JP6748676B2 - 熱定着用ゴムローラ、および、その製造方法 - Google Patents

熱定着用ゴムローラ、および、その製造方法 Download PDF

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本発明は、熱定着用ゴムローラ、および、その製造方法に関する。
電子写真方式の画像形成装置(複写機、レーザビームプリンタなど)においては、一般に、転写材(普通紙、プラスチックフィルムなど)に転写されたトナーを定着させる定着方式として、熱定着方式が採用されている。熱定着方式においては、熱定着用ゴムローラが用いられており、トナー像の熱定着を行う際には、トナー像が転写された転写材に熱定着用ゴムローラのローラ面(外周面)がニップ部で接触する。
熱定着用ゴムローラは、円筒状の芯軸の外周面に、たとえば、弾性層と離型層とが順次設けられている。熱定着用ゴムローラにおいて、芯軸は、鉄、アルミニウムなどの金属材料で形成されている。弾性層は、十分な耐熱性の確保のために、たとえば、シリコーンゴムの多孔質体で形成されている。離型層は、トナーに対する離型性を備えるように、たとえば、フッ素樹脂で形成されている。
熱定着用ゴムローラにおいては、離型層が帯電することを防止するために、導電材料としてカーボンを離型層に添加することが提案されている。
特開平3−167584号公報 特開2010−134213号公報
しかしながら、離型層にカーボンを添加した場合には、離型層の表面の平滑性が低下するため、トナーなどの物質が離型層の表面に汚れとして堆積しやすくなる。その結果、離型層の表面の汚れに起因して、転写材が汚れる場合がある。このため、離型層の帯電防止と、離型層の表面の汚れ防止との両者を十分に実現することが容易でない場合がある。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、離型層の帯電防止と、離型層の表面の汚れ防止との両者を容易に実現可能な、熱定着用ゴムローラ、および、その製造方法を提供することである。
本発明の熱定着用ゴムローラは、芯軸と、芯軸の外周面に設けられている弾性層と、芯軸の外周面に弾性層を介して設けられている離型層とを備える。離型層は、前記熱定着用ゴムローラの抵抗が10 12 Ω以下となるように5.0質量%より多く10質量%以下のカーボンを含有する。離型層の外周面は、カットオフ波長λcが30μmである条件で測定される算術平均粗さRaが0.05μm以下であると共に最大高さRzが0.3μm以下である。
本発明によれば、離型層の帯電防止と、離型層の表面の汚れ防止との両者を容易に実現可能な、熱定着用ゴムローラ、および、その製造方法を提供することができる。
図1は、実施形態に係る熱定着用ゴムローラを模式的に示す図である。 図2は、実施形態に係る熱定着用ゴムローラを模式的に示す図である。
以下より、発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、発明は、図面の内容に限定されない。また、図面は、概略を示すものであって、各部の寸法比などは、現実のものとは必ずしも一致しない。その他、同一の構成要素については、同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
[A]構成
図1および図2は、実施形態に係る熱定着用ゴムローラを模式的に示す図である。図1は、熱定着用ゴムローラ1の側面を示しており、縦方向が熱定着用ゴムローラ1の回転軸AXに沿った軸方向zである。図2は、図1に示す熱定着用ゴムローラ1においてX1−X1部分の断面を示しており、紙面に垂直な方向が軸方向zである。
図1および図2に示すように、熱定着用ゴムローラ1は、外形が円柱形状である加圧ローラ等であって、芯軸10と弾性層30と離型層40とを有する。熱定着用ゴムローラ1を構成する各部について順次説明する。
[A−1]芯軸10
芯軸10は、円筒形状の基材であって、金属材料で形成されている。ここでは、芯軸10は、たとえば、鉄またはアルミニウムを用いて形成されている。
[A−2]弾性層30
弾性層30は、芯軸10の外周面に設けられており、シリコーンゴムを用いて形成されている。このシリコーゴムを用いた弾性層が多孔質であるかは特に問わないが、ここでは本実施形態として、弾性層30は、シリコーンゴムを用いて形成された多孔質層であって、多数の孔を含んでいる。弾性層30の厚みは、たとえば、1.0mm以上、20mm以下の範囲である。
[A−3]離型層40
離型層40は、弾性層30を介して芯軸10の外周面を覆うように設けられている。離型層40は、トナーに対する離型性を得るために、たとえば、フッ素樹脂などの離型性樹脂で形成されている。具体的には、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などのフッ素樹脂が、離型性樹脂として好適に用いられる。離型層40は、フッ素樹脂の他に、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂の離型性樹脂を用いて形成されていてもよい。離型層40の厚みは、たとえば、10μm以上、100μm以下である。
本実施形態では、離型層40は、4質量%以上10質量%以下のカーボン(炭素の微粒子、つまり、カーボンブラック)を含有している。カーボンの含有割合が、上記範囲の下限値未満である場合には、一般的に導電領域とされる1012Ω以下とする導電性が得られない。これに対して、カーボンの含有割合が、上記範囲の上限値を超える場合には、導電性は十分に得られるが、成型性が顕著に劣るだけでなく、表面平滑性が低下し、トナーなどの物質が離型層の表面に汚れとして堆積しやすくなる。
また、本実施形態では、離型層40の外周面は、カットオフ波長λcが30μmである条件で測定される算術平均粗さRaが0.05μm以下である。算術平均粗さRaが上記の上限値を超えた場合には、トナーなどの物質が離型層40の表面に汚れとして堆積しやすくなり、その結果、離型層40の表面の汚れに起因して、転写材が汚れやすくなる。
これと共に、離型層40の外周面は、カットオフ波長λcが30μmである条件で測定される最大高さRzが0.3μm以下である。最大高さRzが上記の上限値を超えた場合には、表面平滑性が低下し、トナーなどの物質が離型層40の表面に汚れとして堆積しやすくなる。
[B]製造方法
上記の熱定着用ゴムローラ1を製造するときに実行する各工程に関して、順次、説明する。
本実施形態において弾性層30の形成を実行する際には、弾性層30の原材料として、硬化性のシリコーンゴム組成物(たとえば、液状シリコーンゴム)を準備する。
つぎに、フッ素樹脂などの離型性樹脂を用いて押出成型で形成されたチューブを、円筒形状の金型(図示省略)の内面に装着する。そして、弾性層30と離型層40として機能するチューブとを接着させるために、接着剤をチューブの内周面に塗布する。
つぎに、芯軸10を円筒形状の金型の内部に同軸に設置した後に、芯軸10の外周面と離型層40として機能するチューブの内周面との間に位置する空間に、上記のように準備したシリコーンゴム組成物を注入する。その後、シリコーンゴム組成物に関して硬化処理(1次加硫)を行うことによって、弾性層30を形成する。そして、金型を冷却した後に、芯軸10と弾性層30と離型層40とが一体となったワークを金型から取り出す。そして、そのワークに関して端面処理を行った後に、シリコーンゴムの圧縮永久歪を良化させるために、ワークについて2次加硫を行う。このようにして、熱定着用ゴムローラ1を作製する。
なお、チューブの内周面について、プライマーを塗布する処理、化学エッチングなどによる粗面化処理を施してもよい。その他、離型性樹脂で形成されたチューブを用いる場合の他に、離型性樹脂を塗布することによって、離型層40の形成を行ってもよい。
つぎに、離型層40の外周面について溶融処理を行う(溶融工程)。
溶融処理の方法として、例えば一つの方法としては、600℃まで加熱可能な恒温槽に穴を空け、その恒温槽に穴から溶融処理前の熱定着用ゴムローラ1を挿入して、その熱定着用ゴムローラ1を回転しながら加熱する方式がある。また別の方法としては、弾性層30へのダメージを出来るだけ低減し、高温短時間での処理が可能とする赤外線ランプによるイメージ炉にて加熱する方式がある。
本実施形態では、赤外線ランプによるイメージ炉にて加熱する方式にて溶融処理を行った。これは、カーボンが黒色であるため、赤外線をカーボンが吸収し易いので、弾性層30に余計な熱を伝えることなく、離型層40であるチューブを効率的に加熱するためである。本実施形態では、イメージ炉としては、たとえば、アドバンス理工株式会社製P616Cを用いる。加熱を周方向で均一に行う為、たとえば、溶融処理前の熱定着用ゴムローラ1を60RPMで回転しながら加熱を行う。
本実施形態では、離型層40の外周面について、カットオフ波長λcが30μmである条件で測定される算術平均粗さRaが0.05μm以下であると共に最大高さRzが0.3μm以下になるように、溶融処理を行う。溶融処理の条件としては、2.0kW以上6.0kW以下の条件で、10秒以上80秒以下、溶融処理を実行することが好ましい。これは、離型層40を構成するPFAチューブの表面の温度が融点(300℃)以上になるものの、離型層40の外周側に位置する部分のみが溶融するように、溶融処理を実行することが可能とするためである。
上記条件の範囲を超えると、離型層40全体が溶融するだけでなく、弾性層30に余計な熱が伝わり特定の弾性が得られないものとなる。
つまり、上記条件の範囲にて溶融処理を行うことにより、弾性層30の特性に影響を与えることなく、離型層40の表面の平滑性を得ることが可能となる。
なお、600℃まで加熱可能な恒温槽に穴を空け、その恒温槽に穴から溶融処理前の熱定着用ゴムローラ1を挿入して、その熱定着用ゴムローラ1を回転しながら加熱する方式の場合、離型層40であるチューブの表面が、PFAの融点(300℃)以上となる様に、400℃以上800℃以下の条件で、10秒以上80秒以下、溶融処理を実行することが好ましい。
[C]まとめ
詳細については後述の実施例等で説明するが、以上の実施形態では、離型層40の帯電防止と、離型層40の表面の汚れ防止との両者を容易に実現可能な、熱定着用ゴムローラ1、および、その製造方法を提供することができる。
以下より、熱定着用ゴムローラ1の実施例および比較例に関して表1を用いて説明する。表1では、実施例および比較例の概要を示している。なお、理解を容易にするため、実施例および比較例の説明では、上記の実施形態と同様に、各部に符号を付している。
Figure 0006748676
[1]試料の作製
[1−1]実施例1
本例の熱定着用ゴムローラ1を作製する際には、まず、外径13mmの円筒形状の芯軸10を準備した。
つぎに、芯軸10の外周面に弾性層30を形成した。ここでは、まず、硬化性のシリコーンゴム組成物である絶縁性LTVシリコーンゴム(メーカ:信越化学工業株式会社)を弾性層30の原材料として準備した。
つぎに、離型層40として、カーボン含有のPFA(メーカ:三井デュポンフロロケミカル社)を押出成形することで形成したPFAチューブ(カーボン含有割合:5.8質量%)を、円筒形状の金型の内面に装着した。
そして、芯軸10を円筒形状の金型の内部に同軸に設置した後に、芯軸10の外周面とPFAチューブの内周面との間に位置する空間に、その準備したシリコーンゴム組成物を注入した。その後、温度が120℃であって加熱時間が1時間である条件で、シリコーンゴム組成物に関して1次加硫(硬化)を行うことで、弾性層30を形成した。そして、芯軸10と弾性層30と離型層40とが一体となったワークを金型から取り出した後に、温度が200℃であって加熱時間が4時間である条件で2次加硫を行った。
その後、離型層40の外周面について溶融処理を行った。ここでは、表1に示す溶融処理条件で、溶融処理を実行した。
[1−2]その他の実施例、参考例、比較例
実施例2では、表1に示すように、溶融処理条件が異なる点を除き、実施例1と同様に、熱定着用ゴムローラ1の作製を実行した。参考例では、表1に示すように、カーボン含有割合および溶融処理条件が異なる点を除き、実施例1と同様に、熱定着用ゴムローラ1の作製を実行した。比較例1では、溶融処理を実行しない点を除き、実施例1と同様に、熱定着用ゴムローラ1の作製を実行した。比較例2および比較例3では、カーボン含有割合が異なる点を除き、実施例1と同様に、熱定着用ゴムローラ1の作製を実行した。
[2]結果
[2−1]算術平均粗さRa,最大高さRzの測定
各例の熱定着用ゴムローラ1を構成する離型層40の外周面に関して、算術平均粗さRa、および、最大高さRzの測定を行った。ここでは、JISB0601−2001に基づいて、カットオフ波長λcが30μmである下記条件で、算術平均粗さRa、および、最大高さRzの測定を行った。
[条件]
・測定ピッチ:0.2μm
・測定速度:50μm/sec
・基準長さ:250.0μm
・区間数:5
・カットオフ波長λc:30μm
・フィルタ:ガウシアン
・評価長さ:1250.0μm
表1に示すように、実施例1,2、参考例、および、比較例2の離型層40の外周面は、カットオフ波長λcが30μmである条件で測定される算術平均粗さRaが0.05μm以下であると共に最大高さRzが0.3μm以下であった。これに対して、比較例1,の離型層40の外周面は、カットオフ波長λcが30μmである条件で測定される算術平均粗さRaが0.05μm以下でなく、最大高さRzが0.3μm以下でなかった。
[2−2]離型層40の導電性に関する試験結果
上記した各例に関して、離型層40の帯電に関する試験として、抵抗を測定した。
具体的には、20mm幅の金属平板を2枚用意し、その2枚の金属平板を絶縁物の板の上に180mmの間隔で離して配置する。デジタル高抵抗/微少電流計(株式会社アドバンテスト製,R8340A)を2枚の金属平板に繋げる。そして、その2枚の金属平板上に測定対象として熱定着用ゴムローラ1を載せる。2枚の金属平板間に500Vの電圧を印加して、各例の熱定着用ゴムローラ1に関して抵抗を測定した。
その結果、実施例1,2においては、ローラ抵抗が1E+12Ω以下(つまり、1012Ω以下)であり、十分な導電性が得られることが判った。これに対して、比較例1から3のうち、比較例2に関しては、ローラ抵抗が1E+12Ωを超えており、導電性が不十分であった。
[2−3]離型層40の表面の汚れに関する試験結果
上記した各例に関する離型層40の表面の汚れに関する試験として、上記で作った熱定着用ゴムローラ1をマシンに組み込んだ状態で、連続通紙試験を行った。
具体的には、レーザープリンター(HP LASER JET M506)の中の加圧ローラを各例の熱定着用ゴムローラ1に入れ替えた。その状態のレーザープリンターにおいて連続的に50000枚の通紙を行った。そして、通紙終了後の熱定着用ゴムローラ1の表面について、トナー汚れの有無を確認した。表1では、トナー汚れが有る場合をNGと示し、トナー汚れが無い場合を「OK」と示した。
その結果、表1に示すように、表面に光沢感が現れて、表面粗さの小さくなった実施例1,2、参考例、および、比較例2では、トナー汚れが無かった。これに対して比較例1および比較例では、トナー汚れが有った。

1…熱定着用ゴムローラ、
10…芯軸、
30…弾性層、
40…離型層、
AX…回転軸

Claims (3)

  1. 芯軸と、
    前記芯軸の外周面に設けられている弾性層と、
    前記芯軸の外周面に前記弾性層を介して設けられている離型層と
    を備える熱定着用ゴムローラであって、
    前記離型層は、前記熱定着用ゴムローラの抵抗が10 12 Ω以下となるように5.0質量%より多く10質量%以下のカーボンを含有し、
    前記離型層の外周面は、カットオフ波長λcが30μmである条件で測定される算術平均粗さRaが0.05μm以下であると共に最大高さRzが0.3μm以下である、
    熱定着用ゴムローラ。
  2. 熱定着用ゴムローラの製造方法であって、
    芯軸の外周面に弾性層を形成する弾性層形成工程と、
    前記熱定着用ゴムローラの抵抗が10 12 Ω以下となるように5.0質量%より多く10質量%以下のカーボンを含有する離型層を前記芯軸の外周面に前記弾性層を介して設ける離型層形成工程と、
    赤外線ランプによるイメージ炉にて加熱する方式で、前記離型層の外周面について2.0kW以上6.0kW以下の条件で、10秒以上80秒以下溶融処理を行う溶融工程と
    を有する熱定着用ゴムローラの製造方法。
  3. 熱定着用ゴムローラの製造方法であって、
    芯軸の外周面に弾性層を形成する弾性層形成工程と、
    前記熱定着用ゴムローラの抵抗が10 12 Ω以下となるように5.0質量%より多く10質量%以下のカーボンを含有する離型層を前記芯軸の外周面に前記弾性層を介して設ける離型層形成工程と、
    600℃まで加熱可能な恒温槽に穴を空け、その恒温槽に穴から溶融処理前の前記熱定着用ゴムローラを挿入して、該熱定着用ゴムローラを回転しながら加熱する方式で、前記離型層の外周面について400℃以上800℃以下の条件で、10秒以上80秒以下溶融処理を行う溶融工程と
    を有する熱定着用ゴムローラの製造方法。
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