JP2005052124A - 加熱凝固卵黄およびこれを用いた加工食品 - Google Patents

加熱凝固卵黄およびこれを用いた加工食品 Download PDF

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Abstract

【課題】 長期間保存したとしてもホクホクした食感が維持され、しかもレトルト処理したとしてもホクホクした食感及び好ましい色調が維持され、油分の分離が生じ難いレトルト耐性を有した加熱凝固卵黄、およびこれを食材として用いた加工食品を提供する。
【解決手段】 卵黄を含んでなる水不溶性乾燥卵粉粒子、卵黄(前記水不溶性乾燥卵粉を除く)及び食用油脂を配合したスラリーを加熱凝固してなる加熱凝固卵黄であって、リゾリン脂質が製品に対して0.1〜5%含有し、pHが4.0〜7.0である加熱凝固卵黄、およびこれを食材として用いた加工食品。
【選択図】 無し

Description

本発明は、長期保存してもホクホクした食感が維持され、しかもレトルト耐性を有した卵黄を主成分とする加熱凝固卵黄およびこれを用いた加工食品に関する。
殻付きのまま加熱凝固させた茹で卵は、その卵黄部がホクホクした独特の食感を有しているのに対し、鶏卵を割卵分離して得られる卵黄液を単に加熱凝固させるとゴム様の食感となる。このような食感の違いは、殻付きの鶏卵は、その卵黄部において、多数の卵黄球が存在するが、割卵することで卵黄球が容易に壊れることから、その卵黄球の有無が加熱凝固させたときの食感へ大きく影響すると言われている。
茹で卵を利用した代表的な加工食品としては例えば、タマゴサラダ、タマゴスプレッド、タマゴフィリング等がある。これらの加工食品は上述したとおり茹で卵より得られる加熱凝固した卵黄のホクホクした食感を利用したものである。
均一な茹で卵を工業的規模で生産する場合は、タマゴの大きさ、加熱処理する前のタマゴの品温あるいは加熱処理条件等、様々な諸条件を考慮する必要がある。しかしながら、十分に考慮したとしても、得られる茹で卵によっては、卵黄部が半熟状となったり、あるいは卵黄部の表面に硫化黒変(緑色)が生じる場合があった。また、茹で卵の殻を機械的に剥く際に、殻の破片が茹で卵(製品)に混入する場合があった。したがって、このような茹で卵を食材として上述の加工食品等に用いると、加工食品の食感に影響するという問題があった。
そこで、殻の破片混入が殆どない割卵分離して得られる卵黄液を利用した加熱凝固してなる加工卵黄であって、当該加熱凝固卵黄がホクホクした食感を有し、しかも外観に優れ、工業的規模でも均一に量産できる加工卵黄の開発が切望されている。また、近年、常温で流通することができるレトルト加工食品の需要が高まっており、その食材としてレトルト処理したとしても風味、食感及び外観が損なわれ難い加熱凝固卵黄の開発が切望されている。
このような状況下、従来より、茹で卵の凝固した黄身に近似した加熱凝固卵黄に関して様々提案されている。例えば、特開平11−103828号公報(特許文献1)には、糊化後、結晶化した加工澱粉を鶏卵液に配合し、これを加熱凝固した加熱凝固卵黄が、特許第2524989号公報(特許文献2)には、鶏卵、牛乳、澱粉及び食用油脂を配合したスラリーを加熱凝固した加熱凝固卵黄が、特公平7−83674号公報(特許文献3)には、前記スラリーを100℃以上で加熱凝固した加熱凝固卵黄が開示されている。
しかしながら、これらの加熱凝固卵黄をそのまま、あるいは加工食品に加工し、これをチルドあるいは常温で保存すると、加熱凝固卵黄のホクホクした食感が次第に消失する傾向にあった。
さらに、これらの加熱凝固卵黄をFが4以上の加熱殺菌を施した常温流通可能なレトルト加工食品用の食材として用いた場合、加熱凝固卵黄のホクホクした食感や卵黄風味が消失するばかりか、加熱凝固卵黄より油分が分離し加工食品の外観を損なうという問題があった。
また、特公平5−5466号公報(特許文献4)には、噴霧乾燥した乾燥卵黄粉を蒸気等で加熱変性した卵黄を含んでなる水不溶性乾燥卵粉粒子が提案されており、当該水不溶性乾燥卵粉粒子を水戻しするとホクホクした食感となることが記載されている。
しかしながら、前記水戻しした水不溶性乾燥卵粉粒子は、茹で卵の卵黄部のような弾力性のあるホクホクした食感というよりは、むしろザラ付いた食感を有しており好ましい食感とは言い難いものであった。
特開平11−103828号公報 特許第2524989号公報 特公平7−83674号公報 特公平5−5466号公報
そこで、本発明の目的は、長期間保存したとしてもホクホクした食感が維持され、しかもレトルト処理したとしてもホクホクした食感及び好ましい色調が維持され、油分の分離が生じ難いレトルト耐性を有した加熱凝固卵黄を提供するものである。また、本発明は、前記加熱凝固卵黄を食材として用いた加工食品を提供するものである。
本発明者等は、上記目的を達成すべく配合原料等、様々な諸条件について鋭意研究を重ねた結果、特定の食材を特定量含有させ、かつ特定のpHとするならば、意外にも長期間保存してもホクホクした食感が維持され、しかもレトルト耐性を有した加熱凝固卵黄が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 卵黄を含んでなる水不溶性乾燥卵粉粒子、卵黄(前記水不溶性乾燥卵粉を除く)及び食用油脂を配合したスラリーを加熱凝固してなる加熱凝固卵黄であって、リゾリン脂質が製品に対して0.1〜5%含有し、pHが4.0〜7.0である加熱凝固卵黄、
(2) リゾリン脂質の脂肪酸残基の50%以上が飽和脂肪酸である(1)の加熱凝固卵黄、
(3) 食用油脂の一部あるいは全部が卵黄油である(1)の加熱凝固卵黄、
(4) 卵黄油が酵素処理卵黄油である(3)の加熱凝固卵黄、
(5) スラリーに化工澱粉および/または湿熱処理澱粉を配合してなる(1)乃至(4)のいずれかの加熱凝固卵黄、
(6) 化工澱粉および/または湿熱処理澱粉の総配合量が、製品に対し1〜10%である(5)の加熱凝固卵黄、
(7) スラリーにガム質を配合してなる(5)又は(6)のいずれかの加熱凝固卵黄、
(8) ガム質の一部あるいは全部がキサンタンガムである(7)の加熱凝固卵黄、
(9) ガム質の配合量が、製品に対し0.3〜2%である(7)又は(8)の加熱凝固卵黄、
(10) (1)乃至(9)のいずれかの加熱凝固卵黄を食材として用いた加工食品、
(11) 加工食品がFが4以上のレトルト処理を施されてある(10)の加工食品、
である。
以上の構成により、本発明の加熱凝固卵黄は、長期間保存したとしてもホクホクした食感が維持され、しかもレトルト処理したとしてもホクホクした食感及び好ましい色調が維持され、油分の分離が生じ難くレトルト耐性を有している。特に、前記リゾリン脂質の脂肪酸残基の50%以上が飽和脂肪酸であると、ホクホクした食感が更に維持される。
また、食用油脂の一部あるいは全部に卵黄油を用いると、卵黄風味に優れたものとなる。そして、スラリーに化工澱粉および/または湿熱処理澱粉を配合したものを用いると、保存及びレトルト処理してもホクホクした食感が更に維持され、これらの澱粉を配合したスラリーに更にガム質を配合すると、スラリー中の澱粉を均一に分散した状態で維持することが容易に可能となり、全体が均一な食感の加熱凝固卵黄となる。
したがって、本発明の加熱凝固卵黄は、ホクホクした食感が長期間維持されることから、茹で卵を利用した加工食品において、従来得られなかった長期間ホクホクした食感が維持された加工食品を提供することが可能となり、また、本発明の加熱凝固卵黄は、更にレトルト耐性を有すことから、茹で卵を利用することが出来なかった各種レトルト処理を施した加工食品にも利用することが可能となる。
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
本発明は、卵黄を含んでなる水不溶性乾燥卵粉粒子、卵黄(前記水不溶性乾燥卵粉粒子を除く)及び食用油脂を配合したスラリーを加熱凝固してなる加熱凝固卵黄である。
本発明において卵黄を含んでなる水不溶性乾燥卵粉粒子とは、特公平5−5466号公報(特許文献4)に記載の水不溶性乾燥卵粉粒子のことである。つまり、卵黄を含んでなる水不溶性乾燥卵粉粒子とは、卵黄を含む乾燥した卵(例えば、乾燥卵黄、乾燥全卵等)の粒子であって実質的に水に溶解しないものをいう。実質的に水に溶解しないとは、本発明においては当該粒子を約10倍量の3%食塩水の中に投入し、ゆるく5分間撹拌静置した場合に、約8割以上が沈降あるいは浮上し、いずれにしてもその水に溶解あるいは分散しないことをいう。この水への不溶性は、NSI(窒素溶解指数:溶解には50倍量の3%食塩水を使って測定)で示せば略30以下に相当する。
水不溶性卵粉粒子は卵黄を含んでなるものであるが、水不溶性卵粉粒子中の卵黄の含有量は、本発明の加熱凝固卵黄が茹で卵の卵黄部のホクホクした食感を有し、当該食感が維持されることを目的とし、卵黄を主成分とするものであることから、水不溶性乾燥卵粉粒子に対し固形分換算で5割以上が好ましい。そして、本発明の加熱凝固卵黄に対する水不溶性卵粉粒子の配合量は、製品に対し1〜15%が好ましく、2〜10%がより好ましい。水不溶性卵粉粒子を前記範囲の配合量とすると、水不溶性卵粉粒子に由来するザラ付きが感じられず、他の原料と組合わせることによりホクホクした食感が得られ易い傾向となり好ましい。
なお、卵黄を含んでなる水不溶性乾燥卵粉粒子の代表的な製造方法としては、特公平5−5466号公報(特許文献4)に記載されているように、卵液(卵黄液、全卵液等)を噴霧乾燥方法の常法、代表的には送風温度130〜200℃で乾燥した乾燥卵粉を、例えば80〜120℃の蒸気で2秒〜5分間程度処理する等の方法が挙げられるが、本発明では、上述の製造方法に限定するものではない。
本発明において卵黄とは、リポ蛋白質を主成分とした卵黄成分のことであり、前述した水不溶性卵粉粒子は除かれる。このような卵黄としては、例えば、鶏卵を割卵し卵白液と分離した卵黄液、あるいはこれを殺菌した殺菌卵黄、冷凍した冷凍卵黄、噴霧乾燥、凍結乾燥等により乾燥させた乾燥卵黄、および後述するホスホリパーゼA等の酵素で処理した酵素処理卵黄等が挙げられる。また、本発明では、上述の卵黄ばかりでなく卵黄成分を含有した全卵、あるいは上述の処理等を施した全卵を原料として用いても良く、この場合、本発明の卵黄とは、全卵の卵黄部に相当する部分である。卵黄の配合量は、製品に対し固形物換算で2〜40%が好ましく、3〜30%がより好ましい。卵黄を前記範囲の配合量とすると、他の原料と組合わせることによりホクホクした食感が得られ易い傾向となり好ましい。
本発明で用いる食用油脂としては、食用に供される油脂であればいずれの油脂でも良く、例えば、卵黄油、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油等の動植物油またはこれらの精製油、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂、または各種スパイスオイル等が挙げられる。本発明では、これらの1種または2種以上組合わせて用いると良く、食用油脂の配合量は、製品に対して1〜25%が好ましく、2〜20%がより好ましい。食用油脂を前記範囲の配合量とすると、他の原料と組合わせることで、ホクホクした食感が得られ易くなるばかりでなく、更にコク味のある好ましい風味が得られ易い傾向となり好ましい。
さらに上述した食用油脂の内、食用油脂の一部あるいは全部として卵黄油を用いるならば、本発明の加熱凝固卵黄がより卵風味に優れたものが得られ好ましい。特に、卵黄油の一種であるリン脂質を含有した卵黄油をホスホリパーゼAで処理した酵素処理卵黄油は、卵黄油中に含有するリン脂質の一部あるいは全部をホスホリパーゼAで酵素処理しリゾリン脂質に変換した油脂であり、本発明の原料として使用する後述のリゾリン脂質を含有していることから、本発明の加熱凝固卵黄が卵風味に優れていることに加えホクホクした食感が消失することなく維持され、しかもレトルト耐性を有しさらに好ましい。ここで卵黄油とは、卵黄より抽出した油脂で、アセトンに溶解するトリグリセリド、コレステロール及び脂肪酸等のアセトン可溶物が40%より多いものをいう。また酵素処理卵黄油とは、アセトン可溶物が40%より多く、かつ卵黄油の全脂質に対しリゾリン脂質の含有量がイヤトロスキャン法(TLC−FID法)で5%以上のものをいう。市販品としては、例えば、卵黄油である「卵黄レシチンPL−30(キユーピー(株)製、アセトン可溶物:約70%))」や酵素処理卵黄油である「卵黄レシチンLPL−20(キユーピー(株)製、アセトン可溶物:約80%、リゾリン脂質:約20%)」が挙げられる。
本発明の加熱凝固卵黄は、上述した食材を必須原料として配合したスラリー、つまり、均質化処理を施したものを加熱凝固させたものであり、ここで、加熱凝固してなる加熱凝固卵黄とは、目視で観察したとき加熱凝固卵黄の表面ばかりでなく中身も凝固し、全体において凝固していない部分が殆ど観察されない状態にあるものを意味する。特に、本発明の加熱凝固卵黄は、茹で卵の凝固した卵黄部に近似した加工卵黄である。その大きさや形状は任意であり、具体的には例えば、前記スラリーを加熱工程により単に凝固させた状態のもの、更に該凝固物をダイサー、フードカッター、撹拌機等により定形あるいは不定形の大きさや形状に処理したもの等が挙げられる。また、加熱凝固する方法としては、スラリーを凝固する温度、具体的には75℃以上、好ましくは80℃以上に加熱し凝固させる方法を用いればよく、その手段は任意であるが、例えば、スラリーをトレー等の容器に移し、蒸煮、通電加熱、マイクロ波加熱等により加熱処理を行なう、あるいはポリ袋等の容器に充填密封し、熱水や蒸気等により加熱処理を行なう方法等が挙げられる。
本発明の加熱凝固卵黄は、製品中にリゾリン脂質を0.1〜5%、好ましくは0.2〜3%含有していることが肝要である。リゾリン脂質の含有量が前記範囲より少ないと、製造直後は、上述した卵黄を含んでなる水不溶性乾燥卵粉粒子、卵黄(前記水不溶性乾燥卵粉粒子を除く)及び食用油脂等の配合原料により、ホクホクした食感の加熱凝固卵黄が得られるが、長期間保存すると次第にホクホクした食感が消失してしまい好ましくない。一方、含有量が前記範囲より多いと、スラリーの配合原料にもよるがスラリーが加熱凝固し難くなったり、製品が苦味を呈し好ましくない。
ここで、リゾリン脂質とは、リン脂質のグリセロ骨格の1位または2位のみに脂肪酸がエステル結合したものであり。リゾリン脂質は、例えば、1位および2位に脂肪酸が結合したジアシルグリセロリン脂質、例えば卵黄リン脂質、大豆リン脂質等をリン脂質分解酵素であるホスホリパーゼAで加水分解する等の方法により得られる。ホスホリパーゼAには、ホスホリパーゼA1およびホスホリパーゼAがあり、前者はジアシルグリセロリン脂質のグリセロ骨格の1位を加水分解し、後者は2位を加水分解して、リゾリン脂質であるモノアシルグリセロリン脂質となる。リゾリン脂質の種類としては、リゾリン脂質のリン酸基に結合した塩基の種類により、例えば、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジン酸等に分けられる。本発明では、上述したこれらのリゾリン脂質の1種または2種以上を組合わせて用いると良く、2種以上のリゾリン脂質を含有した天然由来のリゾリン脂質としては例えば、リゾホスファチジルコリン及びリゾホスファチジルエタノールアミンを含有した卵黄リゾリン脂質、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルイノシトール及びリゾホスファチジルセリンを含有した大豆リゾリン脂質等が挙げられる。
本発明のリゾリン脂質としては、リゾリン脂質そのものだけでなく、リゾリン脂質を比較的多く含有した油脂や卵黄等の食材を用いても良い。なお、このような食材を用いる場合の本発明のリゾリン脂質とは、当該食材に含有するリゾリン脂質部分を意味する。リゾリン脂質を比較的多く含有した油脂としては例えば、上述した酵素処理卵黄油(アセトン可溶物が40%より多いもの)、あるいは酵素処理レシチン(アセトン可溶物が40%以下のもの)等が挙げられる。
またリゾリン脂質を比較的多く含有した卵黄としては、上述した卵黄をホスホリパーゼAで処理したホスホリパーゼA処理卵黄等が挙げられる。ホスホリパーゼA処理卵黄とは、卵黄の主成分であるリポ蛋白質(卵黄蛋白質、リン脂質、トリグリセリドおよびコレステロール等からなる複合体)をホスホリパーゼA、あるいはホスホリパーゼAを含有した酵素で加水分解してリポ蛋白質の構成成分であるリン脂質の一部あるいは全部をリゾリン脂質に変換した卵黄である。本発明では、リゾリン脂質への変換率(リゾ化率)については、特に規定していないが、ホクホクした食感の長期間の維持及びレトルト耐性に優れたものを得るために、リゾ化率20%以上が望ましく、30%以上がより望ましい。ここでリゾ化率とは、イヤトロスキャン法(TLC−FID法)で分析したホスホリパーゼA処理卵黄中に含まれるリゾリン脂質とリン脂質の総和に対するリゾリン脂質の質量割合を意味する。
また本発明のリゾリン脂質は、当該リゾリン脂質の脂肪酸残基において、飽和脂肪酸の割合が50%以上であることが好ましい。本発明の加熱凝固卵黄にリゾリン脂質の脂肪酸残基の50%以上が飽和脂肪酸であるリゾリン脂質を含有させると、長期間保存してもホクホクした食感が更に維持され易いからである。このようなリゾリン脂質を得る方法としては、例えば、卵黄リン脂質は1位の脂肪酸残基の90%程度が飽和脂肪酸であることから、卵黄リン脂質あるいは卵黄をホスホリパーゼAで加水分解する方法、また、大豆リン脂質の場合は、1位および2位の脂肪酸残基とも飽和型が50%より少ないことから、大豆リン脂質をホスホリパーゼAで加水分解した後、水素添加処理により脂肪酸残基の不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸に変換させる方法、大豆リン脂質の脂肪酸残基を飽和脂肪酸にエステル交換した後、ホスホリパーゼAで加水分解する方法、あるいは大豆リン脂質をホスホリパーゼAで加水分解した後、得られた大豆リゾリン脂質の脂肪酸残基を飽和脂肪酸にエステル交換する方法等が挙げられる。リゾリン脂質の脂肪酸残基の50%以上が飽和脂肪酸であるリゾリン脂質を含有した市販品としては、上述したキユーピー(株)製の「卵黄レシチンLPL−20」等が挙げられる。なお、リゾリン脂質の脂肪酸組成を分析するには、リゾリン脂質を分画した後、常法に則りガスクロマトグラフで分析するとよい。
本発明の加熱凝固卵黄は、上述した原料を均一に混合したスラリーを加熱凝固させたものであるが、当該スラリーを加熱凝固後(製品)のpHが4.0〜7.0、好ましくは5.0〜7.0となるようにpH調整することが肝要である。pHが前記範囲より低いと、加熱凝固卵黄が酸味を呈し、卵黄風味に欠けており好ましくない。一方、pHが前記範囲より大きいと、スラリーを加熱凝固したとき、あるいは更に加工食品と共にレトルト処理したときに硫化黒変等、黄色味が変色してしまい好ましくない。pH調整材としては、食用の原料であれば任意のものを用いることが出来る。例えば、食酢、果汁、発酵乳や、クエン酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酢酸等の有機酸またはその塩、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、本発明では、これらの1種または2種以上を組合わせて用いるとよい。製品のpHを前記範囲とするには、食酢や酢酸等の加熱凝固工程で揮発性を示すものをpH調整材として用い、かつ加熱凝固工程を開放系で行なう場合は、加熱凝固の際に製品のpHがやや上昇することから、スラリーのpHを所望する製品のpHよりやや低め、具体的には、0.5〜1程度低めにpH調整するとよい。また、上述の以外のpH調整材や加熱凝固工程を密封系で行う場合は、通常、加熱凝固前後でpHが変動することが殆ど無いので、スラリーを前記範囲の所望のpHに調整すればよい。
なお、本発明におけるpHは、(株)堀場製作所製のpH測定装置「F−22」を用い品温20℃における値であり、本発明の加熱凝固卵黄のpHは、加工卵黄をロボクープ社製「ROBOT-COUPE CUTTING MIXER R-551形式」(平刃カッター使用)を用いて3000rpmでペースト状になるまで均質化したものを前記方法により測定した値である。また、製品中のリゾリン脂質の含有量は、前記ペースト状物の所定量をフリーズドライにより水分を除去し、得られた乾燥物から溶剤(クロロホルム:メタノール=2:1(容量比))で全脂質成分を抽出した後、溶剤を蒸発乾固して、得られた全脂質成分の質量を測定し、製品に対する全脂質成分の含有量を算出する。そして、得られた全脂質成分の一部を前記溶剤(クロロホルム:メタノール=2:1(容量比))に溶解して濃度5%(W/V)とし、この溶液を用いてイヤトロスキャン法(TLC−FID法)により脂質組成を求め、得られた全脂質成分に対するリゾリン脂質の含有量と、前記製品に対する全脂質成分の含有量により、製品に対するリゾリン脂質の含有量を算出した値であり、この値は、製品の配合原料より算出した値と略一致する。
本発明は、上述した原料に加えスラリーに化工澱粉および/または湿熱処理澱粉を配合したものを用いると、長期間保存しても、よりホクホクした食感が維持され、またレトルト処理してもよりホクホクした食感を有し易く好ましい。
化工澱粉としては、例えば、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、ワキシーコーンスターチ、レギュラーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ澱粉などの天然澱粉を、冷水膨潤化処理や、架橋、エステル化、エーテル化、アルデヒド化、酸化等の処理を施した澱粉等が挙げられる。また湿熱処理澱粉としては、例えば、特開平4−130102号公報に記載された方法、すなわち天然澱粉を減圧下に置いた後、蒸気導入による加圧加熱を行ない、あるいはこの操作を繰り返した後、冷却し、粉砕して製造する方法等により得られる澱粉が挙げられる。本発明では、これらの1種または2種以上組合わせて用いると良く、澱粉の配合量としては、本発明の加熱凝固卵黄の配合原料にもよるが、製品に対して1〜10%が好ましく、2〜8%がより好ましい。この範囲の配合量とする上述した澱粉による効果を奏し易く、また澱粉特有の風味も感じられず好ましいからである。
また、本発明の加熱凝固卵黄は、化工澱粉および/または湿熱処理澱粉を配合したスラリーに更にガム質を配合したものを用いると、スラリー中の澱粉を均一に分散した状態で維持することが容易に可能となり、全体が均一な食感の加熱凝固卵黄を得られ好ましい。ガム質としては、例えば、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、タマリンドシードガム、アラビアガム、カラヤガム等が挙げられる。本発明では、これらの1種または2種以上を組合わせて用いるとよいが、特に、キサンタンガムは、上記効果に加え、製品の離水を防止し、外観に優れ好ましい。ガム質の配合量は、製品に対して0.3〜2%が好ましく、0.3〜1%がより好ましい。この範囲の配合量とする上述したガム質による効果を奏し易く、またガム質特有の風味も感じられず好ましいからである。
本発明の加熱凝固卵黄の製造方法は、特に限定するものではなく、例えば、常法に則り行なえばよい。つまり、まず、上述した配合原料を含めた全原料を準備する。この準備した全原料をミキサー等の混合機に投入し十分に混合し均質なスラリーを製する。次に、このスラリーをトレー等の容器に移し、蒸気、通電加熱あるいはマイクロ波加熱等の加熱処理により加熱凝固させる。あるいはスラリーをポリ袋等に充填密封し、これを熱水や蒸気等の加熱処理により加熱凝固させる方法等により製すればよい。なお、本発明は、製品のpHが4.0〜7.0の範囲とする必要があるので、上述の方法の場合、製品のpHが4.0〜7.0の範囲となるようにpH調整材の種類および配合量を予備試験により決めておく必要がある。また、上述した配合原料以外の原料は、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じ選択すればよい。そのような他の原料としては、例えば、食塩、砂糖、醤油、グルタミン酸ナトリウム、動植物等のエキス類、アミノ酸等の調味料類、卵白、卵白アルブミン等の卵白蛋白、ホエー、カゼインナトリウム、ラクトアルブミン等の乳蛋白、魚肉蛋白、畜肉蛋白、血清蛋白、小麦蛋白、ゼラチン等の蛋白質類、鉄、カルシウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、銅、セレン、マンガン、コバルト、ヨウ素等のミネラル類、あるいはこれらミネラル類を高度に含有した酵母、スクラロース、ステビア、マルチトール、アセスルファムカリウム等の甘味料、からし粉、胡椒等の香辛料、酢酸ソーダ、グリシン、ポリリジン、卵白リゾチーム、プロタミン等の静菌剤、β―カロチン、クチナシ、アナトー色素などの着色成分、デキストリン、オリゴ糖、糖アルコール、水飴、等の糖類、その他、食物繊維、ビタミン類、キレート剤等が挙げられる。
さらに本発明は、上述した加熱凝固卵黄を食材として用いた加工食品も本発明の1つである。一般的に加工食品としては、流通温度により、冷凍食品、チルド(冷蔵)食品および常温流通食品に分れ、更に常温流通食品は、Fが4以上の加圧加熱殺菌を施したレトルト加工食品と、食品のpHおよび/または水分活性により常温流通を可能とした前記レトルト加工食品以外のものとに分れる。本発明の加工食品は、上述のいずれの食品でもよいが、特に、本発明の加熱凝固卵黄がレトルト耐性を有していることから、レトルト加工食品に好適である。本発明の加工食品としては、茹で卵を利用した代表的な加工食品である例えば、タマゴサラダ、タマゴスプレッド、タマゴフィリング、タルタルソース等が挙げられるが、本発明の加熱凝固卵黄を利用する可能性がある加工食品であればいずれのものでも良く、例えば、パスタソース、カレー、シチュー、スープ、お粥、雑炊、目玉焼き、オムレツ、ラーメン等が挙げられる。なお、レトルト処理(加圧加熱殺菌)において、Fが4となるように食品(容器詰め)をレトルト処理するとは、当該食品の中心部の品温を120℃で4分間加熱すること又は同等の効力を有する条件で処理を施すことをいう。
以下、本発明の加熱凝固卵黄およびこれを食材として用いた加工食品について、実施例および試験例に基き具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例および試験例に限定するものではない。
[実施例1](加熱凝固卵黄:発明品1)
1)「卵黄を含んでなる水不溶性乾燥卵粉粒子」の製造
まず、下記に示す原料の内、卵黄を含んでなる水不溶性乾燥卵粉粒子を製した。つまり、割卵し卵白から分離して得た卵黄液10kgを送風温度175℃で噴霧乾燥した。得られた乾燥卵黄粉は平均粒子径が100μmのほぼ球状の粒子であった。次に、この乾燥卵黄粉を布を敷いた蒸し器の上に1cmの厚さに広げ、100℃の熱蒸気に2分間さらして加熱変性させ水不溶性乾燥卵粉粒子を製した。得られた卵黄を含んでなる水不溶性乾燥卵粉粒子(以下、「水不溶性乾燥卵粉粒子」と省略)は、実質的に水に溶解しないものであり、NSIは15であった。
2)「加熱凝固卵黄(発明品1)」の製造
下記に示す全原料をミキサーに投入し十分に混合しスラリーを製した。このスラリーをボイル用パウチに3kgずつ充填密封した。この密封物を90℃の熱水中で60分間、加熱凝固処理を行なった後、冷水で冷却し、本発明の加熱凝固卵黄(発明品1)を製した。
得られた加熱凝固卵黄は、黄色味を呈し、ホクホクした食感および卵黄風味を有したものであった。
なお、得られた加熱凝固卵黄は、pHが6.2、リゾリン脂質含量が製品に対し約0.4%、リゾリン脂質の脂肪酸残基の約90%が飽和脂肪酸であった。
<加熱凝固卵黄の配合割合>
殺菌卵白 25%
殺菌全卵 20%
ホスホリパーゼA処理卵黄 6%
(卵黄液をホスホリパーゼAで処理したリゾ化率約50%の卵黄)
水不溶性乾燥卵粉粒子 5%
化工澱粉 4%
(日本エヌエスシー(株)製「コルフロ67」)
サラダ油 4%
食酢(酸度:4%) 3.5%
グラニュー糖 2%
食塩 0.65%
キサンタンガム 0.6%
酵素処理卵黄油 0.6%
(キユーピー(株)製「卵黄レシチンLPL−20」:リゾリン脂質を約20%含有、リゾリン脂質の脂肪酸残基の約90%が飽和脂肪酸)
清水 残余
―――――――――――――――――――
合計 100%
[実施例2](加熱凝固卵黄:本発明品2)
下記に示す原料を準備し、実施例1と同様な方法で加熱凝固卵黄(本発明品2)を製した。
得られた加熱凝固卵黄は、黄色味を呈し、ホクホクした食感を有し、卵黄風味にやや欠けるものの問題の無い程度のものであった。
なお、得られた加熱凝固卵黄は、pHが6.3、リゾリン脂質含量が製品に対し約0.5%、リゾリン脂質の脂肪酸残基の約40%が飽和脂肪酸であった。
<加熱凝固卵黄の配合割合>
殺菌卵白 25%
殺菌全卵 20%
卵黄液 6%
水不溶性乾燥卵粉粒子 5%
(実施例1で用いたものと同じ)
湿熱処理澱粉 4%
(日本エヌエスシー(株)製「ノベーション」)
サラダ油 4%
食酢(酸度:4%) 3.5%
グラニュー糖 2%
食塩 0.65%
キサンタンガム 0.6%
大豆リゾホスファチジルコリン 0.5%
(リゾリン脂質を約95%含有、リゾリン脂質の脂肪酸残基の約40%が飽和脂肪酸)
清水 残余
―――――――――――――――――――
合計 100%
[比較例1](加熱凝固卵黄:比較品1)
実施例1において、配合原料のホスホリパーゼA処理卵黄を卵黄液、酵素処理卵黄油をサラダ油、及び食酢を清水に置き換えした以外は、実施例1と同様な方法で加熱凝固卵黄(比較品1)を製した。
得られた加熱凝固卵黄は、ホクホクした食感を有し、卵黄風味がやや劣るが問題の無い程度であり、黄色味が欠けたものであった。
なお、得られた加熱凝固卵黄は、pHが7.4、リゾリン脂質含量が製品に対し約0.02%であった。
[比較例2](加熱凝固卵黄:比較品2)
実施例1において、配合原料の食酢を清水に置き換えた以外は、実施例1と同様な方法で加熱凝固卵黄(比較品2)を製した。
得られた加熱凝固卵黄は、ホクホクした食感および卵黄風味を有するが、黄色味が欠けたものであった。
なお、得られた加熱凝固卵黄は、pHが7.4、リゾリン脂質含量が製品に対し約0.4%、リゾリン脂質の脂肪酸残基の約90%が飽和脂肪酸であった。
[比較例3](加熱凝固卵黄:比較品3)
実施例1において、製品のpHが3.5となるように食酢を加配し、全量を清水で調整した以外は、実施例1と同様な方法で加熱凝固卵黄(比較品3)を製した。
得られた加熱凝固卵黄は、黄色味を呈し、ホクホクした食感を有するが、酸味を呈し卵黄風味に欠けるものであった。
[比較例4](加熱凝固卵黄:比較品4)
実施例1において、水不溶性乾燥卵粉粒子を当該原料である乾燥卵黄粉に置き換えた以外は、実施例1と同様な方法で加熱凝固卵黄(比較品4)を製した。
得られた加熱凝固卵黄は、黄色味を呈し、卵黄風味を有するが、ホクホクした食感がやや欠けるものであった。
なお、得られた加熱凝固卵黄は、pHが6.2、リゾリン脂質含量が製品に対し約0.4%、リゾリン脂質の脂肪酸残基の約90%が飽和脂肪酸であった。
[実施例3](加熱凝固卵黄を食材として用いたタマゴスプレッド:本発明品3)
下記に示す原料を準備した。つまり、実施例1で得られた加熱凝固卵黄(本発明品1)をダイサーで約1cmのダイス状にカットしたもの、茹で卵の卵白部をダイサーで約0.5cmのダイス状にカットしたもの、またマヨネーズは市販品(キユーピー(株)製)それぞれ準備した。全原料をミキサーに投入し、加熱凝固卵黄が崩れない程度の撹拌速度でゆっくり撹拌しながら十分に混合し、これを3kgずつポリ袋に充填密封しタマゴスプレッド(本発明品3)を製した。
<タマゴスプレッドの配合割合>
加熱凝固卵黄 40%
(本発明品1:約1cmダイスカット品)
茹で卵の卵白部 33%
(約0.5cmダイスカット品)
マヨネーズ 27%
―――――――――――――――――――――――
合計 100%
[実施例4](加熱凝固卵黄を食材として用いたタマゴスプレッド:本発明品4)
実施例3において、配合原料として用いた実施例1の加熱凝固卵黄(本発明品1)に換えて実施例2の加熱凝固卵黄(本発明品2)を用いた以外は、実施例3と同様な方法でタマゴスプレッド(本発明品4)を製した。
[比較例5](加熱凝固卵黄を食材として用いたタマゴスプレッド:比較品5)
実施例3において、配合原料として用いた実施例1の加熱凝固卵黄(本発明品1)に換えて比較例1の加熱凝固卵黄(比較品1)を用いた以外は、実施例3と同様な方法でタマゴスプレッド(比較品5)を製した。
[実施例5](加熱凝固卵黄を食材として用いたレトルトパスタソース:本発明品5)
下記に示す原料を準備した。二重釜に清水を入れ、加熱撹拌しながら牛乳、オリゴ糖アルコール、卵黄液、生クリーム、チーズ、食塩、グルタミン酸ナトリウム及びキサンタンガムを加えて90℃達温後加熱を停止し、実施例1の加熱凝固卵黄(本発明品1)のダイスカット品(約1cm)とブラックペパーを加え加熱凝固卵黄が崩れない程度の撹拌速度でゆっくり仕上げ撹拌しソースを得た。得られたソースを140gずつ耐熱性レトルトパウチに充填密封した後、120℃で25分間(Fが10)レトルト殺菌し、冷却してレトルトパスタソース(本発明品5)を製した。
<レトルトパスタソースの配合割合>
牛乳 60%
加熱凝固卵黄 8%
(本発明品1:約1cmダイスカット品)
オリゴ糖アルコール 8%
卵黄液 5%
生クリーム 5%
チーズ 3%
食塩 1.2%
グルタミン酸ナトリウム 0.8%
キサンタンガム 0.2%
ブラックペパー 0.1%
清水 残余
――――――――――――――――――――
合計 100%
[比較例6](加熱凝固卵黄を食材として用いたレトルトパスタソース:比較品6)
実施例5において、配合原料として用いた実施例1の加熱凝固卵黄(本発明品1)に換えて比較例1の加熱凝固卵黄(比較品1)を用いた以外は、実施例5と同様な方法でレトルトパスタソース(比較品6)を製した。
[比較例7](加熱凝固卵黄を食材として用いたレトルトパスタソース:比較品7)
実施例5において、配合原料として用いた実施例1の加熱凝固卵黄(本発明品1)に換えて比較例2の加熱凝固卵黄(比較品2)を用いた以外は、実施例5と同様な方法でレトルトパスタソース(比較品7)を製した。
[比較例8](加熱凝固卵黄を食材として用いたレトルトパスタソース:比較品8)
実施例5において、配合原料として用いた実施例1の加熱凝固卵黄(本発明品1)に換えて比較例3の加熱凝固卵黄(比較品3)を用いた以外は、実施例5と同様な方法でレトルトパスタソース(比較品8)を製した。
[試験例1]
加熱凝固卵黄のホクホクした食感が長期間保存してもその食感を有するか否か調べるため次のような試験を行なった。つまり、実施例1及び2、並びに比較例1のそれぞれの加熱凝固卵黄(本発明品1及び2、並びに比較品1)を食材として用いた実施例3及び4、並びに比較例5のタマゴスプレッド(本発明品3及び4、並びに比較品5)を各々4℃で1ヶ月間保存した。保存後のタマゴスプレッドから加熱凝固卵黄を取出し、ホクホクした食感を有するか評価した。なお、保存前の加熱凝固卵黄はいずれもホクホクした食感を有していた。また、表中の記号の意味は、下記のとおりである。
<食感>
◎:ホクホクした食感が維持されている。
○:ホクホクした食感にやや欠けるが、問題の無い程度であり、ホクホクした食感がほぼ維持されている。
△:ホクホクした食感にやや欠けている。
×:ホクホクした食感に欠け、ホクホクした食感が消失している。
Figure 2005052124
表1より、リゾリン脂質が製品に対し0.1〜0.5%含有した本発明品の加熱凝固卵黄(本発明品1及び2)は、そうでない比較品(比較品1)に比べ長期間保存してもホクホクした食感が維持されることが理解される。特に、脂肪酸残基の50%以上が飽和脂肪酸であるリゾリン脂質を含有した本発明品1の加熱凝固卵黄は、ホクホクした食感が更に維持され易く好ましいものであった。
[試験例2]
レトルト処理による加熱凝固卵黄の風味(卵黄風味)、食感(ホクホクした食感)及び外観(色調及び油分の分離)への影響を調べるために、実施例1の加熱凝固卵黄(本発明品1)を用いて製した実施例5のレトルトパスタソース(本発明品5)、及び比較例1の加熱凝固卵黄(比較品1)を用いて製した比較例6のレトルトパスタソース(比較品6)を用いて評価した。つまり、各レトルトパスタソースを皿に移し、ダイス状の加熱凝固卵黄を試食して風味及び食感を評価し、色調はダイス状の加熱凝固卵黄を目視にて観察して評価した。また、油分の分離は、加熱凝固卵黄を除いて同様な方法で製したレトルトパスタソースでは油分の分離が殆ど観察されないことにより、ダイス状の加熱凝固卵黄の周辺部、及びソースの表面部を観察し評価した。なお、レトルト処理前の加熱凝固卵黄はいずれもホクホクした食感を有していた。また、表中の記号の意味は、下記のとおりである。
<風味>
◎:卵風味が感じられる。
○:卵風味にやや欠けるが、問題の無い程度である。
△:卵風味にやや欠ける。
×:卵風味に欠ける。
<食感>
◎:ホクホクした食感を有する。
○:ホクホクした食感にやや欠けるが、問題の無い程度である。
△:ホクホクした食感にやや欠ける。
×:ホクホクした食感に欠ける。
<色調>
◎:黄色味を呈している。
○:黄色味にやや欠けるが、問題の無い程度である。
△:黄色味にやや欠ける。
×:黄色味に欠ける。
<油分の分離>
◎:油分の分離が殆ど観察されない。
○:油分の分離がやや観察されるが、問題の無い程度である。
△:油分の分離がやや観察される。
×:油分の分離が多数観察される。
<総合評価>
◎:各評価が「◎」及び「○」であり、かつ各評価の内「◎」が2つ以上のもの
○:総合評価が「◎」以外で、各評価が「△」、「○」又は「◎」であり、かつ各評価の内「△」が1つ以下のもの
△:各評価が「△」、「○」又は「◎」であり、かつ各評価の内「△」が2つ以上のもの
×:いずれかの評価結果が「×」であるもの
Figure 2005052124
表2より、リゾリン脂質が製品に対して0.1〜5%含有し、pHが4.0〜7.0である本発明品1の加熱凝固卵黄は、そうでない比較品1に比べレトルト耐性を有することが理解される。つまり、本発明品の加熱凝固卵黄は、レトルト処理してもホクホクした食感を有し、色調も黄色味を呈し、油分の分離も観察されない好ましいものであった。また、本発明品1は、卵黄油である酵素処理卵黄油を含有していることから、卵黄風味にも優れている。
[試験例3]
加熱凝固卵黄のpHの違いによる風味(卵黄風味)及び色調への影響を調べるために、実施例1の加熱凝固卵黄(本発明品1:pH6.2)を用いて製した実施例5のレトルトパスタソース(本発明品5)、比較例2の加熱凝固卵黄(比較品2:pH7.4)を用いて製した比較例7のレトルトパスタソース(比較品7)、及び比較例3の加熱凝固卵黄(比較品3:pH3.5)を用いて製した比較例8のレトルトパスタソース(比較品8)を用いてレトルト処理前後の状態を評価した。なお、レトルト処理前の加熱凝固卵黄は、レトルトパスタソースの原料として配合したダイスカット品を用いて評価した。また、表中の各記号の意味は、試験例2に準じた。
Figure 2005052124
表3より、pHが4.0〜7.0の範囲にある本発明の加熱凝固卵黄(本発明品1)は、範囲外の比較品(比較品2及び3)に比べレトルト処理前後とも風味及び色調に優れていることが理解される。

Claims (11)

  1. 卵黄を含んでなる水不溶性乾燥卵粉粒子、卵黄(前記水不溶性乾燥卵粉粒子を除く)及び食用油脂を配合したスラリーを加熱凝固してなる加熱凝固卵黄であって、リゾリン脂質が製品に対して0.1〜5%含有し、pHが4.0〜7.0であることを特徴とする加熱凝固卵黄。
  2. リゾリン脂質の脂肪酸残基の50%以上が飽和脂肪酸である請求項1記載の加熱凝固卵黄。
  3. 食用油脂の一部あるいは全部が卵黄油である請求項1記載の加熱凝固卵黄。
  4. 卵黄油が酵素処理卵黄油である請求項3記載の加熱凝固卵黄。
  5. スラリーに化工澱粉および/または湿熱処理澱粉を配合してなる請求項1乃至4のいずれかに記載の加熱凝固卵黄。
  6. 化工澱粉および/または湿熱処理澱粉の総配合量が、製品に対し1〜10%である請求項5記載の加熱凝固卵黄。
  7. スラリーにガム質を配合してなる請求項5又は6記載の加熱凝固卵黄。
  8. ガム質の一部あるいは全部がキサンタンガムである請求項7記載の加熱凝固卵黄。
  9. ガム質の配合量が、製品に対し0.3〜2%である請求項7又は8記載の加熱凝固卵黄。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載の加熱凝固卵黄を食材として用いた加工食品。
  11. 加工食品がFが4以上のレトルト処理を施されてある請求項10記載の加工食品。
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