JP2005062226A - ズームレンズ及びそれを有する画像投射装置 - Google Patents

ズームレンズ及びそれを有する画像投射装置 Download PDF

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Abstract

【課題】レンズ系全体の小型化を図りつつ、ズーミングに伴う諸収差を良好に補正し、画面全体にわたり良好なる光学性能を有した広画角でバックフォーカスの長い液晶プロジェクター用に好適なズームレンズを得ること。
【解決手段】スクリーンS側より液晶パネルLCD側へ順に、変倍のためには不動で負の屈折力の第1レンズ群L1、正の屈折力の第2レンズ群L2、負の屈折力の第3レンズ群L3、負もしくは正の屈折力の第4レンズ群L4、負の屈折力の第5レンズ群L5、変倍のためには不動で正の屈折力の第6レンズ群L6を有し、第1レンズ群L1の焦点距離をf1、空気換算バックフォーカスをbf、広角端における全系の焦点距離をfwとするとき、
1.7<bf/(|f1|・fw)1/2<2.3
を満足する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ズームレンズに関し、例えば長いバックフォーカスを有し液晶表示素子に表示された像を投影するとき、照明系との瞳整合性が良好に保たれたコンパクトなズームレンズであって、特にモバイル液晶プロジェクターに好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、液晶表示素子等の画像表示素子を用いて、その表示素子に表示された画像をスクリーン面に投射する液晶プロジェクター(画像投射装置)が種々提案されている。
【0003】
特に液晶プロジェクターはパソコン等の画像を大画面に投影可能な装置として会議およびプレゼンテーション等に広く利用されてきている。また最近では、ホームシアター用の小型化された液晶プロジェクターの普及がみられ、それと共に液晶表示素子のサイズも小型化される傾向にある。
【0004】
このような液晶プロジェクターに関し、その種類は大きく分けて2種類あり、その一つは液晶表示素子を透過した変調画像を色合成して投影する透過型液晶プロジェクターであり、他方は液晶表示素子の裏側にミラーが設置されており、変調画像をそのミラーにより反射させて投影する反射型液晶プロジェクターである。
【0005】
液晶表示素子を3枚使用する3板方式の液晶プロジェクターでは、液晶表示素子により変調された色光を合成するダイクロイックプリズムおよび偏光板等の素子を配置するスペースを液晶表示素子と投写レンズとの間に設けなければならず、投写レンズにはある一定長のバックフォーカスを確保することが必要となる。
【0006】
このような液晶プロジェクターには、負の屈折力のレンズ群が先行するネガティブリード型のズームレンズが広く利用されている。ネガティブリード型のズームレンズには、比較的広角化が容易であり、かつ近接撮影距離での光学性能が良好に維持できる等の特長を有しているが、反面、ズーミング時に移動するレンズ群の移動量が増大し収差変動もそれに伴い増大し、また高変倍比化が難しく、さらには諸収差を抑えた広角化が難しい等の欠点を有している。
【0007】
また、カラー液晶プロジェクターに用いる投写光学系としては、
・ダイクロイックプリズムに設けている色合成膜の角度依存の影響を極小にするため、また照明系との良好な瞳整合性を確保するために液晶表示素子(縮小)側の瞳が無限遠方にある所謂テレセントリック光学系であること、
・3色の液晶表示素子の絵(画像)をスクリーンに合成投写したとき、パソコンの文字等が二重に見えたりして解像感および品位がそこなわれないように各色の画素を画面の全域にて重ね合わせられなければならない。そのため、投写レンズにて発生する色ずれ(倍率色収差)が可視光帯域にて良好に補正されていること、
・投影された画像に関して輪郭部で歪んで見苦しくならないように歪曲収差が十分補正されていること(特に周辺および中間部等での急激な歪曲収差の変化等が残存すると、画像品位が低下して好ましくない)、
等が必要とされている。
【0008】
また最近では、画面の高輝度・画像の高精細化といったニーズの一方で、小型パネル搭載のプロジェクターには機動性を重視した、装置の小型・軽量化が強く求められている。さらには、狭い室内において明るくかつ大画面の投影を可能とする高輝度化・広画角化の仕様も求められている。
【0009】
従来より、液晶プロジェクター用の投写レンズとして拡大側(前方側)より順に負、正、正、負、正、正の屈折力のレンズ群より成る全体として6つのレンズ群より構成し、このうち所定のレンズ群を適切に移動させて変倍を行っている6群ズームレンズが知られている(例えば特許文献1)。この6群ズームレンズは、第1、第4及び第6レンズ群を固定として広角端から望遠端へのズーミングに際してレンズ系内部の第2、第3及び第5群を移動するため、ズーミング時にレンズ全長を一定に保たれ、色収差・変倍時の収差変動を抑えたテレセントリックのズームレンズである。しかしこの6群ズームレンズでは、反射型の液晶プロジェクターに用いるにはバックフォーカスの長さが十分でない。
【0010】
この他、液晶プロジェクター用の投写レンズとして、拡大側より順に負、正、負、正の屈折力のレンズ群より成る全体として4つのレンズ群より構成し、このうち所定のレンズ群を適切に移動させて変倍を行っている4群ズームレンズが知られている(例えば特許文献2)。この4群ズームレンズは、第1および第4レンズ群を固定として広角端から望遠端へのズーミングに際してレンズ系内部の第2、第3レンズ群を移動させるため、レンズ全長は一定に保たれ、かつ反射型の液晶プロジェクターを考慮した十分に長いバックフォーカスと比較的広い画角を有するテレセントリックのズームレンズである。しかし、この4群ズームレンズは、開放F値(以後F値は開放を表す)が比較的大きく、十分な明るさを得られていない。
【特許文献1】
特開2001−108900号公報
【特許文献2】
特開2001−215410号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
現在、液晶プロジェクターとして小型のモバイル型が要望されている。また、ホームシアター用として大きなメリットとなる近距離投影できること、つまり液晶プロジェクターの広画角化が求められている。また近年投影映像の高輝度化を目的として、開口効率が良好な反射型の液晶表示素子が多く利用されてきている。
【0012】
液晶プロジェクターの小型化というテーマに対して、まず液晶表示素子が小さくならなければならないが、同じ解像度を求めようとすると液晶表示素子の開口率の低下および被照明領域と発光光源の大きさとの比(=被照明領域の大きさ/光源の大きさ)が小さくなっていくため、照明効率は一般には低下してしまい、いくら装置の小型化が実現できても明るさが低下してくるという問題が生じる。
【0013】
透過型の液晶表示素子の場合、液晶表示素子の寸法が小さくなるにつれ、その駆動回路により開口率が低下し光量が減少してしまう。これに対して反射型の液晶表示素子の場合、駆動回路をパネルの裏側に設置することができるので開口率が高くなり光量低下を抑えることができる。そのため、最近では効率的に高輝度化を目指すため,開口効率が良い反射型の液晶プロジェクター用の明るいズームレンズが要望されている。しかし反射型の液晶プロジェクターにおいては、投写レンズと液晶表示素子との間にダイクロイックプリズム等の色合成光学系に加え偏光分離光学系等を挿入するために透過型の液晶プロジェクターに比してより長いバックフォーカスを有した投写レンズが必要となる。
【0014】
上記問題に加えて、蛍光燈下でも観察できるスクリーン照度を確保するために、小型プロジェクター用の投写レンズに対して広角端のF値(Fナンバー)が3.0程度以上の明るさの投写レンズが要望されている。
【0015】
つまり、小型軽量の反射型の液晶プロジェクターとして、高輝度・高解像度でしかも十分に長いバックフォーカスを有した近接距離投影可能な投写レンズが要望されている。
【0016】
本発明は、レンズ系全体の小型化を図りつつ、ズーミングに伴う諸収差を良好に補正し、画面全体にわたり良好なる光学性能を有した広画角でバックフォーカスの長い、例えば液晶プロジェクターの投射レンズ用に好適なズームレンズの提供を目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明のズームレンズは、前方(投射装置の場合はスクリーン側、撮影装置の場合は被写体側)より後方(投射装置の場合は原画側、撮影装置の場合は像側)へ順に、変倍のためには移動しない負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群、負の屈折力の第3レンズ群、負もしくは正の屈折力の第4レンズ群、負の屈折力の第5レンズ群、変倍のためには移動しない正の屈折力の第6レンズ群を有し、第1レンズ群の焦点距離をf1、空気換算バックフォーカスをbf、短焦点距離端(所謂、広角端)における全系の焦点距離をfwとするとき、
1.7<bf/(|f1|・fw)1/2<2.3
なる条件を満足することを特徴としている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明のズームレンズの実施形態について説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態1のズームレンズを用いた画像投射装置(液晶ビデオプロジェクター)の要部概略図である。図2(A)、(B)は本発明の実施形態1に対応する後述する数値実施例1の数値をmm単位で表わした時の物体距離(第1レンズ群からの距離)1.8mのときの広角端(短焦点距離端)と望遠端(長焦点距離端)における収差図である。
【0020】
図3は本発明の実施形態2のズームレンズを用いた画像投射装置(液晶ビデオプロジェクター)の要部概略図である。図4(A)、(B)は本発明の実施形態2に対応する後述する数値実施例2の数値をmm単位で表わした時の物体距離(第1レンズ群からの距離)1.8mのときの広角端(短焦点距離端)と望遠端(長焦点距離端)における収差図である。
【0021】
図5は本発明の実施形態3のズームレンズを用いた画像投射装置(液晶ビデオプロジェクター)の要部概略図である。図6(A)、(B)は本発明の実施形態3に対応する後述する数値実施例3の数値をmm単位で表わした時の物体距離(第1レンズ群からの距離)1.8mのときの広角端(短焦点距離端)と望遠端(長焦点距離端)における収差図である。
【0022】
図1、図3、図5の実施形態1〜3における画像投射装置では液晶パネルLCD等に表示される原画(被投影画像)をズームレンズ(投影レンズ、投写レンズ)PLを用いてスクリーン面S上に拡大投影している状態を示している。
【0023】
Sはスクリーン面(投影面)、LCDは液晶パネル(液晶表示素子)等の原画像(被投影画像)である。スクリーン面Sと原画像LCDとは共役関係にあり、一般にはスクリーン面Sは距離の長い方の共役点(第1共役点)で拡大側(前方側)に、原画像LCDは距離の短い方の共役点(第2共役点)で縮小側(後方側)に相当している。
【0024】
GBは色合成プリズムや偏光フィルター、そしてカラーフィルター等のガラスブロックである。
【0025】
ズームレンズPLは接続部材(不図示)を介して液晶ビデオプロジェクター本体(不図示)に装着されている。ガラスブロックGB以降の液晶表示素子LCD側はプロジェクター本体に含まれている。
【0026】
L1は負の屈折力の第1レンズ群、L2は正の屈折力の第2レンズ群、L3は負の屈折力の第3レンズ群、L4は負の又は正の屈折力の第4レンズ群、L5は負の屈折力の第5レンズ群、L6は正の屈折力の第6レンズ群である。第4レンズ群L4は実施形態1及び3においては負の屈折力であり、実施形態2においては正の屈折力である。STは絞りであり、第2レンズ群L2中に設けている。
【0027】
各実施形態では広角端から望遠端へのズーミングに際して矢印のように第2レンズ群L2、第3レンズ群L3をスクリーンS側へ、第4レンズ群L4、そして第5レンズ群L5を原画像LCD側へ各々独立に移動させている。ズーミングのためには、第1レンズ群L1、第6レンズ群L6は移動しない。但し、第1レンズ群L1を光軸上移動させてフォーカスを行っている。尚、フォーカスは表示パネルLCDを移動させて行っても良い。
【0028】
各レンズ面には多層コートが施されており、これによって、スクリーン面S上での照度の低下を防止している。
【0029】
図2、図4、図6の収差図においてGは波長550nm、Rは波長620nm、Bは波長450nmでの収差を示し、S(サジタル像面の倒れ)、M(メリジオナル像面の倒れ)はどちらも波長550nmでの収差を示す。Yは像高、FnoはFナンバーである。
【0030】
次に各実施形態の特徴について説明する。
【0031】
各実施形態では、全体として6つのレンズ群を有し、広角端から望遠端へのズーミングに際して少なくとも4つのレンズ群を移動させることを特徴としている。
【0032】
各実施形態では、負の屈折力のレンズ群が先行するネガティブリード型の構成をすることにより、広画角化及び長いバックフォーカスの確保を容易にしている。 また、ズーミングのための可動レンズ群を4成分としてズーミングによる収差変動を補正し、全変倍範囲にわたり広い光学性能を得ている。
【0033】
また、ズーミングのために第1、第6レンズ群をともに像面(LCD)に対して固定としてズーム全長を不変としている。これにより、投写レンズ部の堅牢性を確保し、またズーミングの際に有効径の大きなレンズ群(第1レンズ群)を固定することにより重量バランスの変化を少なくし、機構面で有利に作用するようにしている。
【0034】
第1レンズ群L1の焦点距離をf1、空気換算バックフォーカスをbf、広角端における全系の焦点距離をfwとするとき、
1.7<bf/(|f1|・fw)1/2<2.3・・・・・(1)
を満足している。
【0035】
条件式(1)は、広画角化の実現と同時に十分に長いバックフォーカスを得るための条件である。上限を超えると第1レンズ群L1の屈折力が強くなり過ぎてしまい特に軸外光線における収差補正が困難になってくる。逆に下限を超えると第1レンズ群L1のパワー(焦点距離の逆数)が弱くなるのでレンズ径が大きくなる傾向となり,さらにはレンズ全長が長大化してしまいメカ構造から好ましくない。
【0036】
また、第1レンズ群1L1と第2レンズ群L2の焦点距離を各々f1、f2とするとき、
0.5<|f1|/f2<0.9・・・・・(2)
を満足している。
【0037】
条件式(2)は、主変倍レンズ群である第2レンズ群L2と第1レンズ群L1の関係を適切に設定したものである。上限を超えるとズーミングにおける収差の変動が大きくなり、その補正が困難となる。また下限を超えるとズーミングに際して第2レンズ群L2の移動量が大きくなり小型化が困難になってくる。
【0038】
また、広角端における全系の焦点距離をfw、前記第4レンズ群の焦点距離をf4とするとき、
10<|f4|/fw<40・・・・・(3)
を満足している。
【0039】
条件式(3)は、変倍に伴う結像位置の変動を補正する補正レンズ群(コンペンセータ)L4の倍率を規定する条件である。下限を超えると第4レンズ群L4の屈折力が強くなりすぎ、必要以上にバックフォーカスが長くなってしまいコンパクト化が困難となり好ましくない。逆に上限を越えると第4レンズ群L4の屈折力が弱くなりすぎ、ズーミングにおける移動量が多くなり好ましくない。
【0040】
また、第6レンズ群L6は、1枚以上の正レンズより成り、その1枚以上の正レンズの材料のアッベ数のうち最も小さいアッベ数をν6pとするとき、
ν6p<30・・・・・(4)
を満足している。
【0041】
条件式(4)は高分散な材料を正レンズに使用するときの条件である。高分散かつ高屈折力の両レンズ面が凸面の正レンズを使用することにより、像面に対してテレセントリック性を持たせると同時に第5レンズ群L5で発生する高次の倍率色収差の発生を抑える作用をしている。上限を超えると低分散となってしまい倍率色収差を十分に補正することが困難となり、さらに一般に使用されるガラスは低分散ガラスとなるにつれ低屈折力となる傾向であるので、十分なテレセントリック性を得ることが困難となる。
【0042】
尚、収差補正及び装置全体の小型化を図る為には前述の条件式(1)〜(4)の数値範囲を次の如し設定するのが良い。
【0043】
1.9<bf/(|f1|・fw)1/2<2.2・・(1a)
0.55<|f1|/f2<0.8・・・・・・・(2a)
11<|f4|/fw<38・・・・・・・・・・(3a)
ν6p<28・・・・・・・・・・・・・・・・・(4a)
各実施形態では、第1レンズ群L1を、前方より後方へ順に、両レンズ面が凸形状の正レンズ、前方に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズ、2枚の負レンズ、後方に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズより構成している。このように、第1レンズ群L1の最も前方に正レンズを配置して、主に広角端のズーム位置における歪曲収差を良好に補正している。
【0044】
また高次の倍率色収差を小さく抑えるために、軸外光線の高さの小さい最も後方側の正レンズに色分散の大きい(アッベ数の小さい)材料を使用している。又第1レンズ群L1の2枚正レンズの間に配置される3枚の負レンズは、3枚の負レンズの各レンズ面における屈折力が分割され、負レンズによる歪曲収差、非点収差、コマ収差が最小になるように上記形状にて構成している。
【0045】
第2レンズ群L2は、正レンズ、負レンズ、絞り、両レンズ面が凸形状の正レンズで構成するか(実施形態1,3)、両レンズ面が凸形状のの正レンズ、負レンズ、正レンズ、絞り、両レンズ面が凸形状の正レンズで構成している(実施形態2)。
【0046】
第3レンズ群L3は、両レンズ面が凹形状の負レンズと両レンズ面が凸形状の正レンズとを貼り合せたレンズで構成している。
【0047】
第2レンズ群L2及び第3レンズ群L3は、主たる変倍レンズ群の役割を担っており大きな屈折力が与えられている。このため、正レンズには屈折率の高い硝子材を用いペッツバール和および変倍時の球面収差等の収差変動を小さくしている。大口径であって、高い解像力が要求されると、後方の像面深度が浅くなり、中間像高等での像面湾曲および非点収差が大きいと解像感が急激に劣化する。このため、第2レンズ群L2を前述の如く構成し、これによってペッツバール和を小さく補正している。
【0048】
特に色にじみでは、可視光広帯域にて倍率色収差を良好に補正するためにも正レンズには異常分散性を有するランタン系の重フリント材等を用いて効率的に補正している。
【0049】
尚、開口絞りSTは第2レンズ群L2内に存在し、ズーミングに際して第2レンズ群L2とともに移動しており、ズーミング時の軸外収差変動をおさえている。
【0050】
第4レンズ群L4は、両レンズ面が凹形状の負レンズと両レンズ面が凸形状の正レンズで構成している。
【0051】
第4レンズ群L4は、変倍に伴うピント面の移動を補正する役割を担っている。変倍全域(ズーム全域)に関して第4レンズ群L4の倍率は等倍以上であり広角端から望遠端へのズーミングに際して、後方へ移動している。
【0052】
第5レンズ群L5は、前方より後方へ順に、負レンズ、両レンズ面が凸形状の正レンズ、後方へ凸面を向けたメニスカス形状の負レンズより成り、これらの各レンズは独立又は2以上のレンズを貼り合せた接合レンズを含んでいる。
【0053】
開口絞りSTから見て縮小側に配置される第5レンズ群L5の前方の軸上光線の入射高さが最も小さくなる位置に、強い負の屈折力を持ったレンズを配置することにより、効率良くペッツバール和を小さく抑えている。さらには、2枚または3枚の貼り合せレンズとすることにより、倍率色収差を補正させやすくするとともに、各レンズに比較的小さな曲率を持たせて、製造上問題になりやすい敏感度を鈍化させている。
【0054】
各実施形態では、第5レンズ群L5を3枚の貼り合わせレンズにより構成しており、両レンズ面が凸面の正レンズを挟む曲率の小さな2枚のレンズには強い負の屈折力を与えている。この強い負の屈折力により、効率よくペッツバール和を小さくしている。また、貼り合わせレンズにすることにより倍率色収差を抑える役割を担っている。さらに主平面位置を液晶表示素子LCD側に配置できることから瞳に関して良好なテレセントリック性能およびバックフォーカスの確保にて有利に作させている。
【0055】
第6レンズ群L6は、両レンズ面が凸形状の正レンズで構成している。この正レンズは、開口絞りSTから縮小側に配置された負の屈折力のレンズ群で跳ね上げられた光線を緩やかに屈曲させて良好なテレセントリック性能を持たせる為に硝子材料に高い屈折率の材料を用いるのが良く、これによればペッツバール和を小さくするのが容易となる。また第6レンズ群L6は高屈折力かつ高分散な正レンズを使用し、像面に対してテレセントリック性を持たせると同時に第5レンズ群L5の負レンズで発生する高次の倍率色収差の発生を抑える作用をしている。
【0056】
光学系全体を小型にするため、各レンズ群の屈折力は増加させてる必要がある。このときの屈折力増加に伴う諸収差の増加を補正するために、投写レンズPLの内部に少なくとも1枚の非球面レンズを採用することが好ましい。具体的には、図5の実施形態3において、第1レンズ群L1の、前方から数えて第4番目の負レンズの前方側のレンズ面を非球面としている。
【0057】
非球面は、硝子モールドタイプかレプリカで構成することが好ましいが、解像度の目標と、非球面レンズの敏感度によっては、プラスチック非球面レンズとしてもよい。除去しようとする収差にもよるが、主に像面変曲、非点収差等の軸外収差を良好に補正するため第1及び第5又は第6レンズ群といった開口絞りSTの位置からなるべく遠い位置に採用するのが効果的である。
【0058】
開口絞りSTは本来独立に移動絞り群を設けることが良いが、カム溝が追加される等の生産上要件を併せて考えると、第2または3レンズ群内といった変倍レンズ群内に配置するのが良く、これによればズーミング時の収差変動を効率良く補正することができる。
【0059】
以上説明したように、各実施形態によれば大口径で縮小側にて良好なテレセントリック性能を有し、高解像・低歪曲で、可視光広帯域にて倍率色収差が良好に補正された長いバックフォーカスを有するレトロフォーカス型のズームレンズを実現することができる。さらに1.8mという短い投射距離において60インチの大きなスクリーン像を得ることが出来る。
【0060】
以下に実施形態1〜3のズームレンズの数値データに各々対応する数値実施例1〜3を示す。各数値実施例においてiは拡大側(前方側)からの光学面の順序を示し、riは第i番目の光学面(第i面)の曲率半径、diは第i面と第(i+1)面との間の間隔、niとνiはそれぞれd線に対する第i番目の光学部材の材質の屈折率、アッベ数を示す。fは焦点距離、FnoはFナンバーである。
【0061】
また数値実施例1〜3の最も縮小側の3つの面は、色合成プリズムやフェースプレート、各種フィルター等に相当するガラスブロックGBを構成する面である。
【0062】
またkを円錐定数、A、B、C、Dを非球面係数、光軸からの高さhの位置での光軸方向の変位を面頂点を基準にしてxとするとき、非球面形状は、
【0063】
【数1】
Figure 2005062226
【0064】
で表示される。但しrは近軸曲率半径である。尚、例えば「e−Z」の表示は「10−Z」を意味する。
【0065】
前述の各条件式1〜4と数値実施例1〜3における諸数値との関係を表4に示す。
【0066】
【外1】
Figure 2005062226
【0067】
【外2】
Figure 2005062226
【0068】
【外3】
Figure 2005062226
【0069】
【外4】
Figure 2005062226
【0070】
図7は、本発明のズームレンズを反射型の液晶プロジェクター(画像投射装置)に適用した実施形態の要部概略図である。
【0071】
照明手段101からの出射光束は、ビームスプリッタ102によって反射され反射型の液晶表示パネル103に入射して反射される、この後液晶表示パネル103で光変調された光束はビームスプリッタ102を通し、ズームレンズ104に入射し、ズームレンズ104によって液晶表示パネル103に基づく画像情報をスクリーン105に投射している。
【0072】
図8は本発明のズームレンズを撮像装置に適用した実施形態の要部概略図である。本実施形態ではビデオカメラ、フィルムカメラ、デジタルカメラ等の撮像装置に撮影レンズとして前述したズームレンズを用いた例を示している。図8においては被写体9の像をズームレンズ8で感光体7に結像し、画像情報を得ている。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、レンズ系全体の小型化を図りつつ、ズーミングに伴う諸収差を良好に補正し、画面全体にわたり良好なる光学性能を有した広画角でバックフォーカスの長いズームレンズを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1のズームレンズを用いた画像投射装置の要部概略図
【図2】数値実施例1のズームレンズをmm単位で表わしたときの物体距離1.8mのときの収差図
【図3】実施形態2のズームレンズを用いた画像投射装置の要部概略図
【図4】数値実施例2のズームレンズをmm単位で表わしたときの物体距離1.8mのときの収差図
【図5】実施形態3のズームレンズを用いた画像投射装置の要部概略図
【図6】数値実施例3のズームレンズをmm単位で表わしたときの物体距離1.8mのときの収差図
【図7】画像投射装置を反射型の液晶プロジェクターに適用したときの要部概略図
【図8】光学機器の実施形態の要部概略図
【符号の説明】
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群
L4 第4レンズ群
L5 第5レンズ群
L6 第6レンズ群
LCD 液晶表示装置(像面)
GB 硝子ブロック(色合成プリズム)
S Sagittal像面の倒れ
M Meridional像面の倒れ

Claims (9)

  1. 前方より後方へ順に、変倍のためには不動で負の屈折力の第1レンズ群、正の屈折力の第2レンズ群、負の屈折力の第3レンズ群、負もしくは正の屈折力の第4レンズ群、負の屈折力の第5レンズ群、変倍のためには不動で正の屈折力の第6レンズ群を有し、該第1レンズ群の焦点距離をf1、空気換算バックフォーカスをbf、短焦点距離端における全系の焦点距離をfwとするとき、
    1.7<bf/(|f1|・fw)1/2<2.3
    を満足することを特徴とするズームレンズ。
  2. 前記第1レンズ群は、前方より後方へ順に、両レンズ面が凸形状の正レンズ。前方に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズ、2枚の負レンズ、後方に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズより成ることを特徴とする請求項1のズームレンズ。
  3. 前記第1レンズ群と第2レンズ群の焦点距離を各々f1、f2とするとき、
    0.5<|f1|/f2<0.90
    を満足することを特徴とする請求項1又は2のズームレンズ。
  4. 短焦点距離端における全系の焦点距離をfw、前記第4レンズ群の焦点距離をf4とするとき、
    10<|f4|/fw<40
    を満足することを特徴とする請求項1、2又は3のズームレンズ。
  5. 前記第6レンズ群は、1枚以上の正レンズより成り、該1枚以上の正レンズの材料のアッベ数のうち最も小さいアッベ数をν6pとするとき、
    ν6p<30
    を満足することを特徴とする請求項1、2、3又は4のズームレンズ
  6. 前記第5レンズ群は、前方より後方へ順に、負レンズ、両レンズ面が凸形状の正レンズ、後方へ凸面を向けたメニスカス形状のレンズより成り、これらの各レンズは独立又は2以上のレンズを貼り合せた接合レンズを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項のズームレンズ。
  7. 1枚以上の非球面レンズを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項のズームレンズ。
  8. 画像表示素子と、請求項1から7いずれか1項に記載のズームレンズとを有し、該ズームレンズを用いて該画像表示素子に表示された原画をスクリーン面上に投射していることを特徴とする画像投射装置。
  9. 請求項1乃至7いずれか1項に記載のズームレンズを用いて画像情報を撮像手段面上に形成していることを特徴とする光学機器。
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