JP2005059588A - 複合管状物及びその製造方法 - Google Patents

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【課題】マスキングテープを使用せずに効率よく合理的に製造が可能な複合管状物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属管状物の外面にプライマー層と離型樹脂層をこの順番で積層した複合管状物であって、基部が外側に広がる傾斜面(3)を有する支持体(9)に金属管状物(1)を挿入し、この状態で金属管状物の上端未満までプライマー溶液をコーティングし、支持体(9)及び前記金属管状物の下部(W)を洗浄し、プライマーコーティング層を乾燥し、次にプライマー塗布層以下まで離型樹脂溶液をコーティングし、支持体及び金属管状物の下部(W)を洗浄し、離型樹脂コーティング層を乾燥し、加熱処理し、支持体から複合管状物を取り外して複合管状物とする。この複合管状物の一端部は金属管状物が露出し、他端部はプライマーと離型樹脂が混在した洗浄模様が形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば複写機やプリンターなどの熱定着用ベルトとして有用な複合管状物に関する。さらに詳しくは、管状の金属薄膜表面に樹脂をコーティングした複合管状物及びその製造方法に関する。
ポリイミド樹脂は優れた耐熱性、寸法安定性、機械的特性および化学的特性を有しており、その用途としては、従来から複写機やレーザービームプリンターなどの熱定着ベルトやトナー画像の中間転写ベルトなど、広い分野で使用されている。その用途の一例として複写機やレーザービームプリンターなどの熱定着ベルトが挙げられる。複写機やレーザービームプリンターの定着ベルトとして使用されるポリイミド複合管状物について、以下に例を挙げて説明する。
電子写真技術を利用した複写機やレーザービームプリンターにおいては、複写紙や転写紙上に形成したトナー像を定着するための定着装置として、ポリイミド樹脂管状物の内側に支持体とセラミックヒーターを備え、ヒーターと圧接した加圧ロールの間にトナー像を形成した複写紙を順次送り込みながらトナーを加熱溶融させ、ニップ点で複写紙上にトナー像を定着させる方式が主流である。近年OA機器の高速化あるいはカラー化が進み、これらの要求を満たすべき定着装置、あるいはこれに使用する定着ベルトの開発が望まれている。すなわち複写速度においては1分間に40枚を超える高速化が望まれ、またカラー化においては高速で、かつ4色のトナーを十分に溶融させ高画質を得るための定着部材の開発が要請されている。
しかし、従来のポリイミド樹脂管状物の外面にフッ素樹脂などの離型層を積層した定着ベルトは、すべての材料が樹脂であることから、熱伝導特性が十分でなく、高速化の要求に対して限界にきており、高速化やカラー化に対応するために下記の特許文献1〜3などに記載されている新しい定着ベルトや定着方式が提案されている。
熱定着装置においてヒーターへ供給する熱エネルギーはなるべく小さく、かつ高速度で定着できる方が望ましい。しかしながら転写紙に供給する熱エネルギーは複写速度に比例して増加し、高速度で熱定着を実行するためにはヒーターの容量をアップする必要がある。
これらの要求に対し、特許文献1では厚み10〜35μmのニッケルベルトの内面にボロンナイトライドを混合したポリイミド樹脂をコーティングし、ニッケルベルトの外面にはフッ素樹脂離型層を被覆したベルトが使われている。すなわち従来のポリイミド樹脂管状物単体のベルトから金属製ベルトに変更し、ベルト材料の熱伝導率を改善することにより、定着エネルギーを小さくしようとする試みである。
また特許文献2には薄肉の金属チューブの外層に耐熱エラストマーを被覆した定着ベルトで、ベルトに一定の荷重をかけたときの荷重方向の歪と、荷重垂直歪みが、ある特定範囲にある弾性力を持った定着ベルトで、尚且つインダクションヒーティングにより定着ベルトを介して転写材上のトナーを加熱定着する方法が記載されている。また特許文献3には厚みが0.09mm以下のシームレス金属薄膜管状体及びその製造方法、電子写真装置用感光体、電子写真装置用定着ベルトへの用途などが記載されている。
これらの提案は、従来のポリイミド樹脂製定着ベルトの熱伝導性が低い問題を解決するためになされたものであり、ポリイミド樹脂ベルトを熱伝導性の良い金属薄膜ベルトに置き換えた発明である。従って、熱伝導性はポリイミド樹脂と比較して改良され高速複写にも対応可能であり、更にカラー化にも対応可能である。
従来技術においては、基体の金属管状物表面に樹脂をコーティングする際に、管状物端面をマスキングテープで液の侵入を防止し、コーティングする方法が一般的に使用されていた。
しかし、このような方法では、コーティングするたびにマスキングテープを取り替える必要があり、コーティング部分の汚染あるいは異物付着の原因になるという問題があった。またマスキングテープを使用する方法ではマスキングテープを巻きつけた部分に液溜まりができコーティング厚みが厚くなり異物化したり、粘着剤が残る問題があった。
特開平6−222695号公報 特開平10−10893号公報 特開2001−225134号公報
本発明は、前記従来の問題を解決するため、マスキングテープを使用せずに効率よく合理的に製造が可能な複合管状物及びその製造方法を提供する。
本発明の複合管状物は、金属管状物の外面にプライマー層と、離型樹脂層をこの順番で積層した複合管状物であって、一端部は前記金属管状物が露出し、他端部は前記プライマーと前記離型樹脂が混在した洗浄模様が形成されていることを特徴とする。
本発明の複合管状物の製造方法は、金属管状物の外面にプライマー層と、離型樹脂層をこの順番で積層する複合管状物の製造方法であって、前記金属管状物の基部に支持体を装着し、外部から塗布溶液が前記金属管状物の内側に侵入しない状態でプライマー層と、離型樹脂層をこの順番でコーティングし、その後余分なコーティング液を洗浄除去することを特徴とする。
本発明の複合管状物の別の製造方法は、金属管状物の外面にプライマー層と、離型樹脂層をこの順番で積層する複合管状物の製造方法であって、前記金属管状物の基部に支持体を装着し、外部から塗布溶液が前記金属管状物の内側に侵入しないように封止する工程と、前記金属管状物の上端部を除きプライマー溶液をコーティングする工程と、後の離型樹脂溶液をコーティングする工程までの間に、余分なコーティング液を洗浄除去する工程と、その後、前記支持体を装着したままか又は取り外して前記プライマーコーティング層を乾燥する工程と、前記工程で支持体を取り外した場合は再度前記支持体を取り付け、前記プライマー塗布層の上に離型樹脂溶液をコーティングする工程と、後の加熱処理するまでの間に余分な離型樹脂溶液を洗浄する工程と、その後、前記支持体を装着したままか又は取り外して前記離型樹脂コーティング層を乾燥、及び加熱処理する工程を含むことを特徴とする。
本発明の複合管状物は、金属管状物の外面にプライマー層と、離型樹脂層をこの順番で積層した複合管状物であって、一端部は前記金属管状物が露出し、他端部は前記プライマーと前記離型樹脂が混在した洗浄模様が形成されている。これにより、前記一端部の金属管状物が露出している面は、プリンター定着機に使用する際、静電気や電荷のディスチャージに使用することができる。他端部はプライマー層と離型樹脂が混在した洗浄模様が形成されているので、離型樹脂層の剥離が防止できる。
本発明の製造方法は、金属管状物の基部に支持体を装着して前記金属管状物の内側に液体が侵入しないように封止する工程を含む。これにより、汚染あるいは異物付着の原因になるマスキングテープを使用しないので、液溜まりができず、異物化せず、粘着剤が残ることもない。また、金属管状物の内面への樹脂溶液の浸入を防ぐことができ、内面の樹脂汚染は発生しない。したがって、生産性の向上と均一性の高い製品が得られる。
本発明の複合管状物は、一端部は金属管状物が段階的に露出し、他端部はプライマー層と離型樹脂層が混在した洗浄模様が形成されている。前記一端部の金属管状物が露出している面は、プリンター定着機に使用する際、静電気や電荷のディスチャージに使用することができる。またプライマー層と金属管状物が段階的に露出していてもよい。このようにすると、離型樹脂層の剥離がさらに効果的に防止できる。他端部はプライマー層と離型樹脂が混在した洗浄模様が形成されているので、離型樹脂層の剥離が防止できる。なお、金属管状物は、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルあるいは合金などであり、酸化膜で被覆されていても良い。また、金属管状物は、ストレート状でも良いし、中央部の直径が端部の直径に比較して長いクラウン型、又はその逆の逆クラウン型をしていてもよい。加熱定着ベルトとして用いる場合、高速機の場合は、紙のしわを伸ばす方向に作用する逆クラウン型が好ましい。金属管状物の最大外径部と最小外径部の周長差が0.01〜1.5%あることが好ましい。さらに、0.05〜0.5%の周長差が好ましい。
離型樹脂はフッ素樹脂又はシリコン樹脂及びそれらの混合物であることが好ましい。フッ素樹脂はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パ−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などが好ましく、これらの単体又は混合物を水分散液状(ディスパ−ジョン)や溶液(エナメル溶液)の状態で、この溶液に浸漬してコーティングする。またこれらのフッ素樹脂液の中には、耐磨耗性や、熱伝導性を改良するための物質を混合することもできる。またシリコン樹脂と混合して使用しても良い。フッ素樹脂と混合するシリコン樹脂は水分散されたシリコン樹脂が好ましい。このうちPTFE、又はPTFEとPFAの混合物を使用することが好ましい。
焼成後のフッ素樹脂の表面粗度(Ra)は0μm以上1.0μm以下であることが好ましい。この程度の表面粗度であれば近年インターネットなどによる絵や写真などの画像複写に対しても良質な画像を得ることができる。
前記フッ素樹脂に電気抵抗制御剤を含ませることが好ましい。ここで電気抵抗制御剤としては最終製品のフッ素樹脂の表面抵抗が1×105Ω/□〜1×1014Ω/□の範囲であり帯電防止機能を有するものをいう。前記フッ素樹脂層に電気抵抗制御剤の混合はオフセットを防止するためのものであって良質な画像を得るためには不可欠である。
電子写真装置では感光ドラム上に静電帯電させてトナー画像を成形し、あらかじめ帯電させた転写紙(コピー用紙)にトナー像を転写しその後、熱定着させて複写画像を得る。
この場合、転写紙と定着用複合管状物(定着ベルト)の摩擦帯電等によって、もしくは転写紙の転写電荷によって、転写紙上のトナーが定着ベルトに引き寄せられる電界が生じ、トナーの一部が定着ベルト上に転移してしまう場合がある。この転移したトナーは定着ベルトが一周した後、転写紙上に戻り、画像上ゴーストとなってしまう。これを静電オフセットと呼んでいる。これらの静電オフセットを防止するために、定着ベルトの表面抵抗を制御する必要がある。
電気抵抗制御剤としてはカーボンブラック、金属粉末、グラファイトなどの導電性の良い物質を直接混合することもできる。また半導電性で不安定な領域の表面抵抗を得るためには、酸化チタン、酸化鉄、水酸化アルミニウム、タルク、チタン酸バリウム、酸化アンチモン、炭酸カルシューム、シリカなどの無機半導電性物質を混合して使用することもできる。また前記電子導電系電気抵抗制御剤の他に、イオン導電性電気抵抗制御剤を用いることもできる。イオン導電性電気抵抗制御剤としては有機リン塩、及びパーフロロアルキル基を含む有機塩が好ましい。有機リン塩としては、例えばジフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、デシル・ジフェニルホスファイト、(ノニルフェニルとジノニルフェニル混合体)トリホスファイト、トリフェニルホスフェイト、トリエチルホスフェイト、トリ(ブトキシエチル)ホスフェイト、ヘキサメチルホスホンアミド、ジメチルホスホネイト、ホスフィンオキサイド、アルキルホスフィンオキサイド、アルキルホスフィンサルファイド、ホスホニウム塩等から選ばれる少なくとも一つの物質であることが好ましい。また、パーフルオロアルキル基を含む有機塩としては、例えばRfSO3M(ただし、Rfはパーフルオロアルキル基を示しアルキル基Rの炭素数は1〜30の範囲、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。以下の化学式においても同じ)、RfSO3NH4、RfSO2NRCH2COOM、RfSO2N(R)C24OH、RfSO2N(R)(C24O)nH(ただしnは1〜30の範囲)、(RfSO2N(R)C24O)2PO(OH)、(RfSO2N(R)C24O)2PO(ONH4)、RfSO2N(R)C24OSO3H、RfSO2N(R)C24OSO3M、RfSO2N(R)C24OCOC65、RfSO2N(R)CH2COOC25、RfSO2N(H)C36+(CH33-、RfCOONH4、RfSO2N(CH2−C65)C24OH、RfSO2NC36+(CH3224COO-等を用いることができる。前記電気抵抗制御剤は、フッ素樹脂に対して0.1〜40重量%分散している状態で存在していることが好ましい。
前記支持体は、金属、セラミックス、樹脂又はゴムであってもよい。ゴムからなる支持体を使用する場合は、例えば空気を送入することにより外径を膨らませることができる中空円筒形のゴム成型支持体を前記金属管状物の内部に挿入し、前記支持体の中空円筒部内に圧縮空気を供給し、前記支持体の外径を拡大させ前記金属管状物の内面と密着させ、空気の流通を遮断し、液の浸入を防止できる。また、他の例では、比較的軟らかいゴム円柱体を前記金属管状物の内部に挿入し、前記ゴム円柱体の上下を機械的に押圧することによって、その外径を拡大させ、前記ゴム円柱体の外周面を金属管状物の内面と密着させ、コーティング液の浸入を防止することができる。
前記ゴム製支持体を金属管状物の内面に密着密封させ、この状態で金属管状物を液体中に浸漬した場合、金属管状物の内側は密封された空気溜まりになっているため、管状物内面には液体はほとんど浸入することはない。ゴム材料としてはとくに限定されるものではなく、合成ゴム、天然ゴムなど繰り返し疲労に強いゴムが使用できる。
また金属やセラミックスなどからなる支持体は、外側に広がる傾斜面を有する部分を含み、前記支持体の円錐形斜面部に管状物を圧挿入することによってコーティング液は侵入しない。前記金属製支持体はアルミ、ステンレス、鉄、ニッケル等いずれでもよい。セラミックスもその種類は問わない。
本発明方法で使用する支持体の外側に広がる傾斜面を有する部分の材料の硬度は、前記金属管状物の硬度以上であることが好ましい。円錐形状部分の材質の硬度が管状物の材質の硬度と同じかそれより高いと支持体の円錐形状部分に金属同士の接触による傷が発生しにくい。
前記支持体に前記金属管状物を挿入した状態が、外部から塗布溶液が前記金属管状物の内側に侵入しない状態であることが好ましい。これにより、管状物を支持体に装着しプライマー液に浸漬し引き上げてコーティングしたのち、すぐに支持体及び管状物の下部を所定の寸法だけ洗浄液中に浸漬し洗浄することによって所定の長さの金属層露出部分を作り、そのまま乾燥オーブンに入れ乾燥処理ができる。またプライマーコーティング後、乾燥しさらにその上部に離型層をコーティングする場合においてもフッ素樹脂液に管状物を浸漬しコーティング後、上記と同一方法で管状物端部を所定の長さで洗浄し金属層の露出部を作ることができる。また管状物の表面に各液をコーティングしたのち下部を洗浄することにより異物の発生を防止することができる。浸漬コーティング後、管状物の下部を洗浄することによって任意の長さで金属層露出部分を得ることができる。同時に金型下部等に付着した塗布液を洗浄でき、異物の付着を防止できる。通常の浸漬塗装方法では管状物端面をマスキングテープなどで液の侵入を防止し、コーティングする方法が一般的であるが、この方法ではコーティングするたびにマスキングテープを取り替える必要があり、コーティング部分の汚染あるいは異物付着の原因になる。またマスキングテープなどを使用する方法ではマスキングテープを巻きつけた部分に液溜まりができコーティング厚みが厚くなり異物化する。
なお本発明においては、支持体に金属管状物を挿入し、この状態で金属管状物の上端未満までプライマー溶液中に浸漬し引き上げてもよいし、プライマー溶液を下から持ち上げて引き下げても良い。また、支持体に金属管状物を挿入した状態でプライマー塗布層以下まで離型樹脂溶液中に浸漬し引き上げてもよいし、離型樹脂溶液を下から持ち上げて引き下げてもよい。その作用効果は同一である。
前記支持体の外側に広がる傾斜面(円錐形状部)を有する部分以外は、前記金属管状物と支持体の他の部分(例えばシャフト部等)とは非接触状態であることが好ましい。支持体の円錐形状部分で管状物を固定させることにより、円錐形状部底面に対して垂直に装着でき、円錐形状部以外の前記他の部分に管状物が接触することがなくなる。もし支持体の前記他の部分に管状物の一部分が接触していると、各液をコーティング後、乾燥、あるいは焼成時に金属製支持体の熱伝導により管状物が接触している個所と非接触の部分に温度差が生じ焼成の不均一やクラックの発生につながるが、管状物と支持体の前記他の部分が接触していないため均一な焼成ができる。
前記プライマー層の洗浄工程は、プライマー溶液をコーティングした後、離型樹脂溶液をコーティングするまでの間であれば、任意に選択できる。すなわち、プライマー層の乾燥前、乾燥後のいずれであっても良い。また、前記離型樹脂コーティング層の洗浄工程は、離型樹脂溶液をコーティングした後、加熱焼付けの前であれば、任意に選択できる。すなわち、離型樹脂層の乾燥前、乾燥後のいずれであっても良い。洗浄工程は、前記2種類の溶液ともそれぞれコーティング直後に実施するのがとくに好ましい。これは、洗浄液がコーティング層に浸透しやすく、洗浄しやすいからである。洗浄液としては水を用いて、浸漬法により洗浄するのが好ましい。
前記洗浄が、洗浄液への浸漬であり、支持体に装着した金属管状物を溶液中に浸漬するとき、液面をセンサーで読み取りながら金属管状物の浸漬位置を制御することが好ましい。これにより、支持体に装着した金属管状物を所定の溶液中に浸漬するとき液面をセンサーで読み取りながら管状物の浸漬位置を制御することによって液面の変動に関係なく、管状物の長さ方向のコーティング位置を正確にコントロールできる。特に金属管状物は素管の状態で正規の寸法に仕上げられているため、コーティング厚み精度と同時に長さ方向の精度も要求される。
本発明においては、金属管状物を支持体に装着し、かつ浸漬法でコーティングすることによって複数本の処理が一回でできる。また、浸漬法でコーティングすることによってフッ素樹脂被膜の表面粗さを細かくできる。特に金属管状物の場合は金属層が固いため、コーティング時の表面粗度は直接画像に影響を及ぼす。また、金属管状物の両端部に非コーティング部分があると、定着ベルトとして使用するときにディスチャージすることができ、好ましい。またいずれか片側表面にロット番号を記入する場合に好ましい。また。円錐形斜面部に金属管状物の端部全体を加圧し挿入することによって、金属管状物を垂直に維持することができ、金属管状物上部のプライマー及び金属層露出部寸法を正確に制御できる。金属管状物が傾いた状態で支持体に装着されていると、金属管状物を所定の寸法まで浸漬した場合、液面との境界面で傾いた状態で塗布されるため、上端部のプライマーあるいは離型液の塗布ラインが斜めになり、全周で均一な露出長さ寸法が得られない。
以下図面を用いて本発明の一実施形態を説明する。図1は、基部が外側に広がる傾斜面3とシャフト部2を有する支持体9に金属管状物1を挿入した状態を示す断面図である。金属管状物1は、例えば厚さが10〜80μm、内径が10〜100mmでA4あるいはA3サイズなどの所定の用紙が使用できる長さのもので、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、アルミ二ウム、黄銅、銅などを使用できる。シャフト部2は鉄、ステンレス等を使用できる。シャフト部2のストレート部の延長線と傾斜面3との好ましい角度(図1のθ)は0.5°〜10°であり、内径が30mm前後の、金属管状物の場合の好ましい角度は1°〜5°である。θが0.5°未満では鋭角になりすぎて金属管状物1の内径のばらつきなどにより支持体に挿入した時の高さが不揃いになり、複数本処理したときに不均一になりやすく、θが10°を超えるとシール性が低下し、各コーティング液を乾燥、あるいは焼成時に支持体から外れる傾向にある。
なお、図1中の4,5は多数本を同時にクランプするときに使用するための把持部であり、Wの部分は洗浄部分である。
図2A〜Hは本発明の製造工程を示す概略工程図である。支持体9の傾斜面3に金属管状物1を挿入し、この状態で把持具6に複数本セットし、金属管状物の上端未満までプライマー溶液7中に浸漬し、引き上げる(図2A)。金属管状物1と傾斜面3とは液密に接合されているので、プライマー溶液は金属管状物1の内部に浸入することはない。次に水溶液槽8に、支持体9と金属管状物1の下部数ミリメートルが浸漬する程度浸漬し、図1のWの部分を洗浄除去する(図2B)。次にプライマー層P1を乾燥した後、加熱装置10に入れてプライマーの乾燥温度まで昇温して乾燥処理する(図2C)。次に室温まで冷却する(図2D)。次にフッ素樹脂水分散溶液槽11内に支持体9とプライマーP1を乾燥処理した金属管状物1とを浸漬する(図2E)。このとき、フッ素樹脂水分散溶液は、プライマー層の塗布境界線と同じか、又はそれより下となるように浸漬する。P2はフッ素樹脂層が被覆された複合管状物である。次に、図2Bと同様に、水溶液槽8に、支持体9と金属管状物1の下部数ミリメートルが浸漬する程度浸漬し、図1のWの部分を洗浄除去する(図2F)。次にフッ素樹脂層を乾燥した後、加熱装置12に入れてフッ素樹脂の焼き付け温度まで昇温して焼き付け処理する(図2G)。次に室温まで冷却する(図2H)。
図3Aは得られた複合管状物の長さ方向の概略断面図であり、図3Bは図3AのI−I線断面図である。金属管状物21の表面にプライマー層22とフッ素樹脂層23がこの順番に積層され、一端部はプライマー層22と金属管状物21が段階的に露出している。25はプライマー層22が露出している部分、24は金属管状物21が露出している部分である。他端部はプライマー22とフッ素樹脂23が混在した洗浄模様26が存在している。
図4は得られた複合管状物の全体斜視図である。
図5は本発明の一実施形態における定着装置である。この定着装置は、定着ベルト31の内側に定着ベルト支持体32と面状ヒーター33を備え、面状ヒーター33と圧接した加圧ロール34の間にトナー像を形成した複写紙37を順次送り込みながらトナー38を加熱溶融させ、ニップ点Nで複写紙上にトナー像39を定着させる。35はサーミスタ、36は加圧ローラの芯金である。
以下実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
本実施例は、図1及び図2A〜Hに示す工程で処理した。まず管状物の両端部最大外径30mm、及び中央部外径29.93mm、周長差0.233%、厚み50μm、長さ240mmの逆クラウン形状(管状物の中央部から両端部にむかって外径が大きくなる形状、中央部と両端部の外径の差は70μm)を持つステンレス(304S)製管状物1(遠藤製作所製)を用意した。この管状物の表面をアルコールで洗浄後、図1の支持体9に挿入し管状物の上端部全面を3kgの圧力を掛け、支持体下部の円錐形状斜面部3に挿入した。シャフト部2の外表面部の延長線と傾斜面3の角度θは2°のものを使用した。ステンレス製管状物1は、円錐形状部底面に対して垂直に固定した。前記のように支持体に固定されたステンレス管状物を15本用意しパレット(把持具)上に固定したのち、各支持体の上部を一括で掴み、粘度80Cpのプライマー液(デュポン社製855−003)に液面を液面感知センサーで検知させながらステンレス製管状物の上部5mm部分を残し、浸漬し、2.0mm/secの速度で引上げ乾燥後の厚みが4μmとなるように均一にプライマー液を塗布した(図2A)。その後、プライマー液が乾燥する前に15本のステンレス製管状物全数をチャッキングし各管状物の下部から3mm部分を2分間、水槽に浸漬しプライマー液を洗浄除去した(図2B)。その後、室温で5分乾燥後、180℃のオーブンに入れ30分間加熱処理した(図2C)。次に取出し室温まで冷却した(図2D)。
次いでプライマーの塗布と同じ操作で粘度150Cpのフッ素樹脂(PTFE70%,PFA30%)ディスパージョン液中に液面を液面感知センサーで検知させステンレス管状物を回転させながら上部から8mm部分を残し浸漬し(図2E)、その後4mm/secの速度で引上げ、12μmの厚みでフッ素樹脂液を塗布した。その後、前記水槽に管状物の下部先端から3mm部分を浸漬し、フッ素樹脂の塗布面を洗浄除去した(図2F)。
前記フッ素樹脂を塗布し室温で10分間乾燥したステンレス製管状物をオーブンに入れ100℃で20分乾燥後、400℃まで30分で昇温させ、400℃で10分保持して焼成処理した(図2G)その後、室温(25℃)まで冷却し、支持体から管状物を取り外した(図2H)。前記フッ素樹脂ディスパージョンはPTFE70重量%とPFA30重量%の混合物からなり、あらかじめ、カーボンペーストW310A(ケッチンブラック)(ライオン(株)製)を前記フッ素樹脂の固形分(45%)に対して0.6重量%混合したものを使用した。
完成された管状物は、図3A〜B及び図4に示すように、支持体に装着した上部はステンレス金属層が5mm露出し、続いて3mmのプライマー露出部を残しフッ素樹脂層が塗布焼成され、また各液に浸漬した管状部の下部は3mmの洗浄痕(金属露出部)を有する管状物を得た。
この完成された複合管状物の表面粗度を(小阪研究所製サーフレコーダーSE-30D)で測定したところRaで0.245μmであった。なお表面粗度の測定は縦倍率:1000倍、横倍率:10倍、測定長さ5mm、測定速度0.1mm/sec、カットオフ:0.8mmの条件で行った。また外径、及び逆クラウン形状の測定はレーザー測長機を用い両端部から20mm部分と中央部の外径寸法を測定し逆クラウン量を計算した。完成品の逆クラウン量は72μmであった。また最大外径部と最小外径部の周長差は0.24%であった。この複合管状物を図5に示すレーザービームプリンターの定着ベルトとして装着し、画像定着を行った結果、A4サイズ用紙で1分間に40枚のコピーが得られ、20万枚の通紙が可能であった。
下記に本発明方法の好ましい実施形態の要旨を列挙する。
1.金属管状物の外面にプライマー層と、離型樹脂層をこの順番で積層する複合管状物の製造方法であって、基部が外側に広がる傾斜面を有する支持体に前記金属管状物を挿入する工程と、前記支持体に前記金属管状物を挿入した状態で前記金属管状物の上端未満までプライマー溶液をコーティングする工程と、後の離型樹脂溶液をコーティングする工程までの間に前記支持体及び前記金属管状物の下部を洗浄する工程と、前記プライマーコーティング層を乾燥する工程と、前記支持体に前記金属管状物を挿入した状態で前記プライマー塗布層以下まで離型樹脂溶液をコーティングする工程と、後の加熱処理するまでの間に前記支持体及び前記金属管状物の下部を洗浄し、前記離型樹脂コーティング層を乾燥し、加熱処理する工程と、しかる後、前記支持体から複合管状物を取り外す工程を含むことを特徴とする複合管状物の製造方法。
2.前記外側に広がる傾斜面を有する部分の材料の硬度が、前記金属管状物の硬度以上である前記1に記載の複合管状物の製造方法。
3.前記支持体に前記金属管状物を挿入した状態が、外部から塗布溶液が前記金属管状物の内側に侵入しない状態である前記1に記載の複合管状物の製造方法。
4.前記支持体の外側に広がる傾斜面を有する部分以外は前記金属管状物と前記支持体の他の部分とは非接触状態である前記1に記載の複合管状物の製造方法。
5.前記洗浄が、洗浄液への浸漬であり、前記支持体に装着した前記金属管状物を溶液中に浸漬するとき、液面をセンサーで読み取りながら前記金属管状物の浸漬位置を制御する前記1に記載の複合管状物の製造方法。
本発明で得られる複合管状物は、例えばレーザービームプリンターの熱定着ベルトとして有用である。
本発明の一実施例における支持体に金属管状物を挿入した状態を示す断面図である。 図2A〜Hは本発明の一実施例における製造工程を示す概略工程図である。 Aは本発明の一実施例における複合管状物の長さ方向の概略断面図であり、BはAのI−I線断面図である。 本発明の一実施例における複合管状物の全体斜視図である。 本発明の一実施例における複合管状物を電子写真の定着装置に使用した概略断面図である。
符号の説明
1 金属管状物
2 シャフト部
3 傾斜面
4,5 把持部
6 把持具
7 プライマー溶液
8 水溶液槽
9 支持体
10,12 加熱装置
11 フッ素樹脂水分散溶液槽
21 金属管状物
22 プライマー層
23 フッ素樹脂層
24 金属管状物が露出している部分
25 プライマー層が露出している部分
26 洗浄模様
31 定着ベルト
32 定着ベルト支持体
33 面状ヒーター
34 加圧ロール
35 サーミスタ
36 加圧ローラの芯金
37 複写紙
38 トナー
39 定着像
W 洗浄部分

Claims (9)

  1. 金属管状物の外面にプライマー層と、離型樹脂層をこの順番で積層した複合管状物であって、
    一端部は前記金属管状物が露出し、
    他端部は前記プライマーと前記離型樹脂が混在した洗浄模様が形成されていることを特徴とする複合管状物。
  2. 前記金属管状物の最大外径部と最小外径部の周長差が0.01〜1.5%ある請求項1に記載の複合管状物
  3. 前記離型樹脂層がフッ素樹脂層であり、表面粗度(Ra)が1.0μm以下である請求項1に記載の複合管状物。
  4. 前記フッ素樹脂が電気抵抗制御剤を含む請求項3に記載の複合管状物。
  5. 金属管状物の外面にプライマー層と、離型樹脂層をこの順番で積層する複合管状物の製造方法であって、
    前記金属管状物の基部に支持体を装着し、外部から塗布溶液が前記金属管状物の内側に侵入しない状態でプライマー層と、離型樹脂層をこの順番でコーティングし、その後余分なコーティング液を洗浄除去することを特徴とする複合管状物の製造方法。
  6. 金属管状物の外面にプライマー層と、離型樹脂層をこの順番で積層する複合管状物の製造方法であって、
    前記金属管状物の基部に支持体を装着し、外部から塗布溶液が前記金属管状物の内側に侵入しないように封止する工程と、
    前記金属管状物の上端部を除きプライマー溶液をコーティングする工程と、
    後の離型樹脂溶液をコーティングする工程までの間に、余分なコーティング液を洗浄除去する工程と、
    その後、前記支持体を装着したままか又は取り外して前記プライマーコーティング層を乾燥する工程と、
    前記工程で支持体を取り外した場合は再度前記支持体を取り付け、前記プライマー塗布層の上に離型樹脂溶液をコーティングする工程と、
    後の加熱処理するまでの間に余分な離型樹脂溶液を洗浄する工程と、
    その後、前記支持体を装着したままか又は取り外して前記離型樹脂コーティング層を乾燥、及び加熱処理する工程を含むことを特徴とする複合管状物の製造方法。
  7. 前記支持体が金属、セラミックス、樹脂又はゴムである請求項5又は6に記載の複合管状物の製造方法。
  8. 前記支持体が外側に広がる傾斜面を有する部分を含み、前記傾斜面以外は前記金属管状物と非接触状態である請求項5又は6に記載の複合管状物の製造方法。
  9. 前記プライマー層、離型樹脂層のコーティング及び洗浄が、各液への浸漬であり、前記支持体を装着した前記金属管状物を各液に浸漬するとき、液面をセンサーで読み取りながら前記金属管状物の浸漬位置を制御する請求項5又は6に記載の複合管状物の製造方法。
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