以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1に本発明の実施の形態であるプローブ装置10の斜視図を示す。ただし、見易さのために図1においてプローブピン18の数と縮尺を変更している。
このプローブ装置10は、液晶パネル(図示せず)の点灯検査をするためのもので、液晶パネルのドライバICがボンディングされた検査用回路基板であるTCP22を備えている。また、多数のプローブピン18が、上側支持板14および下側支持板16からなる支持体13により支持されている。上側支持板14から突出したプローブピン18の上端面は、TCP22上に設けられた配線電極(図示せず)に接触している。また、下側支持板16から突出したプローブピン18の下端を液晶パネル上の列状電極に接触させることにより、配線電極と列状電極とを電気的に接続できるようになっている。そして、その状態で、列状電極に検査用信号が供給され、液晶パネルの点灯検査が行われる。
図2に、このプローブ装置10の縦断面の概略図を示す。TCP22は、液晶パネル40のドライバICがボンディングされたフレキシブル基板であり、基台12に固着されている。TCP22上にはドライバICからの信号を供給するための配線電極(図示せず)が列状に多数配線されている。この配線電極は、下方、すなわち支持体13側に対して露出しており、各配線電極にはプローブピンの上側のピンである上側ピン30が接触している。
支持体13は、上側支持板14と下側支持板16とから構成されており、多数のプローブピン18を支持している。上側支持板14と下側支持板16との間には所定の間隙が形成されており、プローブピン18の連結部34が加えられた力に応じて自在に湾曲できるようになっている。
下側支持板16には、被検査電極44と等ピッチで多数の下孔16aが形成されている。この下孔16aには、プローブピン18の下側のピンである下側ピン32が挿通される。また、上側支持板14には、配線電極と等ピッチで多数の上孔14aが形成され、上側ピン30が挿通される。
上側支持板14は、下側支持板16に対してわずかに長手方向後側(図2においてX方向左側)にずれており、下側支持板16の前端16bは上側支持板14の前端14bより前側に出ている。下側支持板16の前端16bには、後述する基準切り欠き28が設けられており、上面から見えるようになっている。
ここで、下孔16aまたは上孔14aは千鳥状に配されてもよい。図4に、下孔16aを千鳥状に配した場合の一例を示す。被検査電極44のピッチdに比べて下孔16aの直径Rが大きい場合、下孔16aを直線状に配すると、互いに干渉してしまう。そこで、このような場合は、図4に示すように、被検査電極44の配列方向(Y方向)については被検査電極と等ピッチ(d)とし、被検査電極の長さ方向(X方向)については前後にずらす。そして、全体として千鳥状になるように下孔16aを設ける。このように下孔16aを千鳥状に配することにより、被検査電極44が狭ピッチであっても対応することができる。もちろん、下孔16aに限らず、上孔14aも千鳥状に配してもよい。そして、この上孔14aまたは下孔16aに、プローブピン18の上側ピン30または下側ピン32を挿通することにより、上側ピン30または下側ピン32を千鳥状に配することができる。また、当然、被検査電極および配線電極が狭ピッチでない場合は、下孔16aおよび上孔14aを一列に配してもよい。
プローブピン18は、図3に示すように、配線電極と接触する上側ピン30、被検査電極44と接触する下側ピン32、上側ピン30と下側ピン32とを連結する連結部34とから構成されている。
上側ピン30は、さらに、円筒形状の柱部30bと小判形状の先端部30aとに分かれる。柱部30bは、連結部34から垂直上方に伸びており、上孔14aより若干小さな直径の円筒となっている。先端部30aは、小判形状となっており、その上端面で配線電極と接触している。接触面である上端面はほぼフラットとなっている。柱部30bの長さは、上側支持板14の厚みより小さく、上側支持板14からは先端部30aが突出するようになっている。また、柱部30bと先端部30aとを合わせた上側ピン30全体の長さは、上側支持板14と後述するアライメント微調整板20とを合わせた厚みより大きく、先端部30aがアライメント微調整板20から突出するようになっている。
下側ピン32は、被検査電極44に接触するためのピンで、その先端は針状に形成されている。下側ピン32の直径は下孔16aより小さく、下孔16aに挿通した場合、下孔16aと下側ピン32との間には所定のクリアランスが形成される。このクリアランスは、下孔16aに挿通された下側ピン32が微小角度の傾斜や微小距離の移動ができる程度あればよい。下側ピン32の長さは、下側支持板16の厚みより大きく、その先端が下側支持板16から突出するようになっている。
連結部34は、上側ピン30と下側ピン32とを接続する平板部材である。この連結部34は、垂直方向の力に応じて弾性変形により湾曲自在となっている。すなわち、この連結部34は、一種の板バネのように機能する。湾曲の度合い(バネ定数に相当)は、連結部34の板圧および材質などを適宜調整することにより調整できる。
なお、本実施の形態では、連結部34は、ある程度湾曲させた状態に形成される。あらかじめ湾曲させておくことで、垂直上向きの力が加わった際の湾曲方向を一定にすることができる。また、あらかじめ湾曲させておくことで、上孔14aと下孔16aとの位置を前後にずらすことが容易となり、ひいては、上側支持板14を後側にずらすことが容易となる(図2参照)。連結部34の幅は、上孔14a、下孔16aの直径より大きく形成されており、これによりプローブピン18が支持体13から抜け落ちることが防止される。なお、本実施の形態では平板形状の連結部を用いたが、垂直方向の力に応じて弾性変形により湾曲するのであれば、ワイヤ状や他の形状であっても当然よい。
このように形成されたプローブピン18は、上孔14aおよび下孔16aに挿通され、上側支持板14および下側支持板16により支持される。この上孔14aおよび下孔16aへの挿通により、上側ピン30および下側ピン32は、所定の位置に位置決めされ、配線電極および被検査電極44への接触が可能となる。
しかしながら、TCP22に配線された配線電極は、被検査電極44より狭ピッチであることが多く、また、そのピッチに数μmの誤差が生じやすい。したがって、上側ピン30を単に上孔14aに挿通しただけでは、上側ピン30と配線電極とが接触できない場合がある。
そこで、本実施の形態では、上側支持板14の上面にアライメント微調整板20を設け(図2参照)、上側ピン30のアライメント微調整を行っている。図5にこのアライメント微調整板20と上側支持板14および上側ピン30との関係を示す。アライメント微調整板20は、配線電極と対応する位置に貫通孔20aが設けられた樹脂製フィルムである。この貫通孔20aは、矩形状で上側ピン30の先端部30aが挿通可能となっている(図5(A)参照)。
上側ピン30の柱部30bおよび先端部30aは、上孔14aより小さく形成されているため、上孔14aと柱部30bおよび先端部30aとの間には所定のクリアランスが形成されている(図5(B)、(C)参照)。すなわち、上側ピン30は、そのクリアランス分だけ移動自在となっている。この移動自在となっている上側ピン30の先端部30aをアライメント微調整板20の貫通孔20aに挿通することにより、先端部30aを正確に配線電極に導くことができる。そして、これにより、上側ピンと配線電極とを確実に接触させることができる。
ところで、このプローブ装置10の組み立ては、プローブピン18の上孔14aおよび下孔16aへの挿通工程などからなり、従来のカンチレバータイプにおけるプローブ針の接着工程のような全体の精度に影響を及ぼす工程がない。したがって、あらかじめ各構成部材(下側支持板16やプローブピン18など)を高精度で製作しておけば、組み立て工程においてその精度が大きく狂うことがない。従来のカンチレバータイプでは、各部材を高精度に製作しても、プローブ針の接着工程で精度のばらつき(特に針先端の位置のばらつき)が生じるため、人手による微調整が必要とされていた。しかし、本実施の形態のプローブ装置10の組み立て工程には、そのような全体の精度に影響を及ぼす工程がなく、組み立て工程を容易に自動化しても高精度のプローブ装置が製造できる。そのため、廉価で精度の良いプローブ装置を提供できる。
次に、液晶パネル40を検査する際の本プローブ装置10の位置決めについて図4を用いて説明する。液晶パネル40を検査する場合は、下側ピン32が被検査電極44上にくるようにプローブ装置を位置決めする必要がある。この位置決めのために、本実施の形態では、下側支持板16の前端16bにプローブ装置10の位置決めの基準マークとなる基準切り欠き28を設けている。これは、下側支持板16の前端16bに設けられた半円状切り欠きで、左右両側にそれぞれ設けられている。この基準切り欠き28は、その中心と被検査電極44の中心と合わせると、下側ピン32が被検査電極44上にくるような位置に設けられている。また、上側支持板14は、下側支持板16に対して後側にずれているため(図2参照)、プローブ装置10を上面から見た場合、前端16bに形成された基準切り欠き28が見えるようになっている。
したがって、液晶パネル40を検査する際は、この基準切り欠き28の中心と電極の中心とが合うようにプローブ装置10を位置決めする。これにより、上側支持板14に遮られて見ることができない下側ピン32を確実に被検査電極44上に配置することができる。
なお、本実施の形態では、半円状の切り欠きであるが、他の形状であってもよい。また、切り欠きでなく単なる下側支持板16の表面に印刷などで記されたマーク(直線や曲線)であってもよい。また、本実施の形態では、基準切り欠き28を左右両側に設けている。左右両側に設けることにより、より確実に位置決めができるようになる。しかし、左側または右側のみでもよく、他の位置、例えば、中央に一個だけでも当然よい。
次に、このように位置決めされたプローブ装置10のプローブピン18と被検査電極44とのコンタクト時の動きについて図6を用いて説明する。
プローブピン18と被検査電極44とのコンタクトの際には、プローブ装置10を液晶パネル40に対して位置決めした後、液晶パネル40を徐々にZ方向上側に移動させて、下側ピン32と被検査電極44とを接触させる。このとき、確実に接触させるために、液晶パネル40を、僅かにオーバードライブさせる。すなわち、液晶パネル40を、下側ピン32と被検査電極44とが接触できる位置から、さらに、微小距離、上側に移動させる。このようなオーバードライブをさせるのは、確実なコンタクトと、下側ピン32の高さのばらつき吸収およびスクラッチ作用の発生のためである。
液晶パネル40をオーバードライブ、すなわち、本来の接触高さから更に上側に移動させると、下側ピン32に垂直上向きの力がかかる。この垂直上向きの力により、連結部34に弾性変形が生じ、湾曲の度合い(曲率)が大きくなる。この連結部34の弾性変形により、下側ピンの高さばらつきが吸収される。また、連結部34の変形に伴って、連結部34に接続されている下側ピン32に微小角度の傾斜が生じる(図6の破線を参照)。この傾斜は、下側ピン32の先端が被検査電極44表面に接触した状態で生じる。そのため、下側ピン32の先端は、被検査電極44表面上を微小距離移動し、これにより被検査電極44表面を微小量削る、スクラッチ作用が生じる。
被検査電極44の表面は、上述したように絶縁体である薄い酸化膜で覆われており、単に下側ピン32を接触させただけでは、電気的コンタクトが得られない。しかし、下側ピン32の先端で被検査電極44表面を微小量削ることにより、酸化膜を削り取り、下側ピン32の先端を導電体である新生面に接触させることができる。
つまり、オーバードライブさせることにより、下側ピン32の高さのばらつきが吸収され、かつ、スクラッチ作用が生じるため、良好な電気的コンタクトを得ることができる。
本プローブ装置10では、従来のカンチレバータイプに比べ過剰なスクラッチ作用(削り過ぎ)が生じることがない。これは、下側ピン32の先端が過剰に移動(傾斜)しようとすると、下側ピン32が下孔16aの内壁にぶつかり、その動きが制限されるからである。また、従来のスプリングタイプと異なり、下側ピン32を僅かに前後に滑らせる構成となっているため、接触時に被検査電極44表面を削ることができる。したがって、本プローブ装置10によれば容易に良好な電気的コンタクトを得ることができる。
以上、説明したように本実施の形態によれば、液晶パネルの検査において良好な電気的コンタクトを得ることができる。また、その組み立て工程には、全体の精度に影響を及ぼす工程がないため、製造工程を自動化しても高精度のプローブ装置を製造できる。これにより廉価で高精度のプローブ装置を提供できる。
なお、本実施の形態では、フラットパネルディスプレイとして液晶パネルを用いているが、他のフラットパネルディスプレイでも当然よい。また、列状電極として被検査電極としては、フラットパネルディスプレイ上に配設された列状の電極であれば、透明電極、Csパターン電極やその他の電極であってもよい。また、COG(Chip On Glass)等のように、電極の端部が横一列に並ばず、コの字、ロの字形状に並び、端部が僅かに曲がっている電極であってもよい。
また、検査用回路基板として液晶パネル用のドライバICがボンディングされたTCPを用いているが、他の基板であってもよい。例えば、列状電極のオープン、ショートを検出するための回路が装着された基板などであってもよい。
10 プローブ装置、14 上側支持板、14a 上孔、16 下側支持板、16a 下孔、16b 前端、18 プローブピン、20 アライメント微調整板、20a 貫通孔、28 基準切り欠き、30 上側ピン、32 下側ピン、34 連結部、44 被検査電極。