JP2005067264A - 車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エネルギー吸収調整装置の小型化を図り、コラプス・ストロークの自由度を広くすること。
【解決手段】抵抗部材63は、電磁ソレノイド60がOFF状態の時には、鉄芯61が伸長した位置にあって、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触するようになっており、これにより、二次衝突時には剪断されて衝撃エネルギーを吸収することができる。一方、電磁ソレノイド60がON状態の時には、鉄芯61が退動した位置にあって、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触しないようになっており、この場合には、抵抗部材63により、二次衝突時の衝撃エネルギーを吸収することはない。
【選択図】 図2
【解決手段】抵抗部材63は、電磁ソレノイド60がOFF状態の時には、鉄芯61が伸長した位置にあって、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触するようになっており、これにより、二次衝突時には剪断されて衝撃エネルギーを吸収することができる。一方、電磁ソレノイド60がON状態の時には、鉄芯61が退動した位置にあって、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触しないようになっており、この場合には、抵抗部材63により、二次衝突時の衝撃エネルギーを吸収することはない。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝撃エネルギー吸収荷重を可変にした車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車が他の自動車や建造物等に衝突した場合、運転者が慣性でステアリングホイールに二次衝突することがある。近年の乗用車等では、このような場合における運転者の受傷を防止するべく、衝撃吸収式ステアリングシャフトや衝撃吸収式ステアリングコラム装置が広く採用されている。衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、運転者が二次衝突した際にステアリングコラムがステアリングシャフトと共に離脱するもので、通常はステアリングシャフトと同時にコラプスし、その際に衝突エネルギーの吸収が行われる。
【0003】
衝突エネルギーの吸収方式としては、ステアリングコラムの一部に形成されたメッシュ部を圧縮座屈変形させるメッシュ式が旧来より知られているが、アウタコラムとインナコラムとの間に金属球を介装させ、コラプス時にアウタコラムの内周面やインナコラムの外周面に塑性溝を形成させるボール式も広く採用されている。
【0004】
また、近年では、しごき式も採用されている。しごき式の衝突エネルギー吸収機構は、例えば、帯形状の鋼板からなるエネルギー吸収部材の一端を車体側ブラケットに固着させると共に、ステアリングコラム側にエネルギー吸収部材に形成された屈曲部に嵌入する鋼棒等のしごき手段を設け、ステアリングコラムが前方に移動する際にしごき手段によりエネルギー吸収部材をしごき変形させる構成をとっている。
【0005】
更に、引裂き式も一部に採用されている。引裂き式の衝突エネルギー吸収機構は、例えば、帯形状の鋼板からなるエネルギー吸収部材の中央部を車体側ブラケットに固着させる一方、その両側部をU字形状に屈曲させてステアリングコラム側に固着させ、ステアリングコラムが前方に移動する際にエネルギー吸収部材を曲げ変形させながら引裂く構成を採っている。
【0006】
ところで、衝撃吸収式ステアリングコラム装置では、所定の衝撃エネルギー吸収荷重が作用した場合にステアリングコラムがコラプスするが、通常、この衝撃エネルギー吸収荷重は、標準的な体重の運転者が所定の速度でステアリングホイールに二次衝突した際の運動エネルギーを基に設定されている。
【0007】
しかしながら、運転者が小柄な女性等である場合、車両が低速である場合には、その運動エネルギーが当然に小さくなり、運転者の体格や車速等に応じてエネルギー吸収量を調整できないといったことがある。
【0008】
このようなことから、特許文献1乃至3では、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置であって、衝突エネルギー吸収手段による二次衝突エネルギーの吸収量を変化させるエネルギー吸収量調整手段と、乗員あるいは前記車両の状態を検出する少なくとも一つのセンサと、当該センサの検出結果に基づき、エネルギー吸収量調整手段を駆動制御する電気制御手段と、が備えてある。これにより、衝撃エネルギー吸収荷重の可変化を実現し、運転者の体格や車速等に応じて、二次衝突時のエネルギー吸収量が調整できるようにしてある。
【0009】
なお、特許文献4では、アッパー側のコラムに固着して設けた棒状部材は、その先端部がロアー側のコラムに設けたスリットに係合してあり、二次衝突時には、棒状部材がスリットに摩擦摺動しながら車両前方に移動し、スリットが塑性変形することにより、衝撃エネルギーを吸収するようになっている。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−137743号公報
【特許文献2】
特開2002−114158号公報
【特許文献3】
特開2002−120734号公報
【特許文献4】
特開昭61−135861号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1乃至3に開示した衝撃エネルギー吸収構造では、衝突エネルギーの吸収方式としては、ボール&ケージ式又はしごきプレート式から構成してあることから、エネルギー吸収調整装置が占めるスペースが大きく、例えば、コラムのコラプス・ストロークを長くとりたい場合、スペース上の制約があり、そのストローク量設定にかなり制約を受けるという問題点がある。
【0012】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであって、エネルギー吸収調整装置の小型化を図り、コラプス・ストロークの自由度を広くできる車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、一対のコラムを相互に摺動可能に嵌合した車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置において、
前記両コラムの一方に、コラム軸線に略平行に延在して設けた衝撃吸収用シャフトと、
前記両コラムの他方に設け、衝撃エネルギー吸収の際、前記衝撃吸収用シャフトに接触しながら摩擦抵抗を発生する抵抗部材と、を具備することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、請求項1に於いて、前記抵抗部材の位置を変化させるためのアクチュエータを更に具備し、これにより、前記摩擦抵抗を可変にしたことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の請求項3に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、請求項2に於いて、乗員又は車両の状態を検出する少なくとも一つのセンサーと、
当該センサーの検出結果に基づき、前記アクチュエータを駆動制御する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の請求項4に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、請求項2に於いて、前記アクチュエータは、電動モータ又は電磁ソレノイドであることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の請求項5に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に於いて、前記抵抗部材は、樹脂材料、又はアルミ材料から形成してあることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の側面図である。
【0020】
図2(a)は、図1の矢印Aの矢視図であって、抵抗部材が衝撃吸収用シャフトに接触する位置にある状態を示す図であり、(b)は、(a)の矢印bの矢視図である。
【0021】
図3は、図1に示した車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の平面図である。
【0022】
図4(a)は、図1の矢印Aの矢視図の要部であって、抵抗部材が衝撃吸収用シャフトに接触しない位置にある状態を示す図であり、(b)は、変形例に係る衝撃吸収用シャフトの部分的な側面図である。
【0023】
図5は、図1に示した車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置のチルト締付機構の箇所の縦断面図である。
【0024】
図6は、図1のX−X線に沿った横断面図である。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態では、ステアリングコラムは、ロアーコラム1と、ミドルコラム2と、アッパーコラム3とからなり、アッパーコラム3は、車両前方側の第1ハウジング3aと、この第1ハウジング3aに対して、図1の枢軸Yを中心に揺動自在に設けた第2ハウジング3bとからなっている。
【0026】
これらステアリングコラム内には、ロアーシャフト4と、このロアーシャフト4に自在継手5(図5参照)を介して連結したアッパーシャフト6とからなるステアリングシャフトが回転自在に支持してある。枢軸Yと自在継手5の中心とは、軸方向で一致する。
【0027】
また、本実施の形態に係るステアリングコラム装置は、チルト調整式であって、図5に示すように、チルト締付機構が設けてある。
【0028】
第1ハウジング3aの下面には、噛合歯8aを有する固定ギヤ8(固定側係合部材)が、第1ハウジング3aに一体的に固定されている。この噛合歯8aに噛合する噛合歯10aを有する可動ギヤ10は、第2ハウジング3bに設けられた可動ギヤ用枢軸11に揺動自在に枢支されている。なお、アッパーシャフト6は、一対の軸受7,7に回転自在に支持してある。
【0029】
また、第2ハウジング3bには、チルトレバー12が揺動自在に設けられ、このチルトレバー12の先端部には、可動ギヤ10をロックするための楔状部13が設けられている。
【0030】
したがって、チルトレバー12がドライバーによって揺動されると、楔状部13が可動ギヤ10から離れ、可動ギヤ10の噛合歯10aが固定ギヤ8の噛合歯8aとの係合を解除し、これにより、アッパーシャフト6の後端に固定されたステアリングホイールの傾斜角度を調整することができる。
【0031】
一方、チルトレバー12が逆方向に揺動されると、楔状部13が可動ギヤ10を押し上げ、可動ギヤ10の噛合歯10aが固定ギヤ8の噛合歯8aに係合し、この状態で、楔状部13が可動ギヤ10と、第2ハウジング3bに一体的に形成された固定部材15との間でロックされ、これにより、ステアリングホイールを調整後の状態で固定することができる。
【0032】
また、第1ハウジング3aと第2ハウジング3bとの間には、アッパーシャフト6、及びステアリングホイール等、第2ハウジング3bに支持された部材の重量を支えるだけの支持バネ14(圧縮バネ)が設けられている。この支持バネ14(圧縮バネ)は、可動ギヤ10の噛合歯10aと固定ギヤ8の噛合歯8aとの係合が解除された場合、ステアリングホイール等が勢い良く下降することを防止している。
【0033】
また、本実施の形態に係るステアリングコラム装置は、ロアーコラム1に対してミドルコラム2がテレスコピック摺動できるテレスコピック調整式であって、図6に示すように、テレスコピック締付機構が設けてある。
【0034】
ロアーコラム1は、アルミニウム材のダイキャスト成形、或は合成樹脂の射出成形等により、軸方向に長い管状に形成されている。この様なロアーコラム1は、一体的に設けた支持ブラケット21を備えている。
【0035】
支持ブラケット21は、ダッシュボードの下面部分等に於いて車体に支持される一対の車体取付フランジ21a,21bを有している。これら一対の車体取付フランジ21a,21bには、二次衝突時にロアーコラム1等を車体から離脱するための離脱用カプセル19a,19bが装着してある。
【0036】
前記ロアーコラム1の一部で前記支持ブラケット21の下側部分には、ロックハウジング23を、このロアーコラム1の外周面から直径方向外方に突出する状態で固設している。このロックハウジング23に、断面円形の、即ち内周面が円筒面であるシリンダ孔24を、このロックハウジング23を左右方向に貫通する状態で形成している。このシリンダ孔24の中心軸は、前記ロアーコラム1並びにミドルコラム2の中心軸に対し捩れの位置関係となっている。そして、前記ミドルコラム2の一部外周面を、前記シリンダ孔24の一部内周面から突出させている。
【0037】
この様なシリンダ孔24の片半部(図6の右半部)には、第一の押圧ブロック25を、このシリンダ孔24の一端開口から挿入している。この第一の押圧ブロック25は、前記シリンダ孔24内にがたつきなく挿入自在な、外周面が円筒面である、短円柱状に形成されている。又、前記第一の押圧ブロック25の内端寄り部分(シリンダ孔24の中央寄り部分で、図6の左寄り部分)で、前記ミドルコラム2の外周面に対向する部分には、第一の傾斜押圧部である、第一の傾斜平面26を形成し、この第一の傾斜平面26と前記ミドルコラム2の外周面とを当接させている。
【0038】
前記シリンダ孔24の他半部(図6の左半部)には第二の押圧ブロック27を、このシリンダ孔24の他端開口から挿入している。この第二の押圧ブロック27は、前記第一の押圧ブロック25と同様に、前記シリンダ孔24内にがたつきなく挿入自在な、外周面が円筒面である、短円柱状に形成されている。又、前記第二の押圧ブロック27の内端寄り部分(図6の右寄り部分)で、前記ミドルコラム2の外周面に対向する部分には、第二の傾斜押圧部である、第二の傾斜平面28を形成し、この第二の傾斜平面28と前記ミドルコラム2の外周面とを当接させている。
【0039】
前記第一の押圧ブロック25には螺子孔29を、左右方向に亙って形成している。又、前記第二の押圧ブロック27には貫通孔30を左右方向に亙って、前記螺子孔29と同心に形成している。そして、前記螺子孔29に、螺子杆31の一端部に形成した第一の雄螺子部32を螺合させている。また、この螺子杆31の他端部には、この第一の雄螺子部32と逆方向の第二の雄螺子部33を形成している。尚、この第二の雄螺子部33は、二条螺子等、ピッチの粗い螺子としている。
【0040】
更に、前記螺子杆31の一端部で、前記第一の押圧ブロック25の外端面から突出した部分にはロックナット34を螺合し、このロックナット34を前記外端面に向け緊締して、前記第一の押圧ブロック25に対する螺子杆31の回転を阻止する、回転阻止部を構成している。尚、前記螺子杆31の一端部外周面には、互いに平行な1対の平坦面37、37を形成している。一方、前記螺子杆31の他端部で、前記第二の押圧ブロック27の外端面から突出した部分には、螺子孔部材である調整ナット35を螺合させている。そして、この調整ナット35に、調整レバー36の基端部を、溶接等により結合固定している。
【0041】
上述の様に構成したテレスコピック締付機構の組立調整時には、前記ロックナット34を緩めた状態で、前記平坦面37、37にスパナ等の工具を係合させ、前記螺子杆31を回転させる。この螺子杆31に形成した第一、第二の雄螺子部32、33は互いに逆方向である為、この螺子杆31の回転に伴って第一の押圧ブロック25と前記調整ナット35とが互いに逆方向に移動する。そこで、これら両部材25、35同士が近づく様に、前記螺子杆31を回転させ、前記第一押圧ブロック25と、前記調整ナット35に押された第二の押圧ブロック27との距離を縮める。この際、前記調整レバー36は、ステアリングホイールの位置を固定すべく、この調整レバー36を回動させた状態位置に保持し、前記調整ナット35が回転しない様にしておく。
【0042】
この結果、両押圧ブロック25、27の内端寄り部分に形成した第一、第二の傾斜面26、28が、前記ミドルコラム2の外周面に押し付けられ、このミドルコラム2が前記ロアーコラム1の内側に固定される。そこで、十分な固定力が得られた状態で、前記ロックナット34を緊締し、前記螺子杆31が前記第一の押圧ブロック25に対し回転しない様にする。
【0043】
この様にして組み立てたテレスコピック締付機構により、ステアリングホイールの前後位置を調節すべく、ステアリングコラムの長さ調節を行なう場合、先ず調整レバー36を操作する事により、調整ナット35を回転させる。前記螺子杆31は、前記ロックナット34の緊締により回転する事はない為、前記調整ナット35が第二の雄螺子部33との螺合に基づいて、前記螺子杆31の軸方向に亙り、この螺子杆31の他端側(図6の左側)に変位する。この場合、前記第二の螺子部33のピッチは粗い為、前記操作レバー36の操作角度が小さくても、前記調整ナット35の変位量は十分に大きくなる。
【0044】
この様に調整ナット35を螺子杆31の他端側に変位させる結果、調整ナット35が第二の押圧ブロック27を押圧していた力が解除される。そして、この第二の押圧ブロック27と第一の押圧ブロック25との距離が広がって、ミドルコラム2がロアーコラム1の内側で変位自在な状態となる。
【0045】
この状態で、ステアリングホイールを押し引きし、ミドルコラム2を前後方向に変位させつつ、ステアリングホイールの前後位置を調節する。ステアリングホイールの前後位置を、所望位置に調節したならば、前記調整レバー36を前述の場合と逆方向に操作する事で、前記調整ナット35を前記螺子杆31の一端側に変位させ、前記第二の押圧ブロック27と第一の押圧ブロック25との距離を縮める。この結果、第一、第二の各押圧ブロック25、27の内端寄り部分に形成した第一、第二の傾斜平面26、28がミドルコラム2の外周面に強く押圧され、前記ステアリングホイールが、調節後の位置に支持されたままの状態となる。
【0046】
さて、本実施の形態では、ロアーコラム1の先端部は、ブッシュ40を介してロアーブラケット41の貫通孔42に嵌合して挿入してある。このロアーブラケット41は、図2に示すように、車体に取付けるための一対の車体取付ブラケット43a,43bを有している。なお、ブッシュ40は、ロアーブラケット41に装着され、ロアーコラム1に軽圧入されるおり、相対移動時、ロアーコラム1を円滑に相対移動させる役目を有している。
【0047】
また、ロアーブラケット41の下部には、略半円状の支持部50が形成してあり、この支持部50には、ブッシュ51を介して、後端部を支持ブラケット21に固定した衝撃吸収用シャフト52の先端部が挿入してある。この衝撃吸収用シャフト52は、コラム軸線に略平行に延在してある。
【0048】
この衝撃吸収用シャフト52の先端部は、段差部53を介して、小径にした小径部54に形成してある。
【0049】
なお、衝撃吸収用シャフト52の径の大きい部分は、凹凸のない円筒形状でもよいし、ネジ溝を形成するような凹凸形状でもよい。また、衝撃吸収用シャフト52は、ロアーコラム1の下側に限られず、ロアーコラム1の上側又は側方でもよい。
【0050】
また、図2(a)(b)に示すように、ロアーブラケット41には、アクチュエータとしての電磁ソレノイド60が設けてあり、この電磁ソレノイド60の鉄芯61は、車幅方向に延在してあり、その外周には、コイルバネ62を有している。
【0051】
鉄芯61の先端には、樹脂材料、又はアルミ材料等から形成してある板状の抵抗部材63が取付けてある。この抵抗部材63は、後述するように、衝撃吸収用シャフト52により剪断され、その際に、車両の二次衝突時9の衝撃エネルギーを吸収するようになっている。そのため、抵抗部材の材質は、衝撃エネルギーを吸収するように剪断されるものであれば、如何なるものであってもよい。また、抵抗部材63は、その断面形状として、矩形、ならびに円形状が考えられる。また、アクチュエータは、上述した電磁ソレノイド60以外に、電動モータ、空気シリンダー、又は、リンク方式でも可能である。
【0052】
この抵抗部材63は、電磁ソレノイド60がOFF状態の時には、図2(a)(b)に示すように、鉄芯61が伸長した位置にあって、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触するようになっており、これにより、二次衝突時には剪断されて衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0053】
一方、電磁ソレノイド60がON状態の時には、図4(a)に示すように、鉄芯61が退動した位置にあって、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触しないようになっており、この場合には、抵抗部材63により、二次衝突時の衝撃エネルギーを吸収することはない。
【0054】
ただし、二次衝突時には、電磁ソレノイド60のON/OFFにかかわらず、カプセル19a,19bの離脱やロアーコラム1とブッシュ40との相対移動によって、二次衝突エネルギーの吸収が行われる。
【0055】
なお、このように、抵抗部材63の位置を変えることにより、衝撃エネルギーの吸収の有無を切り替えるようになっており、2段階の切替となっているが、これに限定されず、衝撃エネルギー吸収の調整は、3段階以上の複数段に切り替えるものであってもよく、無段階に切替・調整することができるように構成してあってもよい。
【0056】
また、電磁ソレノイド60は、ECU(電子制御装置、図示略)により制御されるようになっており、ECU(図示略)には、例えば、シートポジションセンサ(図示略)の他、体重センサ(図示略)、車速センサ(図示略)、乗員位置センサ(図示略)、シートベルト着用センサ(図示略)等、少なくとも一つのセンサが接続されている。
【0057】
以上のように構成した衝撃吸収式ステアリングコラム装置では、自動車が走行を開始すると、ECU(図示略)は、前述した各種センサ(図示略)の検出信号に基づき、所定の制御インターバルで目標コラプス荷重の算出を繰り返し行う。例えば、運転者の体重が比較的大きい場合、あるいは運転者の体重が比較的小さくても車速が大きい場合、衝突時における運転者の運動エネルギが大きくなるため、目標コラプス荷重も大きくなる。
【0058】
なお、所定のインターバルで計算を行うことに限られず、車両の発進前にシートベルト着用の有無や乗員の体重から、ON/OFFの切替えを1度だけ行うように構成してもよい。
【0059】
この場合、ECU(図示略)は、電磁ソレノイド60に駆動指令を出力せず、抵抗部材63は、電磁ソレノイド60がOFF状態の時には、図2(a)(b)に示すように、鉄芯61が伸長した位置にあって、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触するようになっており、これにより、二次衝突時には剪断されて衝撃エネルギーを吸収することができる状態になっている。
【0060】
この状態で自動車が他の自動車や路上の障害物に衝突すると、運転者は慣性によってステアリングホイール(図示略)に二次衝突し、運転者の運動エネルギーにより、コラプスを開始し、ロアーコラム1が車両前方に移動する。
【0061】
これに伴って、衝撃吸収用シャフト52も車両前方に移動し、衝撃吸収用シャフト52の段差部53により、抵抗部材63が剪断される。従って、この場合には、比較的大きな衝突エネルギーの吸収が実現されることになる。
【0062】
一方、運転者が比較的体重の小さい小柄な女性等の場合、衝突時における運転者の運動エネルギが比較的小さくなるため、ECU(図示略)により算出された目標コラプス荷重も小さくなる。
【0063】
この場合、ECU(図示略)は、電磁ソレノイド60に駆動指令を出力し、電磁ソレノイド60がON状態の時には、図4(a)に示すように、鉄芯61が退動した位置にあって、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触しないようになっており、この場合には、抵抗部材63により、二次衝突時の衝撃エネルギーを吸収することはない。
【0064】
この状態で自動車が他の自動車や路上の障害物に衝突すると、上述した場合と同様のプロセスにより、運転者の運動エネルギーにより、コラプスを開始し、ロアーコラム1が車両前方に移動する。これに伴って、衝撃吸収用シャフト52も車両前方に移動する。
【0065】
しかし、抵抗部材63は、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触しないようになっており、この場合には、抵抗部材63により、二次衝突時の衝撃エネルギーを吸収することはない。その結果、運転者が小柄な女性等であっても、通常のコラプスが円滑に行われ、運転者の胸部や頭部に大きな衝撃が加わることがなくなる。
【0066】
本実施の形態は、以上から、エネルギー吸収量を調整(切替え)したい時に、抵抗部材63を電磁ソレノイド60により作動させて、2段階に切り替えることが可能となり、乗員の情報を受けとり、検知しながら、判断し、エネルギー吸収量を調整して、適正なエネルギー特性に近づけられる効果を有する。
【0067】
なお、図4(b)は、本第1実施の形態の変形例に係る衝撃吸収用シャフトの部分的な側面図である。本変形例では、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に傾斜角度(α)が形成してあり、段差部53が鋭角状になっている。この場合には、段差部53がより確実に抵抗部材63に係合することから、抵抗部材63を確実に剪断することができる。
【0068】
(第2実施の形態)
図7は、本発明の第2実施の形態に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の側面図である。
【0069】
図8は、図7の矢印Bの矢視図であって、抵抗部材が衝撃吸収用シャフトに接触する位置にある状態を示す図である。
【0070】
本第2実施の形態では、主要な構成は、上記の第1実施の形態と同様であり、異なる点についてのみ説明する。
【0071】
本第2実施の形態では、衝撃吸収用シャフト71には、小径部を形成することなく、直状に形成してある。
【0072】
抵抗部材72は、リング状に形成してあり、その内周面には、セレーションが形成してある。なお、セレーションは、軸方向に延びるものでも、周方向に延びるものでも、どちらでもよい。
【0073】
二次衝突時には、リング状の抵抗部材72の内周面のセレーションに、衝撃吸収用シャフト71を挿入して貫通させることにより、衝撃エネルギーを吸収するようになっている。また、支持部50には、リング状の抵抗部材72が移動自在となるように、車幅方向に渡って貫通孔Zが形成してある。
【0074】
例えば、衝撃吸収用シャフト71は、アルミニウム製であり、リング状の抵抗部材72は、鋼鉄製である。
【0075】
ロアーブラケット41には、電動モータ73が設けてあり、電動モータ73の駆動軸には、雄ネジ部材74が装着してある。一方、リング状の抵抗部材72には、雄ネジ部材74に螺合する雌ネジ部材75が装着してある。これにより、電動モータ73を駆動すると、雄・雌ネジ部材74,75の送りネジ機構により、リング状の抵抗部材72を車幅方向に移動することができる。
【0076】
なお、リング状の抵抗部材72と、衝撃吸収用シャフト71の先端部とは、ほとんど接した状態となっている(ただし、リング状の抵抗部材72の円孔に、衝撃吸収用シャフト71が挿入されていない状態である)。また、リング状の抵抗部材72と、衝撃吸収用シャフト71の先端部とは、少なくとも一方に、テーパ部が設けてあってもよい。さらに、衝撃吸収用シャフト71の先端部は、段付きであってもよい。
【0077】
以上のように構成した衝撃吸収式ステアリングコラム装置では、自動車が走行を開始すると、ECU(図示略)は、前述した各種センサ(図示略)の検出信号に基づき、所定の制御インターバルで目標コラプス荷重の算出を繰り返し行う。例えば、運転者の体重が比較的大きい場合、あるいは運転者の体重が比較的小さくても車速が大きい場合、衝突時における運転者の運動エネルギが大きくなるため、目標コラプス荷重も大きくなる。
【0078】
なお、所定のインターバルで計算を行うことに限られず、車両の発進前にシートベルト着用の有無や乗員の体重から、ON/OFFの切替えを1度だけ行うように構成してもよい。
【0079】
この場合、ECU(図示略)は、電動モータ73に駆動指令を出力せず、リング状の抵抗部材72は、伸長した位置にあって、衝撃吸収用シャフト71の先端部に殆ど接触するようになっており、これにより、二次衝突時には剪断されて衝撃エネルギーを吸収することができる状態になっている。
【0080】
この状態で自動車が他の自動車や路上の障害物に衝突すると、運転者は慣性によってステアリングホイール(図示略)に二次衝突し、運転者の運動エネルギーにより、コラプスを開始し、ロアーコラム1が車両前方に移動する。
【0081】
これに伴って、衝撃吸収用シャフト71も車両前方に移動し、リング状の抵抗部材72の内周面のセレーションに、衝撃吸収用シャフト71を挿入して貫通させることにより、衝撃エネルギーを吸収する。従って、この場合には、比較的大きな衝突エネルギーの吸収が実現されることになる。
【0082】
一方、運転者が比較的体重の小さい小柄な女性等の場合、衝突時における運転者の運動エネルギが比較的小さくなるため、ECU(図示略)により算出された目標コラプス荷重も小さくなる。
【0083】
この場合、ECU(図示略)は、電動モータ73に駆動指令を出力し、リング状の抵抗部材72は、退動した位置にあって、衝撃吸収用シャフト71の位置から車幅方向に位置ずれしており、この場合には、リング状の抵抗部材72により、二次衝突時の衝撃エネルギーを吸収することはない。
【0084】
この状態で自動車が他の自動車や路上の障害物に衝突すると、上述した場合と同様のプロセスにより、運転者の運動エネルギーにより、コラプスを開始し、ロアーコラム1が車両前方に移動する。これに伴って、衝撃吸収用シャフト71も車両前方に移動する。
【0085】
しかし、リング状の抵抗部材72により、二次衝突時の衝撃エネルギーを吸収することはない。その結果、運転者が小柄な女性等であっても、通常のコラプスが円滑に行われ、運転者の胸部や頭部に大きな衝撃が加わることがなくなる。
【0086】
本実施の形態は、以上から、エネルギー吸収量を調整(切替え)したい時に、リング状の抵抗部材72を電動モータ73により2段階に切り替えることが可能となり、乗員の情報を受けとり、検知しながら、判断し、エネルギー吸収量を調整して、適正なエネルギー特性に近づけられる効果を有する。
【0087】
なお、図9は、本発明の第2実施の形態の変形例に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の側面図である。
【0088】
本変形例では、衝撃吸収用シャフト71には、小径部を形成することなく、直状に形成してあり、その外周面に、セレーション71aが形成してある。抵抗部材72は、リング状に形成してある。二次衝突時には、リング状の抵抗部材72に、衝撃吸収用シャフト71の外周面のセレーションを挿入して貫通させることにより、衝撃エネルギーを吸収するようになっている。
【0089】
例えば、衝撃吸収用シャフト71は、鋼鉄製であり、リング状の抵抗部材72は、アルミニウム製である。
【0090】
ロアーブラケット41には、上記第2実施の形態と同様に(図8に示すように)、電動モータ73が設けてあり、電動モータ73の駆動軸には、雄ネジ部材74が装着してある。一方、リング状の抵抗部材72には、雄ネジ部材74に螺合する雌ネジ部材75が装着してある。これにより、電動モータ73を駆動すると、雄・雌ネジ部材74,75の送りネジ機構により、リング状の抵抗部材72を車幅方向に移動することができる。また、支持部50には、リング状の抵抗部材72が移動自在となるように、車幅方向に渡って貫通孔Zが形成してある。
【0091】
なお、リング状の抵抗部材72と、衝撃吸収用シャフト71の先端部とは、ほとんど接した状態となっている(ただし、リング状の抵抗部材72の円孔に、衝撃吸収用シャフト71が挿入されていない状態である)。また、リング状の抵抗部材72と、衝撃吸収用シャフト71の先端部とは、少なくとも一方に、テーパ部が設けてあってもよい。さらに、衝撃吸収用シャフト71の先端部は、段付きであってもよい。
【0092】
また、この衝撃吸収用シャフト71のセレーション71aの長さ、セレーション71aの位置は、適宜調整することにより、衝撃エネルギー吸収特性を自由に定めることができる。
【0093】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、エネルギー吸収量を調整(切替え)したい時に、抵抗部材をアクチュエータにより作動させて、切り替えることが可能となり、乗員の情報を受けとり、検知しながら、判断し、エネルギー吸収量を調整して、適正なエネルギー特性に近づけられる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の側面図である。
【図2】(a)は、図1の矢印Aの矢視図であって、抵抗部材が衝撃吸収用シャフトに接触する位置にある状態を示す図であり、(b)は、(a)の矢印bの矢視図である。
【図3】図1に示した車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の平面図である。
【図4】(a)は、図1の矢印Aの矢視図の要部であって、抵抗部材が衝撃吸収用シャフトに接触しない位置にある状態を示す図であり、(b)は、変形例に係る衝撃吸収用シャフトの部分的な側面図である。
【図5】図1に示した車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置のチルト締付機構の箇所の縦断面図である。
【図6】図1に示した車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置のテレスコピック締付機構の箇所の横断面図である。
【図7】本発明の第2実施の形態に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の側面図である。
【図8】図7の矢印Bの矢視図であって、抵抗部材が衝撃吸収用シャフトに接触する位置にある状態を示す図である。
【図9】本発明の第2実施の形態の変形例に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の側面図である。
【符合の説明】
1 ロアーコラム
2 ミドルコラム
3 アッパーコラム
3a 第1ハウジング
3b 第2ハウジング
4 ロアーシャフト
5 自在継手
7 軸受
8 固定側係合部材(固定ギヤ)
8a 噛合歯
10 可動側係合部材(可動ギヤ)
10a 噛合歯
11 可動ギヤ用枢軸
12 チルトレバー
13 楔状部
14 支持バネ
15 固定部材
19a,19b 離脱用カプセル
21 支持ブラケット
21a,21b 車体取付フランジ
22 インナーコラム
23 ロックハウジング
24 シリンダ孔
25 第一の押圧ブロック
26 第一の傾斜平面
27 第二の押圧ブロック
28 第二の傾斜平面
29 螺子孔
30 貫通孔
31 螺子杆
32 第一の雄螺子部
33 第二の雄螺子部
34 ロックナット
35 調整ナット
36 調整レバー
37 平坦面
40 ブッシュ
41 ロアーブラケット
42 貫通孔
43a,43b 車体取付ブラケット
50 支持部
51 ブッシュ
52 衝撃吸収用シャフト
53 段差部
54 小径部
60 電磁ソレノイド
61 鉄芯
62 コイルバネ
63 抵抗部材
71 衝撃吸収用シャフト
71a セレーション
72 リング状の抵抗部材
73 電動モータ
74 雄ネジ部材
75 雌ネジ部材
Y チルト中心(枢軸)
Z 貫通孔
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝撃エネルギー吸収荷重を可変にした車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車が他の自動車や建造物等に衝突した場合、運転者が慣性でステアリングホイールに二次衝突することがある。近年の乗用車等では、このような場合における運転者の受傷を防止するべく、衝撃吸収式ステアリングシャフトや衝撃吸収式ステアリングコラム装置が広く採用されている。衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、運転者が二次衝突した際にステアリングコラムがステアリングシャフトと共に離脱するもので、通常はステアリングシャフトと同時にコラプスし、その際に衝突エネルギーの吸収が行われる。
【0003】
衝突エネルギーの吸収方式としては、ステアリングコラムの一部に形成されたメッシュ部を圧縮座屈変形させるメッシュ式が旧来より知られているが、アウタコラムとインナコラムとの間に金属球を介装させ、コラプス時にアウタコラムの内周面やインナコラムの外周面に塑性溝を形成させるボール式も広く採用されている。
【0004】
また、近年では、しごき式も採用されている。しごき式の衝突エネルギー吸収機構は、例えば、帯形状の鋼板からなるエネルギー吸収部材の一端を車体側ブラケットに固着させると共に、ステアリングコラム側にエネルギー吸収部材に形成された屈曲部に嵌入する鋼棒等のしごき手段を設け、ステアリングコラムが前方に移動する際にしごき手段によりエネルギー吸収部材をしごき変形させる構成をとっている。
【0005】
更に、引裂き式も一部に採用されている。引裂き式の衝突エネルギー吸収機構は、例えば、帯形状の鋼板からなるエネルギー吸収部材の中央部を車体側ブラケットに固着させる一方、その両側部をU字形状に屈曲させてステアリングコラム側に固着させ、ステアリングコラムが前方に移動する際にエネルギー吸収部材を曲げ変形させながら引裂く構成を採っている。
【0006】
ところで、衝撃吸収式ステアリングコラム装置では、所定の衝撃エネルギー吸収荷重が作用した場合にステアリングコラムがコラプスするが、通常、この衝撃エネルギー吸収荷重は、標準的な体重の運転者が所定の速度でステアリングホイールに二次衝突した際の運動エネルギーを基に設定されている。
【0007】
しかしながら、運転者が小柄な女性等である場合、車両が低速である場合には、その運動エネルギーが当然に小さくなり、運転者の体格や車速等に応じてエネルギー吸収量を調整できないといったことがある。
【0008】
このようなことから、特許文献1乃至3では、車両の衝突時における乗員の二次衝突エネルギーを吸収する衝突エネルギー吸収手段を備えた衝撃吸収式ステアリングコラム装置であって、衝突エネルギー吸収手段による二次衝突エネルギーの吸収量を変化させるエネルギー吸収量調整手段と、乗員あるいは前記車両の状態を検出する少なくとも一つのセンサと、当該センサの検出結果に基づき、エネルギー吸収量調整手段を駆動制御する電気制御手段と、が備えてある。これにより、衝撃エネルギー吸収荷重の可変化を実現し、運転者の体格や車速等に応じて、二次衝突時のエネルギー吸収量が調整できるようにしてある。
【0009】
なお、特許文献4では、アッパー側のコラムに固着して設けた棒状部材は、その先端部がロアー側のコラムに設けたスリットに係合してあり、二次衝突時には、棒状部材がスリットに摩擦摺動しながら車両前方に移動し、スリットが塑性変形することにより、衝撃エネルギーを吸収するようになっている。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−137743号公報
【特許文献2】
特開2002−114158号公報
【特許文献3】
特開2002−120734号公報
【特許文献4】
特開昭61−135861号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1乃至3に開示した衝撃エネルギー吸収構造では、衝突エネルギーの吸収方式としては、ボール&ケージ式又はしごきプレート式から構成してあることから、エネルギー吸収調整装置が占めるスペースが大きく、例えば、コラムのコラプス・ストロークを長くとりたい場合、スペース上の制約があり、そのストローク量設定にかなり制約を受けるという問題点がある。
【0012】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであって、エネルギー吸収調整装置の小型化を図り、コラプス・ストロークの自由度を広くできる車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、一対のコラムを相互に摺動可能に嵌合した車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置において、
前記両コラムの一方に、コラム軸線に略平行に延在して設けた衝撃吸収用シャフトと、
前記両コラムの他方に設け、衝撃エネルギー吸収の際、前記衝撃吸収用シャフトに接触しながら摩擦抵抗を発生する抵抗部材と、を具備することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、請求項1に於いて、前記抵抗部材の位置を変化させるためのアクチュエータを更に具備し、これにより、前記摩擦抵抗を可変にしたことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の請求項3に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、請求項2に於いて、乗員又は車両の状態を検出する少なくとも一つのセンサーと、
当該センサーの検出結果に基づき、前記アクチュエータを駆動制御する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の請求項4に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、請求項2に於いて、前記アクチュエータは、電動モータ又は電磁ソレノイドであることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明の請求項5に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に於いて、前記抵抗部材は、樹脂材料、又はアルミ材料から形成してあることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の側面図である。
【0020】
図2(a)は、図1の矢印Aの矢視図であって、抵抗部材が衝撃吸収用シャフトに接触する位置にある状態を示す図であり、(b)は、(a)の矢印bの矢視図である。
【0021】
図3は、図1に示した車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の平面図である。
【0022】
図4(a)は、図1の矢印Aの矢視図の要部であって、抵抗部材が衝撃吸収用シャフトに接触しない位置にある状態を示す図であり、(b)は、変形例に係る衝撃吸収用シャフトの部分的な側面図である。
【0023】
図5は、図1に示した車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置のチルト締付機構の箇所の縦断面図である。
【0024】
図6は、図1のX−X線に沿った横断面図である。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態では、ステアリングコラムは、ロアーコラム1と、ミドルコラム2と、アッパーコラム3とからなり、アッパーコラム3は、車両前方側の第1ハウジング3aと、この第1ハウジング3aに対して、図1の枢軸Yを中心に揺動自在に設けた第2ハウジング3bとからなっている。
【0026】
これらステアリングコラム内には、ロアーシャフト4と、このロアーシャフト4に自在継手5(図5参照)を介して連結したアッパーシャフト6とからなるステアリングシャフトが回転自在に支持してある。枢軸Yと自在継手5の中心とは、軸方向で一致する。
【0027】
また、本実施の形態に係るステアリングコラム装置は、チルト調整式であって、図5に示すように、チルト締付機構が設けてある。
【0028】
第1ハウジング3aの下面には、噛合歯8aを有する固定ギヤ8(固定側係合部材)が、第1ハウジング3aに一体的に固定されている。この噛合歯8aに噛合する噛合歯10aを有する可動ギヤ10は、第2ハウジング3bに設けられた可動ギヤ用枢軸11に揺動自在に枢支されている。なお、アッパーシャフト6は、一対の軸受7,7に回転自在に支持してある。
【0029】
また、第2ハウジング3bには、チルトレバー12が揺動自在に設けられ、このチルトレバー12の先端部には、可動ギヤ10をロックするための楔状部13が設けられている。
【0030】
したがって、チルトレバー12がドライバーによって揺動されると、楔状部13が可動ギヤ10から離れ、可動ギヤ10の噛合歯10aが固定ギヤ8の噛合歯8aとの係合を解除し、これにより、アッパーシャフト6の後端に固定されたステアリングホイールの傾斜角度を調整することができる。
【0031】
一方、チルトレバー12が逆方向に揺動されると、楔状部13が可動ギヤ10を押し上げ、可動ギヤ10の噛合歯10aが固定ギヤ8の噛合歯8aに係合し、この状態で、楔状部13が可動ギヤ10と、第2ハウジング3bに一体的に形成された固定部材15との間でロックされ、これにより、ステアリングホイールを調整後の状態で固定することができる。
【0032】
また、第1ハウジング3aと第2ハウジング3bとの間には、アッパーシャフト6、及びステアリングホイール等、第2ハウジング3bに支持された部材の重量を支えるだけの支持バネ14(圧縮バネ)が設けられている。この支持バネ14(圧縮バネ)は、可動ギヤ10の噛合歯10aと固定ギヤ8の噛合歯8aとの係合が解除された場合、ステアリングホイール等が勢い良く下降することを防止している。
【0033】
また、本実施の形態に係るステアリングコラム装置は、ロアーコラム1に対してミドルコラム2がテレスコピック摺動できるテレスコピック調整式であって、図6に示すように、テレスコピック締付機構が設けてある。
【0034】
ロアーコラム1は、アルミニウム材のダイキャスト成形、或は合成樹脂の射出成形等により、軸方向に長い管状に形成されている。この様なロアーコラム1は、一体的に設けた支持ブラケット21を備えている。
【0035】
支持ブラケット21は、ダッシュボードの下面部分等に於いて車体に支持される一対の車体取付フランジ21a,21bを有している。これら一対の車体取付フランジ21a,21bには、二次衝突時にロアーコラム1等を車体から離脱するための離脱用カプセル19a,19bが装着してある。
【0036】
前記ロアーコラム1の一部で前記支持ブラケット21の下側部分には、ロックハウジング23を、このロアーコラム1の外周面から直径方向外方に突出する状態で固設している。このロックハウジング23に、断面円形の、即ち内周面が円筒面であるシリンダ孔24を、このロックハウジング23を左右方向に貫通する状態で形成している。このシリンダ孔24の中心軸は、前記ロアーコラム1並びにミドルコラム2の中心軸に対し捩れの位置関係となっている。そして、前記ミドルコラム2の一部外周面を、前記シリンダ孔24の一部内周面から突出させている。
【0037】
この様なシリンダ孔24の片半部(図6の右半部)には、第一の押圧ブロック25を、このシリンダ孔24の一端開口から挿入している。この第一の押圧ブロック25は、前記シリンダ孔24内にがたつきなく挿入自在な、外周面が円筒面である、短円柱状に形成されている。又、前記第一の押圧ブロック25の内端寄り部分(シリンダ孔24の中央寄り部分で、図6の左寄り部分)で、前記ミドルコラム2の外周面に対向する部分には、第一の傾斜押圧部である、第一の傾斜平面26を形成し、この第一の傾斜平面26と前記ミドルコラム2の外周面とを当接させている。
【0038】
前記シリンダ孔24の他半部(図6の左半部)には第二の押圧ブロック27を、このシリンダ孔24の他端開口から挿入している。この第二の押圧ブロック27は、前記第一の押圧ブロック25と同様に、前記シリンダ孔24内にがたつきなく挿入自在な、外周面が円筒面である、短円柱状に形成されている。又、前記第二の押圧ブロック27の内端寄り部分(図6の右寄り部分)で、前記ミドルコラム2の外周面に対向する部分には、第二の傾斜押圧部である、第二の傾斜平面28を形成し、この第二の傾斜平面28と前記ミドルコラム2の外周面とを当接させている。
【0039】
前記第一の押圧ブロック25には螺子孔29を、左右方向に亙って形成している。又、前記第二の押圧ブロック27には貫通孔30を左右方向に亙って、前記螺子孔29と同心に形成している。そして、前記螺子孔29に、螺子杆31の一端部に形成した第一の雄螺子部32を螺合させている。また、この螺子杆31の他端部には、この第一の雄螺子部32と逆方向の第二の雄螺子部33を形成している。尚、この第二の雄螺子部33は、二条螺子等、ピッチの粗い螺子としている。
【0040】
更に、前記螺子杆31の一端部で、前記第一の押圧ブロック25の外端面から突出した部分にはロックナット34を螺合し、このロックナット34を前記外端面に向け緊締して、前記第一の押圧ブロック25に対する螺子杆31の回転を阻止する、回転阻止部を構成している。尚、前記螺子杆31の一端部外周面には、互いに平行な1対の平坦面37、37を形成している。一方、前記螺子杆31の他端部で、前記第二の押圧ブロック27の外端面から突出した部分には、螺子孔部材である調整ナット35を螺合させている。そして、この調整ナット35に、調整レバー36の基端部を、溶接等により結合固定している。
【0041】
上述の様に構成したテレスコピック締付機構の組立調整時には、前記ロックナット34を緩めた状態で、前記平坦面37、37にスパナ等の工具を係合させ、前記螺子杆31を回転させる。この螺子杆31に形成した第一、第二の雄螺子部32、33は互いに逆方向である為、この螺子杆31の回転に伴って第一の押圧ブロック25と前記調整ナット35とが互いに逆方向に移動する。そこで、これら両部材25、35同士が近づく様に、前記螺子杆31を回転させ、前記第一押圧ブロック25と、前記調整ナット35に押された第二の押圧ブロック27との距離を縮める。この際、前記調整レバー36は、ステアリングホイールの位置を固定すべく、この調整レバー36を回動させた状態位置に保持し、前記調整ナット35が回転しない様にしておく。
【0042】
この結果、両押圧ブロック25、27の内端寄り部分に形成した第一、第二の傾斜面26、28が、前記ミドルコラム2の外周面に押し付けられ、このミドルコラム2が前記ロアーコラム1の内側に固定される。そこで、十分な固定力が得られた状態で、前記ロックナット34を緊締し、前記螺子杆31が前記第一の押圧ブロック25に対し回転しない様にする。
【0043】
この様にして組み立てたテレスコピック締付機構により、ステアリングホイールの前後位置を調節すべく、ステアリングコラムの長さ調節を行なう場合、先ず調整レバー36を操作する事により、調整ナット35を回転させる。前記螺子杆31は、前記ロックナット34の緊締により回転する事はない為、前記調整ナット35が第二の雄螺子部33との螺合に基づいて、前記螺子杆31の軸方向に亙り、この螺子杆31の他端側(図6の左側)に変位する。この場合、前記第二の螺子部33のピッチは粗い為、前記操作レバー36の操作角度が小さくても、前記調整ナット35の変位量は十分に大きくなる。
【0044】
この様に調整ナット35を螺子杆31の他端側に変位させる結果、調整ナット35が第二の押圧ブロック27を押圧していた力が解除される。そして、この第二の押圧ブロック27と第一の押圧ブロック25との距離が広がって、ミドルコラム2がロアーコラム1の内側で変位自在な状態となる。
【0045】
この状態で、ステアリングホイールを押し引きし、ミドルコラム2を前後方向に変位させつつ、ステアリングホイールの前後位置を調節する。ステアリングホイールの前後位置を、所望位置に調節したならば、前記調整レバー36を前述の場合と逆方向に操作する事で、前記調整ナット35を前記螺子杆31の一端側に変位させ、前記第二の押圧ブロック27と第一の押圧ブロック25との距離を縮める。この結果、第一、第二の各押圧ブロック25、27の内端寄り部分に形成した第一、第二の傾斜平面26、28がミドルコラム2の外周面に強く押圧され、前記ステアリングホイールが、調節後の位置に支持されたままの状態となる。
【0046】
さて、本実施の形態では、ロアーコラム1の先端部は、ブッシュ40を介してロアーブラケット41の貫通孔42に嵌合して挿入してある。このロアーブラケット41は、図2に示すように、車体に取付けるための一対の車体取付ブラケット43a,43bを有している。なお、ブッシュ40は、ロアーブラケット41に装着され、ロアーコラム1に軽圧入されるおり、相対移動時、ロアーコラム1を円滑に相対移動させる役目を有している。
【0047】
また、ロアーブラケット41の下部には、略半円状の支持部50が形成してあり、この支持部50には、ブッシュ51を介して、後端部を支持ブラケット21に固定した衝撃吸収用シャフト52の先端部が挿入してある。この衝撃吸収用シャフト52は、コラム軸線に略平行に延在してある。
【0048】
この衝撃吸収用シャフト52の先端部は、段差部53を介して、小径にした小径部54に形成してある。
【0049】
なお、衝撃吸収用シャフト52の径の大きい部分は、凹凸のない円筒形状でもよいし、ネジ溝を形成するような凹凸形状でもよい。また、衝撃吸収用シャフト52は、ロアーコラム1の下側に限られず、ロアーコラム1の上側又は側方でもよい。
【0050】
また、図2(a)(b)に示すように、ロアーブラケット41には、アクチュエータとしての電磁ソレノイド60が設けてあり、この電磁ソレノイド60の鉄芯61は、車幅方向に延在してあり、その外周には、コイルバネ62を有している。
【0051】
鉄芯61の先端には、樹脂材料、又はアルミ材料等から形成してある板状の抵抗部材63が取付けてある。この抵抗部材63は、後述するように、衝撃吸収用シャフト52により剪断され、その際に、車両の二次衝突時9の衝撃エネルギーを吸収するようになっている。そのため、抵抗部材の材質は、衝撃エネルギーを吸収するように剪断されるものであれば、如何なるものであってもよい。また、抵抗部材63は、その断面形状として、矩形、ならびに円形状が考えられる。また、アクチュエータは、上述した電磁ソレノイド60以外に、電動モータ、空気シリンダー、又は、リンク方式でも可能である。
【0052】
この抵抗部材63は、電磁ソレノイド60がOFF状態の時には、図2(a)(b)に示すように、鉄芯61が伸長した位置にあって、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触するようになっており、これにより、二次衝突時には剪断されて衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0053】
一方、電磁ソレノイド60がON状態の時には、図4(a)に示すように、鉄芯61が退動した位置にあって、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触しないようになっており、この場合には、抵抗部材63により、二次衝突時の衝撃エネルギーを吸収することはない。
【0054】
ただし、二次衝突時には、電磁ソレノイド60のON/OFFにかかわらず、カプセル19a,19bの離脱やロアーコラム1とブッシュ40との相対移動によって、二次衝突エネルギーの吸収が行われる。
【0055】
なお、このように、抵抗部材63の位置を変えることにより、衝撃エネルギーの吸収の有無を切り替えるようになっており、2段階の切替となっているが、これに限定されず、衝撃エネルギー吸収の調整は、3段階以上の複数段に切り替えるものであってもよく、無段階に切替・調整することができるように構成してあってもよい。
【0056】
また、電磁ソレノイド60は、ECU(電子制御装置、図示略)により制御されるようになっており、ECU(図示略)には、例えば、シートポジションセンサ(図示略)の他、体重センサ(図示略)、車速センサ(図示略)、乗員位置センサ(図示略)、シートベルト着用センサ(図示略)等、少なくとも一つのセンサが接続されている。
【0057】
以上のように構成した衝撃吸収式ステアリングコラム装置では、自動車が走行を開始すると、ECU(図示略)は、前述した各種センサ(図示略)の検出信号に基づき、所定の制御インターバルで目標コラプス荷重の算出を繰り返し行う。例えば、運転者の体重が比較的大きい場合、あるいは運転者の体重が比較的小さくても車速が大きい場合、衝突時における運転者の運動エネルギが大きくなるため、目標コラプス荷重も大きくなる。
【0058】
なお、所定のインターバルで計算を行うことに限られず、車両の発進前にシートベルト着用の有無や乗員の体重から、ON/OFFの切替えを1度だけ行うように構成してもよい。
【0059】
この場合、ECU(図示略)は、電磁ソレノイド60に駆動指令を出力せず、抵抗部材63は、電磁ソレノイド60がOFF状態の時には、図2(a)(b)に示すように、鉄芯61が伸長した位置にあって、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触するようになっており、これにより、二次衝突時には剪断されて衝撃エネルギーを吸収することができる状態になっている。
【0060】
この状態で自動車が他の自動車や路上の障害物に衝突すると、運転者は慣性によってステアリングホイール(図示略)に二次衝突し、運転者の運動エネルギーにより、コラプスを開始し、ロアーコラム1が車両前方に移動する。
【0061】
これに伴って、衝撃吸収用シャフト52も車両前方に移動し、衝撃吸収用シャフト52の段差部53により、抵抗部材63が剪断される。従って、この場合には、比較的大きな衝突エネルギーの吸収が実現されることになる。
【0062】
一方、運転者が比較的体重の小さい小柄な女性等の場合、衝突時における運転者の運動エネルギが比較的小さくなるため、ECU(図示略)により算出された目標コラプス荷重も小さくなる。
【0063】
この場合、ECU(図示略)は、電磁ソレノイド60に駆動指令を出力し、電磁ソレノイド60がON状態の時には、図4(a)に示すように、鉄芯61が退動した位置にあって、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触しないようになっており、この場合には、抵抗部材63により、二次衝突時の衝撃エネルギーを吸収することはない。
【0064】
この状態で自動車が他の自動車や路上の障害物に衝突すると、上述した場合と同様のプロセスにより、運転者の運動エネルギーにより、コラプスを開始し、ロアーコラム1が車両前方に移動する。これに伴って、衝撃吸収用シャフト52も車両前方に移動する。
【0065】
しかし、抵抗部材63は、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に接触しないようになっており、この場合には、抵抗部材63により、二次衝突時の衝撃エネルギーを吸収することはない。その結果、運転者が小柄な女性等であっても、通常のコラプスが円滑に行われ、運転者の胸部や頭部に大きな衝撃が加わることがなくなる。
【0066】
本実施の形態は、以上から、エネルギー吸収量を調整(切替え)したい時に、抵抗部材63を電磁ソレノイド60により作動させて、2段階に切り替えることが可能となり、乗員の情報を受けとり、検知しながら、判断し、エネルギー吸収量を調整して、適正なエネルギー特性に近づけられる効果を有する。
【0067】
なお、図4(b)は、本第1実施の形態の変形例に係る衝撃吸収用シャフトの部分的な側面図である。本変形例では、衝撃吸収用シャフト52の段差部53に傾斜角度(α)が形成してあり、段差部53が鋭角状になっている。この場合には、段差部53がより確実に抵抗部材63に係合することから、抵抗部材63を確実に剪断することができる。
【0068】
(第2実施の形態)
図7は、本発明の第2実施の形態に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の側面図である。
【0069】
図8は、図7の矢印Bの矢視図であって、抵抗部材が衝撃吸収用シャフトに接触する位置にある状態を示す図である。
【0070】
本第2実施の形態では、主要な構成は、上記の第1実施の形態と同様であり、異なる点についてのみ説明する。
【0071】
本第2実施の形態では、衝撃吸収用シャフト71には、小径部を形成することなく、直状に形成してある。
【0072】
抵抗部材72は、リング状に形成してあり、その内周面には、セレーションが形成してある。なお、セレーションは、軸方向に延びるものでも、周方向に延びるものでも、どちらでもよい。
【0073】
二次衝突時には、リング状の抵抗部材72の内周面のセレーションに、衝撃吸収用シャフト71を挿入して貫通させることにより、衝撃エネルギーを吸収するようになっている。また、支持部50には、リング状の抵抗部材72が移動自在となるように、車幅方向に渡って貫通孔Zが形成してある。
【0074】
例えば、衝撃吸収用シャフト71は、アルミニウム製であり、リング状の抵抗部材72は、鋼鉄製である。
【0075】
ロアーブラケット41には、電動モータ73が設けてあり、電動モータ73の駆動軸には、雄ネジ部材74が装着してある。一方、リング状の抵抗部材72には、雄ネジ部材74に螺合する雌ネジ部材75が装着してある。これにより、電動モータ73を駆動すると、雄・雌ネジ部材74,75の送りネジ機構により、リング状の抵抗部材72を車幅方向に移動することができる。
【0076】
なお、リング状の抵抗部材72と、衝撃吸収用シャフト71の先端部とは、ほとんど接した状態となっている(ただし、リング状の抵抗部材72の円孔に、衝撃吸収用シャフト71が挿入されていない状態である)。また、リング状の抵抗部材72と、衝撃吸収用シャフト71の先端部とは、少なくとも一方に、テーパ部が設けてあってもよい。さらに、衝撃吸収用シャフト71の先端部は、段付きであってもよい。
【0077】
以上のように構成した衝撃吸収式ステアリングコラム装置では、自動車が走行を開始すると、ECU(図示略)は、前述した各種センサ(図示略)の検出信号に基づき、所定の制御インターバルで目標コラプス荷重の算出を繰り返し行う。例えば、運転者の体重が比較的大きい場合、あるいは運転者の体重が比較的小さくても車速が大きい場合、衝突時における運転者の運動エネルギが大きくなるため、目標コラプス荷重も大きくなる。
【0078】
なお、所定のインターバルで計算を行うことに限られず、車両の発進前にシートベルト着用の有無や乗員の体重から、ON/OFFの切替えを1度だけ行うように構成してもよい。
【0079】
この場合、ECU(図示略)は、電動モータ73に駆動指令を出力せず、リング状の抵抗部材72は、伸長した位置にあって、衝撃吸収用シャフト71の先端部に殆ど接触するようになっており、これにより、二次衝突時には剪断されて衝撃エネルギーを吸収することができる状態になっている。
【0080】
この状態で自動車が他の自動車や路上の障害物に衝突すると、運転者は慣性によってステアリングホイール(図示略)に二次衝突し、運転者の運動エネルギーにより、コラプスを開始し、ロアーコラム1が車両前方に移動する。
【0081】
これに伴って、衝撃吸収用シャフト71も車両前方に移動し、リング状の抵抗部材72の内周面のセレーションに、衝撃吸収用シャフト71を挿入して貫通させることにより、衝撃エネルギーを吸収する。従って、この場合には、比較的大きな衝突エネルギーの吸収が実現されることになる。
【0082】
一方、運転者が比較的体重の小さい小柄な女性等の場合、衝突時における運転者の運動エネルギが比較的小さくなるため、ECU(図示略)により算出された目標コラプス荷重も小さくなる。
【0083】
この場合、ECU(図示略)は、電動モータ73に駆動指令を出力し、リング状の抵抗部材72は、退動した位置にあって、衝撃吸収用シャフト71の位置から車幅方向に位置ずれしており、この場合には、リング状の抵抗部材72により、二次衝突時の衝撃エネルギーを吸収することはない。
【0084】
この状態で自動車が他の自動車や路上の障害物に衝突すると、上述した場合と同様のプロセスにより、運転者の運動エネルギーにより、コラプスを開始し、ロアーコラム1が車両前方に移動する。これに伴って、衝撃吸収用シャフト71も車両前方に移動する。
【0085】
しかし、リング状の抵抗部材72により、二次衝突時の衝撃エネルギーを吸収することはない。その結果、運転者が小柄な女性等であっても、通常のコラプスが円滑に行われ、運転者の胸部や頭部に大きな衝撃が加わることがなくなる。
【0086】
本実施の形態は、以上から、エネルギー吸収量を調整(切替え)したい時に、リング状の抵抗部材72を電動モータ73により2段階に切り替えることが可能となり、乗員の情報を受けとり、検知しながら、判断し、エネルギー吸収量を調整して、適正なエネルギー特性に近づけられる効果を有する。
【0087】
なお、図9は、本発明の第2実施の形態の変形例に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の側面図である。
【0088】
本変形例では、衝撃吸収用シャフト71には、小径部を形成することなく、直状に形成してあり、その外周面に、セレーション71aが形成してある。抵抗部材72は、リング状に形成してある。二次衝突時には、リング状の抵抗部材72に、衝撃吸収用シャフト71の外周面のセレーションを挿入して貫通させることにより、衝撃エネルギーを吸収するようになっている。
【0089】
例えば、衝撃吸収用シャフト71は、鋼鉄製であり、リング状の抵抗部材72は、アルミニウム製である。
【0090】
ロアーブラケット41には、上記第2実施の形態と同様に(図8に示すように)、電動モータ73が設けてあり、電動モータ73の駆動軸には、雄ネジ部材74が装着してある。一方、リング状の抵抗部材72には、雄ネジ部材74に螺合する雌ネジ部材75が装着してある。これにより、電動モータ73を駆動すると、雄・雌ネジ部材74,75の送りネジ機構により、リング状の抵抗部材72を車幅方向に移動することができる。また、支持部50には、リング状の抵抗部材72が移動自在となるように、車幅方向に渡って貫通孔Zが形成してある。
【0091】
なお、リング状の抵抗部材72と、衝撃吸収用シャフト71の先端部とは、ほとんど接した状態となっている(ただし、リング状の抵抗部材72の円孔に、衝撃吸収用シャフト71が挿入されていない状態である)。また、リング状の抵抗部材72と、衝撃吸収用シャフト71の先端部とは、少なくとも一方に、テーパ部が設けてあってもよい。さらに、衝撃吸収用シャフト71の先端部は、段付きであってもよい。
【0092】
また、この衝撃吸収用シャフト71のセレーション71aの長さ、セレーション71aの位置は、適宜調整することにより、衝撃エネルギー吸収特性を自由に定めることができる。
【0093】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。
【0094】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、エネルギー吸収量を調整(切替え)したい時に、抵抗部材をアクチュエータにより作動させて、切り替えることが可能となり、乗員の情報を受けとり、検知しながら、判断し、エネルギー吸収量を調整して、適正なエネルギー特性に近づけられる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の側面図である。
【図2】(a)は、図1の矢印Aの矢視図であって、抵抗部材が衝撃吸収用シャフトに接触する位置にある状態を示す図であり、(b)は、(a)の矢印bの矢視図である。
【図3】図1に示した車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の平面図である。
【図4】(a)は、図1の矢印Aの矢視図の要部であって、抵抗部材が衝撃吸収用シャフトに接触しない位置にある状態を示す図であり、(b)は、変形例に係る衝撃吸収用シャフトの部分的な側面図である。
【図5】図1に示した車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置のチルト締付機構の箇所の縦断面図である。
【図6】図1に示した車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置のテレスコピック締付機構の箇所の横断面図である。
【図7】本発明の第2実施の形態に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の側面図である。
【図8】図7の矢印Bの矢視図であって、抵抗部材が衝撃吸収用シャフトに接触する位置にある状態を示す図である。
【図9】本発明の第2実施の形態の変形例に係る車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置の側面図である。
【符合の説明】
1 ロアーコラム
2 ミドルコラム
3 アッパーコラム
3a 第1ハウジング
3b 第2ハウジング
4 ロアーシャフト
5 自在継手
7 軸受
8 固定側係合部材(固定ギヤ)
8a 噛合歯
10 可動側係合部材(可動ギヤ)
10a 噛合歯
11 可動ギヤ用枢軸
12 チルトレバー
13 楔状部
14 支持バネ
15 固定部材
19a,19b 離脱用カプセル
21 支持ブラケット
21a,21b 車体取付フランジ
22 インナーコラム
23 ロックハウジング
24 シリンダ孔
25 第一の押圧ブロック
26 第一の傾斜平面
27 第二の押圧ブロック
28 第二の傾斜平面
29 螺子孔
30 貫通孔
31 螺子杆
32 第一の雄螺子部
33 第二の雄螺子部
34 ロックナット
35 調整ナット
36 調整レバー
37 平坦面
40 ブッシュ
41 ロアーブラケット
42 貫通孔
43a,43b 車体取付ブラケット
50 支持部
51 ブッシュ
52 衝撃吸収用シャフト
53 段差部
54 小径部
60 電磁ソレノイド
61 鉄芯
62 コイルバネ
63 抵抗部材
71 衝撃吸収用シャフト
71a セレーション
72 リング状の抵抗部材
73 電動モータ
74 雄ネジ部材
75 雌ネジ部材
Y チルト中心(枢軸)
Z 貫通孔
Claims (5)
- 一対のコラムを相互に摺動可能に嵌合した車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置において、前記両コラムの一方に、コラム軸線に略平行に延在して設けた衝撃吸収用シャフトと、前記両コラムの他方に設け、衝撃エネルギー吸収の際、前記衝撃吸収用シャフトに接触しながら摩擦抵抗を発生する抵抗部材と、を具備することを特徴とする車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
- 前記抵抗部材の位置を変化させるためのアクチュエータを更に具備し、これにより、前記摩擦抵抗を可変にしたことを特徴とする請求項1に記載の車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
- 乗員又は車両の状態を検出する少なくとも一つのセンサーと、当該センサーの検出結果に基づき、前記アクチュエータを駆動制御する制御手段と、を具備することを特徴とする請求項2に記載の車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
- 前記アクチュエータは、電動モータ又は電磁ソレノイドであることを特徴とする請求項2に記載の車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
- 前記抵抗部材は、樹脂材料、又はアルミ材料から形成してあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003209374A JP2005067264A (ja) | 2003-08-28 | 2003-08-28 | 車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003209374A JP2005067264A (ja) | 2003-08-28 | 2003-08-28 | 車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置 |
Publications (1)
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Family Applications (1)
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JP2003209374A Withdrawn JP2005067264A (ja) | 2003-08-28 | 2003-08-28 | 車両用衝撃吸収式ステアリングコラム装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2005067264A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR101165103B1 (ko) | 2006-05-11 | 2012-07-12 | 주식회사 만도 | 가변형 충격 에너지 흡수 구조 컬럼과 듀얼 스테이지 에어백을 이용한 운전자 보호 장치 |
CN105473414A (zh) * | 2013-10-30 | 2016-04-06 | 日本精工株式会社 | 转向装置 |
-
2003
- 2003-08-28 JP JP2003209374A patent/JP2005067264A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR101165103B1 (ko) | 2006-05-11 | 2012-07-12 | 주식회사 만도 | 가변형 충격 에너지 흡수 구조 컬럼과 듀얼 스테이지 에어백을 이용한 운전자 보호 장치 |
CN105473414A (zh) * | 2013-10-30 | 2016-04-06 | 日本精工株式会社 | 转向装置 |
CN105473414B (zh) * | 2013-10-30 | 2017-04-05 | 日本精工株式会社 | 转向装置 |
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