JP2005056898A - 薄膜半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】面方位が制御された半導体薄膜を簡便且つ確実に形成可能な薄膜半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一方の表面が絶縁性の基板の絶縁性表面に微細孔を形成する工程(S102)と、絶縁性表面上及び微細孔内に非晶質半導体膜を形成する工程(S103)と、非晶質半導体膜上の一部に結晶化促進剤を配置する工程(S104)と、基板に熱処理を施して結晶成分含有半導体膜を得る工程(S105)と、少なくとも微細孔内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ結晶成分含有半導体膜を溶融・結晶化させることにより所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を非溶融状態の結晶成分含有半導体膜を起点として微細孔を中心とした領域に形成する工程(S106)とを含む。
【選択図】 図2
【解決手段】少なくとも一方の表面が絶縁性の基板の絶縁性表面に微細孔を形成する工程(S102)と、絶縁性表面上及び微細孔内に非晶質半導体膜を形成する工程(S103)と、非晶質半導体膜上の一部に結晶化促進剤を配置する工程(S104)と、基板に熱処理を施して結晶成分含有半導体膜を得る工程(S105)と、少なくとも微細孔内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ結晶成分含有半導体膜を溶融・結晶化させることにより所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を非溶融状態の結晶成分含有半導体膜を起点として微細孔を中心とした領域に形成する工程(S106)とを含む。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は薄膜半導体装置の製造方法に関する。特に半導体膜を溶融結晶化させることにより略単結晶半導体結晶粒を製造する製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置やEL(エレクトロルミネセンス)表示装置などの電気光学装置においては、薄膜トランジスタ等の半導体装置を含んで構成される薄膜回路を用いて画素のスイッチングなどを行っている。従来の薄膜トランジスタは非晶質硅素膜を用いて、活性領域(チャネル形成領域)を形成している。又、多結晶硅素膜を用いて活性領域を形成した薄膜トランジスタも実用化されている。多結晶硅素膜を用いることにより、非晶質硅素膜を用いた場合に比較して移動度などの電気的特性が向上し、薄膜トランジスタの性能を向上させることができる。
【0003】
又、薄膜トランジスタの性能を更に向上させるために大きな結晶粒からなる半導体膜を形成し、薄膜トランジスタの形成領域内に結晶粒界が入り込まないようにする技術が検討されている。例えば、基板上に微細な穴(微細孔)を形成し、この微細孔を結晶成長の起点として半導体膜の結晶化を行うことにより、数μm程度の硅素の結晶粒を形成する技術がいくつかの文献において提案されていた(非特許文献1及び非特許文献2)。これらの技術を用いて形成される大きな結晶粒を含む略単結晶硅素膜を用いて薄膜トランジスタを形成することにより、移動度等の電気的特性に優れた薄膜トランジスタを実現することが可能になる。
【0004】
【非特許文献1】
「Single Crystal Thin Film Transistors」(IBM TECHNICAL DISCLOSURE BULLETIN Aug.1993 pp257−258)
【非特許文献2】
「Advanced Excimer−Laser Crystallization Techniques of Si Thin−Film For Location Control of Large Grain on Glass」(R. Ishihara等proc. SPIE 2001, vol.4295, p14〜23.)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記両文献に記載された従来の方法では結晶粒の面方位の制御ができないため、このような方法で作製した略単結晶硅素膜においては特性にばらつきが生じる。したがって、この略単結晶硅素膜を用いて薄膜トランジスタ等の半導体装置を作製した場合には、完成した半導体装置の特性にばらつきが生じてしまい、均一な特性を備えた半導体装置を得ることが困難であるという問題がある。
【0006】
そこで薄膜トランジスタ等の半導体装置の電気的特性のさらなる向上を図るために、結晶粒の面方位を制御して半導体膜を形成することが可能な製造方法の確立が望まれている。
【0007】
本発明は上述した従来の実情に鑑みて創案されたものであり、面方位が制御された半導体薄膜を簡便且つ確実に形成可能な薄膜半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成する本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、少なくとも一方の表面が絶縁性の基板の絶縁性表面に微細孔を形成する微細孔形成工程と、絶縁性表面上及び微細孔内に非晶質半導体膜を形成する半導体膜形成工程と、非晶質半導体膜上の一部に半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置する結晶化促進剤配置工程と、基板に熱処理を施し、非晶質半導体膜の微細孔内を含む領域を固相状態にて結晶化させて結晶成分含有半導体膜を得る熱処理工程と、少なくとも微細孔内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ結晶成分含有半導体膜を溶融・結晶化させることにより所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を微細孔を中心とした領域に形成する溶融結晶化工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明において半導体膜形成工程で堆積される半導体膜は非晶質半導体膜である。最初に結晶性半導体膜を堆積した場合には、イオン注入法等で半導体膜全体を非晶質としておく。本発明は非晶質膜の結晶化を制御する事で結晶粒の面方位を特定方向に定めるのである。結晶化促進剤は非晶質半導体膜上の一部に配置し、更に基板に熱処理を施して非晶質半導体膜の微細孔内を含む領域を固相状態にて結晶化させて結晶成分含有半導体膜を得る。斯うした状態にてレーザ照射を行い、結晶成分含有半導体膜の溶融結晶化を進める。溶融結晶化はレーザ光を基板表面側より照射し、少なくとも微細孔以外の領域に形成された結晶成分含有半導体膜は膜厚方向全域に渡り溶融し、微細孔内の結晶成分含有半導体膜の少なくとも一部を非溶融状態に保持する条件にて行う。又、結晶成分含有半導体膜となっていない非晶質半導体膜が存在する場合には該非晶質半導体膜も同様に膜厚方向全域に渡り溶融する。レーザ光が表面側より照射されるので、溶融後の結晶化は微細孔内から上方に向かって進む。即ち最初に微細孔内に位置する非晶質半導体膜が結晶質へと変化する。微細孔内には非溶融状態の結晶成分含有半導体膜が残されているので、その領域に位置する半導体膜の結晶化は結晶成分含有半導体膜の影響を被り特定の方位を抱く。斯うした特定方位を有す結晶成分が溶融結晶化時の基点として働き、結晶成分含有半導体膜全体の結晶化が進む。
【0010】
要するに本願発明では微細孔内に特定の結晶面方位を持った結晶成分含有半導体膜が形成され、これを基点として溶融状態の半導体膜の結晶成長が選択的に進行するのである。特定の結晶面方位を持った結晶成分含有半導体膜の上部から結晶成分含有半導体膜面内の微細孔を中心とした領域までが斯うして略単結晶状態にある半導体結晶粒へと変化する。この単結晶粒は、微細孔内に形成された特定の結晶面方位を持った結晶成分含有半導体膜を基点としているので、その結晶面方位を受け継ぐことになる。斯うして結晶面方位の制御された略単結晶半導体結晶粒が簡便且つ確実に形成される。本発明では基板上に複数の薄膜半導体装置を製造する。それ故に基板上には複数の微細孔が形成されており、此等複数の微細孔総てで上述した原理が同等に働く。複数の微細孔を中心として形成される複数の略単結晶の半導体結晶粒子は皆同じ面方位を有する事になる。薄膜半導体装置を作製する際には各薄膜半導体装置の活性領域を各微細孔を中心に形成される略単結晶の半導体結晶粒子内に作製する。結晶面方位が揃った略単結晶半導体結晶粒子は総て同じ面方位を持ち得るので、薄膜半導体装置間で結晶粒界に起因する膜質変動や結晶面方位に起因する膜質変動がなくなり、基板内に作製された総ての薄膜半導体装置が均一な特性を有する事になる。
【0011】
更に略単結晶半導体結晶粒は結晶粒内部に僅かな対応粒界が存在するだけで、転移欠陥等の半導体特性を著しく減退させる結晶欠陥が少ない。此は半導体の電気特性からすると、エネルギーバンド図における禁制帯中央部付近の捕獲準位密度(深い準位)が従来の多結晶半導体膜と比較して著しく少なく成っている事を意味する。又、略単結晶半導体結晶粒内には深い準位を形作る不規則粒界が殆ど存在せず、僅かな対応粒界だけが存在するに過ぎない。この為に従来の多結晶半導体膜と比較して伝導帯の電子や荷電子帯の正孔といったフリーキャリアが多量に発生し(即ちトランジスタの閾値電圧が低下し)、同時に此等フリーキャリアが移動する際の障壁が低減され(即ち移動度が向上し)、優良な薄膜半導体装置が製造されるに到る。尚、本願明細書中で言う略単結晶半導体結晶粒とは当該結晶粒の内部に不規則粒界を含まず、0個から6個の対応粒界のみを含む結晶粒を指す。この様に略単結晶半導体結晶粒を薄膜半導体装置の活性領域(MOSFETのチャンネル形成領域と接合領域や、バイポーラトランジスタのベース領域と接合領域)に用いて薄膜半導体装置を構成すると、深い準位が低減されて居る為にオフ電流は小さくなり、同時にスイッチング特性が急峻になり、オン電流は著しく増大する。斯くして複数の薄膜半導体装置が総て均一に高性能化され、当該薄膜半導体装置にて集積回路を組むと安定的に高速動作をする様になる。
【0012】
本願発明では基板表面に窒化硅素膜や酸化硅素膜等の高純度の絶縁膜を形成した後に、此等絶縁膜に微細孔を形成する。基板がガラス等の絶縁物質の場合には絶縁物質で有る基板に直接微細孔を形成しても良い。斯うする事で製造工程を簡略化出来、短時間で安価に薄膜半導体装置を製造し得る。更にガラス基板上に化学的気相堆積法(CVD法)等で高純度の酸化硅素膜を堆積した後に酸化硅素膜に、或いは酸化硅素膜を突き抜けてガラス基板までに、微細孔を形成しても良い。薄膜半導体装置は不純物に敏感である為、CVD法等で高純度絶縁膜を形成すると半導体膜への不純物混入を防げ、優良な薄膜半導体装置が作製される。理想的には高純度酸化硅素膜の厚みを後に形成される微細孔の深さよりも厚くする。斯うすると微細孔底部も高純度酸化硅素膜内に形成され、半導体膜への基板からの不純物混入は完全に抑制される。微細孔はフォトリソグラフィ工程とエッチング工程とを用いて直接形成することができる。
【0013】
微細孔を形成した後に非晶質半導体膜を形成する半導体膜形成工程を行う。この半導体膜形成工程に於いて形成される非晶質半導体膜は硅素を主構成元素とすることが好ましい。後述するように結晶化促進剤は取り分け硅素に対して効果的に結晶化を促進するからである。硅素を主構成元素とするとは半導体膜中に於ける硅素濃度が90%程度以上の半導体膜をさす。硅素には燐や硼素などのドナーやアクセプター元素を加えても良いし、ゲルマニウム等硅素以外に半導体特性を示す元素を最大10%程度加えても良い。硅素を主構成元素とした非晶質硅素の結晶化は、結晶化促進剤により特定方向にのみ結晶化が促進される為、溶融結晶化工程後に微細孔を中心とした領域に面方位制御された略単結晶半導体結晶粒を作製する事が可能になる。
【0014】
非晶質半導体膜を形成した後に非晶質半導体膜上の一部に半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置する。結晶化促進剤は非晶質半導体膜上において微細孔から離間した位置に配置する。結晶化促進剤としては金属含有物質が効果的に作用する。半導体膜の結晶化を促進する金属としてはニッケルやコバルト、白金、パラジウム、タングステンが知られ、金属含有物質は此等の何れか含む。例えば此等金属を含む有機溶剤などで有っても良いし、金属半導体化合物(例えば金属硅化物)としても良い。無論此等の金属薄膜でも構わない。結晶化促進剤が此等の材料を含有する事に依り、後に溶融結晶化する際の半導体膜の面方位が所定の方向に効果的に制御される。金属膜の堆積には物理的気相堆積法(PVD法)を用いると簡便に金属薄膜を堆積しうる。
【0015】
この後に基板に対して熱処理工程を行う。此の熱処理工程により非晶質半導体膜上の一部に配置された結晶化促進剤から非晶質半導体膜における微細孔内を含む領域が選択的に固相状態にて結晶化する。この際に結晶成長方向は特定の方向に定まり、それ故に後の溶融結晶化工程時に面方位制御された結晶粒の基点となり得る。熱処理工程にて部分的ないしは全面的に固相状態にて結晶化された半導体膜を本願では結晶成分含有半導体膜と称する。結晶成分含有半導体は、結晶化促進剤と非晶質半導体膜とにより非晶質半導体膜における結晶化促進剤近傍に形成されたシリサイドに依り結晶成長が促進される。
【0016】
熱処理工程を行った後に、此の結晶成分含有半導体膜にレーザ光を照射するなどして結晶成分含有半導体膜の溶融・結晶化を進める。此に依り所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を、微細孔を中心とした領域に形成する。本願発明においては上述したように結晶化促進剤の配置後に微細孔内を含む非晶質半導体膜を固相状態にて結晶化させる熱処理工程を施している。此の熱処理工程により微細孔内の非晶質半導体膜が選択的に固相状態にて結晶化する。この際に結晶成長方向は特定の方向に定まり、それ故に溶融結晶化工程時に面方位制御された結晶粒の基点となり得る。そして微細孔内が成長面方位制御された結晶状態にあるので、此を結晶種として溶融結晶化後に確実に略単結晶半導体粒子の面方位が定まる。
【0017】
金属含有物質の触媒作用にて成長が促進される結晶は特定の結晶学方位にのみ成長する。例えばニッケルを触媒金属として使用すると、ニッケルシリサイドの{111}面より単結晶シリコン膜がエピタキシャル成長する。その結果、シリコンの結晶成長方向は、<111>方向に定まる。本願ではシリコンの結晶成長において基板と平行な方向が<111>方向に定まり、これにより微細孔の深さ方向(垂直方向)の結晶方向が、(111)面と垂直ないずれかの方向、例えば<110>方向に定まる。溶融結晶化工程では、冷却固化時にこれらの結晶成分が新たな結晶成長の種となるように調整して工程を進める。斯うする事で冷却固化後に微細孔を中心に形成される単結晶粒の面方位は結晶化促進剤により定められた方向に一意的に定まる。略単結晶半導体結晶粒は結晶化促進剤に依り定められた所定の面方位で結晶成長する為、結晶化促進剤の材料を適宜選択することにより、略単結晶半導体結晶粒の表面の面方位を制御する。斯くして本願発明に則る薄膜半導体装置の製造方法に依れば、微細孔を中心とした領域に面方位制御された略単結晶半導体結晶粒を形成することが可能になる。
【0018】
溶融結晶化工程はレーザ照射によって行うことが好適である。これにより非晶質半導体膜の溶融結晶化を効率良く行うことが可能となる。用いるレーザとしてはエキシマレーザ、固体レーザ、ガスレーザなど種々のものが考えられる。
【0019】
又、以上の目的を達成する本発明に係る他の薄膜半導体装置の製造方法は、少なくとも一方の表面が絶縁性の基板の絶縁性表面に微細孔を形成する微細孔形成工程と、絶縁性表面上の一部に半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置する結晶化促進剤配置工程と、絶縁性表面上、結晶化促進剤上及び微細孔内に非晶質半導体膜を形成する半導体膜形成工程と、基板に熱処理を施し、非晶質半導体膜の微細孔内を含む領域を固相状態にて結晶化させて結晶成分含有半導体膜を得る熱処理工程と、少なくとも微細孔内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ結晶成分含有半導体膜を溶融・結晶化させることにより所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を微細孔を中心とした領域に形成する溶融結晶化工程とを含むことを特徴とする。
【0020】
このような本発明に係る他の薄膜半導体装置の製造方法は、微細孔を形成した後に絶縁膜上の一部に半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置し、更にこの上に非晶質半導体膜を形成すること以外は上記において説明した薄膜半導体装置の製造方法と同様であり、上記と同様に微細孔を中心とした領域に面方位制御された略単結晶半導体結晶粒を形成することが可能である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。尚、本発明は以下の記述に限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0022】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法について説明する。
【0023】
図1に絶縁膜上に本発明を適用して半導体薄膜が形成された状態を示す。図1においてはガラス基板1上に下地絶縁膜として酸化硅素膜2が形成され、酸化硅素膜2上に半導体薄膜である略単結晶硅素結晶粒9が形成されている。又、酸化硅素膜2の表面には、酸化硅素膜2の厚み方向に微細孔3が形成されている。微細孔3内には固相状態で結晶成長が促進された結晶部位4bが存在する。微細孔3の上方部は略単結晶硅素結晶粒9の一部により埋め込まれている。薄膜半導体装置の活性層は此の略単結晶硅素結晶粒内に形成される。基板上には複数の薄膜半導体装置が作製されるが、各薄膜半導体装置は図1と同じ構成を成す。此等の略単結晶硅素結晶粒9は結晶粒の結晶方位が所望の向きに制御されて形成されている。基板上に形成される複数の薄膜半導体装置はそれ故皆結晶方位が所望の向きに制御された略単結晶硅素結晶粒内に作られることになる。
【0024】
図2は上述した略単結晶硅素結晶粒9の製造方法を示す工程図である。又、図3乃至図5は略単結晶硅素結晶粒9の製造方法を示す断面図である。
【0025】
図2に示すように本実施の形態に係る略単結晶硅素結晶粒9の製造方法は、基板上に下地絶縁膜を堆積する下地絶縁膜堆積工程(S101)と、前記下地絶縁膜の表面に厚み方向に微細孔を形成する微細孔形成工程(S102)と、前記下地絶縁膜上及び前記微細孔内に非晶質半導体膜を形成する半導体膜形成工程(S103)と、前記非晶質半導体膜上の一部に金属含有物質からなり半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置する結晶化促進剤配置工程(S104)と、前記基板に熱処理を施し、前記非晶質半導体膜の前記微細孔内を含む領域を固相状態にて結晶化させて結晶成分含有半導体膜を得る熱処理工程(S105)と、少なくとも前記微細孔内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ前記結晶成分含有半導体膜を溶融・結晶化させることにより所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を前記非溶融状態の結晶成分含有半導体膜を起点として前記微細孔を中心とした領域に形成する溶融結晶化工程(S106)と、を含むものである。斯うした工程を実施すると微細孔3を中心とした領域に面方位制御された略単結晶硅素結晶粒9を形成し得る。以下、略単結晶硅素結晶粒9の具体的な製造方法について説明する。
【0026】
(下地絶縁膜堆積工程)
図3(a)に示すようにガラス基板1上に下地絶縁膜として酸化硅素膜2を例えば200nm程度の膜厚で形成する。これにより少なくとも一方の表面が絶縁性の基板を形成することができる。ガラス基板1上への酸化硅素膜2の形成方法としては、例えばプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)や低圧化学気相堆積法(LPCVD法)、或いはスパッタリング法等の気相堆積法などを用いることができる。尚、基板としてガラスや石英、セラミックス、その他少なくとも表面が絶縁性の基板を用いる場合には下地絶縁膜は形成しなくてもよい。無論、絶縁性基板上であっても、基板からの汚染物質が半導体層へ拡散するのを防止する目的で下地絶縁膜を形成してもよい。
【0027】
(微細孔形成工程)
次に、フォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を行うことにより、図3(b)に示すように孔径が例えば0.1μm(100nm)程度の略円筒状の微細孔3を下地絶縁膜である酸化硅素膜2の面内の所定の位置に厚み方向に形成する。即ち少なくとも一方の表面が絶縁性の基板の絶縁性表面に微細孔を形成する。酸化硅素膜のエッチングは、例えばCF4ガスとH2ガスのプラズマを用いた反応性イオンエッチングにより行う。基板としてガラスや石英、セラミックスなど少なくとも表面が絶縁性の基板を使用し、且つ下地絶縁膜を形成しない場合には、基板の絶縁性表面に直接微細孔3を形成する。
【0028】
又、前記微細孔3は略円筒状に形成することが好適であるが、上述した手法により形成できる形状であれば円筒状以外の形状、例えば、円錐状、角柱状、角錐状などとしてもよい。そして微細孔3の孔径は45nm〜190nm程度とすることが好適である。
【0029】
(半導体膜形成工程)
次に図3(c)に示すように例えばLPCVD法により絶縁性表面である酸化硅素膜2上と微細孔3内とに硅素を主構成元素とする半導体膜を例えば30nm〜250nm程度の膜厚に形成する。本実施の形態においては半導体膜として非晶質硅素膜4を形成する。LPCVD法を用いて非晶質硅素を堆積することにより微細孔3を確実に埋め込みつつ高純度の非晶質硅素膜4を酸化硅素膜2上と微細孔3内とに容易に形成することができる。尚、非晶質半導体膜の形成方法は上述したLPCVD法に限定されるものではなく、PVD法やCVD法で直接非晶質半導体膜を堆積することにより非晶質半導体膜を形成することができる。PVD法としては蒸着法やスパッタリング法などが適応され、CVD法としては上述した低圧化学気相堆積法(LPCVD法)やプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)などが適応される。
【0030】
(結晶化促進剤配置工程)
次に非晶質硅素膜4上の所定の位置に金属含有物質からなり半導体膜の結晶化を促進する性質を有する結晶化促進剤を配置する。この結晶化促進剤配置工程は、非晶質半導体膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、保護膜の一部に非晶質半導体膜が露出する開口部を形成する開口部形成工程と、開口部に結晶化促進剤を堆積する結晶化促進剤堆積工程とを備える。
【0031】
まず保護膜形成工程において、図3(d)に示すように非晶質硅素膜4上に保護膜としてレジスト5を形成する。次に開口部形成工程において、図4(a)に示すようにレジスト5の所定の位置に非晶質硅素膜4が露出するように開口部5aを形成する。ここで所定の位置は微細孔3から例えば数μm程度だけ離間した位置とする。そして結晶化促進剤堆積工程において図4(b)に示すように開口部5aの底部及びレジスト5上に、金属含有物質からなり半導体膜の結晶化を促進する性質を有する結晶化促進剤としてニッケル膜6をスパッタリング法や蒸着法等の物理気相堆積法によって堆積する。
【0032】
金属含有物質としてはニッケル以外にも例えばコバルトや白金、パラジウム及びタングステン等のうちいずれか、或いは此等合金のいずれかを含む物質を用いる。又金属含有物質としては半導体膜の結晶化を促進する物質であれば上述した金属と硅素との化合物である金属硅素化合物(金属シリサイド)などを用いても良い。
【0033】
尚、本願発明では上述した開口部形成工程の後に開口部5aの底部に露出した非晶質硅素膜4上に極博の酸化膜を形成する酸化膜形成工程を備えても良い。この場合、酸化膜の形成方法は特に限定されるものではないが、ガラス基板1ごと過酸化水素水を含有する水溶液に浸漬する方法、ガラス基板1ごと過酸化水素水を含有するアルカリ水溶液に浸漬する方法、ガラス基板1ごと過酸化水素水とアンモニア水とを含有する水溶液に浸漬する方法などが好適である。
【0034】
(熱処理工程)
次に図4(c)に示すようにニッケル膜6が形成されたガラス基板1に対してシリサイド化熱処理を施し、非晶質硅素膜4の開口部5a周辺の領域にニッケルを拡散させて結晶化促進剤拡散領域を形成する。本実施の形態では結晶化促進剤拡散領域としてニッケルシリサイド(NiSi2)4aを形成する。
【0035】
そして図4(d)に示すように硫酸洗浄又はフッ酸洗浄により開口部5a及びレジスト5上のニッケル膜6を除去する。
【0036】
更にニッケル膜6を除去した状態でガラス基板1に対して再度熱処理を施し、非晶質硅素膜4における微細孔3内を含む領域を固相状態にて結晶化させて図5(a)に示すように結晶成分含有半導体膜(ニッケルシリサイド4aに依り成長が促進された結晶部位4b)を形成する。結晶成分含有半導体はニッケルシリサイド4aに依り結晶成長が促進される。この際、結晶成分含有半導体は結晶方向が所定の方向に揃って結晶成長する。本実施の形態ではこの結晶成長により酸化硅素膜2上においては横方向(基板1と平行な方向)の結晶方向が<111>に揃った結晶成分含有半導体膜が得られる。そして微細孔3内においては微細孔3の深さ方向(基板1に垂直な方向)の結晶方向が、<111>に揃った面、即ち(111)面と垂直ないずれかの方向、例えば<110>方向に揃った結晶成分含有半導体膜が得られる。
【0037】
この熱処理は300〜650℃程度の温度にて行うことが好適である。熱処理の温度の下限を300℃程度とするのは結晶成分含有半導体膜を必要十分に形成するためである。又、熱処理の温度の上限を650℃程度とするのは以下のような理由による。材料コスト等の観点からは基板として安価なガラス基板(例えば無アルカリガラス等)を用いることが多い。この場合に、一般的に用いられるガラスの軟化点が650℃程度であるので、製造中に加えられる熱によって基板の軟化を生じないようにするために、基板1に加わる温度の上限を軟化点に対応して650℃程度より低くする必要があるからである。以上のような理由から、本実施形態では熱処理を行う際に好適な温度として300〜650℃という範囲を採用している。以上のように、結晶成分含有半導体膜を形成する熱処理工程を実施することにより、後の溶融結晶化工程において略単結晶硅素結晶粒9の面方位を確実に揃えられる。
【0038】
(溶融結晶化工程)
次にレジスト5を除去した後図5(b)に示すようにガラス基板1に対してレーザ照射8を行うことにより、図5(c)に示すように微細孔3内の結晶成分含有半導体膜(ニッケルシリサイド4aに依り成長が促進された結晶部位4b)の一部を非溶融状態に保持しつつ、その他の部分の結晶部位4b及び非晶質硅素膜4を溶融化させて溶融状態の硅素膜4cとする。非晶質硅素膜4が全て結晶成分含有半導体膜になっている場合には酸化硅素膜2上及び微細孔3内上部の結晶成分含有半導体膜を溶融化する。上述したレーザ照射8は、例えば波長308nmでパルス幅20nm〜30nsのXeClパルスエキシマレーザを用いる。そのエネルギー密度はニッケルシリサイドに依り成長が促進された結晶部位4bの膜厚に対応するように0.4〜1.5J/cm2 程度となるようにして行うことが好適である。照射されたXeClパルスエキシマレーザ光(以下、単にレーザ光と呼ぶ場合がある)は結晶成分含有半導体膜(ニッケルシリサイド4aに依り成長が促進された結晶部位4b)及び非晶質硅素膜4の表面近傍でほとんどが吸収される。これはXeClパルスエキシマレーザ光の波長(308nm)における結晶成分含有半導体膜及び非晶質硅素膜の吸収係数が大きいためである。結晶部位4b及び非晶質硅素膜4は吸収したレーザ光のエネルギーにより温められ、溶融状態の硅素膜4cとなる。この時に微細孔3内の結晶部位4bの一部は溶融しないようにレーザ照射エネルギー密度を調整する。微細孔内で溶融状態となった硅素膜4cは非溶融状態のままとされた結晶部位4bを起点として選択的に略単結晶状態で結晶成長する。結晶成長は非溶融部を種としてエピタキシャルに進行するので、略単結晶状態で成長した結晶は特定の方位を向く。本実施の形態においては上向きが<110>方向として結晶成長が進む。微細孔内で縦方向に成長する結晶粒が溶融状態の硅素膜4cの表面に達した時点で、結晶成長方向は横に変わる。即ち溶融状態の硅素膜4cの面内方向にエピタキシャル的に結晶が成長する。斯うして形成された略単結晶硅素結晶粒9の表面は結晶方向が<111>方向に揃った面となる。これにより図5(d)に示すように微細孔3を中心とした領域に大粒径の結晶粒からなる略単結晶硅素結晶粒9が形成される。以上のようにして図1に示すような表面の面方位が所定の方向に制御された略単結晶硅素結晶粒9を基板上に複数個形成することができる。
【0039】
尚、下地絶縁膜である酸化硅素膜2は、前記レーザ光に対して略透明な特性を有し、このレーザ光のエネルギーを吸収しないため、レーザ照射によって溶融することはない。又、下地絶縁膜を酸化硅素以外の材質で構成する場合には、酸化硅素膜を用いる場合と同様にレーザ光に対して透明な膜か、硅素に比較して十分に融点の高い材質を選べばよい。
【0040】
本願発明では下地絶縁膜である酸化硅素膜2に微細孔3を形成し、次いで酸化硅素膜2上に結晶化促進剤を配置し、微細孔3を含む酸化硅素膜2上に結晶成分含有半導体膜を形成した後に、結晶成分含有半導体膜7をレーザ照射8により溶融状態とする。斯うして微細孔3内に形成した結晶成分含有半導体膜を起点として結晶成長させ、溶融状態の硅素を略単結晶硅素結晶粒9に変化させる。この方法では、略単結晶硅素結晶粒9の表面の面方位を所望の方向に制御することが可能である。即ち、溶融した硅素は結晶成分含有半導体膜を起点として略単結晶成長する際、結晶化促進剤に依り定められた所定の面方位で成長するため、略単結晶硅素結晶粒9の表面の面方位を所定の面方位に揃えることができる。
【0041】
又、本願発明では従来の方法のように孔深さの深い微細孔を形成する必要がない。即ち従来の方法においては結晶化が始まった結晶粒のフィルタリングを微細孔内で行う必要があるため、微細孔の深さはある程度の深さ、例えば0.8μm程度の深さに形成する必要がある。しかしながら本願発明では結晶化促進剤により結晶方向が所定の方向に定められた結晶成分含有半導体膜が微細孔内に配置されるため半導体膜が結晶化する際に微細孔内で結晶のフィルタリングをする必要が無い。したがって本願発明では微細孔の深さを浅く設定することができるため、孔深さの深い微細孔を形成することが不要となり簡便且つ確実に略単結晶硅素結晶粒9を形成することが可能である。
【0042】
そして、本願発明では結晶成分含有半導体膜を形成するための結晶化促進剤であるニッケル膜6を非晶質硅素膜4上に配置し、熱処理を施すことにより結晶成分含有半導体膜を微細孔3内に形成する。例えばニッケル膜6を微細孔3の底部に配置して熱処理を施すことにより微細孔3内に結晶成分含有半導体膜を形成しようとする場合には、微細孔3の孔径が小さいためニッケル膜6を微細孔3内に確実に配置することができない虞がある。そして微細孔3内にニッケル膜6が配置されていない場合には、当然ながら熱処理を施しても微細孔3内に結晶成分含有半導体膜を形成することはできない。しかしながら本願発明ではニッケル膜6の配置位置を非晶質硅素膜4上とするため、簡便且つ確実に結晶化促進剤であるニッケル膜6を配置することができる。その結果、確実に微細孔3内に結晶方向が所定の方向に定められた結晶成分含有半導体膜を形成することが可能であり、簡便且つ確実に略単結晶硅素結晶粒9を形成することが可能である。
【0043】
上述した熱処理工程において形成した結晶成分含有半導体膜も結晶方向が揃えられた略単結晶粒であるがこの結晶成分含有半導体膜は固相成長により形成されたものであり固相成長により形成された結晶は結晶欠陥が非常に多く半導体装置等に用いる半導体薄膜としては特性的に実用に耐えられないものである。しかしながら、本願発明では結晶成分含有半導体膜を再度レーザ照射により溶融結晶化するため、結晶欠陥が非常に少なく電気特性の良好な、半導体装置に用いて好適な半導体薄膜を作製することができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、本発明に係る他の薄膜半導体装置の製造方法について説明する。上述した第1の実施の形態においてはニッケル膜6を半導体膜である非晶質硅素膜4を形成した後に配置したが、本実施の形態は半導体膜である非晶質硅素膜4を形成する前にニッケル膜6を形成するものである。
【0045】
図6に、絶縁膜上に本発明を適用して半導体薄膜が形成された状態を示す。尚、理解の容易のため、上記と同様の部材については同じ符号を付してある。図6においてはガラス基板1上に下地絶縁膜として酸化硅素膜2が形成され、酸化硅素膜2上に半導体薄膜である略単結晶硅素結晶粒9が形成されている。又、酸化硅素膜2の表面には、酸化硅素膜2の厚み方向に微細孔3が形成されている。又、酸化硅素膜2上の微細孔3から離間した位置には、結晶化促進剤であるニッケル膜6が配置されている。微細孔3の底部にはニッケル膜6がありその上には固相状態で結晶成長が促進された結晶部位4bが存在する。微細孔3の上方部は略単結晶硅素結晶粒9の一部により埋め込まれている。薄膜半導体装置の活性層は此の略単結晶硅素結晶粒内に形成される。基板上には複数の薄膜半導体装置が作製されるが、各薄膜半導体装置は図6と同じ構成を成す。此等の略単結晶硅素結晶粒9は結晶粒の結晶方位が所望の向きに制御されて形成されている。基板上に形成される複数の薄膜半導体装置はそれ故皆結晶方位が所望の向きに制御された略単結晶硅素結晶粒内に作られることになる。
【0046】
図7は、上述した略単結晶硅素結晶粒9の製造方法を示す工程図である。又、図8乃至図10は、略単結晶硅素結晶粒9の製造方法を示す断面図である。
【0047】
図7に示すように、本実施の形態に係る略単結晶硅素結晶粒9の製造方法は、基板上に下地絶縁膜を堆積する下地絶縁膜堆積工程(S201)と、前記下地絶縁膜の表面に厚み方向に微細孔を形成する微細孔形成工程(S202)と、前記下地絶縁膜上の一部に金属含有物質からなり半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置する結晶化促進剤配置工程(S203)と、前記下地絶縁膜上、前記結晶化促進剤上及び前記微細孔内に非晶質半導体膜を形成する半導体膜形成工程(S204)と、前記基板に熱処理を施し、前記非晶質半導体膜の前記微細孔内を含む領域を固相状態にて結晶化させて結晶成分含有半導体膜を得る熱処理工程(S205)と、少なくとも前記微細孔内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ前記結晶成分含有半導体膜を溶融・結晶化させることにより所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を前記非溶融状態の結晶成分含有半導体膜を起点として前記微細孔を中心とした領域に形成する溶融結晶化工程(S206)と、を含むものである。斯うした工程を実施すると微細孔3を中心とした領域に面方位制御された略単結晶硅素結晶粒9を形成し得る。以下、略単結晶硅素結晶粒9の具体的な製造方法について説明する。
【0048】
(下地絶縁膜堆積工程)
図8(a)に示すようにガラス基板1上に下地絶縁膜として酸化硅素膜2を例えば200nm程度の膜厚で形成する。これにより少なくとも一方の表面が絶縁性の基板を形成することができる。ガラス基板1上への酸化硅素膜2の形成方法としては、例えばプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)や低圧化学気相堆積法(LPCVD法)、或いはスパッタリング法等の気相堆積法などを用いることができる。尚、基板としてガラスや石英、セラミックス、その他少なくとも表面が絶縁性の基板を用いる場合には下地絶縁膜は形成しなくてもよい。無論、絶縁性基板上であっても、基板からの汚染物質が半導体層へ拡散するのを防止する目的で下地絶縁膜を形成してもよい。
【0049】
(微細孔形成工程)
次にフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を行うことにより、図8(b)に示すように、孔径が例えば0.1μm(100nm)程度の略円筒状の微細孔3を下地絶縁膜である酸化硅素膜2の面内の所定の位置に厚み方向に形成する。酸化硅素膜のエッチングは、例えばCF4ガスとH2ガスのプラズマを用いた反応性イオンエッチングにより行う。基板としてガラスや石英、セラミックスなど少なくとも表面が絶縁性の基板を使用し、且つ下地絶縁膜を形成しない場合には、基板の絶縁性表面に直接微細孔3を形成する。
【0050】
又、前記微細孔3は略円筒状に形成することが好適であるが、上述した手法により形成できる形状であれば円筒状以外の形状、例えば、円錐状、角柱状、角錐状などとしてもよい。そして、微細孔3の孔径は、45nm〜190nm程度とすることが好適である。
【0051】
(結晶化促進剤配置工程)
次に酸化硅素膜2上の所定の位置に金属含有物質からなり半導体膜の結晶化を促進する性質を有する結晶化促進剤を配置する。この結晶化促進剤配置工程は、下地絶縁膜上に結晶化促進剤を堆積する結晶化促進剤堆積工程と、下地絶縁膜上に堆積した結晶化促進剤上のうち最終的に結晶化促進剤を配置する位置に保護膜を形成する保護膜形成工程と、保護膜をマスクとして不要な結晶化促進剤を除去して結晶化促進剤を所定の位置のみに配置する除去工程とを備える。
【0052】
まず結晶化促進剤堆積工程において図8(c)に示すように酸化硅素膜2上に結晶化促進剤としてニッケル膜6をスパッタリング法や蒸着法等の物理気相堆積法によって堆積する。
【0053】
次に保護膜形成工程で図8(d)に示すように酸化硅素膜2上に堆積したニッケル膜6上において最終的に結晶化促進剤を配置する所定の位置に保護膜としてレジスト5を形成する。ここでレジスト5を形成する所定の位置は微細孔3から例えば数μm程度だけ離間した位置とする。
【0054】
更に除去工程において図9(a)に示すようにレジスト5をマスクとして不要なニッケル膜6を除去し、この後レジスト5を除去する。これにより図9(b)に示すように酸化硅素膜2上において所定の位置に結晶化促進剤となるニッケル膜6を配置することができる。この除去工程において酸化硅素膜2上に残されたニッケル膜6のみが結晶化促進剤として機能する。
【0055】
金属含有物質としてはニッケル以外にも例えばコバルトや白金、パラジウム及びタングステン等のうちいずれか、或いは此等合金のいずれかを含む物質を用いる。又金属含有物質としては、半導体膜の結晶化を促進する物質であれば上述した金属と硅素との化合物である金属硅素化合物(金属シリサイド)などを用いても良い。
【0056】
(半導体膜形成工程)
次に図9(c)に示すように例えばLPCVD法により酸化硅素膜2上とニッケル膜6上と微細孔3内とに硅素を主構成元素とする半導体膜を例えば30nm〜250nm程度の膜厚に形成する。本実施の形態においては半導体膜として非晶質硅素膜4を形成する。LPCVD法を用いて非晶質硅素を堆積することにより微細孔3を確実に埋め込みつつ高純度の非晶質硅素膜4を酸化硅素膜2上とニッケル膜6上と微細孔3内とに容易に形成することができる。尚、非晶質半導体膜の形成方法は上述したLPCVD法に限定されるものではなく、PVD法やCVD法で直接非晶質半導体膜を堆積することにより非晶質半導体膜を形成することができる。PVD法としては蒸着法やスパッタリング法などが適応され、CVD法としては上述した低圧化学気相堆積法(LPCVD法)やプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)などが適応される。
【0057】
(熱処理工程)
次に図9(d)に示すようにニッケル膜6及び非晶質硅素膜4が形成されたガラス基板1に対してシリサイド化熱処理を施し、酸化硅素膜2上のニッケル膜6の周辺の領域にニッケルを拡散させて結晶化促進剤拡散領域を形成する。本実施の形態では結晶化促進剤拡散領域としてニッケルシリサイド(NiSi2)4aを形成する。
【0058】
更に結晶化促進剤拡散領域を形成した状態でガラス基板1に対して再度熱処理を施し、非晶質硅素膜4における微細孔3内を含む領域を固相状態にて結晶化させて図10(a)に示すように結晶成分含有半導体膜(ニッケルシリサイド4aに依り成長が促進された結晶部位4b)を形成する。結晶成分含有半導体はニッケルシリサイド4aに依り結晶成長が促進される。この際、結晶成分含有半導体は結晶方向が所定の方向に揃って結晶成長する。本実施の形態ではこの結晶成長により酸化硅素膜2上においては横方向(基板1と平行な方向)の結晶方向が<111>に揃った結晶成分含有半導体膜が得られる。そして微細孔3内においては微細孔3の深さ方向(基板1に垂直な方向)の結晶方向が、<111>に揃った面、即ち(111)面と垂直ないずれかの方向、例えば<110>方向に揃った結晶成分含有半導体膜が得られる。
【0059】
この熱処理は300〜650℃程度の温度にて行うことが好適である。熱処理の温度の下限を300℃程度とするのは結晶成分含有半導体膜を必要十分に形成するためである。又、熱処理の温度の上限を650℃程度とするのは以下のような理由による。材料コスト等の観点からは基板として安価なガラス基板(例えば無アルカリガラス等)を用いることが多い。この場合に、一般的に用いられるガラスの軟化点が650℃程度であるので、製造中に加えられる熱によって基板の軟化を生じないようにするために、基板1に加わる温度の上限を軟化点に対応して650℃程度より低くする必要があるからである。以上のような理由から、本実施形態では熱処理を行う際に好適な温度として300〜650℃という範囲を採用している。以上のように、結晶成分含有半導体膜を形成する熱処理工程を実施することにより、後の溶融結晶化工程において略単結晶硅素結晶粒9の面方位を確実に揃えられる。
【0060】
(溶融結晶化工程)
次に図10(b)に示すようにガラス基板1に対してレーザ照射8を行うことにより、図10(c)に示すように微細孔3内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ、その他の部分の結晶部位4b及び非晶質硅素膜4を溶融化させて溶融状態の硅素膜4cとする。上述したレーザ照射8は、例えば波長308nmでパルス幅20nm〜30nsのXeClパルスエキシマレーザを用いる。そのエネルギー密度はニッケルシリサイドに依り成長が促進された結晶部位4bの膜厚に対応するように0.4〜1.5J/cm2 程度となるようにして行うことが好適である。照射されたXeClパルスエキシマレーザ光(以下、単にレーザ光と呼ぶ場合がある)は結晶成分含有半導体膜(ニッケルシリサイド4aに依り成長が促進された結晶部位4b)及び非晶質硅素膜4の表面近傍でほとんどが吸収される。これはXeClパルスエキシマレーザ光の波長(308nm)における結晶成分含有半導体膜及び非晶質硅素膜の吸収係数が大きいためである。結晶部位4b及び非晶質硅素膜4は吸収したレーザ光のエネルギーにより温められ、溶融状態の硅素膜4cとなる。この時に微細孔3内の結晶部位4bの一部は溶融しないようにレーザ照射エネルギー密度を調整する。微細孔内で溶融状態となった硅素膜4cは非溶融状態のままとされた結晶部位4bを起点として選択的に略単結晶状態で結晶成長する。結晶成長は非溶融部を種としてエピタキシャルに進行するので、略単結晶状態で成長した結晶は特定の方位を向く。本実施の形態においては上向きが<110>方向として結晶成長が進む。微細孔内で縦方向に成長する結晶粒が溶融状態の硅素膜4cの表面に達した時点で、結晶成長方向は横に変わる。即ち溶融状態の硅素膜4cの面内方向にエピタキシャル的に結晶が成長する。斯うして形成された略単結晶硅素結晶粒9の表面は結晶方向が<111>方向に揃った面となる。これにより図10(d)に示すように微細孔3を中心とした領域に大粒径の結晶粒からなる略単結晶硅素結晶粒9が形成される。以上のようにして図6に示すような表面の面方位が所定の方向に制御された略単結晶硅素結晶粒9を基板上に複数個形成することができる。
【0061】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では上記のようにして作製した略単結晶硅素結晶粒9を用いて薄膜半導体装置を製造する方法を説明する。
【0062】
図11(a)は略単結晶硅素結晶粒9を用いて作製した薄膜トランジスタの構成を示す平面図であり、図11(b)は図11(a)においてA‐A′線で切断した縦断面図である。この薄膜トランジスタにおいては、図11(b)に示すようにガラス基板1上に下地絶縁膜である酸化硅素膜2が形成され、酸化硅素膜2上に半導体薄膜である略単結晶硅素結晶粒9が形成されている。又、酸化硅素膜2の表面には該酸化硅素膜2の厚み方向に微細孔3が設けられている。
【0063】
又、図11(b)に示すようにパターニングされた略単結晶硅素結晶粒9の一部がソース/ドレイン領域12、13とされ、ソース/ドレイン領域12、13に挟まれた部分がチャネル形成領域14とされている。チャネル形成領域14の上部には酸化硅素膜10を介してゲート電極11が形成され、更に酸化硅素膜15が形成されている。一方、ソース/ドレイン領域12、13の上部には、酸化硅素膜10及び酸化硅素膜15を介してソース/ドレイン電極16、17が形成されている。尚、ソース/ドレイン電極16、17は、コンタクトホールCを介してソース/ドレイン領域12、13と接続されている。
【0064】
この薄膜トランジスタにおいては、略単結晶硅素結晶粒9を半導体装置活性領域として用いている。このために多結晶半導体膜を用いた薄膜半導体装置と比較して、本願発明の半導体装置は結晶粒界や表面に起因した捕獲準位密度が少なくなり、半導体膜中のフリーキャリアが容易に増大する。即ちトランジスタの閾値電圧が小さくなり、スイッチング特性が優れるようになる。加えて結晶粒界での結晶の周期性の乱れに起因したキャリアの散乱を受けなくなるので、キャリアの移動度が向上し、オン電流が増大する。此の様に本願発明に則ると、電気的特性に優れ、低電圧で高速動作可能な薄膜半導体装置を実現することができる。更に斯うして作製された薄膜トランジスタは、総てのトランジスタで半導体膜の表面面方位が同一の面方位に揃えられている。斯くして基板上に作製された複数の薄膜半導体装置間で、半導体薄膜面方位の不一致に起因する特性の不均一性が排斥され、総てのトランジスタで同等な特性を示す事が可能になる。
【0065】
図12は上述した薄膜トランジスタの製造方法を示す工程図である。まず図12(a)に示すように下地絶縁膜である酸化硅素膜2上に略単結晶硅素結晶粒9を形成する。次にフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を行うことにより、略単結晶硅素結晶粒9をパターニングし、図12(b)に示すように薄膜トランジスタ用の半導体薄膜を形成する。
【0066】
次に図12(c)に示すように、電子サイクロトロン共鳴PECVD法(ECR‐CVD法)や平行平板PECVD法、又はLPCVD法などの方法により略単結晶硅素結晶粒9上に酸化硅素膜10を形成する。尚、この酸化硅素膜10は薄膜トランジスタのゲート絶縁膜として機能する。
【0067】
次にタンタル又はアルミニウムなどの金属薄膜をスパッタリング法により形成した後、パターニングすることにより、図12(d)に示すようにゲート電極11を形成する。そしてこのゲート電極11をマスクとして用いて、ドナー又はアクセプターとなる不純物イオンのイオン注入IIを行うことにより、ソース/ドレイン領域12、13とチャネル形成領域14とをゲート電極11に対して自己整合的に形成する。nMOSトランジスタを作製する場合には不純物イオンとしてリン(P)を例えば2×1015cm−2の濃度でソース/ドレイン領域に打ち込む。
【0068】
その後、ソース/ドレイン領域12、13に打ち込まれた不純物元素の活性化を行う。不純物元素の活性化は例えば照射エネルギー密度200mJ/cm2〜400mJ/cm2程度でのXeClエキシマレーザの照射や、250℃から450℃程度の温度の熱処理により行うことができる。
【0069】
次に図12(e)に示すように、PECVD法などにより例えば膜厚が略500nmの酸化硅素膜15を、酸化硅素膜10及びゲート電極11上に形成する。そしてソース/ドレイン領域12、13に至るコンタクトホールCを酸化硅素膜10と15とに開口し、スパッタリング法などによりコンタクトホールC内及び酸化硅素膜15上のコンタクトホールCの周縁部に例えばアルミニウムを堆積し、パターニングすることによりソース/ドレイン電極16、17を形成する。このようにして薄膜トランジスタが完成する。
【0070】
上述した薄膜トランジスタの製造方法においては、略単結晶硅素結晶粒9を能動層として用いて薄膜トランジスタを作製するため、オフ電流や移動度、しきい値電圧に優れ、低電圧で高速動作可能な薄膜トランジスタを容易に且つ確実に作製することができる。
【0071】
複数の薄膜トランジスタを作製する場合にも各薄膜トランジスタ用に形成した複数の微細孔3の近傍に同一材料からなる結晶化促進剤を配置し、結晶成分含有半導体膜を形成し、前記と同様にして略単結晶硅素結晶粒9を形成する。これにより、表面の面方位が所定の方向に統一された、面方位に起因した膜質のばらつきがなく、均一な特性を有する略単結晶硅素結晶粒9を複数作製することができる。この表面の面方位が所定の方向に統一された略単結晶硅素結晶粒9を用いて薄膜トランジスタを製造することにより、薄膜トランジスタ毎の特性のばらつきのない、均一な特性を有する薄膜トランジスタを複数作製することができる。
【0072】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置を備えて構成される集積回路及び電気光学装置について説明する。ここで、「集積回路」とは、一定の機能を奏するように半導体装置及び関連する配線等が集積配置された回路(チップ)をいう。
【0073】
又、「電気光学装置」とは、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置と、電気的作用によって発光する素子又は外部からの光の状態を変化させる電気光学素子を備えた装置一般をいい、自ら光を発するものと外部からの光の通過を制御するものとの両者を含むものである。このような電気光学装置としては、例えば電気光学素子として液晶素子、電気泳動素子が分散した分散媒を有する電気泳動素子、エレクトロルミネッセンス(EL)素子、電界の印加により発生した電子を発光板に当てて発光させる電子放出素子などを備えたアクティブマトリクス型の表示装置等が挙げられる。
【0074】
図13は、電気光学装置の具体例である電気光学表示装置20の集積回路構成を示したものであり、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置を備えて構成されるものである。図13に示す電気光学表示装置20においては、各画素領域に電界発光効果により発光可能な発光層OELDと、それを駆動するために電荷を溜める保持容量Cを備え、更にスイッチング素子として上述した第1の実施の形態において作製された薄膜半導体装置である薄膜トランジスタT1〜T4を備えて構成されている。
【0075】
ここで、薄膜トランジスタT1〜T4においては、表面の面方位が全て同一の方向に揃えられた略単結晶硅素結晶粒9が用いられている。したがって、電気光学表示装置20を構成する薄膜トランジスタは、各薄膜トランジスタによって特性のばらつきがない、均一な特性を備え、且つ良好なキャリア移動度を備えた薄膜トランジスタとされている。
【0076】
ドライバ領域21からは、走査線Vsel及び発光制御線Vgpが各画素領域Gに供給されている。又、ドライバ領域22からは、データ線Idata及び電源線Vddが各画素領域Gに供給されている。そして、走査線Vselとデータ線Idataとを制御することにより、各画素領域Gに対する電流プログラムが行われ、発光部OELDによる発光が制御可能となっている。
【0077】
以上のような電気光学表示装置20は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置、即ち薄膜トランジスタを備えている。そして、この薄膜トランジスタは、オフ電流値が小さく、又キャリア移動度が大きく、且つ特性のばらつきのない、均一な特性を有するなどの優れた特性を持ち合わせているため、これにより構成された半導体集積回路は低電圧で高速動作に対応可能であり、且つ、低消費電力であり、又、これにより構成された電気光学表示装置は高性能、高機能、高品質、低消費電力な特性が実現されている。
【0078】
又、これらの薄膜半導体装置を構成する略単結晶硅素結晶粒の表面の面方位は全て同一の方向に揃えられているため、各薄膜半導体装置によって特性のばらつきがない、均一な特性を備え、且つ良好なキャリア移動度を備えた薄膜半導体装置が実現されている。したがって、電気光学表示装置20においては、安定して高速動作し、薄膜半導体装置の不均一に起因する表示斑などのない高性能、高品質な電気光学装置が実現されている。
【0079】
尚、前記において説明した駆動回路は、発光要素に電流発光素子を使用する場合の回路の一例であり、他の回路構成とすることも可能である。又、発光要素には電流発光素子以外にも液晶表示素子を用いることも可能であり、この場合は液晶表示素子に対応して回路構成を変更すればよい。
【0080】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態では、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法を電子機器に適用する場合について説明する。ここで、「電子機器」とは、本発明に係る半導体装置を備え、一定の機能を奏する電子機器一般をいい、例えば前記の電気光学装置を備えて構成されるものである。
【0081】
図14(a)〜図14(f)は、電子機器の具体例を示したものであり、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置を備えて構成されるものである。
【0082】
図14(a)は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置が搭載された携帯電話30であり、該携帯電話30は、電気光学装置(表示パネル)31、音声出力部32、音声入力部33、操作部34、及びアンテナ部35などを備えて構成されている。携帯電話30においては、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、例えば表示パネルや、内蔵される集積回路に設けられる薄膜半導体装置の製造に適用される。
【0083】
図14(b)は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置が搭載されたビデオカメラ40であり、該ビデオカメラ40は、電気光学装置(表示パネル)41、操作部42、音声入力部43、及び受像部44などを備えて構成されている。ビデオカメラ40においては、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、例えば表示パネルや、内蔵される集積回路に設けられる薄膜半導体装置の製造に適用される。
【0084】
図14(c)は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置が搭載された携帯型パーソナルコンピュータ50であり、該携帯型パーソナルコンピュータ50は、電気光学装置(表示パネル)51、操作部52、及びカメラ部53などを備えて構成されている。携帯型パーソナルコンピュータ50においては、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、例えば表示パネルや、内蔵される集積回路に設けられる薄膜半導体装置の製造に適用される。
【0085】
図14(d)は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置が搭載されたヘッドマウントディスプレイ60であり、該ヘッドマウントディスプレイ60は、電気光学装置(表示パネル)61、光学系収納部62、及びバンド部63などを備えて構成されている。ヘッドマウントディスプレイ60においては、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、例えば表示パネルや、内蔵される集積回路に設けられる薄膜半導体装置の製造に適用される。
【0086】
図14(e)は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置が搭載されたリア型プロジェクター70であり、該リア型プロジェクター70は、電気光学装置(光変調器)71、光源72、光学系73、ミラー74、ミラー75、及びスクリーン77などを筐体内76に備えて構成されている。リア型プロジェクター70においては、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、例えば光変調器や、内蔵される集積回路に設けられる薄膜半導体装置の製造に適用される。
【0087】
図14(f)は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置が搭載されたフロント型プロジェクター80であり、該フロント型プロジェクター80は、電気光学装置(画像表示源)81及び光学系82などを筐体内83に備えて構成されており、画像をスクリーン84に表示可能とされている。フロント型プロジェクター80においては、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、例えば画像表示源や、内蔵される集積回路に設けられる薄膜半導体装置の製造に適用される。
【0088】
以上のような電子機器は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置を備えている。そして、この薄膜半導体装置は、オフ電流値が小さく、又キャリア移動度が大きく、且つ特性のばらつきのない、均一な特性を有するなどの優れた特性を持ち合わせているため、これにより構成された半導体集積回路は高速動作に対応可能であり、且つ、低消費電力であり、又、これにより構成された電子機器は高性能、高機能、高品質、低消費電力な特性が実現されている。
【0089】
尚、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、前記の電子機器に限らず、あらゆる電子機器の製造に適用可能である。例えば、前記の他にも、腕時計、ICカード、表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、電光掲示板、宣伝広告用ディスプレイなどの製造にも適用可能であり、高品質な電子機器が実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用して作製した半導体薄膜を示す図である。
【図2】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図3】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図4】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図5】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図6】本発明を適用して作製した半導体薄膜を示す図である。
【図7】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図8】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図9】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図10】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図11】本発明を適用して作製した薄膜トランジスタを示す図である。
【図12】薄膜トランジスタの製造方法を説明する図である。
【図13】電気光学装置の例を示す構成図である。
【図14】電気機器の例を示す図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板、2 酸化硅素膜、3 微細孔、4 非晶質硅素膜、4a ニッケルシリサイド、4b ニッケルシリサイドに依り成長が促進された結晶部位、4c 溶融状態の硅素膜、5 レジスト、5a 開口部、6 ニッケル膜、8 レーザ照射、9 略単結晶硅素結晶粒
【発明の属する技術分野】
本発明は薄膜半導体装置の製造方法に関する。特に半導体膜を溶融結晶化させることにより略単結晶半導体結晶粒を製造する製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置やEL(エレクトロルミネセンス)表示装置などの電気光学装置においては、薄膜トランジスタ等の半導体装置を含んで構成される薄膜回路を用いて画素のスイッチングなどを行っている。従来の薄膜トランジスタは非晶質硅素膜を用いて、活性領域(チャネル形成領域)を形成している。又、多結晶硅素膜を用いて活性領域を形成した薄膜トランジスタも実用化されている。多結晶硅素膜を用いることにより、非晶質硅素膜を用いた場合に比較して移動度などの電気的特性が向上し、薄膜トランジスタの性能を向上させることができる。
【0003】
又、薄膜トランジスタの性能を更に向上させるために大きな結晶粒からなる半導体膜を形成し、薄膜トランジスタの形成領域内に結晶粒界が入り込まないようにする技術が検討されている。例えば、基板上に微細な穴(微細孔)を形成し、この微細孔を結晶成長の起点として半導体膜の結晶化を行うことにより、数μm程度の硅素の結晶粒を形成する技術がいくつかの文献において提案されていた(非特許文献1及び非特許文献2)。これらの技術を用いて形成される大きな結晶粒を含む略単結晶硅素膜を用いて薄膜トランジスタを形成することにより、移動度等の電気的特性に優れた薄膜トランジスタを実現することが可能になる。
【0004】
【非特許文献1】
「Single Crystal Thin Film Transistors」(IBM TECHNICAL DISCLOSURE BULLETIN Aug.1993 pp257−258)
【非特許文献2】
「Advanced Excimer−Laser Crystallization Techniques of Si Thin−Film For Location Control of Large Grain on Glass」(R. Ishihara等proc. SPIE 2001, vol.4295, p14〜23.)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら前記両文献に記載された従来の方法では結晶粒の面方位の制御ができないため、このような方法で作製した略単結晶硅素膜においては特性にばらつきが生じる。したがって、この略単結晶硅素膜を用いて薄膜トランジスタ等の半導体装置を作製した場合には、完成した半導体装置の特性にばらつきが生じてしまい、均一な特性を備えた半導体装置を得ることが困難であるという問題がある。
【0006】
そこで薄膜トランジスタ等の半導体装置の電気的特性のさらなる向上を図るために、結晶粒の面方位を制御して半導体膜を形成することが可能な製造方法の確立が望まれている。
【0007】
本発明は上述した従来の実情に鑑みて創案されたものであり、面方位が制御された半導体薄膜を簡便且つ確実に形成可能な薄膜半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成する本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、少なくとも一方の表面が絶縁性の基板の絶縁性表面に微細孔を形成する微細孔形成工程と、絶縁性表面上及び微細孔内に非晶質半導体膜を形成する半導体膜形成工程と、非晶質半導体膜上の一部に半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置する結晶化促進剤配置工程と、基板に熱処理を施し、非晶質半導体膜の微細孔内を含む領域を固相状態にて結晶化させて結晶成分含有半導体膜を得る熱処理工程と、少なくとも微細孔内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ結晶成分含有半導体膜を溶融・結晶化させることにより所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を微細孔を中心とした領域に形成する溶融結晶化工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明において半導体膜形成工程で堆積される半導体膜は非晶質半導体膜である。最初に結晶性半導体膜を堆積した場合には、イオン注入法等で半導体膜全体を非晶質としておく。本発明は非晶質膜の結晶化を制御する事で結晶粒の面方位を特定方向に定めるのである。結晶化促進剤は非晶質半導体膜上の一部に配置し、更に基板に熱処理を施して非晶質半導体膜の微細孔内を含む領域を固相状態にて結晶化させて結晶成分含有半導体膜を得る。斯うした状態にてレーザ照射を行い、結晶成分含有半導体膜の溶融結晶化を進める。溶融結晶化はレーザ光を基板表面側より照射し、少なくとも微細孔以外の領域に形成された結晶成分含有半導体膜は膜厚方向全域に渡り溶融し、微細孔内の結晶成分含有半導体膜の少なくとも一部を非溶融状態に保持する条件にて行う。又、結晶成分含有半導体膜となっていない非晶質半導体膜が存在する場合には該非晶質半導体膜も同様に膜厚方向全域に渡り溶融する。レーザ光が表面側より照射されるので、溶融後の結晶化は微細孔内から上方に向かって進む。即ち最初に微細孔内に位置する非晶質半導体膜が結晶質へと変化する。微細孔内には非溶融状態の結晶成分含有半導体膜が残されているので、その領域に位置する半導体膜の結晶化は結晶成分含有半導体膜の影響を被り特定の方位を抱く。斯うした特定方位を有す結晶成分が溶融結晶化時の基点として働き、結晶成分含有半導体膜全体の結晶化が進む。
【0010】
要するに本願発明では微細孔内に特定の結晶面方位を持った結晶成分含有半導体膜が形成され、これを基点として溶融状態の半導体膜の結晶成長が選択的に進行するのである。特定の結晶面方位を持った結晶成分含有半導体膜の上部から結晶成分含有半導体膜面内の微細孔を中心とした領域までが斯うして略単結晶状態にある半導体結晶粒へと変化する。この単結晶粒は、微細孔内に形成された特定の結晶面方位を持った結晶成分含有半導体膜を基点としているので、その結晶面方位を受け継ぐことになる。斯うして結晶面方位の制御された略単結晶半導体結晶粒が簡便且つ確実に形成される。本発明では基板上に複数の薄膜半導体装置を製造する。それ故に基板上には複数の微細孔が形成されており、此等複数の微細孔総てで上述した原理が同等に働く。複数の微細孔を中心として形成される複数の略単結晶の半導体結晶粒子は皆同じ面方位を有する事になる。薄膜半導体装置を作製する際には各薄膜半導体装置の活性領域を各微細孔を中心に形成される略単結晶の半導体結晶粒子内に作製する。結晶面方位が揃った略単結晶半導体結晶粒子は総て同じ面方位を持ち得るので、薄膜半導体装置間で結晶粒界に起因する膜質変動や結晶面方位に起因する膜質変動がなくなり、基板内に作製された総ての薄膜半導体装置が均一な特性を有する事になる。
【0011】
更に略単結晶半導体結晶粒は結晶粒内部に僅かな対応粒界が存在するだけで、転移欠陥等の半導体特性を著しく減退させる結晶欠陥が少ない。此は半導体の電気特性からすると、エネルギーバンド図における禁制帯中央部付近の捕獲準位密度(深い準位)が従来の多結晶半導体膜と比較して著しく少なく成っている事を意味する。又、略単結晶半導体結晶粒内には深い準位を形作る不規則粒界が殆ど存在せず、僅かな対応粒界だけが存在するに過ぎない。この為に従来の多結晶半導体膜と比較して伝導帯の電子や荷電子帯の正孔といったフリーキャリアが多量に発生し(即ちトランジスタの閾値電圧が低下し)、同時に此等フリーキャリアが移動する際の障壁が低減され(即ち移動度が向上し)、優良な薄膜半導体装置が製造されるに到る。尚、本願明細書中で言う略単結晶半導体結晶粒とは当該結晶粒の内部に不規則粒界を含まず、0個から6個の対応粒界のみを含む結晶粒を指す。この様に略単結晶半導体結晶粒を薄膜半導体装置の活性領域(MOSFETのチャンネル形成領域と接合領域や、バイポーラトランジスタのベース領域と接合領域)に用いて薄膜半導体装置を構成すると、深い準位が低減されて居る為にオフ電流は小さくなり、同時にスイッチング特性が急峻になり、オン電流は著しく増大する。斯くして複数の薄膜半導体装置が総て均一に高性能化され、当該薄膜半導体装置にて集積回路を組むと安定的に高速動作をする様になる。
【0012】
本願発明では基板表面に窒化硅素膜や酸化硅素膜等の高純度の絶縁膜を形成した後に、此等絶縁膜に微細孔を形成する。基板がガラス等の絶縁物質の場合には絶縁物質で有る基板に直接微細孔を形成しても良い。斯うする事で製造工程を簡略化出来、短時間で安価に薄膜半導体装置を製造し得る。更にガラス基板上に化学的気相堆積法(CVD法)等で高純度の酸化硅素膜を堆積した後に酸化硅素膜に、或いは酸化硅素膜を突き抜けてガラス基板までに、微細孔を形成しても良い。薄膜半導体装置は不純物に敏感である為、CVD法等で高純度絶縁膜を形成すると半導体膜への不純物混入を防げ、優良な薄膜半導体装置が作製される。理想的には高純度酸化硅素膜の厚みを後に形成される微細孔の深さよりも厚くする。斯うすると微細孔底部も高純度酸化硅素膜内に形成され、半導体膜への基板からの不純物混入は完全に抑制される。微細孔はフォトリソグラフィ工程とエッチング工程とを用いて直接形成することができる。
【0013】
微細孔を形成した後に非晶質半導体膜を形成する半導体膜形成工程を行う。この半導体膜形成工程に於いて形成される非晶質半導体膜は硅素を主構成元素とすることが好ましい。後述するように結晶化促進剤は取り分け硅素に対して効果的に結晶化を促進するからである。硅素を主構成元素とするとは半導体膜中に於ける硅素濃度が90%程度以上の半導体膜をさす。硅素には燐や硼素などのドナーやアクセプター元素を加えても良いし、ゲルマニウム等硅素以外に半導体特性を示す元素を最大10%程度加えても良い。硅素を主構成元素とした非晶質硅素の結晶化は、結晶化促進剤により特定方向にのみ結晶化が促進される為、溶融結晶化工程後に微細孔を中心とした領域に面方位制御された略単結晶半導体結晶粒を作製する事が可能になる。
【0014】
非晶質半導体膜を形成した後に非晶質半導体膜上の一部に半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置する。結晶化促進剤は非晶質半導体膜上において微細孔から離間した位置に配置する。結晶化促進剤としては金属含有物質が効果的に作用する。半導体膜の結晶化を促進する金属としてはニッケルやコバルト、白金、パラジウム、タングステンが知られ、金属含有物質は此等の何れか含む。例えば此等金属を含む有機溶剤などで有っても良いし、金属半導体化合物(例えば金属硅化物)としても良い。無論此等の金属薄膜でも構わない。結晶化促進剤が此等の材料を含有する事に依り、後に溶融結晶化する際の半導体膜の面方位が所定の方向に効果的に制御される。金属膜の堆積には物理的気相堆積法(PVD法)を用いると簡便に金属薄膜を堆積しうる。
【0015】
この後に基板に対して熱処理工程を行う。此の熱処理工程により非晶質半導体膜上の一部に配置された結晶化促進剤から非晶質半導体膜における微細孔内を含む領域が選択的に固相状態にて結晶化する。この際に結晶成長方向は特定の方向に定まり、それ故に後の溶融結晶化工程時に面方位制御された結晶粒の基点となり得る。熱処理工程にて部分的ないしは全面的に固相状態にて結晶化された半導体膜を本願では結晶成分含有半導体膜と称する。結晶成分含有半導体は、結晶化促進剤と非晶質半導体膜とにより非晶質半導体膜における結晶化促進剤近傍に形成されたシリサイドに依り結晶成長が促進される。
【0016】
熱処理工程を行った後に、此の結晶成分含有半導体膜にレーザ光を照射するなどして結晶成分含有半導体膜の溶融・結晶化を進める。此に依り所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を、微細孔を中心とした領域に形成する。本願発明においては上述したように結晶化促進剤の配置後に微細孔内を含む非晶質半導体膜を固相状態にて結晶化させる熱処理工程を施している。此の熱処理工程により微細孔内の非晶質半導体膜が選択的に固相状態にて結晶化する。この際に結晶成長方向は特定の方向に定まり、それ故に溶融結晶化工程時に面方位制御された結晶粒の基点となり得る。そして微細孔内が成長面方位制御された結晶状態にあるので、此を結晶種として溶融結晶化後に確実に略単結晶半導体粒子の面方位が定まる。
【0017】
金属含有物質の触媒作用にて成長が促進される結晶は特定の結晶学方位にのみ成長する。例えばニッケルを触媒金属として使用すると、ニッケルシリサイドの{111}面より単結晶シリコン膜がエピタキシャル成長する。その結果、シリコンの結晶成長方向は、<111>方向に定まる。本願ではシリコンの結晶成長において基板と平行な方向が<111>方向に定まり、これにより微細孔の深さ方向(垂直方向)の結晶方向が、(111)面と垂直ないずれかの方向、例えば<110>方向に定まる。溶融結晶化工程では、冷却固化時にこれらの結晶成分が新たな結晶成長の種となるように調整して工程を進める。斯うする事で冷却固化後に微細孔を中心に形成される単結晶粒の面方位は結晶化促進剤により定められた方向に一意的に定まる。略単結晶半導体結晶粒は結晶化促進剤に依り定められた所定の面方位で結晶成長する為、結晶化促進剤の材料を適宜選択することにより、略単結晶半導体結晶粒の表面の面方位を制御する。斯くして本願発明に則る薄膜半導体装置の製造方法に依れば、微細孔を中心とした領域に面方位制御された略単結晶半導体結晶粒を形成することが可能になる。
【0018】
溶融結晶化工程はレーザ照射によって行うことが好適である。これにより非晶質半導体膜の溶融結晶化を効率良く行うことが可能となる。用いるレーザとしてはエキシマレーザ、固体レーザ、ガスレーザなど種々のものが考えられる。
【0019】
又、以上の目的を達成する本発明に係る他の薄膜半導体装置の製造方法は、少なくとも一方の表面が絶縁性の基板の絶縁性表面に微細孔を形成する微細孔形成工程と、絶縁性表面上の一部に半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置する結晶化促進剤配置工程と、絶縁性表面上、結晶化促進剤上及び微細孔内に非晶質半導体膜を形成する半導体膜形成工程と、基板に熱処理を施し、非晶質半導体膜の微細孔内を含む領域を固相状態にて結晶化させて結晶成分含有半導体膜を得る熱処理工程と、少なくとも微細孔内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ結晶成分含有半導体膜を溶融・結晶化させることにより所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を微細孔を中心とした領域に形成する溶融結晶化工程とを含むことを特徴とする。
【0020】
このような本発明に係る他の薄膜半導体装置の製造方法は、微細孔を形成した後に絶縁膜上の一部に半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置し、更にこの上に非晶質半導体膜を形成すること以外は上記において説明した薄膜半導体装置の製造方法と同様であり、上記と同様に微細孔を中心とした領域に面方位制御された略単結晶半導体結晶粒を形成することが可能である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。尚、本発明は以下の記述に限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0022】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法について説明する。
【0023】
図1に絶縁膜上に本発明を適用して半導体薄膜が形成された状態を示す。図1においてはガラス基板1上に下地絶縁膜として酸化硅素膜2が形成され、酸化硅素膜2上に半導体薄膜である略単結晶硅素結晶粒9が形成されている。又、酸化硅素膜2の表面には、酸化硅素膜2の厚み方向に微細孔3が形成されている。微細孔3内には固相状態で結晶成長が促進された結晶部位4bが存在する。微細孔3の上方部は略単結晶硅素結晶粒9の一部により埋め込まれている。薄膜半導体装置の活性層は此の略単結晶硅素結晶粒内に形成される。基板上には複数の薄膜半導体装置が作製されるが、各薄膜半導体装置は図1と同じ構成を成す。此等の略単結晶硅素結晶粒9は結晶粒の結晶方位が所望の向きに制御されて形成されている。基板上に形成される複数の薄膜半導体装置はそれ故皆結晶方位が所望の向きに制御された略単結晶硅素結晶粒内に作られることになる。
【0024】
図2は上述した略単結晶硅素結晶粒9の製造方法を示す工程図である。又、図3乃至図5は略単結晶硅素結晶粒9の製造方法を示す断面図である。
【0025】
図2に示すように本実施の形態に係る略単結晶硅素結晶粒9の製造方法は、基板上に下地絶縁膜を堆積する下地絶縁膜堆積工程(S101)と、前記下地絶縁膜の表面に厚み方向に微細孔を形成する微細孔形成工程(S102)と、前記下地絶縁膜上及び前記微細孔内に非晶質半導体膜を形成する半導体膜形成工程(S103)と、前記非晶質半導体膜上の一部に金属含有物質からなり半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置する結晶化促進剤配置工程(S104)と、前記基板に熱処理を施し、前記非晶質半導体膜の前記微細孔内を含む領域を固相状態にて結晶化させて結晶成分含有半導体膜を得る熱処理工程(S105)と、少なくとも前記微細孔内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ前記結晶成分含有半導体膜を溶融・結晶化させることにより所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を前記非溶融状態の結晶成分含有半導体膜を起点として前記微細孔を中心とした領域に形成する溶融結晶化工程(S106)と、を含むものである。斯うした工程を実施すると微細孔3を中心とした領域に面方位制御された略単結晶硅素結晶粒9を形成し得る。以下、略単結晶硅素結晶粒9の具体的な製造方法について説明する。
【0026】
(下地絶縁膜堆積工程)
図3(a)に示すようにガラス基板1上に下地絶縁膜として酸化硅素膜2を例えば200nm程度の膜厚で形成する。これにより少なくとも一方の表面が絶縁性の基板を形成することができる。ガラス基板1上への酸化硅素膜2の形成方法としては、例えばプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)や低圧化学気相堆積法(LPCVD法)、或いはスパッタリング法等の気相堆積法などを用いることができる。尚、基板としてガラスや石英、セラミックス、その他少なくとも表面が絶縁性の基板を用いる場合には下地絶縁膜は形成しなくてもよい。無論、絶縁性基板上であっても、基板からの汚染物質が半導体層へ拡散するのを防止する目的で下地絶縁膜を形成してもよい。
【0027】
(微細孔形成工程)
次に、フォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を行うことにより、図3(b)に示すように孔径が例えば0.1μm(100nm)程度の略円筒状の微細孔3を下地絶縁膜である酸化硅素膜2の面内の所定の位置に厚み方向に形成する。即ち少なくとも一方の表面が絶縁性の基板の絶縁性表面に微細孔を形成する。酸化硅素膜のエッチングは、例えばCF4ガスとH2ガスのプラズマを用いた反応性イオンエッチングにより行う。基板としてガラスや石英、セラミックスなど少なくとも表面が絶縁性の基板を使用し、且つ下地絶縁膜を形成しない場合には、基板の絶縁性表面に直接微細孔3を形成する。
【0028】
又、前記微細孔3は略円筒状に形成することが好適であるが、上述した手法により形成できる形状であれば円筒状以外の形状、例えば、円錐状、角柱状、角錐状などとしてもよい。そして微細孔3の孔径は45nm〜190nm程度とすることが好適である。
【0029】
(半導体膜形成工程)
次に図3(c)に示すように例えばLPCVD法により絶縁性表面である酸化硅素膜2上と微細孔3内とに硅素を主構成元素とする半導体膜を例えば30nm〜250nm程度の膜厚に形成する。本実施の形態においては半導体膜として非晶質硅素膜4を形成する。LPCVD法を用いて非晶質硅素を堆積することにより微細孔3を確実に埋め込みつつ高純度の非晶質硅素膜4を酸化硅素膜2上と微細孔3内とに容易に形成することができる。尚、非晶質半導体膜の形成方法は上述したLPCVD法に限定されるものではなく、PVD法やCVD法で直接非晶質半導体膜を堆積することにより非晶質半導体膜を形成することができる。PVD法としては蒸着法やスパッタリング法などが適応され、CVD法としては上述した低圧化学気相堆積法(LPCVD法)やプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)などが適応される。
【0030】
(結晶化促進剤配置工程)
次に非晶質硅素膜4上の所定の位置に金属含有物質からなり半導体膜の結晶化を促進する性質を有する結晶化促進剤を配置する。この結晶化促進剤配置工程は、非晶質半導体膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、保護膜の一部に非晶質半導体膜が露出する開口部を形成する開口部形成工程と、開口部に結晶化促進剤を堆積する結晶化促進剤堆積工程とを備える。
【0031】
まず保護膜形成工程において、図3(d)に示すように非晶質硅素膜4上に保護膜としてレジスト5を形成する。次に開口部形成工程において、図4(a)に示すようにレジスト5の所定の位置に非晶質硅素膜4が露出するように開口部5aを形成する。ここで所定の位置は微細孔3から例えば数μm程度だけ離間した位置とする。そして結晶化促進剤堆積工程において図4(b)に示すように開口部5aの底部及びレジスト5上に、金属含有物質からなり半導体膜の結晶化を促進する性質を有する結晶化促進剤としてニッケル膜6をスパッタリング法や蒸着法等の物理気相堆積法によって堆積する。
【0032】
金属含有物質としてはニッケル以外にも例えばコバルトや白金、パラジウム及びタングステン等のうちいずれか、或いは此等合金のいずれかを含む物質を用いる。又金属含有物質としては半導体膜の結晶化を促進する物質であれば上述した金属と硅素との化合物である金属硅素化合物(金属シリサイド)などを用いても良い。
【0033】
尚、本願発明では上述した開口部形成工程の後に開口部5aの底部に露出した非晶質硅素膜4上に極博の酸化膜を形成する酸化膜形成工程を備えても良い。この場合、酸化膜の形成方法は特に限定されるものではないが、ガラス基板1ごと過酸化水素水を含有する水溶液に浸漬する方法、ガラス基板1ごと過酸化水素水を含有するアルカリ水溶液に浸漬する方法、ガラス基板1ごと過酸化水素水とアンモニア水とを含有する水溶液に浸漬する方法などが好適である。
【0034】
(熱処理工程)
次に図4(c)に示すようにニッケル膜6が形成されたガラス基板1に対してシリサイド化熱処理を施し、非晶質硅素膜4の開口部5a周辺の領域にニッケルを拡散させて結晶化促進剤拡散領域を形成する。本実施の形態では結晶化促進剤拡散領域としてニッケルシリサイド(NiSi2)4aを形成する。
【0035】
そして図4(d)に示すように硫酸洗浄又はフッ酸洗浄により開口部5a及びレジスト5上のニッケル膜6を除去する。
【0036】
更にニッケル膜6を除去した状態でガラス基板1に対して再度熱処理を施し、非晶質硅素膜4における微細孔3内を含む領域を固相状態にて結晶化させて図5(a)に示すように結晶成分含有半導体膜(ニッケルシリサイド4aに依り成長が促進された結晶部位4b)を形成する。結晶成分含有半導体はニッケルシリサイド4aに依り結晶成長が促進される。この際、結晶成分含有半導体は結晶方向が所定の方向に揃って結晶成長する。本実施の形態ではこの結晶成長により酸化硅素膜2上においては横方向(基板1と平行な方向)の結晶方向が<111>に揃った結晶成分含有半導体膜が得られる。そして微細孔3内においては微細孔3の深さ方向(基板1に垂直な方向)の結晶方向が、<111>に揃った面、即ち(111)面と垂直ないずれかの方向、例えば<110>方向に揃った結晶成分含有半導体膜が得られる。
【0037】
この熱処理は300〜650℃程度の温度にて行うことが好適である。熱処理の温度の下限を300℃程度とするのは結晶成分含有半導体膜を必要十分に形成するためである。又、熱処理の温度の上限を650℃程度とするのは以下のような理由による。材料コスト等の観点からは基板として安価なガラス基板(例えば無アルカリガラス等)を用いることが多い。この場合に、一般的に用いられるガラスの軟化点が650℃程度であるので、製造中に加えられる熱によって基板の軟化を生じないようにするために、基板1に加わる温度の上限を軟化点に対応して650℃程度より低くする必要があるからである。以上のような理由から、本実施形態では熱処理を行う際に好適な温度として300〜650℃という範囲を採用している。以上のように、結晶成分含有半導体膜を形成する熱処理工程を実施することにより、後の溶融結晶化工程において略単結晶硅素結晶粒9の面方位を確実に揃えられる。
【0038】
(溶融結晶化工程)
次にレジスト5を除去した後図5(b)に示すようにガラス基板1に対してレーザ照射8を行うことにより、図5(c)に示すように微細孔3内の結晶成分含有半導体膜(ニッケルシリサイド4aに依り成長が促進された結晶部位4b)の一部を非溶融状態に保持しつつ、その他の部分の結晶部位4b及び非晶質硅素膜4を溶融化させて溶融状態の硅素膜4cとする。非晶質硅素膜4が全て結晶成分含有半導体膜になっている場合には酸化硅素膜2上及び微細孔3内上部の結晶成分含有半導体膜を溶融化する。上述したレーザ照射8は、例えば波長308nmでパルス幅20nm〜30nsのXeClパルスエキシマレーザを用いる。そのエネルギー密度はニッケルシリサイドに依り成長が促進された結晶部位4bの膜厚に対応するように0.4〜1.5J/cm2 程度となるようにして行うことが好適である。照射されたXeClパルスエキシマレーザ光(以下、単にレーザ光と呼ぶ場合がある)は結晶成分含有半導体膜(ニッケルシリサイド4aに依り成長が促進された結晶部位4b)及び非晶質硅素膜4の表面近傍でほとんどが吸収される。これはXeClパルスエキシマレーザ光の波長(308nm)における結晶成分含有半導体膜及び非晶質硅素膜の吸収係数が大きいためである。結晶部位4b及び非晶質硅素膜4は吸収したレーザ光のエネルギーにより温められ、溶融状態の硅素膜4cとなる。この時に微細孔3内の結晶部位4bの一部は溶融しないようにレーザ照射エネルギー密度を調整する。微細孔内で溶融状態となった硅素膜4cは非溶融状態のままとされた結晶部位4bを起点として選択的に略単結晶状態で結晶成長する。結晶成長は非溶融部を種としてエピタキシャルに進行するので、略単結晶状態で成長した結晶は特定の方位を向く。本実施の形態においては上向きが<110>方向として結晶成長が進む。微細孔内で縦方向に成長する結晶粒が溶融状態の硅素膜4cの表面に達した時点で、結晶成長方向は横に変わる。即ち溶融状態の硅素膜4cの面内方向にエピタキシャル的に結晶が成長する。斯うして形成された略単結晶硅素結晶粒9の表面は結晶方向が<111>方向に揃った面となる。これにより図5(d)に示すように微細孔3を中心とした領域に大粒径の結晶粒からなる略単結晶硅素結晶粒9が形成される。以上のようにして図1に示すような表面の面方位が所定の方向に制御された略単結晶硅素結晶粒9を基板上に複数個形成することができる。
【0039】
尚、下地絶縁膜である酸化硅素膜2は、前記レーザ光に対して略透明な特性を有し、このレーザ光のエネルギーを吸収しないため、レーザ照射によって溶融することはない。又、下地絶縁膜を酸化硅素以外の材質で構成する場合には、酸化硅素膜を用いる場合と同様にレーザ光に対して透明な膜か、硅素に比較して十分に融点の高い材質を選べばよい。
【0040】
本願発明では下地絶縁膜である酸化硅素膜2に微細孔3を形成し、次いで酸化硅素膜2上に結晶化促進剤を配置し、微細孔3を含む酸化硅素膜2上に結晶成分含有半導体膜を形成した後に、結晶成分含有半導体膜7をレーザ照射8により溶融状態とする。斯うして微細孔3内に形成した結晶成分含有半導体膜を起点として結晶成長させ、溶融状態の硅素を略単結晶硅素結晶粒9に変化させる。この方法では、略単結晶硅素結晶粒9の表面の面方位を所望の方向に制御することが可能である。即ち、溶融した硅素は結晶成分含有半導体膜を起点として略単結晶成長する際、結晶化促進剤に依り定められた所定の面方位で成長するため、略単結晶硅素結晶粒9の表面の面方位を所定の面方位に揃えることができる。
【0041】
又、本願発明では従来の方法のように孔深さの深い微細孔を形成する必要がない。即ち従来の方法においては結晶化が始まった結晶粒のフィルタリングを微細孔内で行う必要があるため、微細孔の深さはある程度の深さ、例えば0.8μm程度の深さに形成する必要がある。しかしながら本願発明では結晶化促進剤により結晶方向が所定の方向に定められた結晶成分含有半導体膜が微細孔内に配置されるため半導体膜が結晶化する際に微細孔内で結晶のフィルタリングをする必要が無い。したがって本願発明では微細孔の深さを浅く設定することができるため、孔深さの深い微細孔を形成することが不要となり簡便且つ確実に略単結晶硅素結晶粒9を形成することが可能である。
【0042】
そして、本願発明では結晶成分含有半導体膜を形成するための結晶化促進剤であるニッケル膜6を非晶質硅素膜4上に配置し、熱処理を施すことにより結晶成分含有半導体膜を微細孔3内に形成する。例えばニッケル膜6を微細孔3の底部に配置して熱処理を施すことにより微細孔3内に結晶成分含有半導体膜を形成しようとする場合には、微細孔3の孔径が小さいためニッケル膜6を微細孔3内に確実に配置することができない虞がある。そして微細孔3内にニッケル膜6が配置されていない場合には、当然ながら熱処理を施しても微細孔3内に結晶成分含有半導体膜を形成することはできない。しかしながら本願発明ではニッケル膜6の配置位置を非晶質硅素膜4上とするため、簡便且つ確実に結晶化促進剤であるニッケル膜6を配置することができる。その結果、確実に微細孔3内に結晶方向が所定の方向に定められた結晶成分含有半導体膜を形成することが可能であり、簡便且つ確実に略単結晶硅素結晶粒9を形成することが可能である。
【0043】
上述した熱処理工程において形成した結晶成分含有半導体膜も結晶方向が揃えられた略単結晶粒であるがこの結晶成分含有半導体膜は固相成長により形成されたものであり固相成長により形成された結晶は結晶欠陥が非常に多く半導体装置等に用いる半導体薄膜としては特性的に実用に耐えられないものである。しかしながら、本願発明では結晶成分含有半導体膜を再度レーザ照射により溶融結晶化するため、結晶欠陥が非常に少なく電気特性の良好な、半導体装置に用いて好適な半導体薄膜を作製することができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、本発明に係る他の薄膜半導体装置の製造方法について説明する。上述した第1の実施の形態においてはニッケル膜6を半導体膜である非晶質硅素膜4を形成した後に配置したが、本実施の形態は半導体膜である非晶質硅素膜4を形成する前にニッケル膜6を形成するものである。
【0045】
図6に、絶縁膜上に本発明を適用して半導体薄膜が形成された状態を示す。尚、理解の容易のため、上記と同様の部材については同じ符号を付してある。図6においてはガラス基板1上に下地絶縁膜として酸化硅素膜2が形成され、酸化硅素膜2上に半導体薄膜である略単結晶硅素結晶粒9が形成されている。又、酸化硅素膜2の表面には、酸化硅素膜2の厚み方向に微細孔3が形成されている。又、酸化硅素膜2上の微細孔3から離間した位置には、結晶化促進剤であるニッケル膜6が配置されている。微細孔3の底部にはニッケル膜6がありその上には固相状態で結晶成長が促進された結晶部位4bが存在する。微細孔3の上方部は略単結晶硅素結晶粒9の一部により埋め込まれている。薄膜半導体装置の活性層は此の略単結晶硅素結晶粒内に形成される。基板上には複数の薄膜半導体装置が作製されるが、各薄膜半導体装置は図6と同じ構成を成す。此等の略単結晶硅素結晶粒9は結晶粒の結晶方位が所望の向きに制御されて形成されている。基板上に形成される複数の薄膜半導体装置はそれ故皆結晶方位が所望の向きに制御された略単結晶硅素結晶粒内に作られることになる。
【0046】
図7は、上述した略単結晶硅素結晶粒9の製造方法を示す工程図である。又、図8乃至図10は、略単結晶硅素結晶粒9の製造方法を示す断面図である。
【0047】
図7に示すように、本実施の形態に係る略単結晶硅素結晶粒9の製造方法は、基板上に下地絶縁膜を堆積する下地絶縁膜堆積工程(S201)と、前記下地絶縁膜の表面に厚み方向に微細孔を形成する微細孔形成工程(S202)と、前記下地絶縁膜上の一部に金属含有物質からなり半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置する結晶化促進剤配置工程(S203)と、前記下地絶縁膜上、前記結晶化促進剤上及び前記微細孔内に非晶質半導体膜を形成する半導体膜形成工程(S204)と、前記基板に熱処理を施し、前記非晶質半導体膜の前記微細孔内を含む領域を固相状態にて結晶化させて結晶成分含有半導体膜を得る熱処理工程(S205)と、少なくとも前記微細孔内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ前記結晶成分含有半導体膜を溶融・結晶化させることにより所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を前記非溶融状態の結晶成分含有半導体膜を起点として前記微細孔を中心とした領域に形成する溶融結晶化工程(S206)と、を含むものである。斯うした工程を実施すると微細孔3を中心とした領域に面方位制御された略単結晶硅素結晶粒9を形成し得る。以下、略単結晶硅素結晶粒9の具体的な製造方法について説明する。
【0048】
(下地絶縁膜堆積工程)
図8(a)に示すようにガラス基板1上に下地絶縁膜として酸化硅素膜2を例えば200nm程度の膜厚で形成する。これにより少なくとも一方の表面が絶縁性の基板を形成することができる。ガラス基板1上への酸化硅素膜2の形成方法としては、例えばプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)や低圧化学気相堆積法(LPCVD法)、或いはスパッタリング法等の気相堆積法などを用いることができる。尚、基板としてガラスや石英、セラミックス、その他少なくとも表面が絶縁性の基板を用いる場合には下地絶縁膜は形成しなくてもよい。無論、絶縁性基板上であっても、基板からの汚染物質が半導体層へ拡散するのを防止する目的で下地絶縁膜を形成してもよい。
【0049】
(微細孔形成工程)
次にフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を行うことにより、図8(b)に示すように、孔径が例えば0.1μm(100nm)程度の略円筒状の微細孔3を下地絶縁膜である酸化硅素膜2の面内の所定の位置に厚み方向に形成する。酸化硅素膜のエッチングは、例えばCF4ガスとH2ガスのプラズマを用いた反応性イオンエッチングにより行う。基板としてガラスや石英、セラミックスなど少なくとも表面が絶縁性の基板を使用し、且つ下地絶縁膜を形成しない場合には、基板の絶縁性表面に直接微細孔3を形成する。
【0050】
又、前記微細孔3は略円筒状に形成することが好適であるが、上述した手法により形成できる形状であれば円筒状以外の形状、例えば、円錐状、角柱状、角錐状などとしてもよい。そして、微細孔3の孔径は、45nm〜190nm程度とすることが好適である。
【0051】
(結晶化促進剤配置工程)
次に酸化硅素膜2上の所定の位置に金属含有物質からなり半導体膜の結晶化を促進する性質を有する結晶化促進剤を配置する。この結晶化促進剤配置工程は、下地絶縁膜上に結晶化促進剤を堆積する結晶化促進剤堆積工程と、下地絶縁膜上に堆積した結晶化促進剤上のうち最終的に結晶化促進剤を配置する位置に保護膜を形成する保護膜形成工程と、保護膜をマスクとして不要な結晶化促進剤を除去して結晶化促進剤を所定の位置のみに配置する除去工程とを備える。
【0052】
まず結晶化促進剤堆積工程において図8(c)に示すように酸化硅素膜2上に結晶化促進剤としてニッケル膜6をスパッタリング法や蒸着法等の物理気相堆積法によって堆積する。
【0053】
次に保護膜形成工程で図8(d)に示すように酸化硅素膜2上に堆積したニッケル膜6上において最終的に結晶化促進剤を配置する所定の位置に保護膜としてレジスト5を形成する。ここでレジスト5を形成する所定の位置は微細孔3から例えば数μm程度だけ離間した位置とする。
【0054】
更に除去工程において図9(a)に示すようにレジスト5をマスクとして不要なニッケル膜6を除去し、この後レジスト5を除去する。これにより図9(b)に示すように酸化硅素膜2上において所定の位置に結晶化促進剤となるニッケル膜6を配置することができる。この除去工程において酸化硅素膜2上に残されたニッケル膜6のみが結晶化促進剤として機能する。
【0055】
金属含有物質としてはニッケル以外にも例えばコバルトや白金、パラジウム及びタングステン等のうちいずれか、或いは此等合金のいずれかを含む物質を用いる。又金属含有物質としては、半導体膜の結晶化を促進する物質であれば上述した金属と硅素との化合物である金属硅素化合物(金属シリサイド)などを用いても良い。
【0056】
(半導体膜形成工程)
次に図9(c)に示すように例えばLPCVD法により酸化硅素膜2上とニッケル膜6上と微細孔3内とに硅素を主構成元素とする半導体膜を例えば30nm〜250nm程度の膜厚に形成する。本実施の形態においては半導体膜として非晶質硅素膜4を形成する。LPCVD法を用いて非晶質硅素を堆積することにより微細孔3を確実に埋め込みつつ高純度の非晶質硅素膜4を酸化硅素膜2上とニッケル膜6上と微細孔3内とに容易に形成することができる。尚、非晶質半導体膜の形成方法は上述したLPCVD法に限定されるものではなく、PVD法やCVD法で直接非晶質半導体膜を堆積することにより非晶質半導体膜を形成することができる。PVD法としては蒸着法やスパッタリング法などが適応され、CVD法としては上述した低圧化学気相堆積法(LPCVD法)やプラズマ化学気相堆積法(PECVD法)などが適応される。
【0057】
(熱処理工程)
次に図9(d)に示すようにニッケル膜6及び非晶質硅素膜4が形成されたガラス基板1に対してシリサイド化熱処理を施し、酸化硅素膜2上のニッケル膜6の周辺の領域にニッケルを拡散させて結晶化促進剤拡散領域を形成する。本実施の形態では結晶化促進剤拡散領域としてニッケルシリサイド(NiSi2)4aを形成する。
【0058】
更に結晶化促進剤拡散領域を形成した状態でガラス基板1に対して再度熱処理を施し、非晶質硅素膜4における微細孔3内を含む領域を固相状態にて結晶化させて図10(a)に示すように結晶成分含有半導体膜(ニッケルシリサイド4aに依り成長が促進された結晶部位4b)を形成する。結晶成分含有半導体はニッケルシリサイド4aに依り結晶成長が促進される。この際、結晶成分含有半導体は結晶方向が所定の方向に揃って結晶成長する。本実施の形態ではこの結晶成長により酸化硅素膜2上においては横方向(基板1と平行な方向)の結晶方向が<111>に揃った結晶成分含有半導体膜が得られる。そして微細孔3内においては微細孔3の深さ方向(基板1に垂直な方向)の結晶方向が、<111>に揃った面、即ち(111)面と垂直ないずれかの方向、例えば<110>方向に揃った結晶成分含有半導体膜が得られる。
【0059】
この熱処理は300〜650℃程度の温度にて行うことが好適である。熱処理の温度の下限を300℃程度とするのは結晶成分含有半導体膜を必要十分に形成するためである。又、熱処理の温度の上限を650℃程度とするのは以下のような理由による。材料コスト等の観点からは基板として安価なガラス基板(例えば無アルカリガラス等)を用いることが多い。この場合に、一般的に用いられるガラスの軟化点が650℃程度であるので、製造中に加えられる熱によって基板の軟化を生じないようにするために、基板1に加わる温度の上限を軟化点に対応して650℃程度より低くする必要があるからである。以上のような理由から、本実施形態では熱処理を行う際に好適な温度として300〜650℃という範囲を採用している。以上のように、結晶成分含有半導体膜を形成する熱処理工程を実施することにより、後の溶融結晶化工程において略単結晶硅素結晶粒9の面方位を確実に揃えられる。
【0060】
(溶融結晶化工程)
次に図10(b)に示すようにガラス基板1に対してレーザ照射8を行うことにより、図10(c)に示すように微細孔3内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ、その他の部分の結晶部位4b及び非晶質硅素膜4を溶融化させて溶融状態の硅素膜4cとする。上述したレーザ照射8は、例えば波長308nmでパルス幅20nm〜30nsのXeClパルスエキシマレーザを用いる。そのエネルギー密度はニッケルシリサイドに依り成長が促進された結晶部位4bの膜厚に対応するように0.4〜1.5J/cm2 程度となるようにして行うことが好適である。照射されたXeClパルスエキシマレーザ光(以下、単にレーザ光と呼ぶ場合がある)は結晶成分含有半導体膜(ニッケルシリサイド4aに依り成長が促進された結晶部位4b)及び非晶質硅素膜4の表面近傍でほとんどが吸収される。これはXeClパルスエキシマレーザ光の波長(308nm)における結晶成分含有半導体膜及び非晶質硅素膜の吸収係数が大きいためである。結晶部位4b及び非晶質硅素膜4は吸収したレーザ光のエネルギーにより温められ、溶融状態の硅素膜4cとなる。この時に微細孔3内の結晶部位4bの一部は溶融しないようにレーザ照射エネルギー密度を調整する。微細孔内で溶融状態となった硅素膜4cは非溶融状態のままとされた結晶部位4bを起点として選択的に略単結晶状態で結晶成長する。結晶成長は非溶融部を種としてエピタキシャルに進行するので、略単結晶状態で成長した結晶は特定の方位を向く。本実施の形態においては上向きが<110>方向として結晶成長が進む。微細孔内で縦方向に成長する結晶粒が溶融状態の硅素膜4cの表面に達した時点で、結晶成長方向は横に変わる。即ち溶融状態の硅素膜4cの面内方向にエピタキシャル的に結晶が成長する。斯うして形成された略単結晶硅素結晶粒9の表面は結晶方向が<111>方向に揃った面となる。これにより図10(d)に示すように微細孔3を中心とした領域に大粒径の結晶粒からなる略単結晶硅素結晶粒9が形成される。以上のようにして図6に示すような表面の面方位が所定の方向に制御された略単結晶硅素結晶粒9を基板上に複数個形成することができる。
【0061】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では上記のようにして作製した略単結晶硅素結晶粒9を用いて薄膜半導体装置を製造する方法を説明する。
【0062】
図11(a)は略単結晶硅素結晶粒9を用いて作製した薄膜トランジスタの構成を示す平面図であり、図11(b)は図11(a)においてA‐A′線で切断した縦断面図である。この薄膜トランジスタにおいては、図11(b)に示すようにガラス基板1上に下地絶縁膜である酸化硅素膜2が形成され、酸化硅素膜2上に半導体薄膜である略単結晶硅素結晶粒9が形成されている。又、酸化硅素膜2の表面には該酸化硅素膜2の厚み方向に微細孔3が設けられている。
【0063】
又、図11(b)に示すようにパターニングされた略単結晶硅素結晶粒9の一部がソース/ドレイン領域12、13とされ、ソース/ドレイン領域12、13に挟まれた部分がチャネル形成領域14とされている。チャネル形成領域14の上部には酸化硅素膜10を介してゲート電極11が形成され、更に酸化硅素膜15が形成されている。一方、ソース/ドレイン領域12、13の上部には、酸化硅素膜10及び酸化硅素膜15を介してソース/ドレイン電極16、17が形成されている。尚、ソース/ドレイン電極16、17は、コンタクトホールCを介してソース/ドレイン領域12、13と接続されている。
【0064】
この薄膜トランジスタにおいては、略単結晶硅素結晶粒9を半導体装置活性領域として用いている。このために多結晶半導体膜を用いた薄膜半導体装置と比較して、本願発明の半導体装置は結晶粒界や表面に起因した捕獲準位密度が少なくなり、半導体膜中のフリーキャリアが容易に増大する。即ちトランジスタの閾値電圧が小さくなり、スイッチング特性が優れるようになる。加えて結晶粒界での結晶の周期性の乱れに起因したキャリアの散乱を受けなくなるので、キャリアの移動度が向上し、オン電流が増大する。此の様に本願発明に則ると、電気的特性に優れ、低電圧で高速動作可能な薄膜半導体装置を実現することができる。更に斯うして作製された薄膜トランジスタは、総てのトランジスタで半導体膜の表面面方位が同一の面方位に揃えられている。斯くして基板上に作製された複数の薄膜半導体装置間で、半導体薄膜面方位の不一致に起因する特性の不均一性が排斥され、総てのトランジスタで同等な特性を示す事が可能になる。
【0065】
図12は上述した薄膜トランジスタの製造方法を示す工程図である。まず図12(a)に示すように下地絶縁膜である酸化硅素膜2上に略単結晶硅素結晶粒9を形成する。次にフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程を行うことにより、略単結晶硅素結晶粒9をパターニングし、図12(b)に示すように薄膜トランジスタ用の半導体薄膜を形成する。
【0066】
次に図12(c)に示すように、電子サイクロトロン共鳴PECVD法(ECR‐CVD法)や平行平板PECVD法、又はLPCVD法などの方法により略単結晶硅素結晶粒9上に酸化硅素膜10を形成する。尚、この酸化硅素膜10は薄膜トランジスタのゲート絶縁膜として機能する。
【0067】
次にタンタル又はアルミニウムなどの金属薄膜をスパッタリング法により形成した後、パターニングすることにより、図12(d)に示すようにゲート電極11を形成する。そしてこのゲート電極11をマスクとして用いて、ドナー又はアクセプターとなる不純物イオンのイオン注入IIを行うことにより、ソース/ドレイン領域12、13とチャネル形成領域14とをゲート電極11に対して自己整合的に形成する。nMOSトランジスタを作製する場合には不純物イオンとしてリン(P)を例えば2×1015cm−2の濃度でソース/ドレイン領域に打ち込む。
【0068】
その後、ソース/ドレイン領域12、13に打ち込まれた不純物元素の活性化を行う。不純物元素の活性化は例えば照射エネルギー密度200mJ/cm2〜400mJ/cm2程度でのXeClエキシマレーザの照射や、250℃から450℃程度の温度の熱処理により行うことができる。
【0069】
次に図12(e)に示すように、PECVD法などにより例えば膜厚が略500nmの酸化硅素膜15を、酸化硅素膜10及びゲート電極11上に形成する。そしてソース/ドレイン領域12、13に至るコンタクトホールCを酸化硅素膜10と15とに開口し、スパッタリング法などによりコンタクトホールC内及び酸化硅素膜15上のコンタクトホールCの周縁部に例えばアルミニウムを堆積し、パターニングすることによりソース/ドレイン電極16、17を形成する。このようにして薄膜トランジスタが完成する。
【0070】
上述した薄膜トランジスタの製造方法においては、略単結晶硅素結晶粒9を能動層として用いて薄膜トランジスタを作製するため、オフ電流や移動度、しきい値電圧に優れ、低電圧で高速動作可能な薄膜トランジスタを容易に且つ確実に作製することができる。
【0071】
複数の薄膜トランジスタを作製する場合にも各薄膜トランジスタ用に形成した複数の微細孔3の近傍に同一材料からなる結晶化促進剤を配置し、結晶成分含有半導体膜を形成し、前記と同様にして略単結晶硅素結晶粒9を形成する。これにより、表面の面方位が所定の方向に統一された、面方位に起因した膜質のばらつきがなく、均一な特性を有する略単結晶硅素結晶粒9を複数作製することができる。この表面の面方位が所定の方向に統一された略単結晶硅素結晶粒9を用いて薄膜トランジスタを製造することにより、薄膜トランジスタ毎の特性のばらつきのない、均一な特性を有する薄膜トランジスタを複数作製することができる。
【0072】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置を備えて構成される集積回路及び電気光学装置について説明する。ここで、「集積回路」とは、一定の機能を奏するように半導体装置及び関連する配線等が集積配置された回路(チップ)をいう。
【0073】
又、「電気光学装置」とは、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置と、電気的作用によって発光する素子又は外部からの光の状態を変化させる電気光学素子を備えた装置一般をいい、自ら光を発するものと外部からの光の通過を制御するものとの両者を含むものである。このような電気光学装置としては、例えば電気光学素子として液晶素子、電気泳動素子が分散した分散媒を有する電気泳動素子、エレクトロルミネッセンス(EL)素子、電界の印加により発生した電子を発光板に当てて発光させる電子放出素子などを備えたアクティブマトリクス型の表示装置等が挙げられる。
【0074】
図13は、電気光学装置の具体例である電気光学表示装置20の集積回路構成を示したものであり、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置を備えて構成されるものである。図13に示す電気光学表示装置20においては、各画素領域に電界発光効果により発光可能な発光層OELDと、それを駆動するために電荷を溜める保持容量Cを備え、更にスイッチング素子として上述した第1の実施の形態において作製された薄膜半導体装置である薄膜トランジスタT1〜T4を備えて構成されている。
【0075】
ここで、薄膜トランジスタT1〜T4においては、表面の面方位が全て同一の方向に揃えられた略単結晶硅素結晶粒9が用いられている。したがって、電気光学表示装置20を構成する薄膜トランジスタは、各薄膜トランジスタによって特性のばらつきがない、均一な特性を備え、且つ良好なキャリア移動度を備えた薄膜トランジスタとされている。
【0076】
ドライバ領域21からは、走査線Vsel及び発光制御線Vgpが各画素領域Gに供給されている。又、ドライバ領域22からは、データ線Idata及び電源線Vddが各画素領域Gに供給されている。そして、走査線Vselとデータ線Idataとを制御することにより、各画素領域Gに対する電流プログラムが行われ、発光部OELDによる発光が制御可能となっている。
【0077】
以上のような電気光学表示装置20は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置、即ち薄膜トランジスタを備えている。そして、この薄膜トランジスタは、オフ電流値が小さく、又キャリア移動度が大きく、且つ特性のばらつきのない、均一な特性を有するなどの優れた特性を持ち合わせているため、これにより構成された半導体集積回路は低電圧で高速動作に対応可能であり、且つ、低消費電力であり、又、これにより構成された電気光学表示装置は高性能、高機能、高品質、低消費電力な特性が実現されている。
【0078】
又、これらの薄膜半導体装置を構成する略単結晶硅素結晶粒の表面の面方位は全て同一の方向に揃えられているため、各薄膜半導体装置によって特性のばらつきがない、均一な特性を備え、且つ良好なキャリア移動度を備えた薄膜半導体装置が実現されている。したがって、電気光学表示装置20においては、安定して高速動作し、薄膜半導体装置の不均一に起因する表示斑などのない高性能、高品質な電気光学装置が実現されている。
【0079】
尚、前記において説明した駆動回路は、発光要素に電流発光素子を使用する場合の回路の一例であり、他の回路構成とすることも可能である。又、発光要素には電流発光素子以外にも液晶表示素子を用いることも可能であり、この場合は液晶表示素子に対応して回路構成を変更すればよい。
【0080】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態では、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法を電子機器に適用する場合について説明する。ここで、「電子機器」とは、本発明に係る半導体装置を備え、一定の機能を奏する電子機器一般をいい、例えば前記の電気光学装置を備えて構成されるものである。
【0081】
図14(a)〜図14(f)は、電子機器の具体例を示したものであり、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置を備えて構成されるものである。
【0082】
図14(a)は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置が搭載された携帯電話30であり、該携帯電話30は、電気光学装置(表示パネル)31、音声出力部32、音声入力部33、操作部34、及びアンテナ部35などを備えて構成されている。携帯電話30においては、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、例えば表示パネルや、内蔵される集積回路に設けられる薄膜半導体装置の製造に適用される。
【0083】
図14(b)は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置が搭載されたビデオカメラ40であり、該ビデオカメラ40は、電気光学装置(表示パネル)41、操作部42、音声入力部43、及び受像部44などを備えて構成されている。ビデオカメラ40においては、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、例えば表示パネルや、内蔵される集積回路に設けられる薄膜半導体装置の製造に適用される。
【0084】
図14(c)は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置が搭載された携帯型パーソナルコンピュータ50であり、該携帯型パーソナルコンピュータ50は、電気光学装置(表示パネル)51、操作部52、及びカメラ部53などを備えて構成されている。携帯型パーソナルコンピュータ50においては、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、例えば表示パネルや、内蔵される集積回路に設けられる薄膜半導体装置の製造に適用される。
【0085】
図14(d)は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置が搭載されたヘッドマウントディスプレイ60であり、該ヘッドマウントディスプレイ60は、電気光学装置(表示パネル)61、光学系収納部62、及びバンド部63などを備えて構成されている。ヘッドマウントディスプレイ60においては、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、例えば表示パネルや、内蔵される集積回路に設けられる薄膜半導体装置の製造に適用される。
【0086】
図14(e)は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置が搭載されたリア型プロジェクター70であり、該リア型プロジェクター70は、電気光学装置(光変調器)71、光源72、光学系73、ミラー74、ミラー75、及びスクリーン77などを筐体内76に備えて構成されている。リア型プロジェクター70においては、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、例えば光変調器や、内蔵される集積回路に設けられる薄膜半導体装置の製造に適用される。
【0087】
図14(f)は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置が搭載されたフロント型プロジェクター80であり、該フロント型プロジェクター80は、電気光学装置(画像表示源)81及び光学系82などを筐体内83に備えて構成されており、画像をスクリーン84に表示可能とされている。フロント型プロジェクター80においては、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、例えば画像表示源や、内蔵される集積回路に設けられる薄膜半導体装置の製造に適用される。
【0088】
以上のような電子機器は、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法により製造された薄膜半導体装置を備えている。そして、この薄膜半導体装置は、オフ電流値が小さく、又キャリア移動度が大きく、且つ特性のばらつきのない、均一な特性を有するなどの優れた特性を持ち合わせているため、これにより構成された半導体集積回路は高速動作に対応可能であり、且つ、低消費電力であり、又、これにより構成された電子機器は高性能、高機能、高品質、低消費電力な特性が実現されている。
【0089】
尚、本発明に係る薄膜半導体装置の製造方法は、前記の電子機器に限らず、あらゆる電子機器の製造に適用可能である。例えば、前記の他にも、腕時計、ICカード、表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、電光掲示板、宣伝広告用ディスプレイなどの製造にも適用可能であり、高品質な電子機器が実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用して作製した半導体薄膜を示す図である。
【図2】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図3】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図4】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図5】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図6】本発明を適用して作製した半導体薄膜を示す図である。
【図7】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図8】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図9】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図10】薄膜半導体装置の製造方法について説明する図である。
【図11】本発明を適用して作製した薄膜トランジスタを示す図である。
【図12】薄膜トランジスタの製造方法を説明する図である。
【図13】電気光学装置の例を示す構成図である。
【図14】電気機器の例を示す図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板、2 酸化硅素膜、3 微細孔、4 非晶質硅素膜、4a ニッケルシリサイド、4b ニッケルシリサイドに依り成長が促進された結晶部位、4c 溶融状態の硅素膜、5 レジスト、5a 開口部、6 ニッケル膜、8 レーザ照射、9 略単結晶硅素結晶粒
Claims (2)
- 少なくとも一方の表面が絶縁性の基板の絶縁性表面に微細孔を形成する微細孔形成工程と、
前記絶縁性表面上及び前記微細孔内に非晶質半導体膜を形成する半導体膜形成工程と、
前記非晶質半導体膜上の一部に半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置する結晶化促進剤配置工程と、
前記基板に熱処理を施し、前記非晶質半導体膜の前記微細孔内を含む領域を固相状態にて結晶化させて結晶成分含有半導体膜を得る熱処理工程と、
少なくとも前記微細孔内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ前記結晶成分含有半導体膜を溶融・結晶化させることにより所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を前記微細孔を中心とした領域に形成する溶融結晶化工程と
を含むことを特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。 - 少なくとも一方の表面が絶縁性の基板の絶縁性表面に微細孔を形成する微細孔形成工程と、
前記絶縁性表面上の一部に半導体膜の結晶化を促進する結晶化促進剤を配置する結晶化促進剤配置工程と、
前記絶縁性表面上、前記結晶化促進剤上及び前記微細孔内に非晶質半導体膜を形成する半導体膜形成工程と、
前記基板に熱処理を施し、前記非晶質半導体膜の前記微細孔内を含む領域を固相状態にて結晶化させて結晶成分含有半導体膜を得る熱処理工程と、
少なくとも前記微細孔内の結晶成分含有半導体膜の一部を非溶融状態に保持しつつ前記結晶成分含有半導体膜を溶融・結晶化させることにより所定の面方位を有する略単結晶半導体結晶粒を前記微細孔を中心とした領域に形成する溶融結晶化工程と
を含むことを特徴とする薄膜半導体装置の製造方法。
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