JP2005060650A - 嫌気硬化性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
嫌気硬化性組成物の保存性を保ちながら、且つ不活性金属に対する硬化時間を大幅に向上させることが可能な嫌気硬化性組成物をえること。
【解決手段】
(a)分子中に少なくとも1つ以上のラジカル重合性官能基を有する化合物、(b)有機過酸化物、(c)o−ベンゾイックスルフィミドおよび(d)アルカリ金属を除く金属とエチレンジアミン四酢酸との錯体、または、アルカリ金属を除く金属とジエチレントリアミン五酢酸との錯体、からなることを特徴とする嫌気硬化性組成物。金属錯体を形成する金属はMg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Agから選ばれることが好ましい。

Description

本発明は、従来の嫌気硬化性組成物と同様の保存性を保ちながら、且つ不活性金属を被着体としたときの硬化時間を大幅に向上させることが可能な嫌気硬化性組成物に関する。
嫌気硬化性組成物は(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分とする硬化性組成物であり、空気または酸素と接触している間は長期間ゲル化せずに液状状態で安定に保たれ、空気または酸素が遮断もしくは排除されると急速に硬化する性能を有するものであり、このような性質を利用して該組成物はネジ、ボルト等の接着、固定、嵌め合い部品の固着、フランジ面間の接着、シール、鋳造部品に生じる巣孔の充填等に使用されている。
嫌気硬化性組成物は被着体に塗布し貼り合わせることにより、空気または酸素が遮断・排除され、硬化させることができる。このときの硬化時間(セットタイム)は同じ組成の嫌気硬化性組成物であっても被着体の材質により相違する。これは嫌気硬化性組成物は被着体である金属を酸化させることで自分自身は還元され、この化学反応により硬化するため、被着体の材質によって硬化時間(セットタイム)が異なるというわけである。特に、光沢クロメート、グリーンクロメートなどの酸化防止処理された被着体は被着体表面に活性な金属イオンの存在量が少ないため嫌気硬化性組成物を反応させる能力が低く、硬化時間がかなり遅くなる。このような被着体を速く接着するためには、被着体表面を少しでも速く酸化させることが重要であると考えられ、配合物中に精製水を加えたり、カルボニル基などを有するモノマーを使用したり、連鎖移動剤などを添加して組成物の反応性そのものを上げたりと、セットタイムの向上を図った嫌気硬化性組成物が一般に用いられている。これらは、特許文献1、特許文献2等に記載されている。
特公平2−44345号公報 特公昭48−9460号公報
ところが、それらにおいても材質ごとのセットタイムの差は大きく、特に保存性に優れ、不活性金属を速硬化させることができる嫌気硬化性組成物は得られていない。
ところで、嫌気硬化メカニズムは基本的に過酸化物を開始剤としたラジカル重合であるため、過酸化物が金属イオンにより分解され、反応が開始する。そのため嫌気硬化性組成物中に金属イオンを存在させるとゲル化の原因となる。よって、組成物中に銅イオンやバナジウムイオンを存在させることはできず、これらを組成物中に添加しておくということは不可能であった。
上述したとおり、保存安定性を犠牲にしないで不活性金属をも速硬化させることができる嫌気硬化性組成物が望まれていたが、満足するものは得られていなかった。
本発明は上述した従来の問題点を克服するものであり、すなわち(a)分子中に少なくとも1つ以上のラジカル重合性官能基を有する化合物、(b)有機過酸化物、(c)o−ベンゾイックスルフィミド、(d)アルカリ金属を除く金属とエチレンジアミン四酢酸との錯体、または、アルカリ金属を除く金属とジエチレントリアミン五酢酸との錯体、からなることを特徴とする嫌気硬化性組成物である。
本発明に使用される分子中に少なくとも1つ以上のラジカル重合性官能基を有する化合物は以下に説明されるものである。まず、ラジカル重合性官能基とは、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、プロペニル基などがあげられる。このような官能基を1つ有する化合物は一般的にラジカル重合性モノマーと呼ばれ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等があげられる。なお、(メタ)アクリルとはアクリルとメタクリルを総称したものである。
ラジカル重合性官能基を2つ以上有するものとして、比較的低分子の化合物の分子中にラジカル重合性官能基が2つ以上存在するいわゆるラジカル重合性多官能モノマーと、比較的高分子の化合物の両末端などにラジカル重合性官能基を有する、いわゆるラジカル重合性オリゴマーが挙げられる。ラジカル重合性多官能モノマーとしてはエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ラジカル重合性オリゴマーとしてはビスフェノールなどのグリシジルエーテルのエポキシ基にアクリル酸、メタクリル酸もしくはそれらの多量体を反応させて得られるエポキシ変性(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレートと末端イソシアネート基含有化合物とを反応して得られるウレタン結合含有(メタ)アクリレート、ポリエーテル樹脂の末端に(メタ)アクリロイル基を反応させた化合物、ポリエステルの末端に(メタ)アクリロイル基を反応させた化合物などが挙げられる。
これらは単独で用いても良いし嫌気硬化性組成物の粘度の調整、あるいはその硬化物の特性を調整する目的で、複数を混合してもどちらでも良いが、通常、単独で所望の性能を出すことが困難であるためラジカル重合性モノマーとラジカル重合性オリゴマーを混合して使用することが好ましい。
本発明に用いられる(b)有機過酸化物は従来より嫌気硬化性組成物にて用いられているもので、特に限定されるものではなく、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ペンタンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアリルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、メチルシクロヘキサンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドアセチルパーオキシド等のジアシルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシマレエート等のパーオキシエステル類等の有機過酸化物等が挙げられる。
これらの有機過酸化物は単独で或いは二種以上の混合物として用いることができる。この(b)成分の配合量は、(a)成分の合計重量100重量部に対して0.1〜5重量部である。この場合、0.1重量部よりも少ないと重合反応を生じさせるのに不十分であり、5重量部よりも多いと、嫌気硬化性組成物の安定性が低下する。
本発明において用いられる(c)成分はo−ベンゾイックスルフィミドであり嫌気性組成物には通常使用される成分である。o−ベンゾイックスルフイミドはいわゆるサッカリンであり、(c)成分の添加量は(a)成分100重量部に対して0.1〜5重量部配合される。
本発明において用いられる(d)成分はアルカリ金属を除く金属とエチレンジアミン四酢酸(EDTA)との錯体、または、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の錯体である。錯体を形成する金属はアルカリ金属では本発明の効果がない。実際、エチレンジアミン四酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸と錯体を形成するものは多数存在し、本発明に最適なものと、多量添加しないと効果の現れないものとがある。本発明に適する金属として、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Agがあげられる。ところで、エチレンジアミン四酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸は金属キレート剤として公知である。嫌気硬化性組成物中に金属イオンが存在すると前述の理由により保存安定性が損なわれる。金属イオンは製造工程中に混入したり、原料自体に存在したりするが、金属キレート剤を添加すると金属イオンを捕獲して、イオンを不活性なまま保持し、保存安定性を向上させるという効果がある。このキレート剤としてはエチレンジアミン四酢酸やトリエチレンテトラミン六酢酸などが使用されるが、金属錯体でない単体で使用されるか、ナトリウム塩で使用されるものであった。しかし、錯体でないエチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸やそれらのナトリウム塩を添加しても本発明の作用効果は全く発揮しない。
CuやFeなどの金属イオンは嫌気硬化性組成物から排除されるべきものと考えられ、積極的に添加するという検討はなされていなかった。ただし、2液混合硬化性のSGA接着剤などのように有機過酸化物と金属イオンを別容器で保存する場合は保存安定性には影響がないため金属イオンを積極的に使用することができる。しかし、これらの金属錯体化合物を1液嫌気硬化性組成物に使用したら、即ゲル化してしまい使用することはできない。
また、本発明のエチレンジアミン四酢酸の金属錯体、ジエチレントリアミン五酢酸の金属錯体は単一の金属イオンとの錯体でなくてもかまわない。たとえば、FeイオンとNaイオンの複合錯体であってもかまわなく、むしろ、入手のしやすさから後者の方が好ましい。
本組成物に(d)成分を添加すると、グリーンクロメート、有色クロメート、光沢クロメート、黒色クロメート処理などの酸化防止処理された被着体への、硬化時間が早くなり、接着力が若干強くなる。しかも、後述する適量の(d)成分を添加しても保存安定性が悪くなることがない。(d)成分の添加の方法は(d)成分の溶解性により、水酸基含有(メタ)アクリレートにあらかじめ溶解したり、水にあらかじめ溶解して組成物中に添加することが望ましい。
(d)成分は100重量部に対して0.01〜2重量部添加することができる。(d)の配合割合が0.001重量部未満では重合促進剤としての効果はなく、また2重量部を越えると嫌気性組成物の保存安定性が悪くなる。
本組成物は上記成分以外に重合を促進する成分を少量添加することができる。重合促進剤としてはアミン化合物、メルカプタン化合物、ヒドラジン誘導体を挙げることができる。アミン化合物は1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロキナルジン等の複素環第2級アミン、キノリン、メチルキノリン、キナルジン、キノキサリンフェナジン等の複素環第3級アミン、N,N−ジメチル−アニシジン、N,N−ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン類、1,2,4−トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾキサゾール、1,2,3ベンゾチアジアゾール、3−メルカプトベンゾトリゾール等のアゾール系化合物等が挙げられる。また、メルカプタン化合物としてはn−ドデシルメルカプタン、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン等の直鎖型メルカプタンが挙げられる。ヒドラジン誘導体としてはエチルカルバゼート、N−アミノルホダニン、アセチルフェニルヒドラジン、p−ニトロフェニルヒドラジン、p−トリスルホニルヒドラジド等が挙げられるがこれに限定したものではない。
本発明は更に種々の添加剤を使用できる。例えば、保存安定性を得るためには、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のラジカル吸収剤などを添加することができる。また、エチレンジアミン4酢酸又はその2−ナトリウム塩、シユウ酸、アセチルアセトン、o−アミノフエノール等の金属キレート化剤等を添加しても良い。更に、その他に嫌気硬化性樹脂の性状や硬化物の性質を調整するために、増粘剤、充填剤、可塑剤、着色剤等を必要に応じて使用することができる。
従来の、嫌気硬化性組成物は亜鉛クロメート処理された金属などの不活性金属を接着するのは困難で、接着力が弱く、硬化に長時間を要していた。本発明の組成物は不活性金属が被着体であっても、硬化速度が速く、接着力も向上したものである、しかも、硬化速度が速くなったにもかかわらず保存安定性は従来の嫌気硬化性組成物と同等で室温で長期保存可能である。
以下、本発明を実施例により優れた効果を証明する。なお、表中の配合はすべて重量部である。(a)成分として、2−ヒドロキシメタクリレート(HEMA)、50重量部2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン50重量部、(b)成分としてクメンハイドロパーオキサイドを1重量部、(c)成分として、o−ベンゾイックスルホイミドを1重量部、を混合したものをベース樹脂とした。ベース樹脂100重量部に(d)成分としてエチレンジアミン四酢酸の銅・2ナトリウム(EDTA・2Na・Cu)、ジエチレントリアミン五酢酸の鉄・ナトリウム(DTPA・Na・Fe)を添加することで嫌気硬化性組成物を調製した。
(硬化性試験)
1.実施例1〜7、比較例1、2はEDTA・2Na・Cuの添加量を変えて各組成物を調製した。上記で得られた各組成物をJIS B1180の光沢クロメート六角ボルト(M10、P1.5×20mm)のねじ部に1滴塗布し、JIS B1181の光沢クロメート六角ナットをボルトの途中まで0N・mで締め込み、25℃40%の環境で放置し硬化時間を測定した。
接着強度はJIS B1180の光沢クロメート六角ボルト(M10、P1.5×20mm)のねじ部に1滴塗布し、JIS B1181の光沢クロメート六角ナットをボルトの途中まで0N・mで締め込み、25℃40%、24時間放置した。トルク測定器を用い、ナットをゆるめる方向に連続で回転させ、ナットがはじめて動き出した点(接着破壊時)のトルクを測定した。
保存安定性の評価は加熱促進試験として80℃ゲル化試験を行った。各組成物を80℃の加熱炉に入れ1時間放置する。その後、ゲル化、ゲル状物ができているものは×、増粘しているものは△、ほとんど増粘していないものは○とした。結果を表1に示した。表1からわかるようにDTPA・Na・Feを加えることでセットタイムを速くすることができる。結果を表1に示す。
2.実施例8〜14、比較例3、4はDTPA・Na・Feの添加量を変えて各組成物を調製した。上記で得られた各組成物を実施例1と同様に接着強度と保存安定性試験を実施した。結果を表2に示す。
3.実施例15〜19、比較例5、はEDTA金属錯体の金属イオンの種類を変えておこなった。上記実施例1と同様の配合でEDTA金属錯体の量を0.02重量部を溶解性を一定にするため精製水0.2重量部に加え行った。用いたEDTA金属錯体は、Mg、Mn、Fe、Ni、Ca、精製水のみ、を使用した。上記で得られた各組成物を実施例1と同様にM10ボルトに1滴塗布しナットを0N・mで組み込み10分ごとに測定を行った。安定性の評価は実施例1と同様におこなった。評価結果は、表3に示した。表3からわかるようにEDTAの金属錯体を加えると加えないものに比べ明らかにセットタイムを向上させている。
4.比較例6〜9、比較例10〜13、比較例6〜9は実施例1の配合を基本として(d)成分の代わりに他のキレート剤と称される化合物の金属錯体で行った。前述のベース樹脂100重量部にキレート剤0.02重量部を、実施例15と同様に溶解性を一定にするため精製水0.2重量部に加え行った。用いたキレート剤はニトリオ三酢酸(NTA)の銅錯体、ヒドロエチルイミノ二酢酸(HIDA)のバナジウム錯体、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)の銅錯体、プロパンジアミン四酢酸(PDTA)の鉄錯体を使用した。さらに、比較例10〜13は実施例1の配合を基本として(d)成分の代わりにEDTA単体、EDTAのナトリウム塩、DTPA単体、DTPAのナトリウム塩をベース樹脂に0.02重量部、さらに酸化銅0.01重量部を添加したものを配合した。上記で得られた各組成物を上記同様にセットタイム、強度、保存安定性の評価結果は、表4に示した。表4からわかるように(d)成分でないキレート剤では効果はなく、保存安定性を劣化されるものであることが確認できた。
本発明の嫌気硬化性組成物は被着体が非活性金属の場合でも速硬化が可能であり、ネジ、ボルト等の接着、固定、嵌め合い部品の固着、フランジ面間の接着、シール等に適している。

Claims (3)

  1. (a)分子中に少なくとも1つ以上のラジカル重合性官能基を有する化合物、(b)有機過酸化物、(c)o−ベンゾイックスルフィミドおよび(d)アルカリ金属を除く金属とエチレンジアミン四酢酸との錯体、または、アルカリ金属を除く金属とジエチレントリアミン五酢酸との錯体、からなることを特徴とする嫌気硬化性組成物。
  2. 前記(a)成分100重量部に対し、(b)成分0.1〜5重量部、(c)成分0.1〜5重量部、(d)成分0.01〜2重量部配合することを特徴とする請求項1に記載の嫌気硬化性組成物。
  3. アルカリ金属を除く金属がMg、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Agから選ばれる請求項1または2に記載の嫌気硬化性組成物。

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