明では、転がり軸受の一部を構成し、金型による射出成型により製造される樹脂製の保持器及びその製造方法において、前記金型は、3あるいは4点のゲートを有し、保持器肉厚の保持器外径に対する比が0.05〜0.15であり、且つ、この保持器外径は10mm以上であることを特徴としている。
以上のように製造され、又構成されたことで、溶融樹脂の流動性やガラス繊維等の配向性が向上し、且つ、3あるいは4個所のウェルド部により固化時の歪みや変形が周方向に分散されるため、保持器の半径方向の変形量が極力抑えられ、真円度及び剛性の高い保持器が製造される。
したがって、本発明の保持器は、高温・高速回転下の環境条件であっても、熱膨張、遠心力による変形は小さく、高い真円度が維持された状態で使用することができる。
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施形態を示す保持器(ゲート数3、ポケット数9)の模式図、図2は保持器製造時におけるゲート位置とウェルド位置を示す説明図である。
本発明に関わる転がり軸受は、図8に示したように、外輪2、内輪3、外輪2と内輪3の間に介在する転動体4、複数の転動体4を保持する保持器5、及び軸受内に潤滑剤を密封するシール6から構成されている。保持器5としては、図9に示した冠型保持器5、あるいは揉み抜き型保持器が考えられるが、使用目的により材料と共に検討される。
自動車用補機等に用いる軸受は、軽量化のために、保持器5の材料としては合成樹脂を用いる場合がある。その合成樹脂の例としては、上記従来技術で示した通りであるが、使用環境が高温の場合は46ナイロン樹脂が好ましい。
図1において、第1の実施形態の冠型保持器5の形状は、薄肉であり、肉厚tの保持器5外径Rに対する比(t/R)が0.05〜0.15(若しくは0.1)であり、且つ、この保持器5外径Rは10mm以上である。
t/Rの下限を0.05としたのは、0.05より小さい場合、薄く、剛性が低過ぎるため、保持器として機能しないし、薄過ぎて、ゲート数を4にしても精度不足になる。
上限を0.15としたのは、0.15より大きい場合、溶融樹脂の接合面積が十分大きいため、剛性も大きくなるので、ゲート数を1あるいは2としても問題ない。しかし、0.15より大きい場合、重量が大きくなり、最大130℃で18000rpmの高温・高速回転下での使用には適さない。
また、保持器5外径を10mm以上としたのは、10mmより小さい場合、溶融樹脂の流動長さは十分小さく、添加剤は全周方向にわたり略等しくなる。例えば、外径が10mmである場合、溶融樹脂の流動長はゲート1点で15.7mm、ゲート2点で7.85mmとなり十分に小さい。そのため、ゲートを2点以下としても、最大130℃、18000rpmと高温・高速回転下での使用できる程度の真円度が得られる。(特許文献1参照)。
同図に示すように、この冠型保持器5は、9つのポケット10を有していて、3つのゲート12を有する金型(図示しない)により射出成型により製造する。同図において、ポケット10の中心を一点鎖線で示し、ゲート12は模式的に示している。3つのゲート12は各々ポケット10の中心に位置している。この場合、図2にも示すように、ウェルド部11は2つのポケット10間の肉厚の厚い部分に周方向等間隔に配置することができるので、各ウェルド部11での溶融樹脂の接合面積が大きくなり、全体の剛性を高めることができる。
そして、ゲート数を3(若しくは4)とすることにより、従来の1あるいは2点ゲート方式と比較して、溶融樹脂の流動性が向上し、ガラス繊維等の添加剤の配向性も向上するので、剛性が大きくなる。また、ゲート12(又はウェルド部11)を周方向に均等に配置しているので、射出成型の固化時の歪み・変形が周方向に分散され、体積収縮率が全周にわたって一様となり、保持器の真円度が高くなる。
この時の、保持器5の半径方向の変形量の半径方向の肉厚tとの比は、0〜0.25(又は0.21)、また、半径方向の変形量の外径Rとの比は、0〜0.025(又は0.022)となっており、半径方向の変形量が極力抑えられているので、保持器5の真円度が高くなる理由が分かる。
また、ゲート12を保持器5の内径面側若しくは外径面側に設置することで、保持器5の軸方向の歪みを最小限に抑えることができる。特に、この実施形態のように、ゲート12を保持器5の内径面側に設置することにより、スプールランナ(廃材)量が減少し、低コスト化にも寄与するものとなる。
したがって、本発明により製造された保持器は、真円度が高く、剛性が大きいため、高温・高速回転下で使用しても、熱膨張や遠心力による変形や歪みは小さく、真円度が維持されるので、軸受寿命を向上させることができる。
図3は図1においてウェルド位置をポケット中心位置とした場合を示す模式図である。
上記ポケット数9の保持器5をゲート数3の金型で製造する場合、図3に示すように、ゲート12を2つポケット10間の中心の肉厚部に設置した場合、ウェルド部11はポケット10の中心位置となってここは薄肉部であるから、剛性が小さくなる。したがって、このような構成は不適当である。
図4は図1においてゲート位置をややずらした場合を示す模式図である。
しかし、図4に示すように、ゲート12位置をポケット10間の中心から所定量、例えばポケット10間の距離の1/4だけずらして設置しても、ウェルド部11はポケット10間の肉厚部範囲内に位置することになるため、この構成で保持器5を製造しても良い。要するに、ウェルド部11が、保持器5のポケット10間の肉厚部範囲内に位置するようにゲート12位置を設定すれば良い。
図5は第2の実施形態を示す保持器(ゲート数3、ポケット数18)の模式図である。
この第2の実施形態は、上記第1の実施形態と略同様であり、同一部材には同一番号を付している。異なっているのは、冠型保持器50は、ポケット数が18になっている点である。この場合、3つのゲート12を各々、2つのポケット10間の中心に置くと、ウェルド部11もポケット10間の中心に位置し、肉厚部分に周方向均等に配置することができる。このため、上記第1の実施形態と同様の作用効果を期待することができる。
図6は第3の実施形態を示す保持器(ゲート数4、ポケット数16)の模式図である。
この第3の実施形態は、上記第2の実施形態と略同様であり、同一部材には同一番号を付している。異なっているのは、冠型保持器51は、ゲート数が4、ポケット数が16になっている点である。この場合、4つのゲート12を各々、2つのポケット10間の中心に置くと、ウェルド部11もポケット10間の中心に位置し、肉厚部分に周方向均等に配置することができる。このため、上記第1の実施形態と同様の作用効果を期待することができる。
以上の実施形態から、保持器の金型のゲート数は、3あるいは4点とし、ポケット数はゲート数が約数となるように設定するのが好ましい。それによって、保持器の肉厚の厚い部分に周方向均等にウェルド部11を配置することが可能となるので、上記の如く、溶融樹脂の接合面積が大きくなり、剛性を向上させることができる。
また、上記実施形態において、ゲート数を5点以上としなかった理由については、金型形状が複雑になり、内径方向に設置するのは空間的に困難であると共に、高コストになるためである。
さらに、金型のゲート数と上記t/Rとの関係を示す実験データの表を図7に示している。表中、○は製造された保持器が規格内、×は規格外になったことをそれぞれ示している。この実験結果から、t/Rが上記範囲(0.05〜0.15)では、ゲート数は3あるいは4が好ましいことは明らかである。
本発明の第1の実施形態を示す保持器(ゲート数3、ポケット数9)の模式図である。 保持器製造時におけるゲート位置とウェルド位置を示す説明図である。 図1においてウェルド位置をポケット中心位置とした場合を示す模式図である。 図1においてゲート位置をややずらした場合を示す模式図である。 第2の実施形態を示す保持器(ゲート数3、ポケット数18)の模式図である。 第3の実施形態を示す保持器(ゲート数4、ポケット数16)の模式図である。 ゲート数とt/Rとの関係を示す実験データの表である。 従来の転がり軸受を示す構成図である。 従来の冠型保持器を示す斜視図である。 従来の保持器の製造方法(ゲート数1)を示す構成図である。 従来の保持器の製造方法(ゲート数2)を示す構成図である。
符号の説明
1 転がり軸受
2 外輪
3 内輪
4 転動体
5 保持器
10 ポケット
11 ウェルド部
12 ゲート部

Claims (3)

  1. 転がり軸受の一部を構成し、金型による射出成型により製造される樹脂製の保持器において、
    保持器肉厚の保持器外径に対する比が0.05〜0.15であり、且つ、この保持器外径は10mm以上であることを特徴とする保持器。
  2. 転がり軸受の一部を構成し、金型による射出成型により製造される樹脂製の保持器の製造方法において、
    前記金型は、3あるいは4点のゲートを有し、保持器肉厚の保持器外径に対する比が0.05〜0.15であり、且つ、この保持器外径は10mm以上であることを特徴とする保持器の製造方法。
  3. 高温下の自動車用補機に用いられる転がり軸受の一部を構成し、金型による射出成型により製造される樹脂製の保持器の製造方法において、
    前記金型は、3あるいは4点のゲートを有し、保持器肉厚の保持器外径に対する比が0.05〜0.15であり、且つ、この保持器外径は10mm以上であることを特徴とする保持器の製造方法。
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