JP2005074243A - 汚染コントロール要素の保持材及び汚染コントロール装置 - Google Patents

Abstract

【課題】キャンニングの作業性がよく、作業中に汚染コントロール要素と汚染コントロール要素の保持材とが分離することがなく、しかも耐熱性、面圧保持性、そして耐風蝕性に優れた汚染コントロール要素の保持材を提供すること。
【解決手段】繊維材料のマットからなり、マットの外周面及び内周面のそれぞれにおいて少なくとも、高温条件下で分解して消散可能なラテックスからなる摩擦力／密着力コントロール剤が含浸されており、マットの内周面に含浸された摩擦力／密着力コントロール剤の固形分含有量が、マットの外周面における固形分含有量よりも大であり、かつ１５〜５０ｇ／ｍ^２の範囲にあるように構成する。
【選択図】 図５

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚染コントロール要素の保持材に関し、さらに詳しく述べると、触媒担体やフィルター要素のような汚染コントロール要素の保持材に関する。本発明は特に、触媒担体を巻回し保持した状態で触媒コンバータのケーシングに挿入する時に作業性がよく、挿入中に触媒担体と触媒担体保持材とが分離することがなく、しかも耐熱性、面圧保持性、そして耐風蝕性に優れた触媒担体保持材に関する。本発明はまた、かかる汚染コントロール要素の保持材を備えた汚染コントロール装置、具体的には、触媒担体保持材を装填した触媒コンバータやフィルター要素の保持材を備えた排気浄化装置に関する。例えば、本発明の触媒コンバータは、自動車やその他の内燃機関において、その排気ガスの処理に有利に使用することができる。
【０００２】
【従来の技術】
自動車のエンジンからの排気ガスにおいて、それに含まれる一酸化炭素（ＣＯ）、炭化水素（ＨＣ）、窒素酸化物（ＮＯｘ）等を除去するための手段として、セラミック触媒コンバータを用いた排気ガス浄化システムがよく知られている。セラミック触媒コンバータは、基本的に、金属製のケーシング、換言すればハウジング内に、例えばハニカム状のセラミック製触媒担体（「触媒要素」とも呼ばれる）を収容したものである。
【０００３】
周知のように、セラミック触媒コンバータにはいろいろな種類のものがあるが、通常、それに収容された触媒担体とケーシングとの隙間を、無機繊維と、有機繊維及び／又は一般的には液体又はペースト状の有機バインダとを組み合わせて典型的に構成された断熱材によって埋め尽くす構成を採用している（特許文献１、２及び３）。その結果、隙間を埋めた断熱材が触媒担体を保持し、衝撃、振動等による機械的なショックが触媒担体に不用意に加わるのを防止できる。このような構成の触媒コンバータでは、したがって、触媒担体の破壊や移動が起こらないので、所期の作用を長期間にわたって実現することができる。なお、上記のような断熱材は、触媒担体を保持する機能を有しているので、一般的には触媒担体保持材とも呼ばれている。
【０００４】
ところで、触媒担体をケーシングに装填する場合、触媒担体の外周に触媒担体保持材を巻回して一体化した後、それを円筒形ケーシングに加圧下に挿入する圧入方式が一般的に採用されている。現在、圧入方式で触媒担体を装填（キャンニングという）する場合の作業性を改善し、触媒担体保持材のクッション性（嵩高性）を高め、さらには触媒担体保持材を構成する無機繊維の空中飛散を防止するため、いろいろなタイプの触媒担体保持材が提案されている。例えば、図１に示すような、触媒担体３３と、触媒担体３３の外周を覆う金属シェル（ケーシング）３２と、触媒担体３３とケーシング３２との間に配置される保持シール材（触媒担体保持材）３１とから構成される触媒コンバータ３５において、１００ｃｍ^２の中に５０〜３０００個の密度でニードルパンチ処理された無機質繊維マットからなり、有機質の含有量が０を超えて大きくかつ２重量％以下であり、かつ０．１５〜０．４５ｇ／ｃｍ^３の充填密度において３００〜１０００℃の間に加熱したときに５〜５００ｋＰａの面圧を発生することを特徴とする触媒担体保持材を使用することが提案されている（特許文献４）。触媒コンバータ３５は、図示のように、自動車のエンジン３６からの排気パイプ３７の途中に設けられる。また、キャンニング工程は、図２に示すように、触媒担体保持材３１を巻回させた触媒担体３３をケーシング３２の端部の開口から加圧下に押し込むようにして実施される。
【０００５】
また、上記と同様な構成の触媒コンバータにおいて、無機繊維をマット状に配してなるマット状物に０．５〜２０重量％の有機バインダ又は無機バインダからなるバインダを添着してなるとともに、組み付け後の充填密度が０．１〜０．６ｇ／ｃｍ^３の範囲にあるように調整されており、かつ、マット状物に添着されたバインダの固形分割合を厚さ方向に３等分（上部、中部、下部）して評価した場合、上部及び下部におけるバインダの固形分割合が中部のそれに較べて高いことを特徴とする触媒担体保持材を使用することも提案されている（特許文献５）。
【０００６】
【特許文献１】
特開昭５７−６１６８６号公報（特許請求の範囲）
【特許文献２】
特開昭５９−１０３４５号公報（特許請求の範囲）
【特許文献３】
特開昭６１−２３９１００号公報（特許請求の範囲）
【特許文献４】
特開２００１−２５９４３８号公報（特許請求の範囲、図１、図４）
【特許文献５】
特開２００２−４８４８号公報（特許請求の範囲、図１、図３）
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
圧入構造を採用した従来の触媒コンバータにおいては、上記したように、通常マットの形で使用される触媒担体保持材にいろいろな改良が施されているけれども、依然として作業性が十分でなく、特性面でもさらなる改良が必要である。例えば、マットの嵩高性を改良したり無機繊維の飛散を防止したりするために有機バインダをマットに含浸したり塗布していることは上記の通りであるが、マット中に含まれる有機バインダが、キャンニング工程におけるマットとケーシングの間の密着を引き起こし、マットの滑りを低下させるために、より大きな圧入荷重が必要となる。また、マットとケーシングの間の密着の度合いが強すぎると、マットとそれに巻回された触媒担体との間に滑りが発生し、触媒担体をケーシングに挿入できない状態が発生する。さらに、マット本体は大きなせん断応力を受けて変形するため、無機繊維の圧壊やそれに伴う保持力の低下、耐風蝕性の低下等も発生する。
【０００８】
本発明の目的は、したがって、触媒担体を巻回し保持した状態で触媒コンバータのケーシングに挿入する時に作業性がよく、挿入中に触媒担体と触媒担体保持材とが分離することがなく、しかも耐熱性、面圧保持性、そして耐風蝕性に優れた触媒担体保持材を提供することにある。
【０００９】
また、本発明の目的は、構造が簡単であり、製造が容易であり、しかも触媒担体保持材が耐熱性、面圧保持性、そして耐風蝕性に優れた触媒コンバータを提供することにある。
【００１０】
さらに、本発明の目的は、触媒担体以外の汚染コントロール要素、例えばフィルター要素などを保持するための汚染コントロール要素の保持材や、そのような保持材を備えた汚染コントロール装置を提供することにある。
【００１１】
本発明の上記した目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
【００１２】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その１つの面において、ケーシング内で汚染コントロール要素を巻回して保持するためのものであって、所定の厚さをもった繊維材料のマットからなり、前記マットのケーシング側の外周面及び汚染コントロール要素側の内周面のそれぞれにおいて少なくとも、高温条件下で分解して消散可能なラテックスからなる摩擦力／密着力コントロール剤が含浸されておりかつ、その際、前記マットの内周面に含浸された前記摩擦力／密着力コントロール剤の固形分含有量が、前記マットの外周面に含浸された前記摩擦力／密着力コントロール剤の固形分含有量よりも大であり、かつ約１５〜５０ｇ／ｍ^２の範囲にあることを特徴とする汚染コントロール要素の保持材にある。
【００１３】
また、本発明は、そのもう１つの面において、ケーシングと、該ケーシング内に設置された汚染コントロール要素と、前記ケーシングと前記汚染コントロール要素との間に配置された汚染コントロール要素の保持材とを備える汚染コントロール装置であって、
前記汚染コントロール要素の保持材が、上記のような本発明による汚染コントロール要素の保持材であることを特徴とする汚染コントロール装置にある。
【００１４】
【発明の実施の形態】
本発明による汚染コントロール要素保持材及び汚染コントロール装置は、それぞれ、いろいろな形態で有利に実施することができる。例えば、汚染コントロール要素は、触媒担体（あるいは触媒要素）、フィルター要素（例えば、エンジン用排気浄化フィルターなど）あるいはその他の任意の汚染コントロール要素であることができる。同様に、汚染コントロール装置は、それに取り付けられた汚染コントロール要素に応じて、触媒コンバータ、排気浄化装置、例えばエンジン用排気浄化装置（例えば、ディーゼルパティキュレートフィルター装置）あるいはその他の任意の汚染コントロール装置であることができる。以下では特に、触媒担体保持材と触媒コンバータを参照して本発明の実施を説明するが、本発明はこれらの形態にのみ限定されるものではない。
【００１５】
本発明による触媒コンバータは、自動車やその他の内燃機関において排気ガスを処理するために特に有利に用いられるものであって、ケーシングと、ケーシング内に設置された触媒担体（触媒要素）とを少なくとも含んでなるように構成される。また、ケーシングと触媒担体との間には、触媒担体の外周面を巻回するようにして、以下において詳細に説明するところの本発明による触媒担体保持材が装着される。なお、従来の触媒コンバータの場合には、触媒担体と触媒担体保持材とを接着剤、粘着テープ等の接合手段を介在させて接合することが一般的であったが、本発明の触媒コンバータの場合、触媒担体保持材自体で十分な密着力を発現することができるので、構成及び製造の複雑化や製造コストの増加を引き起こす接合手段の介在は不要である。また、触媒担体保持材は、通常、触媒担体の実質的に全部を巻回して用いられるけれども、必要ならば、触媒担体の一部のみに装着して用いてもよい。さらに、必要に応じて、ワイヤメッシュなどの固定手段を補助的に使用してもよい。
【００１６】
触媒担体保持材は、それをケーシング内に装着した場合に適切な嵩密度となるように、適度に圧縮して使用するのが好ましい。圧縮の手法には、クラムシェル圧縮、スタッフィング圧縮、ターニキット圧縮などがある。本発明の触媒担体保持材は、スタッフィング圧縮などのように、例えば円筒形のケーシングに触媒担体保持材を加圧下に押し込む、いわゆる圧入構造の触媒コンバータの製造において有利に使用することができる。クラムシェル圧縮のように開放可能なケーシングを使用する場合には、円筒形のケーシングに触媒担体保持材を押し込む際に摩擦などの問題が発生しないからである。
【００１７】
本発明の触媒コンバータは、それが圧入構造を採用している限り、いろいろなタイプの触媒コンバータを包含することができる。触媒コンバータは、好ましくは、モノリス状に成形された触媒要素を備えた触媒コンバータ、すなわち、モノリス型触媒コンバータである。この触媒コンバータは、ハニカム状の断面の小さな通路を有する触媒要素からなるので、従来のペレット型触媒コンバータに比較して小型であり、排気ガスとの接触面積を十分に確保しながら、排気抵抗を小さく抑えることができ、よって、より効率よく排気ガスの処理を行うことができる。
【００１８】
本発明の触媒コンバータは、各種の内燃機関と組み合わせて、その排気ガスの処理に有利に使用することができる。特に、乗用車、バス、トラック等の自動車の排気システムに本発明の触媒コンバータを搭載した時に、その優れた作用効果を十分に発揮させることができる。
【００１９】
図３は、本発明による触媒コンバータの典型的な一例を示した側面図であり、構成の容易な理解のため、触媒コンバータの主要部を切断した状態が示されている。また、図４は、図３の触媒コンバータを線分Ａ−Ａにそって切断した断面図である。これらの図面から理解されるように、触媒コンバータ１０は、金属ケーシング４と、その金属ケーシング４内に配置されたモノリスの固体触媒担体１と、金属ケーシング４と触媒担体１との間に配置された本発明の触媒担体保持材２とを備える。触媒担体保持材２は、以下において図５を参照して詳細に説明するように、所定の厚さをもった繊維材料のマットからなり、前記マットのケーシング側の外周面及び触媒担体側の内周面のそれぞれにおいて少なくとも、高温条件下で分解して消散可能なラテックスからなる摩擦力／密着力コントロール剤が含浸されておりかつ、その際、前記マットの内周面に含浸された前記摩擦力／密着力コントロール剤の固形分含有量が、前記マットの外周面に含浸された前記摩擦力／密着力コントロール剤の固形分含有量よりも大であり、かつ約１５〜５０ｇ／ｍ^２の範囲にあることを特徴とする。触媒コンバータ１０には、円錐台の形をした排気ガス流入口１２及び排気ガス流出口１３が取り付けられている。
【００２０】
先に説明したように、本発明の触媒コンバータ１０の場合、基本的には触媒担体１と触媒担体保持材２との間に接着剤や粘着シートのような接合手段を介在させることは不要である。しかし、もしも本発明の作用効果に対して悪影響がでず、むしろ触媒担体１と触媒担体保持材２の密着性を改善し、キャンニング作業を促進する効果が期待されるのであるならば、そのような接合手段を補助的に使用してもよい。接合手段は、通常、部分的に使用するのが好ましい。また、触媒担体保持材２は、一般的には必要ないけれども、その表面を損傷などから保護するために保護コーティングを備えていてもよい。
【００２１】
さらに具体的に説明すると、金属ケーシング内の固体触媒担体は、通常、複数の排気ガス流路を有するハニカム構造のセラミック製触媒担体からなる。この触媒担体を巻回して、本発明の触媒担体保持材が配置される。触媒担体保持材は、断熱材として機能することの他、触媒担体を金属ケーシングの内部に保持し、触媒担体と金属ケーシングの間にできた隙間を封止しているので、排気ガスが触媒担体をバイパスして流動することを防止するかもしくは、少なくとも、そのような不所望な流動を最小にすることができる。また、触媒担体は、金属ケーシング内においてしっかりと、しかも弾性的に支持される。
【００２２】
本発明の触媒コンバータにおいて、その金属ケーシングは、当業界で公知のいろいろな金属材料から、所望とする作用効果などに応じて任意の形状で作製することができる。好適な金属ケーシングは、ステンレス鋼製で、図３に示したような形状を備えたものである。もちろん、必要に応じて、鉄、アルミニウム、チタンなどの金属やその合金などから、任意の適当な形状をもった金属ケーシングを作製してもよい。
【００２３】
金属ケーシングと同様に、固体触媒担体も、常用の触媒コンバータにおいて採用されているものと同様な材料から、同様な形状で作製することができる。適切な触媒担体は、当業者に周知であって、金属、セラミックなどから製造されたものを包含する。有用な触媒担体は、例えば、米国再発行特許第２７，７４７号明細書に開示されている。また、セラミック製の触媒担体は、例えば、米国在のコーニング社（Ｃｏｒｎｉｎｇ Ｉｎｃ．）から商業的に入手可能である。例えば、ハニカム状のセラミック製触媒担体は、コーニング社から「ＣＥＬＣＯＲ」の商品名で、また、ＮＧＫ社（ＮＧＫ Ｉｎｓｕｌａｔｅｄ Ｌｔｄ．）から「ＨＯＮＥＹＣＥＲＡＭ」の商品名で、それぞれ入手可能である。金属製の触媒担体は、例えば、ドイツ在のベール社（Ｂｅｈｒ ＧｍｂＨ ａｎｄ Ｃｏ． ）から商業的に入手可能である。なお、触媒モノリスについての詳細な説明は、例えば、ＳＡＥ 技術書の文献第９００５００号のＳｔｒｏｏｍらの「Ｓｙｓｔｅｍｓ Ａｐｐｒｏａｃｈ ｔｏ Ｐａｃｋａｇｉｎｇ Ｄｅｓｉｇｎ ｆｏｒ Ａｕｔｏｍｏｔｉｖｅ Ｃａｔａｌｙｔｉｃ Ｃｏｎｖｅｒｔｅｒｓ 」、ＳＡＥ 技術書の文献第８０００８２号のＨｏｗｉｔｔの「Ｔｈｉｎ Ｗａｌｌ Ｃｅｒａｍｉｃｓ ａｓ Ｍｏｎｏｌｉｔｈｉｃ Ｃａｔａｌｙｓｔ Ｓｕｐｐｏｒｔ 」及びＳＡＥ 技術書の文献第７４０２４４号のＨｏｗｉｔｔらの「Ｆｌｏｗ Ｅｆｆｅｃｔ ｉｎ Ｍｏｎｏｌｉｔｈｉｃ Ｈｏｎｅｙｃｏｍｂ Ａｕｔｏｍｏｔｉｖｅ Ｃａｔａｌｙｔｉｃ Ｃｏｎｖｅｒｔｅｒ 」を参照されたい。
【００２４】
上述のような触媒担体に担持されるべき触媒は、通常、金属（例えば、白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムなど）及び金属酸化物（例えば、五酸化バナジウム、二酸化チタンなど）であり、好ましくは、コーティングの形で用いられる。なお、このような触媒のコーティングについての詳細な説明は、例えば、米国特許第３，４４１，３８１号明細書を参照されたい。
【００２５】
本発明の実施において、触媒コンバータは、本発明の範囲を逸脱しない限り、いろいろな構成及び方法で任意に製造することができる。触媒コンバータは、基本的に、金属製のケーシングに、例えばハニカム状のセラミック製触媒担体を収容することによって作製し、かつ例えばハニカム状のセラミック製モノリスに、白金、ロジウム及びパラジウムのような貴金属からなる触媒層（触媒のコーティング）を担持させることによって最終的な触媒担体（触媒要素）を作製することが、特に好適である。このような構成を採用することによって、比較的高温で効果的な触媒作用を発現させることができる。
【００２６】
本発明に従うと、金属ケーシングとその内部の触媒要素との間に、本発明による触媒担体保持材が配置される。触媒担体保持材は、所定の厚さをもった繊維材料のマット、ブランケット等からなる。触媒担体保持材は、１個の部材から構成されていてもよく、２個もしくはそれ以上の部材から、積層、接合などで構成されていてもよい。触媒担体保持材は、通常、マット、ブランケットなどの形態を有しているのが、取り扱い性などの面から有利であるが、必要ならば、その他の形態であってもよい。触媒担体保持材のサイズは、その使用目的などに応じて、広い範囲で変更することができる。例えば、マット状の触媒担体保持材を自動車の触媒コンバータに装填して使用するような場合には、その保持材は、通常、約１．５〜１５ｍｍのマット厚、約２００〜５００ｍｍの幅、そして約１００〜１５００ｍｍの長さである。かかる保持材は、必要に応じて、はさみ、カッター等で所望の形状及びサイズに切断して使用してもよい。
【００２７】
触媒担体保持材は、好ましくは、無機繊維材料から構成され、さらに好ましくは、アルミナ繊維を含む無機繊維材料から構成される。また、無機繊維材料は、アルミナ繊維とのみ組み合わせて使用してもよいけれども、必要ならばその他の無機材料をさらに併用してもよい。併用可能な無機材料は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、シリカ繊維、ガラス繊維、ベントナイト、バーミキュライト、黒鉛などを包含する。これらの無機材料は、単独で使用してもよく、２種以上を混合して一緒に使用してもよい。
【００２８】
触媒担体保持材を構成する無機繊維は、好ましくは、アルミナ（Ａｌ_２Ｏ_３）とシリカ（ＳｉＯ_２）を含む無機繊維から構成される。ここで、無機繊維は、アルミナ繊維とシリカ繊維の２成分からなり、その際、アルミナ繊維とシリカ繊維の配合比率が、約４０：６０〜９６：４の範囲にあることが好ましい。アルミナ繊維とシリカ繊維の配合比率がこのような範囲を外れると、例えばアルミナ繊維の配合比率が４０％を下回ると、耐熱性の悪化といった不具合が発生する。
【００２９】
無機繊維は、特にその太さ（平均直径）が限定されないけれども、好適には、約２〜７μｍ の平均直径を有する。無機繊維が約２μｍ より小さい平均直径を有していると、脆くて強度不足になる傾向にあり、反対に、約７μｍ より大きい平均直径を有していると、保持材の成形を困難にする傾向にある。
【００３０】
また、太さと同様に、無機繊維の長さも特に限定されるものではない。しかし、無機繊維は、好適には、約０．５〜５０ｍｍの平均長さを有する。無機繊維の平均長さが約０．５ｍｍより小さいと、それを使用して保持材を形成した効果などを出すことができなくなり、反対に、約５０ｍｍより大きいと、取り扱い性が劣ってくるので、保持材の製造プロセスをスムースに進行することが困難になる。
【００３１】
別法によれば、本発明の実施において、主としてアルミナ繊維の積層シートからなるアルミナ質繊維マットもまた触媒担体保持材として有利に使用することができる。このようなアルミナ質繊維マットにおいて、アルミナ繊維の平均長さは、通常、約２０〜２００ｍｍの範囲であり、また、繊維の太さ（平均直径）は、通常、約１〜４０μｍの範囲である。また、アルミナ繊維は、Ａｌ_２Ｏ_３／ＳｉＯ_２重量比（Ａｌ_２Ｏ_３／ＳｉＯ_２）＝約７０／３０〜７４／２６のムライト組成であることが好ましい。
【００３２】
上記のアルミナ質繊維のマットは、例えば、オキシ塩化アルミニウム等のアルミナ源、シリカゾル等のシリカ源、ポリビニルアルコール等の有機バインダ及び水の混合物から成る紡糸原液を使用して製造することができる。すなわち、紡糸したアルミナ繊維前駆体を積層してシート化し、次いで、好ましくはニードルパンチングを施した後、通常、約１０００〜１３００℃の高温で焼成する。
【００３３】
上記のニードルパンチング処理は、繊維の一部を積層面に対して縦方向に配向させる効果がある。従って、シート内のアルミナ繊維前駆体の一部がシートを貫通して縦方向に配向してシートを緊縛するため、シートの嵩比重が高められ、また、層間の剥離や層間のずれが防止される。ニードルパンチングの密度は、広い範囲にわたって変更することができるけれども、通常、約１〜５０打／ｃｍ^２の範囲であり、ニードルパンチングの密度により、マットの厚さ、嵩比重、強度などが調節される。
【００３４】
上記したようなアルミナ質繊維マットの製造において、アルミナ繊維にその他のセラミック繊維や無機膨張材を補助的に添加してもよい。この場合、添加材をマットに均一に混合してもよいが、特に加熱される個所を避けて局在させることにより、添加材の性能を維持しつつ低コスト化することが可能である。上記のセラミック繊維としては、シリカ繊維、ガラス繊維などが挙げられ、無機膨張材としては、ベントナイト、膨張性バーミキュライト、膨張性黒鉛などが挙げられる。
【００３５】
本発明による触媒担体保持材は、従来の触媒担体保持材が湿式法（無機繊維と有機バインダの混合、無機繊維の開繊、スラリーの調製、抄紙による成形、成形体のプレスの各工程を含む）によって製造されていたのとは対照的に、乾式法で製造される。乾式法は、基本的に、周知かつ慣用の方法に従って実施することができる。典型的には、上記したように、ニードルパンチ等を利用した乾式法が有利である。
【００３６】
本発明の触媒担体保持材は、図５に模式的に示すように、ケーシング４と、その内部に装填され触媒担体１の間に、触媒担体１の外周面を巻回した状態で挿入された、所定の厚さをもった繊維材料のマット２からなる。このマット状触媒担体保持材２には、ケーシング４の側の外周面２ａ及び触媒担体１の側の内周面２ｂのそれぞれにおいて少なくとも、高温条件下で分解して消散可能なラテックスからなる摩擦力／密着力コントロール剤３が含浸されている。なお、ここで、「少なくとも」というのは、摩擦力／密着力コントロール剤３が触媒担体保持材２の厚みの全体にわたって含浸されている状態ばかりでなく、部分的に含浸されている状態、例えば図示のように触媒担体保持材２の中央部に摩擦力／密着力コントロール剤３が含浸されていない状態も本発明の範囲に包含されるからである。なお、摩擦力／密着力コントロール剤３の含浸方法にもよるけれども、摩擦力／密着力コントロール剤３の含浸量は、通常、触媒担体保持材２の表面（外周面、内周面）から内側に向かって減少していく。
【００３７】
また、摩擦力／密着力コントロール剤３の含浸は、本発明に従い触媒担体保持材２の外周面２ａの側及び内周面２ｂの側において含浸量に差があるように配慮して行うことが必要である。具体的には、本発明の触媒担体保持材２の場合、その内周面２ｂの側に含浸された摩擦力／密着力コントロール剤３の固形分含有量が、その外周面２ａの側における含有量よりも大である。
【００３８】
触媒担体保持材２において、摩擦力／密着力コントロール剤３の含有量の差は特に限定されるわけではないけれども、通常、触媒担体保持材２の内周面２ｂの側における摩擦力／密着力コントロール剤３の固形分含有量が、約１５〜５０ｇ／ｍ^２の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは、約２５〜５０ｇ／ｍ^２の範囲である。一方、触媒担体保持材２の外周面２ａにおける摩擦力／密着力コントロール剤３の固形分含有量は、通常、約２〜８ｇ／ｍ^２の範囲にあることが好ましい。なお、触媒担体保持材２における摩擦力／密着力コントロール剤３の固形分含有量が０（ゼロ）である場合には、繊維が飛散する量が多くなり、作業上の環境を考慮すると、好ましくない。
【００３９】
本発明の触媒担体保持材において、それに含浸せしめられる摩擦力／密着力コントロール剤は、触媒コンバータの運転時の適用されるような高温条件下で、発生した任意の反応の下で分解して消散可能なラテックスからなる。ここで使用し得るラテックスは、天然もしくは合成の高分子材料、好ましくは例えばブタジエン−スチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂等の樹脂材料を水性媒体あるいはその他の媒体に分散させて得たコロイド状分散液、あるいはポリビニルアルコール等の有機材料である。摩擦力／密着力コントロール剤として、アクリル樹脂を使用したアクリル系のラテックスをとりわけ有利に使用することができる。
【００４０】
触媒担体保持材に対する摩擦力／密着力コントロール剤の上述のような含浸は、周知・慣用の技術、すなわち、噴霧、塗布等によって有利に実施することができる。例えば噴霧法は、スプレーを用意して、アクリル系のラテックスなどを触媒担体保持材の両面に順次あるいは同時に噴霧するだけでよいので、作業が簡単であり、経済的でもある。噴霧後のラテックスなどは、自然乾燥してもよく、適温まで加熱して乾燥してもよい。
【００４１】
本発明によると、作製後の触媒担体保持材において、アクリル系のラテックスあるいはその他の摩擦力／密着力コントロール剤を上記したように触媒担体の側とケーシングの側とで含浸量が異なるように適用したので、触媒担体保持材と触媒担体の間の密着性をより大きく調整するとができ、かつ触媒担体保持材とケーシングの間では、反対に、両者の間の摩擦力を低減して、キャンニング時、触媒担体保持材がケーシング内を滑りやすくすることができ、また、その結果として、圧入荷重や触媒担体保持材の変形（伸び）を小さく抑えることができる。さらに、触媒担体保持材の圧入を変形を伴わずに行うことができるので、作業性が顕著に改善される。さらにまた、触媒担体保持材の変形量が小さくなったことから、触媒担体保持材自体の保持力特性や耐風蝕性も格段と改善される。
【００４２】
【実施例】
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
触媒担体保持材（マット）の作製：
マット面密度を異にする３種類のニードルパンチされたアルミナ繊維マット（商品名「マフテック」、三菱化学産資社製）を用意した。これらのアルミナ繊維マットのサイズは、長さ２６０ｍｍ×幅９０ｍｍ×厚さ１２．５ｍｍであった。次いで、それぞれのアルミナ繊維マットの触媒担体（モノリス）との接触面及びケーシングとの接触面のそれぞれに、アクリル系ラテックス（商品名「ニッポールＬＸ８１６」、日本ゼオン社製）を下記の第１表に記載されるように異なる塗布量（固形分基準）でスプレー塗布した。スプレー濃度は８．４％であった。アクリル系ラテックスを含浸させたアルミナ繊維マットをオーブンに入れ、１３０℃で２０分間加熱乾燥した。
【００４３】
別に用意した円筒形状で、外径７８ｍｍ×長さ１００ｍｍの日本碍子社製モノリス体の外周に乾燥後のアルミナ繊維マットを巻き付けた。次いで、アルミナ繊維マットで巻回された触媒担体を、内径８４ｍｍ×長さ１２０ｍｍの円筒形ステンレス製ケーシングの内部にガイドコーンを用いて４０ｍｍ／秒で圧入した。このキャンニング工程において、モノリスとケーシングの間のギャップ（間隙）は、３ｍｍであった。
【００４４】
上記のキャンニング工程において、それぞれのアルミナ繊維マットについて最大圧入荷重を測定したところ、下記の第１表にまとめて記載するような測定結果が得られた。また、アルミナ繊維マットの圧入が完了した後、ケーシング内に装填したアルミナ繊維マットの変形量（伸び）をケーシングの端面より測定したところ、下記の第１表にまとめて記載するような測定結果が得られた。
【００４５】
【表１】

【００４６】
上記第１表に記載の測定結果から理解されるように、アルミナ繊維マットの表面に例えばアクリル系ラテックスのような摩擦力／密着力コントロール剤を異なる量で含浸させることによって、アルミナ繊維マットのキャンニング作業を有意に向上させることができる。
【００４７】
特に、アルミナ繊維マットのケーシング側において、アクリル系ラテックスの含浸量を２〜８ｇ／ｍ^２の範囲に調整することで、圧入荷重を最適化し、マットの変形を抑制することができる。ラテックスの含浸量が２ｇ／ｍ^２を下回ると、アルミナ繊維の飛散を防止できなくなり、反対にラテックスの含浸量が１２ｇ／ｍ^２もしくはそれ以上となると、マットとケーシングの接着が発生し、含浸量が８ｇ／ｍ^２の場合に比較して、圧入荷重やマットの変形が急激に大きくなる。１０ｍｍ以上の変形は、アルミナ繊維の圧壊や、それに伴う保持力及び耐風蝕性の低下が引き起こされることを意味している。
【００４８】
また、アルミナ繊維マットのモノリス側において、アクリル系ラテックスの含浸量を１５〜５０ｇ／ｍ^２の範囲に調整することで、マットとモノリスの密着力を最適化することができ、また、したがって、粘着テープなどの接合手段の使用を不要とすることができる。これに対して、アクリル系ラテックスの含浸量を１２ｇ／ｍ^２とした時、密着力の最適化を得ることができなかった。これは、ラテックスの含浸量を１５〜５０ｇ／ｍ^２の範囲に調整した時、含浸させたラテックスがマットの表面から内部に向かって固化する傾向にあり、圧入荷重やマットの変形を抑える効果が発現したけれども、アクリル系ラテックスの含浸量を１２ｇ／ｍ^２とした時にはそのような効果が発現しなかったためであると考察される。
【００４９】
【発明の効果】
以上に詳細に説明したように、本発明によれば、触媒担体を巻回し保持した状態で触媒コンバータのケーシングに装入する時に作業性がよく、挿入中に触媒担体と触媒担体保持材とが分離することがなく、しかも耐熱性、面圧保持性、そして耐風蝕性に優れた触媒担体保持材を提供することができる。
【００５０】
また、本発明によれば、挿入された触媒担体保持材が断熱、触媒担体保持等面ですぐれている触媒コンバータを提供することができる。
【００５１】
さらに、本発明によれば、自動車やその他の内燃機関において、その排気ガスの処理に有利に使用することができる触媒コンバータを提供することができる。
【００５２】
さらにまた、本発明は、触媒コンバータ以外の汚染コントロール装置、例えばディーゼルパティキュレートフィルターやその他の排気浄化装置などにおいても上述のようなすぐれた効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】従来の触媒コンバータの構成を示した断面図である。
【図２】図１の触媒コンバータにおいて、金属製ケーシングに触媒担体を装填する方法を示した斜視図である。
【図３】本発明による触媒コンバータの構成を示した断面図である。
【図４】図３の触媒コンバータの線分Ａ−Ａにそった断面図である。
【図５】図３の触媒コンバータにおいて、触媒担体保持材における摩擦力／密着力コントロール剤の含浸状態を示した断面図である。
【符号の説明】
１…触媒担体
２…触媒担体保持材
３…摩擦力／密着力コントロール剤
４…ケーシング
１０…触媒コンバータ

Claims (13)

1. ケーシング内で汚染コントロール要素を巻回して保持するためのものであって、所定の厚さをもった繊維材料のマットからなり、前記マットのケーシング側の外周面及び汚染コントロール要素側の内周面のそれぞれにおいて少なくとも、高温条件下で分解して消散可能なラテックスからなる摩擦力／密着力コントロール剤が含浸されておりかつ、その際、前記マットの内周面に含浸された前記摩擦力／密着力コントロール剤の固形分含有量が、前記マットの外周面に含浸された前記摩擦力／密着力コントロール剤の固形分含有量よりも大であり、かつ１５〜５０ｇ／ｍ^２の範囲にあることを特徴とする汚染コントロール要素の保持材。
2. 前記マットの外周面に含浸された前記摩擦力／密着力コントロール剤の固形分含有量が、２〜８ｇ／ｍ^２の範囲にあることを特徴とする請求項１に記載の汚染コントロール要素の保持材。
3. 前記摩擦力／密着力コントロール剤がアクリル系ラテックスからなることを特徴とする請求項１又は２に記載の汚染コントロール要素の保持材。
4. 前記繊維材料が、アルミナ繊維を含む無機繊維材料であることを特徴とする請求項１〜３のいずれか１項に記載の汚染コントロール要素の保持材。
5. 前記無機繊維材料が、アルミナ繊維と組み合わせてシリカ繊維及び（又は）ガラス繊維をさらに含むことを特徴とする請求項４に記載の汚染コントロール要素の保持材。
6. 前記繊維材料のマットが乾式法で形成されたものであることを特徴とする請求項１〜５のいずれか１項に記載の汚染コントロール要素の保持材。
7. 前記汚染コントロール要素が、触媒担体であることを特徴とする請求項１〜６のいずれか１項に記載の汚染コントロール要素の保持材。
8. 前記汚染コントロール要素が、フィルター要素であることを特徴とする請求項１〜６のいずれか１項に記載の汚染コントロール要素の保持材。
9. ケーシングと、該ケーシング内に設置された汚染コントロール要素と、前記ケーシングと前記汚染コントロール要素との間に配置された汚染コントロール要素の保持材とを備える汚染コントロール装置であって、
   前記汚染コントロール要素の保持材が、請求項１〜６のいずれか１項に記載の汚染コントロール要素の保持材であることを特徴とする汚染コントロール装置。
10. 前記汚染コントロール要素の保持材と汚染コントロール要素との間に接着手段が介在せしめられていないことを特徴とする請求項９に記載の触媒コンバータ。
11. 前記汚染コントロール要素が触媒担体であり、かつ当該汚染コントロール装置が触媒コンバータであることを特徴とする請求項９又は１０に記載の汚染コントロール装置。
12. 前記汚染コントロール要素がフィルター要素であり、かつ当該汚染コントロール装置が排気浄化装置であることを特徴とする請求項９又は１０に記載の汚染コントロール装置。
13. エンジン用排気浄化装置であることを特徴とする請求項１２に記載の汚染コントロール装置。

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